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特許7490541油圧エレベーター用パワーユニット及びモーター芯出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】油圧エレベーター用パワーユニット及びモーター芯出し方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/04 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B66B9/04 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020195768
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084119
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関根 淳紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑司
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-253665(JP,A)
【文献】実開昭56-132087(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第00503329(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第103612965(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00- 7/12
B66B 9/00- 9/193
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧エレベーター用パワーユニットのモーターとポンプの相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットにおいて、
前記モーターの4隅に対して前記モーターを固定するベースに取り付けられるモーター芯出し雇と、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に沿う軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸平行方向調整ボルトと、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸垂直方向調整ボルトと、を備え
前記モーターは、前記ベースに固定される支持脚を備え、
前記軸平行方向調整ボルトは、前記軸平行方向における前記支持脚の両端部に当接する4本のボルトからなり、
前記軸垂直方向調整ボルトは、前記軸垂直方向における前記支持脚の両外側端部に当接する4本のボルトからなり、
前記モーター芯出し雇は、
前記モーター芯出し雇前記軸垂直方向調整ボルト及び固定ボルトが設けられる第1ブロック部と、前記軸平行方向調整ボルト及び押さえボルトが設けられる第2ブロック部と、第3ブロック部と、が一体に構成されたブロック体を備え、
前記ベースは、前記モーターの前記支持脚が固定される台座と、軸垂直方向の両側部に立設された立設部と、を備え、
前記ブロック体は、前記第1ブロック部に設けられた前記固定ボルトと前記第3ブロック部とで前記立設部を挟み込むことにより、前記ベースに固定され、
前記第2ブロック部は、前記押さえボルトと前記第3ブロック部とで前記台座を挟み込むことにより、前記ベースに固定されることを特徴とする油圧エレベーター用パワーユニット。
【請求項2】
請求項において、
前記ベースの前記台座は、軸平行方向に離間して配置される2つの台座からなり、
前記第1ブロック部は、前記立設部に対して前記ベースの外側に配置され、
前記第2ブロック部は、前記立設部に対して前記ベースの内側に配置されると共に、前記2つの台座に対して外側に配置され、
前記第3ブロック部は、前記立設部に対して前記ベースの内側に配置されると共に、前記2つの台座の内側に配置され、
前記軸垂直方向調整ボルトは、頭部が前記立設部に対して前記ベースの外側に配置され、ねじ部が前記ベースの外側から内側に向けて挿入され、
前記軸平行方向調整ボルトは、頭部が前記2つの台座に対して外側に配置され、ねじ部が前記頭部に対して前記2つの台座の外側から内側に向かう側に組み付けられることを特徴とする油圧エレベーター用パワーユニット。
【請求項3】
油圧エレベーター用パワーユニットのモーターとポンプの相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットであって、
前記モーターの4隅に対して前記モーターを固定するベースに取り付けられるモーター芯出し雇と、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に沿う軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸平行方向調整ボルトと、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸垂直方向調整ボルトと、を備え、
前記モーターは、前記ベースに固定される支持脚を備え、
前記軸平行方向調整ボルトは、前記軸平行方向における前記支持脚の両端部に当接する4本のボルトからなり、
前記軸垂直方向調整ボルトは、前記軸垂直方向における前記支持脚の両外側端部に当接する4本のボルトからなり、
前記モーター芯出し雇は、
前記モーター芯出し雇前記軸垂直方向調整ボルト及び固定ボルトが設けられる第1ブロック部と、前記軸平行方向調整ボルト及び押さえボルトが設けられる第2ブロック部と、第3ブロック部と、が一体に構成されたブロック体を備え、
前記ベースは、前記モーターの前記支持脚が固定される台座と、軸垂直方向の両側部に立設された立設部と、を備え、
前記ブロック体は、前記第1ブロック部に設けられた前記固定ボルトと前記第3ブロック部とで前記立設部を挟み込むことにより、前記ベースに固定され、
前記第2ブロック部は、前記押さえボルトと前記第3ブロック部とで前記台座を挟み込むことにより、前記ベースに固定される油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法において、
記ベースに前記モーター芯出し雇を設置する第1ステップと、
前記モーターと前記ポンプの相互芯のズレを測定する第2ステップと、
記軸平行方向調整ボルトを用いて、前記モーターを前記軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整すると共に、前記軸垂直方向調整ボルトを用いて、前記モーターを前記軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する第3ステップと、
を備えたことを特徴とする油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法。
【請求項4】
請求項において、
前記モーター芯出し雇を用いて前記モーターと前記ポンプとのカップリング同士の平行度、偏心度及びカップリング間の隙間を同時に調整することを特徴とする油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧エレベーター用パワーユニット、及びそのモーター芯出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-7933号公報(特許文献1)には、回転機器と駆動機等の調整芯出し治具が開示されている。特許文献1では、その要約に、従来の回転機器と駆動機等の芯出し作業において、多くの機器では芯出し治具が装備されていないこと、及び芯出し精度への修正にはハンマー打撃が行われることが記載されており、この場合の課題として、芯出し作業には熟練した作業員が必要であること、ハンマー打撃による機器の損傷や火花発生が懸念されること、ハンマー打撃では0.01mm単位の修正が困難なこと、等が記載されている。
【0003】
また特許文献1の要約には、駆動機等の固定ベースに既存する駆動機等の固定用ネジ穴を使用して芯出し治具を設置すること、芯出し治具は部品の組替え等で治具の高さ・長さ・作用方向の変更ができること、これらの機能と芯出し治具の取付位置を変更することで回転機器と駆動機等の水平方向の偏芯制度と平行精度を同時に実施できること、軸方向に芯出し治具を設置し回転機器と駆動機等の軸継ぎ手間隙間の調整を実施できること、等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-7933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の芯出し治具は、モーター等(駆動機等)を固定しているベース部(固定ベース)に既存するモーター等の固定用ネジ穴を活用して芯出し冶具を設置し、モーター等の芯出し調整を行う技術が開示されている。この特許文献1に開示された従来技術は、芯出し治具において部品の組替えや取付位置の変更を行いながら、モーターと回転機器とのカップリング同士の水平度、偏心度、高さ及びカップリング間の隙間を順番に調整するものである。このため、芯出し調整に時間がかかる。
【0006】
油圧エレベーターでは、パワーユニットの組立において、ポンプとモーターとをカップリングにて結合する。すなわち油圧エレベーターでは、モーターに結合される回転機器としてポンプを備え、ポンプとモーターとの芯出し調整が行われる。
【0007】
油圧エレベーターのリニューアル工事において、搬入経路が狭く、油圧エレベーターのパワーユニットを組立状態で搬入できない場合、現地でのパワーユニットの組立が必要となる。この場合、特許文献1に記載されているように、芯出し治具において部品の組替えや取付位置の変更を行いながら、モーターとポンプとのカップリング同士の水平度、偏心度、高さ及びカップリング間の隙間を順番に調整すると、芯出し調整に長い作業時間を要することになり、リニューアル工事などのように早期に工事完了が望まれる現場状況に対応できるものではなかった。
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、芯出し治具において部品の組替えや取付位置の変更を行う必要がなく、短時間でモーターとポンプとの相互芯の平行度、水平方向の芯ズレ(偏心度)及びカップリング間の隙間を調整することができる油圧エレベーター用パワーユニット及びモーター芯出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の油圧エレベーター用パワーユニットは、
油圧エレベーター用パワーユニットのモーターとポンプの相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットにおいて、
前記モーターの4隅に対して前記モーターを固定するベースに取り付けられるモーター芯出し雇と、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に沿う軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸平行方向調整ボルトと、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸垂直方向調整ボルトと、
を備え
前記モーターは、前記ベースに固定される支持脚を備え、
前記軸平行方向調整ボルトは、前記軸平行方向における前記支持脚の両端部に当接する4本のボルトからなり、
前記軸垂直方向調整ボルトは、前記軸垂直方向における前記支持脚の両外側端部に当接する4本のボルトからなり、
前記モーター芯出し雇は、
前記モーター芯出し雇前記軸垂直方向調整ボルト及び固定ボルトが設けられる第1ブロック部と、前記軸平行方向調整ボルト及び押さえボルトが設けられる第2ブロック部と、第3ブロック部と、が一体に構成されたブロック体を備え、
前記ベースは、前記モーターの前記支持脚が固定される台座と、軸垂直方向の両側部に立設された立設部と、を備え、
前記ブロック体は、前記第1ブロック部に設けられた前記固定ボルトと前記第3ブロック部とで前記立設部を挟み込むことにより、前記ベースに固定され、
前記第2ブロック部は、前記押さえボルトと前記第3ブロック部とで前記台座を挟み込むことにより、前記ベースに固定される。
また、上記課題を解決するために、油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法は、
油圧エレベーター用パワーユニットのモーターとポンプの相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットであって、
前記モーターの4隅に対して前記モーターを固定するベースに取り付けられるモーター芯出し雇と、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に沿う軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸平行方向調整ボルトと、
前記モーター芯出し雇に設けられ、前記モーターをモーター軸に垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する軸垂直方向調整ボルトと、を備え、
前記モーターは、前記ベースに固定される支持脚を備え、
前記軸平行方向調整ボルトは、前記軸平行方向における前記支持脚の両端部に当接する4本のボルトからなり、
前記軸垂直方向調整ボルトは、前記軸垂直方向における前記支持脚の両外側端部に当接する4本のボルトからなり、
前記モーター芯出し雇は、
前記モーター芯出し雇前記軸垂直方向調整ボルト及び固定ボルトが設けられる第1ブロック部と、前記軸平行方向調整ボルト及び押さえボルトが設けられる第2ブロック部と、第3ブロック部と、が一体に構成されたブロック体を備え、
前記ベースは、前記モーターの前記支持脚が固定される台座と、軸垂直方向の両側部に立設された立設部と、を備え、
前記ブロック体は、前記第1ブロック部に設けられた前記固定ボルトと前記第3ブロック部とで前記立設部を挟み込むことにより、前記ベースに固定され、
前記第2ブロック部は、前記押さえボルトと前記第3ブロック部とで前記台座を挟み込むことにより、前記ベースに固定される油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法において、
記ベースに前記モーター芯出し雇を設置する第1ステップと、
前記モーターと前記ポンプの相互芯のズレを測定する第2ステップと、
記軸平行方向調整ボルトを用いて、前記モーターを前記軸平行方向に押して、前記モーターの位置を調整すると共に、前記軸垂直方向調整ボルトを用いて、前記モーターを前記軸垂直方向で且つ水平方向に押して、前記モーターの位置を調整する第3ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯出し治具において部品の組替えや取付位置の変更を行う必要がなく、短時間でモーターとポンプとの相互芯の平行度、水平方向の芯ズレ(偏心度)及びカップリング間の隙間を調整することができる油圧エレベーター用パワーユニット及びモーター芯出し方法を提供することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し雇の一実施例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第1ステップ(ベースへモーター芯出し雇を設置)の状態を示す図である。
図3】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング同士の平行度測定)の状態を示す図である。
図4】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング同士の偏心度測定)の状態を示す図である。
図5】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング間の隙間測定)の状態を示す図である。
図6】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング間の高さ測定)の状態を示す図である。
図7】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング同士の平行度調整)の状態を示す図である。
図8】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング同士の偏心度調整)の状態を示す図である。
図9】本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング間の隙間調整)の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し雇(モーター芯出し治具)とモーター芯出し方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同じ符号を使用し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し雇の一実施例を示す斜視図である。なお図1では、モーター50を透視して、モーター50の陰に配置されたモーター芯出し雇1c,1dを、モーター50を透視して図示している。
【0014】
以下、モーター50の回転軸50xに沿う方向(回転軸に平行な方向)を軸平行方向と呼び、回転軸に垂直で且つ水平方向に平行な方向を軸垂直方向と呼ぶ。軸垂直方向はベース70の幅方向Wに一致する。
【0015】
図1に示すように、本実施例に係るモーター芯出し雇1aは、ブロック体2aと、ブロック体2aをベース70に固定するため固定ボルト3a,3bと、ブロック体2aの軸平行方向の位置調整及び固定を行う押さえボルト4aと、モーター50を軸平行方向に押し出す軸平行方向押しボルト5aと、モーター50を軸垂直方向に押し出す軸垂直方向押しボルト6aと、で構成されている。
【0016】
同様に、モーター芯出し雇1bは、ブロック体2bと、ブロック体2bをベース70に固定するため固定ボルト3c,3dと、ブロック体2bの軸平行方向の位置調整及び固定を行う押さえボルト4bと、モーター50を軸平行方向に押し出す軸平行方向押しボルト5bと、モーター50を軸垂直方向に押し出す軸垂直方向押しボルト6bと、で構成されている。
【0017】
同様に、モーター芯出し雇1cは、ブロック体2cと、ブロック体2cをベース70に固定するため固定ボルト3e,3fと、ブロック体2cの軸平行方向の位置調整及び固定を行う押さえボルト4cと、モーター50を軸平行方向に押し出す軸平行方向押しボルト5cと、モーター50を軸垂直方向に押し出す軸垂直方向押しボルト6cと、で構成されている。
【0018】
同様に、モーター芯出し雇1dは、ブロック体2dと、ブロック体2dをベース70に固定するため固定ボルト3g,3hと、ブロック体2dの軸平行方向の位置及び固定を行う押さえボルト4dと、モーター50を軸平行方向に押し出す軸平行方向押しボルト5dと、モーター50を軸垂直方向に押し出す軸垂直方向押しボルト6dと、で構成されている。
【0019】
なお、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dは、モーター50の4隅に設置され、モーターの大きさにより、設置位置を自由に変動させることができる。具体的には、回転軸50xとモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dとを水平な仮想平面に投影した場合に、モーター芯出し雇1aと1cとが回転軸50xを挟んで対向する位置に配置され、モーター芯出し雇1bと1dとが回転軸50xを挟んで対向する位置に配置される。
【0020】
ベース70にはモーター50を支持してモーター50が固定される支持部70a,70bが設けられ、モーター50にはベース70の台座(支持部)70a,70bに固定される支持脚50a,50bが設けられている。本実施例では、台座70a,70bは軸垂直方向に長手方向を有する。2つの台座70a,70bは、軸平行方向に離間して配置される。図1,2では、モーター芯出し雇1a及び1c側に設けられた支持脚50a,50bを一点鎖線で図示している。モーター50は、前述の仮想平面に投影した場合に、回転軸50xを挟んで対向する位置に設けられた2つの支持脚50a,50bを有する。
【0021】
ベース70は図示しないボルトが挿通されるボルト挿通孔70cを有し、支持脚50a,50bはボルト挿通孔70cを挿通するボルトが挿通するボルト挿通孔50cを有し、モーター50はモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dによって芯出し調整が行われた後、ボルト挿通孔70cとボルト挿通孔50cとを挿通するボルトによってベース70に締結固定される。
【0022】
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dのブロック体2a,2b,2c,2dは、固定ボルト3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hによって、ベース70の平面部70pの軸垂直方向の両側部(両脇)に立設された立設部70cに固定される。
【0023】
本実施例の油圧エレベーター用パワーユニットは、油圧エレベーター用パワーユニットのモーター50とポンプ60の相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットにおいて、
モーター50の4隅に対してモーター50を固定するベース70に取り付けられるモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dと、
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dに設けられ、モーター50をモーター軸50xに沿う軸平行方向に押して、モーター50の位置を調整する軸平行方向調整ボルト5a,5b,5c,5dと、
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dに設けられ、モーター50をモーター軸50xに垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、モーター50の位置を調整する軸垂直方向調整ボルト6a,6b,6c,6dと、
を備える。
【0024】
次に、図2~9を参照して、上述したモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dを用いてモーター50とポンプ60との相互芯を調整する方法を説明する。
【0025】
図2は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第1ステップ(ベースへモーター芯出し雇を設置)の状態を示す図である。
【0026】
本実施例に係るモーター50とポンプ60との相互芯を調整する方法は、例えば、エレベーターのリニューアル工事に際し、エレベーターの機械室に設けられる油圧パワーユニットのベース70の上に設置されたモーター50とポンプ60との相互芯を調整するものである。
【0027】
本実施例に係るモーター芯出し方法は、以下に詳述するように、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dをモーター50の位置に合わせてベース70に固定する第1ステップと、モーター50とポンプ60との相互芯を測定する第2ステップと、モーター50とポンプ50とのカップリング同士の水平度、偏心度及びカップリング間の隙間をモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dにて同時に調整する第3ステップと、モーター50とベース70との間へライナー等を挿入しカップリング同士の高さを調整する第4ステップとを含んでいる。
【0028】
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dは同じ構造であるため、モーター芯出し雇1aについて説明する。ブロック体2aは、固定ボルト3a,3bと軸垂直方向押しボルト6aとが設けられる第1ブロック部2aaと、押さえボルト4aと軸平行方向押しボルト5aとが設けられる第2ブロック部2abと、軸垂直方向の両側から固定ボルト3a,3bと共に立設部70cを挟み込むと共に軸平行方向の両側から押さえボルト4aと共に台座70aを挟み込む第3ブロック部2acと、を備え、第1ブロック部2aa、第2ブロック部2ab及び第3ブロック部2acは一体に構成されている。
【0029】
第1ブロック部2aaには固定ボルト3a,3b及び軸垂直方向押しボルト6aがそれぞれ螺合するねじ部(雌ネジ部)が設けられている。第2ブロック部2abには押さえボルト4a及び軸平行方向押しボルト5aがそれぞれ螺合するねじ部(雌ネジ部)が設けられている。
【0030】
本実施例に係るモーター50とポンプ60の相互芯を調整する方法は、初めに第1ステップとして、図2に示すように、モーター芯出し雇1aを、軸平行方向に対しては押さえボルト4aとブロック体2aの第3ブロック部2acとによりモーター50を固定する台座70a部分を挟み込むようにして台座70a部分に固定し、軸垂直方向に対しては固定ボルト3a,3bとブロック体2aとにより、ベース70の側面の立設部(立ち上がり部)70cを挟み込むようにして立設部70cに固定する。
【0031】
同様にして、モーター芯出し雇1bを、軸平行方向に対しては押さえボルト4bとブロック体2bとにより台座70b部分に固定し、軸垂直方向に対しては固定ボルト3c,3dとブロック体2bとにより、立設部70cに固定する。
【0032】
同様にして、モーター芯出し雇1cを、軸平行方向に対しては押さえボルト4cとブロック体2cとにより、台座70a部分に固定し、軸垂直方向に対しては固定ボルト3e,3fとブロック体2cとにより、立設部70cに固定する。
【0033】
同様にして、モーター芯出し雇1dを、軸平行方向に対しては押さえボルト4dとブロック体2dとにより、台座70b部分に固定し、軸垂直方向に対しては固定ボルト3g,3hとブロック体2dとにより、立設部70cに固定する。
【0034】
なお、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dは上述の順序によらず、どの順序でベース70へ固定してもよい。本工程で、第1ステップは完了する。
【0035】
本実施例の油圧エレベーター用パワーユニットは、
軸垂直方向調整ボルト6a,6b,6c,6d及び固定ボルト3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hが設けられる第1ブロック部2aaと、軸平行方向調整ボルト5a,5b,5c,5d及び押さえボルト4a,4b,4c,4dが設けられる第2ブロック部2abと、第3ブロック部2acと、が一体に構成されたブロック体2aを備え、
ベース70は、モーター50の支持脚50a,50bが固定される台座70a,70bと、軸垂直方向の両側部に立設された立設部70cと、を備え、
ブロック体2aは、第1ブロック部2aaに設けられた固定ボルト3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hと第3ブロック部2acとで立設部70cを挟み込むことにより、ベース70に固定され、
第2ブロック部2abは、押さえボルト4a,4b,4c,4dと第3ブロック部2acとで台座70a,70bを挟み込むことにより、ベース70に固定される。
【0036】
本実施例では、ベース70の台座70a,70bは、軸平行方向に離間して配置される2つの台座70a,70bからなる。第1ブロック部2aaは、立設部70cに対してベース70の外側に配置される。第2ブロック部2abは、立設部70cに対してベース70の内側に配置されると共に、2つの台座70a,70bに対して軸平行方向において外側に配置される。第3ブロック部2acは、立設部70cに対してベース70の内側に配置されると共に、2つの台座70a,70bの内側に配置される。
【0037】
軸垂直方向調整ボルト6a,6b,6c,6dは、頭部が立設部70cに対してベース70の外側に配置され、ねじ部がベース70の外側から内側に向けて挿入される。軸平行方向調整ボルト5a,5b,5c,5dは、頭部が2つの台座70a,70bに対して外側に配置され、ねじ部が頭部に対して2つの台座70a,70bの外側から内側に向かう側に組み付けられる。
【0038】
これにより、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dにおける芯出し調整が実施し易くなる。
【0039】
次に、第2ステップに移り、図3~6に示すように、モーター50とポンプ60との相互芯の芯ズレ(カップリング80a,80b同士の平行度と偏心度)(図3,4)、カップリング80a,80b間の隙間(図5)及び高さ方向のずれ(図6)を確認する。
【0040】
図3は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング同士の平行度測定)の状態を示す図である。図4は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング同士の偏心度測定)の状態を示す図である。図5は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング間の隙間測定)の状態を示す図である。図6は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第2ステップ(カップリング間の高さ測定)の状態を示す図である。
【0041】
この際、図示しないダイヤルゲージやギャップゲージを使用して芯ズレを測定することができる。本工程で第2ステップは完了する。
【0042】
モーター50とポンプ60との相互芯の高さ方向のずれ(図6)は、偏心度に含めることもできるが、本実施例では水平方向の芯ズレを偏心度とし、高さ方向のずれは偏心度と区別する。
【0043】
次に、第3ステップに移り、図7~9に示すように、4つのモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dのうち、いずれか2つの軸平行方向押しボルト5a,5b,5c,5d又は軸垂直方向押しボルト6a,6b,6c,6dを用いてモーター50とポンプ60の相互芯を調整する。軸平行方向押しボルト5a,5b,5c,5dは、モーター50をモーター軸50xに沿う方向に押して、モーター50の位置を調整するため、軸平行方向調整ボルトと呼ぶ場合がある。軸垂直方向押しボルト6a,6b,6c,6dは、モーター50をモーター軸50xに垂直な方向で且つ水平方向に押して、モーター50の位置を調整するため、軸垂直方向調整ボルトと呼ぶ場合がある。
【0044】
芯出し調整時に、軸平行方向押しボルト5a,5b,5c,5dは、支持脚50a,50bの軸平行方向における両端部に当接して支持脚50a,50bを押すことによって、モーター50とポンプ60との相互芯の芯出し調整を行う。また芯出し調整時に、軸垂直方向押しボルト6a,6b,6c,6dは、支持脚50a,50bの軸垂直方向における両外側端部に当接して支持脚50a,50bを押すことによって、モーター50とポンプ60との相互芯の芯出し調整を行う。
【0045】
すなわち本実施例では、
モーター50は、ベース70に固定される支持脚50a,50bを備え、
軸平行方向調整ボルト5a,5b,5c,5dは、軸平行方向における支持脚50a,50bの両端部に当接する4本のボルトからなり、
軸垂直方向調整ボルト6a,6b,6c,6dは、軸垂直方向における支持脚50a,50bの両外側端部に当接する4本のボルトからなる。
【0046】
図7は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング同士の平行度調整)の状態を示す図である。図8は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング同士の偏心度調整)の状態を示す図である。図9は、本発明に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法の一実施例における第3ステップ(カップリング間の隙間調整)の状態を示す図である。
【0047】
例えば、図7に示すように、カップリング80a,80b同士の平行度の調整のために、モーター50を中心にして回転させる場合で、時計回りに回転させる場合は、軸垂直平方向押しボルト6b,6cをスパナやレンチなどで締め上げ、反時計回りに回転させる場合は、軸垂直平方向押しボルト6a,6dをスパナやレンチなどで締め上げ、モーター50を回転させモーター50とポンプ60の芯ズレを調整する。この場合、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dは四角形の角部に配置されているため、対角に位置する一方のモーター芯出し雇1a,1d又は他方のモーター芯出し雇1b,1cを使って、芯ズレを調整するとよい。
【0048】
同様にして例えば、図8に示すように、カップリング80a,80b同士の偏心度の調整のために、モーター50をモーター軸50xに対して垂直方向へ移動させる場合は、軸垂直方向押しボルト6c,6d又は軸垂直平方向押しボルト6a,6bをスパナやレンチなどで締め上げ、軸垂直方向押しボルト6c,6d又は軸垂直方向押しボルト6a,6bを介してモーター50とポンプ60との芯ズレを調整する。
【0049】
同様にして例えば、図9に示すようにカップリング80a,80b間の隙間の調整のために、モーター50をモーター軸対して水平方向へ移動させる場合は、軸平行方向押しボルト5a,5c又は軸平行方向押しボルト5b,5dをスパナやレンチなどで締め上げ、軸平行方向押しボルト5a,5c又は軸平行方向押しボルト5b,5dを介してモーター50とポンプ60の芯ズレを調整する。
【0050】
なお芯出し調整時は、モーター50とベース70との大きな位置ずれが生じないように、モーター50とベース70とを、ボルト挿通孔70cとボルト挿通孔50cとを挿通する図示しないボルトで仮固定をした上で、モーター50とポンプ60との芯ズレを調整するとよい。本工程で第3ステップは完了する。
【0051】
本実施例のモーター芯出し方法は、油圧エレベーター用パワーユニットのモーター50とポンプ60の相互芯を調整する油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し方法において、
モーター50の4隅に対してモーター50を固定するベース70にモーター芯出し雇1a,1b,1c,1dを設置する第1ステップと、
モーター50とポンプ60の相互芯のズレを測定する第2ステップと、
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dに設けられた軸平行方向調整ボルト5a,5b,5c,5dを用いて、モーター50をモーター軸50xに沿う軸平行方向に押して、モーター50の位置を調整すると共に、モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dに設けられた軸垂直方向調整ボルト6a,6b,6c,6dを用いて、モーター50をモーター軸50xに垂直な軸垂直方向で且つ水平方向に押して、モーター50の位置を調整する第3ステップと、
を備える。
【0052】
本実施例のモーター芯出し方法では、
モーター芯出し雇1a,1b,1c,1dを用いてモーター50とポンプ60とのカップリング80a,80b同士の平行度、偏心度及びカップリング80a,80b間の隙間を同時に調整する。
【0053】
本実施例では、第3ステップが完了した時点で、軸平行方向押しボルト5a,5b,5c,5d及び軸垂直方向押しボルト6a,6b,6c,6dは全て、モーター50の支持脚50a,50bに当接し、水平方向におけるモーター50の支持脚50a,50bの位置決め、すなわちモータ-50の位置決めを完了した状態にある。
【0054】
次に、第4ステップに移り、カップリング80a,80b同士の高さの差を調整するためにモーター50とベース70との間へライナー等を挿入し、カップリング80a,80b同士の高さの差を調整する。
【0055】
なお、ライナー等を挿入するモーター50とベース70との間以外のモーター50とベース70とを固定するねじ穴は、モーター50とベース70との固定位置が大きくずれないように、モーター50とベース70とを図示しないボルトで固定した上でライナー等を挿入する。本工程で第4ステップは完了する。
【0056】
全ての芯出し調整が終了すると、モーター50は、ボルト挿通孔70cとボルト挿通孔50cとを挿通するボルトによって、ベース70に締結固定される。
【0057】
本実施例に係る油圧エレベーター用パワーユニットのモーター芯出し雇及びモーター芯出し方法によれば、モーター50とポンプ60との相互芯をハンマーでたたくような調整を行うことなく、軸平行方向押しボルト5a,5b,5c,5dと軸垂直方向押しボルト6a,6b,6c,6dとを用いて、モーター50とポンプ60とのカップリング80a,80b同士の平行度、偏心度及びカップリング間の隙間の調整を同時に実施することができ、能率よくモーター50とポンプ60との相互芯を調整することができる。また、芯出し治具において部品の組替えや取付位置の変更を行うことなく、平行度、偏心度及びカップリング間の隙間の調整を実施することができることを意味する。
【0058】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b,1c,1d…モーター芯出し雇、2a…ブロック体、2aa…第1ブロック部、2ab…第2ブロック部、2ac…第3ブロック部、3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h…固定ボルト、4a,4b,4c,4d…押さえボルト、5a,5b,5c,5d…軸平行方向調整ボルト、6a,6b,6c,6d…軸垂直方向調整ボルト、50…モーター、50a,50b…支持脚、50x…モーター軸、60…ポンプ、70…ベース、70a,70b…台座、70c…立設部、80a,80b…カップリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9