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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】吊り治具および解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240520BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G23/08 D
E04G21/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020214907
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100737
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100229091
【弁理士】
【氏名又は名称】山路 英洋
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】石田 武志
(72)【発明者】
【氏名】川端 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 基博
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-081731(JP,A)
【文献】特開2020-133161(JP,A)
【文献】特開2003-252563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/16、23/08
B66C1/00、1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、
前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、
前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、
前記孔に対応する位置で前記支持梁の上に配置される中間部材と、
を有し、
前記上部部材と前記下部部材が前記中間部材に連結されることで、前記上部部材と前記下部部材が前記中間部材を介して連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込むことを特徴とする吊り治具。
【請求項2】
板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、
前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、
前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、
前記孔に対応する位置で前記支持梁を上から覆うように配置される、コの字状の断面の中間部材と、
を有し、
前記上部部材は、前記孔を塞ぐように配置される板材を有し、
前記下部部材は、両端部が前記支持梁の両側に突出する板材を有し、
前記上部部材の板材に通されたボルトの軸部と、前記下部部材の板材に通されたボルトの軸部が、前記中間部材の両側に固定されたナットに螺合されることで、前記上部部材と前記下部部材が連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込むことを特徴とする吊り治具。
【請求項3】
板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、
前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、
前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、
を有し、
前記上部部材と前記下部部材が連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込む吊り治具を用いた板状部材の解体方法であって、
解体対象の板状部材に孔を形成する工程と、
前記孔に対応する位置で、前記板状部材の下面に支持梁を設ける工程と、
前記吊り治具を前記板状部材と前記支持梁に取り付ける工程と、
両側の板状部材から切り離した解体対象の板状部材を、前記吊り治具を用いて上方に吊り上げて撤去する工程と、
を有することを特徴とする解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り治具およびこれを用いた解体方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模建物の解体方法として、建物を大きい部材(ブロック)に切断し、クレーンで吊り上げて撤去するブロック解体工法がある(特許文献1~3等)。
【0003】
ブロック解体では、クレーンの拘束時間を如何に短くするかが工期短縮において重要である。そのため、建物をできるだけ大きいブロックの大判ユニット状態で吊り上げ、撤去することが有効であり、これによりクレーンによる揚重回数を低減し、工期を短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-28068号公報
【文献】特許第5627084号
【文献】特開2019-039225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラブ等の板状部材を吊り上げて撤去する場合、あまり大判化すると、撓みや折れ等が生じる危険がある。このような撓みや折れ等を防ぐため、従来は細かいブロック割にして切断、解体していたが、それでは現場での手間が増えて工期を圧迫する。
【0006】
そのため、撓みや折れ等をできるだけ防ぎながら、スラブ等の大判の板状部材を確実に吊り上げて撤去したいという要望があった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、撓みや折れ等をできるだけ防ぎながら、スラブ等の大判の板状部材を確実に吊り上げて撤去できる吊り治具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、前記孔に対応する位置で前記支持梁の上に配置される中間部材と、を有し、前記上部部材と前記下部部材が前記中間部材に連結されることで、前記上部部材と前記下部部材が前記中間部材を介して連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込むことを特徴とする吊り治具である。
第2の発明は、板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、前記孔に対応する位置で前記支持梁を上から覆うように配置される、コの字状の断面の中間部材と、を有し、前記上部部材は、前記孔を塞ぐように配置される板材を有し、前記下部部材は、両端部が前記支持梁の両側に突出する板材を有し、前記上部部材の板材に通されたボルトの軸部と、前記下部部材の板材に通されたボルトの軸部が、前記中間部材の両側に固定されたナットに螺合されることで、前記上部部材と前記下部部材が連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込むことを特徴とする吊り治具である。
【0009】
本発明の吊り治具により、スラブ等の板状部材と支持梁を強固に一体化してクレーンで確実に吊り上げ、板状部材を撤去できるため、吊り上げ時の板状部材の撓みや折れ等を支持梁により防止できる。これにより、板状部材を大判化して解体することが可能になる。また簡易な構成の吊り治具により板状部材の荷ぶれを防止でき、玉掛け時間や吊り上げ時間も短縮できる。結果、クレーンの揚重回数、揚重時間を低減し、工期短縮に寄与することが出来る。
【0010】
また、解体対象の板状部材を地上に吊り降ろし、支持梁を板状部材から外す際に、吊り治具の上部部材を中間部材から取り外した後、板状部材の下面の支持梁を吊り治具の中間部材や下部部材とともに水平方向に容易に抜き取ることが出来る。これにより、地上ヤードでの作業効率を高め、工期短縮に寄与することが出来る。
【0011】
の発明は、板状部材を吊り上げて撤去するための吊り治具であって、前記板状部材の孔を塞ぐように、当該孔の上に配置される上部部材と、前記孔に対応する位置で前記板状部材の下面の支持梁の下に配置される下部部材と、を有し、前記上部部材と前記下部部材が連結され、前記上部部材と前記下部部材で前記板状部材と前記支持梁を上下から挟み込む吊り治具を用いた板状部材の解体方法であって、解体対象の板状部材に孔を形成する工程と、前記孔に対応する位置で、前記板状部材の下面に支持梁を設ける工程と、前記吊り治具を前記板状部材と前記支持梁に取り付ける工程と、両側の板状部材から切り離した解体対象の板状部材を、前記吊り治具を用いて上方に吊り上げて撤去する工程と、を有することを特徴とする解体方法である。
の発明は、り治具を用いた解体方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、撓みや折れ等をできるだけ防ぎながら、スラブ等の大判の板状部材を確実に吊り上げて撤去できる吊り治具等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】解体方法を示す図。
図2】解体方法を示す図。
図3】解体方法を示す図。
図4】解体方法を示す図。
図5】解体方法を示す図。
図6】吊り治具1を示す図。
図7】解体方法を示す図。
図8】チェーン7と吊り治具1aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係る解体方法では、図1に示すスラブ100を解体する。スラブ100は、平行に配置された一対の梁101により支持された板状部材である。なお、図1において、(a)はスラブ100の厚さ方向の断面を示し、(b)はスラブ100の上面を示す。これは以降の図2~5においても同様である。
【0016】
解体を行う際は、まず解体対象のスラブ100を厚さ方向に貫通する孔102を形成する。孔102は、後述する吊り治具を取り付けるための孔であり、その径は後述する支持梁の幅よりも大きくなるように定める。孔102は、一対の梁101の内側近傍で、梁101の軸方向に沿って間隔を空けて複数形成される。
【0017】
その後、図2(a)、(b)に示すように孔102の上に一時的な蓋103をして一時的に開口養生を行う。またスラブ100の下に支保工200を搬入し、配置する。
【0018】
支保工200は、フレーム状の本体201の両側に、本体201の側方に突出するトラス状のアーム202を設けたものである。アーム202の突出端は、孔102の下方に位置する。なお、図2(c)に示すように、アーム202を本体側部材202aと先端側部材202bに分けて、先端側部材202bの本体側部材202aへの固定位置を変えることで、アーム202の突出長さを調節できるようにしてもよい。
【0019】
次に、図3(a)、(b)に示すように、梁101の軸方向と平行な仮設の支持梁300を、スラブ100の孔102の位置に合わせてスラブ100の下面に配置する。各支持梁300は、支保工200の両側のアーム202によって下から支持される。
【0020】
図3(c)は支持梁300を側方から見た図である。図3(c)に示すように、支持梁300は上弦材301と下弦材302の間に斜材303を設けたトラス形状を有し、木材によって形成される。ただし支持梁300の形状、素材はこれに限らない。
【0021】
本実施形態では、この支持梁300と支保工200とでスラブ100を下方から支持しながら、スラブカッター(不図示)によりスラブ100を図4に示すように切断する。図中Cはスラブ100の切断線であり、スラブ100は、孔102と梁101の間で、下方に行くにつれ梁101側から孔102側に向かうように斜め方向に切断する。
【0022】
これにより、切断線Cの内側に位置する解体対象のスラブ100が、その両側のスラブ100から切り離されるが、解体対象のスラブ100は両側のスラブ100により楔状に支持される。スラブ100の切断時には、支持梁300と支保工200により切断線Cの内側の(解体対象の)スラブ100を支持することにより、当該スラブ100が下がってカッターが切断線Cの内外のスラブ100に挟まれて動かなくなってしまうこともない。
【0023】
またアーム202を有する支保工200を用いることで、支持梁300を解体対象のスラブ100の両側の端部近傍に配置して当該スラブ100の支点間隔を広くし、片持ちになる支持梁300の外側の部分の長さを減らすことが出できる。
【0024】
その後、蓋103を取り外し、図5に示すように吊り治具1を解体対象のスラブ100とその下面の支持梁300に取り付ける。
【0025】
図6はこの吊り治具1を示す図である。図6において、(a)図はスラブ100の厚さ方向の断面において吊り治具1を示したものであり、(b)図は吊り治具1の斜視図である。
【0026】
図6に示すように、吊り治具1は、上部部材10、中間部材20、下部部材30を備え、平面において孔102に対応する位置に配置される。
【0027】
上部部材10は、板材11上の取付部12に吊り金具13(シャックル)を取り付けたものである。板材11は孔102を塞ぐように孔102の上に配置され、板材11の下面に設けた突起14により孔102から外れないように位置決めされる。突起14の形状は角柱状でも円柱状でもよい。板材11には鋼板が用いられ、孔102を塞げる大きさであればよい。
【0028】
中間部材20は、上方に向かって凸となる断面コの字状の本体21の両側に、長ナット22を溶接等で固定したものである。本体21は、その凹部で支持梁300の上弦材301を上から覆うように配置される。
【0029】
下部部材30は、支持梁300の下弦材302の下面に配置される板材31を有する。板材31の幅は下弦材302の幅より大きく、その両端部が下弦材302の両側に突出する。板材31には鋼板が用いられ、解体対象のスラブ100の吊り上げ時に変形しない程度の強度、厚みを有していればよい。
【0030】
上部部材10の板材11において、支持梁300の両側に当たる平面位置には孔(不図示)が形成されており、これらの孔のそれぞれに、頭付きボルト40の軸部が上から通される。当該軸部は孔102の内部を延び、その下端部が中間部材20の両側の長ナット22の上部に螺合される。
【0031】
下部部材30の板材31についても、支持梁300の両側に当たる平面位置に孔(不図示)が設けられており、これらの孔のそれぞれに、頭付きボルト50の軸部が下から通される。当該軸部は支持梁300の両側を延び、その上端部が中間部材20の両側の長ナット22の下部に螺合される。
【0032】
これにより、上部部材10と下部部材30が連結され、上部部材10と下部部材30によってスラブ100と支持梁300が上下から挟み込まれる。
【0033】
吊り治具1はスラブ100の孔102の位置で設置されるが、吊り治具1(孔102)のピッチは、スラブ100の吊り上げ時の応力状態について事前に構造解析を行い定めることができる。頭付きボルト40、50の軸部の長さはスラブ100の厚さや支持梁300の成に応じて決定され、頭付きボルト40、50の軸部の径や吊り金具13のサイズは、スラブ100の吊り上げ時に1つの吊り治具1が負担する重量等に応じて決定される。
【0034】
本実施形態では、吊り治具1の中間部材20と下部部材30を、支持梁300に事前に(例えば支持梁300をスラブ100の下面に配置する前に)取り付けておき、その後、頭付きボルト40により上部部材10を中間部材20に連結する。
【0035】
こうして吊り治具1によりスラブ100と支持梁300を一体化させた後、図7(a)に示すように支保工200を撤去する。吊り治具1によりスラブ100と支持梁300が一体化することで、支保工200を撤去しても支持梁300は落下せず、支保工200は他の解体箇所に転用することができる。これにより資材を有効利用でき、コスト減が可能になる。また、スラブ100の当面の放置が可能になるので、他の作業の前倒し、山崩しが可能になる。
【0036】
その後、図7(b)に示すように吊り治具1に玉掛け作業を行ってスラブ100を吊り上げる。ここでは、クレーン(不図示)で吊られた吊り枠2から垂下するワイヤ3を吊り治具1の吊り金具13(図6参照)に取り付け、クレーンによってスラブ100を吊り上げ、図7(c)に示すように地上に配置した枕桁5の上に吊り降ろして仮置きする。枕桁5は例えばH形鋼であり、スラブ100を載置するフランジ面を上にして配置される。
【0037】
その後、図7(d)に示すようにフォークリフト6のフォーク61を支持梁300の下面に配置してフォーク61により支持梁300を支持し、吊り治具1の頭付きボルト40(図6参照)を取り外して上部部材10を撤去する。中間部材20の長ナット22は本体21に固定してあるため、共回りすることなく頭付きボルト40を外すことができる。
【0038】
なお、スラブ100の平面の中央部側に支持梁300があると、フォーク61が届かないということもあり得るが、本実施形態では前記したアーム202付きの支保工200を用いることで、支持梁300の位置を解体対象のスラブ100の両側の端部近傍とできるので、作業が容易になる。
【0039】
頭付きボルト40を外すと、吊り治具1の中間部材20と下部部材30および支持梁300を一体としてスラブ100から外すことができる。本実施形態ではフォーク61を若干下降させ、支持梁300を吊り治具1の中間部材20および下部部材30ごと水平方向外側へと引き抜く。これにより図7(e)に示すように枕桁5上にスラブ100のみが残るので、重機等を使用してスラブ100を破砕し、撤去する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、吊り治具1により、スラブ100と支持梁300を強固に一体化してクレーンで確実に吊り上げ、スラブ100を撤去できるため、吊り上げ時のスラブ100の撓みや折れを支持梁300により防止できる。これにより、スラブ100を大判化して解体することが可能になる。また簡易な構成の吊り治具1によりスラブ100の荷ぶれを防止でき、玉掛け時間や吊り上げ時間も短縮できる。結果クレーンの揚重回数、揚重時間を低減し、工期短縮に寄与することが出来る。
【0041】
また本実施形態では、前記した吊り治具1の構成により、解体対象のスラブ100を地上に吊り降ろし、支持梁300をスラブ100から外す際に、吊り治具1の上部部材10を中間部材20から取り外した後、スラブ100の下面の支持梁300を吊り治具1の中間部材20や下部部材30とともに水平方向に容易に抜き取ることが出来る。これにより、地上ヤードでの作業効率を高め、工期短縮に寄与することが出来る。
【0042】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば本実施形態では、図7(a)に示すように支保工200を撤去して解体対象のスラブ100を放置できるが、地震等による万が一のスラブ落下を防ぐため、図8(a)に示すように、落下防止用の線材であるチェーン7を用いて解体対象のスラブ100とその両側のスラブ100を連結してもよい。
【0043】
図8(a)の例では、チェーン7の一端を吊り治具1の上部部材10の吊り金具13(図6参照)に取り付け、チェーン7の他端を解体対象のスラブ100の側方のスラブ100に設けた取付具8に取り付ける。当該スラブ100の梁101に対応する位置に孔を設け、当該孔に取付具8を配置し、取付具8を梁101に溶接等して固定してもよい。チェーン7による連結位置は、解体対象のスラブ100の平面が矩形状であれば、その四隅あるいは対角線の両端に位置する一対の隅部とすることもできる。チェーン7の長さは、弛みの無いように設定されていればよい。
【0044】
チェーン7を取付けるタイミングは、スラブ100の切断後であればよい。スラブ100の切断前にチェーン7を設けると、スラブカッターの走行をチェーン7が邪魔してしまうためである。解体対象のスラブ100の揚重前には、チェーン7を取付具8から取り外す。同時にチェーン7を吊り金具13からも取り外してスラブ100の揚重前にチェーン7を撤去してもよいし、スラブ100を地上に仮置きした後でチェーン7を吊り金具13から取外して撤去してもよい。撤去したチェーン7は、他の解体箇所で転用できる。
【0045】
また吊り治具1の構成、形状等も図6で説明したものに限定されない。例えば、中間部材20の長ナット22の位置を視認可能とし、頭付きボルト40の軸部の螺合作業を容易とするために、上部部材10の板材11にスリット等の開口を設けても良い。
【0046】
また図8(b)の吊り治具1aに示すように、中間部材20を省略し、下部部材30の板材31の孔(不図示)に下から通した頭付きボルト50の軸部の先端を、上部部材10aの板材11の孔(不図示)に貫通させ、板材11から突出する当該先端にナット16を締め込むことで、上部部材10aと下部部材30を連結してもよい。これによっても上部部材10aと下部部材30でスラブ100と支持梁300を上下から挟み込むことができ、吊り治具1と同様の効果が得られる。
【0047】
ただし、この吊り治具1aを用いる場合、図7(d)~(e)に示す支持梁300の撤去時に、頭付きボルト50の軸部のスラブ下面より上に位置する部分の長さLだけ余計にフォークリフト6のフォーク61を下降させる必要があり、その分撤去作業に手間がかかる。またスラブ100と地面の間に大きな隙間を設ける必要も生じる。
【0048】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1、1a:吊り治具
10、10a:上部部材
11:板材
12:取付部
13:吊り金具
14:突起
16:ナット
20:中間部材
21:本体
22:長ナット
30:下部部材
31:板材
40、50:頭付きボルト
100:スラブ
101:梁
102:孔
200:支保工
300:支持梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8