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特許7490559抗ラムダ骨髄腫抗原(LMA)発現がん及び自己免疫障害を処置するLMA結合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】抗ラムダ骨髄腫抗原(LMA)発現がん及び自己免疫障害を処置するLMA結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/32 20060101AFI20240520BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C07K16/32 ZNA
C07K16/46
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P7/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P37/02
A61P25/00
A61P3/10
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020544005
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 AU2019050137
(87)【国際公開番号】W WO2019161443
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】2018900534
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515181982
【氏名又は名称】ハエマロジックス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロザンヌ・ダン
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-523913(JP,A)
【文献】特表2012-522811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメインを有する抗ラムダ骨髄腫抗原(LMA)結合タンパク質であって、
前記抗原結合ドメインが、遊離ラムダ軽鎖上のLMAと優先的に結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、
前記Vが、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を含み、
前記Vが、配列番号6に示されるCDR1、配列番号7に示されるCDR2、及び配列番号8または配列番号13に示されるCDR3を含む、抗ラムダ骨髄腫抗原結合タンパク質。
【請求項2】
前記Vが、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
前記Vが、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記Vが、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインが、LMAに結合し、V及びVを含み、
-前記Vが、配列番号61に示されるCDR1、配列番号62に示されるCDR2、及び配列番号63に示されるCDR3を含み、前記Vが、配列番号66もしくは配列番号71に示されるCDR1、配列番号67もしくは配列番号72に示されるCDR2、及び配列番号68もしくは配列番号73に示されるCDR3を含む
LMA結合タンパク質。
【請求項6】
前記Vが、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
前記Vが、配列番号70または75のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項5または6に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインが、LMAに結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、
-前記Vが、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、前記Vが、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、
-前記Vが、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含み、前記Vが、配列番号70または配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む
LMA結合タンパク質。
【請求項9】
前記結合タンパク質が、LMAと特異的に結合する、請求項5~8のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項10】
抗体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項11】
前記V及びVが、単一ポリペプチド鎖である、請求項1~9のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項12】
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、
(iii)三量体scFv(tri-scFv)、
(iv)抗体の定常領域、Fc、または重鎖定常ドメインC2及び/またはC3に連結している(i)、(ii)、または(iii)のうちのいずれか1つ
である、請求項11に記載の結合タンパク質。
【請求項13】
前記V及びVが、別々のポリペプチド鎖である、請求項1~9のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項14】
(i)ダイアボディ、
(ii)トリアボディ、
(iii)テトラボディ、
(iv)Fab、
(v)F(ab’)
(vi)Fv、
(vii)抗体の定常領域、Fc、または重鎖定常ドメインC2及び/またはC3に連結している(i)~(vi)のうちの1つ、あるいは、
(viii)インタクト抗体
である、請求項13に記載の結合タンパク質。
【請求項15】
ヒト結合タンパク質である、請求項1から14のいずれか項に記載の結合タンパク質。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項で定義される、結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項で定義される結合タンパク質、または請求項16で定義される核酸を発現する、単離または組み換え細胞。
【請求項18】
医薬担体及び請求項1~15のいずれか1項で定義される結合タンパク質を含む、組成物。
【請求項19】
LMA発現がんを処置するための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか1項で定義される結合タンパク質または請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項20】
LMA発現がんの処置に使用するための、請求項1~15のいずれか1項で定義される結合タンパク質または請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記LMA発現がんが、多発性骨髄腫、Waldenstromマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、POEMS症候群、またはアミロイドーシスである、請求項19で定義される使用。
【請求項22】
前記LMA発現がんが、多発性骨髄腫、Waldenstromマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、POEMS症候群、またはアミロイドーシスである、請求項20で定義される結合タンパク質または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗LMA結合タンパク質に関する。そのような結合タンパク質は、形質細胞及び/またはそれらの前駆体の異常な増殖に関連する障害を処置するのに有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
形質細胞及び/またはその前駆細胞の異常増殖は、種々のヒト病状の特質である。1つの例は、骨髄形質細胞の悪性腫瘍である多発性骨髄腫(MM)である。疾患は、ラムダまたはラムダ軽鎖制限モノクローナルパラタンパク質のいずれかを分泌する悪性形質細胞を特徴とする。ラムダ制限は、骨髄腫患者の約40%で発生し、ラムダ骨髄腫抗原(LMA)の発現は、悪性エフェクター細胞に高度に制限される。最近の治療法の進歩にもかかわらず、多発性骨髄腫は依然として不治である。その臨床経過は、治療の初期奏効を特徴とし、続いて、全ての形態の処置に対する最終的な耐性を伴う再発を繰り返す。それは、利用可能な処置から疾患自体及び毒性の両方に起因する重大な罹患及び身体障害とも関連する。
【0003】
従って、形質細胞及び/またはそれらの前駆体の異常増殖を処置するための新しいアプローチが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示のヒト結合タンパク質を産生する時、本発明者らは、LMA陽性細胞株に結合して死滅させるヒト抗体の選択を同定した。本発明者らはまた、遊離ラムダ軽鎖(例えば、血清抗原)よりもLMA(すなわち、細胞表面抗原)への優先的結合を導く重鎖修飾を有するヒト抗体を同定した。そのような修飾は、LMAを発現する細胞を優先的に標的とするために、種々の結合タンパク質に組み込まれてもよい。そのような結合タンパク質は特に、LMA発現がん細胞などのLMAを発現する細胞の標的化された殺傷を媒介するのに効果的であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、第1の態様では、本開示は、抗原結合ドメインを有する抗ラムダ骨髄腫抗原(LMA)結合タンパク質に関し、抗原結合ドメインは、遊離ラムダ軽鎖よりもLMAと優先的に結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、Vは、配列番号1に示されるような相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を含む。別の例では、Vは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号6に示されるCDR1、配列番号7に示されるCDR2、及び配列番号8または配列番号13に示されるCDR3を含む。別の例では、Vは、配列番号9または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。一例では、上で参照された結合タンパク質は、ラムダアイソタイプ2及び3に結合する。一例では、上で参照された抗体は、ラムダアイソタイプ1に結合しない。別の例では、上で参照された抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定されたKが1×1010未満である遊離ラムダ軽鎖に結合する。別の例では、上記で参照された抗体は、SPRで測定されたKが5×10未満である遊離ラムダ軽鎖に結合する。別の例では、上記で参照された抗体は、SPRで測定されたKが1×10未満である遊離ラムダ軽鎖に結合する。別の例では、上記で参照された抗体は、SPRで測定されたKが5×10未満である遊離ラムダ軽鎖に結合する。別の例では、上記で参照された抗体は、SPRで測定されたKが5×10未満である遊離ラムダ軽鎖に結合する。
【0006】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質を包含し、抗原結合ドメインは、LMAに結合し、V及びVを含み、
-Vは、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を含み、Vは、配列番号36もしくは配列番号41に示されるようなCDR1、配列番号37もしくは配列番号42に示されるようなCDR2、及び配列番号38もしくは配列番号43に示されるようなCDR3を含むか、または
-Vは、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を含み、Vは、配列番号66もしくは配列番号71に示されるようなCDR1、配列番号67もしくは配列番号72に示されるようなCDR2、及び配列番号68もしくは配列番号73に示されるようなCDR3を含む。一例では、Vは、配列番号34または配列番号64に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号39、44、69、または74のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質を包含し、抗原結合ドメインは、LMAに結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、
-Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、
-Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号40または配列番号45に示されるアミノ酸配列を含み、
-Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号70または配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質を包含し、抗原結合ドメインは、LMAに結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、
-Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
-Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号40または配列番号45に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
-Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号70または配列番号75に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
CDRは、Kabatを使用して割り当てられる。
【0009】
別の例では、本開示は、抗原結合ドメインを有する抗LMA結合タンパク質を包含し、抗原結合ドメインは、LMAに結合し、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、
-Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
-Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号40または配列番号45に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
-Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、Vは、配列番号70または配列番号75に示されるアミノ酸配列由来のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
CDRは、IMGTを使用して割り当てられる。
【0010】
別の例では、本明細書に開示の結合タンパク質は、LMAと特異的に結合する。別の例では、本明細書に開示の結合タンパク質は、抗体である。一例では、抗体は、LMAと特異的に結合する。一例では、抗体は、ヒト抗体である。一例では、本明細書に開示の結合タンパク質のV及びVは、単一ポリペプチド鎖に存在する。例えば、結合タンパク質は、以下のものであってよい:
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、
(iii)三量体scFv(tri-scFv)、
(iv)抗体の定常領域、Fc、または重鎖定常ドメインC2及び/またはC3に連結している(i)、(ii)、または(iii)のうちのいずれか1つ。
【0011】
別の例では、本明細書に開示の結合タンパク質のV及びVは、別々のポリペプチド鎖に存在する。例えば、結合タンパク質は、以下のものであってよい:
(i)ダイアボディ、
(ii)トリアボディ、
(iii)テトラボディ、
(iv)Fab、
(v)F(ab’)
(vi)Fv、
(vii)抗体の定常領域、Fc、または重鎖定常ドメインC2及び/またはC3に連結している(i)~(vi)のうちの1つ、あるいは、
(viii)インタクト抗体。
【0012】
別の例では、本開示は、本明細書に開示の結合タンパク質をコードする核酸を包含する。別の例では、本開示は、本明細書に開示の結合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを包含する。一例では、そのようなベクターは、核酸の発現のための宿主細胞に提供することができる。従って、一例では、本開示は、本明細書で定義される結合タンパク質を発現する単離または組み換え細胞を包含する。
【0013】
別の例では、本開示は、医薬担体及び本明細書で定義される結合タンパク質のいずれかを含む組成物を包含する。
【0014】
別の例では、本開示は、対象におけるLMA発現がんを処置する方法を包含し、方法は、対象に本明細書で定義される結合タンパク質の有効量を投与することを含む。別の例では、本開示は、LMA発現がんを処置するための薬品の製造における、本明細書で定義される結合タンパク質の使用を包含する。別の例では、本開示は、LMA発現がんの処置に使用される、本明細書で定義される結合タンパク質を包含する。一例では、LMA発現がんは、多発性骨髄腫、Waldenstromマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、POEMS症候群、またはアミロイドーシスである。
【0015】
別の例では、本開示は、対象の自己免疫障害を処置する方法を包含し、方法は、対象に本明細書に定義される有効量の結合タンパク質を投与することを含む。別の例では、本開示は、自己免疫障害を処置するための薬品の製造における、本明細書で定義される結合タンパク質の使用を包含する。別の例では、本開示は、自己免疫障害の処置に使用される、本明細書で定義される結合タンパク質を包含する。一例では、自己免疫障害は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、真性糖尿病、及び多発性硬化症からなる群より選択される。
【0016】
本明細書のいずれかの例は、別途具体的な記載のない限り、他の任意の例に準用すると解釈されるべきである。
【0017】
本開示は、本明細書に記載の特定の例により範囲を限定されないものとする。そのような特定の例は、例示のために意図されているに過ぎない。機能的に同等の製品、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本開示の範囲内である。
【0018】
本明細書全体にわたって、別途具体的な記載のない限り、または文脈が別途要求しない限り、単一のステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群への言及は、それらのステップ、組成物、ステップの群、または組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含すると解釈されるべきである。
【0019】
本開示は、以下の非限定例により且つ添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ラムダ遊離軽鎖の4G7モノクローナル抗体エピトープ。左パネルは、ラムダ遊離軽鎖1、2、及び3アイソタイプのアミノ酸配列のアラインメントを示し、ラムダアイソタイプ2及び3は、発現されたラムダ軽鎖レパートリーの95%を構成する。アスタリスクは、配列同一性を示す。異なるアミノ酸が、強調表示される。右パネルは、ラムダ軽鎖二量体(MCG二量体)及びMCG Igの3D構造の識別されたペプチドを示し、折りたたまれた軽鎖タンパク質内で、2つのペプチドがコンジュゲートを形成して非イディオタイプの立体配座エピトープを作成することを示す。
図2A】精製ラムダ軽鎖へのヒト抗LMA抗体の親和性。(A)グラフは、精製ラムダ軽鎖BJP(LAM034MD、LAM134MD、MAL788MD、LAM885D、LAM893D)(20ng/mL)に対するヒト抗LMA抗体クローン(1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、及び18F9)(20μg/mL)のSPR値4G7を示す。抗κBJPモノクローナル抗体MDX-1097及びκBJP(20ng/mL)(KAP960M)を陰性対照として使用した。ヒト抗LMA抗体クローンは、7F11は別として、精製ラムダ軽鎖BJPに対して同等の高い選択的親和性を示し、7F11は、より低い親和性を示した。ラムダ軽鎖BJPの末端の略称:M:単量体;MD:単量体及び二量体の混合物;D:二量体。
図2B】精製ラムダ軽鎖へのヒト抗LMA抗体の親和性。(B)グラフは、市販のラムダ軽鎖(Bethyl)に対するヒト抗LMA抗体クローン(18E8、7F11、及び18F9)(700ng/mL)のSPR値を示す。ヒト抗LMA抗体7F11は、クローン18E8及び18F9と比較して、市販のラムダ軽鎖(Bethyl)に弱く結合する。
図3】HEK細胞由来の組み換えラムダ軽鎖分離株へのヒト抗LMA抗体の親和性。グラフは、カニクイザルラムダ軽鎖(CYNO1、CYNO3)、ラムダ軽鎖がトランスフェクトされたHEK細胞、LP-1ラムダ軽鎖分離株(LP-1 ISO)、及びRPMI-8226ラムダ軽鎖分離株(RPMI-8226 ISO)由来の上清対するヒト抗LMA抗体候補(1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、18F9)(20μg/mL)のSPR値を示す。抗κBJPモノクローナル抗体MDX-1097を陰性対照として使用した。ヒト抗LMA抗体クローンは、7F11は別として、カニクイザルラムダ軽鎖ならびにHEK、LP-1、及びRPMI-8226由来のラムダ軽鎖分離株に対し同等の高い選択的親和性を示し、7F11は、低親和性を示した。
図4】上清ヒト多発性骨髄腫細胞株へのヒト抗LMA抗体の親和性。グラフは、ヒト多発性骨髄腫細胞株(RPMI-8226(ラムダアイソタイプ2)、LP-1(ラムダアイソタイプ1)、JJN3(カッパ)、OPM-2(ラムダアイソタイプ3))の上清に対するヒト抗LMA抗体候補(6A1、13H3、及び4A1)(20μg/mL)のSPR値を示す。ヒト抗LMA抗体クローンは、ヒト多発性骨髄腫細胞株により発現される可溶性ラムダ軽鎖アイソタイプに対して高い選択的親和性を示し、JJN3細胞株により発現されるカッパ軽鎖に対して高い選択的親和性を示さなかった。
図5A】LMA陽性ヒト骨髄腫細胞株へのヒト抗LMA抗体の結合。(A)グラフは、フローサイトメトリー分析で決定された1次抗体対照なしと比較した、LMA陽性ヒト骨髄腫細胞株(ヒト抗LMA抗体候補(1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、及び18F9)によるRPMI-8226(ラムダアイソタイプ2)、U266(ラムダアイソタイプ2)、JJN3(カッパ)、OPM-2(ラムダアイソタイプ3))の相対的染色(幾何平均)を示す。ヒト抗LMA抗体は、試験された全てのヒト骨髄腫細胞株の選択的染色を示したが、染色されたJJN3(カッパ)細胞株を示さなかった(またはわずかに示した)。
図5B】LMA陽性ヒト骨髄腫細胞株へのヒト抗LMA抗体の結合。(B)グラフは、フローサイトメトリー分析で決定された1次抗体対照なしと比較した、LMA陽性ヒト骨髄腫細胞株(ヒト抗LMA抗体候補(1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、18F9、6A1、4A1、及び13H3)によるU266(ラムダアイソタイプ2)、OPM-2(ラムダアイソタイプ3)、及びKMS-18(ラムダアイソタイプ1))の相対的染色(幾何平均)を示す。
図6】骨髄腫細胞に対する抗体依存性細胞毒性(ADCC)。
図7】骨髄腫細胞に対する補体媒介性細胞毒性(CDC)。
図8】7F11と、10B3、18E11、及び18E8を比較する配列アラインメント。下線を引かれた重鎖CDR。アスタリスクは、配列同一性を示す。
図9】10μg/mLの10B3で染色されたヒト扁桃腺(HT2449-1)の凍結切片。40倍の対物レンズ。
図10】10μg/mLの7F11で染色されたヒト扁桃腺(HT2449-1)の凍結切片。40倍の対物レンズ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
配列表の解読
NB:CDR及びフレームワーク配列を割り当てるために使用されるKabat番号付けシステム
配列番号1-7F11重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号2-7F11重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号3-7F11重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号4-7F11重鎖フレームワークアミノ酸配列
配列番号5-7F11重鎖全長アミノ酸配列
配列番号6-7F11軽鎖1-CDR1アミノ酸配列
配列番号7-7F11軽鎖1-CDR2アミノ酸配列
配列番号8-7F11軽鎖1-CDR3アミノ酸配列
配列番号9-7F11軽鎖1-フレームワークアミノ酸配列
配列番号10-7F11軽鎖1-全長アミノ酸配列
配列番号11-7F11軽鎖2-CDR1アミノ酸配列
配列番号12-7F11軽鎖2-CDR2アミノ酸配列
配列番号13-7F11軽鎖2-CDR3アミノ酸配列
配列番号14-7F11軽鎖2-フレームワークアミノ酸配列
配列番号15-7F11軽鎖2-全長アミノ酸配列
配列番号16-7F11重鎖CDR1 DNA配列
配列番号17-7F11重鎖CDR2 DNA配列
配列番号18-7F11重鎖CDR3 DNA配列
配列番号19-7F11重鎖フレームワークDNA配列
配列番号20-7F11重鎖全長DNA配列
配列番号21-7F11軽鎖1-CDR1 DNA配列
配列番号22-7F11軽鎖1-CDR2 DNA配列
配列番号23-7F11軽鎖1-CDR3 DNA配列
配列番号24-7F11軽鎖1-フレームワークDNA配列
配列番号25-7F11軽鎖1-全長DNA配列
配列番号26-7F11軽鎖2-CDR1 DNA配列
配列番号27-7F11軽鎖2-CDR2 DNA配列
配列番号28-7F11軽鎖2-CDR3 DNA配列
配列番号29-7F11軽鎖2-フレームワークDNA配列
配列番号30-7F11軽鎖2-全長DNA配列
配列番号31-18E8重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号32-18E8重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号33-18E8重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号34-18E8重鎖フレームワークアミノ酸配列
配列番号35-18E8重鎖全長アミノ酸配列
配列番号36-18E8軽鎖1-CDR1アミノ酸配列
配列番号37-18E8軽鎖1-CDR2アミノ酸配列
配列番号38-18E8軽鎖1-CDR3アミノ酸配列
配列番号39-18E8軽鎖1-フレームワークアミノ酸配列
配列番号40-18E8軽鎖1-全長アミノ酸配列
配列番号41-18E8軽鎖2-CDR1アミノ酸配列
配列番号42-18E8軽鎖2-CDR2アミノ酸配列
配列番号43-18E8軽鎖2-CDR3アミノ酸配列
配列番号44-18E8軽鎖2-フレームワークアミノ酸配列
配列番号45-18E8軽鎖2-全長アミノ酸配列
配列番号46-18E8重鎖CDR1 DNA配列
配列番号47-18E8重鎖CDR2 DNA配列
配列番号48-18E8重鎖CDR3 DNA配列
配列番号49-18E8重鎖フレームワークDNA配列
配列番号50-18E8重鎖全長DNA配列
配列番号51-18E8軽鎖1-CDR1 DNA配列
配列番号52-18E8軽鎖1-CDR2 DNA配列
配列番号53-18E8軽鎖1-CDR3 DNA配列
配列番号54-18E8軽鎖1-フレームワークDNA配列
配列番号55-18E8軽鎖1-全長DNA配列
配列番号56-18E8軽鎖2-CDR1 DNA配列
配列番号57-18E8軽鎖2-CDR2 DNA配列
配列番号58-18E8軽鎖2-CDR3 DNA配列
配列番号59-18E8軽鎖2-フレームワークDNA配列
配列番号60-18E8軽鎖2-全長DNA配列
配列番号61-10B3重鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号62-10B3重鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号63-10B3重鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号64-10B3重鎖フレームワークアミノ酸配列
配列番号65-10B3重鎖全長アミノ酸配列
配列番号66-10B3軽鎖1-CDR1アミノ酸配列
配列番号67-10B3軽鎖1-CDR2アミノ酸配列
配列番号68-10B3軽鎖1-CDR3アミノ酸配列
配列番号69-10B3軽鎖1-フレームワークアミノ酸配列
配列番号70-10B3軽鎖1-全長アミノ酸配列
配列番号71-10B3軽鎖2-CDR1アミノ酸配列
配列番号72-10B3軽鎖2-CDR2アミノ酸配列
配列番号73-10B3軽鎖2-CDR3アミノ酸配列
配列番号74-10B3軽鎖2-フレームワークアミノ酸配列
配列番号75-10B3軽鎖2-全長アミノ酸配列
配列番号76-10B3重鎖CDR1 DNA配列
配列番号77-10B3重鎖CDR2 DNA配列
配列番号78-10B3重鎖CDR3 DNA配列
配列番号79-10B3重鎖フレームワークDNA配列
配列番号80-10B3重鎖全長DNA配列
配列番号81-10B3軽鎖1-CDR1 DNA配列
配列番号82-10B3軽鎖1-CDR2 DNA配列
配列番号83-10B3軽鎖1-CDR3 DNA配列
配列番号84-10B3軽鎖1-フレームワークDNA配列
配列番号85-10B3軽鎖1-全長DNA配列
配列番号86-10B3軽鎖2-CDR1 DNA配列
配列番号87-10B3軽鎖2-CDR2 DNA配列
配列番号88-10B3軽鎖2-CDR3 DNA配列
配列番号89-10B3軽鎖2-フレームワークDNA配列
配列番号90-10B3軽鎖2-全長DNA配列
配列番号91-4G7エピトープ(ラムダアイソタイプ2及び3)エピトープ1
配列番号92-4G7エピトープ(ラムダアイソタイプ2及び3)エピトープ2
配列番号93-4G7エピトープ(ラムダアイソタイプ1)エピトープ1
配列番号94-4G7エピトープ(ラムダアイソタイプ1)エピトープ2
【0022】
一般的な技術及び選択された定義
別途具体的な明示のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語(例えば、分子生物学、生化学、抗体、抗体フラグメント、及び臨床試験)は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0023】
「ラムダ骨髄腫抗原」(LMA)は、悪性骨髄腫細胞などの形質細胞、及び一部の場合では、形質芽球などの非悪性形質細胞前駆体の表面に見出される細胞膜抗原である。具体的には、LMAは、細胞膜に発現した遊離ラムダ軽鎖からなる。本開示に包含される抗LMA結合タンパク質は、ラムダ軽鎖が重鎖と会合していない時に結合のみに利用可能な、ラムダ軽鎖上の立体配座エピトープを特異的に認識する。従って、本開示に包含される抗LMA結合タンパク質は、インタクトなラムダ鎖含有IgG、IgM、IgE、またはIgAに結合しない。
【0024】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の結合タンパク質及びLMAの相互作用に関する「結合する」という用語は、相互作用が、LMA上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、結合タンパク質は、一般に、抗原ではなく特異抗原を認識して結合する。例えば、結合タンパク質がエピトープ「A」に結合する場合、標識「A」及び結合タンパク質を含む反応におけるエピトープ「A」(または遊離の非標識「A」)を含有する分子の存在は、結合タンパク質に結合している標識「A」の量を低減させるであろう。一例では、本明細書に開示のLMA結合タンパク質は、遊離ラムダ軽鎖(例えば、血清抗原)よりもLMA(すなわち、細胞表面抗原)に優先的に結合する。遊離ラムダ軽鎖よりもLMAに優先的に結合する本明細書で開示の結合タンパク質は、遊離軽鎖よりも頻繁に、迅速に、長い期間で、及び/または大きなLMAとの親和性で、反応または会合する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、結合タンパク質及びLMA間の結合相互作用が、結合タンパク質によるLMAの検出に依存することを意味すると解釈されるべきである。従って、結合タンパク質は、他の分子、細胞、または生物の混合物中に存在する時でも、LMAに特異的に結合または認識する。一例では、結合タンパク質は、代替の抗原または細胞よりも、頻繁に、迅速に、長い期間で、及び/または高いLMAとの親和性で、反応または会合する。一例では、LMAに特異的に結合する本明細書に開示の結合タンパク質はまた、遊離軽鎖よりもLMAに優先的に結合または認識することができる。また、例えば、LMAに特異的に結合する結合タンパク質が、第2抗原に特異的に結合してもしなくてもよいことが、この定義を読むと理解される。そのようなものであるから、「特異的結合」は、別の抗原の排他的な結合または検出不可能な結合を必ずしも必要としない。「特異的に結合する」という用語は、本明細書において「選択的に結合する」と互換的に使用することができる。一般に、本明細書における結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は、他の用語を明示的にサポートするものと理解されるべきである。特異的結合を決定するための方法は、当業者には明らかであろう。例えば、本開示の結合タンパク質を、LMAまたは代替抗原と接触させる。次に、LMAまたは代替抗原への結合タンパク質の結合は、決定され、上述されるように、代替抗原よりもLMAに結合する結合タンパク質は、LMAに特異的に結合すると考えられる。同様の方法は、優先的な結合を同定するために使用されてもよい。この場合、代替抗原は、遊離軽鎖であろう。
【0026】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンドメインを含む抗LMA結合タンパク質を含むと理解されるであろう。例示的な免疫グロブリンは、抗体である。「免疫グロブリン」という用語に包含されるさらなるタンパク質には、ドメイン抗体、ラクダ科抗体、及び軟骨魚由来の抗体(すなわち、免疫グロブリンの新しい抗原受容体(IgNAR))を含む。一般に、ラクダ科抗体及びIgNARは、Vを含むが、Vを欠き、多くの場合、重鎖免疫グロブリンと呼ばれる。他の「免疫グロブリン」は、T細胞受容体を含む。
【0027】
「結合タンパク質」という用語は、本開示の文脈では、特定の抗原と免疫学的に反応するヒト免疫グロブリン分子を指すために使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。「結合タンパク質」という用語はまた、Pierce Catalogue and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York(1998)で検討されるような抗原結合能を有するフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv、及びrIgG)を含む抗体の抗原結合形態を含む。用語はまた、組み換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)ならびにその二価(di-scFv)及び三価(tri-scFV)形態を指すために使用される。抗体という用語はまた、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディを含む。
【0028】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、インタクト抗体の1つ以上の可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;ならびに抗体フラグメントから形成される一本鎖抗体分子が挙げられる。例えば、抗原結合フラグメントという用語は、組み換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)ならびにその二価(di-scFv)及び三価(tri-scFv)形態を指すために使用されてもよい。
そのようなフラグメントは、当該技術分野で既知の種々の方法を介して生成することができる。
【0029】
「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体の抗原結合フラグメントとは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列多様体であってよい。
【0030】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、本開示の文脈では、特定の抗原を認識して結合する抗体の2つの可変鎖(重鎖及び軽鎖)の一部を指すために使用される。CDRは、可変鎖の最も可変な部分であり、結合タンパク質にその特異性を提供する。一般に、可変重(V)鎖及び可変軽(V)鎖のそれぞれに3つのCDRがある。
【0031】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合する本明細書で定義されるような抗体の軽鎖及び/または重鎖の部分を指し、例えば、CDR、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3、ならびにフレームワーク領域(FR)、のアミノ酸配列を含む。例えば、可変領域は、3つのCDRとともに3つまたは4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び任意に、FR4)を含む。Vは、重鎖の可変領域を指す。Vは、軽鎖の可変領域を指す。
【0032】
一例では、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md.,1987及び1991(本明細書では、「Kabat番号付けシステム」または「Kabat」とも呼ばれる)に従って定義される。
【0033】
可変ドメインの修正または代替番号付けシステムを含む他の規則には、IMGT(Lefranc,et al.(2003),Dev Comp Immunol 27:55-77)、Chothia(Chothia C,Lesk AM(1987),J Mal Biol 196:901-917;Chothia,et al.(1989),Nature 342:877-883)、及びAHo(Honegger A,Pluckthun A(2001)J Mol Biol 309:657-670)を含む。便宜上、本開示の結合タンパク質の例はまた、IMGTに従って標識されてもよい。
【0034】
本明細書で使用される「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体の重鎖または軽鎖の一部を指す。重鎖では、定常領域は一般に、複数の定常ドメイン及びヒンジ領域を含み、例えば、IgG定常領域は、以下の連結構成要素、定常重鎖C1、リンカー、C2、及びC3を含む。重鎖では、定常領域は、Fcを含む。軽鎖では、定常領域は一般に、1つの定常ドメイン(CL1)を含む。
【0035】
「フラグメント結晶化可能」または「Fc」または「Fc領域」または「Fc部分」という用語(本明細書で互換的に使用することができる)は、少なくとも1つの定常ドメインを含む抗体の領域を指し、これは、一般に(必ずしもではないが)、グリコシル化され、1つ以上のFc受容体及び/または補体カスケードの成分に結合することが可能である。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、またはμのいずれかから選択することができる。例示的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、及びガンマ3(IgG3)、またはそれらのハイブリッドである。
【0036】
「定常ドメイン」は、抗体中のドメインであり、この配列は、抗体において非常に類似し/同じタイプの抗体、例えば、IgGまたはIgMまたはIgEである。抗体の定常領域は一般に、複数の定常ドメインを含み、例えば、γ、α、またはδ重鎖の定常領域は、2つの定常ドメインを含む。
【0037】
「抗体重鎖」という用語は、本明細書では、天然に存在する立体配座の全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち大きい方を指すために使用される。本明細書で使用される「抗体軽鎖」は、天然に存在する立体配座の全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0038】
「ネイキッド」という用語は、別の化合物、例えば、毒性化合物または放射性標識にコンジュゲートされていない、本開示の結合タンパク質を指すために使用される。例えば、「ネイキッド」という用語は、別の化合物にコンジュゲートされていない結合タンパク質を指すために使用することができる。従って、一例では、本開示の結合タンパク質は、「ネイキッド」である。換言すれば、本開示の結合タンパク質は、コンジュゲートされていない可能性がある。
【0039】
対照的に、「コンジュゲートされている」という用語は、本開示の文脈では、別の化合物、例えば、細胞毒性剤または放射性標識などの毒性化合物、にコンジュゲートされている本明細書に記載の結合タンパク質を指すために使用される。従って、一例では、本開示の結合タンパク質は、「コンジュゲート」されている。
【0040】
本明細書で使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは防止し、及び/または細胞死もしくは細胞破壊を引き起こす物質を指す。細胞毒性剤は、放射性同位体(例えば、At211、1131、1125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi、P、Pb、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤または薬物(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそのフラグメント;抗生物質;フラグメント及び/または多様体を含む細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素;ならびに以下に開示の種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含むが、これらに限定されない。
【0041】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」などの用語は、本開示の文脈において、そのような細胞の子孫を含む外因性核酸が導入されている細胞を指すために互換的に使用される。宿主細胞は、初代形質転換細胞及び継代数にかかわらずそれに由来する子孫を含む「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含む。子孫は、核酸含量において親細胞と完全に同一でなくてもよいが、変異を含有してもよい。元々形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されるものと同じ機能または生物活性を有する変異型子孫が本明細書に含まれる。
【0042】
本開示による「単離核酸」は、自然環境の成分から分離されている核酸分子である。単離核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に、存在する。
【0043】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結している少なくとも1つの発現制御配列を含む組み換え核酸配列を含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に必要な全ての必要なシス作用要素を含む。発現ベクターの例としては、発現されるべき組み換えポリヌクレオチドをコードするプラスミド、コスミド、及びウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。他の例では、発現ベクターは、ゲノム、例えば、PiggyBac発現系、に組み込むことが可能な転位因子を含む。別の例では、発現ベクターは、発現ベクター内容物の宿主ゲノムへの組み込みを可能にするウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター、である。
【0044】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を達成するように、配列をアラインさせてギャップを導入した後に、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の割合として定義され、配列同一性の一部としての任意の保存的置換を考慮しない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者らの技能の範囲内にある種々の方法で達成することができる。当業者らは、比較されている配列の全長にわたる最大のアライメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするのに適切なパラメータを決定し得る。
【0045】
本開示による結合タンパク質及びそれを含む組成物は、種々の適応症を処置するために対象に投与することができる。「対象」、「患者」、または「個人」などの用語は、本開示では、文脈において互換的に使用することができる用語である。一例では、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、イヌもしくはネコなどのコンパニオンアニマル、またはウマもしくはウシなどの家畜動物であってよい。一例では、対象は、ヒトである。例えば、対象は、成人であり得る。別の例では、対象は、子供であり得る。別の例では、対象は、青年であり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、臨床的病理の経過中に処置されている個体または細胞の自然経過を改変するように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果は、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後の改善を含む。個体は、例えば、疾患に関連する1つ以上の症状が緩和または解消される場合、うまく「処置」される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、個体における疾患の発生または再発に関して予防を提供することを含む。個体は、疾患または疾患が再発しやすいか、またはそれを発症するリスクがあり得るが、まだ疾患または再発と診断されていない。
【0048】
「有効量」は、所望の治療的結果または予防的結果を達成するのに、必要な投薬量及び期間で、少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与で提供することができる。本開示の一部の例では、「有効量」という用語は、以下に記載の疾患または状態の処置を行うのに必要な量を意味する。有効量は、処置されるべき疾患または状態に応じて、さらに体重、年齢、人種的背景、性別、健康、及び/または物理的状態ならびに処置される対象に関連する他の要因に応じて、変動し得る。通常、有効量は、医師による日常的な治験及び実験を通じて決定することができる比較的広い範囲(例えば、「投薬量」の範囲)に入るであろう。
【0049】
「治療的有効量」は、特定の障害(例えば、がん)の測定可能な改善をもたらすのに必要な少なくとも最小濃度である。本明細書における治療的有効量は、患者の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに結合タンパク質が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因により変動し得る。治療的有効量はまた、結合タンパク質のいずれかの毒性または有害な影響よりも、治療上有益な効果が上回るものである。がんの場合、治療的有効量の結合タンパク質は、がん細胞の数を低減させ;初期の腫瘍のサイズを低減させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度まで遅らせ、一部の例では、停止させ);腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度まで遅らせ、一部の例では、停止させ);腫瘍成長もしくは腫瘍の進行をある程度まで阻害するか、もしくは遅延させ;及び/またはがんに関連する症状のうちの1つ以上を軽減し得る。結合タンパク質が成長を防止し及び/または既存のがん細胞を死滅させ得る限度において、それは、細胞増殖抑制及び/または細胞毒性であってよい。がん治療法では、in vivoでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(TTP)、奏効率(RR)、奏効期間、及び/または生活の質を評価することにより測定することができる。
【0050】
ヒト結合タンパク質
本開示は、「ヒト」結合タンパク質に関する。一例では、本開示の「ヒト」結合タンパク質は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基、例えば、in vitroでの(タンパク質の少数の残基における、例えば、タンパク質の残基のうちの1、2、3、4、または5における、保存的置換または変異を含む特定の変異での)ランダムに導入される変異または部位特異的変異、を含み得る。これらの「ヒト結合タンパク質」は、必ずしもヒトの免疫応答の結果として生成される必要はなく、むしろ、それらは、組み換え手段を使用して(例えば、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングして)、及び/またはヒト抗体定常領域及び/またはヒト抗体可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)により、及び/または(例えば、米国特許第5,565,332号に記載されるような)ガイド選択を使用して、生成することができる。この用語は、そのような抗体の親和性成熟形態も包含する。一例では、用語は、ヒト抗体を包含する。
【0051】
モノクローナル抗体は、本開示により企図される結合タンパク質の別の例示的な形態である。「モノクローナル抗体」または「MAb」という用語は、同じ抗原(複数可)に、例えば、抗原内の同じエピトープに、結合することが可能な均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源またはそれが作製される方法に関して限定されるものではない。
【0052】
本開示はまた、例えば、WO2000/34317及びWO2004/108158に記載されるような、脱免疫化抗体またはその抗原結合フラグメントを企図する。脱免疫化抗体及びフラグメントは、1つ以上のエピトープ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープが除去され(すなわち、変異し)、それにより、対象が抗体またはタンパク質に対する免疫応答を引き起こす可能性が低減される。例えば、本開示の抗体は、1つ以上のB細胞またはT細胞エピトープを同定するために分析され、エピトープ内の1つ以上のアミノ酸残基を変異させて、それにより、抗体の免疫原性を低減させる。
【0053】
抗体フラグメント
単一ドメイン抗体
一部の例では、本開示の結合タンパク質は、単一ドメイン抗体(「ドメイン抗体」または「dAb」という用語と互換的に使用される)であるか、またはそれを含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部を含む単一のポリペプチド鎖である。
【0054】
一本鎖Fv(scFv)フラグメント
当業者は、scFvが、単一のポリペプチド鎖中のV領域及びV領域、ならびにscFvが抗原結合のための所望の構造形成することができる(すなわち、単一のポリペプチド鎖のV及びVが互いに会合してFvを形成する)V及びV間のポリペプチドリンカーを含むことを認識するであろう。一本鎖可変フラグメントは、完全な抗体分子に見出される定常Fc領域を欠き、それにより、免疫原性を低減している可能性がある。例示的なリンカーは、12個を超えるアミノ酸残基を含み、(GlySer)は、scFvにとってより好ましいリンカーのうちの1つである。
【0055】
本開示はまた、ジスルフィドで安定化されたFv(またはdiFvもしくはdsFv)を企図し、単一のシステイン残基がVのFR及びVのFRに導入され、システイン残基がジスルフィド結合で連結されて、安定なFvを生成する。
【0056】
別の例では、本開示は、二量体scFv(di-scFV)、すなわち、例えば、ロイシンジッパードメイン(例えば、FosまたはJunに由来する)による非共有結合または共有結合により連結されている2つのscFv分子を含むタンパク質、または三量体scFV(tri-scFv)を包含する。別の例では、2つのscFvは、例えば、米国特許公開出願第20060263367号に記載されるように、両方のscFvが形成及び抗原への結合を可能にするのに十分な長さのペプチドリンカーにより連結されている。
【0057】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
一部の例では、本開示の抗原結合フラグメントは、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはWO98/044001及び/またはWO94/007921に記載されるような高次タンパク質複合体であるか、またはそれを含む。
【0058】
例えば、ダイアボディは、2つの関連ポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、各ポリペプチド鎖は、構造V-X-VまたはV-X-Vを含み、Xは、単一のポリペプチド鎖のV及びVが会合する(もしくはFvを形成する)ことを可能にする不十分な残基を含むリンカーであるか、または存在せず、1つのポリペプチド鎖のVは、他のポリペプチド鎖のVに結合して、抗原結合部位を形成し、すなわち、1つ以上の抗原に特異的に結合することが可能なFv分子を形成する。
【0059】
免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメント
本開示の結合タンパク質の例は、T細胞受容体または重鎖免疫グロブリン(例えば、IgNAR、ラクダ抗体)などの免疫グロブリンの可変領域を含むタンパク質(例えば、抗体模倣物)である。
【0060】
V様タンパク質
本開示の結合タンパク質の例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は、組み合わせて、抗体のFvモジュールに類似する構造になる2つのVドメインを有する。Novotny et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88:8646-8650,1991は、T細胞受容体の2つのVドメイン(アルファ及びベータと称される)が、融合して一本鎖ポリペプチドとして発現させることができる方法、さらに、抗体scFvに全く類似する疎水性を低減するように表面の残基を変更する方法について記載する。2つのV-アルファ及びV-ベータドメインを含む一本鎖T細胞受容体または多量体T細胞受容体の産生について記載する他の刊行物としては、WO1999/045110またはWO2011/107595が挙げられる。
【0061】
抗原結合ドメインを含む他の非抗体タンパク質としては、V様ドメインを有するタンパク質が挙げられ、これは一般に、単量体である。そのようなV様ドメインを含むタンパク質の例としては、CTLA-4、CD28、及びICOSが挙げられる。そのようなV様ドメインを含むタンパク質のさらなる開示は、WO1999/045110に含まれる。
【0062】
アフィボディ
さらなる例では、本開示の結合タンパク質は、アフィボディである。アフィボディは、抗原に結合するように操作することができるStaphylococcus aureusのプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来する足場である。Zドメインは、およそ58アミノ酸の3本ヘリックス束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化により生成されている。さらなる詳細については、EP1641818を参照のこと。
【0063】
アビマー
さらなる例では、本開示の結合タンパク質は、アビマーである。アビマーは、Aドメインスキャフォールドファミリーに由来するマルチドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは、定義されたジスルフィド結合構造を採用する。多様性は、Aドメインのファミリーにより示される天然の変形形態をシャッフリングすることにより生成される。さらなる詳細については、WO2002/088171を参照のこと。
【0064】
他の結合タンパク質
本開示に包含される結合タンパク質の他の例としては、以下が挙げられる:
(i)アフィマー及びアドヒロンなどのペプチドディスプレイ足場(WO2009136182;Tiede et al.(2014)Protein Eng Des Sel 27,145-155);ならびに、
(ii)センチリン(centyrins)(Jacobs et al.(2012)Protein Eng Des Sel.25,107-117;Diem et al.(2014)Protein Eng Des sel.27,49-429)。
【0065】
ラムダ骨髄腫抗原(LMA)結合タンパク質
本明細書で定義される結合タンパク質は、ラムダ骨髄腫抗原(LMA)に結合するか、または特異的に結合する抗原結合ドメインを有する。一例では、本明細書で定義される結合タンパク質は、遊離軽鎖よりもLMAに優先的に結合する抗原結合ドメインを有する。一例では、本開示による抗LMA結合タンパク質は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8または配列番号13に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号13に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。従って、別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8に示されるようなCDR3を有するVを含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号13に示されるようなCDR3を有するVを含む。これらの例の実施形態では、LMA結合タンパク質は、LMAアイソタイプ2及びLMAアイソタイプ3と結合する。
【0066】
別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号4に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むVを含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号9または配列番号14に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むVを含む。例えば、Vは、配列番号9に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号14に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号5に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号10または配列番号15に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号10に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号15に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。従って、別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号4に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むV及び配列番号10または配列番号15で示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むVを含む。例えば、Vは、配列番号4に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号10に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号4に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。これらの例では、V及び/またはVは、列挙された配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり得る。
【0067】
別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むVを含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号9または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むVを含む。例えば、Vは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。従って、別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むV;ならびに配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むVを含む。例えば、Vは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。これらの例では、結合タンパク質は、LMAと特異的に結合する。例えば、結合タンパク質は、遊離ラムダ軽鎖よりも優先的にLMAと結合し得る。
【0068】
別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号36または配列番号41に示されるようなCDR1、配列番号37または配列番号42に示されるようなCDR2、及び配列番号38または配列番号43に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。例えば、抗LMA結合タンパク質は、配列番号36に示されるようなCDR1、配列番号37に示されるようなCDR2、及び配列番号38に示されるようなCDR3を有するVを含み得る。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号41に示されるようなCDR1、配列番号42に示されるようなCDR2、及び配列番号43に示されるようなCDR3を有するVを含み得る。従って、例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号36または配列番号41に示されるようなCDR1、配列番号37または配列番号42に示されるようなCDR2、及び配列番号38または配列番号43に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。例えば、抗LMA結合タンパク質は、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号36に示されるようなCDR1、配列番号37に示されるようなCDR2、及び配列番号38に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号41に示されるようなCDR1、配列番号42に示されるようなCDR2、及び配列番号43に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。
【0069】
別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号66または配列番号71に示されるようなCDR1、配列番号67または配列番号72に示されるようなCDR2、及び配列番号68または配列番号73に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。例えば、抗LMA結合タンパク質は、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号66に示されるようなCDR1、配列番号67に示されるようなCDR2、及び配列番号68に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。別の例では、抗LMA結合タンパク質は、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)、ならびに配列番号71に示されるようなCDR1、配列番号72に示されるようなCDR2、及び配列番号73に示されるようなCDR3を含むVを含み得る。これらの例の実施形態では、LMA結合タンパク質は、LMAアイソタイプ1、2及びアイソタイプ3と結合する。
【0070】
別の例では、Vは、配列番号34または配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号39、44、69、または74のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号34または配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号39、44、69、または74のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号39に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号44に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号39に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号44に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号69に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号64に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号74に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号5に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号10または配列番号15に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号5に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号10に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号5に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号15に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号40または配列番号45に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号40に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号34に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号10または配列番号45に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号65に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号70または配列番号75に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号65に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号70に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号65に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号75に示される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み得る。これらの例では、V及び/またはVは、列挙された配列番号と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり得る。別の例では、Vは、配列番号34または配列番号64に示されるアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号39、44、69、または74のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号34または配列番号64に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号39、44、69、または74のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。例えば、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み得、Vは、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含み得る。別の例では、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号69に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号74に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号40または配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号10または配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号70または配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号70に示されるアミノ酸配列を含む。別の例では、Vは、配列番号65に示されるアミノ酸配列を含み、Vは、配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。
【0071】
一例では、上で言及された結合タンパク質は、抗体である。例えば、本開示は、CDRの上で言及された組み合わせを有する抗体を包含する。例えば、本開示の抗体は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有する重鎖可変領域(V)を含み得る。別の例では、抗体は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8または配列番号13に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗体は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。別の例では、抗体は、配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号13に示されるようなCDR3を有する軽鎖可変領域(V)を含む。従って、別の例では、抗体は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号8に示されるようなCDR3を有するVを含む。別の例では、抗体は、配列番号1に示されるようなCDR1、配列番号2に示されるようなCDR2、及び配列番号3に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号6に示されるようなCDR1、配列番号7に示されるようなCDR2、及び配列番号13に示されるようなCDR3を有するVを含む。これらの例の実施形態では、抗体は、LMAアイソタイプ2及びアイソタイプ3と結合する。
【0072】
別の例では、本開示に包含される結合タンパク質は、上で例示されたV及びVの組み合わせのCDRを含み得る。例では、CDRは、Kabatを使用して定義される。別の例では、CDRは、IMGTを使用して定義される。
【0073】
上で言及された%配列同一性を有する結合タンパク質に言及すると、種々の例では、本開示に包含される結合タンパク質は、言及された配列識別子番号と比較して、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのアミノ酸置換を有し得る。例示的な置換としては、以下の表Aに記載されるような保存的アミノ酸置換が挙げられる。
【表A】
【0074】
「4G7」という用語は、本開示の文脈で使用され、以下に示されるアミノ酸配列を含むエピトープと結合するヒト遊離ラムダ軽鎖に対するモノクローナル抗体を指す:
-配列番号91(KADGSPVK)及び93(SHR)(アイソタイプ1)、
-配列番号92(KADSSPVK)及び93(SHR)(アイソタイプ2)、または
-配列番号92(KADSSPVK)及び94(SHK)(アイソタイプ3)。
4G7は、種々の供給元(例えば、Abcam,Cambridge,United Kingdom,#ab54380;Yamasa Corporation,Choshi,Japan、#7642)から市販されている。
【0075】
一例では、本開示に包含される抗LMA結合タンパク質は、4G7と同じエピトープと結合し得る。例えば、本開示に包含される抗LMA結合タンパク質は、以下に示されるアミノ酸配列を含むエピトープと結合し得る:
-配列番号91及び93(ラムダアイソタイプ1)、
-配列番号92及び93(ラムダアイソタイプ2)、または
-配列番号92及び94(ラムダアイソタイプ3)。
【0076】
別の例では、本開示に包含される抗LMA結合タンパク質は、以下に示されるアミノ酸配列を含むエピトープと結合し:
-配列番号91及び93(ラムダアイソタイプ1)、
-配列番号92及び93(ラムダアイソタイプ2)、または
-配列番号92及び94(ラムダアイソタイプ3)、
可溶性ラムダ軽鎖には結合しない。
【0077】
別の例では、結合タンパク質は、配列番号92及び93(ラムダアイソタイプ2)ならびに配列番号92及び94(ラムダアイソタイプ3)と結合する。
【0078】
種々のラムダ軽鎖アイソタイプが報告されており、これらのアイソタイプは、分子の定常領域におけるアミノ酸の相違で定義される。
【0079】
様々な頻度のラムダ軽鎖アイソタイプが表される。例えば、多発性骨髄腫の対象では、約14%が、アイソタイプ1を発現し、約64%が、アイソタイプ2を発現し、約23%が、アイソタイプ3を発現する。従って、一部の例では、1つ以上または全てのラムダ軽鎖アイソタイプと結合する本開示による抗体を投与することが望ましい場合がある。一例では、結合タンパク質は、ラムダアイソタイプ2及びアイソタイプ3と結合する。一例では、結合タンパク質は、アイソタイプ1に結合しない。
【0080】
別の例では、結合タンパク質は、4G7と比較して製造性が向上している。
【0081】
製造性の向上は、脱アミド化部位、アスパルタート異性化部位、酸化部位、例えば、メチオニン及びトリプトファン、遊離システインチオール基、N&O-グリコシル化部位の数の低減、C末端リジンの存在、及び/または等電点に関連する翻訳後修飾または化学的安定性の向上を包含する。
【0082】
一例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、より少ないアスパラギンをV及び/またはVに含む。
【0083】
一例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、より少ないメチオニンをV及び/またはVに含む。
【0084】
一例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、より少ないトリプトファンをV及び/またはVに含む。
【0085】
一例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、より少ないアスパラギン酸をV及び/またはVに含む。
【0086】
一例では、結合タンパク質の物理的安定性は、4G7よりも大きい。
【0087】
物理的安定性は、溶液中での凝集の傾向を含み得る。「凝集」という用語は、本開示の文脈では、単離、精製、及び製剤プロセスに、細胞培養及び発酵から複数の環境で発生し得るタンパク質の自己会合を指すために使用される。例えば、「凝集」という用語は、封入体の形成;細胞分画後の「不溶性」分画へのタンパク質の蓄積;試料中の濁りの出現、タンパク質沈殿、もしくは粒子の形成;または、とりわけ、小さな可溶性オリゴマーの形成を説明する時に使用することができる。
【0088】
従って、上で言及された例では、結合タンパク質の物理的安定性は、溶液中の物理的安定性に基づくことができ、溶液からの結合タンパク質の沈殿は、結合タンパク質が不安定になっていることを示す。物理的安定性を評価するために、本開示による結合タンパク質または4G7を含む溶液は、4℃でインキュベートし、2週間、4週間、12週間、6ヶ月、及び12ヶ月での沈殿について視覚的に評価することができる。
【0089】
別の例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、ヒト対象において免疫原性が低減している。例えば、結合タンパク質は、免疫原性が酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定される時、4G7と比較して免疫原性が低減している可能性がある。別の例では、結合タンパク質は、免疫原性が表面プラズモン共鳴を介して測定される時、4G7と比較して免疫原性が低減している可能性がある。
【0090】
別の例では、結合タンパク質は、4G7よりもLMAに対してより高い特異性を有する。
【0091】
別の例では、結合タンパク質は、4G7と比較して、より低い交差反応性(すなわち、結合タンパク質が異なるタンパク質上の類似の抗原部位と反応する能力)を有する。この例では、結合タンパク質の交差反応性は、様々な方法を使用して測定することができる。一例では、交差反応性は、ELISAを介して評価される。
【0092】
別の例では、結合タンパク質は、4G7よりもLMAに対してより高い結合親和性を有する。
【0093】
別の例では、結合タンパク質は、軽鎖と比較して4G7よりも、LMAに対してより高い結合親和性を有する。
【0094】
上で言及される例では、LMAに対する結合タンパク質の親和性は、種々の方法を使用して測定することができる。一例では、LMAに対する結合タンパク質の解離定数(K)または会合定数(K)または平衡定数(K)が決定される。一例では、結合タンパク質に対するこれらの定数は、放射標識または蛍光標識LMA結合アッセイにより測定される。このアッセイは、非標識LMAの滴定シリーズの存在下で、最小濃度の標識LMAで結合タンパク質を平衡させる。結合していないLMAを除去するために洗浄した後、標識の量が決定される。
【0095】
親和性測定は、以下の抗体反応に対する標準的手法により決定することができる、例えば、イムノアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka Curr.Opin.Biotechnol 11:54,2000;Englebienne Analyst.123:1599,1998)、等温滴定熱量測定(ITC)、または当該技術分野で既知の他の速度論的相互作用アッセイ。
【0096】
一例では、定数は、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより、例えば、固定化LMAを用いるBIAコア表面プラズモン共鳴(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用することにより、測定される。例示的なSPR法は、米国特許第7,229,619号に記載される。
【0097】
他の例では、LMAに対する結合タンパク質の親和性は、等温滴定マイクロ熱量測定を使用して測定することができる。
【0098】
結合タンパク質の生成
組み換え発現
一例では、本明細書に記載の結合タンパク質は、ペプチドまたはポリペプチドである(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントである)。一例では、結合タンパク質は、組み換えのものである。
【0099】
組み換えペプチドまたはポリペプチドの場合、それをコードする核酸を発現ベクターにクローン化することができ、次に、これを、別途免疫グロブリンまたは抗体タンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、E. coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、もしくは骨髄腫細胞にトランスフェクトする。
【0100】
好適な分子クローニング技術は、当該技術分野で既知であり、例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)またはSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載される。多種多様なクローニング及びin vitro増幅法が、組み換え核酸の構築に適する。組み換え抗体の生成方法も当該技術分野で既知である。米国特許第4,816,567号または米国特許第5,530,101号を参照のこと。
【0101】
単離後、さらなるクローニング(DNAの増幅)または無細胞系もしくは細胞における発現のための発現構築物または発現ベクター中のプロモーターに作動可能に連結される核酸が挿入される。従って、本開示の別の例は、本開示の単離核酸及び1つ以上の追加のヌクレオチド配列を含む発現構築物を提供する。適切には、発現構築物は、当該技術分野で理解されるように、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母、または細菌人工染色体の形態であるか、またはその遺伝子成分を含む。発現構築物は、細菌または他の宿主細胞における単離核酸の維持及び増殖、組み換えDNA技術による操作、及び/または本開示の核酸もしくは結合タンパク質の発現に適し得る。
【0102】
細胞内での発現のための多くのベクターが利用可能である。ベクター成分は一般に、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:シグナル配列、結合タンパク質をコードする配列(例えば、本明細書に提供される情報から得られる)、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列。例示的なシグナル配列としては、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、もしくは熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー、もしくは酸性ホスファターゼリーダー)または哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が挙げられる。
【0103】
哺乳動物細胞で活性のある例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、小さな核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンまたは抗体プロモーターまたはそれらの活性フラグメントを含むハイブリッド制御要素が挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)により形質転換されるサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(懸濁培養液中で成長用にサブクローン化された293もしくは293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0104】
酵母細胞、例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、及びS.pombeを含む群より選択される酵母細胞における発現に適する代表的なプロモーターは、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、またはTEF1プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0105】
単離核酸またはそれを含む発現構築物を発現のために細胞に導入するための手段は、当業者らに既知である。所与の細胞に使用される技術は、既知の良好な技術に依存する。細胞に組み換えDNAを導入する手段は、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、例えば、リポフェクタミン(Gibco,MD,USA)及び/またはセルフェクチン(Gibco,MD,USA)を使用することによる、リポソームを介したトランスフェクション、PEG媒介性DNA取り込み、エレクトロポレーション、とりわけ、例えば、DNAコーティングされたタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.,WI,USA)を使用することによる微粒子衝突を含む。
【0106】
結合タンパク質(例えば、抗体または抗原結合フラグメント)を生成するために使用される宿主細胞は、使用される細胞型に応じて、様々な培地で培養されてもよい。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPML-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、哺乳動物細胞を培養するのに適する。本明細書で考察される他の細胞タイプを培養するための培地は、当該技術分野で既知である。
【0107】
当業者は、本開示が、本開示の結合タンパク質(例えば、ペプチドまたはポリペプチド結合タンパク質または抗体もしくはその抗原結合フラグメント)をコードする単離核酸も提供することを上述の説明から理解するであろう。
【0108】
本開示はまた、プロモーターに作動可能に連結している本開示の単離核酸を含む発現構築物を提供する。一例では、発現構築物は、発現ベクターである。
【0109】
一例では、本開示の発現構築物は、プロモーターに作動可能に連結されているポリペプチド(例えば、Vを含む)をコードする核酸及びプロモーターに作動可能に連結されている別のポリペプチド(例えば、Vを含む)をコードする核酸を含む。
【0110】
本開示はまた、本開示による発現構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0111】
本開示はまた、本開示の結合タンパク質を発現する単離細胞、または結合タンパク質を発現するように遺伝子改変された組み換え細胞を提供する。
【0112】
タンパク質の単離
本開示による結合タンパク質の精製方法は、当該技術分野で既知である。ペプチドまたはポリペプチドが培地に分泌される場合、そのような発現系由来の上清は、最初に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮することができる。タンパク質分解を阻害するためにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、外来性夾雑物の成長を防止するために抗生物質が含まれてもよい。
【0113】
細胞から調製される結合タンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーもしくはプロテインGクロマトグラフィー)、または上述の任意の組み合わせを使用して精製することができる。これらの方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、WO99/57134またはEd Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載される。
【0114】
コンジュゲート
一例では、本開示の結合タンパク質は、別の化合物にコンジュゲートされる。結合タンパク質は、化合物に直接的または間接的に結合することができる(例えば、間接的結合の場合にリンカーを含み得る)。化合物の例としては、放射性同位元素(例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90、またはインジウム-111)、検出可能な標識(例えば、フルオロフォアまたは蛍光ナノクリスタルまたは量子ドット)、治療化合物(例えば、化学療法的または抗炎症性)、コロイド(例えば、金)、毒素(例えば、リシンまたは破傷風トキソイド)、核酸、対象において化合物の半減期を延長する薬剤(例えば、ポリエチレングリコールまたはこの活性を有する他の水溶性ポリマー)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
薬物または他の小分子医薬品を抗体に付着させるための方法は、周知であり、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート;スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート;4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-(2-ピリジルジチオ)トルエン;スルホスクシンイミジル-6-[αメチル∀-(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノアート;N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオナート;スクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノアート;スルホスクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノアート;3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマンズ試薬、ジクロロトリアジン酸、S-(2-チオピリジル)-L-システインなどの二官能性化学リンカーの使用を含み得る。さらなる二官能性リンカー分子は、例えば、米国特許第5,349,066号、同第5,618,528号、同第4,569,789号、同第4,952,394号、及び同第5,137,877号に記載される。
【0116】
リンカーは、切断可能または切断不可能であり得る。非常に安定なリンカーは、循環中に脱落するペイロードの量を低減させて、それにより、安全性プロファイルを改善し、より多くのペイロードが標的細胞に到着するようにし得る。リンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾン、またはペプチド(切断可能)、またはチオエーテル(切断不可能)を含む化学モチーフに基づき得、標的細胞への活性薬剤の分布及び送達を制御する。切断可能及び切断不可能なタイプのリンカーは、前臨床及び臨床試験で安全であることが証明されている(例えば、カテプシンにより切断可能な酵素感受性リンカーを含むブレンツキシマブベドチン、及び安定した切断不可能なリンカーを含むトラスツズマブエムタンシンを参照のこと)。一例では、リンカーは、Edman分解により切断可能なペプチドリンカーである(Bachor,et al.,Molecular diversity,17(3):605-11(2013))。
【0117】
一例では、結合タンパク質は、ナノ粒子またはマイクロ粒子にコンジュゲートされる(例えば、Kogan et al.,Nanomedicine(Lond).2:287-306,2007に概説されるような)。ナノ粒子は、金属ナノ粒子であってよい。粒子は、ポリマー粒子、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、ならびに当該技術分野で既知の他の担体及び送達ビヒクルであり得る。
【0118】
本開示の結合タンパク質にコンジュゲートすることができる一部の例示化合物は、表Bに列挙される。
【表B】
【0119】
一例では、本開示の結合タンパク質は、化学療法剤にコンジュゲートされる。
【0120】
組成物
適切には、組成物または対象に本開示による結合タンパク質を投与するための方法では、結合タンパク質は、当該技術分野で理解されるように、薬学的に許容される担体と組み合わされる。一例では、本開示は、薬学的に許容される担体と組み合わされた本開示の結合タンパク質を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。別の例では、本開示は、対象への投与前に、本明細書に開示の結合タンパク質と組み合わせるか、または混合するのに適する薬学的に許容される担体を含むキットを提供する。この例では、キットはさらに、使用説明書を含んでもよい。
【0121】
一般論として、「担体」は、対象、例えば、ヒト対象、に安全に投与され得る固体もしくは液体の充填剤、結合剤、希釈剤、カプセル化物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁剤、コーティング、または滑沢剤を指すために使用される。特定の投与経路に応じて、以下に記載されるように、当該技術分野で既知の様々な許容可能な担体が使用されてもよい、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.N.J.USA,1991)。
【0122】
例えば、好適な担体は、糖(例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース)、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油を含む油、合成油及び合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリド、低級アルコール、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、ステアリン酸ナトリウムまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、等張食塩水、ならびに発熱性物質不含水を含む群より選択されてもよい。一例では、担体は、HOではない。
【0123】
一例では、担体は、非経口投与と適合性があるか、またはそれに適する。非経口投与は、消化管を介さない投与経路を含む。非経口投与の例としては、注射、注入などが挙げられる。注射による投与の例としては、静脈内、動脈内、筋肉内、及び皮下注射が挙げられる。別の例では、組成物は、皮内、筋肉内、または皮下に送達され得るデポーまたは徐放性製剤を介して送達することができる。
【0124】
一例では、本明細書で開示のLMA結合タンパク質は、がんの部位(複数可)を検出するのに利用される。方法は通常、それを必要とする対象に、画像診断または核医学技術を使用して検出可能な薬剤を有効量投与すること、及び薬剤を検出することを含む。そのような方法では、薬剤は通常、LMA結合タンパク質にコンジュゲートされるか、またはLMA結合タンパク質とコンジュゲートされる送達ビヒクルにカプセル化される。画像診断または核医学技術は、例えば、PET-CT、骨スキャン、MRI、CT、心エコー検査、超音波、及びX線であり得る。
【0125】
一例では、結合タンパク質及びそれを含む組成物は、LMA発現がんなどのLMA発現細胞の異常増殖を特徴とする状態の処置のための薬剤の製造に使用することができる。別の例では、本開示は、状態の処置に使用される結合タンパク質またはそれを含む組成物に関する。処置されるべき状態の例は、以下で考察される。
【0126】
処置されるべき状態
一例では、本開示は、LMA発現がんを処置する方法を包含し、方法は、本明細書で定義される抗LMA結合タンパク質を投与することを含む。例えば、本開示は、悪性B細胞がLMAを発現するB細胞悪性腫瘍を処置する方法を包含する。別の例では、本開示は、多発性骨髄腫及び関連病状を処置する方法を包含する。「多発性骨髄腫」または「骨髄腫」という用語は、本開示の文脈では、形質細胞のがんを指すために使用される。本開示の文脈では、これらの用語は、分泌性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、軽鎖のみの骨髄腫、くすぶり型骨髄腫、及び関連病状を包含する。関連病状の例としては、形質細胞腫、アミロイドーシス、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症がある。一例では、多発性骨髄腫は、ラムダ型多発性骨髄腫である。
【0127】
従って、一例では、本開示は、アミロイドーシスを処置する方法を包含する。一例では、そのような方法は、遊離ラムダ軽鎖に対して高い親和性を有する本明細書に開示の結合タンパク質を投与することを含む。例えば、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号36に示されるようなCDR1、配列番号37に示されるようなCDR2、及び配列番号38に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号39に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号66に示されるようなCDR1、配列番号67に示されるようなCDR2、及び配列番号68に示されるようなCDR3を有するV、ならびに配列番号71に示されるようなCDR1、配列番号72に示されるようなCDR2、及び配列番号73に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号74に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有するV、ならびに配列番号66に示されるようなCDR1、配列番号67に示されるようなCDR2、及び配列番号68に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。
【0128】
多発性骨髄腫を有する対象は、種々の対象集団に特徴付けることができる。例示的な集団は、(Rajkumar et al.2011)に記載される。
【0129】
一例では、対象の多発性骨髄腫は、進行性疾患として特徴付けることができる(Rajkumar et al.2011)。換言すれば、本開示の方法は、対象における進行性多発性骨髄腫の処置に関する。「進行性疾患」の例示的な指標としては、以下のうちのいずれか1つの、最小応答値からの約25%の増加を含む:血清M成分(0.5g/dL以上の絶対増加)、及び/または尿M成分(絶対増加は、200mg/24時間以上でなければならない)。他の例示的な指標は、多発性骨髄腫のみに起因し得る新たな骨病変もしくは軟部組織形質細胞腫の明確な進行または既存の骨病変もしくは軟部組織形質細胞腫のサイズの明確な増加;高カルシウム血症の進行(11.5mg/dLを超える補正された血清カルシウム)を含む。一例では、対象の多発性骨髄腫は、再発しており、進行性疾患を特徴とする。この例では、対象の多発性骨髄腫は、治療法にも不応であり得る。
【0130】
一例では、対象の多発性骨髄腫が再発している。「再発性骨髄腫」は、進行し、サルベージ療法の開始を必要とするが、いずれかの「原発性難治性骨髄腫」について基準を満たさない、以前に処置された骨髄腫を指すために使用される。
【0131】
別の例では、対象は、原発性難治性骨髄腫を有する。「原発性難治性骨髄腫」は、いかなる治療でも最小限の応答以上を達成したことがない患者において不応性の疾患を指すために使用される。
【0132】
別の例では、対象は、難治性骨髄腫を有する。「難治性骨髄腫」という用語は、1次療法もしくはサルベージ療法中に不応性であるか、または最後の療法から60日以内に進行する疾患を指すために使用される。一例では、対象の多発性骨髄腫は、抗がん治療法に不応である。「難治性」という用語は、この文脈で、対象の多発性骨髄腫に対してもはや治療上有効ではない抗がん治療ラインを指すために使用される。例えば、本開示の方法により処置される対象は、少なくとも1つのプロテアソーム阻害剤に対して不応であり得る。「治療ライン」は、計画された処置プログラムの1つ以上のサイクルとして定義される。これは、単剤療法または併用療法の1つ以上の計画されたサイクル、及び計画された方法で投与された一連の処置で構成されてもよい。例えば、導入療法の計画された処置アプローチ、続く、自己由来幹細胞移植、続く、維持療法は、1つの治療ラインとみなされる。
【0133】
別の例では、対象は、少なくとも2つの以前の治療ラインに対して不応である。別の例では、対象は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つの以前の治療ラインに対して不応であってよい。
【0134】
別の例では、対象は、再発性及び難治性骨髄腫を有する。「再発性及び難治性骨髄腫」は、サルベージ療法中に不応性であるか、または疾患経過において進行する前のある時点で最小奏効(MR)以上を達成している患者の最後の治療から60日以内に進行する疾患を指すために使用される。
【0135】
一例では、本開示に従って処置される多発性骨髄腫は、最初の投与時に安定した疾患を特徴とする。換言すれば、対象は、最初の投与時にプラトー期にあり得る。安定した疾患の例示的な基準は、継続的な処置、骨髄腫の症状がほとんどないか、もしくは全くない、及び/または輸血の必要がないにもかかわらず、さらなる腫瘍退行なしのMタンパク質の安定化を含み得る(Blade et al.1998)。
【0136】
別の例では、本開示の方法は、B細胞リンパ腫及びマクログロブリン血症を処置するために使用することができる。
【0137】
別の例では、本開示の方法は、POEMSを処置するために使用することができる。本明細書で使用される場合、「POEMS症候群」は、神経を損傷する珍しい血液障害であり、身体の多くの他の部分に影響を与える。「POEMS」は、これらの徴候及び症状:多発性神経障害:脚の及び手の経時的な麻痺、刺痛、及び衰弱ならびに呼吸困難;臓器肥大症:脾臓、肝臓、またはリンパ節の肥大;内分泌障害:甲状腺機能低下(甲状腺機能亢進症)、糖尿病、性的問題、疲労、手足の腫れ、ならびに代謝及び他の必須機能の問題をもたらし得る異常なホルモンレベル;モノクローナル血漿増殖性障害:血流に見出すことができるタンパク質を産生する異常骨髄細胞(形質細胞);皮膚の変化:皮膚上の通常より多くの色、場合により、厚い皮膚、ならびに顔及び/または脚の毛の増加を表す。
【0138】
別の例では、本明細書で定義される結合タンパク質は、自己免疫障害を処置するために対象に投与することができる。一例では、自己免疫障害は、LMAを膜遊離軽鎖(mFLC)として発現する形質細胞前駆体の異常な増殖を特徴とする。例えば、本明細書で定義される結合タンパク質は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、真性糖尿病、多発性硬化症、クローン病、免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、自己免疫性じんま疹、セリアック病、疱疹性皮膚炎、急性リウマチ熱、グレーブス病、筋無力症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、連鎖球菌後糸球体腎炎、接触皮膚炎、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、抗好中球細胞質抗体(ANCA)による血管炎、結節性多発性動脈炎、自己免疫性肝炎、及び原発性胆汁性肝硬変などの自己免疫障害を処置するために対象に投与することができる。例えば、本開示の方法は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、真性糖尿病、及び多発性硬化症を処置するために使用することができる。従って、一例では、本開示の方法は、関節リウマチを処置するために使用することができる。別の例では、本開示は、全身性エリテマトーデスを処置するために使用することができる。別の例では、本開示による結合タンパク質は、真性糖尿病を処置するために使用することができる。別の例では、本開示による結合タンパク質は、多発性硬化症を処置するために使用することができる。
【0139】
別の例では、本開示による結合タンパク質は、対象におけるラムダ遊離軽鎖レベルを低減させる(すなわち、細胞膜上で発現しない対象におけるラムダ軽鎖、例えば、血清中のラムダ軽鎖、の量を低減させる)ために使用することができる。そのような方法は、遊離ラムダ軽鎖に対して高い親和性を有する本明細書に開示の結合タンパク質を投与することを含む。例えば、配列番号31に示されるようなCDR1、配列番号32に示されるようなCDR2、及び配列番号33に示されるようなCDR3を有するV;ならびに配列番号36に示されるようなCDR1、配列番号37に示されるようなCDR2、及び配列番号38に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号39に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号66に示されるようなCDR1、配列番号67に示されるようなCDR2、及び配列番号68に示されるようなCDR3を有するV、ならびに配列番号71に示されるようなCDR1、配列番号72に示されるようなCDR2、及び配列番号73に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号74に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質を投与することができる。別の例では、配列番号61に示されるようなCDR1、配列番号62に示されるようなCDR2、及び配列番号63に示されるようなCDR3を有するV、ならびに配列番号66に示されるようなCDR1、配列番号67に示されるようなCDR2、及び配列番号68に示されるようなCDR3を有するVを含む結合タンパク質を投与することができる。
【0140】
別の例では、本開示の方法は、遊離ラムダ軽鎖に対し低親和性を有する本開示の結合タンパク質と組み合わせて、遊離ラムダ軽鎖に対して高親和性を有する本開示の結合タンパク質を投与することにより、本明細書で開示のLMA発現がんまたは他の障害を処置することを包含する。例えば、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号74に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質と組み合わせて投与することができる。別の例では、配列番号64に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号74に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むV及び配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するVを有する結合タンパク質と組み合わせて投与することができる。
【0141】
本開示の方法の実施の一部として組み合わせた投与された抗体は、同時にまたは連続的に投与されてもよい。
【実施例
【0142】
実施例1:ラムダ多発性骨髄腫細胞上のラムダ骨髄腫抗原(LMA)
ラムダ多発性骨髄腫細胞の表面上のラムダ骨髄腫抗原(LMA)の存在を確認するために、ラムダベンスジョーンズタンパク質(BJP)に対するマウスモノクローナル抗体4G7を、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、及びウェスタンブロットアッセイに使用した。マウスモノクローナル抗体4G7は、全ての遊離ラムダ軽鎖BJP及びマウスモノクローナル抗体3D12と比較して3つの主要なラムダ軽鎖アイソタイプを包含した幅広いラムダヒト多発性骨髄腫細胞株に対して汎反応性を示した(表1及び表2)。その相互作用は、ラムダヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI8226の細胞表面上のラムダ軽鎖の存在を実証するために、IgG/ラムダではなく、ラムダ遊離軽鎖により阻害することができる。4G7はまた、フローサイトメトリー分析により決定されたCD38及びCD138に陽性であったラムダ多発性骨髄腫患者由来の骨髄単核細胞集団でLMAを検出した(表3)。エピトープ切除実験により、2つのペプチドがラムダ多発性骨髄腫細胞株上の4G7モノクローナル抗体エピトープの構成要素として同定された(図1)。
【表1】
【表2】
【表3】
【0143】
実施例2:ヒト抗LMA抗体の生成
Ig遊離ラムダ軽鎖及びラムダ骨髄腫抗原(LMA)陽性細胞株で、HuMAb-マウス(Medarex)を免疫した。LMA特異的候補を同定するためにELISAを使用して、Ig遊離ラムダ軽鎖及びIg結合ラムダ軽鎖への結合について、ヒト抗LMA抗体をスクリーニングした。ヒト抗LMA抗体を精製し、フローサイトメトリーを使用してLMA陽性細胞株への結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用してIg遊離ラムダ軽鎖に対する親和性を特徴付けた。同定されたヒト抗LMA抗体候補は、1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、18F9であった。
【0144】
実施例3:ヒト抗LMA抗体は、ラムダ軽鎖と結合する
ラムダ軽鎖に対する抗LMA抗体の結合親和性を決定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)実験を実施した。抗ヒトIg軽鎖をBIACORE CM5チップ上に固定化し、これを使用してヒト抗LMA抗体候補(20μg/ml)を捕捉した。候補捕捉後に、試験されたラムダ軽鎖を注入し(20μL/min)、SPRを決定した(相対単位:RU)。
【0145】
ヒト抗LMA抗体(クローン1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、及び18F9)は、精製ラムダ軽鎖BJP(κBJP(KAP960M)ではない)(図2A)、カニクイザルラムダ軽鎖(CYNO1、CYNO3)、ならびにラムダ軽鎖がトランスフェクトされたHEK細胞、LP-1ラムダ軽鎖分離株(LP-1 ISO)、及びRPMI-8226ラムダ軽鎖分離株(RPMI-8226 ISO)の上清(図3)に対して高い選択的親和性を示した。同様に、ヒト抗LMA抗体(6A1、13H3、及び4A1)は、ラムダ軽鎖アイソタイプを発現するヒト多発性骨髄腫細胞株に対して高い選択的親和性を示し、カッパ軽鎖発現JJN3細胞株に対して高い選択的親和性を示さないが(図4)、クローン18E8、7F11、及び18F9は、市販のラムダ軽鎖(Bethyl)に対して選択的親和性を示した(図2B)。
【0146】
ヒト抗LMA抗体7F11は、試験された他のクローンと比較して精製ラムダ軽鎖BJPに対し、より低い選択的親和性を示し(図2A図2B)、カニクイザルラムダ軽鎖(CYNO1、CYNO3;図3)ならびにラムダ軽鎖がトランスフェクトされたHEK細胞、LP-1ラムダ軽鎖分離株(LP-1 ISO)、及びRPMI-8226ラムダ軽鎖分離株(RPMI-8226 ISO)由来の上清に対し低親和性を示した(図4)。
【0147】
実施例4:ヒト抗LMA抗体は、LMA陽性ヒト骨髄腫細胞株と結合する
異なるラムダアイソタイプのLMAを発現するヒト骨髄腫細胞株へのヒト抗LMA抗体の結合を決定するために、フローサイトメトリー分析を実施した。
【0148】
ヒト抗LMA抗体(50μg/mL)またはマウス抗LMA抗体4G7の溶液で、ヒト骨髄腫細胞株(5x10細胞)を染色した。ヒト抗LMA抗体(1A11、7F11、10B3、18E8、18E11、及び18F9)は、試験された全てのヒト骨髄腫細胞株(RPMI-8226(ラムダアイソタイプ2)、U266(ラムダアイソタイプ2)、JJN3(カッパ)、OPM-2(ラムダアイソタイプ3))の選択的染色を示し、染色されたJJN3(カッパ)細胞株を示さず(またはわずかに示し)(図5A)、KMS-18(ラムダアイソタイプ1)に対し弱い染色を示した(図5B)。ヒト抗LMA抗体(6A1、4A1、及び13H3)は、試験された全てのLMA陽性ヒト骨髄腫細胞株の弱い染色を示した。
【0149】
実施例5:抗体依存性細胞毒性(ADCC)
末梢血単核細胞(PMBC)調製物、またはPMBC調製物に含有されるナチュラルキラー(NK)細胞もしくは単球などの特定の細胞集団をADCCアッセイで分析した。血液をフィコールに重層し、勾配を遠心分離し、PBMCを勾配の界面から収集した。
【0150】
磁気標識抗体調製物(Miltenyi Biotec,Germany)を使用して生成されたPMBC調製物から特定の細胞集団を分離して、好ましくない細胞を除去した。エフェクター細胞及び標的細胞を混合し、10%のウシ胎児血清が補充されたRPMI中、37℃で16時間インキュベートした。放出された細胞内乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルを測定することにより、細胞溶解の程度を決定した(CytoTox-ONE,Homogenous Membrane Integrity Assay Kit;Promega,USA)。
【0151】
ヒト抗LMA抗体は、様々な程度のエフェクター機能を示し、クローン10B3は、試験された抗体中で最も強いADCCを示した(図6)。
【0152】
実施例6:補体依存性細胞毒性(CDC)
10%のウシ胎児血清が補充されたRPMI中で、補体(補体を含有する精製またはヒト血清のいずれか)及び抗体の存在下で、標的細胞を37℃で30分~12時間インキュベートした。放出された細胞内乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルを測定することにより、細胞溶解の程度を決定した(CytoTox-ONE Homogenous Membrane Integrity Assay Kit;Promega,USA)。Alamar Blue(Invitrogen,USA)を使用して、細胞の代謝状態を測定した。
【0153】
ヒト抗LMA抗体は、様々な程度のエフェクター機能を示し、クローン10B3は、試験された抗体中で最も強いCDC活性を示した(図7)。
【0154】
実施例7:遊離ラムダ軽鎖でなく、LMAについて選択的であるヒト抗LMA抗体7F11
ヒト抗LMA抗体10B3及び18E8は、可溶性ラムダ軽鎖及びLMA陽性細胞の両方に結合し、ラムダ発現RPMI8226細胞を標的とするために使用される時、ADCC及びCDCを促進し得る(表5)。興味深いことに、ヒト抗LMA抗体7F11は、LMA(膜結合軽鎖)について選択的であり、ラムダ発現RPMI8226細胞を標的とするために使用されるが、可溶性ラムダ軽鎖に結合しない時、ADCC及びCDCを促進し得る(表5)。7F11配列の分析により、遊離軽鎖と結合した他のヒト抗体と比較して、ユニークな重鎖CDRが明らかになった(図8)。10B3及び18E8と比較して、ヒト抗LMA抗体7F11間の異なる結合特性は、遊離ラムダ軽鎖を枯渇させ、及び/またはLMA陽性細胞を標的とするための選択的使用を可能にする。
【表5】
【0155】
表5は、7F11がラムダ軽鎖アイソタイプ1を発現する細胞に結合しないが、4G7、18E8、及び10B3が結合することを示す。
【0156】
実施例8:ヒト組織におけるヒト抗LMA抗体染色
ヒトLP-1(多発性骨髄腫)細胞、JJN3(形質細胞白血病)、ヒト扁桃腺標本、及びヒト小脳標本を、10B3及び7F11抗体と接触させて、抗体染色をHuIgG1-ラムダ由来の対照抗体染色と比較した。
【0157】
LP-1細胞は、LMAアイソタイプ1を発現する。10B3は、LP-1細胞を染色したが、7F11は、LP-1細胞を染色しなかった。これらの結果は、10B3がラムダアイソタイプ1と結合するが、7F11が結合しないことを示す上記の結果と一致する。JJN3細胞の染色が、10B3または7F11のいずれかを用いても観察されなかった。
【0158】
扁桃腺は、微生物及び環境の抗原が体内で管理される第1の部位であり、それ故、リンパ系細胞を収容する(リンパ系細胞の約55%はB細胞である)。濾胞胚中心、濾胞間胚中心、及び濾胞間領域の希少単核細胞の弱い染色~強い染色が、10B3及び7F11で観察された(図9及び図10;10B3で染色された、7F11よりも高い親和性を有するヒト扁桃腺)。これらの結果は、10B3及び7F11がともに、ヒトにおいてLMAを発現する細胞に結合し得ることを確認する。
【0159】
重要なことに、ヒト小脳の染色は、10B3または7F11では観察されなかった。ヒト小脳は、非特異的結合を評価するための効果的な対照であることが知られる。10B3及び7F11の両方での染色の不足は、LMAについてのこれらの抗体の特異性を強調し、in-vivoでの非特異的結合のリスクを低減する。
【0160】
実施例9:抗LMA抗体親和性
CM5センサーチップ上に抗ヒトFc IgGを固定化した(プロテインA;Fc2を抗体で捕捉し、Fc1をブランクとして設定した)。抗LMA抗体(7F11-VL1;10B3-VL1;10B3-VL2)を、チップ表面上に25℃で流し(ランニング緩衝液:1xHBS-EP+(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のP20、pH7.4)、Biacore 8kを使用して結合特性を記録した。アッセイの特徴は、表6にまとめられる。親和性測定値は、表7に示される。
【0161】
10B3-VL1は、全てのラムダ遊離軽鎖抗原に対して高親和性で結合した。7F11のみが、Sigma、134c及び788aのラムダ遊離軽鎖抗原に結合したが、親和性が低かった。これらの知見は、遊離ラムダ軽鎖ではなく、LMAについて7F11が選択的であることを示す実施例7と一致する。10B3-VL2は、ラムダ軽鎖に結合せず、この抗体のJ遺伝子への変更がラムダ遊離軽鎖に対する親和性をなくしたことを示唆した。
【0162】
重要なことに、試験された抗体のいずれについても、カッパ軽鎖への結合が観察されず、さらに、ラムダ軽鎖について、これらの抗体の特異性が確認された。
【0163】
要約すれば、7F11は、可溶性ラムダ軽鎖に結合する親和性がない/低いが、アイソタイプ2及び3のLMA+細胞株に結合する。対照的に、10B3-VL1は、全ての可溶性ラムダ軽鎖に高親和性で結合し、全てのLMA+細胞株(アイソタイプ1、2、及び3)に結合する。10B3-VL1とは異なるJ遺伝子を有する10B3-VL2は、可溶性ラムダ軽鎖には結合しない。
【表6】
【表7】
【0164】
広範に説明される本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、多数の変形及び/または修正が本開示に対して行われ得ることが当業者らにより理解されるであろう。それ故、本実施形態は、あらゆる点で、例示的であり、制約的ではないとみなされるべきである。
【0165】
上述の全ての刊行物は、全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、記事などの任意の考察は、本開示の文脈を提供することのみを目的とする。本出願の各請求項の優先日前に存在していたように、これらの問題のいずれかもしくはその全てが、従来技術のベースの一部を形成するか、または本開示に関連する分野における共通の一般知識であったことを認めるものと解釈すべきではない。
【0167】
本出願は、2018年2月20日に出願されたAU 2018900534の優先権を主張し、この全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
(参考文献)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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