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特許7490570抗微生物有効性の増強及び毒性の減少を有する亜塩素酸ナトリウム組成物
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  • 特許-抗微生物有効性の増強及び毒性の減少を有する亜塩素酸ナトリウム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】抗微生物有効性の増強及び毒性の減少を有する亜塩素酸ナトリウム組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/40 20060101AFI20240520BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240520BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240520BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20240520BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240520BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/10
A61P31/04
A61P27/02
A61P27/04
A01N59/00 A
A01P3/00
A01N25/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560205
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019029078
(87)【国際公開番号】W WO2019210041
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】62/663,886
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】バーク,ジェームス エー.
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,リチャード エス.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーン,コリン
(72)【発明者】
【氏名】アルマザン,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】エングレス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパラン,ラクシュミ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028857(JP,A)
【文献】特表2007-527390(JP,A)
【文献】特表2008-537954(JP,A)
【文献】特表平03-505203(JP,A)
【文献】特開平02-117611(JP,A)
【文献】特表2005-502392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A01N 25/00-25/34
A01N 59/00-59/26
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5以下であるpHを有する緩衝液と亜塩素酸ナトリウム水溶液とを混合してなる組織を殺菌するための、消毒組成物。
【請求項2】
塩素酸ナトリウムが、約800ppm~約8000ppmの量である、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項3】
界面活性剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の消毒組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン性界面活性剤である、請求項3に記載の消毒組成物。
【請求項5】
抗微生物活性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の消毒組成物。
【請求項6】
水溶液である、請求項1~5のいずれか一項に記載の消毒組成物。
【請求項7】
点眼剤、洗眼剤、又は眼浴剤の形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の消毒組成物。
【請求項8】
組織の殺菌のための医薬品の調製のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の消毒組成物の使用。
【請求項9】
記緩衝液が、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、水酸化ナトリウム、クエン酸又は水を含む、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項10】
前記亜塩素酸ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ギ酸ナトリウム、メタノールおよび塩素酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の追加の化合物をさらに含
前記緩衝液が、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、水酸化ナトリウム、クエン酸又は水を含む、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項11】
組織を殺菌するためのキットであって、
5以下であるpHを有する緩衝液と、前記緩衝液中で活性化される亜塩素酸ナトリウム水溶液とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外科的手技のための最も日常的な皮膚殺菌は、Betadine(登録商標)としても知られるポビドン-ヨードで準備することである。ポビドン-ヨードは、皮膚、創傷、及び眼表面等の種々の場面で、多くの種類の生物に対して有効な抗微生物剤である。
【0002】
しかしながら、特に眼表面で使用する場合、ポビドン-ヨードは、刺激性である。ポビドン-ヨードは、眼の不快感と視力喪失とを引き起こす。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示される実施態様は、組織を殺菌するための消毒組成物を含み、本組成物は、亜塩素酸ナトリウムを含む。亜塩素酸ナトリウムは、約800ppm~約8000ppmの量であり得る。亜塩素酸ナトリウムは、5以下又は最大約7.6までであるpHを有する緩衝液中で活性化することができる。組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤は、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)のうちの1つ以上であり得る。組成物は、抗微生物活性を有することができる。組成物は、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salve)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤を含む形態であり得る。組成物は、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(swab)、又は眼浴剤の形態であり得る。殺菌される組織は、皮膚、眼、創傷、又は切開部を含むことができる。殺菌される組織は、眼瞼、眉、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含むことができる。
【0004】
相互に関連する態様では、組織の殺菌のための医薬品の調製のための組成物の使用が開示される。組成物は、緩衝液中で活性化された亜塩素酸ナトリウムを含む。亜塩素酸ナトリウムは、約800ppm~約8000ppmの量であり得る。緩衝液は、5以下又は最大約7.6であるpHを有することができる。組成物は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)のうちの1つ以上であり得る。組成物は、抗微生物活性を有することができる。組成物は、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salve)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤を含む形態であり得る。組成物は、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(eye swab)、又は眼浴剤の形態であり得る。殺菌される組織は、皮膚、皮膚創傷、又は皮膚切開部を含むことができる。殺菌される組織は、眼瞼、眉、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含むことができる。
【0005】
相互に関連する態様において、緩衝液中で活性化された亜塩素酸ナトリウムを含む消毒組成物を、局所的に適用することを含む、組織を処置する方法が開示される。亜塩素酸ナトリウムは、約800ppm~約8000ppmの量であり得る。亜塩素酸ナトリウムは、5以下であるpHを有する緩衝液中で活性化することができる。亜塩素酸ナトリウムは、最大約7.6であるpHを有する緩衝液中で活性化することができる。消毒組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤は、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)のうちの1つ以上を含むことができる。消毒組成物は、抗微生物活性を有することができる。消毒組成物は、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salve)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤の形態であり得る。消毒組成物は、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(swab)、又は眼浴剤の形態であり得る。殺菌される組織は、皮膚、眼、皮膚創傷、又は皮膚切開部を含むことができる。殺菌される組織は、眼瞼、眉、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含むことができる。本明細書に記載の消毒組成物は、組織の処置等の使用のためのものであり得る。
【0006】
相互に関連する態様において、眼組織を殺菌するための眼科的に許容される局所用組成物が開示される。組成物は、約800ppm~約8000ppmの量の亜塩素酸ナトリウム、約0.015w/v/%~約0.5w/v/%の量の界面活性剤、及び少なくとも1つの緩衝液を含む。界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。組成物は、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含むことができ、組成物は、約5のpHを有することができる。組成物は、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、約0.25w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.35w/v%のクエン酸一水和物、及び水を含むことができ、組成物は、約4のpHを有することができる。組成物は、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンラウリルエーテル、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含むことができ、組成物は、約5のpHを有することができる。組成物は、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含むことができ、組成物は、約5のpHを有することができる。少なくとも1つの緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、又はホウ酸緩衝液であり得る。組成物は、5以下のpHを有することができる。
【0007】
相互に関連する態様において、眼組織を、亜塩素酸ナトリウム及び界面活性剤を含む消毒組成物で処置するための方法が開示される。処置は、消毒組成物を、患者の眼に局所的に適用することを含むことができる。消毒組成物を、眼に局所的に適用することは、外科的手技前、外科手技中、及び/又は外科手技後に消毒組成物を局所的に適用することを含むことができる。
【0008】
相互に関連する態様において、亜塩素酸ナトリウム及び界面活性剤を含む組成物の眼における使用が開示される。亜塩素酸ナトリウムは、約800ppm~約8000ppmの量であり得る。界面活性剤は、約0.015w/v%~約0.5w/v%の量であり得る。組成物は、5以下のpHを有する少なくとも1つの緩衝液をさらに含むことができる。組成物は、眼組織に局所的に適用することができる。組成物は、眼の外科的手技前、外科手技中、及び/又は外科手技後に眼組織に局所的に適用することができる。
【0009】
他の特徴及び利点は、例として、開示される組成物及び方法の原理を例示する、種々の実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】5%のポビドン-ヨード眼科用溶液と比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの抗微生物死滅有効性を示す。
図2】0.5%のポリソルベート80の存在下及び不在下、pH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの濃度応答曲線を示す。
図3】Brij35の存在下、pH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの増強された抗微生物死滅有効性を示す。
図4】Pluronic F-127の存在下、pH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの抗微生物死滅有効性を示す。
図5A】5%のポビドン-ヨード眼科用溶液の死滅有効性に対する異なる界面活性剤の効果を示す。
図5B】pH5の緩衝液で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムの死滅有効性に対する異なる界面活性剤の効果を示す。
図6】有機負荷の存在下でpH4の緩衝液で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムの死滅有効性に対するポリソルベート80の濃度応答を示す。
図7】5%のポビドン-ヨード眼科用溶液と比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムのインビボ角膜上皮完全性を示す。
図8】0.5%のポリソルベート80の存在下、5%のポビドン-ヨード眼科用溶液又は亜塩素酸ナトリウムと比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムに対する眼表面充血応答を示す。
図9】ウサギの視機能に対する眼殺菌のための処置の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
眼科用の使用に好適な有効な消毒剤及び抗微生物剤が必要とされている。亜塩素酸ナトリウムは、眼への刺激若しくは損傷をほとんど又は全く引き起こさないため、眼科用製剤の保存剤として使用されてきた。その既知の保存剤の有用性に加えて、亜塩素酸ナトリウムは、有効な抗微生物剤である。特定の亜塩素酸ナトリウム組成物は、保存機能で使用されるときよりも高い濃度であっても、驚くほど良好な耐性を有し、投与されるときにほとんど又は全く有害事象を引き起こさない。
【0012】
緩衝液中で活性化された亜塩素酸ナトリウムを含有する消毒組成物が本明細書に記載される。消毒組成物は、特に眼組織に抗微生物活性を提供し、ポビドン-ヨード眼科用溶液と比較して、眼の刺激及び毒性がより少ない。いくつかの実施態様では、活性化亜塩素酸ナトリウムを含有する組成物は、界面活性剤を含み、ポビドン-ヨード眼科用溶液に伴う眼の刺激及び毒性を伴わない、急速に有効な抗微生物剤としてのポビドン-ヨード(Betadine(登録商標))の最大50,000倍までの有効性を有する。いくつかの実施態様において、亜塩素酸ナトリウムは、800ppm以上の濃度で製剤化され、pH5以下の緩衝液で活性化され、0.05%~0.5%の範囲の濃度の非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート-80又はPS-80)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij-35)、又はPluronic F-127)を含む。PS-80を有する亜塩素酸ナトリウム組成物の抗微生物有効性は、他の非イオン性界面活性剤を有する亜塩素酸ナトリウム組成物を超える予期しない有効性を示した。
【0013】
本明細書で使用するとき、「消毒」は、その抗微生物活性のために生体組織上で使用することができる物質を意味するために使用され得る。本明細書で使用する場合、「抗微生物」は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫等を含むが、これらに限定されない病原体を殺すか、又はその繁殖を阻害する物質を意味するために使用され得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「感染」は、病原体による生物の体内組織の侵入、体内組織における侵入病原体の任意の増殖、及び/又はそのような侵入によって引き起こされる任意の毒素又は反応(免疫学的反応を含む)を意味するために使用され得る。病原体としては、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫等が挙げられ得る。感染症は、眼、耳、鼻経路、口腔又は気管経路、手、指、足、及びつま先を含む皮膚部位、膣を含む生殖泌尿器経路、膀胱、切傷、擦り傷、裂傷、瘻、褥瘡、潰瘍等の感染部位で発生し得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、「亜塩素酸ナトリウム」は、亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaClO)であるPurite(登録商標)(AGN-238749-Z)として市販されている「安定化塩素二酸化物」を意味する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,424,078号は、眼科用製剤の保存剤としての安定化二酸化塩素の使用をさらに考察する。安定化された二酸化塩素は、眼科用製品で使用するための保存剤として使用されてきたが、本明細書に開示される外科的部位の抗微生物調製物のための消毒剤又は急速に有効な抗微生物剤としては使用されていない。本明細書で企図される安定化二酸化塩素を含有する種々の実施態様は、亜塩素酸ナトリウム塩又は溶液の全ての形態、及びナトリウムを含有しない他(例えば、限定されないが、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛)の亜塩素酸塩及び/又は亜塩素酸溶液を含む。
【0016】
二酸化塩素(ClO)は、緩衝液で活性化されると、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)から生成することができる。亜塩素酸ナトリウム(NaClO)からの二酸化塩素の生成は、以下の式で表すことができる。5NaClO+5H→[HClO]→4ClO+2HO+HCl+5Na。亜塩素酸ナトリウムは、pH2、pH3、pH4、又はpH5等のpH5以下のpHを有する緩衝液で活性化することができる。pH5.0の活性化緩衝液の存在下での亜塩素酸ナトリウムは、およそ0.1%の二酸化塩素を提供する。pH4.0(即ち、pH5.0の10倍)の活性化緩衝液の存在下での亜塩素酸ナトリウムは、およそ1.0%の二酸化塩素を提供する。亜塩素酸ナトリウム濃度は、本明細書においてppm(百万分の1)で記載され得る。亜塩素酸ナトリウムの供給源は、典型的には2.0%原液として提供されるPurite(登録商標)であり得、ここで、このパーセンテージは、原液中の亜塩素酸ナトリウムから生成される潜在的な二酸化塩素のパーセンテージを意味する。以下の表1は、Purite(登録商標)の%の変換のための説明を提供し、ここでPurite(登録商標)のw/v%又はppmは、Purite(登録商標)に含まれる亜塩素酸ナトリウムの活性化時に達成される潜在的な二酸化塩素濃度を表す。亜塩素酸ナトリウムのw/v%(ppm)は、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への化学量論的変換(80%収率)を想定している。
【0017】
【表1】
【0018】
いくつかの実施態様において、組成物は、少なくとも約0.08w/v%の亜塩素酸ナトリウム又は約800ppmの亜塩素酸ナトリウム、最大で約0.8w/v%の亜塩素酸ナトリウム又は約8000ppmの亜塩素酸ナトリウムを含有する。他の実施態様では、組成物中の亜塩素酸ナトリウム濃度は、0.08w/v%、0.085w/v%、0.09w/v%、0.095w/v%、0.10w/v%、0.15w/v%、0.30w/v%、0.35w/v%、0.40w/v%、0.45w/v%、0.50w/v%、0.55w/v%、0.60w/v%、0.65w/v%、0.70w/v%、0.75w/v%、0.80w/v%、及び0.85w/v%を含み、全て本明細書に記載される実施態様と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.05w/v%のPurite(登録商標)又は約500ppmのPurite(登録商標)、最大で約0.5w/v%のPurite(登録商標)又は約5000ppmのPurite(登録商標))を含み、ここでw/v%又はppmは、Purite(登録商標)中の亜塩素酸ナトリウムの活性化時の潜在的な二酸化塩素を表す。他の実施態様では、組成物中のPurite(登録商標)濃度は、0.05w/v%、0.055w/v%、0.06w/v%、0.065w/v%、0.07w/v%、0.075w/v%、0.08w/v%、0.085w/v%、0.09w/v%、0.095w/v%、0.10w/v%、0.15w/v%、0.20w/v%、0.25w/v%、0.30w/v%、0.35w/v%、0.40w/v%、0.45w/v%、0.50w/v%を含み、全て本明細書に記載の実施態様と組み合わせて使用され得る。
【0019】
いくつかの実施態様では、亜塩素酸ナトリウムは、1つ以上の活性化緩衝液によって活性化される。本明細書で考慮される緩衝液の例としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、NaOH/トロラミン緩衝液、又はそれらの組み合わせ、例えばリン酸塩及びクエン酸塩又はホウ酸塩及びクエン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、緩衝剤は、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物及びクエン酸一水和物である(表2を参照)。他の実施態様では、緩衝液は、ホウ酸ナトリウム、十水和物である。酸又は塩基、例えば、HCl及びNaOHを、必要に応じてpHの調整に使用し得る。活性化緩衝液は、pH2、pH3、pH4、pH5、pH6、又はpH7を有することができる。他の実施態様において、活性化緩衝液のpHは、pH5以下とすることができる。他の実施態様において、活性化緩衝液のpHは、最大約pH7.6とすることができる。使用される緩衝液の量は、変化し得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約1nM~約100mMの範囲の濃度を有し得る。
【0020】
【表2】
【0021】
組成物は、界面活性剤等の1つ以上の共溶解剤をさらに含み得る。界面活性剤は変化し得、表面活性であるか、又はミセルを形成することができる、任意の化合物を含み得る。界面活性剤は、賦形剤又は有効成分の溶解を補助するために、固体又は液体を組成物中に分散させるために、湿潤を増強するために、液滴のサイズを修正するために、乳化を安定化するために、又はいくつかの他の目的に使用され得る。界面活性剤の例としては、アルコール、例えば、ポリビニルアルコール、アミンオキシド、ブロック-ポリマー、カルボキシル化アルコール又はアルキルフェノールエトキシレート、カルボン酸/脂肪酸、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化アリールフェノール、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪酸又は油(動物及び植物)、脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、グリセロールエステル、グリコールエステル、ラノリン系誘導体、レシチン及びレシチン誘導体、リグニン及びリグニン誘導体、メチルエステル、モノグリセリド及び誘導体、ポリエチレングリコール、Soluplus(登録商標)(BASF由来)等のポリマー界面活性剤、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪酸、アルコール、又はアルキルフェノール、タンパク質系界面活性剤、サルコシン誘導体、ソルビタン誘導体、スクロース及びグルコースエステル及び誘導体、及びサポニン等のクラスの界面活性剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアレート(CAS番号70142-34-6、BASFからSOLUTOL HS15(登録商標)として入手可能)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(CAS番号9003-11-6、BASFからPLURONIC(登録商標)F-68として入手可能)、ポリオキシエチレン40ステアレート(POE40ステアレート)、ポリソルベート80又はポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(CAS番号9005-65-6)、ソルビタンモノステアレート(CAS番号1338-41-6、Croda International PLCからSPANTM60として入手可能)、又はポリオキシエチレングリセロールトリシノレート35(CAS番号61791-12-6、BASFからCREMOPHOR EL(登録商標)として入手可能)、エトキシル化キャストールオイル、例えばCremophor EL(CAS番号61791-12-6)を含み得る。好適な共溶解剤としては、ポビドン及びアクリレート(例えば、PEMULEN(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施態様では、界面活性剤は、好ましくは、Sigma-Aldrichから入手可能なTween(登録商標)80等のCAS番号9005-65-6によって表されるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Polysorbate-80)を含むことができる非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施態様では、非イオン性界面活性剤は、Sigma-Aldrichから入手可能なBrij(登録商標)35等の、CAS番号9002-92-0によって表されるポリオキシエチレンラウリルエーテルを含む。いくつかの実施態様では、非イオン性界面活性剤ポリオールは、BASF SEから入手可能なPluronic(商標)F-127等の、CAS番号9003-11-6によって表されるポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)を含む。他の非イオン性界面活性剤が本発明で考慮され、例としては、エトキシレート、脂肪酸アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、特殊エトキシレート脂肪酸エステル及び油、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド、末端封止エトキシレート、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、Tweens、スクロースの脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アミンオキシド、スルホキシド、ホスフィンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
組成物中に含まれる界面活性剤は、クラスによって限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない種々のクラスの界面活性剤が含まれ得ることを理解されたい。界面活性剤の組み合わせが含まれ得ることも理解されるべきである。
【0024】
界面活性剤の量は変化し得る。いくつかの実施態様において、界面活性剤は、約0.005w/v%~約5.0w/v%、好ましくは0.015w/v%~約0.5w/v%の濃度で使用することができる。界面活性剤のいくつかの好ましい濃度としては、0.005w/v%、0.006w/v%、0.006w/v%、0.007w/v%、0.008w/v%、0.009w/v%、0.010w/v%、0.011w/v%、0.012w/v%、0.013w/v%、0.014w/v%、0.015w/v%、0.016w/v%、0.017w/v%、0.018w/v%、0.019w/v%、0.020w/v%。0.025w/v%、0.030w/v%、0.035w/v%、0.04w/v%、0.045w/v%、0.05w/v%、0.055w/v%、0.06w/v%、0.065w/v%、0.07w/v%、0.075w/v%、0.08w/v%、0.085w/v%、0.09w/v%、0.095w/v%、0.10w/v%、0.15w/v%、0.20w/v%、0.25w/v%、0.30w/v%、0.35w/v%、0.40w/v%、0.45w/v%、0.50w/v%、0.55w/v%、0.60w/v%、0.65w/v%、0.70w/v%、0.75w/v%、0.80w/v%、0.85w/v%、0.90w/v%、0.95w/v%、1.0w/v%、1.5w/v%、2.0w/v%、2.5w/v%、3.0w/v%、3.5w/v%、4.0w/v%、4.5w/v%、及び5.0w/v%が挙げられ、全て本明細書に記載される実施態様と併せて使用され得る。
【0025】
いくつかの実施態様において、組成物は、pH5以下のpHを有する活性化緩衝液中で活性化される800ppm以上の亜塩素酸ナトリウム、及び添加される約0.25%~最大約0.5%の濃度のポリソルベート80を含むことができる。表3は、亜塩素酸ナトリウム含有ポリソルベート80(PS80)の種々の組成物を提示する。
【0026】
【表3】
【0027】
いくつかの実施態様では、活性化亜塩素酸ナトリウム組成物は、例えば、生理食塩水溶液を主要ビヒクルとして使用する溶液等の溶液の形態で調製され得る。溶液は、適切な緩衝系で快適なpHで維持され得る。製剤はまた、従来の薬学的に許容される保存剤、安定剤、及び界面活性剤を含み得る。好ましい実施態様において、組成物は、眼科的に許容される液体又は溶液として製剤化される。
【0028】
特定の液体組成物は、浸透圧剤を含み得る。浸透圧剤は変化し得、液体の浸透圧を調整するために有用な任意の化合物又は物質を含み得る。例としては、限定されるものではないが、塩、特に塩化ナトリウム又は塩化カリウム、プロピレングリコール、マンニトール、又はグリセリン等の有機化合物、又は任意の他の好適な浸透圧調整剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、浸透圧剤は、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、塩化ナトリウム、又はこれらの組み合わせを含み得る。浸透圧剤の量は、等張性、高張性、又は低張性の液体が所望されるかどうかに依存して変化し得る。いくつかの実施形態において、上記に列挙されるもの等の浸透圧剤の量は、少なくとも約0.0001%w/w~最大約1%w/w、約2w/w、又は約5%w/wであり得る。
【0029】
上述のように、亜塩素酸ナトリウムは、眼、皮膚、又は他の標的処置領域に適用される最終組成物の製剤化の前に、二酸化塩素を生成する緩衝液中で活性化することができる。いくつかの実施態様では、活性化緩衝液は、より低いpH溶液に好適であると見なされるクエン酸緩衝液又はリン酸緩衝液であり得る。他の実施態様では、活性化緩衝液は、より高いpH(例えば、pH7の範囲の)溶液に好適であると見なされるホウ酸緩衝液であり得る。クエン酸塩及びリン酸塩活性化緩衝液は、これらの比較的低いpH溶液からの最終眼科用溶液の所望の最終等張性を達成するために十分であり得る。対照的に、ホウ酸緩衝液は、所望の最終等張性を達成するために、グリセロール等の追加の浸透圧剤を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、追加の共溶解剤は、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレングリセロルトリシノレエート35、シクロデキストリン、又はこれらの組み合わせを含み得る。特定の組成物は、酸化防止剤を含み得る。酸化防止剤は変化し得、組成物中に存在する任意の化合物の酸化を低減するために有用な任意の化合物又は物質を含み得る。例としては、限定されるものではないが、クエン酸塩、L-カルノシン、オレイン酸、及び亜鉛が挙げられる。特定の組成物は、キレート剤を含み得る。キレート剤は変化し得、金属をキレートすることができる任意の化合物又は物質を含み得る。有用なキレート剤は、エデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤も適切に、又はそれと併せて使用され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の増粘剤を含み得る。例えば、増粘剤は、架橋又は非架橋の、アクリル酸又はアクリル系ポリマー、例えば、ポリカーボフィル、例えば、CARBOPOL(登録商標)(B.F.Goodrich,Cleveland,OH)、及びCARBOPOL980(登録商標)を含み得る。これらのポリマーは、水に溶解し得、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、又は他のアミン塩基等の塩基との中和時に透明な又はわずかに混濁したゲルを形成し得る。他の市販の濃厚剤としては、HYPAN(登録商標)(Kingston Technologies,Dayton,NJ)、NATROSOL(登録商標)(Aqualon,Wilmington,DE)、KLUCEL(登録商標)(Aqualon,Wilmington,DE)、又はSTABILEZE(登録商標)(ISP Technologies,Wayne,NJ)を含み得る。KLUCEL(登録商標)は、水に分散し得、完全な水和時に均一なゲルを形成し得るセルロースポリマーである。他の有用なゲル化ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム、MVA/MAコポリマー、MVE/MAデカジエンクロスポリマー、PVM/MAコポリマー等が挙げられ得る。
【0032】
いくつかの実施態様において、組成物は、好ましくは、滴下剤、洗浄剤、洗浄剤(swab)、又は浴剤として適用されるように構成されている水溶液の形態を採る。他の好適な形態は、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salves)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、固形剤等である。好ましくは、組成物は、眼、皮膚、粘膜、切開部、創傷部位、又は他の処置部位等の部位を含み得る体表面に、局所的に投与されるように構成されている。
【0033】
いくつかの実施態様において、組成物は、使用前に最終組成物がエンドユーザーによって一緒に混合されるキットの一部として提供することができる。例えば、第1の製剤化部分(例えば、所望の濃度に混合された界面活性剤、浸透圧剤等の1つ以上の他の賦形剤を伴う、又は伴わない緩衝液)を、第1の容器に提供することができ、第2の製剤化部分(例えば、亜塩素酸ナトリウム原液)を、第2の容器に提供することができる。2つの製剤化部分を一緒に混合して(例えば、1:1、1:2、1:3、又は他の混合物として)、最終組成物を形成することができる。2つの部分は、分配される前に一緒に混合することができる。
【0034】
本明細書に記載の組成物は、関連する眼の毒性を伴わないポビドン-ヨード(すなわち、Betadine(登録商標))と比較して、増強された細菌死滅有効性を有することができる。したがって、本明細書に記載の組成物は、ポビドン-ヨードが、抗微生物死滅においてより大きな有効性を有し、眼組織に対する毒性がほとんど、又は全くなく現在使用されているのと同様に使用することができる。本明細書に記載の組成物は、好ましくは、感染を引き起こすことができる病原体への曝露の前、又は感染の確立前に、それらの使用において予防的である。いくつかの実施態様では、組成物は、外科的手技のために処置部位を殺菌し、準備するために十分な単一の、使い切りの適用として処置部位に投与することができる。本明細書に記載の組成物は、全ての眼の手技、例えば、硝子体内、角膜内、強膜、Tenon嚢下、又は結膜下注射を含む眼内注射を含む侵襲性手技、並びに白内障、柵状織切除等を含む種々の眼の外科的手技のための抗微生物調製物として有用である。したがって、組成物は、眼瞼、眉毛、頬、角膜、結膜、眼瞼円蓋等に使用するための点眼、洗眼、洗眼(swab)、又は眼浴剤として製剤化することができる。
【0035】
組成物は、好ましくは眼への適用のために構成されているように本明細書に記載されるが、それらは、そのように限定されるべきではない。本明細書に記載の組成物は、眼、耳、皮膚、爪、又は粘膜を含む種々の体表面に局所的に適用することができる。組成物は、確実な細菌死滅が望まれる手術の前にバイオフィルムを細菌に提示することができる適用、例えば、インプラントを配置する前に消毒剤で洗い流される組織内にポケットを作製することを特徴とするインプラント手術(例えば、乳房インプラント手術)を含む、非眼科用皮膚適用に有用であり得る。本明細書に記載のいくつかの実施態様は、予防剤として好適であり得るが、実施態様はそのように限定されないことに留意されたい。組成物は、既存の創傷又は外科的切開部(例えば、眼又は非眼部位)の処置(例えば、洗浄(cleansing))のために使用することができる。組成物は、少なくとも1日1回、処置部位に投与することができるが、いくつかの実施態様は、創傷を処置するために十分な単一の、使い切り投与形態を可能にし得る。いくつかの実施態様では、処置は、少なくとも週に1回、処置部位に投与し得る。いくつかの実施態様は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日6回、又は1日8回のより頻繁な投与を提供し得る。本明細書に記載されている実施態様はまた、獣医学的分野において使用可能であり得、ヒトの処置のみに限定されない。
【0036】
以下の表4~7は、眼組織のための眼科的に許容される局所用消毒剤である、本明細書で考慮される組成物の種々の例を列挙する。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
以下の表8は、眼組織のための眼科的に許容される局所用消毒剤である、本明細書で考慮される組成物の種々の例を列挙する。
【0042】
【表8-1】
【0043】
【表8-2】
【0044】
【表8-3】
【0045】
実施例1
5%ポビドン-ヨードと比較した亜塩素酸ナトリウム組成物の抗微生物死滅有効性
Staphylococcus aureus ATCC29213(S.aureus)に対して時間死滅有効性実験を行った。Tryptic Soy寒天(TSA)を有するプレートに、S.aureusの培養物を接種し、30~35℃で24時間インキュベートした。細菌培養物を回収し、試料懸濁液を、1ミリリットル当たり約10~10コロニー形成単位(CFU)を含有するように調節した。各試験について、界面活性剤の有又は無の被験試料(Betadine(登録商標)5%Sterile Ophthalmic Prep Solution(ポビドン-ヨード眼科用溶液;Alcon,FortWorth,TX)又は亜塩素酸ナトリウム)の10mLを、滅菌ガラス試験管に分配し、100μLのS.aureus懸濁液を接種し、よく混合した。亜塩素酸ナトリウムを、それらのpHが異なる(pH5、pH4、pH3、又はpH2)4つの緩衝液のうちの1つで30秒間~最大5分間活性化し、次いで分配した。30秒の曝露後、1mLの試験懸濁液を除去し、Dey-Engley中和剤の9.0mLに添加した。この中和懸濁液の100μLを、自動スパイラルプレーティング装置(Edddyjet2,Neutec group Inc,New York,USA)を使用して、7対数連続希釈モードでTSAプレート上に3反復でプレーティングした。全ての細菌プレートを、30~35℃で2日間インキュベートした。対数液滴値を、被験試料の有又は無のプレートの対数化されたCFUの差として決定する。
【0046】
図1は、5%ポビドン-ヨード溶液と比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの8000ppm製剤の抗微生物死滅効果を示す。製剤当たりn=3であり、エラーバーはSDを表す。pH5、pH4、pH3、及びpH2を有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの対数減少は、それぞれ2.4、5.0、5.0、及び5.0であった。これらの対数減少の各々は、5%ポビドン-ヨード溶液で達成された対数減少よりも有意により高く、0.46であった(p<0.001,ANOVA,Dunnetの多重比較)。加えて、pH4、pH3、及びpH2の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムは、pH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムよりも有意により高い死滅有効性を有した(p<0.001,ANOVA,Dunnetの多重比較)。細菌対数減少は、pH値の減少とともに増加した。
【0047】
図2は、界面活性剤である0.5%ポリソルベート80の存在下及び不在下、pH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムの濃度応答曲線を示す。亜塩素酸ナトリウムの抗微生物死滅有効性を、濃度800ppm~8000ppmについて試験し、各々を、非イオン性界面活性剤である0.5%ポリソルベート80(PS80)が存在する、及び存在しないpH5の緩衝液で活性化した。製剤当たりN=3であり、エラーバーはSDを表す。死滅有効性は、PS80が存在する、及び存在しない亜塩素酸ナトリウム濃度の関数として増加した。PS80無では(中空三角形)、4800ppm及び6400ppmの亜塩素酸ナトリウム濃度は、5%のポビドン-ヨード(中空正方形)よりも有効であった。PS80(中実三角形)有では、800ppm~8000ppmの亜塩素酸ナトリウム濃度は全て、亜塩素酸ナトリウムのみの製剤(中空三角形)よりも有効であり、5%のポビドン-ヨード(中空正方形)よりも有効であった(p<0.001、二元ANOVA、Bonferroni多重比較)。PS80(0.5%)は、5%のポビドン-ヨードの死滅有効性に何ら影響を及ぼさず(p=0.44、Studentのt検定)、それ自体も有効ではなかった。
【0048】
図3は、別の非イオン性界面活性剤Brij 35(0.05%~0.5%)の存在下での、8000ppmの亜塩素酸ナトリウム濃度の増強された抗微生物死滅有効性を示す。Brij35を、5%のポビドン-ヨード又はpH5の緩衝液で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムに添加したときのS.aureusに対する増加した有効性について試験した。製剤当たりN=2、エラーバーはSDを表す。試験した最高濃度(0.5%)のBrij35は、それ自体いかなる有効性も有さず、5%のポビドン-ヨードの有効性も増強しなかった。対照的に、0.05%~0.5%の濃度を有するBrij35は、8000ppmの亜塩素酸ナトリウムpH5の有効性を増強した。
【0049】
図4は、別の非イオン性界面活性剤であるPluronicF-127(0.05%~0.5%)の存在下での、8000ppm濃度の亜塩素酸ナトリウムの抗微生物死滅有効性を示す。5%ポビドン-ヨード又はpH5緩衝液で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムに添加した場合の、PluronicF-127を、S.aureusに対する増加した有効性について試験した。製剤当たりN=1。Brij35について上述したものと同様に、試験した最高濃度(0.5%)のPluronicF-127は、それ自体いかなる有効性も有さず、5%のポビドン-ヨードの有効性も増強しなかった。0.25%及び0.5%のPluronicF-127はいずれも、8000ppmの亜塩素酸ナトリウムpH5の有効性を増強するようであった。
【0050】
図5A及び5Bは、5%のポビドン-ヨード又はpH5で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムの死滅有効性に対する異なる界面活性剤の効果を比較する。5%のポビドン-ヨード単独での対数減少は、0.5未満であった(図5A)。上記で考察されたように、界面活性剤単独は、それら自体いかなる有効性も有さず、5%ポビドン-ヨード(0.5%ポリソルベート80(△0.06)、0.5%Brij35(△0.03)、又は0.5%PluronicF-127(△0.1))の有効性も増強しなかった。8000ppmの亜塩素酸ナトリウム単独によって達成された対数減少は、約2.0~3.0であった(図5B)。亜塩素酸ナトリウム8000ppmの有効性は、亜塩素酸ナトリウム単独と比較して、0.5%ポリソルベート80(△2.9)、0.5%Brij35(△1.6)、又は0.5%PluronicF-127(△1.46)の存在下で有意により大きかった。加えて、亜塩素酸ナトリウム8000ppmの有効性は、0.5%Brij35又は0.5%PluronicF-127を含有する亜塩素酸ナトリウム製剤と比較して、0.5%ポリソルベート80の存在下でも有意により大きかった。
【0051】
図6は、10%ウシ胎児血清(FBS)によってシミュレートされた有機負荷の存在下のpH4の緩衝液で活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムの死滅有効性に対する、界面活性剤(ポリソルベート80)の濃度応答を示す。10%FBS及びポリソルベート80(PS80)の両方が存在しない場合、亜塩素酸ナトリウムは、約5の対数減少を達成した。亜塩素酸ナトリウムの有効性は、10%FBSの存在下で、約5の対数減少から約2まで低下した。10%FBSの存在下での亜塩素酸ナトリウムの殺菌有効性は、0.015%又は0.025%のより低い濃度のPS80の添加によって有意に影響を受けなかった。しかしながら、0.5%PS80は、8000ppmの亜塩素酸ナトリウムpH4によって達成された対数減少を有意に増加させた。亜塩素酸ナトリウム及び0.5%PS80によって達成された対数減少は、FBSの存在によって実質的に影響を受けなかった。
【0052】
実施例2
5%ポビドン-ヨードと比較した亜塩素酸ナトリウム組成物の眼における安全性及び耐容性
非鎮静ウサギにおいて眼の安全性及び耐容性実験を実施し、1)上皮細胞の完全性の指標である、局所用フルオレセインナトリウムによる角膜染色の評価、2)刺激の指標である、眼の表面充血の評価、並びに、3)角膜の損傷によって視機能が影響を受ける程度の指標である、視力の評価が得られた。
【0053】
角膜上皮の完全性を、ドライアイについてのNEI角膜染色ガイドラインに従って評価した(LempMA.Report of the National Eye Institute/Industry workshop on Clinical Trials in Dry Eyes.CLAOJ1995;21:221-232)。ウサギを4つの処置群である、5%ポビドン-ヨード(n=8)、亜塩素酸ナトリウム8000ppm製剤pH3(n=8)、pH4(n=8)及びpH5(n=4)に分け、250ulの試験製剤を投与する前に、局所麻酔のために、塩酸プロパラカイン0.5%の1滴で一側性に処置した。亜塩素酸ナトリウムを、投与の5分前に緩衝液で活性化した。亜塩素酸ナトリウムは、投与後に眼から洗い流さなかった。ポビドン-ヨードを、ラベルに従って投与後2分間、いくつかの滅菌生理食塩水フラッシュを使用して洗い流した。0.6mgの色素(Ful-Gloストリップ;Akorn Pharmaceuticals,Inc.,Buffalo Grove,IL)を含有する湿式フルオレセインストリップを脳弓下に適用し、角膜をコバルトブルー光源(BQ900;Haag Streit,Koniz,Switzerland)下で16倍の倍率で撮影した。フルオレセイン染色を、NEIガイドラインに基づいて等級付けした。簡潔には、角膜を5つの領域(中央、上部、耳側、鼻側、及び下部)に分割した。これらの領域における点状染色を、0~3(0=0~5、1=5~20、2=20~50、3=50超)に等級付けし、全ての領域からの等級の平均を報告した。
【0054】
図7は、5%のポビドン-ヨードと比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムのインビボ角膜上皮完全性を示す。図7は、5%のポビドン-ヨードが、24時間残存した最大の点状染色を有し(2.6±1.1)、pH3緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムがこれに続いた(1.0±1.1)ことを示す。pH4及びpH5の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウム製剤は、24時間でいかなる角膜染色も示さなかった。これは、pH4及びpH5における亜塩素酸ナトリウム製剤が、5%のポビドン-ヨードと比較して良好に耐性を有し、角膜上皮を破壊しなかったことを示す。
【0055】
眼の表面充血は、眼の刺激及び眼の不快感の別の兆候である。眼の表面充血を、Hackett及びMcDoaldから修飾された眼刺激のスコア化のための眼刺激半定量化システムを使用して評価した(Hackett R,and McDonald,T.”Eye irritation,”in Advances in Modern Toxicology:Dermatoxicology,F.Marzulli and H.Maibach,Eds.,pp.749-815,Hemisphere Publishing Corporation,Washington,DC,USA,4th edition,1991)。眼の刺激を4点尺度で評価し、ここで、0=正常:白~赤みがかったピンク色に見え得、perilimbal injectionがなく(12時及び6時の位置を除く)、容易に観察される眼瞼及び眼球結膜の血管を有する。+1=軽度:幾分のperilimbal injectionを有する眼瞼結膜に卓越して限定されるが、4時及び7時、11時及び1時の位置から眼の下部及び上部に主に限定される紅潮した赤みがかった色。+2=中度:perilimbal領域の周囲の少なくとも75%をカバーするperilimbal injectionを伴う眼瞼結膜の明るい深紅赤色。個々の血管は、容易に識別することができない。+3=重度:顕著なperilimbal injectionを伴う眼球及び眼瞼結膜の両方の充血を有する濃い、牛肉のような赤色。点状出血は、瞬膜及び/又は上部眼瞼結膜上に存在し得る。
【0056】
図8は、0.5%ポリソルベート80(PS80)の存在下で、5%ポビドン-ヨード又は亜塩素酸ナトリウムと比較した、異なるpHを有する緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムに対する眼表面充血応答を示す。5%のポビドン-ヨード及び異なるpH(pH2、pH3、pH4、pH5、pH5)の緩衝液を使用して活性化された8000ppmの亜塩素酸ナトリウムの5つの製剤、及び0.5%のPS80と組み合わせたものを、24時間にわたって眼充血に対する効果について評価した。250ulの試験製剤を投与する前に、局所麻酔のために塩酸プロパラカイン0.5%の滴下で眼を一側性に処置した。亜塩素酸ナトリウムを、投与の5分前に緩衝液で活性化した。Betadine(登録商標)を、ラベルに従って投与後2分後にいくつかの滅菌生理食塩水フラッシュを使用して洗い流したが、Betadine(登録商標)とは異なり、亜塩素酸ナトリウムは、投与後に眼から洗い流さなかった。図8は、亜塩素酸ナトリウム製剤とは異なり、ポビドン-ヨードが充血性であったことを示し、4時間にわたり+1.5のスコアである。pH3以上の緩衝液で活性化した亜塩素酸ナトリウムは、応答を引き起こさなかった。pH2の緩衝液で活性化された亜塩素酸ナトリウムは、わずかな応答を生じさせた。
【0057】
OptoMotor(商標)システム(Prusky GT,Alam NM,Beekman S,Douglas RM.Rapid quantification of adult and developing mouse spatial vision using a virtual optomotor system.Invest Ophthalmol Vis Sci.2004;45(12):4611-6.)を使用して、正常な視力を有する意識があるDutch-Beltedウサギにおける視機能を評価した。このシステムは、訓練されていない、かつ拘束されていないマウス及びラットの視覚系を迅速に測定するためのツールとして設計された。その技術及び装置を、ウサギにうまく適応させた。このシステムは、4つの大型コンピュータモニタを使用して、テストアリーナの周囲に四角形に配置された3次元投影を備えたバーチャルリアリティチャンバを作成する。ウサギを、中央付近のチャンバ内の特別に設計された拘束具に配置する。重ね合わせた赤い十字線は、眼の間に配置し、システムは、正確性のために頭部を中央に置く。方向性を容易にするため、格子オーバレイを使用する。試験は、動物が閾値又は視力に到達したことを示す格子を追跡しなくなるまで、1度当たりのサイクル(cpd)で空間周波数を増加させることを伴う。システムパラメータは、次のように設定する。コントラスト=100%、開始空間周波数=0.1cpd、ドリフト速度=12d/秒。この研究では、各々6匹のウサギの2群に分けた12匹のウサギの視力のみを記録した。各群を局所麻酔のために、テトラカイン塩酸塩眼科溶液USP 0.5%(Bausch and Lomb,Tampa,FL)の1滴で一側性に処置し、その後、pH~7.6でクエン酸塩/ホウ酸塩緩衝液中の亜塩素酸ナトリウム1600ppm 50ul又はBetadine(登録商標)5%滅菌眼科用調製溶液(ポビドン-ヨード眼科溶液;Alcon,Fort Worth,TX)50ulのいずれかで処置した。ポビドン-ヨード溶液を、数回の滅菌生理食塩水フラッシュで2分間曝露した後に洗い流した。対向眼は未処置であり、対照として機能した。各群における試験眼を、OD、n=3又はOS、n=3として無作為配置した。OptoMotor(商標)視力(空間閾値)を、ベースライン時、及び処置後1、2、4、及び24時間に両側性に収集した。
【0058】
図9は、ウサギの視機能に対する眼殺菌のための処置の効果を示す。平均ベースライン閾値は、試験群間で類似していた。試験眼=ポビドン-ヨード5%及び亜塩素酸ナトリウム1600ppmについてそれぞれ0.781±0.004cpd及び0.784±0.007cpd、非試験眼=それぞれ0.782±0.006cpd及び0.789±0.004cpd。ポビドン-ヨード5%は、4時間で0.38±0.04cpd(0.30±0.06対数単位)のピーク視覚障害で、各フォローアップ時の視機能を低下させた。視機能は、24時間フォローアップ時に依然として著しく低下し、-0.2±0.03cpd(-0.13±0.02対数単位)であった。亜塩素酸ナトリウム1600ppm群のピーク視覚障害は1時間で生じ、0.14±0.06cpd(0.09±0.05対数単位)であり、統計学的に有意ではなかった(p=0.06、試験眼と非試験眼を比較する対となるStudentの「t」検定)。亜塩素酸ナトリウム1600ppmの点眼は、正常な視力を有するウサギにおいて、標準的なポビドン-ヨード5%の洗眼プロトコルよりも24時間にわたって視覚障害がより少なかった。
【0059】
別途記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、反応条件等の特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値は、得られることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲の均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0060】
本発明を説明する文脈での(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈での)「a」、「an」、「the」という用語、及び類似の指示対象は、本明細書に別途記載がない限り、又は文脈上明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するものと解釈されるべきである。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途記載がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な文言(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をより良好に明らかにすることを意図するものであり、いかなる特許請求の範囲の範囲も限定するものではない。本明細書における文言は、本発明の実施に必須であるいかなる特許請求されていない要素を示すものとしても解釈されるべきではない。
【0061】
本明細書に開示される代替的な要素、実施形態又は実施態様の群分けは、限定するものとして解釈されるべきではない。各群の成員は、個別に、あるいはその群の他の成員又は本明細書に見出される他の群又は他の要素との任意の組み合わせで、言及され、特許請求され得る。便宜上及び/又は特許性の理由から、ある群の1つ以上の成員が、ある群に含まれるか、又は削除され得ることが予想される。いかなるそのような包含又は削除が生じる場合も、本明細書は、修正されたものとして群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の記載要件を満たすとみなされる。
【0062】
本発明を実施するための発明者らに既知の最良の形態を含む、特定の実施形態が本明細書に記載される。当然ながら、上述の説明を読むことで、これらの記載された実施形態の変形例が明らかになる。本発明者は、当業者に、適切な場合に変形を採用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されるもの以外で実施することを意図したものである。したがって、特許請求の範囲は、適用可能な法則によって許容されるように、特許請求の範囲に記載された主題の全ての修正及び等価物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、又は別の方法で文脈によって否定されない限り、上記の要素の任意の組み合わせが企図される。
【0063】
本明細書に開示される実施態様が、特許請求の範囲の原理の例示であることを理解されたい。採用され得る他の修正は、特許請求の範囲の範囲内である。したがって、例として、制限ではないが、代替の実施態様を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、特許請求の範囲は、図示及び説明されるように正確に限定されるものではない。
【0064】
P実施形態
実施形態P1.組織を殺菌するための消毒組成物であって、組成物が、亜塩素酸ナトリウムを含む、消毒組成物。
実施形態P2.亜塩素酸ナトリウムが、約800ppm~約8000ppmの量である、条項1に記載の消毒組成物。
実施形態P3.亜塩素酸ナトリウムが、5以下であるpHを有する緩衝液中で活性化される、条項1又は2に記載の消毒組成物。
実施形態P4.亜塩素酸ナトリウムが、最大約7.6であるpHを有する緩衝液中で活性化される、条項1又は2に記載の消毒組成物。
実施形態P5.界面活性剤をさらに含む、条項1~4のいずれか一つに記載の消毒組成物。
【0065】
実施形態P6.界面活性剤が、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン性界面活性剤である、条項5に記載の消毒組成物。
実施形態P7.非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、条項6に記載の消毒組成物。
実施形態P8.組成物が、抗微生物活性を有する、条項1~7のいずれか一つに記載の消毒組成物。
実施形態P9.組成物が、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salves)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤からなる群から選択される形態である、条項1~8のいずれか一つに記載の消毒組成物。
実施形態P10.組成物が、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(swab)、又は眼浴剤の形態である、条項1~9のいずれか一つに記載の消毒組成物。
【0066】
実施形態P11.殺菌される組織が、皮膚、眼、創傷、又は切開部を含む、条項1~10のいずれか一つに記載の消毒組成物。
実施形態P12.殺菌される組織が、眼瞼、眉間、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含む、条項1~10のいずれか一つに記載の消毒組成物。
実施形態P13.組織の殺菌のための医薬品の調製のための組成物の使用であって、組成物が、緩衝液中で活性化された亜塩素酸ナトリウムを含む、組成物の使用。
実施形態P14.組成物が、約800ppm~約8000ppmの量の亜塩素酸ナトリウムを含む、条項13に記載の組成物。
実施形態P15.緩衝液が、5以下であるpHを有する、条項13又は14に記載の組成物。
【0067】
実施形態P16.緩衝液が、最大約7.6であるpHを有する、条項13又は14に記載の組成物。
実施形態P17.組成物が、界面活性剤を含む、条項13~16のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態P18.界面活性剤が、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン性界面活性剤である、条項17に記載の組成物。
実施形態P19.非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、条項18に記載の組成物。
実施形態P20.組成物が、抗微生物活性を有する、条項13~19のいずれか一つに記載の組成物。
【0068】
実施形態P21.組成物が、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salve)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤からなる群から選択される形態である、条項13~20のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態P22.組成物が、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(swab)、又は眼浴剤の形態である、条項13~21のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態P23.殺菌される組織が、皮膚、皮膚創傷、又は皮膚切開を含む、条項13~22のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態P24.殺菌される組織が、眼瞼、眉、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含む、条項13~22のいずれか一つに記載の組成物。
【0069】
実施形態P25.緩衝液中で活性化された亜塩素酸ナトリウムを含む消毒組成物を、局所的に適用することを含む、組織を処置する方法。
実施形態P26.消毒組成物が、約800ppm~約8000ppmの量で亜塩素酸ナトリウムを含む、条項25に記載の方法。
実施形態P27.亜塩素酸ナトリウムが、5以下であるpHを有する緩衝液中で活性化される、条項25又は26に記載の方法。
実施形態P28.亜塩素酸ナトリウムが、最大約7.6であるpHを有する緩衝液中で活性化される、条項25又は26に記載の方法。
実施形態P29.消毒組成物が、界面活性剤をさらに含む、条項25~28のいずれか一つに記載の方法。
実施形態P30.界面活性剤が、0.015w/v%~約0.5w/v%の量の非イオン性界面活性剤である、条項29に記載の方法。
【0070】
実施形態P31.非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエ
ート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、条項30に記載の方法。
実施形態P32.消毒組成物が、抗微生物活性を有する、条項25~31のいずれか一つに記載の方法。
実施形態P33.消毒組成物が、水溶液、エマルジョン(水中油又は油中水)、ローション、クリーム、軟膏、膏薬(salve)、ゲル、滴下、フォーム、粉末、チンキ、及び固形剤からなる群から選択される形態である、条項25~32のいずれか一つに記載の方法。
実施形態P34.消毒組成物が、点眼剤、洗眼剤、洗眼剤(swab)、又は眼浴剤の形態である、条項25~33のいずれか一つに記載の方法。
実施形態P35.組織が、皮膚、皮膚創傷、又は皮膚切開を含む、条項25~34のいずれか一つに記載の方法。
実施形態P36.殺菌される組織が、眼瞼、眉間、頬、角膜、結膜、又は眼瞼円蓋(palpebral fornix)を含む、条項25~34のいずれか一つに記載の方法。
【0071】
実施形態P37.組織の処置のための条項1~12のいずれか一つに記載の消毒組成物の使用。
実施形態P38.条項25~36のいずれか一つに記載の処置方法のための条項1~12のいずれか一つに記載の消毒組成物の使用。
【0072】
実施形態P39.眼組織を殺菌するための眼科的に許容される局所用組成物であって、組成物が、約800ppm~約8000ppmの量の亜塩素酸ナトリウム、約0.015w/v~約0.5w/vの量の界面活性剤、及び少なくとも1つの緩衝液を含む、眼科的に許容される局所用組成物。
実施形態P40.界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである、条項39に記載の組成物。
実施形態P41.組成物が、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含み、組成物が、約5のpHを有する、条項39に記載の組成物。
実施形態P42.組成物が、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、約0.25w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.35w/v%のクエン酸一水和物、及び水を含み、組成物が、約4のpHを有する、条項39に記載の組成物。
実施形態P43.組成物が、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリオキシエチレンラウリルエーテル、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含み、組成物が、約5のpHを有する、条項39に記載の組成物。
【0073】
実施形態P44.組成物が、約8000ppmの亜塩素酸ナトリウム、約0.5w/v%のポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、約0.83w/v%のリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、約0.17w/v%のクエン酸一水和物、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに水を含み、組成物が、約5のpHを有する、条項39に記載の組成物。
実施形態P45.少なくとも1つの緩衝液が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、又はホウ酸緩衝液である、条項39に記載の組成物。
実施形態P46.組成物が、5以下のpHを有する、条項39に記載の組成物。
【0074】
実施形態P47.亜塩素酸ナトリウム及び界面活性剤を含む消毒組成物で眼組織を処置する方法。
実施形態P48.処置が、消毒組成物を、患者の眼に局所的に適用することを含む、条項47に記載の方法。
実施形態P49.消毒組成物を眼に局所的に適用することが、消毒組成物を外科的手技前、外科手技中、及び/又は外科手技後に局所的に適用することを含む、条項48に記載の方法。
【0075】
実施形態P50.亜塩素酸ナトリウム及び界面活性剤を含む組成物の眼における使用。
実施形態P51.亜塩素酸ナトリウムが、約800ppm~約8000ppmの量である、条項50に記載の組成物の眼における使用。
実施形態P52.界面活性剤が、約0.015w/v%~約0.5w/v%の量である、条項50又は51に記載の組成物の眼における使用。
実施形態P53.組成物が、5以下のpHを有する少なくとも1つの緩衝液をさらに含む、条項50~52のいずれか1つの組成物の眼における使用。
実施形態P54.組成物が、眼組織に局所的に適用される、条項50~53のいずれか1つの組成物の眼における使用。
実施形態P55.組成物が、眼の外科的手技前、外科手技中、及び/又は外科手技後に眼組織に局所的に適用される、条項54に記載の組成物の眼における使用。
【0076】
実施形態P56.本明細書に実質的に図示及び記載される、組成物、方法、又はシステム。
【0077】
優先権書類の参照
本出願は、2018年4月27日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/663,886号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。本仮特許出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9