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特許7490577唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法
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  • 特許-唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法 図1
  • 特許-唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法 図2A
  • 特許-唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法 図2B
  • 特許-唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】唇用組成物、及び、美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20240520BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240520BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/365
A61K8/06
A61K8/895
A61K8/34
A61Q1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020568711
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019036835
(87)【国際公開番号】W WO2019241429
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】62/683,960
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/439,509
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399130393
【氏名又は名称】エイボン プロダクツ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン、アシュレー エル
(72)【発明者】
【氏名】ノバック、キャンディス デレオ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-143812(JP,A)
【文献】特表2012-510514(JP,A)
【文献】特開平11-188256(JP,A)
【文献】特開2008-239550(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0120743(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のα-ヒドロキシ酸と、複合エラストマー粉末とを含む油中グリセリン型エマルションの形態の唇用組成物であって、前記複合エラストマー粉末は、シリコーンエラストマー粉末である、又は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを含む、複合エラストマー粉末であると共に、無機微粒子及び/又は、一価アルコール、多価アルコール及びグリコールから選択される1種以上のアルコールで表面被覆されている、組成物
【請求項2】
1種のα-ヒドロキシ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
リップスティック形状である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記α-ヒドロキシ酸は、乳酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エマルションのグリセリン相の見かけのpHが3.3~4.3である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記複合エラストマー粉末は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、シリカ及びブチレングリコールである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記複合エラストマー粉末は、前記組成物の0.1~10重量%の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記複合エラストマー粉末は、前記組成物の1重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(a)前記組成物の1重量%~45重量%のグリセリン;
(b)前記組成物の40重量%~95重量%の油;
(c)前記組成物の1重量%~10重量%のα-ヒドロキシ酸;及び
(d)前記組成物の1重量%~重量%の前記複合エラストマー粉末
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法であって、請求項1~のいずれか一項に記載の唇用組成物を塗布することを含む方法。
【請求項11】
前記美容的利点は、前記唇からの水分蒸散の減少、処置されていない唇と比べてより滑らかな唇表面、処置されていない唇と比べて前記唇の増加した水分、処置されていない唇と比べて前記唇の増加したバリア機能、処置されていない唇と比べて前記唇の厚くなった角質層、及びこれらの組合せ、から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、1日あたり1回以上塗布される、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年6月12日に出願された米国特許出願第62/683,960号明細書に対する優先権を主張する、2019年6月12日に出願された米国特許出願公開第16/439,509号明細書に対する優先権を主張し、それは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、特定の有効成分を含むエマルション組成物に関する。これらのエマルション組成物は、典型的には油中グリセリン型であり、ヒドロキシ酸を含む。ポリオールと特定の有効成分の組合せは、有効成分の潜在的な刺激性を緩和することが見出されている。唇に塗布されると、この組合せは、より滑らかな唇、増加した保湿、減少した水分蒸散及びこれらの組合せを含む治療的及び/又は美容的利点を提供し得る。これらのエマルションを製造する方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
唇の皮膚は、ヒトの体の他の場所の皮膚と構造的に異なる。唇は、唇ではない皮膚又は典型的な皮膚より角質層が薄く、脂質の量が少ない。これにより、水は、容易に唇を通り抜け、唇から消散する。実際に、唇からの水分蒸散は、典型的な皮膚からの水分蒸散の10倍多い。そのため、唇は、乾きやすく、時間経過と共に多くの損傷を受けやすい。唇の角質層は、代謝回転率も高く、これは、角質細胞が常に脱落していることを意味する。脱落プロセスの一部として、死細胞は、唇の表面で薄片になってまとまる。唇が乾くと、これらの薄片は、より明らかになる。体の残りの部分と比べた唇の皮膚の相違のため、より薄い角質層は、より高い細胞回転率と相まって、唇を、環境的、機械的及び化学的攻撃を受けやすくする。これらの攻撃は、乾いて荒れた唇の感覚及び皮膚が自らを修復する自然の能力を超えて唇が損傷した場合に起こる目に見える剥離をもたらす。
【0004】
したがって、消費者は、唇の傷つきやすく繊細な表面を保湿し、治し、滑らかにする、唇の有効な治療を求める。市販されているほとんどの唇用製品は、唇から逃げる水分の量を制限する閉塞性の油又は蝋からなる。これらの系は、最終的に、皮膚が自らを再生する自然の能力に依存する。これらの製品は、根源的な乾燥に対処せず、さらなる乾燥を防ぐのみである。保湿成分及び治癒成分を含む製品もある。そのような製品の有効性は、様々である。
【0005】
典型的には、口紅製品は、無水系である。これらの系は、構造化剤と、軟化剤と、色素材料との組合せからなる。口紅は、0.05~3%のグリセリンなどの保水剤も含み得る。典型的に部分的又は完全に互いに非混和性である最低で2つの相からなる乳化口紅の実例もあった。油中グリセリン型エマルションは、1相の油系でみられる達成可能なレベルを超える水分を与えることができるため、唇及び皮膚の領域において特に興味深い。連続相又は不連続相のいずれかにおいて水の代わりにグリセリンを使用するエマルションは、水のみを使用して達成可能であるより高いレベルの水分をもたらすことが周知である。
【0006】
しかし、これらの乳化口紅は、多くの場合、安定性の問題を有する。エマルション内の相の非混和性のため、相間の熱力学的に不利な相互作用を最小にするために、時間経過と共に相分離の傾向がある。エマルションは、クリーミング、凝集、合一及びオストワルドライプニングなどの不安定化プロセスのため、相分離を起こすことが知られている。
【0007】
乳化剤を使用してエマルション不安定化に対処することができる。例えば、乳化剤を、使用されるエマルションの種類に対して特異的に選択することができる。水相中のpH(又は該当する場合には見かけのpH)が低い系では、ステアリン酸PEG-2及びステアレス-2のような数種の通常の乳化剤を使用できる。内相と関連した外相のシックニングもエマルション安定性を増加させることが知られている。
【0008】
しかし、α-ヒドロキシ酸のような特定の活性物質をこれらの系に組み込むと、不連続相中の電解質の濃度上昇がもたらされ、それは、乳化剤により与えられる安定化機構をもたらす。例えば、これらの電解質は、静電反発に基づく乳化剤/安定剤を不安定化させ得る。しかし、一部の有効成分では、要求されるpHは、標準的なエマルション安定化機構にとって低すぎる。
【0009】
さらに、α-ヒドロキシ酸は、低い使用上のpH範囲に起因する唇皮膚の刺激のため、典型的には唇に塗布されない。この刺激は、唇皮膚の独特な構造的及び形態学的特性のため、皮膚と比べて唇で増大する。グリコール酸及び乳酸などのα-ヒドロキシ酸を含む製剤は、顔に塗布されると、一部の人々に相当な不快感を、他の人々に重度の皮膚刺激の症状を起こし得る。
【0010】
油中グリセリン型エマルションは、内相中のこれらの変化に特に感受性が高く、不安定化及び内部グリセリン相の表面へのシネレシスが口紅の発汗として現れることがある。この不安定性は、グリセリンの保水性のために極高低温及び高湿度により悪化し得る。商業的に実現可能であるために、エマルションは、温度及び湿度の変動を通して十分な安定性を示さなければならない。しかし、油中グリセリンの安定性の限界は、あらゆる種類の商業的な成功を妨げてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、1種以上のα-ヒドロキシ酸を含む安定な油中グリセリン型口紅を提供することである。これらの口紅は、特定の活性物質(例えば、α-ヒドロキシ酸)の唇の皮膚への塗布で以前に見出された問題の多くを克服する。これらの口紅は、驚くべきことに、閉塞性の作用機序又は他の有効成分(例えば、ビタミンE)にのみ基づく保湿性口紅と比べて、増加した治療的及び/又は美容的利点を提供することが見出された。ポリオールと特定の酸性有効成分(例えば、α-ヒドロキシ酸など)との組合せにより与えられる因子は、協同してより滑らかな唇表面、唇の増加した水分保持、改善されたバリア機能性、厚くなった角質層、増加した保湿及びこれらの組合せをもたらし得る。さらに、本発明の口紅は、増加した安定性を有し得、そのため、本明細書に開示のエマルション安定化機構に影響しないより幅広い有効成分(例えば、α-ヒドロキシ酸など)を組み込む能力を有し得る。
【0012】
グリセリン及び1種以上のα-ヒドロキシ酸を含む局所エマルション組成物を塗布することを含む、唇に治療的及び/又は美容的利点を提供する方法が提供される。好ましい実施形態において、エマルションは、1種のα-ヒドロキシ酸を含み、グリセリン相の見かけのpHは、α-ヒドロキシ酸のpKに近い。水系中のpKに近いpHにおいて、酸平衡がおよそ50%の酸及び50%の対応する酸の塩で確立されるため、刺激の量(又は組成物の強度)は、酸を含む相のpHを変えることにより調整され得る。例えば、α-ヒドロキシ酸が乳酸(pK=3.86)である場合、グリセリン相の見かけのpHは、3.3~4.3(例えば、3.4~4.2、3.5~4.1、3.6~4.0、3.7~3.9、3.7~4.0など)であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、唇用組成物は、グリセリン内相及び1種以上のα-ヒドロキシ酸を含むエマルションの形態であり得る。いくつかの実施形態において、グリセリン相は、100Paのせん断速度及び25℃の温度で20Pa未満(例えば、15Pa未満、10Pa未満、8Pa未満など)の第一垂直応力値(伸長粘度のマーカー)を有する。
【0014】
好ましくは、唇用組成物は、1種以上のα-ヒドロキシ酸を含む油中グリセリン型エマルションの形態である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】健康な唇及び不健康な唇上の光屈折の差異を表す。
図2A】臨床試験の各試料集団のコルネオメーター表示数値の平均パーセンテージ変化を示す。「」は、試験の始めの唇の測定値に対してp≦0.05の有意性で統計的に有意な結果を表し、「×」は、p≦0.10の統計的有意性を有する結果を表す。
図2B】臨床試験の各試料集団のTEWL測定値の平均パーセンテージ変化を示す。
図2C】臨床試験の各試料集団のバリア機能の平均パーセンテージ変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示される。しかし、開示される実施形態は、種々の形態で具体化可能である本発明を説明するに過ぎないことが理解されるべきである。さらに、本発明の種々の実施形態と関連して与えられる実施例のそれぞれは、説明的であり、限定的ではないものとする。
【0017】
本明細書で使用される全用語は、特記されない限り当技術分野におけるそれらの通常の意味を有するものとする。濃度は、他に定義されない限り、局所組成物の全体の重量に対する、明示された成分の重量パーセンテージを全て単位とする。
【0018】
本明細書で使用される通り、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味するものとする。用語「含む」と共に本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ又は2つ以上を意味する。本明細書で使用される通り、「別の」は、少なくとも2番目又はそれを超えるものを意味する。
【0019】
本明細書で使用される通り、数値の範囲は、全て端点及び開示される値間で開示される全ての可能性のある値を含む。全半整数数値の正確な値も、具体的に開示され、且つ開示される範囲の全サブセットの境界として企図される。例えば、0.1%~3%の範囲は、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2.0%、2.5%及び3%のパーセンテージを具体的に開示する。さらに、0.1~3%の範囲は、0.5%~2.5%、1%~3%、0.1%~2.5%などを含む元の範囲のサブセットを含む。
【0020】
個別の成分の全重量%の和が100%を超えないことが理解されるであろう。
【0021】
本明細書で使用される通り、用語「油」は、特に記載がない限り、シリコーンオイルを含むものとする。用語「油」は、揮発性油及び/又は不揮発性油を包含するものとする。組成物の油相は、1種以上のシリコーンオイルを油相の主要成分又は非主要成分のいずれかとして含み得ることが理解されるであろう。
【0022】
用語「内」相及び「不連続」相は、同義であり、用語「外」相及び「連続」相も同様である。用語「グリセリン」及び「グリセロール」は、同義であり、互換的に使用される。組成物の水相は、1種以上のポリオール(例えば、グリセリンなど)を非主要成分として含み得、組成物のポリオール(例えば、グリセリンなど)相は、水を非主要成分として含み得ることも理解されるであろう。
【0023】
相のpHに関連した「pKに近い」とは、相が明示されるpK値に近いpHを有することを意味する。いくつかの実施形態において、pHは、pKの0.5pH単位以内(すなわちpH=pK±0.5)、pKの0.4pH単位以内(すなわちpH=pK±0.4)、pKの0.4pH単位以内(すなわちpH=pK±0.4)、pKの0.3pH単位以内(すなわちpH=pK±0.3)、pKの0.2pH単位以内(すなわちpH=pK±0.2)など)であり得る。
【0024】
本発明の組成物は、皮膚、唇、爪、髪及び他の角質表面への塗布に有用である。本明細書で使用される通り、用語「角質表面」は、ヒト外皮系のケラチン含有部分を指し、哺乳類の動物、好ましくはヒトの皮膚、唇、髪(眉毛及びまつ毛を含む)及び爪(足の爪、指の爪、甘皮など)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、組成物は、唇に塗布される。
【0025】
組成物は、ポリオール及び/又は水相を有するエマルションの形態である。典型的には、エマルションは、水及び/又はグリセリンを含み得る。いくつかの実施形態において、エマルションは、油中ポリオール型、ポリオール中油型、油中グリセリン型、グリセリン中油型、グリセリン中シリコーン型、シリコーン中グリセリン型、ポリオール中シリコーン型又はシリコーン中ポリオール型エマルションであり得る。好ましい実施形態において、エマルションは、油中ポリオール型又は油中グリセリン型エマルションである。エマルションは、非水性外相(例えば、油相、シリコーン相など)を含み得る。いくつかの実施形態において、エマルションは、水性内相、ポリオール内相又はグリセリン内相を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、組成物は、不連続なポリオール(例えば、グリセリンなど)内相及び1種以上のヒドロキシ酸(例えば、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸など)を含む油中ポリオール型エマルションである。ほとんどの実施形態において、組成物は、油中グリセリン型エマルションである。特定の実施形態において、組成物は、単一のα-ヒドロキシ酸を含む。単一のα-ヒドロキシ酸を有する実施形態において、ポリオール相の見かけのpHは、そのα-ヒドロキシ酸のpKに近い。内相は、典型的には、エマルション全体の1重量%~65重量%を構成する。より典型的には、内相は、エマルション全体の5重量%~45重量%を構成するであろう。外相は、典型的には、エマルション全体の25重量%~95重量%(例えば、55重量%~85重量%)を構成するであろう。
【0027】
エマルションに含めるための好適なポリオールには、非限定的に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、ジエチレングリコール及びグリセリンなどのC2~6ポリオールがある。ほとんどの実施形態において、内相は、グリセリンを含む。いくつかの実施形態において、ポリオール相は、グリセリンを1種以上の追加のC2~6ポリオール成分と組み合わせて含むであろう。いくつかの実施形態において、ポリオール相は、その吸湿性によりポリオール相中に自然に吸収される水の他に、水をさらに含むであろう。
【0028】
有効成分は、角質除去剤であり得る。好適な角質除去剤には、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、ケト酸、レチノイン酸、ラクトアミド、乳酸四級アンモニウム塩、C4~12ヒドロキシル化カルボン酸、サリチル酸及びこれらの種々の誘導体がある。例には、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マンデル酸、タルトロン酸、酒石酸、グリクロン酸、ピルビン酸、2-ヒドロキシアルカン酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸及びこれらの誘導体(例えば、ピルビン酸メチルのような、1~6個の炭素原子を有するアルコールとのエステル及び逆エステル)がある。他の有効成分は、ビタミンA(3,4-ジデヒドロレチノール)、ヘパキサンチン、(ビタミンAエポキシド;5-6-エポキシ-5,6-ジヒドロレチノール)及び追加の誘導体化合物を含み得る。特定の実施形態において、組成物は、α-ヒドロキシ酸を含む。好ましい実施形態において、組成物は、乳酸を含む。いくつかの実施形態において、1種以上の活性薬剤は、組成物の0.1~20重量%(例えば、0.5重量%~10重量%、0.5~5重量%など)の量で存在する。
【0029】
有効成分に応じて、ポリオール相の見かけのpH又は水相のpHを変更して、有効成分から刺激性の低い物質(例えば、ヒドロキシ酸の共役塩基)を作ることができる。例えば、水酸化物塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム)の添加を利用して、pHを変化させ、相中の酸平衡バランスを変えることができる。典型的には、ポリオールは、ヒドロキシ酸のpKの0.5pH単位以内(例えば、0.4pH以内、0.3pH以内、0.2pH以内)を有する。いくつかの実施形態において、水酸化物塩は、組成物の0.1~5重量%の量で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、外相(連続相)は、油相である。例えば、連続油相は、非限定的に、植物油;脂肪酸エステル;脂肪族アルコール;イソドデカン及びイソエイコサンなどのイソパラフィン;鉱油、ペトロラタム及びポリイソブテンなどの炭化水素油;ポリオレフィン及びその水添された類似体(例えば、水添ポリイソブテン);天然又は合成の蝋;ジメチコン、環状シリコーン及びポリシロキサンなどのシリコーンオイル;並びに類似のものを含む、エマルションのための好適な油を含み得る。
【0031】
好適なエステル油には、脂肪酸エステルがある。化粧用製剤中に軟化剤として通常使用されているエステルが特に言及され得る。そのようなエステルは、典型的には、形態R(COOH)1~2の酸及び形態R(OH)1~3のアルコールとのエーテル化生成物であり、ここで、R及びRは、任意選択で不飽和結合を含み(例えば、1~6又は1~3又は1)、1~30(例えば、6~30又は8~30、又は12~30、又は16~30)個の炭素原子を有し、ヒドロキシル、オキサ、オキソなどを含む1つ以上の官能基により任意選択で置換されている、それぞれ独立に直鎖、分岐鎖又は環式炭化水素基である。好ましくは、R及びRの少なくとも一方は、エステルが少なくとも1個の脂肪鎖を含むように、少なくとも8、又は少なくとも10、又は少なくとも12、又は少なくとも16、又は少なくとも18個の炭素原子を含む。上記で定義されたエステルは、非限定的に、一酸とモノ-アルコールとの、一酸とジオール及びトリオールとの、二酸とモノ-アルコールとの、並びに三酸とモノ-アルコールとのエステルを含むであろう。
【0032】
好適な脂肪酸エステルには、非限定的に、酢酸ブチル、イソステアリン酸ブチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ブチルオクチル、パルミチン酸セチル、オクタン酸セチル、ラウリン酸セチル、乳酸セチル、イソノナン酸セチル、ステアリン酸セチル、フマル酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジブチル、リンゴ酸ジ-C12~13アルキル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル、アジピン酸ジイソノニル、ダイマー酸ジイソプロピル、トリリノール酸トリイソステアリル、オクトデシルステアロイルステアレート、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ヘキサデシル、ラウリン酸ヘキシルデシル、オクタン酸ヘキシルデシル、オレイン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソステアリル、ネオペンタン酸イソヘキシル、ステアリン酸イソヘキサデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸n-プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸n-プロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサコサニル、乳酸ラウリル、パルミチン酸オクタコサニル、モノラウリン酸プロピレングリコール、パルミチン酸トリアコンタニル、パルミチン酸ドトリアコンタニル、パルミチン酸テトラトリアコンタニル、ステアリン酸ヘキサコサニル、ステアリン酸オクタコサニル、ステアリン酸トリアコンタニル、ステアリン酸ドトリアコンタニル、乳酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、ヘプタン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸テトラトリアコンタニル、トリアラキジン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸トリ-C12~13-アルキル、トリカプリリン、クエン酸トリカプリリル、ベヘン酸トリデシル、クエン酸トリオクチルドデシル、ヤシ油脂肪酸トリデシル、イソノナン酸トリデシル、モノリシノール酸グリセリル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸又は乳酸2-オクチルドデシル、コハク酸ジ(2-エチルヘキシル)、酢酸トコフェリルなどがある。
【0033】
他の好適なエステルには、モノラウリン酸ポリエチレングリコールにより例示される、Rが形態H-(O-CHR-CHR-(式中、Rは、水素又はメチル及びエチルを含む直鎖C1~12アルキルから独立に選択される)のポリグリコールを含むものがある。
【0034】
油は、揮発性又は不揮発性のシリコーンオイルも含み得る。好適なシリコーンオイルには、任意選択で1~10個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシ基を含むポリアルキル又はポリアリールシロキサンなどの直鎖又は環状のシリコーンがある。代表的なシリコーンオイルには、例えば、カプリリルメチコン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ジフェニルジメチコン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、メチコン、メチル-フェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、パーフルオロノニルジメチコン、ポリジメチルシロキサン及びこれらの組合せがある。シリコーンオイルは、必然的ではないが、典型的には、25℃で測定して5~3,000センチストークス(cSt)、好ましくは50~1,000cStの粘度を有する。
【0035】
一実施形態において、シリコーンオイルは、信越化学工業株式会社からF-5W、KF-54及びKF-56を含む名称で市販されているメチルフェニルポリシロキサン(INCI名ジフェニルジメチコン)などのシリコーンオイルの場合のようにフェニル基を含む。ジフェニルジメチコンは、良好な有機適合性を有し、製品に被膜形成特性を付与し得る。さらに、フェニル基の存在によりシリコーンオイルの屈折率が増加し、そのため、必要に応じて製品の高い光沢に寄与し得る。一実施形態において、シリコーンオイルは、25℃で測定して少なくとも1.3、好ましくは少なくとも1.4、より好ましくは少なくとも1.45、さらにより好ましくは少なくとも1.5の屈折率を有するであろう。別の好適なフェニル官能化シリコーンオイルは、INCI名フェニルトリメチコンを有し、商品名DC 556でDow Corningにより販売されている。DC 556は、1.46の屈折率を有する。一実施形態において、シリコーンオイルは、全フッ素置換されたシリコーン(すなわちフルオロシリコーン)などのフッ化シリコーンである。フルオロシリコーンは、有利には、疎水性及び疎油性の両方であり、そのため、望ましい滑り及び製品の感触に貢献する。フルオロシリコーンは、耐久特性も唇用製品に付与する。フルオロシリコーンは、必要に応じて、ベヘン酸ベヘニルによりゲル化できる。好適なフルオロシリコーンは、INCI名パーフルオロノニルジメチコンを有するフッ化有機官能性シリコーンフルイドである。パーフルオロノニルジメチコンは、Phoenix Chemicalから商品名PECOSIL(登録商標)で市販されている。組成物は、組成物の5重量%~75重量%(例えば、組成物の10重量%~60重量%、組成物の20重量%~50重量%、組成物の25重量%~45重量%など)のシリコーンオイルを含み得る。
【0036】
組成物は、炭化水素油も含み得る。例示的な炭化水素油は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカンなどがあるが、これらに限定されない、5~80個の炭素原子、典型的には8~40個の炭素原子、より典型的には10~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のパラフィン族炭化水素である。いくつかの有用な炭化水素油は、C8~9イソパラフィン、C9~11イソパラフィン、C12イソパラフィン、C20~40イソパラフィンなどを含む高度に分岐した脂肪族炭化水素である。INCI名イソヘキサデカン、イソエイコサン及びイソドデカンを有するイソパラフィンが特に言及され得る。
【0037】
やはり炭化水素油として好適なものは、(任意選択で水添された)C24~28オレフィン、C30~45オレフィン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、ポリブテン、水添ポリシクロペンタン、鉱油、ペンタヒドロスクアレン、スクアレンなどを含む、典型的には20個を超える炭素原子を有するポリ-α-オレフィンである。炭化水素油は、オレイルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級脂肪族アルコールも含み得る。
【0038】
他の好適な油には、非限定的に、ヒマシ油、C10~18トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/トリグリセリド、ヤシ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、ミンクオイル、オリーブ油、パーム油、イリペ脂、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、クルミ油、アボカドオイル、椿油、マカダミアナッツオイル、カメ油、ミンクオイル、大豆油、グレープシードオイル、ゴマ油、メイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、落花生油、オリーブ油及びこれらの組合せがある。
【0039】
前記エステル油、シリコーンオイル及び炭化水素油のいずれも本発明の実施において有用であると企図される。したがって、一実施形態において、組成物は、上述のエステル油、シリコーンオイル及び炭化水素油から選択される少なくとも1種の油を含む。別の実施形態において、組成物は、上述のエステル油、シリコーンオイル及び炭化水素油から選択される2種以上の油を含む。さらに別の実施形態において、組成物は、上記のリストからの少なくとも1種のエステル、少なくとも1種のシリコーンオイル及び少なくとも1種の炭化水素油を含むであろう。本明細書に記載のエステル油が軟化剤として作用するため、組成物が少なくとも1種のエステル油を含むことが有利であり得、任意選択で炭化水素油、シリコーンオイル及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の追加の油を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、ラノリン、ステアリルジメチコン、乳酸ミリスチル及びジフェニルジメチコンを含む。
【0040】
蝋及び/又は充填剤も、(特に組成物が室温で自立固体である実施形態において)組成物の1重量%~20重量%(両端を含む)の範囲又は組成物の1重量%~10重量%(両端を含む)の範囲の量において任意選択で加えられ得る。充填剤の例は、シリカ、PMMA、ナイロン、アルミナ、硫酸バリウム又はそのような組成物に使用される他の充填剤を含み得るが、これらに限定されない。蝋の例は、直鎖ポリエチレン、ミクロクリスタリン石油ワックス、カルナバワックス、亜炭蝋、オウリカウリワックス、米ぬか蝋、ヒマシ蝋、モルタル蝋、ステアロン、アクラワックス、シロヤマモモ果実ロウ、ヒマシ蝋、木蝋、オゾケライト、蜜蝋、カンデリラ蝋、ペトロラタム、セレシンワックス、カカオバター、イリペ脂、エスパルトワックス、シェラックワックス、C18~36脂肪酸のエチレングリコールジエステル又はトリエステル、パルミチン酸セチル、ハードタロウ、パラフィンワックス、ラノリン、ラノリンアルコール、セチルアルコール、ステアリン酸グリセリル、サトウキビワックス、ホホバワックス、ステアリルアルコール、シリコーンワックス及びこれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの実施形態において、油相は、1種以上の蝋を含み得る。蝋は、エマルションが半固体又は固体の物理的形態を有するようにエマルションに粘度を付与する。本明細書で使用される通り、用語「固体」は、独立して立ち、自立するスティック(例えば、口紅)に成型することが可能である組成物を指すものとする。いくつかの実施形態において、蝋は、エマルションを固体エマルションにするのに十分な量で存在する。例えば、固体エマルションは、少なくとも30gの硬さを有し得る。組成物は、典型的には、室温で少なくとも40gの硬さを有する。一実施形態において、組成物は、100~300gの大幅に高い硬さを有し得る。エマルションの硬さは、その開示が参照により本明細書に組込まれるAvonの米国特許第8,580,283号明細書に記載の通り、4mmステンレススチールプローブ(TA-24)を備えたTexture Analyzer Model QTS-25で測定できる。
【0042】
蝋は、天然、鉱物及び/又は合成の蝋であり得る。天然蝋には、動物由来のもの(例えば、蜜蝋、鯨蝋、ラノリン及びシェラックワックス)及び植物由来のもの(例えば、カルナバ、カンデリラ、シロヤマモモ果実及びサトウキビワックス)がある。鉱物蝋には、非限定的に、オゾケライト、セレシン、モンタン、パラフィン、ミクロクリスタリン、石油及びペトロラタム蝋がある。合成蝋には、例えば、商標CARBOWAX(登録商標)で販売されている(The Dow Chemical Company)PEG-18、PEG-20、PEG-32、PEG-75、PEG-90、PEG-100及びPEG-180などのポリエチレングリコールがある。950~1,050の分子量範囲及び38℃の融点を有するポリエチレングリコールワックスCARBOWAX 1000、1,305~1,595の分子量範囲及び56℃の融点を有するCARBOWAX 1450、3,015~3,685の分子量範囲及び56℃の融点を有するCARBOWAX 3350並びに7,000~9,000の分子量範囲及び61℃の融点を有するCARBOWAX 8000が言及され得る。
【0043】
合成の蝋には、フィッシャー・トロプシュ(FT)ワックス並びにエチレンホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー及びエチレン-ヘキセンコポリマーなどのポリオレフィンワックスがある。代表的なエチレンホモポリマーワックスは、80℃~132℃の範囲の融点を有する商標POLYWAX(登録商標)Polyethylene(Baker Hughes Incorporated)で市販されている。市販のエチレン-α-オレフィンコポリマーワックスには、95℃~115℃の範囲の融点を有する商標PETROLITE(登録商標)Copolymers(Baker Hughes Incorporated)で販売されているものがある。
【0044】
一実施形態において、エマルションは、油相中において、アクラワックス(N,N’-エチレンビスステアラミド)、ミクロクリスタリンワックス、直鎖ポリエチレンワックス、ステアロン(18-ペンタトリアコンタノン)、ヒマシ蝋、モンタン蝋、亜炭蝋、オウリカウリワックス、カルナバワックス、米ぬか蝋、シェラックワックス、エスパルトワックス、オゾケライト蝋、ホホバワックス、カンデリラ蝋、セレシンワックス、蜜蝋、ヒマシ蝋、サトウキビワックス、ステアリルアルコール、ハードタロウ、セチルアルコール、ペトロラタム、ステアリン酸グリセリル、木蝋、シリコーンワックス、パラフィンワックス、ラノリン蝋、ラノリンアルコール、シロヤマモモ果実ロウ、パルミチン酸セチル、イリペ脂、カカオバター及びC18~36脂肪酸のエチレングリコールジ-又はトリ-エステルから選択される少なくとも1種の蝋を含む。
【0045】
存在する場合、蝋の量は、組成物が液体である場合又は透明性が望まれる場合、組成物の2重量%未満(例えば、0.1~2重量%)であり得る。存在する場合、蝋の量は、組成物が半固体若しくは固体である場合又は透明性が問題にならない場合、典型的には、組成物の10重量%超(例えば、10~20重量%)であろう。いくつかの実施形態において、エマルションは、特に口紅として製剤される実施形態において、組成物の1重量%~25重量%、又は1~20重量%、又は1~5重量%、又は1~10重量%の蝋を含み得る。
【0046】
エマルションの油相は、構造増強剤として作用する1種以上の増粘剤/ゲル化剤及び/又は増量剤も含み得る。そのような増量剤には、マイカ、硫酸バリウム、ナイロン、タルク、デンプン、炭酸カルシウム、シリカ及びこれらの混合物がある。増量剤は、エマルションの0.01重量%~5重量%(例えば、エマルションの0.1重量%~5重量%、エマルションの0.1重量%~1重量%など)の量で存在し得る。
【0047】
他の増粘剤を使用して、エマルションの内相又は外相のいずれかを増粘することができる。例えば、全体として且つ具体的には多糖構造化剤及び乳化剤に関連して参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0164768号明細書に開示の通り、多糖増粘剤を使用してエマルションのポリオール相を構造化できる。しかし、キサンタンガムは、ポリオール相の伸長粘度を増加させることが示されたため(実施例2を参照されたい)、好ましい実施形態において、組成物は、キサンタンガムを含まないか、又はポリオール相の第一垂直応力差が20Pa以下であるような少量でキサンタンガムを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、外相中に構造化剤を有さない。いくつかの実施形態において、内相は、減衰グレードTiOにより構造化され得る。組成物は、組成物の0.1重量%~20重量%(例えば、0.1重量%~10重量%など)の減衰グレードTiOを含み得る。減衰グレードTiOは、わずかな例を挙げると、ラウロイルリシン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)、ITT及びジメチコン(ITT/ジメチコン)クロスポリマー、ITT及びアミノ酸、ITT/トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、蝋(例えば、カルナバ)、脂肪酸(例えば、ステアレートなど)、HDI/トリメチロールヘキシラクトンクロスポリマー、PEG-8メチルエーテルトリエトキシシラン、アロエ、ホホバエステル、レシチン、パーフルオロアルコールホスフェート及びミリスチン酸マグネシウム(MM)を含む疎水性修飾剤で表面処理され得る。
【0048】
一実施形態において、組成物は、油相中において、0.1~2重量%、又は2~5重量%、又は5~10重量%、又は10~15重量%、又は15~20重量%の少なくとも1種の蝋(例えば、ミクロクリスタリンワックス、オゾケライト蝋、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ペトロラタムワックスなど)を含む。一実施形態において、組成物は、油相中において、前記量以内のミクロクリスタリンワックスを含む。一実施形態において、組成物は、油相中において、前記量以内のオゾケライト蝋を含む。一実施形態において、組成物は、油相中において、前記量以内のポリエチレンワックスを含む。一実施形態において、組成物は、油相中において、前記量以内のペトロラタムワックスを含む。一実施形態において、組成物は、油相中において、前記量以内のパラフィンワックスを含む。
【0049】
典型的には、本発明によるエマルションは、1種以上の乳化剤をさらに含む。例えば、1種以上の乳化剤は、エマルションの0.01重量%~20.0重量%(例えば、エマルションの0.1重量%~15重量%)の合計の範囲で存在し得る。いくつかの実施形態において、乳化剤の総量は、エマルションの0.1重量%~6.0重量%又は0.5重量%~4.0重量%の範囲である。乳化剤の例には、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル及びジイソステアリン酸ポリグリセリル-2などのポリグリセリル化合物;モノステアリン酸グリセロール又はモノオレイン酸グリセロールなどのグリセロールエステル;レシチン及びトリラウレス-4リン酸(商標HOSTAPHAT(登録商標)KL-340-Dで利用可能)などのリン脂質及びリン酸エステル;ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン又はセスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン含有エステル(SPAN(登録商標)エステルを含む);ポリオキシエチレンオクチルフェノールなどのポリオキシエチレンフェノール;ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテル;ポリヒドロキシステアリン酸PEG-30又はアルキルポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール乳化剤;PPG-6-ラウレス-3などのポリプロピレングリコール乳化剤;ジメチコンポリオール及びポリシロキサン乳化剤;並びに類似のものがある。レシチンとソルビタンとの組合せなどの乳化剤の組合せが想定される。追加の乳化剤は、その開示が参照により本明細書に組込まれるthe INCI Ingredient Dictionary and Handbook,12th Edition,2008に与えられている。いくつかの実施形態において、唇用組成物は、1種以上の乳化剤及び/又は1種以上の蝋を含む。好ましい実施形態において、唇用組成物は、組成物の1重量%~20重量%の乳化剤及び/又は1重量%~20重量%の蝋を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、組成物は、標準的な乳化系によって利用できない増加した安定性を要することがある。前記エマルションのグリセリン相の伸長粘度を減少させることを含む、油中ポリオール型エマルションの安定性を増加させる方法も提供される。伸長粘度の代わりに、内相の第一垂直応力差が100Paのせん断速度及び25℃の温度で測定され得る。より高い第一垂直応力差は、より高い伸長粘度と相関関係にある。油中ポリオール型エマルションの安定性は、内相の伸長粘度を減少させることにより増加し得ることが見出された。いくつかの実施形態において、ポリオール(例えば、グリセリン)相は、100Pa(例えば、15Pa未満、10Pa未満、8Pa未満、7Pa未満、6Pa未満)のせん断速度及び25℃の温度で20Pa未満の第一垂直応力差を有する。
【0051】
複合エラストマー粉末を含めて、固体エマルションの安定性を増加させ、長い保存期間にわたりシネレシスを減少させることができる。エラストマー粉末の例には、大きい可逆的変形を受けることができる架橋されたフレキシブルシリコーンであるシリコーンエラストマーがある。いくつかの実施形態において、伸長粘度は、エマルションの不連続相へのシリコーンエラストマーの添加により減少する。シリコーンエラストマーは、例えば、ジメチコンクロスポリマーを含む架橋されたエラストマーオルガノポリシロキサン粉末であり得る。そのようなエラストマーは、例えば、SiH含有ジオルガノポリシロキサンと、ケイ素結合ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの間の白金金属触媒反応により形成できる。好適なシリコーンエラストマーには、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマーがある。例には、Dow Corning 9040、9041及び9506、並びにShin-Etsu KSG-15、16及び17、並びにShin-Etsu KSP-100、101、102、103、104、105、200及び300がある。市販の粉末には、Dow Corning社のDow Coming 9506 Powder(INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー)がある。とりわけ、本発明に使用されるオルガノポリシロキサンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコンクロスポリマー-3(INCI名)から、とりわけジメチコンクロスポリマー及びジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマーから選択される。
【0052】
複合エラストマー粉末は、エラストマー粉末の粒子の少なくとも一部分を無機粉末で被覆することにより形成できる。典型的には、無機粉末は、被覆されていないエラストマー粉末の平均粒径未満の平均粒径を有する。典型的には、被覆する無機粉末粒子の平均粒径は、被覆されていないエラストマー粉末の平均粒径の10分の1未満である。複合エラストマー粉末の生成のための好適な無機粉末の例には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモンなどの金属酸化物粉末;窒化ホウ素及び窒化アルミニウムなどの金属窒化物粉末;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物粉末;炭酸カリウムなどの金属炭酸塩;ニッケル、コバルト、鉄、銅、金及び銀などの金属;スルフィド粉末;並びに塩化物粉末がある。エラストマー粒子の被覆のための好ましい粉末には、金属酸化物微粉末及び具体的にはシリカがある。好適な複合エラストマー粒子には、Dow Corning社のDow Coming 9701 Powder(INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)シリカ)がある。
【0053】
典型的には、複合エラストマー粒子は、親水性及び分散性を複合エラストマー粒子に付与する成分で被覆され得る。これは、複合粒子が油中グリセリン相全体にわたって分散され得る油中グリセリン型エマルションにおいて特に重要である。いくつかの実施形態において、複合エラストマー粒子は、メタノール、エタノール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコールなどの一価アルコール及び/又は1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコールを含む多価アルコールを含む。いくつかの実施形態において、複合エラストマー粒子は、ブチレングリコールで被覆されている。そのような複合エラストマー粒子は、全体として且つ具体的には複合硬化シリコーン粉末に関連して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,394,412号明細書に記載されている。好ましい実施形態において、複合エラストマー粒子には、名称EP-9801 Hydrocosmetic Powder(INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)シリカ(及び)ブチレングリコール)でDow Corning社により販売されている製品がある。
【0054】
いくつかの実施形態において、組成物は、油中ポリオール型(例えば、油中グリセリン型)エマルションであり得、組成物の1重量%~45重量%のポリオール(例えば、1重量%~20重量%、5重量%~15重量%)、及び0.1重量%~5重量%の有効成分(例えば、乳酸のようなα-ヒドロキシ酸)、及び組成物の25重量%~95重量%(例えば、40重量%~60重量%)の油(例えば、ラノリン、ステアリルジメチコン、乳酸ミリスチル、ジフェニルジメチコン及びこれらの組合せ)を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、水酸化物塩(例えば、水酸化ナトリウム)を組成物の0.1~5重量%の量でさらに含む。
【0055】
追加の成分は、化粧品分野において慣例である通りの種々の機能的な目的のために、組成物、具体的にはエマルションの内相、エマルションの外相に又は微粒子相として組み込まれ得る。しかし、上記の化粧用組成物を製剤することと矛盾しない追加の成分が含まれ得るものの、追加の成分の含有は、組成物(例えば、エマルションなど)の形成又は安定性を妨げない量の成分に限定される。
【0056】
そのような成分は、被膜形成剤、顔料、蝋、軟化剤、保湿剤、保存剤、着香料、酸化防止剤、植物成分及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。創傷治癒、抗炎症又は皮膚若しくは唇を処置するために有用な他の利益を有し得る高度精製された植物抽出物又は合成の作用物質が特に言及され得る。追加の実施形態は、トコフェロールなどの酸化防止剤及び/又はグリコール酸、乳酸のようなα-ヒドロキシ酸を含み得る。組成物は、製品の持続性を増加させる1種以上の被膜形成剤を含み得る。
【0057】
被膜形成ポリマーを含む被膜形成剤も利用され得る。用語被膜形成ポリマーは、それ自体で又は少なくとも1種の補助的な被膜形成剤の存在下で表面に付着し、微粒子材料の結合剤として機能する連続的なフィルムを形成することが可能であるポリマーを示すと理解され得る。ポリマー性被膜形成剤には、非限定的に、アクリルポリマー又はコポリマー、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリビニル、ポルアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ゴム、エポキシ、ホルムアルデヒド樹脂、オルガノシロキサン、ジメチコン、アモジメチコン、ジメチコノール、メチコン、シリコーンアクリレート、ポリウレタンシリコーンコポリマー、セルロース誘導体、多糖類、ポリクオタニウムなどがある。好適な被膜形成剤には、その開示が参照により本明細書に組み込まれるthe Cosmetic Ingredient Dictionary(INCI and Handbook,12th Edition(2008))に列記されるものがある。
【0058】
組成物は、メチルパラベン、エチルパラベン又はプロピルパラベンなどの1種以上の保存剤又は抗微生物剤を組成物全体の重量の0.0001~5重量%の範囲の量で含み得る。組成物は、1種以上の麻酔薬、抗アレルギー剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗微生物剤、防腐剤、キレート剤、軟化剤、乳化剤、香料、保水剤、滑沢剤、マスキング剤、医薬品、保湿剤、pH調整剤、保存剤、保護剤、緩和剤、安定剤、日焼け止め剤、界面活性剤、増粘剤、粘稠剤、ビタミン又はこれらのあらゆる組合せなどの他の成分を有し得る。
【0059】
一実施形態において、本発明によるエマルションは、唇への塗布用の製品として提供される。そのような唇用製品は、リップクリーム、リップバーム、リップグロス、薬用リップトリートメント、唇保湿剤、唇化粧品、唇日焼け止め剤及び唇香料を含み得る。一実施形態において、唇用製品は、滑らかで流動性のある唇用製品である。特定の実施形態において、本発明による製品は、半粘性液体又はペーストの粘稠性を有し得る。他の実施形態において、製品は、口紅である。
【0060】
これらの組成物の角質表面への塗布は、治療的及び/又は美容的利点を提供する。本明細書の記載のポリオールと角質除去活性物質との組合せのみにより見出される治療的及び/又は美容的利点を唇に提供する方法も提供される。いくつかの実施形態において、治療的及び/又は美容的利点は、前記唇からの水分蒸散の減少、より滑らかな唇表面(処置されていない唇と比べて)、前記唇の増加した水分(処置されていない唇と比べて)、前記唇の増加したバリア機能(処置されていない唇と比べて)、前記唇の厚くなった角質層(処置されていない唇と比べて)及びこれらの組合せから選択される。
【0061】
毎回塗布される局所組成物の量、塗布の領域、塗布の継続期間及び塗布の頻度は、使用者の具体的な必要性に応じて広く変わり得る。例えば、局所組成物は、少なくとも1か月の期間、1週あたり1回、又は1週あたり2回、又は週に2回、又は1日おき、又は1日あたり1回、又は1日に2回(例えば、朝に1回及び夜に1回など)、又は1日に3回、又は1日に4回、又は1日に5回の頻度で塗布され得る。いくつかの実施形態において、ある組成物形態(例えば、本発明の口紅)は、1回以上中に(例えば、1、2、3、4、5など)塗布され得、別の組成物形態(例えば、本発明のバーム)は、塗布されて、使用者が寝ている間一晩そのままにされ得る。
【0062】
ほとんど実施形態において、組成物は、それら自体の容器中に単独で包装される。一実施形態において、1種以上の組成物は、それぞれ別な容器に収容され、複数の単一処方容器(例えば、ジャー及びディスペンサー)は、一緒に販売及び/又は包装される(例えば、口紅及びバーム)。別の実施形態において、複数の組成物(例えば、口紅、バーム、クリームなど)は、同じ包装中で異なる容器に収容されている。いくつかの実施形態において、これらの異なる容器は、互いに分離可能でない。
【実施例
【0063】
以下の実施例は、本明細書の具体的な態様を説明する。実施例は、実施形態及びその種々の態様の具体的な理解及び実施を与えるのみであるため、限定的であると解釈されるべきでない。
【0064】
実施例1:唇の含水量の測定及び経皮水分蒸散量
唇に塗布される種々の製剤の8週間の臨床試験を実施した。40~65歳のフィッツパトリック尺度でスキンタイプI~IIIである唇が荒れている女性が特定の口紅組成物を少なくとも1日に3回塗布した。いくつかの群には、夜にバームも塗布することを指示した。製剤の詳細を表1に示す。分かる通り、製剤1は、α-ヒドロキシ酸を含む油中グリセリン型エマルションであり、製剤2は、低グリセリン含量を含みα-ヒドロキシ酸を全く含まないゲル化した組成物である。さらに、別の群の参加者には、市販のoBoticarioのIntense Lipstickを塗布するように指示した。このIntense Lipstickは、ビタミンE及びクプアスバターと組み合わせた水閉塞に基づいて唇を保湿する。各群は、9~11名の参加者を有する。
【0065】
【表1】
【0066】
1週間、2週間、4週間及び8週間で唇の水和及びバリア機能(製品がない状態)を皮膚のキャパシタンス及び経皮水分蒸散量(「TEWL」)の測定により評価した。唇の健康も唇の光沢度の光学的測定により評価した。画像において、皮膚片が多く不均一な表面を有する不健康な唇に当たる入射光は、陰のある強調されたしわをもたらす傾向があることが分かる。健康な唇では、これらの特徴がないため、これらの影の存在が緩和される。健康な唇と不健康な唇との間のこの差異を起こす機構の概略図を図1に与える。さらに、退行期間測定を8週間の試験後に実施した。試験の塗布期を終えた24時間及び72時間後、参加者の皮膚キャパシタンス及びTEWLを再び測定した。参加者は、退行期間中に唇用製品を全くつけなかった。
【0067】
コルネオメーター(Courage&Khazaka)は、唇の表面での電気容量測定を利用して唇の含水量を定量化する。唇の表面の電気容量を測定することにより、唇含水量の測定値が水と他の物質との誘電率の差により得られる。コルネオメーター単位が高いことは、唇の含水量が高いことを示す。測定は、唇に製品が全くない状態で実施した。図2Aは、種々の時点での試験された各集団のコルネオメーター測定値の結果を示す。
【0068】
Ventilated Chamber Evaporimeter(cyberDERM)により測定したTEWL測定値は、各時点での唇表皮からの水分蒸散を反映した。測定は、唇に製品がない状態で行った。欠陥があるバリアは、より多い水分蒸散をもたらすが、より低いTEWL値は、水分蒸散の防止を示す。図2Bは、逆転されたy軸で種々の時点での試験された各集団のTEWL測定値の結果を示す。
【0069】
唇により失われた水の量は、バリアのみにより影響されるだけでなく、唇中の保湿の量にも影響される。各試料集団の唇のバリア機能変化の完全な描写を、各対象のTEWLの変化のパーセントを皮膚キャパシタンスの変化のパーセントから引くことにより計算した。図2Cは、各試料集団のバリア機能の変化を示す。図2A~2Cにおいて、「」は、試験の開始時の唇での測定に対して、p≦0.05の有意性(両側分布)で統計的に有意な結果を表す一方、「×」は、p≦0.10(両側分布)の有意性への傾向を有する結果を表す。
【0070】
光学的測定は、グリセリン及びα-ヒドロキシ酸を受けた集団がより健康でより滑らかな唇を有することを示した。さらに、図2A~2Cから分かる通り、グリセリン及びα-ヒドロキシ酸を含む製剤による処置は、唇の保湿及び何もつけていない皮膚の水分蒸散の統計的に有意な減少を著しく増加させることが可能であった。実際に、グリセリン及びα-ヒドロキシ酸の毎日の複数の処置を含む処置を利用する対象のみが、3日間の退行後に著しく少ない水分蒸散を有した。さらに、これらの結果は、ビタミンE及びクプアスバターと組み合わせた閉塞により作用する市販の保湿性Intense Lipstickに見られない。α-ヒドロキシ酸とグリセリンとの組合せは、より滑らかな唇表面を独自に与え、唇に水分を送り、唇の水分蒸散を減少させる。
【0071】
実施例2:α-ヒドロキシ酸を有するグリセリン相の第一垂直応力測定
数種のグリセリン相(「相」)の第一垂直応力差を乳化前に測定した。これらのグリセリン相の成分を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
TA Instruments AR-G2 Rheometerを使用して、相A~Eのそれぞれ及び100%グリセリン相の粘度測定を、2度のコーン及びプレートジオメトリー及び52ミクロンギャップを使用して実施した。測定は、100Paのせん断応力及び25℃(77°F)で行った。表2中の相間の伸長粘度傾向を理解するために、第一垂直応力差を、N=2×J×η×γを利用して計算でき、式中、Jは、回復コンプライアンスであり、ηは、粘度であり、γは、レオメーターにより測定したせん断速度である。試験した各グリセリン相及び100%グリセリン相の第一垂直応力差を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
より大きい第一垂直応力差は、より高い伸長粘度を示す。分かる通り、100%グリセリンは、伸長粘度を有さない。しかし、キサンタンガム、乳酸、水酸化アンモニウム及び水のような種々の成分のグリセリン相への添加は、グリセリン系の伸長粘度の増加をもたらす。ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー/シリカ/ブチレングリコール(EP-9801、Dow Corningから市販)のような種々のシリコーンエラストマーは、内相の伸長粘度を減少させ得る。
【0076】
実施例3:油中グリセリン型エマルションの安定性測定
油中グリセリン型エマルションを調製して、種々のα-ヒドロキシ酸及び複合エラストマーポリマーにより調製したエマルションの安定性を実証する。表4は、安定性測定で試験した製剤3~7の成分を表す。
【0077】
【表4】
【0078】
分かる通り、製剤3~7を乳化剤なしで調製して、複合エラストマー粒子により与えられる安定性効果が示されるようにした。これらの製剤に使用した調整剤である、絹タンパク質、シリコーン及びアルキル基を含むハイブリッドポリマー(SEPPICから市販のProtosil LH)は、いくらかのエマルション安定性を与え得る。しかし、複合エラストマー粒子を全く含まない製剤である製剤3は、エマルションとして不安定であり、調整剤がエマルションを安定化するには不十分であったため、さらなる実験を受けられなかった。製剤4~7をスティック形状に凝固させて、さらに安定性試験をした。
【0079】
スティックを数種の環境(77°F、40°F、交互に40°F(12時間)及び110°F(12時間)、120°F及び90%湿度で120°F)に4週間配置した。各環境で4週間後、スティックの観察可能な変化を記載し、目視できるスティックの変化(例えば、シネレシス)に基づいて0~5にランク付けした。0は、観察可能な変化が全くないことを表し、5は、製剤の不安定性を示す決定的に観察可能な変化を表す。表5は、各環境で4週間後のスティックのそれぞれの観察可能な変化をまとめるものである。
【0080】
【表5】
【0081】
分かる通り、組成物中の複合エラストマー粒子の量を増やすと、油中グリセリン型エマルションの安定性が増加した。エマルションは、完全に不安定(製剤3)から、さらに厳しい状態中で観察されるわずかなシネレシス(製剤6及び7)であった。例えば、5%エラストマー粉末を有する油中グリセリン型エマルションは、120°F(90%湿度)環境中で最も安定な製剤であった。
【0082】
同様の安定性測定を、他のα-ヒドロキシ酸をその中に製剤した組成物に対して実施した。油中グリセリン型エマルションを、乳化剤(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3及びラウリルメチコン)及び2重量%の乳酸、重量で2.43のグリコール酸又は1.89重量%のトリオキサウンデカン二酸のいずれかと共に調製した。120°F(90%湿度)環境において、乳酸製剤は、4週間後に1の安定性測定値を有し、グリコール酸製剤は、スティックが幾分変色して3の安定性測定値を有し、トリオキサウンデカン二酸製剤は、固体のスティックとして固まることができなかった。分かる通り、エマルションに使用したまさにα-ヒドロキシ酸は、油中グリセリン型エマルションの安定性に対する作用を有する。しかし、乳酸以外の種々のα-ヒドロキシ酸の安定な油中グリセリン型エマルションを、異なる乳化系の使用、内相の粘度の変更などを含む公知の手段により製剤できる。さらに、異なる量の複合エラストマー粒子のこれらの製剤への組込みもエマルションの安定性を増加させ得る。
【0083】
具体的な実施形態
本開示の具体的な実施形態が以下に列挙される。
【0084】
具体的な実施形態1.1種以上のα-ヒドロキシ酸を含む油中グリセリン型エマルションの形態の唇用組成物。
【0085】
具体的な実施形態2.1種のα-ヒドロキシ酸を含む、具体的な実施形態1に記載の組成物。
【0086】
具体的な実施形態3.前記エマルションのグリセリン相は、前記α-ヒドロキシ酸のpKの0.5pH単位以内の見かけのpHを有する、具体的な実施形態1又は2に記載の組成物。
【0087】
具体的な実施形態4.凝固後、120°F及び90%湿度で固体のスティックとして少なくとも4週間にわたって存在することが可能である、具体的な実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0088】
具体的な実施形態5.前記α-ヒドロキシ酸は、乳酸である、具体的な実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0089】
具体的な実施形態6.複合エラストマー粉末をさらに含む、具体的な実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0090】
具体的な実施形態7.前記エラストマー粉末は、シリコーンエラストマー粉末である、具体的な実施形態6に記載の組成物。
【0091】
具体的な実施形態8.前記エラストマー粉末は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを含む、具体的な実施形態6に記載の組成物。
【0092】
具体的な実施形態9.前記複合エラストマー粉末は、無機微粒子及び/又は1種以上のアルコール(例えば、一価アルコール、多価アルコール、グリコールなど)で表面被覆されている、具体的な実施形態6~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0093】
具体的な実施形態10.前記複合エラストマー粉末は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)シリカ(及び)ブチレングリコールである、具体的な実施形態6に記載の組成物。
【0094】
具体的な実施形態11.前記複合エラストマー粉末は、組成物の0.1~10重量%の量で存在する、具体的な実施形態6~10のいずれか1つに記載の唇用組成物。
【0095】
具体的な実施形態12.前記複合エラストマー粉末は、組成物の1重量%~5重量%の量で存在する、具体的な実施形態6~10のいずれか1つに記載の唇用組成物。
【0096】
具体的な実施形態13.
(a)組成物の1重量%~45重量%のグリセリン;
(b)組成物の40重量%~95重量%の油;
(c)組成物の1重量%~10重量%のα-ヒドロキシ酸;及び
(d)組成物の1重量%~10重量%のエラストマー粉末
を含む、具体的な実施形態1~12のいずれか1つに記載の唇用組成物。
【0097】
具体的な実施形態14.治療的及び/又は美容的利点を、それを必要とする唇に提供する方法であって、具体的な実施形態1~13のいずれか1つに記載の唇用組成物を塗布することを含む方法。
【0098】
具体的な実施形態15.前記治療的及び/又は美容的利点は、前記唇からの水分蒸散の減少、より滑らかな唇表面(処置されていない唇と比べて)、前記唇の増加した水分(処置されていない唇と比べて)、前記唇の増加したバリア機能(処置されていない唇と比べて)、前記唇の厚くなった角質層(処置されていない唇と比べて)及びこれらの組合せから選択される、具体的な実施形態14に記載の方法。
【0099】
具体的な実施形態16.前記組成物は、1日あたり1回以上塗布される、具体的な実施形態14又は15に記載の方法。
【0100】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに上述の主題に対する種々の変更形態がなされ得るため、上記の本明細書に含まれるか又は添付される特許請求の範囲に定義される全主題は、本発明を記載し、且つ説明すると解釈されることが意図される。本発明の多くの改変形態及び変形形態は、上記の教示を考察して可能である。したがって、本明細書は、添付される特許請求の範囲の範囲内にあるそのような全ての代替形態、改変形態及び変形形態を包含するものとする。
図1
図2A
図2B
図2C