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特許7490581化粧料配合剤および化粧料並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】化粧料配合剤および化粧料並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20240520BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q19/00
A61Q5/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572320
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005669
(87)【国際公開番号】W WO2020166678
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2019023739
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019115882
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢下 亜紀良
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
(72)【発明者】
【氏名】川上 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 緩昌
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-508021(JP,A)
【文献】特表平08-508055(JP,A)
【文献】特開2014-131974(JP,A)
【文献】特開2014-131975(JP,A)
【文献】特表2009-529012(JP,A)
【文献】米国特許第06869977(US,B1)
【文献】特表2008-517881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含む毛髪処理剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。 2 が前記アルキル基の場合、R 1 における前記ヒドロキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるモノヒドロキシアルキル基、または1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、および1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基から選ばれるいずれかのポリヒドロキシアルキル基であり、前記カルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノカルボキシアルキル基であり、前記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノヒドロキシカルボキシアルキル基である。)で表され、前記アニオンがカルボン酸系アニオンである毛髪処理剤。
【請求項2】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含む毛髪処理剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化2】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2は水素原子であり、nは0~4の整数を示す。)で表される毛髪処理剤。
【請求項3】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含む毛髪処理剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化3】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2は水素原子であり、nは0~4の整数を示す。)で表され、前記アニオンがカルボン酸系アニオンである毛髪処理剤。
【請求項4】
nは1~4の整数である請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
前記アニオンに水酸基、カルボキシ基、及びカルボキシレート基から選ばれる水素結合性官能基を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
有機アンモニウム塩の無水物および水和物が、25℃で液体である請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項7】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含む毛髪処理剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化4】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。 2 が前記アルキル基の場合、R 1 における前記ヒドロキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるモノヒドロキシアルキル基、または1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、および1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基から選ばれるいずれかのポリヒドロキシアルキル基であり、前記カルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノカルボキシアルキル基であり、前記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノヒドロキシカルボキシアルキル基である。)で表され、前記有機アンモニウム塩を形成する塩基および酸を別々に配合してなる毛髪処理剤。
【請求項8】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含むスキンケア剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化5】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。 2 が前記アルキル基の場合、R 1 における前記ヒドロキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるモノヒドロキシアルキル基、または1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、および1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基から選ばれるいずれかのポリヒドロキシアルキル基であり、前記カルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノカルボキシアルキル基であり、前記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノヒドロキシカルボキシアルキル基である。)で表され、前記アニオンがカルボン酸系アニオンであるスキンケア剤。
【請求項9】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含むスキンケア剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化6】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2は水素原子であり、nは0~4の整数を示す。)で表されるスキンケア剤。
【請求項10】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含むスキンケア剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化7】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2は水素原子であり、nは0~4の整数を示す。)で表され、前記アニオンがカルボン酸系アニオンであるスキンケア剤。
【請求項11】
nは1~4の整数である請求項8~10のいずれか一項に記載のスキンケア剤。
【請求項12】
前記アニオンに水酸基、カルボキシ基、及びカルボキシレート基から選ばれる水素結合性官能基を有する請求項8~11のいずれか一項に記載のスキンケア剤。
【請求項13】
有機アンモニウム塩の無水物および水和物が、25℃で液体である請求項8~12のいずれか一項に記載のスキンケア剤。
【請求項14】
カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水酸基を有する有機アンモニウム塩を含むスキンケア剤であり、
前記カチオンがアンモニウムカチオンであり、前記アンモニウムカチオンが次式(I):
【化8】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状であるヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。 2 が前記アルキル基の場合、R 1 における前記ヒドロキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状であるモノヒドロキシアルキル基、または1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、および1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基から選ばれるいずれかのポリヒドロキシアルキル基であり、前記カルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノカルボキシアルキル基であり、前記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~5の直鎖状であるモノヒドロキシカルボキシアルキル基である。)で表され、前記有機アンモニウム塩を形成する塩基および酸を別々に配合してなるスキンケア剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料配合剤および化粧料並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪処理、スキンケア等に使用される化粧料には、保水・保湿効果を目的とした成分を配合することが知られている。しかしながら、それらの成分によってべたつき等の使用感が悪くなることがあり、保水・保湿性と使用感を満足するものが望まれていた。
【0003】
毛髪は、空気の乾燥、洗浄力の高いシャンプー、ドライヤーの熱、入浴後の自然乾燥、パーマやヘアカラーによる損傷等によって、水分が失われて乾燥する。髪が乾燥して水分量が不足すると、髪の表面を覆って水分が蒸発するのを防ぎ、毛髪につやを与え、髪の健康を保つために重要な組織であるキューティクルが剥がれ易くなる。キューティクルが剥がれると、髪が乾燥して、例えば、なめらかさが失われ、髪がパサつくことにより、毛髪の柔軟性や指通りが悪くなるだけでなく、髪が広がり易くなり、また枝毛や切れ毛が生じ易くなる。従って毛髪の乾燥によるトラブルを防ぎ、毛髪を美しく健康に保つために、髪の保水・保湿は重要である。
【0004】
従来、シャンプー等の毛髪処理組成物に、保湿性のある成分である多価アルコールを配合することが提案されている(特許文献1、2等参照)。しかしながら、従来の毛髪処理組成物は、例えば、洗髪後の乾燥、冬場の乾燥時のような低湿度環境下では保水・保湿性能が十分ではない場合や、揮発性があり長期での保水・保湿の効果が維持できない場合があり、こうした点を改善し得る新規な毛髪処理組成物が望まれていた。
【0005】
特許文献3は、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等の有機アンモニウム塩を開示している。このような有機アンモニウム塩は水分を保持する性質を持つが、毛髪に適用した場合の十分な保水・保湿効果や、安全性等に課題を有している。
【0006】
本出願人は、カチオンもしくはアニオンに水素結合性官能基を有する有機塩(イオン液体)を提案しているが(特許文献4、5)、保水・保湿効果や、毛髪、スキンケアへの適用は具体的に検討していない。
【0007】
肌荒れは主に皮膚の水分低下により引き起こされることが知られている。例えば、冬季の空気の乾燥、皮膚洗浄、加齢、皮膚分泌物の減少などにより皮膚が乾燥する。皮膚を乾燥状態のまま放置すると、皮膚のはりやつやが低下し、いわゆる肌荒れ状態になり易い。肌荒れの防止のためには角層水分含有量の低下を防止し、正常な皮膚機能を維持することが重要である。角質水分量を保持するため、従来皮膚に適度な水分を与える各種の保湿を目的としたスキンケア剤が知られている。
【0008】
従来、スキンケア剤に、保湿性のある成分である多価アルコールを配合することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来のスキンケア剤は、例えば、冬場の乾燥時のような低湿度環境下では保水・保湿性能が十分ではない場合や、揮発性があり長期での保水・保湿の効果が維持できない場合があり、こうした点を改善し得る新規なスキンケア剤が望まれていた。
【0009】
特許文献3は、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等の有機アンモニウム塩を開示している。このような有機アンモニウム塩は水分を保持する性質を持つが、スキンケア用途に適用した場合の十分な保水・保湿効果や、安全性等に課題を有している。
【0010】
本出願人は、カチオンもしくはアニオンに水素結合性官能基を有する有機塩(イオン液体)や、保水・保湿剤を提案している(特許文献4~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-136678号公報
【文献】特開2013-40153号公報
【文献】特開2014-151015号公報
【文献】特開2014-131974号公報
【文献】特開2014-131975号公報
【文献】特開2019-023185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、化粧料配合剤には、揮発せず滞留し短長期の保水・保湿性、毛髪、皮膚等への親和性、安全性が高く、使用感に優れるものが望まれていたが、全てを満足する化粧料配合剤はなかった。さらに、有効成分を溶解した際、有効成分の効果が効率よく発現することが求められ、その有効成分の溶解性、浸透性を高めることが望まれていた。
【0013】
上記の化粧料配合剤が毛髪処理剤の場合、使用感が良く、毛髪に含有するタンパク質への付着性や熱安定性に優れた化粧料配合剤が、また、スキンケア剤の場合、使用感が良く、皮膚への親和性、浸透性、美白効果を高める化粧料配合剤が望まれていた。
【0014】
従来、化粧料配合剤は保水・保湿能付与するためには多価アルコールが用いられることが知られているが、より高い保水・保湿能及び上記の効果を有する化粧料配合剤やこれらを用いた組成物が望まれていた。
【0015】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、毛髪や皮膚への適用に際して、化粧料に保水・保湿性を初めとする優れた性質を付与する新規な化粧料配合剤とそれを用いた化粧料並びにその製造方法を提供することを主な課題としている。
【0016】
特に、化粧料配合剤が毛髪処理剤である場合、毛髪に対する付着性が高く、保水性、親和性に優れ、指通り、柔軟性、手触り、はり、コシ、ボリュームアップ、まとまり、しっとり感、つや、滑らかさ、べたつきのなさ等の使用感が良く、さらに、毛髪に含有するタンパクへの付着性、安定性、熱安定性、有効成分の溶解性に優れた毛髪処理剤とそれを用いた毛髪処理組成物を提供することを課題としている。
【0017】
特に、化粧料配合剤がスキンケア剤である場合、短長期の保水・保湿性、皮膚の水分のバリア性に優れ、保湿感、べたつき、肌馴染み等の使用感も良く、皮膚への親和性、浸透性にも優れ、皮膚への安全性も高い。さらに、有効成分の溶解性も高く、美白効果を有し、帯電防止性に優れたスキンケア剤とそれを用いたスキンケア組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の化粧料配合剤は、カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩を含むことを特徴としている。
好ましい一例において、前記カチオンは、アンモニウムカチオンである。
好ましい一例において、前記アンモニウムカチオンは、次式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。)で表される。
好ましい一例において、前記化粧料配合剤は、毛髪処理剤である。
好ましい一例において、前記化粧料配合剤は、スキンケア剤である。
本発明の化粧料は、前記化粧料配合剤を含有する。
好ましい一例において、前記化粧料は、毛髪処理組成物である。
好ましい一例において、前記化粧料は、スキンケア組成物である。
本発明の化粧料の製造方法は、前記化粧料配合剤を配合する工程を含む。
本発明の化粧料の製造方法は、次式(I):
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、少なくとも1つは水素原子である。nは0~4の整数を示す。)で表されるアンモニウムカチオンとアニオンから構成される有機アンモニウム塩となる、アンモニウムカチオンを形成する塩基と、アニオンを形成する酸とを配合する工程を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化粧料配合剤とそれを用いた化粧料並びにその製造方法によれば、化粧料配合剤は、揮発せず滞留し短長期の保水・保湿性、毛髪、皮膚等への親和性、安全性が高く、使用感に優れ、さらに、有効成分の溶解性、浸透性を高め、有効成分の効果が効率よく発現することができる。
【0024】
また、化粧料配合剤が毛髪処理剤である場合、毛髪に対する付着性が高く、保水性、親和性、帯電防止性に優れ、指通り、柔軟性、手触り、はり、コシ、ボリュームアップ、まとまり、しっとり感、つや、滑らかさ、べたつきのなさ等の使用感が良く、さらに、毛髪に含有されるタンパク質への付着性、安定性、熱安定性、有効成分の溶解性に優れた毛髪処理剤とそれを用いた毛髪処理組成物を提供することがきる。
【0025】
化粧料配合剤がスキンケア剤である場合、短長期の保水・保湿性、皮膚の水分のバリア性に優れ、保湿感、べたつき、肌馴染みの使用感も良く、皮膚への親和性、浸透性にも優れ、皮膚への安全性も高い。さらに、有効成分の溶解性も高く、美白効果を有し、帯電防止性に優れたスキンケア剤とそれを用いたスキンケア組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】表14の評価において、風乾後の毛髪外観を観察した写真と、毛髪表面のSEM像である。
図1B】表14の評価において、風乾後の毛髪外観を観察した写真と、毛髪表面のSEM像である。
図2】表16の評価において、風乾後の毛髪外観を観察した写真である。
図3】表17の評価において、風乾後の毛髪外観を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.化粧料配合剤
本発明の化粧料配合剤は、製品である化粧料に、原料として配合するものを主な対象としている。
【0028】
化粧料配合剤としては、特に限定されないが、例えば、毛髪等に適用する製品である毛髪処理組成物に、原料として配合する毛髪処理剤、皮膚等に適用する製品であるスキンケア組成物に、原料として配合するスキンケア剤等が挙げられる。前記毛髪としては、特に限定されないが、例えば、頭髪、鬚髯、眉毛、睫毛、鼻毛、耳毛、腋毛、体毛等の人体の毛が挙げられ、本発明の化粧料配合剤は、これらの毛髪に関連する化粧料に適用できる。上記スキンケア剤の対象としては、特に限定されないが、例えば、皮膚、肌、角質、爪、口腔や鼻腔内の粘膜等が挙げられ、本発明の化粧料配合剤は、これらの対象に関連する化粧料に適用できる。
【0029】
本発明の化粧料配合剤は、カチオンとアニオンの少なくともいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩を含む。
本発明において有機アンモニウム塩は、窒素原子をイオン中心とする有機カチオンまたはNH4 +、および有機アニオンを含む。
【0030】
1-1.カチオン
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、特に限定されるものではないが、窒素原子をイオン中心とするカチオン、例えば、アンモニウムカチオン(有機基で置換された有機アンモニウムカチオンNR4 +(Rは少なくとも1つが有機基でその他は水素原子)及びNH4 +)や、アンモニウムカチオンの他に、カチオンの窒素原子が有機基で置換された有機アンモニウム塩のカチオンとして、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、イソキノリニウムカチオン、オキサゾリニウムカチオン、チアゾリニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、グアニジウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン、トリアジニウムカチオン、キノリニウムカチオン、インドリニウムカチオン、キノキサリニウムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、カチオン性アミノ酸等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。なお、ここで例示したカチオンは、記載したとおりの基本構造のカチオンの他、水素結合性官能基等の置換基を含むものを包含する総称として示している。
【0031】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンに水素結合性官能基を有することが好ましい。
【0032】
水素結合性官能基としては、特に限定されないが、例えば、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基、窒素に直接結合した水素原子等が挙げられる。
【0033】
酸素含有基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、カルボキシ基、カルボキシレート基、尿素基、ウレタン基、アミド基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバミン酸基、カルバメート基等が挙げられる。
【0034】
窒素含有基としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0035】
硫黄含有基としては、特に限定されないが、例えば、硫酸基(-O-S(=O)2-O-)、スルホニル基(-S(=O)2O-)、スルホン酸基(-S(=O)2-)、メルカプト基(-SH)、チオエーテル基(-S-)、チオカルボニル基(-C(=S)-)、チオ尿素基(-N-C(=S)-N-)、チオカルボキシ基(-C(=S)OH)、チオカルボキシレート基(-C(=S)O-)、ジチオカルボキシ基(-C(=S)SH)、ジチオカルボキシレート基(-C(=S)S-)等が挙げられる。
【0036】
リン含有基としては、特に限定されないが、例えば、リン酸基(-O-P(=O)(-O-)-O-)、ホスホン酸基(-P(=O)(-O-)-O-)、ホスフィン酸基(-P(=O)-O-)、亜リン酸基(-O-P(-O-)-O-)、亜ホスホン酸基(-P(-O-)-O-)、亜ホスフィン酸基(-P-O-)ピロホスフェート基[(-O-P(=O)(-O-))2―O-]等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、カチオンに有する水素結合性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、窒素に直接結合した水素原子が好ましい。これらの中でも、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、エーテル基、窒素に直接結合した水素原子がより好ましく、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、窒素に直接結合した水素原子がさらに好ましく、水酸基、窒素に直接結合した水素原子が特に好ましい。例えば、水素結合性官能基を持つ置換基としては、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシカルボキシアルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基等が挙げられる。
【0038】
上記ヒドロキシアルキル基は、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状で、直鎖状が好ましく、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0039】
上記カルボキシアルキル基は、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状で、直鎖状が好ましく、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0040】
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基は、水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは1~5の直鎖状もしくは分岐鎖状で、直鎖状が好ましく、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよい。
【0041】
ここで、アルキル部位が酸素原子を含む場合、該酸素原子は、例えば、アルキル部位にエーテル結合、カルボニル基、水酸基、カルボキシレート基、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を形成もしくは含有する。したがって本発明において「アルキル部位が酸素原子を含む」とは、酸素原子を含む原子団として窒素原子等のヘテロ原子をも含む基によってアルキル部位が中断もしくは水素原子が置換される場合を包含する。
【0042】
上記ヒドロキシアルキル基としては、モノヒドロキシアルキル基、ポリヒドロキシアルキル基を挙げることができ、それぞれのアルキル基に酸素原子を含んでいても良い。これらの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、アルコキシヒドロキシアルキル基、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル基等が挙げられる。
【0043】
モノヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシプロパン-2-イル基、2-ヒドロキシプロパン-2-イル基、1-ヒドロキシブタン-1-イル基、2-ヒドロキシブタン-1-イル基、3-ヒドロキシブタン-1-イル基、4-ヒドロキシブタン-1-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-ヒドロキシブタン-2-イル基、2-ヒドロキシブタン-2-イル基、3-ヒドロキシブタン-2-イル基、4-ヒドロキシブタン-2-イル基、1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル基、5-ヒドロキシペンタン-1-イル基、6-ヒドロキシヘキサン-1-イル基、7-ヒドロキシヘプタン-1-イル基、8-ヒドロキシオクタン-1-イル基、9-ヒドロキシノナン-1-イル基、10-ヒドロキシデカン-1-イル基等が挙げられる。モノヒドロキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~4のものがさらに好ましく、炭素数1~3のものが特に好ましい。
【0044】
ポリヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基等が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、1,2-ジヒドロキシエチル基等のジヒドロキシエチル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基等のジヒドロキシプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基等のジヒドロキシプロパン-2-イル基;トリヒドロキシプロパン-1-イル基;トリヒドロキシプロパン-2-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-1-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-1-イル基等のジヒドロキシブタン-1-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-1-イル基等のトリヒドロキシブタン-1-イル基;テトラヒドロキシブタン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基等のジヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;トリヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;テトラヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-イル基;1,2-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、1,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,3-ジヒドロキシブタン-2-イル基、2,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基、3,4-ジヒドロキシブタン-2-イル基等のジヒドロキシブタン-2-イル基;1,2,3トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,2,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、1,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基、2,3,4トリヒドロキシブタン-2-イル基等のトリヒドロキシブタン-2-イル基;テトラヒドロキシブタン-2-イル基;1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基;ジ、トリ、テトラ、又はペンタヒドロキシペンタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、またはヘキサヒドロキシヘキサン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、またはヘプタヒドロキシヘプタン-1-イル基;ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、又はオクタヒドロキシオクタン-1-イル基等が挙げられる。ポリヒドロキシアルキル基は、水酸基の数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3である。アルキル部位の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。nは、好ましくは1~2の整数である。
【0045】
また、次式で表わされる分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基は好ましいものとして例示される。
【0046】
【化2】
(式中、R11は水素原子、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、又は炭素数1~4の直鎖状のモノヒドロキシアルキル基を示す。)
【0047】
以上のポリヒドロキシアルキル基の中でも、2,3-ジヒドロキシプロパン-1-イル基、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-エチルプロパン-2-イル基、1,3-ジヒドロキシ-2-ヒドロキシメチルプロパン-2-イル基、ペンタヒドロキシヘキサン-1-イル基が好ましい。
【0048】
上記カルボキシアルキル基としては、モノカルボキシアルキル基、ポリカルボキシアルキル基を挙げることができ、これらの具体例としては、上記において例示したモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基をカルボキシ基に置換したもの(アルキル部位に酸素原子を含んでも良い)が挙げられる。
【0049】
上記モノカルボキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロパン-1-イル基、2-カルボキシプロパン-1-イル基、3-カルボキシプロパン-1-イル基、1-カルボキシプロパン-2-イル基、2-カルボキシプロパン-2-イル基、1-カルボキシブタン-1-イル基、2-カルボキシブタン-1-イル基、3-カルボキシブタン-1-イル基、4-カルボキシブタン-1-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、2-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、3-カルボキシ-2-メチルプロパン-1-イル基、1-カルボキシブタン-2-イル基、2-カルボキシブタン-2-イル基、3-カルボキシブタン-2-イル基、4-カルボキシブタン-2-イル基、1-カルボキシ-2-メチルプロパン-2-イル基、5-カルボキシペンタン-1-イル基、6-カルボキシヘキサン-1-イル基、7-カルボキシヘプタン-1-イル基、8-カルボキシオクタン-1-イル基、9-カルボキシノナン-1-イル基、10-カルボキシデカン-1-イル基等が挙げられる。カルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~5のものがさらに好ましい。
【0050】
上記ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、上記において例示したジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、またはオクタヒドロキシアルキル基の水酸基の一部をカルボキシ基に置換したもの(アルキル部位に酸素原子を含んでも良い)が挙げられる。水酸基およびカルボキシ基を各々1個有するモノヒドロキシカルボキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)、1-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(セリン)、2-ヒドロキシエチル-2-カルボキシエチル基(トレオニン)等が挙げられる。ヒドロキシカルボキシアルキル基としては、2-ヒドロキシ-3-カルボキシブタン-1-イル基(カルニチン)が好ましい。ヒドロキシカルボキシアルキル基は、アルキル部位が炭素数1~10のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~5のものがさらに好ましい。
【0051】
上記アルキルエステル基としては、特に限定されないが、例えば、上記において例示したカルボキシアルキル基のカルボキシ基をエステル化したものが挙げられる。エステル基を1個有するモノアルキルエステル基としては、例えば、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)、1-エトキシエタン-2-イル基などが挙げられる。アルキルエステル基としては、1-アセトキシエタン-2-イル基(アセチルコリン)が好ましい。
【0052】
カチオンにおける水素結合性官能基以外の官能基としては、例えば、アルキル基を挙げることができる。アルキル基は、炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状が好ましく、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐状が更に好ましく、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐状がさらに好ましい。アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロパン-1-イル基、プロパン-2-イル基、ブタン-1-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ブタン-2-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、ペンタン-1-イル基、1-メチルブタン-1-イル基、2-メチルブタン-1-イル基、3-メチルブタン-1-イル基、1-エチルブタン-1-イル基、1,1-ジメチルプロパン-1-イル基、1,2-ジメチルプロパン-1-イル基、2,2-ジメチルプロパン-1-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基、ドデカン-1-イル基、テトラデカン-1-イル基、ヘキサデカン-1-イル基、オクタデカン-1-イル基等が挙げられる。
【0053】
本発明に使用される有機アンモニウム塩のカチオンは、全てがアルキル基で置換されることも好ましい態様の一つであるが、本発明の効果、すなわち保水・保湿性を得る点において、本発明に使用される有機アンモニウム塩のカチオンに1個以上の水素結合性官能基を持つアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子を有することが好ましい。この場合、カチオンにおける官能基を導入可能な部位(窒素部位や、窒素と共に環を構成する炭素部位などの、基本骨格となる化学構造に含まれる原子)が、その1つ以上が水素結合性官能基を持つアルキル基で置換されるとともに、それ以外の部位が、アルキル基で置換されるのが好ましい。また水素結合性官能基を持つアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成されることがより好ましく、1個以上窒素に直接結合した水素原子が含まれていることがさらに好ましい。特に好ましいカチオン構造は、水素結合性官能基を持つアルキル基と窒素に直接結合した水素原子で構成されるカチオンである。
上記水素結合性官能基は、水酸基が好ましい。
【0054】
有機アンモニウム塩のカチオンとしては、アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオンが好ましく、アンモニウムカチオンがより好ましい。
【0055】
本発明の化粧料配合剤は、有機アンモニウム塩のカチオンが次式(I)で表されるアンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0056】
【化1】
【0057】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、nは0~4の整数を示す。)
[1] 式(I)において、nは1~4の整数であることが好ましい。
[2] 上記[1]において、R2が水素原子であることが好ましい。
[3] 上記[1]において、R1は、アルキル部位が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基もしくはモノカルボキシアルキル基であることが好ましい。アルキル部位の炭素数は、モノヒドロキシアルキル基では好ましくは1~6、より好ましくは1~4であり、モノカルボキシアルキル基では好ましくは1~6、より好ましくは1~5である。これらの中でも、モノヒドロキシアルキル基が好ましい。
[4] 上記[3]において、R2が水素原子であることが好ましい。
[5] 上記[1]において、R2が炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であることが好ましい。アルキル基は、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~4である。
[6] 上記[1]において、R1のうち少なくとも1つが、水酸基を2個以上有し、かつアルキル部位が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基であることが好ましい。水酸基の数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3である。アルキル部位の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。nは、好ましくは1~2の整数である。
[7] 上記[6]において、R2が水素原子であることが好ましい。
【0058】
1-2.アニオン
本発明に使用される有機アンモニウム塩のアニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、ホウ素系アニオン、フッ素系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸系アニオン等が挙げられ、それらの中でもハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、ホウ素系アニオン、カルボン酸系アニオンが好ましく、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、カルボン酸系アニオンがより好ましく、カルボン酸系アニオンがさらに好ましい。
【0059】
前記ハロゲン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、クロリドイオン、ブロミドイオン、ヨードイオン等が挙げられる。
【0060】
前記硫黄系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、スルホナートアニオン、水素スルホナートアニオン、アルキルスルホナートアニオン(例えば、メタンスルホナート、エタンスルホナートブタンスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホナート、スチレンスルホナート、3-スルホプロピルメタクリレートアニオン、3-スルホプロピルアクリレート等)、スルファートアニオン、水素スルファートアニオン、アルキルスルファートアニオン(例えば、メチルスルファートアニオン、エチルスルファートアニオン、ブチルスルファートアニオン、オクチルスルファートアニオン、2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファートアニオン等)等が挙げられる。
【0061】
前記リン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ホスファートアニオン、水素ホスファートアニオン、二水素ホスファートアニオン、ホスホナートアニオン、水素ホスホナートアニオン、二水素ホスホナートアニオン、ホスフィナートアニオン、水素ホスフィナートアニオン、アルキルホスファートアニオン(例えば、ジメチルホスファート、ジエチルホスファート、ジプロピルホスファートアニオン、ジブチルホスファートアニオン等)、アルキルホスホナートアニオン(例えば、メチルホスホナートアニオン、エチルホスホナートアニオン、プロピルホスホナートアニオン、ブチルホスホナートアニオン、メチルメチルホスホナートアニオン等)、アルキルホスフィナートアニオン、ヘキサアルキルホスファートアニオン等が挙げられる。
【0062】
前記シアン系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラシアノボレートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、イソチオシアネートアニオン等が挙げられる。
【0063】
前記ホウ素系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラフルオロボレートアニオン、ビスオキサレートボラートアニオン、テトラフェニルボレートアニオンのようなテトラアルキルボレートアニオン等が挙げられる。
【0064】
前記フッ素系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドアニオン等)、パーフルオロアルキルスルホナートアニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフラートアニオン、パーフルオロオクタンスルホーナートアニオン等)、フルオロホスファートアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスファートアニオン、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファートアニオン等)、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチドアニオン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチドアニオン等)、フルオロハイドロジェネートアニオン等が挙げられる。
【0065】
本発明の効果、すなわち保水・保湿性を得る点において、アニオンがハロゲン原子を含むホウ素系アニオンあるいは、ハロゲン系アニオンを使用することができるが、25℃で液体として使用する場合は、ハロゲン原子を含むホウ素系アニオンがより好ましい。
【0066】
本発明の効果、すなわち保水・保湿性を得る点において、アニオンがハロゲン原子を含むホウ素系アニオンあるいは、ハロゲン系アニオンである場合、クロリドイオンよりブロミドイオンが好ましく、ハロゲン原子を含むホウ素系アニオンがより好ましい。
【0067】
前記窒素酸化物系アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸アニオン、亜硝酸アニオンが挙げられる。
【0068】
前記カルボン酸系アニオンは、分子中に、少なくとも1個以上のカルボン酸アニオン(-COO-)を持つ有機酸アニオンであり、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基を含んでも良く、この中でも酸素含有基が好ましく、酸素含有基の中でも水酸基、カルボキシ基がより好ましく、水酸基が更に好ましい。特に限定されないが、カルボン酸系アニオンとしては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸アニオン、不飽和脂肪族カルボン酸アニオン、脂環式カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオン、脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオン、カルボニルカルボン酸アニオン、アルキルエーテルカルボン酸アニオン、ハロゲンカルボン酸アニオン、アミノ酸アニオン等が挙げられる。(以下に挙げるカルボン酸アニオンの炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む)
【0069】
前記飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数1~22が好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0070】
前記不飽和脂肪族カルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数3~22が好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、マレイン酸、フマル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0071】
前記脂環式カルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、シクロヘキサン環骨格を有する脂環式カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0072】
前記芳香族カルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環又は複数の環と1個以上のカルボン酸アニオンからなり炭素数6~20が好ましい。中でも、ベンゼン環骨格を有する芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、特に限定されないが、例えば、安息香酸、ケイヒ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0073】
前記飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、カルボキシ基、カルボキシレート基を含んでも良く、炭素数2~24が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する炭素数2~7の飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、セレブロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0074】
前記不飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数3~22が好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、リシノール酸、リシノレイン酸、リシネライジン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0075】
前記脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持たない飽和もしくは不飽和の炭素環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数4~20が好ましい。中でも、1~4個の水酸基を有する6員環骨格の脂環式ヒドロキシカルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、シキミ酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。また、水酸基を有する環状ラクトンからプロトンが解離したアニオンも好ましく使用でき、具体的には、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸等からプロトン解離したアニオンが挙げられる。
【0076】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸アニオンは、芳香族性を持つ単環あるいは複数の環、1個以上のカルボン酸アニオン及び1個以上の水酸基からなり、炭素数6~20が好ましい。中でも、1~3個の水酸基を有するベンゼン環骨格の芳香族カルボン酸アニオンが好ましく、具体的には、特に限定されないが、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0077】
前記カルボニルカルボン酸アニオンは、分子内にカルボニル基を有する炭素数3~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のカルボニル基を有する炭素数3~7のカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3((CH2pCO(CH2q)COO-(p及びqは0~2の整数を示す。)で表わされるカルボニルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、レブリン酸、ピルビン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0078】
前記アルキルエーテルカルボン酸アニオンは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル カルボン酸アニオンを含む、分子内にエーテル基を有する炭素数2~22のカルボン酸アニオンであり、1~2個のエーテル基を有する炭素数2~12のアルキルカルボン酸アニオンが好ましい。中でも、CH3(CH2rO(CH2sCOO-(r及びsは0~4の整数を示す。)で表わされるアルキルエーテルカルボン酸アニオン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酪酸、エトキシ酪酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0079】
前記ハロゲンカルボン酸アニオンとしては、炭素数2~22のハロゲンカルボン酸アニオンが好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタクロロプロピオン酸、ペンタブロモプロピオン酸、パーフルオロノナン酸、パークロロノナン酸、パーブロモノナン酸等のフッ素置換のハロゲンカルボン酸等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0080】
前記アミノ酸アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、N-アセチルグルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、サルコシン、アミノ酪酸、メチルロイシン、アミノカプリル酸、アミノヘキサン酸、ノルバリン、アミノ吉草酸、アミノイソ酪酸、チロキシン、クレアチン、オルニチン、オパイン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン、デスモシン等からプロトンが解離したアニオンが挙げられる。
【0081】
本発明の効果、すなわち、毛髪処理剤における毛髪への付着性、保水・保湿性、親和性、帯電防止性、毛髪のタンパク質への付着性ならびに安定化、熱に対する安定性、有効成分の溶解性、例えば、毛髪の指通り、柔軟性、手触り、はり、コシ、ボリュームアップ、まとまり、しっとり感、つや、滑らかさ、べたつきのなさ等の官能性おいて、アニオンは、上記のハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸系アニオンが好ましく、その中でもハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン酸系、ホウ素系アニオン、カルボン酸系が好ましく、カルボン酸系アニオン、ハロゲン系アニオンがより好ましく、カルボン酸系アニオンがさらに好ましい。
【0082】
本発明の効果、すなわち、スキンケア剤における短長期の保水・保湿、皮膚の水分のバリア性、帯電防止性、特定の有効成分の高溶解性、例えば、持続的な保湿感、べとつかなさ、肌馴染み等の官能性、皮膚への高親和性、浸透性、低刺激性で高安全性、美白効果において、アニオンは、上記の硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸系アニオン、ハロゲン系アニオンが好ましく、その中でも硫黄系アニオン、リン系アニオン、カルボン酸系アニオンがより好ましく、リン系アニオン、カルボン酸系アニオンが更に好ましく、カルボン酸系アニオンが特に好ましい。
【0083】
上記のハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン系アニオン、シアン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、ホウ素系アニオン、カルボン酸系アニオン等が好ましく、それらの中でもハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン酸系アニオン、ホウ素系アニオン、カルボン酸系アニオンが好ましく、ハロゲン系アニオン、硫黄系アニオン、リン酸系アニオン、カルボン酸系アニオンがより好ましく、カルボン酸系アニオンがさらに好ましい。
【0084】
カルボン酸アニオンの中でも、保水・保湿効果の点においては、親水性のカルボン酸アニオンが好適であり、そのようなカルボン酸アニオンとしては、炭素数8以下が好ましく、炭素数6以下がより好ましい。アニオンには、水素結合性官能基を有することが好ましく、官能基としては酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合可能な基が含まれることが好ましい。具体的には、水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基が好ましく、中でも水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基がより好ましく、水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基がさらに好ましく、特に水酸基が特に好ましい。特に限定されないが、例えば、炭素数8以下のカルボン酸アニオンとして、蟻酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、吉草酸アニオン、カプロン酸アニオン、エナント酸アニオン、カプリル酸アニオン、シュウ酸アニオン、マロン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、ピメリン酸アニオン、スベリン酸アニオン、アクリル酸アニオン、メタクリル酸アニオン、クロトン酸アニオン、シクロヘキサンカルボン酸アニオン、シクロヘキサンジカルボン酸アニオン、安息香酸アニオン、フタル酸アニオン、イソフタル酸アニオン、テレフタル酸アニオン、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、タルトロン酸アニオン、グリセリン酸アニオン、ヒドロキシ酢酸アニオン、ヒドロキシ酪酸アニオン、セレブロン酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、シトラマル酸アニオン、クエン酸アニオン、イソクエン酸アニオン、ロイシン酸アニオン、メバロン酸アニオン、パントイン酸アニオン、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)アニオン、シキミ酸アニオン、サリチル酸アニオン、ヒドロキシ安息香酸アニオン、ジヒドロキシ安息香酸アニオン、トリヒドロキシ安息香酸アニオン、ヒドロキシメチル安息香酸アニオン、バニリン酸アニオン、シリング酸アニオン、ピロトカテク酸アニオン、ゲンチジン酸アニオン、オルセリン酸アニオン、マンデル酸アニオン、レブリン酸アニオン、ピルビン酸アニオン、メトキシ酢酸アニオン、エトキシ酢酸アニオン、メトキシ酪酸アニオン、エトキシ酪酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、トリクロロ酢酸アニオン、トリブロモ酢酸アニオン、ペンタフルオロプロピオン酸アニオン、ペンタクロロプロピオン酸アニオン、ペンタブロモプロピオン酸アニオン、グリシンアニオン、アラニンアニオン、グルタミン酸アニオン、N-アセチルグルタミン酸アニオン、アルギニンアニオン、アスパラギンアニオン、アスパラギン酸アニオン、イソロイシンアニオン、グルタミンアニオン、ヒスチジンアニオン、システインアニオン、ロイシンアニオン、リシンアニオン、プロリンアニオン、トレオニンアニオン、セリンアニオン、メチオニンアニオン、バリンアニオン、サルコシンアニオン、アミノ酪酸アニオン、メチルロイシンアニオン、アミノカプリル酸アニオン、アミノヘキサン酸アニオン、ノルバリンアニオン、アミノ吉草酸アニオン、アミノイソ酪酸アニオン、クレアチンアニオン、オルニチンアニオン、オパインアニオン、テアニンアニオン、トリコロミンアニオン、イボテン酸アニオン、シスチンアニオン、ヒドロキシプロリンアニオン、ホスホセリンアニオンが好ましく、炭素数6以下のカルボン酸アニオンとして、蟻酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、吉草酸アニオン、カプロン酸アニオン、シュウ酸アニオン、マロン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、アクリル酸アニオン、メタクリル酸アニオン、クロトン酸アニオン、シクロヘキサンカルボン酸アニオン、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、タルトロン酸アニオン、グリセリン酸アニオン、ヒドロキシ酢酸アニオン、ヒドロキシ酪酸アニオン、セレブロン酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、シトラマル酸アニオン、クエン酸アニオン、イソクエン酸アニオン、ロイシン酸アニオン、メバロン酸アニオン、パントイン酸アニオン、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、レブリン酸アニオン、ピルビン酸アニオン、メトキシ酢酸アニオン、エトキシ酢酸アニオン、メトキシ酪酸アニオン、エトキシ酪酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、トリクロロ酢酸アニオン、トリブロモ酢酸アニオン、ペンタフルオロプロピオン酸アニオン、ペンタクロロプロピオン酸アニオン、ペンタブロモプロピオン酸アニオン、グリシンアニオン、アラニンアニオン、グルタミン酸アニオン、N-アセチルグルタミン酸アニオン、アルギニンアニオン、アスパラギンアニオン、アスパラギン酸アニオン、イソロイシンアニオン、グルタミンアニオン、ヒスチジンアニオン、システインアニオン、ロイシンアニオン、リシンアニオン、プロリンアニオン、トレオニンアニオン、セリンアニオン、メチオニンアニオン、バリンアニオン、サルコシンアニオン、アミノ酪酸アニオン、メチルロイシンアニオン、アミノヘキサン酸アニオン、ノルバリンアニオン、アミノ吉草酸アニオン、アミノイソ酪酸アニオン、クレアチンアニオン、オルニチンアニオン、オパインアニオン、テアニンアニオン、トリコロミンアニオン、イボテン酸アニオン、シスチンアニオン、ヒドロキシプロリンアニオン、ホスホセリンアニオンがより好ましく、水酸基を有するカルボン酸アニオンとして、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、タルトロン酸アニオン、グリセリン酸アニオン、ヒドロキシ酢酸アニオン、ヒドロキシ酪酸アニオン、セレブロン酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、シトラマル酸アニオン、クエン酸アニオン、イソクエン酸アニオン、ロイシン酸アニオン、メバロン酸アニオン、パントイン酸アニオン、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸アニオン、キナ酸(1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)アニオン、シキミ酸アニオン、サリチル酸アニオン、ヒドロキシ安息香酸アニオン、ジヒドロキシ安息香酸アニオン、トリヒドロキシ安息香酸アニオン、ヒドロキシメチル安息香酸アニオン、バニリン酸アニオン、シリング酸アニオン、ピロトカテク酸アニオン、ゲンチジン酸アニオン、オルセリン酸アニオン、マンデル酸アニオン、トリコロミンアニオン、イボテン酸アニオン、ヒドロキシプロリンアニオン、セリンアニオン、トレオニンアニオンが特に好ましく、中でも、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、クエン酸アニオン、キナ酸アニオンがさらに好ましい。
【0085】
また、本発明の効果をより高めるためには、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンとアニオンの両方に水素結合性官能基を有する有機塩が特に好ましい。
【0086】
一方で、スキンケア剤におけるエモリエント効果、バリア性、油溶成分の溶解性、乳化組成物の安定性向上、使用感向上、洗浄作用、皮膚の潤いを保つ点においては、親油性のカルボン酸アニオンが好適であり、そのようなカルボン酸アニオンとしては、水酸基等の置換基の数にもよるが、1個のカルボン酸アニオンを有する飽和および不飽和脂肪族カルボン酸アニオンを例に挙げると、炭素数8以上が好ましく、炭素数12以上がより好ましく、炭素数18以上が更に好ましい。親油性のカルボン酸アニオンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、カプリル酸アニオン、ペラルゴン酸アニオン、カプリン酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、ペンタデシル酸アニオン、パルミチン酸アニオン、マルガリン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、イソステアリン酸アニオン、アラキジン酸アニオン、ヘンイコシル酸アニオン、ベヘン酸アニオン、パルミトレイン酸アニオン、オレイン酸アニオン、バクセン酸アニオン、リノール酸アニオン、リノレン酸アニオン等が好ましく、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、イソステアリン酸アニオンがより好ましい。
【0087】
1-3.カチオンとアニオンの付記
本発明の化粧料配合剤に使用される有機アンモニウム塩は、カチオン、アニオンのいずれか若しくは両方に、安全性の観点から、天然系化合物を使用することが好ましい。特に限定されないが、例えば、カチオンとしては、コリンカチオン、アセチルコリンカチオン、アセチルチオコリンカチオン、カルニチンカチオン、ベダイン、スルホベダイン、エチル(2-メトキシエチル)ジメチルアンモニウムカチオン、ベンジルシンコニジニウム、カルバミル-β-メチルコリンカチオン等が挙げられ、アニオンとしては、クエン酸アニオン、乳酸アニオン、リンゴ酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、グリコール酸アニオン、酒石酸アニオン、キナ酸アニオン、酢酸アニオン、酪酸アニオン、カプロン酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、コハク酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、アラニンアニオン、グリシンアニオン等が挙げられ、カチオン、アニオンの双方に用いることができるアミノ酸として、グリシン、アラニン、グルタミン酸、N-アセチルグルタミン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、グルタミン、ヒスチジン、システイン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、サルコシン、アミノ酪酸、メチルロイシン、アミノカプリル酸、アミノヘキサン酸、ノルバリン、アミノ吉草酸、アミノイソ酪酸、チロキシン、クレアチン、オルニチン、オパイン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン、デスモシン等が挙げられる。カチオンとアニオンの組合せは、特に限定されないが、具体的には、トリス酢酸塩、トリスイソステアリン酸塩、トリスオレイン酸塩、トリスリノール酸塩、トリス乳酸塩、トリスグリコール酸塩、トリスコハク酸塩、トリスリンゴ酸塩、トリス酒石酸塩、トリスフマル酸塩、トリスアスコルビン酸塩、トリスクエン酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール酢酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール乳酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールグリコール酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールコハク酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリンゴ酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール酒石酸塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールフマル酸塩、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール乳酸塩、γ-アミノ酪酸乳酸塩、ε-アミノカプロン酸乳酸塩、モノエタノールアミン乳酸塩、ジエタノールアミン乳酸塩、ジエタノールアミングリコール酸塩、ジエタノールアミンコハク酸塩、2-アミノ-1,3-プロパンジオール酢酸塩、2-アミノ-1,3-プロパンジオールグリコール酸塩、2-アミノ-1,3-プロパンジオールコハク酸塩、2-アミノ-1,3-プロパンジオールクエン酸塩、トリエタノールアミン乳酸塩、トリエタノールアミングリコール酸塩、トリエタノールアミンクエン酸塩、2-アミノ-1,3-プロパンジオール乳酸塩、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール乳酸塩、1-アミノ-1-デオキシ-D-グルシトール乳酸塩、乳酸アンモニウム塩、テトラエタノールアミン乳酸塩、トリス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-1-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-ブタナミニウム乳酸塩、コリンメタンスルホン酸塩、コリンリン酸塩、コリン次亜リン酸塩、コリン塩酸塩などが挙げられ、特にカチオン、アニオン双方が天然系のものが好ましく、コリン酢酸塩、コリングリコール酸塩、コリン乳酸塩、コリンコハク酸塩、コリン酒石酸塩、コリンアスコルビン酸塩等が挙げられる。
【0089】
安全性の観点からにおいて、カチオンがモノヒドロキシアルキルを有する場合、トリエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリエタノールアンモニウムカチオンが好ましい。
【0090】
また、安全性、使用上の観点から、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、医薬部外品原料規格(外原規)、医薬部外品添加物規格、日本薬局方(日局)、日本薬局方外医薬部外品規格(局外規)、医薬品添加物規格(薬添規)、食品添加物公定書(食添)に記載された化合物を原料(例えば、酸、塩基)に用いることが好ましく、カチオン、アニオンを構成するいずれかもしくは両方の原料が外原規、日局、局外規、薬添規、食添に記載された有機アンモニウム塩、および外原規に記載された有機アンモニウム塩を用いることがより好ましい。特に限定されないが、例えば、カチオンとしてはモノエタノールアンモニウムカチオン、ジエタノールアンモニウムカチオン、トリエタノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオンが好ましく、低臭気の観点から、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオン、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールアンモニウムカチオンがより好ましい。また、アニオンとしては酢酸アニオン、カプリル酸アニオン、カプリン酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、パルミチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、オレイン酸アニオン、リノール酸アニオン、乳酸アニオン、グリコール酸アニオン、コハク酸アニオン、クエン酸アニオン、クロリドアニオン、フマル酸アニオン、リン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン等が挙げられる。また、カチオン、アニオンに用いることができるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、システイン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、アミノ酪酸、アミノヘキサン酸、シスチン、グルタミン酸、イソロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、バリン、テアニン等が挙げられる。
【0091】
1-4.有機アンモニウム塩と化粧料配合剤
本発明の化粧料配合剤は、有機アンモニウム塩が、無水状態(無水物)であってもよく、空気中の水分を吸収した水和物であってもよい。水和物とは、化合物を空気中25℃で放置した時、吸水し、その水分率が飽和状態となった化合物をいう。空気中25℃で放置した時、吸水しない化合物は、水和物が無く、無水物である。
【0092】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、水和物であると、水和物中の水分の蒸発が抑制され、長期間保水・保湿の効果が持続する。そのため、本発明に使用される有機アンモニウム塩に、水和水を超える水を溶解し空気中に放置して水の減少を観察した場合、水和水の蒸発が抑制されるため、水分減少率が経時で減少する。
【0093】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、25℃で液体、固体のいずれであってもよいが、無水物および水和物が25℃で液体の場合、これら液体の有機アンモニウム塩の無水物、水和物および希釈物は、有機アンモニウム塩の結晶が析出したり、凝集して固化したりする等の使用上の問題が生じず、化粧料配合剤が毛髪処理剤である場合、例えば保水・保湿、付着性、帯電防止性(静電気防止性)、毛髪のタンパク質への安定化等の本発明の効果や溶解した添加剤の効果を、使用直後から、混合した他の溶剤、水が揮発した後も、有機アンモニウム塩が不揮発性であることから、毛髪表面に液体として、まんべんなくコーティングして、それらの効果を、より効果的かつ長期時間に発揮することができる。また、毛髪処理剤の付着性の点から有機アンモニウム塩を形成する酸と塩基の配合モル比は、1:5~5:1が好ましく、1:1がより好ましい。化粧料配合剤がスキンケア剤である場合、例えば、保水・保湿、帯電防止性(静電気防止性)、皮膚への高親和性、有効成分の高溶解性等の本発明の効果や溶解した添加剤の効果を、使用直後から、混合した他の溶剤、水が揮発した後も、有機アンモニウム塩が不揮発性であることから、皮膚表面に液体として、まんべんなくコーティングして、それらの効果を、より効果的かつ長期時間に発揮することができる。また、皮膚、毛髪等の安全性、損傷抑制の点から、化粧料配合剤は、pH3~10が好ましく、pH5~9がより好ましく、pH6~8が更に好ましい。特に限定されないが、例えば、pH3~10の場合、有機アンモニウム塩を形成する酸と塩基の配合モル比は2:1~1:5であり、pH5~9の場合1:2~1:1であり、pH6~8の場合1:1である。
【0094】
有機アンモニウム塩または有機アンモニウム塩に溶解した成分が持つ効果を、化粧料の毛髪、皮膚をはじめとする対象物へ、より効果的かつ長期時間に発揮することができる。例えば、低濃度含有する組成物を使用した少量の適用であっても、それらの効果は、十分発揮することができる。25℃で液体であると、他の添加剤(例えば、難溶性の有効成分)と使用する場合、基剤、溶媒、対象物内部へのキャリアーとして使用可能である。また、有機アンモニウム塩はもちろん、溶解した有効成分の毛髪や皮膚への浸透性に優れる。有効成分の溶解性の点から、化粧料配合剤の有機アンモニウム塩を構成する酸と塩基の配合モル比は1:1~2:1が好ましく、1:1がより好ましい。本発明に使用される有機アンモニウム塩の融点(凝固点)は好ましくは25℃未満、より好ましくは-5℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。
【0095】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、毛髪、皮膚をはじめとする対象物への浸透性に優れ、保水・保湿効果に有用であり、有効成分のキャリアーとしても使用できる。
【0096】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、低湿度環境下においても揮発せず、残存して水分を長期に保持し、長期間保水・保湿効果を維持する観点から好ましい。保水・保湿の効果を毛髪に付与する点において、毛髪の表面はマイナス電荷を帯びているため、本発明の有機アンモニウム塩のカチオンが相互作用して、毛髪の表面に長時間固定化することが可能である。その他に、皮膚への適用において、保水・保湿の効果を皮膚に付与する点において、本発明の化合物が持つ水素結合性官能基と皮膚表面のタンパク質の水酸基、カルボニル基、アミノ基等のアミノ残基との親和性が高く(結合し)、良好にコーティング、長期間固定化し、また、分子サイズが小さく、高い浸透性を有し好ましい。さらに、皮膚の表面がマイナス電荷を帯びている場合、本発明の有機アンモニウム塩のカチオンが相互作用して、皮膚の表面に長時間固定化することが可能である点で好ましい。
【0097】
また、毛髪表面のタンパク質は、本発明の有機アンモニウム塩が有する例えば酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合性官能基、水素原子と相互作用、結合する官能基を有しているため、カチオンおよび/またはアニオンに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩は、毛髪の例えば、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基に結合、相互作用し、良好に長時間固定化することが可能である。
【0098】
本発明の化粧料配合剤に使用される有機アンモニウム塩は、親水性に優れ、分子サイズが小さく、浸透圧が高いことから例えば、皮膚、髪等への浸透性に優れる。皮膚等は表面がマイナスまたはプラスに帯電し、髪等は表面がマイナスに帯電しているため、本発明に使用される有機アンモニウム塩は、その塩構造や水素結合性官能基を有することから吸着しやすく好適である。
【0099】
本発明の化粧料配合剤は、保水性が高く不揮発性のため、バリア性に優れ、長期間乾燥を防ぐことが可能である。特に、融点が低く、25℃で液体の場合は、よりバリア性が高い。また、本発明の化粧料配合剤(毛髪処理剤、スキンケア剤)は、(1)塩基、酸と必要に応じて溶媒と混合、有機アンモニウム塩を調製し、必要に応じて他成分を混合した化粧料配合剤(毛髪処理剤、スキンケア剤)とする、(2)予め、有機アンモニウムを調製することなく、塩基ならびに酸を各成分として別々に、必要に応じて溶媒、他成分と混合し、系中で有機アンモニウム塩を形成して化粧料配合剤(毛髪処理剤、スキンケア剤)とすることができる。
【0100】
本発明の化粧料配合剤は、製品である化粧料に、原料として配合するものを主な対象としている。
【0101】
化粧料配合剤としては、特に限定されないが、例えば、毛髪等に適用する製品である毛髪処理組成物に、原料として配合する毛髪処理剤、皮膚等に適用する製品であるスキンケア組成物に、原料として配合するスキンケア剤等が挙げられる。
【0102】
本発明の化粧料配合剤のうち毛髪処理剤は、シャンプー等の毛髪に適用する製品である毛髪処理組成物に、原料として配合する。本発明の毛髪処理剤は、以上に説明した有機アンモニウム塩やその水和物であってもよいが、上記原料として、この有機アンモニウム塩を含む組成物であってもよい。本発明の毛髪処理剤が組成物である場合、上記有機アンモニウム塩の含有量は無水物に換算して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく10.0質量%以上が特に好ましい。組成物の態様は特に限定されないが、例えば、上記有機アンモニウム塩を水や溶媒等に溶解または分散したもの等が挙げられる。
【0103】
本発明の化粧料配合剤のうちスキンケア剤は、化粧水等の皮膚に適用する製品であるスキンケア組成物に、原料として配合する。本発明のスキンケア剤は、以上に説明した有機アンモニウム塩やその水和物であってもよいが、上記配合成分として、この有機アンモニウム塩を含む組成物であってもよい。本発明のスキンケア剤が組成物である場合、上記有機アンモニウム塩の含有量は無水物に換算して0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が特に好ましく、10.0質量%以上が殊更好ましい。組成物の態様は特に限定されないが、例えば、上記有機アンモニウム塩を水や溶媒等に溶解または分散したもの等が挙げられる。
【0104】
本発明の化粧料配合剤は、有機アンモニウム塩を予め製造した後に水や溶媒、他の成分と混合して化粧料配合剤のまたは化粧料とする他に、カチオン、アニオンの原料となるそれぞれの化合物を水や溶媒、他の成分と混合して化粧料配合剤のまたは化粧料としてもよい。
【0105】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、アセトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル等が挙げられ、これらは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また組成物は添加剤を含んでもよく、特に限定されないが、例えば、pH調整剤、顔料、樹脂粒子、界面活性剤、油剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、酸化防止剤、昆虫忌避剤等の成分が挙げられる。
【0106】
本発明の化粧料配合剤は必要に応じて、pH調整剤等を添加して、pHを調整することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、天然系化合物が好適である。天然系のpH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、酒石酸、キナ酸、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、コハク酸、オレイン酸、リノール酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アラニン、グリシンを始めとする各種アミノ酸等が挙げられる。
【0107】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、混合して使用する他の成分や要求される効果によって、親水性のものや親油性のアニオンもしくはカチオンを適宜選択することができる。例えば、保水・保湿の点、水溶性の有効成分を溶解する点においては、親水性の有機アンモニウム塩が好適であり、エモリエント効果や油溶性の有効成分を溶解する点においては、親油性のアニオンもしくはカチオンを用いた有機アンモニウム塩が好適である。
本発明に使用される有機アンモニウム塩のうち室温で液体のものは、他の組成物や上記添加剤の溶媒、媒体としても機能する。
【0108】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンおよび/またはアニオンに酸素含有基、窒素含有基等、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合性官能基を有しているため、例えば、毛髪、角質、爪に含まれるケラチン等をはじめとするタンパク質の高次構造の安定化効果を有している。毛髪は、ケラチン等のタンパク質の高次構造である二次構造の変化や、結合の切断による構造変化によって変性し、毛髪に対してダメージを与え、質感を損ねてきた。本発明に使用される有機アンモニウム塩中の水素結合性官能基が、毛髪中のケラチン等のタンパク質と相互作用することで、二次構造の保持、結合切断を抑制することが可能となり、タンパク質の変性が抑制することができるため、毛髪処理後の質感を保つことが可能となる。さらに、頭皮のタンパク質の安定化効果も可能となる。
【0109】
本発明に使用される有機アンモニウム塩が毛髪中のケラチン等のタンパク質に作用する効果は、pHが中性領域(ヘアシャンプー等)に加えて、酸性領域(ヘアマニュキュア)、アルカリ性領域(ヘアカラー)においても、その効果を発揮する。
【0110】
本発明の化粧料配合剤のうち毛髪処理剤は、上記のような本発明の有機アンモニウム塩の効果により、毛髪に使用した際に、柔軟性、指通り性、ハリ・コシ、ボリューム、まとまり、しっとり感、表面の滑らかさ、つやを付与でき、手触り感に優れ、べたつきが少ない等の官能性の効果を発揮する。本発明の毛髪処理剤は、乾燥やカラーリングなどによってダメージを受けた損傷毛に対しても上記効果を有する。
【0111】
本発明に使用される有機アンモニウム塩は、カチオンおよび/またはアニオンに酸素含有基、窒素含有基等、硫黄含有基、リン含有基等の水素結合性官能基を有しているため、皮膚、角質、爪、粘膜との親和性に優れ、不揮発性であることから短長期の保水・保湿性、水分のバリア性に優れる。また、保湿感、べたつき、馴染み等の使用感も良く、浸透性にも優れ、安全性も高い。特に上述の医薬部外品原料規格(外原規)、日本薬局方(日局)、日本薬局方外医薬部外品規格(局外規)、医薬品添加物規格(薬添規)、医薬部外品添加物規格、食品添加物公定書(食添)に記載された化合物を原料に用いる場合は、これらの規格で安全性が確認されている点で好ましい。さらに、有効成分の溶解度も高く、美白効果を有し、帯電防止製にも優れる。上述のように本発明に使用されるアンモニウム塩は、ケラチンを含むタンパク質と相互作用することで、二次構造の保持、結合切断を抑制することが可能となり、タンパク質の変性を抑制することができる。そのため、皮膚、角質、爪、粘膜(口腔内、鼻腔内)の保水・保湿、タンパク質の安定の用途に使用できる。
【0112】
本願アンモニウム塩のカチオンおよび/またはアニオンに、例えば、美白効果を有する構造(酸、塩基)を導入し、有機アンモニウム塩の形態とすることにより、不揮発性、浸透性の観点から、これらの効果が持続的、効率よく効果を得ることができる。さらに、アスコルビン酸は安定性が低いが、アンモニウム塩とすることで安定化し、より効果を高めることを可能とする。
【0113】
2.化粧料への配合
本発明の化粧料の製造方法は、以上に説明した本発明の化粧料配合剤を配合する工程を含む。
【0114】
この場合、予め調製した本発明の化粧料配合剤を成分の一つとして配合し、化粧料を製造することが該当する。
【0115】
別の例として、本発明の化粧料の製造方法は、次式(I):
【0116】
【化1】
【0117】
(式中、R1はそれぞれ独立に、水酸基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシアルキル基、カルボキシ基を1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいカルボキシアルキル基、または水酸基およびカルボキシ基を各々1個以上有し、アルキル部位が炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状で、該アルキル部位が酸素原子を含んでいてもよいヒドロキシカルボキシアルキル基を示し、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、少なくとも1つは水素原子である。nは0~4の整数を示す。)で表されるアンモニウムカチオンとアニオンから構成される有機アンモニウム塩となる、アンモニウムカチオンを形成する塩基と、アニオンを形成する酸とを配合する工程を含む。
【0118】
(1)予め、前記塩基、前記酸と必要に応じて溶媒、他成分を混合した有機アンモニウム塩を含む化粧料配合剤(毛髪処理剤、スキンケア剤)を調製し、さらに化粧料配合剤と必要に応じて溶媒、他成分を混合し、化粧料(毛髪処理組成物、スキンケア組成物)を製造すること、(2)予め、有機アンモニウムを調製することなく、前記塩基ならびに前記酸を各成分として別々に、必要に応じて溶媒、他成分と混合し、系中で有機アンモニウム塩を形成して化粧料配合剤(毛髪処理剤、スキンケア剤)もしくは化粧料(毛髪処理組成物、スキンケア組成物)を製造することが該当する。
【0119】
この製造方法は、(1)に示すように、前記式(I)において、少なくとも1つのR2が水素原子である(特に、R2の全てが水素原子である)カチオンを形成する塩基、および前記アニオンを形成する酸を別々に配合してなる本発明の化粧料配合剤を用いて化粧料を製造することを含む。
【0120】
言い換えると、前記式(I)において、R2の少なくとも1つが水素原子である(特に、R2の全てが水素原子である)前記有機アンモニウム塩を形成する塩基および酸を別々に配合してなる本発明の化粧料配合剤を用いて化粧料を製造することを含む。この場合、前記式(I)におけるnは0~3の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。R1は、アルキル部位が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のモノヒドロキシアルキル基もしくはモノカルボキシアルキル基であってよく、R1のうち少なくとも1つが、水酸基を2個以上有し、かつアルキル部位が炭素数1~10で直鎖状もしくは分岐鎖状のポリヒドロキシアルキル基であってよい。
【0121】
更にこの製造方法は、(2)に示すように、有機アンモニウム塩を予め調製することなく、前記塩基と、前記酸とを各成分として別々に配合し、有機アンモニウム塩を含む化粧料を製造することを含む。
【0122】
前記塩基の具体例としては、上記「1-1.カチオン」の項に記載したアンモニウムカチオンからR2の水素原子に対応するプロトンを1つ除いた塩基等が挙げられる。また、本発明の有機アンモニウム塩におけるカチオンの水酸化物も包含する。
【0123】
前記塩基であるアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、NH3や、有機基で置換された有機アミン、例えば、NR3(Rは少なくとも1つが有機基でその他は水素原子)や、その他に、イミダゾール、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ピロリン、ピラジン、トリアジン、イソキノリン、オキサゾリン、チアゾリン、モルホリン、グアニジン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、インドリン、キノキサリン、イソオキサゾリン、アミノ酸等が挙げられる。なお、ここで例示したアミン化合物は、記載したとおりの基本構造のアミンの他、水素結合性官能基等の置換基を含むものを包含する総称として示している。
前記酸の具体例としては、上記「1-2.アニオン」の項に記載したアニオンにプロトンを付加した酸等が挙げられる。
【0124】
本発明に使用される酸としては、特に限定されるものではないが、各種のアニオンとプロトンとの化合物を用いることができ、アニオンとして、例えば、硫黄系アニオン、リン系アニオン、窒素酸化物系アニオン、カルボン酸アニオン等が挙げられる。その具体的な例や好ましい態様は上記において記述したとおりである。
【0125】
3.化粧料
本発明の化粧料は、上記に説明した本発明の化粧料配合剤を含有する。
本発明において化粧料の定義には、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものが参照される。これらの中でも毛髪、皮膚等に使用する化粧料が好ましく、毛髪処理組成物、スキンケア組成物が特に好ましい。
【0126】
(毛髪処理組成物)
本発明の毛髪処理組成物は、以上に説明した本発明の毛髪処理剤を配合した、毛髪に適用する製品を主な対象としている。毛髪としては特に限定されないが、例えば、頭髪、鬚髯、眉毛、睫毛、鼻毛、耳毛、腋毛、体毛等の人体の毛が挙げられる。
【0127】
本発明の毛髪処理組成物としては、特に限定されないが、例えば、ヘアシャンプー、スカルプシャンプー、リンス一体型シャンプー、コンディショニングシャンプー、カラーシャンプー、ヘアソープ、退色防止シャンプー、ドライシャンプー(洗い流さないシャンプー)、ヘアリンス、カラーリングリンス、ヘアクレンジング、トリートメント、カラートリートメント、洗い流さないトリートメント、アウトバストリートメント、コンディショナー、アウトバス製品、スタイリング剤、セットローション剤、ヘアマニキュア、ヘアオイル、ヘアスプレー、ヘアミスト、ムース、フォーム、ヘアジェル、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアリキッド、ヘアトニック、育毛剤、養毛剤、染毛剤、頭皮用トリートメント、マスカラ、まつげ化粧料、アイブロウ、まゆずみ等が挙げられる。
【0128】
本発明の毛髪処理組成物は、本発明の毛髪処理剤と溶媒以外に、上記したような用途においては従来の配合と技術常識も考慮した上で、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、水溶性高分子、粘度調整剤、光沢付与剤、高級アルコール、多価アルコール、高級脂肪酸、アミドアミン類、炭化水素、ワックス、エステル類、シリコーン誘導体、生理活性成分、エキス類、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、香料、保湿剤、炭素類、金属酸化物類、鉱物類、塩類、中和剤、pH調整剤、顔料、樹脂粒子、着色剤、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、清涼剤、昆虫忌避剤、酵素等が挙げられる。
【0129】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N-アシルグルタミン酸塩(ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ココイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-アシルアラニン塩(ラウロイルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム等)、N-アシルメチル-β-アラニン塩(ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等)、N-アシルサルコシン塩(ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン等)、N-アシルトレオニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルセリン塩、N-アシル-ω-アミノ酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルケニルスルホ酢酸塩等のカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩(テトラデセンスルホン酸ナトリウム等)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩(スルホコハク酸ラウレス2Na、スルホコハク酸パレス2Na等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-アシルタウリン塩、N-アシルメチルタウリン塩(ココイルメチルタウリンナトリウム等)、ホルマリン縮合系スルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルケニルアミドスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩等のスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等)、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル硫酸塩、アルキルグリセリルエーテル硫酸塩等の硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸カリウム等)、アルキルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のリン酸塩等、非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアルカノールアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアルカノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸(モノ/ジ/トリ)エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等、カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、脂肪族アミドアミン塩、脂肪族アミドグアニジウム塩、第四級アンモニウム塩(ステアリルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド等)、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アルキルエーテルアンモニウム塩等の脂肪族アミン塩およびその第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の環式第四級アンモニウム塩等、両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)、スルホベタイン型両性界面活性剤(ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)、ホスホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤(2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、アルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等、カチオン性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、カチオン化デンプン、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タマリンドガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌクリークガム、(N,N-ジメチル-3,5-メチレンピペリジウムクロリド)-アクリルアミド共重合体、ポリ(N,N-ジメチル-3,5-メチレンピペリジウムクロリド)、ポリエチレンイミン、4級化ビニルピロリドン-アミノエチルメタクリレート共重合体、アジピン酸-ジメチルアミノヒドロキシプロピレンジエチレントリアミン共重合体、アクリルアミド-β-メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム共重合体等、水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体等、粘度調整剤としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド等のアルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等のポリオキシエチレンアルキルアルカノールアミド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド等のポリオキシプロピレンアルキルアルカノールアミド、上記水溶性高分子、多糖類、上記カチオン性ポリマー等、光沢付与剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸エチレングリコールエステル(ジステアリン酸エチレングリコール等)、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸モノエタノールアミド等、高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベへニルアルコール等、多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等、高級脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等、アミドアミン類としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等、炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、ポリイソブテン、スクワラン等、ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等、エステル類としては、特に限定されないが、例えば、動植物油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、オクタン酸セチル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル等、シリコーン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチコノール等、生理活性成分としては、特に限定されないが、例えば、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与えるような天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分等、エキス類としては、特に限定されないが、例えば、植物、動物、微生物由来の各種エキス等、酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸、没食子酸エステル類等、金属イオン封鎖剤としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸およびその塩類(2カリウム2水塩、2ナトリウム塩、2ナトリウムカルシウム塩、3ナトリウム塩、4ナトリウム塩、4ナトリウム2水塩、4ナトリウム4水塩等)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸およびその塩、リン酸およびその塩、アスコルビン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩、メタリン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、フィチン酸およびその塩、クエン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、イソアミレンーマレイン酸共重合体およびその塩、ケイ酸およびその塩、ヒドロキシベンジルイミノジ酢酸およびその塩、イミノジ酢酸およびその塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸およびその塩、ニトリロトリ酢酸およびその塩、メチルグリシンジ酢酸およびその塩、L-グルタミン酸ジ酢酸およびその塩、L-アスパラギン酸ジ酢酸およびその塩等、防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン)、1,2-アルカンジオール(炭素鎖長6~14)およびその誘導体、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸ナトリウム塩、ヒノキチオール類等、紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、PABA系、アントラニル酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、香料としては、特に限定されないが、例えば、抽出物、精油、レシノイド、樹脂、花香油およびそれらの組み合わせ等の天然物質である香料成分を含む香料、保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、グルタミン酸、キトサン等、炭素類としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、活性炭、竹炭、木炭、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン、炭素バルーン等、金属酸化物類としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズ(ITO)、コバルトブルー(CoO・Al23)、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化セシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化カドミウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化鉄、酸化インジウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化トリウム、酸化インジウムスズ、ケイ酸マグネシウム、フェライト等、塩類としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸のような有機酸、または塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸の塩、中和剤、pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸、有機酸、アルカリ金属塩、有機塩基等、清涼剤としては、特に限定されないが、例えば、L-メントール、乳酸L-メンチル、メンチルグリセリルエーテル、メンタンジオール、カンファー、薄荷油等、昆虫忌避剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルトルアミド等、酵素としては、特に限定されないが、例えば、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ等が挙げられる。
【0130】
本発明の毛髪処理組成物における、本発明の毛髪処理剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果の点からは、無水物に換算した上記有機アンモニウム塩の含有量として0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、10.0質量%以上が特に好ましい。本発明の毛髪処理組成物の一例として、例えばシャンプーとする場合、本発明の毛髪処理剤の含有量は、特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。例えば、コンディショナーとする場合、本発明の毛髪処理剤の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく3.0質量%以上が特に好ましい。
【0131】
本発明の毛髪処理組成物は、本発明の毛髪処理剤の含有量が、例えば上記範囲となるように溶媒に希釈して調製することができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ベンジルアルコール、等のアルコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、マルチトール等の多価アルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水または水溶液が好ましく、特に、精製水等の水が好ましい。
【0132】
本発明の毛髪処理組成物は、例えば、本発明の毛髪処理剤および前記その他の成分を溶媒に添加、混合して調製することができる。必要に応じて固体原料は加熱溶解して混合、攪拌し、均一に混合する。
【0133】
本発明の毛髪処理組成物は、有機アンモニウム塩を使用されるのみではなく、有機アンモニウム塩を構成するカチオンとアニオンを含んでいれば良く、本発明に使用される有機アンモニウム塩を予め製造した後に、水や溶媒、他の成分と混合して毛髪処理組成物とする他に、カチオン、アニオンの原料となるそれぞれの化合物(例えば、酸ならびに塩基)と、水や溶媒、他の成分と混合順は限定されず、混合して毛髪処理組成物としてもよい。
【0134】
本発明の毛髪処理組成物は、これに含有される本発明の有機アンモニウム塩の不揮発性に起因する短長期間の保水・保湿また帯電防止(静電気防止性)、毛髪のタンパク質への付着性ならびに安定化、熱安定性の効果から、毛髪に使用した際に、まとまり、しっとり感、つや、なめらかさを付与でき、べたつきがない良好な感触が得られる。さらに、有効成分の溶解性に優れた毛髪処理組成物とすることができる。
【0135】
(スキンケア組成物)
本発明のスキンケア組成物は、以上に説明した本発明のスキンケア剤を配合した、皮膚等に適用する製品を主な対象としている。皮膚等としては、特に限定されないが、例えば、皮膚、肌、角質、爪、口腔や鼻腔内の粘膜等が挙げられる。
【0136】
スキンケア組成物としては、特に限定されず、例えば、石けん組成物、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等の皮膚洗浄剤;クレンジングオイル、クレンジングリキッド、クレンジングローション、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングバーム、クレンジングジェル、クレンジング乳液等のクレンジング化粧料;化粧水、保湿液、乳液、美容液、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリームのような基礎化粧料;パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、ゲルファンデーション、フェイスパウダー、ムースパウダー、コンシーラー、頬紅、アイシャドー、アイライナー、オーバーコート剤、口紅、リップクリーム、化粧下地のようなメークアップ化粧料;日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム等の日焼け止め化粧料;バスオイル、バスミルク、バスエッセンス等の入浴剤;シミやニキビ、傷隠し用フィルムのようなメイクアップフィルム、頭皮用トリートメント、爪化粧料、角質ケア用品、オーラルケア用品、シートマスク等が挙げられ、これらの用途において本発明の効果が皮膚等に対して発現する。
【0137】
本発明のスキンケア組成物の形状は、特に限定されず、均一又は不均一でもよく、例えば、液状~固体状とすることができ、乳化組成物としてもよい。乳化組成物としては、特に限定されないが、例えば、油中水型(W/O型)乳化組成物、水中油型(O/W型)乳化組成物、複合型エマルション(W/O/W型、O/W/O型)等とすることができる。
【0138】
本発明のスキンケア剤を含む乳化組成物は、皮膚に塗布した際の伸び、ベタつきのなさ、保湿感、肌なじみ、肌弾力のいずれの使用感について優れ、本発明に使用される有機アンモニウム塩の不揮発性に起因して、特に持続的な保湿剤感に優れる。特に、融点が25℃未満の有機アンモニウム塩を配合した乳化組成物は、伸び、べたつき、保湿感、肌なじみ等の使用感に優れ、特にべたつきのなさに優れる。
【0139】
本発明のスキンケア組成物は、本発明のスキンケア剤と溶媒以外に、上記したような用途においては従来の配合と技術常識も考慮した上で、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、カチオン性ポリマー、水溶性高分子、粘度調整剤、樹脂粒子、光沢付与剤、高級アルコール、多価アルコール、高級脂肪酸、アミドアミン類、炭化水素、ワックス、エステル類、シリコーン誘導体、生理活性成分、エキス類、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、香料、保湿剤、炭素類、金属酸化物類、鉱物類、塩類、中和剤、pH調整剤、清涼剤、昆虫忌避剤、酵素、染料、有機顔料、無機顔料、着色剤、真珠箔、パール化剤、抗炎症剤、抗酸化剤、美白剤、シワ改善剤、ビタミン類、アミノ酸、育毛剤、抗菌剤、ホルモン剤、植物抽出物、海藻抽出成分、生薬成分、賦活剤、血行促進剤、金属イオン封鎖剤、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0140】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N-アシルグルタミン酸塩(ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ココイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-アシルアラニン塩(ラウロイルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム等)、N-アシルメチル-β-アラニン塩(ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等)、N-アシルサルコシン塩(ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン等)、N-アシルトレオニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルセリン塩、N-アシル-ω-アミノ酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルケニルスルホ酢酸塩等のカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩(テトラデセンスルホン酸ナトリウム等)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩(スルホコハク酸ラウレス2Na、スルホコハク酸パレス2Na等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-アシルタウリン塩、N-アシルメチルタウリン塩(ココイルメチルタウリンナトリウム等)、ホルマリン縮合系スルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルケニルアミドスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩等のスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等)、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、ポリオキシアルキレン脂肪族アミドエーテル硫酸塩、アルキルグリセリルエーテル硫酸塩等の硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸カリウム等)、アルキルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のリン酸塩等、非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアルカノールアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアルカノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸(モノ/ジ/トリ)エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等、カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、脂肪族アミドアミン塩、脂肪族アミドグアニジウム塩、第四級アンモニウム塩(ステアリルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド等)、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アルキルエーテルアンモニウム塩等の脂肪族アミン塩およびその第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の環式第四級アンモニウム塩等、両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)、スルホベタイン型両性界面活性剤(ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)、ホスホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤(2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、アルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられる。油剤としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類、油脂類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ロウ類、ステロイド類、モノマー、オリゴマー、流動性のあるポリマー(高分子化合物)、シリコーン油、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、セロソルブ類等が挙げられ、これらは常温で液体、ゲル、固体のいずれであってもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭化水素類としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、パラフィン、固形パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、白色ワセリン、ミネラルオイル等の鉱物油、スクワラン、アルキルベンゼン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、水添ポリイソブテン、エチレン・α-オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマー等の合成油が挙げられる。その他の合成油では、芳香族系油としては、特に限定されないが、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等、脂肪族系油としては、特に限定されないが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリアルファオレフィン(1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、エチレン-プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、アルファオレフィンとエチレンのコオリゴマー等が挙げられる。エステル系油としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、更にはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、さらには、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。エーテル系油としては、特に限定されないが、例えば、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、およびジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油が挙げられる。油脂類としては、特に限定されないが、例えば、アボガド油、アーモンド油、アマニ油、オリーブ油、カカオ油、エゴマ油、ツバキ油、ヒマシ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム核油、ヤシ油、パーム油、牛脂、豚脂、馬脂、羊脂、シア脂、カカオ脂、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーセリン油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、グレープシード油、マカデミアナッツ油、綿実油、メドウホーム油、ヤシ油、落花生油、タラ肝油、ローズヒップ油、牛脂硬化油、牛脂極度硬化油、硬化ヒマシ油、パーム極度硬化油等が挙げられる。エステル類としては、例えば、特に限定されないが、ステアリン酸アルキルエステル、パルミチン酸アルキルエステル、ミリスチン酸アルキルエステル、ラウリン酸アルキルエステル、ベヘニン酸アルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、イソステアリン酸アルキルエステル、12-ヒドロキシステアリン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸アルキルエステル、ラノリン脂肪酸アルキルエステル、エルカ酸アルキルエステル、ヤシ油脂肪酸アルキルエステル、ステアロイルオキシステアリン酸アルキルエステル、イソノナン酸アルキルエステル、ジメチルオクタン酸アルキルエステル、オクタン酸アルキルエステル、乳酸アルキルエステル、エチルヘキサン酸アルキルエステル、ネオペンタン酸アルキルエステル、リンゴ酸アルキルエステル、フタル酸アルキルエステル、クエン酸アルキルエステル、マロン酸アルキルエステル、アジピン酸アルキルエステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロパンジオール脂肪酸エステル、ブタンジオール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、トレハロース脂肪酸エステル、ペンチレングリコール脂肪酸エステル、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。脂肪酸類としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、エルカ酸、ステアロイルオキシステアリン酸等が挙げられる。高級アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、ミリスチルアルコール、アラキルアルコール、フィトステロール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。シリコーン油類としては、特に限定されないが、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性オイル、ポリグリセリン変性シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、ジメチコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラメチルヘキサシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等が挙げられる。ロウ類としては、特に限定されないが、例えば、モクロウ、ミツロウ、ハゼロウ、ウルシロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリン、鯨蝋、還元ラノリン、液状ラノリン、硬質ラノリン、セレシン、オゾケライト等が挙げられる。ステロイド類としては、特に限定されないが、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロール脂肪酸エステル等が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、カチオン化デンプン、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タマリンドガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌクリークガム、(N,N-ジメチル-3,5-メチレンピペリジウムクロリド)-アクリルアミド共重合体、ポリ(N,N-ジメチル-3,5-メチレンピペリジウムクロリド)、ポリエチレンイミン、4級化ビニルピロリドン-アミノエチルメタクリレート共重合体、アジピン酸-ジメチルアミノヒドロキシプロピレンジエチレントリアミン共重合体、アクリルアミド-β-メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム共重合体等、水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体等、粘度調整剤としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド等のアルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等のポリオキシエチレンアルキルアルカノールアミド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド等のポリオキシプロピレンアルキルアルカノールアミド、上記水溶性高分子、多糖類、上記カチオン性ポリマー等、光沢付与剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸エチレングリコールエステル(ジステアリン酸エチレングリコール等)、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸モノエタノールアミド等、高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベへニルアルコール等、多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等、高級脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等、アミドアミン類としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等、炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、ポリイソブテン、スクワラン等、ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等、エステル類としては、特に限定されないが、例えば、動植物油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、オクタン酸セチル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル等、シリコーン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチコノール等、生理活性成分としては、特に限定されないが、例えば、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与えるような天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分等、エキス類としては、特に限定されないが、例えば、植物、動物、微生物由来の各種エキス等、酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸、没食子酸エステル類等、金属イオン封鎖剤としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸およびその塩類(2カリウム2水塩、2ナトリウム塩、2ナトリウムカルシウム塩、3ナトリウム塩、4ナトリウム塩、4ナトリウム2水塩、4ナトリウム4水塩等)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸およびその塩、リン酸およびその塩、アスコルビン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩、メタリン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、フィチン酸およびその塩、クエン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、イソアミレンーマレイン酸共重合体およびその塩、ケイ酸およびその塩、ヒドロキシベンジルイミノジ酢酸およびその塩、イミノジ酢酸およびその塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸およびその塩、ニトリロトリ酢酸およびその塩、メチルグリシンジ酢酸およびその塩、L-グルタミン酸ジ酢酸およびその塩、L-アスパラギン酸ジ酢酸およびその塩等、防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン)、1,2-アルカンジオール(炭素鎖長6~14)およびその誘導体、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸ナトリウム塩、ヒノキチオール類等、紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、PABA系、アントラニル酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、香料としては、特に限定されないが、例えば、抽出物、精油、レシノイド、樹脂、花香油およびそれらの組み合わせ等の天然物質である香料成分を含む香料、保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、グルタミン酸、キトサン等、炭素類としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、活性炭、竹炭、木炭、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン、炭素バルーン等、金属酸化物類としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズ(ITO)、コバルトブルー(CoO・Al23)、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化セシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化カドミウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化鉄、酸化インジウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化トリウム、酸化インジウムスズ、ケイ酸マグネシウム、フェライト等、塩類としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸のような有機酸、または塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸の塩、中和剤、pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸、有機酸、アルカリ金属塩、有機塩基等、清涼剤としては、特に限定されないが、例えば、L-メントール、乳酸L-メンチル、メンチルグリセリルエーテル、メンタンジオール、カンファー、薄荷油等、昆虫忌避剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルトルアミド等、酵素としては、特に限定されないが、例えば、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ等、染料としては、特に限定されないが、例えば、スーダンレッド、D&CレッドNo17、D&CグリーンNo6、β-カロテン、大豆油、スーダンブラウン、D&CイエローNo11、D&CバイオレットNo2、D&CオレンジNo5、キノリンイエロー、アナトーおよびブロモ酸類等、有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、および、コチニールカルミンまたはバリウム、ストロンチウム、カルシウムまたはアルミニウムに基づくレーキ等、無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミン等、真珠箔としては、特に限定されないが、例えば、白色真珠箔例えばチタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母、有色真珠箔例えば酸化鉄でコーティングされたチタン雲母、特にフェリックブルーまたは酸化クロムでコーティングされたチタン雲母、上述のタイプの有機顔料でコーティングされたチタン雲母、と同様にオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠箔等、パール化剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジステアリン酸エステル、マイカ等、抗炎症剤としては、特に限定されないが、例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等、抗酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム)、アラントイン、チオタウリン、グルタチオン、カテキン、アルブミン、フェリチン、メタロチオネイン等、美白剤としては、特に限定されないが、例えば、L-アスコルビン酸(ビタミンC)及びその誘導体、パントテン酸誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、レゾルシン誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム等のサリチル酸誘導体、その他フェノール誘導体、アルブチン、プラセンタエキスや植物抽出物(例えばカミツレエキス、ユキノシタエキス、ハトムギエキス等)等、シワ改善剤としては、特に限定されないが、例えば、レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールやウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、センブリエキス、ゲットウ葉エキス、加水分解ヒカゲノツルニンジン根エキス、ヤグルマギクエキス等の各種抽出物等、ビタミン類としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンAおよびその誘導体;ビタミンB6、ビタミンB6塩酸塩等のビタミンB6誘導体;ニコチン酸、ニコチン酸アミドのニコチン酸誘導体;ビタミンEおよびその誘導体;β-カロチン等、アミノ酸としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシプロリン、l-セリン、トリメチルグリシン、l-アルギニン等、育毛剤としては、特に限定されないが、例えば、パントテニルエチルエーテル、アデノシン、β-グリチルレチン酸、ミノキシジル等、抗菌剤としては、特に限定されないが、例えば、レゾルシン、イオウ、サリチル酸等、ホルモン剤としては、特に限定されないが、例えば、オキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニン、ヒノキチオール、エチニルエストラジオール等、植物抽出物としては、特に限定されないが、例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等、賦活剤としては、特に限定されないが、例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等、血行促進剤としては、特に限定されないが、例えば、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等、金属イオン封鎖剤としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等、有機変性粘土鉱物としては、特に限定されないが、例えば、スメクタイト系(ヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト等)、カオリナイト、イライト、マリーン粘土鉱物(海泥)、デザートローズ粘土鉱物、パスカライト等の粘土鉱物を、4級アミン基やカルボキシル基等によって変性したもの等が挙げられる。
【0141】
本発明のスキンケア組成物を、界面活性剤と油剤を含む乳化物とする場合、皮膚への塗布時の伸び、べたつき、保湿感、持続的な保湿感、肌なじみ、肌弾力の点からは、油剤としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素類を使用することが好ましく、鉱物油がより好ましく、流動パラフィン、セレシンが更に好ましい。
【0142】
本発明のスキンケア組成物における、本発明のスキンケア剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果の点からは、無水物に換算した上記有機アンモニウム塩の含有量として0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が特に好ましく、10.0質量%以上が殊更好ましい。
【0143】
本発明のスキンケア組成物は、本発明のスキンケア剤の含有量が、例えば上記範囲となるように溶媒に希釈して調製することができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ベンジルアルコール、ヘキセノール、ノネノール、メチルデセノール等のアルコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキルエーテル類、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、マルチトール等の多価アルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水または水溶液が好ましく、特に、精製水等の水が好ましい。
【0144】
本発明のスキンケア組成物は、例えば、本発明のスキンケア剤および前記その他の成分を溶媒に添加、混合して調製することができる。必要に応じて固体原料は加熱溶解して混合、攪拌し、均一に混合する。
【0145】
本発明のスキンケア組成物は、有機アンモニウム塩を使用されるのみではなく、有機アンモニウム塩を構成するカチオンとアニオンを含んでいれば良く、本発明に使用される有機アンモニウム塩を予め製造した後に、水や溶媒、他の成分と混合してスキンケア組成物とする他に、有機アンモニウム塩を形成するカチオン、アニオンの原料となるアミン化合物、酸性化合物と、水や溶媒、他の成分と混合順は限定されず、混合してスキンケア組成物としてもよい。
【0146】
本発明のスキンケア組成物は、これに含有される本発明の有機アンモニウム塩の不揮発性に起因する短長期間の保水・保湿また帯電防止(静電気防止性)の効果から、皮膚等に塗布した際に、保湿感を付与でき、べたつきがない良好な感触が得られる。また、前記有機アンモニウム塩の安全性、皮膚等への親和性、浸透性、低刺激性、美白効果により、スキンケア組成物においても安全性が高く、肌なじみ、肌弾力が良好で、皮膚等への刺激が低いスキンケア組成物が得られる。さらに、前記アンモニウム塩は、有効成分の溶解性が高い点においてもスキンケア組成物の基材として有用であり、皮膚等への浸透性に優れることから皮膚等の保水・保湿効果に優れ、有効成分のキャリアーとしても使用できる。肌への使用の他、本発明の効果が求められる角質、爪、口腔内、鼻腔内への用途にも使用できる。
【実施例
【0147】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[1]化粧料配合剤の評価
(化合物)
化合物A1~A54
表1~8に示す化合物A1~A54は以下の方法で合成、入手した。
化合物A1~A51:特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物A52:和光純薬工業株式会社製(グリセリン)の試薬を用いた。
化合物A53:イオン交換水を用いた。
化合物A54:和光純薬工業株式会社製(テトラブチルアンモニウムブロミド)の試薬を用いた。
【0148】
1.化粧料配合剤の状態(外観)
表1A~表1Cに示すアニオンとカチオンのモル比の有機アンモニウム塩を合成し、25℃での状態を確認した。
【0149】
【表1A】
【0150】
【表1B】
【0151】
【表1C】
【0152】
2.有効成分の溶解性評価
表2A~表2Cに記載の実施例A52~A92、比較例A1、A2の化粧料配合剤の20wt%水溶液に対する有効成分の溶解度を評価した。有効成分としては、難溶性の抗酸化作用を有する没食子酸、保湿作用を有するグルタミン酸を用いた。比較例A1(グリセリン20wt%水溶液)、A2(イオン交換水)に対するグルタミン酸の溶解度は、1wt%未満であったが、実施例はいずれも高い溶解度であった。また、没食子酸についても同様な傾向であり、有効成分をより多く溶解することが可能であった。このことから、本発明の化粧料配合剤は、化粧料の基剤、溶媒、キャリアー等として使用可能である。
【0153】
【表2A】
【0154】
【表2B】
【0155】
【表2C】
【0156】
3.有効成分の溶解性に対する有機アンモニウム塩のカチオンとアニオンのモル比の影響
表3に示した配合比でアンモニウム塩もしくは、アンモニウム塩と酸および/または塩基の組成物を20wt%に調製した実施例A93~A99、比較例A3を用いて、有効成分の溶解度を評価した。有効成分としては、難溶性の抗酸化作用を有する没食子酸、保湿作用を有するグルタミン酸を用いた。試験サンプルの調製方法Aは、酸:乳酸と塩基:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トロメタミン)により有機アンモニウム塩を合成した後、イオン交換水を添加し有機アンモニウム塩水溶液を調製し、有効成分を添加した。調製方法Bはイオン交換水に酸:乳酸並びに塩基:トロメタミンを添加し、有機アンモニウム塩水溶液を調製した後、有効成分を添加し、調製方法Cは、水に酸:乳酸、塩基:トロメタミン及び有効成分を添加し調製した。なお、いずれの調製方法でもアンモニウム塩が形成されていることを1H-NMRで確認した。
【0157】
化合物A5について、原料のトロメタミンと乳酸のモル比による溶解性に対する影響を調べたところ、実施例A93~A99、では、比較例として乳酸のみを試験に用いた場合より、没食子酸の溶解性が向上しており、グルタミン酸については同等以上の溶解性を示し、有機アンモニウム塩による溶解性の向上が確認できた。その中でも実施例A93、A94、A95のようにアニオンとカチオンのモル比が1:1モル(酸と塩基のモル比が1:1)のアンモニウム塩の存在比が高いと溶解度が特に優れることが確認できた。また、実施例A93とA95より調製方法に依存せず、酸と塩基のモル比が1:1モルであれば同様の溶解性を有することが確認できた。
【0158】
表3の結果より、毛髪処理剤、スキンケア剤をはじめとする化粧料配合剤の酸と塩基のモル比は、没食子酸(3g/100g以上)の溶解性の点から1:1モル~2:1モルが好ましく、特にグルタミン酸(3g/100g以上)、没食子酸(4g/100g以上)の溶解度から1:1モルが溶解度に優れる。また、表3以外では、酸、塩基のモル比が1:2はpH8.4であり、1:5はpH9.1であった。安全性に係るpHはモル比が2:1~1:5がpH3~10で好ましく、1:2~1:1がpH5~9でより好ましく、1:1がpH6~8でさらに好ましい。
【0159】
このことから、本発明の化粧料配合剤は、有機アンモニウム塩の構造により有効成分の溶解性に優れ、特にアニオンのカルボン酸に対してカチオンが等モルの有機アンモニウム塩が溶解性に優れることが示唆された。
【0160】
【表3】
【0161】
4.金属酸化物分散性試験
化粧料に用いられる金属酸化物、炭素系材料に対する分散性を確認した。なお、表4~8のサンプルは、上記調製方法Bで調製した。
【0162】
表4に示す各実施例、比較例の化合物について、各化合物0.25gとイオン交換水0.50g、酸化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業(株))0.10gとを自転公転ミキサー((株)シンキー、ARE-310)で2000rpm、1min×5回混合した後の分散状態を目視で確認した。酸化ジルコニウムが分散しているものを○、分散せず沈降している状態を×で評価した。結果を表4に示す。
【0163】
実施例の化合物はいずれも酸化ジルコニウムを良好に分散し、分散液が得られた。一方、比較例A4の化合物は直ちに酸化ジルコニウムが沈降し分散しなかった。
【0164】
【表4】
上記と同様な仕込み量、操作で、酸化ジルコニウムを酸化チタン(IV)(和光純薬工業(株))で評価した(表5)。
実施例の化合物はいずれも酸化チタンを良好に分散し、分散液が得られた。一方、比較例A5の化合物は酸化チタンが沈降し分散性が低かった。
【0165】
すなわち、本発明の化粧料配合剤は、水素結合性官能基(水素結合供与性及び配位性を有する)の水酸基を多く持つカチオンで構成された構造的特徴を活かして、水素結合受容性の酸化チタンの酸素原子との親和性が高くなり、更に、4級アンモニウム塩のヒドロキシ基と配位性の酸化ジルコニウム及び酸化チタンの金属原子との親和性により、酸化チタンを良好に分散したと考えられる。
【0166】
この結果から、本発明の有機アンモニウム塩は、水素結合受容性官能基をもつ金属や金属酸化物などの無機系材料との親和性に優れ、化粧料配合剤に有用であることが示唆された。
【0167】
【表5】
【0168】
5.再分散性
表4、5で得られた酸化ジルコニウム、酸化チタンの分散液を50℃で3時間減圧脱水を行い、乾燥状態の化合物を得た。そこに、酸化ジルコニウム、酸化チタンのサンプルにイオン交換水を0.50g加えて自転公転ミキサー((株)シンキー、ARE-310)で2000rpm、1min×5回混合した後の分散状態を目視で確認した。その結果、実施例化合物はいずれも良好に分散し、均一な分散液が得られた。一方、比較例の化合物は、ミキサーで混合後、すぐに沈降物が見られた(表6)。
【0169】
この結果より、本願の有機アンモニウム塩は、揮発することなく、分散後の化合物を乾燥させた後、再度分散を行っても、良好に分散したことを確認した。また、本発明の有機アンモニウム塩の水溶液に金属酸化物を加えて分散させた系の分散方法に加え、粉末状態に水を加えて分散させた系においても良好に分散したことから、化粧料配合剤に含まれる水素結合受容性官能基を持つ材料の再分散が可能となり、化粧料配合剤用途に有用であることが示唆された。
【0170】
【表6】
【0171】
6.金属酸化物分散性試験2
表7に示す各実施例、比較例の化合物について、各化合物0.25gとイオン交換水0.50g、酸化亜鉛(石原産業(株))0.10gとを自転公転ミキサー((株)シンキー、ARE-310)で2000rpm、1min×5回混合した後の分散状態を目視で確認した。酸化亜鉛が分散しているものを○、分散せず沈降している状態を×で評価した。結果を表7に示す。
実施例の化合物はいずれも酸化亜鉛を良好に分散し、分散液が得られた。一方、比較例A7の化合物は直ちに酸化亜鉛が沈降し分散しなかった。
【0172】
すなわち、本発明の化粧料配合剤は、水素結合性官能基(水素結合供与性及び配位性を有する)の水酸基を多く持つカチオンで構成された構造的特徴を活かして、水素結合受容性の酸化亜鉛の酸素原子との親和性が高くなり、更に、4級アンモニウム塩のヒドロキシ基と配位性の酸化亜鉛の金属原子との親和性により、酸化亜鉛を良好に分散したと考えられる。
【0173】
【表7】
【0174】
7.炭素類(カーボンナノチューブ)分散性試験
表8に示す各実施例、比較例の化合物について、各化合物0.25gとイオン交換水0.75gと炭素類としてカーボンナノチューブ(多層、3~20nm)(和光純薬工業(株))0.025gを自転公転ミキサー((株)シンキー、ARE-310)で2000rpm、1min×5回混合した後の分散状態を目視で確認した。カーボンナノチューブが分散しているものを○、分散せず沈降している状態を×で評価した。結果を表8に示す。
【0175】
その結果、実施例化合物はいずれもカーボンナノチューブを良好に分散し、ハンドリングが良い低粘度の分散液が得られた。一方、比較例A8の化合物はカーボンナノチューブが沈降し分散しなかった。
【0176】
すなわち、本発明の化粧料配合剤は、水素結合性官能基(水素結合供与性及び配位性を有する)の水酸基を多く持つカチオンで構成された構造的特徴を活かして、炭素類とも親和性が良く、今回の水素結合受容性のカーボンナノチューブでは、炭素-炭素不飽和結合(π電子系)との親和性が高くなり、カーボンナノチューブを良好に分散したと考えられる。
この結果から、本発明の有機アンモニウム塩は、炭素類との親和性に優れ、そのような材料を用いる化粧料配合剤に有用であることが示唆された。
【0177】
【表8】
【0178】
[2]毛髪処理剤の評価
表9~21に示す化合物B1~B29の水和物は以下の方法で合成、入手した。
化合物B1~B4:特開2014-131975号公報に記載の方法で合成した。
化合物B5~B22:特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物B23:特開2012-031137号公報に記載の方法で合成した。
化合物B24:テトラブチルアンモニウムブロミドは、関東化学株式会社製の試薬を用いた。
化合物B25:1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(BMI-Cl)は、東京化成工業株式会社製の試薬を用いた。
化合物B26:グリセリンは和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
化合物B27:イオン交換水を用いた。
化合物B28:乳酸ナトリウムは関東化学株式会社製の試薬を用いた。
化合物B29:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール塩酸塩(トリス塩酸)は、特開2014-131974公報に記載の方法を参考にして合成した。
化合物B30:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩は、特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物B31:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩は、特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物B32:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩、
化合物B33:2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩、
化合物B34:2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩、
化合物B35:2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩は、特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
【0179】
以下の評価において、健常毛は株式会社ビューラックス社製の人毛黒髪を用いた。損傷毛は健常毛にパーマ処理とブリーチ処理を3回繰り返し行い作製した。
【0180】
1.毛髪処理剤の保水性・毛髪への付着性
1-1.有機アンモニウム塩を用いた健常毛に対する保水性・付着性
化合物B1~B26の80wt%水溶液(化合物B1~B23については無水物に換算した含有量)を調製し、カールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック製KF-200)で水分率が20.0wt%であることを確認した。健常毛は化学的に処理されていない健常な毛髪(株式会社ビューラックス製、人毛黒髪)を用いた。毛髪の水分率は赤外水分計(ケット化学研究所社製)にて測定した(試験前水分率A)。
【0181】
毛髪0.05g(試験前毛髪重量A)をそれぞれ化合物B1~B26の80wt%水溶液3.0gに60分間浸漬した。浸漬後、髪を取り出し、化合物をキムワイプで重量変化がなくなるまで拭き取り、重量を測定した(試験後毛髪重量B)。拭き取った髪を40℃35~40%RHに設定した恒温恒湿器中に静置した。24時間後の水分率を測定し(試験後水分率B)、水分減少率を次式にて算出した。同様に、80wt%水溶液ではなく、イオン交換水のみを用いて同様に評価した(比較例B4)。
水分減少率(%)=[(試験前水分率A-試験後水分率B)/試験前水分率A]×100
また、化合物の毛髪への付着率は次式を用いて算出した。
化合物付着率(%)=[(試験後毛髪重量B(g)-試験前毛髪重量A(g))/試験前毛髪重量A(g)]×100
【0182】
【表9A】
【0183】
【表9B】
表9の結果より、実施例の化合物B1~B23で処理した健常毛は、比較例の化合物B24~B27で処理した健常毛よりも水分減少率が小さく、健常毛の保水性に優れることを確認した。また、重量変化による毛髪付着率の測定においては比較例B4のイオン交換水は付着が見られず、比較例B1、B2、B3の化合物B24,B25,B26は、それぞれ1.0%であったのに対して、実施例の化合物は付着率が1.1~9.4%であり、毛髪への付着性に優れることが確認され、有機アンモニウム塩の水素結合性官能基、カチオンの構造の保水性、毛髪への付着性に対する優位性が示された。さらに、同一カチオンの25℃で液体の化合物B11は固体の化合物B12と比べ、水分減少率が小さく、また付着率が大きく、25℃で液体の化合物が保水性、付着性に優れていた。また、同一アニオンの化合物B3は化合物B23に比べ、水分減少率が小さく、また付着率が大きいことから、アンモニウムカチオンにアルキル基を持たない、水素結合性官能基のみで構成されたカチオンが保水性、付着性に優れていた。さらに、同一アニオンの化合物B6、B11は化合物B9に比べ、水分減少率が小さく、また付着率が大きいことから、水素結合性官能基を有するR1の構造において末端が全て水酸基となっているような水素結合性官能基のみで構成された化合物が保水性、付着性に優れていた。
【0184】
これらの結果から、本発明の有機アンモニウム塩を含む毛髪処理剤は、健常毛への付着性に優れることから、長期に渡って健常毛の保水・保湿を維持が可能であることが示唆された。また、25℃で液体の化合物が、それらの効果が高いことも示された。
【0185】
1-2.有機アンモニウム塩を用いた損傷毛に対する保水性・付着性
化合物B1~B4,B6,B7,B9~B13,B23~B26の80wt%水溶液(化合物B1~B4,B6,B7,B9~B13,B23については無水物に換算した含有量)を調製し、カールフィッシャー水分計で水分率が20.0wt%であることを確認した。損傷毛は次の方法で作製した。
【0186】
<損傷毛作製>
パーマ処理として、6.5%チオグリコール酸アンモニウム水溶液(pH9.5)に10分浸漬した後、6%臭素酸ナトリウム水溶液(pH6.5)に10分浸漬し、すすぎ後、ドライヤーで乾燥し100回ブラッシングを行った。次に、ブリーチ処理として、5%過酸化水素水と2.5%アンモニア水の1:1混合溶液に30分浸漬し、すすぎ後、ドライヤーで乾燥し100回ブラッシングを行った。このパーマ処理とブリーチ処理を3回繰り返し行い、損傷毛を作製した。
上記サンプル、イオン交換水のみ(比較例B8)を用いて、水分減少率、毛髪付着率、化合物付着率は、1-1.と同様の方法で求めた。
【0187】
【表10】
【0188】
表10の結果より、実施例の化合物B1~B4,B6,B7,B9~B13,B23で処理した損傷毛は、比較例の化合物B24~B27で処理した損傷毛よりも水分減少率が小さく、損傷毛の保水性に優れることを確認した。毛髪付着率は比較例B8のイオン交換水は付着が見られず、比較例B5~B7は0.9~1.2%であったのに対して、実施例の化合物は付着率が1.4~2.8%であり、毛髪への付着性に優れることを示した。
【0189】
また、健常毛、損傷毛に対して、本発明の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B30)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B31)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B32)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B33)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B34)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B35)を用いて、上記と同様の方法で健常毛に対する付着性を確認した結果、比較例B1~B8の化合物よりも付着性が高い。毛髪の水分のバリヤー性については、[3]スキンケア剤の評価(4)水分閉塞性試験の記載の方法で、化合物B31(実施例)を評価した結果、水分蒸発抑制率は48.1%であり、比較例C16~18の水分蒸発抑制率より大きく、毛髪の水分のバリヤー性に優れることが示唆された。
【0190】
1-3.保水性に対する有機アンモニウム塩のカチオンとアニオンのモル比の影響
表11に示したアンモニウム塩もしくは、アンモニウム塩と酸および/または塩基の組成物を配合比で50wt%に調製した実施例B36~B43、比較例B9及び比較例B10を用いて、健常毛及び損傷毛の水分減少率、毛髪付着率、化合物付着率を測定した。損傷毛は、1-2.に記載の方法で作成した。また、水分減少率、毛髪付着率、化合物付着率は、1-1.で示した方法と同様の方法で求めた。試験サンプルの調製方法Aは、酸:乳酸と塩基:トロメタミンにより有機アンモニウム塩を合成した後、イオン交換水を添加し有機アンモニウム塩水溶液を調製し、調製方法Bはイオン交換水に酸:乳酸並びに塩基:トロメタミンを添加し調製した(1H-NMRによりアンモニウム塩の形成を確認。)。なお、表9、10、12~17、21の表のサンプルのうち、化合物B23以外は調製方法Bで調製した。
【0191】
【表11】
【0192】
表11の結果より、実施例B36~B43で処理した健常毛及び損傷毛は、比較例で処理した健常毛、損傷毛よりも水分減少率が小さく、健常毛及び損傷毛に対する保水性に優れることを確認した。毛髪付着率は比較例B10のイオン交換水は付着が見られず、比較例B9の乳酸は健常毛、損傷毛とも1.1%であったのに対して、実施例は健常毛に対する付着率が1.7~2.8%、損傷毛に対する付着率が1.6~2.8%であり、健常毛及び損傷毛への付着性に優れることを示した。
【0193】
化合物B11について、原料の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トロメタミン)と乳酸のモル比による健常毛、損傷毛の保水性に対する影響を調べたところ、実施例B36~B43では、比較例として乳酸のみを試験に用いた場合より、保水性が向上しており、有機アンモニウム塩による保水効果が確認できた。毛髪への付着性の点から、酸と塩基の配合比は、1:5~5:1モルが好ましい。特にアニオンとカチオンのモル比が1:1モルの場合、付着性に優れ、水分減少率が最も低く、保水性に特に優れることが確認できた。また、実施例B36とB37より調製方法に依存せず、アニオンとカチオンのモル比が1:1モルであれば同様の保水効果を有することが確認できた。
【0194】
このことから、本発明の毛髪処理剤は、有機アンモニウム塩の構造により保水性に優れ、特にアニオンのカルボン酸に対してカチオンが等モルの有機アンモニウム塩が保水性に優れることが示唆された。
【0195】
1-4.有機アンモニウム塩の表面抵抗測定
化合物B11およびB26の0.7g(無水物に換算した含有量)をそれぞれポリウレタン製人工皮革に塗布し、高抵抗計(東京電子株式会社製、スタックTR-2)を用いて表面抵抗値を測定した。何も塗布してない状態では4×1011Ω超であったのに対して、いずれも測定時は液体で、化合物B11では1×108Ω未満、化合物B26では5×108Ωであったことから、化合物B11の方が化合物B26よりも塗布表面の導電性が良好で静電気を抑制し、帯電防止効果があり、本発明の毛髪処理剤の構造的特徴の優位性が示された。
【0196】
さらに、化合物B28(乳酸ナトリウム)0.7g(無水物に換算した含有量)をポリウレタン製人工皮革に塗布し、乾燥させて水分を揮発させると、塗布表面は固体状になり、上記同様に測定した表面抵抗値は2×108Ωであったことから、化合物B11(1×108Ω未満)の不揮発性、25℃で液性の効果(塗布物にまんべんなくコーティングできる)が確認された。
【0197】
このことから、本発明の毛髪処理剤は、帯電防止性に優れ、髪のまとまり等の官能性に寄与していることが示唆された。
【0198】
2.毛髪処理剤の健常毛・損傷毛への使用
2-1.有機アンモニウム塩を用いた健常毛に対する官能評価
化合物B11,B12,B23,B26,B27の80wt%水溶液(化合物B11,B12,B23については無水物に換算した含有量)を調製し、試料とした。試料10.0gを1分間刷毛を用いて健常毛約10gの毛束に均一に塗布し、5分間放置した。5分放置後、40℃の湯で30秒すすぎを行い、洗い流す時の指通りを評価した。すすいだ後の毛束をタオルドライ後1日風乾し、柔軟性、指通り性、手触り感、ハリ・コシ(素手による感触)、ボリュームアップ(目視)、まとまり、しっとり感、表面の滑らかさ、べたつきのなさ(素手による感触)、つや(目視)の項目を、試料を塗布していない試験毛束に対する優劣をもって評価した。
評価は次の4段階とした。
◎:優れる
○:良好
△:変化無し
×:不良
【0199】
【表12】
【0200】
表12より、実施例の化合物B11,B12および化合物B23は、比較例と比べて、洗浄時の指通り性に優れていた。また、風乾後においても、実施例の化合物は、比較例と比べて、評価した項目全てにおいて、良好な効果を示した。この結果より、実施例のようなカチオン、アニオンの塩構造からなる化合物が、毛髪処理剤として良好な効果を示すことが確認された。さらに、実施例の化合物B11,B23は、化合物B12と比較して、柔軟性、指通り性、手触り感、まとまり、しっとり感、つや、表面の滑らかさ、べたつきのなさに優れていた。この結果より、4級アンモニウム塩が液体であることで、溶媒として用いた水が揮発した際、有効成分が析出してこないため、各種の官能評価に優れることが確認された。特に、4級アンモニウムカチオンにアルキル基を含む化合物B23よりも、水素結合性官能基のみで構成された化合物B11の方が、毛髪に良好に長時間、本発明品を固定化することが可能となるため、化合物B11はボリュームアップの評価において良好な結果を示し、ボリュームアップの要求に対応してカチオンを選択することが可能である評価となった。
【0201】
また、本発明の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B30)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B31)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B32)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B33)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B34)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B35)を用いて、上記と同様の方法で健常毛に対する官能評価を行った結果、比較例の化合物よりも、柔軟性、指通り性、手触り感、ハリ・コシ、ボリュームアップ、まとまり、しっとり感、表面の滑らかさ、べたつきのなさ、つやに優れる評価となった。
【0202】
これらの結果から、本発明の毛髪処理剤は、髪をすすいだ後の柔軟性、指通り性、手触り感、ハリ・コシ、ボリュームアップ、まとまり、しっとり感、表面の滑らかさ、べたつきのなさ、つやに優れ、良好な感触や外観が得られることが示唆された。
【0203】
2-2.有機アンモニウム塩を用いた損傷毛に対する官能評価
【0204】
化合物B11,B12,B23,B26,B27の80wt%水溶液(化合物B11,B12,B23については無水物に換算した含有量)を調製し、試料とした。試料10.0gを1分間刷毛を用いて損傷毛約10gの毛束に均一に塗布し、5分間放置した。5分放置後、40℃の湯で30秒すすぎを行い、洗い流す時の指通りを評価した。すすいだ後の毛束をタオルドライ後1日風乾し、ハリ・コシ(素手による感触)、まとまり、表面の滑らかさ、うねりのなさの項目を、試料を塗布していない試験毛束に対する優劣をもって評価した。
評価は次の4段階とした。
◎:優れる
○:良好
△:変化無し
×:不良
【0205】
【表13】
【0206】
表13より、実施例の化合物B11,B12,B23は、比較例と比べて、洗浄時の指通り性、風乾後のハリ・コシ、まとまり、表面のなめらかさ、うねりのなさの評価に優れており、比較例よりも損傷毛に対する処理効果が高いことが確認された。この結果より、実施例のようなカチオン、アニオンの塩構造からなる化合物が、毛髪処理剤として良好な効果を示すことが確認された。
【0207】
さらに、実施例の化合物B11,B23は、化合物B12と比較して、ハリ・コシに優れていた。この結果より、4級アンモニウム塩が液体であることで、揮発せず、表面にまんべんなくコーティングし、さらに内部に浸透していることが示唆された。
【0208】
また、本発明の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B30)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B31)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B32)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールオレイン酸塩(化合物B33)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールリノール酸塩(化合物B34)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールイソステアリン酸塩(化合物B35)を用いて、上記と同様の方法で損傷毛に対する官能評価を行った結果、比較例の化合物よりも、ハリ・コシ、まとまり、表面のなめらかさ、うねりの抑制に優れ、良好な感触や外観となる評価となった。
【0209】
これらの結果から、本発明の毛髪処理剤は、損傷毛においても、髪をすすいだ後のハリ・コシ、まとまり、表面のなめらかさ、うねりの抑制に優れ、良好な感触や外観が得られることが示唆された。
【0210】
3.毛髪処理組成物の健常毛・損傷毛への使用
3-1.有機アンモニウム塩を配合したシャンプー剤を用いた健常毛に対する官能評価
毛髪処理組成物(シャンプー剤)の調製
本発明の毛髪処理剤を使用した毛髪処理組成物の一例として、以下のシャンプー剤を作製した。
【0211】
カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(東邦化学工業株式会社製、カチナールHC-200)0.5質量%および精製水を70~80℃で均一に混合した後、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ミヨシ油脂株式会社製、スパミンSA)を11.25質量%(有効分)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(ミヨシ油脂株式会社製、アンホレックスCB-1)を3.75質量%(有効分)となるように添加した後、化合物B11をそれぞれ0.5、3.0、10.0質量%、化合物B7,B23,B26,B27,B28をそれぞれ3.0質量%(化合物B7,B11,B23については無水物に換算した含有量)となるように添加し70~80℃で20分間攪拌して均一に混合した。その後、30℃以下まで冷却し、蒸発分の精製水を毛髪処理組成物の全体が100質量%となるように添加して均一に混合することにより、毛髪処理組成物を調製した。毛髪処理組成物のpHはクエン酸または水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調製した。
【0212】
健常毛を用いた繰り返し処理による評価
健常毛約5gを用いて、上記各毛髪処理組成物(シャンプー剤)の7倍希釈水溶液350mlに35~40℃で浸し、洗髪を行った。35~40℃の温水500mlで5回濯ぎ処理を行い、80℃で乾燥した後、25℃で風乾した。この洗髪、濯ぎ、乾燥の一連の処理を10回繰り返し行い、風乾後の髪のまとまり、髪のしっとり感、髪のつや、毛髪表面のなめらかさ、毛髪表面のべたつきのなさを評価した。
評価は次の4段階とした。
◎:優れる
○:良好
△:やや不良
×:不良
【0213】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、JCM-5000)を用いて、風乾後の毛髪表面を観察した。風乾後の毛髪外観の写真と、毛髪表面のSEM写真を図1に示す。
【0214】
【表14】
【0215】
表14より、化合物B11,B23,B7を3.0質量%添加したシャンプー剤で処理した実施例B50~B52の健常毛は、髪のまとまり、しっとり感、つやが良好であり、毛髪表面のべたつきがなく、なめらかさが良好であった。処理後の健常毛の外観は、比較例はまとまりがなく毛髪が広がったが、実施例では毛髪のまとまりがよい状態であった。SEMによる観察結果から、実施例B50~B52の毛髪表面はキューティクルの剥がれは見られず、なめらかな状態であることが確認された(図1)。また、化合物B11を0.5および10質量%添加したシャンプー剤で処理した実施例B53,B54の健常毛についても評価結果はいずれも良好であった。一方、化合物B27(イオン交換水)を添加したシャンプー剤で処理した比較例B16の毛髪は評価結果がいずれも不良であり、化合物B26(グリセリン)および化合物B28(乳酸ナトリウム)を用いた比較例B15、B17については、実施例B50~B52と比較して評価全般において劣る傾向にあった。
【0216】
実施例のようなカチオン、アニオンの塩構造からなる化合物を配合することでシャンプー剤として良好な効果を示すことが確認された。さらに化合物B28(乳酸ナトリウム)と比較して、実施例の化合物は官能評価が良好であることから、カチオン、アニオンに水素結合性官能基を有し25℃で液体である有機アンモニウム塩の効果が高いことが示唆された。
【0217】
さらに、表12の結果と比べて、実施例の化合物を配合してシャンプー剤を配合することで、しっとり感、つや、なめらかさの項目が◎(優れる)となったことから、本発明品が、シャンプー剤と相互作用することで、より高い処理効果を発現することが可能となった。
【0218】
この結果から、本発明の毛髪処理剤を使用した、毛髪処理組成物は、髪にまとまり、しっとり感、つや、なめらかさを付与でき、べたつきがない良好な感触が得られることが示唆された。
【0219】
3-2.有機アンモニウム塩を配合したシャンプー剤を用いた損傷毛に対する官能評価
損傷毛を用いた繰り返し処理による評価
損傷毛を用いて上記3-1と同様に10回繰り返し処理を行い、風乾後の髪のまとまり、毛髪表面のなめらかさ、髪のうねりを評価した。
【0220】
【表15】
【0221】
表15より、化合物B11および化合物B23を添加したシャンプー剤で処理した実施例B55、B56の損傷毛は、髪のまとまり、毛髪表面のなめらかさが良好であり、髪のうねりも見られなかった。一方、化合物B27(イオン交換水)を添加したシャンプー剤で処理した比較例B19は髪のうねりが見られ、化合物B26(グリセリン)および化合物B28(乳酸ナトリウム)を用いた比較例B18、20については、毛髪表面のなめらかさが劣っていた。
【0222】
この結果から、本発明の毛髪処理剤を使用した、毛髪処理組成物は、損傷毛においても、髪のまとまり、毛髪のなめらかさ、髪のうねりの抑制を付与でき、良好な感触が得られることが示唆された。
【0223】
3-3.有機アンモニウム塩を配合したシャンプー剤を用いた健常毛に対する官能評価(各種アニオン性界面活性剤による評価)
毛髪処理組成物(シャンプー剤)の調製
カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(東邦化学工業株式会社製、カチナールHC-200)0.5質量%および精製水を70~80℃で均一に混合した後、表16に示す各種アニオン性界面活性剤をそれぞれ11.25質量%(有効分)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(ミヨシ油脂株式会社製、アンホレックスCB-1)を3.75質量%(有効分)となるように添加した後、化合物B11またはB27をそれぞれ3.0質量%(化合物B11については無水物に換算した含有量)となるように添加し70~80℃で20分間攪拌して均一に混合した。その後、30℃以下まで冷却し、蒸発分の精製水を毛髪処理組成物の全体が100質量%となるように添加して均一に混合することにより、毛髪処理組成物を調製した。毛髪処理組成物のpHはクエン酸または水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調製した。
【0224】
アニオン性界面活性剤のラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムはエナジコールL-30AN(ライオン株式会社製)、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミンはアミソフトCT-12S(味の素株式会社製)、テトラデセンスルホン酸ナトリウムはリポランLJ-441(ライオン株式会社製)を用いた。
健常毛を用いた繰り返し処理による評価
【0225】
健常毛約5gを用いて、上記各毛髪処理組成物(シャンプー剤)の7倍希釈水溶液350mlに35~40℃で浸し、洗髪を行った。35~40℃の温水500mlで5回濯ぎ処理を行い、80℃で乾燥した後、25℃で風乾した。この洗髪、濯ぎ、乾燥の一連の処理を5回繰り返し行い、風乾後の髪のつや、髪のやわらかさ、髪のまとまりを評価した。風乾後の毛髪外観の写真を図2に示す。
【0226】
【表16】
【0227】
表16より、化合物B11を添加したシャンプー剤で処理した実施例B57~B59の健常毛は、髪のつや、髪の柔らかさ、髪のまとまりが良好であった。一方、化合物B27(イオン交換水)を添加したシャンプー剤で処理した比較例B21~B23は髪のつや、柔らかさ、まとまりがやや不良であった。
【0228】
さらに、表12の結果と比べて、実施例の化合物を配合して各種アニオン活性剤を配合したシャンプー組成物を配合することで、つや、柔らかさ、まとまりの項目のいずれかが、実施例B57,B58において◎(優れる)となったことから、本発明品が、表16に示す各種アニオン活性剤を配合したシャンプー組成物と相互作用することで、より高い処理効果を発現することが可能となった。
【0229】
3-4.有機アンモニウム塩を配合したコンディショナーを用いた健常毛に対する官能評価
毛髪処理組成物(コンディショナー)の調製
ステアリルアルコール(花王株式会社製、カルコール8688)4.5質量%、べへニルアルコール(花王株式会社製、カルコール220-80)2.0質量%、フェノキシエタノール(東邦化学工業株式会社製、ハイソルブEPH)0.5質量%を混合し75℃まで加温してA液とした。ベヘントリモニウムクロリド(東邦化学工業株式会社製、カチナールDC-80)3.0質量%、ジプロピレングリコール5.0質量%、化合物B11,B23,B26,B27,B28をそれぞれ3.0質量%(化合物B11,B23については無水物に換算した含有量)となるように添加し、精製水を加えて80℃で溶解したものをB液とした。A液にB液を少しずつ加えていき、75℃で20分間攪拌した。その後、40℃以下まで冷却し、蒸発分の精製水を毛髪処理組成物の全体が100質量%となるように添加して均一に混合することにより、毛髪処理組成物を調製した。
【0230】
健常毛を用いたコンディショナー浸漬処理評価
健常毛約5gを用いて、上記各毛髪処理組成物(コンディショナー)の7倍希釈水溶液150gに40℃で30分間浸して処理を行った。35~40℃の温水500mlで2回濯ぎ処理を行い、80℃で乾燥し、25℃で風乾後の髪のくし通り、まとまり、べたつきのなさを評価した。風乾後の毛髪外観の写真を図3に示す。
【0231】
【表17】
【0232】
表17および図3より、化合物B11および化合物B23を添加したコンディショナーで処理した実施例B60,B61の健常毛は、髪のくし通り、髪のまとまりが良好であり、髪のべたつきも感じられなかった。一方、化合物B27(イオン交換水)を添加したコンディショナーで処理した比較例B25の髪はくし通りがやや悪く、髪のまとまりが不良であった。化合物B26(グリセリン)用いた比較例B24では、髪のまとまり及びべたつきがやや不良であった。化合物B28(乳酸ナトリウム)を用いた比較例B26では、髪のまとまりがやや悪く、髪のべたつきが感じられた。
【0233】
この結果から、実施例のようなカチオン、アニオンの塩構造からなる化合物を配合することでコンディショナーとして良好な効果を示すことが確認された。さらに化合物B28(乳酸ナトリウム)と比較して、実施例の化合物は官能評価が良好であることから、カチオン、アニオンに水素結合性官能基を有し25℃で液体である有機アンモニウム塩の効果が高いことが示唆された。
【0234】
4.毛髪、皮膚のタンパク質(ケラチン)の付着性、安定化評価
4-1.ケラチン付着性
【0235】
化合物B11,B23,B26,B27の50wt%水溶液2g中に、粉末状のケラチン(東京化成製)(試験前ケラチン)1gを加え、25℃で24時間撹拌した。攪拌後、ろ過を行い、得られた粉末状のケラチンを乾燥させ、処理後のケラチン(試験後ケラチン)を得た。
ケラチンへの化合物付着率は、次式を用いて算出した。
化合物付着率(%)=[(試験後ケラチン重量(g)-試験前ケラチン重量(g))/試験前ケラチン重量(g)]×100
【0236】
表18の結果より、比較例の化合物B27のイオン交換水は付着が見られず、化合物B26のグリセリンは11.0%であったのに対して、実施例の化合物は付着率が13.2~17.0%であり、本発明の毛髪処理剤のカチオン構造、水素系結合性官能基が、毛髪、例えば、角質、爪等の皮膚のタンパク質(ケラチン)への付着性に優れることを示した。
4-2.毛髪処理剤のケラチンに対する安定化効果の評価
【0237】
4-1で得られた処理後のケラチン0.3gを、130℃の恒温器中に7日間静置した。7日後、得られたケラチンのIRスペクトルを測定し、アミドのα-ヘリックス二次構造由来の吸収を測定することで、ケラチンの構造に対する毛髪処理剤の安定化効果を評価した。
【0238】
加熱前のケラチンの粉末をIRで測定したところ、アミドのα-ヘリックス二次構造由来の1654cm-1に吸収が認められた。次に、130℃加熱試験後のIR測定を行い、それぞれのアミド由来のピーク並びに、基準ピークとの強度比(基準ピーク(C-N由来)1086cm-1、アミドのα-ヘリックス二次構造由来のピーク1654cm-1)を求めた。強度比(X)は基準ピークの吸収強度と、アミド由来のピークの強度を読み取り、「基準ピーク強度:アミド由来のピーク強度=1:X」として評価した。
【0239】
表18の結果より、比較例の化合物B27のイオン交換水はアミドのα-ヘリックス二次構造由来のピークは消失し、ケラチンのα-ヘリックス二次構造を保持していないことが確認された。一方、実施例の化合物B11、B23及び化合物B26のグリセリンはアミドのα-ヘリックス二次構造由来のピークが確認されたことから、ケラチンのα-ヘリックス二次構造を保持していることが確認されたが、比較例の化合物B26のグリセリンは、基準ピークに対するアミドのα-ヘリックス二次構造由来のピークの強度比が0.3であった。これに対して、実施例の化合物は、アミドのα-ヘリックス二次構造由来のピークの強度比が0.6~0.9と高く、ケラチンのα-ヘリックス二次構造の安定化効果が高いことが示唆された。このように、本発明の毛髪処理剤は、ケラチンの安定化効果があることから、毛髪の保水・保湿、健康や髪質の保持、ドライヤー等の熱による毛髪の損傷の抑制、さらには、例えば、角質、爪などの皮膚のタンパクへの保水・保湿、健康保持等ができる。
【0240】
【表18】
【0241】
5.有効成分の溶解性評価
表19に記載の組成に対する有効成分の溶解性を評価した。有効成分としては、難溶性の抗酸化作用を有する没食子酸、保湿作用を有するグルタミン酸を用いた。グルタミン酸を溶解した比較例B29(グリセリン水溶液)、B30(イオン交換水)は、溶解度が<0.08gであったが、実施例B64は、0.24gと高い溶解度であった。また、没食子酸についても同様な傾向であり、化合物B11は有効成分をより多く溶解することが可能であった。このことから、本発明の毛髪処理剤は、毛髪処理組成物の基剤、溶媒、毛髪内部へのキャリアーとして使用可能である。
【0242】
【表19】
【0243】
6.毛髪髪対する親和性評価(接触角)
表20に記載した化合物B11、B12、B29、B24の50wt%水溶液に5分間浸漬し、温水で1回すすぎ、タオルドライして処理した毛髪と未処理品を、ドライヤー(約100℃)を用いて乾燥を行い(条件A)、その後10μLの水を各毛髪に滴下して、その液滴の接触角を測定した。接触角測定にはDrop Sape Analyzer DSA30(KRUSS社製)を用い、測定方法は、スライドガラスの上に各処理後の毛髪20本を均一で平になるようにセロテープ(登録商標)で固定し、上から10μLの水を滴下後、その液滴の接触角を測定した。また、化合物B11、B12、B29、B24、B26の50wt%水溶液を用いて上記と同様に処理した毛髪と未処理品を、ドライヤーより高温のヘアアイロン(160℃)を用いて乾燥を行い(条件B)、上記と同様の条件にて接触角を測定した。
【0244】
条件Aの実施例B66~B68は、比較例B33、B34に比べ、いずれの化合物においても接触角が低く、毛髪への親和性に優れる結果であった。特に実施例B66の化合物B11は、毛髪に浸透するほど親和性が高く、髪の保湿、髪の健康や髪質の保持に効果を発揮する。
【0245】
条件Bの実施例B69~B71は、比較例B35~B37に比べ、いずれの化合物においても接触角が低く、毛髪への親和性に優れる結果であった。特に実施例B69、B70の化合物B11、B12は、毛髪に浸透するほど親和性が高かったが、比較例B36のグリセリンは揮発してしまい、未処理と変わらない結果になった。この結果より、不揮発性の有機アンモニウム塩であるために加熱条件の条件Bにおいても化合物が残存し、髪の保湿、髪の健康や髪質の保持の効果を発揮することが確認された。
【0246】
【表20A】
【0247】
【表20B】
【0248】
このことから、本発明の有機アンモニウム塩は、毛髪との親和性に優れ、ドライヤーなどによる過熱後も揮発せず効果を発揮し、キューティクルへのダメージが少ないことが示唆された。
【0249】
7.タンパク質の安定性評価(DSC)
化合物B11、B12、B29、B26の50wt%水溶液に5分間浸漬し、温水で1回すすぎ、タオルドライして処理した毛髪と未処理品を、ドライヤー(約100℃)を用いて乾燥を行い(条件A)、または、上記と同様に処理した毛髪と未処理品を、ドライヤーより高温のヘアアイロン(160℃)を用いて乾燥を行い(条件B)各毛髪のサンプルを作成した。各毛髪のサンプルを粉末状に細断してSUS製の容器に5mg精秤し、蒸留水を10μL加えて密閉後、2日間置いて水を十分含ませた。このサンプルを、窒素フロー60ml/min、温度範囲30~210℃、昇温速度10℃/minでDSC測定し、吸熱ピーク面積を算出した。吸熱ピーク面積(ΔH)は、未処理品吸熱ピーク面積から処理後の吸熱ピーク面積を引算した差分を示す。評価は条件A、条件Bで処理する前の数値との差(吸熱ピーク面積34.5(J/g-hair)が小さいほど、毛髪主成分のケラチンタンパク質の毛髪内部のミクロフィブリルの状態の架橋強度の変化が小さく、毛髪の損傷が小さいことを示している。
【0250】
実施例B72~B77のピーク面積は、比較例B38、B39の吸熱ピーク面積に比べて、処理前の値により近いことが確認され、実施例の方が毛髪に与えるダメージが少ない結果が示された。実施例B72、75のピーク面積は、化合物由来のピークと、吸熱ピークが重なり、算出できなかった。吸熱ピーク面積(ΔH)の値より、比較例B38のグリセリンより、塩構造を有する本発明の有機アンモニウム塩が、そのダメージ抑制効果において優れ、その中でもアニオンに水酸基を有するものがより好ましいことが確認された。このことから、本発明の毛髪処理剤は、水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩が毛髪中のタンパク質と相互作用することで、二次構造の保持、結合切断を抑制することが可能となり、タンパク質の変性が抑制することができるため、毛髪処理後の質感を保つことが可能となることが示唆された。さらに、頭皮のタンパク質の安定化効果も可能となることが示唆された。
【0251】
【表21】
【0252】
[3]スキンケア剤の評価
(化合物)
化合物C1~C101
表22~41に示す化合物C1~C101は以下の方法で合成、入手した。
化合物C1~C5:特開2014-131975号公報に記載の方法で合成した。
化合物C6~C26:特開2014-131974号公報に記載の方法で合成した。
化合物C27~C39、:特開2012-031137号公報に記載の方法で合成した。
化合物C40~C61、C65~C95:特願2018-136893号公報に記載の方法で合成した。
化合物C62:和光純薬工業株式会社製(テトラブチルアンモニウムブロミド)の試薬を用いた。
化合物C63:東京化成株式会社製の試薬(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート)を用いた。
化合物C64:和光純薬工業株式会社製(グリセリン)の試薬を用いた。
化合物C96:和光純薬工業株式会社製(乳酸ナトリウム)の試薬を用いた。
化合物C97:和光純薬株式会社製(乳酸カリウム)の試薬を用いた。
化合物C98:東京化成株式会社製(アスコルビン酸)の試薬を用いた。
化合物C99:東京化成株式会社製(アスコルビン酸グルコシド)の試薬を用いた。
化合物C100:東京化成株式会社製(アスコルビルリン酸ナトリウム)の試薬を用いた。
【0253】
化合物C101:アスコルビルリン酸ナトリウムを塩酸にて中和を行い、脱塩後、得られたアスコルビルリン酸を2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオールを用いて中和することで化合物を得た。
【0254】
なお、表22~42中の実施例における本発明の有機アンモニウム塩のうち、C25~39、C57~59以外は、[2]毛髪処理剤の評価1-3.中に記載の調製方法Bで調製した。
【0255】
(評価方法)
(1)保水性試験1
化合物C1~C61は、比較例の化合物C62~C64の80wt%水溶液を調製し、カールフィッシャー水分計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製CA-200)で水分率が20.0wt%であることを確認した(試験前水分率:A)。それらのサンプル1.0gをスクリュー管に加え、蓋をしない状態で、40℃25%RHに設定した恒温恒湿器(東京理化器械株式会社製KCL-2000W)中に、24時間静置した。24時間後の水分率を再度、測定し(試験後水分率:B)、下記式を用いて、水分減少率を算出し、保水性を評価した。
試験前水分率:A(%)
試験後水分率:B(%)
水分減少率(%)=[(A(%)-B(%))/A(%)]×100
【0256】
【表22】
【0257】
【表23】
【0258】
【表24A】
【0259】
【表24B】
【0260】
表22~24の結果より、80wt%水溶液において、化合物C1~C61は、比較例の化合物C62~C64よりも、水分減少率が小さく、保水性に優れていた。また、液性を保持していた。また、水和物状態の化合物を減圧処理して無水物とし、無水物状態の25℃での外観を確認し、表に記載した。
【0261】
カチオン及び/またはアニオンに水素結合性官能基(水酸基)を持つ有機塩の化合物C1~C61は、同様に水素結合性官能基を有するが塩構造ではない化合物C64よりも水分減少率が小さく、有機アンモニウム塩が高い保水性を有することが示唆された。
【0262】
カチオンのみに水素結合性官能基を有した化合物C12~C14、C18、C19、C35、C37、C38とアニオンのみに水素結合性官能基を有した化合物C39は、水素結合性官能基を有さない比較例の化合物C62、C63より水分減少率が小さく、カチオンもしくはアニオンのいずれかに水素結合性官能基を有する有機アンモニウム塩が保水性に優れている。
【0263】
同様なアニオンで比較した場合、カチオン及びアニオンに水素結合性官能基を導入した化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C24、C25、C26、C29、C43、C46は、アニオンのみに水素結合性官能基を有した化合物C39よりも水分減少率が小さく、また、同様なカチオンで比較した場合、カチオン及びアニオンに水素結合性官能基を導入した化合物C6~C11は、カチオンのみに水素結合性官能基を有した化合物C12~C14よりも水分減少率が小さいことから、カチオンとアニオンの双方に水素結合性官能基を有することが、さらに保水効果に優れていていることを確認した。
【0264】
カチオンの置換基の組み合わせについては、同様のアニオン(乳酸アニオン)の有機塩で比較した場合、カチオンに1個以上ヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子を有し、アルキル基を有していてもよい化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C24、C25、C26、C29、C43、C46は、アルキル基のみで構成された化合物C39よりも水分減少率が小さいことから、カチオンにヒドロキシアルキル基、窒素に直接結合した水素原子を有する化合物が保水性に優れていた。
【0265】
次に、カチオンの水素結合性官能基を比較した場合、カチオンがヒドロキシアルキル基とアルキル基からなる化合物C29よりも、カチオンがヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成された化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C24、C25、C26、C43、C46の方が、水分減少率が小さく、カチオンの構造はヒドロキシアルキル基および/または窒素に直接結合した水素原子のみで構成されることが保水効果に優れていていることを確認した。
【0266】
さらに、窒素に直接結合した水素原子を持たない化合物C25、C26、C39よりも、1個以上窒素に直接結合した水素原子が含まれている化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C24、C43、C46の方が、水分減少率が小さく、1個以上窒素に直接結合した水素原子を含む化合物が保水性に優れ、中でも、窒素に直接結合した水素原子のみで構成される化合物C24よりも、化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C43、C46が特に保水性に優れる結果を示したことから、特にカチオン構造は、ヒドロキシアルキル基と窒素に直接結合した水素原子で構成されるカチオンが保水性に優れることが示唆された。
【0267】
アニオン種については、同様のカチオンの有機塩でアニオンの比較を行った。アニオンに水素結合性官能基を含む化合物C6~C11と含まない化合物C12~C14、C15~C17とC18、C19、化合物C27~C34と化合物C35を比較した結果、水素結合性官能基を含むアニオンの化合物C6~C11、C15~C17とC18、C27~C34は、水分減少率が小さいことを確認した。つまり、一方、水素結合性官能基を含まないハロゲン系アニオンより、水素結合性官能基を含む水酸基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホニル基、リン酸基、ホスフィン酸基を含むアニオンの化合物が保水性能に優れていた。また、ハロゲン系アニオンで比較した場合、化合物C12(ホウ素系アニオン)、C13(ブロミドイオン)、C14(クロリドイオン)の順で保水性が優れていた。
【0268】
(2)保水性試験2
各化合物における水和物の保水性を評価した。化合物C1~C38、C40~C49、C56~C59は水和物を用いたが、化合物C39、C62~C64は無水物であるため、1水和物~3水和物の濃度となるように加水して調製した水溶液を用いた。サンプルの水分率は、カールフィッシャー水分計で確認した(試験前水分量率:A)。各サンプル1.0gをスクリュー管に加え、蓋をしない状態で、40℃25%RHに設定した恒温恒湿器中に、24時間静置した。24時間後の水分率を、再度測定し(試験後水分量率:B)、上記同様に、水分減少率を算出し、保水性を評価した。なお、化合物C1~C38、C40~C49、C56~59の各水和物と、それらの水和水の数に対応する濃度の化合物C39の水溶液で比較評価した。
【0269】
(実施例C62~C99、C103~C116:化合物C1~C38、C40~C49、C56~C59中の1水和物と実施例C100:化合物C39、比較例C4:化合物C62、比較例C7:化合物C63及び比較例C10:化合物C64)
【0270】
(実施例C62~C99、C103~C116:化合物C1~C38、C40~C49、C56~C59中の2水和物と実施例C101:化合物C39、比較例C5:化合物C62、比較例C8:化合物C63及び比較例C11:化合物C64)
【0271】
(実施例C62~C99、C103~C116:化合物C1~C38、C40~C49、C56~C59中の3水和物と実施例C102:化合物C39、比較例C6:化合物C62、比較例C9:化合物C63及び比較例C12:化合物C64)
【0272】
【表25】
【0273】
【表26】
【0274】
【表27A】
【0275】
【表27B】
表25~27の結果より、実施例の化合物C1~C49、C56~C59は、比較例の化合物C62~C64よりも水分減少率が小さく、保水性に優れていた。
また、カチオン、アニオンの分子構造と保水性との相関は、保水性試験1と同様の傾向であった。
【0276】
実施例の化合物C1~C13、C15~C18、C20~C34、C36、C40~C49、C56~C59は、保水性試験1の80wt%水溶液の水分減少率より保水性試験2の水和物の水分減少率が小さい傾向を示した。保水性試験1における80wt%水溶液の試験前~試験後の水分率は、水和物の水分率より大きく(例えば、化合物C8の80wt%の試験後水分率:19.2%、化合物C8の水和物水分率:16.6%)、自由水が揮発し、一方で、保水性試験2では水和水が揮発して水分が減少している。つまり、水和物の化合物は、水和物の水分率以下の範囲では、水和水は揮発性が低く、より減水率は小さく保水性が良好であることが示唆された。しかしながら、クロリドアニオンの化合物C14、C19、C35、C37、C38は、80wt%水溶液の水分減少率に対して水和物の水分減少率は同じもしくは大きく、上記の傾向を示さなかった。
【0277】
また、水和物の形成の有無による水分減少率の傾向を評価した。同様のアニオンで、それぞれの1,2,3水和物を比較した場合、水和物を形成する化合物C1、C2、C5、C8、C15、C20、C23、C24、C25、C26、C29、C43、C46は、水和物を形成しない無水物の化合物C39よりも水分減少率が小さく、水和物を形成する化合物が、保水性に優れることを確認した。
【0278】
(3)保水性試験3
保水性試験3では、化合物C8、C11、C62、C63、C64の80wt%水溶液を調製し、カールフィッシャー水分計で水分率が20.0wt%であることを確認した後、それらのサンプル1gをスクリュー管に加え蓋をしない状態で、40℃、25%RHに設定した恒温恒湿器中に静置した。24、96、120、144、168、192時間後、水分率をカールフィッシャー水分計で再度測定した。一方で、重量を測定することにより、各時間の(0~24h、24~96h、96~120h、120~144h、144~168h及び168~192h)の水分減少量を算出した。さらに、それぞれの水分減少量(mg)から1時間あたりの水分減少量(mg/h)を算出することで、保水性を評価した。
【0279】
【表28A】
【0280】
【表28B】
【0281】
それらの結果、比較例の化合物C62、C63は96時間後、化合物C64は192時間後に水分率が1%未満となったのに対して、実施例の化合物のC8、C11は192時間後も15%以上の水分率を示し、水素結合性官能基を有する有機塩の本願化合物の長期保水効果を確認した。
【0282】
化合物C8、C11の0~144時間後の水分率(化合物C8:16.5%、化合物C11:16.2%)は、それぞれの水和物の水分率(化合物C8:16.6%、化合物C11:16.1%)に対してほぼ同等以上であり、自由水が揮発し、144~192時間の間は、水和物の水分率より小さく水和水が揮発している。化合物C8、C11の自由水が揮発した0~144時間の時間当たりの水分減少量は、0.3mg/hに対して、水和水が揮発した144~192時間の時間当たりの水分減少量は0.2mg/hに減少した。つまり、水和水は揮発性が小さく、水和物の化合物が長期の保水効果に優れていることが示唆された。
【0283】
(4)水分閉塞性試験(バリヤー性)
3cm×3cmにカットした5Cの定量ろ紙(東洋濾紙製)に、化合物C8、C11、C20、C29、C43、C46、C47、C49~C55、C62~C83の80wt%水溶液を0.01mL/cm2塗布した。次に、40mLのピアースバイアル瓶(アズワン製)にイオン交換水を20.0g入れ、ピアースバイアル瓶の内蓋(ゴム栓)をはずして各サンプルを塗布したろ紙をピアースバイアル瓶の上にのせ、外蓋で栓をした。これを40℃25%RHに設定した恒温恒湿器に入れ、24時間静置し、バイアル内のイオン交換水の重量を測定した。
【0284】
イオン交換水のみを塗布したろ紙の水分蒸発量W(g)、サンプルを塗布したろ紙での水分蒸発量S(g)とし、それらの保存前のバイアル内のイオン交換水の重量をWm1=20.0g、24時間後のバイアル内のイオン交換水の重量をWm2として、下記式より、水分蒸発抑制率(%)を算出して、水分閉塞性を評価した。水分閉塞性は、数値が高いほど、水分閉塞性に優れることを示す。また、下記式中のWm1、Wm2、Sm1、Sm2はそれぞれ次の数値を表す。
Wm1:保存前のバイアル内のイオン交換水の重量(イオン交換水のみを塗布したろ紙使用)
Wm2:24時間後のバイアル内のイオン交換水の重量(イオン交換水のみを塗布したろ紙使用)
Sm1:保存前のバイアル内のイオン交換水の重量(サンプルを塗布したろ紙使用)
Sm2:24時間後のバイアル内のイオン交換水の重量(サンプルを塗布したろ紙使用)
水分蒸発量W(g) =Wm1-Wm2
水分蒸発量S(g) =Sm1-Sm2
水分蒸発抑制率(%)=[(W(g)-S(g))/W(g)]×100
【0285】
表8に水分閉塞性試験結果を示した。
【0286】
【表29】
【0287】
比較例C16~C18の水分蒸発抑制率は16.2~29.5%であったのに対して、実施例の化合物は30.3~42.3%の水分蒸発抑制率であり、実施例の化合物が水分閉塞性に優れることが確認された。
【0288】
また、室温で固体の比較例C16の化合物C62を塗布したろ紙は、試験後に結晶の析出が見られたのに対して、液体の実施例の化合物のろ紙には結晶等の析出は見られず、固体より液体の方が、塗布性、浸透性、乾燥後の外観に優れる結果となった。また、有効成分を溶解した場合、長期に、その効果を保持することが示唆された。
【0289】
さらに、実施例の化合物C8、C11、C20、C29、C43、C46、C47、C49~C55、C65~C83と比較例の化合物C62、C63とC64を比較すると、比較例の化合物C64の方が、水分蒸発抑制率が低く、水分蒸発抑制効果は、不揮発性の塩構造の化合物が望ましいことを確認した。加えて、塩構造を有する実施例の化合物C8、C11、C20、C29、C43、C46、C47、C49~C55、C65~C83と比較例の化合物C62、C63を比較すると実施例の化合物の方が、水分蒸発抑制率が高く、塩構造の中でも、水素結合性官能基を有することで水分蒸発抑制効果をさらに高めることが可能となることを確認した。
【0290】
(5)官能評価
表30、31の実施例C152~C191、比較例C19~C21に記載した各化合物を所定の濃度に希釈しスプレーボトルに入れ、一定量を肌に噴霧し、塗布時の保湿感、べとつかなさ、肌なじみついて評価を行った。パネルは年齢性別問わない5名をランダムで選出し、平均値を算出し評価値とした。
【0291】
塗布後の保湿感については、各化合物の水溶液を塗布し、塗り広げた際の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、保湿感を大いに感じるものを5、保湿感を感じるものを3、保湿感を感じないものを1と評価した。
【0292】
塗布後のベタつきについては、各化合物の水溶液を塗布し、塗り広げた際の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、ベタつきのないものを5、少しベタつきのあるものを3、ベタつくものを1と評価した。
【0293】
塗布後の肌なじみについては、各化合物の水溶液を塗布し、塗り広げた際の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、よくなじむものを5、なじむものを3、なじみが悪いものを1と評価した。
【0294】
【表30A】
【0295】
【表30B】
【0296】
【表31】
【0297】
表30より、有機アンモニウム塩を用いた実施例C152~C185は比較例C19~C21と、同濃度で比較すると、保湿感、べたつかなさ、肌なじみのいずれの使用感についても優れることが確認された。
【0298】
また、表31より、アニオンに炭素数18の脂肪酸系アニオンを用いた有機アンモニウム塩も同様に保湿感、べたつかなさ、肌なじみのいずれの使用感についても優れることが確認された。
【0299】
このことから、本発明のスキンケア剤は、皮膚に適用した際の使用感に優れることからスキンケア剤として好適であることが示唆された。特に、実施例152~191のように有機アンモニウム塩のカチオンとアニオンの原料(酸、塩基)が外原規に記載されたものであると安全性が高いといえる。
【0300】
(6)有機アンモニウム塩の表面抵抗測定
化合物C20およびC64の0.7g(無水物に換算した含有量)をそれぞれポリウレタン製人工皮革に塗布し、高抵抗計(東京電子株式会社製、スタックTR-2)を用いて表面抵抗値を測定した。何も塗布してない状態では4×1011Ω超であったのに対して、いずれも測定時は液体で、化合物C20では1×108Ω未満、化合物C64では5×108Ωであったことから、化合物C20の方が化合物C64よりも塗布表面の導電性が良好で静電気を抑制し、帯電防止効果があり、本発明のスキンケア剤の構造的特徴の優位性が示された。
【0301】
さらに、化合物C96(乳酸ナトリウム)0.7g(無水物に換算した含有量)をポリウレタン製人工皮革に塗布し、乾燥させて水分を揮発させると、塗布表面は固体状になり、上記同様に測定した表面抵抗値は2×108Ωであったことから、化合物C20(1×108Ω未満)の不揮発性、25℃で液性の効果(塗布物にまんべんなくコーティングできる)が確認された。
このことから、本発明のスキンケア剤は、帯電防止性に優れ、静電気による埃の皮膚への付着、衣服のまとわりつきの軽減に寄与することが示唆される。
【0302】
(7)有効成分の溶解性評価
表32に記載の化合物C20、C64の水溶液に対する有効成分の溶解性を評価した。有効成分としては、難溶性の抗酸化作用を有する没食子酸、保湿作用を有するグルタミン酸を用いた。比較例C22(グリセリン23wt%水溶液)、C23(イオン交換水)に対するグルタミン酸の溶解度は、1wt%未満であったが、実施例C192(化合物C20の23wt%水溶液)に対する溶解度は、3wt%と高い溶解度であった。また、没食子酸についても同様な傾向であり、有効成分をより多く溶解することが可能であった。このことから、本発明のスキンケア剤は、スキンケア組成物の基剤、溶媒、キャリアー等として使用可能である。
【0303】
【表32】
【0304】
(8)皮膚刺激性試験
化合物C20について、ヒト3次元培養表皮モデル「ラボサイト エピ・モデル」(J―TEC社製)を用いて、皮膚刺激性試験を行った。試験は、化合物20水溶液(濃度:0.1、1、10、25、50wt/v%水溶液、添加量:500μL)をヒト表皮組織に添加し、曝露時間:24時間、試験温度:37℃ 、試験条件:CO2インキュベーター(CO2濃度5~10%)の条件で静置することにより行った。静置後、化合物20水溶液を取り除き、リン酸緩衝液500μLで3回洗浄後、MTT(3―(4,5―dimethylthiazol―2―yl)―2,5―Diphenyltetrazoliumbromide)培地500μLに分注し、CO2インキュベーターに入れ、3時間室温で静置し、生細胞中の還元酵素がMTTと反応した際の生成物が発する青紫色に染色されたヒト表皮組織を取り出して、イソプロピルアルコール(IPA)300μLと共にマイクロチューブに入れ、2時間室温で色素の抽出を行い、得られた各IPA抽出液の吸光度(570nm)をマイクロプレートリーダーで測定し、陰性対照として精製水で同様に処理したヒト表皮組織のIPA抽出液の吸光度を生細胞率100%として、吸光度の相対値から各物質の生細胞率を求めた。生細胞率が50%より大きい場合は刺激性無、50%以下の場合は刺激性有として評価した。上記試験はn=2で行った。その結果を表33に示す。
【0305】
【表33】
【0306】
表33の結果より、化合物C20は、いずれの濃度においても高い生細胞率を示し、低刺激性であることが判明した。この結果より、本発明のスキンケア剤、毛髪処理剤をはじめとする化粧料は、皮膚に対する刺激が低いことが示唆された。
【0307】
(9)ヒトパッチテスト
化合物C20について、24時間閉塞ヒトパッチテストを、閉鎖法パッチテスト:「皮膚刺激性・感作性試験の実施方法と皮膚性状計測および評価」第1章:皮膚刺激性試験、第3節:ヒトパッチテスト(p29)に準拠して以下の試験方法にて行った。判定基準を表34,35に示す。
【0308】
【表34】
【0309】
【表35】
(試験方法)
【0310】
1)パッチテストユニットに、化合物C20(85.4wt%水溶液)と対照物質は15μL、白色ワセリンは適切に評価しうる量をチャンバー上のろ紙に適用した。
2)貼布前に被験者の予定貼布部位を観察し適格性について確認を行った。貼布部位に調製したパッチテストユニットを閉塞貼布した。
3)貼布24時間後にパッチテストユニットを除去し、精製水で湿らせた不織布で軽く清拭後、各試料の貼布部位を4点法でマーキングした。除去60分後及び24時間後に判定した。
実施機関:丸石ラボ株式会社
【0311】
(試験結果)
ヒト皮膚に対する24時間の閉塞貼布試験を20名の被験者に実施した結果、全ての被験者において紅斑の反応は見られなかった。皮膚刺激指数は0.0となり、香粧品の皮膚刺激指数による分類によると、「安全品」と分類された。この結果より、本発明のスキンケア剤、毛髪処理剤をはじめとする化粧料は、安全性が高いことが示唆された。
【0312】
(10)有機アンモニウム塩を配合した乳化組成物の使用感
表36に示す組成に従い、実施例C199~C203、比較例C26~C35の乳化組成物の調製を行い使用感の評価を行った。調製方法として具体的には、油剤、界面活性剤を80℃に加熱し、均一に溶解させた。次いで、有機アンモニウム塩とイオン交換水を均一溶解させたものを、温度を保ちながら徐々に添加し、3分間80℃で攪拌し、25℃に冷却した。なお、得られた乳化組成物は、電気伝導度を測定した結果、電気伝導度が低く、連続相が油相であり、得られた乳化組成物はW/O型乳化物と判断した。
【0313】
使用感の評価方法は、乳化組成物を一定量肌にのせて、乳化組成物を塗布時の伸び、べたつき、保湿感、持続的な保湿感、肌なじみ、肌弾力ついて評価を行った。パネルは年齢性別問わない5名をランダムで選出し、平均値を算出し評価値とした。
【0314】
塗布時の伸びについては、5段階で評価を行い、乳化組成物がよく伸びるものを5、伸びるものを3、伸びが良くないものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
【0315】
塗布後のベタつきについては、乳化組成物を塗布し、塗り広げた際の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、ベタつきのないものを5、少しベタつきのあるものを3、ベタつくものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
【0316】
塗布後の保湿感については、乳化組成物を塗布し、塗り広げた際の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、保湿感を大いに感じるものを5、保湿感を感じるものを3、保湿感を感じないものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
【0317】
塗布後の持続的な保湿感については、乳化組成物を塗布し、塗り広げた後2時間後の皮膚の感触を基に5段階で評価を行い、持続的な保湿感を大いに感じるものを5、持続的な保湿感を感じるものを3、持続的な保湿感を感じないものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
肌なじみについては、5段階で評価を行い、よくなじむものを5、なじむものを3、なじみが悪いものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
【0318】
肌弾力については、5段階で評価を行い、肌にふっくらとした弾力が感じられるものを5、やや弾力を感じられるものを3、弾力を感じられないものを1と評価した。パネルの平均値を評価値とした。
【0319】
【表36】
【0320】
表36より、有機アンモニウム塩を用いた実施例はグリセリンを用いた比較例と比較すると、伸び、ベタつき、保湿感、肌なじみ、肌弾力のいずれの使用感についても優れることが確認された。特に持続的な保湿剤感についてはいずれの実施例も優れており、不揮発性の有機アンモニウム塩の効果が発現したと示唆される。また特に、油剤として流動パラフィン、セレシンが多く含まれている実施例C200、C202について、顕著な伸び、保湿感、肌なじみの使用感の向上が確認された。
【0321】
次いで、表37に記載の通り、乳化組成物(W/O)とは形態の異なる、ゲル、乳化組成物(O/W)における使用感についても評価を行った。ゲル(実施例C204、C205)の調製方法として具体的には、界面活性剤と油剤を80℃に加熱し均一に溶解させた。次いで、温度を保ちながら有機アンモニウム塩水溶液を徐々に添加し、80℃で3分間攪拌、混合させた。乳化組成物(O/W) (実施例C206)の調製方法として具体的には、室温で、有機アンモニウム塩または濃グリセリンを、イオン交換水に均一に溶解させた。次いで、油剤を徐々に添加し、その後3分間攪拌した。なお、得られた乳化物は、電気伝導度を測定した結果、イオン交換水と同等の電気伝導度が得られ、連続相が水相であることが確認でき、得られた乳化物はO/W型乳化物と判断した。
【0322】
これら実施例C204~C206の使用感は、有機アンモニウム塩を含む乳化組成物(W/O)と同様に、有機アンモニウム塩の代わりにグリセリンを配合した乳化組成物と比較して良好な伸び、ベタつき、保湿感、肌なじみ、肌弾力が得られた。
【0323】
【表37】
【0324】
(11)皮膚との親和性
化合物C20およびC64の50wt%水溶液とイオン交換水に関して、皮膚との親和性を接触角測定により評価を行った。接触角測定にはDrop Sape Analyzer DSA30(KRUSS社製)を用い、液滴容量は20μLとした。パネルの腕に各濃度に調製したサンプルを20μL滴下し、1分おきに接触角を測定した。パネルは年齢性別問わない5名をランダムで選出し、平均値を算出し評価値とした。結果を表38に示す。
【0325】
【表38】
【0326】
実施例C207と比較例C36、C37より、化合物C20は化合物C64、イオン交換水と比較し接触角が小さく、皮膚との親和性、肌なじみに優れていることが確認された。また、経時的に、顕著に接触角は小さくなり親和性は良好となることも確認された。このことから、本発明のスキンケア剤は、グリセリンやイオン交換水よりも肌なじみに優れていることが示唆された。
【0327】
(12)皮膚への長期保持性
化合物C20およびC64について、長期的な皮膚への付着性を接触角測定により評価した。評価方法は、化合物C20およびC64の30wt%水溶液及びイオン交換水をパネルの腕に塗布し、直後、5分後、10分後サンプルを塗布した腕にイオン交換水を20μL滴下し接触角を測定した。接触角測定にはDrop Sape Analyzer DSA30(KRUSS社製)を用いた。パネルは年齢性別問わない5名をランダムで選出し、平均値を算出し評価値とした。結果を表39に示す。
【0328】
【表39】
実施例C208(化合物C20)は、比較例よりイオン交換水の接触角が小さく、皮膚とイオン交換水との親和性を高めることが示唆された。
【0329】
実施例C208(化合物C20)については、塗布直後から10分後も皮膚に対するイオン交換水の接触角に変化は無く、皮膚に対して長期で、親和性を保持していることが示された。さらに、30分後接触角を確認した結果、10分後の数値を保持しており、揮発することもなく皮膚への長期保持性が高いことが示された。比較例C38(化合物C64)については、塗布後経時でイオン交換水の接触角が増加し、比較例C39(イオン交換水)の接触角に近づくことが確認された。このことからグリセリンの揮発により皮膚への付着が減少したことが推察される。
【0330】
このことから、本発明の有機アンモニウム塩を含むスキンケア剤は、有機アンモニウム塩の不揮発性、皮膚への親和性に起因して皮膚に長期保持することで、保湿性、有効成分の効果の持続性をはじめとする本発明の効果を持続的に保持できる。さらに、液性であり、長時間、表面に、まんべんなくコーティングされていることも、これらの効果を高めていることが推察される。
【0331】
(13)皮膚への浸透性
角層テープストリッピング法を用いて皮膚浸透性を評価した。表40に示した実施例の化合物C20と比較例の化合物C64、C97を用いた。腕に試料を塗布し、1時間放置後の角質を8層テープストリッピングした。このテープの付着物をイオン交換水で10分間抽出し、得られた抽出液を0.2μmのフィルターでろ過して得られた各抽出液中の化合物C20、C64及びC97の量をHPLCにて定量した。
【0332】
定量の結果、1~8層目のテープストリッピング層では、比較例の化合物C64、C97よりも実施例の化合物C20の方が抽出液中の濃度が濃いことから、実施例の化合物は、角層表面に対する高い浸透性を有していることが確認できた。よって、本発明のスキンケア剤は、皮膚に対して高い浸透性を有し、スキンケア組成物の基剤、溶媒、キャリアー等として使用可能である。
【0333】
【表40】
【0334】
(14)アスコルビン酸系化合物の安定性
化合物C46、C49、C98~C100の33wt%水溶液と水に関して、目視による水溶液状態における安定性の評価を行った。評価方法は、化合物C46、C49、C98~C100の33wt%水溶液を調製し、室温または50℃の恒温槽に7日間静置し、その前後の着色を目視で確認した。評価基準は以下の通りとした。
◎:無色透明
〇:薄黄色
△:黄色
×:茶色~黒色
【0335】
アスコルビン酸は分解により着色する。評価の結果、アスコルビン酸を塩構造とした実施例の化合物C46、C49が比較例C42の化合物C98と比較し着色に関して顕著な良化がみられたことから、アスコルビン酸の塩構造化による水溶液状態におけるアスコルビン酸系化合物の安定化効果を確認した。また、C46、C49は、ナトリウム塩のC100と比較しても安定性が高く、本発明のカチオンが有効であることが示唆された。さらに、実施例の化合物C46、C49はC100よりも良好な結果が得られた。つまり、本発明のカチオンを導入することによって、一般的に化粧料に使用されているアスコルビン酸系化合物C99,100より、室温、50℃の条件で総体的に優れた安定化効果を発現し、スキンケア、ヘアケアをはじめとする化粧料に有用性が高いことが示唆された。
【0336】
【表41】
【0337】
(15)美白効果の評価
化合物C46、C49、C101の50wt%水溶液に関して、チロシナーゼ活性抑制試験による美白効果の確認を行った。チロシナーゼ(SIGMA-ALDRICH)を0.2 mg/mLとなるように67mMリン酸緩衝液(pH6.8)で溶解し、酵素溶液を調製した。また、基質溶液はD、L-DOPA(東京化成工業)3mgを67mMリン酸緩衝液10 mLに溶解し調製した。はじめに67mMリン酸緩衝液64μLに対して、各化合物C46、C49、C101の50wt%水溶液を80μL添加し、これに酵素溶液16μL加え、室温で10分間プレインキュベートした。次に、プレインキュベートした溶液に素早く基質溶液80μLを加え、直後の475nmにおける吸光度(A1)を測定した。また、この溶液を室温で1週間静置した後、475nmにおける吸光度(A2)を測定した。
【0338】
また、実施例化合物の代わりに超純水を添加したものをコントロールとし、上記と同様に基質添加直後の475nmにおける吸光度(A3)及び1週間静置した後、475nmにおける吸光度(A4)を測定した。
阻害率を以下の式により算出した。
阻害率(%)=100-(A2-A1)/(A4-A3)×100
【0339】
評価の結果、本発明の有機アンモニウム塩は、チロシナーゼ活性を阻害し、皮膚の美白効果を有することを確認した。つまり、有効成分の骨格を本発明の有機アンモニウム塩に取り込むことによって、その有効成分の効果を発揮することが示唆された。
【0340】
【表42】
図1A
図1B
図2
図3