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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】健全性評価装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20240520BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20240520BHJP
   G06F 16/907 20190101ALI20240520BHJP
   G06F 16/38 20190101ALI20240520BHJP
【FI】
G21F9/36 511P
G21F9/00 Z
G06F16/907
G06F16/38
G21F9/36 541Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021009242
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113187
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田副 佑典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇広
(72)【発明者】
【氏名】相川 徹郎
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-211499(JP,A)
【文献】特許第6695580(JP,B1)
【文献】特開2007-071833(JP,A)
【文献】特開2019-060723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
G21F 5/00
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々に識別子を発行する発行部と、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付ける関連付け部と、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するデータベースと、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力する評価部と、を備え
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記情報データは、前記容器の種類情報、及び収容された前記放射性廃棄物の属性情報のうち少なくとも一つの経年不変情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果及び前記経年不変情報の各々を数値化し加算したスコアで表される健全性評価装置。
【請求項2】
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々に識別子を発行する発行部と、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付ける関連付け部と、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するデータベースと、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力する評価部と、を備え
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果を数値化し加算されるスコアで表され、
前記スコアが設定値に到達する時期を推定する時期推定部を備える健全性評価装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の健全性評価装置において、
前記評価データに基づいて前記容器への対応策を決定する決定部を備える健全性評価装置。
【請求項4】
請求項2及びこの請求項2を引用する請求項3に記載の健全性評価装置において、
前記情報データは、前記容器の種類情報、及び収容された前記放射性廃棄物の属性情報のうち少なくとも一つの経年不変情報が含まれる健全性評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載の健全性評価装置において、
前記スコアが設定値に到達する時期を推定する時期推定部を備える健全性評価装置。
【請求項6】
請求項3に記載の健全性評価装置において、
前記情報データを入力値とし前記評価データ又は前記対応策が出力値となるように機械学習させた学習モデルを保持する保持部を備え、
前記評価部は、新規の前記情報データを前記学習モデルに入力し、前記評価データ又は前記対応策を出力させる健全性評価装置。
【請求項7】
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々の識別子を発行するステップと、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付けるステップと、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するステップと、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力するステップと、を含み、
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記情報データは、前記容器の種類情報、及び収容された前記放射性廃棄物の属性情報のうち少なくとも一つの経年不変情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果及び前記経年不変情報の各々を数値化し加算したスコアで表される健全性評価方法。
【請求項8】
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々の識別子を発行するステップと、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付けるステップと、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するステップと、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力するステップと、を含み、
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果を数値化し加算されるスコアで表され、
前記スコアが設定値に到達する時期を推定するステップを、さらに含む健全性評価方法。
【請求項9】
コンピュータに、
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々の識別子を発行するステップ、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付けるステップ、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するステップ、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力するステップ、を実行させ
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記情報データは、前記容器の種類情報、及び収容された前記放射性廃棄物の属性情報のうち少なくとも一つの経年不変情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果及び前記経年不変情報の各々を数値化し加算したスコアで表される健全性評価プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々の識別子を発行するステップ、
複数の前記識別子の各々に、前記容器の腐食に関連する情報データを関連付けるステップ、
各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するステップ、
前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力するステップ、を実行させ
前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値、並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、
前記経年変化情報は、それぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、
前記評価データは、それぞれの前記判定の結果を数値化し加算されるスコアで表され、
前記スコアが設定値に到達する時期を推定するステップを実行させる健全性評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射性廃棄物を収容した容器の健全性評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性固体廃棄物のうち金属やコンクリートといった不燃性雑固体廃棄物等は、ドラム缶等の容器に収容して貯蔵庫に保管することが義務付けられている。そのような廃棄物の発生量は膨大であるため、貯蔵庫における大量の容器の保管・管理は、負担が重い。更に、貯蔵庫で保管中の容器は、腐食して、収容する廃棄物の一部が漏洩する可能性もあることから、1本1本の個別検査が行われる。そして、検査の結果、収容した廃棄物の漏洩が懸念される不健全な容器については、容器の補修や廃棄物の入れ替え等の対策がとられる。
【0003】
ところで、外観には汚れや塗装浮きなどがあるため、一般的に、目視検査だけでは腐食状態の評価が困難である。このため、画像処理を用いた外観検査で、錆や穴等の多岐に渡る腐食状態を評価することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-20744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、廃棄物を収容した容器は、その内面から腐食が進行する場合も多く、外観検査だけでは腐食状態を十分に評価できない。さらに廃棄物を収容した容器における腐食の進行は、内外面の既存の腐食状態だけでなく、塗装状態等その他の要因の影響も大きく受ける。このため、検査結果に基づいて実施される容器の対応策に関し、担当する検査員による判定のバラツキが懸念される。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、収容した廃棄物の漏洩を回避するための容器の健全性評価をバラツキなく安定的に実施する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る健全性評価装置において、放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々に識別子を発行する発行部と、複数の前記識別子の各々に前記容器の腐食に関連する情報データを関連付ける関連付け部と、各々の前記識別子に累積的に関連付けた前記情報データを保存するデータベースと、前記識別子に関連付けされた前記情報データに基づいて対応する前記容器の健全性に関する評価データを出力する評価部と、を備え、前記情報データは、前記容器に前記放射性廃棄物が収容されてから前記健全性の評価時点までの期間情報、前記評価時点における表面線量率及び温度の少なくとも一方の計測値並びに前記評価時点における前記容器の外観情報のうち少なくとも一つの経年変化情報が含まれ、前記情報データは前記容器の種類情報、及び収容された前記放射性廃棄物の属性情報のうち少なくとも一つの経年不変情報が含まれ、前記経年変化情報はそれぞれに設定された基準値に基づき正常/異常の判定がなされ、前記評価データはそれぞれの前記判定の結果及び前記経年不変情報の各々を前記数値化し加算したスコアで表されるか、もしくは、前記評価データはそれぞれの前記判定の結果を数値化し加算されるスコアで表され、前記スコアが設定値に到達する時期を推定する時期推定部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、収容した廃棄物の漏洩を回避するための容器の健全性評価をバラツキなく安定的に実施する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る健全性評価装置の構成図。
図2】第2実施形態に係る健全性評価装置の構成図。
図3】容器の識別子に累積的に関連付けられた情報データ及び容器の健全性に関する評価データを示すテーブル。
図4】第3実施形態に係る健全性評価装置の構成図。
図5】各実施形態に係る健全性評価方法及び健全性評価プログラムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る健全性評価装置10A(10)の構成図である。このように健全性評価装置10Aは、放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された複数の容器の各々に識別子15を発行する発行部11と、複数の識別子15の各々に、容器の腐食に関連する情報データ16を関連付ける関連付け部17と、各々の識別子15に累積的に関連付けた情報データ16を保存するデータベース12と、識別子15に関連付けされた情報データ16に基づいて対応する容器の健全性に関する評価データ20を出力する評価部18と、を備えている。
【0011】
放射性廃棄物を収容する容器としては、特に限定されないが、容量が200L程度であるドラム缶、容量が2000L程度であるコンテナ、及び梱包材等が挙げられる。そして、放射性廃棄物を収容したこれら容器は、地下空間または地上建屋に設けられた貯蔵庫に、個別に取り出せるよう段積みされて保管されている。発行部11は、貯蔵庫に保管されている複数の容器の各々を識別する識別子15を発行する。なおこの容器の識別子15には、貯蔵庫における保管位置に関する情報も紐づけられる。
【0012】
そして、このように貯蔵庫に保管される容器は、収容する廃棄物の一部が漏洩していないかもしくはその兆候を事前に察知するために、その健全性の評価が、定期的に行われている。廃棄物の漏洩は、容器の部分的な腐食が経年的に進行した結果、発生するものである。このため評価は、廃棄物の漏洩の兆候となる腐食の発生とその進展に関連する情報データ16を効率的かつ正確に取得するため、大きく二種類に分けて実行している。
【0013】
一つ目の簡易評価は、容器を段積みしたまま動かさずに、検査員が巡回して目視評価して情報データ16を取得している。二つ目の詳細評価は、簡易評価よりも時間間隔を空けて実施されるもので、容器を個別に別室に移動させ、上面、下面、側周面といった全方向から容器の外観を評価する。これら一つ目及び二つ目の評価は、目視情報だけでなく画像撮影や機器計測による情報データ16も取得される。さらには、容器を開放してその内観に関する情報も取得する場合もある。
【0014】
情報データ16のうち目視情報は、視覚以外にも検査員の五感を活用して得られた情報が、検査員によりテキストデータとして作成されたものである。機器計測や画像撮影による情報データ16としては、例えば単眼カメラやステレオカメラ、魚眼カメラ、サーモカメラ、ハイパースペクトルカメラ等の機器により撮影されたものである。この画像データの形態としては、RGBの3チャネルで構成された画像であってもよく、グレースケールの1チャネルの画像やサーモグラフィ画像、ハイパースペクトル画像等が挙げられる。
【0015】
関連付け部17は、上述したように、複数の容器に対して定期的に実施される簡易評価や詳細評価で得られた情報データ16を、これら容器の識別子15の各々に関連付ける。つまり、このような評価が実施され新たに発行される情報データ16は、その都度、対応する識別子15に関連付けられ、データベース12に累積的に保存されていく。なおデータベース12は、他の構成要素と同じ機器筐体内に設けることができるが、この機器筐体が接続される情報通信ネットワーク上にも設けることができる。
【0016】
評価部18は、各々の容器の識別子15に関連付けされた情報データ16に基づいて対応する容器の健全性に関する評価データ20を出力する。この評価部18で導き出される評価データ20がいかなるアルゴリズムを用いるかについては特に限定はない。この評価データ20は、その内容によって、評価対象となる容器に対し、主に「異常無し」、「次期検査に結論繰り越し」、「要・補修」、「要・交換」といった対応策を管理者に促す作用を持つものである。
【0017】
第1実施形態において評価部18は、対象となる容器に対する関連付けされた情報データ16に基づいて、容器の状態が正常であるかを指す正常度と、正常時に対して容器がどの程度劣化しているかを指す劣化度とを推定する。ここで正常度は、関連付けされた情報データ16と予め正常か否かを判別するように定義された基準値との比較によって導出される。この基準値は、情報データ16と、この情報データ16に紐づくラベルとによって定義可能である。
【0018】
ラベルは、予め人為的に容器の状態が正常か否かをラベリングされたデータを用いてもよいし、評価部18の処理結果を逐次的に保存したデータを追加ラベルとして利用してもよい。また、ラベルを付与する際の態様は、例えば正常を1、異常を0とする2値の態様や、正常を1、異常を0として正常の程度を連続値で表現する態様であってよい。
【0019】
劣化度も、関連付けされた情報データ16と予め正常か否かを判別するように定義された基準値との比較によって導出される。この基準値は、情報データ16と、この情報データ16に紐づくラベルとによって定義可能であり、ラベルは正常度に対する劣化強度でよい。
【0020】
(第2実施形態)
次に図2及び図3を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図2は第2実施形態に係る健全性評価装置10B(10)の構成図である。図3は容器の識別子15に累積的に関連付けられた情報データ16及び容器の健全性に関する評価データ20を示すテーブルである。なお、図3において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。また図3に記載されている「項目」「値」「基準値」等は、実施形態の説明のための例示であって、実際の実施内容を正確に反映させたものではない。
【0021】
健全性評価装置10Bは、複数の容器の各々に識別子15を発行する発行部11と、複数の識別子15の各々に情報データ16を関連付ける関連付け部17と、各々の識別子15に累積的に関連付けた情報データ16を保存するデータベース12と、評価データ20を出力する評価部18と、を備え、さらに、評価データ20に基づいて容器への対応策を決定する決定部31と、スコアが設定値に到達する時期を推定する時期推定部32とを備えている。
【0022】
図3に示すように情報データ16は、大きく、経年変化情報21と経年不変情報22とに分類される。ここで経年変化情報21とは、上述した定期的に実施される評価(簡易評価,詳細評価)により得られる情報である。他方で、経年不変情報22は、放射性廃棄物が容器に収容され貯蔵庫に保管された時点で得られる情報で、当該容器が補修されたり交換されたりすることがない限り不変なものである。
【0023】
このうち経年変化情報21は、容器に放射性廃棄物が収容されてから健全性の評価時点までの期間情報25、評価時点における表面線量率26及び温度27の少なくとも一方の計測値、評価時点における容器の外観情報28等が挙げられる。また経年不変情報22は、容器種類35の情報、収容された放射性廃棄物の属性情報36等が挙げられる。
【0024】
期間情報25は、放射性廃棄物が容器に収容され貯蔵庫に保管された時点から定期的に実施される評価時点までの期間を表す。放射性廃棄物が収容されている期間は、容器の健全性に影響を与えるものなので重要な管理項目である。期間情報25の基準値37は、容器の耐用年数を参考に設定される。この容器の期間情報25は35年であるために、100年の基準値37に対して正常(OK)との判定38がなされる。
【0025】
そして、この判定38の結果に基づいて、スコア39が付与される。ここでは、判定38が正常(OK)なので、スコア39は“0”である。もしも、判定38が異常(NG)であれば、例えば、スコア39には“10”が付与される。なお、図3において判定38は、期間情報25の値に対し、判定38を正常(OK)/異常(NG)の二値で行っているが、複数の基準値37で判定38を多値で行い、それぞれに別々のスコア39を付与してもよい。情報データ16において、その他表面線量率26、温度27、及び外観情報28についても、期間情報25と同様の説明が当てはまるので記載を省略する。
【0026】
容器種類35の情報としては、ドラム缶、コンテナ、梱包材等の種別、及びそれらの容量、並びにそれら施した追加工の仕様等が挙げられる。放射性廃棄物の属性情報36に付与されるスコア39は、容器の健全性に与える影響度の大きさによって設定される。例えば、放射性廃棄物に腐食性物質が混入している場合、スコア39は、大きめに設定される。経年不変情報22に付与されるスコア39は、経年変化情報21に変化があった場合に、即座に対応策33が更新されるようにするといった作用を持つ。
【0027】
評価データ20は、経年変化情報21及び経年不変情報22のそれぞれの項目の判定38の結果を数値化したスコア39の加算値34で表される。そして決定部31(図2)は、この評価データ20に基づいて容器への対応策33を決定する。この対応策33は、「異常無し(対応無し)」、「次期検査に結論繰り越し」、「要・補修」、「要・交換」といったものであるが、これらに限定されない。
【0028】
時期推定部32は、スコア39の加算値34が設定値に到達する時期を推定する。つまり、スコア39の加算値34が、現在の値から増加して所定の値までに到達するまでの所要時間を推定することができる。これにより、所定の対応策33を実行する日限を推定して保守管理の実施計画にフィードバックすることができる。
【0029】
(第3実施形態)
次に図4を参照して本発明における第3実施形態について説明する。図4は第3実施形態に係る健全性評価装置10C(10)の構成図である。なお、図4において図1又は図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0030】
第3実施形態に係る健全性評価装置10Cは、第2実施形態に係る健全性評価装置10Bの構成に加え、さらに学習モデルの保持部35を備えている。この学習モデルは、情報データ16を入力値とし評価データ20又は対応策33が出力値となるように機械学習させたものである。そして評価部18は、新規の情報データ16を学習モデルに入力し、評価データ20又は対応策33を出力させる。
【0031】
第3実施形態によれば、過去の現実的に取得した又は仮想的に作成された情報データ16を初期の教師データとして利用することで、適切な評価データ20又は対応策33を機械学習させることができる。この学習モデルは、その後に現実に取得され蓄積された情報データ16を新たな教師データとして登録を増やしチューニングしていくことができる。ここで、実施形態における機械学習は、図3に示すように、複数種類の情報データ16を利用するマルチモーダルが採用されているが、一種類の情報データ16を利用するシングルモーダルも採用することができる。
【0032】
このような学習モデルとして、例えばハンドクラフトのルールベースや、サポートベクターマシンが好適に適用される。あるいは、ニューラルネットワークやベイジアンネットワーク等の深層学習に関する手段を用いてもよい。また評価部18では、他の評価方法としては、最近傍探索法やクラスタリング処理等も採用することができ、ラベル量およびラベルの偏りによって適宜用いる手法を変えてもよい。
【0033】
次に図5のフローチャートを参照して各実施形態に係る健全性評価方法及び健全性評価プログラムを説明する。まず、放射性廃棄物を収容し貯蔵庫に保管された容器に識別子15が発行される(S11)。そして、定期的に実施される容器の評価作業(S12)で作成される情報データ16が識別子15に累積的に関連付けられる(S13)。さらに、識別子15に関連付けされた情報データ16に基づいて対応する容器の健全性に関する評価データ20が出力される(S14)。次に、この評価データ20に基づいて容器への対応策が決定(対応無しの決定も含む)される(S15)。そして、(S12)から(S15)のフローが、貯蔵庫における容器の保管が終了するまで繰り返される(S16;No,Yes,END)。
【0034】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の健全性評価装置によれば、識別子に関連付けされた情報データに基づいて容器の健全性に関する評価データを出力することにより、収容した廃棄物の漏洩を回避するための容器の健全性評価がバラツキなく安定的に実施可能となる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0036】
以上説明した健全性評価装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。また、健全性評価装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、健全性評価プログラムにより動作させることが可能である。
【0037】
また健全性評価プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態に係る健全性評価プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、健全性評価装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10(10A,10B,10C)…健全性評価装置、11…発行部、12…データベース、15…識別子、16…情報データ、17…関連付け部、18…評価部、20…評価データ、21…経年変化情報、22…経年不変情報、25…期間情報、26…表面線量率、27…温度、28…外観情報、31…決定部、32…時期推定部、33…対応策、34…加算値、35…保持部、36…属性情報、37…基準値、38…判定、39…スコア。
図1
図2
図3
図4
図5