(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20240520BHJP
B62M 9/122 20100101ALI20240520BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20240520BHJP
B62M 9/123 20100101ALI20240520BHJP
B62M 9/133 20100101ALI20240520BHJP
B62M 11/16 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/122
B62M9/132
B62M9/123
B62M9/133
B62M11/16 H
(21)【出願番号】P 2021022077
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松林 寛子
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013624(JP,A)
【文献】特開2005-132122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 25/08
B62M 9/122
B62M 9/132
B62M 9/123
B62M 9/133
B62M 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、
前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、
前記基準値と、前記閾値との差の、前記基準値と、仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、所定比率以下であり、
前記仮想閾値は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力が維持された状態において前記変速段を変更した場合に前記パラメータの予測値が前記基準値となる前記パラメータの予測値である、制御装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記所定範囲の上限を規定する第1閾値を含み、
前記仮想閾値は、仮想の範囲の上限を規定する第1仮想閾値を含み、
前記基準値と、前記第1閾値との差の、前記基準値と、前記第1仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、前記所定比率以下である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第1閾値は、大きい、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、
前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、
前記閾値は、前記所定範囲の上限を規定する第1閾値を含み、
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第1閾値は、大きい、制御装置。
【請求項5】
前記閾値は、前記所定範囲の下限を規定する第2閾値を含み、
前記仮想閾値は、仮想の範囲の下限を規定する第2仮想閾値を含み、
前記基準値と、前記第2閾値との差の、前記基準値と、前記第2仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、前記所定比率以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第2閾値は、小さい、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、
前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、
前記閾値は、前記所定範囲の下限を規定する第2閾値を含み、
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第2閾値は、小さい、制御装置。
【請求項8】
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の、前記基準値と、前記閾値との差は、大きい、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、
前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、
連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の、前記基準値と、前記閾値との差は、大きい、制御装置。
【請求項10】
前記基準値は、前記所定範囲における中央値である、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記パラメータは、前記人力駆動車のケイデンスである、請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記ケイデンスが前記所定範囲よりも大きくなると、前記変速比が大きい前記変速段に変更するように前記変速装置を制御する、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記ケイデンスが前記所定範囲よりも小さくなると、前記変速比が小さい前記変速段に変更するように前記変速装置を制御する、請求項11または12に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速比を変更するように変速装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、前記基準値と、前記閾値との差の、前記基準値と、仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、所定比率以下であり、前記仮想閾値は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力が維持された状態において前記変速段を変更した場合に前記パラメータの予測値が前記基準値となる前記パラメータの予測値である。
上記第1側面の制御装置によれば、変速段ごとの、基準値と、閾値との差の、基準値と、仮想閾値との差に対する比率のばらつきが低減されるため、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記閾値は、前記所定範囲の上限を規定する第1閾値を含み、前記仮想閾値は、仮想の範囲の上限を規定する第1仮想閾値を含み、前記基準値と、前記第1閾値との差の、前記基準値と、前記第1仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、前記所定比率以下である。
上記第2側面の制御装置によれば、変速段ごとの、基準値と、第1閾値との差の、基準値と、第1仮想閾値との差に対する比率のばらつきが低減される。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の制御装置において、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第1閾値は、大きい。
上記第3側面の制御装置によれば、連続する変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の第1閾値を大きくできる。
【0008】
本開示の第4側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、前記閾値は、前記所定範囲の上限を規定する第1閾値を含み、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第1閾値は、大きい。
上記第4側面の制御装置によれば、連続する2つの変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の第1閾値を大きくできる。このため、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0009】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記閾値は、前記所定範囲の下限を規定する第2閾値を含み、前記仮想閾値は、仮想の範囲の下限を規定する第2仮想閾値を含み、前記基準値と、前記第2閾値との差の、前記基準値と、前記第2仮想閾値との差に対する比率は、いずれの前記変速段においても、前記所定比率以下である。
上記第5側面の制御装置によれば、変速段ごとの、基準値と、第2閾値との差の、基準値と、第2仮想閾値との差に対する比率のばらつきが低減される。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第2閾値は、小さい。
上記第6側面の制御装置によれば、連続する2つの変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の第2閾値を小さくできる。
【0011】
本開示の第7側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、前記閾値は、前記所定範囲の下限を規定する第2閾値を含み、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の前記変速段の前記第2閾値は、小さい。
上記第7側面の制御装置によれば、連続する2つの変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の第2閾値を小さくできる。このため、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0012】
前記第1から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の、前記基準値と、前記閾値との差は、大きい。
上記第8側面の制御装置によれば、連続する2つの変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の基準値と、閾値との差を大きくできる。
【0013】
本開示の第9側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置を含み、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態に関するパラメータが所定範囲外の場合、前記変速比を変更するように前記変速装置を制御し、前記所定範囲は、前記複数の変速段ごとに設定され、かつ、前記所定範囲を規定する閾値と、基準値と、を含み、連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が小さい方の前記変速段と対応する前記変速比に対する前記変速比が大きい方の前記変速段と対応する前記変速比の比率が大きいほど、前記連続する2つの前記変速段のうちの前記変速比が大きい方の、前記基準値と、前記閾値との差は、大きい。
上記第9側面の制御装置によれば、連続する2つの変速段において、変速比が大きく異なるほど、変速比が大きい方の変速段の基準値と、閾値との差を大きくできる。このため、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0014】
前記第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記基準値は、前記所定範囲における中央値である。
上記第10側面の制御装置によれば、基準値が所定範囲における中央値であるため、所定範囲における中央値に基づいて変速装置を制御できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記パラメータは、前記人力駆動車のケイデンスである。
上記第11側面の制御装置によれば、ケイデンスに応じて変速装置を制御できる。
【0016】
前記第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記ケイデンスが前記所定範囲よりも大きくなると、前記変速比が大きい前記変速段に変更するように前記変速装置を制御する。
上記第12側面の制御装置によれば、ケイデンスが所定範囲よりも大きくなると変速比を大きくできるため、ケイデンスを所定範囲以下に維持しやすい。
【0017】
前記第11または第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記ケイデンスが前記所定範囲よりも小さくなると、前記変速比が小さい前記変速段に変更するように前記変速装置を制御する。
上記第13側面の制御装置によれば、ケイデンスが所定範囲よりも小さくなると変速比を小さくできるため、ライダの負荷が大きくなりにくい。
【発明の効果】
【0018】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車の走行状態に関するパラメータに応じて変速装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部によって実行され、変速装置を制御する処理のフローチャート。
【
図4】実施形態の所定範囲と基準値との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
図1から
図5を参照して、実施形態の人力駆動車用の制御装置50について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0021】
人力駆動車10は、人力駆動力が入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪14と、車体16と、を、さらに備える。少なくとも1つの車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の第1端部に設けられる第1クランクアーム12Bと、クランク軸12Aの軸方向の第2端部に設けられる第2クランクアーム12Cと、を含む。第1クランクアーム12Bには、第1ペダル20Aが連結される。第2クランクアーム12Cには、第2ペダル20Bが連結される。
【0022】
駆動機構22は、クランク軸12Aに連結される第1回転体24を含む。クランク軸12Aは、第1回転体24と一体回転するように第1回転体24と連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0023】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転する場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転する場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0024】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられる。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結される。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0025】
人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置50に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置50の制御部52と電気ケーブルまたは無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;Power Line Communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部52と通信可能である。
【0026】
人力駆動車10は、変速比Rがそれぞれ異なる複数の変速段を有する変速装置38を含む。変速装置38は、人力駆動車10において人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比Rを変更するように構成される。各変速段に対応する変速比Rは、相互に異なる。変速段の数は、例えば3から30の範囲である。変速比Rは、クランク軸12Aの回転速度Cに対する駆動輪の回転速度Wの比率である。本実施形態では、駆動輪は後輪14Aである。変速装置38は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速装置38が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Aのハブに設けられる。変速装置38は、アクチュエータによって動作するように構成される電動変速機を含む。変速装置38がフロントディレイラを含む場合、変速装置38は、第1回転体24を含み、第1回転体24は、複数のフロントスプロケットを含む。変速装置38がリアディレイラを含む場合、変速装置38は、第2回転体26を含み、第2回転体26は、複数のリアスプロケットを含む。アクチュエータは、電気アクチュエータを含む。アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。変速比Rと、駆動輪の回転速度Wと、クランク軸12Aの回転速度Cとの関係は、式(1)によって表される。式(1)において、駆動輪の回転速度Wを、フロントスプロケットの歯数に置き換え、クランク軸12Aの回転速度Cを、リアスプロケットの歯数に置き換えてもよい。
式(1):変速比R=回転速度W/回転速度C
【0027】
制御装置50は、制御部52を含む。制御部52は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。制御部52に含まれる演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部52に含まれる演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。例えば、演算処理装置の一部は、人力駆動車10に設けられ、演算処理装置の他の一部は、インターネットに接続されるサーバに設けられてもよい。演算処理装置が、相互に離れた複数の場所に設けられる場合、演算処理装置の各部分は、無線通信装置を介して相互に通信可能に接続される。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0028】
好ましくは、制御装置50は、記憶部54をさらに含む。記憶部54には、制御プログラムおよび制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)を含む。
【0029】
好ましくは、人力駆動車10は、クランク回転センサ40をさらに含む。クランク回転センサ40は、クランク軸12Aの回転速度Cに関する情報を検出するように構成される。クランク回転センサ40は、例えば、人力駆動車10のフレーム18に設けられる。クランク回転センサ40は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12A、クランク軸12Aに連動して回転する部材、または、クランク軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。
【0030】
クランク回転センサ40は、クランク軸12Aの回転速度Cに応じた信号を出力する。例えば、クランク軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、磁石は、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ40は、クランク軸12Aの回転速度Cに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ40は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。
【0031】
制御部52は、変速装置38を制御する。制御部52は、人力駆動車10の走行状態に関するパラメータPが所定範囲WP外の場合、変速比Rを変更するように変速装置38を制御する。
【0032】
所定範囲WPは、複数の変速段ごとに設定され、かつ、所定範囲WPを規定する閾値PXと、基準値PAと、を含む。好ましくは、閾値PXは、所定範囲WPの上限を規定する第1閾値PX1を含む。好ましくは、閾値PXは、所定範囲WPの下限を規定する第2閾値PX2を含む。好ましくは、第1閾値PX1、および、第2閾値PX2は、予め記憶部54に記憶される。基準値PAは、例えば、人力駆動車10の走行に好適な値として設定される。基準値PAは、変更可能に構成されていてもよい。基準値PAは、所定範囲WPにおける中央値であってもよい。例えば、基準値PAは、所定の変速段と対応する所定範囲WPにおける中央値である。
【0033】
好ましくは、制御部52は、パラメータPが所定範囲WP内に維持されるように、変速比Rを変更するように変速装置38を制御する。好ましくは、制御部52は、パラメータPが基準値PAに近づくように、変速比Rを変更するように変速装置38を制御する。
【0034】
制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。
【0035】
例えば、制御部52は、パラメータPがライダの負荷が増加するほど小さくなるパラメータPである場合、パラメータPが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。例えば、制御部52は、パラメータPがライダの負荷が増加するほど小さくなるパラメータPである場合、パラメータPが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。
【0036】
例えば、制御部52は、パラメータPがライダの負荷が増加するほど大きくなるパラメータPである場合、パラメータPが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。例えば、制御部52は、パラメータPがライダの負荷が増加するほど大きくなるパラメータPである場合、パラメータPが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。
【0037】
パラメータPは、例えば、ケイデンスNC、クランク軸12Aの回転速度C、人力駆動車10の走行路の勾配、人力駆動車10の走行抵抗、および、人力駆動車10の車速の少なくとも1つを含む。ライダの負荷が増加するほど小さくなるパラメータPは、例えば、ケイデンスNC、クランク軸12Aの回転速度C、および、車速である。ライダの負荷が増加するほど大きくなるパラメータPは、例えば、人力駆動車10の走行路の勾配、および、人力駆動車10の走行抵抗である。
【0038】
本実施形態では、パラメータPは、人力駆動車10のケイデンスNCである。ケイデンスNCは、単位時間あたりのクランク軸12Aの回転数によって規定される。単位時間は、例えば、1分である。制御部52は、例えば、クランク軸12Aの回転速度Cに応じて、ケイデンスNCを算出する。
【0039】
本実施形態では、制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。例えば、制御部52は、ケイデンスNCが第1閾値PX1よりも大きくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。好ましくは、制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きくなると、現在の変速段よりも1段階だけ変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御する。制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きくなると、現在の変速段よりも2段階以上、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。
【0040】
本実施形態では、制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。例えば、制御部52は、ケイデンスNCが第2閾値PX2よりも小さくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。好ましくは、制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さくなると、現在の変速段よりも1段階だけ変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御する。制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さくなると、現在の変速段よりも2段階以上、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。
【0041】
図3を参照して、制御部52が変速装置38を制御する処理が説明される。制御部52は、例えば、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部52は、
図3のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0042】
制御部52は、ステップS11において、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きいか否かを判定する。制御部52は、例えば、ケイデンスNCが第1閾値PX1よりも大きい場合、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きいと判定する。制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きい場合、ステップS12に移行する。制御部52は、ステップS12において、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御し、処理を終了する。
【0043】
制御部52は、ステップS11において、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも大きくない場合、ステップS13に移行する。制御部52は、ステップS13において、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さいか否かを判定する。制御部52は、例えば、ケイデンスNCが第2閾値PX2よりも小さい場合、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さいと判定する。制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さい場合、ステップS14に移行する。制御部52は、ステップS14において、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御し、処理を終了する。
【0044】
制御部52は、ステップS13において、ケイデンスNCが所定範囲WPよりも小さくない場合、処理を終了する。ステップS11においてNO、かつ、ステップS13においてNOの場合、ケイデンスNCが所定範囲WP内である。制御部52は、ケイデンスNCが所定範囲WP内の場合、変速比Rを変更せずに処理を終了する。
【0045】
図4および
図5を参照して、所定範囲WPについて説明する。
図4は、本実施形態における変速段ごとの所定範囲WPを示す。
図5は、仮想閾値PVと基準値PAとの関係を示す。
図4および
図5において、変速段数は7である。
【0046】
基準値PAと、閾値PXとの差DXの、基準値PAと、仮想閾値PVとの差DYに対する比率Aは、いずれの変速段においても、所定比率AX以下である。仮想閾値PVは、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段を変更した場合にパラメータPの予測値PBが基準値PAとなるパラメータPの予測値PBである。予測値PBは、例えば、実際に変速段が変更された場合における変速段の変更後のパラメータPとは異なる。予測値PBは、例えば、駆動輪の回転速度Wが維持された状態、または、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速比Rが変更されたことに伴って変化すると推測されるパラメータPの予測値PBである。仮想閾値PVは、例えば、変速装置38がディレイラを含む場合、基準値PAに、変速比Rを変更後にチェーンがかけられているスプロケットの変更後ギア数G1を乗算し、かつ、現在チェーンがかけられているスプロケットの現在ギア数G2を除算した値である。仮想閾値PVは、例えば、式(2)によって算出される。
式(2):仮想閾値PV=基準値PA*変更後ギア数G1/現在ギア数G2
【0047】
仮想閾値PVは仮想の範囲の上限を規定する第1仮想閾値PV1を含む。この場合、変更後ギア数G1は変速比Rが大きい変速段のギア数である。仮想閾値PVは仮想の範囲の下限を規定する第2仮想閾値PV2を含む。この場合、変更後ギア数G1は変速比Rが小さい変速段のギア数である。仮想の範囲は、基準値PAを含む。第1仮想閾値PV1は、基準値PAよりも大きい。第2仮想閾値PV2は、基準値PAよりも小さい。
【0048】
仮想閾値PVは、例えば、基準値PAを変更後の変速比Rによって除算し、かつ、現在の変速比Rを乗算した値であってもよい。仮想閾値PVは、実験等によって設定される値であってもよい。好ましくは、差DXおよび差DYは、絶対値によって表される。
【0049】
所定比率AXは、好ましくは、1.0以下かつ0.3以上である。所定比率AXは、好ましくは、0.85以下かつ0.4以上である。所定比率AXは、例えば、0.8以下かつ0.5以上である。所定比率AXは、例えば、0.75である。所定比率AXは、1.0であってもよく、0.7であってもよく、0.6であってもよく、0.5であってもよい。
【0050】
好ましくは、基準値PAと、第1閾値PX1との差DX1の、基準値PAと、第1仮想閾値PV1との差DY1に対する比率Aは、いずれの変速段においても、所定比率AX以下である。第1仮想閾値PV1は、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段が大きくなるように変更した場合にパラメータPの予測値PBが基準値PAとなるパラメータPの予測値PBである。
【0051】
好ましくは、基準値PAと、第2閾値PX2との差DX2の、基準値PAと、第2仮想閾値PV2との差DY2に対する比率Aは、いずれの変速段においても、所定比率AX以下である。第2仮想閾値PV2は、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段が小さくなるように変更した場合にパラメータPの予測値PBが基準値PAとなるパラメータPの予測値PBである。
【0052】
好ましくは、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の変速段の第1閾値PX1は、大きい。
【0053】
好ましくは、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の変速段の第2閾値PX2は、小さい。
【0054】
好ましくは、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の、基準値PAと、閾値PXとの差DXは、大きい。
【0055】
好ましくは、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の、基準値PAと、第1閾値PX1との差DX1は、大きい。
【0056】
好ましくは、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の、基準値PAと、第2閾値PX2との差DX2は、大きい。
【0057】
図4に二点鎖線によって示す第1予測値PB1は、パラメータPが第1閾値PX1を超える場合、かつ、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において、制御部52が変速比Rが大きい変速段に変更した場合のパラメータPの予測値PBを示す。
図4に示す第1予測値PB1は、横軸に記載される変速段に変更された直後の予測値PBである。例えば、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段数が2から3に変更される場合、パラメータPは、横軸に示す変速段数が3と対応する第1予測値PB1に変化する。
図4に二点鎖線によって示す第2予測値PB2は、パラメータPが第2閾値PX2を超える場合、かつ、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において、制御部52が変速比Rが小さい変速段に変更した場合のパラメータPの予測値PBを示す。
図4に示す第2予測値PB2は、横軸に記載される変速段に変更された直後の予測値PBである。例えば、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段数が3から2に変更される場合、パラメータPは、横軸に示す変速段数が2と対応する第2予測値PB2に変化する。
【0058】
変速装置38は、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが、全ての変速段において同じにならないように構成される。制御部52が全ての変速段において同じ所定範囲を用いて変速段を変更するように変速装置38を制御する場合、各変速段における比率Bのばらつきによって、第1予測値PB1および第2予測値PB2の各変速段間におけるばらつきが大きい。全ての変速段において所定閾値PXが同じである場合、第1予測値PB1と第1閾値PX1との差の各変速段間におけるばらつきが大きい。全ての変速段において所定閾値PXが同じである場合、第1予測値PB1と第2閾値PX2との差の各変速段間におけるばらつきが大きい。全ての変速段において所定閾値PXが同じである場合、第2予測値PB2と第1閾値PX1との差の各変速段間におけるばらつきが大きい。全ての変速段において所定閾値PXが同じである場合、第2予測値PB2と第2閾値PX2との差の各変速段間におけるばらつきが大きい。本実施形態の制御部52は、所定範囲WPを用いて変速段を変更するように変速装置38を制御する。所定範囲WPは、第1予測値PB1が変速段に関わらず基準値PAになるように設定された第1仮想閾値PV1、および、第2予測値PB2が変速段に関わらず基準値PAになるように設定された第2仮想閾値PV2に基づいて決定される。このため、全ての変速段において同じ所定範囲を用いて変速段を変更するように変速装置38を制御する場合と比較して変速段ごとに変速段の変更されやすさがばらつかず、ライダが違和感を覚えにくい。
【0059】
基準値PAは、人力駆動車10の種類、および、人力駆動車10のライダ等に応じて異なる値が設定される。制御部52が全ての変速段において同じ所定範囲を用いて変速段を変更するように変速装置38を制御する場合、第1予測値PB1および第2予測値PB2のばらつきの大きさは、基準値PAの大きさによっても異なる。本実施形態の制御部52は、所定範囲WPを用いて制御部52が変速段を変更するように変速装置38を制御するため、全ての変速段において同じ所定範囲を用いて変速段を変更するように変速装置38を制御する場合と比較して、異なる基準値PA間の変速段の変更されやすさがばらつかず、ライダが違和感を覚えにくい。
【0060】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
・基準値PAと、閾値PXとの差DXの、基準値PAと、人力駆動車10に入力される人力駆動力が維持された状態において変速段を変更した場合にパラメータPの予測値PBが基準値PAになるような仮想閾値PVとの差DYに対する比率Aが、いずれの変速段においても、所定比率AX以下になるように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0062】
・連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の変速段の第1閾値PX1が大きくなるように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0063】
・連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の変速段の第2閾値PX2が小さくなるように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0064】
・連続する2つの変速段のうちの変速比Rが小さい方の変速段と対応する変速比RSに対する変速比Rが大きい方の変速段と対応する変速比RRの比率Bが大きいほど、連続する2つの変速段のうちの変速比Rが大きい方の、基準値PAと、閾値PXとの差DXが大きくなるように構成されていれば、他の構成は省略してもよい。
【0065】
・パラメータPは、ケイデンスNCに代えてまたは加えて、人力駆動力、人力駆動車10の走行路の勾配、および、車速の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0066】
・制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも大きくなると、変速比Rが小さい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。制御部52は、パラメータPが所定範囲WPよりも小さくなると、変速比Rが大きい変速段に変更するように変速装置38を制御してもよい。
【0067】
・制御部52は、それぞれ所定比率AXが異なる複数の所定範囲WPを切り替えるように構成されていてもよい。制御部52は、例えば、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに関する所定条件に応じて、複数の所定範囲WPのうちの1つの所定範囲WPから他の1つの所定範囲WPに切り替える。制御部52は、操作装置の操作に応じて、複数の所定範囲WPのうちの1つの所定範囲WPから他の1つの所定範囲WPに切り替えてもよい。所定条件は、例えば、変速比Rが第1変速比R1以下の場合、人力駆動車10が加速中かつ変速比Rが第2変速比R2以下の場合、人力駆動車10が減速中かつ走行負荷が所定負荷以上の場合、車速が所定車速以下かつ変速比Rが第3変速比R3以下の場合、変速比Rを変更してから所定期間以内の場合、および、人力駆動車10が加速中の場合の少なくとも1つの場合に満たされる。表1は、所定条件と所定比率AX1,AX2との関係の一例を示す。表1において、所定比率AX1は、所定比率AX10および所定比率AX11を含む。表1において、所定比率AX2は、所定比率AX20および所定比率AX21を含む。表1において、AX11>AX10であり、AX21>AX20である。所定条件が満たされない場合、制御部52は、比率A1が所定比率AX10以下、かつ、比率A2が所定比率AX20以下になるような所定範囲WPにおいて変速装置38を制御する。表中の(*1)においては、好ましくは、閾値PXと基準値PAとの差DCが所定差DCXになるように閾値PXが設定される。所定差DCXは、変速比Rが変更されにくい値に設定される。例えば、パラメータPがケイデンスNCの場合、所定差DCXは、20rpmである。表中の(*2)においては、好ましくは、閾値PXと仮想閾値PVとの差DDが0になるように、閾値PXが設定される。すなわち、所定比率AXが1になるように、閾値PXが設定される。制御部52は、表1に記載される所定条件に加えて、所定条件が満たされ、かつ、所定条件とは異なる条件が満たされる場合に、それぞれ所定比率AXが異なる複数の所定範囲WPを切り替えるように構成されていてもよい。
【0068】
【0069】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0070】
10…人力駆動車、38…変速装置、50…制御装置、52…制御部。