(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】酸性ガス吸収剤、酸性ガスの除去方法および酸性ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240520BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62
(21)【出願番号】P 2021030683
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020154852
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭子
(72)【発明者】
【氏名】中野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 玲子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亜里
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0244205(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109999648(CN,A)
【文献】特開2012-011309(JP,A)
【文献】特開2015-071136(JP,A)
【文献】特開2019-055394(JP,A)
【文献】特開2020-022933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0175769(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109603455(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14 - 53/18
B01D 53/34 - 53/85
C01B 32/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)~(3):
【化1】
(式中、
R
1aは、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキル、またはC
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、
ここで、少なくとも1つのR
1a
がC
1
~C
3
ヒドロキシアルキル、C
1
~C
3
のアミノアルキル、またはC
2
~C
5
アルキルアミノアルキルであり、
R
1bは、それぞれ独立に、水素、またはC
1~C
3アルキルであり、
R
2は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、少なくとも1つのR
2はC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、 R
3は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ヒドロキシアルキル、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、少なくともひとつのR
3は、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルである)で表される化合物からなる群から選択されるアミン化合物と、
ハロゲン非含有イオン性界面活性剤と、
水性溶媒と、
を含
み、
前記ハロゲン非含有イオン性界面活性剤の含有率が0.1~40ppmである、酸性ガス吸収剤。
【請求項2】
前記アミン化合物の含有率が、前記酸性ガス吸収剤の総質量を基準として3~80質量%である、請求項1に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項3】
前記ハロゲン非含有イオン性界面活性剤が、カルボキシ基、スルホ基、ホスフェート基、アミノ基、およびアンモニウム基からなる群から選択されるイオン性基を有する、請求項
1または2に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項4】
25℃における二酸化炭素導入前の表面張力が40mN/m以上である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項5】
粘度が、25℃で1~200mPa・sである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項6】
酸性ガスを含有するガスと、請求項
1~5のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤とを接触させて、酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去することを含む、酸性ガスの除去方法。
【請求項7】
酸性ガスを含有するガスと請求項
1~5のいずれか1項に記載の酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、
再生器で再生した酸性ガス吸収剤を前記吸収器にて再利用する、酸性ガス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、酸性ガス吸収剤、酸性ガスの除去方法および酸性ガス除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の一因として二酸化炭素(CO2)濃度の上昇による温室効果が指摘され、地球規模で環境を守る国際的な対策が急務となっている。CO2の発生は産業活動によるところが大きく、その環境への排出抑制の機運が高まっている。特に、石炭火力発電所や工場からのCO2排出量の削減は急務となっている。またCO2以外に硫化水素(H2S)等の酸性ガスについても、排出量を削減することも臨まれている。
【0003】
そこで、CO2等の酸性ガス排出量の削減方法として火力発電所等の高効率化による排出量の低減と共に、化学吸収剤による二酸化炭素の回収が大きな注目を浴びている。具体的な吸収剤としては、アミン化合物による吸収が古くから研究されている。しかし、化学吸収剤によるCO2吸放出工程において、化学吸収剤を再生するために、吸収剤を加熱することがあり、それによって吸収剤に含まれるアミン化合物が放散することが知られている。大量のアミン化合物が大気中に放散すると、プラント周辺環境への影響が懸念されるため、一般的には水や酸などによるアミントラップが設けられ、放散が抑制されている。しかし、アミントラップを設ける必要が生じる上、アミントラップによる吸収剤放散の抑制が不十分である場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態の目的は、放散性が低い酸性ガス吸収剤、その酸性ガス吸収剤を用いた酸性ガスの除去方法および酸性ガス除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、 下記式(1)~(3):
【化1】
(式中、
R
1aは、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキル、またはC
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、
R
1bは、それぞれ独立に、水素、またはC
1~C
3アルキルであり、 R
2は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、少なくとも1つのR
2はC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、 R
3は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ヒドロキシアルキル、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、少なくともひとつのR
3は、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルである)
で表される化合物からなる群から選択されるアミン化合物と、
ハロゲン非含有イオン性界面活性剤と、
水性溶媒と、
を含むものである。
【0007】
さらに実施形態による酸性ガスの除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、前記酸性ガス吸収剤とを接触させて、酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去することを含むものである。
【0008】
さらに実施形態による酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと前記酸性ガス吸収剤との接触によって、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、再生器で再生した酸性ガス吸収剤を前記吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
<酸性ガス吸収剤>
以下の実施態形態は、主として、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明するが、実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、硫化水素等、その他の酸性ガスに関しても同様の効果を得ることができる。実施態形態よる酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素、硫化水素等の酸化性ガスの吸収に適している。このうち、特に二酸化炭素の吸収に適しており、工場排ガスなどからの二酸化炭素回収システムに適している。
【0012】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、酸性ガスを吸収する主剤としてアミン化合物を含む。ここで用いられるアミン化合物は、下記式(1)~(3):
【化2】
(式中、
R
1aは、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキル、またはC
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、
R
1bは、それぞれ独立に、水素、またはC
1~C
3アルキルであり、 R
2は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、またはC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、少なくとも1つのR
2はC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、 R
3は、それぞれ独立に、水素、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ヒドロキシアルキル、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルであり、少なくともひとつのR
3は、C
1~C
3のアミノアルキル、またはC
2~C
5アルキルアミノアルキルである)
で表される化合物からなる群から選択される。これらのアミン化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
式(1)で表されるアミン化合物は、ヒドロキシアルキルピペラジン、ジヒドロキシアルキルピペラジンなどの、ヒドロキシアルキル基で置換されたピペラジン誘導体である。C
1~C
3アルキルにはイソプロピル基が含まれる。式(1)で表されるアミン化合物として、具体的に下記の化合物が挙げられる。
【化3】
【0014】
式(2)で表されるアミン化合物は、アルキルジアルカノールアミン、ジアルキルジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンなどの、アルカノールアミン誘導体である。式(2)で表されるアミン化合物として、具体的に下記の化合物が挙げられる。
【化4】
【0015】
式(3)で表されるアミン化合物は、N-アミノアルキルイミダゾリジオン、ジーN-アミノアルキルイミダゾリジオンなどの、ヒドロキシアルキル基で置換されたイミダゾリジオン誘導体である。式(3)で表されるアミン化合物として、具体的に下記の化合物が挙げられる。
【化5】
【0016】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、上記した式(1)~(3)でで表される化合物とは別に、追加アミン化合物を含むこともできる。そのような追加アミン化合物は、従来、酸性ガス吸収剤に用いられているものから任意に選択することができる。
【0017】
追加アミン化合物として、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、および第4級アンモニウムが挙げられる。また、ジアミン、トリアミンなどのポリアミン化合物を用いることができる。さらには、これらのアミン化合物の水素が、ヒドロキシ等で置換された誘導体、およびこれらのアミン化合物のメチレンがオキシ、カルボニル、スルホニル等で置き換えられた誘導体も用いることができる。また、アミン化合物は一般的に水溶性であるが、追加アミン化合物は水溶性の高いものが好ましい。
【0018】
具体的には、以下の追加アミン化合物を用いることができる。
(i)アミノアルコール、
(ii)環状アミン、
(iii)第1級アミン、
(iv)第2級アミン、
(v)第3級アミン、
(vi)ポリアミン
(vii)ポリアルキレンポリアミン
(viii)アミノ酸。
【0019】
なお、上記の分類は便宜的なものであって、上記の分類のうち、二つ以上の分類に包含される追加アミン化合物もある。例えば、メチルジエタノールアミンは、アミノアルコールであり、第3級アミンでもある。また、上記式(1)~(3)のアミン化合物は、例えば第3級にも分類することができるが、これらは便宜的に追加アミン化合物には含めない。
【0020】
これらのうち、水酸基が入ったアミノアルコールやアミノ酸、ポリアミンを用いると放散性を改良することができるので好ましい。
【0021】
また、実施形態において、式(1)~(3)で表されるアミン化合物、および追加アミン化合物は、蒸気圧が低いものを用いる。アミン化合物が低い蒸気圧を有することによって、放散性を低く保つことができる。具体的にはアミン化合物の蒸気圧の範囲は、20℃において0.001~10Paであり、0.005~5Paであることが好ましく、0.01~1Paであることがより好ましい。蒸気圧が高いアミン化合物を用いた場合、実施形態による効果が小さいことがある。このような蒸気圧の条件を満たす好ましいアミン化合物としては、2-ヒドロキシエチルピペラジン(式(1)のアミン化合物、20℃における蒸気圧0.03Pa)メチルジエタノールアミン(式(2)のアミン化合物、20℃における蒸気圧0.03Pa)、エチルジエタノールアミン(式(2)のアミン化合物、20℃における蒸気圧0.3Pa)、ジエタノールアミン(追加アミン化合物、20℃における蒸気圧0.04Pa)などが挙げられる。
【0022】
さらに、酸性ガス吸収剤は繰り返し利用されるものであることから、化合物の安定性が高いことが好ましい。これらの観点から、アンモニア、メチルアミン、ヒドラジンなどは用いないことが好ましい。
【0023】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、ハロゲン非含有イオン性界面活性剤も含む。特定の界面活性剤を上記したアミン化合物と組み合わせることで、表面張力を維持したまま放散性を顕著に改良することができる。
【0024】
一般に界面活性剤は、界面活性を示す部分の化合物の構造により、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤と分類される。そして、イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤に分類される。両性界面活性剤は、分子内にアニオン性部位およびカチオン性部位の両方をもつものである。実施形態においては、これらのうちイオン性界面活性剤が使用される。ハロゲン非含有イオン性界面活性剤は、カルボキシ基、スルホ基、ホスフェート基、アミノ基、およびアンモニウム基からなる群から選択されるイオン性基を有するものが好ましい。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、モノアルキルリン酸等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩等などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアルキルベタイン型界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型界面活性剤、ラウリルベタインなどのベタイン型界面活性剤があげられる。非イオン性界面活性剤は、放散性抑制の観点から実施形態には使用し得ないことが好ましい。
【0026】
実施形態において使用する界面活性剤は、用いられるアミン化合物の種類および含有率に応じて選択される。好ましくは、スルホン酸塩、リン酸塩、アンモニウム塩、ベタインを構造に含む界面活性剤が用いられる。
【0027】
また、実施形態において使用することができる界面活性剤は、ハロゲンを含まない。界面活性剤には、例えばフッ素などのハロゲンを含むものがあるが、ハロゲン含有界面活性剤は、放散性改良効果が小さい。また、ハロゲン含有界面活性剤は、環境上の観点からも使用しないことが好ましい。
【0028】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、溶媒として水性溶媒を含み、前記したアミン化合物および界面活性剤が溶解または分散されている。水性溶媒は、主として水を含んでなり、必要に応じて、少量の有機溶媒を含んでいてもよい。ただし、有機溶媒の沸点が低いと、酸性ガス吸収装置内において揮発して、装置の損傷の原因となるおそれもある。このため、有機溶媒は、水の沸点、すなわち100℃以上である
【0029】
酸性ガス吸収剤に含まれるアミン化合物の含有率は、酸性ガス吸収剤の総質量を基準として3~80質量%であることが好ましく、5~75質量%であることがより好ましい。アミン化合物を100質量%とした場合、式(1)~式(3)に記載されるアミン化合物は、10質量%以上100質量%以下が好ましい。より好ましくは30質量%以上100質量%以下である。酸性ガス吸収剤に含まれるアミン化合物は、すべて式(1)~式(3)に記載されるアミン化合物であってもよい。
【0030】
一般に、アミン化合物の含有率が高い酸性ガス吸収剤は単位容量当たりの二酸化炭素の吸収量、および脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、および脱離速度が速いため、エネルギー消費の面やプラント設備の大きさ、処理効率の面においては好ましい。
【0031】
アミン化合物の含有率が上記の範囲にある酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素回収用として用いた場合、その粘度が適切であり、二酸化炭素吸収量および二酸化炭素吸収速度が高いだけでなく、二酸化炭素脱離量が多く、かつ二酸化炭素脱離速度も高いため、二酸化炭素の回収を効率的に行える点で有利である。
【0032】
また、酸性ガス吸収剤に界面活性剤の含有率は、酸性ガス吸収剤の総質量を基準として0.1~40ppmであることが好ましく、0.1~30ppmであることがより好ましいい。さらにより好ましくは2~20ppmである。界面活性剤の含有率が多い方が放散性改良の効果が大きいが、過度に多いと酸性ガス吸収剤の発泡性が過大となって取り扱い性が悪くなることがある。
【0033】
酸性ガス吸収剤の粘度は特に限定されないが、25℃で0.01~200mPa・sであることが好ましく、0.01~100mPa・sであることがより好ましい過度に粘度が高いと取り扱い性が悪くなる。そのため、粘度は低いほうが好ましい。
【0034】
ここで、酸性ガス吸収剤の粘度は、BROOKFIELD社製VISCOMETER DV-II+Pro(商品名)によって測定することができる。
【0035】
25℃における二酸化炭素吸収剤の表面張力は40mN/m以上であることが好ましい。表面張力が下がると吸収液が泡立ちやすくなり、プラントの予期せぬシャットダウンが生じるためである。なお、酸性ガス吸収剤の各種物性と放散性の関連を鋭意検討した結果、吸収剤の表面張力とアミン放散性には相関性が低く、実施形態の含有率範囲で界面活性剤を添加した吸収剤には、元の吸収剤に対して±3mN/m以上の表面張力の変化はみられなかった。実施形態における表面張力は、協和界面科学株式会社Drop Master 300を使用して懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により25℃で測定される値とする。
【0036】
実施形態による酸性ガス吸収剤は、前記アミン化合物と前記界面活性剤とを含むが、必要に応じてその他の任意成分を含むことができる。
【0037】
任意成分には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、および防食剤等が包含される。
【0038】
酸化防止剤の好ましい具体例としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、二酸化硫黄、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。酸化防止剤を用いる場合、その含有率は、好ましくは0.01~1質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。酸化防止剤は、酸性ガス吸収剤の劣化を防止し、その寿命を向上させることができる。
【0039】
消泡剤の好ましい具体例としては、例えばシリコーン系消泡剤、有機系消泡剤を挙げることができる。消泡剤を用いる場合、その含有率は、好ましくは0.00001~0.001質量%、特に好ましくは0.0005~0.001質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。消泡剤は、酸性ガス吸収剤の泡立ちを防止し、酸性ガスの吸収効率や離脱効率の低下を抑制し、酸性ガス吸収剤の流動性ないし循環効率の低下等を防止することができる。
【0040】
防食剤の好ましい具体例としては、例えばリン酸エステル類、トリルトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類を挙げることができる。防食剤を用いる場合、その含有率は、好ましくは0.00003~0.0008質量%、特に好ましくは0.00005~0.005質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。このような防食剤は、プラント設備の腐を防止し、その寿命を向上させることができる。
【0041】
なお、実施形態による酸性ガス吸収剤は、沸点が100℃以下の有機化合物を含まないことが好ましい。このような有機化合物は、酸性ガス吸収プロセスにおいて揮発して、装置に損傷を与えたり、環境汚染の原因となる可能性がある。このため、溶解性改良などの目的で有機溶媒などの有機化合物を使う場合であっても、その含有率は酸性ガス吸収剤の総質量を基準として1質量%以下とすることが好ましい。
【0042】
また、実施形態による酸性ガス吸収剤は、金属を含まないことが好ましい。金属は、酸性ガス吸収剤が接触する装置に腐食などの損傷を与える可能性があるためである。このため、酸性ガス吸収剤としては、金属の含有率がゼロであることが好ましい。しかしながら、酸性ガス吸収剤は、使用の際に装置に接触し、装置から金属が溶出することもある。したがって、ごく少量の金属を含むことは許容される。しかし、このような場合であっても、金属の含有率は酸性ガス吸収剤の総質量を基準として1質量%以下とすることが好ましい。
【0043】
以上のとおり、本実施形態の酸性ガス吸収剤によれば、二酸化炭素等の酸性ガスの反応装置外への放散量を抑制することができる。そして、酸性ガスの回収に必要とするエネルギーが少ない。そして、酸性ガス(例えば、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫化カルボニル(COS)に対して高い反応性を有しており、かつ水に対する溶解性に優れていることから、酸性ガス吸収時に析出しにくい。
【0044】
実施形態の酸性ガス吸収剤は、単位モル当たり酸性ガス(特に、二酸化炭素)の吸収量や、酸性ガス吸収剤の単位体積当たりの酸性ガス吸収量および酸性ガス吸収速度がより一層向上したものである。かつ、吸収塔や再生塔から放出されるアミンの量を少なくすることができる。
【0045】
<酸性ガスの除去方法>
実施形態による酸性ガスの除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、酸性ガス吸収剤とを接触させ、酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する。
【0046】
実施形態による酸性ガスの除去方法は、上述の実施形態による酸性ガス吸収剤へ対して酸性ガスを吸収させる工程(吸収工程)、およびこの酸性ガスを吸収した上述の実施形態による酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させる工程を、基本的な構成とする。
【0047】
即ち、実施形態による酸性ガスの除去方法の基本的な構成は、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを含有するガス(例えば、排ガス等)を接触させて、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを吸収させる工程(酸性ガス吸収工程)と、上記の酸性ガス吸収工程で得られた、酸性ガスが吸収された酸性ガス吸収剤を加熱して、酸性ガスを脱離して、除去する工程(酸性ガス分離工程)とを含む。
【0048】
酸性ガスを含有するガスを、上記の酸性ガス吸収剤を含む水溶液に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、酸性ガス吸収剤中に酸性ガスを含有するガスをバブリングさせて、吸収剤に酸性ガスを吸収させる方法、酸性ガスを含有するガス気流中に酸性ガス吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧ないしスプレー方式)、または磁製や金属網製の充填材の入った吸収器内で酸性ガスを含有するガスと酸性ガス吸収剤とを向流接触させる方法などによって行うことができる。
【0049】
酸性ガスを含有するガスを水溶液に吸収させる時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常、室温から60℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以下、特に好ましくは20~45℃、である。低温度で行うほど、酸性ガスの吸収量は増加するが、処理温度の下限値は、プロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。酸性ガス吸収時の圧力は、通常、ほぼ大気圧である。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
【0050】
酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、純粋なまたは高濃度の二酸化炭素を回収する方法としては、棚段塔、スプレー塔、磁製や金属網製の充填材の入った再生塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。
【0051】
酸性ガス分離時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常70℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは90~120℃、である。温度が高いほど、酸性ガスの脱離量は増加するが、温度を上げると吸収剤の加熱に要するエネルギーが増すため、その温度はプロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。酸性ガス脱離時の圧力は、通常、1~3気圧程度とすることができる。
【0052】
酸性ガスを分離した後の酸性ガス吸収剤は、再び酸性ガス吸収工程に送られて循環使用(リサイクル)することができる。また、酸性ガス吸収の際に生じた熱は、一般的には水溶液のリサイクル過程において再生器に注入される水溶液の予熱のために熱交換器で熱交換されて冷却される。
【0053】
このようにして回収された酸性ガスの純度は、通常、95~99体積%程度と極めて純度が高い。この純粋な酸性ガスまたは高濃度の酸性ガスは、化学品、または高分子物質の合成原料、食品冷凍用の冷剤等として用いることができる。その他、回収した酸性ガスを、現在技術開発されつつある地下等へ隔離貯蔵することも可能である。
【0054】
上述した工程のうち、酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離して酸性ガス吸収剤を再生する工程が最も多量のエネルギーを消費する部分であり、この工程で、全体工程の約50~80%程度のエネルギーが消費されることがある。従って、酸性ガス吸収剤の再生工程における消費エネルギーを低減することにより、酸性ガスの吸収分離工程のコストを低減でき、排気ガスからの酸性ガス除去を、経済的に有利に効率良く行うことができる。
【0055】
本実施形態によれば、上記の実施形態の酸性ガス吸収剤を用いることで、酸性ガス脱離(再生工程)のために必要なエネルギーを低減することができる。このため、二酸化炭素の吸収分離工程を、経済的に有利な条件で効率良く行うことができる。
【0056】
<酸性ガス除去装置>
実施形態による酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと、酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、再生器で再生した酸性ガス吸収剤を前記吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置である。
【0057】
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。
この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含有するガス(例えば、排気ガス)と酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収器2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸収剤を再生する再生器3と、を備えている。以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
【0058】
図1に示すように、火力発電所等から排出される燃焼排ガス等の、二酸化炭素を含む排気ガスが、ガス供給口4を通って吸収器2下部へ導かれる。この排気ガスは、吸収器2に押し込められ、吸収器2上部の酸性ガス吸収剤供給口5から供給された酸性ガス吸収剤と接触する。酸性ガス吸収剤としては、上述した実施形態に係る酸性ガス吸収剤を使用する。
【0059】
また、この酸性ガス吸収剤には、上記のアミン系化合物、および水などの溶媒の他に、二酸化炭素の吸収性能を向上させる含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等、その他化合物を任意の割合で含有していてもよい。
【0060】
このように、排気ガスが酸性ガス吸収剤と接触することで、この排気ガス中の二酸化炭素が酸性ガス吸収剤に吸収され除去される。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、ガス排出口6から吸収器2外部に排出される。
【0061】
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤は、リッチ液ポンプ8により熱交換器7に送液され、さらに再生器3に送液される。再生器3内部に送液された酸性ガス吸収剤は、再生器3の上部から下部に移動し、この間に、酸性ガス吸収剤中の酸性ガスが脱離し、酸性ガス吸収剤が再生される。
【0062】
再生器3で再生した酸性ガス吸収剤は、リーン液ポンプ9によって熱交換器7、吸収剤冷却器10に送液され、酸性ガス吸収剤供給口5から吸収器2に戻される。
【0063】
一方、酸性ガス吸収剤から分離された酸性ガスは、再生器3上部において、還流ドラム11から供給された還流水と接触し、再生器3外部に排出される。
【0064】
二酸化炭素が溶解した還流水は、還流冷却器12で冷却された後、還流ドラム11において、二酸化炭素を伴う水蒸気が凝縮した液体成分と分離される。この液体成分は、回収酸性ガスライン13により酸性ガス回収工程に導かれる。一方、酸性ガスが分離された還流水は再生器3に送液される。
【0065】
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、酸性ガスの吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い酸性ガスの吸収除去を行うことが可能となる。
【実施例】
【0066】
<実施例1>
メチルジエタノールアミン(式(2-1))の含有率が45質量%、ラウリル硫酸ナトリウムの含有率が20ppmとなるように水に溶解させ、吸収剤とした。この吸収剤の表面張力は、50mN/mであった。この吸収剤に1%CO2/N2を0.5L/minで40℃で2時間通気した際に放散されたアミン化合物を回収して、放散性を評価した。その結果、放散性は0.9ppm(v/v)程度であった。
【0067】
<実施例2>
界面活性剤としてカルボキシベタイン型界面活性剤アモーゲンS-H(第一工業製薬株式会社製)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は1.1ppm(v/v)程度であった。
【0068】
<実施例3>
界面活性剤としてアニオン型界面活性剤ビューライトNA-25S(三洋化成工業(株)製)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は1.1ppm(v/v)程度であった。
【0069】
<実施例4>
界面活性剤としてアニオン型界面活性剤ビューライトNA-25S(三洋化成工業(株)製)の含有率が10ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、48mN/mであった。放散性は0.9ppm(v/v)程度であった。
【0070】
<実施例5>
界面活性剤としてアニオン型界面活性剤ビューライトNA-25S(三洋化成工業(株)製)の含有率が20ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、48mN/mであった。放散性は1.2ppm(v/v)程度であった。
【0071】
<実施例6>
アミン化合物としてN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(式(1-1))を含有率を50質量%とした以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、59mN/mであった。放散性は0.3ppm(v/v)程度であった。
【0072】
<実施例7>
アミン化合物として1-(2-アミノエチル)イミダゾリジノンを含有率50質量%とした以外は実施例3と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、55mN/mであった。放散性は0.5ppm(v/v)程度であった。
【0073】
<比較例1>
メチルジエタノールアミン(20℃における蒸気圧0.03Pa)の含有率が45質量%となるように水に溶解させ、吸収剤とした。この吸収剤の表面張力は、51mN/mであった。この吸収剤について、実施例1と同様に放散性を評価した。その結果、放散性は2.2ppm(v/v)程度であった。
【0074】
<比較例2>
N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンの含有率が50質量%となるように水に溶解させ、吸収剤とした。この吸収剤の表面張力は、57mN/mであった。この吸収剤にについて、実施例1と同様に放散性を評価した。その結果、放散性は0.8ppm(v/v)程度であった。
【0075】
<比較例3>
界面活性剤としてパーフルオロアルキル系カチオン型界面活性剤サーフロンS-221(AGCセイミケミカル株式会社)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、50mN/mであった。放散性は2.7ppm(v/v)程度であった。
【0076】
<比較例4>
界面活性剤としてパーフルオロアルキル系両性型界面活性剤サーフロンS-231(AGCセイミケミカル株式会社)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、50mN/mであった。放散性は2.7ppm(v/v)程度であった。
【0077】
<比較例5>
界面活性剤としてパーフルオロアルキル系非イオン性界面活性剤サーフロンS-242(AGCセイミケミカル株式会社)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は6.1ppm(v/v)程度であった。
【0078】
<比較例6>
界面活性剤としてパーフルオロアルキル系非イオン性重合型界面活性剤サーフロンS-656(AGCセイミケミカル株式会社)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は6.1ppm(v/v)程度であった。
【0079】
<比較例7>
界面活性剤として非イオン性界面活性剤ノイゲンLF60X(第一工業製薬株式会社製)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は5.5ppm(v/v)程度であった。
【0080】
<比較例8>
界面活性剤として非イオン性界面活性剤ノイゲンET-65(第一工業製薬株式会社製)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は実施例1と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、49mN/mであった。放散性は9.4ppm(v/v)程度であった。
【0081】
<比較例9>
ジエチレントリアミンの含有率が50質量%となるように水に溶解させ、吸収剤とした。この吸収剤の表面張力は、59mN/mであった。この吸収剤について実施例1と同様に放散性を評価した。その結果、放散性は3.6ppm(v/v)程度であった。
【0082】
<比較例10>
カルボキシベタイン型界面活性剤アモーゲンS-H(第一工業製薬株式会社製)の含有率が2ppmとなるように調整した以外は比較例9と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、62mN/m、放散性は3.8ppm(v/v)程度であった。
【0083】
<比較例11>
ピペラジンの含有率が10質量%となるように水に溶解させ、吸収剤とした。この吸収剤の表面張力は、69mN/mであった。この吸収剤に1%CO2/N2を1L/minで40℃で2時間通気した際に放散されたアミン化合物を回収して、放散性を評価した。その結果、放散性は5.7ppm(v/v)程度であった。
【0084】
<比較例12>
ラウリル硫酸ナトリウムの含有率が6ppmとなるように調整した以外は比較例11と同様に試験を実施した。この吸収剤の表面張力は、66mN/mであった。この吸収剤に1%CO2/N2を1L/minで40℃で2時間通気した際に放散されたアミン化合物を回収して、放散性を評価した。その結果、放散性は6.3ppm(v/v)程度であった。
【0085】
<比較例13>
アミン化合物として1-(2-アミノエチル)イミダゾリジノンを含有率50質量%とした。この吸収剤について実施例1と同様に放散性を評価した。この吸収剤の表面張力は、57mN/mであった。放散性は0.9ppm(v/v)程度であった。
【0086】
得られた結果をまとめると以下の通りであった。
【表1】
【0087】
各例の結果より、特定のアミン化合物と特定の界面活性剤を組み合わせることで、放散性を改良できることが分かった。
同じアミン化合物を含む吸収剤を比較すると、ハロゲン非含有イオン性界面活性剤を含む吸収剤のほうが放散性を低減することができた。
【0088】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置によれば、低い放散性を実現することができる。
【0089】
以上の通り、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…酸性ガス除去装置、2…吸収器、3…再生器、4…ガス供給口、5…酸性ガス吸収剤供給口、6…ガス排出口、7…熱交換器、8…リッチ液ポンプ、9…リーン液ポンプ、10…吸収剤冷却器、11…還流ドラム、12…還流冷却器、13…回収酸性ガス炭素ライン