(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 6/16 20160101AFI20240520BHJP
【FI】
H02P6/16
(21)【出願番号】P 2021038557
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 申
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223317(JP,A)
【文献】特開2015-215344(JP,A)
【文献】特開2017-011902(JP,A)
【文献】特開2012-217301(JP,A)
【文献】特開2001-078392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを回転させる磁界を発生する励磁コイルに励磁電流を供給する出力部と、
前記ロータの回転位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部からの検出信号に基づく駆動信号を生成して前記出力部に供給する駆動制御部と、
を備え、
前記位置検出部は、
前記ロータの回転位置を検出する第1の検出素子と、
前記第1の検出素子に先行して前記ロータの回転位置を検出する第2の検出素子と、
前記第1の検出素子に追従して前記ロータの回転位置を検出する第3の検出素子と、
を有し、
前記第1乃至第3の検出素子は、一体的に集積化され
、
前記駆動制御部は、
前記ロータの正転時において、前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号との間の位相差が所定の閾値以下の場合には前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号を用いて前記駆動信号を生成し、前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号との間の位相差が前記所定の閾値よりも大きい場合には、前記第1の検出素子の検出信号と前記第3の検出素子の検出信号を用いて前記駆動信号を生成することを特徴とするブラシレスモータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1乃至第3の検出素子は、前記駆動制御部と共に一体的に集積化されることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ駆動装置。
【請求項3】
前記所定の閾値は30度であることを特徴とする請求項
1に記載のブラシレスモータ駆動装置。
【請求項4】
前記第2の検出素子の検出信号と前記第3の検出素子の検出信号の検出レベルを設定する閾値電圧生成部を具備することを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のブラシレスモータ駆動装置。
【請求項5】
前記ロータを予め設定した条件で回転させるキャリブレーションにおいて取得した前記第2及び前記第3の検出素子の検出信号の値を保持するメモリ部を有することを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のブラシレスモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第1の検出素子にのみ設けられたオフセットキャンセル部を有し、
前記第1乃至第3の検出素子は、モールド樹脂により一体的に集積化されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のブラシレスモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ブラシレスモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータの回転位置を検出する3個のセンサを、電気角において120度毎の位相差の位置に配置した3相のブラシレスモータの技術が開示されている。3個のセンサは個別に設けられる為、部品点数が増加する。また、120度毎の位相差の位置に3個のセンサを載置する為、センサを載置する為の広い面積の支持基盤が必要となりモータのコストが高くなる。また、モータ毎にセンサの配置位置の調整が必要であり、煩雑である。一方、センサを一つにした場合には、モータの起動不良のリスクがある。汎用性が高く、また、モータのコストを削減することが出来るブラシレスモータ駆動装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、汎用性が高く、モータのコストを削減することが出来るブラシレスモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、モータ駆動装置は、ロータを回転させる磁界を発生する励磁コイルに励磁電流を供給する出力部と、前記ロータの回転位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部からの検出信号に基づく駆動信号を生成して前記出力部に供給する駆動制御部と、を備え、前記位置検出部は、前記ロータの回転位置を検出する第1の検出素子と、前記第1の検出素子に先行して前記ロータの回転位置を検出する第2の検出素子と、前記第1の検出素子に追従して前記ロータの回転位置を検出する第3の検出素子と、を有し、前記第1乃至第3の検出素子は、一体的に集積化され、前記駆動制御部は、前記ロータの正転時において、前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号との間の位相差が所定の閾値以下の場合には前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号を用いて前記駆動信号を生成し、前記第1の検出素子の検出信号と前記第2の検出素子の検出信号との間の位相差が前記所定の閾値よりも大きい場合には、前記第1の検出素子の検出信号と前記第3の検出素子の検出信号を用いて前記駆動信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態のブラシレスモータ駆動装置の回路構成を概略的に示す図。
【
図2】ブラシレスモータ駆動装置とロータとの配置関係を模式的に示す図。
【
図3】ブラシレスモータ駆動装置の駆動方法を説明する為の図。
【
図4】ロータの正転時におけるブラシレスモータ駆動装置の駆動信号の生成方法を説明する為の図。
【
図5】ロータの反転時におけるブラシレスモータ駆動装置の駆動信号の生成方法を説明する為の図。
【
図6】位相差が閾値以下の場合の信号生成方法を説明する為の図。
【
図7】位相差が閾値以下の場合の信号生成方法を詳細に説明する為の図。
【
図8】位相差が閾値より大きい場合の信号生成方法を説明する為の図。
【
図9】位相差が閾値より大きい場合の信号生成方法を詳細に説明する為の図。
【
図10】補助センサの出力信号のオフセットと信号生成方法を説明する為の図。
【
図11】キャリブレーションの一つの実施形態のフローを示す図。
【
図12】ブラシレスモータ駆動装置を集積化した平面パターンの例を示す図。
【
図13】ブラシレスモータ駆動装置を内蔵したモータの一つの実施形態の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるブラシレスモータ駆動装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のブラシレスモータ駆動装置100の回路構成を概略的に示す図である。本実施形態のブラシレスモータ駆動装置100(以降、駆動装置100と呼ぶ)は、センサ部10を有する。センサ部10は、メインセンサ11、補助センサ12、及び補助センサ13を有する。各センサ11、12、及び13は、例えば、ホール素子で構成され、あるいは、ホール素子の出力信号を増幅する増幅回路(図示せず)を備えた集積回路として構成される。
【0009】
各センサ11、12、13のホール素子は、シリコン、あるいは、GaAs、InAs等の化合物半導体で構成することが出来る。ホール素子をシリコンで構成した場合には、駆動装置100を構成する他の回路部と共に、単一のシリコン基板(図示せず)に集積化することが出来る。ホール素子を化合物半導体で構成した場合には、化合物半導体で構成したホール素子が形成された個別チップ(図示せず)を、他の回路部が形成されたシリコン基板と共にマルチチップ構成により集積化させ、例えば、モールド樹脂で一体的に集積化することが出来る。
【0010】
本実施形態の駆動装置100は、検出部20を有する。検出部20は、メインセンサ11の出力信号が供給されるオフセットキャンセル部21を有する。オフセットキャンセル部21は、例えば、メインセンサ11のホール素子(図示せず)に供給する電流の方向を変えて得られる出力信号を引き算する構成とすることが出来る。オフセットキャンセル部21の出力信号は、コンパレータ22に供給される。コンパレータ22は、例えば、ヒステリシス特性を有し、ゼロクロス点においてHレベルとLレベルが変化するデジタル信号を出力する。コンパレータ22にヒステリシス特性を持たせることで、チャタリングを防止する構成とすることが出来る。
【0011】
補助センサ12、13の出力信号は、それぞれ、コンパレータ23、24に供給される。コンパレータ23、24は、補助センサ12、13の出力信号を、所定の閾値と比較して、その比較結果に応じてHレベルとLレベルに変化するデジタル信号を出力する。コンパレータ23、24は、例えば、2つの閾値電圧と入力信号を比較して、その比較結果に応じてHレベル、またはLレベルのデジタル信号を出力するウィンドウコンパレータで構成される。コンパレータ23、24に供給される閾値電圧の設定とコンパレータ23、24の出力信号の関係については、後述する。
【0012】
検出部20は、オフセットキャンセル部21の出力が供給されるADコンバータ25、補助センサ12、13の出力信号が供給されるADコンバータ26、27を有する。各ADコンバータ25乃至27は、各センサ11、12、及び13の出力信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0013】
本実施形態の駆動装置100は、制御部30を有する。制御部30は、信号処理部31、閾値電圧生成部32、位相差検出部33、センサ出力選択部34、及び駆動信号生成部35を有する。
【0014】
信号処理部31は、各ADコンバータ25乃至27の出力信号を用いて所定の演算処理を行う。例えば、信号処理部31は、各ADコンバータ25乃至27から取得したデジタル信号を用いて演算処理を行い、その処理結果を閾値電圧生成部32、位相差検出部33、及び、駆動信号生成部35に供給する。
【0015】
本実施形態の駆動装置100は、メモリ部50を有する。メモリ部50は、モータ起動時に行うキャリブレーションにおいて取得した補助センサの選択結果と補助センサ12、13の出力信号の値を保持する。また、メモリ部50は、起動時のキャリブレーションにおける駆動条件のデータを保持する。駆動信号生成部35は、例えばキャリブレーションにおいてメモリ部50から信号処理部31を介して所定のタイミングで供給される信号に応答して、ロータ62を一定周波数(回転数)で回転させる駆動信号を生成する。
【0016】
閾値電圧生成部32は、信号処理部31から供給されるデジタル信号をアナログ変換し、モータ起動時に行うキャリブレーションにおいて取得したADコンバータ26、27の出力信号からコンパレータ23、24の閾値電圧を生成してコンパレータ23、24に供給する。キャリブレーションについては、後述する。
【0017】
位相差検出部33は、信号処理部31から供給される各センサ11、12、13の出力信号間の位相差を検出する。位相差検出部33の出力信号は、信号処理部31を介してセンサ出力選択部34に供給される。
【0018】
センサ出力選択部34は、信号処理部31を介して供給される位相差検出部33の出力信号に応答して、駆動信号生成部35に供給する信号を選択する。センサ出力選択部34は、ロータ62の正転時におけるメインセンサ11の出力信号と補助センサ12の出力信号の位相差が所定の閾値以下の場合には、メインセンサ11と補助センサ12からの出力信号を選択して駆動信号生成部35に供給する。閾値は、例えば、電気角で30度である。閾値と出力信号の選択方法については、後述する。
【0019】
駆動信号生成部35は、センサ出力選択部34から供給される信号を用いて駆動信号を生成して出力回路部40に供給する。
【0020】
出力回路部40は、出力トランジスタ41乃至46を有する。各出力トランジスタ41乃至46は、ソース・ドレイン間に還流ダイオード411乃至416を有する。出力回路部40の各出力トランジスタ41乃至46は、ブリッジ回路を構成し、駆動信号生成部35からの駆動信号に応答して、例えば120度通電を行う。各出力トランジスタ41乃至46は、出力線301乃至303を介して、モータ60のコイル部61の励磁コイルLU、LV、LWに励磁電流を供給する。励磁コイルLU、LV、LWは、励磁電流によって励磁され、磁界を発生する。永久磁石で構成するロータ62は、励磁コイルLU、LV、LWが発生する磁界に応じて回転する。尚、励磁コイルLU、LV、LWは、デルタ結線で構成しても良い。センサ部10を備えた駆動装置100は、モータ60のロータ62に近接した位置に配置される。
【0021】
第1の実施形態の駆動装置100には、メインセンサ11、補助センサ12、補助センサ13が一体的に集積化される。また、駆動装置100は、キャリブレーション時に取得した補助センサ12、13の選択結果と各補助センサ12、13の出力信号の値がメモリ部50に保持され、閾値電圧生成部32は各コンパレータ23、24の閾値電圧を設定する。従って、駆動装置100が搭載されるモータ毎に閾値電圧の設定値が変更可能となる為、汎用性の高い構成となる。
【0022】
図2は、駆動装置100とロータ62との配置関係を模式的に示す図である。既述した実施形態に対応する構成には、同一符号を付し、重複する記載は必要な場合にのみ行う。以降、同様である。
図2は、インナーロータの場合の例を示す。ロータ62は、例えば、図示のようにN極とS極の2極で構成される。センサ部10の各センサ11、12、13が一体的に集積化された駆動装置100がロータ62に近接して設けられる。中心線600は、メインセンサ11の中心を通る。破線603は、ロータ62の中心Oから補助センサ12の中心を通る線を示し、破線604は、中心Oから補助センサ13の中心を通る線を示す。
【0023】
中心線600に対して、それぞれの破線603、604との間に生じる角度α1、α2によってメインセンサ11の出力信号と夫々の補助センサ12、13の出力信号の間に位相差が生じる。好ましくは、補助センサ12、13は、メインセンサ11に対して、すなわち、中心線600を中心にして線対称の位置に設けられる。すなわち、α1とα2が等しくなる様に配置する。補助センサ12と13を、中心線600を中心にして線対称の位置に配置することで、メインセンサ11の出力信号に対して補助センサ12、13の一方の出力信号の位相は進み、他方の出力信号は同じ位相差で遅れる関係を有する構成とすることが出来る。
【0024】
矢印601で示すロータ62の正転時においては、補助センサ12はメインセンサ11に対して先行する出力信号を出力し、補助センサ13が追従する出力信号を出力する。矢印602で示す反転時には、補助センサ13がメインセンサ11に対して先行する出力信号を出力し、補助センサ12がメインセンサ11に追従する出力信号を出力する。本実施形態の駆動装置100は、メインセンサ11と補助センサ12、13の出力信号の位相差を利用して、ロータ62の回転位置を検出する。また、ロータ62の回転方向によって、メインセンサ11と補助センサ12、13の出力信号の前後関係が異なる為、ロータ62の回転方向の検出が可能となり、モータ60の起動不良のリスクを回避することが出来る。尚、ロータ62の回転をモータ60の回転として表現する場合がある。
【0025】
各センサ11、12及び13の出力信号は、ロータ62の永久磁石のN極、S極が各センサ11、12及び13に接近することに反応して発生する。すなわち、各センサ11、12及び13の出力信号の大きさは、ロータ62の回転速度に依存しない。従って、起動時に行うキャリブレーションによって取得した各補助センサ12、13の出力信号のレベルをコンパレータ23、24の閾値電圧として設定し、各コンパレータ23、24においてこれらの閾値電圧と各補助センサ12、13からの出力信号を比較することで、ロータ62の回転位置を検出することが出来る。
【0026】
尚、アウターロータの構成の場合には、駆動装置100をロータ62の内側、すなわち、中心O側に配置する。インナーロータの構成と同様に、各センサ11、12、13を、ロータ62の回転に応答させる構成とすることが出来る。
【0027】
次に、
図3を用いて駆動装置100の駆動方法を説明する。
図3は、ブラシレスモータ駆動装置の駆動方法を説明する為の図であり、ロータ62の正転時における各センサ11、12及び13の出力信号の関係を説明する為の図である。上段の実線501は、ロータ62の回転角度を示す。ロータ62を2極の永久磁石で構成した場合には、ロータ62の回転角度は、電気角に対応する。回転角度180度のタイミングをP18で示し、回転角度360度、従って、回転角度0度のタイミングをP00で示す。
【0028】
次段は、オフセットキャンセル部21を介して供給されたメインセンサ11の出力信号502を疑似正弦波で示す。メインセンサ11は、例えば、ロータ62のN極が近づくと負の電圧を発生し、S極が近づくと正の電圧を発生する。ロータ62のS極とN極の接続のタイミングで、メインセンサ11の出力信号502は、ゼロとなる。すなわち、ロータ62のS極とN極の接続のタイミングに対応するタイミングP0、P10において、メインセンサ11の出力信号502はゼロとなる。タイミングP0、P10はゼロクロス点となる。
【0029】
次段は、補助センサ12と13の出力信号503、504を疑似正弦波で示す。便宜的に、出力信号503、504に対応する補助センサ12、13を示す添え字(12)、(13)を付記している。補助センサ12、13は、メインセンサ11と同様に、例えば、ロータ62のN極が近づくと負の電圧を発生し、S極が近づくと正の電圧を発生する。補助センサ12の出力信号503は、コンパレータ23において閾値電圧thA1及び閾値電圧thA2と比較される。閾値電圧thA1、thA2との比較結果に応じて、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP18に対して120度位相が進んだタイミングP1、及び、60度位相が遅れたタイミングP2が検出される。
【0030】
同様に、補助センサ13の出力信号504は、コンパレータ24において閾値電圧thB1及び閾値電圧thB2と比較され、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP18に対して60度位相が進んだタイミングP3、及び120度位相が遅れたタイミングP4が検出される。各閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2は、例えば、モータ60の起動時に行うキャリブレーション時の各補助センサ12、13の出力信号の出力レベルに基づいて設定される。キャリブレーションについては、後述する。
【0031】
次段は、メインセンサ11の出力信号502から生成されるデジタル信号505を示す。オフセットキャンセル部21を介して供給されたメインセンサ11の出力信号502をコンパレータ22で波形成型してデジタル信号505を得る。デジタル信号505は、出力信号502が負電圧から正電圧に変化するタイミングP0、即ち、ゼロクロス点において、LレベルからHレベルに変化する。コンパレータ22は、例えば、ヒステリシス特性を有し、出力信号502のゼロクロス点においてHレベルとLレベルが切替わる。
【0032】
次段は、コンパレータ23が出力する補助センサ12のデジタル信号506を示す。コンパレータ23は、例えば、ロー側の閾値電圧thA1とハイ側の閾値電圧thA2に応答してHレベルとLレベルのデジタル信号505を出力する。
【0033】
次段は、コンパレータ24が出力する補助センサ13のデジタル信号507を示す。コンパレータ24は、例えば、ロー側の閾値電圧thB1とハイ側の閾値電圧thB2に応答してHレベルとLレベルのデジタル信号を出力する。
【0034】
各補助センサ12、13の閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2は、モータ起動時のキャリブレーションにおいて設定する。閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2は、メインセンサ11の出力信号502において、電気角の位相差がそれぞれ120度の関係になるタイミングの補助センサ12、13の出力信号の出力レベルに基づいて設定する。
【0035】
駆動信号生成部35は、3つのデジタル信号505乃至507を用いて各出力トランジスタ41乃至46に供給する駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWを生成する。次段に実線610で示す駆動信号HUは、U相の上段の出力トランジスタ41に供給され、次段に実線611で示す駆動信号LUは、U相の下段の出力トランジスタ44に供給される。
【0036】
同様に、次段に実線612で示す駆動信号HVはV相の上段の出力トランジスタ42に供給され、次段に実線613で示す駆動信号LVはV相の下段の出力トランジスタ45に供給される。同様に、次段に実線614で示す駆動信号HWはW相の上段の出力トランジスタ43に供給され、次段に実線615で示す駆動信号LWはW相の下段の出力トランジスタ46に供給される。
【0037】
駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWによって、各出力トランジスタ41乃至46は、例えば120度通電で駆動される。尚、説明の便宜上、駆動信号HU、HV、HWは、P型の出力トランジスタ41乃至43をオンさせる為の信号を示すため、H/Lの論理レベルを反転させて示している。
【0038】
本実施形態の駆動装置100によれば、駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWは、一体化して集積されたメインセンサ11と2つの補助センサ12、13の出力信号の出力レベルに基づいて生成される。コンパレータ23、24の閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2は、モータ60の起動時に行うキャリブレーション時において、メインセンサ11の出力信号に対して所定の位相差の時点で検出した補助センサ12、13の出力信号の出力レベルによって設定する。閾値電圧と補助センサ12、13からの出力信号を比較することでロータ62の回転位置を検出することが出来る。メインセンサ11、補助センサ12、13を一体化して形成しても、従来の3相ブラシレスモータと同様に、ロータ62の回転位置を検出することが出来る。また、キャリブレーションにおいてモータ毎に適切な閾値電圧の設定が出来る為、汎用性のある駆動装置100を提供することが出来る。
【0039】
次に
図4を用いて、ロータ62の正転時における駆動装置100による駆動信号の生成方法の一つの実施形態を説明する。
図4は、ロータ62の正転時における各センサ11、12、13の出力信号を説明する為の図である。上段から5段目までの信号の生成については、既述した
図3と同じである。本実施形態においては、デジタル信号2は、メインセンサ11のデジタル信号505と補助センサ12のデジタル信号1を用いて生成する。
【0040】
例えば、メインセンサ11のデジタル信号505の立上りのタイミングP18から補助センサ12のデジタル信号1の立下りのタイミングP2の間の60度の位相差に対応する時間T2を測定する。測定は、例えば、信号処理部31に設けたカウンタ(図示せず)で行う。測定した時間T2を用いて信号処理部31で演算処理を行い、60度の位相差に対応する時間T3、及びT1、T4乃至T6を算出する。測定した時間T2と算出した時間T1、T3乃至T6を用いて、メインセンサ11の出力信号502に応じて生成されデジタル信号505に対して120度位相が遅れた位相のデジタル信号2を生成する。時間T1からT6の合計値は、デジタル信号2の1周期となる。デジタル信号2は、駆動信号生成部35で生成される。
【0041】
尚、メインセンサ11のデジタル信号505のみを使って演算処理を行い、120度位相が遅れた位相のデジタル信号2を生成することも可能であるが、補助センサ12の情報も使用することで、より正確なデジタル信号2を生成することが出来る。また、数周期分の周波数の変動の情報を用いて時間T3を予測することも可能である。
【0042】
本実施形態の信号生成方法においては、メインセンサ11のデジタル信号505と補助センサ12のデジタル信号1を用いて演算処理を行い、所定の位相差のタイミングでHレベル、及びLレベルが変化するデジタル信号2を生成する。具体的には、メインセンサ11の出力信号502に対して位相が120度遅れる、実線508で示すデジタル信号2を生成する。メインセンサ11、補助センサ12のデジタル信号1、及び、デジタル信号2を用いて駆動信号を生成する方法は、
図3の例と同様である為、省略する。駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWは、駆動信号生成部35で生成する。
【0043】
メインセンサ11の出力信号502と補助センサ12の出力信号503の間の位相差に応じてデジタル信号1、及びデジタル信号2の生成方法を異ならせる信号生成方法については、後述する。
【0044】
図5は、ロータ62の反転時における各センサ11、12、13の出力信号と駆動信号の生成方法を説明する為の図である。上段は、ロータ62の回転角度を実線511で示す。次段は、メインセンサ11の出力信号512を示す。
【0045】
次段は、補助センサ12、13の出力信号を、夫々、実線513、514で示す。ロータ62の永久磁石の磁極と各センサ11、12、13の出力電圧の関係は、ロータ62の正転の場合と同じである。
【0046】
次段は、コンパレータ22が出力するメインセンサ11のデジタル信号を実線515で示す。メインセンサ11のゼロクロス点のタイミングP0、P10においてHレベル、Lレベルに変化する。次段は、メインセンサ11のデジタル信号515に対して位相が120度進むデジタル信号1を実線516で示す。デジタル信号516は、補助センサ13の出力信号514から生成する。
【0047】
すなわち、モータ起動時のキャリブレーションにおいて、メインセンサ11の出力信号に対して120度位相が進んだ時点のタイミングP3における補助センサ13の出力信号のレベルを検出して、閾値電圧thB2として設定する。また、メインセンサ11の出力信号512に対して60度位相が遅れたタイミングP4における出力信号の出力レベルを検出して閾値電圧thB1として設定する。閾値電圧thB1、thB2が設定されたコンパレータ24によって、実線516で示すデジタル信号1が生成される。
【0048】
本実施形態の信号生成方法においては、実線518で示すデジタル信号2は、メインセンサ11のデジタル信号515と補助センサ13のデジタル信号1を用いて生成する。例えば、メインセンサ11のデジタル信号515の立下りのタイミングP18から補助センサ13のデジタル信号1の立上りのタイミングP4の間の60度の位相差に対応する時間T12を測定する。測定は、例えば、信号処理部31に設けたカウンタ(図示せず)で行う。測定した時間T12を用いて信号処理部31で演算処理を行い、60度の位相差に対応する時間T13、及びT11、T14乃至T16を算出する。測定した時間T12と算出した時間T11、T13乃至T16を用いて、メインセンサ11の出力信号512に応じて生成されデジタル信号515に対して120度位相が遅れた位相のデジタル信号2を生成する。時間T11からT16の合計値は、デジタル信号2の一周期となる。デジタル信号2は、駆動信号生成部35で生成される。
【0049】
尚、メインセンサ11のデジタル信号515のみを使って演算処理を行い、120度位相が遅れた位相のデジタル信号2を生成することも可能であるが、補助センサ13の情報も使用することで、より正確なデジタル信号2を生成することが出来る。
【0050】
本実施形態の信号生成方法においては、ロータ62の回転方向に応じてデジタル信号1を生成する補助センサを選択し、デジタル信号1のH/Lが切替わるタイミングが補助センサの出力信号がピーク値とボトム値に達する前のタイミングである為、補助センサの出力信号からデジタル信号1を生成する為の回路構成を簡素化することが出来る。
【0051】
例えば、補助センサ13からデジタル信号516を出力するコンパレータ24は、2つの閾値電圧thB1、thB2と補助センサ13の出力信号514を比較するウィンドウコンパレータで構成することが出来る。メインセンサ11、補助センサ13のデジタル信号516、及び、デジタル信号518を用いて駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWを生成する方法は、
図3の実施形態の場合と同様である為、省略する。
【0052】
図6、及び
図7を用いて、ロータ62の正転時においてメインセンサ11と補助センサ12の出力信号間の位相差が閾値以下の場合の信号生成方法を説明する。
図7は、
図6の上段から3段までを拡大して示した図である。
【0053】
モータ60の起動時のキャリブレーションにおいて、ロータ62の正転時におけるメインセンサ11の出力信号502と補助センサ12の出力信号503の位相差と所定の閾値を比較する。すなわち、
図6と
図7の2段目に示すメインセンサ11の出力信号502と3段目に示す補助センサ12の出力信号503との間の位相差θ1を検出し、閾値と比較する。閾値は、例えば、30度である。
【0054】
メインセンサ11と補助センサ12の出力信号の位相差θ1は、
図7に拡大して示す様に、メインセンサ11の出力信号502がピーク値になるタイミングPUと補助センサ12の出力信号503がピーク値になるタイミングPU12との間の位相差、あるいは、メインセンサ11の出力信号502がボトム値になるタイミングPBと補助センサ12の出力信号503がボトム値になるタイミングPB12との間の位相差により検出する。
【0055】
メインセンサ11の出力信号502がボトム値になるタイミングPBは、メインセンサ11の回転角180度のタイミングP18から90度先行する位置に存在する。従って、位相差θ1が、30度以下の場合には、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP0よりも120度先行する補助センサ12の出力信号503のタイミングP1は、補助センサ12の出力信号503がボトム値になるタイミングPB12に達する迄の所定の位置に存在する。同様に、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP0よりも補助センサ12の出力信号503の位相が60度遅れたタイミングP2は、補助センサ12の出力信号503がピーク値になるタイミングPU12に達する迄の所定の位置に存在する。
【0056】
従って、補助センサ12の出力信号503をキャリブレーション時に設定した閾値電圧thA1、thA2と比較する構成により、メインセンサ11の回転角180度のタイミングP18に対して120度位相が先行するタイミングP1、及び60度位相が遅れたタイミングP2のロータ62の回転位置を検出することが出来る。例えば、コンパレータ23は、2つの閾値電圧thA1、thA2と補助センサ12の出力信号503を比較するウィンドウコンパレータで構成することが出来る。
【0057】
図6の下段に実線508で示すデジタル信号2は、
図4の場合と同様にメインセンサ11のデジタル信号505と補助センサ12のデジタル信号1を用いてT1乃至T6を生成し、120度位相が遅れた信号として生成することが出来る。メインセンサ11、補助センサ12の出力信号502から生成したデジタル信号1、及び、デジタル信号2を用いて駆動信号HU、LU、HV、LV、HW、LWを生成する方法は、
図3の例と同様である為、省略する。
【0058】
図8、及び
図9を用いて、ロータ62の正転時においてメインセンサ11の出力信号と補助センサ12の出力信号の位相差が閾値より大きい場合の信号生成方法を説明する。
図9は、
図8の上段から3段までを拡大して示した図である。
【0059】
メインセンサ11の出力信号502がボトム値になるタイミングPBは、メインセンサ11の回転角180度のタイミングP18から90度先行するタイミングに位置し、ピーク値になるタイミングPUは、90度遅れたタイミングに位置する。従って、メインセンサ11の出力信号502がピーク値になるタイミングPUと補助センサ12の出力信号523がピーク値となるタイミングPU14の間、あるいは、メインセンサ11の出力信号502がボトム値になるタイミングPBと補助センサ12がボトム値になるタイミングPB14の間の位相差θ2が、30度より大きい場合には、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP0よりも60度先行する補助センサ13の出力信号524のタイミングP14は、補助センサ13の出力信号524がボトム値になるタイミングPB13に達する迄の所定の位置に存在する。同様に、メインセンサ11の出力信号502がゼロになるタイミングP0よりも補助センサ13の出力信号524の位相が120度遅れるタイミングP13は、補助センサ13の出力信号524がピーク値に達するタイミングPU13に達する迄の所定の位置に存在する。
【0060】
従って、位相差が30度より大きい場合には、補助センサ13を選択し、キャリブレーション時に設定した閾値電圧thB1、thB2と補助センサ13の出力信号524を比較することにより、メインセンサ11の回転角180度のタイミングP18に対して60度位相が先行するタイミングP14、及び120度位相が遅れたタイミングP13のロータ62の回転位置を検出することが出来る。補助センサ13の出力信号524のボトム値、及びピーク値を検出する構成を設ける必要がない為、回路構成を簡略化することが出来る。例えば、補助センサ13からデジタル信号526を得るコンパレータ24は、2つの閾値電圧thB1、thB2と補助センサ13の出力信号524を比較するウィンドウコンパレータで構成することが出来る。
【0061】
メインセンサ11と補助センサ12の出力信号間の位相差θ2が閾値30度より大きい場合には、補助センサ13の出力信号524を用いてデジタル信号1を生成する。実線528で示すデジタル信号2は、デジタル信号1を演算処理して、デジタル信号1から120度位相が遅れた信号として生成することが出来る。尚、
図4の場合と同様に、メインセンサ11のデジタル信号525の情報も用いて補助センサ13のデジタル信号1との位相差60度に相当する時間を測定し、この測定値を用いて演算処理を行い、デジタル信号2を生成しても良い。
【0062】
尚、記述した様に、補助センサ12、13をメインセンサ11に対して線対称の位置に配置することで、メインセンサ11と補助センサ12の出力信号間の位相差θ2と同じ位相差が、メインセンサ11の出力信号502と補助センサ13の出力信号524との間に生じる。
【0063】
図10は、補助センサ12、13の出力信号にオフセットが有る場合の信号生成について説明する為の図である。ロータ62の正転時において、補助センサ12の出力信号533にオフセットoffsetが有る場合の例である。記述した様に、モータ起動時に行うキャリブレーションにおいて取得した補助センサ12の所定のタイミングP1、P2における出力信号533の値に基づいて閾値電圧thA1、thA2が設定される。ロータ62の180度の回転角度に対して120度が先行するタイミングP1における補助センサ12の出力信号533の値が閾値電圧thA1として設定され、60度遅れた回転角度におけるタイミングP2における出力信号533の値が閾値電圧thA2として設定される。閾値電圧thA1、thA2と補助センサ12の出力信号533の比較結果に応じて実線536で示すデジタル信号1が生成される。実線538で示すデジタル信号2は、メインセンサ11の出力信号502から生成されるデジタル信号535を用いて生成される。
【0064】
本実施形態においては、閾値電圧thA1、thA2は、補助センサ12のオフセットoffsetに応じて設定される。補助センサ13の出力信号534が供給されるコンパレータ24の閾値電圧thB1、thB2についても同様に補助センサ13のオフセットに応じた出力信号534により設定される。オフセットに応じてコンパレータ23、24の閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2の設定が出来る為、補助センサ12、13に対してはオフセットキャンセル部を設ける必要が無い。従って、回路構成を簡素化することが出来る。尚、
図4の場合と同様に、メインセンサ11のデジタル信号535の情報も用いて補助センサ12のデジタル信号1との位相差60度に相当する時間を測定し、この測定値を用いて演算処理を行い、デジタル信号2を生成しても良い。
【0065】
図11は、キャリブレーションの一つの実施形態のフローを示す図である。モータ60を一定の周波数で強制的に正転させる(S10)。モータ60を強制的に一定周波数(回転数)で正転させる所定パターンの駆動信号を駆動信号生成部35で生成し、出力回路部40の各出力トランジスタ41乃至46に供給する。所定パターンの元データは、例えば、メモリ部50に保存されており、信号処理部31を介して所定のタイミングで駆動信号生成部35に供給される。元データは、駆動装置100の外部から供給しても良い。
【0066】
メインセンサ11の出力信号と補助センサ12の出力信号の位相差を検出する(S11)。例えば、メインセンサ11と補助センサ12の出力信号のピーク値の間の位相差を検出する。ピーク値の間の位相差を検出することで、例えば、補助センサ12の出力信号にオフセットが有る場合の影響を排除することが出来る。
【0067】
位相差が閾値である30度以下か否かを比較する(S12)。位相差が30度以下の場合(S12:Yes)には、補助センサ12を選択する(S13)。すなわち、ロータ62の正転時において先行する補助センサ12を選択して、メインセンサ11の出力信号に対して120度進んだ位相における補助センサ12の出力信号の出力レベルを検出する(S15)。
【0068】
位相差が30度より大きい場合(S12:No)には、補助センサ13を選択する(S14)。すなわち、ロータ62の正転時においてメインセンサ11に追従する補助センサ13を選択して、メインセンサ11の出力信号に対して120度遅れた位相における補助センサ13の出力信号の出力レベルを検出する(S16)。
【0069】
モータ60の正転時の補助センサの選択結果と出力レベルをメモリ部50のメモリに保存する(S17)。保存した検出レベルが、コンパレータの閾値電圧として設定される。
【0070】
次に、モータ60を一定の周波数で強制的に反転させる(S18)。モータ60を強制的に一定周波数(回転数)で反転させる所定パターンの駆動信号を駆動信号生成部35で生成し、出力回路部40の各出力トランジスタ41乃至46に供給する制御を行う。所定パターンのベースとなる元データは、メモリ部50に保存されており、信号処理部31を介して所定のタイミングで駆動信号生成部35に供給される。強制的に反転させるステップを設けるのは、モータ60を反転させる場合に備える為である。
【0071】
モータ60の正転時に補助センサ12を選択した場合(S19:Yes)、すなわち、メインセンサ11と補助センサ12の出力信号の位相差が30度以下の場合には、補助センサ13を選択(S20)して、メインセンサ11の出力に対して120度進んだ位相における補助センサ13の出力信号の出力レベルを検出する(S22)。これにより、
図5において説明した様に、補助センサ13の出力信号の出力レベルがピーク値に達する前のタイミングP3における検出レベル(thB2)、及びボトム値に達する前のタイミングP4における出力信号の出力レベル(thB1)を検出して、コンパレータ24の閾値電圧の設定値として検出することが出来る。
【0072】
モータ60の正転時に補助センサ12を選択しなかった場合(S19:No)には、補助センサ12を選択して(S21)、メインセンサ11の出力に対して120度遅れた位相における補助センサ12の出力信号の出力レベルを検出する(S23)。これにより、補助センサ12の出力信号の出力レベルがボトム値に達する前の値、及び、ピーク値に達する前の値をコンパレータ23の閾値電圧thA1、thA2の設定値として検出することが出来る。
【0073】
モータ60の反転時の補助センサの選択結果と出力レベルをメモリ部50のメモリに保存する(S24)。保存した出力レベルが、コンパレータ23、24の閾値電圧thA1、thA2、thB1、thB2として設定される。
【0074】
例えば、キャリブレーションをモータ起動時に自動的に行うことで、各コンパレータ23、24の閾値電圧が設定される。それぞれの閾値電圧と各補助センサ12、13の出力信号を比較してそれぞれの閾値電圧に達するタイミングを検出することで、ロータ62の回転位置を検出することが出来る。尚、起動時のキャリブレーションの際の駆動信号は、駆動装置100の外部から出力回路部40に供給しても良い。
【0075】
図12は、駆動装置100を集積化した平面パターンの例を示す図である。駆動装置100は、メインセンサ11、補助センサ12.13、検出部20、制御部30、出力回路部40、及びメモリ部50が一体的に集積化される。メインセンサ11の両サイドに補助センサ12、13が形成される。メインセンサ11の両サイドに補助センサ12、13を設けることで、ロータ62の回転に応じてメインセンサ11に対して先行、あるいは追従してロータ62の回転位置を検出する構成とすることが出来る。
【0076】
メインセンサ11、補助センサ12、13をシリコンで形成した場合には、例えば、単一シリコン基板に検出部20、制御部30、出力回路部40、メモリ部50と共に一体化して形成し、モールド樹脂で一体的に集積化することが出来る。
【0077】
各センサ11、12、13を構成するホール素子を化合物半導体で構成した場合には、化合物半導体で構成したホール素子が形成された個別チップ(図示せず)を、他の回路部が形成されたシリコン基板と共にマルチチップ構成により一体化させ、例えば、モールド樹脂で一体的に集積化することが出来る。また、一部の構成要素を外付けとして、別の集積回路で構成しても良い。例えば、出力回路部40を構成する出力トランジスタ41乃至46は高耐圧のDMOS(Double Diffused MOS)トランジスタで構成され発熱を伴う為、外付けの集積回路装置として構成しても良い。
【0078】
図13は、駆動装置100を内蔵したモータの一つの実施形態の分解斜視図である。支持基盤200に、駆動装置100が載置される。ステータ202には、励磁コイル(図示せず)が設けられ、出力線301乃至303を介して、励磁電流が供給される。
【0079】
永久磁石からなるロータ62、ステータ202、支持基盤200を、上側筐体201と下側筐体203によって収納する。
【0080】
メインセンサ11、補助センサ12、13が一体的に集積された駆動装置100を設ける構成である為、点線で示す支持基盤200の右側部200Aを削減することが出来る。これにより、モータのコストを削減することが出来る。例えば、リング状の平板(図示せず)を2分割して、その一方を支持基盤200として使用し、他方をもう一つのモータの支持基盤として使用することが出来る。メインセンサ11、補助センサ12、13を一体的に集積化した駆動装置100とすることで、モータのコストを削減することが出来る。
【0081】
記述した実施形態においては、ロータ62が2極の場合について説明したが、ロータ62が4極、あるいは、8極等の場合であっても、同様に駆動装置100を用いてロータ62の回転位置を検出することが出来る。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10 センサ部、11 メインセンサ、12、13 補助センサ、20 検出部、30 制御部、40 出力回路部、50 メモリ部、60 モータ、61 コイル部、62 ロータ、100 駆動装置、200 支持基盤、201 上側筐体、202 ステータ、203 下側筐体。