(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】測定方法、内径測定器及び内径測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/12 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G01B5/12
(21)【出願番号】P 2021047875
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 友春
(72)【発明者】
【氏名】野口 義和
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-175003(JP,U)
【文献】実開昭55-108905(JP,U)
【文献】特開2000-018903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の孔である測定対象孔の内壁に接触可能な接触子の位置に対応する移動軸の移動量により当該測定対象孔の内径を測定する測定方法であって、
前記接触子を有する先端部を前記測定対象孔に挿入して内径を測定する際、前記移動軸の移動量に応じて当該測定対象孔の内径を特定するための値を示す接触式変位計からの圧力により当該先端部から当該接触子を突出させ、
前記先端部を前記測定対象孔に対して挿抜する際、前記接触式変位計から前記移動軸を介した前記接触子への圧力伝達を制限して当該接触子を当該先端部内に埋没させる、ことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記圧力伝達の制限は、前記移動軸と前記接触子との間の圧力伝達経路を遮断することで行われることを特徴とする請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
前記移動軸の移動により、前記圧力伝達経路の遮断と接続が行われ、
前記接続の場合の前記移動軸の移動速度は、前記遮断の場合の当該移動軸の移動速度よりも遅いことを特徴とする請求項2記載の測定方法。
【請求項4】
前記移動軸の移動により、前記圧力伝達経路の遮断と接続が行われ、
前記接続の場合の前記移動軸の移動速度は、前記遮断の場合の当該移動軸の移動速度と同じであることを特徴とする請求項2記載の測定方法。
【請求項5】
測定対象の孔である測定対象孔に進入する先端部と、
前記先端部に突出可能に設けられ、前記測定対象孔の内径を測定する際に当該測定対象孔の内壁に接触する接触子と、
前記接触子に対して接離可能であり、当該接触子が突出する方向に対して交差する方向に移動する移動軸と、
前記移動軸の移動量に応じて前記測定対象孔の内径を特定するための値を示す接触式変位計と、
前記接触式変位計から前記移動軸を介した前記接触子への圧力伝達を制限して当該接触子を前記先端部内に埋没させる接触子埋没手段と、
を備えたことを特徴とする内径測定器。
【請求項6】
前記接触子埋没手段は、前記移動軸と前記接触子との間の圧力伝達経路を遮断することで、前記圧力伝達を制限することを特徴とする請求項5記載の内径測定器。
【請求項7】
前記接触子埋没手段は、
前記圧力伝達経路が形成されるように前記移動軸を移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータにより前記移動軸が移動する方向とは反対の方向に付勢するばね部材と
を含み、前記アクチュエータの作動を停止することで、前記ばね部材の付勢力により前記圧力伝達経路を遮断させることを特徴とする請求項6記載の内径測定器。
【請求項8】
前記接触子埋没手段は、前記圧力伝達経路が遮断されるように前記移動軸を移動させると共に当該圧力伝達経路が形成されるように当該移動軸を移動させるアクチュエータを含む、ことを特徴とする請求項6記載の内径測定器。
【請求項9】
前記接触子埋没手段は、前記圧力伝達経路が遮断されるように前記移動軸を移動させる第1のアクチュエータを含み、
前記内径測定器は、前記圧力伝達経路が形成されるように前記移動軸を移動させる第2のアクチュエータをさらに備える、ことを特徴とする請求項6記載の内径測定器。
【請求項10】
前記接触子埋没手段により前記移動軸を前記接触子から離間させる速度と、当該移動軸を当該接触子に接触させる速度の少なくともいずれか一方を制御して当該一方を他方と異ならしめる制御手段をさらに備え、
前記接触させる速度は、前記離間させる速度よりも低いことを特徴とする請求項5記載の内径測定器。
【請求項11】
請求項5~10記載の内径測定器と、
前記接触子埋没手段による前記接触子の埋没と当該接触子の突出との切り替え操作を行う操作手段と、
を有することを特徴とする内径測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法、内径測定器及び内径測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に形成されている孔の内径を測定する内径測定装置が知られている。
例えば、特許文献1には、本体と、移動軸と、テーパーコーンと、可変ガイドと、測定子と、を具備し、可変ガイドを孔に挿入し、測定子を孔の内壁に接触させることにより、孔の内径を測定可能であり、移動軸の進退移動により可変ガイドの先端部が移動軸に対して近接離間する方向へ回動する内径測定装置であって、可変ガイドにより回動可能に支持されるとともに、テーパーコーンの外周面に接触するボールベアリングを具備する内径測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、測定対象である孔の内径を測定する際に孔の内壁に測定子が接触した状態で挿抜させると、挿抜時の抵抗により内壁が損傷したり接触子が摩耗したりするおそれがあり、好ましくない。
本発明は、内径を測定する孔に対して接触子を挿抜する際の抵抗を低減させることが可能な測定方法、内径測定器及び内径測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、測定対象の孔である測定対象孔の内壁に接触可能な接触子の位置に対応する移動軸の移動量により当該測定対象孔の内径を測定する測定方法であって、前記接触子を有する先端部を前記測定対象孔に挿入して内径を測定する際、前記移動軸の移動量に応じて当該測定対象孔の内径を特定するための値を示す接触式変位計からの圧力により当該先端部から当該接触子を突出させ、前記先端部を前記測定対象孔に対して挿抜する際、前記接触式変位計から前記移動軸を介した前記接触子への圧力伝達を制限して当該接触子を当該先端部内に埋没させる、ことを特徴とする測定方法である。
請求項2に記載の発明は、前記圧力伝達の制限は、前記移動軸と前記接触子との間の圧力伝達経路を遮断することで行われることを特徴とする請求項1記載の測定方法である。
請求項3に記載の発明は、前記移動軸の移動により、前記圧力伝達経路の遮断と接続が行われ、前記接続の場合の前記移動軸の移動速度は、前記遮断の場合の当該移動軸の移動速度よりも遅いことを特徴とする請求項2記載の測定方法である。
請求項4に記載の発明は、前記移動軸の移動により、前記圧力伝達経路の遮断と接続が行われ、前記接続の場合の前記移動軸の移動速度は、前記遮断の場合の当該移動軸の移動速度と同じであることを特徴とする請求項2記載の測定方法である。
請求項5に記載の発明は、測定対象の孔である測定対象孔に進入する先端部と、前記先端部に突出可能に設けられ、前記測定対象孔の内径を測定する際に当該測定対象孔の内壁に接触する接触子と、前記接触子に対して接離可能であり、当該接触子が突出する方向に対して交差する方向に移動する移動軸と、前記移動軸の移動量に応じて前記測定対象孔の内径を特定するための値を示す接触式変位計と、前記接触式変位計から前記移動軸を介した前記接触子への圧力伝達を制限して当該接触子を前記先端部内に埋没させる接触子埋没手段と、を備えたことを特徴とする内径測定器である。
請求項6に記載の発明は、前記接触子埋没手段は、前記移動軸と前記接触子との間の圧力伝達経路を遮断することで、前記圧力伝達を制限することを特徴とする請求項5記載の内径測定器である。
請求項7に記載の発明は、前記接触子埋没手段は、前記圧力伝達経路が形成されるように前記移動軸を移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータにより前記移動軸が移動する方向とは反対の方向に付勢するばね部材とを含み、前記アクチュエータの作動を停止することで、前記ばね部材の付勢力により前記圧力伝達経路を遮断させることを特徴とする請求項6記載の内径測定器である。
請求項8に記載の発明は、前記接触子埋没手段は、前記圧力伝達経路が遮断されるように前記移動軸を移動させると共に当該圧力伝達経路が形成されるように当該移動軸を移動させるアクチュエータを含む、ことを特徴とする請求項6記載の内径測定器である。
請求項9に記載の発明は、前記接触子埋没手段は、前記圧力伝達経路が遮断されるように前記移動軸を移動させる第1のアクチュエータを含み、前記内径測定器は、前記圧力伝達経路が形成されるように前記移動軸を移動させる第2のアクチュエータをさらに備える、ことを特徴とする請求項6記載の内径測定器である。
請求項10に記載の発明は、前記接触子埋没手段により前記移動軸を前記接触子から離間させる速度と、当該移動軸を当該接触子に接触させる速度の少なくともいずれか一方を制御して当該一方を他方と異ならしめる制御手段をさらに備え、前記接触させる速度は、前記離間させる速度よりも低いことを特徴とする請求項5記載の内径測定器である。
請求項11に記載の発明は、請求項5~10記載の内径測定器と、前記接触子埋没手段による前記接触子の埋没と当該接触子の突出との切り替え操作を行う操作手段と、を有することを特徴とする内径測定装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内径を測定する孔に対して接触子を挿抜する際の抵抗を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態が適用される内径測定器の一例を示した図である。
【
図3】内径測定ゲージの外観を説明する斜視図である。
【
図4】コンタクトの先端部に対する位置関係を説明する図であり、(a)はニードルからコンタクトホルダに外力が加えられていない状態、(b)は外力が加えられている状態を示す。
【
図6】加工済み部品の測定対象孔に内径測定ゲージの先端部が進入している状態を説明する図であり、(a)~(e)の各々は先端部の状態が互いに異なる場合を示す。
【
図7】接触式変位計の動作による内径測定ゲージとの接離を説明する図であり、(a)は、接触式変位計の測定子が内径測定ゲージのニードルと離れている状態、(b)は、接している状態を示す。
【
図8】ニードルの駆動態様についての変形例を説明する図であり、(a)はコンタクトの埋没状態、(b)はコンタクトの突出状態を示す。
【
図9】手動測定機における処理手順例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[内径測定器1の説明]
図1は、本実施の形態が適用される内径測定器1の一例を示した図である。
内径測定器1は、加工済み部品に形成された孔の内径を測定するためのものであり、例えば部品製造工場で使用される。なお、内径測定器1は、不図示のマスターゲージなどの基準となる長さと比較して内径を求める比較測定用であるが、これに限られず、基準となる長さとの比較ではなく長さの値を示す測定器としてもよい。
【0009】
本実施の形態に係る内径測定器1は、測定対象の孔である測定対象孔の内壁に接触する後述のコンタクト3の孔径方向の移動量を測定対象孔の深さ方向ないし軸方向の移動量に変換するプラグゲージないし内径測定ゲージ11と、内径測定ゲージ11の軸方向の移動量に応じて測定対象孔の内径を特定するための値を示す接触式変位計12と、内径測定ゲージ11と接触式変位計12との位置関係を保持した状態で両者を取り付けるための取付ホルダ13と、取付ホルダ13に内径測定ゲージ11を取り付けるための取付アダプタ14と、を含んで構成されている。
【0010】
[内径測定ゲージ11の説明]
図2は、内径測定ゲージ11の構成を説明する図であり、構成する部品を組み立てた状態を断面で示すと共に各部品の形状を抜き出して示している。
図2に示すように、内径測定ゲージ11は、構成部品として、測定対象孔内に進入する中空棒状の本体部2と、本体部2に設けられ外周面から突出して測定対象孔の内壁に接触可能なコンタクト3と、を備えている。また、内径測定ゲージ11は、構成部品として、本体部2の内部に設けられコンタクト3を保持する筒状のコンタクトホルダ4と、コンタクトホルダ4の筒内で軸方向に移動可能に設けられるニードル5と、本体部2に取り付けられニードル5を覆う蓋部6と、を備えている。
【0011】
本体部2は、測定対象孔の形状に対応する外形形状に形成されている先端部21を有する。かかる先端部21は、内径測定時に測定対象孔内に進入する部分である。また、先端部21には、コンタクト3を外周面から突出することを許容する開口部22が形成されている。
【0012】
コンタクト3は、先端部21の外周面から突出する球面部31と、球面部31を保持し球面部31から遠い部分が近い部分よりも小径になる段形状に形成されている基部32と、を含んで構成されている。コンタクト3は、先端部21の径方向に移動可能に配置された一対である。すなわち、一対のコンタクト3において、一方のコンタクト3と他方のコンタクト3とが互いに離れる方向に移動することで、両コンタクト3は、先端部21の外周面から突出する状態になり、また、互いに近づく方向に移動することで引っ込んで外周面に埋没する状態になる。
図2に示すコンタクト3の状態は、埋没状態である。
【0013】
コンタクトホルダ4は、軸方向の一端部に一対のコンタクト3を別々に保持する一対の基部保持部41を有する。より詳細には、基部保持部41は、基部32と係合する段付き孔形状であり、コンタクト3は、外周面側から孔に挿入されて基部保持部41に取り付けられる。なお、本実施の形態では、コンタクト3とコンタクトホルダ4を互いに対応する段付き形状にしているが、これに限られず、段付き形状以外の形状でもよく、コンタクト3をコンタクトホルダ4に取り付ける手段として周知慣用の技術を用いることができる。
また、コンタクトホルダ4は、中間位置から一端部まで形成され径方向に貫通するスリット42により二分割された分割部分43を有する。分割部分43は、弾性を有し、外力により互いに離れる方向への変形が許容される一方で、外力に抗して互いに接近する方向に付勢される。また、コンタクトホルダ4の分割部分43に対応する本体部2の領域には、コンタクトホルダ4の外径よりも大きい径寸法の内部空間が形成されている。かかる構成により、基部保持部41の径方向に対する移動が実現され、コンタクトホルダ4でコンタクト3を接離方向に移動させることが可能になる。
【0014】
ニードル5は、一端部にテーパー部51を有する。かかるテーパー部51は、ニードル5が軸方向に移動することで、コンタクトホルダ4の基部保持部41に接触可能である。かかる接触により、基部保持部41同士の距離が大きくなる。その結果として、一対のコンタクト3が互いに離れる方向に移動し、本体部2の外周面から突出する突出状態になる。
テーパー部51が基部保持部41から離れると、コンタクトホルダ4の弾性により基部保持部41同士の距離が元に戻る。すなわち、一対のコンタクト3は、互いに近づく方向に移動し、本体部2の外周面に埋没する埋没状態になる。
【0015】
蓋部6は、ニードル5を部分的に保持すると共に、ニードル5のテーパー部51とは反対側の端部52を外部に露出させる。これにより、ニードル5の軸方向の移動が妨げられず、ニードル5の端部52が内径測定ゲージ11の外部に移動可能である。
【0016】
図3は、内径測定ゲージ11の外観を説明する斜視図である。
内径測定ゲージ11は、
図3に示すように、外形が円形で長手形状であり、蓋部6からニードル5の端部52が突出する。また、本体部2の先端部21では、コンタクトホルダ4に保持されるコンタクト3を本体部2から突出させるための開口部22が形成されている。
また、本体部2には、取付アダプタ14(
図1参照)の取り付けに利用される平面部23が形成されている。
【0017】
ここで、内径測定ゲージ11において、コンタクト3は、接触子の一例であり、ニードル5は、移動軸の一例であり、先端部21は、先端部の一例である。
また、接触式変位計12の測定子114(
図5参照)が内径測定ゲージ11のニードル5に接触する場合、測定子114からの圧力がニードル5に伝わる。そして、その圧力は、ニードル5のテーパー部51を介してコンタクトホルダ4からコンタクト3に伝達される。かかる伝達経路は、圧力伝達経路の一例である。
また、詳細を後述する接触式変位計12(
図1または
図5参照)は、接触式変位計の一例である。
【0018】
上述のとおり、ニードル5は軸方向に移動可能であり、コンタクトホルダ4に対して接離可能であると共に接触状態が変更可能である。ニードル5からコンタクトホルダ4に接触し外力が加わることにより分割部分43が変形すると、コンタクト3が移動し、先端部21に対するコンタクト3の位置関係が変更される。
図4は、コンタクト3の先端部21に対する位置関係を説明する図であり、(a)はニードル5からコンタクトホルダ4に外力が加えられていない状態、(b)は外力が加えられている状態を示す。
図4(a)に示すように、ニードル5のテーパー部51がコンタクトホルダ4に接触しているもののニードル5からコンタクトホルダ4に外力が加えられないと、コンタクトホルダ4の分割部分43は変形しない。コンタクトホルダ4の基部保持部41により保持される一対のコンタクト3は動かず、先端部21内に埋没している。
なお、ニードル5がコンタクトホルダ4から離れた場合、一対のコンタクト3は
図4(a)に示す状態と同じである。
【0019】
図4(b)に示すように、ニードル5がコンタクトホルダ4側に移動し、テーパー部51がコンタクトホルダ4の分割部分43の間に入り込むと、分割部分43が弾性変形する。かかる弾性変形により、一対のコンタクト3は互いに離れる方向に移動し、先端部21から寸法δの量が突出する。
なお、分割部分43は、ニードル5がコンタクトホルダ4から遠ざかる方向に移動すると、自身の弾性力により元に戻ろうとする。付言すると、ニードル5がコンタクトホルダ4から離れると、
図4(a)に示す状態になる。
【0020】
ニードル5の軸方向の移動量と一対のコンタクト3の移動量は、ニードル5のテーパー部51の角度に応じた相対関係がある。すなわち、ニードル5の移動量を検出することで、コンタクト3の移動量を求めることができる。
かかるニードル5の移動量は、上述の接触式変位計12により測定され、コンタクト3の移動量に換算される。
【0021】
[接触式変位計12の説明]
図5は、接触式変位計12の一例を示した図である。
接触式変位計12は、移動部110の変位に基づいて測定対象物の長さを検出するための測長器101と、測長器101に接続され、各種の演算を行なうとともに、寸法の計測や、加工時のワークの仕上がりなどの合否の判定を行い、結果の表示出力を行なうコントローラとしての表示器102と、測長器101と表示器102とを電気的に接続するケーブル103と、を有している。さらに、接触式変位計12は、移動部110を測定対象物に向けて押し付けるためのエアを測長器101に供給するエア供給器104と、測長器101とエア供給器104とをエアの流通を可能に接続するエアチューブ105と、を有している。
接触式変位計12は、ニードル5の変位量を示す比較測定用であるが、内径そのものを示す場合であってもよい。
【0022】
測長器101は、筐体部150に対して軸線方向に移動可能な移動部110の測定子114を、測定対象物に当接させる。そして、測長器101は、移動部110の基準位置からの変位を光学的に検出する。
【0023】
表示器102では、使用者が、測長器101を用いた測定に際して用いられる初期パラメータの設定や、各種パラメータの登録などを行なうことができる。また、表示器102では、設定条件などをSET NO.(セット番号)によって登録することで、SET NO.の指定によって測定条件の呼出しが簡易に行える。これによって、段取り替えを容易としている。また、表示器102の測定画面では、マスター合わせのためのリセット操作などもできる。表示器102による表示としては、例えば、絶対値表示として、例えば測長器101の移動部110が最も出ている状態をほぼゼロとして、機械的に固有な測定値を表示する状態を設定できる。また、表示器102は、測定値が設定した合否判定/ランク判定の範囲内かどうかを判定し、表示や出力を行なう合否判定機能を備えている。
【0024】
なお、表示器102は、複数台の測長器101を連結するように構成することもでき、多点の演算表示を行なうことができる。また、表示器102は、外部入出力用の各種インタフェースを設け、用途に合わせて使用することも可能である。
また、表示器102の構成としては、測長器101の内部に同様の機能を持たせることもできる。また、ケーブル103を用いずに、各種無線通信機能を用いて表示器102と通信することも可能である。
【0025】
ケーブル103には、コネクタが設けられており、測長器101の後端側に設けられたコネクタに対して、オス/メスの関係で脱着可能となっている。
【0026】
エア供給器104は、図示されない制御部によって制御される。そして、エア供給器104は、エアチューブ105を介し、測長器101に対してエアの供給を行うことで、筐体部150から移動部110を進出させる。また、エア供給器104は、電磁弁を制御して測長器101内に供給されたエアの大気開放を行うことで、筐体部150に移動部110を引き込ませる。
また、本実施の形態では、エア供給器104によるエアの供給条件に応じて、測長器101は、測定対象物に対する測定子114の押圧力や測定子114の移動速度を変更することができる。
【0027】
エアチューブ105は、一端部がエア供給器104のエア出入口に接続し、他端部が測長器101の後端側に設けられた接続部に接続する。そして、エアチューブ105は、エア供給器104と測長器101との間のエアの経路を形成する。なお、エアチューブ105は、本実施の形態では、測長器101にエアを供給する供給路106と、測長器101に供給したエアを大気開放する開放路107とをそれぞれ備えている。なお、エアチューブ105が供給路106と開放路107に分かれずに供給を行い、開放は別の場所から行われる構成を採用してもよい。
【0028】
ここで、接触式変位計12において、移動部110の変位量は、測定部により測定される。測定部は、光を照射する発光素子と、発光素子が照射した光を受光する受光素子と、を有する。発光素子には、LEDなどを用いることができる。受光素子は、フォトダイオードやイメージセンサなどのセンサICを有し、ガラススケールを透過した透過光を読み取り、発光素子からの光の光量変化に基づいて得られる、ガラススケールの目盛の情報を検出する。検出された情報を基にする測定結果が表示器102に表示される。
【0029】
接触式変位計12において、移動部110は、圧縮コイルばねにより筐体部150に引き込む方向(後端側の方向)に付勢される。本実施の形態に係る接触式変位計12は、単動式で押し出しのエアシリンダである。
エア供給器104から筐体部150の内部空間にエアが供給されると、内部空間内のエアが予め定められた圧力となり、移動部110は、圧縮コイルばねのばね力に抗して先端側に移動する力が作用する。また、内部空間に対するエアの供給が停止されると、移動部110は、圧縮コイルばねのばね力によって後端側に移動する。
エア供給を調整することで、移動部110の筐体部150に対する位置ないし移動量を制御できる。
【0030】
接触式変位計12は、測定器自体が駆動するため、接触式変位計12を用いることで内径測定器1の構造を簡素化することができる。例えば、外部機構等で測定器を上下動させることも考えられるが、構造が複雑化し、繰り返し位置決めによる影響要因になり測定精度が懸念される。内径測定器1が接触式変位計12を含むことで、かかる懸念が解消される。
【0031】
[先端部21と測定対象孔10aとの関係]
図6は、加工済み部品10の測定対象孔10aに内径測定ゲージ11の先端部21が進入している状態を説明する図であり、(a)~(e)の各々は先端部21の状態が互いに異なる場合を示す。
図6(a)に示す状態は、ニードル5がコンタクトホルダ4から離れた位置にあり、テーパー部51はコンタクトホルダ4に接触しない。コンタクトホルダ4に保持されている一対のコンタクト3は、本体部2の開口部22から突出せず、完全に引っ込んでおり、先端部21内に埋没している状態である。先端部21の外周面とコンタクト3との距離は、寸法δ1である。
【0032】
図6(b)に示す状態は、ニードル5のテーパー部51がコンタクトホルダ4に接触しているものの、ニードル5からコンタクトホルダ4への圧力がほとんど作用せずに完全に引っ込んでいる。一対のコンタクト3は、
図6(a)と同じく、埋没状態であり、先端部21の外周面とコンタクト3との距離は、寸法δ1’である(δ1’≦δ1)。
【0033】
図6(c)に示す状態は、ニードル5が同図(b)の場合よりもコンタクト3の方向に進み、ニードル5からコンタクトホルダ4への圧力が高くなる。より詳細には、ニードル5のテーパー部51からの圧力はコンタクトホルダ4に作用しているものの、一対のコンタクト3は、先端部21の外周面から突出しておらず埋没状態であり、測定対象孔10aの内壁10bに接していない。先端部21の外周面とコンタクト3との距離は、寸法δ1よりも小さい寸法δ2である(δ2<δ1’≦δ1)。
【0034】
図6(d)に示す状態は、ニードル5が同図(c)の場合よりもコンタクト3の方向に進むことで、ニードル5のテーパー部51からコンタクトホルダ4への圧力が同図(c)の場合よりもさらに高い。一対のコンタクト3は、先端部21の外周面の位置まで移動している。
図6(d)の状態のコンタクト3で仮に測定した場合の寸法は、先端部21の外径寸法とほぼ同じである。いわば、埋没状態でなく突出状態でもない面一(つらいち)状態である。
【0035】
図6(e)に示す状態は、ニードル5が同図(d)の場合よりもコンタクト3の方向に進んでコンタクトホルダ4から圧力が同図(d)の場合よりも高くなっている。
図6(e)に示す状態は、一対のコンタクト3は、先端部21の外周面から突出する状態である。先端部21の外周面から出ているコンタクト3の量は、寸法δ3であり、先端部21の外周面と測定対象孔10aの内壁10bとの間の径方向の差分である寸法δ4よりも小さい(δ3<δ4)。
付言すると、内径測定時には、コンタクト3が内壁10bに接触するまでニードル5をコンタクト3の方向に進める。なお、ニードル5をコンタクト3の方向に進めて内壁10bに接触すると、加圧してもニードル5が進行しなくなり、かかる状態での測定結果を基に、測定対象孔10aの内径が算出される。
【0036】
図6(e)に示す状態は、接触式変位計12からの圧力がニードル5からコンタクトホルダ4に伝達され、コンタクトホルダ4に保持されているコンタクト3が先端部21の外周面から突出したものである。すなわち、同図(e)に示す状態は、接触式変位計12からの圧力により先端部21からコンタクト3を突出させた状態である。
【0037】
このように、
図6(a)~(e)のうち同図(a)~(c)では、一対のコンタクト3が先端部21内に埋没している。すなわち、同図(a)~(c)は、接触式変位計12からニードル5を介したコンタクト3への圧力伝達を制限している状態であり、コンタクト3を先端部21内に埋没させている。
このため、内径測定ゲージ11の先端部21を加工済み部品10の測定対象孔10aに挿入したり抜去したりする際に、同図(a)~(c)の何れかの状態であれば、一対のコンタクト3が測定対象孔10aの内壁10bと接触することで内壁10bが損傷したりコンタクト3が摩耗したりすることを防止することができる。
【0038】
また、
図6(d)では、一対のコンタクト3が先端部21の外周面から突出していない。すなわち、同図(d)は、先端部21からコンタクト3を突出させないように、接触式変位計12からニードル5を介したコンタクト3への圧力伝達を制限している状態である。
このため、先端部21を測定対象孔10aに対して挿抜する際、
図6(d)の状態であっても、コンタクト3と内壁10bとの接触を防止することができ、内壁10bの損傷やコンタクト3の摩耗を防止することができる。
【0039】
さらに説明すると、
図6(e)では、一対のコンタクト3は先端部21から突出しているが、内壁10bとの間に隙間が存在し(=(δ4-δ3)/2)、内壁10bには接していない。このため、先端部21を、コンタクト3が測定対象孔10aの内壁10bと接触せずに測定対象孔10aに挿抜することが可能である。したがって、先端部21と加工済み部品10との相対的位置関係が高精度に位置決めされる場合には、コンタクト3が先端部21から突出していても、測定対象孔10aに対する先端部21の挿抜の際に、コンタクト3は内壁10bと接触しない。よって、
図6(e)の場合であっても、内径を測定する孔に対して先端部21ないしコンタクト3を挿抜する際の抵抗を低減させることが可能になる。
【0040】
先端部21を測定対象孔10aに挿抜する際、
図6(a)~(e)に示すように、測定時よりもコンタクト3が突出しないようにすることで、測定対象孔10aに対してコンタクト3を挿抜する際の抵抗を低減させることが可能になる。
また、挿抜時に、内径測定ゲージ11の構造上薄く形成されている部分を有するコンタクトホルダ4への負担を軽減することができ、測定時の測定力を高めることが可能になる。
【0041】
測定対象孔10aに対して先端部21を挿抜する際のコンタクト3を、測定時よりも突出しないようにする場合の好ましい態様は、
図6(a)~(d)に示すように、コンタクト3を先端部21の外周面から突出しないようにすることである。挿抜時のより好ましい態様としては、
図6(a)~(c)に示すように、コンタクト3を先端部21の外周面から引っ込むようにすることである。
ここで、本書における「埋没」とは、コンタクト3を先端部21の外周面から突出しない状態をいい、本書における「圧力伝達の制限」とは、接触式変位計12からニードル5を介してコンタクト3に伝達される圧力を、コンタクト3が先端部21の外周面から突出しない状態になる程度に抑制することをいう。
【0042】
図7は、接触式変位計12の動作による内径測定ゲージ11との接離を説明する図であり、(a)は、接触式変位計12の測定子114が内径測定ゲージ11のニードル5と離れている状態、(b)は、接している状態を示す。なお、
図7に示す内径測定器1は、接触式変位計12が下側、内径測定ゲージ11が上側になるように配置されている。
図7では、測定対象孔10aを有する加工済み部品10及び加工済み部品10を載置する測定台71を破線で示す。
図7(a)は、ニードル5がコンタクトホルダ4から離れた状態であり、ニードル5とコンタクト3との間の圧力伝達経路が遮断されている。すなわち、接触式変位計12にエア供給がされていないと、
図6(a)に示すように、圧縮コイルばねのばね力によって移動部110が引き込まれ、接触式変位計12の測定子114が内径測定ゲージ11のニードル5と離れる。なお、ニードル5は、自重で下方に移動する。
【0043】
その一方で、接触式変位計12にエアが供給されると、ニードル5とコンタクト3との間の圧力伝達経路が形成ないし接続される。すなわち、
図7(b)に示すように、圧縮コイルばねのばね力に抗して移動部110が引き出され、接触式変位計12の測定子114が内径測定ゲージ11のニードル5と接する。かかるエアの供給が継続されると、接触式変位計12の測定子114と内径測定ゲージ11のニードル5との接触が維持される。
また、移動部110が引き出される量は、エア制御により、任意の値とすることができる。
【0044】
[圧力伝達経路の接続と遮断の説明]
ここで、圧力伝達経路は、
図7(a)に示す遮断と同図(b)に示す接続が行われ、このような遮断と接続との相互の切り替えは、内径測定ゲージ11のニードル5の移動により行われる。
かかる圧力伝達経路の接続と遮断を行う場合のニードル5の移動速度は、接触式変位計12においてエア供給器104によるエア供給量またはエア排出量に起因する。すなわち、エアの供給または排出の流量を多くするとニードル5の移動速度が上がり、流量を少なくするとニードル5の移動速度が下がる。
【0045】
かかる速度制御は、スピードコントローラによるエア供給量を制御するメータイン制御またはエア排出量を制御するメータアウト制御により行われる。
ニードル5の移動速度を、遮断されている圧力伝達経路を接続する場合と、接続されている圧力伝達経路を遮断する場合とで互いに異なるようにエア供給を制御する態様と、同じになるようにエアの供給速度を制御する態様とが考えられる。
【0046】
具体的に説明すると、圧力伝達経路を接続する場合のニードル5の移動速度を、圧力伝達経路を遮断する場合のニードル5の移動速度よりも遅くする制御を採用すると、ニードル5がコンタクトホルダ4に接触する際の衝撃が軽減され、コンタクトホルダ4の破損を防止でき、コンタクトホルダ4の部品寿命を長期化することができる。
また、圧力伝達経路を接続する場合のニードル5の移動速度を、圧力伝達経路を遮断する場合のニードル5の移動速度と同じにする制御を採用すると、圧力伝達経路の接続を短時間で行うことができ、計測工程の効率化を図ることができる。
エア供給器104は、制御手段の一例である。
【0047】
ここで、上述したように、接触式変位計12の測定子114がニードル5に接することでコンタクト3への圧力伝達が行われる(
図7(b)参照)。また、接触式変位計12の測定子114は、接触式変位計12においてエア供給器104からのエア供給を開始する制御によりニードル5に接し、エア供給が停止される制御を行うことで上述の圧縮コイルばねのばね力により、ニードル5から離れる。したがって、接触式変位計12のエア供給器104及び圧縮コイルばねは、接触子埋没手段の一例である。
【0048】
[ニードル5の駆動態様]
本実施の形態におけるニードル5の駆動態様は、上述のとおり、一方向をエアで他方向を圧縮コイルばねで移動部110を移動させる単動式のエアシリンダにより行っている。すなわち、圧力伝達経路が形成される方向をエアシリンダで、圧力伝達経路を遮断する方向を圧縮コイルばねで行う。
言い換えると、圧力伝達経路が形成されるようにニードル5を移動させるアクチュエータとして、接触式変位計12に内蔵されている単動式のエアシリンダを備え、かつ、圧力伝達経路が遮断される方向(エアシリンダによるニードル5の移動方向とは反対の方向)に付勢するばね部材として、接触式変位計12に内蔵されている圧縮コイルばねを備える。
なお、ここにいうアクチュエータとは、電気や空気圧、油圧等のエネルギーを機械的な動きに変換し、機器を正確に動かす駆動装置をいう。
【0049】
ニードル5の駆動態様は、上述した本実施の形態に限られず、各種の変形例が考えられる。
(変形例1)
例えば、接触式変位計12が単動式のエアシリンダを内蔵せず、圧縮コイルばねを内蔵する構成の場合には、接触式変位計12の外部に単動式のエアシリンダを後付けする駆動態様を採用できる。すなわち、圧力伝達経路が形成されるようにニードル5を移動させるアクチュエータとして、後付けの単動式のエアシリンダを用い、かつ、接触式変位計12に内蔵されている圧縮コイルばねにより、圧力伝達経路が遮断される方向にニードル5を移動させる駆動態様である。
【0050】
上述のように、圧力伝達経路が形成される方向の移動をアクチュエータ、圧力伝達経路が遮断される方向の移動を圧縮コイルばねで行う駆動態様を採用する場合、圧縮コイルばねに打ち勝つアクチュエータの圧力で移動部110(
図5参照)を押し出す。
したがって、内径測定の際にニードル5を動かしてコンタクト3を突出状態にする力(測定力)は、アクチュエータによる可変の圧力から圧縮コイルばねによるばね力を減じた値であることから、エア圧を調整することで、測定力の微調整が可能になる。
かかる効果は、アクチュエータを用いない構成の場合に奏するものではない。すなわち、アクチュエータを用いない構成の場合の測定力は圧縮コイルばねによるばね力になることから、測定力の微調整を行うことが困難であり、また、アクチュエータを用いない構成の場合には、コンタクト3が上側になる姿勢とコンタクト3が下側になる姿勢とで測定力も変化することから、取付姿勢についての制限が生じてしまう。アクチュエータを用いる上述の駆動態様では、そのような制限がないという効果も奏する。
【0051】
(変形例2)
別の駆動態様として、圧力伝達経路が形成される方向の移動を圧縮コイルばね、圧力伝達経路が遮断される方向の移動をアクチュエータで行うことが考えられる。かかる駆動態様の場合は、圧縮コイルばねのばね力で移動部110(
図5参照)を押し出す。
この場合の測定力は、圧縮コイルばねによるばね力からアクチュエータによる可変の圧力を減じた値であることから、エア圧を調整することで、測定力の微調整が可能になる。
付言すると、アクチュエータとしてのエアシリンダは、圧空駆動タイプの代わりに、真空駆動タイプを用いてもよい。すなわち、圧縮コイルばねに打ち勝つ真空エアの圧力で移動部110(
図5参照)を引き戻して力伝達経路を遮断させる。
【0052】
(変形例3)
別の駆動態様としては、接触式変位計12が単動式ではなく複動式のエアシリンダを備える構成の場合には、接触式変位計12に圧縮コイルばねを内蔵しなくてもすむ。すなわち、2つのポートを備え吸気と排気を入れ替えることでエアにより圧力伝達経路が形成される方向及び遮断される方向の往復動を実現する複動式のエアシリンダにより、ニードル5の駆動を行ってもよい。
【0053】
(変形例4)
また、接触式変位計12が単動式のエアシリンダではなく、不図示の電動モータまたはソレノイドを備える構成の場合には、別の駆動態様を採用できる。例えば、圧力伝達経路が形成される方向の移動を、接触式変位計12内蔵の電動モータまたはソレノイドで行い、かつ、圧力伝達経路を遮断する方向の移動を接触式変位計12に内蔵されている圧縮コイルばねで行ってもよい。
【0054】
(変形例5)
さらに、接触式変位計12が圧縮コイルばねを内蔵しない構成の場合には、圧力伝達経路が形成される方向及び圧力伝達経路を遮断する方向の移動を、接触式変位計12が内蔵する電動モータで行ってもよく、また、接触式変位計12が内蔵するソレノイドで行ってもよい。
上述のエアシリンダや電動モータ、ソレノイド等のアクチュエータは、アクチュエータの一例である。上述の圧縮コイルばねは、ばね部材の一例である。
【0055】
(変形例6)
図8は、ニードル5の駆動態様についての変形例6を説明する図であり、(a)はコンタクト3の埋没状態、(b)はコンタクト3の突出状態を示す。
変形例6に係る接触式変位計は、単動式のエアシリンダ81を内蔵し、圧縮コイルばねを内蔵しない。かかるエアシリンダ81は、内径測定ゲージ11のニードル5を圧力伝達経路が形成される方向に移動する。ニードル5を圧力伝達経路が遮断する方向に移動させるのは、接触式変位計12の外部に配設された複動式のエアシリンダ83である。
【0056】
図8(a)または(b)に示すように、変形例6では、内蔵のエアシリンダ81及び外付けのエアシリンダ83によりコンタクト3の埋没と突出の切り替えを行う。すなわち、圧力伝達経路が形成される方向のニードル5の駆動をエアシリンダ81で行い、また、圧力伝達経路が遮断される方向のニードル5の駆動を、別のエアシリンダ83で行っている。
【0057】
さらに説明すると、ニードル5には、接触式変位計12の外部に延びるレリーズ板82が連結されている。かかるレリーズ板82は、内蔵のエアシリンダ81によりニードル5と共に移動する。なお、変形例6では、レリーズ板82をニードル5に取り付けているが、これに限られず、接触式変位計12の例えば移動部110(
図7参照)に取り付けるようにしてもよい。
また、外付けのエアシリンダ83には、レリーズ板82と接触可能なレリーズ板84が連結されている。レリーズ板84は、外付けのエアシリンダ83により移動する。
【0058】
圧力伝達経路が遮断される方向にニードル5を移動する場合、外付けのエアシリンダ83を作動させる。レリーズ板84が外付けのエアシリンダ83により動くと、
図8(a)に示すように、レリーズ板84がレリーズ板82と接触し、その後は、レリーズ板82を押しながら動く。これにより、ニードル5は、圧力伝達経路が遮断される方向に移動する。
【0059】
圧力伝達経路が形成される方向にニードル5を移動して内径を測定する場合、外付けのエアシリンダ83をまず作動させて、
図8(b)に示すように、レリーズ板84をレリーズ板82から離し、干渉防止のためにレリーズ板84を退避させる。次に、内蔵のエアシリンダ81を作動させてレリーズ板82を移動する。これにより、ニードル5は、圧力伝達経路が形成される方向に移動する。
【0060】
上述のエアシリンダ81,83は、ユーザにより操作される操作部85と接続されている。操作部85は、ユーザの操作を受け付けてエアシリンダ81,83の作動を制御し、コンタクト3の埋没と突出との切り替えを行う。
【0061】
ここで、内蔵のエアシリンダ81は、第2のアクチュエータの一例であり、外付けのエアシリンダ83は、第1のアクチュエータの一例である。また、操作部85は、操作手段の一例である。変形例6を適用した内径測定器1は、内径測定装置の一例である。
なお、上述した本実施の形態の場合(
図5参照)、ユーザにより操作される操作部85は、エア供給器104(
図5参照)に接続される。
【0062】
[内径測定器1の応用]
上述の内径測定器1は、手動測定機に応用することができ、また、自動測定機に応用することができる。
かかる手動測定機は、先端部21が上側になるように取り付けられた内径測定器1(例えば
図7参照)と、加工済み部品10を載置する測定台71(例えば
図7参照)と、測定する高さを微調整するための不図示の上下機構部と、不図示のコントローラと、を備えている。
内径測定器1は、不図示のコントローラにより制御される。
【0063】
手動測定機における処理手順例を説明する。
図9は、手動測定機における処理手順例を説明するフローチャートである。
図9に示す処理手順例では、まずマスターゲージを用いた事前処理を行う(ステップ101)。かかる事前処理は、マスターゲージをセットし、エアONでマスターゲージを測定し、基準となる0点(ゼロ点)をプリセットした上で、マスターゲージに対する公差範囲を設定する。そして、エアOFFし、マスターゲージを取り出す。
【0064】
その後、測定台71に加工済み部品10を載置し(ステップ102)、内径測定ゲージ11の先端部21を加工済み部品10の測定対象孔10aに挿入させた後に(ステップ103)、エアONする(ステップ104)。先端部21を挿入させる際にはエアOFFであり、コンタクト3は埋没状態であり、進入後のエアONにより、コンタクト3は突出状態になり、測定可能になる。
【0065】
測定値の読み取りと判定を行い(ステップ105)、エアOFFした後に(ステップ106)、測定対象孔10aから先端部21を退出させ(ステップ107)、加工済み部品10の取り出す(ステップ108)。その後の処理は、別の加工済み部品10を測定するごとに、ステップ102~108を繰り返すことになる。
先端部21を退出させる際にはエアOFFであり、コンタクト3は埋没状態である。
【0066】
このように、先端部21を測定対象孔10aに対して挿抜する際、エアOFFにより圧力伝達経路が遮断されることでコンタクト3を先端部21内に埋没させており、挿抜時の抵抗により測定対象孔10aの内壁が損傷したりコンタクト3が摩耗したりすることを防止できる。
その一方で、測定時には、エアONにし、圧力伝達経路が形成されることで先端部21からコンタクト3が突出する状態にしている。
【0067】
上述の内径測定器1を応用した自動測定機は、内径測定器1(例えば
図7)を含む内径測定ユニットを搭載する。
自動測定機の構成例としては、図示を省略するが、測定対象孔10aが形成された加工済み部品10を前工程から受け渡す受け渡しステーションと、受け渡しステーションから加工済み部品10を測定台71に供給する供給ハンドと、測定台71に加工済み部品10があるか否かを確認するためのレーザー変位計と、測定台71の加工済み部品10を計測する内径測定ユニットと、内径測定ユニットによる計測結果を基に良品か否かを判断する判断部と、判断部により良品と判断された加工済み部品10を収納する良品収納トレーと、判断部により良品と判断されなかった加工済み部品10を回収するNG品回収ケースと、を備える。
自動測定機を用いることで、加工済み部品10の測定対象孔10aの内壁が損傷したり内径測定器1のコンタクト3が摩耗したりすることを防止しながら自動測定を実現することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…内径測定器、3…コンタクト、4…コンタクトホルダ、5…ニードル、10…加工済み部品、10a…測定対象孔、10b…内壁、11…内径測定ゲージ、12…接触式変位計、21…先端部、51…テーパー部、81,83…エアシリンダ、85…操作部、104…エア供給器、110…移動部