(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】環境形成装置、プログラム、及び送風ファンの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240520BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240520BHJP
【FI】
G01N17/00
F24F11/74
(21)【出願番号】P 2021081496
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】萩 慶佑
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-064250(JP,A)
【文献】特開2018-105786(JP,A)
【文献】国際公開第2020/065844(WO,A1)
【文献】特開2020-165670(JP,A)
【文献】特開平05-095063(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104020104(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107144037(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理の対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、
を備える環境形成装置であって、
前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、
を
さらに備え、
前記設定手段は、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、
前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後
に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する、環境形成装置。
【請求項2】
処理の対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、
を備える環境形成装置であって、
前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、
をさらに備え、
前記設定手段は、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、
前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する
、環境形成装置。
【請求項3】
処理の対象物が収容される環境形成室と、
前記環境形成室に連通する空調室と、
前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、
前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、
を備える環境形成装置であって、
前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、
をさらに備え、
前記設定手段は、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、
記録した複数の評価値のうち前記誤差又は
前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する
、環境形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度の変更後における前記環境形成装置の所定の動作パラメータと、当該動作パラメータに関する所定の基準値とに基づいて、当該変更の採用の可否を決定する、請求項1~
3のいずれか一つに記載の環境形成装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記各送風ファンの現在の回転速度を基準値として、当該基準値から回転速度の変更値を増減した値として、前記各送風ファンの次回の回転速度を設定する、請求項1~
4のいずれか一つに記載の環境形成装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記複数の測定値の全てが前記環境要素の所定の目標範囲内に収まることにより、前記設定処理を終了する、請求項1~
5のいずれか一つに記載の環境形成装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記設定処理の実行を開始してからの経過時間又は回転速度の変更回数が所定の上限値に到達することにより、前記設定処理を終了する、請求項1~
6のいずれか一つに記載の環境形成装置。
【請求項8】
前記複数の送風ファンの回転速度の下限値及び上限値が予め設定されており、
前記設定手段は、当該下限値以上かつ当該上限値以下の範囲内で、前記複数の送風ファンの回転速度を変更する、請求項1~
7のいずれか一つに記載の環境形成装置。
【請求項9】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、
前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、
前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後
に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する、プログラム。
【請求項10】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、
前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、
前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する、プログラム。
【請求項11】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、
前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、
記録した複数の評価値のうち前記誤差又は前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する、プログラム。
【請求項12】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、
前記設定手段が、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、
前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し
、各回の変更後
に前記
複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する、送風ファンの制御方法。
【請求項13】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、
前記設定手段が、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、
前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する、送風ファンの制御方法。
【請求項14】
処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、
前記設定手段が、
前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記設定手段は、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、
前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、
前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、
記録した複数の評価値のうち前記誤差又は前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する、送風ファンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境形成装置、プログラム、及び送風ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の被試験物の性能等を評価するための試験として、環境試験が知られている。環境試験では、試験室内に収容された被試験物に対して温度等の環境ストレスを印加することにより、被試験物の性能等が評価される。また、環境試験を実施するための装置として、環境試験装置が知られている。例えば下記特許文献1に示されるように、背景技術に係る環境試験装置は、断熱性筐体に囲まれた試験室と、試験室に連通する空調室と、空調室内に配置されたヒータ及びクーラ等の空調装置と、空調装置によって生成された空調空気を空調室から試験室に送出する送風機とを備えて構成されている。送風機としては、1台の送風ファンが、試験室の一つの側壁側に位置するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術に係る環境試験装置の中には、1台の送風ファンが側壁の略中央部に配置されているものがあり、このような環境試験装置においては、試験室の内部空間の周縁部に送出される送風量は、中央部に送出される送風量よりも相対的に小さくなる。そのため、周縁部と中央部とで試験室の内部空間に温度差が生じることがあった。また、試験室内に複数の被試験物が並べて収容される場合には、送風機から送出された空調空気は上流の被試験物に遮られて下流の被試験物に届きにくくなることがあり、送風経路の上流側と下流側とで試験室の内部空間に温度差が生じることがあった。このように、上記背景技術に係る環境試験装置によると、様々な要因によって、試験室の内部空間の温度分布に意図しないばらつきが生じる場合があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、環境形成室内における環境要素のばらつきを解消又は低減することが可能な、環境形成装置、プログラム、及び送風ファンの制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る環境形成装置は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、を備える環境形成装置であって、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、をさらに備え、前記設定手段は、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する。
【0007】
本態様によれば、設定処理において、設定手段は、複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、複数の測定手段から各回の変更後の複数の測定値を取得する。その結果に基づいて設定手段が処理期間における各送風ファンの回転速度を適切に設定することにより、環境形成室内における環境要素のばらつきを解消又は低減することが可能となる。
【0009】
本態様によれば、設定手段が複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値をランダムに決定することにより、各送風ファンの回転速度に関する大域的最適解を、簡易なアルゴリズムによって探索することが可能となる。
【0010】
本発明の一態様に係る環境形成装置は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、を備える環境形成装置であって、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、をさらに備え、前記設定手段は、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
【0011】
本態様によれば、回転速度の変更によって誤差又はばらつきが小さくなれば当該変更を採用し、変更によって誤差又はばらつきが小さくならなければ当該変更を採用しないという設定処理を設定手段が繰り返し実行することにより、設定処理が進行するにつれて各送風ファンの回転速度は最適値に向けて徐々に変更される。その結果、各送風ファンの回転速度の最適値が早期に発見される可能性が高まる。
【0012】
本発明の一態様に係る環境形成装置は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、を備える環境形成装置であって、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、をさらに備え、前記設定手段は、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、記録した複数の評価値のうち前記誤差又は前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
【0013】
本態様によれば、複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の評価値を記録するという設定処理を設定手段が実行することにより、設定処理が局所的最適解の探索に陥る事態を回避できる。その結果、各送風ファンの回転速度に関する大域的最適解が発見される可能性が高まる。
【0014】
上記態様において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度の変更後における前記環境形成装置の所定の動作パラメータと、当該動作パラメータに関する所定の基準値とに基づいて、当該変更の採用の可否を決定する。
【0015】
本態様によれば、変更後の送風ファンの回転速度が、環境要素のばらつきを低減する観点からは好適なものであっても、所定の動作パラメータに関する基準値を満たさない場合には当該変更を採用しないことにより、環境形成装置の動作が強制停止される等の事態を回避できる。
【0016】
上記態様において、前記設定手段は、前記各送風ファンの現在の回転速度を基準値として、当該基準値から回転速度の変更値を増減した値として、前記各送風ファンの次回の回転速度を設定する。
【0017】
本態様によれば、現在の回転速度を基準値として当該基準値から変更値を増減するという設定処理を設定手段が繰り返し実行することにより、設定処理が進行するにつれて各送風ファンの回転速度は最適値に向けて徐々に変更される。その結果、各送風ファンの回転速度の最適値が早期に発見される可能性が高まる。
【0018】
上記態様において、前記設定手段は、前記複数の測定値の全てが前記環境要素の所定の目標範囲内に収まることにより、前記設定処理を終了する。
【0019】
本態様によれば、複数の測定値の全てが目標範囲内に収まれば設定手段が設定処理を終了することにより、処理期間を早期に開始することができる。
【0020】
上記態様において、前記設定手段は、前記設定処理の実行を開始してからの経過時間又は回転速度の変更回数が所定の上限値に到達することにより、前記設定処理を終了する。
【0021】
本態様によれば、経過時間又は回転速度の変更回数が上限値に到達すれば設定手段が設定処理を終了することにより、処理期間の開始が過度に遅延する事態を回避できる。
【0022】
上記態様において、前記複数の送風ファンの回転速度の下限値及び上限値が予め設定されており、前記設定手段は、当該下限値以上かつ当該上限値以下の範囲内で、前記複数の送風ファンの回転速度を変更する。
【0023】
本態様によれば、設定処理において設定手段が下限値以上かつ上限値以下の範囲内で回転速度を変更することにより、回転速度が過度な低速又は過度な高速に設定される等の事態を回避できる。
【0024】
本発明の一態様に係るプログラムは、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する。
また、本発明の一態様に係るプログラムは、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
また、本発明の一態様に係るプログラムは、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、を備える環境形成装置を制御するコンピュータを設定手段として機能させるためのプログラムであって、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能であり、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、記録した複数の評価値のうち前記誤差又は前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
【0025】
本態様によれば、設定処理において、設定手段は、複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、複数の測定手段から各回の変更後の複数の測定値を取得する。その結果に基づいて設定手段が処理期間における各送風ファンの回転速度を適切に設定することにより、環境形成室内における環境要素のばらつきを解消又は低減することが可能となる。
【0026】
本発明の一態様に係る送風ファンの制御方法は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、前記設定手段が、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記複数の送風ファンの回転速度を変更する際の回転速度の変更値を、ランダムに決定する。
また、本発明の一態様に係る送風ファンの制御方法は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、前記設定手段が、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度の変更後の前記評価値が変更前の前記評価値よりも前記誤差又は前記ばらつきが小さくなる値であれば当該変更を採用し、変更後の前記評価値が変更前の前記評価値と同じ又は前記誤差又は前記ばらつきが大きくなる値であれば当該変更を採用せず、前記設定期間において最終的に設定された前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
また、本発明の一態様に係る送風ファンの制御方法は、処理の対象物が収容される環境形成室と、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定して複数の測定値を出力する複数の測定手段と、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備える環境形成装置における送風ファンの制御方法であって、前記設定手段が、前記環境形成装置の運転開始後であって前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に前記複数の測定手段から前記複数の測定値を取得し、前記環境要素の目標値と前記複数の測定値との誤差又は測定値のばらつきに応じて変動する評価値を算出し、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後の前記評価値を記録し、記録した複数の評価値のうち前記誤差又は前記ばらつきが最小である評価値が得られた前記各送風ファンの回転速度を、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度として設定する。
【0027】
本態様によれば、設定処理において、設定手段は、複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、複数の測定手段から各回の変更後の複数の測定値を取得する。その結果に基づいて設定手段が処理期間における各送風ファンの回転速度を適切に設定することにより、環境形成室内における環境要素のばらつきを解消又は低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、環境形成室内における環境要素のばらつきを解消又は低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】複数の送風ファンの配置レイアウトを模式的に示す図である。
【
図3】複数の直流モータの配置レイアウトを模式的に示す図である。
【
図4】複数の温度センサの配置レイアウトを模式的に示す図である。
【
図5】複数の温度センサの配置レイアウトを模式的に示す図である。
【
図6】環境試験装置が備える制御部及び記憶部を示す図である。
【
図7】環境試験装置による環境試験の流れを簡略化して示すタイミングチャートである。
【
図8】制御部が実行する設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図10】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図11】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図12】変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0031】
<装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。本実施の形態の例において、環境形成装置は、対象物である被試験物6に対して所定の温度ストレスを印加することによって被試験物6の性能等を評価するための環境試験装置1として構成されている。但し、環境試験装置1は、加湿器が追加実装されることによって、被試験物6に対して所定の温度ストレス及び湿度ストレスを印加する温湿度試験装置として構成されても良い。また、環境試験装置1は、被試験物6に対して所定の温度ストレス及び電圧ストレスを印加することによって初期不良品をスクリーニングするためのバーンイン試験装置として構成されても良い。被試験物6は、例えば、回路基板等の電子部品である。なお、以下の説明では、
図1に示したように、水平方向に沿って延在するX軸と、鉛直方向に沿って延在するY軸と、X軸及びY軸の双方に直交するZ軸とを有する直交座標系によって、方向を規定するものとする。
図1に示した直交座標系には、X軸の延在方向と反対の方向に延在するW軸を示している。
【0032】
環境試験装置1は、断熱性の筐体2によって囲まれた試験室3(環境形成室)及び空調室4を備えている。試験室3は、互いに対向する第1壁面7及び第2壁面9を有している。空調室4は、第1壁面7と筐体2の内面2Aとによって区画される第1空間部41と、第2壁面9と筐体2の内面2Bとによって区画される第2空間部42と、第1空間部41と第2空間部42とを接続する接続空間部43と、を有している。第1壁面7には複数の通風口8が形成されており、第2壁面9には複数の通風口10が形成されている。試験室3と空調室4とは、これら複数の通風口8,10を介して互いに連通している。なお、複数の通風口8が形成された第1壁面7は省略されても良く、その場合は、筐体2の内面2Aが試験室3の第1壁面となる。また、第1壁面7又は内面2Aは、外部から試験室3にアクセスするための扉の内面であっても良く、その場合は、扉の内面が試験室3の第1壁面となる。
【0033】
試験室3内には、棚板5が設置されている。棚板5は、複数の棒状部材が交差配列された格子状の外観形状を有している。被試験物6は、棚板5上に載置されている。
図1に示した例では、棚板5が試験室3内において複数段に設置され、各棚板5上に複数の被試験物6が並べて載置されることにより、試験室3の内部空間の中央部に複数の被試験物6が収容されている。但し、試験室3内に設置される棚板5の段数は1段以上であれば良く、また、各棚板5上に載置される被試験物6の個数は1個以上であれば良い。また、棚板5を有さず、被試験物6を試験室3の床面に直接載置するものであっても良い。
【0034】
空調室4の接続空間部43内には、冷却装置としてのクーラ11と、加熱装置としてのヒータ12とが配置されている。クーラ11及びヒータ12は、空調手段として機能し、試験室3から第1壁面7の通風口8を介して空調室4に流入した空気を冷却又は加熱することによって、所望の温度に調整された空調空気を生成する。後述する制御部30によって、クーラ11及びヒータ12の空調温度が制御される。
【0035】
また、試験室3内には、後述する複数の温度センサ17,18が配置されている。
【0036】
試験室3の第2壁面9側には、複数の送風ファン13が配置されている。送風ファン13は、直流モータ14と、直流モータ14の回転軸15の先端部に固定された複数の羽根と、を有する軸流ファンとして構成されている。直流モータ14は、筐体2の外部に配置されている。回転軸15は、筐体2の外壁を貫通し、空調室4内を試験室3に向かってW方向に沿って延在している。回転軸15の先端部は、第2壁面9の通風口10の中心と同心位置に配置されている。送風ファン13の羽根は、通風口10と同一面内に配置されている。直流モータ14が駆動されて送風ファン13が回転すると、空調空気が空調室4から通風口10を介して試験室3内に送出される。送風ファン13の羽根はY-Z平面内で回転するため、送風ファン13によって試験室3内に送出された空調空気は、
図1中の太い直線矢印で示すように概ねW方向に向かって進行し、試験室3内を通過した後、第1壁面7の通風口8から空調室4に排気される。
【0037】
図2は、複数の送風ファン13の配置レイアウトを模式的に示す図であり、
図1に示したラインII-IIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。本実施の形態の例において、環境試験装置1は、Y方向及びZ方向の各方向に沿って2個の送風ファン13が互いに離間して並べられ、2行×2列のマトリクス状に配列された、合計4個の送風ファン131~134を備えている。送風ファン131~134は、第2壁面9の全領域に跨って分散配置されている。後述する制御部30によって、送風ファン131~134の各々の回転速度が個別に制御される。
【0038】
また、第2壁面9には、複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の通風口10が形成されている。本実施の形態の例では、2行×2列のマトリクス状に合計4個の円形の通風口101~104が形成されている。各通風口101~104は、その円の中心が各送風ファン131~134の回転軸15と同心となる位置に形成されている。
【0039】
図3は、複数の直流モータ14の配置レイアウトを模式的に示す図であり、
図1に示したラインIII-IIIに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。本実施の形態の例では、2行×2列のマトリクス状に合計4個の直流モータ141~144が配置されている。
【0040】
図1に示したように、複数の温度センサ17が、試験室3の第1壁面7に近接して配置されている。第1壁面7は送風ファン13による空調空気の送風経路の最下流に位置しているため、温度センサ17によって当該最下流における試験室3内の空気の温度(環境要素)が測定される。
【0041】
図4は、複数の温度センサ17の配置レイアウトを模式的に示す図であり、
図1に示したラインIV-IVに沿った位置をW方向に眺めた平面図に相当する。複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の温度センサ17が配置されている。本実施の形態の例では、2行×2列のマトリクス状に合計4個の温度センサ171~174が配置されている。各温度センサ171~174から出力された温度測定値を示す温度データは、後述する制御部30に入力される。温度センサ171~174は、複数の棒状部材が交差配列された格子状のフレーム20の各交点に配置されている。このフレーム20は、第1壁面7に近接して試験室3の内壁に固定される。また、
図1に示したように、各温度センサ171~174は、対応する送風ファン131~134の回転軸15の延長線上に配置されている。
【0042】
また、
図1に示したように、複数の温度センサ18が、試験室3の第2壁面9に近接して配置されている。温度センサ18は、送風ファン13に近接して配置されている。第2壁面9は送風ファン13による空調空気の送風経路の最上流に位置しているため、温度センサ18によって当該最上流における試験室3内の空気の温度が測定される。
【0043】
図5は、複数の温度センサ18の配置レイアウトを模式的に示す図であり、
図1に示したラインV-Vに沿った位置をX方向に眺めた平面図に相当する。複数の送風ファン13と同数かつ同一のレイアウトで複数の温度センサ18が配置されている。本実施の形態の例では、2行×2列のマトリクス状に合計4個の温度センサ181~184が配置されている。各温度センサ181~184から出力された温度測定値を示す温度データは、後述する制御部30に入力される。温度センサ181~184は、複数の棒状部材が交差配列された格子状のフレーム21の各交点に配置されている。このフレーム21は、第2壁面9に近接して試験室3の内壁に固定される。また、
図1に示したように、各温度センサ181~184は、対応する送風ファン131~134の回転軸15の延長線上に配置されている。
【0044】
図6は、環境試験装置1が備える制御部30及び記憶部31を示す図である。制御部30はCPU等を含み、記憶部31はHDD、SSD、又は半導体メモリ等を含む。記憶部31には、環境試験装置1を制御するコンピュータとしてのCPUを制御部30(設定手段)として機能させるための、所定のプログラム32が記憶されている。制御部30及び記憶部31は、環境試験装置1内に搭載されていても良いし、環境試験装置1に外部接続されていても良い。制御部30には、温度センサ171~174から温度データS11~S14がそれぞれ入力される。また、制御部30には、温度センサ181~184から温度データS21~S24がそれぞれ入力される。制御部30は、駆動信号S3によってクーラ11の駆動を制御する。制御部30は、駆動信号S4によってヒータ12の駆動を制御する。制御部30は、駆動信号S51~S54によって直流モータ141~144の出力を個別に制御することにより、送風ファン131~134の回転速度を個別に制御する。
【0045】
<装置の動作>
図7は、環境試験装置1による環境試験の流れを簡略化して示すタイミングチャートである。作業者は、時刻T0において被試験物6を試験室3内に収容し、その後、時刻T1においてボタン操作等によって環境試験装置1の運転を開始させる。制御部30は、環境試験が実行される試験期間P2(時刻T2~T3)より前の設定期間P1(時刻T1~T2)において、試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度を設定するための設定処理を実行する。一例として、環境試験は試験室3内の設定温度が一定の恒温試験であり、試験期間P2は数十~数千時間であり、設定期間P1の上限時間は数十分~数時間である。但し、試験期間P2及び設定期間P1の長さは上記の例に限られない。また、環境試験は、設定温度が一定の恒温試験に限られず、複数の設定温度を含む試験や、高温期間と低温期間とが交互に繰り返されるサイクル試験であっても良い。
【0046】
図8は、制御部30が実行する設定処理の流れを示すフローチャートである。初期状態では、空調手段(クーラ11及びヒータ12)並びに送風ファン13は、いずれも駆動が停止されている。
【0047】
時刻T1において環境試験装置1の運転開始命令が入力されると、ステップSP101において制御部30は、各種パラメータを取得する。各種パラメータには、試験室3の目標設定温度、当該目標設定温度に対して誤差が許容される許容温度範囲(上限温度及び下限温度)、設定期間P1の上限時間、及び、送風ファン131~134の回転速度の上限値及び下限値が含まれる。回転速度の上限値及び下限値は、上記空調手段における熱交換の必要量又は必要効率等に基づいて設定される。これら各種パラメータは、予め入力されて、その設定情報が記憶部31に記憶されている。
【0048】
次にステップSP102において制御部30は、駆動信号S51~S54によって直流モータ141~144を駆動することにより、初期値の回転速度で送風ファン131~134の駆動を開始する。回転速度の初期値は、送風ファン131~134毎に予め設定されて、その設定情報が記憶部31に記憶されている。
【0049】
次にステップSP103において制御部30は、目標設定温度に基づき、駆動信号S3,S4によってクーラ11又はヒータ12の駆動を開始する。
【0050】
試験室3内の温度が安定するための所定時間(例えば数十秒~数分)だけ待機した後、次にステップSP104において制御部30は、温度センサ171~174,181~184から温度データS11~S14,S21~S24を取得する。
【0051】
次にステップSP105において制御部30は、ステップSP104で取得した温度データS11~S14,S21~S24の中に、目標設定温度に対する許容温度範囲を逸脱するものが存在するか否かを判定する。
【0052】
全ての温度データS11~S14,S21~S24が許容温度範囲内に収まっている場合(ステップSP105:NO)は、制御部30は、各送風ファン131~134の回転速度の上記初期値を、試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度として設定し、設定処理を終了する。
【0053】
温度データS11~S14,S21~S24の中に許容温度範囲から逸脱するものが一つでも存在する場合(ステップSP105:YES)は、次にステップSP106において制御部30は、ステップSP104で取得した温度データS11~S14,S21~S24に基づいて、所定の評価値を算出する。この評価値は、目標設定温度と複数の温度データS11~S14,S21~S24との誤差が大きいほど値が大きくなる誤差指標である。評価値としては、例えば、目標値と複数の測定データの代表値(最大値又は最小値)との差、目標値と複数の測定データの平均値との差、差分絶対値の総和、二乗誤差の総和、又は平均二乗誤差を用いることができる。また、評価値としては、複数の測定データのばらつきの指標である、最大値と最小値との差、平均値と代表値(最大値又は最小値)との差、差分絶対値の総和、分散、又は標準偏差を用いることもできる。
【0054】
次にステップSP107において制御部30は、送風ファン131~134の回転速度を、回転速度の下限値以上かつ上限値以下の範囲内で変更する。制御部30は、各送風ファン131~134の現在の回転速度(変更前の回転速度)を基準値として用い、各基準値から送風ファン131~134毎のランダムな変更値を増減した値を、変更後の回転速度として送風ファン131~134毎に設定する。変更値は、例えば、プラスマイナス数百(rpm)の範囲内から選択されるランダムな値である。
【0055】
試験室3内の温度が安定するための上記所定時間だけ待機した後、次にステップSP108において制御部30は、温度センサ171~174,181~184から温度データS11~S14,S21~S24を取得する。
【0056】
次にステップSP109において制御部30は、ステップSP108で取得した温度データS11~S14,S21~S24の中に、目標設定温度に対する許容温度範囲を逸脱するものが存在するか否かを判定する。
【0057】
全ての温度データS11~S14,S21~S24が許容温度範囲内に収まっている場合(ステップSP109:NO)は、制御部30は、ステップSP107で設定した変更後の回転速度を、試験期間P2における送風ファン131~134の回転速度として設定し、設定処理を終了する。
【0058】
温度データS11~S14,S21~S24の中に許容温度範囲から逸脱するものが一つでも存在する場合(ステップSP109:YES)は、次にステップSP110において制御部30は、ステップSP108で取得した温度データS11~S14,S21~S24に基づいて上記と同様の評価値を算出する。
【0059】
次にステップSP111において制御部30は、ステップSP106で算出した評価値(変更前の評価値)と、ステップSP110で算出した評価値(変更後の評価値)とを比較することによって、試験室3内の温度のばらつきが改善したか否かを判定する。
【0060】
変更後の評価値が変更前の評価値以上である場合(ステップSP111:NO)は、送風ファン131~134の回転速度を変更しても試験室3内の温度のばらつきは改善していない。この場合、次にステップSP112において制御部30は、ステップSP107で変更した回転速度を採用しないことにより、各送風ファン131~134の回転速度を変更前の値に戻す。
【0061】
一方、変更後の評価値が変更前の評価値未満である場合(ステップSP111:YES)は、送風ファン131~134の回転速度の変更によって試験室3内の温度のばらつきは改善している。この場合、制御部30は、ステップSP107で変更した回転速度を採用することにより、各送風ファン131~134の回転速度として変更後の値を維持する。
【0062】
次にステップSP113において制御部30は、設定処理の実行を開始した時点(時刻T1)からの経過時間が設定期間P1の上限時間に到達したか否かを判定する。
【0063】
経過時間が上限時間に到達していない場合(ステップSP113:NO)は、制御部30はステップSP107以降の処理を繰り返し実行する。以降のステップSP111では、制御部30は、採用された前回のステップSP110で算出した評価値(変更前の評価値)と、変更後の今回のステップSP110で算出した評価値(変更後の評価値)とを比較することによって、試験室3内の温度のばらつきが改善したか否かを判定する。
【0064】
経過時間が上限時間に到達している場合(ステップSP113:YES)は、制御部30は、現在設定されている各送風ファン131~134の回転速度(つまり設定期間P1において最終的に設定されている回転速度)を、試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度として設定し、設定処理を終了する。
【0065】
なお、評価値としては、誤差が大きいほど値が小さくなる評価値を用いても良い。この場合、変更後の評価値が変更前の評価値以下である場合(ステップSP111:NOに相当)は、送風ファン131~134の回転速度を変更しても試験室3内の温度のばらつきは改善していない。この場合、次にステップSP112において制御部30は、ステップSP107で変更した回転速度を採用しないことにより、各送風ファン131~134の回転速度を変更前の値に戻す。一方、変更後の評価値が変更前の評価値超である場合(ステップSP111:YESに相当)は、送風ファン131~134の回転速度の変更によって試験室3内の温度のばらつきは改善している。この場合、制御部30は、ステップSP107で変更した回転速度を採用することにより、各送風ファン131~134の回転速度として変更後の値を維持する。
【0066】
また、回転速度の変更前の温度データと変更後の温度データとを任意の記憶手段に一旦記憶し、制御部30は、変更前の温度データと変更後の温度データとを当該記憶手段から取得し、両者を比較して良い評価値が得られた方の回転速度を採用する構成としても良い。さらに、回転速度の変更毎に測定された温度データを任意の記憶手段に一旦記憶し、制御部30は、時系列で3つ以上の温度データを当該記憶手段から一括して取得し、それらを比較して最も良い評価値が得られた回転速度を採用する構成としても良い。
【0067】
<作用効果>
本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、設定処理において、制御部30(設定手段)は、複数の送風ファン131~134の回転速度を複数回変更し、複数の温度センサ171~174,181~184(測定手段)から各回の変更後の複数の温度データS11~S14,S21~S24(測定値)を取得する。その結果に基づいて、制御部30が試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度を適切に設定することにより、試験室3(環境形成室)内における温度(環境要素)のばらつきを解消又は低減することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、制御部30が複数の送風ファン131~134の回転速度を変更する際の回転速度の変更値をランダムに決定することにより、各送風ファン131~134の回転速度に関する大域的最適解を、簡易なアルゴリズムによって探索することが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、回転速度の変更によって評価値が小さくなれば当該変更を採用し、変更によって評価値が小さくならなければ当該変更を採用しない、という設定処理を制御部30が繰り返し実行することにより、設定処理が進行するにつれて各送風ファンの回転速度は最適値に向けて徐々に変更される。その結果、各送風ファンの回転速度の最適値が早期に発見される可能性が高まる。
【0070】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、現在の回転速度を基準値として当該基準値から変更値を増減するという設定処理を制御部30が繰り返し実行することにより、設定処理が進行するにつれて各送風ファン131~134の回転速度は最適値に向けて徐々に変更される。その結果、各送風ファン131~134の回転速度の最適値が早期に発見される可能性が高まる。
【0071】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、複数の温度データS11~S14,S21~S24の全てが目標範囲内に収まれば制御部30が設定処理を終了することにより、試験期間P2を早期に開始することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る環境試験装置1によれば、設定期間P1の経過時間が上限時間に到達すれば制御部30が設定処理を終了することにより、試験期間P2の開始が過度に遅延する事態を回避できる。
【0073】
以下、上記実施の形態に対する様々な変形例について説明する。これらの変形例は、適宜に組み合わせて適用することが可能である。
【0074】
<第1変形例>
上記実施の形態では、制御部30は、回転速度の変更後の評価値が変更前の評価値未満であれば当該変更を採用し、変更後の評価値が変更前の評価値以上であれば当該変更を採用せず、設定期間P1において最終的に設定された回転速度を試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度として設定した。
【0075】
この例に限らず、制御部30は、送風ファン131~134の回転速度を複数回変更し、各回の変更後に算出した評価値を記憶部31(又は制御部30の内部メモリ)に記録しておき、記録した複数の評価値のうち最小の評価値が得られた各送風ファン131~134の回転速度を、試験期間P2における各送風ファン131~134の回転速度として設定しても良い。
【0076】
本変形例によれば、送風ファン131~134の回転速度を複数回変更し、各回の変更後の評価値を記録するという設定処理を制御部30が実行することにより、設定処理が局所的最適解の探索に陥る事態を回避できる。その結果、各送風ファン131~134の回転速度に関する大域的最適解が発見される可能性が高まる。
【0077】
<第2変形例>
上記実施の形態では、制御部30は、送風ファン131~134の回転速度の変更によって試験室3内の温度のばらつきが改善したことを条件として、変更後の回転速度を採用した。
【0078】
これに加えて、制御部30は、回転速度を変更した後の環境試験装置1の動作状態が所定の保安基準を満たしていることを追加の条件として、変更後の回転速度を採用しても良い。例えば、空調手段が備える冷凍回路が有する吐出管の温度及び圧力に関して、環境試験装置1の動作を強制停止させる限界値よりも若干緩い保安基準値が予め設定されて、その設定情報が記憶部31に記憶されている。制御部30は、送風ファン131~134の回転速度の変更後に計測された吐出管の温度値及び圧力値が、当該保安基準値を満たしていることを追加の条件として、変更後の回転速度を採用する。
【0079】
本変形例によれば、変更後の送風ファン131~134の回転速度が、温度のばらつきを低減する観点からは好適なものであっても、保安基準等の所定の動作パラメータに関する基準値を満たさない場合には当該変更を採用しないことにより、環境試験装置1の動作が強制停止される等の事態を回避できる。
【0080】
<第3変形例>
上記実施の形態では、制御部30は、設定処理の実行を開始してからの経過時間が所定の上限時間に到達することによって、設定処理を終了した。この例に限らず、制御部30は、設定処理の実行を開始してからの回転速度の変更回数(ステップSP107の実行回数)が所定の上限回数に到達することによって、設定処理を終了しても良い。上限回数は、例えば数十回~数百回に設定され、その設定情報が記憶部31に記憶されている。
【0081】
上記実施の形態では、制御部30は、環境要素として温度を用いた。この例に限らず、制御部30は、湿度又は風速等の他の環境要素を用いても良い。
【0082】
上記実施の形態では、制御部30は、回転速度の変更後に取得した全ての温度データS11~S14,S21~S24が許容温度範囲内に収まっていることを条件として、設定処理を終了した。この例に限らず、制御部30は、回転速度の変更後に算出した評価値が所定のしきい値以下であることを条件として、設定処理を終了しても良い。
【0083】
上記実施の形態では、送風ファン131~134毎に回転速度の初期値が個別に設定された。この例に限らず、全ての送風ファン131~134に共通する初期値が設定されていても良い。
【0084】
上記実施の形態では、制御部30は、各送風ファン131~134の現在の回転速度を基準値として用いた。この例に限らず、制御部30は、各送風ファン131~134の回転速度の初期値を基準値として用いても良い。
【0085】
上記実施の形態では、制御部30は、基準値から変更値を増減した値を、変更後の回転速度として設定した。この例に限らず、制御部30は、回転速度の下限値以上かつ上限値以下の範囲内からランダムに選択した回転速度を、変更後の回転速度として設定しても良い。
【0086】
他の変形例として、温度センサ17及び温度センサ18の一方のみが試験室3内に配置されていても良い。また、温度センサ17,18に加えて他の温度センサが試験室3内の所定箇所(例えば試験室3の中央部)に配置されていても良い。また、温度センサ17,18は、対応する送風ファン13の回転軸15の延長線上からずれた位置に配置されていても良い。また、空調室4が試験室3に隣接しない箇所に配置され、両者が配管等によって互いに接続された構成であっても良い。また、送風ファン13が空調室4から試験室3に空調空気を吹き出す構成に代えて、送風ファン13が試験室3から空調室4に空調空気を吸い込む構成であっても良い。
【0087】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
<第4変形例>
上記実施の形態では、環境試験装置1は2行×2列のマトリクス状に配列された合計4個の送風ファン131~134を備えていたが、複数の送風ファン13の配置レイアウトはこの例に限定されない。環境試験装置1は、少なくとも2以上の送風ファン13を備えていれば良く、例えば、3行×3列のマトリクス状に配列された合計9個の送風ファン13を備えていても良いし、4行×4列のマトリクス状に配列された合計16個の送風ファン13を備えていても良い。また、各行に属する複数の送風ファン13の個数と各列に属する複数の送風ファン13の個数とが、互いに異なっていても良い。さらに、複数の送風ファン13が必ずしもマトリクス状に配置されている必要はなく、また、複数の送風ファン13のサイズが全て同一である必要もない。本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
<第5変形例>
上記実施の形態では、環境形成装置が環境試験装置1として構成されている例について述べたが、この例には限られない。環境形成装置は、対象物であるワークに対して熱処理を施すために所定の高温環境を形成する熱処理装置として構成されても良い。また、環境形成装置は、対象物である食品を加熱するために所定の高温環境を形成する調理装置として構成されても良い。本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
<第6変形例>
図9,10は、第6変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
図9に示すように、送風ファン13の羽根は、通風口10よりもX方向(第2空間部42側)に配置されていても良い。また、
図10に示すように、送風ファン13の羽根は、通風口10よりもW方向(試験室3側)に配置されていても良い。本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
<第7変形例>
図11,12は、第7変形例に係る環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
図11に示すように、試験室3が第1壁面7を有さず、空調室4が第1空間部41及び接続空間部43を有さず、第2壁面9の下部に通風口8Aが形成され、クーラ11及びヒータ12が空調室4の下部に配置される構成であっても良い。また、
図12に示すように、試験室3が第1壁面7を有さず、空調室4が第1空間部41及び接続空間部43を有さず、第2壁面9の上部及び下部に通風口8B,8Cがそれぞれ形成され、クーラ11及びヒータ12が空調室4の上部及び下部にそれぞれ配置される構成であっても良い。本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
<第8変形例>
クーラ11及びヒータ12等を含む空調手段並びに送風ファン13等を含む送風手段は、試験室3に対して後付けで取り付け可能な環境形成ユニットとして構成されても良い。
【0093】
この場合、環境形成ユニットは、処理の対象物が収容される環境形成室に接続される環境形成ユニットであって、前記環境形成室に連通する空調室と、前記空調室内に配置され、空気の環境要素を調節することによって空調空気を生成する空調手段と、前記空調室と前記環境形成室との間で前記空調空気を循環させる複数の送風ファンと、前記複数の送風ファンの各送風ファンの回転速度を個別に設定可能な設定手段と、を備え、前記設定手段は、前記処理が実行される処理期間より前の設定期間において、前記処理期間における前記各送風ファンの回転速度を設定するための設定処理を実行し、前記設定処理において、前記設定手段は、前記複数の送風ファンの回転速度を複数回変更し、各回の変更後に、環境形成室内の複数の箇所の前記環境要素を測定する複数の測定手段から複数の測定値を取得する。
【0094】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
<第9変形例>
上記実施の形態では、環境試験装置1の運転を開始させる際に、各送風ファン131~134の回転速度を設定するための設定処理を実行する構成を述べたが、これに限定されない。
【0096】
設定処理は、試験実行中に被試験物6の出し入れのために試験室3の扉が開けられたこと等によって試験室3の環境が変化した場合に、試験室3の環境を復帰させる際に実行されてもよい。この場合は、環境が復帰されて試験が実行される期間が試験期間P2となり、この試験期間P2の前の設定処理期間が設定期間P1となる。本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 環境試験装置
3 試験室
4 空調室
6 被試験物
7 第1壁面
9 第2壁面
11 クーラ
12 ヒータ
13,131~134 送風ファン
17,171~174,18,181~184 温度センサ
30 制御部