IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

特許7490623コントローラ無線装置、制御対象無線装置、制御システム、制御方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】コントローラ無線装置、制御対象無線装置、制御システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/02 20090101AFI20240520BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20240520BHJP
   H04W 40/22 20090101ALI20240520BHJP
【FI】
H04W28/02
H04W88/04
H04W40/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021151521
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043739
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 寿久
(72)【発明者】
【氏名】旦代 智哉
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-068203(JP,A)
【文献】特開2015-167268(JP,A)
【文献】特開2020-102833(JP,A)
【文献】特開2020-198542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04L7/00-7/10
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御対象各々に対し制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を生成する転送要否情報生成部と、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成する制御部と、
前記制御情報を第1無線信号として送信し、前記制御対象の各々から第2無線信号を受信する無線部と
前記制御対象ごとの前記制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成する転送期限情報生成部と、
前記無線部が受信する前記第2無線信号から前記制御対象の各々の状態を示す状態情報を抽出する状態情報抽出部と、を備え、
前記制御信号生成部は、前記状態情報に基づいて、前記制御信号を生成し、
前記転送要否情報生成部は、前記一の制御対象の状態情報に基づいて、前記転送要否情報を生成し、
前記制御部は、前記制御対象ごとの前記転送期限情報を前記制御情報に含める、コントローラ無線装置。
【請求項2】
前記他の制御対象を示す転送ID情報を生成する転送ID情報生成部をさらに備え、
前記制御部は、前記一の制御対象宛ての制御信号と前記転送IDとを、前記制御情報に含める請求項1に記載のコントローラ無線装置。
【請求項3】
前記転送要否情報生成部は、前記一の制御対象に対する制御目標値と前記一の制御対象から受信した状態情報とに基づいて、前記一の制御対象宛ての制御信号の転送要否を決定する請求項1又は請求項2に記載コントローラ無線装置。
【請求項4】
複数の制御対象の各々に対し制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を生成する転送要否情報生成部と、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成する制御部と、
前記制御情報を第1無線信号として送信し、前記制御対象の各々から第2無線信号を受信する無線部と、
前記制御対象ごとの前記制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成する転送期限情報生成部と、
前記無線部が前記第2無線信号を受信している時間の割合であるエア支配率を測定するエア支配率測定部と、を備え、
前記制御部は、前記制御対象ごとの前記転送期限情報を前記制御情報に含め、
前記転送期限情報生成部は、前記エア支配率と前記転送要否情報生成部によって決定された制御信号の転送が必要な制御対象の個数とから、転送期限を決定する、コントローラ無線装置。
【請求項5】
複数の制御対象の各々に対し制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を生成する転送要否情報生成部と、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成する制御部と、
前記制御情報を無線信号として送信する無線部と、
前記複数の制御対象に対して生成した複数の制御情報のうち、1つまたは複数の制御情報を上位層データとして含めて送信信号を生成する送信信号生成部と、を備え、
前記無線部は、前記送信信号に対して、下位層のヘッダを付加して、マルチキャストまたはブロードキャストで無線信号として送信する、コントローラ無線装置。
【請求項6】
第1無線信号を受信する無線部と、前記第1無線信号に含まれる制御信号に基づいて制御対象を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1無線信号に含まれる転送要否情報に基づいて、前記第1無線信号に含まれる他の制御対象への制御信号である他宛制御信号を前記無線部に送信させ、
前記制御部は、さらに前記他宛制御信号に対する転送期限情報に基づいて、前記他宛制御信号を前記無線部に送信させ、
前記制御部は、前記制御対象から状態情報を得て、
前記状態情報を含めて送信信号として生成する第1送信信号生成部と、
前記状態情報と前記他宛制御信号とを含めて送信信号として生成する第2送信信号生成部と、
前記第1送信信号生成部が生成した送信信号をバッファする第1バッファ部と、
前記第2送信信号生成部が生成した送信信号をバッファする第2バッファ部と、
前記第1バッファ部と前記第2バッファ部の一方を選択する送信バッファ選択部と、を備え、
前記送信バッファ選択部は、前記無線部が第2無線信号を送信するタイミングでタイマからの時刻情報を確認し、前記時刻情報と前記転送期限情報とに基づいて前記第1バッファ部と前記第2バッファ部とのうち一方のバッファ部を選択し、
前記無線部は、前記選択されたバッファ部にバッファされている送信信号を前記第2無線信号に含めて送信する制御対象無線装置。
【請求項7】
複数の制御対象の各々に対し制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を生成する転送要否情報生成部と、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成する第1制御部と、
前記制御情報を第1無線信号として送信し、前記制御対象の各々から第2無線信号を受信する第1無線部と、
前記制御対象ごとの前記制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成する転送期限情報生成と、
前記第1無線部が受信する前記第2無線信号から前記制御対象の各々の状態を示す状態情報を抽出する状態情報抽出部と、を備え、
前記制御信号生成部は、前記状態情報に基づいて前記制御信号を生成し、
前記転送要否情報生成部は、前記一の制御対象の状態情報に基づいて、前記転送要否情報を生成し、
前記第1制御部は、前記制御対象ごとの前記転送期限情報を前記制御情報に含める、コントローラ無線装置と、
前記第1無線信号を受信する第2無線部と、
前記第1無線信号に含まれる前記制御信号に基づいて制御対象を制御する第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、前記第1無線信号に含まれる転送要否情報に基づいて、前記第1無線信号に含まれる他の制御対象への制御信号を前記第2無線部に送信させる制御対象無線装置と、を備えた制御システム。
【請求項8】
複数の制御対象の各々から第1無線信号を受信し、
前記第1無線信号から前記制御対象の各々の状態を示す状態情報を抽出し、
前記状態情報に基づいて、複数の制御対象の各々に対し制御信号を生成し、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を、前記一の制御対象の状態情報に基づいて、生成し、
前記制御対象ごとの前記制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成し、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成し、
前記制御対象ごとの前記転送期限情報を前記制御情報に含め、
前記制御情報を第2無線信号として送信する制御方法。
【請求項9】
複数の制御対象の各々から第1無線信号を受信する手順と、
前記第1無線信号から制御対象の各々の状態を示す状態情報を抽出する手順と、
前記状態情報に基づいて、複数の制御対象の各々に対し制御信号を生成する手順と、
前記複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について前記複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して前記一の制御対象への転送の要否を、前記一の制御対象の状態情報に基づいて、決定し、前記決定した転送の要否を示す転送要否情報を生成する手順と、
前記制御対象ごとに前記制御信号と前記転送要否情報とを含めて制御情報を生成する手順と、
前記制御対象ごとの前記制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成する手順と、
前記制御対象ごとの前記転送期限情報を前記制御情報に含める手順と、
と、
前記制御情報を第2無線信号として送信する手順とをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コントローラ無線装置、制御対象無線装置、制御システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットなどの制御対象を制御する制御システムにおいては、配線によるわずらわしさをなくしたり、断線のリスクをなくしたりできるなどの理由により無線通信が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-129526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線通信において生じる通信の誤りは、特に低遅延な制御を必要とするような制御対象の制御への適用には問題となる可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、効率的に制御を行うコントローラ無線装置、制御対象無線装置、制御システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るコントローラ無線装置は、制御信号生成部と、転送要否情報生成部と、制御部と、無線部と、転送期限情報生成部と、状態情報抽出部と、を含み、制御信号生成部は、複数の制御対象各々に対し制御御信号を生成し、転送要否情報生成部は、複数の制御対象のうちの一の制御対象宛ての制御信号について複数の制御対象のうちの他の制御対象に対して一の制御対象への転送の要否を示す転送要否情報を生成し、制御部は、制御対象ごとに制御信号と転送要否情報とを含めて制御情報を生成し、無線部は、制御情報を第1無線信号として送信し、制御対象の各々から第2無線信号を受信する。転送期限情報生成部は、制御対象ごとの制御信号の転送期限を示す転送期限情報を生成する。状態情報抽出部は、無線部が受信する第2無線信号から制御対象の各々の状態を示す状態情報を抽出する。制御信号生成部は、状態情報に基づいて、制御信号を生成する。転送要否情報生成部は、一の制御対象の状態情報に基づいて、転送要否情報を生成する。制御部は、制御対象ごとの転送期限情報を制御情報に含める。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る無線制御システムの概念図である。
図2図2は、同第1の実施形態に係る無線制御システムの動作例を示す第1のタイミングチャートである。
図3図3は、同第1の実施形態に係る無線制御システムの動作例を示す第2のタイミングチャートである。
図4図4は、同第1の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、同第1の実施形態に係るコントローラ無線装置の処理例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る制御対象無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図7図7は、同第2の実施形態に係る制御対象無線装置の処理例を示すフローチャートである。
図8図8は、第3の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図9図9は、同第3の実施形態に係る転送ID検討情報の例を示す図である。
図10図10は、第4の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図11図11は、同第4の実施形態におけるエア支配率と転送期限の関係の例を示す図である。
図12図12は、第5の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の概念図である。
図13図13は、同第5の実施形態に係るコントローラ無線装置の処理例を示すフローチャートである。
図14図14は、第6の実施形態に係る制御対象無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図15図15は、実施形態に係るコントローラ無線装置の転送要否決定部の構成を示す機能ブロック図である。
図16図16は、実施形態に係る送信信号のデータフォーマットの例である。
図17図17は、実施形態に係る制御対象無線装置が送信する送信信号のデータフォーマットの例である。
図18図18は、第9の実施形態に係るコントローラ無線装置が転送情報を生成する際に考慮する状況例を示す第1の図である。
図19図19は、同第9の実施形態に係るコントローラ無線装置が転送情報を生成する際に考慮する状況例を示す第2の図である。
図20図20は、第10の実施形態に係る無線制御システムの概念図である。
図21図21は、同第10の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図22図22は、同第10の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の概念図である。
図23図23は、同第10の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の別の概念図である。
図24図24は、同第10の実施形態に係る制御対象無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図25図25は、同第10の実施形態に係る送信信号のデータフォーマットの例である。
図26図26は、同第10の実施形態に係る制御対象無線装置のデータ処理例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、コントローラ無線装置1が各モータ4に対する制御信号を転送信号とともに生成、送信し、転送信号を受信した制御対象無線装置3が転送信号に基づいて他のモータ宛の制御信号を転送する例を示す。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る無線制御システムの概念図であり、無線制御システム100は、コントローラ無線装置1とロボットアーム2とを備える。
【0010】
コントローラ無線装置1は、変復調機能など外部の装置と無線通信が可能な無線通信機を備え、また無線通信で送受信するデータを処理するためのCPU、メモリなどのコンピュータ機能を備えていてもよい。コントローラ無線装置1は制御対象無線装置3-1~3-6(特に区別しない場合は、制御対象無線装置3と称する)に制御信号を無線で送ることができる。
【0011】
ロボットアーム2は、例えば、ベルトコンベア上を流れる荷物をピッキングするなどのワークを行うロボットアームであってもよい。図1に示したロボットアーム2は、アーム台21、アーム22、グリッパ23を備えている。各アーム22は、モータ4-1~4-6(特に区別しない場合は、モータ4と称する)を介して接続されており、各モータの回転によりアーム22全体の形を変化させることで、先端のグリッパ23を任意の位置(3次元でもよい)に移動させることでもよい。アーム台21はアーム22を支える台である。グリッパ23自体は、基本的には挟んだり開いたりする1次元の動きにより荷物を挟むことでもよい。グリッパ23の1次元の動きもモータによって制御可能である。
【0012】
ロボットアーム2に備えられたモータ4-1~4-6にはそれぞれ制御対象無線装置3-1~3-6が有線で接続されている。
【0013】
制御対象無線装置3は、アンテナ、変復調機能など外部の装置と無線通信が可能な無線通信機を備え、また無線通信で送受信するデータを処理するためのCPU、メモリなどのコンピュータ機能を備えていてもよい。制御対象無線装置3-1~3-6は、それぞれ受信した制御情報に従いモータ4ー1~6を制御することができ、また、モータ4-1~4-6からモータ4-1~4-6の状態を示す状態情報を受信することができる。状態情報は、例えば、そのモータのエンコーダ値(センサ値、ホールセンサ値、設定パラメータ値などと称する場合もある)などでもよい。
【0014】
モータ4は、電力を回転運動などに変換するモータなどであってもよく、モータ4の回転数などのエンコーダ値によってロボットアーム2の動作や位置が決まることでもよい。すなわちモータ4は、ロボットアーム2(もしくはそれらを構成するアーム22など)の位置を把握するためのセンサの役割も備えていてもよく、モータ4のエンコーダ値がセンサ値に相当することでもよい。またモータ4の回転の中心を軸と称することもある。本実施形態においては、モータ4のエンコーダ値をセンサ値として用いる例を示すが、例えばジャイロセンサなどによって得られるセンサ値を用いることでもよい。コントローラ無線装置1は、モータ4-1~4-6の状態情報を無線通信により取得し、その状態情報からモータ4-1~4-6の位置などを把握したり、モータ4-1~4-6に対する制御信号や転送に関わる転送情報などの制御情報を生成したりすることでもよい。モータ4-1~4-6の位置は、例えばシステム内で定義した座標系に基づいて決定してもよい。
【0015】
コントローラ無線装置1と各制御対象無線装置3とは基本的に時刻の同期が取れていてもよい。時刻同期の手法については、Network Time Protocol(NTP)などのように任意の手法を用いることでもよい。また、コントローラ無線装置1と各制御対象無線装置3とが別途時刻を無線送信するサーバなどから時刻を受信して、時刻を共有することでもよい。なおコントローラ無線装置1と各制御対象無線装置3との時刻同期は取れていなくてもよい。
【0016】
本実施形態においては、ロボットアームの例を示すが、ロボットアームに限定される必要もない。また、本実施形態において、制御情報および状態情報を送受信する無線通信の方式は無線LANを想定するが、特に限定されることはなく、例えば、ZigBee(登録商標)やローカル5Gなど他の無線通信規格でもよいし、独自規格でもよい。
【0017】
コントローラ無線装置1から制御対象無線装置3-1~3-6に送信する制御信号は、制御対象無線装置3-1~3-6いずれかへのユニキャスト信号でもよいし、制御対象無線装置3-1~3-6のうち複数へのマルチキャスト信号でもよいし、制御対象無線装置3-1~3-6をすべて含むブロードキャスト信号でもよい。
【0018】
制御対象無線装置3-1~3-6のそれぞれが送信する状態情報は、コントローラ無線装置1へのユニキャスト信号でもよいし、コントローラ無線装置1と他の制御対象無線装置3-1~3-6へのマルチキャスト信号でもよいし、コントローラ無線装置1と他の制御対象無線装置3-1~3-6を含むブロードキャスト信号でもよい。なおユニキャスト信号を受信した無線装置はACKフレームなどによる確認応答をしてもよいし、ユニキャスト信号を送信した無線装置は確認応答のあるなしで送信信号の再送を行ってもよい。
【0019】
モータ4は、6個に限定する必要はなく、任意の複数個でもよい。制御対象無線装置3は、6個に限定する必要はなく、任意の複数個でもよい。また本実施形態においては、各制御対象無線装置3がそれぞれに接続された1個のモータ4を制御する例を示すが、各制御対象無線装置3は1個のモータを制御することに限定する必要はなく、複数のモータ4を制御してもよい。例えばコントローラ無線装置1は制御情報の宛先にモータ4のIDを指定し、制御対象無線装置3は接続された複数のモータ4のうち、受信した制御情報の宛先のモータ4のIDを選択して制御することでもよい。また、図1にはロボットアーム2を1個のみ示したが、ロボットアーム2は、1個に限定する必要はなく、複数あってもよい。コントローラ無線装置1は、1個のロボットアーム2を制御することに限定する必要はなく、複数のロボットアーム2を制御してもよい。またコントローラ無線装置1が複数あってもよい。
【0020】
図2は、同第1の実施形態に係る無線制御システムの動作例を示す第1のタイミングチャートであり、他のモータ4への制御よりもモータ4-6への制御に低遅延が要求されており、また、制御対象無線装置3-6(モータ4-6)を制御信号の転送の対象とする場合の例である。また、本実施形態においては、コントローラ無線装置1と制御対象無線装置3-1~3-6との間で時刻同期がとれているものとする。
【0021】
コントローラ無線装置1は、周期T(=t2―t1)で制御対象無線装置3-1~3-6にブロードキャストで制御信号を送信し(TC1)する。さらにコントローラ無線装置1は、ブロードキャストで制御信号を送信してから周期T/2の時間が経過したタイミングで、ユニキャストにより制御信号を送信する(TC6)。以降、コントローラ無線装置1は、周期Tで制御対象無線装置3-6に制御信号をユニキャストにより送信する(TC15)。
【0022】
制御対象無線装置3-1~3-5は周期Tで状態情報を送信し(例えば制御対象無線装置3-1の場合は、TC2とTC11)、制御対象6は周期T/2で状態情報を送信する(例えばTC5とTC9)。無線装置3-1~3-6が送信する順番やタイミングは、特に調整されている必要はない。コントローラ無線装置1、および、制御対象無線装置3-1~3-6が送信するタイミングは、送信前のキャリアセンスの状況などによって前後することもあり得るし、送信する順番が変わることもあり得る。また、無線信号到達確認用の無線信号であるACKフレームなどを送信してもよいが、図2では省略する。
【0023】
コントローラ無線装置1は、一定周期で受信する状態情報をフィードバック情報として制御信号を生成し、一定周期で制御信号を送信する。
【0024】
図16に、実施形態に係る送信信号のデータフォーマットの例を示す。図16(a)は、コントローラ無線装置1がブロードキャストまたはマルチキャストで全モータ4または複数のモータ4(全軸または複数軸)に送信する送信信号の例であり、図16(b)は、制御対象無線装置3が送信する送信信号の例である。
【0025】
図16(a)のデータ131は、各制御対象無線装置3に対する制御信号を含む制御情報(のセット)であり、それぞれ宛先とその宛先に対する内容、転送要否情報、転送期限情報が含まれる。例えば宛先3-3(制御対象無線装置3-3に相当)に対する内容には「制御信号3a」、転送要否には「否」、転送期限には「‐(データなし)」が含まれる。また宛先3-6(制御対象無線装置3-6に相当)に対する制御情報には、内容には「制御信号6a」、転送要否には「要」、転送期限には「t0」が含まれる。データ171は、無線信号として送信する送信信号の例であり、制御情報セットがペイロードに含められ、物理層、MAC層などのヘッダが付与されてもよい。例えば、制御対象無線装置3-3がデータ131を受信した場合に、自宛ての制御情報から制御信号3aを抽出し、制御対象無線装置3-3は、制御信号3aに基づいて接続されるモータ4-3を制御する。
【0026】
また、制御対象無線装置3-3は、自宛て以外の制御情報を確認し、もし転送要否が「要」である制御情報を確認した場合は、自分の状態情報を送信するときに転送要否が「要」である制御情報を同時に送信(転送)するようにしてもよい。図16(b)は、制御対象無線装置3-3が制御対象無線装置3-6宛ての制御情報を含めて自身の状態情報(enc3a)を送信する場合の例である。なお、制御対象無線装置3-3は、図16(b)において、制御対象無線装置3-6宛の制御情報に転送要否、転送期限などの転送情報を含めてもよい。その場合、制御対象無線装置3-3が送信したデータ371を制御対象無線装置3-6以外の制御対象無線装置3(制御対象無線装置Aとする)が受信した場合に、制御対象無線装置Aがデータ371と同様に自身の状態情報とともに制御対象無線装置3-6宛の制御情報(転送情報を含めてもよい)を送信することでマルチホップによる制御対象無線装置3-6への転送を可能とすることでもよい。
【0027】
図2に戻り、コントローラ無線装置1は、制御対象無線装置3-6を転送要の制御対象とし、転送期限を、例えばそのフレームを送信してから周期T/2だけ経過する時刻とする。図2の転送期限tlmt1(=t1+T/2)、tlmt2(=t2+T/2)がそれらに相当する。なお、転送期限は、そのフレームの送信信号を生成する直前からの経過時間(例えば周期T/2)後の時刻としてもよい。また、時刻ではなく、時間幅T/2を転送期限としてもよい。本実施形態のように無線制御システム内において、各無線装置(コントローラ無線装置1、制御対象無線装置3)間の時刻同期が取れているものとした場合は、転送期限を時刻として定義してもよいし、時間幅として定義してもよい。また各無線装置間の時刻同期が取れていない場合においても、例えば転送期限を時間幅として定義し、転送期限を受信した制御対象無線装置3は、転送期限の受信時刻を基準時刻(t0_rとする)として転送期限の値(T_tとする)を加えた時刻(t0_r+T_r)を転送期限とすることでもよい。基準時刻t0_rや転送期限などは、各装置がそれぞれ持っている時刻情報に基づくことでもよい。また転送期限が設定されていない場合は、例えば他の制御対象無線装置3(制御対象無線装置Aとする)に対する制御情報を受信した制御対象無線装置3(制御対象無線装置Bとする)は、コントロール無線装置1が送信する制御対象無線装置Aに対する次の制御情報を受信するまでは受信した制御情報を転送することでもよい。すなわちこの場合は制御対象無線装置Aに対する次の制御情報の受信時刻を転送期限(時刻)とみなすことでもよい。
【0028】
図2のTC2において、制御対象無線装置3-1は、自身のエンコーダ値をコントローラ無線装置1に対して制御対象無線装置3-6の転送期限以内に送信するので、コントローラ無線装置1にエンコーダ値だけを送信するのではなく、エンコーダ値と制御対象無線装置3-6宛の制御信号を1つの無線フレームとして生成し、コントローラ無線装置1と制御対象無線装置3-6にマルチキャストで送信する(TC2)。
制御対象無線装置3-2、3-3は、制御対象無線装置3-1と同様にコントローラ無線装置1に対して転送期限以内に送信するので、同様にマルチキャストで送信する(TC3、TC4)。TC2からTC4によって、制御対象無線装置3-6は、コントローラ無線装置1、制御対象無線装置3-1~3-3から、同一の制御信号を受信する。仮に、伝送路や電波干渉などの影響で制御信号の受信に失敗することがあっても、制御対象無線装置3-6は、少なくとも上記の他の制御対象無線装置3が転送する制御信号のうち1つ以上の制御信号を受信出来れば、その制御信号に従ってモータ6を制御することが可能である。
【0029】
制御対象無線装置3-6は、最初の制御信号を受信後、エンコーダ値を送信し(TC5)、2回目の制御信号をコントローラ無線装置1からユニキャストで受信し(TC6)、エンコーダ値を送信する(TC9)。仮に2回目の制御信号を制御対象無線装置3-6が受信できなかった場合は、コントローラ無線装置1はACKフレーム未受信により受信できなかったことを知ることができ、2回目の制御信号を再送することでもよい。
【0030】
制御対象無線装置3-4、3-5は、コントローラ無線装置1に対する送信時刻が、転送期限の後になるので、コントローラ無線装置1にエンコーダ値だけを送信する(TC7、TC8)。以降、これらの処理を周期的に繰り返していく。
【0031】
図3は、同第1の実施形態に係る無線制御システムの動作例を示す第2のタイミングチャートである。これは、制御対象無線装置3-6への制御信号送信の高信頼化が他の制御対象無線装置3よりも要求されており、また、制御対象無線装置3-6を転送の対象
とする(転送要とする)場合の例である。また、コントローラ無線装置1と制御対象無線装置3-1~3-6間で時刻同期がとれているものとする。図2との違いは、制御対象無線装置3-1~3-6に対する制御周期が全て周期Tで(例えば制御対象無線装置3-6の場合は、TC51とTC61との間隔)、制御対象無線装置3-1~3-6が送信する状態情報の周期も全て周期Tという点である(例えば制御対象無線装置3-1の場合は、TC52とTC62との間隔)。本図が示すように、本実施形態は制御対象無線装置に対する制御周期の違いに限定されるものではない。
【0032】
図4は、同第1の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0033】
コントローラ無線装置1は、無線部11と、状態情報抽出部12と、制御部13と、制御信号生成部14と、転送要否情報生成部15と、転送期限情報生成部16と、送信信号生成部17と、タイマ18とを備える。状態情報抽出部12、制御部13、制御信号生成部14、転送要否情報生成部15、転送期限情報生成部16、送信信号生成部17などは、プログラムとして構成されてもよく、コントローラ無線装置1が備えるCPUなどの演算機能やメモリなどを備えたコンピュータなどによって実行されることでもよい。
【0034】
無線部11は、無線信号を受信して復調し、復調した信号(受信信号)を状態情報抽出部12に出力する。また、無線部11は、送信信号生成部17から入力された送信信号に誤り訂正などの符号化処理を実施したり、物理層ヘッダやMACヘッダなどを付加したりするなどし、変調した無線信号を送信する。
【0035】
状態情報抽出部12は、無線部11から入力された受信信号から状態情報を抽出し、制御部13に状態情報を出力する。制御部13は、取得した各モータ4の状態情報を図示せぬ記憶部に格納するもしくはすでに格納されている状態情報を更新することでもよい。その際に、状態情報抽出部12は、各モータ4の状態情報とともに状態情報の受信時刻(もしくは制御対象無線装置3が送信した時刻)などを紐づけて格納することでもよい。
【0036】
制御部13は、CPUなどの演算機能やメモリなどを備えたコンピュータなどによって実行されるプログラムなどを備えていてもよい。制御部13は、状態情報抽出部12から状態情報を取得し、また、コントローラ無線装置1の外から外部情報を取得する。また、制御部13は、タイマ18から時刻情報を取得する。
【0037】
制御部13は、時刻情報を基に周期的に制御信号生成部14に状態情報を出力し、また、予め組み込まれたプログラムまたは外部情報を基に計算された目標値を出力し、制御信号生成部14から制御信号を取得する。目標値は、例えば、ロボットアーム2の次の状態の想定値であり、例えばモータ4に対して次に設定するべきエンコーダ値(設定パラメータ)であってもよい。制御部13は、目標値に基づいて次の制御信号を生成することでもよい。
【0038】
次に、制御部13は、転送要否情報生成部15に制御周期、制御信号、目標値、または、状態情報を出力し、転送要否情報生成部15から転送要の制御対象のIDを取得する。次に、制御部13は、転送期限情報生成部16に転送要の制御対象のID、および、転送要の制御対象の制御周期を出力し、転送期限情報生成部16から転送要の制御対象への転送期限を取得する。次に、制御部13は、送信信号生成部17に制御信号と転送要の制御対象のIDと転送要の制御対象への転送期限を出力する。
【0039】
制御信号生成部14は、制御部13から状態情報、および、目標値を入力し、制御信号を生成し、制御部13に制御信号を出力する。以下に制御信号の生成に関して説明する。
【0040】
時刻tにおけるモータn(任意のモータ4を示す意味でモータnとする)の回転数x(t)を目標値、時刻tまでに入力した最新のモータnのエンコーダ値y(t)を状態情報とした場合、例えば、モータnの回転速度v(t)は以下のように計算する。
(t)=K×(x(t)-y(t))
ただし、Kはモータnのフィードバックゲインである。この回転速度がモータnに対する制御値であり、この制御値に対してあらかじめ定められた所定の変換処理が行われて制御信号とすることでもよい。
【0041】
転送要否情報生成部15は、制御部13から制御周期、制御信号、目標値、または、状態情報を取得し、転送要の制御対象を決定し、制御部13に転送要の制御対象のIDを出力する。以下に転送要の制御対象の決定に関する説明をする。なお転送要否情報生成部15が転送要否を決定する「制御対象」とは、単に制御対象無線装置3を示す場合の他、制御をするモータ4もしくは制御されるモータ4とともに接続される制御対象無線装置3を示す場合もある。
【0042】
図2のように制御対象によって制御周期が異なる場合を考える。転送要否情報生成部15は、例えば入力された制御周期がある一定の時間(予め設定されたしきい値など)より短い周期である制御対象を転送要の制御対象として決定する。例えば、図2において、制御周期がTより短い周期を制御対象として決定することにすると、転送要否情報生成部15は、制御対象無線装置3-6を制御対象として決定する。以下に転送要否情報生成部15による転送要の制御対象(転送先ID)の決定に詳細を説明する。
【0043】
図1に示したロボットアームの例において、例えば、グリップ23を操作するモータ4-6は細かく制御する必要があるが、モータ4-6以外はそれほど頻繁に制御する必要がないなど、モータ4ごとに制御信号の送信頻度(制御周期)が異なる場合が考えられる。このような場合、例えばモータ4-6に対してコントローラ無線装置1からの制御周期を短くすることが考えられる。しかしながら、制御信号は無線で送信されることから、送信に誤りが発生する可能性がある。本実施形態における転送要否情報生成部15は、例えばモータ4-6のように制御周期がある一定の時間より短い周期である制御対象を転送要の制御対象として決定する。以上のように本実施形態においては、制御対象(モータ4)の制御周期に基づいて転送の要否を決めることができる。
【0044】
次に図3のように制御対象の制御周期が同じ場合を考える。この場合、転送要否情報生成部15は例えば、目標値とエンコーダ値(状態情報)の差の絶対値が最大である制御対象を転送要の制御対象として決定する。すなわち、転送要否情報生成部15は、モータnの回転数の目標値とエンコーダ値の差の絶対値を以下のように計算する。
=|x(t)-y(t)|
転送要否情報生成部15は、複数のモータ4についてそれぞれ計算したsの中から最大のモータ4を選択し、選択したモータ4を転送要の制御対象に決定する。また転送要否情報生成部15は、1つだけでなく複数のモータ4を転送要の制御対象に決定してもよい。
【0045】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明をする。転送要否情報生成部15は、目標値と状態情報との差分を算出し、その差分があらかじめ定められたしきい値より大きい場合にその制御対象への制御信号の転送要否を「要」とする。
【0046】
図15に、転送要否情報生成部15の構成例を示す。差分計算部は、入力される目標値と状態情報との差分を算出し、比較部でその差分値としきい値と比較する。例えば、差分値がしきい値よりも大きい場合は、転送要否情報生成部15は、その制御対象への制御信号の転送要否を「要」とする。
【0047】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明をする。転送要否情報生成部15は、過去と現在の状態情報からモータnの回転速度を計算し、その回転速度と目標値と制御周期から回転速度の加速度を計算する。転送要否情報生成部15は、計算したモータの回転速度のうち、加速度が最も大きいモータを転送要の制御対象に決定する。あるいは、転送要否情報生成部15は、計算したモータの回転速度の加速度が、予め定められたしきい値より大きいモータを転送要の制御対象に決定することでもよい。また、転送要否情報生成部15は、制御対象(例えばモータ4)の回転方向が変わるときに転送要と決定することでもよい。また、転送要否情報生成部15は、制御対象(例えばモータ4)の動作の遅延がしきい値以上の時に転送ありと決定することでもよい。
【0048】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明する。転送要否情報生成部15は、各々の制御対象無線装置3から受信した電波の受信電力を比較し、受信電力が最も小さい制御対象無線装置3を転送要の制御対象に決定する。
【0049】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明する。転送要否情報生成部15は、各々の制御対象無線装置3から受信したタイミングを比較し、最後に受信してから最も長い時間経過している制御対象無線装置3を転送要の制御対象に決定する。より具体的には例えば、転送要否情報生成部15は、各制御対象無線装置3から受信した無線信号の受信時間間隔を確認し、例えば最後に無線信号を受信してから最も長い時間経過している制御対象無線装置3に接続されたモータ4を転送要の制御対象に決定することでもよい。
【0050】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明する。転送要否情報生成部15は、制御部13から取得した要求信頼度を比較し、要求信頼度が最も高い制御対象無線装置3を転送要の制御対象に決定する。要求信頼度は、例えばロボットアーム2の処理の内容に応じて制御部13のプログラムで計算される。
【0051】
転送要否情報生成部15の別の形態に関して説明する。転送要否情報生成部15は、制御部13が緊急停止メッセージを取得した場合、すべての制御対象無線装置3を転送要の制御対象に決定する。
【0052】
転送期限情報生成部16は、制御部13から転送要の制御対象のID、および、転送要の制御対象の制御周期を取得し、制御部13に転送要の制御対象への転送期限を出力する。転送期限は、転送要の制御対象の制御周期を転送期限としてもよいし、転送要の制御対象の制御周期の半分を転送期限としてもよい。また転送期限は、制御信号の送信先のモータ4の緊急性や優先性などに基づいて決定することでもよい。転送期限の値は例えばタイマ18が提供する絶対時刻、システム内時刻などに基づいた値として決定することでもよい。
【0053】
転送期限情報生成部16は、例えば以下のように転送期限を決定してもよいが、条件を限定するものではない。
・制御対象(モータ4など)の制御に低遅延が要求されるほど短い転送期限を設定する。
・コントローラ無線装置1の転送先制御対象(モータ4など)の通信品質とエア支配率を基に転送期限を設定する。
・緊急停止のようにその後しばらく更新されない制御情報を送信(転送)させる場合、長い転送期限を設定する。
ここに示した転送期限を設定するための条件は、転送要否情報生成部15が転送要否を生成するための条件として用いてもよい。
【0054】
送信信号生成部17は、制御部13から入力される各制御対象に対する制御信号、転送要否情報(転送要の制御対象のID)と転送期限情報(転送要の制御対象への転送期限)などを含む制御情報を含めて送信信号を生成し、無線部11に送信信号を出力する。
【0055】
タイマ18は、時刻情報を有し、制御部13や転送期限情報生成部16などに時刻情報を出力する(タイマから転送期限情報生成部への矢印は図示せず)。時刻情報は、時計やGPS、NTPサーバが提供するような絶対時刻でもよいし、システム内で定義するシステム時刻などでもよい。
【0056】
外部情報は、人間が外部のコントローラを経由して入力する情報、人間が緊急停止ボタンのようなボタン押下を経由して入力する情報、カメラで撮影した動画もしくは静止画の情報、またはカメラで撮影した動画もしくは静止画をコンピュータで解析した結果であってもよい。またコントローラ無線装置1は、カメラの他、マイク、マウス、キーボードなどの周辺装置、各種コントローラ、パーソナルコンピュータなどを接続して、外部情報などのデータのやり取りを可能とすることでもよい。
【0057】
図5は、同第1の実施形態に係るコントローラ無線装置の処理例を示すフローチャートである。
【0058】
コントローラ無線装置1において、制御部13は、タイマ18からの時刻情報を確認する(S1101)。制御部13は、一定周期経過していなければ、無線部11に無線信号を受信処理させ、状態情報抽出部12が状態情報を抽出した場合は、抽出した状態情報を図示せぬ記憶部に格納するもしくはすでに該当するモータ4の状態情報が格納されている場合はその状態情報を更新する(ステップS1102のYes、S1103)。一定周期経過していれば、制御部13は、制御信号生成部14に制御信号を生成させる(ステップS1101のYes、S1104)。ステップS1101における一定周期は、コントローラ無線装置1がブロードキャストなどにより制御信号を送信する周期であり、例えば図2における周期Tでもよい。またS1101においては、一定周期が経過したかどうかには限られず任意のタイミングでよく、例えば、コントローラ無線装置1が外部情報として緊急ボタンの信号を受信したタイミングなどでもよい。状態情報抽出部12が状態情報を受信していなければ、制御部13は、再び一定周期経過しているかを確認する(ステップS1102のNo)。転送要否情報生成部15は、転送要否を決定し(ステップS1105)、転送期限情報生成部16は、転送期限を決定する(ステップS1106)。制御部13は、制御信号や転送要否、転送期限などの転送信号を含めて送信信号を生成する(ステップS1107)。無線部11は、生成された送信信号を無線信号として送信する(ステップS1108)。以上の手順を繰り返し、制御部13は、再びステップS1101に戻り、タイマ18の時刻情報に基づいて一定周期経過しているかを確認する。
【0059】
なお、図5は、全てのフローを表すものではなく、あくまで一例を示すものである。例えば、転送要否情報生成部15の処理で、すべて転送不要だった場合や転送期限を設定しない場合などは、転送期限情報生成部16の処理は行わなくてもよい。また、転送要否決定の処理と転送周期決定の処理とを同時に行ってもよい。またコントローラ無線装置1が状態情報を用いずに転送情報を生成する場合には、図5のステップS1102、S1103を行わなくてもよい。その他、必要に応じて各ステップをスキップすることでもかまわない。
【0060】
本実施形態により、コントローラ無線装置1において、制御信号の転送が必要な制御対象(制御対象Aとする)を確認した時に、制御対象A以外の制御対象(制御対象Bとする)に対して、転送が必要なタイミングまでに、制御対象Aへの制御信号の転送を指示することができ、それによって、制御対象Aに対して所望の制御を行うことができる。また、制御対象Aに対して再送などを減らすことができ、不要な無線信号を送信せずに済む。また、制御対象Bの制御対象無線装置は、転送期限が過ぎた制御対象Aへの制御信号を送信せず、制御対象Bの状態情報をコントローラ無線装置1に送信するので、送信する無線信号を短くできる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、図4に示したコントローラ無線装置1が送信する転送情報を処理する制御対象無線装置3の例を示す。
【0061】
図6は、第2の実施形態に係る制御対象無線装置の機能ブロック図を示している。
【0062】
制御対象無線装置3は、無線部31と、情報抽出部32と、キャリアセンス部33と、制御部34と、タイマ35と、制御対象ドライバ36と、第1の送信信号生成部37と、第1の送信バッファ群38と、を備える。
【0063】
無線部31は、無線信号を受信して復調し、復調した受信信号を情報抽出部32に出力する。また、無線部31は、第1の送信バッファ群38から入力された送信信号に必要に応じてデータを付加して変調し、変調した無線信号を送信する。また、無線部31は、受信した無線信号の受信信号レベルを測定し、キャリアセンス部33に信号レベルを出力し、キャリアセンス部33からビジー/アイドル情報を制御部34に出力する。
【0064】
情報抽出部32は、無線部31から入力された受信信号から制御情報などの受信情報を抽出し、制御部34に受信情報を出力する。
【0065】
キャリアセンス部33は、無線部31から入力された受信信号レベルと予め定められたレベルとを比較して、ビジー/アイドル判定を行い、その結果得られるビジー/アイドル情報を無線部31と制御部34に出力する(図6のキャリアセンス部から無線部への矢印は図示せず)。
【0066】
制御部34は、情報抽出部32から受信情報を取得し、また、キャリアセンス部33からビジー/アイドル情報を取得し、また、タイマ35から時刻情報を取得し、制御対象ドライバ36から状態情報を取得する。制御部34は、受信情報から制御信号を抽出し、制御信号を制御対象ドライバ36に出力する。制御部34は、時刻情報を基に周期的に制御対象ドライバ36に状態情報要求信号を出力し、状態情報を取得する。また、制御部34は、状態情報あるいは状態情報と転送情報(転送要否、転送期限、転送先の制御情報など転送すべき情報)とを第1の送信信号生成部37に出力する。
【0067】
タイマ35は、時刻情報を有し、制御部34に時刻情報を出力する。タイマ35は時刻情報をタイマ18と共有していることでもよいが、時刻について同期していても、していなくてもよい。
【0068】
制御対象ドライバ36は、制御部34から状態情報要求信号を受信し、制御対象から取得した状態情報を制御部34に出力する。また、制御対象ドライバ36は、制御部34から制御信号を入力され、その制御信号に従って制御対象(モータ4)を制御する。
【0069】
第1の送信信号生成部37は、制御部34から入力された状態信号あるいは状態信号と転送情報とから第1の送信信号を生成し、第1の送信バッファ群38に第1の送信信号を出力する。
【0070】
第1の送信バッファ群38は、第1の送信信号生成部37から入力された第1の送信信号をバッファし、無線部31にバッファした第1の送信信号を出力する。
【0071】
なお、図6は、全ての構成要素を表すものではなく、また、全てのブロック間の結合を示すものでもなく、あくまで一例を示すものである。ここで記載した処理の順番はこれに限定されない。ここで記載した以外の情報を入出力してもよい。ここで記載した一つのブロックが他のブロックの機能を兼ねてもよい。
【0072】
図7は、同第2の実施形態に係る制御対象無線装置の処理例を示すフローチャートである。
【0073】
制御対象無線装置3において、制御部34は、タイマ35からの時刻情報を確認する(ステップS1301)。制御部34は、一定周期経過していなければ、無線部11に電波信号を受信させ、情報抽出部12が制御情報を受信しているか確認する(ステップS1301のNo、ステップS1302)。情報抽出部12が制御情報を受信していれば、制御部34は、制御情報を取り出し、制御情報から制御信号を抽出し、制御対象ドライバ36に制御信号を送信する(ステップS1302のYes、ステップS1303)。制御部34は、情報抽出部12が制御情報を受信していなければ、ステップS1301に戻り、再び一定周期経過しているか確認する(ステップS1302のNo)。制御部34は、一定周期経過していれば制御対象ドライバに状態情報要求信号を送信する(ステップS1301のYes、S1304)。制御部34は、その後、制御対象ドライバ36から状態情報を受信する(ステップS1305)。制御部34は、制御対象ドライバ36から状態情報を受信した後、最近受信した制御情報に転送要の制御対象があるかを確認し、転送要の制御対象がなければ状態情報を含む送信信号を第1の送信信号生成部37に生成させる(ステップS1306のNo、S1310)。一方、制御部34は、転送要の制御対象があれば、その転送期限以内であるかを確認し、転送期限外であれば状態情報を含む送信信号を第1の送信信号生成部37に生成させる(ステップS1307のNo、S1310)。一方、タイマ35の時刻情報を確認し、時刻が転送期限以内であれば、制御部34は、状態情報と転送情報を含む送信信号を第1の送信信号生成部37に生成させる(ステップS1307のYes、S1308)。無線部31は、生成された送信信号を無線信号として送信する(ステップS1309)。以上の手順を繰り返し、制御部34は、再びステップS1301に戻り、タイマ35の時刻情報に基づいて一定周期経過しているかを確認する。
【0074】
なお、図7は、全てのフローを表すものではなく、あくまで一例を示すものである。例えば、一定周期経過を処理開始のトリガにするのではなく、コントローラ無線装置から制御信号を受信することをトリガとし、処理を開始してもよい。
【0075】
本実施形態により、制御対象無線装置3(制御対象Bとする)において、受信した制御情報に制御信号の転送が必要な制御対象(制御対象Aとする)を確認した時に、転送が必要なタイミングまでに、制御対象B自身の状態情報と共に他の制御対象(制御対象Aに相当)宛の制御信号を同時に送信することができる。それによって、コントローラ無線装置1は、制御信号を再送することなく、制御対象Aに対して所望の制御を行うことができる。また、それによって、制御対象無線装置3は、コントローラ無線装置宛の状態情報を含む無線信号と、制御対象A宛の制御信号を含む無線信号を別々に送信しなくても済む。これにより、本来2パケットの無線送信が必要であるところを1パケットの無線送信で済む効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
本実施形態においては、コントローラ無線装置は、制御信号を転送させる制御対象無線装置IDである転送IDを決定する場合の例について示す。
【0076】
図8は第3の実施形態に係るコントローラ無線装置の機能ブロック図を示しており、コントローラ無線装置1Aは、無線部1301と、状態情報抽出部1302と、制御部1303と、制御信号生成部1304と、転送要否情報生成部1305と、転送期限情報生成部1306と、送信信号生成部1307と、タイマ1308とを備える。図4と比較して、コントローラ無線装置1Aは、転送ID情報生成部1309をさらに備える。ここでは主に図4と比較して追加、または、変更した部分を説明し、説明のない機能に関しては、符号のみ変更し、機能は図4と同様である。また制御対象無線装置3Aは、本実施形態において付加した転送ID情報生成部1309に関わる部分以外は、図6の制御対象無線装置3と同様の機能を備えることでもよい。制御対象無線装置3A1から3A6は、それぞれモータ4-1から4-6に接続されている。制御対象無線装置3A、モータ4それぞれを、また両方を指して制御対象と称することもある。
【0077】
制御部1303は、転送ID情報生成部1309に転送ID検討情報を出力し、転送ID情報生成部1309から転送ID情報を取得する。制御部1303は、送信信号生成部1307に制御信号と転送要の制御対象のIDと転送要の制御対象への転送期限と、転送IDを出力する。
【0078】
送信信号生成部1307は、制御部1303から制御信号と転送要の制御対象のIDと転送要の制御対象への転送期限と、転送ID情報を入力し、送信信号を生成し、無線部1301に送信信号を出力する。
【0079】
転送ID情報生成部1309は、制御部1303から転送ID検討情報を取得し、転送ID検討情報に基づき、他の制御対象無線装置3A宛の制御信号を受信して転送させる制御対象無線装置3Aを決定し、そのIDを転送IDとしてこの転送IDに関する転送ID情報を制御部1303に出力する。すなわち転送ID情報は転送元の制御対象無線装置3AのIDを示す。転送ID検討情報は、例えば、各制御対象無線装置3A間の距離であってもよい。各制御対象無線装置3A間の距離は、状態情報を基に制御部1303が計算する。例えば、制御対象無線装置3A(制御対象無線装置Aとする)が、他の制御対象無線装置3A(制御対象無線装置Bとする)宛の制御信号(制御信号Bとする)を受信した場合に、制御対象無線装置Aは受信した制御信号Bに対する転送IDを確認し、その転送IDが制御対象無線装置AのIDと一致した場合に、制御信号Bを転送するようにすることでもよい。その他、転送ID情報生成部1309は、以下のように転送ID情報を決定してもよいが、条件を限定するものではない。
・移動速度が小さい制御対象(モータ4など)のIDを転送IDに決定する。
・転送先の制御対象(制御対象無線装置3Aなど)との通信品質がよい制御対象無線装置3AのIDもしくはそれに接続されるモータ4のIDを転送IDに決定する。
・Modulation and Coding Scheme(MCS)とデータ量から転送してもフレーム長が変わらない制御対象(制御対象無線装置3Aなど)のIDを転送IDに決定する。
【0080】
図9は、同第3の実施形態に係る転送ID検討情報の例を示す図であり、各制御対象無線装置3A1~3A6間の距離の例である。図9より、制御対象無線装置3A1と3A2の距離は10である。単位はcm(センチメートル)であってもよいし、m(メートル)でもよいし、他の単位でもよい。転送ID情報生成部1309は、転送ID検討情報として、図9のような距離情報を取得し、例えば、転送要の制御対象無線装置3Aと距離が近い制御対象無線装置3AのIDを転送IDとする。例えば、制御信号の転送を必要とする転送要の制御対象無線装置3Aが制御対象無線装置3A6である場合、転送ID情報生成部1309は、制御対象無線装置3A6と距離が近い制御対象無線装置3A5、3A3、3A4のIDを転送IDとして決定する。このように、制御信号の転送をさせる転送IDは1つでもよいし、複数あってもよい。
【0081】
別の例として、転送ID検討情報は、各制御対象無線装置3A間の受信電力でもよいし、パケット誤り率でもよい。これらは、事前に測定したデータをデータベースとして持ってもよいし、本システムの運用中などに適宜測定してデータベースを更新してもよい。例えば受信電力を転送ID検討情報とした場合は、転送ID情報生成部1309は、受信電力が大きな制御対象無線装置3Aを選択することが望ましく、パケット誤り率を転送ID検討情報とした場合は、パケット誤り率の小さな制御対象無線装置3Aを選択することが望ましい。
【0082】
別の例として、コントローラ無線装置1Aが高いところにあることを前提として、転送ID検討情報を制御対象無線装置3Aの高度とし、転送ID情報生成部1309は、高度に基づいてより高い位置にある制御対象無線装置3Aを選択してもよい。高度は、制御部1303が状態情報などに基づいて計算することでもよい。
【0083】
別の例として、転送ID検討情報を各制御対象無線装置3Aの移動速度とし、制御部1303が状態情報などに基づいて移動速度を計算し、例えば移動速度が最も小さい制御対象無線装置3Aを選択してもよい。あるいは転送ID検討情報を転送要の制御対象無線装置3Aとの相対速度とし、制御部1303が状態情報などに基づいて相対速度を計算し、その相対速度が最も小さい制御対象無線装置3Aを選択してもよい。なお、図9、および、上記例に限定されるものではなく、あくまで一例を示すものである。他の転送ID検討情報を用いてもよい。
【0084】
以上により、コントローラ無線装置1Aは、適切に転送IDを決定する事ができ、所望の制御を行いつつ、不要な転送を低減させたりすることができる。
(第4の実施形態)
本実施形態においては、コントローラ無線装置は、エア支配率に応じて転送期限を決定する例を示す。
【0085】
図10は、第4の実施形態に係るコントローラ無線装置の構成例を示す機能ブロック図であり、コントローラ無線装置1Bは、無線部1401と、状態情報抽出部1402と、制御部1403と、制御信号生成部1404と、転送要否情報生成部1405と、転送期限情報生成部1406と、送信信号生成部1407と、タイマ1408と、転送ID情報生成部1409とを備える。図10は、図8のコントローラ無線装置1Aと比較して、コントローラ無線装置1Bには、キャリアセンス部1410とエア支配率測定部1411をさらに備える。ここでは主に図8と比較して追加、または、変更した部分を説明し、説明のない部分に関しては、図8と同様である。また制御対象無線装置3は、図6の制御対象無線装置3とする。制御対象無線装置3-1から3-6は、それぞれモータ4-1から4-6に接続されている。制御対象無線装置3、モータ4それぞれを、また両方を指して制御対象と称することもある。
【0086】
無線部1401は、受信した電波の信号レベルをキャリアセンス部1410に出力し、キャリアセンス部1410からビジー/アイドル情報を取得する。
【0087】
キャリアセンス部1410は、無線部1401から受信した電波の信号レベルを入力し、予め定められたレベル(しきい値)と受信した信号レベルを比較して、ビジー/アイドル判定を行い、その結果得られるビジー/アイドル情報を無線部1401と制御部1403に出力する。
【0088】
制御部1403は、キャリアセンス部1410からビジー/アイドル情報を取得し、また、エア支配率測定部1411にビジー/アイドル情報を出力し、エア支配率測定部1411からエア支配率を取得する。
【0089】
エア支配率測定部1411は、制御部1403から入力されたビジー/アイドル情報に基づいてエア支配率を計算し、計算したエア支配率を制御部に出力する。エア支配率とは、使用する周波数帯域におけるビジーの時間の割合のことである。例えば、計測時間をTcalc、計測時間におけるビジーの時間をtbusy、計測時間におけるアイドルの時間をtidleとすると、エア支配率pbusyは、以下の式であらわされる。
busy=tbusy/Tcalc=tbusy/(tbusy+tidle
計測時間は、予めエア支配率測定部1411に設定された時間でもよいし、制御部1403が設定してもよい。また、計測するタイミングは、エア支配率測定部1411が予め設定された周期で周期的に計測してもよいし、制御部1403がタイミングを通知してもよい。
【0090】
転送期限情報生成部1406は、エア支配率を取得する。転送期限情報生成部1406は、エア支配率、転送要の制御対象のID、制御対象の周期を入力し、転送要の制御対象への転送期限を決定し、制御部1403に転送要の制御対象への転送期限を出力する。以下に、転送期限情報生成部1406における、転送要の制御対象への転送期限を決定する処理に関して説明する。
【0091】
図11は、同第4の実施形態におけるエア支配率と転送期限の関係の例を示す図であり、制御対象6個の制御周期が全てTの場合の転送期限の設定例である。例えば転送期限情報生成部1406は、予め図示せぬ記憶部などに図11のデータを保持しておき、転送要の制御対象の個数とエア支配率とから、図11の図に従い転送期限を決定することでもよい。図11は、転送要の制御対象の個数が多いほど転送期限を短くし、また、エア支配率が大きいほど転送期限を短く設定する場合の例である。例えば、転送期限情報生成部1406は、転送要の制御対象の個数が「3」のときに、エア支配率が「0以上0.7未満」である場合は転送要の制御対象に対する転送期限をTとし、エア支配率が「0.7以上0.8未満」である場合は、転送要の制御対象に対する転送期限をT/2とすることを示す。また、例えば、転送期限情報生成部1406は、エア支配率が「0.5以上0.7未満」のときに、転送要の制御対象の個数が「1」の場合は転送要の制御対象に対する転送期限をTとし、転送要の制御対象の個数が「5」の場合は転送要の制御対象に対する転送期限をT/2とすることを示す。
【0092】
また例えば図11において、転送期限0は、転送しないことを意味する。制御部1403において、転送期限0として制御情報に含めて送信信号生成部1407に出力してもよいし、制御情報から転送要の対象から除いて送信信号生成部1407に出力してもよい。図11において、例えば、転送要の制御対象の個数が4でエア支配率が0.75である場合、転送期限は0となる。転送要の制御対象すべてに転送期限0を設定することになる。この場合、転送要の制御対象すべてに転送期限0を設定する代わりに、転送要の制御対象を4つの中から3つを選択し、選択した3つの転送期限をT/2、残りの1つの転送期限を0に設定してもよい。転送要の制御対象の選び方は、予め設定された優先度に従ってもよいし、転送要否情報生成部1405において転送の要否に加え転送の優先度を決めて、その優先度に従って選んでもよい。転送要否情報生成部1405において、転送の優先度を決める方法は、例えば、各制御対象無線装置3から受信する電波の受信レベルが小さい制御対象無線装置3を優先してもよいし、コントローラ無線装置1Bと各制御対象無線装置3間の距離を計算しその距離が長い制御対象無線装置3を優先してもよいし、外部情報から得られる処理の内容から優先度を決めてもよい。
【0093】
以上の例は制御周期が全てTの場合の転送期限の設定に関する例だが、異なる制御周期が混在してもよい。その場合、異なる制御周期の転送要の制御対象の個数の組み合わせで、それぞれ図11のような対応関係を設定してそれに従ってもよい。
【0094】
なお、図10は、全ての構成要素を表すものではなく、また、全てのブロック間の結合を示すものでもなく、あくまで一例を示すものである。ここで記載した処理の順番はこれに限定されない。ここで記載した以外の情報を入出力してもよい。ここで記載した一つのブロックが他のブロックの機能を兼ねてもよい。
【0095】
本実施形態により、コントローラ無線装置1Bは、エア支配率に応じて適切に転送期限を決定する事ができ、ロボットアームの動作に対し所望の制御を行いつつ、不要な転送を低減させることができる。
(第5の実施形態)
本実施形態においては、コントローラ無線装置が制御情報や転送情報を送信する際のプロトコルの例について示す。
【0096】
図12は、第5の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の概念図を示す。以下、図10のコントローラ無線装置1B、図6の制御対象装置3を利用して説明する。
【0097】
図12(a)は、コントローラ無線装置1Bの送信信号生成部1407による上位層の処理、図12(b)は、無線部1401によるMedium Access Control(MAC)層の処理、図12(c)は、無線部1401による物理層の処理を示す。上位層とは、MAC層より上位の層のことであり、例えばアプリケーション層であってもよい。コントローラ無線装置1Bの上位層と制御対象無線装置3の上位層において予め同じプロトコルにしておけば、上位層でやり取りする信号の意味をお互いに解釈することができる。仮に、MAC層と物理層が無線LANであっても上位層同士で信号のやり取りが可能であり、無線LAN以外のローカル5GやZibBee(登録商標)であっても上位層同士で信号のやり取りが可能である。
【0098】
図12(a)は、コントローラ無線装置1Bの送信信号生成部1407が出力する制御情報セットを示しており、各制御情報セットCIS1からCIS6には、それぞれ制御対象無線装置3-1から3-6に対する制御情報が含まれる。制御情報セットCIS1からCIS6について特に区別しない場合は、制御情報セットCISと称する。
【0099】
各制御情報セットには、制御対象の宛先(制御対象無線装置3のID、モータ4のID等でもよい)と、その制御対象に対する制御信号と転送要否と転送期限と転送ID情報などの転送情報とが含まれる。送信信号生成部1407は、制御情報セットを上位層のデータとして生成する。図12(a)は、6つの制御対象に対する制御情報セットがある場合の例である。送信信号生成部1407は、作成した制御情報セットを無線部1401に出力する。
【0100】
図12(b)は、MAC層のデータを示しており、無線部1401において、MAC層の処理として受信した制御情報セットを符号化し、符号化された制御情報セットに、MAC層ヘッダ、パディング、Frame Check Sequence(FCS)を加えることでMAC層のデータが生成される。MAC層ヘッダには、その信号の宛先などが含まれ、ブロードキャストか、ユニキャストか、などの情報も含まれる。パディングとは、たとえば無線LANのようにOFDMシンボル単位でペイロードを変調する場合、送信するビット数はOFDMシンボル単位で送れるビット数の定数倍になる。符号化された制御情報セットのビット数がOFDMシンボル単位のビット数の定数倍に一致しない場合、一致させるために不要なビットを付加する必要がある。このビットを付加することをパディングという。FCSは、受信側において復調、および、復号した符号化された制御情報セットのビットが正しいことを確認するために付加するビットシーケンスである。符号化された制御情報セット、パディング、および、FCSのビットは、インターリーブ処理されてもよいし、スクランブリング処理されてもよい。
【0101】
無線部1401は、物理層の処理としてMAC層で生成されたビットに物理層ヘッダを付加して生成したベースバンド信号からRF信号に変換して、電波として出力する。なお、図12は、これに限定されるものではなく、あくまで一例を示すものである。
【0102】
図13は、同第5の実施形態に係る、コントローラ無線装置の処理例を示すフローチャートである。
【0103】
コントローラ無線装置1Bの送信信号生成部1407または無線部1401は、必要な情報を受信する(ステップS1501)。必要な情報とは、制御対象と、制御対象に対する制御信号と転送の要否と転送期限と転送ID情報を含んでも良い。
【0104】
送信信号生成部1407は、必要な情報を受信したら、上位層における制御情報セットを作成する(ステップS1502)。無線部1401は、制御情報セットに転送要否が要の制御情報が1つ以上含まれていればブロードキャスト用MAC層信号を生成し(ステップS1503のYes、S1504)、転送要否が要の制御情報セットが含まれていなければユニキャスト用MAC層信号を生成する(ステップS1503のNo、S1505)。無線部1401は、生成したMAC層信号を基に物理層信号を生成し(ステップS1506)、無線信号を生成し、送信する(ステップS1507)。コントローラ無線装置1Bの送信信号生成部1407、または、無線部1401は、以上の処理を繰り返す。
【0105】
なお、図13は、全てのフローを表すものではなく、あくまで一例を示すものである。例えば、ブロードキャスト用MAC層信号生成の代わりにマルチキャスト用MAC層信号生成をしてもよいし、転送要否が要の制御情報が含まれていなくてもブロードキャスト用MAC層信号生成をしてもよい。
【0106】
本実施形態により、コントローラ無線装置1Bは、MAC層と物理層のプロトコルに限定されることなく制御信号無線装置3と制御情報や転送要否に関する情報をやり取りすることができ、所望の制御を行いつつ、不要な転送を低減させることができる。
(第6の実施形態)
本実施形態においては、制御対象無線装置がキャリアセンス(CSMA/CA)による送信タイミングを考慮して制御信号の転送をする場合の例を示す。
【0107】
図14は、第6の実施形態に係る制御対象無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。図14の制御対象無線装置3Cは、図6の制御対象無線装置3と比較して、第2の送信信号生成部3609と、第2の送信バッファ群3610と、送信バッファ選択部3611と、をさらに備える。ここでは主に図6と比較して追加または変更した部分を説明し、説明のない機能に関しては、符号のみ変更し、機能は図6と同様である。
【0108】
制御部3604は、時刻情報を基に周期的にまたは制御信号を受信したタイミングなど任意のタイミングで制御対象ドライバ3606に状態情報要求信号を出力し、状態情報を取得する。制御部3604は、状態情報と転送情報とを第1の送信信号生成部3607に出力し、また、状態情報を第2の送信信号生成部3609に出力する。より具体的には、制御部3604は、無線信号の送信タイミングにおいて、キャリアセンス部3603から入力される情報がアイドル(無線信号が受信されていない)である場合に、情報抽出部3602から入力された制御情報(制御情報セット)に含まれる転送期限とタイマ3605の時刻情報とを確認する。制御部3604は、タイマ3605から入力された時刻情報が転送期限内であること確認したときは第1の送信バッファ群3608を選択する選択信号を送信バッファ選択部3611に出力する。
【0109】
一方、制御部3604は、同様に転送期限と時刻情報を確認し、時刻が転送期限を過ぎているときは、第2の送信バッファ群3610を選択する選択信号を送信バッファ選択3611部に出力する。
【0110】
第1の送信信号生成部3607は、制御部3601から入力された状態信号と転送情報に基づいて、第1の送信信号を生成し、第1の送信バッファ群3608に第1の送信信号を出力する。
【0111】
第2の送信信号生成部3609は、制御部3604から入力された状態信号に基づいて、第2の送信信号を生成し、第2の送信バッファ群3610に第2の送信信号を出力する。
【0112】
第1の送信バッファ群3608は、第1の送信信号生成部3607から入力された第1の送信信号をバッファし、バッファした第1の送信信号を送信バッファ選択部3611に出力する。
【0113】
第2の送信バッファ群3610は、第2の送信信号生成部3609から入力された第2の送信信号をバッファし、バッファした第2の送信信号を送信バッファ選択部3611に出力する。
【0114】
送信バッファ選択部3611は、制御部3601から選択信号を受信し、選択信号に従って、第1または第2の送信バッファ群3610から一方の送信信号を選択し、選択した送信信号を無線部3601に出力する。無線部3601は、入力された送信信号を無線信号として出力する。
【0115】
なお、図14は、全ての構成要素を表すものではなく、また、全てのブロック間の結合を示すものでもなく、あくまで一例を示すものである。ここで記載した処理の順番はこれに限定されない。ここで記載した以外の情報を入出力してもよい。ここで記載した一つのブロックが他のブロックの機能を兼ねてもよい。
【0116】
本実施形態により、制御対象無線装置3Cは、転送要否が要である他の制御対象無線装置3C宛ての制御信号を受信したときに、キャリアセンス部3603による送信前のキャリアセンス(CSMA/CA)により無線信号の送信タイミングが遅延して転送期限を超えることが発生するような場合においても、転送期限を考慮して、その制御信号の転送が可能となる。すなわち、転送を要とする制御信号の転送が必要なタイミングまでに、状態情報と共に他の制御対象宛の制御信号を同時に送信することができる。それによって、コントローラ無線装置1、1A、1Bは、所望の制御を行うことができ、かつ、本来2パケットの無線送信が必要であるところを1パケットの無線送信で済む。
(第7の実施形態)
本実施形態では、図2図17を用い、制御対象無線装置3が送信する状態情報を、他の制御対象無線装置3に転送させる形態に関して説明する。
【0117】
ここで説明していない事項に関しては、第1の実施の形態から第6の実施の形態と同様とする。なお、本実施形態においては、図6の制御対象無線装置3を例とするが、他の構成でもよい。また、コントローラ無線装置1を例とするが、他の構成でもよい。
【0118】
図17は、第7の実施形態に係る制御対象無線装置が送信する送信信号のデータフォーマットの例であり、図17(a)は、制御対象無線装置3-6の送信信号、図17(b)は、制御対象無線装置3-4の送信信号、図17(c)は、制御対象無線装置3-5の送信信号を示す。
【0119】
制御対象無線装置3-6は、自身の状態情報「enc3-6」をコントローラ無線装置1(宛先「cnt」)に送信する際に、その状態情報を転送要とするために、転送要否を「要」とし、転送期限を「T/2」として情報(データ342)を生成し、データ342をペイロードに含めて各種ヘッダを付加した送信信号をブロードキャストで送信する(図2のTC5)。
【0120】
制御対象無線装置3-4は、自身の状態情報「enc3-4」をコントローラ無線装置1(宛先「cnt」)に送信する際に、制御対象無線装置3-6から受信した状態情報「enc3-6」と制御対象無線装置3-4の状態情報「enc3-4」とをペイロードに含めて各種ヘッダを付加した送信信号(データ373)を生成し、送信する(図2のTC7)。
【0121】
制御対象無線装置3-5は、自身の状態情報「enc3-5」を送信する際に、制御対象無線装置3-6から受信した状態情報「enc3-6」を含めて送信信号(データ374)を生成し、送信する(図2のTC8)。
【0122】
制御対象無線装置3-6は、コントローラ無線装置1から転送するようにメッセージを受け取ったときに他の制御対象無線装置3に転送させてもよいし、他の制御対象無線装置3(制御対象無線装置Aとする)から自分宛の制御信号を受信したときに制御対象無線装置Aに転送させるようにしてもよい。または、制御対象無線装置3-6は、他の制御対象無線装置3から自分宛の制御信号を受信したときに他のすべての制御対象無線装置(制御対象無線装置3-1~3-5)に転送させるようにしてもよい。
【0123】
制御対象無線装置3-6が設定する転送期限は、コントローラ無線装置1から転送期限に関するメッセージを受けてその値に従って転送期限を設定してもよいし、他の制御対象無線装置から自分宛の制御信号を受信したときに設定されている転送期限をそのまま採用してもよい。すなわち、制御対象無線装置3が自身の状態情報を他の制御対象無線装置3に転送させるかどうか(転送要否)やその転送期限はコントローラ無線装置1が決定するようにして、各制御対象無線装置3はその決定に従って図17に示すデータを生成することでもよい。
【0124】
本実施形態により、制御対象無線装置3からコントローラ無線装置1へ送信する状態情報を、他の制御対象無線装置3に転送させることができる。それによって、制御対象装置3の状態情報をコントローラ無線装置1が高確率で取得することができ、コントローラ無線装置1は所望の制御を行うことができ、かつ、本来2パケット以上の無線送信が必要であるところを1パケットの無線送信で済む。
(第8の実施形態)
本実施形態は、パディングのビット領域を活用することでエア支配率を増やすことなく、転送による信頼性を高める実施形態である。
【0125】
なお、ここで説明していない事項に関しては、第1の実施の形態から第7の実施の形態と同様としてもよく、本実施形態においては、コントローラ無線装置1、制御対象無線装置3を例に説明するが、それぞれ他の構成でもよい。
【0126】
図12のMAC層で生成するパディングは、通常、予め決められたバイナリで生成され、例えば、全て0b(all “0”)となる。
【0127】
制御対象無線装置3がコントローラ無線装置1に状態情報を送信する場合と、状態情報と他の制御対象無線装置3宛の転送情報を送信する場合で、無線フレーム長が全く同一になる場合がある。以下により詳細を示す。
【0128】
無線LANのIEEE802.11aの規格に沿って伝送レート54Mbpsで通信する場合、1OFDMシンボルに216ビット含まれる。OFDMシンボル単位で伝送するので、nシンボルを送信する場合、送信するビット数は216×n(nは自然数)になる。
【0129】
制御対象無線装置3がコントローラ無線装置1に送信する状態情報は、例えば288ビット必要だとする。288ビットには、純粋な状態情報だけでなく、テイルビットなど、通常の通信に必要なもろもろの情報を含んだビット数の一例である。288ビットの伝送には2OFDMシンボルを必要とするが、216×2-288=144ビット余るので、144ビットのパディングビットを付加する。一方、「状態情報と他の制御対象無線装置3宛の転送情報を送信する場合」は、例えば、先の288ビットに加え、64ビット必要だとする。この場合においても伝送には2OFDMシンボルでよく、216×2-(288+64)=80ビット余るので、80ビットのパディングビットを付加する。
【0130】
以上のように、「状態情報と他の制御対象無線装置3宛の転送情報を送信する場合」においても「制御対象無線装置3がコントローラ無線装置1に状態情報を送信する場合」と同じ2OFDMシンボルを送信することになり、無線フレーム長は全く同一になり、エア支配率を同じにすることができる。また以上のようにすることでエア支配率を高めることなく、制御信号送信の信頼性を高めることができる。また、制御対象無線装置3は、無線フレーム長を確認して、以上のように2つの場合の無線フレーム長が同一になる場合は、転送期限が過ぎていても、または、転送ID情報に含まれていなくても、他の制御対象無線装置3宛の転送情報を送信するようにしてもよい。また制御対象無線装置3は、無線フレーム長が長くならない範囲で、他制御対象(モータ4など)宛の制御情報のうち、全部、または、一部を転送することでもよい。また、一部を送信する場合、制御対象無線装置3は、制御情報の最初から、または、途中から送信することでもよい。
【0131】
本実施形態により、パディングのビット領域を活用することでエア支配率を増やすことなく、転送による信頼性を高めることができる。
(第9の実施形態)
本実施形態においては、制御情報に含める転送要否、転送期限、転送IDなどの転送情報を決定する方法の例を示す。
【0132】
本実施形態においては、転送要否情報生成部15、転送期限情報生成部16、転送ID情報生成部1309を例に示すが、他の構成でも構わない。
【0133】
図18は、第9の実施形態に係るコントローラ無線装置が転送情報を生成する際に考慮する状況例を示す第1の図である。
【0134】
ケース201は、ロボットアーム2に対して、ベルトコンベアで流れてくるアイテムを把持させる場合である。この場合、動くアーム22やモータ4の軸を高精度に動作させる必要がある。従って、例えば動くアーム22に影響する制御対象(モータ4)に対する制御信号は、送信の信頼性を高める必要があると判定し、この制御対象に対して、転送要否情報生成部15は転送要否を「要」と決定することでもよい。転送期限情報生成部16は、ベルトコンベアの速度などに基づいて転送期限を計算することでもよい。
【0135】
ケース202は、ロボットアーム2に対して、アイテムを移動させる場合である。この場合、アーム22やモータ4の軸に対して高精度に動作は必要ないことが多い。従って、例えば動くアーム22に影響する制御対象に対して、転送要否情報生成部15は転送要否を「否」と決定することでもよい。
【0136】
ケース203は、ロボットアーム2に対して、アイテムを小さなものの上などあまり安定していないような場所に置かせる場合である。この場合、動くアーム22やモータ4の軸を高精度に動作させる必要がある。従って、例えば動くアーム22に影響する制御対象(モータ4)に対して、転送要否情報生成部15は転送要否を「要」と決定することでもよい。転送期限情報生成部16は、ロボットアーム2による作業効率などに基づいて転送期限を計算することでもよい。
【0137】
また転送ID情報生成部1309は、例えばシステム内の全部の制御対象無線装置3のIDを転送IDとしてもよいし、状態情報から各制御対象(モータ4)の軸の高度を測定し、最も高い位置にあるモータ4に接続される制御対象無線装置3のIDを転送IDとしてもよい。また転送ID情報生成部1309は、状態情報から各制御対象(モータ4)の軸の動きを測定し、しきい値よりも動きの小さいモータ4に接続される制御対象無線装置3のIDを転送IDとしてもよい。また転送ID情報生成部1309は、状態情報から各制御対象(モータ4)の軸の位置を測定し、転送要とされる制御対象無線装置3とコントローラ無線装置とのLine Of Sight(LOS)上にある制御対象無線装置3のIDを転送IDとしてもよい。
【0138】
図19は、同第9の実施形態に係るコントローラ無線装置が転送情報を生成する際に考慮する状況例を示す第2の図である。
【0139】
ケース204は、2つのロボットアーム2に対して、荷物をパレタイズさせる場合である。この場合、荷物のバランスを崩さないように2つのロボットアーム2のアーム22(図1)、もしくはモータ4の軸を同期させて、高精度に動作させる必要がある。従って、例えば動くアーム22に影響する制御対象(モータ4)に対する制御信号は、送信の信頼性を高める必要があると判定し、この制御対象に対して、転送要否情報生成部15は転送要否を「要」と決定することでもよい。転送期限情報生成部16は、荷物が滑り落ちないように荷物の状況などに基づいて転送期限を計算することでもよい。荷物の状況などは、カメラで監視してもよいし、2つのロボットアーム2が出力する状態情報などからコントロール無線装置1などが判断することでもよい。
【0140】
ケース205は、例えば動作するロボットアーム2に人が近づいた場合などにロボットアーム2を緊急停止させる場合である。この場合は全制御対象に停止命令を示す制御情報を高速で送信する必要がある。従って、全制御対象(モータ4)に対する制御信号への送信の信頼性を高める必要があると判定し、全制御対象に対して、それらの状態情報に関わらず、転送要否情報生成部15は転送要否を「要」と決定することでもよい。またこの場合、転送期限情報生成部16は、転送期限を、全制御対象をホップできるくらいの長い時間に設定することでもよいし、転送期限を無限大にするすなわち転送期限を設定しないことでもよい。この場合、全制御対象無線装置3は、他の制御対象無線装置3の制御情報を受信したら必ず転送するようにしてもよい。
【0141】
以上の手順により、様々な状況を考慮して、制御情報に含める転送要否、転送期限、転送IDなどの転送情報の決定することが可能となる。なお、上記した例は限定を意図しておらず、様々な例が想定され、さらに上記した例の入れ替え、組み合わせなど任意の方法でもよい。
(第10の実施形態)
本実施形態では、コントローラ無線装置から3つの制御対象無線装置にユニキャストで送信する場合についての例を示す。ただし、本実施形態による方法はユニキャストの場合に限られず、ブロードキャスト、マルチキャストなどにも適用できる。また、本実施形態による方法は3つの制御対象無線装置に限られず、2つ、または、4つ以上の制御対象無線装置にも適用できる。
【0142】
図20は、第10の実施形態に係る無線制御システムの概念図であり、無線制御システム100Dは、コントローラ無線装置1Dとロボットアーム2Dとを備える。図1と比較して、ロボットアーム2Dに搭載されるモータ及びモータに接続される制御対象無線装置は3つの場合の例である。ロボットアーム2Dに搭載されるモータ4D-1、4D-2、4D-3、制御対象無線装置3D-1、3D-2、3D-3は、特に区別しない場合にはそれぞれモータ4D、制御対象無線装置3Dと称する。また、コントローラ無線装置1Dは、各制御対象無線装置3Dにユニキャストで無線信号を送信する。各制御対象無線装置3Dは、コントローラ無線装置1Dにユニキャストで送信してもよいし、マルチキャストやブロードキャストで送信してもよい。以下では、各制御対象無線装置3Dもユニキャストで送信する場合で説明する。上記の実施形態の図で説明された機能と同一の名称の機能については符号のみ変更し、ここでの説明は省略する。
【0143】
図21は、第10の実施形態に係るコントローラ無線装置の機能ブロック図を示しており、コントローラ無線装置1Dは、無線部1D01と、状態情報抽出部1D02と、制御部1D03と、制御信号生成部1D04と、転送要否情報生成部1D05と、シーケンスナンバー(SN)決定部1D06と、送信信号生成部1D07と、タイマ1D08とを備える。図4と比較して、コントローラ無線装置1Dは、転送期限情報生成部16の代わりにSN決定部1D06を備える。ここでは主に図4と比較して追加、または、変更した部分を説明し、説明のない機能に関しては、符号のみ変更し、機能は図4と同様である。
【0144】
状態情報抽出部1D02は、無線部1D01から入力された受信信号から1つ以上の制御対象無線装置3DのIDと状態情報とSNを抽出し、制御部1D03に状態情報とSNを出力する。
【0145】
制御部1D03は、取得した各モータ4Dの状態情報を図示せぬ記憶部に格納するもしくはすでに格納されている状態情報とSNを更新することでもよい。制御部1D03は、CPUなどの演算機能やメモリなどを備えたコンピュータなどによって実行されるプログラムなどを備えていてもよい。制御部1D03は、状態情報抽出部1D02から1つ以上の制御対象無線装置3Dの状態情報とSNを取得し、また、コントローラ無線装置1Dの外から外部情報を取得する。また、制御部1D03は、タイマ1D08から時刻情報を取得する。
【0146】
制御部1D03は、時刻情報を基に周期的に制御信号生成部1D04に状態情報を出力し、また、予め組み込まれたプログラムまたは外部情報を基に計算された目標値を出力し、制御信号生成部1D04から制御信号を取得する。目標値は、例えば、ロボットアーム2Dの次の状態の想定値であり、例えばモータ4Dに対して次に設定するべきエンコーダ値(設定パラメータ)であってもよい。制御部1D03は、目標値に基づいて次の制御信号を生成することでもよい。
【0147】
次に、制御部1D03は、転送要否情報生成部1D05に制御周期、制御信号、目標値、または、状態情報を出力し、転送要否情報生成部1D05から転送要の制御対象のIDを取得する。次に、制御部1D03は、SN決定部1D06に転送要の制御対象のIDを出力し、SN決定部1D06から転送要の制御対象へのSNを取得する。次に、制御部1D03は、送信信号生成部1D07に制御信号と転送要の制御対象のIDと転送要の制御対象へのSNを出力する。
【0148】
SN決定部1D06は、制御部1D03から転送要の制御対象のIDを取得し、制御部1D03に転送要の制御対象へのSNを出力する。SNはタイマ1D08から入力した(図示せず)時刻に基づいた値であってもよい。例えば、コントローラ無線装置1Dと各制御対象無線装置3D間で予め時刻同期をとりSNと時刻の換算方法を共有しておくことで、コントローラ無線装置1DがSNを付与した時刻を各制御対象無線装置3Dが取得することができる。なおSNの値は、コントローラ無線装置1Dが制御対象ごとに決定することでもよいし、全ての制御対象装置3Dで一つの通しの値とすることもよい。例えば、コントローラ無線装置1Dは、制御対象ごとに異なるSNを決定し、各SNの値をそれぞれインクリメントすることでもよい。また各制御対象装置3Dは、自身の状態情報に独自のSNを付与してもよい。例えば、状態情報を送信する毎にその独自のSNの値をインクリメントすることでもよい。またコントローラ無線装置1D、各制御対象装置3Dそれぞれの通信を開始するタイミングや、通信する周期、通信する頻度が異なるようにすることで、同じ時刻に通信しても異なるSNが付与されるようにしてもよい。SNの値は、制御信号を生成するコントローラ無線装置1D、または、状態情報を制御対象ドライバ3D06から取得した各制御対象無線装置3Dが決定するものであり、転送する制御対象無線装置3DはそのSNの値を変えない。
【0149】
SNは、各制御対象無線装置3D宛に生成する制御信号の順番を表す整数であってもよい。例えば、制御対象無線装置3D-1宛に生成する最初の制御信号のSNを1にして、次に制御対象無線装置3D-1宛に生成する制御信号のSNを2にしてもよい。
【0150】
図22は、第10の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の概念図を示す。ここでは主に図12と比較して追加、または、変更した部分を説明し、説明のない機能、項目などに関しては、符号のみ変更し、内容は図12と同様であってよい。
【0151】
図22(a)は、コントローラ無線装置1Dの送信信号生成部1D07による上位層の処理、図22(b)は、無線部1D01によるMAC層の処理、図22(c)は、無線部1D01による物理層の処理を示す。
【0152】
図22(a)は、コントローラ無線装置1Dの送信信号生成部1D07が出力する制御情報セットを示しており、制御情報セットには、制御対象に対する制御情報が含まれる。
【0153】
制御情報セットには、制御対象の宛先(制御対象無線装置3DのID、モータ4DのID等でもよい)と、その制御対象に対する制御信号と転送要否とSNなどの情報が含まれる。送信信号生成部1D07は、制御情報セットを上位層のデータとして生成する。送信信号生成部1D07は、作成した制御情報セットを無線部1D01に出力する。
【0154】
図23は、第10の実施形態に係るコントローラ無線装置によるデータ処理例の別の概念図を示す。ここでは主に図22と比較して追加、または、変更した部分を説明し、説明のない機能、項目などに関しては、符号のみ変更し、内容は図22と同様であってよい。
【0155】
図23(a)は、コントローラ無線装置1Dの送信信号生成部1D07による上位層の処理、図23(b)は、無線部1D01によるMAC層の処理、図23(c)は、無線部1D01による物理層の処理を示す。
【0156】
図23(a)は、コントローラ無線装置1Dの送信信号生成部1D07が出力する制御情報セットを示しており、制御情報セットには、制御対象に対する制御情報が含まれる。また制御情報セットには、その制御対象に対する制御信号とSNなどの情報が含まれる。
【0157】
図23(a)は、図22(a)と比較して、制御対象の宛先と、その制御対象に対する転送要否が含まれていない。制御対象の宛先は、MAC層ヘッダに含めることで上位層の情報としては省略することでもよい。これは、コントローラ無線装置1Dから制御対象無線装置3Dにユニキャストで送信するため、可能である。転送要否は、常に転送要とすれば、あえて転送要否の情報を加える必要がなく、省略可能である。あるいは、転送要否は、転送不要である時だけ転送不要であることを示すビットを送信することで転送要否の情報を送信することでもよい。
【0158】
図24は、第10の実施形態に係る制御対象無線装置の構成例を示す機能ブロック図である。図24の制御対象無線装置3Dは、図6の制御対象無線装置3と比較して、第2の無線部3D09と、送信元宛先識別部3D10と、転送された信号抽出部3D13と、第1の転送する信号抽出部3D12と、第2の転送する信号抽出部3D11とをさらに備える。また、図6の無線部31を、図24では第1の無線部3D01と呼び、図24の第1の無線部3D01は図6の無線部と同一の機能とする。ここでは主に図6と比較して追加または変更した部分を説明し、説明のない機能に関しては、符号のみ変更し、機能は図6と同様である。
【0159】
第1の無線部3D01は、無線信号を受信して復調し、復調した受信信号のうち、MAC層ヘッダに含まれる宛先が自分のIDと一致した受信信号を情報抽出部3D02に出力する。自分のIDと一致しない受信信号は破棄する。また、第1の無線部3D01は、第1の送信バッファ群3D08から入力された送信信号に必要に応じてデータを付加して変調し、変調した無線信号を送信する。また、第1の無線部3D01は、受信した無線信号の受信信号レベルを測定し、キャリアセンス部3D03に信号レベルを出力し、キャリアセンス部3D03からビジー/アイドル情報を制御部3D04に出力する。
【0160】
第2の無線部3D09は、無線信号を受信して復調し、復調した受信信号を送信元宛先識別部3D10に出力する。第2の無線部3D09が受信する無線信号は、例えば、図22(c)の無線信号であってもよいし、図23(c)の無線信号であってもよいし、図25(c)の無線信号であってもよい。また無線信号を受信するアンテナは、第1の無線部3D01と共用でも別でもよい。
【0161】
図25は、第10の実施形態に係る送信信号のデータフォーマットの例を示す。図25(a)は、ID=2の制御対象無線装置3Dがユニキャストでコントローラ無線装置1Dに送信するデータの例である。
【0162】
図25(a)のデータは、複数の制御情報セットCIS31からCIS35が含まれる場合の例である。例えば、制御情報セットCIS32と制御情報セットCIS33は、各制御対象無線装置3D(ID=1とID=3)に対する制御信号を含む制御情報セットを示し、それぞれ宛先とその宛先に対する内容、そのSNが含まれる。例えば制御情報セットCIS32において、宛先1(制御対象無線装置3D-1に相当)に対する内容には「制御信号1a」、SNには「1」が含まれる。また、図25(a)のデータの制御情報セットCIS34と制御情報セットCIS35は、コントローラ無線装置1D(ID=cnt)に対して送信する状態情報を含む制御情報セットであり、それぞれ宛先とそのソースとその内容、そのSNが含まれる。ソースとは、その状態情報を生成した制御対象無線装置3DのIDのことである。例えば制御情報セットCIS34において、ソース1(制御対象無線装置3D-1に相当)に対する宛先には「cnt」、内容には「enc3-1」、SNには「1」が含まれる。この場合、制御情報セットCIS34は、ソース1の制御対象無線装置3D-1が、生成した「enc3-1」を「cnt」が示すコントローラ無線装置1D宛てに送信するデータであることを示す。なお、図25(b)と(c)の説明に関しては、図12の(b)と(c)の説明と同様であり、ここでは省略する。
【0163】
図24に戻り、送信元宛先識別部3D10は、第2の無線部3D09から受信信号を取得し、受信信号に含まれる送信元と宛先などを識別し、識別した送信元、宛先などを含めて受信情報として出力する。送信元、および、宛先は、MAC層ヘッダに含まれる送信元、または、宛先から識別してもよいし、上位層の制御情報セットに含まれる送信元、または、宛先から識別してもよい。
【0164】
送信元宛先識別部3D10は、識別した送信元と宛先に応じて、以下の処理を行う。
・送信元がコントローラ無線装置1Dで宛先が自分(制御対象無線装置3D)の場合、送信元宛先識別部3D10は、受信信号に含まれる制御情報などを制御部3D04に出力する(第1の無線部3D01でも同じ信号を受信しており、空間ダイバーシチ効果が得られる)。より具体的には、制御対象無線装置3Dが自宛ての制御情報をコントローラ無線装置1Dから直接受信した場合に、送信元宛先識別部3D10は、受信信号に含まれる制御情報を制御部3D04に出力することでもよい。
・送信元がコントローラ無線装置1Dで宛先が他の制御対象無線装置3Dの場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報を第1の転送する信号抽出部3D12に出力する(他の制御対象無線装置3Dに制御信号を転送するため)。より具体的には、制御対象無線装置3Dが他宛ての制御情報をコントローラ無線装置1Dから直接受信した場合に、送信元宛先識別部3D10は、その制御情報を第1の転送する信号抽出部3D12に出力する。
・送信元が他の制御対象無線装置3Dで上位層の制御情報セットCISに含まれる宛先が自分(制御対象無線装置3D)の場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報を転送された信号抽出部3D13に出力する。より具体的には、ある制御対象無線装置3Dが他の制御対象無線装置3Dから自宛ての制御情報セットCISを受信した場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報を転送された信号抽出部3D13に出力する。
・送信元が他の制御対象無線装置3Dで宛先がコントローラ無線装置1Dの場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報を第2の転送する信号抽出部3D11に出力する。より具体的には、ある制御対象無線装置3Dが他の制御対象無線装置3Dからコントローラ無線装置1D宛ての制御情報セットCISを受信した場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報を第2の転送する信号抽出部3D11に出力する。
・送信元、または、宛先が、予め想定した上記以外である場合、送信元宛先識別部3D10は、その受信信号を破棄する。
【0165】
なお、制御対象無線装置3D-1(ID=1)が、図25(a)のデータを含む無線信号を第2の無線部3D09で受信した場合、送信元宛先識別部3D10は、受信情報(制御情報セットCIS32)を転送された信号抽出部3D13に出力すると共に、送信元宛先識別部3D10は、受信情報(制御情報セットCIS31)を第2の転送する信号抽出部3D11に出力する。
【0166】
第1の転送する信号抽出部3D12は、送信元宛先識別部3D10から受信情報を取得し、受信情報に含まれる宛先と、その宛先の制御信号と、その制御信号のSNを抽出し、第1の送信信号生成部3D07に出力する。
【0167】
第2の転送する信号抽出部3D11は、送信元宛先識別部3D10から受信情報を取得し、受信情報に含まれる宛先と、送信元またはソースと、その状態情報と、そのSNを抽出し、第1の送信信号生成部3D07に出力する。例えば、制御対象無線装置3D-1(ID=1)が、図25(a)のデータを含む無線信号を第2の無線部3D09で受信した場合、第2の転送する信号抽出部3D11は、図25(a)の制御情報セットCIS31に含まれる宛先と、MAC層ヘッダに含まれる送信元と、その状態情報と、そのSNを抽出する。あるいは上記情報に加え、制御情報セットCIS34とCIS35に含まれる宛先と、そのソースと、その状態情報と、そのSNを抽出してもよい。
【0168】
転送された信号抽出部3D13は、送信元宛先識別部3D10から受信情報を取得し、受信情報に含まれる自分宛の制御信号と、その制御信号のSNを抽出し、制御部3D04に出力する。例えば、図25(a)の場合、制御対象無線装置3D-1の転送された信号抽出部3D13は、制御情報セットCIS32に含まれる制御信号と、そのSNを抽出する。
【0169】
情報抽出部3D02は、第1の無線部3D01から入力された受信信号から制御情報とSNなどの受信情報を抽出し、制御部3D04に受信情報を出力する。
【0170】
制御部3D04は、情報抽出部3D02から受信情報を取得し、また、キャリアセンス部3D03からビジー/アイドル情報を取得し、また、タイマ3D05から時刻情報を取得し、制御対象ドライバ3D06から状態情報を取得し、送信元宛先識別部3D10から制御情報とSNを取得し、転送された信号抽出部3D13から制御信号とSNを取得する。
【0171】
図26は、同第10の実施形態に係る制御対象無線装置のデータ処理例の概念図である。
【0172】
図26(a)は、制御対象無線装置3Dが図示せぬバッファに、制御情報セットCIS42からCIS45を格納している例を示す。
【0173】
図26(b)は、制御対象無線装置3Dが図示せぬバッファに図26(a)のデータ格納している時に、第1の無線部3D01、第2の無線部3D09などが新たに制御情報セットCIS52からCIS55を受信した例を示す。
【0174】
図26(c)は、制御対象無線装置3Dが図示せぬバッファに図26(a)のデータを格納している時に、図26(b)のデータを受信した場合に、第1の無線部3D01が送信する制御情報セットCIS61からCIS65の例を示す。制御情報セットCIS61は、制御対象無線装置3D-2の状態情報「enc3D-2-40」をコントローラ無線装置1D(宛先「cnt」)に送信する送信信号の例を示している。制御情報セットCIS62は、制御対象無線装置3D-1に対する制御信号「1a-2」を制御対象無線装置3D-1(宛先「1」)に転送する送信信号の例を示している。制御情報セットCIS63は、制御対象無線装置3D-3に対する制御信号「3a-10」を制御対象無線装置3D-3(宛先「3」)に転送する送信信号の例を示している。制御情報セットCIS64は、制御対象無線装置3D-1の状態信号「enc3D-1-21」をコントローラ無線装置1D(宛先「cnt」)に転送する送信信号の例を示している。制御情報セットCIS65は、制御対象無線装置3D-3の状態信号「enc3D-3-30」をコントローラ無線装置1D(宛先「cnt」)に転送する送信信号の例を示している。
【0175】
なお、図26で示すSNは、制御対象無線装置3Dごとに設定されているものとし、SN(d)のように示す。dは、制御対象無線装置3DのIDに相当する。
【0176】
制御部3D04は、情報抽出部3D02、送信元宛先識別部3D10、および、転送された信号抽出部3D13から取得したSN(SNinと称する)と、図示せぬバッファに保存した最新のSN(SNと称する)を比較し、その比較結果によって以下のように異なる処理を行う。
・(SNin)>(SN)の場合
受信した制御情報が最新であることを意味するため、制御部3D04は、取得したSNに対応する制御信号を制御対象ドライバ3D06に出力し、バッファに保存した最新のSN(SN)を取得したSN(SNin)で置き換える。例えば、制御対象無線装置3D-2(ID=2)が、バッファに制御対象無線装置3D-1(ID=1)宛ての制御情報セットCIS42を保存している時に、制御対象無線装置3D-1(ID=1)宛ての制御情報セットCIS52を新たに受信した場合に、制御対象無線装置3D-2の制御部3D04は、制御情報セットのSNを比較する。制御情報セットCIS52のSN(1)>制御情報セットCIS42のSN(1)であることから、制御対象無線装置3D-2の制御部3D04は、制御情報セットCIS52の制御信号を制御対象ドライバ3D06に出力し、バッファの制御情報セットCIS42のSN(1)(=4)を取得した制御情報セットCIS52のSN(1)(=5)で置き換える。
・(SNin)<(SN)の場合
受信した制御情報が最新ではないことを意味するため、制御部3D04は、取得したSNとそれに対応する制御信号を破棄する。例えば、制御対象無線装置3D-2(ID=2)が、バッファに制御対象無線装置3D-3(ID=3)宛ての制御情報セットCIS43を保存している時に、制御対象無線装置3D-3(ID=3)宛ての制御情報セットCIS53を新たに受信した場合に、制御対象無線装置3D-2の制御部3D04は、制御情報セットのSNを比較する。制御情報セットCIS53のSN(1)<制御情報セットCIS43のSN(1)であることから、制御対象無線装置3D-2の制御部3D04は、制御情報セットCIS53の制御信号を破棄する。
・(SNin)=(SN)の場合
受信した制御情報が最新ではないことを意味する。制御部3D04は、(SNin)>(SN)の場合と同様の処理を行ってもよし、(SNin)<(SN)の場合と同様の処理を行ってもよい。
【0177】
なお、コントローラ無線装置1Dが最初の制御情報を送信する前は、制御対象無線装置3Dのバッファに保存した(SN)の値は、予め定められた最小の値に設定してもよい。例えば、コントローラ無線装置1Dが最初の制御情報を送信する際のSNを1とする場合、その制御情報を受信した制御対象無線装置3Dはバッファに保存した(SN)の値を0としてもよい。
制御部3D04は、時刻情報を基に周期的に、あるいは、最新のSNを取得した直後に、制御対象ドライバ36に状態情報要求信号を出力し、状態情報を取得する。また、制御部3D04は、状態情報と状態情報のSNを第1の送信信号生成部37に出力する。
【0178】
第1の送信信号生成部37は、制御部3D04から状態情報とSNを取得し、第1の転送する信号抽出部3D12、および、第2の転送する信号抽出部3D11から宛先とその宛先の制御信号とその制御信号のSNを取得する。
【0179】
第1の送信信号生成部3D07は、第1の転送する信号抽出部3D12、および、第2の転送する信号抽出部3D11から取得した宛先(dとする)毎のSN(SN(d)inとする)と、バッファに保存した宛先(d)毎の最新のSN(SN(d)とする)を比較し、その比較結果によって以下のように異なる処理を行う。
・(SN(d)in)>(SN(d))の場合
受信した制御情報が最新であることを意味するため、第1の送信信号生成部3D07は、バッファに保存した最新のSN(すなわちSN(d))を取得したSN(すなわちSN(d)in)で置き換え、そのSNとそのSNに対応する制御情報とそのSNに対応する宛先を送信信号の候補とする。例えば、制御対象無線装置3D-2(ID=2)が、バッファに制御対象無線装置3D-1(ID=1)宛ての制御情報セットCIS42を保存している時に、制御対象無線装置3D-1(ID=1)宛ての制御情報セットCIS52を新たに受信した場合に、制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、制御情報セットのSNを比較する。制御情報セットCIS52のSN(1)>制御情報セットCIS42のSN(1)であることから、制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、バッファの制御情報セットCIS42のSN(1)(=4)を取得した制御情報セットCIS52のSN(1)(=5)で置き換える。さらに図26(c)の制御情報セットCIS66に示すように、制御情報セットCIS52の内容を送信信号の候補とする。送信信号は、制御対象無線装置3D-2の第1の無線部3D01から送信されて、制御対象無線装置3D-1に転送されることでもよい。
(SN(d)in)<(SN(d))の場合
受信した制御情報が最新ではないことを意味するため、取得したSNとそれに対応する制御信号とそれに対応する宛先とを破棄する。例えば、制御対象無線装置3D-2(ID=2)が、バッファに制御対象無線装置3D-3(ID=3)宛ての制御情報セットCIS43を保存している時に、制御対象無線装置3D-3(ID=3)宛ての制御情報セットCIS53を新たに受信した場合に、制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、制御情報セットのSNを比較する。制御情報セットCIS53のSN(1)<制御情報セットCIS43のSN(1)であることから、制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、制御情報セットCIS53の制御信号を破棄する。すなわち制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、図26(c)に示すように制御対象無線装置3D-3に対する情報を含めない。
(SN(d)in)=(SN(d))の場合
受信した制御情報が最新ではないことを意味する。(SN(d)in)>(SN(d))の場合と同様の処理を行ってもよし、(SN(d)in)<(SN(d))の場合と同様の処理を行ってもよい。
【0180】
第1の送信信号生成部3D07は、制御部3D04から取得した状態情報とそのSN、および、候補としたSNとそのSNに対応する制御情報とそのSNに対応する宛先とから第一の送信信号を生成し、第1の送信バッファ群3D08に第1の送信信号を出力する。候補としたSNとそのSNに対応する制御情報がなければ、そのSNとそのSNに対応する制御情報を送信信号に含めなくてよい。また、複数の宛先dのSNとそのSNに対応する制御情報とそのSNに対応する宛先があれば、それらを全て送信信号に含めてもよい。
【0181】
上記の処理条件は、各制御対象無線装置3Dが送信する状態情報について適用してもよい。例えば、図26(a)の制御情報セットCIS44,CIS45はそれぞれ制御対象無線装置3D-1、3D-3が送信した状態情報を、制御対象無線装置3D-2が受信し、図示せぬバッファに格納した例である。ここでSN2(d)は、制御対象無線装置3D(ID=d)の状態情報に対するシーケンスナンバーを示すことでもよい。制御対象無線装置3D-2が新たに図26(b)の制御情報セットCIS54,CIS55を受信したとする。制御対象無線装置3D-2の第1の送信信号生成部3D07は、それぞれシーケンスナンバーSN2を比較する。第1の送信信号生成部3D07は上記の制御信号に対する条件に基づいて、図26(c)に示すように制御情報セットCIS54のデータを制御情報セットCIS64として送信信号の候補として選択し、制御情報セットCIS45のデータを制御情報セットCIS65として送信信号の候補として選択し、第1の無線部3D01からコントローラ無線装置1Dへ転送することでもよい。
【0182】
本実施形態により、コントローラ無線装置において、制御信号を各制御対象無線装置にユニキャストで送信した場合であっても、各制御対象無線装置が他の制御対象無線装置に制御情報を転送可能である。また、各制御対象無線装置がコントローラ無線装置に状態情報を送信する際に、他の制御対象無線装置の状態情報を含めて転送可能である。さらに、コントローラ無線装置と各制御対象無線装置がSNを含めて送信し、受信したSNを基に上述した処理を行う事で、転送が必要なタイミングまでに、コントローラ無線装置、または、各制御対象無線装置に転送することができ、それによって各制御対象に対して所望の制御を行うことができる。また、不要な無線信号を送信せずに済む。
【0183】
以上に示した第10の実施形態は以下のようにまとめられる。
(A-1)コントローラ無線装置1Dが各モータに対する制御信号を生成、送信し、制御対象無線装置3Dが自分宛の制御情報を取得して制御対象を制御する。
(A-2)他の制御対象無線装置3Dがコントローラ無線装置1D宛に送信した信号を受信してその受信信号に含まれる自分宛の制御情報を取得して制御対象を制御する。
(A-3)他の制御対象無線装置3Dがコントローラ無線装置1D宛に送信した信号を受信してコントローラ無線装置1D宛の状態情報を取得し制御対象無線装置3Dが自分の状態情報と共にコントローラ無線装置1Dに送信する。
(A-4)コントローラ無線装置1Dが他の制御対象無線装置3Dに送信した信号を受信して制御情報を取得して制御対象無線装置3Dが自分の状態情報と共にコントローラ無線装置1Dに送信する。
【0184】
以上の手順により、制御対象無線装置が自分宛以外の制御信号や状態情報を受信した場合においても転送することが可能となる。なお、上記した例は限定を意図しておらず、様々な例が想定され、さらに上記した例の入れ替え、組み合わせなど任意の方法でもよい。
【0185】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態によれば、効率的に制御を行うコントローラ無線装置、および、制御対象無線装置、制御システム、制御方法及びプログラムを提供することができる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、各実施形態における技術要素を別の実施形態に適用することができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらにまた、請求項の各構成要素において、構成要素を分割して表現した場合、或いは複数を合わせて表現した場合、或いはこれらを組み合わせて表現した場合であっても本発明の範疇である。また、複数の実施形態を組み合わせてもよく、この組み合わせで構成される実施例も発明の範疇である。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0187】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。ブロック図においては、結線されていないブロック間もしくは、結線されていても矢印が示されていない方向に対してもデータや信号のやり取りを行う場合もある。フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0188】
1…コントローラ無線装置、2…ロボットアーム、3-1…制御対象無線装置、4-1…モータ、11…無線部、12…状態情報抽出部、13…制御部、14…制御信号生成部、15…転送要否情報生成部、16…転送期限情報生成部、17…送信信号生成部、18…タイマ、31…無線部、32…情報抽出部、33…キャリアセンス部、34…制御部、35…タイマ、36…制御対象ドライバ、37…第1の送信信号生成部、38…第1の送信バッファ群、1309…転送ID情報生成部、1411…エア支配率測定部、3609…第2の送信信号生成部、3610…第2の送信バッファ群、3611…送信バッファ選択部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26