(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ラピッドプロトタイピング法またはラピッドマニュファクチャリング法に使用される放射線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/887 20200101AFI20240520BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20240520BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20240520BHJP
A61C 13/007 20060101ALI20240520BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20240520BHJP
A61K 6/71 20200101ALI20240520BHJP
A61K 6/77 20200101ALI20240520BHJP
A61K 6/79 20200101ALI20240520BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20240520BHJP
A61C 7/00 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
A61K6/887
A61C5/70
A61C13/00 A
A61C13/00 Z
A61C13/007
A61C13/08
A61K6/71
A61K6/77
A61K6/79
A61K6/836
A61C7/00
(21)【出願番号】P 2021515648
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2019075295
(87)【国際公開番号】W WO2020058464
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102018123330.2
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 2, D-63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ホーマン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0082958(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0113846(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0093741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00- 6/90
A61C 5/00- 5/90
A61C 7/00- 7/36
A61C 13/00-13/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)モノマーと、
(ii)少なくとも1つのさらなる成分と
を含む重合可能な放射線硬化性組成物であって、前記組成物が、全組成を100重量%として、
(a)
30~50重量%の、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、および/または付加的なカルボキシ基の無水物を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、
(b)
15~25重量%の、二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)
20~50重量%の、少なくとも1つの式I
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
5およびR
6は、それぞれ独立してHまたはC1~C4アルキルから選択され、R
3およびR
4は、それぞれ二価C1~C4アルキレンであり、n=0~6かつm=0~6である]の二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン、
(d)0.01~10重量%の、UVスペクトル領域および/もしくはVisスペクトル領域の光開始剤、またはUVスペクトル領域および/もしくはVisスペクトル領域の光開始剤系であって、ベンゾインアルキルエーテルもしくはベンゾインアルキルエステル、ベンジルモノケタール、アシルホスフィンオキシド、または脂肪族および芳香族1,2-ジケト化合物から選択される光開始剤または光開始剤系、
(e.1)0~25重量%の、少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性もしくは多官能性のモノマー、および/または
(e.2)0~25重量%の、少なくとも1つの少なくとも二官能性のウレタン(メタ)アクリレート、
(f)0.01~10重量%の無機フィラーであって、無機酸化物もしくは無機混合酸化物、および/または歯科用ガラスを含む無機フィラー
を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
(a)前記付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、
および/または付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エス
テルが、式IIまたは式III
【化2】
[式中、R
7は、それぞれ独立して、1個~25個のC原子を有しかつC、H、Oおよび任意にNを含有する二価の基から選択され、R
8はHおよびC1~C4アルキルから選択される]
【化3】
[式中、R
9は独立して二価ベンゾイル、サリチロイルおよびそれらの誘導体、または-C-から選択され、R
10は二価-(OR
11)
r-であり、ここで、R
11はエチレンもしくはプロピレンであり、rは0~10であるか、またはR
10は独立して二価アルキレンから選択され、かつ/またはR
8はHおよびC1~C4アルキルから選択される]
の付加的なカルボキシ基を有するアクリル酸エステルから選択されることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(a)前記付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、
および/または付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エス
テルが、2-アクリロイルオキシエチル水素フタレート、カルボキシ基を有するポリエーテル官能化アクリル酸エステル、および/または4-(2-メタクリルオキシエチル)トリメリット酸無水物(4-META)を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも1つのさらなるモノマー
(e.1)少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性もしくは多官能性のモノマーであって、ウレタン(メタ)アクリレートではないモノマー、および/または
(e.2)少なくとも1つの少なくとも二官能性のウレタン(メタ)アクリレート
を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
(b)前記二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレートが、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(TCDA)、トリシクロデカンジエタノールジアクリレート、トリシクロデカンジエタノールジメタクリレートおよび/またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
(c)前記少なくとも1つの式I
【化4】
の二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタンが、R
1およびR
2がそれぞれメチルであり、R
5およびR
6が同じであり、H、メチルおよびエチルから選択され、R
3およびR
4がそれぞれ独立して二価エチレンまたはプロピレンであり、n=1~6、かつm=1~6である二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタンを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
レオメータを用いて100/s、23℃で測定した場合に、前記組成物が、5000mPa・s未満の粘度を有することを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
任意に凝集および/または凝結した一次粒子として存在する前記無機フィラーの一次粒度が、平均して約3~70nmの粒径となることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物を重合して得られた組成物であって、代替的または累積的に、a)DIN EN ISO 20795-2に準拠した75MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)DIN EN ISO 20795-2に準拠した2000MPa以上のヤング率、および/またはc)1.7MPa・m
1/2以上の曲げ破壊靭性値(DIN EN ISO 20795-2)、および/またはd)250J/m
2超の破壊エネルギー(DIN EN ISO 20795-2)を有することを特徴とする、
組成物。
【請求項10】
歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造のための請求項1から8までのいずれか1項記載の
組成物を重合して得られた三次元成形体の形態のブランクであって、a)DIN EN ISO 20795-2に準拠した75MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)DIN EN ISO 20795-2に準拠した2000MPa以上のヤング率、および/またはc)1.7MPa・m
1/2以上の曲げ破壊靭性値(DIN EN ISO 20795-2)、および/またはd)250J/m
2超の破壊エネルギー(DIN EN ISO 20795-2)を有することを特徴とする、ブランク。
【請求項11】
ラピッドプロトタイピング法、またはラピッドマニュファクチャリング法もしくはラピッドツーリング法における歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造のための請求項1から
8までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項12】
前記歯科用補綴具が、義歯床またはその一部、人工歯、歯間が一体材料で連結された人工歯を少なくとも2本~16本有する歯科用アーチ、クラウン、プロビジョナルクラウン、総義歯、フルクラウン、歯列矯正用のスプリント(インビザラインと同様)、歯科用ブリッジ、アバットメント、上部構造体、歯科用バー、インレー、アンレー、オクルーザルスプリント等の矯正装具、人工歯の歯科用プリフォーム、インプラント学用のドリルガイド、マウスガード、および/またはインプラントを含むことを特徴とする、請求項
11記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、(i)モノマーと、(ii)少なくとも1つのさらなる成分とを含み、(i)モノマーが、
(a)付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、
(b)二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)任意に、少なくとも1つの式Iの二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン
を含み、(ii)少なくとも1つのさらなる成分が、
(d)少なくとも1つのUV領域および/またはVis領域の光開始剤、または相応の光開始剤系
を含む、重合可能な放射線硬化性、特にUV/Vis硬化性、UV硬化性またはVis硬化性の組成物である。本発明による組成物は、a)50MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)1500MPa以上のヤング率、および/またはc)1.1MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値(Biegebruch)、および/またはd)250J/m2以上の破壊エネルギー(DIN EN ISO 20795-2)を特徴とし、ラピッドプロトタイピング法、またはラピッドマニュファクチャリング法もしくはラピッドツーリング法で製造することができる歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造に適している。
【0002】
歯科分野では、人手による製造方法に加え、デジタル製造方法がますます重要になっている。例えばクラウンおよびブリッジ等の歯科修復物(Zahnersatz)は、数年前からCAD-CAM技術によって減法的に製造されている。このミリング技術では材料のごく一部しか使用されず、大部分が廃棄され、また常に一度に1つの歯科用コンポーネントにしかツールを用いることができないため、多くの歯科用コンポーネントを同時に製造し、廃棄物が全くまたは殆どない構築方法では、大きなコスト面での利点を達成することができるはずである。
【0003】
例えば、クラウンおよびブリッジ、インプラントコンポーネント、または模型の製造のためのCoCr、Tiまたはポリマーからのレーザー焼結の形態での製造方法が歯科分野では既に知られている。
【0004】
DIN EN ISO 20795-2に準拠した歯科分野における機械的要件に関して適切な特性プロファイルを有する歯科修復物の製造のためのアクリレートまたはアクリレート誘導体の組成物は、これまでに得られていない(Quintessenz Zahntech. 2017-43(10)の1325頁を参照されたい)。印刷可能なプラスチックおよび樹脂についてMPGクラスIIaに準拠した証明書を提示することができる製造業者はごく僅かであり、現在殆どの樹脂が無充填でしか印刷することができないため、現在利用可能な材料の機械的性質は常に低い。したがって、これらの材料は最終歯科修復物の製造には適していない。このため、最終的な補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造のための組成物が必要とされる。
【0005】
本発明の課題は、硬化、特に放射線硬化法を用いた硬化後に曲げ破壊靭性値および破壊エネルギーに関して良好な特性を有するフィラーを任意に含み得るモノマーの混合物を提供することであった。完全に重合した混合物は、1.1MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値、および/または250J/m2超の破壊エネルギー値を有することが好ましい(DIN EN ISO 20795-2)。加えて、組成物は、放射線硬化ラピッドマニュファクチャリング(RM)法またはラピッドプロトタイピング(RP)法に使用することができることが望ましい。さらなる課題は、無機フィラーを含有し、重合性組成物または重合した組成物として高い透明度を有する組成物を提供することであった。本発明は任意に、二酸化ケイ素について知られているような重合した組成物の透明度の低下を引き起こさないフィラーを提示するという付加的な課題に基づく。加えて、フィラーは、重合した組成物の物理的性質および機械的性質にも有益な影響を及ぼすことが好ましい。さらに、これらの方法への使用に対する組成物の適性を損なうことなく、組成物に染料および/または繊維を添加することが可能であることが望ましい。さらに、モノマーに加えてフィラー、開始剤、安定剤、染料、繊維、および必要に応じて添加剤を含むことができ、光硬化RM法またはRP法によって、歯科用製品および歯科用補綴具を製造することができる組成物を提供することが課題であった。
【0006】
歯科用製品は、この場合、特に重合性組成物から製造することができる歯科用製品、例えば、限定されるものではないが、総義歯、プロビジョナルクラウンおよびブリッジ、インレー、アンレー、フルクラウン、オクルーザルスプリント、インプラント学用のドリルガイド(Bohrschablonen)、歯列矯正用のスプリント(インビザライン(Invisalign)と同様)、マウスガード、人工歯を意味することが理解される。
【0007】
本発明の主題は、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体を含むモノマー、任意にプレポリマー(オリゴマー)および/またはポリマーと、任意に少なくとも1つの無機フィラーとを含む組成物である。放射線硬化した組成物は、好ましくは少なくとも95%、特に97%超、好ましくは98%という高い透明度を有する(測色計SF 600(Datacolor)を用いて金型内で製造された1mm厚の着色試験片で測定される)。
【0008】
高い審美的要件を満たすためには、例えば作業模型、矯正用模型、ドリルガイド、暫間補綴物およびスプリント等の最終歯科修復物の製造のために歯科分野で利用可能な組成物は、高い透明度を有する必要がある。この透明度は通例、フィラーおよびポリマーマトリックスの屈折率を最適に適合させることによって達成される。しかしながら、この際、様々な物理的および化学的境界条件のために、フィラーおよびモノマーの両方の選択には非常に厳しい制限が設けられる。
【0009】
このため、典型的な歯科用ガラスフィラーは、1.50~1.54の範囲の屈折率を有する。同様に、歯科材料に適した多くのモノマーもこの範囲の屈折率を有する。ただし、歯科用ガラスの顕著に高い密度のために組成物が分離することから、通例、例えば焼成シリカ(「アエロジル」)等のレオロジー調整剤が添加される。焼成シリカは、一方で1.46という所望の透明度にとって好ましくない屈折率を有し、重合性組成物に望ましい屈折率の最適範囲(1.50超)のはるか外側に位置する。したがって、このレオロジー調整剤を添加することで、それにより製造されるポリマー材料の透明度が低下する。
【0010】
この課題は、ジルコニウムをドープした二酸化ケイ素フィラー、特に二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物を用いて解決することができる。例えば、混合酸化物の全組成に対して75~99重量%の二酸化ケイ素と、1~25重量%の二酸化ジルコニウムとを含む凝集混合酸化物が特に好ましく、混合酸化物は、特に85~90重量%の二酸化ケイ素と、10~15重量%の二酸化ジルコニウムとを含む。さらに好ましくは、凝集酸化物粒子の一次粒子が4~7nmの微結晶ドメインを含み、有利には、Windisch et al.(国際公開第01/30306号)の方法に従って決定される結晶化度が0.6~0.7であり、凝集酸化物粒子が少なくとも1つのモノマー成分および/またはポリマー成分に対して反応性の少なくとも1つの有機官能性シランで表面修飾される。この本発明に従って処理された凝集酸化物粒子は、摩耗測定における光沢度、優れた透明度に関して優れた特性、ならびに歯ブラシ試験後の反射および粗さの測定における非常に良好な値を有する。
【0011】
モノマーの選択の際にも、モノマーが任意に使用されるフィラーと良好に結合することに注意する必要がある。通例、ポリウレタン、アクリレート、ポリエステルおよび他のモノマーは、使用されるフィラーとは良好に結合しない。したがって、フィラーは通例、モノマーとの結合の改善のために表面がシラン化または疎水化される。
【0012】
驚くべきことに、酸性モノマーもフィラー粒子に良好に付着することが見出された。したがって、本発明によると、遊離カルボキシ基および/または無水物基を有する重合性モノマーを含む組成物が提供され、この組成物は、脂環式基を有する二官能性アクリレートまたはメタクリレートと、少なくとも1つの光開始剤とをさらに含む。
【0013】
特定の歯科用途、例えば目的とする組成物の粘度のために、重合性組成物に無機フィラーを使用することができない場合、放射線の反射、特に入射放射線の拡散反射または散乱のために組成物に染料または顔料を使用することができる。染料は、重合性組成物に可溶であり、好ましくは透明な溶液を生じる化合物とされる。
【0014】
本発明による放射線硬化性組成物には、好ましくはVis領域の光を発する放射線源を用いて照射することができる。360~750nm、特に約385nm、特に好ましくは約405nmの放射線を発する放射線源が特に好ましい。特に好ましくは、本発明による組成物には、DLPプロジェクター等の多色放射線源、または好ましくはレーザープロジェクター等の単色放射線源を用いて380~660nmのVis領域で照射することができる。
【0015】
これらの顔料および/または染料を添加することで、組成物中の光開始剤の含有量を減らすことができる。光開始剤の含有量が過度に高いと、照射を受けた組成物のいわゆる「オーバーキュア」、すなわち脆化が引き起こされ、それに応じて製造された歯科用部材を利用することができなくなる可能性がある。
【0016】
本発明による無機フィラー、顔料または染料の使用は、組成物のモノマーマトリックスにおける放射線源、特にUV放射線源およびVis放射線源の均一な散乱をもたらし、組成物の均一な硬化が想定される。結果として、重合した組成物では、達成される破壊エネルギーの値が高くなる。
【0017】
本発明による組成物は、Vis領域、特に385~405nmの放射線源による曝露後、好ましくはステレオリソグラフィー法での曝露後に、重合した組成物を、好ましくはブランク、歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの形態で得た後に、さらには重合した組成物を、任意に放射線源を用いてアフタベーキング(Nachverguetung)した後に、それぞれDIN EN ISO 20795-2に準拠して決定される、以下の特性:a)50MPa以上、特に75MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)1500MPa以上、特に2000MPa以上のヤング率、および/またはc)1.1MPa・m1/2以上、1.7MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値、および/またはd)250J/m2超、特に270J/m2以上の破壊エネルギーを有する。
【0018】
二次硬化またはアフタベーキングは、好ましくは、例えば実験室用照明装置(HiLite Power 3D)または照射炉(Lichtofen)内で、好ましくは390~540nmの光スペクトルを用いて行うことができる。
【0019】
本発明の主題は、重合可能な、特にUV/VIS照射、UV照射またはVIS照射によって重合可能な放射線硬化性組成物であって、(i)モノマー、好ましくはモノマーの混合物と、(ii)少なくとも1つのさらなる成分とを含み、
(i)モノマーが、
(a)付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、
(b)好ましくはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(TCDA)、トリシクロデカンジエタノールジアクリレート、トリシクロデカンジエタノールジメタクリレートおよび/またはそれらの混合物から選択される、二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)任意に少なくとも1つの式I
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
5およびR
6は、それぞれ独立してHまたはC1~C4アルキルから選択され、特にR
1およびR
2はC1~C4アルキル、好ましくはメチルであり、R
5およびR
6は同じであり、H、メチルまたはエチルから選択され、特にR
5およびR
6は同じであり、Hまたはメチルから選択され、R
3およびR
4は、それぞれ二価C1~C4アルキレンであり、n=0~6かつm=0~6である]の二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン
を含み、(ii)少なくとも1つのさらなる成分が、
(d)少なくとも1つのUV領域および/またはVis領域の光開始剤、または光開始剤系
を含む、組成物である。
【0020】
好ましい代替形態では、式Iにおいて、R1およびR2は、それぞれメチルとすることができ、R5およびR6は同じであり、H、メチルおよびエチルから選択することができ、好ましくはR5およびR6は同じであり、Hおよびメチルから選択され、R3およびR4は、それぞれ独立して二価エチレンまたはプロピレンであり、n=1~6、好ましくはn=2~4、かつm=1~6であり、特に好ましくはn=2~4かつm=2~4、さらに好ましくはn=2かつm=2、またはn=4かつm=4、さらにはその混合である。a)R1およびR2がそれぞれメチルであり、R5およびR6がHであり、R3およびR4がそれぞれ独立して二価エチレンであり、n=1~6、好ましくはn=2~4、かつm=1~6、好ましくはm=2~4であり、好ましくはn=4かつm=4、さらにはその混合であるものと、b)R1およびR2がそれぞれメチルであり、R5およびR6がメチルであり、R3およびR4がそれぞれ独立して二価エチレンであり、n=1~6、好ましくはn=2~4、かつm=1~6、好ましくはm=2~4であり、好ましくはn=2かつm=2、さらにはその混合であるものとの混合物である、式Iの4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタンの混合物が特に好ましい。
【0021】
任意に、組成物は少なくとも1つのポリエーテルジアクリレート、例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(アルキル)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジ(アルキル)アクリレート、または上記のモノマーの少なくとも2つを含有する混合物を付加的に含み得る。好ましいポリエーテルジアクリレートは、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートおよび/またはテトラエチレングリコールジメタクリレートから選択することができる。代替的または付加的には、組成物は、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキシルデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、またはこれらのアクリレートの少なくとも1つを含有する混合物から選択されるジアクリレートを含み得る。
【0022】
(メチル)アクリレートまたは(アルキル)アクリレートという用語の括弧内の表示は、アクリレートがアクリレートまたはメチルアクリレート、代替的にはアルキルアクリレートとして存在する可能性があることを意味する。
【0023】
さらに、組成物が、(a)付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの少なくとも1つの誘導体として、特に、式IIまたは式III
【化2】
[式中、R
7は、それぞれ独立して、1個~50個のC原子、特に1個~25個のC原子、好ましくは8個~25個のC原子を有しかつC、H、Oおよび任意にNを含有する二価の基、特に二価芳香族エステル、芳香族ウレタン、アルキレンエステル、アルキルウレタン、芳香族エーテル、アルキルエーテルから選択され、R
8はHおよびC1~C4アルキルから選択され、好ましくは、R
7は二価芳香族エステル、好ましくはフタル酸エステルであり、R
8はH、メチルまたはエチルである]
【化3】
[式中、R
9は独立して二価ベンゾイル、サリチロイルおよびそれらの誘導体、または-C-から選択することができ、R
10は二価-(OR
11)
r-とすることができ、ここで、R
11はエチレンまたはプロピレンであり、r=0~10であり、特にr=1~6、好ましくはr=1であり、特に好ましくは、-(OR
11)-は、1個~6個のプロピレングリコール単位またはエチレングリコール単位を有するポリ(アルキレングリコール)、特にポリ(プロピレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)に由来する二価の基とすることができ、またはR
10は独立して二価アルキレンから選択することができ、R
8はHおよびC1~C4アルキルから選択することができ、好ましくは、R
8はH、メチルまたはエチルである]の付加的なカルボキシ基を有するアクリル酸エステルから選択される、アルキルC1~C4アルキル基、好ましくはメチルまたはエチルのようなアルキルを有する(アルキル)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
【0024】
本発明の主題は、(a)として、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物基を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、特に2-アクリロイルオキシエチル水素フタレート、カルボキシ基を有するポリエーテル官能化アクリル酸エステルを含むことができる組成物でもある。好ましくは、組成物は、アクリルにカルボキシ基を有するポリエーテル官能化アクリル酸エステル、アルキルにカルボキシ基を有するポリエーテル官能化アクリル酸エステルを含み、特にポリエーテルは、1個~6個のグリコール単位を有するポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)、および/または4-(2-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物(4-META、2-[(2-メチル-1-オキソアリル)オキシ]エチル-1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)をベースとする。
【0025】
本発明によると、組成物は、2-アクリロイルオキシエチル水素フタレートを任意に2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの混合物で含む。
【0026】
組成物中の少なくとも1つのさらなるモノマーとして同様に好ましいモノマーは、
(e.1)少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性もしくは多官能性のモノマーであって、特にウレタン(メタ)アクリレートではないモノマー、および/または
(e.2)少なくとも1つの少なくとも二官能性のウレタン(メタ)アクリレート
から選択することができる。
【0027】
単官能性モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートを使用することが好ましい。同様に、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/またはヒドロキシエチルアクリレートを、任意に上述のモノマーの少なくとも2つの混合物として使用することができる。
【0028】
代替形態によると、さらなる成分として、(f)無機フィラー、無機酸化物または無機混合酸化物、特にジルコニウムおよび/またはケイ素の酸化物、および/または歯科用ガラスから選択され、好ましくは二酸化ジルコニウム、または酸化ジルコニウムもしくは二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物、二酸化ケイ素である、無機フィラーを含む組成物が好ましい。特に好ましいフィラーは、二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物である。任意に2μm~5μmの凝集体として存在する、100nm未満の範囲の一次粒度を有する二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物が特に好ましい。これらの酸化物または混合酸化物は、好ましくは本質的にX線非晶質(roentgenamorph)である。歯科用ガラスとしてアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラスおよび/またはバリウムアルミニウムシリケートを使用することができる。酸化物は、上述のものからだけでなく、酸化物または混合酸化物ベースの非晶質球状フィラーからも選択することができる。
【0029】
例えばバリウムアルミニウム酸化物を含む、少なくとも1つの無機酸化物、混合酸化物または歯科用ガラス等の無機フィラーの粒度は、本用途では平均して10μm未満の平均粒径d50となり、特に好ましくは、フィラーは約3~70nm、特に10~50nm(ナノメートル)の粒径を有し、任意に最大10μmの粒子として凝結または凝集した粒子が存在し得る。任意に凝集および/または凝結した一次粒子として存在し得る無機フィラーの一次粒度は、平均して約3~70nm、特に10~50nmの粒径となる。好ましくは、二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物は、3~70nmの一次粒度を有する。必要に応じて凝結および/または凝集し得る非常に小さな粒径の利点は、放射線硬化の際に光がこれらの粒子により本質的に拡散して散乱するため、ステレオリソグラフィー法またはDLP法において硬化が改善されることである。
【0030】
本発明による特定の組成物は、
(a)1~60重量%の、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、
(b)1~30重量%の、二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)任意に、0~50重量%の少なくとも1つの式Iの二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン[式中、R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立してHまたはC1~C4アルキルから選択され、特にR1およびR2はC1~C4アルキル、好ましくはメチルであり、R5およびR6は同じであり、H、メチルまたはエチルから選択され、特にR5およびR6は同じであり、Hまたはメチルから選択され、R3およびR4は、それぞれ二価C1~C4アルキレンであり、n=0~6かつm=0~6である]、
(d)0.01~10重量%のUV領域および/またはVis領域の光開始剤、
(e.1)0~25重量%の、少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性もしくは多官能性のモノマーであって、特にウレタン(メタ)アクリレートではないモノマー、および/または
(e.2)0~25重量%の少なくとも1つの少なくとも二官能性のウレタン(メタ)アクリレート、ならびに
(f)0~10重量%、特に0.01~7.5重量%の、無機酸化物または無機混合酸化物、および/または歯科用ガラス、特に二酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物、二酸化ケイ素を含む無機フィラー
を含み得る。
【0031】
本発明によるさらなる特定の組成物は、全組成を100重量%として、
(a)10~50重量%、特に20~55重量%の、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、
(b)5~25重量%の、二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)1~50重量%、特に15~50重量%の少なくとも1つの式Iの二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン[式中、R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立してHまたはC1~C4アルキルから選択され、特にR1およびR2はC1~C4アルキル、好ましくはメチルであり、R5およびR6は同じであり、H、メチルまたはエチルから選択され、特にR5およびR6は同じであり、Hまたはメチルから選択され、R3およびR4は、それぞれ二価C1~C4アルキレンであり、n=0~6かつm=0~6である]、
(d)0.01~10重量%のUV領域および/またはVis領域の光開始剤、
(e.1)0.01~15重量%の、少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性もしくは多官能性のモノマーであって、特にウレタン(メタ)アクリレートではないモノマー、および/または
(e.2)任意に、10~20重量%の少なくとも1つの少なくとも二官能性のウレタン(メタ)アクリレート、ならびに
(f)任意に、0.01~7.5重量%の、無機酸化物または無機混合酸化物、および/または歯科用ガラス、特に二酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物、二酸化ケイ素を含む無機フィラー
を含み得る。
【0032】
さらなる特に好ましい組成物は、全組成を100重量%として、
(a)30~55重量%の、付加的なカルボキシ基を有する少なくとも1つのアクリル酸エステル、付加的なカルボキシ基の無水物を少なくとも1つ有するアクリル酸エステル、および/または上述のアクリル酸エステルの誘導体、
(b)15~25重量%の、二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性アクリレートおよび/または二価脂環式基を有する少なくとも1つの二官能性メタクリレート、
(c)20~50重量%の少なくとも1つの式Iの二置換4,4’-ジ(オキサベンゼン)ジアルキルメタン[式中、R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立してHまたはC1~C4アルキルから選択され、特にR1およびR2はC1~C4アルキル、好ましくはメチルであり、R5およびR6は同じであり、H、メチルまたはエチルから選択され、特にR5およびR6は同じであり、Hまたはメチルから選択され、R3およびR4は、それぞれ二価C1~C4アルキレンであり、n=0~6かつm=0~6である]、
(d)0.01~10重量%のUV領域および/またはVis領域の光開始剤、
(e.1)0.5~10重量%の、少なくとも1つの単官能性、三官能性、四官能性または多官能性のモノマーであって、ウレタン(メタ)アクリレートではないモノマー、および/または
(f)任意に、0.01~7.5重量%の、無機酸化物または無機混合酸化物、および/または歯科用ガラス、特に二酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素との混合酸化物、二酸化ケイ素を含む無機フィラー
を含み得る。
【0033】
さらに、組成物がチキソトロピーを示さないことが好ましい。加えて、組成物が5000mPa・s未満、特に500mPa・s以上4000mPa・s未満、好ましくは500~3000mPa・s、特に好ましくは500~1500mPa・sの粘度を有することが特に好ましい。粘度は、好ましくはDIN 1342-2;2003-11ニュートン流体またはDIN 1342-3;2003-11非ニュートン流体に準拠し、レオメータ(Anton Par, Physiker NCR 301、100/s、23℃で200~5000mPa・sの粘度範囲)を用いて測定される。本発明による組成物は、チキソトロピーを全く、または好ましくは僅かにしか示さない。製造された組成物は、構造粘性であり、組成物がフィラーの有無にかかわらず構造粘性であることが好ましい。さらなる実施形態によると、より長い保管期間にわたって組成物に粘度変化が殆ど生じないことが好ましい。さらに、組成物は、レーザーまたはDLPプロジェクターで露光した場合に非常に良好な反応性を有する。
【0034】
本発明による組成物を用いて、ワークピースまたは三次元成形体を非常に良好な幾何学的精度/分解能で印刷することができる。さらに、良好な色彩安定性がワークピースに認められる。
【0035】
本発明の主題は、重合性組成物に照射することによって得ることができる、好ましくは歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームとしての重合した組成物である。
【0036】
好ましくは歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームとしての重合した、特に放射線硬化した組成物は、累積的に以下の特性を有することが好ましい:a)50MPa以上、特に70MPa以上の曲げ強さ、およびb)1500MPa以上、特に2000MPa以上のヤング率、およびc)1.1MPa・m1/2以上、特に1.8MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値、およびd)250J/m2超、特に270J/m2超の破壊エネルギー。これらの特性は、DIN EN ISO 20795-2に準拠して決定した。無機フィラーを含まない重合した組成物は、390J/m2超の破壊エネルギーを有する可能性がある。
【0037】
さらなる代替的な実施形態によると、重合した組成物、特に放射線硬化した組成物、特にUV/Vis硬化した組成物、好ましくは付加的にあらゆる面から放射線硬化した、代替的または累積的に以下の特性を有する組成物を得ることができる:a)75MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)2000MPa以上のヤング率、および/またはc)1.7MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値、および/またはd)250J/m2超の破壊エネルギー。これらは、それぞれDIN EN ISO 20795-2に準拠して決定される。
【0038】
付加的なあらゆる面からの放射線硬化は、例えば3D照射炉内でのアフタベーキングを意味することが理解される。
【0039】
好ましくは、重合した組成物は26以下、好ましくは24未満のヤング率/曲げ強さ比を特に250J/m2超、好ましくは280J/m2以上の破壊エネルギーと併せて有する。これらは、それぞれDIN EN ISO 20795-2に準拠して決定される。
【0040】
同様に、本発明の主題は、歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造に適した、好ましくは付加的にあらゆる面から放射線硬化した、重合組成物の三次元成形体の形態のブランクであり、ブランクは、それぞれDIN EN ISO 20795-2に準拠して決定される、a)75MPa以上の曲げ強さ、および/またはb)2000MPa以上のヤング率、および/またはc)1.7MPa・m1/2以上の曲げ破壊靭性値、および/またはd)250J/m2超の破壊エネルギーを有する。ブランクは、好ましくは、最終的に個々の患者に適合させるために研磨するだけでよく、または咬合面の僅かな再加工が行われる人工歯の形態とすることができる。
【0041】
さらに、本発明の主題は、ラピッドプロトタイピング法もしくはラピッドマニュファクチャリング法、すなわち歯科用補綴具の製造、またはラピッドツーリング法における歯科用補綴具、矯正装具または歯科用プリフォームの製造のための組成物の使用である。
【0042】
ここで、以下の方法:歯科用補綴具等のワークピースの製造方法であるラピッドプロトタイピングもしくはラピッドマニュファクチャリング、またはツールの製造方法であるラピッドツーリングには、それぞれステレオリソグラフィー法およびDLP法が含まれる。任意に、上述の方法では重合性組成物の硬化後にUV光、Vis光またはUV/Vis光によるアフタベーキングを行ってもよい。好ましくは、重合した組成物、または歯科用補綴具、矯正装具もしくは歯科用プリフォーム、またはブランクのアフタベーキングは、少なくとも3面から、好ましくは照射炉内で可能であるように5面ないし6面から同時に行われる。代替的には、重合した組成物を付加的または代替的にベーキングすることができる。
【0043】
歯科用補綴具は、例えば歯肉またはその一部の複製物としての義歯床またはその一部、人工歯、歯間が一体材料で連結された人工歯を少なくとも2本~16本有する歯科用アーチ、クラウン、プロビジョナルクラウン(provisorische Kronen)、総義歯(Totalprothesen)、フルクラウン(Vollkronen)、歯列矯正用のスプリント(Schienen)(インビザライン(Invisalign)と同様)、歯科用ブリッジ、アバットメント(Abutments)、上部構造体、歯科用バー(Stege)、インレー、アンレー、矯正装具、例えばオクルーザルスプリント(Aufbissschienen)、人工歯の歯科用プリフォーム、インプラント学用のドリルガイド、マウスガード、および/またはインプラントを含む。
【0044】
色の調整のために組成物に付加的な着色顔料を添加することができる。加えて、歯肉の血管を模倣するために組成物に赤色繊維を添加することができる。適切な着色顔料の例は、PV Echtrot - CAS 4948-15-6、Indischblau 220943 - CAS 68186-87-8、Echtschwarz 100 - 68186-91-4、Kronos 2220 - CAS 13463-67-7およびLichtgelb 3R - CAS 68186-90-3である。重合した組成物では、硬化層当たり5μm~250μmの範囲の層厚を達成することができる。
【0045】
屈折率に関した配合成分の最適な選択により高い透明度を達成することができる。
【0046】
代替形態では、単官能性モノマーは、言及されるモノマーの少なくとも1つを含有し得る:メチルメタクリレート、および任意に付加的なエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、テトラヒドロフリルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、これらの(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含有する混合物、および/または上述のモノマーの1つまたは少なくとも2つを含むコポリマー。
【0047】
好ましい組成物は構造粘性であり、すなわち組成物は、剪断応力下で粘度が変化することが好ましい。
【0048】
さらに、組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートではない三官能性、四官能性または多官能性のモノマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよび/またはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを含み得る。
【0049】
光開始剤としては、例えばベンゾインアルキルエーテルもしくはベンゾインアルキルエステル、ベンジルモノケタール、アシルホスフィンオキシド、または脂肪族および芳香族1,2-ジケト化合物、例えば2,2-ジエトキシアセトフェノン、9,10-フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’-ジクロロベンジルおよび4,4’-ジアルコキシベンジル、またはカンファーキノンが考えられる。光開始剤は、好ましくは還元剤と共に使用される。還元剤の例は、脂肪族または芳香族第三級アミン等のアミン、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジンまたはトリエタノールアミン、シアンエチルメチルアニリン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルジフェニルアミン、N,N-ジメチル-sym-キシリジン、N,N-3,5-テトラメチルアニリンおよび4-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、または有機ホスファイトである。一般的な光開始剤系は、例えばエチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(エチルヘキシル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートまたはN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを加えたカンファーキノンである。
【0050】
UV光によって開始される重合の開始剤には、特に2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが適している。UV光開始剤は、単独でまたは可視光開始剤と組み合わせて使用することができる。
【0051】
特に好ましい光開始剤および/または開始剤系は、a)少なくとも1つのラジカル光開始剤、特に少なくとも1つの過酸化物および/またはアゾ化合物、特にLPO:ジラウロイルペルオキシド、BPO:ジベンゾイルペルオキシド、t-BPEH:tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、AIBN:2,2’-アゾビス-(イソブチロニトリル)、DTBP:ジ-tert-ブチルペルオキシド、またはα-ヒドロキシケトン、カンファーキノン、アシルホスフィンオキシドを含む。加えて、安定剤、および任意にb)少なくとも1つの共開始剤(Co-Initiator)、例えばアミン、通常はtert-アミン、特に少なくとも1つの芳香族アミン、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジンおよび/またはp-ジベンジルアミノ安息香酸ジエチルエステルを任意に添加してもよい。
【0052】
典型的な安定剤には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)またはヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が含まれる。
【0053】
本発明を以下の例によってより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0054】
二次硬化/アフタベーキングは、例えば実験室用照明装置HiLite Power 3Dを用いて行った。
【0055】
【0056】
実施例:
製造した混合物を用いて、波長405nmの3D精密プリンター(Cara Print 4.0)にて以下の試験のための試験片を印刷する。印刷プロセス後に試験片をイソプロパノールですすぎ、アフタベーキングプロセスに供する。このプロセスは、実験室用照射ランプHiLite Power 3D、200W(Kulzer GmbH)において、それぞれ5分間の両面の曝露により、または製造業者の仕様書に従って行う。
【0057】
DIN EN ISO 20795-2に準拠して試験した、スプリント材についての本発明による混合物の特性
【表2】
【0058】
【0059】
【0060】