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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】沈降シリカ及びその製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20240520BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240520BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240520BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C01B33/193
C08K3/36
C08L21/00
C08L101/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021523761
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019080392
(87)【国際公開番号】W WO2020094714
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】18306461.7
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コルボー-ジュスタン, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】アラン ナジマン, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ローリオル-ガーベイ, パスカリン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500738(JP,A)
【文献】国際公開第2018/114280(WO,A1)
【文献】特表2009-511401(JP,A)
【文献】特表2005-500238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降シリカであって、
- 70~350m/gの範囲のCTAB表面積SCTAB
- 少なくとも0.1mol%の金属Mの量W;並びに
- (I)である、遠心沈降によって測定されるメジアン粒子サイズd50:
|d50|≧183×|RION|×|W|-0.67×|SCTAB|+233 (I)
(式中、
|d50|は遠心沈降によって測定されnm単位で表されるメジアン粒子サイズd50の数値を表し、|RION|はnm単位で表される金属Mのイオン半径の数値を表し、|SCTAB|はm/g単位で表されるCTAB表面積SCTABの数値を表し、|W|は金属のパーセントモル量Wの数値を表す);
を特徴とし、
金属Mが、Zrである、沈降シリカ。
【請求項2】
CTAB表面積SCTABが80~300m/gの範囲である、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの金属Mの量Wが、0.1~7.0mol%の範囲である、請求項1又は2に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
遠心沈降によって測定される前記粒子サイズ分布の幅Ldが1.2~3.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカと、少なくとも1種のポリマーとを含む組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のポリマーがエラストマーの群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカ又は請求項若しくはに記載の組成物を含む物品。
【請求項8】
履物の靴底、床の敷物、ガスバリア、ケーブルウェイのためのローラー、家庭用電化製品のためのシール、液体又は気体パイプのためのシール、ブレーキシステムシール、パイプ、被覆材料、ケーブル、エンジンサポート、バッテリーセパレーター、コンベアベルト又はトランスミッションベルトの形態の、請求項に記載の物品。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカを含むタイヤ又はタイヤ構成要素。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカを含む触媒、触媒担体、パーソナルケア製品、又はベビーケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈降シリカ、及びその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー組成物における補強充填剤としての沈降シリカの使用が知られている。特に、エラストマー組成物における補強充填剤としての沈降シリカの使用が知られている。このような使用は非常に要求が厳しい:充填剤は、容易に且つ効率的にエラストマー組成物中に混合し、分散しなければならず、並びに、典型的にはカップリング試薬と共にエラストマーとの化学結合に入り、エラストマー組成物の高い且つ均質な強化をもたらさなければならない。一般的には、エラストマー組成物の機械的特性及び摩耗性能を改善するために、沈降シリカが使用される。実際、一方では耐摩耗性及び/又はポリマー強化などの相反する特性と、他方ではエネルギー散逸特性、ひいては低減された熱蓄積とのバランスを提供することができる沈降シリカが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の目的は、ポリマー組成物の中に有効に配合された場合に性能特性の改善されたバランスを提供する新規な沈降シリカを提供することである。本発明の第2の目的は、沈降シリカの製造プロセスである。本発明のさらなる目的は、補強充填剤として沈降シリカを含むエラストマー組成物を提供することである。これらの目的は、以下の説明及び特許請求の範囲及び実施例において詳しく定義される本発明の沈降シリカによって達成される。
【0004】
エラストマー組成物における優れた機械的特性及び低減されたエネルギー散逸(結果として熱蓄積)は、第3族、4族、及び5族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの金属Mを少なくとも0.1モル%の量で含む、大きいメジアン粒子サイズ(そのCTAB表面積に関して遠心沈降によって測定されたd50)を有する沈降シリカの使用によって得られることが見出された。
【0005】
遷移金属(例えばTi、Zr、V、Sc)を含む沈降シリカは、例えば米国特許第7070749号明細書に以前に記載されており、これには製紙用途での使用に適した外来の原子でドープされた沈降シリカが開示されている。米国特許第7070749号明細書には、ディスク式遠心分離機での遠心沈降によって測定されたシリカ粒子のサイズが開示されていない。
【0006】
仏国特許第2997405号明細書には、選択されたホスフィネート/ホスホネートカップリング剤と組み合わされたTiドープ沈降シリカを含有する組成物が開示されている。仏国特許第2997405号明細書に開示されている沈降シリカの粒子のサイズは、以下の式(I)によって表される基準を満たしていない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の沈降シリカは、
- 70~350m/gの範囲のCTAB表面積SCTAB
- 少なくとも0.1mol%の、第3族、第4族、及び第5族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属Mの量W;並びに
- (I)である、遠心沈降によって測定されるメジアン粒子サイズd50:
|d50|≧183×|RION|×|W|-0.67×|SCTAB|+233 (I)
(式中、
|d50|は遠心沈降によって測定されnm単位で表されるメジアン粒子サイズd50の数値を表し、|RION|はnm単位で表される金属Mのイオン半径の数値を表し、|SCTAB|はm/g単位で表されるCTAB表面積SCTABの数値を表し、|W|は金属Mのパーセントモル量Wの数値を表す);
によって特徴付けられる。
【0008】
本明細書では、用語「シリカ」及び「沈降シリカ」は同義語として用いられる。
【0009】
本明細書では、「aからbまで」という表現によって定義される数値範囲は、終了値a及びbを含む数値範囲を示す。
【0010】
「aは少なくともbである」という表現によって定義される数値範囲は、aがb以上である範囲を示す。
【0011】
疑義を回避するために明記しておくと、式(I)の中の記号「×」は乗算記号を表し、そのため式「a×b」は、aをbで掛けることを意味する。
【0012】
CTAB表面積SCTABは、所定のpHでシリカ表面上に吸着されたNヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミドの量を測定することによって求められた外部比表面積の尺度である。
【0013】
CTAB表面積SCTABは、少なくとも70m/g、典型的には少なくとも80m/g、更には少なくとも90m/gである。CTAB表面積SCTABは、100m/g超であってもよい。CTAB表面積SCTABは、更に120m/g超、140m/g超、場合によっては更に150m/g超であってもよい。
【0014】
CTAB表面積は350m/gを超えず、典型的にはこれは320m/gを超えない。CTAB表面積SCTABは300m/gより低くてもよい。
【0015】
エラストマー強化用途のために有利な範囲のCTAB表面積SCTABは:70~300m/g、80~300m/g、120~300m/g、140~300m/g、更には145~300m/g、更には130~280m/gである。
【0016】
本発明のシリカのBET表面積SBETは特に限定されない。BET表面積SBETは、通常少なくとも80m/g、少なくとも100m/g、少なくとも140m/g、少なくとも160m/g、更には少なくとも170m/g、少なくとも180m/g、更には少なくとも200m/gである。BET表面積SBETは、400m/g程度まで大きくてもよく、更には450m/g程度まで大きくてもよい。
【0017】
本発明のシリカは、IUPAC命名法による第3族、第4族、及び第5族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの金属Mを含む。疑義を回避するために明記すると、第3族は、Sc、Y、La、及びAcの元素から構成されるとみなされる。
【0018】
金属Mは、好ましくは、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、及びTaからなる群から選択される。より好ましくは、金属Mは、Sc、Y、Ti、Zr、及びHfからなる群から選択される。有利には、金属Mは、Y、Ti、及びZrからなる群から選択される。金属Mは、有利にはZrであってもよい。
【0019】
金属Mは、少なくとも0.1mol%の量Wで存在する。本明細書を通して、金属Mの量Wは、シリカのモル数に対するモルによる少なくとも1つの元素Mの量として定義される。
【0020】
は、好ましくは少なくとも0.2mol%、更には少なくとも0.3mol%である。有利には、Wは0.1~7.0mol%、典型的には0.2~5.0mol%、更には0.3~3.0mol%の範囲である。
【0021】
金属がZrである場合には、Wは、0.2~3.5mol%、更には0.3~3.0mol%、更には0.4~2.5mol%の範囲とすることが好都合な場合がある。
【0022】
本発明のシリカは、金属Mに加えて他の元素を含み得ることを理解する必要があり、特に、非限定的な例は例えばMg、Ca、Al、又はZnである。
【0023】
本発明のシリカの重要な特徴は、所定のSCTAB値についての大きいメジアン粒子サイズ(粒径)d50である。特に、本発明のシリカのメジアン粒子サイズは、シリカ中の金属Mの量及びそのイオン半径と共に増加することが見出された。
【0024】
本発明のシリカのメジアン粒子サイズd50は、金属Mの量W、そのイオン半径RION、及びCTAB表面積SCTABと式(I):
|d50|≧183×|RION|×|W|-0.67×|SCTAB|+233 (I)
により相関することが見出された。
【0025】
式(I)において、|d50|は、遠心沈降によって測定されるnm単位で表されるメジアン粒子サイズd50の数値を表す。|d50|は無次元の数である。例として、遠心沈降によって測定されたd50の値が100nmの場合、|d50|は100である。
【0026】
式(I)において、|RION|は、最も代表的なより大きい配位数且つ酸化状態における、nm単位で表される金属Mのイオン半径の値を表す。例として、イオン半径が0.072nmの場合には、|RION|は0.072である。
【0027】
イオン半径の値は、R.D.Shannon,“Revised Effective Ionic Radii and Systematic Studies of Interatomic Distances in Halides and Chalcogenides”,Acta Crystallographica,A32,751-767(1976)から取得することができ、また表1に報告されている。
【0028】
【0029】
式(I)において、金属Mのパーセント量の数値、Wである。|W|は無次元の数である。例として、シリカの重量に対する金属Mの量が0.3mol%の場合、|W|は0.3である。
【0030】
沈降シリカ中に2種以上の金属Mが存在する場合、(I)中の|RION|×|W|の値は、各金属の|RION|×|W|の合計に対応する。
【0031】
式(I)において、|SCTAB|は、m/g単位で表されるCTAB表面積SCTABの数値を表す。|SCTAB|は無次元の数である。例として、SCTABの測定値が200m/gである場合、|SCTAB|は200である。
【0032】
70~350m/gの範囲のCTAB表面積SCTABでは、本発明のシリカは、通常30nmより大きく、更には50nmより大きいメジアン粒子サイズd50によって特徴付けられる。
【0033】
本発明のシリカのd50値は、典型的には300nmを超えず、より典型的にはこれは250nmを超えない。
【0034】
本発明の沈降シリカは、通常、幅の広い粒子サイズ分布を特徴とする。用語「粒子」は、本明細書においては一次シリカ粒子の凝集体を指すために使用される。粒子という用語は、機械的作用によって破壊することができる一次シリカ粒子の最小の凝集体を指すために使用される。言い換えると、粒子という用語は、分割できない一次粒子の集合体を指す。
【0035】
粒子サイズ分布幅の特性評価をするために、以下に詳述されるディスク式遠心式の遠心沈降機によって決定されるパラメーターLdが使用される。Ldは以下のように定義される:
Ld=(d84-d16)/d50
式中のdnは、全測定質量のn%がその粒径未満である粒径である。Ldは無次元数である。粒子サイズ分布幅Ldは累積粒子サイズ曲線に基づいて計算される。例として、d50は、粒子の全質量の50%がそれ未満である(及びそれを超える)粒径を表す。したがって、d50は、所定の分布のメジアン粒子サイズを表し、これに関連する用語「サイズ」は「直径」を意味しなければならない。
【0036】
粒子サイズ分布幅Ldは少なくとも1.2、典型的に少なくとも1.4、更には少なくとも1.5である。粒子サイズ分布幅Ldは4.0以下、典型的に3.5以下である。
【0037】
有利には、本発明のシリカの粒子サイズ分布の幅Ldは1.2~3.5の範囲、更には1.4~3.0の範囲とすることができる。本発明のシリカの粒子サイズ分布幅Ldは1.5~2.8、好ましくは1.6~2.5の範囲であり得る。
【0038】
本発明の第2の目的は、本発明の沈降シリカの調製方法であり、前記方法は、
(i)2.00~5.00のpHを有する出発溶液を準備する工程と、
(ii)反応媒体のpHが2.00~5.00の範囲に維持されるようにケイ酸塩と酸とを前記出発溶液に同時に添加する工程と、
(iii)酸及びケイ酸塩の添加を停止し、塩基を反応媒体に添加して前記反応媒体のpHを7.00~10.00の値に上げる工程と、
(iv)反応媒反応媒体のpHが7.00~10.00の範囲に維持されるように、少なくとも1つの金属Mの化合物とケイ酸塩と酸とを反応媒体に同時に添加する工程と、
(v)反応媒体への酸の添加を継続する一方で、ケイ酸塩及び少なくとも1つの金属Mの化合物の添加を停止して、反応媒体のpHを6.00未満に到達させて、沈降シリカの懸濁液を得る工程と、
を含む。
【0039】
用語「塩基」は、本明細書において使用されて本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ又は2つ以上の塩基を意味し、それは、以下に定義されケイ酸塩からなる群を包含する。任意の塩基をプロセス中で使用することができる。ケイ酸塩の添加において、適した塩基の注目すべき非限定的な例は、例えばアルカリ金属水酸化物及びアンモニアである。
【0040】
用語「ケイ酸塩」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1種又は2種以上のケイ酸塩を指すために本明細書で使用される。ケイ酸塩は典型的に、アルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される。ケイ酸塩は、有利にはケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択される。ケイ酸塩は、メタケイ酸塩又は二ケイ酸塩などの任意の公知の形態であり得る。
【0041】
ケイ酸ナトリウムが使用される場合、後者は、一般的に、2.0~4.0、特に2.4~3.9、例えば3.1~3.8のSiO/NaO重量比を有する。
【0042】
ケイ酸塩は、3.9重量%~25.0重量%、例えば5.6重量%~23.0重量%、具体的には5.6重量%~20.7重量%の濃度(SiOに関して表される)を有し得る。
【0043】
用語「酸」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ又は2つ以上の酸を指すために本明細書で使用される。任意の酸をプロセス中で使用することができる。一般的に、硫酸、硝酸、リン酸又は塩酸などの鉱酸、或いはカルボン酸、例えば酢酸、ギ酸、又は炭酸などの有機酸が使用される。
【0044】
酸は希釈又は濃縮形態で反応媒体に計量投入され得る。プロセスの異なる段階で、異なる濃度の同じ酸を用いることができる。好ましくは、この酸は硫酸である。
【0045】
プロセスの好ましい実施形態では、プロセスの全ての段階で硫酸及びケイ酸ナトリウムが用いられる。好ましくは、SiOとして表される同じ濃度を有するケイ酸ナトリウムである、同じケイ酸ナトリウムがプロセスの段階の全てにおいて使用される。
【0046】
プロセスの工程(i)では、2.00~5.00のpHを有する出発溶液が反応槽内に提供される。出発溶液は水溶液であり、用語「水性」は、溶媒が水であることを示す。
【0047】
好ましくは、出発溶液は2.50~5.00、特に3.00~4.50、例えば、3.50~4.50のpHを有する。
【0048】
出発溶液は、上記のpH値を得るように、酸を水に添加することによって得ることができる。
【0049】
或いは、出発溶液はケイ酸塩を含有している場合がある。このような場合、それは、酸を水とケイ酸塩との混合物に添加して2.00~5.00のpHを得ることにより得ることができる。
【0050】
出発溶液は、7.00未満のpHの予め形成されたシリカ粒子を含む溶液に酸を添加して2.00~5.00、好ましくは2.50~5.00、特には3.00~4.50、例えば3.50~4.50のpH値を得ることによっても調製することができる。
【0051】
工程(i)の出発溶液は、電解質を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、工程(i)の出発溶液は電解質を含有する。
【0052】
用語「電解質」は、その一般的に認められている意味にて本明細書で使用され、即ち溶液中にある場合、分解又は解離してイオン又は荷電粒子を形成する任意のイオン性又は分子性物質を特定する。用語「電解質」は、本明細書において使用されて、1つ又は2つ以上の電解質が存在し得ることを示す。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩などの電解質を挙げることができる。有利には、出発溶液で使用する電解質は、プロセスで使用される出発ケイ酸塩の金属と酸の塩である。注目すべき例は、例えば、ケイ酸ナトリウムと塩酸との反応の場合の塩化ナトリウム又は好ましくは、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応の場合の硫酸ナトリウムである。
【0053】
好ましくは、電解質として硫酸ナトリウムが工程(i)で使用される場合、出発溶液中のその濃度は、8~40g/L、特に10~35g/L、例えば13~30g/Lである。
【0054】
プロセスの工程(ii)は、出発溶液への酸及びケイ酸塩の同時添加を含む。工程(ii)中に酸及びケイ酸塩を添加する速度は、反応媒体のpHが2.00~5.00の範囲に維持されるように制御される。反応媒体のpHは好ましくは、2.50~5.00、特に3.00~5.00、例えば3.20~4.80の範囲に維持される。
【0055】
工程(ii)における同時添加は有利には、反応媒体のpH値が工程(i)の終了時に、達したpHに常に等しい(±0.20pH単位の範囲内まで)ように行われる。
【0056】
好ましくは、工程(ii)は、上に詳述したように酸及びケイ酸塩の同時添加からなる。
【0057】
本発明のプロセスの一実施形態において、中間工程(ii’)は工程(i)と工程(ii)との間に実施され得、ここで、反応媒体のpHが2.00~9.50の範囲に維持されるようにケイ酸塩と酸とを出発溶液に添加する。ケイ酸塩と酸の添加は、工程(ii’)の全てについて又は一部だけ同時であり得る。工程(ii’)は典型的に、工程(ii)が開始される前に1~10分間、好ましくは2~8分間延長される。
【0058】
次に、工程(iii)において、酸及びケイ酸塩の添加が停止され、塩基が反応媒体に添加される。反応媒体のpHが7.00~10.00、好ましくは7.50~9.50の値に達したときに塩基の添加が停止される。
【0059】
プロセスの第1の実施形態において塩基はケイ酸塩である。このように、工程(iii)において、7.00~10.00、好ましくは7.50~9.50のpHが達せられるまで、反応媒体へのケイ酸塩の添加が継続されながら酸の添加が停止される。
【0060】
プロセスの第2の実施形態において塩基はケイ酸塩とは異なっており、それは、アルカリ金属水酸化物、好ましくはナトリウム又はカリウム水酸化物からなる群から選択される。ケイ酸ナトリウムがプロセスにおいて使用されるとき、好ましい塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0061】
このように、プロセスのこの第2の実施形態において、工程(iii)において、7.00~10.00、好ましくは7.50~9.50のpHが達せられるまで、酸及びケイ酸塩の添加が停止され、ケイ酸塩とは異なっている塩基が反応媒体に添加される。
【0062】
塩基の添加を停止した後にある、工程(iii)の終了時に、反応媒体の熟成工程を実施することが有利であり得る。この工程は、工程(iii)の終了時に得られたpHで実施することが好ましい。熟成工程は、反応媒体を撹拌しながら実施してもよい。熟成工程は、反応媒体を撹拌しながら、2~45分、具体的には5~25分の時間にわたって実施することが好ましい。熟成工程は、いかなる酸又はケイ酸塩の添加も含まないことが好ましい。
【0063】
工程(iii)及び任意選択の熟成工程後に、反応媒体のpHが7.00~10.00、好ましくは7.50~9.50の範囲に維持されるように、少なくとも1つの金属Mの化合物、酸、及びケイ酸塩の同時添加が実施される。
【0064】
少なくとも1つの金属Mの化合物、酸、及びケイ酸塩の同時添加(工程(iv))は典型的に、反応媒体のpH値が前工程である工程(iii)の終了時に到達したpHと等しく維持されるように(±0.20pH単位以内まで)実施される。
【0065】
本発明のプロセスは、更なる工程を含み得ることに留意されたい。例えば、工程(iii)と工程(iv)との間に、特に、工程(iii)の後の任意選択の熟成工程と工程(iv)との間に、酸を反応媒体に添加することができる。酸のこの添加後の反応媒体のpHは、7.00~9.50、好ましくは7.50~9.50の範囲のままである必要がある。
【0066】
工程(v)において、反応媒体において6.00未満、好ましくは3.00~5.50、特に3.00~5.00のpH値を得るために反応媒体への酸の添加を継続しながらケイ酸塩及び少なくとも1つの金属Mの化合物の添加が停止される。反応槽中に沈降シリカの懸濁液が得られる。
【0067】
工程(v)の終了時、したがって反応媒体への酸の添加を停止した後に、有利に熟成工程を実施することができる。この熟成工程は、工程(v)の終了時に得られた同じpHで及びプロセスの工程(iii)及び(iv)の間に任意選択的に実施され得る熟成工程について上に記載された条件と同じ時間条件下で実施され得る。
【0068】
少なくとも1つの金属Mの化合物は、工程(iv)の間、すなわち7.00~10.00の範囲のpHで反応媒体に酸及びケイ酸塩を同時に添加する間に、反応媒体に量り入れられる。少なくとも1つの金属Mの化合物は、工程(iv)の期間全体にかけて、すなわち酸及びケイ酸塩の添加と同時に、反応媒体に量り入れることができる。或いは、これは、例えば酸及びケイ酸塩の最初の同時添加が行われた後にのみ、工程(iv)の一部の間だけ量り入れることができる。少なくとも1つの金属Mの化合物は、典型的には、溶液形態、典型的には水溶液形態で反応媒体に添加される。少なくとも1つの金属Mの化合物の全てが工程(iv)の間に添加される。
【0069】
金属Mの任意の化合物は、それが水に可溶である限り、特に7.00~10.00の範囲のpHで可溶である限り、本発明のプロセスで使用することができる。適切な化合物の注目すべき例としては、限定するものではないが、金属Mの塩化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩、又は硝酸塩が挙げられる。化合物は、通常硫酸塩又はオキシ硫酸塩からなる群から選択される。金属Mの化合物は、通常、溶液の形態で、典型的には水溶液の形態で反応媒体に添加される。
【0070】
工程(iv)の間に反応媒体に添加される少なくとも1つの金属Mの化合物の量は、最終生成物中の金属Mの量、Wが少なくとも0.1mol%であるように計算される。
【0071】
ケイ酸塩と酸の反応全体が実施される反応槽は、通常、適切な撹拌装置及び加熱装置を備えている。
【0072】
ケイ酸塩と酸との全反応(工程(i)~(v))は一般的に、40~97℃、特に60~95℃、好ましくは80~95℃、より好ましくは85~95℃の温度で実施される。
【0073】
本発明の一変形形態によれば、ケイ酸塩と酸との全体反応は、通常は40~97℃、具体的には80~95℃、更に85~95℃の定温で実施される。
【0074】
本発明の別の変形形態によれば、反応終了時の温度は反応開始時の温度よりも高く、したがって、反応の開始時(例えば工程(i)~(iii)の間)の温度は好ましくは、40~85℃の範囲に維持され、温度は次に、好ましくは80~95℃、更に85~95℃の範囲の値まで上げられ、それは、反応の終わりまで(例えば工程(iv)及び(v)の間)その値に維持される。
【0075】
必要なCTAB比表面積の値及び金属Mの量を有する沈降シリカを得るために、プロセスの異なるパラメーター、例えば温度、反応媒体のpH、工程(i)に存在する電解質の量、少なくとも1つの金属Mの化合物の量を変化させることができる。
【0076】
直前で説明した工程の終了時に沈降シリカの懸濁液が得られ、これは続いて分離される(液体/固体分離)。プロセスは典型的に、懸濁液を濾過し、沈降シリカを乾燥させる更なる工程(vi)を含む。
【0077】
本発明による調製方法で行われる分離は通常、濾過、必要ならば、これに続く洗浄を含む。この濾過は、任意の好適な方法に従い、例えばベルトフィルター、回転フィルター、例えば真空フィルター、又は好ましくはフィルタープレスによって実施される。
【0078】
続いて、濾過ケークに対して液化操作が行われる。用語「液化」は、本明細書では、固体、即ち、濾過ケークが流体様の塊に転化するプロセスを示すことが意図される。液化工程後、濾過ケークは流動性を有する流体様形態であり、沈降シリカは懸濁状態である。
【0079】
液化工程は、懸濁状態のシリカの粒子サイズ分布の低下をもたらす機械的処理を含み得る。前記機械的処理は、濾過ケークを、高剪断ミキサー、コロイドタイプミル、又はボールミルに通すことによって実施され得る。或いは、液化工程は、例えば酸又はアルミニウム化合物、例えばアルミン酸ナトリウムの添加による化学的作用を濾過ケークに受けさせることによって行うことができる。またその代わりに、液化工程は、機械的処理と化学的作用の両方を含み得る。
【0080】
液化工程後に得られる沈降シリカの懸濁液は、その後、乾燥されるのが好ましい。
【0081】
乾燥は当該技術分野で既知の手法に従って実施され得る。好ましくは、乾燥は、噴霧によって行われる。この目的のために、任意の種類の適切な噴霧器、特にタービン、ノズル、液体圧力又は二流体噴霧器を使用できる。
【0082】
乾燥操作がノズル式噴霧乾燥器を使用して実施される場合、そのとき得ることのできる沈降シリカは、通常は実質的に球形のビーズ形態である。この乾燥操作後、任意選択で、回収された生成物に対して粉砕又は微粉化の工程を行うことが可能であり、得ることができる沈降シリカは、一般的に粉末の形態である。
【0083】
乾燥操作がタービン式噴霧器を用いて行われる場合、得ることができる沈降シリカは、粉末の形態であり得る。
【0084】
最後に、前述で示されたように乾燥、粉砕又は微粉化された生成物は、集塊化工程に任意選択でかけられ、これは、例えば、直接圧縮、湿式造粒(即ち水、シリカ懸濁液などの結合剤の使用による)、押出し又は好ましくは乾式圧密からなる。
【0085】
この集塊化工程によって得ることができる沈降シリカは、一般的に顆粒の形態である。
【0086】
本発明の沈降シリカは、活性物質用吸収材(具体的には特にビタミン類(ビタミンE又は塩化コリン)などの食品に用いられる液体用担体)、粘度調整剤、テクスチャー付与剤、若しくは粘着防止剤として、又は練り歯磨き、コンクリート、若しくは紙用の添加剤としてなど、多くの用途で使用することができる。
【0087】
本発明のシリカは、触媒として又は触媒担体として使用することができる。したがって、本発明の目的は、本発明の沈降シリカを含む、更にはそれからなる触媒又は触媒担体である。
【0088】
また、本発明のシリカは、断熱材料の製造又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド/シリカ複合材料の製造にも使用することができる。本発明のシリカは、例えばパーソナルケア製品又はベビーケア製品、例えばおむつの製造における吸収材として都合よく使用することもできる。
【0089】
本発明の沈降シリカは、高分子組成物の充填剤として特に有利な用途を見出す。
【0090】
したがって、本発明の更なる目的は、上に定義された本発明のシリカと少なくとも1種のポリマーとを含む組成物である。組成物中のポリマーに言及するとき、「少なくとも1種」という句は、各タイプの1種又は2種以上のポリマーが組成物中に存在することができることを示すために本明細書において用いられる。
【0091】
表現「コポリマー」は、異なる性質の少なくとも2種のモノマー単位に由来する繰り返し単位を含むポリマーを指すために本明細書で使用される。
【0092】
少なくとも1種のポリマーは、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーから選択することができる。熱硬化性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂及びシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0093】
適切な熱可塑性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ABSなどのスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、α-オレフィンと各種モノマーとのコポリマー、例えばエチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及び脂肪族グリコール/脂肪族ジカルボン酸コポリマーなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0094】
本発明のシリカは、エラストマー組成物の補強充填剤として有利に用いられ得る。したがって、本発明の好ましい目的は、本発明のシリカと、好ましくは-150℃~+300℃、例えば-150℃~+20℃の少なくとも1つのガラス転移温度を示す1つ以上のエラストマーとを含む組成物である。
【0095】
好適なエラストマーの注目すべき非限定的な例はジエンエラストマーである。例えば、特に、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレン又は酢酸ビニル、ポリブチルアクリレート或いはこれらの混合物などの少なくとも1つの不飽和を含む脂肪族又は芳香族モノマー由来のエラストマーを使用することができる。また、高分子鎖に沿って及び/又はその1つ以上の末端に位置する化学基によって官能化されたエラストマー(例えば、シリカの表面と反応することができる官能基によって)である官能化エラストマー及びハロゲン化ポリマーを挙げることができる。ポリアミド、エチレンホモ及びコポリマー、プロピレンホモ及びコポリマーを挙げることができる。
【0096】
ジエンエラストマーの中では、例えば、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、又はこれらの混合物、特にスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR、特にESBR(エマルジョン)又はSSBR(溶液))、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、及び更に関連する官能化ポリマー(例えば、シリカと相互作用することができる、ペンダント極性基又は鎖末端における極性基を示す)を挙げることができる。
【0097】
また、天然ゴム(NR)及びエポキシ化天然ゴム(ENR)を挙げることもできる。
【0098】
ポリマー組成物は、硫黄で加硫されることができる、或いは特に過酸化物又は他の架橋系(例えば、ジアミン又はフェノール樹脂)で架橋されることができる。
【0099】
一般的に、ポリマー組成物は、少なくとも1つの(シリカ/ポリマー)カップリング剤及び/又は少なくとも1つの被覆剤を更に含み、これらは更に、とりわけ、酸化防止剤を含み得る。
【0100】
適切なカップリング剤の非限定的な例は、例えば、「対称」又は「非対称」シランポリスルフィドである。より具体的には、ビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えばビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド又はビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド、例えばトリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドを挙げることができる。また、モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドも挙げることができる。また、マスクされた又は遊離のチオール官能基を含むシランを挙げることができる。
【0101】
カップリング剤は、ポリマーに予めグラフトすることができる。それはまた、遊離状態で(即ち予めグラフトされていないで)又はシリカの表面でグラフトされて用いることもできる。任意選択の被覆剤についても同じである。
【0102】
カップリング剤は、適切な「カップリング活性化剤」、即ち、このカップリング剤と混合されて後者の有効性を増加させる化合物と任意選択的に組み合わせることができる。
【0103】
ポリマー組成物中の本発明のシリカの重量比率は、かなり広い範囲で変わることができる。これは、通常、ポリマーの量の10%~200%、特に20%~150%、とりわけ20%~80%(例えば30%~70%)又は80%~120%(例えば90%~110%)に相当する。
【0104】
本発明のシリカは、有利には、補強無機充填剤の全て及び更にはポリマー組成物の補強充填剤の全てをも構成し得る。
【0105】
本発明のシリカは、任意選択的には、少なくとも1種の他の補強充填剤、例えばZeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)Premium 200MP、若しくはZeosil(登録商標)1085GR(Solvayから市販)などの高分散性シリカ、又はナノクレイやアルミナなどの別の補強充填剤と組み合わされてもよい。或いは、本発明のシリカは、カーボンブラックナノチューブやグラフェンなどの有機補強充填剤と組み合わせることができる。
【0106】
本発明によるシリカはそのとき、好ましくは、補強充填剤の全量の、少なくとも40重量%、実に更には少なくとも50重量%を構成する。
【0107】
本発明の沈降シリカを含む組成物は、多くの物品の製造のために使用されることができる。上記のポリマー組成物の少なくとも1つを含む完成品の非限定的な例は、例えば、履物の靴底、床の敷物、ガスバリア、難燃性材料、及びケーブルウェイのためのローラー、家庭用電化製品のためのシール、液体又は気体パイプのためのシール、ブレーキシステムシール、パイプ(可塑性)、被覆材料(特にケーブル被覆材料)、ケーブル、エンジンサポート、タイヤ、バッテリーセパレーター、コンベアベルト又はトランスミッションベルトなどの工業部品である。
【0108】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の沈降シリカを含む組成物は、タイヤ又はタイヤ構成要素の製造に使用される。
【0109】
参照により本明細書中に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【0110】
分析方法
本発明の沈降シリカの物理化学的特性を、以下に記載する方法を用いて決定した。
【0111】
CTAB表面積の測定
CTAB表面積(SCTAB)値を標準NF ISO 5794-1附属書Gに従って求めた。
【0112】
BET表面積の測定
BET表面積SBETを、以下の調節と共に、標準NF ISO 5794-1附属書E(2010年6月)に詳述されたBrunauer-Emmett-Teller法に従って求めた:試料を160℃±10℃で予備乾燥させた;測定のために使用される分圧P/Pは0.05~0.2の間であった。
【0113】
ディスク式遠心沈降機(CPS)での遠心沈降による粒子サイズ分布及び粒子サイズの測定
CPS Instruments社によって市販されている、遠心光沈降速度計型「CPS DC24000UHR」を使用するディスク式遠心沈降機での遠心沈降によってd50、d16、d84及びLdの値を測定した。この計測器は、デバイスによって供給されるオペレーティングソフトウェア(オペレーティングソフトウェアバージョン11g)を備えている。
【0114】
使用される計測器:測定要件のために、以下の材料及び製品を使用した:超音波装置:19mmプローブを備えた1500W発電機型Sonics Vibracell VC1500/VCX1500(コンバーター:CV154+ブースター(部品番号:BHNVC21)+19mmプローブ(部品番号:630-0208))。
【0115】
0.1mgの精度の化学天秤(例えばMettlerAE260);シリンジ:20gaのニードルを有する1.0mL及び2.0mL;50mLの高形状ガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm);2cmの撹拌子を有するマグネチックスターラー;超音波処理中の氷浴用の容器。
【0116】
化学物質:脱イオン水;エタノール96%;スクロース99%;ドデカン、全てMerck製;CPS Instrument Inc.製のPVC参照標準;使用される参照標準のピーク最大値は200~600nmの間(例えば237nm)であるべきである。
【0117】
ディスク式遠心沈降機の準備
測定のために、以下のパラメーターを設定した。較正標準パラメーターのために、供給元によって知らされるPVC標準の情報を用いた。
【0118】
【0119】
システムの構成
測定波長を405nmに設定した。以下のランタイムオプションパラメーターを設定した。
【0120】
【0121】
ソフトウェアの全ての他のオプションを計測器の製造元によって設定されたままにした。
【0122】
ディスク式遠心沈降機の準備
遠心ディスクを24000rpmで30分間回転させる。ショ糖の密度勾配(CASn°57-50-1)は次のように調製する。
【0123】
50mLビーカー内に、スクロースの24重量%水溶液を調製する。50mLビーカー内に、スクロースの8重量%水溶液を調製する。これらの2つの溶液が別々に均質化されると、2mLシリンジを使用して試料をそれぞれの溶液から取り、それを以下の順に回転ディスク内に注入する:
試料1:1.8mLの24重量%溶液
試料2:1.6mLの24重量%溶液+0.2mLの8重量%溶液
試料3:1.4mLの24重量%溶液+0.4mLの8重量%溶液
試料4:1.2mLの24重量%溶液+0.6mLの8重量%溶液
試料5:1.0mLの24重量%溶液+0.8mLの8重量%溶液
試料6:0.8mLの24重量%溶液+1.0mLの8重量%溶液
試料7:0.6mLの24重量%溶液+1.2mLの8重量%溶液
試料8:0.4mLの24重量%溶液+1.4mLの8重量%溶液
試料9:0.2mLの24重量%溶液+1.6mLの8重量%溶液
試料10:1.8mLの8重量%溶液。
【0124】
ディスクにそれぞれ注入する前に、約0.2mLの空気を補給し、その後に、一切の液体を失わないようにして、数秒間の短い手作業の撹拌を行うことによって2つの溶液をシリンジ内で均質化する。
【0125】
これらの注入は、その全容積が18mLであり、測定される試料の注入中に現れる場合がある特定の不安定性を除くために有用である密度勾配を作ることを目指す。密度勾配を蒸発から守るために、2mLシリンジを使用して回転ディスク内に1mLのドデカンを添加する。次に、ディスクを任意の最初の測定前に60分間24000rpmで回転させておく。
【0126】
試料の調製
50mL高形状ガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm)内に3.2gのシリカを秤量し、40mLの脱イオン水を添加して、シリカの8重量%懸濁液を得た。ビーカーを氷及び冷水で満たされた結晶皿内に置く前に、懸濁液をマグネチックスターラーで撹拌した(最低20秒)。マグネチックスターラーを外し、結晶皿を、ビーカーの底部から1cmに置いた超音波プローブ下に置いた。超音波プローブをその最大振幅の56%に設定し、8分間活性化した。超音波処理の終了時に、試料抽出後まで最低500rpmで撹拌する2cm磁気撹拌棒を有するマグネチックスターラー上にビーカーを再び置いた。
【0127】
超音波プローブは適切な使用条件にある必要がある。以下の検査を実施しなければならず、好ましくない結果の場合には、新しいプローブを使用すべきである:プローブの端部の物理的一体性の目視検査(ファインキャリパで測定される2mm未満の粗さ深さ);商用シリカZeosil(登録商標)1165MPの測定されたd50は93nm±3nmである必要がある。
【0128】
分析
それぞれの試料を分析する前に、較正標準を記録した。それぞれの場合、CPS Instrumentsによって提供され、その特性が前もってソフトウェアに入れられるPVC標準0.1mLを注入した。PVC標準のこの最初の注入と同時にソフトウェアで測定を開始することが重要である。注入時に測定を同時に開始することを確実にすることによって、予め超音波処理された試料100μLを注入する前に装置の確認を受けなければならない。
【0129】
これらの注入は1mLの2つの清浄なシリンジで実施された。
【0130】
(ソフトウェア中で0.02μmに構成される)比較的小さい直径の全ての粒子を沈降させるために必要な時間の終わりに達せられる、測定の終了時に、それぞれの直径クラスの比が得られた。得られた曲線は凝集体サイズ分布と呼ばれる。
【0131】
結果
値d50、d16、d84及びLdは、直尺で描かれる分布を基準としている。直径の粒子サイズ分布関数の積分は、「累積」分布、すなわち最小直径と目的の直径との間の粒子の全質量を得ることを可能にする。
d50:母集団の質量で50%がそれ未満及びそれを超える直径である。d50は、シリカ粒子のメジアンサイズ、すなわち直径と呼ばれる。
d84:それ未満で粒子の全質量の84%が測定される直径である。
d16:それ未満で粒子の全質量の16%が測定される直径である。
Ld:等式:Ld=(d84-d16)/d50に従って計算される。
【0132】
金属Mの含有量の測定
金属Mの含有量は、広く公知の手順を使用して、ICPOES(誘導結合プラズマ発光分析法)によって決定することができる。
【0133】
Ti及びZrの測定は、サンプルをフッ化水素酸(例えば40%フッ化水素酸1mLに0.2~0.3gのSiO)に浸した後に行った。澄んだ溶液を、見込まれるZr及びTiの濃度に従って5%硝酸水溶液中で希釈した。Zr固有の波長(343.823及び267.863nm)及びTi固有の波長(336.122nm)で測定された強度を、同様な分析条件においてZr及びTiの標準(0.10、0.20、1.00、及び2.00mg/Lの4つの標準)を使用して得た0.05~2.00mg/Lの範囲の検量線と比較した。希釈係数及び測定されたシリカの乾燥抽出物を用いた計算によって固体中の量を得た。
【0134】
Yの含有量は、硝酸中でのサンプルの抽出後に決定した(例えば85%硝酸10mLに0.5gのSiO)。添加して30分間混合した後、超純水を添加することによって50mLまで固体懸濁液を希釈した。その後、希硝酸溶液中のシリカの懸濁液を30分間混合した。30分後、0.45μmのPVDFシリンジフィルターを使用して上澄みを濾過した。得られた澄んだ溶液を予想Y濃度に従って5%硝酸水溶液中で希釈した。Yの特定波長(412.831、324.228、及び371.030nm)で測定された強度を、同様な分析条件においてY標準(0.10、0.20、1.00及び2.00mg/Lの4つの標準)を用いて得られる0.05~2.00mg/Lの範囲の検量線と比較した。希釈係数及び測定されたシリカの乾燥抽出物を用いた計算によって固体中の量を得た。
【実施例
【0135】
実施例1
25Lのステンレス鋼製反応容器に167Lの精製水及び260gのNaSO(固形)を投入した。得られた溶液を撹拌及び加熱して92℃に到達させた。均一な反応媒体を維持するために、この温度で撹拌しながら反応全体を行った。硫酸(濃度:7.7重量%)を、3.90のpH値に達するまで反応容器に投入した。
【0136】
流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を反応容器に45秒間にわたって投入した。プロセス全体を通して同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液及び流量190g/分の7.7重量%硫酸溶液を2分間にわたって同時投入した。流量111g/分のケイ酸ナトリウムで反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように、硫酸の流量を調節した。この工程の終了時に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を10分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように調節した。
【0137】
続いて酸の投入を停止し、一方でケイ酸ナトリウムの添加を、反応媒体が8.00のpH値に達するまで同じ流量に維持した。
【0138】
続いて、流量178g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を3分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように調節した。
【0139】
同時に、流量178g/分のケイ酸ナトリウム、流量17.3g/分のオキシ硫酸チタン溶液([TiOSO]:15重量%)、及び96重量%の硫酸溶液を15分間かけて導入した。反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量を調整した。
【0140】
この同時添加の終了時に、反応媒体のpHは96重量%の硫酸を含んで4.80になった。この反応混合物を5分間熟成させた。スラリーが得られた。
【0141】
プレスフィルターで反応スラリーを濾過及び洗浄した。得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS1を得た。沈降シリカS1の特性を表2に報告する。
【0142】
実施例2
25Lのステンレス鋼製反応容器に167Lの精製水及び260gのNaSO(固形)を投入した。得られた溶液を撹拌及び加熱して92℃に到達させた。均一な反応媒体を維持するために、この温度で撹拌しながら反応全体を実施した。硫酸(濃度:7.7重量%)を、3.90のpH値に達するまで反応容器に投入した。
【0143】
流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を反応容器に45秒間にわたって投入した。プロセス全体を通して同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液及び流量190g/分の7.7重量%硫酸溶液を2分間にわたって同時投入した。流量111g/分のケイ酸ナトリウムで反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように、硫酸の流量を調節した。この工程の終了時に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を10分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように調節した。
【0144】
続いて酸の投入を停止し、一方でケイ酸ナトリウムの添加を、反応媒体が8.00のpH値に達するまで同じ流量に維持した。
【0145】
続いて、流量178g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を3分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように調節した。
【0146】
同時に、流量178g/分のケイ酸ナトリウム、流量12.3g/分の硫酸ジルコニウム溶液([Zr(SO、4HO]:23.6重量%)、及び96重量%の硫酸溶液を15分間かけて導入した。反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量を調整した。
【0147】
この同時添加の終了時に、反応媒体のpHは96重量%の硫酸を含んで4.80になった。この反応混合物を5分間熟成させた。スラリーが得られた。
【0148】
フィルタープレスで反応スラリーを濾過及び洗浄した。得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS2を得た。沈降シリカS2の特性を表2に報告する。
【0149】
実施例3
25Lのステンレス鋼製反応容器に167Lの精製水及び260gのNaSO(固形)を投入した。得られた溶液を撹拌及び加熱して92℃に到達させた。均一な反応媒体を維持するために、この温度で撹拌しながら反応全体を行った。硫酸(濃度:7.7重量%)を、3.90のpH値に達するまで反応容器に投入した。
【0150】
流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を反応容器に45秒間にわたって投入した。プロセス全体を通して同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液及び流量190g/分の7.7重量%硫酸溶液を2分間にわたって同時投入した。流量111g/分のケイ酸ナトリウムで反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように、硫酸の流量を調節した。この工程の終了時に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を10分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように調節した。
【0151】
続いて酸の投入を停止し、一方でケイ酸ナトリウムの添加を、反応媒体が8.00のpH値に達するまで同じ流量に維持した。
【0152】
続いて、流量178g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を3分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように調節した。
【0153】
同時に、流量178g/分のケイ酸ナトリウム、流量24.7g/分の硫酸ジルコニウム溶液([Zr(SO、4HO]:23.6重量%)、及び96重量%の硫酸溶液を15分間かけて導入した。反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量を調整した。
【0154】
この同時添加の終了時に、反応媒体のpHは96重量%の硫酸を含んで4.80になった。この反応混合物を5分間熟成させた。スラリーが得られた。
【0155】
フィルタープレスで反応スラリーを濾過及び洗浄した。得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS3を得た。沈降シリカS3の特性を表2に報告する。
【0156】
実施例4
25Lのステンレス鋼製反応容器に167Lの精製水及び260gのNaSO(固形)を投入した。得られた溶液を撹拌及び加熱して92℃に到達させた。均一な反応媒体を維持するために、この温度で撹拌しながら反応全体を行った。硫酸(濃度:7.7重量%)を、3.90のpH値に達するまで反応容器に投入した。
【0157】
流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を反応容器に45秒間にわたって投入した。プロセス全体を通して同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液及び流量190g/分の7.7重量%硫酸溶液を2分間にわたって同時投入した。流量111g/分のケイ酸ナトリウムで反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように、硫酸の流量を調節した。この工程の終了時に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を10分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように調節した。
【0158】
続いて酸の投入を停止し、一方でケイ酸ナトリウムの添加を、反応媒体が8.00のpH値に達するまで同じ流量に維持した。
【0159】
続いて、流量178g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を3分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように調節した。
【0160】
同時に、流量178g/分のケイ酸ナトリウム、流量36.6g/分の硫酸ジルコニウム溶液([Zr(SO、4HO]:23.6重量%)、及び96重量%の硫酸溶液を15分間かけて導入した。反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量を調整した。
【0161】
この同時添加の終了時に、反応媒体のpHは96重量%の硫酸を含んで4.80になった。この反応混合物を5分間熟成させた。スラリーが得られた。
【0162】
フィルタープレスで反応スラリーを濾過及び洗浄した。得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS4を得た。沈降シリカS4の特性を表2に報告する。
【0163】
実施例5
25Lのステンレス鋼製反応容器に167Lの精製水及び260gのNaSO(固形)を投入した。得られた溶液を撹拌及び加熱して92℃に到達させた。均一な反応媒体を維持するために、この温度で撹拌しながら反応全体を実施した。硫酸(濃度:7.7重量%)を、3.90のpH値に達するまで反応容器に投入した。
【0164】
流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO重量比=3.4;SiO濃度=19.3重量%)を反応容器に45秒間にわたって投入した。プロセス全体を通して同じケイ酸ナトリウム溶液を使用した。次に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム溶液及び流量190g/分の7.7重量%硫酸溶液を2分間にわたって同時投入した。流量111g/分のケイ酸ナトリウムで反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように、硫酸の流量を調節した。この工程の終了時に、流量111g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を10分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが3.95の値に維持されるように調節した。
【0165】
続いて酸の投入を停止し、一方でケイ酸ナトリウムの添加を、反応媒体が8.00のpH値に達するまで同じ流量に維持した。
【0166】
続いて、流量178g/分のケイ酸ナトリウム及び96重量%の硫酸溶液を3分間にわたって同時投入した。96重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように調節した。
【0167】
同時に、流量178g/分のケイ酸ナトリウム、流量90.5g/分の硫酸イットリウム溶液([Y(SO、8HO]:5.52重量%)、及び96重量%の硫酸溶液を15分間かけて導入した。反応媒体のpHが8.00の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量を調節した。
【0168】
この同時添加の終了時に、反応媒体のpHは96重量%の硫酸を含んで4.80になった。この反応混合物を5分間熟成させた。スラリーが得られた。
【0169】
フィルタープレスで反応スラリーを濾過及び洗浄した。得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS5を得た。沈降シリカS5の特性を表2に報告する。
【0170】
比較例1:
仏国特許第2997405号明細書の実施例8を、Zeosil(登録商標)1165MP(Solvay SAから市販)のフィルターケークから出発して再現する。沈降シリカCS1の特性を表2に報告する。
【0171】
【0172】
実施例6及び7~比較例2
シリカ充填エラストマー組成物を調製した。エラストマー100部当たりの重量部(phr)で表される組成物を表3に記載する。
【0173】
【0174】
ゴム組成物の調製方法は、2つの逐次的な調製段階、すなわち高温熱機械加工の第1の段階と、これに続く加硫系を導入するための110℃未満の温度での機械加工の第2の段階で行った。
【0175】
第1段階は、Brabenderブランドの、内部ミキサー型の混合装置(380mLの容量)を使用して行った。初期温度とローターの速度は、混合物の滴下温度が約162℃になるように設定した。
【0176】
第1の段階の間に、エラストマー及び補強充填剤(数回に分けて導入)を、カップリング剤及び他の添加剤(DPG、ステアリン酸、樹脂、ZnO、6-PPD)と混合した。この段階の継続時間は約6分であった。
【0177】
混合物を(110℃未満の温度に)冷却した後、第2段階の間に加硫系を添加した。この段階は50℃に予熱されたオープンミルで実施した。この段階の継続時間は2~6分であった。各最終混合物を、次に、厚さ2~3mmのプラーク形態にカレンダー加工した。
【0178】
加硫物の機械的特性
測定は150℃で加硫した後に実施した。
【0179】
一軸引張試験を、Instron 5564装置で500mm/分の速度にてH2型の試験体を使って標準NF ISO 37の教示にしたがって行った。x%の引張歪みで測定される応力に相当するx%弾性率は、MPa単位で表される。
【0180】
摩耗による質量減少の測定は、Montech研磨計を使用して、標準DIN53516の指示に従って行った。この中で、円筒形の試験片は、P60グレインの研磨網の作用を受け、10Nの接触圧力で40メートルの間回転ドラムの表面に取り付けられる。測定値は、摩耗後の物質の減少体積(mm)であり、値が小さいほど耐摩耗性に優れている。
【0181】
損失係数(tanδ)及び動的剪断における弾性係数の振幅(ΔG’)の値は、加硫試料(断面積8mm及び高さ7mmの平行六面体試験片)で記録した。試料を、40℃の温度で及び10Hzの周波数で二重交互正弦波剪断歪みにかけた。歪み振幅掃引プロセスを、0.1%から50%まで外側に進み、次いで50%から0.1%まで戻る往路-復路サイクルに従って行った。表4に報告されている値は、戻り歪み振幅スキャンから得られ、損失係数の最大値(tanδmax)及び歪みの0.1%~50%の値の弾性率の振幅(ΔG’)に関係する(ペイン効果)。
【0182】
【0183】
本発明のシリカを含む実施例6及び7の組成物は、先行技術による沈降シリカを含有する組成物と比較して、大幅に低減されたエネルギー散逸値(ΔG’及びtanδmax)、より優れた耐摩耗性、及び優れた機械的特性を示す。