(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】同期モードでのPSI5ベース電流サンプリング
(51)【国際特許分類】
H04B 3/02 20060101AFI20240520BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20240520BHJP
H03K 5/08 20060101ALN20240520BHJP
H03K 17/00 20060101ALN20240520BHJP
H03K 19/0175 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
H04B3/02
H03F3/45
H03K5/08 E
H03K17/00 D
H03K19/0175 220
(21)【出願番号】P 2021530071
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019062019
(87)【国際公開番号】W WO2020112413
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】スリ ナヴァネーサクリシュナン イーシュワラン
(72)【発明者】
【氏名】テッド エフ リーカン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ ズロカ
(72)【発明者】
【氏名】ダレン ジェイ ロールマン
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0028086(US,A1)
【文献】特表2015-511902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0379202(US,A1)
【文献】特開2010-074833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/02
H03K 19/0175
H03K 17/00
H03K 5/08
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランシーバであって、
供給電流感知出力を有する電流感知回路要素であって、
供給電流を提供し 、
一定間隔で同期パルスを供給し、
時間スロットの間にセンサデータを表す前記供給電流における変化を感知する、
ように構成される、前記電流感知回路要素と、
前記供給電流感知出力に結合される供給電流感知入力と、ベース電流サンプリング制御入力と、サンプル出力とを有するサンプルアンドホールド回路要素と、
前記供給電流感知入力に結合される入力と、前記サンプル出力に結合される入力と、データ出力とを有する比較回路要素と、
前記データ出力に結合される入力と、サンプリング制御入力と、前記ベース電流サンプリング制御入力に結合されるベース電流サンプリング出力とを有するベース電流更新回路要素と、
を含む、トランシーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランシーバであって、
前記ベース電流更新回路要素が、前記データ出力に結合される入力と時間サンプリング制御出力とを有するアイドル時間計測回路要素を含む、トランシーバ。
【請求項3】
請求項2に記載のトランシーバであって、
前記ベース電流更新回路要素が、前記サンプリング制御入力に結合される第1の入力と前記時間サンプリング制御出力に結合される第2の入力と前記ベース電流サンプリング出力に結合される出力とを有するOR回路を更に含む、トランシーバ。
【請求項4】
請求項2に記載のトランシーバであって、
前記ベース電流更新回路要素が、前記データ出力と前記アイドル時間計測回路要素の入力との間に結合されるデグリッチ回路要素を更に含む、トランシーバ。
【請求項5】
請求項1に記載のトランシーバであって、
前記サンプルアンドホールド回路要素が、
前記サンプル出力に結合されるキャパシタと、
前記供給電流感知入力に結合される入力と、前記ベース電流サンプリング制御入力に結合される制御入力と、前記キャパシタに結合される出力とを有するスイッチと、
を含む、トランシーバ。
【請求項6】
請求項1に記載のトランシーバであって、
前記比較回路要素が中間電圧VDD_MVと低電圧VDD_LVとの間に結合される、トランシーバ。
【請求項7】
請求項1に記載のトランシーバであって、
前記電流感知回路要素が高電圧VDD-HVと中間電圧VDD-MVとの間に結合される、トランシーバ。
【請求項8】
請求項1に記載のトランシーバであって、
前記データ出力に結合される入力とチャネル出力とを有するチャネル回路要素を更に含む、トランシーバ。
【請求項9】
請求項8に記載のトランシーバであって、
前記チャネル出力に結合される入力とデコード出力とを有するデコーダ回路要素を更に含む、トランシーバ。
【請求項10】
請求項9に記載のトランシーバであって、
前記デコーダ回路要素が、マンチェスタデコーダ回路要素である、トランシーバ。
【請求項11】
プロセスであって、
1つのワイヤに供給電流を提供することと、
同期パルスを前記1つのワイヤ上で送信することであって、前記同期パルスの間に時間スロットがある、前記送信することと、
前記1つのワイヤ上で前記供給電流における変化を感知することであって、前記供給電流の変化が前記時間スロットの間に起こるセンサデータを表し、前記時間スロットの間にギャップ時間があり、前記ギャップ時間が次の時間スロットが始まる前の最大ビット期間よりも大きい、前記感知することと、
前記同期パルスでキャパシタ
を前記1つのワイヤ上のベース電流
に基づいて充電することと、
前記ギャップ時間よりも大きい時間にセンサデータが感知されないことに応答して前記キャパシタを
再充電することと、
を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記
再充電することが、前記1つのワイヤ上でエッジ遷移を検出することを含む、プロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスであって、
前記
再充電することが、前記1つのワイヤ上でエッジ遷移をデグリッチすることを含む、プロセス。
【請求項14】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記
再充電することが、前記1つのワイヤ上でエッジ遷移の間のクロック周期をカウントすることを含む、プロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスであって、
前記
再充電することが、クロック周期のカウントがギャップ時間を表すクロック周期の数よりも大きいときに付加的なサンプリング信号を設定することを更に含む、プロセス。
【請求項16】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記
再充電することが、前記1つのワイヤ上で前記ベース電流のレベルをサンプルするために付加的なサンプリング信号を設定することを含む、プロセス。
【請求項17】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記
充電することが、前記1つのワイヤ上で前記ベース電流のレベルをサンプルするために標準サンプリング信号を設定することを含む、プロセス。
【請求項18】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記1つのワイヤ上の前記ベース電流のレベルをサンプルするためにサンプリング信号を設定すること、又は、前記1つのワイヤ上で前記ベース電流のレベルをサンプルするために付加的なサンプリング信号を設定することを更に含む、プロセス。
【請求項19】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記
充電することが、各同期パルスの後にサンプルすることを含む、プロセス。
【請求項20】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記送信することが、500マイクロ秒よりも大きい期間において同期パルスを送信することを含む、プロセス。
【請求項21】
回路であって、
サンプルアンドホールド回路であって、
第1の端子と制御端子とを有するトランジスタと、
前記第1の端子に結合されるキャパシタと、
を含む、前記サンプルアンドホールド回路と、
第1の入力と前記キャパシタに結合される第2の入力と出力とを有する比較器回路要素であって、ベース電圧と同期パルスと前記同期パルスの間のデータとを含む第1の信号を代表する第1の電圧を前記第1の入力で受信するように構成される、前記比較器回路要素と、
前記比較器回路要素の出力に結合される入力と前記トランジスタの制御端子に結合される出力とを有するベース電流更新回路要素であって、前記同期パルスで前記同期パルスの間のアイドル時間の間に前記キャパシタ上の前記ベース電圧を代表する第2の電圧を補
捉するように前記サンプルアンドホールド回路要素を制御するように構成される、前記ベース電流更新回路要素と、
を含む、回路。
【請求項22】
システムであって、
第1及び第2のセンサと、
トランシーバであって、
第1及び第2の出力を含む電流感知回路要素であって、前記第1の出力が前記第1及び第2のセンサに結合される、前記電流感知回路要素と、
サンプルアンドホールド回路要素であって、
第1及び第2の端子と制御端子とを有するトランジスタであって、前記第1の端子が前記第2の出力に結合される、前記トランジスタと、
前記第2の
端子に結合されるキャパシタと、
を含む、前記サンプルアンドホールド回路要素と、
前記電流感知回路要素の第2の出力に結合される第1の入力と前記キャパシタに結合される第2の入力と出力とを有する比較器回路要素であって、ベース電圧と同期パルスと前記同期パルスの間の感知器データとを含む第1の信号を代表する第1の電圧を前記第1の入力で受信するように構成される、前記比較器回路要素と、
前記比較器回路要素の出力に結合される入力と前記トランジスタの制御端子に結合される出力とを有するベース電流更新回路要素であって、前記同期パルスで前記同期パルスの間のアイドル時間の間に前記ベース電圧を代表する前記キャパシタ上の第2の電圧を
捕捉するように前記サンプルアンドホールド回路要素を制御するように構成される、前記ベース電流更新回路要素と、
を含む、前記トランシーバと、
前記比較器回路要素の出力に結合されるデータ処理回路と、
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ペリフェラルセンサインタフェース5(PSI5)は、進化したオートモーティブ規格であり、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)の代替と考えられている。例えば、エアバッグ用センサ、パワートレイン、ブレーキ応用例など、数多くのオートモーティブ応用用がPSI5プロトコルを活用している。動作の同期モードでは、電子機器制御ユニット(ECU)のPSI5トランシーバが、例えば、ベース電圧、同期(SYNC)パルスなどの電力を、1本のワイヤでセンサに供給し、同期パルスは、ワイヤに接続されたセンサからのデータ収集を開始する。センサは、電流変調されたデータで反応し、各センサは所与の時間スロットの間応答する。PSI5トランシーバの電流感知回路が、直流電流、ベース又はアイドル電流と、センサからの電流の変化との両方を感知し、その変化をデジタルデータに変換する。センサのベース電流は時間の経過と共に変化する可能性があり、或いは、センサがクラスタから落下する可能性があるので、ECU内のPSI5トランシーバは、ベース電流を監視し、サンプルアンドホールド回路を介してコンデンサ上の等価の電圧としてベース電流の値をストアする。データは、信号電流をサンプリングされたベース電流と比較するコンパレータによって回復される。
【0002】
現在、同期パルス周期は250μs又は500μsのいずれかであり、3~4個のセンサがトランシーバに取り付け得る最大数である。PSI5規格は増大しつつある応用例に対して用いられるので、望ましいのは許容され得るセンサの数を増やすことである。PSI5トランシーバに取り付けられるセンサの数を増やすために、動作の同期モードの間の同期パルス周期は必然的に増加し、例えば、10ミリ秒になる。現在、同等の電圧を保持するために安価なポリシリコン/Nウェルコンデンサが用いられているが、コンデンサからの漏れ電流は、時間の経過とともにデータを破壊する電圧のドループ(droop)を生じさせる。従って、現行の同期パルス周期よりもはるかに長い周期にわたってこのタイプのコンデンサに依存することはできない。75℃を超える高温動作の間の等価電圧の信頼性のあるストレージは重要であり、これは、別のタイプのコンデンサ、例えば、ポリシリコン・金属コンデンサ又は金属・金属コンデンサを必要とし得、より大きなシリコンエリアが必要であるためコストを増大させ得る。
【発明の概要】
【0003】
開示される実施例は、サンプルアンドホールドコンデンサが低電圧で漏れがある場合でも、複数のセンサ、つまり4つ以上、を同期モードでECUに取り付けることを可能とする、ベース電流サンプリング回路を提供する。開示される実施例は、データが送信されていないセンサ通信のための時間スロットを検出する。これは、例えば、センサバス信号内のアイドル時間を測定し、アイドル時間がセンサ時間スロット間の指定ギャップ時間よりも大きいかどうかを判定することによって、達成され得る。指定ギャップ時間より大きいアイドル時間が検出されると、サンプルアンドホールドコンデンサをベース電流に結合するスイッチが閉じて、電流を電圧として捕捉し、次のセンサ送信が発生するまで閉じたままになる。すべてのセンサがあらゆる機会にデータを送信することは稀であるので、捕捉されたベース電流は、データが送信されていない任意の時間スロットの間、更新される。アイドル時間スロットの検出はプログラム可能である。
【0004】
一態様において、PSI5トランシーバを含む電子デバイスの一実施例が開示される。PSI5トランシーバは、第1の電流感知ノードと低電圧信号との間に結合される第1のNMOSトランジスタであって、ダイオード結合される第1のNMOSトランジスタ、中電圧信号と低電圧信号との間に第2のNMOSトランジスタと直列に結合される第1の抵抗器であって、第2のNMOSトランジスタのゲートが第1のNMOSトランジスタのゲートに結合される、第1の抵抗器、中電圧信号と低電圧信号との間に第3のNMOSトランジスタと直列に結合される第2の抵抗器であって、第3のNMOSトランジスタのゲートが、第3の抵抗器とNMOSスイッチングトランジスタを介して第1の電流感知ノードに結合されており、NMOSスイッチングトランジスタが、ゲート上のベース電流サンプリング信号を受信する、第2の抵抗器、第1の抵抗器と第2のトランジスタとの間の第2の電流感知ノードに結合される非反転入力と、第2の抵抗器と第3のトランジスタとの間の第3の電流感知ノードに結合される反転入力と、データ出力ノードに結合される出力とを有するコンパレータ、及び、データ出力ノードに結合される入力と、ベース電流サンプリング信号を提供するように結合される出力とを有するベース電流更新回路を含む。ベース電流更新回路は、データ出力ノード上で検出されるエッジ遷移間の第1の数のクロックサイクルを計数するように、及び、第1の数が、定義されたギャップ時間を表すクロックサイクルの第2の数より大きいときに第1のサンプリング時間を設定するように結合されるアイドル時間計数回路と、第1のサンプリング時間を第1の入力として、第2のサンプリング信号を第2の入力として、及び、ベース電流サンプリング信号を提供するように結合される出力を有するOR回路とを含み、第2のサンプリング信号が、周期的にスケジュールされた時間において高に設定される。
【0005】
別の態様において、PSI5トランシーバチップを動作させる方法の一実施例が開示される。この方法は、センサバス信号を受信するためにPSI5トランシーバチップの第1のピンに複数のセンサを結合することであって、PSI5トランシーバチップが通信のために時分割多重化を用いることと、マンチェスタデコーダを第2のピンに結合することと、バッテリーを第3のピンに結合することと、センサバス信号上の電流に比例する第1の電圧をコンパレータで受け取ることと、コンパレータにおいて、センサバス信号上のベース電流に比例する第2の電圧を受け取ることと、コンパレータから第2のピンにデータ出力信号を送ることと、第2の電圧を有効にするために用いられる第3の電圧をサンプルアンドホールド回路で捕捉することであって、サンプルアンドホールド回路が、ベース電流サンプリング信号上の高値に応答する第3の電圧を捕捉することと、PSI5規格で定義されるギャップ時間よりも大きな時間の間、データ出力信号がエッジ遷移を有さないとき、ベース電流更新回路において、データ出力信号上のエッジ遷移を検出して、ベース電流サンプリング信号を高に設定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の実施例は、同様の参照符号が同様の要素を示す添付の図面において、制約としてではなく例示として示される。本開示における「或る」又は「一」実施例に対する異なる言及は、必ずしも同じ実施例を意味するわけではなく、そのような言及が少なくとも一つを意味し得ることに留意されたい。更に、特定の特徴、構造、又は特性が或る実施例に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、それは、他の実施例に関連したそのような特徴、構造、又は特性を実施する当業者の知見の範囲内にある。本明細書で用いられる「結合する」という用語は、ワイヤレス接続を含み得る「通信可能に結合される」と認定されない限り、間接的又は直接的な電気的接続のいずれかを意味する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的な電気的接続を介するもの、又は他のデバイス及び接続を介した間接的電気的接続を介するものであり得る。
【0007】
添付の図面は、本開示の一つ又は複数の例示の実施例を図示するために、本明細書に組み込まれ、またその一部を形成する。本開示の様々な利点及び特徴は、添付の特許請求の範囲に関連して、また添付の図面に関連して、以下の詳細な記述から理解され得るであろう。
【0008】
【
図1】本開示の一実施例に従ったペリフェラルセンサインタフェースのためのベース電流更新回路を有する比較回路の例を示す。
【0009】
【
図2】本開示の実施例に従って、ベース電流サンプリングコンデンサのドループがどのように補償されるかを図示する。
【0010】
【
図3】
図1の回路の一実施例を用いた10ミリ秒同期周期にわたるデータ出力信号Rxを示す。
【0011】
【
図4】本開示の実施例に従った、ペリフェラルセンサインタフェースのためのECUを動作させる方法を示す。
【0012】
【
図4A】
図4の方法であり得る付加的な要素を示す。
【0013】
【
図5】本開示の実施例に従った、ベース電流更新回路を有する開示された比較回路を利用し得るスタンドアロンPSI5トランシーバチップを含むシステムのハイレベルの概略を示す。
【0014】
【
図6】本開示の一実施例に従った、ベース電流更新回路を有する開示された比較回路を利用し得るSOCを含むシステムのハイレベルの概略を示す。
【0015】
【
図7】3個のセンサが取り付けられたペリフェラルセンサインタフェーストランシーバを含むシステムを示す。
【0016】
【
図8】センサバス信号VCExの予期されるタイミング図を示す。
【0017】
【
図9】本開示の実施例を組み込むことができるPSI5トランシーバチップのためのECUを構成する回路のブロック図を示す。
【0018】
【
図10A】500μsの同期パルス周期の間、現在用いられているECU内のセンサバス信号VCEx及び種々の信号の例を示す。
【0019】
【
図10B】2ミリ秒の同期パルス周期の間のECU内のセンサバス信号VCEx及び様々な信号の例を示し、解決すべき問題を図示する。
【0020】
【
図11A】2個の異なった同期パルス周期における従来技術のECUのためのセンサバス信号VCEx及びデータ出力信号Rxを示し、
図10Bに示された問題を図示する。
【
図11B】2個の異なった同期パルス周期における従来技術のECUのためのセンサバス信号VCEx及びデータ出力信号Rxを示し、
図10Bに示された問題を図示する。
【0021】
【
図12】従来技術に従ったECUのための例示の電流感知増幅器回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の特定の実施例について、添付の図を参照して詳細に説明する。以下の本発明の実施例の詳細な記載において、本発明のより完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な詳細なしに本発明が実施され得ることは当業者に明らかであろう。他の事例において、本記載を不必要に複雑にすることを避けるため、周知の特徴は詳細に記述されていない。
【0023】
図7は、センサバス710を介して、第1のセンサ704、第2のセンサ706、及び第3のセンサ708から同期データ送信を受信するように結合されるPSI5トランシーバ702を有するシステム700のブロック図を示す。センサの実際の数は1~4であり得、4が規格で現在許容されている最大である。センサバス710は一般にツイストペアである。すなわち、電力と通信の両方を搬送するためにセンサバス信号VCExを提供する第1のワイヤと、センサを接地接続に結合する第2のワイヤとを備えている。PSI5トランシーバ702は、同期モードと非同期モードの両方で動作することができるが、本願は、時分割多重化を用いてセンサ704、706、708からPSI5トランシーバ702への通信を提供する同期モードにおける動作に向けられている。
【0024】
センサバス信号VCExは、ベース電圧Vbaseと周期的な同期パルスSYNCを搬送し、データが送信され得ることをセンサに通知する。ベース電流の値は、異なった応用例において4mAから30mAまで変化し得るため、比較のためにベース電流が回路によって捕捉される必要がある。各センサは、そのセンサがデータを送信し得る特定の時間スロットを有し、例えば、第1のセンサ704は第1の時間スロットで送信し、第2のセンサ706は第2の時間スロットで送信し、第3のセンサ708は第3の時間スロットで送信する。センサは、マンチェスタ符号化ストリームにおいてセンサバス信号VCExからの電流を変調することによってデータを送信し得、論理「0」が、ビットを送信するための時間スロットの中間における電流の立ち上がり勾配によって表され、論理「1」が立ち下がり勾配によって表される。PSI5トランシーバ内において、センサバス信号VCExの値をベース電圧Vbaseのストアされた値と比較することによって、電流及び電圧の変化が検出される。
【0025】
図8は、センサバス信号VCEx上の通知のためのPSI5規格において定義されているパラメータの一部を示す。PSI5は現在も進化している規格と考えられているため、これらのパラメータは構成可能であるが、すべての実装が現在の規格に準拠している必要がある。同期パルス周期は、1つの同期パルスの開始から第2の同期パルスの開始までわたり、同期パルス周期の持続時間はTsyncである。図示のように、PSI5規格は、時間スロットnの最も早い開始時間Tn,ES、名目開始時間Tn,NS、及び直近の開始時間Tn,LS、ならびに最も早い終了時間Tn,EE、名目終了時間Tn,NE、及び直近の終了時間Tn,LEとして定義する。同様のパラメータが、各時間スロット、及び時間スロット内の各ビットのデータに対して提供される。各時間スロットの後には、次の時間スロットが開始される前の、ギャップ時間のTgapが続き、これは最大ビット持続時間よりも大きい。
【0026】
図9は、本開示の実施例を組み込むことができるPSI5トランシーバチップのためのECU900のブロック図を示す。PSI5トランシーバは車両で用いるように設計されており、そのため、電力供給は概してバッテリーUBATによって提供される。バッテリー電力は、ECU900を動作させるために必要な異なる電圧レベルを提供する、チャージポンプ902、VDD5低ドロップアウト発振器(LDO)904、及びLDO_BASE回路906に提供される。チャージポンプ902は、一般に14~40Vの範囲である「高」電圧信号VDD‐HVを提供するように結合され、VDD5 LDOは5Vの電圧を提供するように結合され、LDO_BASEは、一実施例において5V前後の値を有する「中」電圧信号VDD‐MVを提供するように結合される。接地接続を有する「低」電圧信号VDD‐LVも用いられる。
【0027】
ECU900はまた、低電圧基準回路908、浮動AB級増幅器回路910、電流感知増幅器回路912、及び、サンプルアンドホールド回路916を含む比較回路914を含む。この図には3個のピンが示されている。第1のピンP1はセンサバス信号VCExを提供するように結合され得、第2のピンP2はデータ出力信号Rxを提供するように結合され得、第3のピンP3はバッテリーに結合され得る。少なくともいくつかの実施例において、これらのピンは、例えばシステムオンチップにおいて、内部ノードで置き換えられてもよい。チャージポンプ902は、高電圧信号VDD‐HVを電流感知増幅器回路912に、及びショットキーダイオードD40を介してフローティングAB級増幅器回路910に提供するように結合される。LDO_BASEは、中電圧信号VDD‐MVを浮動AB級増幅器回路910に提供するように結合される。VDD5 LDOは、5ボルト信号を低電圧基準回路908に提供するように結合される。低電圧基準回路908は、同期パルスの低電圧バージョンを周期的に含む基準信号を提供する。基準信号は浮動AB級増幅器回路910に渡される。浮動AB級増幅器回路910において、基準信号は高電圧信号VDD‐HVを上側レールとして用い、中電圧信号VDD‐MVを下側レールとして用いて増幅されて、増幅された基準信号918を提供する。
【0028】
浮動AB級増幅器回路は、増幅された基準信号918を電流感知増幅器回路912に提供するように結合され、電流感知増幅器回路912は、増幅された基準信号918をセンサバス信号VCExとしてセンサに送出し、これはILOADとして示されている。電流感知増幅器回路912は更に、センサバス信号VCExの変化を感知するように結合され、順方向又は逆方向のいずれかの短絡を検出することができ、これらの短絡が回路及びチップの残りの部分にダメージを与えるのを防止し得る。電流感知増幅器回路912がこの感知を行っているとき、センサバス信号VCEx上の電流の比例コピーが、信号920として比較回路914に渡される。比較回路914は、サンプルアンドホールド回路916を用いて、センサバス信号VCExの比例コピー上のセンサデータ送信を感知するように動作する。以下において、以下の電流感知増幅器回路912及び比較回路914の実施例に関して更に言及される。
【0029】
図10Aは、同期モードにおいて3個のセンサと共に動作するPSI5トランシーバの既知の実装を用いる動作の間のセンサバス信号VCExの例を示しており、PSI5トランシーバの動作の或る態様を例示する3個の内部信号も含む。
図10Aに見られるように、センサバス信号VCExは、ベース電圧Vbaseに等しいレベルで時間T0に開始し、ベース電圧Vbaseに等しい値+4ボルトまで上昇して、同期パルスを提供する。これは、例えば、Vbaseが5Vである場合、同期パルスは9Vの値まで上昇することを意味する。データ送信のための3個の時間スロットが示され、それぞれ時間T1、時間T2、及び時間T3で始まり、各センサからの送信を含むこのデータフレームが終了すると、第3の時間スロットは時間T4で終わる。その直後に、新しい同期パルスが送られる。
【0030】
ベース電流サンプリング信号CtrlSは、センサバス信号VCExのサンプリングを引き起こすために高に設定され、残りの時間の間は低に設定される。トランシーバがオンになると、ベース電流サンプリング信号CtrlSは、コンデンサを充電するために初期的に高に設定され、その後、各同期パルスの後リフレッシュされる。サンプリングの間、センサバス信号VCExがベース電圧レベルにある一方で、センサバス信号VCExの比例コピーがコンデンサに結合されて、ストアされたベース電圧Vsbを提供する。図示の例では500μsである同期パルス周期の間、コンデンサがリークして、ストアされたベース電圧Vsbをいくらかドループさせる恐れがある。しかし、最大4個のセンサに必要な時間フレームでは、これが問題となることは認められていない。データ出力信号Rxは、センサバス信号VCExに比例する第1の電圧と、ベース電圧Vbaseに比例し、ストアされたベース電圧Vsbを用いてつくられる第2の電圧とを比較するコンパレータの出力であり、
図10Aのデータ出力信号Rxは、コンパレータが、ストアされたベース電圧Vsbを用いて、センサバス信号VCEx上に存在するデータを忠実に認識できることを示す。
【0031】
しかしながら、進化している規格において現在考えられているように、同期パルス周期がより長い期間に延長されると問題が生じる可能性がある。
図10Bは、同期パルス周期が2ミリ秒間に延長された場合の、
図10Aと同じ信号の例を示す。この例では、長い方の同期パルス周期の終わり付近に置かれているセンサ3について、単一の時間スロットが示されている。この特定の状況は、単純化のために用いられており、問題が必ずこのように生じることを暗示することを意図してはいない。
【0032】
ベース電流サンプリング信号CtrlSは、コンデンサを充電するために初期的に高に設定され、その後、各同期パルスの後、リフレッシュされる。2ミリ秒の同期パルス周期の間、コンデンサは以前と同じ速度でリークし続けるが、ストアされたベース電圧Vsbをより長い期間保持するためにコンデンサが必要なため、ストアされたベース電圧Vsbは、
図10Aのものよりも更にドループする。センサ3のための時間スロットに達すると、ストアされたベース電圧Vsbがコンパレータに正確な比較を提供しない地点まで低下して、基準がベース電流よりも大幅に低下したためにデータ出力信号Rxが完全に破損して高に固定される。これはどのようなセンサ状況でも許容できないが、PSI5を用いるために動いている安全システムにおいてはとくに重大である。
【0033】
図11A及び
図11Bは、2個の異なった長さの同期パルス周期を用いた試験での従来技術に従ったECU900によって提供されるいくつかの信号を示す。
図11Aは、1ミリ秒の同期パルス周期を用いた動作の間の信号を示す。センサバス信号VCExとデータ出力信号Rxはどちらも正常に動作しており、問題はない。
【0034】
ただし、
図11Bは、同じ回路を10ミリ秒の同期パルス周期を用いて動作させた場合の信号を示す。この例では、センサバス信号VCExは正常であるが、センサバス信号VCEx上の信号とストアされたベース電圧Vsbとの間で成された比較の結果として、データ出力信号Rx上の多数の大きな電圧スパイクが円で示されている。これらの電圧スパイクは、
図10Bに示す破損データのブロックとは異なる。これは、比較回路914の結果が、信号内のノイズと、ストアされたベース電圧Vsbにおけるドループとの両方に敏感であるためである。ストアされたベース電圧Vsbは、この例では、破損したデータの明らかなブロックを引き起こすほど十分にドループしていないが、ストアされたベース電圧Vsbにおけるドループは、比較回路914をライン内のノイズに対してより敏感にし、不正確な比較となる。問題が所与の時点の後、断続的であるか又は一定であるかにかかわらず、これらの誤差は、許容できず、同期パルス周期が延長される場合、補正されなければならない。
【0035】
比較回路内のセンサデータを認識するために用いられる第1の比例電流Isense1のソースを理解するために、電流感知増幅器回路1200の例示の一実施例が
図12に示される。電流感知増幅器回路1200は、順方向電流感知回路1202及び逆方向電流感知回路1204を含む。また、高電圧信号VDD‐HVと中電圧信号VDD‐MVとの間にPMOSスイッチングトランジスタMsnと直列に結合されるNMOSトランジスタMsrを含む、浮動AB級増幅器回路1206の一部が示されている。ノード1208はNMOSトランジスタMsnとPMOSスイッチングトランジスタMsnとの間に位置し、
図9で見られる増幅された基準信号918を順方向電流感知回路1202と逆方向電流感知回路1204の両方に提供する。順方向電流感知回路1202は、センサバス信号VCExとして、ベース電圧Vbase及び同期パルス含む増幅された基準信号918を提供する。センサ送信データとして、電流の変化は、センサバス信号VCExに反映され、電流感知増幅器回路1200内で感知される。
【0036】
本開示の目的のために、順方向電流感知回路1202を簡単に論じるが、逆方向電流感知回路1204は示すのみで、論じない。これらの回路に関する更なる詳細は、2018年3月6日に出願された、発明者スリ ナヴァネーサクリシュナン イーシュワラン及びティモシー ポール ドゥリエアの米国特許出願番号15/913,465に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。順方向電流感知回路1202内で、NMOSトランジスタM17F及びM17Rは、ノード1208とノードOUTxとして示されるセンサバスピンとの間で直列に結合されて、増幅された基準信号918をセンサバス信号VCExとして出力する。電流源1212が、高電圧信号VDD‐HVとノードNAとの間に抵抗器Rgと直列に結合され、電流源1212と抵抗器Rgとの間にあるノードNBが、NMOSトランジスタM17F及びM17Rのゲートに結合される。NMOSトランジスタM17F及びM17RのゲートをノードNB上の安定した電圧と結合することにより、NMOSトランジスタM17F及びM17Rが接地への短絡の間に特にオフにされない限り、ノード1208から受信した信号がノードOUTxでセンサバスピンに渡されることが保証される。
【0037】
順方向電流感知回路1202内で、PMOSトランジスタM18、M20及びNMOSトランジスタM19、M26とともに、演算増幅器OA2は、電流感知を実施し、抵抗器Rh、Rj、NMOSトランジスタM21、M22、ダイオードD3、及び電流シンクIf_refとの組み合わせで、演算増幅器Opfは、接地への短絡に対する保護を提供する。演算増幅器OA2の非反転入力はセンサバス信号VCExに結合され、演算増幅器OA2の出力は、NMOSトランジスタM26のゲートに結合される。PMOSトランジスタM18、及びNMOSトランジスタM26及びM19は、高電圧信号VDD‐HVとノードNCとの間で直列に結合され、ノードNCは、バックツーバックダイオードDl、D2を介して、NMOSトランジスタM17F、M17Rのゲートに結合される。NMOSトランジスタM26とNMOSトランジスタM19との間に位置するノードNDが、フィードバックを提供するために演算増幅器OA2の反転入力に結合され、一方、NMOSトランジスタM19のゲートは、NMOSトランジスタM17F、M17Rのゲートと共通して、ノードNBに結合される。PMOSトランジスタM18はダイオード結合され、PMOSトランジスタM18のゲートは更に、高電圧信号VDD‐HVと第1の電流感知ノードN1との間に結合されるPMOSトランジスタM20のゲートに結合される。第1の比例電流Isense1を比較回路に提供するのは第1の電流感知ノードN1である。
【0038】
そのため、演算増幅器OA2は、PMOSトランジスタM18及びNMOSトランジスタM26及びM19を介する電流の流れを制御するために、センサバス信号VCEx及びノードNDからのフィードバックを利用する。NMOSトランジスタM19は、NMOSトランジスタM17Fに比例したサイズであり、例えば、NMOSトランジスタM17Fが1000×1のサイズを有する場合、NMOSトランジスタM19は10×1の値を有し得、NMOSトランジスタM17Fの電流の100分の1をソースし得る。電流感知増幅器回路1200の通常動作の間、順方向電流感知回路1202のNMOSトランジスタM26は、センサによって送信されるデータによって生じる変動を含む、ノードOUTxでのセンサバスピンを介する電流を検出し、順方向電流感知回路1202は、第1の電流感知ノードN1上の第1の比例電流Isense1を、
図1で論じた比較回路のような比較回路に提供する。
【0039】
図1は、本開示の一実施例に従った比較回路100を示す。比較回路100は、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVとの間で動作し、感知増幅器回路から、例えば、電流感知増幅器回路1200の第1の電流感知ノードN1から、第1の比例電流Isense1を受け取り、データ出力信号Rxを提供する。データ出力信号Rxは、データを回復する処理のためにマンチェスタデコーダに向けて送られ得る。
【0040】
一実施例において、第1の電流ミラーが3つのレッグを有し、第1の電流ミラーの主要部を形成するように第1のNMOSトランジスタM1、第2のNMOSトランジスタM2、及び第3のNMOSトランジスタM3を含み、一方、第4のNMOSトランジスタM4、第5のNMOSトランジスタM5、及び第6のNMOSトランジスタM6が、3つの主要トランジスタへのカスケード保護を提供する。
【0041】
第4のNMOSトランジスタM4は、第1の電流感知ノードN1と低電圧信号VDD‐LVとの間で第1のNMOSトランジスタM1と直列に結合されて第1のレッグを形成し、第4のNMOSトランジスタM4及び第1のNMOSトランジスタM1の両方が、それぞれのゲート上で第1の比例電流Isense1を受け取るようにダイオード結合されている。第1の抵抗器R1が、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVとの間で第5のNMOSトランジスタM5及び第2のNMOSトランジスタM2と直列に結合されて、第1の電流ミラーの第2のレッグを形成し、第2の抵抗器R2が、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVとの間で第6のNMOSトランジスタM6及び第3のNMOSトランジスタM3と直列に結合されて、第1の電流ミラーの第3のレッグを形成する。第2のNMOSトランジスタM2及び第5のNMOSトランジスタM5の各々のそれぞれのゲートは、第1の比例電流Isense1を受け取るために第1の電流感知ノードN1にも結合され、一方、第3のNMOSトランジスタM3のゲートは、NMOSスイッチングトランジスタS2及び第3の抵抗器R3を介して第1の電流感知ノードN1に結合され、第6のNMOSトランジスタM6のゲートは、第4の抵抗器R4を介して第1の電流感知トランジスタN1に結合される。
【0042】
第1のコンデンサC1が、NMOSスイッチングトランジスタS2と第3のNMOSトランジスタM3のゲートとの間の点に結合される第1の端子と、低電圧信号VDD‐LVに結合される第2の端子とを有する。第2のコンデンサC2が、第4の抵抗器R4と第6のNMOSトランジスタM6のゲートとの間の点に結合される第1の端子と、低電圧信号VDD‐LVに結合される第2の端子とを有する。一実施例において、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2はいずれも、ポリシリコン/Nウェルコンデンサであり、本質的に漏れがあるが、代替コンデンサよりも安価である。
【0043】
コンパレータ102が、非反転入力上の第2の電流感知ノードN2から取り出された第1の電圧V1を受け取り、反転入力上の第3の電流感知ノードN3から取り出された第2の電圧V2を受け取る。コンパレータ102は、比較の結果をデータ出力信号Rxとして第1のレベルシフト回路104に出力する。ここで、データ出力信号Rxは、例えば、データ出力ノードN4上に提供される前に、5Vドメインから1.5Vドメインへと、より低い電圧にレベルシフトされる。第1の電圧V1は、第1の比例電流Isense1に比例し、そのため、センサバス信号VCExに比例し、第2の電圧V2は第1の比例電流Isense1のベース電流に比例する。
【0044】
第2の電流ミラーも設けられ、第2の電流ミラーは、第7のNMOSトランジスタM7、第8のNMOSトランジスタM8、第9のNMOSトランジスタM9、及び第10のNMOSトランジスタM10を含む。第7のNMOSトランジスタのM7及び第8のNMOSトランジスタのM8は、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVとの間で第2の抵抗器R2と直列に結合される。同様に、電流源106が、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVの間で、第9のNMOSトランジスタM9及び第10のNMOSトランジスタM10と直列に結合される。第7のNMOSトランジスタ及び第9のNMOSトランジスタM9のゲートは共に結合され、第8のNMOSトランジスタM8及び第10のNMOSトランジスタM10のゲートも共に結合される。第9のNMOSトランジスタM9及び第10のNMOSトランジスタM10はいずれも、第2の電流ミラーにおけるそれぞれのトランジスタのゲートに一定電圧を提供するように結合される。比較閾値信号Vcmp‐thが、第9のNMOSトランジスタと第10のNMOSトランジスタとの間の点から取り出され、コンパレータ102の閾値電圧として用いられる。
【0045】
第1の電流ミラーの第2及び第3のレッグ内のトランジスタは、第1のレッグ内のトランジスタよりも小さく、比例して小さな電流を通過させるようなサイズとされている。一実施例において、第2及び第3のレッグ内のトランジスタは、第1のレッグにおけるトランジスタのサイズの5分の1である。加えて、第1の比例電流Isense1が電流感知増幅器回路912によって供給されるため、第1の比例電流は、高電圧信号VDD‐HVと中電圧信号VDD‐MVの間で動作し、一方、比較回路100の残りの部分は、中電圧信号VDD‐MVと低電圧信号VDD‐LVの間で動作する。第1の電流ミラーの第2のレッグは、第1の比例電流Isense1とセンサバス信号VCEx上の電流とに比例する第2の比例電流Isense2を通過させる。第2のレッグを介する電流の変動は、第1の電圧V1をセンサバス信号VCEx上の電流に関して比例して変化させる。
【0046】
対照的に、電流ミラーの第3のレッグを介する電流は、第1のコンデンサC1及びNMOSスイッチングトランジスタS2を含むサンプルアンドホールド回路によって制御される。スイッチトランジスタS2が閉じているとき、第1の比例電流Isense1はコンデンサC1を充電する。第1の比例電流Isense1上にベース電流のみが存在するときにNMOSスイッチトランジスタS2をオンにすることによって、センサバス信号VCEx上のベース電流に比例するストアされたベース電圧Vsbが捕捉される。ストアされたベース電圧Vsbは、第3のNMOSトランジスタM3のゲートに印加され、第3の比例電流Isense3を、第1の比例電流1のベース電流に比例し且つセンサバス信号VCExのベース電流に比例する値に制限する。従来技術において、ベース電流サンプリング信号CtrlSは、例えば、センサからのデータのためのSYNC信号と第1の時間スロットとの間など、周期的にNMOSスイッチングトランジスタS2をオンにする。
【0047】
リークしやすいコンデンサとしてのコンデンサC1の性質のため、以前の周期的サンプリングは、同期パルス周期がより長い周期まで延ばされる場合には不適切であることが証明される。そのため、コンデンサC1に対する充電を維持するために付加的なサンプリングを提供しなければならなくなるが、主な問題は付加的なサンプリングがいつ行われるべきかである。開示される実施例は、ベース電流更新回路108を提供し、ベース電流更新回路108は、センサバス信号VCEx上にいつアイドル時間が存在するかを判定し、規格で定義されたギャップ時間Tgapよりもアイドル時間が大きいときにスイッチの閉鎖を開始する。
【0048】
ベース電流更新回路108は、データ出力信号Rxを受信するようにデータ出力ノードN4に結合され、ベース電流サンプリング信号CtrlSを提供するように更に結合される。ベース電流更新回路108は、デグリッチ回路110、アイドル時間計数回路112、OR回路118、及び第2のレベルシフト回路120を含む。デグリッチ回路110は、データ出力信号Rxからのノイズをフィルタするように動作し、アイドル時間計数回路112は、データ出力信号Rxのエッジ遷移の発生を追跡する。PSI5通信で用いられるマンチェスタ符号化は、遷移の方向を使ってビットの値を判定し、上昇勾配は論理0に等しく、下降勾配は論理1に等しい。これは、データが送信されているときはいつでも、たとえ同じ値が各ビットで送信されているときでも、遷移が起こることを意味する。アイドル時間計数回路112は、データ出力信号Rxを監視し、データ出力信号Rxが高のままであるか、又は、規格で定義されるギャップ時間Tgapより大きい時間期間の間、低のままである場合、アイドル時間計数回路112は、データが送られていないと判定し、第1のサンプリング信号114を高に設定して、NMOSスイッチングトランジスタS2を閉じる。一実施例において、アイドル時間計数回路112は、データ出力信号Rx上のエッジ遷移間に生じる、第1の数のクロックサイクルを計数するように設定されるタイマーを含む。クロックサイクルの第1の数が、ギャップ時間のTgapにマッピングされるクロックサイクルの第2の数より大きくなると、第1のサンプリング信号114は高に設定される。アイドル時間の計数回路112は、データ出力信号Rx上にエッジ遷移が生じるまで、第1のサンプリング信号114を高に保ち続ける。
【0049】
実際には、ストアされたベース電圧Vsbが周期的に、例えば、各同期サイクルの後に、更新されることが依然として望ましい。この理由のため、第1のサンプリング信号114は、第2のサンプリング信号116も入力されるOR回路118に提供される。一実施例において、第2のサンプリング信号116は、サンプルアンドホールド回路を制御するために用いられる元の信号である。OR回路118は、第1のサンプリング信号114と第2のサンプリング信号116とを組み合わせて、ベース電流サンプリング信号CtrlSを提供し、これは、NMOSスイッチングトランジスタS2を制御するために用いられる。信号を比較回路100の電圧まで上昇させるようシフトするために、ベース電流サンプリング信号CtrlSは第2のレベルシフト回路120に提供され得る。
【0050】
図2は、本開示の一実施例に従った比較回路100に提供される様々な信号の例を示す。この例では、センサバス信号VCExの同期パルス周期は2ミリ秒であり、簡潔にするため、同期パルス周期の終わり付近のスロットにおいてデータを提供する単一のセンサのみが示されている。また、ベース電流サンプリング信号CtrlS、ストアされたベース電圧Vsb、及びデータ出力信号Rxも示されている。比較回路100がオンになると、第1のコンデンサC1上に初期の充電を提供するために、ベース電流サンプリング信号CtrlSの値は高である。初期の同期パルス及び各後続の同期パルスがセンサバス信号VCEx上に提供された直後に、ベース電流サンプリング信号CtrlSの値は4μsの間、高に向かって、ストアされたベース電圧Vsbの値が少なくとも同期パルス周期ごとに1回更新されることを保証する。また、ベース電流更新回路108が、アイドル時間がギャップ時間Tgapよりも大きいと判定すると、ベース電流サンプリング信号CtrlSは再び高に設定される。ベース電流サンプリング信号CtrlSを高に設定すると、NMOSスイッチングトランジスタS2が閉じ、第1のコンデンサC1を再充電する。データ出力信号Rx上でデータの送信が検出されるまで、ベース電流サンプリング信号CtrlSは高のままである。ベース電流サンプリング信号CtrlSのサンプリングが再び有効になったため、ストアされたベース電圧Vsbにおけるいかなるドループも補償され、同期パルス周期が長いにもかかわらず、データ出力信号Rxは適切な結果を提供する。
【0051】
図3は、比較回路100がシリコンで具現化され、PSI5トランシーバのECUに組み込まれた場合の実際の結果を示す。この例では、同期パルス周期は10ミリ秒に設定されたが、電圧スパイクとして、又はデータ出力信号Rx上の破損データの拡張ブロックとして、誤った比較は見出されなかった。ベース電流更新回路108が、500μsを超える同期パルス周期を以前は阻止していたという問題を克服し得るということは、同期パルス周期をどのくらい長く延長し得るかについて本質的に制限がないことを意味する。これにより、単一のPSI5トランシーバに一層多くのセンサが取り付けられるように、ペリフェラルセンサインタフェースの自由度が増す。
【0052】
図4は、本開示の一実施例に従った、PSI5トランシーバチップを動作させる方法400を示す。方法400は、センサバス信号を受信するためにPSI5トランシーバチップの第1のピンに複数のセンサを結合すること(405)で開始し、PSI5トランシーバチップは、通信のために時分割多重化を用いる。方法400はまた、マンチェスタデコーダを第2のピンに結合し(410)、バッテリーを第3のピンに結合する(415)。
【0053】
PSI5トランシーバチップ上のコンパレータが、センサバス信号上の電流に比例する第1の電圧を受け取り(420)、センサバス信号上のベース電流に比例する第2の電圧を受け取り(425)、第2のピンにデータ出力信号を送る(430)。加えて、サンプルアンドホールド回路が、第2の電圧を有効にするために用いられる第3の電圧を捕捉し(435)、ここで、サンプルアンドホールド回路は、ベース電流サンプリング信号上の高値に応答する第3の電圧を捕捉する。最終的に、ベース電流更新回路が、データ出力信号上のエッジ遷移を検出し(440)、データ出力信号が、PSI5規格で定義されるギャップ時間より長い時間の間エッジ遷移を有さない場合、ベース電流サンプリング信号を高に設定する。
【0054】
図4Aの方法400Aは、開示される改善が、例えば、センサの個数を4よりも大きく構成すること(445)、及び/又は、同期パルス周期を500μsよりも長く構成すること(450)など、どのようにして新たな行為が行われ得るようにするかを強調している。
【0055】
図5は、本開示の実施例に従った、ベース電流更新回路を有する開示される比較回路を利用し得るスタンドアロンPSI5トランシーバチップ502を含むシステム500のハイレベル概略を示す。PSI5トランシーバチップ502は、高電圧を提供するVDD‐HV、中電圧を提供するVDD‐MV、ローカル接地などの低電圧を提供するVDD‐LVの3個の電力供給入力を受け取る。3個の電力供給入力は、それぞれのチャネル及びデコーダに結合される、PSI5トランシーバのセット504に結合される。PSI5トランシーバチップ502のチャネルの各々からの出力は、受信データのソフトウェア処理を提供するデータモジュール530に提供される。図示の例では、PSI5トランシーバチップ502が4個のPSI5トランシーバ及び4個のチャネルを有するが、本チップが利用される特定のシステムによって必要に応じて提供される任意の個数のチャネルが存在し得ることが理解されよう。PSI5トランシーバ506が第1のチャネル514に結合され、第1のチャネル514は、マンチェスタデコーダである第1のデコーダ522に結合され、PSI5トランシーバ508が、第2のデコーダ524に結合される第2のチャネル516に結合され、PSI5トランシーバ510が、第3のデコーダ526に結合される第3のチャネル518に結合され、PSI5トランシーバ512が、第4のデコーダ528に結合される第4のチャネル520に結合される。
【0056】
図6は、本開示の実施例に従った、ベース電流更新回路を有する開示される比較回路を利用し得るシステムオンチップ(SOC)602を含むシステム600のハイレベル概略を示す。SOC602は、オートモーティブバッテリー601に結合され、イグニションがオンにされると、電力供給モジュール604が、高電圧信号VDD‐HV、中電圧信号VDD‐MV、及び低電圧信号VDD‐LVを電力供給ラインに提供する。多数のトランシーバシステムをSOC602上に設けることができ、図示の例において、これらは、VDD‐MV及びVDD‐LVを受け取るLINトランシーバ606と、同じくVDD‐MV及びVDD‐LVを受け取るフレックスレイ(FR)トランシーバ608と、いずれもVDD‐HV、VDD‐MV、及びVDD‐LVの3つすべてを受け取る、コントローラエリアネットワーク(CAN)トランシーバ610及びPSI5トランシーバ612とを含む。スタンドアロンチップの場合と同様に、PSI5トランシーバ612が、4個のトランシーバ(別個には図示せず)を含み、トランシーバの各々がそれぞれのチャネル及びデコーダに結合される。デコーダの出力は、データソフトウェア処理622に提供される。
【0057】
出願人は、ベース電流の値をストアするために、より安価なコンデンサに依拠する一方で、正確な比較を提供し得る比較回路を有するPSI5トランシーバのためのECUを開示してきた。コンデンサは、センサデータのために割り当てられた時間スロットの間、データが存在しないときはいつでも、ベース電流の比例コピーによって充電される。出願人はまた、開示されたECUを用いる方法も開示してきた。
【0058】
種々の実施例を詳細に示し、説明してきたが、特許請求の範囲は特定の実施例又は例に限定されない。上記の詳細な説明のいずれも、任意の特定の構成要素、要素、工程、行為、又は機能が、特許請求の範囲に含まれなければならないように必須であることを暗示するものとして解釈されるべきではない。単数形の要素への言及は、明示的にそのように記載されない限り、「一つ及び一つのみ」を意味することを意図するものではなく、むしろ「一つ又は複数」を意味する。当業者に既知である上記で説明された実施例の要素に対するすべての構造的及び機能的等価物は、本明細書に参照として明示的に組み込まれ、本願の特許請求の範囲に包含されることが意図される。従って、当業者であれば、本明細書に記載される例示の実施例が、以下に添付される特許請求の範囲の趣旨及び範囲内で様々な変形及び変更を伴って実施され得ることを認識するであろう。