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特許7490651事前架橋されたニトリルゴムの粉末状混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】事前架橋されたニトリルゴムの粉末状混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20240520BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240520BHJP
   C08F 236/12 20060101ALI20240520BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K3/01
C08F236/12
B60C1/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021531272
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019082475
(87)【国際公開番号】W WO2020135956
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】18248065.7
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ブランダウ
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・シュテーバー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・リュンツィ
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517010(JP,A)
【文献】特開平07-196849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08F,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状混合物を生成する方法であって、
前記粉末状混合物は、
(1)少なくとも1種のニトリルゴムであって、
- アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマー、
,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の共役ジエンモノマー、及び
- 少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物であって、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートであり、前記1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物の割合は、ポリマー全体を基準として0.5重量%~5重量%の範囲である、少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物
の繰り返し単位を含有する少なくとも1種のニトリルゴムと、
(2)少なくとも1種の分離剤であって、
- 5m /g超のBET比表面積を有するシリカ、
- タルク、雲母、ベントナイト又はモンモリロナイトであるシリケート、
- 10個超の炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、
- 60℃超の高いガラス転移温度を有するポリマー及び
- 上記の分離剤の混合物
からなる群から選択される分離剤と
を含み、
前記ニトリルゴム(1)を基準として0.25~45phrの前記少なくとも1種の分離剤が使用され、
前記粉末状混合物は、0.06mm~0.75mmの範囲の平均粒子直径Dを有
粉末状混合物の生成は、粉砕ステップ又は他に噴霧乾燥ステップを含み、それぞれの過程で、少なくとも1種のニトリルゴムと少なくとも1種の分離剤との接触がもたらされ、
粉砕ステップの場合、前記ニトリルゴムは、乳化重合によって最初に生成され、前記ニトリルゴムの結果として得られたラテックスは、凝固に供され、及び前記凝固されたニトリルゴムは、洗浄され、乾燥され、且つ次いで粉砕に供され、前記少なくとも1種の分離剤は、前記粉砕操作中に1つ又は複数の部分において加えられ、
噴霧乾燥ステップの場合、前記ニトリルゴムは、乳化重合によって最初に生成され、前記ニトリルゴムの結果として得られたラテックスは、水を除去する目的のために、スプレー塔において噴霧乾燥に供され、及び前記少なくとも1種の分離剤は、乾燥粉末として前記スプレー塔に供給されるか、又は他に前記噴霧乾燥前に前記ラテックス中に直接計量されるかのいずれかである、方法。
【請求項2】
前記シリカが、化学修飾されている、請求項1に記載の粉末状混合物を生成する方法。
【請求項3】
前記ニトリルゴムは、事前架橋されている、請求項1に記載の粉末状混合物を生成する方法
【請求項4】
前記粉末状混合物は、0.08mm~0.6mmの範囲の平均粒子直径Dを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末状混合物を生成する方法
【請求項5】
前記α,β-不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリルであり、及び前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末状混合物を生成する方法
【請求項6】
硫性混合物を生成する方法であって、請求項1~のいずれか一項に規定の粉末状混合物は、少なくとも1種の架橋剤と接触される、方法。
【請求項7】
加硫物を生成する方法であって、請求項に規定の加硫性混合物は、加硫に供される、方法。
【請求項8】
架橋された粉末状混合物を含む加硫物を生成する方法であって、前記粉末状混合物は、請求項1に記載の通りである、加硫物を生成する方法
【請求項9】
タイヤトレッドにおける、請求項に記載の加硫物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のニトリルゴム及び少なくとも1種の分離剤をベースとする粉末状混合物並びにまたこれらの粉末状混合物から加硫性混合物及び加硫物を生成する方法と、結果として得られた加硫物及び特にタイヤトレッドにおけるその使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
「NBR」とも略されるニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン及び任意選択で1種又は複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマー又はターポリマーであるゴムを意味すると理解される。このようなニトリルゴム及びこのようなニトリルゴムを生成する方法は、数十年にわたり公知である。
【0003】
NBRは、典型的には、乳化重合によって生成され、最初にNBRラテックスを生じさせる。NBR固体は、通常、塩又は酸を使用して、このラテックスから凝固によって単離される。このように得られた固体ゴムは、粉砕によって粉末形態に変換することができる。代替の処理において、NBR粉末は、ラテックスから噴霧乾燥によって直接得られる。乳化重合は、典型的には、良好な加工特性を有するポリマーを得るために分子量調整剤を使用して行わなければならない。
【0004】
ニトリルゴムを生成する方法は、長い間公知となっている。重合は、典型的には、乳化重合として行われ、アゾ開始剤、過硫酸塩、有機過酸化物又は酸化還元系により、フリーラジカルによって開始させることができる。
【0005】
事前架橋されたニトリルゴムの生成は、典型的には、ラテックス状態でもたらされ、高い変換まで重合を続けることによる重合中及び架橋による又は架橋多官能性化合物との共重合による重合後、最初に達成することができる。分子量調整剤の非存在下で重合によって事前架橋されたニトリルゴムを調製することも可能である。
【0006】
(特許文献1)は、オートクレーブにおいて過酸化物をアクリロニトリル及びブタジエンの非架橋コポリマーラテックスに加え、次いで過酸化物の存在によってポリマーを高温において数時間にわたり架橋することによる、このような事前架橋されたニトリルゴムの生成について記載している。タイヤにおける使用の場合、この種類の任意の粉末状事前架橋されたニトリルゴムがウェットスキッド抵抗、ドライグリップ又は転がり抵抗に対するプラスの効果を有するかどうかについては、記述されていない。
【0007】
(特許文献2)は、アクリロニトリル、ブタジエン及び多官能性モノマーの重合による、事前架橋されたニトリルゴムの生成について記載している。トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジビニルベンゼン(DVB)又はブタン-1,4-ジオールジメタクリレートなどの事前架橋されたニトリルゴムの生成のために使用することができる多様な異なる多官能性モノマーが列挙されている。これらの事前架橋されたゴムは、様々な他の構成物、例えばPVC及び可塑剤と一緒に加工されて、構成要素の表面処理のために使用される混合物が得られる。粉末状事前架橋されたニトリルゴムの使用又は生成についての記載はない。
【0008】
粉末状ニトリルゴムは、原則的に、様々な用途において使用される。それらは、例えば、ブレーキ構成要素、ライニング又はディスクの生産におけるフェノール樹脂の修飾において利用される。さらに、これらは、その広範に使用されるプラスチックとの優れた適合性のため、熱可塑性プラスチックの修飾、特にポリ塩化ビニル(PVC)の修飾のために使用される。このような伸縮性のあるPVCは、例えば、プロファイル、ケーブルシース又はシールの生産のために使用される。この種類の様々な構成要素は、自動車産業部門において使用される。
【0009】
原則的に、いくつかのゴムは、粉末形態のエラストマー、例えばNBR、EPDM又はSBRの生成のために予想される。特に、(例えば、耐衝撃性を増加させるために)PVC、ポリウレタン又はポリアミドの修飾が望ましいとき、優れた適合性のためにニトリルゴムが特に適している。ゴム粉末の形態での使用は、熱可塑性プラスチックにおけるより良好な適量及び分散、したがって特性のより均質なプロファイルがここで可能となる。
【0010】
(特許文献3)は、重合におけるN-フェニルアミドの使用による、熱的に安定な粉末状ニトリルゴムの生成について記載している。凝固したゴムは、最終的に粉砕されるが、さらなる分離剤を伴わずにさらに直接加工される。重合中の架橋多官能性化合物の使用又は過酸化物の添加による架橋による、事前架橋された粉末状ニトリルゴムの生成についての記載はない。タイヤトレッドにおける粉末の使用についても、タイヤにおけるウェットスキッド抵抗、ドライグリップ又は転がり抵抗に対する粉末の効果についても開示されていない。
【0011】
(特許文献4)は、重合中の高い変換による、事前架橋された粉末状ニトリルゴムの生成について記載している。さらなる分離剤は、加えられない。2種のアクリロニトリル及びブタジエンモノマーは、乳化重合において96%の変換まで重合され、凝固パラメーターは、微粉化した粒子が直接得られるように選択され、これらは、それに続いて、遠心機において脱水される。重合中の架橋多官能性化合物の使用についても、貯蔵の所望の期間にわたり粉末状ニトリルゴムの凝集を確実にする分離剤の使用についても記載されていない。これらの事前架橋されたニトリルゴムの使用の可能性又はタイヤトレッドにおけるその特性について記載されていない。
【0012】
刊行物及び特許において、タイヤ、特にタイヤトレッドにおけるニトリルゴムの使用の記載が既にあるが、単純且つ産業的に実現可能な解決策による、改善されたフィラー分散と合わせた転がり抵抗、ドライグリップ及びウェットスキッド抵抗における同時の改善を達成することは、決して可能でなかった。上記の全ては、タイヤトレッドについての重要な特性であり、単純な添加によってこれらの特性のできるだけ多くを改善することが望ましい。
【0013】
(非特許文献1)は、様々なニトリルゴム及び粉末状ニトリルゴムを試験するタイヤ研究について記載している。ウェットスキッド抵抗が特にここで評価されている。直鎖状ニトリルゴムと一緒のフェノールノボラックの添加は、0~20℃の温度範囲においてより高いタンジェントδ値をもたらしたが、70℃の領域において悪化が観察された。タイヤのウェットスキッド抵抗は、改善するが、転がり抵抗は、同時に悪化することがこれから結論付けられ得る。この効果について仮定される原因は、直鎖状粉末状ニトリルゴム及びノボラックからの均一相の形成である。ドライグリップに対するいかなる影響も一般に評価されていない。
【0014】
(特許文献5)は、タイヤトレッドのための様々な粉末状ゴムを試験している。SBR粉末を伴わない混合物と比較して、SBR粉末が使用されるとき、摩耗及びウェットスキッド抵抗において改善がある。任意選択で粉末状形態の事前架橋されたニトリルゴムは、ここでは試験されていない。しかし、提示された測定は、対照的に、ウェットスキッド抵抗が改善したが、転がり抵抗が同時に悪影響を受けることを示す。混合特性又はドライグリップに対する影響は、開示されていない。
【0015】
氷上又はタイヤにおいて優れた性能を示すタイヤゴム混合物のための、オリゴマー又はポリマーからなり、且つ1~200μmの粒子直径Dを有する三次元的に架橋された粒子の使用は、(特許文献6)に記載されている。様々な三次元的に架橋された粒子がここで生成され、NR/BRタイヤ混合物に加えられる。摩耗における改善及び氷上での相対的な改善がここで達成されるが、ウェットスキッド抵抗又は転がり抵抗について何ら言及されていない。さらに、三次元的に架橋された粒子は、主に末端加水分解性シリル基を有するオリゴマー又はポリマーからなり、任意の種類のニトリルゴムからならない。
【0016】
(特許文献7)は、架橋された粉末状ニトリルゴムの使用について記載している。ここで記載されているものは、TMPTMAを使用して、γ線を用いて、さらなるターモノマーによって事前架橋されていないNBRラテックスの照射によるニトリルゴムの事前架橋である。これらのラテックスを様々なSBRラテックスと直接混合し、無機分離剤を加え、その後、微粉化した粉末を得るようにこれらの混合物を最終的に凝固させる。形成されたゴム粉末は、50~200nm、すなわち0.00005~0.0002mmの粒子直径を有すると記述されている。さらなる試験において、これらの粉末混合物は、転がり抵抗及びウェットスキッド特徴における改善を示すが、γ線を用いた架橋の複雑な方法及びナノサイズの粒子の使用は、使用者及び生産者に対してかなりの困難(いくつかは健康に関する)を提示する。さらに、このような方法は、工業規模で用いることができない。ドライグリップ又は混合特徴に対するプラスの効果は、示されていない。
【0017】
(特許文献8)において、ゴムラテックスは、TMPTMAを使用してγ線を用いて同様に架橋されており、確定された工程ステップにおいて、これらは、5phrまででSBR1502ラテックスに加えられる。ここでまた、20~500nmのサイズ範囲内の微粉化したナノ微粒子状粉末が得られる。SBR及びTMPTMAを使用してγ線によって事前架橋されたNBRの公知の混合物と同様に、直鎖状SBR及び事前架橋されたSBRの混合物もここで調査されている。(特許文献9)の全ての発明性のある粉末混合物は、試験において、転がり抵抗及びウェットスキッド特徴における改善を示すが、かなりの複雑さを伴って初めて生成が可能である。さらに、ドライグリップ又は混合特徴についてのプラスの効果は、ここでは示されていない。
【0018】
(特許文献10)は、実験セクションにおいて、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物を含有しないニトリルゴムを開示している。
【0019】
(特許文献11)は、粉末状混合物が0.06mm~0.75mmの範囲の平均粒子直径Dを有すると開示していない。
【0020】
要約すれば、良好な混合特徴を伴う、ウェットスキッド抵抗、ドライグリップ及び転がり抵抗における同時の改善が存在する、タイヤトレッドの生産のために利用することができる粉末状事前架橋されたニトリルゴムの単純な生成を可能とする任意の手段又は方法についての記載は、これまでになかったと記述することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】独国特許出願公開第19701487A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0842708A1号明細書
【文献】中国特許出願公開第104193907A号明細書
【文献】中国特許出願公開第101643528A号明細書
【文献】特開昭56-163907号公報
【文献】独国特許出願公表第112012001835T5号明細書
【文献】中国特許出願公開第103965530A号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2882512A号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2882512A号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/079886号明細書
【文献】欧州特許第0669370号明細書
【非特許文献】
【0022】
【文献】Tire Industry 2013,33,543-547
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明が取り組む問題は、特に、タイヤトレッドのための加硫物の生成に適しており、且つ同時に良好な混合特徴を伴う、ウェットスキッド抵抗、ドライグリップ及び転がり抵抗における改善を同時に可能にする、ニトリルゴムをベースとする混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
驚くべきことに、特定のニトリルゴムと少なくとも1種の分離剤との混合物は、タイヤトレッドの生産に適しており、その使用は、同時に良好な混合特徴を伴う、ウェットスキッド抵抗、ドライグリップ及び転がり抵抗における所望の合わせた改善を与えることが見出された。
【0025】
第1の態様において、本発明は、粉末状混合物に関する。粉末状混合物は、
(1)少なくとも1種のニトリルゴムであって、
- アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマー、
- 1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の共役ジエンモノマー、及び
- トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ及びテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールテトラ、ペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールテトラ、ペンタ及びヘキサイタコネート、ソルビトールテトラアクリレート及びソルビトールヘキサメタクリレート並びにアクリルアミドの少なくともトリ不飽和モノマーからなる群から選択される、少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物
の繰り返し単位を含有する少なくとも1種のニトリルゴムと、
(2)シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリケート、脂肪酸塩、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、高いガラス転移温度を有するポリマー、カーボンナノチューブ及び上記の分離剤の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の分離剤と
を含み、粉末状混合物は、0.06mm~0.75mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、粉末状混合物を生成する方法であって、ニトリルゴムは、少なくとも1種の分離剤と接触される、方法に関する。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、粉末状混合物及び少なくとも1種の架橋剤を含む加硫性混合物に関する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、加硫性混合物を生成する方法であって、粉末状混合物は、少なくとも1種の架橋剤と接触される、方法に関する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、加硫物を生成する方法であって、加硫性混合物は、成形プロセスの過程において、ロール、混練機、内部ミキサー及び混合押出機、カレンダー及び成形プレスを使用して加硫に供される、方法に関する。
【0030】
タイヤトレッドにおける、本発明による粉末状混合物をベースとする加硫物は、-20℃~+30℃の温度において非常に高いダンピング及び40℃~80℃の温度において非常に低いダンピングを示し、したがって高いウェットスキッド抵抗及び低い転がり抵抗を有する乗用車のタイヤトレッドの生産のために特に良好に適切である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特許請求の範囲及び詳細な説明を考慮に入れたとき、本明細書に開示されているような詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法の例示であり、本発明の範囲を限定しないことを認識されたい。本発明の異なる態様及び実施形態からの特徴は、本発明の異なる態様及び実施形態からの特徴と合わされ得ることも理解されたい。
【0032】
本発明による粉末状混合物の平均粒子直径Dは、2.0mmのメッシュサイズを有するふるいにおいて100gの粉末状混合物を検量し、この第1のふるいの下に1.4;1.0;0.8;0.6及び0.3mmのメッシュサイズを有するさらなるふるいを配置し、構築されたふるいを振動ふるい機械(例えば、RetschからのAS200 control)において固定し、それらを2.00mmの振幅で30分の期間撹拌し、次いで各ふるいの内容物を秤量し、平均粒子直径Dを、式(1)
=Σ(X)/100(1)
によって計算することにより、グラニュロメトリーによって決定され、式中、
は、平均粒子直径(mm)を表し、
は、それぞれのふるいにおいて保持された粉末状混合物の塊の重量%をgで表し、
は、下記の式(2)
=(D+D(n+1))/2(2)
からもたらされる、それぞれのふるいn及びn+1の平均メッシュサイズ(mm)を表し、式中、
は、ふるいnのメッシュ直径(mm)であり、
(n+1)は、ふるいn+1のメッシュ直径(mm)である。
【0033】
本発明による粉末状混合物の平均粒子直径は、以下に記載のような混合物及び特定のニトリルゴムの生成の様式により、0.01~4mmの上述の限度内で影響され得る。
【0034】
本発明による粉末状混合物は、0.01mm~4mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。
【0035】
一実施形態では、本発明による粉末状混合物は、好ましくは、0.05mm~3mmの範囲、より好ましくは0.08mm~2mmの範囲、特に0.10mm~1.75mmの範囲、特に好ましくは0.10mm~1.5mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。例えば、混合物の生成において粉砕ステップが行われるとき、これらの粉末状混合物を得ることができる。
【0036】
さらなる実施形態では、本発明による粉末状混合物は、0.01mm~2mmの範囲、好ましくは0.04mm~1mmの範囲、より好ましくは0.06mm~0.75mmの範囲、特に好ましくは0.08mm~0.6mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。例えば、噴霧乾燥によって得ることができる事前架橋されたニトリルゴムが使用されるとき、これらの粉末状混合物を得ることが可能である。
【0037】
本発明にとって本質的である任意選択で水素化されているニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマー、少なくとも1種の共役ジエンモノマー及び少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物の繰り返し単位を含有する。1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物のモノマーとしての使用は、典型的には、ニトリルゴムの特定の事前架橋をもたらす。さらに、本発明に必要であるニトリルゴムは、さらなる実施形態では、少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物以外の1種又は複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位も含み得る。
【0038】
使用されるα,β-不飽和ニトリルモノマーは、任意の公知のα,β-不飽和ニトリルモノマーであり得、(C~C)α,β-不飽和ニトリル、より好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はこれらの混合物が好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0039】
少なくとも1種の共役ジエンモノマーをベースとする、ニトリルゴム中の繰り返し単位は、好ましくは、(C~C)共役ジエンに由来する。1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン又はこれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はこれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエンが非常に特に好ましい。
【0040】
典型的には、ニトリルゴム中の繰り返し単位は、α,β-不飽和ニトリルモノマーに関して、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はこれらの混合物、特にアクリロニトリルをベースとし、共役ジエンモノマーに関して、C~C共役ジエン、好ましくは1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン又はこれらの混合物、特に1,3-ブタジエンをベースとする。
【0041】
有用な1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を含有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物は、ポリオールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネートをベースとし、且つアクリルアミドをベースとする少なくともトリ不飽和の化合物並びにまたビニル及びアリル化合物をベースとする少なくともトリ不飽和の化合物を含む。トリ及びポリアクリレート並びにトリ及びポリメタクリレート、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTMA)、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート(TMETMA)、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ及びテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ、テトラ、ペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート又はジペンタエリトリトールトリ、テトラ、ペンタ及びヘキサイタコネート、ソルビトールテトラアクリレート及びソルビトールヘキサメタクリレートが好ましい。好ましいアクリルアミドの少なくともトリ不飽和モノマーは、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミドである。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0042】
少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物と異ならなければならない、使用されるさらなる共重合性モノマーは、例えば、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン並びにまた非共役ジエン、例えば4-シアノシクロヘキセン及び4-ビニルシクロヘキセン又は他にアルキン、例えば1-若しくは2-ブチンであり得る。
【0043】
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、エポキシ基を含有するモノマー、好ましくはアクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルであり得る。
【0044】
代わりに、使用されるさらなる共重合性モノマーは、カルボキシル基を含有する共重合性ターモノマー、例えばα,β-不飽和モノカルボン酸、そのエステル、α,β-不飽和ジカルボン酸、そのモノ若しくはジエステル又は対応するその無水物若しくはアミドであり得る。
【0045】
使用されるα,β-不飽和モノカルボン酸は、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸であり得る。
【0046】
また使用可能であるのは、α,β-不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはこれらのアルキルエステル及びアルコキシアルキルエステルである。α,β-不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC~C18-アルキルエステルが好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、特にC~C18-アルキルエステル、特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。α,β-不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステル、より好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸又はメタクリル酸のC~C12-アルコキシアルキルエステル、最も好ましくはアクリル酸メトキシメチル、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシエチル(メタ)アクリレートも好ましい。また使用可能であるのは、アルキルエステル、例えば上記のものと、例えば上記の形態のアルコキシアルキルエステルとの混合物である。また使用可能であるのは、アクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキル(ここで、ヒドロキシアルキル基における炭素原子の数は、1~12である)、好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル及びアクリル酸3-ヒドロキシプロピルである。また使用可能であるのは、アミノ基を含有するα,β-不飽和カルボキシルエステル、例えばアクリル酸ジメチルアミノメチル及びアクリル酸ジエチルアミノエチルである。
【0047】
使用されるさらなる共重合性モノマーは、α,β-不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸でもあり得る。
【0048】
α,β-不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくはマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物及びメサコン酸無水物を使用することも可能である。
【0049】
α,β-不飽和ジカルボン酸のモノ及びジエステルを使用することも可能である。
【0050】
これらの不飽和α,β-ジカルボン酸モノ又はジエステルは、例えば、アルキル、好ましくはC~C10-アルキル、特にエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC~C12-アルコキシアルキル、より好ましくはC~C-アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC~C12-ヒドロキシアルキル、より好ましくはC~C-ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC~C12-シクロアルキル、より好ましくはC~C12-シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC~C12-アルキルシクロアルキル、より好ましくはC~C10-アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC~C14-アリール、モノ又はジエステルであり得、ここで、ジエステルは、いずれの場合にも混合エステルであり得る。
【0051】
α,β-不飽和モノカルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートである。特に、アクリル酸n-ブチルを使用する。
【0052】
特に好ましいα,β-不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシエチル(メタ)アクリレートである。特に、アクリル酸メトキシエチルを使用する。
【0053】
使用されるα,β-不飽和モノカルボン酸の他のエステルは、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド及びウレタン(メタ)アクリレートでもある。
【0054】
使用されるα,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルは、上記のモノエステル基をベースとする類似のジエステルであり得、ここで、エステル基は、化学的にも異なり得る。
【0055】
事前架橋されたニトリルゴム中の共役ジエン及びα,β-不飽和ニトリルの割合は、広い範囲で変動し得る。共役ジエンモノマーの割合又は合計は、典型的には、ポリマー全体を基準として20重量%~95重量%の範囲、好ましくは45重量%~90重量%の範囲、より好ましくは50重量%~85重量%の範囲である。α,β-不飽和ニトリルモノマーの割合又は合計は、ポリマー全体を基準として典型的には5重量%~80重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは18重量%~50重量%、さらにより好ましくは20重量%~45重量%及び特に28重量%~34重量%である。
【0056】
1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を含有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物の割合は、ポリマー全体を基準として典型的には0.1重量%~25重量%の範囲、好ましくは0.25重量%~15重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲、特に0.5重量%~5重量%の範囲である。
【0057】
1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物以外のさらなる共重合性モノマーは、ポリマー全体を基準として0重量%~40重量%、好ましくは0重量%~30重量%、より好ましくは0重量%~26重量%の量で存在し得る。この場合、共役ジエンの繰り返し単位及び/又はα,β-不飽和ニトリルの繰り返し単位の対応する割合は、これらのさらなるモノマーの割合によって置き換えられ、ここで、ニトリルゴム中のモノマーの全ての繰り返し単位の割合は、いずれの場合にも合計が100重量%となる。
【0058】
ニトリルゴム中の共役ジエンの、α,β-不飽和ニトリル、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を含有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物及びさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位の割合は、いずれの場合にも合計が100重量%となる。
【0059】
ニトリル含量は、窒素含量によって決定し、これは、DIN53625に従ってKjeldahlによってニトリルゴムにおいて決定する。
【0060】
ゴムは、10~180ムーニー単位(MU)、好ましくは20~150MUのムーニー粘度ML1+4@100℃を有する。ムーニー粘度ML1+4@100℃は、100℃においてDIN53523/3又はASTM D1646によってロータリーディスク粘度計を用いて決定する。典型的には、この測定は、圧延されていないニトリルゴム試料を使用してもたらされる。
【0061】
ニトリルゴムのガラス転移温度は、-70℃~+10℃の範囲、好ましくは-60℃~0℃の範囲である。
【0062】
事前架橋の程度は、ゲル含量によって決定することができる。本出願の実施例の部分において記載するような分析方法を使用して、本発明による使用のために使用可能である事前架橋されたニトリルゴムは、典型的には、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは65%~99%、特に70%~98%のゲル含量を有する。
【0063】
アクリロニトリル、1,3-ブタジエン及び少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を含有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物の繰り返し単位を有する粉末状混合物のためのベースとして、事前架橋されたニトリルゴムが好ましい。より好ましくは、アクリロニトリル及び1,3-ブタジエン及びトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートの繰り返し単位を専ら有するものである。
【0064】
本発明による粉末状混合物は、1種又は複数の分離剤及び上記のニトリルゴムを含有する。
【0065】
適切な分離剤の全ては、所望の貯蔵期間にわたり粉末状ニトリルゴムの凝集を確実にする材料である。分離剤は、典型的には、粉末状である。
【0066】
好ましい分離剤は、
- 特に化学修飾されており、最も好ましくは疎水化されているシリカ、より好ましくは5m/g超のBET比表面積を有するもの、
- 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、
- シリケート、より好ましくはタルク、雲母、ベントナイト又はモンモリロナイト、
- 脂肪酸塩、より好ましくは10個超の炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、最も好ましくはこのような脂肪酸のカルシウム又はマグネシウム塩、特にステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛アルミニウム、
- リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、
- 特に60℃超の高いガラス転移温度を有するポリマー、より好ましくはポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、デンプン、親水性ポリマー、特にポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシド、最も好ましくはポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体又はハイドロフルオロカーボンポリマー、
- カーボンナノチューブ、及び
上記の分離剤の1つ又は複数の混合物
である。
【0067】
シリカ、炭酸カルシウム、シリケート、ポリ塩化ビニル及び脂肪酸塩からなる群から選択される1種又は複数の分離剤を使用することが特に好ましい。
【0068】
本発明による粉末状混合物中の少なくとも1種の分離剤の量は、典型的には、ニトリルゴム(1)を基準として0.25~45phr(「phr」は、「ゴム100に対する部数」を意味する)、好ましくは1~45phr、より好ましくは2~25phr、さらにより好ましくは3~20phr、特に4~15phr、特に好ましくは5~12phrの範囲内である。
【0069】
上記で定義したニトリルゴムは、典型的には、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマーと、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種の、1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物との乳化重合によって得られる。
【0070】
この乳化重合は、典型的には、アニオン性乳化剤又は他に天然乳化剤の水溶性塩である乳化剤の存在下で行われる。さらに、重合は、分子量及びポリマー構造に影響を与えるために、いわゆる分子量調整剤の存在下でもたらされることが多い。
【0071】
重合は、重合の開始において及び/又は重合中、開始剤系の全て又は個々の構成要素を計量添加することによって行われる。重合中に全ての及び個々の構成要素を少しずつ添加することが好ましい。順次の添加によって反応速度を制御することが可能である。重合の均一な進行は、重合の開始のために開始剤系の一部のみを使用し、重合中に残りを計量添加することによって達成することができる。その場合、重合は、典型的には、10重量%~80重量%、好ましくは30重量%~50重量%の総量の開始剤で開始される。開始剤系の個々の構成物を計量添加することも可能である。
【0072】
化学的に均一な生成を生成することを意図する場合、モノマーは、計量添加される。組成物が共沸性のブタジエン/アクリロニトリル比の外側であるとき、アクリロニトリル及びブタジエンが特に計量添加される。好ましくは、10重量%~34重量%のアクリロニトリル含量を有するNBRタイプの場合及び40重量%~50重量%のアクリロニトリルを有するタイプの場合、計量添加がもたらされる(W.Hofmann,“Nitrilkautschuk”[Nitrile Rubber],Berliner Union,Stuttgart,1965,pages 58-66)。
【0073】
1分子当たり少なくとも3個のオレフィン二重結合を含有する、フリーラジカルによって重合可能な化合物は、典型的には、計量添加されないが、重合の開始において最初に十分に充填される。代わりに、これらの化合物を計量添加することは、任意選択で可能である。
【0074】
重合時間は、1時間~25時間、好ましくは2~25時間の範囲であり、モノマー混合物のアクリロニトリル含量及び重合温度によって本質的に決まる。
【0075】
重合温度は、典型的には、0℃~50℃、好ましくは5℃~45℃の範囲である。
【0076】
乳化重合において使用される水の量は、100重量部のモノマー混合物を基準として50~900重量部の範囲、好ましくは75~500重量部の範囲、より好ましくは90~400重量部の範囲の水である。
【0077】
使用されるモノマー混合物を基準として、ニトリルゴムを得るために重合を少なくとも80%の変換まで行うことが必須である。好ましくは、重合は、82%~100%、より好ましくは85%~100%、特に88%~100%、特に好ましくは90%~100%の範囲の変換まで行う。重合をこの変換の達成によって終了する。この目的のために、停止剤を反応混合物に加える。
【0078】
重合は、バッチ式で又は他に撹拌タンクカスケードにおいて連続的に行うことができる。未変換のモノマー及び揮発性構成物は、早期に停止されたラテックスを水蒸気蒸留に供することによって除去することができる。温度<100℃での減圧を伴って、70℃~150℃の範囲の温度をここで用いる。揮発性構成物の除去前に、ラテックスは、乳化剤で再安定化させることができる。この目的のために、適正には、上記で使用される乳化剤は、100重量部のニトリルゴムを基準として0.1重量%~2.5重量%、好ましくは0.5重量%~2.0重量%の量で使用される。
【0079】
使用される乳化剤は、アニオン性乳化剤又は他に天然乳化剤の水溶性塩であり得る。アニオン性乳化剤を使用することが好ましい。
【0080】
使用されるアニオン性乳化剤は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸を含有する樹脂酸混合物の二量体化、不均化、水素化及び修飾によって得られる修飾樹脂酸であり得る。特に好ましい修飾樹脂酸は、不均化樹脂酸である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th edition,volume 31,p.345-355)。
【0081】
使用されるアニオン性乳化剤は、脂肪酸でもあり得る。これらは、1分子当たり6~22個の炭素原子を含有する。これらは、完全飽和であり得るか、又は他に分子中に1個若しくは複数の二重結合を含有し得る。脂肪酸の例は、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸である。カルボン酸は、典型的には、特定の起源の油又は脂肪、例えばヒマシ油、綿実、ピーナッツ油、亜麻仁油、ココナツ脂肪、パーム核油、オリーブ油、ナタネ油、ダイズ油、魚油及びウシ獣脂などをベースとする(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th edition,volume 13,p.75-108)。好ましいカルボン酸は、ココナツ脂肪酸及びウシ獣脂に由来し、部分的に又は完全に水素化されている。
【0082】
修飾樹脂酸又は脂肪酸をベースとするこのようなカルボン酸は、水溶性リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩の形態で使用される。ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。
【0083】
アニオン性乳化剤は、有機ラジカルに結合しているスルホネート、スルフェート及びホスフェートでもある。有用な有機ラジカルには、脂肪族、芳香族、アルキル化芳香族化合物、縮合芳香族化合物及びメチレン架橋された芳香族化合物が含まれ、ここで、メチレン架橋された縮合芳香族化合物は、さらにアルキル化され得る。アルキル鎖の長さは、6~25個の炭素原子である。芳香族系に結合しているアルキル鎖の長さは、3~12個の炭素原子である。
【0084】
スルフェート、スルホネート及びホスフェートは、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩の形態で使用される。ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩が好ましい。
【0085】
このようなスルホネート、スルフェート及びホスフェートの例は、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、メチレン架橋されたアリールスルホネートのナトリウム塩、アルキル化ナフタレンスルホネートのナトリウム塩及びメチレン架橋されたナフタレンスルホネートのナトリウム塩であり、これらはまた、オリゴマー化され得、ここで、オリゴマー化の程度は、2~10である。典型的には、アルキル化ナフタレンスルホン酸及びメチレン架橋された(及び任意選択でアルキル化された)ナフタレンスルホン酸は、分子中に1個超のスルホ基(2~3個のスルホ基)も含有し得る異性体混合物の形態である。ラウリル硫酸ナトリウム、12~18個の炭素原子を有するアルキルスルホン酸ナトリウム混合物、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、ジイソブチレンナフタレンスルホン酸ナトリウム、メチレン架橋されたポリナフタレンスルホネート混合物及びメチレン架橋されたアリールスルホネート混合物が特に好ましい。
【0086】
天然乳化剤は、十分に酸性の水素を有する化合物へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加生成物に由来する。これらには、例えば、フェノール、アルキル化フェノール及びアルキル化アミンが含まれる。エポキシドの重合の平均の程度は、2~20である。天然乳化剤の例は、8個、10個及び12個のエチレンオキシド単位を有するエトキシ化ノニルフェノールである。天然乳化剤は、典型的には、単独で使用されないが、アニオン性乳化剤と組み合わせて使用される。
【0087】
不均化アビエチン酸及び部分的に水素化された獣脂脂肪酸並びにこれらの混合物のカリウム及びナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びアルキル化されメチレン架橋されたナフタレンスルホン酸が好ましい。
【0088】
乳化剤は、100重量部のモノマー混合物を基準として0.2~15重量部、好ましくは0.5~12.5重量部、より好ましくは1.0~10重量部の総量で使用される。
【0089】
乳化重合は、記述した乳化剤を使用して行われる。重合が終了して、特定の不安定性のために早過ぎる自己凝固する傾向を有するラテックスが得られる場合、記述した乳化剤もラテックスの再安定化のために使用することができる。これは、特に、蒸気による処理による未変換のモノマーの除去前及びラテックス貯蔵前に必要であり得る。
【0090】
重合は、分子量及びポリマー構造に影響を与えるために、いわゆる分子量調整剤の存在下でもたらされることが多い。これらは、典型的には、少なくとも1個のSH基を含有するメルカプタン、少なくとも1個のSH基及び少なくとも1個のOH基を含有するメルカプトアルコール、少なくとも1個のSH基及び少なくとも1個のカルボキシル基を含有するメルカプトカルボン酸並びに少なくとも1個のSH基及び少なくとも1個のカルボキシルエステル基を含有するメルカプトカルボキシルエステル、チオカルボン酸、ジスルフィド、ポリスルフィド、チオ尿素、アリル化合物、アルデヒド、脂肪族ハロ炭化水素、芳香脂肪族ハロ炭化水素及びサッカリンからなる群から選択される化合物である。9~16個の炭素原子を含有するアルキルチオール、より好ましくはtert-ドデシルメルカプタン(t-DDM)又はtert-ノニルメルカプタン(t-NM)を使用することが好ましい。このようなアルキルチオール又はアルキルチオールの(異性体)混合物は、市販であるか、又は他に文献において適切に記載されている方法によって当業者が調製可能である。
【0091】
乳化重合は、典型的には、フリーラジカルに分解する重合開始剤を使用して開始される。これらは、-O-O-単位(ペルオキソ化合物)又は-N=N-単位(アゾ化合物)を含有する化合物を含む。
【0092】
ペルオキソ化合物は、過酸化水素、ペルオキソジスルフェート、ペルオキソジホスフェート、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、過酸無水物及び2個の有機ラジカルを有する過酸化物を含む。ペルオキソ二硫酸及びペルオキソ二リン酸の適切な塩は、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩である。適切なヒドロペルオキシドは、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及びp-メンタンヒドロペルオキシドである。2個の有機ラジカルを有する適切な過酸化物は、過酸化ジベンゾイル、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルアセテートなどである。適切なアゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル及びアゾビスシクロヘキサンニトリルである。
【0093】
過酸化水素、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、ペルオキソジスルフェート及びペルオキソジホスフェートは、還元剤との組合せにおいても使用される。適切な還元剤は、スルフェネート、スルフィネート、スルホキシレート、ジチオニット、スルフィット、メタビスルフィット、ジスルフィット、糖、尿素、チオ尿素、キサンテート、チオキサンテート、ヒドラジニウム塩、アミン及びアミン誘導体、例えばアニリン、ジメチルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンである。酸化剤及び還元剤からなる開始剤系は、酸化還元系と称される。酸化還元系が使用されるとき、遷移金属化合物の塩、例えば鉄、コバルト又はニッケルは、適切な錯化剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム及びリン酸三ナトリウム又は二リン酸四カリウムと組み合わせて頻繁にさらに使用される。
【0094】
好ましい酸化還元系は、例えば、
1)トリエタノールアミンと組み合わせたペルオキソ二硫酸カリウム、
2)メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)と組み合わせたペルオキソ二リン酸アンモニウム、
3)硫酸鉄(II)(FeSO 7HO)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウム及びリン酸三ナトリウムと組み合わせたp-メンタンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、
4)硫酸鉄(II)(FeSO 7HO)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウム及び二リン酸四カリウムと組み合わせたクメンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、
5)硫酸鉄(II)(FeSO 7HO)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウム及びリン酸三ナトリウムと組み合わせたピナンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム
である。
【0095】
酸化剤の量は、100重量部のモノマーを基準として0.001~1重量部である。還元剤のモル量は、使用される酸化剤のモル量を基準として50%~500%である。
【0096】
錯化剤のモル量は、使用される遷移金属の量をベースとし、典型的にはそれと等モルである。
【0097】
重合は、重合の開始において又は重合中、開始剤系の全て又は個々の構成要素を計量添加することによって行われる。
【0098】
重合中に活性剤系の全て及び個々の構成要素を少しずつ添加することが好ましい。順次の添加によって反応速度を制御することが可能である。
【0099】
停止剤:
これらの適切な例は、ジメチルジチオカルバメート、亜硝酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバメート及び亜硝酸ナトリウムの混合物、ヒドラジン及びヒドロキシルアミン及びこれらに由来する塩、例えば硫酸ヒドラジニウム及び硫酸ヒドロキシルアンモニウム、ジエチルヒドロキシルアミン、ジイソプロピルヒドロキシルアミン、ヒドロキノンの水溶性塩、亜ジチオン酸ナトリウム、フェニル-α-ナフチルアミン及び芳香族フェノール、例えばtert-ブチルカテコール又はフェノチアジンである。
【0100】
重合中に粘度を低減させるため、pHの調節のために且つpH緩衝剤として乳化重合中に塩を水相に加え得る。典型的な塩は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの形態の一価金属の塩である。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化カリウムが好ましい。これらの電解質の量は、100重量部のモノマー混合物を基準として0~1重量部、好ましくは0~0.5重量部の範囲内である。
【0101】
重合は、バッチ式又は他に撹拌タンクカスケードにおいて連続的に行うことができる。
【0102】
本発明による粉末状混合物の調製は、様々な経路によってもたらされ得、いずれの場合にも、上記に定義されているような特定の事前架橋されたニトリルゴム(1)と少なくとも1種の分離剤(2)とを接触させることを含む。
【0103】
典型的には、本発明による粉末状混合物の調製は、粉砕ステップ(経路1)又は他に噴霧乾燥ステップ(経路2)を含み、これらのそれぞれの過程で少なくとも1種の分離剤との接触がもたらされる。
【0104】
経路1の場合、ニトリルゴム(1)は、乳化重合によって最初に生成され、ニトリルゴムの結果として得られたラテックスは、凝固に供され、及び結果として得られた凝固したニトリルゴムは、洗浄され、乾燥され、且つ次いで粉砕ステップに供され、少なくとも1種の分離剤は、粉砕操作中に1つ又は複数の部分において加えられる。
【0105】
経路2の場合、ニトリルゴム(1)は、乳化重合によって最初に同様に生成され、ニトリルゴムの結果として得られたラテックスは、次いで、水を除去する目的のために、スプレー塔において噴霧乾燥に供され、及び少なくとも1種の分離剤は、乾燥粉末としてスプレー塔に供給されるか、又は他に噴霧乾燥前にラテックス中に直接計量されるかのいずれかである。
【0106】
経路1は、乳化重合後、ラテックスの凝固、それに続くゴムクラムの単離を伴う凝固したニトリルゴムの洗浄及び乾燥、任意選択でゴムベールへの圧縮並びに最終的に機械的処理によるゴムベール又はクラムの細分化及び粉砕を含み、これは、任意選択で複数段階において行うことができる。例えば、第1のステップにおいて粗い粉砕を、且つ第2のステップにおいて、微粒子化とも称される微粉砕を試みることが可能である。少なくとも1種の分離剤の添加は、典型的には、粉砕操作中にもたらされ、1つの部分又は他に異なる部分において追加的にもたらすことができる。
【0107】
この実施形態では、得られた本発明による粉末状混合物は、好ましくは、0.05mm~3mmの範囲、より好ましくは0.08mm~2mmの範囲、特に0.10mm~1.75mmの範囲、特に好ましくは0.10mm~1.5mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。
【0108】
このように得られた、事前架橋されたニトリルゴム及び分離剤をベースとする粉末状混合物は、それらのポリマー特性との関連で且つそれらの粒径分布に関して数カ月にわたり貯蔵安定である。
【0109】
凝固前又は凝固中に1種又は複数の老化安定剤をラテックスに加え得る。この目的のために適した老化安定剤は、フェノール系、アミン系又は他の老化安定剤である。
【0110】
適切なフェノール系老化安定剤は、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール(CAS番号61788-44-1)、立体障害性フェノール、例えば2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(Vulkanox BHT、CAS番号000128-37-0)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル)-p-クレゾール(Vulkanox BKF、CAS番号119-47-1)、ポリ(ジシクロペンタジエン-co-p-クレゾール)、エステル基を含有する立体障害性フェノール、例えばn-オクタデシル(ベータ)-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、チオエーテル含有立体障害性フェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BPH)、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール及び立体障害性チオビスフェノールである。さらなる実施形態では、2種以上の老化安定剤、例えば好ましくは1:1:1の比のn-オクタデシルβ-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ポリ(ジシクロペンタジエン-co-p-クレゾール)及び2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノールの混合物も加える。
【0111】
ゴムの変色が重要でない場合、アミン系老化安定剤、例えばジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするものの混合物も使用する。フェニレンジアミンの例は、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス-1,4-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)などである。
【0112】
他の老化安定剤は、ホスフィット、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスフィット、重合された2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンゾイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)を含む。上記の他の老化安定剤は、フェノール性老化安定剤と組み合わせて使用されることが多い。とりわけ、ペルオキシド加硫されるNBRタイプのために、他の老化安定剤であるTMQ、MBI及びMMBIが使用される。
【0113】
凝固のために、ラテックスを、すなわち塩基、好ましくはアンモニア若しくは水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム又は酸、好ましくは硫酸若しくは酢酸の添加により、当業者に公知のpHに調節する。
【0114】
方法の一実施形態では、凝固は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム及びリチウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩を使用して行われる。一価又は二価のアニオンは、典型的には、これらの塩のアニオンとして使用される。ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、ギ酸イオン及び酢酸イオンが特に好ましい。
【0115】
適切な例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(カリウムミョウバン)、硫酸アルミニウムナトリウム(ナトリウムミョウバン)、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム及びギ酸カルシウムである。水溶性カルシウム塩がラテックス凝固のために使用される場合、塩化カルシウムが好ましい。
【0116】
塩は、ラテックス分散物の固体含量を基準として0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~8重量%、特に好ましくは0.2重量%~5重量%の量で加える。
【0117】
上記で定義した群からの少なくとも1種の塩に加えて、沈殿助剤も凝固において使用され得る。適切な沈殿助剤は、例えば、水溶性ポリマーを含む。これらは、非イオン性、アニオン性又はカチオン性である。
【0118】
非イオン性ポリマー沈殿助剤の例は、修飾セルロース、例えばヒドロキシアルキルセルロース又はメチルセルロース並びに酸性水素を担持する化合物へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加体である。酸性水素を担持する化合物の例は、脂肪酸、糖、例えばソルビトール、脂肪酸のモノ及びジグリセリド、フェノール、アルキル化フェノール、(アルキル)フェノール/ホルムアルデヒド縮合物などである。これらの化合物へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加生成物は、ランダム又はブロック構成を有し得る。これらの生成物のうち、増加する温度と共に減少する溶解度を有するものが好ましい。
【0119】
アニオン性ポリマー沈殿助剤の例は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのホモポリマー及びコポリマーである。ポリアクリル酸のナトリウム塩が好ましい。
【0120】
カチオン性ポリマー沈殿助剤は、典型的には、ポリアミン並びに(メタ)アクリルアミドのホモ及びコポリマーをベースとする。特に、エピクロロヒドリン及びジメチルアミンをベースするポリメタクリルアミド及びポリアミンが好ましい。ポリマー沈殿助剤の量は、100重量部のニトリルゴムを基準として0.01~5重量部、好ましくは0.05~2.5重量部である。
【0121】
他の沈殿助剤の使用も考え得る。しかし、さらなる沈殿助剤の非存在下で本発明による方法を行うことは、容易に可能である。
【0122】
凝固のために使用されるラテックスは、有利には、1重量%~40重量%の範囲、好ましくは5重量%~35重量%の範囲、より好ましくは15重量%~30重量%の範囲の固体濃度を有する。
【0123】
ラテックス凝固は、10℃~110℃、好ましくは20℃~100℃、特に好ましくは50℃~98℃の温度範囲で行われる。ラテックス凝固は、連続的又は非連続的に、好ましくは連続的に行われ得る。
【0124】
代わりの実施形態では、未変換のモノマーから典型的に分離されるラテックスは、≦6、好ましくは≦4、より好ましくは2のpH範囲で酸によっても処理されて、ポリマーを沈殿し得る。選択したpH範囲への調節を可能とする全ての鉱酸及び有機酸を沈殿のために使用し得る。pH調節のために鉱酸を用いることが好ましい。ポリマーは、それに続いて、当業者に通例の様式で懸濁液から分離される。これも、連続的又は非連続的に、好ましくは連続的に行われ得る。
【0125】
凝固後、ニトリルゴムは、典型的には、「クラム」の形態である。凝固したNBRの洗浄は、したがって、クラム洗浄としても公知である。この洗浄のために、脱イオン水又は非脱イオン水を使用することが可能である。洗浄は、15~90℃の範囲の温度、好ましくは20~80℃の範囲の温度で行われる。洗浄水の量は、100重量部のニトリルゴムを基準として0.5~20重量部、好ましくは1~10重量部、より好ましくは1~5重量部である。より好ましくは、ゴムクラムは、多段階洗浄に供され、ここで、ゴムクラムは、個々の洗浄段階間に部分的に脱水される。個々の洗浄段階間のクラムの残留する水分は、5重量%~50重量%の範囲、好ましくは7重量%~25重量%の範囲である。洗浄段階の数は、典型的には、1~7、好ましくは1~3である。洗浄は、非連続的又は連続的に行われる。多段階連続プロセスを使用することが好ましく、水の節約型使用のための向流洗浄が好ましい。洗浄の終了時、ニトリルゴムクラムを脱水することが有用であることが見出された。事前脱水されたニトリルゴムは、乾燥機において乾燥される。適切な例は、流動床乾燥機又はプレート乾燥機である。乾燥温度は、80~150℃である。乾燥操作の終了に向かって温度を低下させることを伴う温度プログラムによる乾燥が好ましい。
【0126】
微粉砕及び粉砕のための有用な装置及び粉砕機は、当業者に公知のものである。
【0127】
経路2は、典型的には乳化剤で安定化された水中の固体ポリマー粒子の懸濁液である、乳化重合において得られるニトリルゴムのラテックスから直接進行する。粉末状エラストマーは、ポリマーの噴霧乾燥を用いて水をラテックスから分離し、微粉の形態のポリマーを得ることにより、このラテックスから直接得られる。分離剤は、下記のように計量添加される。
【0128】
乳化重合からのラテックスの噴霧乾燥は、一般に、通例のスプレー塔においてもたらされる。好ましくは、これは、15~100℃に加熱したラテックスを、ポンプを通してスプレー塔中に運搬し、これを、例えば塔のヘッド内のノズルを介して好ましくは50~500バール、好ましくは100~300バールの圧力で噴霧することによって行われる。一実施形態では、スプレー塔において、100~500ミリバール、好ましくは150~400ミリバールの範囲の減圧が存在する。好ましくは、100~350℃の入口温度を伴う熱い空気を例えば向流に供給し、水を蒸発させる。粉末は、下方に落ち、乾燥粉末は、塔の足において排出される。少なくとも1種の分離剤及び任意選択でさらなる添加物、例えば老化安定剤、抗酸化剤、蛍光増白剤などは、同様に、塔のヘッドにおいて好ましくは乾燥粉末の形態で吹き飛ばされる。これらは、噴霧乾燥前にラテックス中に全体的又は部分的に混合させることもできる。スプレー塔に供給されたラテックスは、好ましくは、ラテックスを基準として10~60重量%、より好ましくは20~50重量%及び特に30~50重量%の固体濃度を有する。
【0129】
この実施形態では、本発明による粉末状混合物は、好ましくは、0.01mm~2mmの範囲、より好ましくは0.04mm~1mmの範囲、特に好ましくは0.06mm~0.75mmの範囲、非常に特に好ましくは0.08mm~0.6mmの範囲の平均粒子直径Dを有する。
【0130】
記載した2つの経路1及び2により、同時に優れた均質な混合特徴を伴って、転がり抵抗、ドライグリップ及びウェットスキッド抵抗に関してタイヤトレッドにおいて記述した利点をもたらす、本発明による粉末状混合物を得ることが可能である。
【0131】
したがって、本発明は、少なくとも1種の本発明による粉末状混合物と少なくとも1種の架橋剤とを含む加硫性混合物の生成のための、本発明による粉末状混合物の使用も提供する。1種又は複数のさらなる典型的な添加物又はさらなるゴムは、加硫性混合物中に存在することが任意選択で可能である。
【0132】
これらの加硫性混合物は、本発明による少なくとも1種の粉末状混合物と少なくとも1種の架橋剤とを混合することによって生成される。有用な架橋剤の例には、ペルオキシド架橋剤、例えばビス(2,4-ジクロロベンジル)ペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1-ビス-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブテン、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンが含まれる。
【0133】
ペルオキシド架橋剤だけでなく、架橋収率を増加させることができるさらなる付加物も使用することが有利であり得る。この目的のための適切な例には、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメリト酸トリアリル、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2-ポリブタジエン又はN,N’-m-フェニレンジマレイミドが含まれる。
【0134】
架橋剤の総量は、典型的には、100重量部のニトリルゴムを基準として1~20重量部の範囲、好ましくは1.5~15重量部の範囲、より好ましくは2~10重量部の範囲である。
【0135】
使用される架橋剤は、元素の可溶性若しくは不溶性形態の硫黄又は硫黄供与体でもあり得る。
【0136】
有用な硫黄供与体の例には、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2-モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)及びテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)が含まれる。
【0137】
硫黄加硫の場合でも、架橋収率を増加させることができるさらなる付加物を使用することが可能である。原則的に、架橋は、硫黄又は硫黄供与体単独でもたらすこともできる。
【0138】
逆に、架橋は、上述の付加物の存在下において、すなわち元素の硫黄又は硫黄供与体の添加を伴わずに専らもたらすこともできる。
【0139】
架橋収率を増加させることができる適切な付加物は、例えば、ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサンテート、グアニジン誘導体、カプロラクタム及びチオ尿素誘導体を含む。
【0140】
使用されるジチオカルバメートは、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル及びジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛であり得る。
【0141】
使用されるチウラムは、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及びテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)であり得る。
【0142】
使用されるチアゾールは、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)及び銅2-メルカプトベンゾチアゾールであり得る。
【0143】
使用されるスルフェンアミド誘導体は、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N-オキシジエチレンチオカルバミル-N-tert-ブチルスルフェンアミド及びオキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシエチレンスルフェンアミドであり得る。
【0144】
使用されるキサンテートは、例えば、ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛及びジブチルキサントゲン酸亜鉛であり得る。
【0145】
使用されるグアニジン誘導体は、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)及びo-トリルビグアニド(OTBG)であり得る。
【0146】
使用されるジチオホスフェートは、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキルラジカルC~C16の鎖長)、ジアルキルジチオリン酸銅(アルキルラジカルC~C16の鎖長)及びジチオホスホリルポリスルフィドであり得る。
【0147】
使用されるカプロラクタムは、例えば、ジチオビスカプロラクタムであり得る。
【0148】
使用されるチオ尿素誘導体は、例えば、N,N’-ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)及びエチレンチオ尿素(ETU)であり得る。
【0149】
適切な添加物は、同様に、例えばジアミンジイソシアン酸亜鉛、ヘキサメチレンテトラミン、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン及び環状ジスルファンを含む。
【0150】
記述した付加物及びまた架橋剤は、個々に又は混合物中で使用され得る。ニトリルゴムの架橋のための下記の物質を使用することが好ましい:硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジチオビスカプロラクタム。
【0151】
架橋剤及び上記の添加物は、100重量部の全体的なゴムを基準として約0.05~10重量部、好ましくは0.1~8重量部、特に0.5~5重量部の量(いずれの場合にも活性物質をベースとした個々の用量)でそれぞれ使用され得る。
【0152】
本発明による硫黄架橋の場合、ある状況下において、架橋剤及び上述の添加物に加えて、さらなる無機又は有機物質、例えば酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、飽和若しくは不飽和の有機脂肪酸及びその亜鉛塩、多価アルコール、アミノアルコール、例えばトリエタノールアミン並びにアミン、例えばジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン及びポリエーテルアミンも使用することが合理的であり得る。
【0153】
さらに、スコーチ遅延剤を使用することも可能である。これらは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)及びジフェニルニトロサミンを含む。シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)が好ましい。
【0154】
架橋剤の添加と同様に、本発明によるニトリルゴムは、さらなる通例のゴム添加物及び本発明によらないさらなるゴムと混合することもできる。
【0155】
加硫性ゴム組成物は、単一段階又は多段階プロセスにおいて生成することができ、2~3の混合段階が好ましい。
【0156】
ゴム添加物には、フィラー活性剤、老化安定剤、加硫戻り安定剤、光安定剤、オゾン分解防止剤、強化材料、加工助剤、可塑剤、エキステンダー油、粘着付与剤、起泡剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、ストレッチ剤及びゴム産業において公知のさらなる又は他の添加物が含まれる。
【0157】
使用される本発明によらないさらなるゴムの例には、天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。加えられるさらなるゴムの量は、本発明による混合物のそれぞれの最終用途によって導かれる。このような合成ゴムの例は、BR(ポリブタジエン)、アクリル酸アルキルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E-SBR(乳化重合によって調製されたスチレンブタジエンコポリマー)、S-SBR(溶液重合によって調製されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン-イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分的に水素化又は完全に水素化されているNBRゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)及びこれらのゴムの混合物である。タイヤの生産のために特に興味深いものであるのは、天然ゴム、-60℃超のガラス転移温度を有するE-SBR及びS-SBR、Ni、Co、Ti又はNdをベースとする触媒と共に生成された高いcis含量(>90%)を有するポリブタジエンゴム、80%までのビニル含量を有するポリブタジエンゴム及びこれらの混合物である。存在する場合、その量は、典型的には、ゴム混合物中のゴムの総量を基準として0.5%~95%、好ましくは10%~80%の範囲である。
【0158】
使用されるフィラーは、例えば、カーボンブラック、微粉化したシリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、金属カーボネート、例えば炭酸カルシウム若しくは炭酸マグネシウム、金属酸化物、例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄若しくは酸化カルシウム、金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム若しくは水酸化マグネシウム、金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム若しくは硫酸バリウム、合成及び天然シリケート、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は、好ましくは、粉末形態である)又はグラスファイバー及びグラスファイバー製品であり得る。フィラーの量は、100重量部のゴム全体を基準として典型的には1~500重量部、好ましくは1~250重量部、より好ましくは1~200重量部の範囲である。
【0159】
記述したフィラーは、単独で又は混合物中で使用され得る。好ましい実施形態では、ゴム組成物は、フィラーとして、明るい色のフィラー、例えば微粉化シリカ及びカーボンブラックの混合物を含有し、この場合、明るい色のフィラーとカーボンブラックとの混合比は、0.01:1~50:1、好ましくは0.05:1~20:1である。
【0160】
有用なフィラー活性剤は、特に、有機シラン、例えばビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン又は(オクタデシル)メチルジメトキシシランを含む。さらなるフィラー活性剤は、例えば、界面活性物質、例えば74~10000g/molの分子量を有するトリエタノールアミン及びエチレングリコールである。フィラー活性剤の量は、典型的には、100重量部のゴム全体を基準として0~10重量部である。
【0161】
加硫性混合物に加えられる老化安定剤は、ラテックス凝固に関連して本出願において既に記載したものであり得る。これらは、典型的には、100重量部のゴム全体を基準として0~5重量部、好ましくは0.5~重量部の量で使用される。
【0162】
有用な離型剤の例は、好ましくは、混合物構成物として使用される適切及び部分的に不飽和の脂肪酸及びオレイン酸及びその誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪酸アミド)並びにまたモールド表面に塗布可能である生成物、例えば低分子量シリコーン化合物をベースとする生成物、フルオロポリマーをベースとする生成物及びフェノール樹脂をベースとする生成物を含む。
【0163】
離型剤は、100重量部のゴムを基準として0~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量で混合物構成物として使用される。
【0164】
脂肪族及び芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステル並びに天然繊維製品のコード、ウィーブ、繊維による強化と同様に、米国特許第4,826,721号明細書の教示によるガラスの強化部材(繊維)による強化も可能である。
【0165】
有用なエキステンダー油の例には、DAE(留出芳香族抽出物)、TDAE(処理済み留出芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TRAE(処理済み残留芳香族抽出物)、ナフテン系油及び重ナフテン系油が含まれる。
【0166】
ゴム添加物の総量は、100重量部のゴム全体を基準として1~300重量部の範囲である。5~150重量部の範囲内の量のゴム添加物を使用することが好ましい。
【0167】
本発明は、上記の加硫性混合物を加硫に供することによって加硫物を生成する方法及び加硫物をさらに提供する。加硫物は、好ましくは、成形プロセスにおいて、好ましくはロール、混練機、内部ミキサー及び混合押出機、カレンダー及び成形プレスを用いて生成される。
【0168】
本発明は、上記の加硫プロセスによって得ることができる、成形された物品の生産のための、好ましくは高いウェットスキッド抵抗及びドライグリップと合わせて特に低い転がり抵抗を有するタイヤ、特にタイヤトレッドの生産のための、本発明による加硫性混合物の使用をさらに提供する。
【0169】
代わりに、本発明による加硫性混合物を使用して、例えばケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベヤベルト、ロールカバリング、靴底、ガスケットリング及びダンピング要素の生産のために他の成形された物品を生産することもできる。
【0170】
本発明を以下の非限定的実施例によって示す。
【実施例
【0171】
I.分析
アクリロニトリル含量 - アクリロニトリル含量の決定のための窒素含量は、DIN53625によってKjeldahlに従ってニトリルゴム(1)中で決定した。
【0172】
ムーニー決定 - ニトリルゴム(1)のMUでのムーニー粘度は、100℃においてASTMD1646によって決定する。
【0173】
ゲル含量の決定 - ゲル含量を決定するために、250mgのニトリルゴムを、25℃において24時間撹拌しながら25mlの特定した溶媒(トルエン又はメチルエチルケトン)に溶解した。不溶性画分を25℃において20000rpmでの超遠心分離によって除去し、乾燥させ、重量測定によって決定した。ゲル含量は、開始重量を基準として重量%で報告する。粒径決定 - 粉末状混合物の粒径は、記述内容において特定する方法によってグラニュロメトリーによって決定する。
【0174】
II.ニトリルゴムラテックスL-A~L-Jの生成
本発明による混合物及び比較混合物の生成についてのベースとして、10の異なるニトリルゴムラテックスL-A~L-Jを生成した。
【0175】
これらのニトリルゴムラテックスL-A~L-Jは、撹拌タンクカスケードにおいて連続的に生成した。モノマー、石鹸及び分子量調整剤(それぞれ100重量部のモノマー全体を基準として表1において特定した量で)の導入後、反応器内容物の温度の調節後、鉄(II)塩(プレミックス溶液の形態)及びパラメンタンヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標)NT50)の水溶液の添加によって反応を開始させた。撹拌タンクカスケードを通して反応混合物をポンピングし、所望の変換の達成により、最後の反応器においてジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を加えることによって停止させた。未変換のモノマー及び他の揮発性構成物を減圧下でストリッピングすることによって除去した。
【0176】
表1によって使用した物質についての説明文:
2)TMPTMA:CAS番号3290-92-4
3)脂肪酸:CAS番号67701-06-00
4)樹脂酸:CAS番号61790-51-0
5)AOS:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム
6)PNS:CAS番号9084-06-4、ポリ(ナフタレンホルムアルデヒド)スルホン酸ナトリウム
7)アルキルスルホン酸ナトリウム、CAS番号68188-18-1
8)t-DDM(第三級ドデシルメルカプタン);CAS番号25103-58-6
【0177】
【表1】
【0178】
III.ニトリルゴムA~Jの単離及びニトリルゴム及び分離剤からの粉末状混合物の生成(実施例1~11):
それぞれのNBRラテックスの凝固前に、これを、いずれの場合にもVulkanox(登録商標)BKF、Wingstay Lの50%分散物又はIrganox(登録商標)1520、Irganox(登録商標)1076及びWingstay(登録商標)Lからなる1:1:1混合物の50%分散物と混合した(表2についての脚注を参照されたい)。
【0179】
様々なラテックスを経路1又は経路2のいずれかによって処理した。
【0180】
経路1:ラテックスは、塩化カルシウムを使用して凝固させ、次いで得られたゴムクラムを別々の容器において洗浄するか(実施例L-B、L-D、L-F-L-J)、又はpH<4の硫酸を用いて沈殿させ、次いでクラムを同様に別々の容器において洗浄した(実施例L-A)。これらのクラムを、いずれの場合にも特定した分離剤の量で密接に混合した。これらの混合物をZM200超遠心ミル(Retsch(登録商標))に徐々に加えた。ミルは、平均メッシュサイズ1mmの環状ふるいを備え、18000rpmのスピードで作動した。粉砕後、サイクロンを用いて粉末を粉砕チャンバーから取り出し、集めた。
【0181】
経路2:ポリマーからの噴霧乾燥を用いて水をラテックスから除去し、ポリマーを微粉の形態で得た。分離剤を加えた場合、これを乾燥粉末としてスプレー塔中に計量した。
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
IV.混合物からの加硫物V1~V12の生成
粉末状混合物1~11及びニトリルゴムを有さない参照を以下に記載のように使用し、加硫性混合物及び加硫物V1~V12を生成した。加硫性混合物の構成物は、100部のゴムをベースとし、表5において報告する。
【0185】
下記の特性を、特定した標準によって加硫物上で決定した。
【0186】
・DIN53513:Eplexor機器を用いた動的ダンピング
動的特性(-60℃~0℃の温度範囲内での貯蔵弾性率E’の温度依存性及び60℃でのタンジェントδ)の決定のために、Gabo-Testanlagen GmbH、Ahlden、GermanyからのEplexor機器(Eplexor500N)を使用した。測定は、DIN53513によって10Hzにおいて、Aresストリップ上で-100℃及び+100℃の温度範囲内において1K/分の加熱速度で確認した。
【0187】
この方法を使用して、ASTM5992-96によって名付けた下記の測定パラメーターを得た。
60℃でのタンジェントδ(60℃):損失係数(E’’/E’)
23℃でのタンジェントδ(23℃) 損失係数(E’’/E’)
0℃でのタンジェントδ(0℃):損失係数(E’’/E’)
タンジェントδ(60℃)は、タイヤの転がりについてのヒステリシス損失の尺度である。タンジェントδ(60℃)が低いほど、タイヤの転がり抵抗が低い。タンジェントδ(23℃)は、乾燥路上のグリップの尺度である。タンジェントδ(23℃)が高いほど、乾燥路上のグリップがより良好である。タンジェントδ(0℃)は、ウェットスキッド抵抗の尺度である。タンジェントδ(0℃)が高いほど、濡れた道路上でのグリップがより良好である。
【0188】
・DIN53513-1990:弾性
弾性の決定のために、MTSからのMTSエラストマー試験システム(MTSフレックス試験)を使用した。60℃の温度及び1Hzの測定頻度で0.1%~40%の振幅掃引範囲において、総圧縮2mmを伴って円柱標本(それぞれ20×6mmの2つの試料)上でDIN53513-1990によって測定を行った。この方法を使用して、ASTM5992-96によって名付けた下記の測定パラメーターを得た。
(0.5%):0.5%振幅掃引での動的弾性率
(15%):15%振幅掃引での動的弾性率
(0.5%)~(15%):0.5%~15%振幅掃引での動的弾性率における差異、これは、混合物のペイン効果を示し、低い値は、良好なフィラー分布を示す。
【0189】
混合物をISO4658、セクション5.2.3.3によってバンバリーミキサーにおいて生成した。この目的のために、表5において特定したゴム及び全ての混合物を表4からの混合プロトコルによってそれぞれ混合した。全ての混合物中のエキステンダー油の量が全体で同じであるように配合物を選択した。加えられたNBRゴムは、スチレン-ブタジエンゴムの代替として利用した。
【0190】
【表4】
【0191】
【表5】
【0192】
【表6】
【0193】
表6による下記の添加物をここで使用した。
【0194】
【表7】
【0195】
得られた加硫性混合物をそれらのムーニー粘度について最初に分析した。加えられた粉末状NBRをベースとする混合物のいずれも、参照混合物V8と比較してムーニー粘度における有意な変化をもたらさなかった。これらの加硫性混合物を160℃において20分間加硫した。次いで、ウェットスキッド抵抗(タンジェントδ 0℃)、ドライグリップ(タンジェントδ 23℃)及び転がり抵抗(タンジェントδ 60℃)並びにフィラー分布の質(G(0.5%)-G(15%))について、これらの混合物の加硫物を分析した。
【0196】
発明性のない加硫物V1、V2、V3及びV4は、全て参照加硫物V8と比較して損失係数タンジェントδ(23℃)(ドライグリップ)におけるプラスの上昇を示すが、損失係数タンジェントδ(0℃)及びしたがってウェットスキッド抵抗における低下並びにまた損失係数タンジェントδ(60℃)及びしたがって転がり抵抗における上昇が存在する。しかし、振幅掃引測定における0.5%及び15%伸長での動的弾性率間の差異における上昇も存在し、これは、参照加硫物V8と比較してより乏しいフィラー分布を示唆する。
【0197】
発明性のない加硫物V6及びV9~V12は、全て損失係数タンジェントδ(23℃)(ドライグリップ)において上昇を示し、損失係数タンジェントδ(0℃)(V12を除く)及びしたがってウェットスキッド抵抗でも上昇が存在し、且つまた損失係数タンジェントδ(60℃)及びしたがって転がり抵抗(V11を除く)で上昇が存在する。しかし、振幅掃引測定における0.5%及び15%の伸長での動的弾性率間の差異における実質的な上昇が存在し、これは、参照加硫物V8と比較してより乏しいフィラー分布を示唆する。
【0198】
ニトリルゴム及び少なくとも1種の分離剤の発明性のある混合物を含む混合物V5及びV7の発明性のある加硫物は、対照的に、改善されたドライグリップを表す損失係数タンジェントδ(23℃)の上昇のみを示すのではなく、さらにまた転がり抵抗を表す、明確に低減した損失係数タンジェントδ(60℃)を有し、タンジェントδ(0℃)における最も大きい増加を有し、これは、改善されたウェットスキッド抵抗を表す。さらに、混合物V5及びV7の加硫物は、振幅掃引測定における0.5%及び15%伸長での動的弾性率において低減した差異を示し、これは、より良好なフィラー分散を示唆する。全体的に、専ら、発明性のある加硫物V5及びV7は、したがって、組み合わせた全ての関連性のある特性について、全体を通してこのように最良の値を示す。
【0199】
【表8】
【0200】
本発明及びその利点をこのように説明してきて、本明細書に開示されているような本発明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法の単に例示的なものであることを認識されたい。
【0201】
添付の特許請求の範囲及び上記の詳細な説明を考慮に入れたとき、本発明の様々な態様及び実施形態は、本発明の範囲を限定しない。
【0202】
特許状によって保護されることが望まれるものは、下記の特許請求の範囲に記載される。