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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】滴下パージのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021542413
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020014264
(87)【国際公開番号】W WO2020154220
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】62/797,035
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ブレット,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ライス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】キャロル,クリストファー,アレン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/160412(WO,A1)
【文献】特表2014-501562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位を治療するための装置であって、
前記組織部位に流体結合されるように構成された陰圧源と、
前記組織部位に流体結合されるように構成された滴下源と、
前記陰圧源及び前記滴下源に動作可能に結合されたコントローラであって、
前記陰圧源及び前記滴下源を動作させて、陰圧を送達する陰圧期間において、陰圧を前記組織部位に間欠的に送達し、滴下流体を前記組織部位に導入する滴下期間において、滴下流体の充填体積を前記組織部位に送達し、パージ頻度で滴下流体のパージ体積を前記組織部位に送達して前記装置を洗浄するとともに、
前記陰圧期間の前に前記パージ体積を送達する、ように構成されたコントローラと、を備える、装置。
【請求項2】
前記充填体積が、前記パージ体積の少なくとも10倍である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記充填体積と前記パージ体積との比が、10:1~5000:1の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記充填体積が、10ミリリットル~500ミリリットルの範囲にあり、前記パージ体積が、0.1ミリリットル~1ミリリットルの範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記パージ頻度が、5分~20分の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記充填体積が、10ミリリットル~500ミリリットルの範囲にあり、
前記パージ体積が、0.1ミリリットル~1ミリリットルの範囲にあり、
前記パージ頻度が、5分~20分の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記滴下源に流体結合された流体導管を更に備え、前記コントローラが、前記流体導管を介して滴下流体の前記パージ体積を送達するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記陰圧源に流体結合された第1の流体導管と、前記滴下源に流体結合された第2の流体導管と、を更に備え、前記コントローラが、前記第2の流体導管を介して滴下流体の前記パージ体積を送達し、前記第1の流体導管を介して滴下流体の前記パージ体積を除去するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラに結合され、前記パージ体積及び前記パージ頻度のうちの少なくとも1つを構成するための入力を受信するように動作可能なユーザインターフェースを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
組織部位を治療するための装置であって、
ドレッシングと、
前記ドレッシングに結合された第1の流体導管と、
前記ドレッシングに結合された第2の流体導管と、
前記第1の流体導管に結合された陰圧源と、
前記第2の流体導管に結合された滴下源と、
前記陰圧源及び前記滴下源に動作可能に結合されたコントローラであって、
陰圧を送達する陰圧期間において、前記第1の流体導管を介して前記ドレッシングに陰圧を送達し、
滴下流体を組織部位に導入する滴下期間において、前記第2の流体導管を介して前記ドレッシングに滴下流体の充填体積を送達し、
パージ頻度で前記第2の流体導管を介して前記ドレッシングに滴下流体のパージ体積を送達して前記装置を洗浄するように構成された、コントローラと、を備え、
前記パージ体積が前記陰圧期間の前に送達される、装置。
【請求項11】
前記充填体積が、前記パージ体積の少なくとも10倍である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記充填体積と前記パージ体積との比が、10:1~5000:1の範囲にある、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記パージ体積が、0.1ミリリットル~1ミリリットルの範囲にある、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記パージ体積が、20分以下の頻度で送達される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記パージ体積が、5分以上の頻度で送達される、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記パージ体積が、5分~20分の頻度で送達される、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2019年1月25日に出願された米国特許仮出願第62/797,035号の出願の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
添付の特許請求の範囲に記載される本発明は、概して組織治療システムに関し、より具体的には、限定するものではないが、陰圧及び滴下療法を用いて組織を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究及び臨床診療から、組織部位の近位における圧力を低下させることにより、その組織部位における新たな組織の成長を、増強及び加速させることができる点が示されている。この現象の用途は数多くあるが、創傷を治療するために特に有利であることが判明している。外傷であれ、手術であれ、又は別の原因であれ、創傷の病因とは関わりなく、転帰に関しては、創傷の適切なケアが重要である。創傷又は他の組織の減圧による処置は、一般に、「陰圧療法」と称され得るが、例えば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「真空補助閉鎖」、及び「局所陰圧」を含む、他の名称によっても知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移行、血流の改善、及び創傷部位における組織の微小変形などを含めた、いくつもの利益をもたらすことができる。これらの利益は全体として、肉芽組織の発達を促進し、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
組織部位の洗浄が、新しい組織の成長に非常に有益であり得ることも広く受け入れられている。例えば、創傷又は空洞を、治療目的のために液体溶液で洗浄することができる。これらの行為は、一般に、「灌注(irrigation)」及び「洗浄(lavage)」と称される。「滴下」とは、組織部位に流体を低速で導入し、流体を除去する前に所定の時間にわたり流体を残すプロセスを一般的に指す別の行為である。例えば、創傷床にわたる局所処置溶液の滴下を陰圧療法と組み合わせて、創傷床における可溶性の汚染物質を弛緩させ、感染性物質を除去することにより創傷治癒を更に促進させることができる。結果として、可溶性細菌負荷を減少させ、汚染物質を除去し、創傷を洗浄することができる。
【0005】
陰圧治療及び滴下治療の臨床的利点は広く知られているものの、治療システム、構成要素、及びプロセスの改善が、ヘルスケア提供者及び患者に利益をもたらし得る。
【発明の概要】
【0006】
陰圧、治療用溶液の滴下、又はその両方を用いて組織を治療するための、新規かつ有用なシステム、装置、及び方法が、添付の特許請求の範囲に記載される。特許請求された主題を当業者が作製及び使用することを可能にする、例示的な実施形態も提示されている。
【0007】
例えば、いくつかの実施形態において、治療装置は、創傷床に様々な滴下溶液を間欠的に送達することが可能であり得る。溶液の滴下は、陰圧の一時停止中に起こり得るものであり、この溶液は、創傷のくずを一定時間浸漬及び可溶化することを可能にする。溶液及び可溶化したくずは、陰圧の後続サイクル中に除去することができる。治療装置は、創傷流体の蓄積及び潜在的な閉塞を最小限に抑えるために陰圧相中に真空管の間欠パージサイクルを提供するように構成されたコントローラを更に有してもよい。追加的又は代替的に、コントローラは、ドレッシングと管との間のインターフェースにおける材料の堆積を最小限に抑えるために、比較的少量の滴下溶液を使用して、滴下管の間欠パージサイクルを提供するように構成されてもよい。ソフトウェアコントロールは、様々なレベルの滴下パージを設定するためのユーザインターフェースを提供することができる。例えば、レベルは、粘度及び他の滲出液特性に影響を及ぼし得る、滴下溶液のタイプ、及び創傷病因に関連する他の要因に依存し得る。
【0008】
より一般的には、組織部位を治療するための装置は、組織部位に流体結合されるように構成された陰圧源と、組織部位に流体結合されるように構成された滴下源と、陰圧源及び滴下源に動作可能に結合されたコントローラと、を備え得る。いくつかの実施例では、陰圧源は、ドレッシングに結合されるように構成された第1の流体導管に結合されてもよく、滴下源は、ドレッシングに結合されるように構成された第2の流体導管に結合されてもよい。コントローラは、陰圧源及び滴下源を動作させて、陰圧期間、陰圧を組織部位に間欠的に送達し、滴下期間、滴下流体を組織部位に送達するように構成され得る。滴下流体のパージ体積は、パージ頻度で組織部位に送達され得る。いくつかの実施例では、パージ体積は、第2の流体導管を介して送達され、陰圧期間中に第1の流体導管を介して除去されてもよい。
【0009】
陰圧及び治療用溶液を用いて組織部位を治療する方法は、第1の期間、陰圧を組織部位に送達することと、第2の期間、治療用溶液を組織部位に送達することと、第1の期間中に治療用溶液のパージ体積を組織部位に送達することと、を含むことができる。あるいは、パージ体積は、第1の期間の前に送達されてもよい。パージ体積は、第1の期間中に陰圧によって除去されてもよい。
【0010】
特許請求される主題を作製及び使用する目的、利点、及び好ましい態様が、例示的実施形態の以下の詳細な説明と併せて添付図面を参照することによって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書による陰圧治療及び滴下治療を提供することができる治療システムの例示的な実施形態の機能ブロック図である。
【0012】
図2図1の治療システムのいくつかの実施形態に関連し得る、例示的な圧力制御モードの更なる詳細を示すグラフである。
【0013】
図3図1の治療システムのいくつかの実施形態における別の例示的な圧力制御モードに関連し得る、更なる詳細を示すグラフである。
【0014】
図4図1の治療システムを動作させる例示的な方法に関連し得る詳細を示すチャート図である。
【0015】
図5図1の治療システムのいくつかの実施形態に関連し得る別の例示的な制御モードの更なる詳細を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態の以下の説明は、添付の特許請求の範囲に記載される主題を当業者が作製及び使用することを可能にする情報を提供するものであるが、当該技術分野において既に周知の特定の詳細を省略している場合がある。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定ではなく例示として解釈されるべきである。
【0017】
例示的な実施形態はまた、添付の図面に示される様々な要素間の空間的関係又は様々な要素間の空間的方位(orientation)を参照して本明細書に記載され得る。一般に、そのような関係又は方位は、治療を受ける位置にある患者と整合する又はその患者に対する基準系を想定している。しかしながら、当業者には認識されるはずであるように、この基準系は厳密な規定というよりは、むしろ単に説明上の便宜的なものである。
【0018】
治療システム
【0019】
図1は、本明細書に係る、組織部位への局所処置溶液の滴下を伴う陰圧療法を提供することができる、治療システム100の例示的な実施形態の簡略化された機能ブロック図である。
【0020】
用語「組織部位」とは、この文脈では、限定するものではないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、真皮組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、若しくは靭帯を含めた、組織上又は組織内部に位置する、創傷、欠損、又は他の処置標的を広範に指す。創傷は、例えば、慢性の、急性の、外傷性の、亜急性の、及び裂開した創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、圧迫潰瘍、又は静脈不全潰瘍など)、弁状創、及び移植組織を含み得る。用語「組織部位」はまた、必ずしも創傷部又は欠損部ではなく、代わりに、追加的組織の成長を追加又は促進することが望ましいであろう、任意の組織の領域を指す場合もある。例えば、採取して移植することが可能な追加的組織を成長させるために、組織部位に陰圧を印加することができる。
【0021】
治療システム100は、陰圧源105などの、陰圧の発生源又は供給部と、1つ以上の分配構成要素とを含み得る。分配構成要素は、好ましくは着脱可能であり、使い捨て可能、再使用可能、又はリサイクル可能であり得る。ドレッシング110などのドレッシング、及び、容器115などの流体容器は、治療システム100のいくつかの実施例に関連し得る分配構成要素の例である。図1の実施例に示されるように、ドレッシング110は、組織インターフェース120、カバー125、又はいくつかの実施形態では双方を含み得るか、若しくはそれらから本質的に成るものであり得る。
【0022】
流体導管は、分配構成要素の別の例示的な実施例である。「流体導管」とは、この文脈では、2つの端部間で流体を搬送するように適合されている、1つ以上の管腔又は開放経路を有する、チューブ、パイプ、ホース、導管、若しくは他の構造体を広範に含む。典型的には、チューブは、ある程度の可撓性を有する細長い円筒状の構造体であるが、幾何学的形状及び剛性は多様であり得る。更に、いくつかの流体導管は、他の構成要素の中へ成形されてもよく、そうでなければ他の構成要素と一体的に組み合わされてもよい。分配構成要素はまた、他の構成要素の結合及び分離を促進するために、インターフェース又は流体ポートを含むか、又は備えてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ドレッシングインターフェースは、流体導管をドレッシング110に結合することを容易にし得る。例えば、そのようなドレッシングインターフェースは、San Antonio,TexasのKinetic Concepts,Inc.から入手可能な、SENSAT.R.A.C(商標)Padであり得る。
【0023】
治療システム100はまた、コントローラ130などの、レギュレータ又はコントローラも含み得る。更に、治療システム100は、動作パラメータを測定して動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ130に提供する、センサを含んでもよい。例えば、図1に示されるように、治療システム100は、コントローラ130に結合された、第1のセンサ135及び第2のセンサ140を含み得る。
【0024】
治療システム100はまた、滴下溶液源を含んでもよい。いくつかの実施例では、滴下源は、陽圧源に動作可能に結合された溶液源を含んでもよい。例えば、溶液源145は、図1の例示的な実施形態に示されるように、ドレッシング110に流体結合されてもよい。溶液源145は、いくつかの実施形態では、ポンプ若しくは陽圧源150などの他の陽圧源、陰圧源105などの陰圧源、又はその両方に流体結合されてもよい。滴下調整器155などの調整器もまた、溶液源145及びドレッシング110に流体結合され、組織部位への滴下溶液(例えば、生理食塩水)の適切な投与を確実にしてもよい。例えば、滴下調整器155は、陰圧源105によって空気圧で作動され得るピストンを備え、陰圧期間中に溶液源から滴下溶液を引き出し、通気期間中に溶液をドレッシングに滴下することができる。追加的又は代替的に、コントローラ130は、陰圧源105、陽圧源150、又はその両方に結合され、組織部位への滴下溶液の投与を制御し得る。いくつかの実施形態では、滴下調整器155はまた、図1の実施例に示すように、ドレッシング110を介して陰圧源105に流体結合されてもよい。
【0025】
治療システム100のいくつかの構成要素は、センサ、処理ユニット、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示デバイス、又は治療を更に促進するユーザインターフェース、などの他の構成要素内に収容されるか、又はそれらと併せて使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、陰圧源105は、コントローラ130、溶液源145、及び他の構成要素と組み合わせて治療ユニットにすることができる。
【0026】
一般に、療法システム100の構成要素は、直接又は間接的に結合させることができる。例えば、陰圧源105を、容器115に直接結合することができ、容器115を介して、ドレッシング110に間接的に結合することもできる。結合としては、流体、機械的、熱的、電気的、若しくは化学的結合(化学結合など)、又は、文脈によっては、結合のいくつかの組み合わせを挙げることができる。例えば、陰圧源105は、コントローラ130に電気的に結合させることができ、組織部位への流体経路を提供するために、1つ以上の分配構成要素に流体結合させることができる。いくつかの実施形態では、構成要素はまた、物理的近接性によって結合されてもよく、単一構造に一体化されてもよく、又は同じ材料片から形成されてもよい。
【0027】
陰圧源105などの陰圧供給部は、陰圧の空気のリザーバであり得、あるいは、例えば、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くのヘルスケア施設で利用可能な壁面吸引ポート、又はマイクロポンプなどの、手動若しくは電動のデバイスであり得る。「陰圧」とは、一般に、封止治療環境の外部の局所的環境における周囲圧力などの局所的周囲圧力よりも低い圧力を指す。多くの場合、局所的周囲圧力はまた、組織部位が位置している大気圧でもあり得る。あるいは、この圧力は、組織部位における、組織に関連する静水圧よりも、低い場合もある。別途指示のない限り、本明細書で記述される圧力の値は、ゲージ圧である。陰圧の増加とは、典型的には、絶対圧力の減少を指すのに対して、陰圧の減少は、典型的には、絶対圧力の増加を指す。陰圧源105によって提供される陰圧の量及び性質は、治療要件に応じて変化し得るが、圧力は一般に、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の、一般に粗い真空(rough vacuum)とも称される、低真空(low vacuum)である。一般的な治療範囲は、-50mmHg(-6.7kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0028】
容器115は、組織部位から引き出された滲出液及び他の流体を処理するために使用することが可能な、容器、キャニスタ、パウチ、又は他の貯留構成要素を表している。多くの環境では、流体の収集、貯留、及び廃棄のためには、剛性の容器が好ましいか若しくは必要とされる場合がある。他の環境では、流体は、剛性の容器に貯留されることなく、適切に廃棄される場合もあり、再使用可能な容器により、陰圧療法に関連する廃棄物及びコストを削減することも可能である。
【0029】
コントローラ130などのコントローラは、陰圧源105などの、治療システム100の1つ以上の構成要素を動作させるようにプログラムされたマイクロプロセッサ又はコンピュータであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ130は、治療システム100の1つ以上の動作パラメータを直接的若しくは間接的に制御するようにプログラムされたプロセッサコア及びメモリを含む集積回路を一般に備えるマイクロコントローラであり得る。動作パラメータとしては、例えば、陰圧源105に適用される電力、陰圧源105によって生成される圧力、又は組織インターフェース120に分配される圧力を挙げることができる。コントローラ130はまた、好ましくは、フィードバック信号などの1つ以上の入力信号を受信するように構成されており、それらの入力信号に基づいて1つ以上の動作パラメータを修正するようにプログラムされている。
【0030】
第1のセンサ135及び第2のセンサ140などのセンサは、一般に、物理的現象又は特性を検出又は測定するように動作可能な任意の装置として当該技術分野において既知であり、一般に、検出又は測定された現象又は特性を示す信号を提供する。例えば、第1のセンサ135及び第2のセンサ140は、治療システム100の1つ以上の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第1のセンサ135は、空気経路内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号に測定値を変換するように構成された変換器であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、第1のセンサ135は、ピエゾ抵抗型歪みゲージであり得る。第2のセンサ140は、いくつかの実施形態では、電圧又は電流などの、陰圧源105の動作パラメータを、任意選択的に測定することができる。好ましくは、第1のセンサ135及び第2のセンサ140からの信号は、コントローラ130への入力信号として好適であるが、いくつかの実施形態では、ある信号調整が適切であってもよい。例えば、信号は、コントローラ130によって処理され得る前に、フィルタ処理又は増幅される必要があり得る。典型的には、信号は電気信号であるが、光信号などの他の形態で表されてもよい。
【0031】
組織インターフェース120は、一般に、組織部位に部分的又は完全に接触するように適合させることができる。組織インターフェース120は、多くの形態を取り得るものであり、実施されている処置のタイプ、あるいは組織部位の性質及びサイズなどの、様々な要因に応じて、多くのサイズ、形状、又は厚さを有し得る。例えば、組織インターフェース120のサイズ及び形状は、深く不規則な形状の組織部位の、輪郭に適合され得る。組織インターフェース120の表面のうちのいずれか又は全ては、凹凸のプロファイル、粗いプロファイル、又はギザギザのプロファイルを有し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、組織インターフェース120は、マニホールドを含み得るか、又はマニホールドから本質的に成るものであり得る。この文脈におけるマニホールドは、圧力下で組織インターフェース120にわたって流体を収集又は分配するための手段を含み得るか、又はそのような手段から本質的に成るものであり得る。例えば、マニホールドは、供給源から陰圧を受け取り、複数の開口を介して組織インターフェース120にわたって陰圧を分配するように適合させることができ、このことは、組織部位にわたって流体を収集して、供給源に向けて流体を引き込む効果を有し得る。いくつかの実施形態では、流体経路は、逆転させることができ、又は二次流体経路が、滴下溶液源から組織部位にわたる流体などの、流体の送達を促進するために提供されてもよい。
【0033】
いくつかの例示的実施形態では、マニホールドは、流体の分配又は収集を改善するために相互接続することが可能な、複数の経路を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、マニホールドは、相互接続された流体経路を有する多孔質材料を含み得るか、又はそのような多孔質材料から本質的に成るものであり得る。相互接続された流体経路(例えば、チャネル)を形成するように適合させることが可能な好適な多孔質材料の例としては、網状発泡体などの連続気泡発泡体を含めた、気泡発泡体;多孔質組織集合体;並びに、細孔、縁部、及び/又は壁部を一般に含む、ガーゼ若しくはフェルトマットなどの、他の多孔質材料を挙げることができる。液体、ゲル、及び他の発泡体もまた、開口及び流体経路を含み得るか、又は含むように硬化させることもできる。いくつかの実施形態では、マニホールドは、追加的又は代替的に、相互接続された流体経路を形成する突起を備えてもよい。例えば、マニホールドは、相互接続された流体経路を画定する表面突起を設けるように、成形することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、組織インターフェース120は、所定の治療の必要に応じて変化し得る、孔径及び自由体積を有する網状発泡体を含み得るか、又はそのような網状発泡体から本質的に成るものであり得る。例えば、少なくとも90%の自由体積を有する網状発泡体は、多くの治療用途に関して好適であり得るものであり、400~600マイクロメートルの範囲の平均孔径(1インチ当たり40~50個の細孔)を有する発泡体は、一部のタイプの治療に関して特に好適であり得る。組織インターフェース120の引張強度も、所定の治療の必要に応じて変化し得る。例えば、発泡体の引張強度は、局所処置溶液の滴下のために増加されてもよい。組織インターフェース120の25%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.35ポンド毎平方インチであり得、65%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.43ポンド毎平方インチであり得る。いくつかの実施形態では、組織インターフェース120の引張強度は、少なくとも10ポンド毎平方インチであり得る。組織インターフェース120は、少なくとも2.5ポンド毎平方インチの引裂強度を有し得る。いくつかの実施形態では、組織インターフェースは、ポリエステル又はポリエーテルなどのポリオールと、トルエンジイソシアネートなどのイソシアネートと、アミン及びスズ化合物などの重合調整剤とから構成された、発泡体であり得る。いくつかの実施例では、組織インターフェース120は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio,Texas)から双方入手可能な、GRANUFOAM(商標)ドレッシング又はV.A.C.VERAFLO(商標)ドレッシングに見られるような網状ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0035】
組織インターフェース120の厚さも、所定の治療の必要に応じて変化し得る。例えば、組織インターフェースの厚さは、周辺組織の張力を低減するために減少され得る。組織インターフェース120の厚さはまた、組織インターフェース120の適合性に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、約5ミリメートル~10ミリメートルの範囲の厚さが好適であり得る。
【0036】
組織インターフェース120は、疎水性又は親水性のいずれかであり得る。組織インターフェース120が親水性であり得る実施例では、組織インターフェース120はまた、組織部位に陰圧を分配し続けている間に、組織部位から流体を吸い上げて逃がすこともできる。組織インターフェース120の吸い上げ特性は、毛細管流動機序又は他の吸い上げ機序によって、組織部位から流体を引き寄せて逃がし得る。適切であり得る親水材料の一例は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio,Texas)から入手可能なV.A.C.WHITEFOAM(商標)ドレッシングなどの、ポリビニルアルコール、連続気泡発泡体である。他の親水性発泡体としては、ポリエーテルから作製されたものを挙げることができる。親水性特性を呈し得る他の発泡体としては、親水性を付与するように処理又はコーティングされている、疎水性発泡体が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、組織インターフェース120は、生体再吸収性材料から構築することができる。好適な生体再吸収性材料としては、限定するものではないが、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)とポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)とのポリマーブレンドを挙げることができる。ポリマーブレンドはまた、限定するものではないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、及びカプロラクトンも含み得る。組織インターフェース120は更に、新たな細胞増殖のためのスキャフォールドとして機能し得るものであり、又は、組織インターフェース120とスキャフォールド材料を併用して、細胞増殖を促進することもできる。スキャフォールドとは一般に、細胞増殖のためのテンプレートを提供する3次元多孔質構造体などの、細胞の増殖又は組織の形成を強化若しくは促進するために使用される、物質又は構造体である。スキャフォールド材料の実例としては、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラル(coral)ヒドロキシアパタイト、炭酸塩、又は、加工処理された同種移植片材料が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、カバー125は、細菌に対する障壁、及び物理的外傷からの保護を提供し得る。カバー125はまた、2つの構成要素間、又は、治療環境と局所的外部環境との間などの2つの環境間において、蒸発損失を低減させ、流体封止を提供することが可能な材料から、構築することもできる。カバー125は、例えば、所与の陰圧源に関して、組織部位における陰圧を維持するために適切な封止を提供することが可能な、エラストマーのフィルム若しくは膜を含み得るか、又はそのようなフィルム若しくは膜から成るものであり得る。カバー125は、いくつかの用途において、高い水蒸気透過率(moisture-vapor transmission rate、MVTR)を有してもよい。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、38℃及び相対湿度(relative humidity、RH)10%において、ASTM E96/E96MのUpright Cup Methodによる直立カップ技術を使用して測定された、24時間当たり少なくとも250グラム毎平方メートル(g/m/24時間)であり得る。いくつかの実施形態では、最大5,000g/m/24時間のMVTRは、有効な通気性及び機械的特性を提供し得る。
【0039】
いくつかの例示的実施形態では、カバー125は、水蒸気に対して透過性であるが液体に対しては不透過性である、ポリウレタンフィルムなどのポリマードレープであり得る。かかるドレープは、典型的には、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料に関しては、透過性は一般に、所望の陰圧を維持することが可能であるように、十分に低くするべきである。カバー125は、例えば、以下の材料のうちの1つ以上を含み得る:親水性ポリウレタンなどのポリウレタン(PU)、セルロース誘導体、親水性ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性アクリル、親水性シリコーンエラストマーなどのシリコーン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyl acetate、EVA)、コポリエステル、及びポリエーテルブロックポリアミドコポリマー。そのような材料は、例えば、3M Company(Minneapolis、Minnesota)から市販のTegaderm(登録商標)ドレープ;Avery Dennison Corporation(Pasadena,California)から市販のポリウレタン(polyurethane、PU)ドレープ;例えばArkema S.A.(Colombes,France)製の、ポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(polyether block polyamide copolymer、PEBAX);並びに、Expopack Advanced Coatings(Wrexham,United Kingdom)から市販のInspire2301及びInspire2327ポリウレタンフィルムとして、市販されている。いくつかの実施形態では、カバー125は、2600g/m/24時間のMVTR(直立カップ技術)及び約30マイクロメートルの厚さを有する、INSPIRE2301を含み得る。
【0040】
取付デバイスを使用して、カバー125を、無傷の表皮、ガスケット、又は別のカバーなどの取付表面に取り付けることができる。取付デバイスは、多くの形態を取り得る。例えば、取付デバイスは、組織部位の周囲の表皮にカバー125を接合するように構成された、医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、カバー125の一部又は全てを、約25~65グラム毎平方メートル(g.s.m.)のコーティング重量を有し得る、アクリル接着剤などの接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、封止を改善して漏れを低減するために、より厚い接着剤、又は接着剤の組み合わせを適用することができる。取付デバイスの他の例示的な実施形態としては、両面テープ、糊、ヒドロコロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル、又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0041】
溶液源145はまた、滴下療法のための溶液を提供することができる、容器、キャニスタ、パウチ、バッグ、又は他の貯留構成要素を表し得る。溶液の組成は、所定の治療に従って変化し得るが、いくつかの処方に好適であり得る溶液の例としては、次亜塩素酸塩系溶液、硝酸銀(0.5%)、イオウ系溶液、ビグアニド類、カチオン性溶液、及び等張溶液を挙げることができる。
【0042】
治療モード
【0043】
操作時に、組織部位内に、組織部位の上に、組織部位上に、又は他の方式で組織部位の近位に、組織インターフェース120を配置することができる。例えば、組織部位が創傷である場合には、組織インターフェース120は、部分的若しくは完全に創傷を塞ぐことができ、又は、創傷の上に配置することもできる。カバー125を組織インターフェース120の上に配置して、組織部位の近傍の取付表面に封止することができる。例えば、カバー125は、組織部位の周辺の無傷の表皮に封止することができる。したがって、ドレッシング110は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する封止された治療環境を提供することができる。陰圧源105及び溶液源145は、1つ以上の流体導管を介して組織インターフェースに流体結合され得る。陰圧源105は、封止された治療環境内の圧力を低減することができ、溶液源145からの流体を、封止された治療環境に注入することができる。
【0044】
密閉療法環境内などの、別の構成要素又は場所における圧力を低下させるために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑となる恐れがある。しかし、陰圧療法及び滴下に適用可能な流体力学の基本原理は、概して、当業者に周知であり、圧力を低減するプロセスは、例えば、陰圧を「送達する」、「分配する」、又は「生成する」ものとして本明細書で例示的に説明され得る。
【0045】
一般に、滲出液及び他の流体は、流体経路に沿って、より低い圧力に向けて流れる。したがって、「下流」という用語は、典型的には、陰圧源に比較的より近い、又は陽圧源からより遠く離れている流体経路内のものを意味する。逆に、「上流」という用語は、陰圧源から比較的より遠く離れているか、又は陽圧源により近いものを意味する。同様に、かかる基準系における流体の「入口」又は「出口」の観点から特定の特徴を説明することが便利であり得る。この向きは、一般に、本明細書における様々な特徴及び構成要素を説明する目的のために想定される。しかしながら、流体経路はまた、一部の用途では、陰圧源を陽圧源に置き換えることなどによって逆転させることもでき、この説明上の規定は、限定的な規定として解釈されるべきではない。
【0046】
封止治療環境において、組織インターフェース120を介して組織部位にわたって印加される陰圧は、組織部位における巨大歪み及び微小歪みを誘発することができる。陰圧はまた、組織部位から浸出液及び他の流体を除去することもでき、それらを容器115内に収集することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は、第1のセンサ135などの1つ以上のセンサから、データを受信及び処理することができる。コントローラ130はまた、組織インターフェース120に送達される圧力を管理するために、治療システム100の1つ以上の構成要素の動作を制御することもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ130は、所望の標的圧力を受信するための入力を含み得るものであり、組織インターフェース120に印加されることになる標的圧力の設定及び入力に関するデータを処理するように、プログラムすることができる。いくつかの例示的実施形態では、標的圧力は、組織部位における治療に関して所望される標的陰圧として操作者によって設定され、次いで、コントローラ130に入力として提供される、固定圧力値であり得る。標的圧力は、組織部位を形成している組織のタイプ、(存在する場合には)負傷又は創傷のタイプ、患者の病状、及び主治医の選好に基づいて、組織部位ごとに変化し得る。所望の標的圧力を選択した後、コントローラ130は、その標的圧力に基づいて、陰圧源105を1つ以上の制御モードで動作させることができ、組織インターフェース120における標的圧力を維持するために、1つ以上のセンサからフィードバックを受信することができる。
【0048】
図2は、コントローラ130のいくつかの実施形態に関連し得る、例示的な制御モードの更なる詳細を示すグラフである。いくつかの実施形態では、コントローラ130は、陰圧源105が、線205及び線210によって示されるように、処置の持続時間にわたって、又は手動で作動停止されるまで、一定の標的陰圧を提供するように動作される、連続圧力モードを有し得る。更には、又は代替的に、コントローラは、図2の実施例に示されるように、間欠圧力モードを有し得る。図2では、x軸は時間を表し、y軸は、陰圧源105によって経時的に生成される陰圧を表す。図2の実施例では、コントローラ130は、標的圧力と大気圧との間で循環するように、陰圧源105を動作させることができる。例えば、標的圧力は、線205によって示されるように、指定の時間(例えば、5分)にわたって、-125mmHgの値に設定することができ、その後、実線215と実線220との間の間隙によって示されるように、指定の時間(例えば、2分)の作動停止が続く。この循環過程は、線220によって示されるように、陰圧源105を作動させることによって繰り返すことができ、このことにより、標的圧力と大気圧との間での方形波のパターンを形成することができる。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、周囲圧力から標的圧力への陰圧の増大は、瞬間的ではない場合がある。例えば、陰圧源105及びドレッシング110は、破線225によって示されるような、初期立ち上がり時間を有し得る。初期立ち上がり時間は、使用されているドレッシング及び治療機器のタイプに応じて変化し得る。例えば、ある治療システムに関する初期立ち上がり時間は、約20~30mmHg/秒の範囲であり得、別の治療システムに関しては、約5~10mmHg/秒の範囲であり得る。治療システム100が、間欠モードで動作している場合には、実線220によって示されるような繰り返し立ち上がり時間は、破線225によって示されるような初期立ち上がり時間と実質的に等しい値となり得る。
【0050】
図3は、治療システム100のいくつかの実施形態における別の例示的な圧力制御モードに関連し得る、更なる詳細を示すグラフである。図3では、x軸は時間を表し、y軸は、陰圧源105によって生成される陰圧を表す。図3の実施例における標的圧力は、動的圧力モードで、時間と共に変化し得る。例えば、標的圧力は、+25mmHg/分の速度に設定された立ち上がり時間305と、-25mmHg/分に設定された立ち下がり時間310とを有して、50mmHgの陰圧と135mmHgの陰圧との間で変化する、三角波形の形態で変化し得る。治療システム100の他の実施形態では、三角波形は、+30mmHg/分の速度に設定された立ち上がり時間305と、-30mmHg/分に設定された立ち下がり時間310とを有して、25mmHgの陰圧と135mmHgの陰圧との間で変化し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は、動的圧力モードにおいて、可変標的圧力を制御又は決定することができ、この可変標的圧力は、所望の陰圧の範囲として、操作者によって規定された入力として設定することが可能な、最大圧力値と最小圧力値との間で変化し得る。可変標的圧力はまた、コントローラ130によって処理及び制御することもでき、コントローラは、三角波形、正弦波形、又は鋸歯状波形などの所定の波形に従って、標的圧力を変化させることができる。いくつかの実施形態では、波形は、治療に関して所望される所定の陰圧又は時変陰圧として、操作者によって設定することができる。
【0052】
図4は、組織インターフェース120に陰圧処置及び滴下処置を提供するために治療システム100を操作する例示的な方法400に関連し得る詳細を示すチャート図である。いくつかの実施形態では、コントローラ130は、組織インターフェース120に提供される滴下溶液に関連するデータなどのデータを受信し、処理することができる。そのようなデータとしては、臨床医によって規定される滴下溶液のタイプ、組織部位に滴下される流体又は溶液の体積(「充填体積」)、及び組織部位に陰圧を印加する前に組織部位に溶液を残すために規定される時間の量(「滞留時間」)を挙げることができる。充填体積は、例えば、10~500mLであってもよく、滞留時間は、1秒~30分であってもよい。コントローラ130はまた、治療システム100の1つ以上の構成要素の動作を制御して、405に示すように、溶液を滴下することもできる。例えば、コントローラ130は、溶液源145から組織インターフェース120に分配された流体を管理してもよい。いくつかの実施形態では、410に示すように、陰圧源105から陰圧を印加して組織部位において減圧し、組織インターフェース120の中に溶液を引き込むことによって、流体を組織部位に滴下してもよい。いくつかの実施形態では、415に示すように、陽圧源150から陽圧を印加して、溶液源145から組織インターフェース120に溶液を移動させることによって、溶液を組織部位に滴下してもよい。追加的又は代替的に、溶液源145は、420に示すように、重力が組織インターフェース120内に溶液を移動させるのに十分な高さまで上昇させることができる。
【0053】
コントローラ130はまた、430における溶液の連続流又は435における溶液の間欠流を提供することによって、425における滴下の流体力学を制御してもよい。陰圧は、440における溶液の連続流又は間欠流のいずれかを提供するために適用されてもよい。陰圧の印加は、組織インターフェース120を通る滴下溶液の連続流量を実現するように、445において連続圧力動作モードを提供するように実施されてもよく、又は組織インターフェース120を通る滴下溶液の流量を変化させるように、450において動的圧力動作モードを提供するように実施されてもよい。代替として、陰圧の印加は、滴下溶液が組織インターフェース120において滞留することを可能にするように、455において間欠動作モードを提供するように実施されてもよい。間欠モードでは、例えば、治療されている組織部位のタイプ、及び利用されているドレッシングのタイプに応じて、特定の充填体積及び滞留時間を提供することができる。溶液の滴下後又は滴下中に、陰圧処置を460で適用してもよい。405において更なる溶液を滴下することによって465において別の滴下サイクルを開始する前に、コントローラ130を利用して、動作モードと陰圧処置の持続時間とを選択することができる。
【0054】
図5は、組織インターフェース120に陰圧処置及び滴下処置を提供するためにコントローラ130のいくつかの実施形態に関連付けられ得る別の例示的な制御モードの更なる詳細を示すグラフである。図5の例では、コントローラ130は、別個の期間の陰圧及び滴下を提供するように構成される。コントローラ130は、陰圧期間中に標的陰圧205を維持するために、間欠圧力モードで陰圧源105を動作させることができる。滴下期間505の間、コントローラ130は、陰圧源105を作動停止し、陽圧源150を動作させて、溶液源145から組織部位へ所定の体積の流体を滴下することができる。標的陰圧、所定の体積、又はその両方は、コントローラ130によって事前設定されてもよく、又は、いくつかの実施例ではランタイムで操作者によって設定されてもよい。コントローラ130はまた、陰圧源105も陽圧源150もアクティブでない滞留期間510を提供してもよい。いくつかの実施例では、サイクルを繰り返すことができる。図5の実施例では、コントローラ130は、滞留期間510の後に陰圧源105を再起動する。
【0055】
図5は、間欠パージサイクルを提供するように構成されたコントローラ130の例を更に示す。図5では、コントローラ130は、第1のパージサイクル515及び第2のパージサイクル520を周期的に作動させる。例えば、陰圧源105は、第1の流体導管を介してドレッシング110に結合されてもよく、コントローラ130は、弁を開放して第1の流体導管を周囲圧力又は陽圧に暴露することによって、第1のパージサイクル515を作動させてもよい。圧力上昇は、第1の流体導管から滲出液を押し出すことができ、第1の流体導管を遮断し得る滲出液の蓄積を低減することができる。同様に、溶液源145は、第2の流体導管を介してドレッシング110に結合されてもよく、第2のパージサイクル520は、第2の流体導管を介して溶液源145から比較的少量の流体を滴下することを含んでもよい。例えば、好適なパージ体積は、約0.1ミリリットル~約1ミリリットルの範囲にあってもよい。パージ頻度も変化し得る。いくつかの実施形態では、頻度は、約5分~約20分の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、約0.2ミリリットルのパージ体積及び約10分の頻度が、ドレッシング110付近の第2の流体導管内の材料堆積を低減するのに好適であり得る。第2のパージサイクル520は、図5の実施例のように陰圧期間の間、又は陰圧期間の間に作動され得る。溶液のパージ体積は、いくつかの構成において、第1の流体導管を介して陰圧によって除去され得る。いくつかの実施例では、第1のパージサイクル515及び第2のパージサイクル520は、同時に作動され得る。
【0056】
本明細書で説明されるシステム、装置、及び方法は、著しい利点をもたらし得る。例えば、滴下溶液と滲出液からのタンパク質と脂質との間の相互作用は、ドレッシングインターフェースで収集することができる粘着性の堆積物を生成することができる。滴下パージサイクルは、流体導管及び他の分配構成要素を閉塞することができるこれらの堆積物を実質的に削減又は排除することができる。
【0057】
いくつかの例示的な実施形態において示されるが、当業者であれば、本明細書に記載されたシステム、装置、及び方法は、添付の特許請求の範囲内に入る様々な変更及び修正が容易に可能であることを認識するであろう。更には、「又は(or)」などの用語を使用する様々な代替形態の説明は、文脈によって明らかに必要とされない限り、相互排他性を必要とするものではなく、また、定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、文脈によって明らかに必要とされない限り、対象を単一の例に限定するものではない。構成要素はまた、販売、製造、組み立て、又は使用の目的のために、様々な構成で組み合わせるか、又は削除することもできる。例えば、いくつかの構成では、製造又は販売のために、ドレッシング110、容器115、又は双方を削除するか、又は他の構成要素から分離することができる。他の例示的な構成では、コントローラ130はまた、他の構成要素とは独立して製造され、構成され、組み立てられ、又は販売されてもよい。
【0058】
添付の特許請求の範囲は、上述の主題の新規かつ発明的な態様を記載するものであるが、特許請求の範囲はまた、具体的には詳細に列挙されない追加的主題も包含し得る。例えば、新規かつ発明的な特徴を、当業者には既知であるものから区別するために、必要とされない場合には、特定の特徴、要素、又は態様を、特許請求の範囲から省略することができる。いくつかの実施形態の文脈において説明される特徴、要素、及び態様はまた、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、省略するか、組み合わせるか、又は、同じ目的、均等の目的、若しくは同様の目的を果たす代替的特徴によって置き換えることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5