(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】交流電圧ネットワークへの三相供給のための方法及び三相インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240520BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2021547689
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2020056876
(87)【国際公開番号】W WO2020182985
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】102019106583.6
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100198650
【氏名又は名称】小出 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ウンル
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ ヴェルカ―
(72)【発明者】
【氏名】ナイトハート ベヒテル
(72)【発明者】
【氏名】シビレ パペ
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051072(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051500(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0039106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ(2)を用いたDC源(1)から三相ACグリッド(3)への電力の三相送り込みのための方法であって、前記インバータ(2)は、調整構造(10)を有し、前記調整構造(10)は、調整器(11)及び乗算器(12)を含み、前記方法は、
- 相固有のグリッド電圧(U_abc)を測定するステップ、
- 前記測定されたグリッド電圧(U_abc)からグリッド周波数(f_grid)を決定するステップ、
- 前記相固有に測定されたグリッド電圧(U_abc)及び前記決定されたグリッド周波数(f_grid)から、前記調整器(11)を用いて相固有の正弦波電圧基準値(U_ref)を生成するステップであって、前記電圧基準値(U_ref)は、個々の相の前記測定されたグリッド電圧(U_abc)のそれぞれの振幅及び周波数に対応する相固有の振幅及び共通周波数を有する、ステップ、
- 相固有に事前定義された目標電流振幅値(I_d_target)と、前記相固有の電圧基準値(U_ref)との積を形成し、且つ前記積を相固有にそれぞれのグリッド電圧振幅(U_d)に正規化することにより、前記乗算器(12、12’)を用いて相固有の目標電流値(I_abc_target)を生成するステップ、
- 前記インバータの電力スイッチを駆動するために前記相固有の目標電流値(I_abc_target)を使用するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記電圧基準値(U_ref)を生成するための前記調整器(11)は、バンドパスフィルタ又は汎用積分器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標電流振幅値(I_d_target)は、個々に事前定義された有効電力が前記相に送り込まれるように事前定義される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標電流振幅値(I_d_target)は、
実質的に同じ有効電力が前記相のすべてに送り込まれるように事前定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記目標電流振幅値(I_d_target)は、前記相の少なくとも1つにおいて、少なくとも1つの他の相の有効電力と比較して反対の符号を有する有効電力が送り込まれるように事前定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらなる乗算器(16)を用いて、相固有に事前定義された目標無効電流振幅値(I_q_target)と、それぞれの場合に90度だけ位相シフトされた相固有の電圧基準値(Uu_ref)との積が形成され、且つ前記相固有に事前定義された目標電流振幅値(I_d_target)と、前記相固有の電圧基準値(U_ref)との前記積に加算され、結果として生じる合計値は、相固有に前記それぞれのグリッド電圧振幅(U_d)に正規化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標無効電流振幅値(I_q_target)は、個々に事前定義された無効電力が前記相に送り込まれるように事前定義される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
DC源(1)から三相ACグリッド(3)への電力の三相送り込みのためのインバータ(2)であって、調整構造(10)を有し、前記調整構造(10)は、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、インバータ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを用いたDC源から三相ACグリッドへの電力の三相送り込みのための方法及びDC源から三相ACグリッドへの電力の三相送り込みのために構成されたインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
三相ACグリッドに接続され、ACグリッドと電力を交換するインバータは、一般に、インバータのAC接続を介して流れる交流、したがって交換される電力が原則としてインバータ自体によって事前定義されるという事実により、電流印加方式で動作する。DC源としての太陽光発電機の場合、交流に変換されACグリッドと交換される電力は、太陽光発電機の最大可能電力に規則的に対応する。
【0003】
インバータは、交換される電力が場合により間接的にACグリッドの特性、例えば周波数及び/又は電圧に依存するという事実により、グリッド支援機能を追加的に果たすことができる。この目的のため、交換される電力は、例えば、ACグリッドの定格周波数からグリッド周波数が逸脱した場合、利用可能なDC電力の範囲内で変更され得る。
【0004】
インバータは、ACグリッドを定め、維持することができ、すなわちグリッド形成方式で動作することができる。電流を印加するグリッド支援動作と対照的に、グリッド形成のためのインバータは、交換される電力がACグリッドの特性に直接依存する、すなわち特にACグリッドの周波数及び/又は電圧の関数であるという事実により、特に電圧印加方式で動作することができる。この場合、電圧印加インバータは、例えば、いわゆるドループ調整を含むことができるか、又はいわゆる仮想同期機械として動作することができる。ここで、積極的なグリッド形成装置としての発電設備の動作は、単にグリッド支援のみの、この点において反応的な動作よりも、接続されたDC源の著しくより高いダイナミックレンジを必要とする。
【0005】
欧州特許出願公開第1841050A1号明細書は、3つの単相インバータを含む発電設備を開示しており、3つのインバータは、それぞれACグリッドの3つの相の1つに接続されており、互いにほぼ無関係に電流印加方式で動作する。結果として、発電設備は、個々のインバータがACグリッドと異なる電力を交換するという事実により、いわゆる不平衡負荷を形成し得る。
【0006】
独国特許出願公開第102012220582A1号明細書は、ACグリッドの非対称性が検出され、それに反応して非対称電流部分がインバータによって送り込まれる、インバータを用いた電力の三相送り込みのための方法を開示している。検出された非対称性に直接反応するインバータの対応する制御のために構成された包括的な調整構造がこの目的のために開示されている。
【0007】
欧州特許出願公開第2348597A1号明細書は、電気設備のグリッド接続点の3つの相を介して流れる電力の非対称性が、グリッド接続点の設備側のインバータが3つの相を介して、ACグリッドと異なる電力を交換するという事実により、インバータを用いて補償される方法を開示しており、この方法では、交換される電力の差は、非対称性を正確に補償する。
【0008】
独国特許出願公開第102011085676A1号明細書は、類似の方法を開示しており、この方法では、三相ACグリッドへの電力の送り込みは、送り込み点における不平衡負荷を最小化するように、送り込み点において決定された有効電力及び無効電力を考慮して、インバータによって相選択的に制御される。その場合、好ましくは、インバータが三相ACグリッドの相へのそれぞれの接続のために3つの個々に制御可能な出力を有するように設けられる。
【0009】
独国特許出願公開第102010029951A1号明細書は、正相順システムと逆相順システムとの重ね合わせによって不平衡電流が生成される、三相ACグリッドに不平衡三相電流を送り込むための方法を開示しており、この方法では、正相順システム及び逆相順システムを生成するためのそれぞれのインバータモジュールが提供される。
【0010】
したがって、従来技術に従うと、電流印加発電設備を用いた三相ACグリッドへの電力の積極的な非対称の送り込みは、これまで3つのほぼ無関係に送り込む単相インバータ又は2つの無関係に送り込む三相インバータを使用することによってのみ可能であった。代替として、非対称の送り込みは、調整構造を用いて達成することができ、その結果は、ACグリッドの電気的特性に本質的に依存する。特に、電圧印加インバータは、非対称の送り込みに使用することができるが、その場合、個々の相の送り込み電力は、対象を絞った方法で制御することができず、むしろ接続されたACグリッドの挙動に直接依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によって対処される問題は、個々の相を介してACグリッドに送り込まれる電流又は電力が単純且つ効率的な方法で互いに無関係に設定され得る、三相電流印加インバータを介したDC源から三相ACグリッドへの電力の非対称の送り込みのための方法を明示するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本問題は、独立特許請求項1の特徴を有する方法及び請求項8に記載のインバータによって解決される。好ましい実施形態は、従属特許請求項に定められる。
【0013】
インバータを用いたDC源から三相ACグリッドへの電力の三相送り込みのための本発明による方法であって、インバータは、調整構造を有し、調整構造は、調整器及び乗算器を含む、方法は、
- 相固有のグリッド電圧を測定するステップ、
- 測定されたグリッド電圧からグリッド周波数を決定するステップ、
- 相固有に測定されたグリッド電圧及び決定されたグリッド周波数から、調整器を用いて相固有の正弦波電圧基準値を生成するステップであって、電圧基準値は、個々の相の測定されたグリッド電圧のそれぞれの振幅及びグリッド電圧の周波数に対応する相固有の振幅及び共通周波数を有する、ステップ、
- 相固有に事前定義された目標電流振幅値と、相固有の電圧基準値との積を形成し、且つその積を相固有にそれぞれのグリッド電圧振幅に正規化することにより、乗算器を用いて相固有の目標電流値を生成するステップ、
- インバータの電力スイッチを駆動するために相固有の目標電流値を使用するステップ
を含む。
【0014】
本方法では、したがって、本発明によれば、事前定義された目標電流振幅値が相固有に電圧基準値を乗算され、ここで、相固有の電圧基準値は、測定されたグリッド電圧から(直接)生成されており、その振幅及び周波数が個々の相のグリッド電圧と同期して進行する数学的に正弦波のプロファイルを有する。本発明による決定されたグリッド電圧振幅への相固有の正規化後、特に比較的複雑な座標変換を実行する必要なく、適切に一致する目標電流値への目標電流振幅値の単純なマッピングがしたがって利用可能である。結果として生じる目標電流値は、同様に相固有であり、正弦波時間プロファイルを有する。目標電流値は、したがって、例えば従来のパルス幅変調(PWM)に関連して、それ自体知られている方法でインバータの電力スイッチを駆動するための目標値として使用するのに適している。
【0015】
本方法の1つの実施形態では、電圧基準値を生成するための調整器は、フィルタ、特にバンドパスフィルタ又は汎用積分器を含む。汎用積分器の出力値は、より高周波の外乱によって影響を受けることなく、正弦波グリッド電圧の基本グリッド周波数プロファイルを正確にシミュレートすることができるため、とりわけ(「二次汎用積分器」として知られる)汎用積分器は、相固有の正弦波電圧基準値を決定するのに有利に適している。
【0016】
目標電流振幅値は、個々に事前定義された有効電力が相に送り込まれるように事前定義され得る。従来の方法では、単に全体として交換される電力、したがってすべての相にわたる合計電力が事前定義されており、使用される座標系に応じて複雑な変換を通して目標値に変換される必要がある。本発明による方法では、対照的に、相固有の目標電流値への変換は、電圧基準値と併せて目標電流振幅値から直接もたらされるため、目標電流振幅値を用いて個々の相に対して有効電力を個々に事前定義することが容易に可能である。
【0017】
特に、目標電流振幅値は、すべての相で交換される有効電力が実質的に同じ大きさを有するように有利に事前定義することができる。結果として、インバータの完全に均衡を保った動作を保証することができる。
【0018】
代替として、目標電流振幅値は、相の少なくとも1つで所与の符号を有する有効電力がACグリッドと交換される一方、他の相の少なくとも1つで反対の符号を有する有効電力が交換されるように有利に事前定義され得る。その結果として、本方法は、単純且つ有利な方法において、1つの相で電力がインバータからACグリッドに流れる一方、同時に別の相で電力がACグリッドからインバータに流れるように非対称電力を生成することを可能にする。この機能は、個々の相の電力潮流に関する著しい非対称性がACグリッドにすでに存在している場合、とりわけ有利に利用することができる。
【0019】
本方法の1つの有利な実施形態では、さらなる乗算器を用いて、相固有に事前定義された目標無効電流振幅値と、それぞれの場合に90度だけ位相シフトされた相固有の電圧基準値との積が形成し、且つ相固有に事前定義された目標電流振幅値と、相固有の電圧基準値との積に加算され得る。結果として生じる合計値は、それから相固有にそれぞれのグリッド電圧振幅に正規化され得る。この結果、有効電流部分と無効電流部分との両方が含まれ、インバータの電力スイッチの駆動によって目標値として使用することができる目標電流値が得られ、それにより、インバータの出力電流は、相固有に有効電力及び無効電力の両方を含む。この場合、目標無効電流振幅値は、個々に事前定義された無効電力が相に送り込まれるように事前定義され得る。
【0020】
DC源から三相ACグリッドへの電力の三相送り込みのための本発明によるインバータは、上の説明による方法を実行するように構成された調整構造を有する。
【0021】
図面に例示された例示的な実施形態に基づいて、以下で本発明をさらに説明及び解説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】インバータの調整構造の1つの実施形態を示す。
【
図3】インバータの調整構造のさらなる一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、ACグリッド3に接続された発電設備の単純化された説明図を示す。発電設備は、
図1では例として太陽光発電機として例示されるDC源1から電力を引き出し、前記電力を交流に変換し、この交流を、相導体L1、L2、L3及び任意に中性線Nを介してACグリッド3に送り込むインバータ2を含む。この目的のため、インバータ2は、特に、インバータ2のDC入力とAC出力との間のブリッジ回路の形態で特に配置され得る、いくつかの電力半導体を含むインバータブリッジ2aを含む。電力半導体は、適切なクロッキングを用いて駆動され、それにより、インバータ2のAC出力への入力側DC電圧のクロック印加は、相導体L1、L2、L3及び任意にN上で交流を引き起こし、それらは、相固有に事前定義可能な目標電流値I_abc_targetに対応する。この目的のため、インバータブリッジ2aは、ここではより具体的な詳細について解説しない、従来技術から知られている内部駆動装置を含み得る。
【0024】
インバータ2は、特にインバータ2の動作制御を担うコントローラ4を有する。この目的のため、コントローラ4は、例えば、インバータ2の始動及び停止、インバータのDC入力における電圧の設定及び最適化、障害監視などの機能を含む。特に、コントローラ4は、測定値がインバータブリッジ2aからコントローラ4に伝送されることにより、且つ/又はコントローラ4がインバータブリッジ2aの基本動作状態、例えば通常動作又は緊急停止を事前定義することにより、インバータブリッジ2aと相互作用することができる。
【0025】
さらに、コントローラ4は、さらなる外部測定又は制御ユニット20に接続されて、それとデータを交換することができる。外部測定又は制御ユニット20は、例えば、インバータ2とACグリッド3との間のグリッド接続点における電力測定装置であり得る。代替として又は追加として、外部測定又は制御ユニット20は、インバータ2の他に測定点、発電機、記憶装置及び/又は負荷などのさらなる電気装置を含む発電設備の制御ユニットであり得、そのような設備の制御ユニット20は、設備の複数のさらなる電気装置に接続することができ、任意にそれらの電気的挙動に影響を与えるか又はそれを制御することができる。
【0026】
インバータ2は、調整構造10をさらに含む。調整構造10は、相導体L1、L2、L3の1つ及び中性線Nにそれぞれ割り当てられている電圧測定手段5に接続されている。電圧測定手段5は、個々の相のグリッド電圧U_abcを検出する。調整構造10は、電圧測定手段5から測定されたグリッド電圧U_abcを受け取る。適切な電圧測定手段5の構築のために、さまざまな実施形態が従来技術から当業者に知られており、したがって、
図1による電圧測定手段5の具体的な実施形態は、単に例としてのものにすぎないと理解されるべきである。
【0027】
調整構造10は、インバータ2のコントローラ4にさらに接続されている。コントローラ4は、調整構造10にパラメータを伝達する。調整構造10は、相固有の目標電流値I_abc_targetをインバータブリッジ2aに出力するように構成され、ここで、目標電流値I_abc_targetは、コントローラ4のパラメータ及び測定されたグリッド電圧U_abcに応じて調整構造10によって決定される。インバータブリッジ2aは、目標電流値I_abc_targetを受け取り、インバータブリッジ2aの電力半導体の - それ自体知られている - 内部駆動に基づいて目標電流値I_abc_targetに向けられ、とりわけインバータ2の通常動作中にそれにほぼ対応する出力電流を引き起こすのに適したクロック出力電圧を生成する。
【0028】
図2は、インバータ2の調整構造10の概略図を示す。調整構造10は、調整器11を含む。調整器11は、さまざまな入力変数を受け取る。これらの入力変数は、特に、インバータ2のコントローラ4によって事前定義され得る汎用パラメータと、測定されたグリッド電圧U_abcとを含む。調整器11の入力変数は、グリッド周波数f_gridをさらに含み、ここで、グリッド周波数f_gridは、例えば、位相ロックループPLL又は他の何らかの慣習的方法を用いて、測定されたグリッド電圧U_abcから決定することができる。
【0029】
ACグリッド2の3つの相のグリッド電圧U_abc及びグリッド周波数f_gridの瞬時値から、調整器11は、3つの相の瞬時電圧基準値U_refを決定し、それらを出力する。調整器11の入力への出力電圧基準値U_refのフィードバックが追加的に提供され得る。
【0030】
調整器11は、一方では、実際に測定されたグリッド電圧U_abcから逸脱する方法において、電圧基準値U_refが理想的に正弦波のプロファイルを有するように、すなわち互いに対して位相オフセットされる3つの正弦関数に従うように設計される。他方では、電圧基準値U_refの振幅は、測定されたグリッド電圧U_abcの振幅に対応し、電圧基準値U_refの周波数は、同様にグリッド周波数f_gridに対応する。
【0031】
電圧基準値U_refは、したがって、電圧基準値U_refが周波数及び振幅に関してグリッド電圧同期正弦波プロファイルを有することにより、理想化された形式でグリッド電圧のプロファイルをシミュレートする。これは、特に、調整器11が周波数選択的調整を含むことによって達成される。例えば、バンドパスフィルタがこの目的に適している。電圧基準値U_refの調整器11へのフィードバックにより、任意にスケーリング及び/又は遅延後、電圧基準値U_refの決定がさらに改善された方法で実施されるように、特にいわゆる汎用積分器を調整器11として使用することができる。
【0032】
調整構造1は、乗算器12をさらに含む。乗算器12は、調整器11からの相固有の電圧基準値U_refと、例えば位相ロックループPLLを通して、測定されたグリッド電圧U_abcから決定することができる相固有のグリッド電圧振幅U_dとを受け取る。
【0033】
相固有の目標電流振幅値I_d_targetが乗算器12のさらなる入力で利用可能とされる。目標電流振幅値I_d_targetは、特に、ACグリッド3の3つの相に対するインバータ2の出力電流の所望の振幅を事前定義する3つの値で構成することができる。この場合、同時に3つの相に適用可能な目標電流振幅値I_d_targetは、原則として、少なくともインバータ2に接続されたDC源1の性能の範囲内でほぼ自由に選択することができる。特に、個々の相に対して同一及び明確に異なる目標電流振幅値I_d_tagetの両方を事前定義することが可能であり、ここで、目標電流振幅値I_d_targetは、同様に、異なる符号を有することができるように意図されており、すなわちインバータ2からACグリッド3への又はその逆の有効電力の異なる流れ方向を表す。
【0034】
図2によれば、目標電流振幅値I_d_targetは、特にインバータ2のコントローラ4によって調整構造10に伝達されるパラメータに応じて、調整構造10で生成することができる。代替として、目標電流振幅値I_d_targetは、同様に、コントローラ4によって乗算器12に直接伝達することができる。
【0035】
乗算器12において、目標電流振幅値I_d_targetは、グリッド周波数電圧基準値U_refを相個々に乗算され、相個々のグリッド電圧振幅U_dで除算される。結果として、乗算器12は、それぞれの相のグリッド電圧の実際の振幅に正規化された相個々の目標電流値I_abc_targetを出力する。
【0036】
図3は、本発明による方法の拡張された一実施形態を示す。
図2による実施形態を補う方法では、事前定義された目標無効電流振幅値I_q_targetは、
図3による実施形態で処理される。目標電流振幅値I_d_targetは、個々の相のグリッド電圧とそれぞれ同位相である、インバータ2の出力電流の所望の振幅を事前定義し、それにより、目標電流振幅値I_d_targetは、相固有の有効電力を間接的に事前定義する。対照的に、目標無効電流振幅値I_q_targetは、個々の相のグリッド電圧に対してそれぞれの場合に90度だけ位相シフトされている、インバータ2の出力電流の所望の相固有の振幅を事前定義し、それにより、目標無効電流振幅値I_q_targetは、相固有の無効電力を間接的に事前定義する。言うまでもなく、この位相シフトは、不足励磁又は過励磁に任意に対応することができ、すなわち正又は負の符号を有することができる。
【0037】
具体的には、電圧基準値U_refは、位相シフタ13を用いて90度だけ位相シフトすることができる。この目的のため、位相シフタ13は、例えば、α-β-0座標系への変換及びその逆の変換を含むことができ、ここで、90度の位相シフトは、α-β-0座標系でとりわけ簡単に実行することができる。このようにして位相シフトされた電圧基準値Uu_refは、第2の乗算器14において、事前定義された目標無効電流振幅値I_q_targetを乗算される。乗算器14における乗算は、目標無効電流値をもたらし、それらは、
図2による乗算器12’を用いて電圧基準値U_ref及び目標電流振幅値I_d_targetから生成された目標有効電流値に加算器15において加算される。
【0038】
加算器15によって計算された目標有効電流値及び目標無効電流値の合計は、さらなる乗算器16において、相個々のグリッド電圧振幅U_dで除算される。結果として、乗算器16は、有効電流部分と無効電流部分との両方を含み、それぞれの相のグリッド電圧の実際の振幅に正規化された相個々の目標電流値I_abc_targetを出力する。
【0039】
図2又は
図3に従ってこのように計算された目標電流値I_abc_targetは、
図1によるインバータブリッジ2aの電力半導体スイッチを駆動するために使用される。この目的のため、インバータブリッジ2aは、従来技術から知られており、インバータ2によってACグリッド3に送り込まれる電流が、調整構造10によって事前定義された目標電流値I_abc_targetに対応するようにインバータブリッジ2aの電力半導体がクロックされることを保証する内部駆動を含み得る。このタイプの調整回路は、例えば、パルス幅変調(PWM)を用いたAC電流調整器として当業者に知られており、したがってここではより具体的な詳細について解説しない。
【0040】
本発明の具体的な実施形態では、目標電流振幅値は、以下の目標の少なくとも1つが達成されるように選択され得る。
【0041】
インバータ2の構成要素の特徴付け
インバータ2の構成要素の特徴付けのために試験段階を提供することができ、それは、任意に、インバータ2の通常動作とは別に一時的に実行することができる。具体的には、中性点クランプ式(NPC)インバータ2の通常分割されたDCリンク回路の静電容量は、正の目標電流振幅値I_d_targetを3つの相の2つに対してそれぞれの場合に事前定義する一方、負の目標電流振幅値I_d_targetを3つの相の第3の相に対して事前定義することによって決定することができ、ここで、目標電流振幅値I_d_targetの合計は、ゼロに等しい。本発明による調整構造10を用いて、インバータブリッジ2aは、相L1、L2、L3において対応する電流を生成させられる。インバータ2のそのような動作の結果として、正の目標電流振幅値I_d_targetを有する相の電流は、これらの相のグリッド電圧U_abcのプロファイルと同位相であり、一方負の目標電流振幅値I_d_targetを有する相における電流は、この相のグリッド電圧U_abcのプロファイルに対して逆位相である。目標電流振幅値I_d_targetの合計は、ゼロに等しくなるように選択されたため、全体として有効電力がACグリッド3と交換されない。しかしながら、交流の正弦波プロファイルに起因して、DCリンク回路の両方の半分でエネルギーの動的再分配が生じる。この動的再分配は、DCリンク回路の部分的な静電容量を決定するために計量的に検出及び評価することができる。
【0042】
真のゼロ送り込み
特に単相方式で接続され、共通グリッド接続点を介してACグリッド3に接続されている複数の電気ユニットを含む設備では、非対称電力潮流がグリッド接続点において発生することがあり、ここで、個々の相ではACグリッド2から設備に電力が流れる一方、他の相では設備からACグリッド2に電力が流れる。それは、グリッド接続点における電力を相固有に測定し、グリッド接続点における電力が相ごとに個々に事前定義された値、特にゼロに調整されるように、例えば中央設備コントローラ20又はインバータ2自体のコントローラ4により、目標電流振幅値I_d_targetを修正することによって打ち消すことができる。
【0043】
ヒューズ保護
ゼロ送り込みと類似して、影響を受ける相の目標電流振幅値I_d_targetの対応する反対方向の変化を事前定義することにより、グリッド接続点において個々の相を介して流れる電力を制限することができる。結果として、すべての相の電力の合計がグリッド接続点において全体として許容可能な電力よりも小さい限り、個々の相の過電流は、効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 DC源
2 インバータ
3 ACグリッド
4 コントローラ
5 電圧測定手段
10 調整構造
11 調整器
12、12’ 乗算器
13 位相シフタ
14 乗算器
15 加算器
16 乗算器
20 測定又は制御ユニット
L1、L2、L3 相導体
N 中性線
U_abc グリッド電圧
I_abc_target 目標電流値
f_grid グリッド周波数
U_ref、Uu_ref 電圧基準値
U_d グリッド電圧振幅
I_d_target 目標電流振幅値
I_q_target 目標無効電流振幅値