(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】印刷コントローラおよび印刷の方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240520BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240520BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 109
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2021549440
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 NL2020050101
(87)【国際公開番号】W WO2020171705
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521370994
【氏名又は名称】サイレック・アイピー・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】XYREC IP B.V.
【住所又は居所原語表記】Beechavenue 137,1119 RB Schiphol-Rijk The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、クリストファー・エル.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン、マシュー・エム.
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ポール・ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ボーインク、ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】ブロックシュミット、ブランソン・ピー.
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124912(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043741(WO,A1)
【文献】特開2019-001157(JP,A)
【文献】特開2016-172379(JP,A)
【文献】特開2013-148937(JP,A)
【文献】特開2012-016904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361346(US,A1)
【文献】中国実用新案第206568719(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置において、
-可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームと、
-前記ロボットアームの印刷端部において支持された印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドは複数のノズルを備え、
-前記印刷ヘッドの前記ノズル、およびリザーバから前記ノズルにインクを供給するためのポンプ装置に接続されたインクリザーバと、
-前記印刷ヘッドの向きを変更しながら前記印刷ヘッドを印刷軌道に沿って移動させるためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、
較正ステップにおいて、前記印刷ヘッドを較正軌道に沿って移動させて前記印刷ヘッド中のインク圧力を測定し、前記印刷ヘッドの異なる向きに対する前記ノズルのインク圧力制御データを生成して記憶し、
印刷ステップにおいて、印刷軌跡に沿って前記印刷ヘッドの向きを変化させるために、前記記憶されたインク圧力制御データに基づいて圧力制御信号を生成するように構成され、前記圧力制御信号は、前記ノズル中の前記インクの圧力が予め定められた圧力値に設定されるように前記ポンプ装置に供給される、印刷装置。
【請求項2】
前記較正軌道の少なくとも一部は、前記印刷軌道に対応する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドは圧力センサを備える、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記圧力センサは、前記ノズルにおける流入インク圧力を感知するために前記ノズルの流入端に接続された流入圧力センサを備える、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記ポンプ装置は、流入
インク圧力で前記ノズルにインクを供給し、pi=(A+K1)*f(θ)+(B+K2)*g(θ)によって形成される流入圧力制御信号によって動作され、ここで、f(θ)およびg(θ)は、前記印刷ヘッドの水平方向に対する角度θに依存する幾何学的因子であり、Aは、印刷面に垂直な方向における前記
流入圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記
流入圧力センサの距離であり、K1,K2は定数である、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記圧力センサは、再循環圧力を測定するために前記印刷ヘッドの流出端に接続された再循環圧力センサを備える、請求項4または5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記ポンプ装置は、再循環圧力で前記印刷ヘッドの出口からインクを除去し、Pr=(A+K3)*f(θ)+(B+K4)*g(θ)+Xによって形成される再循環圧力制御信号Prによって動作され、ここで、f(θ)およびg(θ)は、前記印刷ヘッドの水平方向に対する角度θに依存する幾何学的因子であり、Aは、印刷面に垂直な方向における前記
再循環圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記
再循環圧力センサの距離であり、K3、K4は定数であり、Xは、前記
流入圧力センサによって測定された前記流入
インク圧力と
前記再循環圧力センサによって測定された前記再循環圧力との間の差である、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームを用いて物体を印刷する方法であって、
-前記ロボットアームの印刷端部に支持された印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドは複数のノズルを備え、
-前記ノズル中のインク圧力を感知してインク圧力信号を形成する圧力センサと、
-前記印刷ヘッドの前記ノズルと、リザーバから前記ノズルにインクを供給するためのポンプ装置とに接続されたインクリザーバと、を備え、
前記方法は、
較正ステップを
-前記印刷ヘッドを様々な向きを有する較正軌道に沿って移動させることと、
-前記較正軌道に沿った前記ノズルにおける前記インクの圧力を前記圧力センサで測定することと、
-前記インク圧力信号から圧力制御データを導出し、前記圧力制御データを印刷コントローラのメモリユニット中に記憶することとによって、実行することと、
印刷ステップを
-印刷軌道に沿って前記印刷ヘッドを移動させ、前記ノズル中の前記インクが予め定められたインク圧力になるように、前記メモリユニットから前記圧力制御データを検索し、前記印刷軌道に沿った対応する印刷ヘッドの向きで圧力制御信号を生成することにより前記ポンプ装置を制御することによって、実行することとを備える、方法。
【請求項9】
前記較正軌道は、前記印刷軌道と少なくとも部分的に対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力センサは、前記ノズルにおけるインク圧力を感知するための流入圧力センサを備え、前記ポンプ装置は、流入圧力で前記ノズルにインクを供給し、pi=(A+K1)*f(θ)+(B+K2)*g(θ)によって形成される流入圧力制御信号によって動作され、ここで、Aは、印刷面に垂直な方向における前記
流入圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは前記印刷面の平面における前記
流入圧力センサの距離であり、K1,K2は定数である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力センサは、前記印刷ヘッドの流出端に接続された再循環圧力センサを備え、再循環ポンプ装置は、再循環圧力で前記印刷ヘッドからインクを除去し、
前記方法は、Pr=(A+K3)*f(θ)+(B+K4)*g(θ)+Xによって形成される再循環圧力制御信号Prによって前記再循環ポンプ装置を動作させるステップを含み、ここで、Aは、前記印刷面に垂直な方向における前記
再循環圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記
再循環圧力センサの距離であり、K3、K4は定数であり、Xは、前記流入圧力と前記再循環圧力との間の差である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記印刷される物体は飛行機の一部である、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームと、ロボットアームの印刷端部に支持された印刷ヘッドとを備える印刷装置に関する。
【0002】
本発明はまた、可動ロボットアーム上に支持された印刷ヘッドを用いて物体、特に大型の三次元輪郭物体を印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
US2016/0355026は、航空機の船体または翼に印刷するための大型ロボットシステムを説明している。ロボットアームは、インクジェットプリンタとして構成されてもよい印刷ヘッドを、航空機の複雑な形態にわたって様々な強度の帯状のものを重ね合わせるように移動させる。
【0004】
WO2016/066208には、摺動キャリッジユニット上に位置する可動印刷ヘッドのノズルと流体連通する一次インクタンクを有するインクジェットプリンタが説明されている。一次インクタンクに接続されたポンプは、コントローラによって制御され、一次インクタンクからインク送出回路を介して印刷ヘッドにインクを供給する。横断走査方向に沿ったキャリッジユニットの相対運動と媒体前進方向への印刷媒体の送りとを組み合わせることによって、各印刷ヘッドは印刷媒体上の個々の画素ロケーションにインクを付着させることができる。圧力センサが一次インクタンクに結合され、各タンクの充填レベルを決定する。一次インクタンク中の圧力センサによって観察された圧力パターンが予め定められた閾値を下回るとき、コントローラは、補充のために一次インクタンクに追加のインクを供給するために二次インクタンクを動作させる。
【0005】
既知のインクジェットプリンタは、複雑な3次元印刷面に印刷するように適合されていない。これは、印刷ヘッドの向きを変えながら比較的高い解像度およびスピード(200ドット/インチおよび250mm/s)で印刷する場合に特に当てはまる。このような条件は、印刷条件の正確な制御を必要とする。
【0006】
したがって、本発明の目的は、複雑な三次元印刷面に正確かつ迅速に印刷するのに特に適したインクジェットプリンタおよび印刷方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
これに関して、本発明による印刷装置は、
-可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームと、
-ロボットアームの印刷端部において支持された印刷ヘッドと、印刷ヘッドは複数のノズルを備え、
-印刷ヘッドのノズル、およびリザーバからノズルにインクを供給するためのポンプ装置に接続されたインクリザーバと、
-印刷ヘッドの向きを変更しながら印刷ヘッドを印刷軌道に沿って移動させるためのコントローラとを備え、コントローラは、
較正ステップにおいて、印刷ヘッドを較正軌道に沿って移動させて印刷ヘッド中のインク圧力を測定し、印刷ヘッドの異なる向きに対するノズルのインク圧力制御データを生成して記憶し、
印刷ステップにおいて、印刷軌跡に沿って印刷ヘッドの向きを変化させるために、記憶されたインク圧力制御データに基づいて圧力制御信号を生成するように構成され、圧力制御信号は、ノズル中のインクの圧力が予め定められた圧力値に設定されるようにポンプ装置に供給される。
【0008】
較正ステップでは、印刷テストパターンを適用しながら所定の印刷スピードで較正軌道に沿って様々な向きで移動すると、印刷ヘッド中の圧力が測定される。このようにして、印刷ヘッド圧力が記録され、印刷軌道に沿って遭遇する普通の印刷ヘッドの向きに対して結果的に最適な印刷パターンをもたらす圧力に対して、圧力曲線の式またはルックアップテーブルなどの圧力データが導出される。
【0009】
印刷ヘッドの印刷軌道を画定する印刷面は、例えば、車両の、特に機体または翼部などの飛行機の三次元輪郭面によって形成されてもよい。較正軌道は、印刷軌道とは異なっていてもよく、すべての普通の印刷ヘッドの向きを含んでもよく、または印刷軌道と部分的もしくは全体的に重複もしくは一致してもよい。
【0010】
較正ステップでは、圧力制御曲線のパラメータを、印刷ヘッドの向きを変えるために計算することができる。あるいは、圧力制御値が決定され、コントローラのメモリユニット中に記憶されてもよい。較正軌道は、すべての普通の印刷ヘッドの向きを含むことができ、または印刷軌道に対応することができる。圧力制御データは、使用されるインクのタイプに応じて変化し、インク密度、粘度および他の流動学的特性に依存する。
【0011】
印刷ステップの間、ポンプ装置は、印刷軌道に沿った印刷ヘッドの位置および向きに一致する圧力制御信号に基づいて制御され、それにより、ポンプ装置は、ノズルの流入開口におけるインクが制御された印刷圧力であるような圧力でインクを印刷ヘッドノズルに供給し、この印刷圧力は、実質的に均一な圧力であってもよい。このようにして、1000dpiを超える高い印刷解像度での反復可能で正確な高速印刷プロセス(250mm/s以上)が、複雑な形態に対して達成される。
【0012】
本発明による印刷装置の一実施形態では、印刷ヘッドは、ノズルにおけるインク圧力を感知する圧力センサを備える。
【0013】
印刷ヘッドに一体化された圧力センサを提供することにより、新しい印刷軌道が使用されるとき、またはインクのタイプもしくは印刷スピードのような印刷設定が変更されるときに、較正ステップを容易に実行することができる。大きな印刷面については、印刷ヘッド中の圧力センサは、印刷プロセスの間に較正ステップを実行することを可能にする。圧力センサを印刷ヘッド上に据え付けることによって、印刷圧力に対する印刷ヘッドの速度および加速度の影響がセンサによって測定され、自動的に補正される。
【0014】
圧力センサは、ノズルにおける流入インク圧力を感知するためにノズルの流入端に接続された流入圧力センサを備えることができる。コントローラは、ポンプ装置が流入圧力でノズルにインクを供給し、Pi=(A+K1)*f(θ)+(B+K2)*g(θ)で形成される流入圧力制御信号によって動作されるように構成されてもよく、ここで、f(θ)およびg(θ)は、印刷ヘッドの水平方向に対する角度θに依存する幾何学的因子であり、Aは、印刷面に垂直な方向における圧力センサから印刷面までの距離であり、Bは、印刷面の平面における圧力センサの距離であり、K1およびK2は、使用されるインクおよび流体ホースの特性に基づいて決定される定数である。
【0015】
印刷ヘッドの各ジェットは、インクが大気と接触する開口である。インクの圧力が印刷ヘッド中で高すぎる場合、インクは不足する。逆に、インクの圧力が低すぎる場合、印刷ヘッドはその呼び水(prime)を失い、空気がジェット内に吸引される。重力送りセットアップを使用する印刷システムでは、正圧が重力のみによって生成され、ポンプを使用して真空を引き、印刷ヘッドのジェット中のインク圧力が正確に周囲大気圧になるように制御される。
【0016】
別の実施形態では、圧力センサは、流入側からノズルのアレイの反対側に位置する印刷ヘッド出口に接続された再循環圧力センサを備える。ポンプ装置は、再循環圧力で印刷ヘッドの出口からインクを除去し、Pr=(A+K3)*f(θ)+(B+K4)*g(θ)+Xによって形成される再循環圧力制御信号Prによって動作する。この式において、K3およびK4は定数であり、Xは、圧力センサによって測定された流入圧力と再循環圧力との間の差である。再循環印刷ヘッドの利点は、ノズルを通過するインクの一貫した流れであり、インクは発射後にノズルに再供給される。また、インクの流れが一定であることにより、ノズル中でインクが乾燥して不具合が生じることも防止される。
【0017】
ポンプのスピードは、先に述べたPrの式のような式によって制御され、この式は重力供給インクシステムを仮定しているが、正のインク圧力を機械的に生成するシステム内で適合され、使用されることができる。式は、インクの化学的性質、管材料、および配管経路などのシステム特性と、ポンプに対する印刷ヘッドの動的位置との両方を考慮する。
【0018】
本発明による印刷装置および印刷方法のいくつかの実施形態を、非限定的な例として、添付図面を参照して詳細に説明する。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に従った方法の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の印刷ヘッドおよび圧力制御ユニットの概略レイアウトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、印刷ヘッド3を担持するロボットアーム2を有する本発明による印刷装置1を概略的に示す。印刷ヘッド3は、富士フィルムディマティクスパーツ番号SG1024LA-2Cのタイプのインクジェットプリンタを含んでもよい。ロボットアームは、例えば2018年6月22日に出願された米国特許出願第16/015,240号および第16/015,243号に記載されたタイプの可動支持体4上に配置される。インクは、バルクインクリザーバ10からポンプ9およびインクダクト11を介して印刷ヘッド3に供給される。
【0021】
コントローラ5は、印刷ヘッド中のノズルにおけるインク圧力を測定するために印刷ヘッド3中の圧力センサに接続された印刷制御ライン6を有する。コントローラ5は、印刷ヘッド3へのインク供給を制御するためにポンプ9に接続されたインク供給制御ライン12を有する。インク供給システムのポンプ9は、例えば、英国ノーサンプトンシャーのMegnajet社から入手可能なタイプLC-LFRの低流量再循環供給システムを備えることができる。
【0022】
コントローラ5は、制御ライン7を介してロボットアーム2に接続されており、ロボットアーム2の位置と、輪郭をつけた3次元印刷面8に沿った印刷ヘッド3のスピードおよび向きとを制御する。3次元印刷面8は、例として円として示されているが、実際には航空機の外面などの複雑な形態である。
【0023】
コントローラ5は、ロボットアーム2、印刷ヘッド動作およびインク供給を制御するために、
図2に示されるようなメニスカス圧力制御ユニット21、再循環圧力制御ユニット22および制御モジュール25などのいくつかの専用の空間的に分散された制御ユニットから構成することができる。
【0024】
図2は、メニスカス圧力センサ13に接続された入口12を有するノズルアレイ16を備えた印刷ヘッド3の概略図を示す。ノズルアレイ16の出口14は再循環圧力センサ15に接続されている。アレイ16中のノズルはそれぞれ、ノズルに沿って流れるインク18を小さな液滴の形態でノズルから吐出するための圧電素子17を備える。
【0025】
インクリザーバ19から、インクはメニスカス圧力Piでノズルアレイ16の入口12に流入し、全てのノズルに沿って輸送されて各ノズルをインクで満たす。インクは、充填ポンプ9によってバルクインクリザーバ10からインクリザーバ19に供給される。充填ポンプ9は、メニスカス圧制御ユニット21によって制御される。
【0026】
ノズルアレイ16の出口14において、ノズルの充填アパーチャに沿って流れるインクの再循環圧力は、メニスカス圧力よりも設定圧力差50mbarだけ小さいので、インクは、再循環圧力制御ユニット22を介して出口14からインクリザーバ19に戻るように流れる。再循環圧力制御ユニット22は、以下に説明するように再循環圧力Prで制御される再循環ポンプ23を含む。
【0027】
ノズルアレイ16をその入口12において規定されたメニスカス圧力Piで動作させ、その出口14において規定された再循環圧力Prで動作させるために、充填ポンプ9は、コントローラユニット25中で生成される圧力曲線によって制御される。圧力曲線は、印刷ヘッド3が必要とされるスピードで較正印刷軌道に沿ってロボットアーム2によって移動される較正ステップにおいて、印刷ヘッド3の位置データおよびこれらの位置における支配的な圧力に基づいて生成される。較正ステップの間、業界標準の勾配パターンが印刷され、測定が行われて、メニスカス圧力Piおよび再循環圧力Prが、使用されるすべてのタイプのインクについて、印刷ヘッド3のすべての向きにわたって一貫した印刷グラフィックスのために調整される。
【0028】
較正ステップの結果は、印刷ステップで使用される任意のタイプのインクに対する任意の可能な印刷ヘッドの向きに対するメニスカス圧力Piおよび再循環圧力Prの圧力曲線である。印刷ヘッド3は印刷するときに移動しているので、印刷直前および場合によっては印刷の間に印刷ヘッドによって加速度が感知される。入口圧力Piおよび再循環圧力Prの圧力方程式は、圧力センサのロケーションに起因してこれらの速度および加速度に依存しない。印刷ヘッド3によって加速度が感知される場合、圧力センサはインク中のより高いまたはより低い圧力を検出する。この圧力変化は入口および再循環ポンプにフィードバックされ、入口および再循環ポンプは、命令された圧力PiおよびPrにインクを戻すためにそれらのスピードを変化させる。
【0029】
入口圧力Piおよび再循環圧力Prを制御する曲線は、次式によって定義される:
Pi=(A+K1)*C*D*sin(90°-θ)+(B+K2)*C*D*Cos(90°-θ)
Pr=(A+K3)*C*D**sin(90°-θ)+(B+K4)*C*D*Cos(90°-θ)-X
【0030】
ここで:
A:印刷面8に垂直な方向における、印刷ヘッド3中の圧力センサ13、15から印刷面8までの距離(インチ)
B:印刷面に平行な方向における、印刷ヘッド3中の圧力センサ13、15から印刷面8までの距離(インチ)
C:水のインチからmbarへの変換係数
D:g/cm3におけるインクの濃度
Θ:印刷ヘッド角度
K1,K2,K3,K4:使用される特定のインクおよびインクダクトの特性ごとに設定される定数。
これらの定数は、インク粘度の差、インクダクト中の曲げによる圧力損失、およびダクト中の摩擦による圧力損失を説明する。
X:入口圧力Piと再循環圧力Prとの間の設定差(mbar)。
【0031】
PiおよびPrの値は、真空値、すなわち周囲大気圧未満の大きさを表す正の数である。値AおよびBをもたらす印刷ヘッドの向きは、ロボットアーム2の位置を読み取り、そこから印刷面8の向きを導出することによって、コントローラ5において計算することができる。印刷ヘッド3の向きは、印刷ヘッド3上の慣性計測装置(IMU)または印刷面8の近くに据え付けられた他のセンサからの重力ベクトルをコントローラ5に直接読み込むことによって導出することもできる。印刷ヘッド角度Θの測定レート、したがって計算された圧力設定点値PiおよびPrの更新の測定レートは、少なくとも20kHzに等しいことが好ましい。
【0032】
圧力曲線PiおよびPrの例は以下の通りである:
- A=3.00インチ(7.62センチメートル)
- B=2.25インチ(5.715センチメートル)
- C=0.402mbar/インチ‐水
- D=0.800g/cm3
- Θ=80.0度(すなわち、印刷ヘッドは壁に向かって印刷するが、床に向かってわずかに下向きである)
- K1 = 0.250 inch(0.635センチメートル)
- K2 = -0.250 inch(-0.635センチメートル)
- K3 = -0.500 inch(-1.27センチメートル)
- K4 = 0.500 inch(-1.27センチメートル)
- X=50mbar
Pi=(3.00+0.250)*0.402*0.800*sin(90°-80.0°)+(2.25+-0.250)*0.402*0.800*cos(90°-80.0°)=5.04mbar
Pr=(3.00+-0.500)*0.402*0.800*sin(90°-80.0°)+(2.25+0.500)*0.402*0.800*cos(90°-80.0°)-50=50.3mbar
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 印刷装置において、
-可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームと、
-前記ロボットアームの印刷端部において支持された印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドは複数のノズルを備え、
-前記印刷ヘッドの前記ノズル、およびリザーバから前記ノズルにインクを供給するためのポンプ装置に接続されたインクリザーバと、
-前記印刷ヘッドの向きを変更しながら前記印刷ヘッドを印刷軌道に沿って移動させるためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、
較正ステップにおいて、前記印刷ヘッドを較正軌道に沿って移動させて前記印刷ヘッド中のインク圧力を測定し、前記印刷ヘッドの異なる向きに対する前記ノズルのインク圧力制御データを生成して記憶し、
印刷ステップにおいて、印刷軌跡に沿って前記印刷ヘッドの向きを変化させるために、前記記憶されたインク圧力制御データに基づいて圧力制御信号を生成するように構成され、前記圧力制御信号は、前記ノズル中の前記インクの圧力が予め定められた圧力値に設定されるように前記ポンプ装置に供給される、印刷装置。
[2] 前記較正軌道の少なくとも一部は、前記印刷軌道に対応する、[1]に記載の印刷装置。
[3] 前記印刷ヘッドは圧力センサを備える、[1]または[2]に記載の印刷装置。
[4] 前記圧力センサは、前記ノズルにおける流入インク圧力を感知するために前記ノズルの流入端に接続された流入圧力センサを備える、[3]に記載の印刷装置。
[5] 前記ポンプ装置は、流入圧力で前記ノズルにインクを供給し、pi=(A+K1)*f(θ)+(B+K2)*g(θ)によって形成される流入圧力制御信号によって動作され、ここで、f(θ)およびg(θ)は、前記印刷ヘッドの水平方向に対する角度θに依存する幾何学的因子であり、Aは、印刷面に垂直な方向における前記圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記圧力センサの距離であり、K1,K2は定数である、[4]に記載の印刷装置。
[6] 前記圧力センサは、再循環圧力を測定するために前記印刷ヘッドの流出端に接続された再循環圧力センサを備える、[4]または[5]に記載の印刷装置。
[7] 前記ポンプ装置は、再循環圧力で前記印刷ヘッドの出口からインクを除去し、Pr=(A+K3)*f(θ)+(B+K4)*g(θ)+Xによって形成される再循環圧力制御信号Prによって動作され、ここで、f(θ)およびg(θ)は、前記印刷ヘッドの水平方向に対する角度θに依存する幾何学的因子であり、Aは、印刷面に垂直な方向における前記圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記圧力センサの距離であり、K3、K4は定数であり、Xは、前記圧力センサによって測定された前記流入圧力と前記再循環圧力との間の差である、[6]に記載の印刷装置。
[8] 可動支持体上に据え付けられた可動ロボットアームを用いて物体を印刷する方法であって、
-前記ロボットアームの印刷端部に支持された印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドは複数のノズルを備え、
-前記ノズル中のインク圧力を感知してインク圧力信号を形成する圧力センサと、
-前記印刷ヘッドの前記ノズルと、リザーバから前記ノズルにインクを供給するためのポンプ装置とに接続されたインクリザーバと、を備え、
前記方法は、
較正ステップを
-前記印刷ヘッドを様々な向きを有する較正軌道に沿って移動させることと、
-前記較正軌道に沿った前記ノズルにおける前記インクの圧力を前記圧力センサで測定することと、
-前記インク圧力信号から圧力制御データを導出し、前記圧力制御データを印刷コントローラのメモリユニット中に記憶することとによって、実行することと、
印刷ステップを
-印刷軌道に沿って前記印刷ヘッドを移動させ、前記ノズル中の前記インクが予め定められたインク圧力になるように、前記メモリユニットから前記圧力制御データを検索し、前記印刷軌道に沿った対応する印刷ヘッドの向きで圧力制御信号を生成することにより前記ポンプ装置を制御することによって、実行することとを備える、方法。
[9] 前記較正軌道は、前記印刷軌道と少なくとも部分的に対応する、[8]に記載の方法。
[10] 前記圧力センサは、前記ノズルにおけるインク圧力を感知するための流入圧力センサを備え、前記ポンプ装置は、流入圧力で前記ノズルにインクを供給し、pi=(A+K1)*f(θ)+(B+K2)*g(θ)によって形成される流入圧力制御信号によって動作され、ここで、Aは、印刷面に垂直な方向における前記圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは前記印刷面の平面における前記圧力センサの距離であり、K1,K2は定数である、[8]または[9]に記載の方法。
[11] 前記圧力センサは、前記印刷ヘッドの流出端に接続された再循環圧力センサを備え、再循環ポンプ装置は、再循環圧力で前記印刷ヘッドからインクを除去し、
前記方法は、Pr=(A+K3)*f(θ)+(B+K4)*g(θ)+Xによって形成される再循環圧力制御信号Prによって前記再循環ポンプ装置を動作させるステップを含み、ここで、Aは、前記印刷面に垂直な方向における前記圧力センサから前記印刷面までの距離であり、Bは、前記印刷面の平面における前記圧力センサの距離であり、K3、K4は定数であり、Xは、前記流入圧力と前記再循環圧力との間の差である、[10]に記載の方法。
[12] 前記印刷される物体は飛行機の一部である、[8]から[11]のいずれか一項に記載の方法。