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▶ スウェイ モータースポーツ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】傾斜三輪車
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/08 20060101AFI20240520BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20240520BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/05
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021549457
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020019556
(87)【国際公開番号】W WO2020172685
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】62/809,482
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/812,918
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520168228
【氏名又は名称】スウェイ モータースポーツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドークセン,カイル ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,ジョセフ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180754(WO,A1)
【文献】特開2006-048614(JP,A)
【文献】特開平09-207862(JP,A)
【文献】特開2013-107581(JP,A)
【文献】特開2009-083652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/08
B62K 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換可能な傾斜車両であって、
第1機械リンクによって傾斜可能シャシに結合された1対の前輪であって、前記1対の前輪および前記シャシは、前記シャシのロール軸に対して同時に傾斜するように構成される、1対の前輪と、
前記シャシに結合された単一の後輪と、
前記後輪に結合され、前記後輪を駆動して前記車両を推進するように構成されたモータと、
前記シャシに動作可能に結合され、前記シャシを選択的に傾斜させるように構成された傾斜アクチュエータと、
前記シャシに加えられた合力ベクトルを前記シャシの正中面と一直線に自動的に維持するために、前記傾斜アクチュエータを選択的に制御するように構成された処理論理を含む制御器であって、前記合力ベクトルは、前記シャシに加えられた任意の適用可能な遠心力と組み合わせた重力によって決定される、制御器と、
ライダー支持台であって、
(a)前記ライダー支持台が、その上にライダーを支持し、ライダー入力に応答して前記車両を操向するように構成される、第1モードと、
(b)前記ライダー支持台の一部が、ライダーが使用不可能な位置に枢動可能に変位し、前記車両が、前記制御器によって操向され、前記ライダーが使用不可能な位置においては、前記ライダーは前記ライダー支持台に乗れない、第2モードと、
の間を枢動可能に移行可能な、ライダー支持台と、
を備える、車両。
【請求項2】
前記シャシを直立姿勢に選択的に留めるように構成されたチルトロック機構をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両は、前記ライダー支持台が枢動して前記第2モードにる場合、前記チルトロック機構を自動的に係合するように構成される、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記チルトロック機構は、枢動可能ブラケットであって、前記ライダー支持台の一部が変位した場合に前記ブラケットを傾斜ロック配向に枢動させるように構成された第2機械リンクによって、前記ライダー支持台の一部に結合された、枢動可能ブラケットを備える、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記ライダー支持台の一部は、ピッチ軸の周りに選択的に枢動するように構成されたハンドルバーアセンブリを備える、請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記ライダー支持台の一部は、ピッチ軸の周りに選択的に枢動するように構成された枢動可能シートを備える、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
操向リンクによって前記1対の前輪に動作可能に結合され、前記前輪を選択的に操向するように構成された操向アクチュエータ
をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項8】
前記操向アクチュエータは、前記ライダー支持台のハンドルバーに結合される、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記シャシに結合された荷室をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項10】
前記第1機械リンクは、前記傾斜アクチュエータに結合された4節リンクを備える、請求項1に記載の車両。
【請求項11】
三輪車であって、
傾斜リンクによって傾斜可能シャシに結合された1対の前輪であって、その結果、前記1対の前輪および前記シャシは、前記シャシのロール軸に対して同時に傾斜するように構成される、1対の前輪と、
前記シャシに結合された単一の後輪であって、前記後輪は、前記後輪を駆動して前記車両を推進するように構成されたハブモータを備える、後輪と、
前記シャシに加えられた合力ベクトルに関する方向情報を検出するように構成された姿勢センサと、
前記シャシに動作可能に結合され、前記シャシを選択的に傾斜させるように構成された傾斜アクチュエータと、
前記合力ベクトルを前記シャシの正中面と一直線に自動的に維持するために、前記姿勢センサからの方向情報に基づいて、前記傾斜アクチュエータを選択的に制御するように構成された処理論理を含む制御器と、
ハンドルバーアセンブリおよびシートを有するライダー支持台であって、前記ライダー支持台は、
(a)前記ライダー支持台が、その上にライダーを支持し、ライダー入力に応答して前記車両を操向するように構成される、第1モードと、
(b)ライダーが前記ライダー支持台に乗れないように、前記ハンドルバーアセンブリが前記シートに向かって後方に枢動し、前記車両が、前記制御器によって自動的に操向される、第2モードと、
の間を枢動可能に移行するように構成される、ライダー支持台と、
を含む、車両
【請求項12】
前記シャシを直立姿勢に選択的に留めるように構成されたチルトロック機構をさらに備える、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記車両は、前記ライダー支持台が枢動して前記第2モードにる場合、前記チルトロック機構を自動的に係合するように構成される、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記チルトロック機構は、枢動可能ブラケットであって、前記ハンドルバーアセンブリが後方に枢動した場合に前記ブラケットを傾斜ロック配向に枢動させるように構成された機械リンクによって、前記ハンドルバーアセンブリに結合された、枢動可能ブラケットを備える、請求項13に記載の車両。
【請求項15】
操向リンクによって前記1対の前輪に動作可能に結合され、前記前輪を選択的に操向するように構成された操向アクチュエータ
をさらに備える、請求項11に記載の車両。
【請求項16】
前記操向アクチュエータは、前記ハンドルバーアセンブリに結合される、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記シャシに結合された荷室をさらに備える、請求項11に記載の車両。
【請求項18】
前記傾斜リンクは、前記傾斜アクチュエータに結合された4節リンクを備える、請求項11に記載の車両。
【請求項19】
前記制御器は、無線受信機に結合され、前記第2モードでは、前記制御器は、遠隔制御入力を受信するように構成される、請求項11に記載の車両。
【請求項20】
前記シャシの外側ハウジング内に据え付けられた少なくとも1つのバッテリであって、前記少なくとも1つのバッテリは、前記傾斜アクチュエータに電気的に結合される、バッテリ
をさらに備える、請求項11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、合衆国法典第35編第119条(e)の下で、2019年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/809,482号、および2019年3月1日に出願された米国仮特許出願第62/812,918号の優先権の利益を主張し、両出願は、その全体にわたってあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、傾斜可能三輪車に関するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
三輪車は、典型的には、四輪車に対するいくつかの利点を有する。例えば、すべての環境下で、3つの接点は平面を形成し、一方、4つの接点はそうではないため、たいていの環境下で、三輪車は、本質的に、四輪車より安定である。別の利点は、三輪車は、加速および制動の両方の状況で、最大タイヤトラクションでほとんど理想的な輪荷重配分を与えることである。これらの利点はとりわけ、三輪車を、個人のレクリエーション用車両、ライドシェアリング車両、およびロボット配送車両を含む様々な用途の有望な候補にする。しかしながら、これらの分野での三輪車の潜在能力は、ほとんど発揮されていないままである。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、傾斜可能三輪車に関するシステム、機器、および方法を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、変換可能な傾斜車両は、第1機械リンクによって傾斜可能シャシに結合された1対の前輪であって、1対の前輪およびシャシは、シャシのロール軸に対して同時に傾斜するように構成される、1対の前輪と、シャシに結合された単一の後輪と、後輪に結合され、後輪を駆動して車両を推進するように構成されたモータと、シャシに動作可能に結合され、シャシを選択的に傾斜させるように構成された傾斜アクチュエータと、シャシに加えられた合力ベクトルをシャシの正中面と一直線に自動的に維持するために、傾斜アクチュエータを選択的に制御するように構成された処理論理を含む制御器であって、合力ベクトルは、シャシに加えられた任意の適用可能な遠心力と組み合わせた重力によって決定される、制御器と、ライダー支持台であって、(a)ライダー支持台が、その上にライダーを支持し、ライダー入力に応答して車両を操向するように構成される、第1モードと、(b)ライダー支持台の一部が、ライダーが使用不可能な位置に変位し、車両が、制御器によって操向される、第2モードとの間を移行可能な、ライダー支持台とを含んでよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、三輪車は、傾斜リンクによって傾斜可能シャシに結合された1対の前輪であって、その結果、1対の前輪およびシャシは、シャシのロール軸に対して同時に傾斜するように構成される、1対の前輪と、シャシに結合された単一の後輪であって、当該後輪は、後輪を駆動して車両を推進するように構成されたハブモータを備える、後輪と、シャシに加えられた合力ベクトルに関する方向情報を検出するように構成された姿勢センサと、シャシに動作可能に結合され、シャシを選択的に傾斜させるように構成された傾斜アクチュエータと、合力ベクトルをシャシの正中面と一直線に自動的に維持するために、姿勢センサからの方向情報に基づいて、傾斜アクチュエータを選択的に制御するように構成された処理論理を含む制御器と、ハンドルバーアセンブリおよびシートを有するライダー支持台であって、ライダー支持台は、(a)ライダー支持台が、その上にライダーを支持し、ライダー入力に応答して車両を操向するように構成される、第1モードと、(b)ライダーが車両に乗れないように、ハンドルバーアセンブリがシートに向かって後方に枢動し、車両が、制御器によって自動的に操向される、第2モードとの間を移行するように構成される、ライダー支持台とを含んでよい。
【0007】
特徴、機能、および利点は、本開示の様々な実施形態において独立して達成され得るか、またはさらに他の実施形態と組み合わされ得、そのさらなる詳細は、以下の説明および図面を参照して理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本教示の態様に従う、例示的な傾斜車両の概略図である。
図2】本教示の態様に従う、例示的な傾斜リンクの正面図である。
図3】本教示の態様に従う、別の例示的な傾斜リンクの正面図である。
図4】本教示の態様に従う、ショックアブソーバを含む例示的な傾斜リンクの正面図である。
図5】本教示の態様に従う、ショックアブソーバを含む別の例示的な傾斜リンクの正面図である。
図6】本教示の態様に従う、例示的な操向リンクの等角図である。
図7】本教示の態様に従う、別の例示的な操向リンクの等角図である。
図8】直立構成の車両を示す、本教示の態様に従う例示的な変形可能傾斜車両の等角図である。
図9】傾斜構成の車両を示す、図9の車両の別の等角図である。
図10】車両の一部を透過で示し、直立した、有人モードの車両を示す、図9の車両の別の等角図である。
図11】傾斜をロックされた、自律モードの車両を示す、図9の車両の別の部分透過等角図である。
図12図9の変形車両の例示的なカムオーバー機構の側面図である。
図13図12のカムオーバー機構の別の側面図である。
図14】本教示の態様に従う、例示的なチルトロック装置の等角図である。
図15図14のチルトロック装置の別の等角図である。
図16】本教示の態様に従う、例示的なサーボ作動チルトロック装置を有する車両の等角図である。
図17】ロック解除された機構を示す、本教示の態様に従う、1対の入れ子プレートを備えるチルトロック装置を有する例示的な車両の部分等角図である。
図18】ロックされたチルトロック装置を示す、図17の車両の別の部分等角図である。
図19】ロックされた機構を示す、本教示の態様に従う、枢動可能逆ブラケットを備えるチルトロック装置を有する例示的な車両の部分等角図である。
図20】ロック解除されたチルトロック装置を示す、図19の車両の別の部分等角図である。
図21】本教示の態様に従う、刻み付きキャリパおよび刻み付きディスクを備える例示的なチルトロック装置の部分等角図である。
図22】ロック解除された装置および傾斜した傾斜リンクを示す、本教示の態様に従う、ピンおよび溝付きディスクを備える例示的なチルトロック装置の正面図である。
図23】直立した傾斜リンクおよび依然としてロック解除された装置を示す、図22の装置の別の正面図である。
図24】ロックされた装置を示す、図22の装置のさらに別の正面図である。
図25】本教示の態様に従う、チルトロックブラケットに動作可能に結合された例示的なパーキングブレーキの部分等角図である。
図26】本教示の態様に従う、スタンドに動作可能に結合された例示的な前輪および後輪パーキングブレーキの部分等角図である。
図27】本教示の態様に従う、例示的な内部バッテリモジュールおよび外部バッテリモジュールを有する車両の部分透過側面図である。
図28】本教示の態様に従う、例示的な車載コンピュータおよび例示的な無線充電コイルを有する車両の等角図である。
図29】本教示の態様に従う、車両のペダルをこぐことを可能とする例示的なチェーン駆動クランクドライブを有する車両の等角図である。
図30】本教示の態様に従う、直接的な傾斜の足踏み作動を有する例示的な車両の等角図である。
図31】本教示の態様に従う、例示的なロック可能バスケットを有する車両の等角図である。
図32】示されるように、ステアリングコラムを後ろに傾斜させると、車両のシートを遮るように構成された例示的なウインドスクリーンを有する変形車両の側面図である。
図33】直立位置にあるステアリングコラムを示し、その結果、車両はライダーを乗せるように構成される、図32の車両の別の側面図である。
図34】傾斜していない位置にある車両を示す、本教示の態様に従う、傾斜補償マウントによって車両シャシに取り付けられたセンサモジュール(例えば、LIDARセンサ)を有する例示的な車両の正面図である。
図35】傾斜補償マウントによってセンサモジュールが直立位置に向けられた、傾斜位置にある車両を示す、図34の車両の別の正面図である。
図36】本教示の態様に従う、車両共有のための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図37】本教示の態様に従う、変形可能傾斜車両を使用するための例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図38】本教示の態様に従う、例示的なデータ処理システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
傾斜三輪車の様々な態様および例ならびに関連する方法が、以下に記載され、関連図面に示される。特に指定がない限り、本教示に従う傾斜三輪車、および/またはその様々な構成要素は、本明細書に記載され、説明され、および/または組み込まれた構造、構成要素、機能性、および/または変形形態の少なくとも1つを含み得る。さらに、具体的に除外されない限り、本教示に関連して本明細書に記載され、説明され、および/または組み込まれたプロセスステップ、構造、構成要素、機能性、および/または変形形態は、他の類似の装置および方法に含まれ得、開示された実施形態間で交換可能であることを含む。以下の様々な例の説明は、本質的に単に例示的なものであり、開示、その用途、または使用を限定することを意図するものではない。加えて、以下に記載される例および実施形態によって提供される利点は本質的に例示的なものであり、すべての例および実施形態が、同じ利点または同程度の利点を提供するわけではない。
【0010】
この発明を実施するための形態には、以下の節:(1)定義、(2)概要、(3)例、構成要素、および代替物、(4)利点、特徴、および利益、ならびに(5)結論が含まれ、すぐ下に続く。例、構成要素、および代替物の節は、小節A~Iにさらに分割され、各々それに従って表示されている。
【0011】
定義
特に指示がない限り、以下の定義が本明細書に適用される。
【0012】
「備える」、「含む」、および「有する」(およびそれらの活用形)は、含むが必ずしも限定するわけではないことを意味するのに交換可能に使用され、追加の、列挙されていない要素または方法ステップの除外を意図しないオープンエンド用語である。
【0013】
「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、群等の様々な部材を区別または識別するのに使用され、連続性または数値の限定を示すことを意図しない。
【0014】
「AKA」は、「別名」を意味し、所与の単数または複数の要素について代替用語または対応する用語を指示するのに使用されてよい。
【0015】
「細長い」または「細長くされた」は、幅は均一である必要はないが、それ自体の幅より大きい長さを有する物体または開口を指す。例えば、細長い溝は、楕円形またはスタジアム形であり得、細長い燭台は、そのテーパ状の直径より大きい高さを有し得る。否定の例としては、円形開口は、細長い開口とは見なされないことになる。
【0016】
「内部」、「外部」、「前方」、「後方」等の用語は、本明細に記載されるシステムが据え付けられるか、またはその他の方法で取り付けられてよいホスト車両の文脈で理解されることを意図する。例えば、「外部」は、車両の中心線から横方向により遠い相対位置、または車両中心線から離れる方向を指示してよい。反対に、「内部」は、中心線に向かう方向、または中心線により近い相対位置を指示してよい。同様に、「前方」は、車両の前部の方向を意味し、「後方」は、車両の後部の方向を意味する。ホスト車両がない場合、同じ方向用語は、車両が存在するかのように使用されてよい。例えば、分離して見た場合でも、問題の縁部がホスト車両の前部の方向を向いた状態で装置が取り付けられるであろうという事実に基づいて、装置は「前方」縁部を有してよい。
【0017】
「結合される」は、直接的かまたは介在する構成要素を通して間接的かにかかわらず、永久にまたは解放可能に接続されることを意味する。
【0018】
「弾力のある」は、通常の動作負荷(例えば、圧縮時)に弾性変形し、負荷を除くと元の形状または位置に戻ることによって応答するように構成された材料または構造を表す。
【0019】
「強固な」は、通常の動作条件下で、固く、変形しない、または実質的に柔軟性を欠くように構成された材料または構造を表す。
【0020】
「弾性」は、伸長または拡張された後に、その以前の形状を自発的に回復するように構成された材料または構造を表す。
【0021】
「処理論理」は、1つ以上の論理および/または算術演算を行う(例えば、コード化された命令を実行する)ことによってデータを処理するように構成された任意の好適な装置(単数または複数)またはハードウェアを表す。例えば、処理論理は、1つ以上のプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU)および/もしくはグラフィック処理装置(GPU))、マイクロプロセッサ、処理コアのクラスタ、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、人工知能(AI)加速装置、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ならびに/または任意の他の好適な論理ハードウェアの組み合わせを含んでよい。
【0022】
「制御器」または「電子制御器」は、制御要素に対する制御機能を行う命令をプログラムされた処理論理を含む。例えば、電子制御器は、入力信号を受信し、入力信号を選択された制御値または設定値と比較し、比較に基づいて補正動作を提供する、制御要素(例えば、モータもしくはアクチュエータ)への出力信号を決定するように構成されてよい。別の例では、電子制御器は、ホスト装置(例えば、デスクトップコンピュータ、メインフレーム等)と周辺装置(例えば、記憶装置、入力/出力装置等)との間をインターフェース接続して、周辺装置に出入りする入力および出力信号を制御および/または監視するように構成されてよい。
【0023】
「上」、「下」、「垂直」、「水平」等の方向用語は、問題の特定の物体の文脈で理解されるべきである。例えば、物体は、規定されたX、Y、およびZ軸の周りに向けられてよい。それらの例では、X-Y平面は水平面を規定し、上は正のZ方向と規定され、下は負のZ方向と規定される。
【0024】
「提供すること」は、方法の文脈では、提供された物体または材料が、行われる他のステップのための状態および構成になるように、受け取ること、得ること、取得すること、製造すること、発生させること、処理すること、前処理すること等を含んでよい。
【0025】
本開示では、1つ以上の刊行物、特許、および/または特許出願が参照により組み込まれ得る。しかしながら、そのような資料は、組み込まれた資料と本明細書に示された記述および図面との間に矛盾が存在しない限りにおいてのみ組み込まれる。用語の矛盾を含め、そのような矛盾がある場合、本開示が優先される。
【0026】
概要
概して、本教示の乗車可能車両は、少なくとも1対の傾斜可能車輪、ならびに車両シャシの正中面を重力および遠心力(もしあれば)から生じる合力ベクトルと一直線に維持しながら、車両のシャシを自動的に傾斜させ、場合によっては、能動的に車両の車輪を操向して車両を選択された経路に導くように構成された処理論理を有する制御システムを含み得る。いくつかの例では、そのような傾斜は、ハンドルバーを介して、またはヒューマンマシンインターフェース(HMI)を介した制御入力を使用して、運転者、例えばライダーの体の動きによって、代替制御または追加制御される。
【0027】
以下に記載される説明のための例では、車両は、車両の第1端部で連結された1対の車輪、および車両の反対側の端部の第3車輪を含む、3つの車輪を含む。しかしながら、任意の好適な数および配置の車輪が使用されてよい。車両の推進システムは、任意の好適な車輪(単数または複数)に結合されて車両を前方および/または後方に駆動してよい。例えば、場合によっては、車両は、前端で連結された1対の車輪、後端の単一の車輪、および後輪を駆動するように構成されたモータ(例えば、ハブモータ)を有する。
【0028】
車両は、シャシおよび車輪の、協調した、実質的に同一の傾斜をもたらすように構成された任意の好適な設計のものであってよい。例えば、車両の操向または懸架システムは、左輪および右輪を中央シャシに結合する4節平行四辺形リンクを備えてよい。この種類の車両の例は、以下に記載される。場合によっては、車両は、選択的に、ロボット、半自律、またはフライバイワイヤ車両を備えてよい。場合によっては、車両は、部分または完全手動モードと自律または半自律モードとの間で変形するように構成される。
【0029】
車両の制御システムは、車両シャシの正中面を重力および遠心力(もしあれば)から生じる合力ベクトルと一直線に維持しながら、車両のシャシを自動的に傾斜させ、場合によっては、能動的に車両の車輪を操向して車両を選択された経路に導くように構成された処理論理を含んでよい。車両は、シャシおよび車輪の、協調した、類似または実質的に同一の傾斜をもたらすように構成された任意の好適な設計のものであってよい。例えば、車両は、左輪および右輪を中央シャシに結合する4節平行四辺形リンクを備えてよい。
【0030】
電気機械的に制御可能な車両の変数としては、車輪リンクに対するシャシ傾斜、車輪の操向、スロットルまたは車速、および制動が挙げられ得る。概して、車両の制御システムは、旋回時に遠心力および重力の平衡を保ち、その結果、遠心力および重力の合成ベクトルが、シャシおよび車輪正中面に平行な合力ベクトルを作り出すように構成され得る。合成した力をシャシに平行に向けることによって、車両懸架構成要素(および該当する場合はライダー)にかかる応力が低減され、横転リスクが減少し、旋回時のトラクションが改善または最大化される。
【0031】
シャシの理想的なリーン位置は、所望の性能を作り出す、アクチュエータおよび制御ソフトウェアの組み合わせを通して達成される。いくつかの例では、傾斜角および操向角は、所与の旋回について個別に制御される。いくつかの例では、操向は、運転者によって制御され、傾斜は、車両の電子制御器によって自動的に制御される。概して、傾斜対操向比は、速度および地形に応じて制御され、より高い速度は、車両シャシのより大きなリーン、より少ない車輪操向をもたらす。シャシが経験する傾斜は、路面の角度と車輪リンク関節の角度を加えた合計である。表面のレベル(または補正すべきシャシ傾斜変位)の検出は、場合によっては、路面付近の好適なセンサを使用して行われ得る。しかしながら、シャシの絶対傾斜角を、重力および任意の遠心力によって引き起こされた合力ベクトルとの関係を測定することによって決定および維持することが、より効果的であり得る。
【0032】
場合によっては、不均一または斜めになった地形上で、所与の回転ベクトルで車輪の側面に沿って追跡すると、いくつかの車輪の冠着形状はスクラブを生じ得るため、冠着されたタイヤと地形との相互作用が説明されなければならない。三輪車を傾斜させるためには、地形に応じて、旋回中にオーバーステアまたはアンダーステアを生じる冠着車輪の自然な効果に対抗するために、アンダーステアまたはオーバーステアが必要であり得る。一般的に言えば、このタイヤスクラブは、車両の所望の経路の喪失よりも好ましい。
【0033】
本開示の方法およびシステムは、例えば、装輪車を使用した、ある場所から別の場所への物品、物体、製品、人、または品物の配送を提供してよい。制御方法は、部分的にまたは全体的に、コンピュータ実装されてよい。上記のように、装輪車は、随意に、遠隔制御されてよく、半自律制御であってよく、または自律制御との組み合わせであってよい。車両は、随意に、複数の装輪車の1つ、例えば、複数の同一の装輪車の1つであってよい。いくつかの例では、車両は、車両共有サービスの車両の集団の1つである。車両共有サービスは、ライドシェアリングサービスとも呼ばれ、一般に、自転車、スクータ、モペット、自動車、および/または任意の他の好適な車両を利用し得る。サービスの車両は、同一であっても同一でなくてもよい。
【0034】
本開示の方法およびシステムは、随意に、屋内または屋外陸上輸送ネットワークで使用されてよく、これには道路、自転車道、歩道、路地、通路、横断歩道、装輪車が走行してよい任意の経路、または前述の任意の組み合わせが含まれてよい。追加として、または代替として、本開示の車両は、道路(例えば、車線および/もしくは自転車レーン)、自転車道、歩道、路地、通路、横断歩道、ならびに/または前述の任意の組み合わせでの使用に適していてよい。車両は、舗装された地形および/または舗装されていない地形(例えば、土、砂利、草地等)での使用に適していてよい。
【0035】
いくつかの例では、車両が直立した、傾斜していない位置に固定されることを可能とするチルトロックシステムが提供される。いくつかの例では、システムは、シャシを直立姿勢に選択的に留めるように構成されたチルトロック機構(例えば、枢動可能ブラケット)を含む。チルトロックシステムは、スタンド、パーキングブレーキ、チルトロックブラケット、および/または任意の他の好適な装置を含んでよい。チルトロックシステムの構成要素は、電子的および/または機械的に実装されてよい。いくつかの例では、チルトロックシステムの態様は、車両と通信するデータ処理システム(例えば、好適なアプリケーションを実行するスマートフォン)によって制御可能であってよい。チルトロックシステムは、車両の(例えば自律的な)低速駆動および/または駐車を容易にし得る。
【0036】
いくつかの例では、車両は、感知された車両情報(例えば、車両の場所、タイヤ圧、バッテリ残量、および/または任意の他の好適な情報)を、遠隔コンピュータシステム(例えば、車両に搭載されていないコンピュータ)などの別の装置に伝送するように構成された通信システムなどの、フリート管理機能を備える。これは、車両の簡便な監視およびメンテナンスを可能とし得る。いくつかの例では、車両は、車両情報を中央フリート管理コンピュータに伝送するように各々構成された車両の集団の1つである。
【0037】
いくつかの例では、車両は、そこから車両を借り、そこに車両を返却する所定のドッキングステーションと関連してよい。代替として、または追加として、車両は、ユーザによって任意の場所、例えば、歩道、公園、バイクラック、建物のロビー等に乗り捨てられかつ拾われるドックレス車両であってよい。現在使用されていない(例えば、ユーザによって乗り捨てられた)車両は、次のユーザに必要とされるまで、安全に適所にとどまることができるべきである。例えば、車両は、車両および/または通行人を危険にさらし得る、容易に転がって行くことまたは倒れることのないように構成されるべきである。しかしながら、車両はまた、次のユーザによってすぐに使用可能であるべきであり、すなわち、車両を乗車可能な状態にするために、あまり多くない作業が次のユーザに求められるべきである。本開示のシステムおよび方法は、例えば、使用していない時(例えば、2人のユーザの車両共有セッション間、またはユーザがそのセッション中に車両を駐車した時)に、車両共有システムの車両を安全かつ安定な状態で駐車することを可能とし得る。例えば、車両の駐車システムは、第1ユーザが、第2ユーザを数分、数時間、および/または数日待つのに適した安定な条件で車両を置いていくことを可能とし得る。
【0038】
車両の制御システム(単数または複数)は、安定した方法で所望の経路に沿って車両を自動的に走行させるように、推進システム、傾斜システム、および/または操向システムを制御するための任意の好適な処理論理を含んでよい。例えば、車両リーンと車両操向との間の任意の好適な関係(単数または複数)を含む、任意の好適な制御方法が使用されてよい。制御システムは、例えば、車両の内容物の自動荷降ろし、車両レンタルおよび/またはライドシェアリングシステムの態様の実装などの、さらなる車両機能を可能とするようにさらに構成されてよい。
【0039】
傾斜可能三輪車の態様は、コンピュータ方法、コンピュータシステム、またはコンピュータプログラム製品として具現化されてよい。したがって、車両の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、またはソフトウェアおよびハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形態を取ってよく、それらのすべては、本明細書では概して「回路」、「モジュール」、または「システム」と呼ばれてよい。さらに、車両の態様は、そこに具現化されたコンピュータ可読プログラムコード/命令を有する単数または複数のコンピュータ可読媒体中に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ってよい。
【0040】
コンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体および/またはコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体としては、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、および/もしくは半導体システム、機器、もしくは装置、またはこれらの任意の好適な組み合わせが挙げられ得る。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、以下が挙げられ得る:1つ以上のワイヤを有する電気的接続、携帯用コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROMもしくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯用読み取り専用コンパクトディスク(CD-ROM)、光学記憶装置、磁気記憶装置、および/またはこれら等の任意の好適な組み合わせ。本開示の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、機器、もしくは装置による使用、またはこれらに関連した使用のためのプログラムを含むかまたは格納し得る、任意の好適な非一時的有形媒体を含んでよい。
【0041】
コンピュータ可読信号媒体は、その中に具現化されたコンピュータ可読プログラムコードを有する、例えば、ベースバンドで、または搬送波の一部として、伝播されたデータ信号を含んでよい。そのような伝播信号は、電磁、光学、および/またはそれらの任意の好適な組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない様々な形態のいずれかを取ってよい。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、機器、もしくは装置によって、またはこれらに関連して使用するためのプログラムを通信、伝播、または輸送できる任意のコンピュータ可読媒体を含んでよい。
【0042】
コンピュータ可読媒体に具現化されたプログラムコードは、任意の適切な媒体を使用して伝送されてよく、無線、有線、光ファイバケーブル、RF等、および/またはこれらの任意の好適な組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書に記載された車両の態様の演算を行うためのコンピュータプログラムコードは、プログラミング言語の1つまたは任意の組み合わせで書かれてよく、オブジェクト指向プログラミング言語(Java、C++など)、従来の手続き型プログラミング言語(Cなど)、および関数型プログラミング言語(Haskellなど)が挙げられる。前述のもの、およびObjective-C、Swift、C#、HTML5等を含む任意の好適な言語を使用して、モバイルアプリが開発されてよい。プログラムコードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上および部分的に遠隔コンピュータ上で、または完全に遠隔コンピュータもしくはサーバ上で、実行可能であってよい。後者のシナリオでは、遠隔コンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)もしくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通してユーザのコンピュータに接続されてよく、および/または(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通して)外部コンピュータへの接続が作られてよい。
【0044】
車両の態様は、方法、機器、システム、および/またはコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して、以下に説明され得る。フローチャートおよび/またはブロック図中の各ブロックおよび/またはブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装されてよい。コンピュータプログラム命令は、機械を作製するための処理論理(例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、もしくは他のプログラム可能データ処理機器のプロセッサ)にプログラムされるか、またはその他の方法で提供されてよく、その結果、処理論理を介して実行する(例えば、機械可読)命令は、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(単数または複数)に指定された機能/動作を実装するための手段を作り出す。
【0045】
追加として、または代替として、これらのコンピュータプログラム命令は、処理論理、および/または特定の方法で機能する任意の他の好適な装置を管理し得るコンピュータ可読媒体に格納されてよく、その結果、コンピュータ可読媒体に格納された命令は、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(単数または複数)に指定された機能/動作を実装する命令を含む製造品を作製する。
【0046】
コンピュータプログラム命令はまた、処理論理、および/または装置上で一連の演算ステップを行わせてコンピュータ実装プロセスを生成する任意の他の好適な装置にロードされ得、その結果、実行される命令は、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(単数または複数)に指定された機能/動作を実装するためのプロセスを提供する。
【0047】
図面中の任意のフローチャートおよび/またはブロック図は、車両の態様によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および/または動作を説明することを意図する。この点に関し、各ブロックは、指定された論理機能(単数または複数)を実装するための1つ以上の実行可能な命令を備える、コードのモジュール、セグメント、または部分を表してよい。いくつかの実装では、ブロックに記述された機能は、図面に記載されたものではない順序で起こってよい。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際は、実質的に同時に実行されてよく、またはブロックは、含まれる機能性に応じて、しばしば逆の順序で実行されてよい。各ブロックおよび/またはブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を行う専用ハードウェアベースのシステム(または専用ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせ)によって実装されてよい。
【0048】
例、構成要素、および代替物
以下の節では、例示的な傾斜可能体の選択された態様、ならびに関連するシステムおよび/または方法について記載する。これらの節の例は、説明用であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。各節は、1つ以上の別個の実施形態もしくは例、ならびに/または文脈もしくは関連情報、機能、および/もしくは構造を含み得る。
【0049】
A.例示的な傾斜車両
図1を参照して、この節では、例えばコーナリング中に、左右に傾斜またはリーンするように構成された例示的な三輪車100について記載する。車両100は、上に概して記載された、変換可能な傾斜車両の例である。
【0050】
図1は、車両100の概略図である。図示されるように、車両100は、後部の単一の駆動輪104および前部の2つの車輪106、108を含む、本体またはシャシ102に結合された3つの車輪を有する。後輪104は、モータ110、例えばハブモータによって駆動され、モータ110は、モータ制御器112によって制御されて車両を前方向および逆方向に推進する。前輪106および108は、制御された方法で車両のシャシおよび前輪を傾斜させるように構成された傾斜リンク114によって、シャシ102の前端に結合される。傾斜リンク114は、シャシの傾斜に対応する前輪の傾斜を確実にするように構成された、4節リンクなどの任意の好適な機械リンクを含んでよい。傾斜アクチュエータ116(リーンアクチュエータもしくはロールアクチュエータとも呼ばれる)は、傾斜リンク114に動作可能に接続され、任意の好適な電気モータ(例えば、サーボモータ、ステップモータ)、ロータリアクチュエータ、またはシャシおよび車輪を傾斜させるための回転力を提供するように構成された他の装置を含んでよい。
【0051】
ライダー支持台103は、シャシ102に据え付けられ、人間のライダーを乗せ、かつ/またはライダーから制御入力を受け取るように構成された任意の好適な構造および装置を含んでよい。例えば、ライダー支持台103は、シート、背もたれ、フットペグ、ペダル、ハンドルバー等を含んでよい。ハンドルバーが設けられる場合、これらは、操向アクチュエータ(すぐ下に記載される)に電気機械的および/または仮想的に結合されてよく、その結果、ハンドルバーおよび操向アクチュエータの一方または両方は、操向を任意の所与の時間に選択的に制御してよい。ライダー支持台の単数または複数の部分は、機能的な意味で再配置可能であってよく、その結果、台の一部の再配置または変位は、制御モードを変化させる信号を送信し、かつ/または物理的に車両を異なる制御モードにする。例えば、ハンドルバーおよび/またはシートは、使用不可能な位置に折り畳まれて、車両を自律または半自律モードにしてよい。
【0052】
車両の操向は、例えば、操向リンク120に動作可能に接続された操向アクチュエータ118を使用した、前輪の傾斜および/または制御された操向によって達成され得る。様々な例示的な操向スキームが、以下にさらに記載される。この文脈では、傾斜またはリーンは、ロール軸(例えば、軸A)の周りの左右の横方向のロールと規定され、一方、操向は、車輪が、それらの現在の向きに対してより左または右の方向に向くように、ヨー軸の周りに単数または複数の車輪を回動させることによって行われる。一部の車速では、操向は、完全に傾斜によって行われてよく、一方、前輪は、自在キャスタになる。一部の車速では、操向は、完全に前輪を能動的に操向することによって行われてよい。一部の車速では、方法の組み合わせが利用されてよい。
【0053】
操向アクチュエータ118は、任意の好適な電気モータ(例えば、サーボモータ、ステップモータ)、ロータリアクチュエータ、または車両100を操向するための回転力を提供するように構成された他の装置を含んでよい。操向アクチュエータからのこの力は、操向リンクによって、車輪を旋回させるための直線力に変換される。操向リンクは、例えば、アクチュエータ118を車輪106および108に機械的に結合するように構成された1つ以上のタイロッドを含んでよい。いくつかの例では、操向リンク120は、アッカーマンステアリングリンクであり、その結果、前輪の制御は、所与の旋回中に異なる半径の円を辿る必要がある内輪および外輪を自動的に補償する。
【0054】
いくつかの例では、車両100は、リーンアクチュエータおよび操向アクチュエータの両方に、遊星ギヤボックス付きサーボモータを利用する。他の好適なアクチュエータとしては、ウォームギヤボックス、リンク要素を接続するリニアアクチュエータ、油圧アクチュエータ、ハーモニックドライブユニット、ステッパモータ、直接トルクアクチュエータ等が挙げられる。一般に、傾斜アクチュエータは、操向アクチュエータより高い負荷要求を有し、より多くの力を発生させなければならず、その結果、異なる種類のアクチュエータが各々に使用されてよい。
【0055】
懸架システム122は、傾斜リンク114、操向リンク120に統合されてよく、かつ/または車輪106および108に結合されてよい。別個の懸架システムが、後輪105に提供されてよい。懸架システム122は、荒れたまたは凹凸のある地形上での走行を容易にするように構成された、任意の好適な付勢および/または減衰装置(単数または複数)を含んでよい。例えば、懸架システム122は、1つ以上のショックアブソーバおよび/またはばねを含んでよい。懸架システム122は、積荷への、ならびに感知および制御システムならびに車両シャシへの、衝撃および振動負荷を低減するように構成される。衝撃を吸収する方法で車両を懸架するいくつかの可能な手法が存在し、4節リンク、リーディングリンク、Aアーム、直線/伸縮直接懸架装置等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
車両100の制御システム124(例えば、車載制御システム)は、1つ以上の車両センサ128からの情報を考慮して、かつ/またはナビゲーション制御システム130から受信したコマンドに応答して、様々なアクチュエータを制御するように構成された任意の好適な処理論理126を含んでよい。ナビゲーション制御システム130は、目的地への経路に沿って車両100を誘導するように構成され、車両100内、遠隔(例えば、遠隔制御ユニット)、またはそれらの組み合わせのいずれかに配置された、任意の好適なナビゲーションシステムを含んでよい。
【0057】
センサ128は、車両100および/またはその物理的動作環境に関する情報を決定するように構成された任意の好適な装置を含んでよい。例えば、センサ128は、自律車両で典型的に見られる感知ユニットを含んでよい。センサの例としては、温度センサ、タイヤ圧センサ、傾斜または他の姿勢センサ(例えば、加速度計)、速度センサ等が挙げられ得る。
【0058】
追加として、または代替として、センサ128は、姿勢依存的に(例えば、周囲環境に関する)情報を感知するように構成された少なくとも1つの姿勢依存センサ128Aを含んでよい。言い換えれば、センサ128Aによって感知される情報は、少なくとも一部の状況では、少なくとも1つの軸に対するセンサの向きおよび/または位置に影響される傾向がある。姿勢依存センサの例としては、例えば、LIDAR、レーダ、レーザ距離計、光学撮像センサ、熱撮像センサ、コンピュータビジョンシステム、近接センサ等が挙げられ得る。これらの種類のセンサによって感知される情報は、一般にセンサの向きに依存する。例えば、撮像センサによって取得される画像の向きは、撮像センサの向きによって決定され、LIDARセンサによって得られる情報は、光源の位置および方向に依存する。したがって、(例えば、車両シャシおよび/またはリンクが傾斜するため)姿勢依存センサが傾斜する場合、センサによって取得されるデータは、傾斜していないセンサによって取得されるであろうデータに対して一般に変化する。これは、車両の制御システム(例えば、ナビゲーション制御システム130、衝突回避システム等)によるデータの使用に悪影響を及ぼし得る。したがって、姿勢依存センサ128Aは、(少なくともロール軸上の)車両の傾斜を補償するように構成された傾斜補償マウントシステム131によって、シャシ102(および/または車両の別の好適な部分)に結合されてよく、その結果、車両の傾斜時に、センサ128Aは、部分的にまたは完全に傾斜していないままである。例えば、傾斜補償マウントシステム131は、ジンバルマウントを備えてよい。
【0059】
傾斜補償マウントシステム131は、能動的傾斜補償システムおよび/または受動的傾斜補償システムを備えてよい。能動的傾斜補償システムは、(例えば、センサもしくはジンバルマウントに結合された傾斜センサによって検出されるような)検出されるセンサの傾斜に基づいて、かつ/または(例えば、介入なしでセンサ128Aが間もなく傾斜することをシステム131に伝える、傾斜アクチュエータおよび/もしくは操向アクチュエータへの制御信号に基づいて)予想される車両の傾斜に基づいて、センサ128Aの向きを調節するように構成された少なくとも1つのモータまたは他のアクチュエータを含む。受動的傾斜補償システムは、センサ128Aをシャシに取り付けるように構成されたジャイロスコープまたは他の好適な装置を含んでよく、その結果、車両の傾斜時に、センサは傾斜しない傾向がある。いくつかの例では、傾斜補償システムは、傾斜リンク114に従動する機械リンクを含んでよく、その結果、対応するカウンタリーンが、傾斜補償システムで自動的に生成される。
【0060】
傾斜補償マウントシステム131は、任意の好適な軸または軸の組み合わせの周りの傾斜を補償するように構成されてよい。いくつかの例では、システム131は、車両のロール軸の周りの傾斜のみを補償するように構成される。したがって、これらの例では、センサ128Aは、ロール軸の周りに有効に安定化され、その結果、車両が傾斜される時に、水平に対して傾斜しないが、ピッチ軸またはヨー軸の周りに車両とともに傾斜することは防止されない。
【0061】
処理論理126は、車両100の運転に関する制御アルゴリズムを実行するように構成された任意の好適なモジュールまたはハードウェアを含んでよい。例えば、処理論理126は、モータ制御器112、操向アクチュエータ118を制御するように構成された操向制御器132、および/または傾斜アクチュエータ116を制御するように構成された傾斜制御器134、ならびにこれらのあらゆる制御器の活動を協調させるように構成された処理論理を含んでよい。
【0062】
制御システム124は、遠隔システム、例えば、ナビゲーション制御130の遠隔部分と無線通信してよく、したがって、例えば送受信機136に代表されるような、情報を送受信するように構成された無線ラジオシステムを含んでよい。
【0063】
いくつかの例示的な操向スキームが、制御システムおよび車両100によって実装されてよい。手動/ライダーモードでは、傾斜は、概して、ユーザによる操向に基づいて、またはユーザによる操向に応答して、合力ベクトルをシャシの正中面と一直線に自動的に維持するように制御されることになる。自律モードでは、リーン(すなわち、傾斜)と操向とのいくつかの可能な関係が存在する。選択された関係および関連する制御システム構成が、以下で議論される。
【0064】
a.操向にリーンを機械的に連結する
この場合、機械リンクは、車両の車輪がリーンすると車輪の旋回を引き起こす一定の比率をもたらす。この種類の実施形態では、低速操縦性および高速安定性の両方を提供するために、リーン対操向比を速さに対して動的に変化させることが望ましい場合がある。
【0065】
b.操向にリーンを電気的に連結する
この場合、リーン角が、車両をどのくらい能動的に操向するかを決定するのに利用される主な制御ベクトルである。操向は、リーン角、車速、および他の因子に基づいて、操向制御器およびアクチュエータによって制御される。
【0066】
c.自在キャスタ(FTC)
この場合、リーン角が、車両の主な制御ベクトルであり、操向システムは、任意の位置を自由に取る状態にされる。言い換えれば、能動的な操向が中断され、車輪は、地面からの力およびリーン角に完全に基づいて、自由に回るかまたは転がるようになる。トレール/キャスタ角に基づいて、車両は、リーン角に対する最適な操向角を機械的に選択することになる。この技術は、より高速でうまく機能する。
【0067】
FTC運転では、車両のジオメトリは、傾斜が開始すると、前輪が、リーンおよび速さの任意の所与の組み合わせに適した操向角まで転がるかまたは回るように設計される。この関係は、おおよそS=T/Vで表され得、式中、Sは操向角であり、Tは傾斜角であり、Vは速度である。所与の旋回において、最大リーンがすでに達成されているが、車両がより小さく旋回する必要がある場合、減速は、FTC動力学に従って旋回半径を減少させることになる。
【0068】
FTCを用いて、車両は、後輪のトラクションを失ってドリフトに入る時のカウンタステアも行うことになり、重心(CG)が高いかまたは非常に狭いホイールベースの傾斜の開始中に、一方の前輪が地面から浮いた場合の、カウンタステアも行うことになる。FTC制御スキームを利用する傾斜三輪車は、この理由から、ひっくり返ることに耐性がある。
【0069】
d.自由リーン
この場合、操向角が主な制御ベクトルであり、車両は自由にリーンする。この種類の実施形態は、望ましくない不安定性を防止し、車両を設定角度(例えば、垂直)または角度範囲に維持する、チルトロック機構を使用してよい。さらに、操向角は、自転車運転者またはオートバイ運転者が、体のリーン、カウンタステア、および他の入力の組み合わせを使用してその車両のバランスをとる方法と同様に、車両のバランスをとるように閉ループ制御下で動作してよい。
【0070】
e.IMUに基づいて、操向の後にリーンが続く
この場合、操向角が、車両の主な制御ベクトルである。加速度計および/またはジャイロセンサは、車両にかかる横方向の力を感知し、傾斜アクチュエータは、車両を旋回から滑らせる傾向を示す横加速度成分を最小化するように、制御ループを実行する。
【0071】
f.方法の組み合わせ
場合によっては、上記の技術が、操向アクチュエータもしくはリーンアクチュエータのいずれかもしくは両方で、クラッチ/ブレーキと組み合わせて使用され得るか、またはアクチュエータは、それらが従動体として働く「疑似低慣性制御モード」にプログラムされ得る。これは、ある車速ブレークポイントで(徐々に)オンオフされて、低速領域および高速領域の両方で最適なハンドリングを提供し得る。さらに、車両が後退動作をしている時に、制御規則は、修正を必要とする場合がある。
【0072】
上記制御スキームのいずれについても、問題の車両の所望の傾斜角は、一般に、どのくらいの左右のリーン角または傾斜角が、正中面とも呼ばれるシャシの中心垂直面、すなわち、シャシを左部分と右部分とに分割または2等分する車両の垂直中心線を通る平面と一直線になった合力ベクトルをもたらすかを決定することによって、導き出される。合力ベクトルは、下向きの重力および横方向の遠心力から生じる合成力ベクトルと規定される。車両上のセンサ(例えば、加速度計)は、(例えば、操向された旋回の開始からの遠心力、または旋回中もしくは通常の運転中、不均一な地形からの横方向の力による)シャシ上の力ベクトルの横方向の偏差を検出する。それに応じて、傾斜アクチュエータおよび場合によっては操向アクチュエータが、合力ベクトルをシャシの正中面と実質的に一直線に戻すように調節される。リーン角は、速さおよび旋回半径の小ささによって変化する。所与の旋回半径および/または速度に対する所望のまたは最適な傾斜角(すなわち、合力ベクトルをシャシと一直線上に保つ角度)が与えられると、傾斜リンクは、その角度を維持し、また、不均一な/変化する地面にかかわらず傾斜角を保つように変更されてよい。
【0073】
リーン(別名、傾斜)対操向比は、(遠心力および重力による力についての)集約力ベクトルを傾斜車両の正中面と一直線に維持するために計算される。一般的に言えば、任意の所与の旋回半径に対して車両が速くなればなるほど、この集約力ベクトルを傾斜可能シャシの正中面と一直線に保つために、車両シャシはますますリーンする必要がある。より高い速度または旋回半径の減少は、所望のリーン角の増加をもたらす。
【0074】
制御システム124は、本明細書に記載されたもののようなアルゴリズムを実行するように構成された任意の好適な処理論理を含んでよい。例えば、力ベクトル測定に基づいて傾斜/操向変数を制御する制御ループフィードバック機構を有する、PID(比例積分微分)制御器が利用されてよい。
【0075】
例えば、車両100の旋回中、横加速度および/または遠心力がシャシ102にかかっている間、車両制御システム124は、そのような横加速度および/または遠心力の全体または一部を補償するように、1つ以上の傾斜アクチュエータ1116にシャシ102を枢動および/または傾斜させように指示してよい。処理論理126は、シャシが1つ以上の傾斜アクチュエータ116によって枢動および/または傾斜されるべき程度、量、および/または角度を決定するために、センサ128の1つ以上から入力を受信して、そのような加速度、遠心力、および/またはシャシ102の他の特性を測定してよい。例えば、IMUセンサは、この点に関し、1つ以上のセンサ128に含まれてよく、随意に固体加速度計を含んでよく、任意の好適な加速度および/または力を測定するために利用されてよい。そのような傾斜の程度、量、および/または角度は、任意の好適なセンサによって感知および/または測定されてよく、処理論理126および/または制御システムの他の態様にフィードバックとして戻されてよい。任意の好適なアルゴリズムは、1つ以上のセンサによって提供された入力信号を解析するために、かつ1つ以上の傾斜アクチュエータを指示および/または制御するために、制御システムに、ファームウェア、ソフトウェア、または両方のいずれかとしてプログラムされてよい。
【0076】
車両100の1つ以上の制動機構は、車両の、その走行方向または走行経路に沿った減速を引き起こすように、制御システム124によって制御可能であってよい。
【0077】
いくつかの例では、車両100は、第1の場所から第2の場所へ輸送ネットワーク上を走行するように、制御システム124によって指示される。第2の場所および/または第1の場所と第2の場所との間の経路(単数または複数)に関する指示は、車両制御システムのメモリに格納されてよく、別の供給源(例えば、遠隔制御)から車両制御システムによって受信されてよく、車両制御システムによって決定されてよく、かつ/または任意の他の好適な方法で導き出されてよい。いくつかの例では、そのような指示は、第1の場所から第2の場所への走行の進路において、別の場所から車両に伝えられる。いくつかの例では、車両制御器は、第1の場所から第2の場所への走行の進路を計画するのに使用するために、(例えば、車載GPS受信機から、または別の供給源から間接的に)GPS情報を受信する。いくつかの例では、車両制御システムは、車載カメラ、LIDARシステム、コンピュータビジョンシステム、近接センサ等からの読み取り値に基づいて、走行の進路を決定しかつ/または適合させる。
【0078】
いくつかの例では、第1の場所と第2の場所との間の走行の進路は、予め(すなわち、車両が走行し始める前に)決定され、(例えば、衝突回避のために)随意に走行中に更新されてよい。いくつかの例では、走行の進路は、車両が走行しながら決定され、その結果、任意の所与の時間に、車両制御システムは、間もなく辿る走行経路のごく一部しか知らない。
【0079】
指示に基づいて、制御システム124は、車両の走行速度および走行方向を制御するために、モータ、傾斜アクチュエータ、および/または操向アクチュエータに適切なコマンドを送信する。車両の動作モードに応じて、傾斜アクチュエータおよび操向アクチュエータは、各々必ずしも指示を受信しない。例えば、自在キャスタモードでは、操向アクチュエータは使用されない。自由リーンモードでは、傾斜アクチュエータは使用されない。
【0080】
処理論理126は、(例えば、旋回中に)車両にかかる横加速度および/または遠心力を示すセンサ128の1つ以上から入力信号を受信する。それに応答して、処理論理は、そのような横加速度および/または遠心力を補償するように、走行面および/または適切な基準線もしくは基準面に対して車両のシャシ102を枢動および/または傾斜させて旋回させるために、1つ以上の傾斜アクチュエータ116に適切なコマンドを送信する。
【0081】
いくつかの例では、制御システムのPIDループは、所望の旋回半径を達成するために車速を自動的に調整するように構成される。例えば、より小さい旋回が必要な場合、車両は、操向または傾斜するよりもむしろ自動的に減速してよく、それにより、旋回半径を低減する。
【0082】
B.例示的な傾斜および操向リンク
図2~7に示すように、この節では、車両100での使用に適した例示的な傾斜リンクおよび操向リンクシステムについて記載し、それらの各々は、上に記載された傾斜リンク114および/または操向リンク120の例である。
【0083】
図2~5は、好適な機械傾斜リンクの選択されたバージョンを示す。いくつかの例では、傾斜リンクは、単純な4節平行四辺形リンクを含んでよい。他の好適な機械リンクが以下に記載される。図2は、車両100に実質的に類似した三輪車のシャシ142に結合された例示的な4節機械傾斜リンク140を示す。リンク140は、外端で左キングピン148および右キングピン150に各々結合される上部バー144および下部バー146を含む。本明細書で使用される場合、キングピンという用語は、概して、各車輪を操向するための主枢軸を備える構成要素(単数または複数)を指す。図2に示すように、キングピン148および150の各々は、それぞれの車輪を回動式に取り付けるための車軸152、154を含む。上部バー、下部バー、およびキングピンは各々、4節リンクの「リンク」と呼ばれてよい。
【0084】
この例では、上部バー144は、共通枢動継ぎ手156で枢動する2つの部分144Aおよび144Bに分割される。下部バー146は、単一ピースであり、中央枢動継ぎ手158で傾斜アクチュエータに結合される。上部リンクの中間の回動枢軸156は、リンクの上部と傾斜シャシ142との間の取り付け場所での回動軸受の使用を容易にする。単一の強固なリンクの場合、リニア軸受またはある程度の遊びは、キングピンが完全に平行ではない条件を補償するために使用され得るが、前輪の等しくない傾斜角を可能とするいくらかの「傾斜アッカーマン」(すなわち、アッカーマンステアリングジオメトリ)を有し得る。
【0085】
図3は、車両100に実質的に類似した三輪車のシャシ172に結合された別の例示的な4節機械傾斜リンク170を示す。リンク170は、外端で左キングピン178ならびに右キングピン180に各々結合される、1対の上部バー174Aおよび174Bならびに下部バー176を含む。図3に示すように、キングピン178および180の各々は、それぞれの車輪を回動式に取り付けるための車軸182、184を含む。上部バー、下部バー、およびキングピンは各々、機械リンクの「リンク」と呼ばれてよい。
【0086】
この例では、上部バー174Aおよび174Bは、各上部バーが固有の枢動継ぎ手186A、186Bを有するように、互いから分離または離隔される。下部バー176は、単一ピースであり、中央枢動継ぎ手188で傾斜アクチュエータに結合される。上部リンクの中間の端部の回動枢軸186Aおよび186Bは再び、キングピンの傾斜または異なる傾斜を容易にする。キングピンは、いくつかの例では、操向システムの様々な構成要素への接続点を含むため、「ステアリングナックル」と呼ばれてよい。
【0087】
図4は、車両100に実質的に類似した三輪車のシャシ202に結合された例示的なAアーム機械傾斜リンク200を示す。リンク200は、外端で左キングピン208ならびに右キングピン210に各々結合される、2つの部分204Aおよび204Bに分割された上部バー204、ならびに1対の下部バー206Aおよび206Bを含む。図4に示すように、キングピン208および210の各々は、それぞれの車輪を回動式に取り付けるための車軸212、214を含む。
【0088】
この例では、上部バー204は、共通枢動継ぎ手216で枢動する部分204Aおよび204Bに分割される。下部バー206Aおよび206Bは、内端で中央枢動継ぎ手218に結合される。アクチュエータアーム220は、枢動継ぎ手から上方に伸び、傾斜アクチュエータによって回動される。アクチュエータアームは、ロッカーと呼ばれてよい。下部バーの各々は、それぞれのショックアブソーバまたはガスばね222、224によって、アクチュエータアームの遠位端に結合される。上部204Aおよび204Bならびに/または下部206Aおよび206Bは各々、外端にアームの頂点がある状態で、Aアームまたはウイッシュボーン型アームを備えてよい。図13~14を参照されたい。
【0089】
図5は、車両100に実質的に類似した三輪車のシャシ232に結合された別の例示的なAアーム機械傾斜リンク230を示す。リンク230は、外端で左キングピン238ならびに右キングピン240に各々結合される、1対の上部バー234Aおよび234B、ならびに1対の下部バー236Aおよび236Bを含む。図5に示すように、キングピン238および240の各々は、それぞれの車輪を回動式に取り付けるための車軸242、244を含む。
【0090】
この例では、上部バー234Aおよび234Bの内端は、固有の枢動継ぎ手246および248で枢動する。下部バー236Aおよび236Bは、内端で、アクチュエータプレート254上の固有の枢動継ぎ手250および252に結合される。プレート254は、枢動継ぎ手から上方に伸び、傾斜アクチュエータによって回動される。アクチュエータプレートは、ロッカーと呼ばれてよい。下部バーの各々は、それぞれのショックアブソーバまたはガスばね256、258によって、アクチュエータプレートの遠位端に結合される。上部234Aおよび234Bならびに/または下部236Aおよび236Bは各々、外端にアームの頂点がある状態で、Aアームまたはウイッシュボーン型アームを備えてよい。図15~16を参照されたい。
【0091】
いくつかの例では、傾斜リンクのための懸架システムは、操向キングピンと車輪との間に位置する、リーディングリンクスイングアーム構成を含んでよい。これは、許容される懸架の解決法をもたらす。しかしながら、トレール寸法およびスクラブ半径は、懸架装置がキングピンと車輪との間で圧縮されると、わずかに変化する。
【0092】
図6は、本開示の傾斜車両での使用に適した例示的な操向リンク300を示し、操向アクチュエータは、垂直配向で据え付けられる。言い換えれば、アクチュエータの回動軸は、シャシの中心線に実質的に垂直もしくは直立であり、かつ/または直交する。
【0093】
操向リンク300は、操向リンク120の例である。この例では、操向アクチュエータ302は、シャシ304の前端に垂直に据え付けられる。操向クランク306は、アクチュエータによって回動され、1対のタイロッド308Aおよび308Bは、それぞれの枢動継ぎ手310Aおよび310Bで、操向クランクのそれぞれのコンロッドに結合される。タイロッド308Aおよびタイロッド308Bの外端は、前輪314および316のそれぞれのステアリングナックル312に結合される。傾斜リンク318は、前輪に結合され、4節リンクとして図示されているが、本明細書に記載された任意の好適な傾斜リンクを含んでよい。
【0094】
図7は、本開示の傾斜車両での使用に適した別の例示的な操向リンク400を示し、操向アクチュエータは、水平配向で据え付けられる。言い換えれば、アクチュエータの回動軸は、シャシの中心線に実質的に水平および/または平行である。
【0095】
操向リンク400は、操向リンク120の例である。この例では、操向アクチュエータ402は、シャシ404の前端に水平に据え付けられる。操向クランク406は、アクチュエータによって回動され、単一のタイロッド408Aは、単一の枢動継ぎ手410で操向クランクに結合される。タイロッド408Aの外端は、一方の前輪414のステアリングナックル412に結合される。第2タイロッド408Bは、同じキングピンの反対側に結合され、もう一方の端部で、もう一方の前輪418の第2ステアリングナックル416に結合される。したがって、操向アクチュエータの回動は、操向クランクを回動させ、第1タイロッドおよび第1ステアリングナックルを介して、一方の前輪に動きを伝える。反対側の前輪は、第1ステアリングナックルを第2車輪の第2ステアリングナックルに接続する第2タイロッドによって、同時に回動される。この例では、2つのタイロッドは、キングピンを挟んで反対側にある。言い換えれば、タイロッドの一方は、キングピンの前に配置され、他方は、キングピンの後ろに配置される。傾斜リンク420は、前輪に結合され、4節リンクとして図示されているが、本明細書に記載された任意の好適な傾斜リンクを含んでよい。
【0096】
C.例示的な変形車両
図8~13に示すように、この節では、上に概して記載された車両100の例であり、(構成または段階とも呼ばれる)動作の第1モードと第2モードとの間で機械的に変形または変換されるように構成される、例示的な傾斜車両500について記載する。
【0097】
第1モードは、運転者によって完全にまたは部分的に制御される有人傾斜車両として動作する車両500を含む(図8参照)。この構成では、前進運動およびバランス修正/カウンタステアによって二輪車のように、または傾斜の足踏み作動、もしくは例えばステアリングホイールなどの他の機構を有するSwayリチウム三輪車のように、車両に乗ることができる。いくつかの例では、操向は、手動またはパワーアシスト機能で操作され、一方、車両の対応する傾斜は、自動的に制御される。
【0098】
第2モードは、配車、ライドシェアリング、配送、駐車、再充電ステーションへのアクセス、ならびに一般タスキングおよびフリート管理のために、例えば、傾斜がロックされたフライバイワイヤ方式で、自律的に動作する車両500を含む(図11参照)。車両の傾斜をロックすることは、操向機能を有効にしたまま車両の傾斜機能を無効にすることによって、低速運転を容易にする。
【0099】
車両500は、1対の前輪504および単一の後輪506に結合されたシャシ502を含む。前輪504は、4節傾斜リンク508によってシャシに取り付けられるが、本明細書に記載された傾斜リンクのいずれかが利用されてよい。前輪504は、パワーステアリングシステムによって補助されるか、または場合によっては機能的に置き換えられるハンドルバー510を使用して操向可能である(以下を参照)。ライダーが、シート512および1対のフットペグ514によって車両500にさらに乗せられる。任意選択の荷室516が、車両の前端に据え付けられてよい。車両500は、図8および図9に部分的に示される懸架システム518を含んでよい。図8は、傾斜していない状態の車両500の等角図であり、図9は、傾斜状態の車両を示す。
【0100】
操向アクチュエータ520(パワーステアリングユニットとも呼ばれる)は、ハンドルバー510に結合されたメインステアリングシャフト522と一直線にある。アクチュエータ520は、中央傾斜シャシ502に固定され、この例では、モータおよび直角ギヤボックスを含む。操向アクチュエータ520は、概して図6および図7に関して上に記載されたように動作する、操向クランク523(例えば、図9参照)を駆動する。操向タイロッド、および操向システムの他のすでに記載された部分は、見やすくするために図8~11では省略されている。
【0101】
手動モードのいくつかの実施形態では、パワーステアリングユニットは作動していないが、ハンドルバーからのライダー入力によってバックドライブされ得る。言い換えれば、モータおよびギヤボックスは、ハンドルバーを使用して自由に回動可能であり得る。自律モードでは、パワーステアリングユニットは、命令された経路を辿るように、車載制御器およびセンサのアレイを使用して、ナビゲーション制御器に応答して車両を能動的に操向する。
【0102】
図10および図11に示すように、ハンドルバー510は、ステアリングシャフト522および強固なハウジング526を含む、細長いハンドルバーステムアセンブリ524を含む。ステムアセンブリ524は、シャシ502に枢動可能に結合され、2つ以上の所定の配向の選択された1つにステムアセンブリ524を機械的にロックするように構成されたピンおよび溝ロック装置528を含む。ロック装置の溝は、ステムアセンブリのロックピン530を受け入れるように構成される。ハンドルバー(すなわち、ハンドルバー510およびステムアセンブリ524)は、走行方向に直交する略水平軸(ピッチ軸とも呼ばれる)の周りに枢動可能である。ロックピン530の位置は、ロックピン位置センサ532によって決定され得る。
【0103】
2つの動作モード間の変化は、傾斜三輪車構成から非傾斜三輪車構成に物理的に、車両を機械的に変形させることによって、手動、半自動、または自動で達成されてよい。非傾斜第2構成では、車両は、自律的であってよく、遠隔制御されてよく、または(例えば、自律もしくは半自律的な)フライバイワイヤ方式であってよい。
【0104】
本実施形態では、この変形は、シートに向かってハンドルバーを後方に折り畳むことによって達成される。この動作は、運転者が車両に乗れないようにし、また、ステムアセンブリ524と傾斜シャシ502との間に配置された機械リンク534を作動させる。リンク534は、車両のチルトロック機構536を固定するように構成される。いくつかの例では、センサ532(および/または別の位置センサ)は、次いで、マシンが直立し、傾斜をロックされ、自律モードの準備ができていることを示す。
【0105】
全体的な変形機構は、例えば、顧客が範囲内に入るか、またはアプリ上のボタンをトリガすると解除されるラッチで軽くばね付勢されて、ロック解除構成に付勢されてよい。これは、顧客からの物理的入力なしで、車両が顧客のもとに来て乗車可能構成に自動的に変形するモードを容易にする。
【0106】
有人構成から自律モードへの変形は、シートを前方もしくは後方に折り畳むこと、またはホイールベースを短くするか、トラック幅を広げるか、もしくはその他の方法で傾斜をロックされた自律モードでの安定性もしくは性能を改善するように、フレームもしくはシャシを変形させることなどの、任意の好適な機械的変形機構を含んでよい。
【0107】
いくつかの例では、車両が顧客のもとに到着すると、顧客は、関連ソフトウェアアプリケーション(例えば、スマートフォンアプリ)を通してモードを有効化して、例えば、ばねの解放、またはサーボモータ、または作動の他の自動電気機械モードを介して、マシンを自動的にロック解除してよい。いくつかの例では、ユーザは、代わりに、例えば、ハンドルバーを持ち上げるか、ラッチを解除するか、またはその他の方法でマシンと機械的に相互作用することによって、車両を手動で変形させてよい。いくつかの例では、自動操作および手動操作の組み合わせが行われてよい。
【0108】
図12~13に示すリンク534の例では、自在継ぎ手(すなわち、U-継ぎ手)538が、ハンドルバーシャフトに配置され、カラーハウジングが、シャフトの周りに配置される。この継ぎ手は、モード間の変形時のヒンジ動作を可能とし、必要な時にバーが操向のために回ることを容易にする。いくつかの例では、ステアリングシャフトは、自律モード時にハンドルバーの関節接合を排除するために、パワーステアリングユニットから切断される。
【0109】
引き続き図12および図13を参照すると、リンク534は、チルトロックバー536を所定の位置に動かし、モード間の変形を固定するように構成されたカムオーバー機構を備える。具体的には、リンク534は、ハウジング526を側部リンク542に結合する前部枢動継ぎ手540、およびリンク542をチルトロックバー536に結合する後部枢動継ぎ手544を含む。前部枢動継ぎ手540は、U-継ぎ手538から離隔し、その結果、図12および図13に示すように、U-継ぎ手538でのハンドルバーアセンブリの枢動が、チルトロックバーを前方または後方に促す。同一のリンクおよび継ぎ手が、ハウジングおよびチルトロックバーの反対側に結合されてよい。チルトロックバーが前方に枢動すると、シャシの傾斜を阻止する。チルトロックバーが後方に枢動すると、シャシの傾斜に影響を及ぼさない。1つ以上の他の好適な方法が、変形を固定するのに使用され得、二次ラッチ、サーボモータ、ソレノイド、または他の物理的な幾何学的解決法が挙げられる。代替および/または追加のチルトロック機構が、節Dに関して以下にさらに記載される。
【0110】
D.例示的なチルトロック装置
図14~24は、例示的なチルトロックシステム、すなわち、自律傾斜車両の傾斜を選択的に防止し、かつ/または車両が傾斜することができる角度範囲を選択的に制限するように構成されたシステムを示す。チルトロックシステムは、車両を直立位置に一時的にロックするのに便利であり得る。車両は、静止している間および/または動いている間、傾斜をロックされ得る。例えば、車両は、傾斜をロックされながら自律的に動作するように構成されてよく、これは、車両を操向するための操向装置の自律作動を含んでよい。傾斜をロックされた自律動作は、車両の配車、フリート管理、荷積み、および/または任意の他の好適な目的に適している場合がある。別の例として、車両は、(例えば、保管、輸送、駐車等のために)静止している間および/または電源を切っている間、傾斜をロックされ得る。
【0111】
パーキングブレーキ、スタンド、および/または他の好適な装置とともに、チルトロック装置は、駐車時に車両を直立位置に保持するように構成された車両駐車システムの一部を形成してよく、その結果、車両は、駐車時に傾斜せず、倒れず、または転がって行かない。駐車システムのさらなる態様は、次の節で記載される。しかしながら、いくつかの例では、車両は、チルトロック装置を含み、駐車システムの他の態様を含まない。
【0112】
場合によっては、チルトロック装置は、車両によって(例えば、サーボモータおよび/または他の好適なアクチュエータによって)、電子的に、場合により自律的に、有効化されるように構成される。いくつかの例では、チルトロック装置およびパーキングブレーキは、チルトロック機構を所定の位置に駆動し、(例えば、同時に、またはほぼ同時に)パーキングブレーキを有効化するケーブルを係合するように構成された、サーボモータまたは他の好適なアクチュエータによって、電子的に作動される。
【0113】
代替として、または追加として、チルトロック装置は、ユーザが手動または半自動で作動させるように構成されてよい。いくつかの例では、手動で作動可能なチルトロック装置は、車両の電源が切られるか、除去されるか、または枯渇した時でさえ、傾斜をロックし得る。
【0114】
概して、この節に記載されるチルトロック装置は、上に記載された車両100および500などの変形傾斜可能車両、または非変形傾斜可能車両と併用されてよい。これらのチルトロック装置が変形傾斜可能車両で使用される例では、それらは、車両の変形を可能とする構成要素から独立していても、独立していなくてもよい。
【0115】
図14~15は、車両シャシの下に配置され、シャシに枢動可能に結合されたブラケット652を備える、例示的なチルトロック装置650を示す。フレーム654は、傾斜リンクの一部(ここでは、4節傾斜リンクの下部バー)から後方に突出する。フレーム654は、第1部分656および第2部分658を有する。ブラケット652は、ブラケットが第1部分656に隣接して位置付けられる第1位置と、ブラケットが第2部分658に隣接して位置付けられる第2位置との間を移行可能である。第1部分656は、横方向に伸びるバーを備える。ブラケット652が第1位置にある場合、ブラケットの下部バーは、第1部分656と並び、第1部分によって傾斜を防止される。したがって、第1位置はロック位置である。第2部分658は、ブラケット652よりはるかに小さい横方向の広がりを有し、その結果、ブラケットが第2位置にある場合、ブラケットの傾斜は妨げられない。したがって、第2位置はロック解除位置である。
【0116】
図14~15に示す例では、ヒンジ付きブラケットは、ユーザが手動で操作するように構成されたレバー664を使用して、選択的に係合可能である。代替として、または追加として、ブラケットは、例えば、押しボタンによって、またはユーザの介入なしで車両制御システムからのコマンドによって、有効化されるサーボモータによって作動可能であってよい。図16は、ヒンジ付きブラケット668を備えるチルトロック装置が、ブラケットを作動させるように構成されたサーボモータ672に動作可能に結合される例を示す。サーボモータ672はまた、以下に記載されるようなパーキングブレーキと併用されてよい。
【0117】
図17~18は、2つのV字形プレート(例えば、ある長さの山形鋼)を備える例示的なチルトロック装置1400を示す。内側プレート1404は、車両の傾斜リンクの下部バーに強固に結合される。内側プレート1404は、細長く、V字形断面を有し、リンクバーの中央部分から上方に伸びる。
【0118】
外側プレート1408もV字形であり、車両シャシに枢動可能に結合される。外側プレート1408は、内側プレート1404が外側プレート内に入れ子になる第1位置(図18参照)と、外側プレートが内側プレートから離隔される第2位置(図17参照)との間で枢動するように構成される。第1位置では、外側プレート1408は、内側プレート1404を保持し、その結果、内側プレートの、外側プレートに対する横方向の動きが防止される。このように、外側プレート1408が第1位置にある場合、外側プレートは、車両シャシが下部リンクバーに対して傾斜するのを防止する。したがって、外側プレート1408が第1位置にある場合、車両の傾斜はロックされる。外側プレート1404が第2位置にある場合、内側プレート1404は、外側プレートに対して横方向に自由に動き、車両シャシの傾斜を可能とする。
【0119】
内側プレートおよび外側プレートの大きさおよび形状、ならびにロック位置でのプレート間の任意の隙間の大きさに応じて、チルトロック装置1400は、車両の傾斜を完全に防止してよいか、または傾斜範囲を小さい角度範囲に制限してよい。いくつかの例では、外側プレートの位置は、傾斜なしを含む所望の傾斜範囲を可能とするように、(例えば、ユーザまたは車両の制御器によって)選択されてよい。
【0120】
図19~20は、車両の傾斜リンクの下部バーに枢動可能に据え付けられたU字形ブラケット1424を備える、別の例示的なチルトロック装置1420を示す。ブラケット1424は、ブラケット1424がロック位置にある場合、アームの端部が、シャシの傾斜を防止する方法で傾斜リンクの上部と係合するような寸法の、2つのアーム1428を有する。図19に示す例では、ブラケット1424が傾斜ロック位置にある場合、アーム1428の端部は、4節傾斜リンクの分割された上部バーのそれぞれのバーの下に噛み込む。これは、分割された上部バーのいずれかの部分が下方に動くのを防止することによって、シャシの傾斜を防止する。しかしながら、一般に、ブラケット1424は、任意の好適な傾斜リンクと併用されてよい。
【0121】
図20は、傾斜リンクの上部から離れるように(例えば、車両シャシから離れるように前方向に)枢動されたブラケット1424を示す。この位置では、ブラケット1424は、リンクの上部から離隔し、その結果、アーム1428は、リンクの上部が動くのを防止しない。したがって、車両は、ロック解除される(すなわち、自由に傾斜する)。
【0122】
図示された例では、アーム1428は、ともに強固に結合され、したがって、ブラケット1424が枢動されると、ともに枢動する。他の例では、ブラケットのアームは、独立して枢動するように構成されてよい。
【0123】
図21は、さらに別の例示的なチルトロック装置1430を示す。チルトロック装置1430は、刻み付きディスク1434と嵌合するように構成された刻み付きキャリパ1432を備える。ディスク1434は、シャシの枢動軸の周りに同心円状に配置された部分円を備える。キャリパ1432は、(図21に部分的に透過で示された)傾斜シャシに固定され、シャシが傾斜すると、キャリパがディスク1434に沿って動くように位置付けられる。ロックアクチュエータ1436は、キャリパ1432をディスク1434に対して選択的に留めるように構成され、それによりキャリパがディスクに対して動くのを防止し、したがって車両の傾斜をロックする。ロックアクチュエータ1436が、(例えば、キャリパおよびディスクの相補的な刻み付き表面の係合が解除されるようにキャリパをディスクから離すことによって)ディスク1434からキャリパ1432をロック解除すると、シャシの傾斜が可能となる。
【0124】
チルトロック装置1430は、ディスク1434に沿った任意の配向で、またはディスクに沿った角度のサブセットで、車両の傾斜をロックするように構成されてよい。すなわち、車両シャシは、直立位置または選択された傾斜角の傾斜位置にロック可能であってよい。これは、例えば、車両がロックされた傾斜位置で保管または輸送されることを可能としてよい。
【0125】
図22~24は、傾斜リンクの上部バーに取り付けられたピン1442、および傾斜リンクの下部バーに取り付けられた溝付きディスク1444を備える、さらに別の例示的なチルトロック装置1440を示す。ピン1442は、ピンがディスク1444の溝の中に受け入れられるロック位置と、ピンが溝から離隔されるロック解除位置との間を選択的に移行可能である。ピンがディスクの溝内に配置される場合、車両シャシの傾斜は防止される。
【0126】
図示された例では、ピン1442は、ロック位置では、溝の中に受け入れられるのに十分な程度に上部リンクバーから下方に伸び、ロック解除位置では、溝を避けるのに十分な程度に下部バーから離れるように引き込まれる。ピン1442は、リニアアクチュエータ、ユーザによる手動、および/または任意の他の好適な機構によって、ロック位置とロック解除位置との間で動かされてよい。
【0127】
図示された例では、ディスクは、下部リンクバーの中央部分の上に配置された単一の溝のみを含む。したがって、車両は、ピンが下部バーの中央部分の上に配置される場合にロック可能であり、この場合、それは、直立した、傾斜していない位置にあるシャシに対応する。しかしながら、他の例では、ディスクは、追加として、または代替として、中央の外部に横方向に位置付けられた溝を含んでよく、1つ以上のロックピンが、中央の外部に位置付けられてよく、車両が傾斜位置にロックされることを可能とする。いくつかの例では、ピンは、傾斜リンクではなく傾斜車両シャシに固定される。
【0128】
いくつかの例では、自律傾斜車両は、単に傾斜モータ(すなわち、車両を傾斜させるように構成されたモータ)を選択された位置にロックすることによって、傾斜をロックされ得る。例えば、傾斜モータは、傾斜モータの電源が切られると、車両シャシを直立に保つ位置にロックされるように構成され得る。このようにモータの傾斜をロックすることは、上に記載されたもののような専用のチルトロック機構を含むことなく、車両の不要な傾斜を抑制することを可能とし得る。専用のチルトロック機構を含む車両の例では、モータも、(例えば、冗長性のために)傾斜をロック可能であり得る。いくつかの例では、傾斜アクチュエータは、モータがオフの時に最大トルクを有するように構成されたモータを備えてよい。言い換えれば、バックドライブ能力が低いかまたはないモータは、主要なまたは補助的なチルトロック装置として機能してよい。
【0129】
E.例示的な駐車装置
図25~26に示すように、この節では、使用していない時(例えば、ユーザが乗っていない時)に、傾斜車両を安定な位置に固定するように構成された例示的な駐車システムについて記載する。例えば、駐車システムは、車両を直立位置にロックするように構成された、上に記載されたチルトロック装置の例の1つ以上を含む、チルトロック装置を含んでよい。追加として、または代替として、駐車システムは、1つ以上の車輪を制動するように構成されたパーキングブレーキ(単数または複数)、車両が倒れるのを防止するように構成されたスタンド(単数または複数)、および/または任意の他の好適な装置(単数または複数)を含んでよい。車両駐車装置は、上に記載された車両500などの変形車両、および/または非変形傾斜車両を含む任意の他の好適な車両に含まれてよい。
【0130】
車両の駐車システムは、機械的および/または電子的に作動可能であってよい。いくつかの例では、駐車システムは、(例えば、車両の所有者、車両を含む車両共有サービスのユーザなどによって)スマートフォンアプリを介して選択的に有効または無効にされてよい。例えば、パーキングブレーキまたはチルトロック装置は、ユーザが車両の使用をやめたことを示すスマートフォンアプリからの通信に応答して係合するように構成されてよい。別の例としては、駐車システムは、ユーザが車両の使用開始を希望する(例えば、車両の使用料金を支払った)ことを示すスマートフォンアプリからの通信に応答して、チルトロックまたは他の装置を選択的に無効にするように構成されてよい。いくつかの例では、駐車システムは、追加として、または代替として、車両および/または車両と関連する関連するドッキングステーションのコンピュータを使用して、選択的に有効または無効にされる。代替として、または追加として、駐車システムの構成要素は、ユーザによって手動で作動可能であってよい。
【0131】
図25~26は、例示的なパーキングブレーキシステムを有する車両を示す部分等角図である。図25に示す例では、前輪パーキングブレーキ1502は、傾斜車両の前輪に結合される。追加のパーキングブレーキが、他方の前輪および車両の後輪(図示せず)に随意に結合される。ブレーキ1502は、車両チルトロックシステムのブラケット652に結合されるアクチュエータ1510に、ブレーキケーブル1506によって結合される。したがって、アクチュエータ1510は、チルトロックシステムが係合されると(すなわち、図25に示すように、ブラケットがロック位置に枢動されると)、パーキングブレーキを係合するように構成される。例えば、レバー664を使用してチルトロックブラケットを作動させることは、パーキングブレーキも係合してよい。システムの他のパーキングブレーキ(例えば、後輪ブレーキおよび/または第2前輪ブレーキ)は、アクチュエータ1510および/または別のアクチュエータに結合され得る。いくつかの例では、チルトロックブラケットは、パーキングブレーキシステムから選択的に分離可能であり、その結果、車両は、パーキングブレーキのいずれも係合することなく傾斜をロックされてよい。これは、車両が、傾斜をロックされながら(例えば、自律的に)推進されることを可能とする。
【0132】
図26に示す例では、前輪パーキングブレーキ1522および後輪パーキングブレーキ1526は、スタンド1540に結合されるアクチュエータ1534に、それぞれのブレーキケーブル1528、1530によって各々結合される。スタンド1540は、スタンドが車両シャシに沿って、地面から離れるように向けられる第1位置1542と、スタンドがシャシから離れ、地面に向けられる第2位置1544との間を移行可能であり、その結果、車両を直立位置に支持するのに役立つ。アクチュエータ1534は、スタンドが係合されると(すなわち、第2位置1544にあると)、ブレーキ1522および1526を係合するように構成される。第2前輪ブレーキも、このようにアクチュエータ1534に結合されてよい。
【0133】
上に記載されたパーキングブレーキは、ドラムブレーキ(単数または複数)、ディスクブレーキ(単数または複数)、および/または車輪の回動を少なくとも部分的に防止し、かつ/もしくはその他の方法で車輪をロックするのに適した任意の他の装置などの、車輪を制動するための任意の好適な装置を各々備えてよい。
【0134】
車両は、チルトロック装置、スタンド、または任意の他の車両構成要素に結合されていないパーキングブレーキシステムを含み得る。言い換えれば、パーキングブレーキ(単数または複数)は、機械的および/または電子的に作動可能であり得る専用のアクチュエータによって、作動可能であってよい。
【0135】
いくつかの例では、サーボ制御および/または電子制御ラッチは、車両共有システムのアプリ、車両コンピュータ、および/または別の好適な供給源からの通信によって解除が承認されるまで、チルトロックおよび/またはパーキングブレーキが解除されるのを防止するように構成される。このように、ラッチは、未承認のライダーによる車両の運転を防止し、また、車両を駐車モードに固定する。これは、車両が倒れ、かつ/または駐車場所から離れるのを防止するのに役立ち得、ユーザが、使用後に車両を任意の場所に置いていくことができる車両共有システムで、特に役立ち得る。
【0136】
F.例示的な車両特徴
図27~33に示すように、この節では、例示的な傾斜車両の例示的な特徴について記載する。
【0137】
図27は、車両シャシの外側部分に配置された外部バッテリモジュール1602、および車両シャシの部分の中に配置された1対の内部バッテリモジュール1606を有する例示的な車両の側面図である。外部バッテリモジュール1602を有する車両は、車両の拡張範囲(「XR」)バージョンを備えてよい。外部モジュールは、車両の拡張範囲容量の視覚的合図を提供する。図27に示す車両は、内部バッテリモジュールおよび外部バッテリモジュールの両方を有するが、一部の車両は、外部モジュールのみを有し、一部の車両は、内部モジュールのみを有する。外部または内部モジュールは、(例えば、モジュールが、車両の運転に干渉することなく、車両の好適な部分に電力を供給し得る)車両上の任意の好適な場所に配置されてよい。
【0138】
図28は、車両のバッテリ(例えば、外部モジュール1602および/または任意の他の好適なバッテリ)の無線充電を容易にするように構成された、複数の誘導充電コイル1612を有する車両の等角図である。例えば、車両のドッキングステーションは、ドッキング中に車両の充電を可能とする無線充電パッドを含んでよい。いくつかの例では、車両は、(例えば、ユーザが車両を置いていった場所から)充電パッドへ自らを自律的に駆動するように構成されてよい。コイル1612を介して車両を充電するように構成された場所は、自律再充電ゾーンおよび/またはホットスポット再充電ステーションを備えてよい。無線充電は、バッテリを交換するか、または充電プラグを接続/切断する人の介入を必要とせずに、部分的にまたは完全に自律的な方法で、車両の再充電を可能とし得る。
【0139】
図28に示された車両は、車両の機能性の様々な態様を可能とし、かつ/または支援するように構成された車載コンピュータ1616をさらに含む。コンピュータ1616は、車両のユーザ(例えば、車両に乗っている人および/もしくは車両を維持している人、または任意の他の好適な人)によって操作されるように構成される。例えば、コンピュータ1616は、車両共有サービスのユーザが、車両をレンタルし、経路をマッピングし、サービスと通信し、かつ/または任意の他の好適な機能を行うことを可能とするように構成されてよい。代替として、または追加として、コンピュータ1616は、フリート管理機能を容易にしてよい。概して、コンピュータ1616は、(例えば、キーボード、ボタン、タッチセンサ式ディスプレイ、スイッチ、音声コマンド等を介して)ユーザ入力を受け入れるように構成される。コンピュータは、追加として、または代替として、視覚ディスプレイ、1つ以上のLED、および/または任意の他の好適な装置などの、ユーザに情報を出力するように構成された装置(単数または複数)を含んでよい。いくつかの例では、コンピュータは、車両の1つ以上のセンサからの入力を制御および/または受信してよい。コンピュータ1616は、電子車両制御システムと同じデータ処理システムの一部を備えても備えなくてもよい。
【0140】
図示された例では、コンピュータ1616は、ライダーのシートの後ろ(例えば、フェンダーアセンブリ)に据え付けられている。代替として、または追加として、コンピュータは、車両シャシ(例えば、ライダーの脚の間)、車両のダッシュボード、および/または任意の他の好適な場所に配置されてよい。
【0141】
図29は、クランク駆動チェーンドライブ1630を含む車両の例を示す。チェーンドライブに結合されたペダル1634は、ユーザが手動で(例えば、自転車のように)車両をこぐことを可能とする。これは、異なる地方自治体および規制カテゴリでの展開にさらなる柔軟性を提供する。例えば、ペダルは、車両の電源が低下している時、ライダーがバッテリ残量を温存したい時、動力車の運転が禁止されているかまたは望ましくない場所(例えば、歩道)などに、使用されてよい。
【0142】
図30は、車両の傾斜リンク(この例では、4節傾斜リンクの下部バー)に結合された1対のフットパッド1640を含む車両の例を示す。フットパッドは、ユーザが車両シャシを傾斜させるのに役立つ(例えば、直接的な傾斜の足踏み作動を可能とする)。
【0143】
図31は、シャシの前端に結合されたバスケット1650を有する車両の例を示す。概して、バスケットは、車両の任意の好適な部分に固定されてよい。バスケット1650は、安全かつ/または耐候性の輸送および/または保管のための、選択的にロック可能な蓋1652を有する。これは、車両が、配送ドローンとして自律モードで仕事を課せられるのを容易にし得る。例えば、蓋は、行程の開始時に自動的にまたはコードによって固定されてよく、その後、行程の終了時に受領者が打ち込むコードによって開かれてよい。
【0144】
代替として、または追加として、バスケットは、車両のライダーのための収納空間を提供してよい。いくつかの例では、バスケットは、ヘルメット(例えば、車両共有システムまたはユーザ等によって提供されたヘルメット)を収納する。ヘルメットを収容するように構成されたバスケットは、車両のライダーが、(例えば、法律によって)ヘルメットを着用するように求められる場所、および/または任意の他の好適な場所で提供されてよい。バスケットは、ユーザが、車両の使用料金および/またはバスケットの使用料金を支払うまで、ロックされたままになるように構成されてよい。
【0145】
図32~33は、ステアリングコラムを後ろに折り畳むことによって、自律モードと有人モードとの間で変形するように構成された車両のハンドルバーに取り付けられた、例示的なウインドスクリーン1660を示す。ウインドスクリーンは、ステアリングコラムが後ろに折り畳まれると(すなわち、車両が傾斜をロックされた自律モードにあると)、車両のシートを覆うように構成され、これは、ライダーが自律動作中にシートに座ることを防止する。ウインドスクリーンは、自律モードと有人モードとの間で変形するように構成されていないか、または異なる機構(すなわち、ステアリングコラムを後ろに折り畳むこと以外)によってこれらのモード間で変形するように構成された車両に含まれてよい。
【0146】
以下の段落は、限定することなく、傾斜車両の例示的な特徴について記載する。
【0147】
a.フェイルオペレーショナル機能
いくつかの例では、車両操向システムおよび/または車両傾斜システムは、「フェイルオペレーショナル」であるように、すなわち、特定の構成要素が故障しても、少なくともある程度機能し続けるように構成される。フェイルオペレーショナルな操向および傾斜システムを有する車両は、1つ以上の個々の構成要素または構成要素の組み合わせ(例えば、モータ巻線、アクチュエータ、電子制御器、センサ等)が機能しなくなっても、(例えば、自律的に、またはライダーが)運転することができる。
【0148】
いくつかの例では、フェイルオペレーショナル車両は、各制御軸について、2つのモータおよび/またはアクチュエータ、2つの制御器、ならびに3つのセンサを有する。例えば、車両傾斜システムは、2つの傾斜アクチュエータ、2つの傾斜制御器、および3つの傾斜センサを含んでよい。いくつかの例では、2つの傾斜制御器は各々、傾斜アクチュエータのそれぞれ1つのみに結合され、他の例では、2つの傾斜制御器は、両方の傾斜アクチュエータに結合され、各々いずれのアクチュエータも制御することができる。車両が操向システムを有する場合、操向システムは、2つの操向アクチュエータ、2つの操向制御器、および3つの操向センサを含む。傾斜制御器と同様に、操向制御器は、それぞれの操向アクチュエータまたは両方の操向アクチュエータに各々結合されてよい。
【0149】
2つのセンサではなく3つのセンサのセット(例えば、3つの傾斜センサおよび/または3つの操向センサ)は、三重モジュール式冗長を可能とする。2つの傾斜センサしか含まれず、これらのセンサの1つが、欠陥のあるデータの出力を引き起こす方法で故障した場合、どのセンサが正確であるかを制御器が決定することは困難であり得る。しかしながら、3つのセンサを用いると、他の2つのセンサが、類似および/または同一の読み取り値を生成するため、故障したセンサは容易に特定される。各種類のセンサが3つあることの別の利点は、センサが正常に動作している場合に、精度および/または正確度を高めるために、(例えば、平均化、エラー補正アルゴリズム等によって)それらの出力が結合され得ることである。しかしながら、いくつかの例では、フェイルオペレーショナル車両は、各種類のセンサを2つしか含むことができない。
【0150】
フェイルオペレーショナル機能性の別の例として、操向モータ(単数または複数)(または他の好適な操向アクチュエータ)を有する車両は、操向モータが故障しても動作可能であるように構成され得る。バックドライブされるように構成される操向モータは、車両シャシが傾斜すると、車輪を傾斜させる。したがって、操向モータ(または操向制御器、または特定の態様の操向リンク)が故障した場合、車両は、自在キャスタ(FTC)モードで動作することができ、車両は、傾斜制御システムによって命令されると旋回し、バックドライブされた操向モータは、車輪を旋回させる。このように、バックドライブされるように構成された操向制御モータは、例えば、モータと操向輪(単数または複数)との間にギヤボックスを含まない場合がある。
【0151】
いくつかの例では、車両の処理論理は、特定のシステム構成要素(単数または複数)が故障した場合、特定の動作を行うように構成される。例えば、傾斜システムの故障に応答して、車両制御器は、(例えば、自律モードで)操向システムを使用して、車両が安全に停止して修理を待つことができる好適な場所まで操向するようにプログラムされてよい。
【0152】
b.制動
上に記載されたパーキングブレーキシステムに加えて、制動は、例えば、後輪のモータブレーキを介してソフトウェアを通じて達成されてよい。前輪ブレーキまたは3つすべてのブレーキのサーボモータ作動と併せて、車両は、冗長制動システムを有してよい。パーキングブレーキでは、モータの相線を、電気機械的に、またはソフトウェア制御を介して交差させてよく、さらなる機械化またはライダーによる作動なしで、後輪を有効にロックする。
【0153】
c.回生制動を備えるアンチロックブレーキシステム(ABS)
車両は、推進システム(例えば、後部車輪を駆動するハブモータ)を制動力に使用して、ABSブレーキおよび/または回生制動能力を組み込むように設計され得る。例えば、アンチロックおよび回生機能性を有する制動システムは、(例えば、非制動輪上の)外部車輪速センサを使用して、かつ/またはモータの整流センサを使用して、トラクションの喪失を示すモータ減速の非線形性を検出するように構成されてよい。トラクションの喪失を示す感知されたデータに応答して、モータ制御器により、モータは、トラクションが回復されるまで制動トルクを部分的にまたは完全に低減し、次いで回生トルクを再び加える。
【0154】
d.ペイロード重量の推定
いくつかの例では、車両は、例えば、ロードセル、歪みゲージ等の専用のセンサを含むことなく、そのペイロード(例えば、ライダー(単数または複数)、同乗者(単数または複数)、および/または車両シャシ上または車両シャシ内の積荷)の重量を自動的に決定するように構成される。推定ペイロード重量は、例えば、車両制御アルゴリズムの態様を調節し、車両懸架装置を調節し、モータ制御(例えば、加速度曲線)を調節し、顧客に請求する金額を自動的に決定するため、積荷もしくはライダーの喪失もしくは予期せぬ物体の存在などの問題を特定するため、かつ/または任意の他の好適な目的のために、車両の処理論理によって使用されてよい。ペイロード重量の推定は、ペイロードの質量分率が重要な場合がある軽量配送車両に特に有用であり得る。
【0155】
ペイロード重量の自動推定方法は、車両総重量(すなわち、ペイロードの重量を含む)を決定すること、および既知の車両装備重量(すなわち、荷降ろしされた車両の重量)を差し引いてペイロード重量を推定することを含んでよい。車両総重量は、任意の好適な方法で決定されてよい。例えば、車両制御器は、トラクションモータ(単数または複数)に入力される電力を決定し、(例えば、車輪速の変化を測定することによって、または加速度計を使用して加速度を直接測定することによって)車両加速度を決定するように構成されてよい。入力電力および加速度に基づいて、モータ効率および任意の他の関連因子を考慮して、車両制御器は、車両総重量を推定し得る。既知の車両の風袋重量が、総重量から差し引かれて、ペイロード重量の推定値を得る。
【0156】
モータ効率に加えて、ペイロード重量の推定で考慮され得る他の関連因子としては、風の抵抗、転がり抵抗、車両が走行している表面の傾き(例えば、上り坂、下り坂、平地等)、および/または任意の他の好適な因子が挙げられ得る。走行面の傾きは、車両の加速度計もしくはジャイロスコープを使用して車両のピッチ角を推定することによって、GPS読み取り値を使用して車両の高度変化を決定することによって、かつ/または(例えば、GPSもしくは他の位置データ併せて)地図データを使用して車両の場所の高度勾配を特定することによって、決定されてよい。場合によっては、ペイロード推定計算は、車両が水平面を走行している時にもっとも単純であるので、走行面の傾きの推定は、表面が水平であるかどうかを特定するのに主に使用され得る(これは条件がペイロード推定に良好であることを示す)。
【0157】
車両総重量の推定に使用されてよい(すなわち、モータ入力電力に加えて使用されてよい)他の測定値としては、車両を停止し、かつ/またはある量だけ減速するのに必要な制動力、および回生制動システムによって発生する電力が挙げられ得る。
【0158】
前述の例は、専用の重量センサの存在なしでペイロード重量を推定する方法について記載しているが、専用の重量センサは、随意に含まれてよい。
【0159】
e.フリートタイヤ圧監視システム(TPMS)
いくつかの例では、車両の1つ以上の車輪は、空気入りタイヤを含んでよい。車両は、タイヤ圧を感知するように構成された圧力センサ(単数または複数)を含んでよく、車両の制御器は、感知されたタイヤ圧が低すぎる場合、特定の動作を行うように構成されてよい。例えば、車両制御器は、低い圧力読み取り値に応答して、ライダーに警告し、エラー信号を送信し、車速を落とし、かつ/または車両を安全な場所に誘導しようとしてよい。いくつかの例では、感知されたタイヤ圧は、周期的または連続的に遠隔測定されて別の場所(例えば、遠隔コンピュータ、別の近くの車両、クラウドベースのデータストア、および/または任意の他の好適な場所)に送られる。これは、特に自律車両または車両共有の車両の集団の、車両用タイヤの簡便な監視およびメンテナンスを可能とし得る。
【0160】
f.交換可能なスキッドプレート底
交換可能なスキッドプレートが、車両の下側(例えば、シャシの底面)に組み込まれてよい。スキッドプレートは、シャシおよび/もしくは他の車両部品を保護する傾向があり、それにより、車両の寿命を延ばし、かつ/または車両の修理間隔を延ばす。スキッドプレートは、金属、プラスチック、および/または任意の他の好適な材料で作られてよい。交換可能なスキッドプレートは、容易に解放可能な方法で車両シャシに取り付けられてよく、最初のスキッドプレートを除去すること、および(例えば、最初のものが損傷しているか、または検査もしくは修理が必要なため)新しいものを取り付けることを容易にする。
【0161】
g.横転からの復帰
本教示の態様による傾斜車両は、車両リンク(単数または複数)の重要な関節接合を可能とする。いくつかの例では、この関節接合は、事故または衝突の後に車両の向きを補正するのに使用され得る。例えば、車両のシャシおよび/またはリンクは、協調したリンクとドライブトレインの作動との組み合わせによって、車両を完全に逆さまの状態から直立させることを可能とするように構成され得る。自律モードで動作する車両では、そのような横転からの復帰能力は、横転につながる軽微な事故から普通なら生じ得る失われた運転時間、および軽微な事故に対応するために普通なら必要な人の時間を大きく低減する。
【0162】
場合によっては、自動的に横転から復帰することができる車両は、事故後に人の介入をまったく必要としない。例えば、本明細書に記載されたような自律的に動作する車両は、比較的小さい大きさおよび重量を有してよく、その結果、車両を巻き込む大抵の事故は軽微なものになる(すなわち、他の車両、物体、または人への重大な被害をもたらさず、直立した後に車両を動作不能にしない)。したがって、車両が、事故後に自らを直立位置に戻すことができる場合、事故現場で行動を取る必要がない場合がある。別の例として、有人モードで動作する車両は、事故後に車両運転者からの介入なしで、自らを直立させることができてよい。これは、運転者にとって便利であり得、車両が事故後に著しく損傷していないことを運転者に実証し得る。
【0163】
h.さらなる特徴
方向指示器が、意図する走行方向を他の車両に示すために、ハンドルバーの端部にあってよい。バーが後ろにある自律モードでもヘッドライトが前方を指し続けるように、リンクが、ヘッドライトに存在してよい。自律モードでは、スロットル調整は、有人動作モード時にバックドライブされ得る、ハンドスロットルを直接駆動するモータで、またはソフトウェアを通じて直接、達成されてよい。
【0164】
G.センサの傾斜および変位に関連する例示的なシステムおよび方法
図34~35を参照して、この節では、車両100などの自律傾斜車両のセンサの傾斜および/または横変位の特定の影響を考慮し、かつ/または防止することに関する、例示的なシステムおよび方法について記載する。
【0165】
上に記載されたように、自律傾斜車両は、1つ以上のセンサを含んでよく、その少なくともいくつかは、車両シャシの傾斜部に据え付けられてよい。他の方法で構成されない限り、傾斜シャシに据え付けられたセンサは、車両の運転中に傾斜すると予想される。一部の種類のセンサでは、この傾斜は、(例えば、センサ機能に干渉すること、感知されたデータが、傾斜していないセンサによって取得されるであろうデータと異なる原因となること等によって)センサが取得するデータに悪影響を及ぼし得る。例として、自律傾斜車両は、傾斜車両フレームに据え付けられた1つ以上のカメラ、レーダ装置、LIDAR装置等を含んでよい。これらの装置によって感知されるデータは、ナビゲーション、経路探索、車両環境に関する情報の決定等のために、車両の処理論理に入力されてよい。しかしながら、センサが傾斜している場合、感知されたデータを、処理論理が意図されたように使用するのは困難であり得る。例えば、車両の走行方向を決定するように構成されたコンピュータビジョンアルゴリズムは、入力データが、車両の前の光景の傾斜した画像である場合、不正確な結果を生成し得る。
【0166】
傾斜したセンサに関連する問題を防止するための方法の例は、感知されたデータを車両の傾斜に基づいて補正し、傾斜していないセンサによって取得されたであろうデータを近似する補正されたデータを生成することである。例えば、車両の処理論理は、車両の傾斜に関する情報(例えば、傾斜角、角速度等)を受信し、傾斜情報に基づいて、回転変換および/もしくは他の因子(単数または複数)、または感知されたデータを車両の傾斜について補正および/もしくは補償するのに適した方法(単数または複数)を決定してよい。処理論理は、決定された補償因子(単数または複数)および/または方法(単数または複数)を使用して、感知されたデータを補正するようにさらに構成される。感知されたデータを補正することは、少なくとも1つの回転行列、機械学習アルゴリズム、および/または感知されたデータへのセンサの傾斜の影響を補正するための任意の他の好適な方法を使用することを含んでよい。
【0167】
補正因子(単数または複数)および/または方法(単数または複数)を決定するために処理論理が使用可能な好適な傾斜情報は、1つ以上の傾斜アクチュエータの設定、2つ以上の車両構成要素の相対な位置付け、加速度計、傾斜計、IMU、ジャイロスコープ等から得られる傾斜情報等に関する情報を含んでよい。
【0168】
車両処理論理は、補正すべきセンサデータを選択するための任意の好適な方法を使用してよい。例えば、処理論理は、特定のセンサによって感知される全データを傾斜補正してよいか、または車両傾斜情報が、問題のセンサが特定の閾値角度を超えて傾斜されていることを示す場合のみ、特定のセンサによって感知されるデータを傾斜補正してよい。感知されたデータは、取得時に自動的に、かつ/またはデータが特定の制御アルゴリズムによってアクセスされる時に要求に応じて、傾斜補正されてよい。補正されたデータは、車両処理論理によって使用されること、車両のメモリに記録されること、別の場所に伝送されること、機械学習の訓練データとして使用されること等を行われてよい。例えば、補正されたセンサ出力は、傾斜していない車両によって生成されたデータを使用するように設計された車両制御アルゴリズムへの入力として使用されてよい。
【0169】
代替として、または追加として、1つ以上のセンサは、物理センサ自体が車両とともに傾斜するのを少なくとも部分的に防止する方法で、傾斜車両に据え付けられてよい。例えば、1つ以上のセンサは、ジンバル、リンク、またはセンサのジンバリングを可能とするように構成されたロボット機構によって車両に据え付けられてよく、それにより、車両の傾斜によって引き起こされる任意のセンサ歪みを低減または排除する。例えば、センサモジュールは、ジャイロスコープによって車両に取り付けられてよく、その結果、センサモジュールは、車両とともに傾斜しない。
【0170】
いくつかの例では、センサモジュールは、モジュールを傾斜させることができる据え付けシステムによって車両に取り付けられ、据え付けシステムは、モジュールが事実上傾斜していないままであるように、モジュールの傾斜を能動的に補正するように構成された制御システムを含む。例えば、据え付けシステムは、センサモジュールの傾斜を検出するように構成された1つ以上の傾斜センサ、ならびにセンサモジュールの傾斜を調節して、センサモジュールを直立(例えば、傾斜していない)位置に戻すように構成された1つ以上のアクチュエータおよび/またはモータを含み得る。感知されたモジュールの傾斜に基づいてセンサモジュールの位置を調節することによって、据え付けシステムは、センサモジュールを傾斜していない位置に有効に維持する。
【0171】
センサモジュールの傾斜を低減または排除するように構成された据え付けシステムを含む例では、車両の処理論理は、随意に、上に記載されたように、感知されたデータをモジュールの傾斜について補正するように依然として構成されてよい。データ補正は、据え付けシステムがモジュールの傾斜を完全には防止しない場合、(例えば、車両が横転した場合に生じ得る)据え付けシステムが故障したかもしくは動作不能な場合、および/または任意の他の好適な状況に役立ち得る。
【0172】
図34~35は、例示的なセンサモジュール2008を実質的に傾斜していない位置に維持するように構成された例示的な傾斜補償マウントシステム2004を有する、例示的な自律傾斜車両2000の正面図である。マウントシステム2004は、車両2000のシャシ2014に結合されたジンバル2012を備える。センサ支持体2024は、センサ支持体およびモジュールが車両のロール軸の周りに傾斜するのを防止する方法で、モジュール2008をジンバル2012に結合する。他の例では、センサ支持体2024は省略され、センサモジュール2008はジンバルに直接接続される。
【0173】
傾斜補償マウントシステム2004は、随意に、ジンバル2012上に配置された傾斜検出器2028を含む。他の例では、傾斜検出器2028は、センサモジュールまたはセンサ支持体上に配置されてよい。傾斜検出器2028は、支持体2024とモジュール2008との間の強固な接続によりモジュール2008の傾斜に対応する、センサ支持体2024の傾斜を感知する。感知されたモジュールの傾斜に基づいて、ジンバル2012のアクチュエータは、モジュール2008が直立して(すなわち、実質的に傾斜せずに)位置付けられるように、支持体2024を回動させる。他の例では、ジンバル2012のアクチュエータは、車両の傾斜リンクの傾斜アクチュエータ(または関連する制御器)と通信してよく、ジンバルアクチュエータは、命令された車両傾斜に基づいて、傾斜を防止するように支持体2024を回動させる。
【0174】
図34は、実質的に直立した位置にある車両2000を示し、モジュール2008も直立位置にある。図35では、車両2000は、(例えば、旋回をもたらすために)傾斜しているが、モジュール2008は、傾斜補償マウントシステム2004によって直立位置に維持されている。
【0175】
図35に示すように、モジュール2008は、マウントシステム2004によって直立位置に維持されているが、車両シャシ2014の傾斜は、モジュールを、車両シャシおよび車輪リンクに対して横方向に変位させる。この横変位はまた、マウントシステム2004または類似物によってシャシに取り付けられていないセンサモジュールで(すなわち、センサモジュールが車両シャシとともに傾斜する例で)、生じる傾向がある。横変位は、場合によっては、(例えば、車両の処理論理のアルゴリズムにおける)センサモジュール2008によって感知されるデータの使用に影響を及ぼし得る。
【0176】
例えば、場合によっては、モジュール2008は、ナビゲーションおよび/またはコンピュータビジョンアルゴリズムによって使用されるLIDARモジュールを含み、これらのアルゴリズムは、車両の横方向中央の線に位置付けられたLIDARモジュールに対応するLIDARデータを予想し得る。車両の傾斜によるセンサモジュールの横変位は、したがって、アルゴリズムの失敗を引き起こす傾向がある。
【0177】
したがって、いくつかの例では、車両の傾斜によるセンサモジュールの横変位は、車両の処理論理によるデータ取得後に、上に記載された、感知されたデータの傾斜補正に類似した方法で、補正される。例えば、横変位センサが、センサモジュール2008上(および/または車両の任意の他の好適な部分上)に配置されてよく、センサモジュール2008の横変位を検出するように構成されてよい。車両の処理論理は、感知された横変位情報を使用して、センサモジュールの横変位を補正および/または補償してよい。例えば、場合によっては、変位していないセンサ(すなわち、車両の横方向中央に位置付けられたセンサ)の出力を近似するように、センサモジュール2008の出力を補正することが可能である。代替として、または追加として、車両処理論理のアルゴリズムは、それらの計算を調節して、横方向中央からのセンサの変位を考慮するように構成されてよい。
【0178】
いくつかの例では、車両のハードウェアは、センサモジュールの横変位を防止および/または低減するように構成される。横変位のハードウェア解決法は、上に記載されたデータ補正手法を置き換えてよいか、またはそれと併用されてよい。
【0179】
H.車両共有のための例示的な方法
この節では、傾斜可能車両を使用して車両共有セッションを提供するための例示的な方法3000のステップについて記載する。上記の車両の態様は、以下に記載される方法ステップで利用されてよい。適切な場合には、各ステップを行うのに使用され得る構成要素およびシステムを参照してよい。これらの参照は、説明のためであり、方法の特定のステップを行う可能な方法を限定することを意図するものではない。
【0180】
図36は、例示的な方法で行われるステップを示すフローチャートであり、方法の完全なプロセスまたはすべてのステップを列挙しているとは限らない。方法3000の様々なステップが以下に記載され、図36に示されているが、ステップは、必ずしもすべて行われる必要はなく、場合によっては、同時に、または示された順序と異なる順序で行われてもよい。
【0181】
方法3000のステップ3002は、随意に、(例えば、短時間または長時間レンタルに利用可能な車両を提供する車両共有サービスからの)ユーザによる車両のレンタルを促進することを含む。レンタルの前に、車両は、サービスの車両が使用後に返却されるドッキングステーションに配置されてよい。あるいは、車両は、車両共有サービスの前のユーザまたは運転者が車両を置いていった任意の場所に配置されてよい。車両のレンタルを促進することは、車両に取り付けられたデータ処理システム(例えば、コンピュータ、タブレット等)によってレンタル取引を実行することを含んでよい。例えば、車両コンピュータは、ユーザからのクレジットカードによる支払いに応じ、車両共有サービスのユーザアカウントにアクセスおよび請求し、かつ/またはユーザの車両レンタルを促進するのに適した任意の他の機能を行うように構成されてよい。レンタルを促進することは、取引に関する情報を、車両コンピュータから遠隔サーバにネットワークを介して通信することをさらに含んでよい。しかしながら、他の例では、レンタル取引は、車両に取り付けられていないコンピュータによって実装される。例えば、取引は、車両ドッキングステーションに取り付けられたコンピュータ、またはユーザのモバイル機器によって促進され得る。
【0182】
方法3000のステップ3004は、随意に、車両に据え付けられたバスケットまたは他の閉鎖可能な区画へのアクセスを可能とすることを含む。例えば、バスケットの蓋はロックされていてよく、ステップ3002でレンタル取引が正常に完了したことに応答してロック解除されるように構成されてよい。言い換えれば、バスケットは、車両がユーザによってレンタルされるまで使用不可能であってよい。
【0183】
いくつかの例では、バスケットは、ユーザによって着用可能なヘルメットを収容する(例えば、ユーザが車両をレンタルした後、バスケットがロック解除される)。したがって、そのような例では、ステップ3004は、ユーザにヘルメットを提供することを含む。ヘルメットの提供は、ユーザの安全性を向上させ得、かつ/または現地の規制を順守し得る。これは、ユーザが、車両共有サービスから車両をレンタルした場合に特に便利であり得、なぜなら、この状況のユーザは、車両をレンタルする時にヘルメットを携帯していない場合があるためである。
【0184】
方法3000のステップ3006は、随意に、車両駐車システムの1つ以上の態様の係合を解除することを含む。例えば、車両駐車装置(単数または複数)の係合を解除することは、スタンドを上げること、1つ以上の車輪をロックするように構成されたパーキングブレーキの係合を解除すること、および/または車両シャシがロール軸の周りに傾斜するのを防止するように構成されたチルトロック装置の係合を解除することを含んでよい。これらの機能は、1つ以上のボタン、レバー、および/または他の好適な電気機械装置のユーザによる作動に応答して、係合を解除するように構成されてよい。代替として、または追加として、1つ以上の駐車機能は、車両が正常にレンタルされたことを示す車上からの信号に応答して、自動的に係合を解除するように構成されてよい。さらに別の例として、車載コンピュータは、ユーザが、駐車装置(単数または複数)の係合を解除する指示を入力することを可能とするように構成されてよく、駐車装置(単数または複数)は、車載コンピュータからの信号に応答して、自動的に係合を解除するように構成される。
【0185】
ステップ3008で、方法3000は、随意に、車両が少なくとも短い距離(例えば、ユーザまで)自律走行することを含む。例えば、車両は、車庫、区画、または他の好適な囲いもしくは部分的な囲いを備えるドッキングステーションに配置されてよく、車両は、囲いを自動的に出るように構成されてよい。車両が自律的に動作する第1構成と、車両がライダーによって運転可能である第2構成との間で、車両が機械的に変形可能であるステップにおいて、車両は、ステップ3008では第1構成にある。概して、ステップ3008は、該当する場合、駐車システムがステップ3006で係合を解除された後に行われる。しかしながら、場合によっては、駐車システムの態様は、有人構成と自律構成との間で変形するように構成された車両の部品に連結される。例えば、駐車システムのチルトロック装置は、ハンドルバーを折り畳んだ位置にロックするように構成された機構に結合されてよい。これらの場合、駐車システムの係合を解除し、ユーザまで自律走行するステップは、合理的な順序で行われてよい。ステップ3008は、車両のモータに電力を供給することを含む。ステップ3008が行われない場合、モータへの電力供給は、任意の他の好適なステップで起こり得る。
【0186】
方法3000のステップ3010は、車両が自律構成から有人(すなわち、乗車可能)構成に変形することを含む。例えば、車両は、ユーザが手動でハンドルバーを前方に枢動させることに応答して、有人構成を取るように構成されてよい。別の例として、車両は、車載コンピュータへのユーザのコマンド入力、および/またはレンタル取引の完了に応答して、乗車可能構成を自動的に取るように構成されてよい。例えば、車両は、車両を自律構成に保持する(例えば、ハンドルバーを折り畳んだ位置に保持する)ラッチで有人構成に付勢されてよく、ラッチは、好適な信号に応答して自動的に係合を解除されるように構成されてよい。
【0187】
いくつかの例では、有人構成への変形は、ユーザの、車両のシートへのアクセスを可能とすることを含む。例えば、車両のハンドルバーは、自律構成では、車両のウインドシールドがシートを遮るように、後ろに折り畳まれてよく、ユーザが座ることを防止する。有人構成への変形は、ウインドシールドをシートから離し、シートへのアクセスを可能とする。
【0188】
方法3000のステップ3012は、ユーザを輸送することを含む。ユーザの輸送は、車両シャシの正中面を重力および遠心力(もしあれば)から生じる合力ベクトルと一直線に維持しながら、車両のシャシを自動的に傾斜させ、随意に、能動的に車両の車輪を操向して車両を選択された経路に導くことを含む。
【0189】
方法3000のステップ3014は、車両共有セッションを終了すること(すなわち、車両のレンタルを終えること)を含む。セッションを終了することは、車両のモータへの電力を無効にし、かつ/または制限することを含み、車両を徐々に減速させて停止することを含んでよい。場合によっては、セッションを終了することは、(例えば、車載コンピュータのディスプレイ、ならびに/または任意の他の好適な音響および/もしくは視覚信号を介して)セッションが終了したことをユーザに示すことを含む。
【0190】
セッションは、(例えば、モバイル機器、車載コンピュータ、および/もしくは任意の他の好適なインターフェースを介した)ユーザからのコマンドに応答して終了してよく、所定の時間の後に自動的に終了してよく、かつ/または任意の他の好適な基準に応じて自動的に終了してよい。例えば、セッションは、車両が所定の距離を超えて禁止されている場所へ走行した場合等に終了してよい。
【0191】
方法3000のステップ3016は、車両が乗車可能構成から自律構成に、自動的に、または手動ユーザ作動によって変形することを含む。
【0192】
方法3000のステップ3018は、随意に、車両が少なくとも短い距離を自律走行することを含む。例えば、車両は、近くのドッキングステーションまで自律走行し、かつ/または囲いに自動的に入るように構成されてよい。
【0193】
方法3000のステップ3020は、随意に、車両の少なくとも1つの駐車装置を、自動的に、またはユーザ操作によって係合することを含む。
【0194】
方法3000のステップ3022は、随意に、車両のバッテリをドッキングステーションで充電することを含む。例えば、車両は、無線充電コイルを含んでよく、ドックは、車両のバッテリを無線充電するように構成された無線充電送信機を含んでよい。
【0195】
I.変形傾斜可能車両を使用するための例示的な方法
この節では、傾斜可能車両を使用して車両共有セッションを提供するための例示的な方法3100のステップについて記載する。上記の車両の態様は、以下に記載される方法ステップで利用されてよい。適切な場合には、各ステップを行うのに使用され得る構成要素およびシステムを参照してよい。これらの参照は、説明のためであり、方法の特定のステップを行う可能な方法を限定することを意図するものではない。
【0196】
図37は、例示的な方法で行われるステップを示すフローチャートであり、方法の完全なプロセスまたはすべてのステップを列挙しているとは限らない。方法3100の様々なステップが以下に記載され、図38に示されているが、ステップは、必ずしもすべて行われる必要はなく、場合によっては、同時に、または示された順序と異なる順序で行われてもよい。
【0197】
方法3100のステップ3102は、随意に、車両を車両共有サービスからレンタルすることを含む。場合によっては、レンタルは、車両に搭載されたコンピュータを使用して行われてよい。
【0198】
方法3100のステップ3104は、随意に、車両の駐車システムの係合を解除することを含む。例えば、ステップ3104は、スタンドを上げること、チルトロック機構をロック解除すること等を含んでよい。いくつかの例では、車両は、(例えば、車両がレンタルされ、車両共有セッションが開始したら)駐車システムの少なくともいくつかの部品の係合を自動的に解除する。
【0199】
方法3100のステップ3106は、随意に、車両を自律構成から乗車可能構成に変形させることを含む。例えば、ステップ3106は、車両のハンドルバーを前方に傾斜させることを含んでよく、これは、車両のチルトロック装置の係合も自動的に解除し得る。他の例では、車両は、ユーザの介入なしで、乗車可能構成に自動的に変形してよい。
【0200】
方法3100のステップ3108は、その乗車可能構成で車両に乗ることを含む。
【0201】
方法3100のステップ3110は、随意に、例えば、車載コンピュータ、ユーザのモバイル機器で実行するアプリ、および/または任意の他の好適な方法にコマンドを入力することによって、車両共有セッションを終了させることを含む。いくつかの例では、セッションは、(例えば、前払いした金額の時間が経過した後に)自動的に終了し、その結果、ユーザはセッションを終了させる必要がない。
【0202】
ステップ3112は、随意に、(例えば、ハンドルバーを前方に傾斜させることによって)車両を乗車可能構成から自律構成に変形させることを含む。いくつかの例では、変形は自動的に起こる。
【0203】
ステップ3114は、随意に、チルトロック装置、スタンド、パーキングブレーキ、および/または任意の他の好適な装置などの、車両の駐車システムを係合することを含む。いくつかの例では、1つ以上の駐車装置は、自動的に係合する。
【0204】
J.例示的なデータ処理システム
図38に示すように、この例は、本開示の態様に従う、(コンピュータ、コンピューティングシステム、および/またはコンピュータシステムとも呼ばれる)データ処理システム3500について記載する。この例では、データ処理システム3500は、傾斜車両の態様を実装するのに適した例示的なデータ処理システムである。より具体的には、いくつかの例では、データ処理システムの実施形態である装置(例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ)は、車両の1つ以上の電子制御器、(例えば、車両共有サービスでの車両の使用を容易にするための)ユーザとのやり取りのために車両に設けられた車載コンピュータ、車両から遠隔のフリート管理コンピュータなどを備えてよい。例えば、傾斜、操向、および/またはモータ制御のための車両の電子制御器(単数または複数)の態様は、データ処理システムの例を使用して実装されてよい。
【0205】
この説明のための例では、データ処理システム3500は、(通信フレームワークとも呼ばれる)システムバス3502を含む。システムバス3502は、(単数または複数のプロセッサとも呼ばれる)プロセッサユニット3504、メモリ3506、永続記憶装置3508、通信ユニット3510、入力/出力(I/O)ユニット3512、コーデック3530、および/またはディスプレイ3514の間の通信を提供してよい。メモリ3506、永続記憶装置3508、通信ユニット3510、入力/出力(I/O)ユニット3512、ディスプレイ3514、およびコーデック3530は、システムバス3502を介してプロセッサユニット3504によってアクセス可能であり得るリソースの例である。
【0206】
プロセッサユニット3504は、メモリ3506にロードされ得る命令を実行する役割を果たす。プロセッサユニット3504は、特定の実装に応じて、複数のプロセッサ、マルチプロセッサコア、および/または特定の種類の単数または複数のプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)等)を備えてよい。さらに、プロセッサユニット3504は、メインプロセッサが二次プロセッサとともに単一のチップ上に存在する、複数の異種プロセッサシステムを使用して実装されてよい。別の説明のための例として、プロセッサユニット3504は、同じ種類の複数のプロセッサを含む対称型マルチプロセッサシステムであってよい。
【0207】
メモリ3506および永続記憶装置3508は、記憶装置3516の例である。記憶装置は、一時的または永続的に、データ、関数形式のプログラムコード、および/または他の好適な情報などの情報(例えば、デジタル情報)を格納することができる任意の好適なハードウェアを含んでよい。
【0208】
記憶装置3516は、コンピュータ可読記憶装置またはコンピュータ可読媒体とも呼ばれてよい。メモリ3506は、揮発性記憶メモリ3540および不揮発性メモリ3542を含んでよい。いくつかの例では、起動中などにデータ処理システム3500内の要素間で情報を伝達する基本ルーチンを含む、基本入出力システム(BIOS)は、不揮発性メモリ3542に格納されてよい。永続記憶装置3508は、特定の実装に応じて様々な形態を取ってよい。
【0209】
永続記憶装置3508は、1つ以上の構成要素または装置を含んでよい。例えば、永続記憶装置3508は、磁気ディスクドライブ(ハードディスクドライブもしくはHDDとも呼ばれる)、固体ディスク(SSD)、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ、Jazドライブ、Zipドライブ、フラッシュメモリカード、メモリスティック等、またはこれらの任意の組み合わせなどの、1つ以上の装置を含んでよい。これらの装置の1つ以上は、取り外し可能および/または持ち運び可能なもの、例えば、取り外し可能なハードドライブであってよい。永続記憶装置3508は、別々に、または他の記憶媒体と組み合わせて、1つ以上の記憶媒体を含んでよく、コンパクトディスクROM装置(CD-ROM)、記録可能CDドライブ(CD-Rドライブ)、書き換え可能CDドライブ(CD-RWドライブ)、および/またはデジタル多用途ディスクROMドライブ(DVD-ROM)などの、光ディスクドライブが挙げられる。システムバス3502への永続記憶装置3508の接続を容易にするために、インターフェース3528などの、取り外し可能または取り外し不可能なインターフェースが、典型的には使用される。
【0210】
入力/出力(I/O)ユニット3512は、データ処理システム3500に接続され得る他の装置とのデータの入力および出力を可能とする(すなわち、入力装置および出力装置)。例えば、入力装置は、キーボード、マウス、トラックボール、スタイラス、タッチパッドまたはタッチスクリーン、マイクロホン、ジョイスティック、ゲームパッド、サテライトディッシュ、スキャナ、TVチューナカード、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ウェブカメラ等のような、1つ以上のポインティングおよび/または情報入力装置を含んでよい。これらのまたは他の入力装置は、インターフェースポート(単数または複数)を介してシステムバス3502を通してプロセッサユニット3504に接続されてよい。好適なインターフェースポート(単数または複数)としては、例えば、シリアルポート、パラレルポート、ゲームポート、および/またはユニバーサルシリアルバス(USB)が挙げられ得る。
【0211】
1つ以上の出力装置は、同じ種類のポートの一部、場合によっては、入力装置(単数または複数)と実際に同じポートを使用してよい。例えば、USBポートは、データ処理システム3500に入力を提供し、データ処理システム3500から出力装置に情報を出力するのに使用されてよい。1つ以上の出力アダプタが、特殊なアダプタを必要とする特定の出力装置(例えば、とりわけ、モニタ、スピーカ、およびプリンタ)のために設けられてよい。好適な出力アダプタとしては、例えば、出力装置とシステムバス3502との間の接続手段を提供するビデオおよびサウンドカードが挙げられ得る。遠隔コンピュータ(単数または複数)3560などの、他の装置および/または装置のシステムは、入力および出力機能の両方を提供してよい。ディスプレイ3514は、任意の好適なヒューマンマシンインターフェース、またはユーザに情報を表示するように構成された他の機構、例えば、CRT、LED、またはLCDモニタまたはスクリーン等を含んでよい。
【0212】
通信ユニット3510は、他のデータ処理システムまたは装置との通信を提供するために採用される任意の好適なハードウェアおよび/またはソフトウェアを指す。通信ユニット3510は、データ処理システム3500の内部に示されているが、いくつかの例では、データ処理システム3500の少なくとも部分的に外部に存在してよい。通信ユニット3510は、例えば、モデム(通常の電話グレードモデム、ケーブルモデム、およびDSLモデムを含む)、ISDNアダプタ、ならびに/または有線および無線イーサネットカード、ハブ、ルータ等の、内部および外部技術を含んでよい。データ処理システム3500は、1つ以上の遠隔コンピュータ3560への論理接続を使用して、ネットワーク環境で動作してよい。遠隔コンピュータ(単数または複数)3560は、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ワークステーション、マイクロプロセッサベースのアプライアンス、ピア装置、スマートフォン、タブレット、別のネットワークノート等を含んでよい。遠隔コンピュータ(単数または複数)3560は、典型的には、データ処理システム3500に関して記載された要素の多くを含む。遠隔コンピュータ(単数または複数)3560は、通信ユニット3510を介してデータ処理システム3500に接続されるネットワークインターフェース3562を通して、データ処理システム3500に論理的に接続されてよい。ネットワークインターフェース3562は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、およびセルラーネットワークなどの、有線および/または無線通信ネットワークを包含する。LAN技術は、光ファイバ分散データインターフェース(FDDI)、銅線分散データインターフェース(CDDI)、イーサネット、トークンリング等を含んでよい。WAN技術は、ポイントツーポイントリンク、回線交換ネットワーク(例えば、サービス総合デジタル網(ISDN)およびその変形)、パケット交換ネットワーク、ならびにデジタル加入者線(DSL)を含む。
【0213】
コーデック3530は、エンコーダ、デコーダ、または両方を含んでよく、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを備える。コーデック3530は、伝送および保存のために、データストリームまたは信号を符号化、圧縮、および/または暗号化し、(例えば、動画の再生または編集のために)データストリームまたは信号を復号、解凍、および/または解読することによって、データストリームまたは信号を復号するように構成された、任意の好適な装置および/またはソフトウェアを含んでよい。コーデック3530は、別個の構成要素として示されているが、コーデック3530は、メモリ、例えば、不揮発性メモリ3542内に含まれるか、または実装されてよい。
【0214】
不揮発性メモリ3542は、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能ROM(PROM)、電気的プログラム可能ROM(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ等、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。揮発性記憶メモリ3540は、外部キャッシュメモリとして働き得るランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでよい。RAMは、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、同期型DRAM(SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDR SDRAM)、拡張SDRAM(ESDRAM)等、またはこれらの任意の組み合わせを備えてよい。
【0215】
システム、アプリケーション、および/またはプログラムを動作させるための命令は、システムバス3502を通してプロセッサユニット3504と通信する記憶装置3516内にあってよい。これらの説明のための例では、命令は、関数形式で永続記憶装置3508内にある。これらの命令は、プロセッサユニット3504による実行のために、メモリ3506にロードされ得る。本開示の1つ以上の実施形態のプロセスは、メモリ3506などのメモリ内にあり得るコンピュータ実装命令を使用して、プロセッサユニット3504によって行われ得る。
【0216】
これらの命令は、プロセッサユニット3504内のプロセッサにより実行されるプログラム命令、プログラムコード、コンピュータ使用可能プログラムコード、またはコンピュータ可読プログラムコードと呼ばれる。異なる実施形態のプログラムコードは、メモリ3506または永続記憶装置3508などの、異なる物理またはコンピュータ可読記憶媒体に具現化されてよい。プログラムコード3518は、関数形式で、選択的に取り外し可能なコンピュータ可読媒体3520上にあってよく、プロセッサユニット3504による実行のために、データ処理システム3500にロードまたは転送され得る。プログラムコード3518およびコンピュータ可読媒体3520は、これらの例では、コンピュータプログラム製品3522を形成する。一例では、コンピュータ可読媒体3520は、コンピュータ可読記憶媒体3524またはコンピュータ可読信号媒体3526を備えてよい。
【0217】
コンピュータ可読記憶媒体3524は、例えば、永続記憶装置3508の一部であるハードドライブなどの記憶装置への転送のために、永続記憶装置3508の一部であるドライブまたは他の装置内に挿入または配置される、光または磁気ディスクを含んでよい。コンピュータ可読記憶媒体3524はまた、データ処理システム3500に接続される、ハードドライブ、サムドライブ、またはフラッシュメモリなどの永続記憶装置の形態を取ってよい。いくつかの例では、コンピュータ可読記憶媒体3524は、データ処理システム3500から取り外し可能ではない場合がある。
【0218】
これらの例では、コンピュータ可読記憶媒体3524は、プログラムコード3518を伝播または伝送する媒体ではなく、プログラムコード3518を格納するのに使用される非一時的物理または有形記憶装置である。コンピュータ可読記憶媒体3524は、コンピュータ可読有形記憶装置またはコンピュータ可読物理記憶装置とも呼ばれる。言い換えれば、コンピュータ可読記憶媒体3524は、人が触ることができる媒体である。
【0219】
あるいは、プログラムコード3518は、コンピュータ可読信号媒体3526を使用して、例えば、ネットワークを介して遠隔で、データ処理システム3500に転送されてよい。コンピュータ可読信号媒体3526は、例えば、プログラムコード3518を含む伝播データ信号であってよい。例えば、コンピュータ可読信号媒体3526は、電磁信号、光信号、および/または任意の他の好適な種類の信号であってよい。これらの信号は、無線通信リンク、光ファイバケーブル、同軸ケーブル、有線、および/または任意の他の好適な種類の通信リンクなどの、通信リンクを介して伝送されてよい。言い換えれば、通信リンクおよび/または接続は、説明のための例では、物理的または無線であってよい。
【0220】
いくつかの例示的な実施形態では、プログラムコード3518は、データ処理システム3500内で使用するために、コンピュータ可読信号媒体3526を通して別の装置またはデータ処理システムから永続記憶装置3508に、ネットワークを介してダウンロードされてよい。例えば、サーバデータ処理システムのコンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラムコードは、サーバからデータ処理システム3500に、ネットワークを介してダウンロードされてよい。プログラムコード3518を提供するコンピュータは、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、またはプログラムコード3518を格納および伝送することができる他の装置であってよい。
【0221】
いくつかの例では、プログラムコード3518は、オペレーティングシステム(OS)3550を備えてよい。永続記憶装置3508に格納されてよいオペレーティングシステム3550は、データ処理システム3500のリソースを制御しかつ割り当てる。1つ以上のアプリケーション3552は、プログラムモジュール3554を介したオペレーティングシステムのリソース管理、および記憶装置3516に格納されたプログラムデータ3556を利用する。OS 3550は、アプリケーション3552による共有および使用のために、コンピュータ3500のハードウェアリソースを管理および公開するように構成された、任意の好適なソフトウェアシステムを含んでよい。いくつかの例では、OS 3550は、異なる種類のハードウェアの接続を容易にし、かつ/またはアプリケーション3552にハードウェアおよびOSサービスへのアクセスを提供する、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を提供する。いくつかの例では、あるアプリケーション3552は、例えば、いわゆる「ミドルウェア」と同様に、他のアプリケーション3552が使用するためのさらなるサービスを提供してよい。本開示の態様は、様々なオペレーティングシステムまたはオペレーティングシステムの組み合わせに対して実装されてよい。
【0222】
データ処理システム3500について説明された異なる構成要素は、異なる実施形態が実装され得る方法にアークテクチャ上の制限を設けることを意図していない。本開示の1つ以上の実施形態は、より少ない構成要素を含むか、またはコンピュータ3500について説明されたものに加えてかつ/もしくはその代わりに構成要素を含む、データ処理システムに実装されてよい。図38に示された他の構成要素は、示された例から変動し得る。異なる実施形態が、プログラムコードを実行することができる任意のハードウェア装置またはシステムを使用して実装されてよい。一例として、データ処理システム3500は、無機構成要素と統合された有機構成要素を含んでよく、かつ/または(人間を除く)有機構成要素で完全に構成されてよい。例えば、記憶装置は、有機半導体で構成されてよい。
【0223】
いくつかの例では、プロセッサユニット3504は、特定の使用のために、または特定の結果もしくは経過をもたらすように、特に製造または構成されるハードウェア回路を有するハードウェアユニットの形態を取ってよい。この種類のハードウェアは、演算を行うように構成されるために、プログラムコード3518が記憶装置からメモリにロードされることを必要とせずに、演算を行ってよい。例えば、プロセッサユニット3504は、回路システム、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能論理装置、または複数の演算を行うように構成された(例えば、事前構成もしくは再構成された)他の好適な種類のハードウェアであってよい。プログラム可能論理装置を用いて、例えば、装置は、複数の演算を行うように構成され、その後再構成されてよい。プログラム可能論理装置の例としては、プログラム可能論理アレイ、フィールドプログラマブル論理アレイ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および他の好適なハードウェア装置が挙げられる。この種類の実装で、実行可能な命令(例えば、プログラムコード3518)は、例えば、ハードウェア記述言語(HDL)を使用してFPGA構成を指定し、次いで、生じるバイナリファイルを使用してFPGAを(再)構成することによって、ハードウェアとして実装されてよい。
【0224】
別の例では、データ処理システム3500は、FPGAベースの(または場合によってはASICベースの)専用の状態機械(例えば、有限状態機械(FSM))のセットとして実装されてよく、重要なタスクが分離され、カスタムハードウェア上で実行されることを可能とし得る。CPUなどのプロセッサは、それに提供される命令を実行する共用の汎用状態機械として記述することができるが、FPGAベースの状態機械(単数または複数)は、専用に構築され、リソースを共有することなくハードウェア符号化論理を実行し得る。そのようなシステムは、しばしば、安全関連および基幹タスクに利用される。
【0225】
さらに別の説明のための例では、プロセッサユニット3504は、コンピュータおよびハードウェアユニットで見られるプロセッサの組み合わせを使用して実装されてよい。プロセッサユニット3504は、複数のハードウェアユニット、およびプログラムコード3518を実行するように構成された複数のプロセッサを有してよい。この示された例で、プロセスのいくつかは、複数のハードウェアユニットで実装されてよく、一方、他のプロセスは、複数のプロセッサで実装されてよい。
【0226】
別の例では、システムバス3502は、システムバスまたは入力/出力バスなどの、1つ以上のバスを備えてよい。もちろん、バスシステムは、バスシステムに取り付けられた異なる構成要素または装置間でデータの転送を提供する任意の好適な種類のアーキテクチャを使用して実装されてよい。システムバス3502は、メモリバスもしくはメモリ制御器、周辺機器用バスもしくは外部バス、ならびに/または任意の様々な利用可能なバスアーキテクチャ(例えば、業界標準アーキテクチャ(ISA)、マイクロチャネルアーキテクチャ(MSA)、拡張ISA(EISA)、インテリジェントドライブエレクトロニクス(IDE)、VESAローカルバス(VLB)、ペリフェラルコンポーネントインターコネクト(PCI)、カードバス、ユニバーサルシリアルバス(USB)、アドバンストグラフィックスポート(AGP)、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会バス(PCMCIA)、Firewire(IEEE 1394)、および小型計算機システムインターフェース(SCSI))を使用するローカルバスを含む、いくつかの種類のバス構造(単数または複数)を含んでよい。
【0227】
加えて、通信ユニット3510は、データを送信するか、データを受信するか、またはデータの送受信の両方を行う、複数の装置を含んでよい。通信ユニット3510は、例えば、1つのモデムもしくは1つのネットワークアダプタ、2つのネットワークアダプタ、またはそれらのいくつかの組み合わせであってよい。さらに、メモリは、例えば、メモリ3506、またはシステムバス3502に存在し得るインターフェースおよびメモリコントローラハブで見られるもののような、キャッシュであってよい。
【0228】
利点、特徴、および利益
本明細書に記載された車両の種々の実施形態および例は、既知のシステムに対するいくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に記載された例示的な実施形態および例は、傾斜車両が、有人モードと傾斜をロックされた自律モードとの間で変形することを可能とする。
【0229】
加えて、いくつかある利益の中でもとりわけ、本明細書に記載された例示的な実施形態および例は、傾斜補償センサを使用して姿勢依存情報を感知することを可能とする。
【0230】
加えて、いくつかある利益の中でもとりわけ、本明細書に記載された例示的な実施形態および例は、ライドシェアリングサービスの車両に適した車両特徴を可能とする。
【0231】
既知のシステムまたは装置は、これらの機能を果たせない。しかしながら、本明細書に記載されたすべての実施形態および例が、同じ利点または同程度の利点を提供するわけではない。
【0232】
結論
上述の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の例を包含してよい。これらの各々は、その好ましい形態(単数または複数)で開示されているが、本明細書で開示および説明されたようなその特定の実施形態は、多くの変形形態が可能であるため、限定的な意味と見なされるべきではない。節の見出しが本開示内で使用される限り、そのような見出しは単に構成用である。開示の主題は、本明細書に開示された様々な要素、特徴、機能、および/または性質の、すべての新規および非自明の組み合わせおよび組合せの構成要素を含む。以下の特許請求の範囲は、新規および非自明と見なされる、ある組み合わせおよび組合せの構成要素を具体的に指摘する。特徴、機能、要素、および/または性質の他の組み合わせおよび組合せの構成要素は、本出願または関連出願からの優先権を主張する出願で特許請求されてよい。そのような特許請求の範囲も、元の特許請求の範囲より広いか、狭いか、等しいか、または異なるかにかかわらず、本開示の主題内に含まれると見なされる。
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