(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】弾頭、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F42B 1/036 20060101AFI20240520BHJP
F42B 1/032 20060101ALI20240520BHJP
F42B 1/028 20060101ALI20240520BHJP
F42B 12/10 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F42B1/036
F42B1/032
F42B1/028
F42B12/10
(21)【出願番号】P 2021552192
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 SE2020050257
(87)【国際公開番号】W WO2020190193
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518357852
【氏名又は名称】ベーアーエー・システムズ・ボフォース・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS BOFORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ハムダン,ハムザー
(72)【発明者】
【氏名】トゥーマン,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,ビョルン
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08813651(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289529(US,A1)
【文献】特開2008-121953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291022(US,A1)
【文献】特開平05-066099(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02681677(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 1/036
F42B 1/032
F42B 1/028
F42B 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性爆破作用を有する弾頭(1)を製造する方法であって、
前記方法は、
外側ケーシング(2)を作成するステップと、
その中に、弾薬(3)を、空洞(6)が前記弾薬(3)の前端(5)に位置する状態
で配置するステップと、
前記弾薬(3)の表面に、前記空洞(6)の形状に対応する形状のインサート(7)を配置するステップと、
貫通体(8)を前記弾頭(1)の前端部に配置するステップと、
を含み、
前記方法はさらに、
付加製造プロセスで前記インサート(7)に材料(10a、10b)を付着させるステップをさらに含み、
付着される前記材料(10a、10b)の増大または減少をもたらすために、付着される前記材料(10a、10b)は、様々な速度又は温度で敷設され、
多くの異なる材料(10a、10b)が前記インサート(7)の上にゾーンごとに付着し、1つの層内で星型の幾何学的な配置を形成し、
前記貫通体(8)は、お椀状の形状である、
方法。
【請求項2】
前記幾何学的な配置が、十字型、円、またはリング形状である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
付着される前記材料(10a、10b)が、2つ以上の重なり合う層で敷設されるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1つに記載の方法によって製造され、
外側ケーシング(2)と、
弾薬(3)であって、空洞(6)が前記弾薬(3)の前端(5)に位置する状態の弾薬(3)と、
インサート(7、9)と、を含み、
材料(10a、10b)が、前記インサート(7、9)上に付着される、弾頭。
【請求項5】
付着される前記材料(10a、10b)が、前記インサートの上にゾーンごとに配置される、請求項4に記載の弾頭。
【請求項6】
多くの異なる材料(10a、10b)が前記インサートの上に付着される、請求項
4または5に記載の弾頭。
【請求項7】
付着される材料(10a、10b)が、反応性材料である、
請求項4-6のいずれか1つに記載の弾頭。
【請求項8】
付着される材料(10a、10b)が、アモルファス構造を有する、
請求項4-7のいずれか1つに記載の弾頭。
【請求項9】
前記インサート(7、9)が、薄いプレートを含む、
請求項4-8のいずれか1つに記載の弾頭。
【請求項10】
2つ以上の材料(10a、10b)が、重なり合う層として配置される、
請求項6に記載の弾頭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性爆破作用(directed blasting action)を有する弾頭を製造する方法に関するものであり、この方法は、外側ケーシングを作成するステップと、その中に、空洞が弾薬(charge)の前端に位置する状態で弾薬を配置するステップと、弾薬の表面に、空洞の形状に対応する形状のインサートを配置するステップとを含む。
【0002】
本発明はまた、この方法に従って製造され、外側ケーシングと、空洞が前端に位置する弾薬と、インサートと、を備える弾頭に関する。
【背景技術】
【0003】
指向性爆破作用(RSV)弾頭は、主に装甲を貫通するために古くから使用されている。RSV弾頭は一般的に、前端、つまり標的に向けられた端に空洞を持つ弾薬からなる。爆破作用は対象物の限られた範囲に集中し、対象物に深くて狭い穴を開けることができる。空洞の形状は円錐形が多いが、他の形状も考えられる。
【0004】
さらに、空洞に、例えば円錐形などの空洞の形状に合った金属製のインサートが敷かれる場合、そのインサートが指向性爆破作用の効果をさらに高める機能を果たし得る。爆破された弾薬のエネルギーにより、インサートは金属の噴射体(jet)または凝集性のある飛翔体(projectile)に変身する。このプロセスにとって重要な要素は、金属の量と爆発物の量の相互関係、および金属と爆発物の材料特性である。キャビティおよびインサートの正確な形状自体も、弾頭の効果に大きな影響を与える。
【0005】
経時的に、装甲とそれに対応する防御構造が進歩し、指向性爆破作用を持つものと持たないものの両方の弾頭に対する防御の向上が実現してきた。この進歩の一環として、指向性爆破作用を持つ弾頭の貫通能力も増加しており、周囲への被害を最小限に抑えるために、その効果と精度をさらに向上させるために広く努力がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、できるだけ費用対効果の高い方法で製造できる、より効果的な弾頭を作ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上述の方法が、付加製造(additive manufacturing)プロセスでインサートに材料を付着(deposit)させるステップをさらに含むことを特徴とする点で達成される。
【0008】
弾頭については、インサートに材料を付着させることを特徴とする点で目的が達成される。
【0009】
本発明に1つ以上の従属請求項に基づく1つ以上の特性が付与されている場合、さらなる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明を添付の図面を参照して説明する。
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態で採用される弾頭を示す。
【
図2a】
図2aは、本発明の第二の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体(piercing body)を示す。
【
図2b】
図2bは、本発明の第二の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図3a】
図3aは、本発明の第三の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図3b】
図3bは、本発明の第三の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図4a】
図4aは、本発明の第四の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図4b】
図4bは、本発明の第四の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図5a】
図5aは、本発明の第五の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図5b】
図5bは、本発明の第五の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図6a】
図6aは、本発明の第六の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図6b】
図6bは、本発明の第六の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図7a】
図7aは、本発明の第七の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【
図7b】
図7bは、本発明の第七の実施形態に係る弾頭に含まれる貫通体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態
図1は、RSV弾頭1を示しており、その主な特徴は従来の技術と同様である。弾頭1は、爆発性の弾薬3を封入する外側ケーシング2を有する。起爆要素(initiating element)4は、所定の時間に弾薬3を起爆させるように構成される。
【0013】
弾薬3は、その前端5に、ターゲットに向けられた空洞6を有し、
図1では主に円錐形の形状をしている。空洞6の内面には、インサート7が設けられている。この点において、弾頭1は従来技術に従って構成されており、
図1による弾頭1の爆発により、インサート7は、装甲などに対して大きな貫通能力を有する噴射体、すなわち飛翔体を形成することになる。
【0014】
好適な一実施形態では、インサート7は、少なくとも部分的に金属でできている。本発明の好適な実施形態によれば、インサート7は、材料がベース構造上に付着される構造を有しており、このベース構造は、特定の変形例では金属であるが、本発明の他の変形例によれば、ポリマ、セラミック材料、ガラス状のアモルファス材料などの異なる材料からなる。
【0015】
付着した材料は、何らかの付加製造プロセスによってベース構造上に配置される。その材料は、粉末状またはワイヤ状で塗布され(apply)てもよく、付着に関連して溶融され、弾頭1のベース構造上の所望の場所に直ちに固定される。付着材料は、金属であってもよいが、ポリマ、セラミック材料、ガラス状のアモルファス材料など、異なる材料であってもよい。付着させるという用語は、ここでは材料が好ましくは付加製造法で塗布されることを意味する。
【0016】
付加製造において粉末とワイヤのどちらを選択するかは、特に製品の幾何学的な寸法および完成品に要求される強度に基づく。選択はまた、望ましい材料がどのような形で入手できるかにも依存する。粉末は、狭い場所での製造、すなわち供給される材料が小さい寸法の空間に到達することが想定される場合に、しばしば好まれる。しかし、ワイヤ状の材料は、一般的にコスト効率が高く、現状の寸法や強度の要求に対して十分であるとみなされることが多い。また、ワイヤ状の材料は、意図せずに周囲に漏れる材料の量が少なく、すなわち製造の際に埃が全く出ないという製造上の利点がある。
【0017】
塗布された材料の溶融に高温が使用されると、基礎となるベース構造の材料が何らかの影響を受けることを意味し得る。このような影響を望まない場合は、実際の温度の影響を受けないようにベース構造の材料を選択する。完成品で特定の効果を得るために影響を受けることが望ましい場合は、所望の効果を得るために、ベース構造の材料と塗布材料の材料選択が調整される。
【0018】
ベース構造の材料と塗布材料を適切に選択することで、ベース構造の材料は、溶けたり、脆くなったり、塗布材料と合金を形成したりする。代替の方法は、ベース構造と塗布材料が互いの物理的特性に影響を及ぼさないことである。特定の実施形態における塗布材料の層は、ベース構造を構成する材料の特定のゾーンにおいて、より薄くまたはより厚く作られる。これは、様々な方法で達成することができる。例えば、材料を付着させる温度、および/または速度を変化させる方法がある。また、同じ材料を複数の層に敷設して、一緒に厚い層を形成してもよい。
【0019】
また、ベース構造の、異なるゾーンに、特性が異なる複数の材料を敷設することも考えられる。異なった材料を備えるゾーンは、特定の場合には互いに十分な境界を有し、かなりの距離を置いて配置されてもよい。他のケースでは、それらは互いに当接して敷かれ、さらには重なり合っていることすらもあり得る。
【0020】
塗布される材料の特性に応じて、これらの材料は互いに合金を形成したり、爆発時に所定の順序で反応したりする。また、爆発時にインサート7がどのように噴射体を形成するかにも影響を与える可能性がある。これらすべての場合において、材料の成分、その配置、および材料の付着の温度は、塗布された材料とベース構造が一緒になって、弾頭に所望の効果をもたらすインサート7を作成するという結果となるように選択される。
【0021】
塗布された材料とベース構造によって形成されたインサートのあらゆる意図的な希薄化により、噴射体の形成に影響を与えることに加え、弾頭1の爆発時に、制御された破砕(fragmentation)を生じさせることができる。
【0022】
塗布材料として選択できる材料の例としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ステンレス鋼を含む様々な等級の鋼、銅、鉄、タンタルなどがある。材料の中には、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどの反応性材料、タンタルなどの成形可能な材料、銅、鉄、タンタルなどの高密度の材料など、特定の用途で求められる明確な特性を持つものがある。このような特性の違いを利用して、形成された噴射体に速度や貫通能力などを含む望ましい効果が生み出される。
【0023】
図2aは、本発明の別の実施形態に係る貫通体8を示す。このような貫通体8は、前述の実施形態のインサート7と同様に、弾頭1の前端5に配置されているが、長さ方向への延びが少ないため、その形状はむしろお椀やプレートのようなものに近くなる。
【0024】
貫通体8は、お椀状のベース構造9を含み、このベース構造9は、
図1の構造と同様に、金属製であるが、上述したように、他の多くの材料で作られてもよい。ベース構造9の一方の側には、2つの異なる塗布材料10a、10bが配置されている。図示の例示的な実施形態では、材料10a、10bは、ベース構造9の凸側に配置されている。
【0025】
一方の材料10bは、星型に配置されており、アーム部11が貫通体8の端部に向かって到達している。他方の材料は、アーム部11同士の間に延びるゾーンに配置されている。反応性に関する異なる材料10a、10bの異なる特性は、貫通体8の形状とともに、形成される噴射体または飛翔体の形状、方向、速度、および貫通能力に影響を与える。また、異なるゾーンにおける材料10a、10bの配置は、形成される噴射体または飛翔体の形状、方向、速度および貫通能力に影響を与えるなど、爆発時に効果をもたらす。塗布された材料やベース構造に生成したあらゆる希薄化は、爆発時に貫通体8の制御された破砕を生じさせるために使用することができる。このように、塗布材料10a、10bの幾何学的な配置によって、形成される噴射体または飛翔体の特性および性能に非常に大きい影響を与えることが可能である。幾何学的配置とは、2つの材料が同一層で異なる表面を覆うように敷設されていることを意味する。
【0026】
図2bは、貫通体8の断面図である。図示の実施形態では、塗布材料10a、10bの厚さは、ベース構造9の厚さとほぼ同じくらいである。塗布材料10a、10bの厚さは、本発明の異なる実施形態における異なる特性および結果のために相互に適合させてもよい。
【0027】
図3a-b、
図4a-b、
図5a-b、
図6a-bは、
図2a-bに示したものに対応する実施形態を示したものである。材料10a、10bの配置は、それぞれの実施形態において異なる幾何学的形態で変化する。配置は、図示のように、十字形、円、リング、半円などから構成されていてもよい。これらの構成は、単に幾何学的形状を変化させることができる例として見るべきであり、当業者であれば、所望の効果を得るためにそれらを変化させる更なる可能性を見出すことができる。
【0028】
図7a-bは、貫通体8のさらなる実施形態を示す。この実施形態では、塗布材料10a、10bは、ベース構造9の凹側に配置されている。当業者は、前述の例示的な実施形態のように、幾何学的配置を適切に変化させることができる。
【0029】
代替実施形態
図には明確に示されていないが、留意すべきさらなる実施形態は、貫通体8が、複数の異なる塗布材料の層10a、10bを重ねることにより構成される実施形態である。異なる材料の複数の層10a、10bを有する領域は、貫通体8の全体にわたって、場合によってはベース構造9の両側に広がっていてもよい。他の実施形態では、複数の異なる材料10a、10bの層が重ねられた領域は、貫通体8全体を含まない1つまたはそれ以上のゾーンに限定される。異なる材料10a、10bの複数の層を有する複数の異なるゾーンがある場合、材料の組み合わせがすべてのゾーンで同じであることが考えられるが、異なるゾーンで異なる材料の組み合わせを有する変形例も考えられる。
【0030】
上で図示および説明した例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲のスコープ内でさらに変化させることができる。当業者は、ベース構造と塗布材料の両方の材料の選択、材料の組み合わせ、塗布材料の幾何学的配置、ベース構造の幾何学的寸法、材料の厚さと希薄化などを実験することができる。前述の例における特別な特徴および特性は、本発明のさらなる実施形態を作成するために、様々な方法で互いに組み合わせてもよい。