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特許7490679PD-1アゴニストおよびそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】PD-1アゴニストおよびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240520BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240520BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 M
A61K39/395 U
A61P3/10
A61P29/00
A61P37/06
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021572414
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020036143
(87)【国際公開番号】W WO2020247648
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】62/857,699
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,193
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/983,512
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521531344
【氏名又は名称】アナプティスバイオ インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ケーリー、マリリン
(72)【発明者】
【氏名】パームリー、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】モース、ロバート ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールド、グレゴリー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ジェニーン
(72)【発明者】
【氏名】ダール、マーティン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】マリーノ、マーガレット ハバシュ
(72)【発明者】
【氏名】カラパンダ、ルーパル
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-521783(JP,A)
【文献】特表2012-501669(JP,A)
【文献】特表2013-521769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号47または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域と、配列番号49または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域とを含む、抗PD-1結合剤。
【請求項2】
免疫グロブリン重鎖可変領域が、Kabat、Chothia、Martin、IGMT、またはAHo番号付けに従って決定される配列番号47の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3を含み、免疫グロブリン軽鎖可変領域が、Kabat、Chothia、Martin、IGMT、またはAHo番号付けに従って決定される配列番号49の少なくともCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項3】
免疫グロブリン重鎖可変領域が、Kabat番号付けに従って決定される以下のCDRs:
CDR1:配列番号64、
CDR2:配列番号65、
CDR3:配列番号66
を含み、
免疫グロブリン軽鎖可変領域が、Kabat番号付けに従って決定される以下のCDRs:
CDR1:配列番号67、
CDR2:配列番号68、
CDR3:配列番号69
を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項4】
免疫グロブリン重鎖可変領域が、IGMT番号付けに従って決定される以下のCDRs:
CDR1:配列番号70、
CDR2:配列番号71、
CDR3:配列番号72
を含み、
免疫グロブリン軽鎖可変領域が、IGMT番号付けに従って決定される以下のCDRs:
CDR1:配列番号73、
CDR2:配列番号74、
CDR3:配列番号75
を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項5】
免疫グロブリン重鎖可変領域が配列番号44、47または61~63のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項6】
免疫グロブリン軽鎖可変領域が配列番号48~50のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む、
請求項1または5の抗PD-1結合剤。
【請求項7】
免疫グロブリン重鎖可変領域が配列番号44、47または61~63のいずれか1つを含む、請求項5または6の抗PD-1結合剤。
【請求項8】
免疫グロブリン軽鎖可変領域が配列番号48~50のいずれか1つを含む、請求項5~7のいずれかの抗PD-1結合剤。
【請求項9】
免疫グロブリン重鎖可変領域が配列番号47に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
免疫グロブリン軽鎖可変領域が配列番号49に対して少なくとも90%の配列同一性を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項10】
免疫グロブリン重鎖可変領域が配列番号46に対して少なくとも90%の配列同一性を含み;
免疫グロブリン軽鎖可変領域が配列番号50に対して少なくとも90%の配列同一性を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項11】
配列番号47の免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号49の免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項12】
配列番号51を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号52を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項1の抗PD-1結合剤。
【請求項13】
抗PD-1結合剤が抗体、抗原結合抗体フラグメント、またはそれらのコンジュゲートである、請求項1~12のいずれか一項の抗PD-1結合剤。
【請求項14】
抗PD-1結合剤がF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv、または単鎖結合ポリペプチドである、請求項1~11のいずれか一項の抗PD-1結合剤。
【請求項15】
抗PD-1結合剤が抗原提示細胞上のFc受容体に結合するIgG Fc領域を含む、請求項1~11のいずれか一項の抗PD-1結合剤。
【請求項16】
抗PD-1結合剤がIgG1のFc領域またはFcγRに結合する他のFc領域を含む、請求項1~12のいずれか一項の抗PD-1結合剤。
【請求項17】
(a)請求項1~16のいずれか一項の抗PD-1結合剤、および(b)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
(1-1)配列番号47または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖、
(1-2)配列番号49または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖、または
(2)請求項1~16のいずれかの抗PD-1結合剤
をコードする核酸。
【請求項19】
請求項1~16のいずれかの抗PD-1結合剤を発現する細胞。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項の抗PD-1結合剤を製造する方法であって、該方法が、
(1)請求項1~16のいずれかの抗PD-1結合剤をコードする核酸か、
(2-1)配列番号47または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖をコードする核酸および
(2-2)配列番号49または少なくともそのCDR1、CDR2およびCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸か
を細胞において発現させることを含む、方法。
【請求項21】
哺乳動物における免疫応答を阻害するための、請求項1~16のいずれかの抗PD-1結合剤、または請求項17の医薬組成物。
【請求項22】
哺乳動物における炎症性または自己免疫障害を治療するための、請求項1~16のいずれかの抗PD-1結合剤、または請求項17の医薬組成物。
【請求項23】
炎症性または自己免疫障害が原発性胆汁性胆管炎(PBC)、移植片対宿主病(GvHD)、白斑、ANCA血管炎、1型糖尿病、または非感染性ブドウ膜炎である、請求項22の抗PD-1結合剤または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2019年6月5日付で出願された米国仮特許出願62/857,699号;2019年6月18日付で出願された米国仮特許出願62/863,193号;および2020年2月28日付で出願された米国仮特許出願62/983,512号の優先権を主張し、それらの全体の開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プログラム死1(PD-1)(プログラム細胞死1としても知られる)は、アポトーシスを受けているマウスT細胞株のサブトラクティブハイブリダイゼーションによって最初に同定された268アミノ酸のI型膜貫通タンパク質である(Isida et al.,Embo J.,11:3887-95(1992))。PD-1は、T細胞レギュレーターのCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞、B細胞、および骨髄系細胞上で発現すると報告されている(Greenwald et al.,Annu. Rev. Immunol.,23:515-548(2005);およびSharpe et al.,Nat. Immunol.,8:239-245(2007))。
【0003】
PD-1の2つのリガンド、PDリガンド1(PD-L1)およびPDリガンド2(PD-L2)が同定されており、これらの両方とも、B7タンパク質スーパーファミリーに属する(上記のGreenwald et al.)。PD-L1は、肺、心臓、胸腺、脾臓、および腎臓の細胞を含むさまざまな細胞型で発現する(例えば、Freeman et al.,J. Exp. Med.,192(7):1027-1034(2000);およびYamazaki et al.,J. Immunol.,169(10):5538-5545(2002)を参照)。PD-L1の発現は、リポ多糖(LPS)およびGM-CSF処理に応答してマクロファージおよび樹状細胞(DC)上で、並びにT細胞およびB細胞受容体を介したシグナル伝達時にT細胞およびB細胞上でアップレギュレートされる。PD-L1はまた、さまざまなマウスおよびヒトの腫瘍細胞株において発現する(例えば、Iwai et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,99(19):12293-12297(2002);およびBlank et al.,Cancer Res.,64(3):1140-1145(2004)を参照)。対照的に、PD-L2は、より制限された発現パターンを示し、主に抗原提示細胞(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)およびいくつかの腫瘍細胞株(例えば、Latchman et al.,Nat. Immunol.,2(3):261-238(2001))を参照)によって発現される。
【0004】
PD-1は、T細胞活性化を負に調節し、この阻害機能は、細胞質ドメインにおける免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)に関連している(例えば、上記のGreenwald et al.;およびParry et al.,Mol. Cell. Biol.,25:9543-9553(2005)を参照)。PD-L1によって誘導されるPD-1のクラスター化は、CD28を優先的に脱リン酸化してT細胞機能を抑制するSHP2ホスファターゼのリクルートを誘導することが見出されている(Hui et al.,Science,355:1428-1433(2017))。PD-1の欠乏は、自己免疫に至り得る。例えば、C57BL/6 PD-1ノックアウトマウスは、ループス様症候群を発症することが示されている(例えば、Nishimura et al.,Immunity,11:141-1151(1999)を参照)。ヒトにおいては、PD-1遺伝子における一塩基多型は、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、関節リウマチ、および多発性硬化症の進行の高い発生率に関連している(例えば、Nielsen et al.,Tissue Antigens,62(6):492-497(2003);Bertsias et al.,Arthritis Rheum.,60(1):207-218(2009);Ni et al.,Hum. Genet.,121(2):223-232(2007);Tahoori et al.,Clin. Exp. Rheumatol.,29(5):763-767(2011);およびKroner et al.,Ann. Neurol.,58(1):50-57(2005)を参照)。
【0005】
さまざまなタイプの癌を治療するための、および免疫増強のための(例えば、感染症を治療するための)PD-1活性を阻害することにおける最近の進歩にもかかわらず、負のシグナル伝達を促進し、PD-1アゴニストとして機能する、高親和性でPD-1に結合するPD-1結合剤(例えば、抗体)の需要がある。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な要約
本発明は、アゴニスト性PD-1結合剤を提供する。一つの実施態様においては、PD-1結合剤は、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここで、該免疫グロブリン重鎖可変領域は:配列番号1を含むCDR1;配列番号2を含むCDR2;および配列番号3を含むCDR3を含み;該免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号4を含むCDR1;配列番号5を含むCDR2;および配列番号6を含むCDR3を含む。
【0007】
配列番号24~33のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%若しくは90%の配列同一性を有する免疫グロブリン重鎖可変領域、または少なくとも配列番号24~33のCDR領域を含む重鎖可変領域、および/あるいは配列番号34若しくは35に対して少なくとも80%、85%若しくは90%の配列同一性を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域、または少なくとも配列番号34若しくは35のCDR領域を含む軽鎖可変領域を含む抗PD-1結合剤もまた、提供される。
【0008】
別の一面においては、PD-1結合剤は、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここで、該免疫グロブリン重鎖可変領域は:配列番号7を含むCDR1;配列番号8を含むCDR2;および配列番号9を含むCDR3を含み;該免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号10を含むCDR1;配列番号11を含むCDR2;および配列番号12を含むCDR3を含む。
【0009】
配列番号43~47若しくは61~63のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%若しくは90%の配列同一性を有する免疫グロブリン重鎖可変領域、または少なくともそれらのCDR領域を含む重鎖可変領域、および/あるいは配列番号48~50に対して少なくとも80%、85%若しくは90%の配列同一性を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域、または少なくともそれらのCDR領域を含む軽鎖可変領域を含む抗PD-1結合剤もまた、提供される。
【0010】
さらに、本発明は、前述の免疫グロブリンポリペプチドをコードする単離されたまたは精製された核酸配列、そのような核酸配列を含むベクター、前述の免疫グロブリンポリペプチドを含む単離されたPD-1結合剤、そのようなPD-1結合剤をコードする核酸配列、そのような核酸配列を含むベクター、そのようなベクターを含む単離された細胞、そのようなPD-1結合剤またはそのようなベクターを薬学的に許容される担体とともに含む組成物、および有効量のそのような組成物を哺乳動物に投与することによって免疫応答を阻害し、哺乳動物における炎症性または自己免疫障害を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面のいくつかの図の簡単な説明
図1図1は、ヒトPD-1で安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞への抗PD-1抗体の結合の結果を示すグラフである。
図2図2は、カニクイザルPD-1で安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞への抗PD-1抗体の結合の結果を示すグラフである。
図3図3は、2日間の抗CD3/抗CD28活性化ヒト末梢血CD4 T細胞への抗PD-1抗体の結合の結果を示すグラフである。
図4図4~7は、PD-1 CHO-K1細胞への結合についてPD-L1-FcまたはPD-L2-Fcのいずれかと競合する抗PD-1抗体の試験結果を示すグラフである。 図4は、ヒトPD-1で安定的にトランスフェクトしたCHO-K1細胞への結合についてPD-L1-Fcと競合する抗PD-1抗体の能力を示す、競合アッセイの結果を示すグラフである。
図5図5は、ヒトPD-1で安定的にトランスフェクトしたCHO-K1細胞への結合についてPD-L1-Fcと競合する抗PD-1抗体の能力を示す、競合アッセイの結果を示すグラフである。
図6図6は、ヒトPD-1で安定的にトランスフェクトしたCHO-K1細胞への結合についてPD-L2-Fcと競合する抗PD-1抗体の能力を示す、競合アッセイの結果を示すグラフである。
図7図7は、ヒトPD-1で安定的にトランスフェクトしたCHO-K1細胞への結合についてPD-L2-Fcと競合する抗PD-1抗体の能力を示す、競合アッセイの結果を示すグラフである。
図8図8Aは、2:1のビーズ対細胞比を使用するビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける抗PD-1抗体のアゴニスト活性性能を示すグラフである。図8Bは、1:1のビーズ対細胞比を使用するビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける抗PD-1抗体のアゴニスト活性性能を示すグラフである。
図9図9Aは、4:1のビーズ対細胞比を使用するビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける抗PD-1抗体のアゴニスト活性性能を示すグラフである。図9Bは、2:1のビーズ対細胞比を使用するビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける抗PD-1抗体のアゴニスト活性性能を示すグラフである。図9Cは、1:1のビーズ対細胞比を使用するビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける抗PD-1抗体のアゴニスト活性性能を示すグラフである。
図10A図10Aは、抗PD-1抗体についてのビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける複数のドナーにわたるIFNγ産生の平均%阻害を示すグラフである。
図10B図10Bは、抗PD-1抗体の説明、IFNγの%阻害、および図10A中に含まれるドナーの数を提供するチャートである。
図11A図11Aは、抗PD-1抗体についてのビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける複数のドナーにわたるIFNγ産生の平均%阻害を示すグラフである。
図11B図11Bは、参照PD-1アゴニスト、PD-L1-FcについてのビーズベースのCD4 T細胞アゴニストアッセイにおける同じドナーにわたるIFNγ産生の平均%阻害を示すグラフである。
図11C図11Cは、候補抗体、抗体の説明、IFNγの%阻害、および図11Aおよび11B中に含まれるドナーの数を提供するチャートである。
図12A図12Aは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(ドナー#747)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体のアゴニスト効力を示すグラフである。
図12B図12Bは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(ドナー#500)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体およびPD-L1-Fcのアゴニスト効力を示すグラフである。
図13A図13Aは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(凍結ドナー#500)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体およびPD-L1-Fcのアゴニスト効力を示すグラフである。
図13B図13Bは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(凍結ドナー#500)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体およびPD-L1-Fcのアゴニスト効力を示すグラフである。
図14A図14Aは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(凍結ドナー#1202)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体およびPD-L1-Fcのアゴニスト効力を示すグラフである。
図14B図14Bは、プレートベースのヒトPBMCアゴニストアッセイ(凍結ドナー#1202)におけるIL-2産生を阻害することにおける抗PD-1抗体およびPD-L1-Fcのアゴニスト効力を示すグラフである。
図15A図15Aは、ヒト全血破傷風リコールアッセイにおけるPD-L1-Fcテトラマーの観察されたアゴニスト活性、およびブロッキング抗PD-L1/抗PD-L2の存在下におけるニボルマブのアゴニスト活性の欠如を示すグラフである。
図15B図15Bは、ブロッキング抗PD-L1/抗PD-L2の存在下におけるヒト全血破傷風リコールアッセイにおけるPD-1アゴニスト抗体の観察されたアゴニスト活性を示すグラフである。
図15C図15Cは、ヒト全血破傷風リコールアッセイにおけるIFNγに対するWT IgG1抗PD-1アゴニスト抗体の効果(閉じた三角形のデータポイント)を示すグラフである。
図15D図15Dは、ヒト全血破傷風リコールアッセイにおけるIFNγに対するIgG2アイソタイプ抗PD-1抗体の効果(白い三角形のデータポイント)を示すグラフである。
図16A図16Aは、本発明の実施態様による、実施例8中に記載されている移植片対宿主病研究のための異種NSG/Hu-PBMCマウスモデルの概略図である。
図16B図16Bは、本発明の実施態様による、実施例8中に記載されているNSG/Hu-PBMC移植片対宿主病研究のタイムライン、投薬スケジュール、およびモデル群を示す概略図である。
図16C図16Cは、抗PD-1抗体についての実施例8におけるNSG/Hu-PBMC移植片対宿主病研究の>10%体重減少までの時間の結果を示すグラフである。
図16D図16Dは、抗PD-1抗体についての実施例8におけるNSG/Hu-PBMC移植片対宿主病研究の>10%体重減少までの時間の結果を示すグラフである。
図17A図17Aは、抗PD-1抗体の10mg/kgの静脈内または皮下単回投与後のカニクイザルにおける薬物動態特性を示すグラフである。
図17B図17Bは、抗PD-1抗体の10mg/kgの静脈内または皮下単回投与後のカニクイザルにおける薬物動態特性を示すグラフである。
図18A図18Aは、抗PD-1抗体の10mg/kgの静脈内または皮下単回投与後のカニクイザルにおけるCD3 T細胞PD-1受容体占有率を示すグラフである。
図18B図18Bは、抗PD-1抗体の10mg/kgの静脈内または皮下単回投与後のカニクイザルにおけるCD3 T細胞PD-1受容体占有率を示すグラフである。
図19A図19Aは、抗PD-1(上)、抗SHP2(中央)、または抗SHP1(下)のいずれかを用いたPD-1免疫沈降物のイムノブロッティングの結果を示すSDS-PAGEゲルである。
図19B図19Bは、図19Aにおいて示されるイムノブロットのデンシトメトリー定量化を示すグラフである。
図20図20Aは、ヒトPD-L1細胞外結合ドメインの結晶構造の空間充填モデル(灰色)とドッキングされたヒトPD-1細胞外ドメインの結晶構造のリボンモデル図(黒色)である。分子は、左下のPD-1の膜近位領域に配向している。図20Bは、ヒトPD-L1細胞外結合ドメインの結晶構造の空間充填モデル(灰色)とドッキングされたヒトPD-1細胞外ドメインの結晶構造のリボンモデル図(黒色)である。分子は、図20Aにおいて示される分子の図と比較して90°回転しており、下部中央にPD-1の膜近位領域を示す。
図21A図21Aは、IgG1アイソタイプと比較した、ケラチノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからのPBMCにおける分泌されたIFNγに対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。
図21B図21Bは、IgG1アイソタイプテトラマーと比較した、ケラチノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからのPBMCにおける分泌されたIFNγに対するPD-L1-IgG1 Fcテトラマーの効果を示すグラフである。
図21C図21Cは、ケラチノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーから単離されたPBMCにおけるIFNγスポット形成細胞(SFC)の数に対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。
図21D図21Dは、ケラチノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーから単離されたPBMCにおけるIFNγスポット形成細胞(SFC)の数に対するPD-L1 IgG1-Fcテトラマーの効果を示すグラフである。
図22図22Aは、IgG1アイソタイプと比較した、破傷風トキソイド特異的抗原リコールアッセイにおける分泌されたINFγに対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。図22Bは、IgG1アイソタイプと比較した、破傷風トキソイド特異的抗原リコールアッセイにおける分泌されたIL-17Aに対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。
図23A図23Aは、igG1アイソタイプと比較した、メラノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからのPBMCにおける分泌されたIFNγに対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。
図23B図23Bは、IgG1アイソタイプテトラマーと比較した、メラノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからのPBMCにおける分泌されたIFNγに対するPD-L1-IgG1-Fcテトラマーの効果を示すグラフである。
図23C図23Cは、メラノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーから単離されたPBMCにおけるIFNγ SFCの数に対するIgG1 3.7C6抗PD-1抗体の効果を示すグラフである。
図23D図23Dは、メラノサイト抗原で刺激された円形脱毛症ドナーから単離されたPBMCにおけるIFNγ SFCの数に対するPD-L1 IgG1-Fcテトラマーの効果を示すグラフである。
図24A図24Aは、本発明の実施態様による、実施例15中に記載されている移植片対宿主病研究のための異種NSG/Hu-PBMCマウスモデルの概略図である。
図24B図24Bは、本発明の実施態様による、実施例15中に記載されているNSG/Hu-PBMC移植片対宿主病研究のタイムライン、投薬スケジュール、およびモデル群を示す概略図である。
図24C図24Cは、抗PD-1アゴニストIgG1抗体3.7C6についての実施例15におけるNSG/Hu-PBMC移植片対宿主病研究の死亡までの時間の結果を示すグラフである。
図24D図24Dは、研究期間中のアイソタイプ対照についての個々の動物の研究の開始からのパーセント体重変化の結果を示すグラフである。
図24E図24Eは、研究期間中の30mg/kg投与量での抗PD-1アゴニストIgG1抗体3.7C6についての個々の動物の研究の開始からのパーセント体重変化の結果を示すグラフである。
図24F図24Fは、研究期間中の10mg/kg投与量での抗PD-1アゴニストIgG1抗体3.7C6についての個々の動物の研究の開始からのパーセント体重変化の結果を示すグラフである。
図24G図24Gは、研究期間中の3mg/kg投与量での抗PD-1アゴニストIgG1抗体3.7C6についての個々の動物の研究の開始からのパーセント体重変化の結果を示すグラフである。
図24H図24Hは、研究期間中の陽性対照CTLA-4-Igについての個々の動物の研究の開始からのパーセント体重変化の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、PD-1結合剤を提供する。上記で論じたように、プログラム死1(PD-1)(プログラム細胞死1としても知られる)は、268アミノ酸のI型膜貫通タンパク質である(上記のIshida et al.)。PD-1は、T細胞レギュレーターのCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞、B細胞、および骨髄系細胞上で発現すると報告されている(上記のGreenwald et al.;および上記のSharpe et al.)。PD-1は、短い細胞外茎によって伴われる細胞外IgVドメイン、膜貫通領域および細胞内テールを含む。PD-1細胞内テールは、リン酸化されたときにチロシンホスファターゼをリクルートすることによってT細胞受容体シグナル伝達を負に調節するように機能する(例えば、上記のIshida et al.;および上記のBlankブランク et al.を参照)、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフおよび免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフに位置する2つのリン酸化部位を含有する。
【0013】
いくつかの実施態様においては、本明細書において提供されるPD-1結合剤は、アゴニストであり、これは、PD-1結合剤がPD-1に結合するが、PD-1のPD-1リガンドへの結合を有意には阻害せず、それにより、T細胞受容体シグナル伝達を負に調節するPD-1の能力を維持することを意味する。特定の実施態様によれば、本明細書において提供されるPD-1結合剤は、T細胞受容体シグナル伝達を負に調節し、免疫応答を抑制するPD-1の能力を誘導するまたは刺激することができる。特定の実施態様においては、ヒトPD1の残基33~41(配列:NPPTFSPAL)および/またはヒトPD-1の96~110(配列:RVTQLPNGRDFHMSV)を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるエピトープでPD-1に結合するPD-1結合剤が、提供される。
【0014】
PD-1結合剤は、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、これらのそれぞれは、通常CDR1、CDR2、またはCDR3として呼ばれる3つの相補性決定領域(CDR)を含む。CDR領域はまた、命名法においてそれぞれ重または軽鎖を示す「H」または「L」を使用して、すなわち、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3と呼ばれる。所与のIg配列のCDRは、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHoなどのいくつかの従来の番号付けスキームのいずれによっても決定することができる(例えば、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S. Department of Health and Human Services,NIH(1991);Chothia,et al.,Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins,J. Mol. Biol.,196:901-917(1987);Al-Lazikani et al.,Standard Conformations for the Canonical Structures of Immunoglobulins,J. Mol. Biol.,273:927-948(1997);Abhinandan et al.,Analysis and Improvements to Kabat and Structurally Correct Numbering of Antibody Variable Domains,Mol. Immunol.,45:3832-3839(2008);Lefranc et al.,The IMGT unique numbering for immunoglobulins,T cell Receptors and Ig-like domains,The Immunologist,7:132-136(1999);Lefranc et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and I superfamily V-like domains,Dev. Comp. Immunol.,27:55-77(2003);およびHonegger et al.,Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,J. Mol. Biol. 309:657-670(2001)を参照)。
【0015】
本発明の一つの一面によれば、PD-1結合剤の免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号1を含むCDR1;配列番号2を含むCDR2;および配列番号3を含むCDR3を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号4を含むCDR1;配列番号5を含むCDR2;および配列番号6を含むCDR3を含む。いくつかの実施態様においては、重鎖CDR1は、配列番号13~18のいずれか1つを含む。さらに、またはあるいは、重鎖CDR3のいくつかの実施態様は、配列番号19~21のいずれか1つを含む。さらに、軽鎖CDR1は、配列番号22または23を含み得る。
【0016】
特定の実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号24~33のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖可変領域、または配列番号24~33のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。他の実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号24~33のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、ここで、該CDRは、上記で提供されるとおりであるかまたはさまざまな既知の免疫グロブリンの番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。任意に、配列番号24~33のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域はまた、配列番号24~33のいずれかに対して少なくとも80%、85%、または90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
【0017】
上記のIg重鎖可変領域に加えて、またはあるいは、抗PD-1結合剤は、配列番号34若しくは35の免疫グロブリン軽鎖可変領域、または配列番号34若しくは35に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。他の実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号34または35のCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここで、該CDRは、上記で提供されるとおりであるかまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。任意に、配列番号34または35のCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域はまた、配列番号34または35に対して少なくとも80%、85%、または90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
【0018】
一つの実施態様によれば、PD-1結合剤は、配列番号29の免疫グロブリン重鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号29のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号15、CDR2-配列番号2、およびCDR3-配列番号20)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである);および配列番号35の免疫グロブリン軽鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、あるいは少なくとも配列番号35のCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号23、CDR2-配列番号5、およびCDR3-配列番号6)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである)を含み得る。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号29の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともKabatによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号29の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともChothiaによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号29の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともMartinによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号29の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともIGMTによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号29の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともAHoによって決定されるそれらのCDRを含む。さらなる例として、抗PD-1結合剤は、配列番号36を含む免疫グロブリン重鎖および配列番号37を含む免疫グロブリン軽鎖、またはそれぞれ配列番号36および37に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得、任意にここで、該配列は、それぞれ配列番号36および37の重鎖および軽鎖CDRを保持し、ここで、該CDRは、上記で提供されるとおりであるかまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。
【0019】
別の実施態様によれば、PD-1結合剤は、配列番号24の免疫グロブリン重鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれに100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号24のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号13、CDR2-配列番号2、およびCDR3-配列番号19)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである);および配列番号34の免疫グロブリン軽鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、あるいは少なくとも配列番号34のCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号22、CDR2-配列番号5、およびCDR3-配列番号6)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである)を含み得る。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号24の重鎖可変領域および配列番号34の軽鎖可変領域、または少なくともKabatによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号24の重鎖可変領域および配列番号34の軽鎖可変領域、または少なくともChothiaによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号24の重鎖可変領域および配列番号34の軽鎖可変領域、または少なくともMartinによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号24の重鎖可変領域および配列番号34の軽鎖可変領域、または少なくともIGMTによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号24の重鎖可変領域および配列番号34の軽鎖可変領域、または少なくともAHoによって決定されるそれらのCDRを含む。
【0020】
一つの実施態様によれば、PD-1結合剤は、配列番号30の免疫グロブリン重鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号30のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号15、CDR2-配列番号2、およびCDR3-配列番号21)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである);および配列番号35の免疫グロブリン軽鎖可変領域またはそれに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、それに対して少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、あるいは少なくとも配列番号35のCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号23、CDR2-配列番号5、およびCDR3-配列番号6)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである)を含み得る。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号30の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともKabatによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号30の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともChothiaによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号30の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともMartinによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号30の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともIGMTによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号30の重鎖可変領域および配列番号35の軽鎖可変領域、または少なくともAHoによって決定されるそれらのCDRを含む。
【0021】
別の一面によれば、抗PD-1結合剤は、配列番号7を含むCDR1;配列番号8を含むCDR2;および配列番号9を含むCDR3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;並びに配列番号10を含むCDR1;配列番号11を含むCDR2;および配列番号12を含むCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様においては、重鎖CDR1は、配列番号57~60のいずれかを含む。いくつかの実施態様においては、重鎖CDR2は、配列番号38~42のいずれか1つを含む。
【0022】
いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号43~47若しくは61~63のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖可変領域、または配列番号43~47若しくは61~63のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号43~47または61~63のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、ここで、該CDRは、上記で提供されるとおりであるかまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。任意に、配列番号43~47または61~63のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域はまた、配列番号43~47または61~63のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、または90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有する。
【0023】
上記のIg重鎖可変領域(例えば、配列番号43~47または61~63)に加えて、またはあるいは、抗PD-1結合剤は、配列番号48~50のいずれかの免疫グロブリン軽鎖可変領域、または配列番号48~50のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)のアミノ酸配列を含み得る。他の実施態様においては、PD-1結合剤は、配列番号48~50のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここで、該CDRは、上記で提供されるとおりであるかまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。任意に、配列番号48~50のいずれかのCDRを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域はまた、配列番号48~50のいずれかに対して少なくとも80%、85%、または90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
【0024】
特定の実施形態においては、抗PD-1結合剤は、配列番号47の免疫グロブリン重鎖可変領域、または配列番号47に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、 。、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号47のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号57、CDR2-配列番号42、およびCDR3-配列番号9)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである);および配列番号49の免疫グロブリン軽鎖可変領域、または配列番号49に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号49のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号10、CDR2-配列番号11、およびCDR3-配列番号12)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号47の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域、または少なくともKabatによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号47の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域、または少なくともChothiaによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号47の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域、または少なくともMartinによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号47の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域、または少なくともIGMTによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号47の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域、または少なくともAHoによって決定されるそれらのCDRを含む。さらなる例として、抗PD-1結合剤は、配列番号51を含む免疫グロブリン重鎖および配列番号52を含む免疫グロブリン軽鎖、または配列番号51および52に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)のアミノ酸配列を含み得、任意にここで、該配列は、上記で提供されるとおりのまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかに従って決定さるとおりの配列番号51および52の重鎖および軽鎖CDRを保持する。
【0025】
別の実施態様においては、抗PD-1結合剤は、配列番号46の免疫グロブリン重鎖可変領域、または配列番号46に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、 。、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号46のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号57、CDR2-配列番号41、およびCDR3-配列番号9)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである);および配列番号50の免疫グロブリン軽鎖可変領域、または配列番号50に対して少なくとも80%、85%、若しくは90%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列;あるいは少なくとも配列番号50のCDRを含む免疫グロブリン重鎖可変領域(ここで、CDR領域は、上記で提供されるとおりである(例えば、CDR1-配列番号10、CDR2-配列番号11、およびCDR3-配列番号12)かまたはさまざまな既知の免疫グロブリン番号付けスキーム(例えば、Kabat、Chothia、Martin(Enhanced Chothia)、IGMT、またはAHo)のいずれかによって決定されるとおりである)を含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号46の重鎖可変領域および配列番号50の軽鎖可変領域、または少なくともKabatによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号46の重鎖可変領域および配列番号50の軽鎖可変領域、または少なくともChothiaによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号46の重鎖可変領域および配列番号50の軽鎖可変領域、または少なくともMartinによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号46の重鎖可変領域および配列番号50の軽鎖可変領域、または少なくともIGMTによって決定されるそれらのCDRを含む。いくつかの実施態様においては、抗体は、配列番号46の重鎖可変領域および配列番号50の軽鎖可変領域、または少なくともAHoによって決定されるそれらのCDRを含む。
【0026】
本明細書において記載される配列「同一性」は、目的の核酸またはアミノ酸配列を参照核酸またはアミノ酸配列と比較することによって決定することができる。パーセント同一性は、目的の配列と参照配列との間で同じである(すなわち、同一である)ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数を、最も長い配列の長さ(すなわち、目的の配列または参照配列のいずれか長い方の長さ)で割ったものである。最適なアラインメントを取得し、2つ以上の配列間の同一性を計算するための多くの数学的アルゴリズムが、知られており、多くの利用可能なソフトウェアプログラムに組み込まれている。そのようなプログラムの例は、CLUSTAL-W、T-Coffee、およびALIGN(核酸およびアミノ酸配列のアラインメント用)、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.1、BL2SEQ、およびそれらの以降のバージョン)およびFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FASTM、およびSSEARCH)(配列アラインメントおよび配列類似性検索用)を含む。配列アラインメントアルゴリズムはまた、例えば、Altschul et al.,J. Molecular Biol.,215(3):403-410(1990),Beigert et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,106(10):3770-3775(2009),Durbin et al.,eds.,Biological Sequence Analysis:Probalistic Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge University Press,Cambridge,UK(2009),Soding,Bioinformatics,21(7):951-960(2005),Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25(17):3389-3402(1997),およびGusfield,Algorithms on Strings,Trees and Sequences,Cambridge University Press,Cambridge UK(1997))中に開示されている。
【0027】
配列同一性における変動は、1つ以上のアミノ酸残基の付加、置換、または欠失によって達成することができる。アミノ酸の「置換(replacement)」または「置換(substitution)」は、ポリペプチド配列内の所与の位置または残基の1つのアミノ酸の同じ位置または残基の別のアミノ酸による置換を指す。アミノ酸の置換(replacement)または置換(substitution)は、置換(substitution)が、置換される(replaced)残基と同様の特性を有するアミノ酸残基によるものであるかどうかに依存して、保存的、半保存的、または非保存的であり得る。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz and Schirmer,Principles of Protein Structure,Springer-Verlag,New York(1979))。そのような分析によれば、アミノ酸のグループは、グループ内のアミノ酸が、互いに優先的に交換し、従って全体的なタンパク質構造へのそれらの影響において互いに最も似ている場合に定義され得る(上記のSchulz and Schirmer)。
【0028】
アミノ酸は、「芳香族」または「脂肪族」として広くグループ化することができる。芳香族アミノ酸は、芳香環を含む。「芳香族」アミノ酸の例は、ヒスチジン(HまたはHis)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、およびトリプトファン(WまたはTrp)を含む。非芳香族アミノ酸は、「脂肪族」として広くグループ化される。「脂肪族」アミノ酸の例は、グリシン(GまたはGly)、アラニン(AまたはAla)、バリン(VまたはVal)、ロイシン(LまたはLeu)、イソロイシン(IまたはIle)、メチオニン(MまたはMet)、セリン(SまたはSer)、スレオニン(TまたはThr)、システイン(CまたはCys)、プロリン(PまたはPro)、グルタミン酸(EまたはGlu)、アスパラギン酸(AまたはAsp)、アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln)、リジン(KまたはLys)、およびアルギニン(RまたはArg)を含む。
【0029】
脂肪族アミノ酸は、4つのサブグループに細分し得る。「大きな脂肪族非極性サブグループ」は、バリン、ロイシン、およびイソロイシンからなる。「脂肪族のわずかに極性のサブグループ」は、メチオニン、セリン、スレオニン、およびシステインからなる。「脂肪族極性/荷電サブグループ」は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、およびアルギニンからなる。「小さい残基のサブグループ」は、グリシンおよびアラニンからなる。荷電/極性アミノ酸のグループは、3つのサブグループ:リジンおよびアルギニンからなる「正に荷電したサブグループ」、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる「負に荷電したサブグループ」、並びにアスパラギンおよびグルタミンからなる「極性サブグループ」に細分し得る。
【0030】
芳香族アミノ酸は、2つのサブグループ:ヒスチジンおよびトリプトファンからなる「窒素環サブグループ」並びにフェニルアラニンおよびチロシンからなる「フェニルサブグループ」に細分し得る。
【0031】
保存的アミノ酸置換の例は、上記のサブグループ内のアミノ酸の置換、例えば、正電荷が維持され得るようなアルギニンの代わりのリジンおよびその逆、負電荷が維持され得るようなアスパラギン酸の代わりのグルタミン酸およびその逆、遊離の-OHを維持することができるようなスレオニンの代わりのセリン、遊離の-NHを維持することができるようなアスパラギンの代わりのグルタミンを含む。「半保存的変異」は、本明細書においてリストされている同じグループ内であるが同じサブグループ内でないアミノ酸のアミノ酸置換を含む。例えば、アスパラギンの代わりのアスパラギン酸、またはリジンの代わりのアスパラギンの置換は、同じグループ内であるが異なるサブグループのアミノ酸を含む。「非保存的変異」は、異なるグループ間のアミノ酸置換、例えば、トリプトファンの代わりのリジン、セリンの代わりのフェニルアラニン等を含む。
【0032】
いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、免疫グロブリン重および軽鎖可変領域または本明細書において提供される完全な重および軽鎖ポリペプチドを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり得る。単離されたPD-1結合剤は、少なくとも特定の免疫グロブリン重および軽鎖可変領域を含む任意のタイプの分子または構築物であり得る。すなわち、PD-1結合剤は、例えば、本明細書において記載される全体の免疫グロブリン若しくは抗体、または抗原結合(PD-1結合)免疫グロブリン若しくは抗体「フラグメント」であり得る。抗体または免疫グロブリンに関して使用される用語「フラグメント」は、免疫グロブリンまたは抗体のいくらかの部分を含み、標的抗原に結合する任意の分子または構築物を意味する。そのようなフラグメントは、一般にCDRを含む重および軽鎖可変領域の少なくとも一部を含み、また、任意に通常は免疫グロブリンまたは抗体の一部ではない他の要素(例えば、リンカー等)とともに、定常領域の一部を含み得る。そのような「フラグメント」の例は、(i)V、V、C、およびCHドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント、(iii)抗体の単鎖のVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(iv)穏やかな還元条件を使用してF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を切断することから生じるFab’フラグメント;(v)ダイアボディ;(vi)単鎖可変領域(scFv)、および(vii)ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)を含むが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域またはその一部などの免疫グロブリン重鎖定常領域を含む。Fc領域は、任意のIgクラス/サブクラス(それらの変異体を含む、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)、IgMであり得る。特定の実施態様においては、PD-1結合剤は、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、またはB細胞)のFc受容体に結合するFc領域を含む。Fc受容体は、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)などのFcγ受容体(FcγR)であり得る。一つの実施態様においては、PD-1結合剤は、IgG1などのFcγRに結合するFc領域を含む。すなわち、いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、「全体の(whole)」または「完全な」Ig(すなわち、抗体)である。追加の実施態様においては、PD-1結合剤は、IgG抗体、特にIgG1抗体である。
【0034】
単離されたPD-1結合剤はまた、抗体コンジュゲートであり得る。この点において、単離されたPD-1結合剤は、PD-1結合剤(例えば、抗PD-1抗体または抗体フラグメント)および別の生物学的に活性な部分を含むコンジュゲートであり得る。例えば、PD-1結合剤は、ペプチド、蛍光分子、または化学療法剤、特に免疫応答を抑制することにおいて有用な薬剤に接合され得る。
【0035】
単離されたPD-1結合剤は、ヒト抗体、非ヒト抗体、若しくはキメラ抗体であり得るか、またはそれらから得ることができる。「キメラ」によって、ヒトおよび非ヒト領域の両方を含む抗体またはその断片を意味する。好ましくは、単離されたPD-1結合剤は、ヒト化抗体である。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体足場および非ヒト抗体から得られるかまたはそれに由来する少なくとも1つのCDRを含むモノクローナル抗体である。非ヒト抗体は、例えば、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)などの任意の非ヒト動物から単離された抗体を含む。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られるかまたはそれに由来する1つ、2つ、または3つのCDRを含み得る。本発明の好ましい実施態様においては、本発明のPD-1結合剤のCDRH3は、マウスモノクローナル抗体から得られるかまたはそれに由来し、一方、本発明のPD-1結合剤の残りの可変領域および定常領域は、ヒトモノクローナル抗体から得られるかまたはそれに由来する。
【0036】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体は、インビトロ供給源(例えば、ハイブリドーマまたは抗体を組換え的に産生する細胞株)およびインビボ供給源(例えば、齧歯類)を介するものを含む任意の手段によって得ることができる。抗体を生成するための方法は、当技術分野において知られており、例えば、Koehler and Milstein,Eur. J. Immunol.,5:511-519(1976);Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988);およびJaneway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001);Starkie et al.,PLoS One,11(3):e0152282(2016))中に記載されている。特定の実施態様においては、ヒト抗体またはキメラ抗体は、1つ以上の内因性免疫グロブリン遺伝子が1つ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子で置換されているトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して生成することができる。内因性抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子で効果的に置換されているトランスジェニックマウスの例は、メダレックスHUMAB-MOUSE(商標)、キリンTC MOUSE(商標)、および協和キリンKM-MOUSE(商標)(例えば、Lonberg,Nat. Biotechnol.,23(9):1117-25(2005)およびLonberg,Handb. Exp. Pharmacol.,181:69-97(2008)を参照)を含むが、これらに限定されない。ヒト化抗体は、例えば、ヒト抗体足場上への非ヒトCDRの移植(例えば、Kashmiri et al.,Methods,36(1):25-34(2005);およびHou et al.,J. Biochem.,144(1):115-120(2008)を参照)を含む、当技術分野において知られている任意の適切な方法(例えば、An,Z.(ed.),Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic,John Wiley & Sons,Inc.,Hoboken,New Jersey(2009)を参照)を使用して生成することができる。一つの実施態様においては、ヒト化抗体は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287485A1号中に記載されている方法を使用して製造することができる。
【0037】
PD-1結合剤は、ヒトPD-1に対して任意の適切な親和性を有し得る。用語「親和性」は、2つの薬剤の可逆的結合についての平衡定数を指し、解離定数(K)として表される。エピトープについての抗体の親和性などの、リガンドに対する結合剤の親和性は、例えば、約1ピコモル(pM)から約100マイクロモル(μM)(例えば、約1ピコモル(pM)から約1ナノモル(nM)、約1nMから約1マイクロモル(μM)、または約1μMから約100μM)であり得る。一つの実施態様においては、PD-1結合剤は、1nM以下(例えば、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.05nM、0.025nM、0.01nM、0.001nM、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)のKを有するPD-1タンパク質に結合し得る。別の実施態様においては、PD-1結合剤は、200pM以下(例えば、190pM、175pM、150pM、125pM、110pM、100pM、90pM、80pM、75pM、60pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pM、10pM、5pM、1pM、または前述の値の任意の2つによってれる範囲)のKを有するPD-1に結合し得る。いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、ヒトPD-1に関して論じた前述の範囲のいずれかの親和性を有する、カニクイザルPD-1と交差反応性である。目的の抗原またはエピトープについての免疫グロブリン親和性は、当技術分野で認められている任意のアッセイを使用して測定することができる。そのような方法は、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、分離可能なビーズ(例えば、磁気ビーズ)、表面プラズモン共鳴(SPR)、液相競合(KinExA(登録商標))、抗原パニング、および/またはELISA(例えば、Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th ed.,Garland Publishing,New York,NY,2001を参照)を含む。
【0038】
PD-1結合剤は、PD-1に結合するが、好ましくはPD-1が免疫応答を負に調節する能力を完全には阻害しないかまたは、いくつかの場合においては、PD-1が免疫応答を負に調節する能力を実質的には阻害しないかまたはPD-1が免疫応答を負に調節する能力を高めさえする。いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、PD-1とPD-L1との間の結合を完全には遮断しないか、または、好ましくは、PD-1とPD-L1との間の結合を実質的には低下させない。PD-1結合剤が免疫応答のPD-1調節またはPD-L1へのPD-1結合を阻害する程度の評価は、実施例において記載されているもののようなアッセイまたは当技術分野において知られている他のアッセイを使用して実施することができる。いくつかの実施態様においては、PD-1結合剤は、PD-L1へのPD-1結合を、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下阻害する。
【0039】
使用/治療の方法
本発明は、本明細書において記載されるPD-1結合剤を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を抑制する方法を提供する。本発明はさらに、PD-1活性における減少(例えば、免疫系の負の調節における減少などの、減少したPD-L1結合を通したPD-1シグナル伝達における減少)が疾患の病理学的影響を引き起こすか若しくはそれに寄与する疾患または障害、あるいはPD-1活性における増加(例えば、免疫系の負の調節における増加などの、PD-L1結合を通したPD-1シグナル伝達における増加)が治療効果を有するであろう任意の疾患または傷害を治療する方法であって、該方法は、障害の任意の症状を低下させる若しくは排除するか、またはそのような症状の発症を予防する若しくは阻害するために、本明細書において記載されるPD-1結合剤を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。本明細書において使用される免疫系の負の調節は、免疫抑制と同義語である。いくつかの場合においては、PD-1結合剤を症状の発症の前に(例えば、免疫応答を引き起こす抗原への曝露の前に)投与して、抗原の導入時の免疫応答の重症度を予防し、抑制し、または低下させることができることが理解されるであろう。
【0040】
疾患または障害は、炎症性または自己免疫障害であり得る。炎症性または自己免疫障害の例は、例えば、感染症(ウイルス性、細菌性、真菌性および寄生性)、感染症に関連する内毒性ショック、関節炎、関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、ベーチェット病、アルツハイマー病、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、ペイロニー病、腹腔疾患、胆嚢疾患、ピロニダル病、腹膜炎、乾癬、乾癬性関節炎、血管炎、抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)血管炎、外科的癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、関節炎、髄膜脳炎、自己免疫性血管炎、多発性硬化症などの中枢および末梢神経系の免疫介在性炎症性障害、ループス(全身性エリテマトーデスおよび慢性円盤状エリテマトーデスなどの)およびギランバレー(Guillain-Barr)症候群、アトピー性皮膚炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、自己免疫性肝障害、線維性肺胞炎、グレイブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、ペンフィガス、ペンフィゴイド、原発性胆汁性胆管炎、肝炎、サルコイドーシス、強皮症(局所性強皮症、全身性強皮症、および進行性全身性強皮症)、多発血管炎性肉腫症、他の自己疾患障害、胆管炎、膵炎、外傷(手術)、移植片対宿主病、移植拒絶、心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症などの虚血性疾患を含む心臓病、結節性動脈炎(結節性多発動脈炎および顕微鏡的多発血管炎)、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏症血管炎、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、側頭動脈炎、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周炎および低塩素血症、スティル病、コーガン症候群、RS3PE、リウマチ性多発筋痛、線維筋痛症候群、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋炎、ギランバレー症候群、重力筋無力症、慢性萎縮性胃炎、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨核芽球性貧血、溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、橋本甲状腺炎、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン病(慢性副腎機能不全)、妊娠性ヘルペス、線形IgA水疱性皮膚病、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、白斑、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、再発性胎児喪失、または胎児-母体耐性の欠如に関連する不妊症を含む。
【0041】
いくつかの実施態様においては、疾患または障害は、巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発筋痛、原発性シェーグレン症候群、TNF抵抗性関節リウマチ、円形脱毛症、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、移植片対宿主病(GvHD)、白斑、ANCA血管炎、1型糖尿病、または非感染性ブドウ膜炎である。
【0042】
「免疫応答」は、例えば、抗体産生および/若しくは免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)の活性化、炎症性サイトカインの産生、または本明細書において記載される若しくは当技術分野において別途知られている適応症若しくは障害のいずれかを伴い得る。本明細書において使用される用語「治療」、「治療すること」等は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。好ましくは、効果は、治療的であり、すなわち、効果は、疾患および/または疾患に起因する有害な症状を部分的にまたは完全に治癒する。この目的のために、本発明の方法は、「治療有効量」のPD-1結合剤を投与することを含む。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を指す。治療有効量は、病状、年齢、性、および個人の体重などの要因、並びに個人において望ましい反応を引き出すPD-1結合剤の能力によって変化し得る。
【0043】
あるいは、薬理学的および/または生理学的効果は予防的であり得る、すなわち、該効果は、その疾患または症状を完全にまたは部分的に予防する。この点において、本発明の方法は、「予防有効量」のPD-1結合剤を投与することを含む。「予防有効量」は、所望の予防結果(例えば、発病の予防)を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を指す。
【0044】
PD-1結合剤は、哺乳動物への投与に適した組成物の一部であり得る。好ましくは、組成物は、担体、好ましくは薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)担体、および本発明のアミノ酸配列、抗原結合剤、またはベクターを含む、薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)組成物である。任意の適切な担体が、本発明の文脈内で使用することができ、そのような担体は、当技術分野においてよく知られている。担体の選択は、部分的に、組成物が投与され得る特定の部位および組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるであろう。組成物はまた、治療用分子(例えば、タンパク質または抗体)の製剤において使用される任意の他の賦形剤、特に、例えば、緩衝液、張性修飾剤、安定剤、界面活性剤等を含む非経口処方を含み得る。組成物は任意に、無菌であり得る。組成物は、保存のために凍結しまたは凍結乾燥し、使用の前に適切な無菌担体中で再構成することができる。組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA(2001)中に記載されている従来の技術に従って生成することができる。
【0045】
PD-1結合剤の典型的な用量は、例えば、動物またはヒトの体重の1pg/kgから20mg/kgの範囲中であり得るが;しかしながら、この例示的な範囲より下または上の用量は、本発明の範囲内である。1日あたりの非経口用量は、総体重の約0.00001μg/kgから約20mg/kg(例えば、約0.001μg/kg、約0.1μg/kg、約1μg/kg、約5μg/kg、約10μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、好ましくは総体重の約0.1μg/kgから約10mg/kg(例えば、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約50μg/kg、約150μg/kg、約300μg/kg、約750μg/kg、約1.5mg/kg、約5mg/kg、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、より好ましくは総体重の約1μg/kgから5mg/kg(例えば、約3μg/kg、約15μg/kg、約75μg/kg、約300μg/kg、約900μg/kg、約2mg/kg、約4mg/kg、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、およびさらにより好ましくは1日あたり約0.5から15mg/kg体重(例えば、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約6mg/kg、約9mg/kg、約11mg/kg、約13mg/kg、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)であり得る。治療または予防効果は、治療される患者の定期的評価によってモニターすることができる。数日以上にわたる反復投与については、状態に依存して、治療を、疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返すことができる。しかしながら、他の投与計画が、有用であり得、本発明の範囲内である。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与、組成物の複数回ボーラス投与、または組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0046】
PD-1結合剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔内、舌下、または坐剤投与を含む、標準的な投与技術を使用して哺乳動物に投与することができる。組成物は好ましくは、非経口投与に適している。本明細書において使用される用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、および腹腔内投与を含む。より好ましくは、組成物は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を使用して哺乳動物に投与される。
【0047】
いったん哺乳動物(例えば、ヒト)に投与されると、本発明のPD-1結合剤の生物学的活性は、当技術分野において知られている任意の適切な方法によって測定することができる。例えば、生物学的活性は、特定のPD-1結合剤の安定性を決定することによって評価することができる。本発明の一つの実施態様においては、PD-1結合剤(例えば、抗体)は、約30分と45日との間(例えば、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約1日、約5日、約10日、約15日、約25日、約35日、約40日、約45日、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)のインビボ半減期を有する。別の実施態様においては、PD-1結合剤は、約2時間と20日との間(例えば、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約2日、約3日、約7日、約12日、約14日、約17日、約19日、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)のインビボ半減期を有する。別の実施態様においては、PD-1結合剤は、約10日と約40日との間(例えば、約10日、約13日、約16日、約18日、約20日、約23日、約26日、約29日、約30日、約33日、約37日、約38日、約39日、約40日、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)のインビボ半減期を有する。
【0048】
本発明のPD-1結合剤は、単独でまたは他の活性剤若しくは薬物と組み合わせて投与し得る。例えば、PD-1結合剤は、本明細書において開示される疾患の治療または予防のために他の薬剤と組み合わせて投与することができる。この点において、PD-1結合剤は、例えば、他のモノクローナル抗体、疾患を殺すウイルス、遺伝子治療、および養子T細胞転移を含む少なくとも1つの他の炎症性若しくは自己免疫障害阻害剤、並びに/または手術と組み合わせて使用することができる。本明細書において記載される本発明のPD-1結合剤はまた、例えば、メトトレキサート、コルチコステロイド、並びに自己免疫および炎症性疾患を治療するために使用される他の小分子薬剤を含む、少なくとも1つの他の免疫抑制剤と組み合わせて使用することができる。本発明の方法が感染症を治療するとき、PD-1結合剤は、少なくとも1つの抗菌剤または少なくとも1つの抗ウイルス剤と組み合わせて投与することができる。この点において、抗菌剤は、当技術分野において知られている任意の適切な抗生物質であり得る。抗ウイルス剤は、特定のウイルスを特異的に標的とする任意の適切なタイプの任意のワクチン(例えば、弱毒化生ワクチン、サブユニットワクチン、組換えベクターワクチン、および小分子抗ウイルス療法(例えば、ウイルス複製阻害剤およびヌクレオシド類似体)であり得る。
【0049】
治療的使用に加えて、本明細書において記載されるPD-1結合剤は、診断または研究用途において使用することができる。この点において、PD-1結合剤は、癌または感染症を診断する方法において使用することができる。同様の方法で、PD-1結合剤は、異常なPD-1発現に関連する疾患または障害について試験される対象におけるPD-1タンパク質レベルをモニターするアッセイにおいて使用することができる。研究用途は、例えば、サンプル中、例えば、ヒト体液中または細胞若しくは組織抽出物中のPD-1タンパク質を検出するためのPD-1結合剤および標識を利用する方法を含む。PD-1結合剤は、検出可能な部分での共有結合若しくは非共有結合標識などの修飾をしてまたはせずに使用することができる。例えば、検出可能な部分は、放射性同位元素(例えば、H、14C、32P、35S、または125I)、蛍光若しくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリン)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼ)、または補欠分子族であり得る。抗原結合剤(例えば、抗体)を検出可能な部分に別個に接合させるための当技術分野において知られている任意の方法を、本発明の文脈において使い得る(例えば、Hunter et al.,Nature,194:495-496(1962);David et al.,Biochemistry,13:1014-1021(1974);Pain et al.,J. Immunol. Meth.,40:219-230(1981);およびNygren,J. Histochem. Cytochem.,30:407-412(1982)を参照)。
【0050】
PD-1タンパク質レベルは、当技術分野において知られている任意の適切な方法によって本発明のPD-1結合剤を使用して測定することができる。そのような方法は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、およびFACSを含む。PD-1タンパク質の正常なまたは標準的な発現値は、任意の適切な技術を使用して、例えば、抗原-抗体複合体を形成するために適した条件下でPD-1ポリペプチドを含む、または含むと疑われるサンプルを、PD-1特異的抗体と組み合わせることによって証明することができる。抗体は、結合または非結合抗体の検出を促進するために、検出可能な物質で直接的にまたは間接的に標識されている。適切な検出可能な物質は、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、および放射性物質を含む(例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,CRC Press,Inc.(1987)を参照)。次いで、サンプル中で発現したPD-1ポリペプチドの量を、標準値と比較する。
【0051】
PD-1結合剤は、キット、すなわち、診断アッセイを実施するための説明書を有する所定量の試薬のパッケージ化された組合せで提供することができる。PD-1結合剤が酵素で標識されている場合、キットは望ましくは、酵素によって必要とされる基質および補因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含む。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加剤をキット中に含め得る。さまざまな試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を提供するために変化させることができる。試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む乾燥粉末(典型的には凍結乾燥された)として提供し得る。
【0052】
核酸、細胞、製造方法
本発明はまた、PD-1結合剤またはその個々の重若しくは軽鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする1つ以上の単離されたまたは精製された核酸配列を提供する。すなわち、一つの実施態様においては、核酸は、本明細書において提供される免疫グロブリン軽鎖可変領域または完全な免疫グロブリン軽鎖をコードする。別の実施態様においては、核酸は、本明細書において提供される免疫グロブリン重鎖可変領域または完全な免疫グロブリン軽鎖をコードする。さらに別の実施態様においては、核酸は、本明細書において提供される、免疫グロブリン軽鎖可変領域または完全な免疫グロブリン軽鎖、および免疫グロブリン重鎖可変領域または完全な免疫グロブリン重鎖の両方をコードする。免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列の例は、それぞれ配列番号29および47の重鎖可変領域、並びにそれぞれ配列番号36および51の完全な重および軽鎖をコードする配列番号53および55によって提供される。免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸配列の例は、それぞれ配列番号35および49の軽鎖可変領域、並びにそれぞれ配列番号37および52の完全な鎖および軽鎖をコードする配列番号54および56によって提供される。
【0053】
用語「核酸」および「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖であり得、非天然のまたは改変されたヌクレオチドを含有し得る、DNAまたはRNAのポリマー、すなわち、ポリヌクレオチドを包含することが意図される。本明細書において使用される用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造を指し、すなわち、二本および一本鎖DNA、並びに二本および一本鎖RNAを含む。該用語は、同等物として、ヌクレオチド類似体から作製されたRNAまたはDNAのいずれかの類似体並びに、限定されないが、メチル化および/またはキャップされたポリヌクレオチドなどの修飾ポリヌクレオチドを含む。核酸は、多くの他の連結が当技術分野において知られている(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート等)が、典型的にはリン酸結合を介して連結して核酸配列またはポリヌクレオチドを形成する。
【0054】
核酸は、ベクターの一部であり得る。ベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスまたはアデノウイルス)、またはファージであり得る。適切なベクターおよびベクター調製の方法は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001),およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,New York,N.Y.(1994)を参照)。
【0055】
免疫グロブリン重および/または軽鎖をコードする核酸配列に加えて、ベクターは、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの発現制御配列を含み得る。例示的な発現制御配列は、当技術分野において知られており、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Vol.185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)中に記載されている。
【0056】
さまざまな異なる供給源からの、構成的、誘導性、および抑制性プロモーターを含む、多数のプロモーターが、当技術分野においてよく知られている。プロモーターの代表的な供給源は例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母、および細菌を含み、これらの供給源からの適切なプロモーターは、容易に入手可能であるか、または例えば、ATCCなどの寄託機関並びに他の商用の若しくは個別の供給源から公的に入手可能な配列に基づいて、合成的に製造することができる。プロモーターは、一方向性(すなわち、一方向に転写を開始する)または双方向性(すなわち、3’または5’方向のいずれかに転写を開始する)であり得る。プロモーターの非限定的な例は、例えば、T7細菌発現系、pBAD(araA)細菌発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターを含む。誘導性プロモーターは、例えば、Tet系(米国特許第5,464,758号および第5,814,618号)、エクジソン誘導系(No et al.,Proc. Natl. Acad. Sci.,93:3346-3351(1996))、T-REX(商標)系(Invitrogen,Carlsbad,CA)、LACSWITCH(商標)系(Stratagene,San Diego,CA)、およびCre-ERTタモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indra et al.,Nuc. Acid. Res.,27:4324-4327(1999);Nuc. Acid. Res.,28:e99(2000);米国特許7,112,715号;およびKramer & Fussenegger,Methods Mol. Biol.,308:123-144(2005))を含む。
【0057】
本明細書において使用される用語「エンハンサー」は、例えば、それが作動可能に連結されている核酸配列の転写を増加させるDNA配列を指す。エンハンサーは、核酸配列のコード領域から何キロベースも離れて位置し得、調節因子の結合、DNAメチル化のパターン、またはDNA構造における変化を仲介し得る。さまざまな異なる供給源からの多数のエンハンサーが、当技術分野においてよく知られており、クローン化ポリヌクレオチドとしてまたはその内で利用可能である(例えば、ATCCなどの寄託機関並びに他の商用のまたは個々の供給源から)。プロモーター(一般的に使用されるCMVプロモーターなどの)を含む多くのポリヌクレオチドはまた、エンハンサー配列を含む。エンハンサーは、コード配列の上流、内部、または下流に位置し得る。
【0058】
ベクターはまた、選択可能なマーカー遺伝子を含み得る。本明細書において使用される用語「選択可能なマーカー遺伝子」は、対応する選択剤の存在下において、核酸配列を発現する細胞が特異的に選択されることを可能にする核酸配列を指す。適切な選択可能なマーカー遺伝子は、当技術分野において知られており、例えば、国際特許出願公開WO1992/008796およびWO1994/028143;Wigler et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:3567-3570(1980);O’Hare et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,78:1527-1531(1981);Mulligan & Berg,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,78:2072-2076(1981);Colberre-Garapin et al.,J. Mol. Biol.,150:1-14(1981);Santerre et al.,Gene,30:147-156(1984);Kent et al.,Science,237:901-903(1987);Wigler et al.,Cell,11:223-232(1977);Szybalska & Szybalski,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,48:2026-2034(1962);Lowy et al.,Cell,22:817-823(1980);並びに米国特許第5,122,464号および第5,770,359号中に記載されている。
【0059】
いくつかの実施態様においては、ベクターは、宿主細胞において複製することができ、適切な選択的圧力の存在下において宿主細胞内のDNAの染色体外セグメントとして存続する「エピソーム発現ベクター」または「エピソーム」である(例えば、Conese et al.,Gene Therapy,11:1735-1742(2004)を参照)。代表的な市販のエピソーム発現ベクターは、エプスタインバー核抗原1(EBNA1)およびエプスタインバーウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが含むが、これらに限定されない。Invitrogen(Carlsbad,CA)からのベクターpREP4、pCEP4、pREP7、およびpcDNA3.1並びにStratagene(La Jolla,CA)からのpBK-CMVは、EBNA1およびoriPの代わりにT抗原およびSV40複製起点を使用するエピソームベクターの非限定的な例を表す。
【0060】
他の適切なベクターは、宿主細胞のDNA中にランダムに統合され得るか、または発現ベクターと宿主細胞の染色体との間の特異的組換えを可能にする組換え部位を含み得る、統合発現ベクターを含む。そのような統合発現ベクターは、所望のタンパク質の発現をもたらすために宿主細胞の染色体の内因性発現制御配列を利用し得る。サイト特定の方法で統合されるベクターの例は、例えば、Invitrogen(Carlsbad,CA)からのflp-in系の成分(例えば、pcDNA(商標)5/FRT)、またはStratagene(La Jolla,CA)からのpExchange-6コアベクター中に見出され得るようなcre-lox系を含む。宿主細胞の染色体中にランダムに統合されるベクターの例は、例えば、ThermoFisher(Carlsbad,CA)からのpcDNA3.3(T抗原の非存在下において導入されるとき)、Millipore(Billerica,MA)からのUCOE、およびPromega(Madison,WI)からのpCIまたはpFN10A(ACT)FLEXI(商標)を含む。
【0061】
ウイルスベクターもまた、使用することができる。代表的な市販のウイルス発現ベクターは、Crucell,Inc.(Leiden,The Netherlands)から入手可能なアデノウイルスベースのPer.C6系、ThermoFisher(Carlsbad,CA)からのレンチウイルスベースのpLP1、およびAgilent(Stratagene,La Jolla,CA)からのレトロウイルスベクターpFB-ERVプラスpCFB-EGSHを含むが、これらに限定されない。
【0062】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、同じベクター上で細胞に(すなわち、シスで)提供することができる。一方向プロモーターを、各核酸配列の発現を制御するために使用することができる。別の実施態様においては、双方向性および一方向性プロモーターの組合せを、複数の核酸配列の発現を制御するために使用することができる。あるいは、本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列を、別個のベクター上で細胞の集団に(すなわち、トランスで)提供することができる。別個のベクターのそれぞれにおける核酸配列のそれぞれは、同じまたは異なる発現制御配列を含み得る。別個のベクターは、同時に細胞に提供することができる。
【0063】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸(複数可)を含むベクター(複数可)は、任意の適切な原核生物または真核生物細胞を含む、それによってコードされるポリペプチドを発現することができる宿主細胞中に導入することができる。そのようなものとして、本発明は、本発明のベクターを含むインビトロ細胞または細胞株を提供する。本発明はまた、免疫グロブリン重および/若しくは軽鎖ポリペプチドを発現する、またはPD-1結合剤を発現するインビトロ細胞または細胞株を提供する。好ましい宿主細胞は、容易にかつ確実に増殖することができ、適度に速い増殖速度を有し、よく特徴づけられた発現系を有し、容易にかつ効率的に形質転換しまたはトランスフェクトすることができるものである。
【0064】
適切な原核生物細胞の例は、バチルス属(枯草菌およびブレビバチルスなどの)、エシェリキア属(大腸菌などの)、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、サルモネラ属、およびエルウィニア属からの細胞を含むが、これらに限定されない。特に有用な原核生物細胞は、大腸菌のさまざまな株(例えば、K12、HB101(ATCC番号33694)、DH5α、DH10、MC1061(ATCC番号53338)、およびCC102)を含む。
【0065】
いくつかの実施態様においては、ベクターは、真核生物細胞中に導入される。適切な真核生物細胞は、当技術分野において知られており、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む。適切な酵母細胞の例は、クルイウェロマイセス属、ピキア属、リノスポリジウム属、サッカロマイセス属、およびシゾサッカロマイセス属からのものを含む。好ましい酵母細胞は、例えば、サッカロマイセス・セリビサエおよびピキア・パストリスを含む。
【0066】
適切な昆虫細胞は、例えば、Kitts et al.,Biotechniques,14:810-817(1993);Lucklow,Curr. Opin. Biotechnol.,4:564-572(1993);およびLucklow et al.,J. Virol.,67:4566-4579(1993)中に記載されている。好ましい昆虫細胞は、Sf-9およびHI5(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。
【0067】
いくつかの実施態様においては、哺乳動物細胞が、本発明において利用される。多くの適切な哺乳動物宿主細胞が当技術分野において知られており、多くは、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から入手可能である。適切な哺乳動物細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、ATCC番号CCL61)、CHO DHFR細胞(例えば、Urlaub et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,97:4216-4220(1980))、ヒト胚性腎臓(HEK)293または293T細胞(例えば、ATCC番号CRL1573)、および3T3細胞(例えば、ATCC番号CCL92)を含むが、これらに限定されない。他の適切な哺乳動物細胞株は、サルCOS-1(例えば、ATCC番号CRL1650)およびCOS-7細胞株(例えば、ATCC番号CRL1651)、並びにCV-1細胞株(例えば、ATCC番号CCL70)である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞は、マウス骨髄腫株MOPC21(例えば、Tysabri)の誘導体であるマウス細胞株NS0、および形質転換細胞株を含む、霊長類細胞株および齧歯類細胞株を含む。正常な二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養に由来する細胞株、並びに一次外植片も、また適切である。他の適切な哺乳動物細胞株は、その全てがATCCから入手可能である、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL-929細胞、およびBHKまたはHaKハムスター細胞株を含むが、これらに限定されない。適切な哺乳動物宿主細胞を選択するための方法並びに細胞の形質転換、培養、増幅、スクリーニング、および精製のための方法は、当技術分野において知られている。
【0068】
いくつかの実施態様においては、哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。例えば、哺乳動物細胞は、プレBリンパ球起源の細胞株などの、ヒトリンパ球またはリンパ球由来の細胞株であり得る。ヒトリンパ球細胞株の例は、限定なしに、RAMOS(例えば、CRL-1596)、Daudi(例えば、CCL-213)、EB-3(例えば、CCL-85)、Raji細胞(例えば、CCL-86)、およびそれらの誘導体を含む。
【0069】
本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」などの任意の適切な技術によって細胞中に導入し得る。本明細書において使用される「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」は、物理的または化学的方法を使用することによる宿主細胞中への1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの導入を指す。多くのトランスフェクション技術が、当技術分野において知られており、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈(例えば、Murray E.J.(ed.),Methods in Molecular Biology,Vol.7,Gene Transfer and Expression Protocols,Humana Press(1991)を参照);DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子衝撃(Johnston,Nature,346:776-777(1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al.,Mol. Cell Biol.,7:2031-2034(1987))を含む。ファージまたはウイルスベクターは、その多くが市販されている、適切なパッケージング細胞における感染性粒子の増殖の後、宿主細胞中に導入することができる。
【0070】
核酸および細胞は、本明細書において記載されるPD-1結合剤の製造のためなどの任意の目的に使用することができる。この点において、本発明は、PD-1結合剤の重および/または軽免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を培養することを含む、PD-1結合剤を製造する方法を提供する。別の言い方をすると、該方法は、細胞中でPD-1結合剤の免疫グロブリン重および/または軽鎖をコードする核酸を発現させることを含む。免疫グロブリン重および軽鎖は、所与の細胞中の単一の核酸から発現させることができるか、または免疫グロブリン重および軽鎖は、同じ細胞中の別個の核酸から発現させることができることが理解されるであろう。該方法は、既知の技術を使用して細胞または細胞培養培地からPD-1結合剤を回収および/または精製することをさらに含み得る。
【0071】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、もちろん、決してその範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【実施例
【0072】
以下の実施例は、本発明の実施態様による、特定の抗PD-1抗体重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチド配列を記載する。これらの実施例において使用される抗体は、以下に記載するとおりである。
【0073】
437M5-112抗体は、免疫化されたマウス脾臓からのソートされたPD-1結合IgGスイッチドB細胞上での単一細胞PCRに由来した。3.7C6抗体は、免疫化されたマウスの脾臓細胞から標準的な融合技術によって生成されたマウスハイブリドーマに由来した。抗体は、本明細書において記載される標準的な技術を使用してヒト化した。最終的な最適化された抗体は、CHO細胞中で発現させた。抗体配列は、表1A、1B、および1C中に要約しており、ここで、「H」および「L」鎖は、それぞれ重および軽鎖を指し、CDRは、KabatおよびIMGTの両方の定義に従って(表1B)または特定の抗体についてはKabat若しくはIMGTに従って(表1C)アミノ酸を含むと決定する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
実施例1
この実施例は、本明細書において開示される抗体が安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞において発現されるヒトおよびカニクイザルPD-1への飽和結合を示すことを実証する。
【0078】
HEK293細胞を、ヒトPD-1またはカニクイザルPD-1のいずれかを発現するように安定的にトランスフェクトした。細胞を、Accutase(商標)処理(Innovative Cell Technologies,San Diego,CA)によって回収し、カニクイザルPD-1を発現する細胞を、親油性蛍光色素Vybrant(登録商標)DiD(ThermoFisher Scientific,Carlsbad,CA)で処理し、次いで同数のヒトPD-1を発現する非標識HEK293細胞と混合した。細胞(サンプルあたり合計2x10)を、指示された濃度の各抗体で穏やかに振とうしながら4℃で40分間染色し、遠心分離して1回洗浄した。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2%パラホルムアルデヒド中で室温で10分間固定し、洗浄し、抗体を、フィコエリトリン(PE)接合ヤギ抗ヒトカッパ(Southern Biotechnology,Birmingham,AL)で穏やかに振とうしながら4℃で15分間検出した。細胞を、洗浄し、再懸濁し、結合した抗体の蛍光を、BD FACSArray(商標)(BD Biosciences,San Jose,CA)上で定量化した。データを、FlowJo(登録商標)分析ソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用して蛍光強度の中央値(MFI)について分析した。EC50値を、log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメーター)カーブフィットを使用してGraphPad Prism 5.0(GraphPad Software)において決定した。結果を、図1および2中に示し、EC50値を、表2(ヒト)および表3(カニクイザル)において記載する。APE06339は、鶏卵リゾチームに特異的なヒトIgG1アイソタイプ対照抗体である。APE08145は、参照抗PD-1抗体である。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
実施例2
この実施例は、本明細書において開示される抗体が2日間の抗CD3/抗CD28活性化ヒト末梢血CD4 T細胞に結合することを実証する。
【0082】
初代ヒト末梢血CD4 T細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)の磁気ビーズ分離(CD4 T Cell Isolation Kit,Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して調製し、6ウェルプレート中でプラスチックコーティングされた抗CD3および抗CD28で48時間活性化した。細胞(サンプルあたり1x10)を、洗浄し、V底96ウェルプレート中で指示された濃度の各抗体で穏やかに振とうしながら4℃で30分間染色し、遠心分離して1回洗浄した。細胞を、PBS中の4%パラホルムアルデヒド中で室温で10分間固定し、洗浄し、抗体を、Alexa Fluor 647接合F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)で4℃で10分間検出した。細胞を、洗浄し、再懸濁し、結合した抗体の蛍光を、BD FACSArray(商標)(BD Biosciences,San Jose,CA)上で定量化した。データを、FlowJo(登録商標)分析ソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用して幾何平均蛍光強度(MFI)について分析した。EC50値を、log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメーター)カーブフィットを使用してGraphPad Prism 7.02(GraphPad Software)において決定した。結果を、図3中に示し、EC50値を、表4において記載する。APE10787は、PD-1に特異的なヒトIgG1陽性対照抗体であり、APE06339は、鶏卵リゾチームに特異的なヒトIgG1アイソタイプ対照抗体である。
【0083】
【表6】
【0084】
実施例3
この実施例は、本明細書において開示される抗体がヒトPD-1でトランスフェクトしたCHO-K1細胞への結合についてPD-L1およびPD-L2と競合する程度を記録する。
【0085】
競合アッセイを、抗PD-1抗体とPD-L1-FcまたはPD-L2-Fc構築物との間のPD-1結合についての競合を試験するために実施した。図4~7中に示すように、テストした抗体は、PD-L1と中程度の競合(約70%の最大阻害)およびPD-L2と強い競合を示し;別のテストした抗体は、PD-L1と弱い/最小の競合(約15%の最大阻害)およびPD-L2と中程度の競合(約70%の最大阻害)を示す。
【0086】
CHO-K1細胞を、ヒトPD-1を発現するように安定的にトランスフェクトし、高レベルの発現クローンを、選択した。細胞を、Accutase(商標)処理(Innovative Cell Technologies,San Diego,CA)によって回収し、U底96ウェルプレート(2x10細胞/ウェル)中に入れた。試験のために、PD-L1競合抗体を、連続希釈し、DyLight 650(DyL650)標識ヒトPD-L1-マウスIgG1 Fc融合タンパク質(Abcam,Cambridge,MA)と事前に混合した(10nM最終濃度DyL650-PD-L1-Fcおよび図4および5中に示されている抗体濃度)。氷上での10分間インキュベーション後、抗体/DyL650-PD-L1-Fc混合物を、穏やかに振とうしながら4℃で30分間細胞に添加した。細胞を、遠心分離し、1回洗浄し、ヨウ化プロピジウムを含有するバッファー中で再懸濁し、結合したPD-L1-Fc蛍光を、BD FACSArray(商標)(BD Biosciences,San Jose,CA)上で定量化した。データを、FlowJo(登録商標)分析ソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用してPD-L1幾何中央値蛍光強度(MFI)について分析した。IC50値を、log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメーター)カーブフィットを使用してGraphPad Prism 7.02(GraphPad Software)において決定した。結果を、図4および5中に示し、結果として得られるIC50値を、表4~5において記載する。APE10787(「10787」)は、PD-1に特異的なヒトIgG1陽性対照アンタゴニスト抗体であり、APE06339(「06339.08」)は、鶏卵リゾチームに特異的なヒトIgG1アイソタイプ対照抗体である。APE08145(「08145.05」および「08145.06」)は、参照抗体である。APE12043(「12043.02」および「12043.03」)は、実施例1において記載される437M5-112抗PD-1抗体である。APE12095(「12095.03」および「12095.04」)は、実施例1において記載される3.7C6抗PD-1抗体である。
【0087】
高レベルのヒトPD-1を安定的に発現するCHO-K1細胞クローンを、Accutase(商標)処理(Innovative Cell Technologies,San Dirgo,CA)によって回収し、U底96ウェルプレート(2x10細胞/ウェル)中に入れた。試験のために、PD-L2競合抗体を、連続希釈し、DyL650標識ヒトPD-L2-マウスIgG1 Fc融合タンパク質(Abcam,Cambridge,MA)と事前に混合した(10nM最終濃度DyL650-PD-L2-Fcおよび図6および7中に示されている抗体濃度)。氷上での10分間インキュベーション後、抗体/DyL650-PD-L2-Fc混合物を、穏やかに振とうしながら4℃で30分間細胞に添加した。細胞を、遠心分離し、1回洗浄し、ヨウ化プロピジウムを含有するバッファー中で再懸濁し、結合したPD-L2-Fc蛍光を、BD FACSArray(商標)(BD Biosciences,San Jose,CA)上で定量化した。データを、FlowJo(登録商標)分析ソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用してPD-L2幾何中央値蛍光強度(MFI)について分析した。IC50値を、log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4パラメーター)カーブフィットを使用してGraphPad Prism 7.02(GraphPad Software)において決定した。結果を、図6および7中に示し、結果として得られるIC50値を、表6~7において記載する。APE10787(「10787」)は、PD-1に特異的なヒトIgG1陽性対照アンタゴニスト抗体であり、APE06339(「06339.08」)は、鶏卵リゾチームに特異的なヒトIgG1アイソタイプ対照抗体である。APE08145(「08145.05」および「08145.06」)は、参照抗体である。APE12043(「12043.02」および「12043.03」)は、実施例1において記載される437M5-112抗PD-1抗体である。APE12095(「12095.03」および「12095.04」)は、実施例1において記載される3.7C6抗PD-1抗体である。
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
実施例4
この実施例は、本明細書において開示される抗体がビーズベースおよびプレートベースのアゴニストアッセイにおいて一貫したアゴニスト活性を示すことを実証する。
【0093】
ビーズベースのアゴニストアッセイのために、Dynabeads(登録商標)M-280 Tosylactivated(Invitrogen-Life Technologies,Carlsbad,CA)を、製造業者の説明書に従って、抗CD3(10μg)、抗PD-1またはPD-L1-Fc(40μg)、および陰性対照抗体結合鶏卵リゾチーム(50μg)と結合し、合計100μgの結合タンパク質とした。ビーズカップリングの程度は、フローサイトメトリーによって定量化した。初代ヒト末梢血CD4 T細胞を、PBMCの磁気ビーズ分離(CD4 T Cell Isolation Kit,Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して調製した。精製したCD4 T細胞(1x10細胞/ウェル)を、可溶性抗CD28(eBioscience;示される250ng/ml、100ng/mlまたは50ng/ml)の存在下において、示される異なる数のビーズ(4:1、2:1、または1:1の比率のビーズ:T細胞)と72時間インキュベートした。培養上清中の分泌されたIFNγを、ELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)によって定量化した。図8Aおよび8B中に示し、表8において要約するように、本明細書において開示される抗PD-1抗体(437M5-112および3.7C6)は、ビーズアッセイにおいてPD-L1-Fcに匹敵する一貫した阻害(アゴニスト)活性を示した。
【0094】
図9A~9C中に示すように、3.7C6変異体APE12093およびAPE12095は、PD-L1-Fcと比較してより強い阻害を有する、ビーズベースのアッセイにおいて最もよいアゴニストであった。437M5-112変異体APE12043およびAPE12044は、親抗体APE11844と比較して改善されたアゴニスト活性を有していた。
【0095】
【表11】
【0096】
ビーズベースのアゴニストアッセイにおいて試験したドナー全体にわたる本明細書において開示される抗PD-1抗体によるIFNγ産生の阻害を、図10A~10Bおよび図11A~11C中に示す。
【0097】
プレートベースのアゴニストアッセイのために、96ウェルプレートを、4℃で一晩抗CD3(0.3μg/ml)で連続的にコーティングし、ウェルを、吸引してPBSで洗浄し、次いで4℃で一晩図12~14中に示すさまざまな濃度の抗PD-1抗体またはPD-L1-Fcでの第2のコーティングに供した。新鮮なまたは凍結したヒトPBMCを、フィトヘマグルチニン(PHA;2μg/ml)の存在下において48時間培養し、回収し、PHAを除去するために洗浄し、IL-2の存在下において一晩培養した。細胞を、回収し、洗浄してヒトガンマグロブリン(100μg/ml)の存在下において抗CD3/抗PD-1コーティングウェル(1x10細胞/ウェル)中で48時間インキュベートした。培養上清中の分泌されたIL-2を、ELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)によって定量化した。3人のPBMCドナーにわたるPD-1抗体によるIL-2産生の阻害を、図12A~12B、13A~13B、および14A~14B中に示す。本明細書において開示される抗PD-1抗体によるIL-2産生の阻害は、PD-L1-Fcによって誘導されるものに匹敵した。
【0098】
実施例5
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体がブロッキング抗PD-L1/抗PD-L2の存在下において溶液中でアゴニスト抗体活性を示したことを実証する。
【0099】
破傷風トキソイド免疫化ドナーからの全血を、1:3に希釈し、破傷風トキソイド(Astarte Biologics,Bothell,WA;5μg/ml)、抗PD-L1+抗PD-L2(BioLegend,San Diego,CA;各2μg/ml)、および示された濃度のテトラマーPD-L1-Fc、本明細書において記載される抗PD-1 IgG1抗体(3.7C6 APE12095;437M5-112 APE12043)、または対照ヒトIgG1の存在下において、U底96ウェルプレート中で4日間培養した。培養上清中の分泌されたIFNγを、ELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)によって定量化した。この破傷風トキソイドリコール応答全血アッセイにおいて、図15A(陽性および陰性対照)および15B(抗PD-1抗体)中に示すように、本明細書において記載される抗PD-1抗体の強力なアゴニスト抗体活性が、ブロッキング抗PD-L1/抗PD-L2の存在下において観察された。
【0100】
IgG1 3.7C6抗PD-1抗体を、ヒトIgG2として調製した同じ抗体と比較した(図15Cおよび15D)。抗体の抗PD-1 IgG2バージョンは、抗PD-1 IgG1と同一の活性化T細胞結合を有していたが、アゴニスト活性は示さなかった。抗体のIgG2、IgG4、またはIgG1(L234A、L235A)アイソタイプはまた、アゴニスト活性を欠き、これは、機能的アゴニスト活性のためのFcγRエンゲージメント/抗体クラスタリングについての要件を実証する。
【0101】
実施例6
この実施例は、本明細書において提供される抗PD-1抗体が濃度依存的に全血中の免疫応答を低下させることを実証する。
【0102】
インビトロで適切な抗原で刺激したヒト全血は、ドナーが以前に目的の抗原への曝露を経験したとき、特定のT細胞リコール免疫応答を引き出すであろう。免疫応答は、IFN-γおよびIL17Aレベルによって測定することができる。
【0103】
健康なヒトドナー(N=6)を、該ドナーが一般的な破傷風ワクチン接種の過程で以前に曝露された可能性が高い抗原破傷風トキソイドに対するインビトロリコール応答性について事前にスクリーニングした。ドナーからの全血を、破傷風トキソイドおよび抗PD-1 3.7C6抗体(APE12890)または無関係なヒトIgG1アイソタイプ対照のいずれかの存在下において96時間培養した。96時間の培養後、上清を、サイトカイン検出キット(Meso Scale Diagnostics,Rockville,MD)を使用して、サイトカインIFN-γおよびIL17Aの存在についてアッセイした。結果を、図22Aおよび22B中に提供する。
【0104】
何人かのドナーは他のドナーよりも強く応答したが、全てのドナーは、かなりの量のIFN-γおよびIL-17Aを産生することによって破傷風トキソイド特異的刺激に応答した。図22Aおよび22B中に示すように、3.7C6抗体は、IgG1アイソタイプ対照抗体と比較して、濃度依存的にIFN-γおよびIL-17Aの両方の分泌を低下させた。ヒト全血破傷風トキソイドリコールアッセイにおける3.7C6の中央値IC50および平均IC50±SDは、IFN-γ阻害についてはそれぞれ0.053nMおよび0.091±0.115nMであり、IL-17A阻害についてはそれぞれ0.097nMおよび0.119±0.098nMであると決定した。
【0105】
実施例7
この実施例は、本明細書において開示される抗体の結合動態(親和性)および熱安定性を実証する。
【0106】
3.7C6(APE12095.06およびAPE12537.01)は、ヒトおよびカニクイザルPD-1に匹敵する表面プラズモン共鳴(SPR)による結合動態を示した。緊密な結合動態は、機器についての限界に近づいた。SPRデータは、動的排除アッセイ(KinExA(登録商標))によって決定されたAPE12095についての平衡結合親和力とよく一致する。最終の親和性測定値は、ヒトPD-1についてのKinExA(登録商標)K:75pM;およびカニクイザルPD-1についてのKinExA(登録商標)K:450pMであった。
【0107】
437M5-112(APE12043.05およびAPE12538.01)はまた、ヒトおよびカニクイザルPD-1に非常に匹敵するSPRによる結合動態を示した。緊密な結合動態は、機器についての限界に近づいた。SPRデータは、KinExA(登録商標)によって決定されたAPE12043についての平衡結合親和性とよく一致する。最終の親和性測定値は、ヒトPD-1についてのKinExA(登録商標)K:51pM;およびカニクイザルPD-1についてのKinExA(登録商標)K:210pMであった。表面プラズモン共鳴およびKinExA(登録商標)による本明細書において開示される抗PD-1抗体についてのK測定の要約を、表9において記載する。
【0108】
【表12】
【0109】
APE12537抗体結合親和性および熱安定性を、「030-13263/030-13264」と指定される同様の抗体のものと比較した。APE12537は、重鎖における2つの変異:Kabat番号付けによるA52aIおよびD62Q(配列リストにおける位置を使用したA53IおよびD63Q)によって、030-13263/030-13264とは異なった。表10において提供される結果は、これらの変異が結合親和性および熱安定性を増加させたことを示す。
【0110】
【表13】
【0111】
表面プラズモン共鳴(SPR)によるスクリーニングのためのK測定を、Biacore T200(GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)上で実施し、運動定数を、1:1結合モデルを使用してグローバルに適合させた。ビオチン化ヒトまたはカニクイザルPD-1細胞外ドメインモノマーを、ストレプトアビジンで事前に固定化したカルボキシメチル化デキストラン表面を用いて、Biacore Sensor chip SA(GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)上に1nMの濃度で捕捉した。捕捉した抗原レベルは、解離速度に対する和合力効果を防ぐために低い応答をもたらすことを目標とした。Tm測定値は、蛍光ベースの熱シフトおよび示差走査熱量測定によって決定した。
【0112】
実施例8
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体が異種NSG/Hu-PBMC移植片対宿主病(GvHD)モデルにおいてインビボで有効性を示すことを実証する。
【0113】
本明細書において開示される抗PD-1抗体の有効性を試験する異種NSG/Hu-PBMC GvHDモデルを、The Jackson Laboratory JAX(登録商標)In Vivo Pharmacology Services(Sacramento,CA)で実施した。NOD-scid IL2rγnull(NSG)マウスに1Gyで照射し、その後、図16A中に例示するように、各マウス中への3x10個のヒトPBMCの静脈内注射を行った。抗体は、PBMC注射の翌日から始めて4週間、週2回10mg/kgで腹腔内投与し、ベラタセプトバイオシミラーは、4週間、週3回75μg/マウスで腹腔内投与した。本研究における投与計画および投与群を、図16B中に示す。疾患は、体重減少、死亡、およびGvHDスコア測定:体重減少、活動、毛皮の質感、蒼白、および姿勢によって週3回モニターした。10%を超える体重減少を示す動物を、毎日疾患モニターし、開始体重から20%を超える体重減少を示す動物を、安楽死させた。
【0114】
本明細書において開示される3.7C6 PD-1アゴニスト抗体(APE12095)は、10%の体重減少までの時間において、アイソタイプ対照に対して統計的に有意な有効性を示した(図16C)。本明細書において開示される437M5-112抗PD-1アゴニスト抗体もまた、10%の体重減少までの時間において、アイソタイプ対照に対して統計的に有意な有効性を示した(図16D)。両方の抗PD-1抗体に対する応答は、二峰性であり、各群における動物の割合は研究において完全に生存していた(図16Cおよび16D)。
【0115】
実施例9
この実施例は、カニクイザルの単回投与薬物動態および耐容性研究の研究デザインを実証する。
【0116】
カニクイザルの単回投与薬物動態および耐容性研究の研究デザインを、表11において記載する。研究中の評価は、以下のとおりであった:
-臨床病理学、投与前(2回)、2、6、22、および35日目(Charles River Laboratories(CRL))
-血液FACSパネル-主要な白血球集団および20個のT細胞サブセット、投与前(2回)、2、6、22、および35日目(CRL)
- B、T、NK、単球
- CD4、CD8、Tセントラルメモリー、Tエフェクターメモリー、PD-1、活性化CD4およびCD8、Treg
-受容体占有率、4、14、28、35日目
-PKサンプル分析、投与前および35日目の抗薬物抗体分析
-血清サイトカイン分析(17プレックス:IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p40、IL-13、IL-17a、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、MIP1β、MIP1α、TNF-α)、投与前、4時間および24時間、7日目および35日目
-Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)(Certara,USA)を使用したPKパラメーター分析。
【0117】
両方のPD-1抗体は、28日目に全ての動物において検出可能な薬物レベルでよく作動する薬物動態特性を示した(図17Aおよび17B)。研究は、35日目に完了した。用量は、忍容性が高く、有害な臨床兆候または臨床病理における変化は何ら観察されなかった。研究の結果を、表11および12において記載する。
【0118】
【表14】
【0119】
【表15】
【0120】
【表16】
【0121】
示されるように、抗体APE12538.01を投与した全6匹の動物は、36日目に測定可能な/低力価の抗薬物抗体を有していた。抗体APE12537.01を投与した6匹の動物のうちの2匹は、36日目に測定可能な/低力価の抗薬物抗体を有していた。評価したいずれのサイトカインにおいても、意味のある変化は何らなかった。さらに図18Aおよび18B中に示すように、14日目まで通した持続的な受容体占有が、#1001(437M5-112でIV投与した)を除く全ての動物において観察され;いくらかの占有が、28日目まで通してほとんどの動物において見られた。
【0122】
実施例10
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体がPD-1でトランスフェクトされたJurkat細胞においてPD-1細胞質ドメインへのホスファターゼSHP2のリクルートを誘導したことを実証する。
【0123】
抗体3.7C6(APE12890)または鶏卵リゾチームを認識するヒトIgG1アイソタイプ対照抗体および一定量の抗CD3(UCHT1クローン;BioLegend,San Diego,CA)を、磁気ビーズ(Dynabeads(商標)M-280 Tosylated;Invitrogen(商標)/ThermoFisher Scientific)に結合させた。ビーズ上の抗PD-1抗体は、抗原提示細胞上の抗体によるFcγRの関与を模倣する。安定なヒトPD-1トランスフェクトJurkat細胞を、示されたビーズで2分間または10分間のいずれかの間刺激し、細胞を溶解し、PD-1を、3.7C6結合ビーズの添加により免疫沈降させた。免疫沈降物を、SDS-PAGEによって分析し、その後、抗PD-1(図19A、上)、抗SHP2(図19A、中央)、または抗SHP1(図19A、下)のいずれかでイムノブロットした。このシグナル伝達アッセイにおいて、図19A(イムノブロット)および19B(イムノブロットのデンシトメトリー定量化)中に示すように、抗CD3でのPD-1 Jurkat細胞活性化の後、アイソタイプ対照抗体ではなく、本明細書において記載される3.7C6抗体が、PD-1細胞質ドメインへのホスファターゼSHP2のリクルートを誘導したが、SHP1のリクルートは誘導しなかった。抗CD3コーティングビーズの存在下において、図19A~B中に示すように、PD-1アンタゴニスト抗体ニボルマブ(溶液中で100nMで使用)は、PD-1へのSHP2またはSHP1のいずれのリクルートも誘導しなかった。可溶性ニボルマブでは、SHPのリクルートは何ら見られなかった。T細胞活性化およびCD28共刺激と組み合わせて、抗体3.7C6はまた、ZAP70およびLATのリン酸化を低下させた(データは示していない)。抗体3.7C6は、T細胞活性化不在下においてシグナル伝達経路に何ら影響を与えなかった。
【0124】
実施例11
この実施例は、本明細書において開示される3.7C6抗体が結合するヒトPD-1上のエピトープがPD-L1結合部位からPD-1の反対側の面上にあることを実証する。
【0125】
本明細書において開示される3.7C6抗体(APE12537)が結合するPD-1上のペプチドの水素-重水素交換マッピングを、組換えヒトPD-1モノマーを使用してBiomotif AB(Danderyd,Sweden)で実施した。PD-1の構造は、the National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)がアクセッション4ZqK(Zak,K. M. et al.,2015,Structure 23:2341-2348も参照;およびPDBアクセッション5GGR(Lee,J. Y. et al.,2016,Nat Commun.,7:13354も参照)で運営するProtein Data Bank(PDB)を通して公に入手可能である。図20Aおよび20B中で「HDXマッピングされたβ-ヘアピン」とラベル付けされた1つの主要なペプチドを、3.7C6抗体によって水素-重水素交換から保護した。「HDXマッピングされたβヘアピン」は、PD-1のアミノ酸96~110で構成され、該アミノ酸は、配列RVTQLPNGRDFHMSVを有する。別の主要なペプチドは、PD-1のアミノ酸33~41で構成され、該アミノ酸は、配列NPPTFSPALを有する。図20Aおよび20Bは、ヒトPD-L1細胞外結合ドメインの結晶構造の空間充填モデル(薄い灰色)とドッキングされたヒトPD-1細胞外ドメインの結晶構造のリボンモデル(黒色)(NCBI PDBからのPD-1およびPD-L1構造)を示す。分子は、左下のPD-1の膜近位領域に配向し(図20A)、90°回転して下部中央にPD-1の膜近位領域を示す(図20B)。定義された表面領域における異なるセットの変異を含有するヒトPD-1モノマーを発現させ、本明細書において開示される3.7C6抗体(APE12095)の結合を、表面プラズモン共鳴によって評価した。図20Aおよび20B中で「PD-1三重点変異体」とラベル付けされた領域における変異は、本明細書において開示される3.7C6抗体の結合を完全に無効にした。図20Aおよび20B中の「HDXマッピングされたβヘアピン」とラベル付けされたループの上部における変異は、本明細書において開示される3.7C6抗体の結合に影響を与えなかった。水素-重水素交換およびPD-1変異マッピングの組合せは、本明細書において開示される3.7C6 PD-1アゴニスト抗体がPD-L1結合部位からPD-1の反対側の面上にある、図20B中で点線の円によって描写されている領域への結合を示すことを実証した。
【0126】
実施例12
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体がケラチノサイトペプチド抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFNγの産生を阻害したことを実証する。
【0127】
円形脱毛症は、免疫系によって媒介される脱毛である。脱毛は、毛包の免疫特権がIFNγを産生するケラチノサイトおよびメラノサイト抗原特異的T細胞によって破壊されるときに結果として生じる。T細胞は、毛包の根鞘に浸潤する。活性化されたT細胞は、過剰なIFNγを産生する。主要組織適合性複合体クラスIおよびII分子は、異常に発現し、引き続く毛包細胞の破壊および脱毛を結果としてもたらす。
【0128】
PBMCを、円形脱毛症ドナーの血液から単離し、ケラチノサイトペプチド抗原(ペプチド抗原プールは、Wang et al.,J Invest Dermatol. 2016 Aug;136(8):1617-1626によって記載されるとおりであった)、および示された濃度のテトラマーPD-L1-IgG1 Fc、IgG1 3.7C6抗PD-1抗体(APE12890)、または対照IgG1アイソタイプテトラマー、または対照IgG1アイソタイプの存在下においてプレート中で培養した(2×10細胞/ウェル)。5日後、細胞を、洗浄してELISpotプレート中でさらなる20時間インキュベートして、IFNγ分泌細胞の数を検出した。各ドナーおよび治療群からの結果を、未治療のウェルに対して正規化して、治療および陰性対照についての12人のドナーからのデータの統計的比較を可能にした。
【0129】
図21A中に示すように、IgG1 3.7C6抗PD-1抗体は、対照IgG1アイソタイプと比較して濃度依存的にIFNγ産生を阻害した。図21B中に示すように、陽性対照PD-L1-IgG1 Fcテトラマーは、IgG1アイソタイプテトラマーと比較して濃度依存的に対照IgG1アイソタイプテトラマーと比較してIFNγ産生を阻害した。本明細書において記載される抗PD-1抗体およびPD-L1-IgG1 Fcテトラマーの両方が、図21Cおよび21D中に示すように、1nM以上の濃度でIFNγ分泌細胞の数を有意に阻害した(p<0.001)。
【0130】
実施例13
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体がメラノサイトペプチド抗原で刺激された円形脱毛症ドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFNγの産生を阻害したことを実証する。
【0131】
円形脱毛症は、免疫系によって媒介される脱毛である。脱毛および/または髪の色素沈着の喪失は、毛包の免疫特権がIFNγを産生するケラチノサイトおよびメラノサイト抗原特異的T細胞によって破壊されるときに結果として生じる。T細胞は、毛包の根鞘に浸潤する。活性化されたT細胞は、過剰なIFNγを産生する。主要組織適合性複合体クラスIおよびII分子は、異常に発現し、引き続く毛包細胞の破壊および脱毛を結果としてもたらす。皮膚における同様のメラノサイト特異的T細胞応答は、白斑におけるメラノサイトの破壊を結果としてもたらす。
【0132】
PBMCを、円形脱毛症ドナーの血液から単離し、メラノサイトペプチド抗原(ペプチド抗原プールは、Wang et al.,J Invest Dermatol.2016 Aug 136(8):1617-1626によって記載されるとおりであった)、および示された濃度のテトラマーPD-L1-IgG1 Fc、IgG1 3.7C6抗PD-1抗体(APE12890)、または対照IgG1アイソタイプテトラマー、または対照IgG1アイソタイプの存在下においてプレート中で培養した(2×105細胞/ウェル)。5日後、培養上清中の分泌されたIFNγを、Meso Scale Discovery(Meso Scale Diagnostics,Rockville,MD)によって定量化した。各ドナーおよび治療からの結果を、未治療のウェルに対して正規化して、治療および陰性対照についての12人のドナーからのデータの統計的比較を可能にした。さらに、5日後、細胞を洗浄しELISpotアッセイにおいてさらなる20時間インキュベートして、IFNγ分泌細胞の数を検出した。各ドナーおよび治療からの結果を、未治療のウェルに対して正規化して、治療および陰性対照についての12人のドナーからのデータの統計的比較を可能にした。結果を、図23A~23D中に示す。
【0133】
図23A中に示されるように、IgG1 3.7C6抗PD-1抗体は、対照IgG1アイソタイプと比較して濃度依存的にIFNγ産生を阻害した。図23B中に示すように、陽性対照PD-L1-IgG1 Fcテトラマーは、IgG1アイソタイプテトラマーと比較して濃度依存的に対照IgG1アイソタイプテトラマーと比較してIFNγ産生を阻害した。本明細書において記載される抗PD-1抗体およびPD-L1-IgG1 Fcテトラマーの両方が、100nM以上の濃度でIFNγ産生を有意に阻害した(p<0.001)。図23Cおよび23D中に示すように、本明細書において記載される抗PD-1抗体およびPD-L1-IgG1 Fcテトラマーの両方が、10nM以上の濃度でIFNγ分泌細胞の数を有意に低下させた(p<0.001)。
【0134】
実施例14
この実施例は、本明細書において開示される抗PD-1抗体が3mg/kgの投与量で異種NSG/Hu-PBMC移植片対宿主病(GvHD)モデルにおいてインビボで有効性を示すことを実証する。
【0135】
本明細書において開示される抗PD01抗体の有効性を試験する異種NSG/Hu-PBMC GvHDモデルを、The Jackson Laboratory,Sacramento,CA)で実施した。NOD-scid IL2rγnull(NSG)マウスに1 Gyを照射し、その後、図24A中に例示するように、各マウス中への0.9x10個のヒトPBMCの静脈内注射を行った。抗体は、PBMC注射の翌日から始めて4週間、週2回30mg/kg、10mg/kg、または3mg/kgで腹腔内投与した。第4の群は、無関係なアイソタイプ対照抗体を週2回30mg/kgで投与し、第5の群は、モデルにおける有効性についての既知の陽性対照であるCTLA-4-IgGを週3回75μg/マウスで投与した。本研究における投与計画および投与群を、図24B中に示す。疾患は、体重減少、死亡、およびGvHDスコア測定:体重減少、活動、毛皮の質感、蒼白、および姿勢によって週3回モニターした。10%を超える体重減少を示す動物を、毎日疾患モニターし、開始体重から20%を超える体重減少を示す動物を、安楽死させた。
【0136】
本明細書において開示される3.7C6 PD-1アゴニスト抗体(APE12890)は、生存においてアイソタイプ対照に対して統計的に有意な有効性を示し、生存時間の中央値を増加させた(図24C)。研究期間中にわたる個々の動物の開始体重のパーセントを、30mg/kgのアイソタイプ対照IgG1、30mg/kgの抗PD-1アゴニストIgG1(3.7C6)、10mg/kgの抗PD-1アゴニストIgG1(3.7C6)、3mg/kgの抗PD-1アゴニストIgG1(3.7C6)、および75μg/用量のCTLA-4-Ig(陽性対照)を投与したときについて、それぞれ図24D、24E、24F、24G、および24H中に示す。
【0137】
抗PD-1アゴニストIgG1(3.7C6)30mg/kgと抗PD-1アゴニストIgG1(3.7C6)3mg/kg用量群との間で生存における有意差はなかった。これは、GvHDモデルにおける有効性が3mg/kg未満の用量で得られ得ることを示唆する。
【0138】
本明細書において引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個別にかつ具体的に示され、その全体が本明細書において記載されているかのように同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つ」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書において別途示されているかまたは文脈によって明確に矛盾することがない限り、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストによって伴われる用語「少なくとも1つ」(例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」)は、本明細書において別途示されているかまたは文脈によって明確に矛盾することがない限り、リストされた項目(AまたはB)から選択される1つの項目またはリストされた項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組合せを意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、および「含有する」は、別途特に言及されていない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別途示されていない限り、範囲内にある各別個の値を個別に指す簡単な方法として役立つことを単に意図し、各別個の値は、本明細書において個別に列挙されているかのように明細書中に組み込まれる。本明細書において記載される全ての方法は、本明細書において別途示されているかさもなければ文脈によって明確に矛盾することがない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例、または例示的な言い回し(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図し、別途請求の範囲において請求されていない限り本発明の範囲に制限を置くものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠であるとして請求の範囲において請求されていない任意の要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0140】
この発明の好ましい実施態様は、本発明を行うための本発明者らに知られている最良の態様を含めて、本明細書において記載されている。それらの好ましい実施態様の変形は、前述の説明を読むと、当業者に明らかになる得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に使うことを期待し、本発明者らは、本明細書において具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施することを意図する。従って、この発明は、適用法によって許可される、本明細書に添付される特許請求の範囲において列挙されている主題の全ての修正および同等物を含む。さらに、その全ての可能な変形における上記の要素の任意の組合せは、本明細書において別途示されているかさもなければ文脈によって明確に矛盾することがない限り、本発明によって包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
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図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図24G
図24H
【配列表】
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