(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240520BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16K31/06 305A
H01F7/16 R
(21)【出願番号】P 2021578129
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 DE2020100592
(87)【国際公開番号】W WO2021001000
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】102019004597.1
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514198493
【氏名又は名称】アヴェンティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Aventics GmbH
【住所又は居所原語表記】Ulmer Strasse 4, 30880 Laatzen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コッホ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン マイ
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06073904(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0369914(US,A1)
【文献】国際公開第01/066933(WO,A1)
【文献】米国特許第04240468(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁であって、熱可塑性のプラスチックから形成されたハウジングボディと、コイルと、少なくとも部分的に前記コイルを取り囲むように配置された金属ヨークとを備える、電磁弁において、
前記ハウジングボディが、前記コイルを取り囲む射出成形部材として構成されており、前記熱可塑性のプラスチックには、熱伝導性を高めるための電気絶縁性の添加剤が添加されており、前記ハウジングボディの外面にはリブが形成されており、前記金属ヨークが、前記ハウジングボディを部分的に取り囲む構成部材として構成されていて、前記ハウジングボディに機械的に結合されていることを特徴とする、電磁弁。
【請求項2】
前記ハウジングボディが、一体型の構成部材として直に前記コイルに一体成形されていることを特徴とする、請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記金属ヨークが、前記ハウジングボディを、U字状に取り囲んでいるかまたは長手方向で切断された部分的な中空円筒体として取り囲んでいることを特徴とする、請求項1または2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記金属ヨークが、前記ハウジングボディを取り囲む側部または脚部の間に形成された少なくとも1つのねじ結合部によって、前記ハウジングボディに機械的に結合されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電磁弁。
【請求項5】
前記添加剤が鉱物性および/または無機質の固形物であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁弁。
【請求項6】
前記添加剤が窒化ホウ素および/または酸化アルミニウムであること特徴とする、請求項5記載の電磁弁。
【請求項7】
前記コイルが内側の支持要素と外側のコイル巻線とを備え、前記支持要素が、電気絶縁性の添加剤によって熱伝導性が高められたプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電磁弁。
【請求項8】
前記ハウジングボディと、該ハウジングボディを部分的に取り囲む前記金属ヨークとの間に、1つまたは複数のエラストマー製要素が配置されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において知られている電磁弁は、ばね荷重に抗して軸線方向可動に支持されたアーマチュア手段を内側に備えたコイルと、このコイルを取り囲む金属ヨークと、このアセンブリを取り囲むハウジングとを有している。ハウジングは、電気絶縁、および外的影響に対するソレノイドアセンブリの保護のために用いられる。このために、ハウジングは、非導電性の材料、例えばプラスチックから形成されている。こうした従来技術において知られている電磁弁は、例えば空気圧式の方向制御弁用の、電気的に操作されるパイロット段として用いられる(「パイロット電磁弁」)。アーマチュア手段は、例えば、ガス状または液状の流体に対する対応する封止座用の封止手段を備えて形成されているか、または、実体的もしくは機能的に結合されている封止手段を備えた別個の作動要素に作用する。
【0003】
そうした電磁弁を可能な限り小さな構造と同時に可能な限り大きな通流量で形成することへの需要が市場に存在する。この場合、一方で、比較的高い切替/閉鎖力が必要となることと、他方で、その結果として温度が比較的高くなることとの間には、ジレンマが存在する。この高い温度は、求められる切替/閉鎖力に基づき、このために必要となる電力による、比較的小さな構造形態でのコイル巻線への熱導入の結果、動作に起因して生じる。最大限提供可能な電力は、最大限許容可能な温度によって制限されている。この最大限許容可能な温度は、動作時に、電力に基づく熱導入と、電磁弁のコイル表面およびハウジング表面を介した周辺環境への熱導出との間の均衡状態で生じる。上記の理由から、電磁弁の電気絶縁性のハウジングの表面を介した周辺環境への可能な限り効果的な熱導出が望ましい。
【0004】
西独国実用新案公開第1797854号明細書から、弁の操作に用いられ、コイルと、このコイルを取り囲む金属薄板積層体とからなる電磁石のためのハウジングが公知である。この公知のハウジングは、注型樹脂(熱硬化性樹脂)から製造されていて、外面に冷却用リブを備えている。これにより、熱を導出する表面積が大幅に増大する。熱導出を改善するために、伝熱性の充填剤を注型樹脂に添加することがさらに提案される。注型プロセスでの樹脂による弁ハウジングの製造は、比較的手間を要する。さらに、一般的な注型樹脂は、完全硬化後に比較的脆性の材料特性を有しており、これにより、規定通りの熱導入に基づき、比較的激しい材料劣化にさらされる。そのうえ、コイルを取り囲む金属薄板積層体に対する平らな境界面への注型樹脂の付着結合は、両材料のそれぞれ異なる熱膨張率に基づき、注型樹脂ボディに、応力に起因する亀裂形成を招いてしまうおそれがある。
【0005】
独国特許出願公開第3322844号明細書から、カートリッジ構造形式の、弁体を具備したソレノイドバルブ用のハウジングが公知である。この公知のハウジングは、合成樹脂製の射出成形部材からなり、この射出成形部材は、弁構造を囲い込み、外面にリブに類似の構造を備えて構成されていてよい。同明細書では、ソレノイドコイルがコイル枠体に支持されている。このコイル枠体は、管状のフレーム内に取り付けられており、このフレームは、適切な合成樹脂から形成された外側ボディ内に封入されている。従来の合成樹脂は、限定された熱伝導性しか有しておらず、これにより、合成樹脂ハウジングの表面を介して達成可能な熱導出が相応に限定されている。さらに、合成樹脂ハウジングと、コイル枠体の管状のフレームとの、平らな境界面での射出成形結合は、通常、付着でもある。これにより、合成樹脂およびフレームのそれぞれ異なる熱膨張率に基づき、合成樹脂ボディに、応力に起因する亀裂形成が生じてしまうおそれがある。
【0006】
欧州特許第0615088号明細書から、電気的に操作可能な(パイロット制御弁として用いられる)電磁弁を備えた弁装置が公知である。電磁弁は弁ハウジングを有しており、この弁ハウジング内にはソレノイドコイルが配置されている。また、弁ハウジングは、周辺を向いた外面を有していて、この外面の少なくともソレノイドコイルの領域には、中間スペースによって互いに分離された複数の冷却用リブが設けられている。これらの冷却用リブの間に設けられた中間スペースの端部側は、開放されている。冷却用リブは、空気流のために提供される空隙を増大させ、ひいては対流による熱導出の改善に用いられる。冷却用リブを備えて形成されたハウジング区分は、プラスチック部材として構成されていてよい。従来のプラスチックは、限定された熱伝導性しか有しておらず、これにより、プラスチックハウジングの表面を介して達成可能な熱導出が相応に限定されている。弁ハウジングのプラスチック部材を製造するための技術的手法、または弁ハウジングのプラスチック部材とソレノイドコイルとを結合するための技術的手法は、欧州特許第0615088号明細書には開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある課題は、上述の欠点を回避することである。特に、周辺環境への効果的な熱導出を有しており、比較的小さな構造と同時に比較的高い切替/閉鎖力を実現することができる電磁弁の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の電磁弁によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の核をなすのは、電磁弁であって、熱可塑性のプラスチックから形成されたハウジングボディと、コイルと、このコイルを少なくとも部分的に取り囲む金属ヨークとを備え、ハウジングボディが、コイルを取り囲む射出成形部材として構成されており、熱可塑性のプラスチックには、熱伝導性を改善するための電気絶縁性の添加剤が添加されており、ハウジングボディの外面にはリブが形成されており、金属ヨークが、ハウジングボディを部分的に取り囲む構成部材として構成されていて、ハウジングボディに機械的に結合されている、電磁弁である。熱可塑性のプラスチックから形成されるハウジングボディには、熱伝導性を高める添加剤を添加すると同時に、ハウジングボディの外面に、周辺環境への熱導出のための表面積を増大させるリブを形成することによって、効果的な熱導出が保証されている。添加剤としては、プラスチックに類似する極めて低い導電性(絶縁体)しか有しておらず、しかしながら同時に、それぞれ用いられるプラスチックに比べて大幅に高い熱伝導性を有する、プラスチックの処理に適したあらゆる材料を使用することができる。これは、比較的小さな構造と同時に比較的高い電力を伴う電磁弁の実現を可能にする。さらに、これによって、比較的高い切替/閉鎖力が実現可能である。ハウジングボディを射出成形部材として構成することによって、電磁弁は構造的に単純かつ廉価に製造可能である。金属ヨークが、コイルを直には取り囲まず、ハウジングボディを外側から部分的に取り囲み、このハウジングボディに単に機械的に結合されている構成部材として構成されていることにより、両構成要素のそれぞれ異なる熱膨張率に基づく、ハウジングボディでの応力に起因する亀裂が同時に回避される。なぜなら、金属ヨークがその平らな境界面に、プラスチックハウジングボディとの付着結合を有していないからである。外側に配置された金属ヨークと、直にコイルを取り囲むハウジングボディとの間の純粋に機械的な結合に基づき、金属ヨークとハウジングボディとの間の熱に起因する相対運動を最小限に抑えることが可能となっている。それに対し、プラスチックハウジングボディとコイルとの間の境界面には、類似の応力モーメントは加えられていない。なぜなら、コイルは、コイル巻線によって形成された自身の外面に、それを取り囲む射出成形部材に対する類似の平らな境界面を有していないからである。本発明により、空間的な寸法は同じままで、提供可能な出力が高められた電磁弁が提供される。
【0010】
ハウジングボディが、一体型の構成部材として直にコイルに一体成形されていることにより、コイルとハウジングボディとの間の特に良好な熱伝導が保証される。これは同時に、簡単かつ廉価な製造を可能にする。
【0011】
有利な一構成では、金属ヨークが、ハウジングボディを、U字状に取り囲んでいるかまたは長手方向で切断された部分的な中空円筒体として取り囲んでいる。
【0012】
機械的な結合を構造的に単純かつ廉価に形成可能に実施するために、金属ヨークは、ハウジングボディを取り囲む側部または脚部の間に形成された少なくとも1つのねじ結合部によって、ハウジングボディに機械的に結合されている。
【0013】
特に簡単に処理可能な添加剤として、鉱物性および/または無機質の固形物が使用可能である。市場において特に廉価に入手可能な、良好な特性を有する固形物添加剤は、窒化ホウ素および/または酸化アルミニウムである。
【0014】
電磁弁用のコイルは、通常、内側の支持要素と、例えば銅製の外側のコイル巻線とから形成されている。ここで、支持要素も、電気絶縁性の添加剤によって熱伝導性が高められるプラスチックから形成されていることにより、支持要素を介して付加的に改善された熱導出が同時に保証されている。
【0015】
ハウジングボディと、このハウジングボディを部分的に取り囲む金属ヨークとの間に、1つまたは複数のエラストマー製要素が配置されていることにより、ハウジングボディと金属ヨークとの間の付加的に改善された運動自由度が達成され、動作中に生じ得る応力がさらに減じられる。
【0016】
本発明のさらなる利点を、以下に、図面に基づき本発明の好ましい実施例の記載と併せて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、電磁弁1が正面斜視図で示してあり、
図2には、電磁弁1が背面斜視図で示してある。電磁弁1は、熱可塑性のプラスチックから形成されたハウジングボディ2と、このハウジングボディ2を部分的に取り囲む金属ヨーク3とを有している。ハウジングボディ2の外面には、周辺環境への対流式の熱導出のために表面積を増大させるリブ構造が形成されている。このリブ構造のうち、
図1~
図3では、見やすさを保つために、単に個々のリブ4,4’,4’’および4’’’にのみ、例示的に参照符号が付してある。金属ヨーク3は、ねじ5および5’によってハウジングボディ2に摩擦接続的に結合されている。ハウジングボディ2の正面側には、中空円筒状の接続ソケット6が形成されており、この接続ソケット内には、電気的なコンタクトピン7および7’が配置されている。接続ソケット6は、この接続ソケットに対応する差込み接続手段を収容して、給電部へのコイルの電気的な接続を生じさせるために用いられる。
図3には、電磁弁1の概略的な縦断面図が示してある。コイル巻線9がコイル巻枠8に支持されている。このコイル巻枠8の中央の円筒状の切欠きの内側には、管状のソレノイドアーマチュア10が、ガイドスリーブ11の内側で軸線方向可動にガイドされている。コイルを電気的に操作すると、ソレノイドアーマチュア10がばね12の力に抗して上方に移動する。これにより、空気圧式の弁部分13で流体接続部が開放可能となる。ハウジングボディ2は、熱可塑性のプラスチックから形成されていて、コイルを直に取り囲む射出成形部材として構成されている。ハウジングボディ2を製造するためには、熱可塑性のプラスチックの射出によってコイルがこのプラスチックで直に取り囲まれ、この結果、ハウジングボディ2が直にコイルに一体成形される。この製造手法によって、コイルとハウジングボディ2との間の特に良好な熱伝導が保証される。なぜなら、ハウジングボディ2の熱可塑性の材料とコイルとの間に、間隙がない最適な形状接続部が形成されるからである。熱可塑性のプラスチックには、熱伝導性を改善するために、同時にプラスチックに対して大幅に高い熱伝導性を有する電気絶縁性の添加剤が添加されている。これは、コイル巻線9からハウジングボディ2を介した周辺環境への熱の導出を改善する。金属ヨーク3が、プラスチックから形成されたハウジングボディ2を外側から取り囲み、このハウジングボディに単に機械的に摩擦接続的に結合されていることにより、温度変化時に、金属ヨーク3とハウジングボディ2との間の相対運動が可能となる。これにより、ハウジングボディの機械的な損傷が回避される。電磁弁1は、従来技術において知られている構造に比べて、同じ構造寸法で相対的に高い出力の提供を可能にする。
【符号の説明】
【0019】
1 電磁弁
2 ハウジングボディ
3 金属ヨーク
4,4’,4’’,4’’’ リブ
5,5’ ねじ
6 接続ソケット
7,7’ コンタクトピン
8 コイル巻枠
9 コイル巻線
10 ソレノイドアーマチュア
11 ガイドスリーブ
12 ばね
13 弁部分