(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2022003985
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 昌浩
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-264227(JP,A)
【文献】特開2004-087738(JP,A)
【文献】特開2007-073751(JP,A)
【文献】特開平11-097417(JP,A)
【文献】特開2019-004057(JP,A)
【文献】特開2001-308079(JP,A)
【文献】特開2006-140423(JP,A)
【文献】特開2000-077393(JP,A)
【文献】特開平09-232294(JP,A)
【文献】特開平05-326459(JP,A)
【文献】特開平07-245292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、
前記載置面上に配置された前記被処理基板の外周縁部を上方から覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、
前記基板載置部および前記保護部材を収容する処理チャンバ内にSF
6ガスおよびO
2ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、
前記プラズマにより前記載置面上の前記被処理基板をエッチングするとともに、前記プラズマにより、前記保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、
前記反応部から生成された前記反応生成物を前記プラズマと反応させることにより、前記被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え
、
前記反応部の材料はSiO
2
であり、
前記反応生成物は、フッ化ケイ素および酸素ラジカルを含む、基板処理方法。
【請求項2】
基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、
前記載置面上に配置された前記被処理基板の外周縁部を上方から隙間を空けて覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、
前記基板載置部および前記保護部材を収容する処理チャンバ内にSF
6
ガスおよびO
2
ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、
前記プラズマにより前記載置面上の前記被処理基板をエッチングするとともに、前記プラズマにより、前記保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、
前記反応部から生成された前記反応生成物を前記プラズマと反応させることにより、前記被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え、
前記反応部の材料はSiO
2
である、基板処理方法。
【請求項3】
基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、
前記載置面上に配置された前記被処理基板の外周縁部を上方から覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、
前記基板載置部および前記保護部材を収容する処理チャンバ内にSF
6
ガスおよびO
2
ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、
前記プラズマにより前記載置面上の前記被処理基板をエッチングするとともに、前記プラズマにより、前記保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、
前記反応部から生成された前記反応生成物を前記プラズマと反応させることにより、前記被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え、
前記保護部材は、
前記被処理基板の外周縁部を覆うとともに、上面に前記反応部を有する環状の第1部材と、
前記第1部材の外周端を着脱可能に支持し、前記反応部を有しない環状の第2部材と、を含む
、基板処理方法。
【請求項4】
前記被処理基板の外周部における前記エッチング部に前記保護膜を形成する工程は、
前記反応部から生成されたシリコンを含む前記反応生成物を前記プラズマにより解離させる工程と、
解離されたシリコンと前記プラズマ中の酸素ラジカルとの反応により酸化ケイ素を含む前記保護膜を形成する工程と、を含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記反応部から前記反応生成物を生成する工程において、前記被処理基板の外周部におけるラジカルおよび反応生成物の分布を、前記被処理基板の中央部におけるラジカルおよび反応生成物の分布と近づけるように、前記反応部から前記反応生成物を生成する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理方法に関し、特に、基板載置部上の被処理基板をプラズマによってエッチングする基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板載置部上の被処理基板をプラズマによってエッチングする基板処理方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、処理チャンバ内に処理ガスを供給し高周波電圧を印加して処理ガスをプラズマ化させるとともに、基板保持装置に高周波電圧を印加し、プラズマによって生成したラジカルやイオンにより、処理チャンバ内の基板保持装置に保持されたシリコン基板をエッチングする技術が開示されている。上記特許文献1では、基板保持装置により保持されたシリコン基板の外周側縁部上面が環状の保護部材で覆われる。保護部材は、シリコン基板のうち、レジスト膜や酸化膜などの保護膜が形成されていない外周側縁部上面がエッチングされることを防ぐ機能を有し、アルミニウムにアルマイトコーティングを施したもの或いは酸化アルミニウムからなるセラミックにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように非ボッシュプロセスのドライエッチング処理を行う場合に、環状の保護部材よりも内周側のエッチング部(エッチングされる加工箇所)において、被処理基板の中央部付近と被処理基板の外周部付近(保護部材付近)とで寸法差が生じてしまうことが知られている。すなわち、被処理基板の中央部と被処理基板の外周部(保護部材付近)とでエッチング形状が均一にならないという課題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、非ボッシュプロセスのドライエッチング処理において、被処理基板の中央部付近と外周部付近との形状の均一性を改善させることが可能な基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、SF6ガスとO2ガスとを用いてシリコンをエッチングする条件下では、被処理基板の中央部と外周部との位置の相違に起因して、エッチングに関与する物質の分布に不均一が生じることが、エッチング形状の均一性に影響を与えているとの結論に至った。すなわち、被処理基板の中央部のエッチング部(エッチングされる加工箇所)では、周囲に他のエッチング部が密に存在することから、ラジカルと反応するシリコン表面積が相対的に大きいのに対し、被処理基板の外周部のエッチング部では、それよりも外周側にエッチング部が少ないか、または存在せず、さらに外周側縁部もエッチング耐性の高い酸化アルミニウム等の保護部材に覆われているため、ラジカルと反応するシリコン表面積が相対的に小さい。このため、被処理基板の中央部ではラジカルとの反応生成物が相対的に多く生成され、ラジカルがその分少なくなる。反対に、被処理基板の外周部ではラジカルとの反応生成物が相対的に少なく、ラジカルが相対的に多く分布する。本願発明者は、このようなエッチングに関与する物質の不均一な分布が、エッチング部における保護膜の形成に影響を及ぼし、非ボッシュプロセスのドライエッチング処理における形状の均一性を損なう要因の1つになることを発見した。この要因を解消するため、本願発明者は、下記の発明をするに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の局面による基板処理方法は、基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、載置面上に配置された被処理基板の外周縁部を上方から覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、基板載置部および保護部材を収容する処理チャンバ内にSF6ガスおよびO2ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、プラズマにより載置面上の被処理基板をエッチングするとともに、プラズマにより、保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、反応部から生成された反応生成物をプラズマと反応させることにより、被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え、反応部の材料はSiO
2
であり、反応生成物は、フッ化ケイ素および酸素ラジカルを含む。なお、本明細書における被処理基板の「外周部」とは、被処理基板の外周側で、かつ、保護部材よりも内周側であってエッチング部(加工箇所)が存在する領域を意味し、被処理基板の外周縁部を含まない概念である。
本発明の第2の局面による基板処理方法は、基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、載置面上に配置された被処理基板の外周縁部を上方から隙間を空けて覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、基板載置部および保護部材を収容する処理チャンバ内にSF
6
ガスおよびO
2
ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、プラズマにより載置面上の被処理基板をエッチングするとともに、プラズマにより、保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、反応部から生成された反応生成物をプラズマと反応させることにより、被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え、反応部の材料はSiO
2
である。
本発明の第3の局面による基板処理方法は、基板載置部の載置面にシリコンからなる被処理基板を配置する工程と、載置面上に配置された被処理基板の外周縁部を上方から覆うように、環状の保護部材を配置する工程と、基板載置部および保護部材を収容する処理チャンバ内にSF
6
ガスおよびO
2
ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する工程と、プラズマにより載置面上の被処理基板をエッチングするとともに、プラズマにより、保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程と、反応部から生成された反応生成物をプラズマと反応させることにより、被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程と、を備え、保護部材は、被処理基板の外周縁部を覆うとともに、上面に反応部を有する環状の第1部材と、第1部材の外周端を着脱可能に支持し、反応部を有しない環状の第2部材と、を含む。
【0009】
本発明の第1~第3の局面による基板処理方法では、上記のように、プラズマにより載置面上の被処理基板をエッチングするとともに、プラズマにより、保護部材の表面に設けられたシリコンを含む反応部から反応生成物を生成する工程を備える。これにより、被処理基板だけでなく保護部材の反応部でも、余剰のラジカルによる反応生成物が生成するので、被処理基板の外周部付近における反応生成物の分布量を増大させることができる。被処理基板も反応部もシリコンを含むため、被処理基板および反応部から生成される反応生成物には、SF6ガスのプラズマによるフッ素ラジカルとシリコンとの反応によるフッ化ケイ素(SiF4等)が共に含まれる。このフッ化ケイ素が、エッチング部における保護膜の形成に寄与する。そして、反応部から生成された反応生成物をプラズマと反応させることにより、被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程を備えるので、被処理基板の外周部におけるエッチング部でも、反応生成物が十分に確保される被処理基板の中央部と同様に、保護膜を形成できる。この結果、被処理基板の外周部におけるエッチング部と中央部におけるエッチング部とで保護膜の形成状況を近づけることができるので、非ボッシュプロセスのドライエッチング処理において、被処理基板の中央部付近と外周部付近との形状の均一性を改善させることができる。
【0010】
上記発明の第1~第3の局面による基板処理方法において、好ましくは、被処理基板の外周部におけるエッチング部に保護膜を形成する工程は、反応部から生成されたシリコンを含む反応生成物をプラズマにより解離させる工程と、解離されたシリコンとプラズマ中の酸素ラジカルとの反応により酸化ケイ素を含む保護膜を形成する工程と、を含む。このように構成すれば、反応生成物であるフッ化ケイ素の一部をプラズマによって解離させ、解離されたシリコンとO2ガス由来の酸素ラジカルとの反応によって、エッチング部にSiO系の保護膜が形成される。これにより、被処理基板の外周部においても、保護部材の反応部から供給される反応生成物により、エッチング部にSiO系の保護膜を効果的に形成できる。
【0011】
上記発明の第1の局面による基板処理方法では、反応部の材料はSiO2であり、反応生成物は、フッ化ケイ素および酸素ラジカルを含む。これにより、フッ素ラジカルと反応部との反応により、フッ化ケイ素だけでなく、保護膜を形成するための材料としての酸素ラジカルも反応部から供給できる。また、ラジカルによる反応生成物の他に、反応部からはイオン衝突により酸素原子も生成され、保護膜を形成するための材料となる。なお、反応部の材料としてのSiO2には、石英その他のSiO2結晶が含まれる。
【0012】
上記発明の第1~第3の局面による基板処理方法において、好ましくは、反応部から反応生成物を生成する工程において、被処理基板の外周部におけるラジカルおよび反応生成物の分布を、被処理基板の中央部におけるラジカルおよび反応生成物の分布と近づけるように、反応部から反応生成物を生成する。このように構成すれば、エッチング部および反応部の両方を合わせた被処理基板の外周部におけるラジカルおよび反応生成物の分布を、被処理基板の中央部のラジカルおよび反応生成物の分布に、近付けることができる。その結果、被処理基板の中央部と外周部とで保護膜の形成状況を近づけることができるので、被処理基板の中央部および外周部の各エッチング部の形状差を効果的に低減できる。
【0013】
上記発明の第3の局面による基板処理方法では、保護部材は、被処理基板の外周縁部を覆うとともに、上面に反応部を有する環状の第1部材と、第1部材の外周端を着脱可能に支持し、反応部を有しない環状の第2部材と、を含む。これにより、被処理基板とともにエッチングされる反応部を有する第1部材を、第2部材に対して交換できる。そのため、エッチングに伴い反応部が消耗した場合に、保護部材の全体を交換する場合と比べて、交換作業を容易化できるとともに資源消費量を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、非ボッシュプロセスのドライエッチング処理において、被処理基板の中央部付近と外周部付近との形状の均一性を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】基板処理方法を実施するための基板処理装置の概略構成を示した模式図である。
【
図2】保護部材および保護部材の支持構造を示した模式的な斜視図である。
【
図3】保護部材を説明するための被処理基板の外周縁部近傍の拡大断面図である。
【
図4】保護部材と被処理基板との位置関係を説明するための模式的な平面図である。
【
図5】本実施形態の基板処理方法を示したフロー図である。
【
図6】被処理基板の外周部のエッチング部での保護膜の形成を説明する図である。
【
図7】被処理基板の中央部のエッチング部での保護膜の形成を説明する図である。
【
図8】酸化アルミニウム製の保護部材を用いた比較例による、被処理基板の外周部および中央部の各エッチング部の断面の全体画像および拡大画像である。
【
図9】石英製の第1部材を備えた保護部材を用いた実施例による、被処理基板の外周部および中央部の各エッチング部の断面の全体画像および拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1を参照して本実施形態の基板処理方法を行う基板処理装置100を説明する。
【0018】
(基板処理装置)
基板処理装置100は、処理チャンバ10内にプラズマを形成して被処理基板1のドライエッチングを行うプラズマ処理装置である。被処理基板1は、シリコンにより形成されたシリコンウェハである。
【0019】
基板処理装置100は、処理チャンバ10と、基板載置部20と、ガス供給装置30と、プラズマ生成装置40と、排気装置50と、高周波電源60と、保護部材70とを備える。
【0020】
処理チャンバ10は閉塞空間を有し、閉塞空間内に基板載置部20を収容している。処理チャンバ10は、相互に連通した内部空間を有する上チャンバ11および下チャンバ12から構成される。
【0021】
基板載置部20は、被処理基板1が載置される載置面20aを有する。基板載置部20は、円板形状を有し、基台21と、基台21上に設置された静電チャック22と、静電チャック22の周囲を取り囲むリング部材23とを含む。基板載置部20は、昇降シリンダ25により処理チャンバ10内で昇降自在に設けられている。基台21はアルミニウムからなり、静電チャック22およびリング部材23は酸化アルミニウムからなる。静電チャック22は、静電吸着用の電圧を印加する静電吸着用電源(図示せず)と接続されている。静電チャック22に電圧を印加すると、静電誘導により、被処理基板1が静電チャック22の上面である載置面20aに吸着される。なお、基板載置部20には内部配管(図示せず)が設けられ、この内部配管にガルデン(登録商標)等の所定の冷媒を導入し、冷媒の温度を管理(例えば、5℃に管理)しながら、冷媒を循環させるチラー装置(図示せず)が取り付けられている。これにより、プラズマ処理の実行中、基板載置部20が冷却される。また、プラズマ処理の実行中、被処理基板1の裏面には、所定の冷却ガス供給管(図示せず)から冷却ガス(Heガス等の不活性ガス)が供給され、被処理基板1が冷却される。
【0022】
ガス供給装置30は、処理チャンバ10内にエッチングガスおよび保護膜形成ガスを供給する。ガス供給装置30は、エッチングガスとしてSF6ガスを供給するSF6ガス供給部31と、保護膜形成ガスとしてO2ガスを供給するO2ガス供給部32とを含む。各ガス供給部は、ガス供給用の分岐した供給管33により、上チャンバ11の上面から処理チャンバ10内に接続している。供給管33を介して、処理チャンバ10内にSF6ガスおよびO2ガスが供給される。
【0023】
プラズマ生成装置40は、処理チャンバ10内に供給されたガスにより誘導結合プラズマ(ICP)を生成する装置である。プラズマ生成装置40は、上チャンバ11の外周に設けられた螺旋状のコイル41と、このコイル41に高周波電力を供給する高周波電源42とを含む。高周波電源42によってコイル41に高周波電力を供給することにより、上チャンバ11内に供給されたガスがプラズマ化される。
【0024】
排気装置50は、処理チャンバ10内の圧力を減圧する。排気装置50は、処理チャンバ10内のガスを排気する真空ポンプ51と、真空ポンプ51を処理チャンバ10内に接続する排気管52とを含む。排気管52を介して、真空ポンプ51が処理チャンバ10内のガスを排気し、処理チャンバ10内を真空に近い所定の圧力状態とする。
【0025】
高周波電源60は、基板載置部20にバイアス電位用の高周波電力を供給する。高周波電源60は、基板載置部20の基台21に高周波電力を供給することで、基板載置部20(基台21)とプラズマとの間にバイアス電位を与える。
【0026】
保護部材70は、処理チャンバ10内で基板載置部20の上方に配置されている。保護部材70は、円環形状かつ平板形状を有する。保護部材70は、環状のベース部75(
図2参照)から立ち上がる複数の支柱76により支持されている。
【0027】
昇降シリンダ25により基板載置部20が下降位置(実線参照)にあるとき、基板載置部20が保護部材70の下方に離隔する。昇降シリンダ25により基板載置部20が上昇位置(二点鎖線参照)に移動すると、リング部材23の上面が保護部材70の下面と接触して、保護部材70が被処理基板1の外周縁部1c(
図3参照)を上方から覆う。なお、基板載置部20に対して保護部材70が昇降してもよい。
【0028】
〈保護部材の構成〉
図2に示すように、保護部材70は、環状の第1部材71と、第1部材71の外周端を着脱可能に支持する環状の第2部材72とを含む。第1部材71は、全周にわたって連続した単一部材である。第2部材72は、外周側が複数の支柱76により支持されている。第2部材72には、表裏に貫通するガス抜き用の貫通孔72bが、周方向に沿って複数形成されている。
【0029】
図3に示すように、第2部材72の内周端には、第1部材71の外周端と係合する周状の段差部72aが形成されている。この段差部72aに、第1部材71が上方へ移動可能(取り外し可能)な状態で設置されている。第2部材72の下面には、リング部材23の上面と接触する当接部72cが設けられている。接触により、保護部材70と被処理基板1との上下位置関係が一定になる。第1部材71は、被処理基板1の外周縁部1cを覆うように、被処理基板1の外径よりも、外周縁部1cの被覆範囲の分だけ小さい内径(
図4参照)を有する。被処理基板1の外周縁部1cを覆う部分は第1部材71によって構成され、第2部材72は、略全体が外周縁部1cよりも外周側に設けられている。保護部材70(第1部材71、第2部材72)と被処理基板1の外周縁部1c上面及び外周面との間には隙間が形成されている。
【0030】
本実施形態では、保護部材70の表面に、シリコンを含む反応部71aが設けられている。反応部71aの材料は、Si、SiO
2、SiCなどが選択される。本実施形態の反応部71aの材料は、SiO
2(石英)である。後述するが、反応部71aは、被処理基板1のエッチングの際に、プラズマ中のラジカルと反応して反応生成物87(
図6参照)を生成する機能を有する。
【0031】
本実施形態では、第1部材71が反応部71aを有し、第2部材72は反応部71aを有しない。具体的には、第1部材71の全体形状がSiO
2(石英)により形成されており、第1部材71の上面全体(
図4参照)が反応部71aを構成する。一方、第2部材72は、酸化アルミニウムにより形成されており、反応部71aを構成しない。第2部材72の材料には、耐エッチング性能および機械的強度(靭性)が反応部71aの構成材料よりも高いものが選択される。第2部材72の材料は窒化アルミニウム等でもよい。
【0032】
(基板処理方法)
次に、本実施形態の基板処理方法について説明する。
図5に示すように、本実施形態の基板処理方法は、下記の工程S1~S5を備える。以下、基板処理装置100の各部については、
図1~
図4を参照するものとする。
【0033】
工程S1では、基板載置部20の載置面20aに被処理基板1を配置する。被処理基板1は、図示しない搬送ロボット等により、下降位置にある基板載置部20の載置面20a上に載置される。静電チャック22により被処理基板1が載置面20aに吸着される。
【0034】
工程S2において、載置面20a上に配置された被処理基板1の外周縁部1cを上方から覆うように、環状の保護部材70を配置する。すなわち、昇降シリンダ25により基板載置部20が下降位置から上昇位置へ移動されることにより、第1部材71が被処理基板1の外周縁部1cの上方を覆う所定位置(
図3参照)に保護部材70が配置される。
【0035】
工程S3において、基板載置部20および保護部材70を収容する処理チャンバ10内にSF
6ガスおよびO
2ガスを導入し、高周波電力を印加してプラズマを形成する。まず、ガス供給装置30により上チャンバ11内にSF
6ガス、O
2ガスが供給されるとともに、高周波電源42によりコイル41に高周波電力が供給される。これにより、SF
6ガスおよびO
2ガスが高周波電力により励起されてプラズマ80(
図6参照)となる。プラズマ80は、SF
6ガス由来のフッ素ラジカル等のラジカル81、SF
6ガス由来のフッ素イオン等のイオン82、O
2ガス由来の酸素ラジカル85および酸素イオン86、電子などを含む。実際には反応は複雑なので、
図6および
図7は、代表的な反応例あるいは反応イメージを図示している。
【0036】
工程S4において、プラズマ80により載置面20a上の被処理基板1をエッチングするとともに、プラズマ80により、保護部材70(第1部材71)の表面に設けられた反応部71aから反応生成物87(
図6参照)を生成する。具体的には、高周波電源60により基板載置部20に高周波電力が印加され、これにより、基板載置部20と処理チャンバ10中のプラズマ80との間で電位差(バイアス電位)が生じる。
【0037】
図6に示すように、バイアス電位によって、プラズマ80中のイオン82が被処理基板1に向けて引き込まれる。イオン82のエッチング部90への衝突により、エッチング部90が物理的にエッチングされる。また、プラズマ80中のラジカル81が、エッチング部90のシリコンとの化学反応により、反応生成物を脱離させてシリコンをエッチングする。生成される反応生成物は、フッ化ケイ素83(SiF
4等)を含む。他に、図示していないが、酸素ラジカル85や酸素イオン86によるシリコンの表面酸化も行われている。このとき、被処理基板1の外周部1a(
図4参照)の外側でも、プラズマ80中のラジカル81の一部が保護部材70の反応部71aをエッチングし、反応部71aからもフッ化ケイ素83(SiF
4)および酸素ラジカル85を含む反応生成物87が生じる。また、プラズマ80中のイオン82による反応部71aの物理的なエッチングも生じている。なお、本実施形態のエッチング処理は、いわゆる非ボッシュプロセスである。シリコンのエッチング工程と側壁保護膜の形成工程とを繰り返すボッシュプロセスと異なり、非ボッシュプロセスでは、エッチング工程と側壁保護膜形成工程が同時に行われる。ボッシュプロセスはエッチング部の側壁にスキャロップと呼ばれる等方性エッチによる貝殻状の形状(あるいは波状の凹凸)が生じるため、エッチング側壁形状を重視する場合にはスキャロップが生じない非ボッシュプロセスが好ましい。
【0038】
ここで、本実施形態では、
図4の工程S5において、反応部71aから生成された反応生成物87をプラズマ80と反応させることにより、被処理基板1の外周部1aにおけるエッチング部90に保護膜91を形成する。
【0039】
具体的には、工程S5は、反応部71aから生成されたシリコンを含む反応生成物87(
図6参照)をプラズマ80により解離させる工程と、解離されたシリコンと酸素ラジカル85との反応により酸化ケイ素を含む保護膜91(
図6参照)を形成する工程と、を含む。シリコンを含む反応生成物87は、具体的にはフッ化ケイ素83(SiF
4等)である。
【0040】
図6において、被処理基板1のエッチング部90から生成された反応生成物であるフッ化ケイ素83(SiF
4)も、反応部71aから生成された反応生成物87であるフッ化ケイ素83も、大部分は、排気装置50により処理チャンバ10から排出されることになる。一方で、各部で生成されたフッ化ケイ素83の一部は、プラズマ80によってSi解離種83aとF解離種83bとに解離される。解離されたSi解離種83aは、O
2ガスに由来する酸素ラジカル85または反応部71aの反応生成物87である酸素ラジカル85と反応して結合し、エッチング部90内に付着することでSiO系(酸化ケイ素)の保護膜91が形成される。エッチング部90の底面に形成された保護膜91はイオン82等により物理的にエッチングされるため、結果としてエッチング部90の側壁に保護膜91が形成される。
【0041】
フッ化ケイ素83に由来するSiO系の保護膜91の形成は、被処理基板1の外周部1aおよび中央部1bのどちらでも生じる。
図6に示す外周部1aでは、上記のようにエッチング部90から生成されたフッ化ケイ素83および反応部71aから生成されたフッ化ケイ素83の両方が、保護膜91の形成に寄与する。
図7に示す中央部1bでは、反応部71aからの距離が大きいため、主にエッチング部90から生成されたフッ化ケイ素83が保護膜91の形成に寄与する。
【0042】
なお、
図4に示したように、被処理基板1の「外周部」とは、中央部1bよりも径方向外側の部分かつ保護部材70よりも径方向内側の部分(覆われていない部分)であり、たとえば被処理基板1の外周縁部1cから内側へ10mm~20mm程度の範囲である。
【0043】
次に、本実施形態の基板処理方法の作用を、被処理基板1の中央部1bのエッチング部90と外周部1aのエッチング部90との対比で説明する。
【0044】
図7に示すように、被処理基板1の中央部1bでは、いずれかのエッチング部90の周囲は、別のエッチング部90によって囲まれている。そのため、中央部1bのある点の周囲(一定半径内の領域)では、外周部1aと比べて、ラジカル81と反応するシリコン表面積(の比率)が大きい。ラジカル81により、多数のエッチング部90の各々でフッ化ケイ素83(SiF
4)が生成する。中央部1bでは、ラジカル81と反応するシリコン表面積(の比率)が大きいため、外周部1aと比べて反応生成物(フッ化ケイ素83)の生成量が相対的に大きく、ラジカル81が相対的に少なくなる。
【0045】
図6に示したように、被処理基板1の外周部1aのエッチング部90は、被処理基板1の外周縁部1cに近いので、周囲にある別のエッチング部90の数が少ない。そのため、外周部1aのある点の周囲(一定半径内の領域)では、中央部1bと比較して、ラジカル81と反応するシリコン表面積(の比率)が小さい。また、被処理基板1の外周縁部1cは保護部材70により覆われている。したがって、仮に反応部71aが設けられない場合、外周部1aでは、中央部1bと比較して、反応生成物(フッ化ケイ素83)の生成量が相対的に少なく、シリコン表面積に対してラジカル81が相対的に多い状態となる。なお、
図6、
図7において、各反応は各々1つの反応として描写しているが、実際には無数に発生しており、
図6、
図7は、各反応の反応量(あるいは反応比率)を示しているものではない。例えば、
図6および
図7では、共に、1つのエッチング部90から生成されるフッ化ケイ素83は1つのみ描写されているが、周囲(一定半径内の領域)も含めたエッチング部90の存在数(つまりシリコン表面積)は外周部1aよりも中央部1bの方が多いことから、1つのエッチング部90の周囲も含めたエッチング部90から生成されるフッ化ケイ素83等の反応生成物の量は中央部1bの方が多い。さらに、
図6に示した外周部1a付近に反応部71aが存在しない場合(エッチング部90から生成された反応生成物に由来する保護膜91だけを考慮した場合)、エッチング部90への保護膜91の進入量(つまり生成量)が
図6と
図7で同数描写されていることになるが、上記の様に、1つのエッチング部90の周囲も含めたエッチング部90から生成される反応生成物の量が中央部1bの方が多いことから、エッチング部90から生成された反応生成物に由来する保護膜91のエッチング部90への進入量(生成量)も中央部1bの方が多い。
【0046】
本願発明者は、このようなラジカル81の分布(粗密)および反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布(粗密)が被処理基板1の中央部1bと外周部1aとで異なる場合、中央部1bと外周部1aとで反応生成物に由来するSiO系の保護膜91の形成状況に差異が生じ、エッチング部90の形状差をもたらす要因の1つとなることを発見した。外周部1aにおける保護膜91の形成作用が弱いため、中央部1bと比較して、外周部1aでは深さ方向のエッチングレート、溝幅が増大する傾向にある。
【0047】
そこで、本実施形態では、被処理基板1の外周部1aのさらに外側の保護部材70に反応部71aを設けたため、外周部1aにおける余剰のラジカル81は、反応部71aのエッチングに利用され、反応生成物87(フッ化ケイ素83)を生成する。すなわち、本実施形態では、工程S4(
図5参照)において、被処理基板1の外周部1a(
図6参照)におけるラジカル81および反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布を、被処理基板1の中央部1bにおけるラジカル81および反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布と近づけるように、反応部71aから反応生成物87を生成する。
【0048】
この結果、本実施形態では、中央部1bと外周部1aとの間での反応生成物に由来するSiO系の保護膜91の形成状況の差異が低減され、エッチング部90の形状差が低減される。特に、本実施形態では石英(SiO2)からなる反応部71aからの反応生成物87にはフッ化ケイ素83だけでなく酸素ラジカル85が含まれ、SiO系の保護膜91の材料となるSiおよびOの両方が反応部71aから供給される。なお、図示を省略するが、反応部71aからは、プラズマ80中のイオン82の衝突による酸素原子(O)も供給される。
【0049】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態の基板処理方法では、上記のように、プラズマ80により載置面20a上の被処理基板1をエッチングするとともに、プラズマ80により、保護部材70の表面に設けられた反応部71aから反応生成物87を生成する工程S4を備える。これにより、被処理基板1の外周部1a付近では、被処理基板1のエッチング部90だけでなく保護部材70の反応部71aでも余剰のラジカルによる反応生成物87を生成するので、被処理基板1の外周部1a付近における反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布量を増大させることができる。被処理基板1および反応部71aから生成される反応生成物には、フッ化ケイ素83(SiF4等)が共に含まれる。このフッ化ケイ素83が、エッチング部90における保護膜91の形成に寄与する。そして、反応部71aから生成された反応生成物87をプラズマ80と反応させることにより、被処理基板1の外周部1aにおけるエッチング部90に保護膜91を形成する工程S5を備えるので、被処理基板1の外周部1aにおけるエッチング部90において、反応生成物が十分に確保される中央部1bと同様に、反応生成物(フッ化ケイ素83)に由来する十分な量の保護膜91を形成できる。この結果、被処理基板1の外周部1aと中央部1bとで保護膜91の形成状況を近づけることができるので、非ボッシュプロセスのドライエッチング処理において、被処理基板1の中央部1b付近と外周部1a付近との形状の均一性を改善させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、被処理基板1の外周部1aにおけるエッチング部90に保護膜91を形成する工程S5は、反応部71aから生成されたシリコンを含む反応生成物87をプラズマ80により解離させる工程と、解離されたシリコンとプラズマ80中の酸素ラジカル85との反応により酸化ケイ素を含む保護膜91を形成する工程と、を含む。これにより、反応生成物87であるフッ化ケイ素83(SiF4)の一部をプラズマ80によって解離させ、解離されたシリコン(Si)とプラズマ80中の酸素ラジカル85との反応によって、外周部1aにおけるエッチング部90にSiO系の保護膜91が形成される。そのため、被処理基板1の外周部1aにおいても、反応部71aから供給される反応生成物87により、エッチング部90にSiO系の保護膜91を効果的に形成できる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、反応部71aの材料はSiO2(石英)であり、反応生成物87は、フッ化ケイ素83および酸素ラジカル85を含む。これにより、ラジカル81と反応部71aとの反応により、フッ化ケイ素83だけでなく、保護膜91を形成するための材料としての酸素ラジカル85も反応部71aから供給できる。そのため、保護膜91を形成するための材料としての酸素ラジカル85も反応部71aから供給できる。この他に、反応部71aからはイオン衝突により酸素原子(O)も生成され、保護膜91を形成するための材料となる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、反応部71aから反応生成物87を生成する工程S4において、被処理基板1の外周部1aにおけるラジカル81および反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布を、被処理基板1の中央部1bにおけるラジカル81および反応生成物(フッ化ケイ素83)の分布と近づけるように、反応部71aから反応生成物87を生成する。これにより、被処理基板1の外周部1aのエッチング部90および反応部71aの両方を合わせたラジカル81および反応生成物の分布を、中央部1bのラジカル81および反応生成物の分布に、近付けることができる。その結果、被処理基板1の中央部1bと外周部1aとで保護膜91の形成状況を近づけることができるので、中央部1bおよび外周部1aの各エッチング部90の形状差を効果的に低減できる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、保護部材70は、被処理基板1の外周縁部1cを覆うとともに、上面に反応部71aを有する環状の第1部材71と、第1部材71の外周端を着脱可能に支持し、反応部71aを有しない環状の第2部材72と、を含む。これにより、エッチングに伴い反応部71aが消耗した場合に、第1部材71だけを第2部材72に対して交換できるので、交換作業を容易化できるとともに資源消費量を低減できる。また、第1部材71の全体を脆性材料である石英で形成した本実施形態では、第1部材71と第2部材72とを別個に構成することで第1部材71の構造を簡素化できるので、第1部材71(反応部71a)の破損のリスクを効果的に低減できる。
【0055】
(実験結果)
次に、本実施形態の基板処理方法の効果を確認するために行った実験および実験結果について説明する。
【0056】
実験は、同一の基板処理装置100を用いて、
図3に示した保護部材70の材質を異ならせてそれぞれ同一のエッチング処理を行い、形成されるエッチング形状を比較することで行った。第1部材71の材質として、実施例では石英(SiO
2)製の第1部材71を使用し、比較例として第1部材および第2部材を酸化アルミニウム(Al
2O
3)で一体形成した保護部材を使用した。第1部材および第2部材の形状および寸法は、実施例と比較例とで同一である。
【0057】
表1は、エッチング処理の処理条件を示す。
【表1】
【0058】
表2は、エッチング処理の実験結果を示す。
【表2】
【0059】
比較例では、深さ方向のエッチングレート、上端部の幅寸法、底部の幅寸法のいずれもが、中央部1bと比較して外周部1aで大きくなっており、エッチングレートの面内均一性が±3.9%となった。
図8は、比較例による中央部1bにおけるエッチング部90の画像と、外周部1aにおけるエッチング部90の画像とを並べて示している。
【0060】
ここで、面内均一性は、被処理基板1上の任意のnカ所で測定した深さ方向のエッチングレートの中の最大エッチングレート(ERMax)及び最小エッチングレート(ERMin)と、nカ所のエッチングレートから算出した平均エッチングレート(ERAve)とを基にして、下式(1)によって算出したものであり、算出した数値が小さいほど均一性が良好であることを意味する。
面内均一性={(ERMax-ERMin)/(2×ERAve)}×100・・・(1)
【0061】
一方、表2に示す実施例では、深さ方向のエッチングレート、上端部の幅寸法、底部の幅寸法のいずれもが、中央部1bと外周部1aとで同等であり、中央部1bと外周部1aとの差異は比較例と比べて小さくなる傾向が見られた。そして、エッチングレートの面内均一性が±0.3%となり、比較例と比べて小さくなることが確認された。
図9は、実施例による被処理基板1の中央部1bにおけるエッチング部の画像と、外周部1aにおけるエッチング部の画像とを並べて示している。
図8と比較して、
図9からは、エッチング部の形状の均一性に明らかな改善が見られた。また、
図8では外周部の保護膜形成不足による側壁荒れが見られていたが、
図9では十分な保護膜形成により改善が見られた。
【0062】
これにより、本実施形態による基板処理方法によって、被処理基板1の中央部1bと外周部1aとの形状の均一性が改善することが確認された。
【0063】
なお、上記の実験結果から分かるように、あるエッチング処理方法が本実施形態に記載の工程を備えているかどうかを確認するには、(1)実際に保護部材の反応部が消耗しているかどうかを検証すること、および、(2)反応部を他のSiを含まない材質に変えてエッチング形状が悪化するかどうかを検証すること、の2つで特定可能である。つまり、(1)については、例えば、ある一定量のエッチング処理を行い、その前後での保護部材(全体)の重量や厚みの変動によって反応部の消耗度を計測し、同様に従来のエッチング耐性のある材質(酸化アルミニウムなど)による保護部材の消耗度と比較することで検証可能である。また、(2)については本実施形態で記載の様に、エッチング形状の面内差を確認することで判断可能である。
【0064】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0065】
たとえば、上記実施形態では、
図1に示した基板処理装置100を用いて基板処理方法を実施する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明の基板処理方法を実施する基板処理装置の装置構成は特に限定されず、
図1の装置構成とは異なっていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、保護部材70を第1部材71と第2部材72との組立体として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保護部材70を単一部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:被処理基板、10:処理チャンバ、20:基板載置部、20a:載置面、70:保護部材、71:第1部材、71a:反応部、72:第2部材、80:プラズマ、81:ラジカル、83:フッ化ケイ素、85:酸素ラジカル、87:反応生成物、90:エッチング部、91:保護膜