(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ウィンチ装置付きの可動性器械固定システム
(51)【国際特許分類】
A61G 3/08 20060101AFI20240520BHJP
A61G 3/06 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
A61G3/08
A61G3/06 711
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004136
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2019514193の分割
【原出願日】2017-05-25
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518416115
【氏名又は名称】ヴァレダ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】カルドナ エドガルド
(72)【発明者】
【氏名】ジラルダン パトリック
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-524386(JP,A)
【文献】特開2013-035623(JP,A)
【文献】特開2011-224126(JP,A)
【文献】特開2013-060266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/08
A61G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子接近可能車両用のコントローラであって、
該コントローラは、車椅子の位置、方向、及び速度のうちの少なくとも1つを検出するセンサから信号を受信し、前記信号は、前記車椅子の位置、方向、及び速度の少なくとも1つを示し、前記信号は、車椅子接近可能車両の傾斜路を横断している間に車椅子が中心から外れているかどうかを示すものである、コントローラ。
【請求項2】
車椅子接近可能車両用のコントローラであって、
該コントローラは、車椅子の位置、方向、及び速度のうちの少なくとも1つを検出するセンサから信号を受信し、前記信号は、前記車椅子の位置、方向、及び速度の少なくとも1つを示し、前記信号は、前記車椅子接近可能車両上の傾斜路の中心に対する前記車椅子の横方向の位置を示すものである、コントローラ。
【請求項3】
車椅子接近可能車両用のコントローラであって、
該コントローラは、車椅子の位置、方向、及び速度のうちの少なくとも1つを検出するセンサから信号を受信し、前記信号は、前記車椅子の位置、方向、及び速度の少なくとも1つを示し、前記センサは、前記車椅子が最終固定位置に配置されたときに検出して前記信号を出力するように構成されている、コントローラ。
【請求項4】
車椅子接近可能車両上の傾斜路に車椅子を引き上げるようになった拘束具を有するウィンチ装置と組み合わせられた車椅子接近可能車両用のコントローラであって、
該コントローラは、車椅子の位置、方向、及び速度のうちの少なくとも1つを検出するセンサから信号を受信し、前記信号は、前記車椅子の位置、方向、及び速度の少なくとも1つを示し、前記信号は、ウィンチ装置から引き出される拘束具の長さを示す、コントローラ。
【請求項5】
前記信号は、車椅子接近可能車両における前記車椅子の位置を示すものである、
請求項1~4の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記信号は、前記車椅子が車椅子固定部に位置しているか否かを示すものである、
請求項1~5の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記センサが、位置センサ、光カーテン、圧力センサ、赤外線センサ、超音波センサ、光学センサ、カメラ、レーザ、エンコーダ、及び磁気共鳴センサのうちの少なくとも1つからなる、請求項1~6の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記信号は、積み込み動作及び積みおろし動作の間、車椅子の位置を示すものである、請求項1~7の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記センサは前記拘束具のほぼフック端に配置される、請求項4に記載のコントローラおよびウィンチ装置。
【請求項10】
前記ウィンチ装置が、第1の拘束具を引き込むための少なくとも第1の電動レトラクタからなり、前記コントローラが、前記センサからの信号に応答して前記第1の電動レトラクタを自動的に制御するように構成されている、請求項4
又は9に記載のコントローラおよびウィンチ装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記信号が前記車椅子が最終固定位置に配置されたことを示す時に、前記第1の電動レトラクタを停止するようにプログラムされている、請求項
10に記載のコントローラ及びウィンチ装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記信号が前記車椅子が傾斜の端に近づいていることを示すとき、前記第1の電動レトラクタを停止するようにプログラムされている、請求項
10又は11に記載のコントローラおよびウィンチ装置。
【請求項13】
前記センサは、前記車椅子が最終固定位置に配置されたときに検出して前記信号を出力するように構成されている、請求項3に従属する場合を除く、請求項1、2、4~
12の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記信号は、車椅子接近可能車両上の傾斜路の中心に対する前記車椅子の横方向の位置を示すものである、請求項2に従属する場合を除く、請求項1、3~
13の何れか1項に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明するとともにクレーム請求する実施形態は、一般に、電子制御式ウィンチ装置に関し、このウィンチ装置は、一実施形態では、可動性器械(例えば、車椅子、スクータ、ストレッチャーなど)(なお、本明細書では「車椅子」と「可動性器械」は区別なく用いられる)をリヤエントリ型車椅子用接近可能車両の坂路に沿って上下にかじ取りするとともに運搬中における可動性器械のための固定(すなわち、タイダウン箇所)を提供するようになっている。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2016年5月25日に出願された米国特許仮出願第62/341,570号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【0003】
〔連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載〕
不適用
【0004】
〔共同研究合意の当事者の名称〕
不適用
【0005】
〔コンパクトディスクで提出された資料の参照による引用〕
不適用
【背景技術】
【0006】
車両が、特に欧州連合においては、小型になっている。これら車両内におけるスペースが制限されているので、車椅子固定システムの適正な使用が困難になっている。狭いスペース、例えばリヤエントリ型車椅子接近車両(個人用可動性車椅子用接近可能車両のうちの大部分を占める)では、車椅子固定システムが使用上簡単でありかつ安全であることが重要である。車両内に移ることができずまたは動くことができない車椅子に乗っている人(利用者)は、移動中、自分の車椅子を安全に固定するために車椅子固定組立体(車椅子タイダウンまたは車椅子タイダウン組立体ともいう)を利用するのが通例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車椅子用のスペースが狭くかつ局限されている小型でコンパクトな車両内で用いられる既存の固定システムには多くの欠点があり、これら欠点のうちの幾つかについて以下に説明する。リヤエントリ型車両類、例えばCitroen Berlingo、Nissan NV200、Peugeot Expert(リヤエントリ型車椅子用接近可能車両、WAV、MI、またはミニバンとも知られておりまたは称されている)は、車椅子が車両の固定領域内の定位置に位置した後に車椅子のフロントを固定するために提供される空間が広くはない。これら車両は、車椅子を固定するために車両のリヤ内に小さな「車椅子用パン」(または固定領域)を提供するに過ぎない。特に、カルドナ等(Cardona et al.)に付与された米国特許第9,333,129号明細書を参照されたい。なお、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。したがって、リヤエントリ型車両内の完全一体型システムができるだけ車椅子に乗っている人の背後から利用可能であることが重要である。
【0008】
加うるに、リヤエントリ型車両は、多くの場合、坂路及び傾斜床(約16°そこら)を有する場合が多く、これら坂路や傾斜床は、重量のある乗員や車椅子を車両中に押し上げ、場合によっては、車両運転者及び/または車椅子乗員の外傷を招く強度要件の面での課題を生じさせる。オペレータは、車椅子乗員を車両から降ろす際にも同様な課題に直面し、すなわち、車椅子に乗っている人を「落とす」のを回避するために傾斜路を降りている間、車椅子乗員は注意深く支えられなければならない。この問題に取り組むため、追加の装置、例えばフロント電気ウィンチが車両内に入るのを助けるために用いられている。しかしながら、これら電気ウィンチは、かかる問題を十分には解決していない。ウィンチには、車椅子のフロントへの取り付けのために車両の外側に延びる場合のある長いケーブルまたはストラップ(例えば、ウェッビング)を備えている。この場合、ウィンチは、車椅子を坂路に沿って引き上げるために用いられる。しかしながら、車椅子を坂路上に整列した状態に保つためには、車両運転者は、車椅子を手で車両坂路に沿って依然として上方にかじ取りしまたは案内しなければならない。これが頻繁に起こるのは、車両が完全に同じ高さの表面上に駐車するのがまれであるというだけでなく、車椅子が重量面でバランスが取れていないのが通例であり、場合によっては不均一なタイヤ圧力を有し、場合によっては追加の付属装置を有しまたは傾き、それによりコースを外れるとともに/あるいは車椅子の方向を変えるホイールキャスタを有するからである。したがって、運転者と車椅子乗員の両者に対する外傷の恐れを電気ウィンチの使用によっては十分には軽減されなかった。
【0009】
さらに、先行技術の電気ウィンチは、典型的には、車椅子をいったん車両内に位置決めされると固定するのには適していない。かかる理由で、先行技術のシステムは、典型的には、車椅子を適切に固定するために必要な追加のコンポーネントとして別個のフロントタイダウンを利用している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において説明するとともにクレーム請求する実施形態は、先行技術の問題のうちの少なくとも幾つかを解決する。例えば、一実施形態は、車両内の前側座席または他の構造体の下に嵌まることができる2つのフロント電子制御式レトラクタユニットを有する。これらレトラクタは、3つの基本的な機能、すなわち、(1)車椅子フロントタイダウンとして働いて運搬中、車椅子を固定し、衝突の際には車椅子を拘束する(フロント及びリヤ衝撃の際)ための機能、(2)レトラクタ内のウェッビング/物体をロックしまたは張力調整して衝突の場合の後方逸脱が最小限に保たれるようにする機能、及び(3)ウィンチとしての機能及び車椅子及び乗員を制御された仕方で車両中に入れたりこれから出したりする機能を有する。
【0011】
電子制御式レトラクタユニットにより、オペレータ(例えば、車両運転者または付添人)が乗員を手で車両内に押し込み、引き込みまたはかじ取りしたり、車両から押し出し、引き出しまたはかじ取りしたりする必要なく、乗員を車両の外部から安全に乗り込ませて固定することができるようにすることが想定されている。特に、車椅子乗員をいつでも受け入れることができるリヤエントリ型車両では、オペレータは、フロントタイダウンをレトラクタから坂路に沿って下方にかつ車両の外部に引く。オペレータは、タイダウンを車椅子のフロント構造部材に取り付ける(車椅子乗員は、当然のことながら、車輪がロック解除された状態で坂路の底部のところに存在するが、先行技術のシステムの場合のように完全に整列する必要はない)。オペレータは、ワイヤードペンダントまたはワイヤレス制御モジュール(例えば、無線、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)など)を用いてレトラクタを遠隔起動する。レトラクタユニットは、電動であり、かかるレトラクタユニットは、乗員を坂路に沿って上方に引き上げて車両中に引き込む。オペレータは、上昇速度を制御するとともに車椅子をペンダント/リモートに設けられているサム(親指)スティックを用いることによって坂路に沿って上方にかじ取りし、そして車椅子乗員が車両の固定領域内にいったん配置されるとサムスティックを放すことによってレトラクタユニットを停止させる。オペレータは、リヤ固定具(例えば、手動ベルト、レトラクタ、または他のケーブルもしくはストラップ器具)を車椅子のリヤ構造部材に取り付ける。次に、オペレータは、電動フロントレトラクタユニットを作動させてシステム内の全ての拘束具からたるみを除いてこれらを張力調整し、そして乗っている人の拘束具を利用して乗っている人を車椅子内に固定する。次に、車椅子及び乗っている人をシステムによって適正に固定し、その時点で、車椅子乗員は、自分の行き先に自由に運搬可能である。到着時、車椅子乗員を下ろすために上述のステップを逆の順序で実施する。
【0012】
上述する特徴及び以下に説明する特徴ならびに当該技術分野において知られている他の特徴の幾つかの組み合わせを含む他の実施形態は、かかる実施形態が本明細書において具体的に認識されて説明されていない場合であっても本発明の範囲に含まれるものと想定される。
【0013】
本明細書において説明されるとともにクレーム請求される実施形態のこれらの特徴、観点、目的、及び利点ならびに他の特徴、観点、目的、及び利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲の記載、及び添付の図面を考慮すると、良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】初期段階にある傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】車椅子固定段階にある傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態の斜視図である。
【
図3】車椅子固定段階にある傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のフロント側の拡大斜視図である。
【
図4】車椅子固定段階にある傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のリヤ側の拡大斜視図である。
【
図5】傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のブロック図である。
【
図6】左前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第1の実施形態の平面図である。
【
図7】右前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第1の実施形態の平面図である。
【
図8】いっぱいの状態のスプール及び爪が解除位置にある状態の左前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第1の部分透視断面図である。
【
図9】いっぱいの状態のスプール及び爪が解除位置にある状態の左前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第2の部分透視拡大断面図である。
【
図10】空の状態のスプール及び爪がロック位置にある状態の左前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第1の部分透視断面図である。
【
図11】空の状態のスプール及び爪がロック位置にある状態の左前側のタイダウンユニット(カバーが取り外されている)の第2の部分透視拡大断面図である。
【
図12】傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のためのコントロールパネルの第1の実施形態の正面図である。
【
図13】傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のためのジョイスティックの第1の実施形態の斜視図である。
【
図14】傾斜型タイダウンシステムの第1の実施形態のコントロールパネル及びジョイスティックの第2の実施形態の斜視図である。
【
図15】回転式ウェッビング案内及び摺動ウェッビングシールドを含むタイダウンユニットの第2の実施形態の斜視図である。
【
図16】デブリの入り込みを阻止するためのフラップまたはダストカバーを含むタイダウンユニットの第3の実施形態の斜視図である。
【
図17】デブリの入り込みを阻止するためのブラシ部材を含むタイダウンユニットの第4の実施形態の斜視図である。
【
図18】装置の容易な取り替えを可能にする特徴を備えたタイダウンユニットの第5の実施形態の斜視図である。
【
図23】レトロフィットブラケットを示す斜視図である。
【
図24】光カーテンを含むタイダウンシステムの変形実施形態の斜視図である。
【
図25】圧力センサを含むタイダウンシステムの別の変形実施形態の斜視図である。
【
図26】スプールをタイダウンユニットの前側のところに(
図1の実施形態の場合のように車椅子固定領域に隣接して)提供するとともにウェッビングをスプールの頂部から引き取ることによって達成されるスペースの節約を実証しているタイダウンユニットの一実施形態の内部コンポーネントの側面図である。
【
図27】スプールをタイダウンユニットのリヤ側のところに(
図6の実施形態の場合のように車椅子固定領域と反対側に)提供するとともにモータをスプールと車椅子固定領域との間に配置することによって達成されるスペースの節約を実証しているタイダウンユニットの一実施形態の内部コンポーネントの側面図である。
【
図28】単一の中央に配置されたウィンチユニットとは対照的に2つの互いに間隔を置いたタイダウンユニットによって達成されるスペースの節約を実証している傾斜型タイダウンシステムの一実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面は、必ずしも縮尺通りにはなっておらず、実施形態は、図形記号、想像線、模式図、及び部分図によって示される場合があることは、理解されるべきである。ある特定の場合、本明細書において説明されるとともにクレーム請求される実施形態の理解のために必要ではなくまたは他の細部の認識を困難にする本発明は、図示の特定の実施形態には必ずしも限定されないことは理解されるべきである。確かに、当業者が特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において図示されるとともに説明される実施形態と類似しかつ均等な多くの変形形態を案出することができることが見込まれる。
【0016】
同一の参照符号は、図面の以下の詳細な説明中において図ごとに同一または類似の部分を示すために用いられる。
【0017】
最初に
図1~
図5を参照すると、第1の実施形態としての傾斜型タイダウンシステム50は、2つの電子制御式フロントタイダウンユニット100、コントローラ200、コントロールパネル300、ジョイスティック400、及び2つのリヤタイダウンユニット500を含むが、これらには限定されない。傾斜型タイダウンシステム50は、車椅子70を積んで拘束するためにリヤエントリ型車両の車椅子用パン55に用いられるようになっているが、この特定の用途には限定されない。
【0018】
特に、2つのフロントタイダウンユニット100及び2つのリヤタイダウンユニット500は、車椅子70を車両内に固定するための4点車椅子固定システムとしての役目を果たす。しかしながら、以下に詳細に説明するように、フロントタイダウンユニット100は、車椅子70を制御されかつかじ取り可能な仕方で車両坂路60に沿ってウィンチで上下に動かす追加の機能を実行する。誤解を避けるために、本発明のシステムの新規な特徴は、5つ以上または3つ以下の車椅子への取り付け箇所を利用したシステムに組み込み可能であることが想定される。
【0019】
図6~
図11に示されているように、第1の実施形態としてのフロントタイダウンユニット100は、別個独立に制御できる電動式レトラクタを含む。フロントタイダウンユニット100は、本質的には、互いに鏡像関係にあるのが良く、各フロントタイダウンユニットは、巻き形拘束具102を保持するラチェット付きスプール110を含む。調節可能な拘束具センサがスプール110上の拘束具102の量を検出するために設けられている。具体的に説明すると、開示する実施形態では、拘束具センサは、実際にスプール110上にコイル状になっている拘束具102の直径を検出するよう拘束具102の表面上に乗って動くローラ部材120を有する。開示する実施形態では、ローラ部材120は、スプール110上における拘束具102の直径がある特定の限度まで増大すると、接触スイッチ125に係合し、それによりローラ200は、フロントタイダウンユニット100のモータを作動不能にして乗っている人(乗員)、車椅子70、タイダウンシステム50、及び/または車両への損傷を阻止するよう応動することができる。特に、ローラ部材120が拘束具102によって接触スイッチ125と係合関係をなすよう押されている
図8及び
図9ならびに、スプールが空であってローラ部材120が接触スイッチ125と係合していない
図10及び
図11を参照されたい。特に、接触スイッチ125は、ねじ128を用いて位置調節可能であり、したがって、センサ限度を特定用途向けスペース拘束具に基づいて設定できる。しかしながら、他の均等なセンサを用いることができるということが想定され、かかるセンサとしては、光学系を用いたセンサまたはスプールサイズを求める他のセンサ技術が挙げられる。加うるに、車椅子70が用途内の種々の位置、例えば、車両内の最適位置、坂路60沿いの上方に向かう途中または坂路の基部のところ、例えば路上に配置された時点を求めるために同様なセンサを用いることができるということが想定されている。このセンサは、上述したように損傷または外傷を阻止するよう設計されたセンサと組み合わせてまたはこれに代えて使用できる。
【0020】
ラチェット付きスプール110は、拘束具102を引っ込めるためにパワースプリング組立体130によってばね押しされており、このラチェット付きスプールは、減速歯車・チェーン機構体150を介してモータ140によって両回転方向に動力供給される。ロック爪160がラチェット付きスプール110のスプロケットと係合可能にばねを備えている。ロック爪160は、そのデフォルトばね押し位置(
図10及び
図11に示されている)では、ラチェット付きスプール110と係合し、そして拘束具102がタイダウンユニットから引き出されるのを阻止する。しかしながら、ロック爪160は、
図8~
図11に示されている解除機構体を介してロック解除位置に動くことができ、それにより、拘束具102をスプール110から巻き出すとともにタイダウンユニット100から引き出すことができる。実質的には、解除機構体は、歯車モータ180によって動力供給されるねじ山付きシャフト175の長さの一部分を移動するナット170を採用している。ナット170は、その範囲の一方の端では、ロック爪160と係合してこれを押してラチェット付きスプール110から離脱させ、ついには、ロック爪が第1の接触スイッチ(近接スイッチまたは他の均等なセンサ)190(
図8及び
図9参照)をトリガするようにするよう構成されている。ナット170は、その範囲の他方の端では、第2の接触スイッチ(または近接スイッチまたは他の均等なセンサ)195をトリガし、この場合、ナット170は、ロック爪160と係合関係にはなくまたは違ったやり方でナット170にロック爪160をラチェット付きスプール110のスプロケットと係合させることができる(
図10及び
図11参照)。
【0021】
図1~
図4及び
図6~
図11に示されているように、拘束具102は、これがラチェット付きスプール110の頂部から出るようにラチェット付きスプール110に巻き付けられている。加うるに、
図6~
図11に示されているように、ラチェット付きスプール110は、タイダウンユニット100の一端部のところまたは車椅子70から見て反対側のタイダウンユニット100の側に設けられており、モータ140は、ラチェット付きスプール110と車椅子70との間に配置されている。ラチェット付きスプール110は、タイダウンユニット100の後方の端のところにまたは側に(例えば、意図した形態では、車両のフロント寄りに)配置される。米国特許出願第15/339,360号明細書に詳細に説明されているように、この形態は、車椅子固定システムにスペースの節約をもたらすことができ、ウェッビングは、理想的には、スプールの底部から出るウェッビングを提供するとともにスプールを車椅子の最も近く/近位側に位置するタイダウンユニットの前側の端または側のところに提供する先行技術のシステムと比較して、約35~55°の角度をなしてレトラクタと車椅子との間に延びるべきである。なお、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
図1及び
図8に示されている設計によって達成されるスペースの節約状態が
図26~
図28に最も良く示されている。具体的には
図26に示されているように、ウェッビングをラチェット付きスプール110の底部ではなくラチェット付きスプール110の頂部から、引き取ることによって、スプールからの引き取り箇所は、スプールの先導端ではなくスプールの後続端(意図した形態では、車両のフロントに向かってまたは車椅子から見て最も遠くに位置する箇所のところで)シフトし、約D
1のスペースの節約が実現される。換言すると、車椅子を適正に固定するのに必要な車椅子固定領域のサイズは、ウェッビングをラチェット付きスプール110の底部ではなく頂部から引き取ることによっておおよその長さであるD
1だけ減少可能である。加うるに、具体的には
図27に示されているように、モータ140をラチェット付きスプール110と車椅子70との間に配置することによって、ラチェット付きスプール110がタイダウンユニット100の後方の端または側のところに配置され、約D
2の追加のスペースの節約が実現される。換言すると、車椅子を適正に固定するのに必要な車椅子固定領域のサイズは、ラチェット付きスプール110を車椅子固定領域と反対側のタイダウンユニット100の後方の端または側のところに位置決めすることによっておおよその長さであるD
2だけ減少可能である。
【0022】
加うるに、具体的には
図2及び
図3ならびに
図28に示されているように、単一の中央に配置されたウィンチユニットを利用する先行技術のシステムと比較して、2つの別々のタイダウンユニット100を設けることによってこの実施形態によってスペースの節約を実現できる。2つの互いに間隔を置いたユニットの使用により、フットレストを備えた車椅子を固定領域内で前方に更に遠くまで引くことができる。と言うのは、フットレストがユニットを互いに隔てるスペースに入ることができるからである。これとは対照的に、このことは、もしそのように構成されていない場合、同一のスペースを占める先行技術のユニットでは可能ではない場合がある。
【0023】
図12~
図14では、コントロールパネル300及びジョイスティック400の実施形態を示すとともに説明している。コントロールパネル300は、システム50のモードを切り替えるためのボタンを有し、かかるコントロールパネルは、ジョイスティック400が休む場所を提供することができる。ジョイスティック400は、フロントタイダウンユニット100の作動を制御するとともに積みおろし(ローディング及びアンローディング)の際に車椅子70を操作する(かじ取りする)ために用いられる。一般に、コントロールパネル300は、2つのボタンを有し、第1のボタン310は、ロックまたは「最終つかみ」ボタンであり、第2のボタン320は、ロック解除または解除ボタンである。コントロールパネル300は、システムの状態またはモードを反映した1つまたは2つ以上の表示灯330を更に有する。一実施形態では、コントロールパネル300は、ユーザに警告してユーザにローディング(上る)、アンローディング(下る)、エラーコード(例えば、点滅している灯のパターンが特定のエラーを表示することができる)、及びインターロック(例えば、ユニットは、車両がいったん安全に動くと点滅してこれがロックモードであること及びジョイスティック/作動が実施不能であることを表示することができる)を警告するLED表示器を有する場合がある。別の実施形態では、表示灯は、車両内の他の構造体上に配置される。さらに別の実施形態では、コントロールパネル300または車両内の他の構造体は、システム50を再起動させて通常の作動を再び始めるためのリセットスイッチを有するのが良い(例えば、エラーコードが生じた場合)。さらに別の実施形態では、システム50は、コントロールパネル300のボタンの全てを同時に押すとシステムをリセットするようプログラムされても良い。ジョイスティック400は、デッドマン(またはトリガ)ボタン410(
図11及び
図12ではジョイスティック400の反対側で隠れている)及び多軸コントローラ、例えばサムスティック420または他の均等な制御部、例えばタッチパッド、矢印ボタン、トラックボール、またはホイールを有する。
【0024】
一実施形態では、コントロールパネル300は、ジョイスティック400が万一なくなりまたは壊れた場合、乗っている人の出入りのためのバックアップとしての役目を果たすことができる。この目的を達成するため、第1及び第2のボタン310,320は、これらをローディング、アンローディング、最終のつかみ、最初の解除、及びベルト解除のために用いることができる組み合わせ機能を有するのが良い。しかしながら、かかる構成では、2つのタイダウンユニット100の個々の制御が可能ではない場合がある。タイダウンユニット100の両方は、同時に同一方向に起動される。この結果を回避するため、多数の方向ボタン(例えば、上、下、左、右)がコントロールパネル300または車両内の他の構造体に設けられるのが良く、その結果、ジョイスティック400がなくなりまたは壊れた場合であっても、2つのタイダウンユニット100の個別的制御及びかくして乗っている人を坂路60沿いに上/下にかじ取りすることが可能である。
【0025】
次に
図5を参照すると、コントローラ200は、2つのフロントタイダウンユニット100の各々にかつコントロールパネル300及びジョイスティック400に電気的に接続されるとともにこれらと2方向連絡関係をなしている。開示する実施形態では、コントローラ200は、プログラム可能モータコントローラである。好ましい実施形態では、システム50は、幾つかのモード、すなわち、アイドリング(Idle)、解除(Release)、車椅子のローディング(Loading Wheelchair)、車椅子のドッキング(Dock Wheelchair)、車椅子のドッキング解除(Undock Wheelchair)、車椅子のアンローディング(Unloading Wheelchair)、及び故障(Fault)を有するようプログラムされている。
【0026】
アイドリングモードは、デフォルトシステム状態である。システム50は、オンでありかつ稼働していない。サムスティック420は、中心位置にあり、デッドマンボタン410は、操作されていない。
【0027】
解除モードでは、車椅子は、坂路の底部のところに位置し、コントローラ200は、拘束具102を車椅子から解除し、それにより、オペレータは、拘束具102及び車椅子取り付け具104(例えば、フック)をフロントタイダウンユニット100から引き出してこれらを車椅子70に固定することができる。車両オペレータは、両方のボタン310,320を同時に押すことによってシステム50を解除モードにすることができる。ボタンを押したことに応答して、コントローラ200により、爪解除機構体は、爪160を押してラチェット式スプール110との係合状態を解除し、次にフロントタイダウンユニット100の主モータ140を所定の期間にわたって逆に起動する。拘束具102をフロントタイダウンユニット100から引き出して車椅子70に固定するのに30秒が十分な時間であることが判明した。所定の期間の経過後、コントローラ200は、モータ140を停止させ、それにより爪解除機構体は、爪160がラチェット付きスプール110に再び係合することができるようにする。解除モードは、サムスティックを前方(すなわち、視点に応じて上)に約1秒間動かすことによってまたはシステム50をアイドリングモードに戻すボタン310または320を押すことによって中止可能である。変形実施形態では、タイダウンユニット100は、モータ140を逆に作動させる必要のない完全解除状態を有するよう設計されても良く、それにより、拘束具102をモータ140の速度に限定されないで迅速に取り出すことができる。
【0028】
ローディングモードでは、コントローラ200により、フロントタイダウンユニット100は、車椅子を車両の坂路60沿いに引き上げる。オペレータは、デッドマンボタン410を押して保持し、そしてサムスティック420をジョイスティック上で前方に(上に)調節することによってシステム50をローディングモードにする。これに応答して、コントローラ200により、ロック爪160は、ラチェット付きスプール110と係合することになる(すでに係合した状態ではない場合)。また、コントローラにより、フロントタイダウンユニット100のモータ140は、車椅子を車両の坂路60沿いに引き上げる。モータの速度は、サムスティック420が前方にどれほど遠く押されているかに応じて調節される(サムスティックが中心から前方に押されるのが遠ければ遠いほど、モータをそれだけ一層速く作動させるとともに車椅子70を坂路沿いにそれだけ一層速く引き上げる)。ローディング中、オペレータは、サムスティック420を前方に押し続けるとともにサムスティック420を左側にゆっくりと調節して必要に応じてかじ取りを是正することによって車椅子70の経路に対して左側の修正を行うことができる。これに応答して、コントローラ200は、爪160をロック状態に保ち、左側及び右側モータ140の速度を別個独立に調節して車椅子を坂路沿いに上方に引き上げながらかじ取りを助ける。代表的には、これには、左側モータの速度を減速させ、右側モータの速度を増速させまたはこれら両方を行うことが必要である。これらモータ相互間の速度差は、サムスティック420が左側にどれほど遠く押されるかで決まる(サムスティックを一層左側に押せば押すほど、速度差がそれだけ一層大きくなるとともに進路変更がそれだけ一層厳しくなる)。車椅子に対する右側の修正は、サムスティック420を前方に押し続けるとともにサムスティック420を右側にゆっくりと調節することによって同様な仕方で実施できる。これに応答して、コントローラ200は、右側モータの速度を減少させ、左側モータの速度を増大させまたはこれら両方を行う。ローディングの際、デッドマンボタン410またはサムスティック420が解除された場合、コントローラ200により、モータは、進路変更を停止させ、システムは、アイドリングモードに入る。爪160がすでに「ロック」位置にあるので、車椅子70は、坂路60沿いに下方に後方に転動することはない。しかしながら、コントローラ200は、作動全体にわたりデッドマンボタン410を押し下げ状態に保持するのではなく、システムをローディングモードに入らせるためにデッドマンボタン410を押し下げて放すだけで良いようにプログラムされるのが良い。この場合、デッドマンボタン410を解除しても、システムは、アイドリングモードに入ることはない。
【0029】
サムスティック420を前方または後方に押すと、車椅子70が動く前に瞬間的な遅れ(例えば、約2秒)が生じる場合がある。安全警告として役立つために、システム50は、オペレータ及び車椅子乗員が何かが起ころうとしていることを知るようにするためにこれらの瞬間的なシーケンスにおいて可聴及び/または可視プロンプト(例えば、ブザー、ビープ音または点滅灯)を備えるのが良い。
【0030】
上述したように、システム50の第1の実施形態では、爪160は、ローディングモードにおいてラチェット付きスプール110(すでに係合した状態でなければ)と係合することになる。車椅子70が坂路60沿いに引き上げられているとき、タイダウンユニット100は、「ガチャンガチャンガチャン」という騒音を立てる。と言うのは、爪160は、ローラコースターが落下直前にピークに達したときにローラコースターが立てる音と同様にラチェット付きスプール110の歯から離脱したりこれに再び係合したりするからである。一変形実施形態では、コントローラ200は、爪160を僅かに作動させてこれがラチェット付きスプール110の歯をちょうど通過するようにし、したがってシステムがアイドリングモードに入ったときに爪160をラチェット付きスプール110に係合するよう迅速に戻すことができるようにすることによって騒音をなくすことができる。
【0031】
ドッキングモードでは、車椅子は、車両内に位置し、後側拘束具510は、定位置にあり、車椅子は、固定状態にある。ドッキングモードに入るため、オペレータは、ロックボタン310を押す。これに応答して、コントローラ200により、モータ140が最後の1回の僅かな引きを行い、それによりスプール110は、前方方向に回転して最後の1回の引き(「最終つかみ」と言う)を及ぼして拘束具102,510を張力調整しまたは引き伸ばし、そして車椅子70をシステム50内に適切にロックするとともに固定する。好ましい実施形態では、コントローラ200は、適当なシステムタイトネス(ピンと張った度合い)を確認するためにモータ140に流されている電流をモニタする。電流のモニタの代替手段として、コントローラ200は、変形例として、タイトネスを確認するためにモータを所定期間にわたって作動させるようプログラムされても良いことが想定される。
【0032】
ドッキング解除モードでは、車椅子は、車両内に位置し、後側拘束具510は、定位置にある。しかしながら、システムは、後側拘束具510を取り外すことができる「緩んだ」状態にある。ドッキング解除モードに入るため、オペレータは、アンロックボタン320を押す。これに応答して、コントローラ200は、主モータ140を短期間にわたって前方方向に作動させて爪160とスプール110との間に働く圧力を解除する(ソフトなアンロードプロセスが始まることができるようにするために)。しかる後、コントローラ200は、爪160をロック解除し、モータ140を短期間にわたって逆に作動させてシステム50を緩め、次に爪160を再びロックする。この時点において、システム50は、緩んだ状態にあり、後側拘束具510を容易に取り外すことができる。
【0033】
アンローディング車椅子モードでは、コントローラ200は、フロントタイダウンユニット100を逆に作動させ、それにより車椅子の重量が車椅子70を車両の坂路60沿いに引き下げる。オペレータは、デッドマンボタン410を押してこれを保持し、そしてサムスティック420をジョイスティック上で後方に(下方へ)調節することによってシステム50をアンローディングモードにする。これに応答して、コントローラ200は、主モータ140を短期間にわたって前方方向に作動させて爪160とスプール110との間に働く圧力を解除する(ソフトなアンロードプロセスが始まることができるようにするために)。しかる後、コントローラ200は、爪160をロック解除してモータ140を逆に作動させる。前方方向の場合と同様、車椅子70の速度は、サムスティック420が中心から離れて下方にどれだけ遠くまで押されているかで決まる。オペレータは、サムスティック420を必要に応じて左または右にゆっくりと調節しながらサムスティック420を後方に保持し続けることによって車椅子の位置決め/方向に対して左側及び右側の修正を行うことができる。これに応答して、コントローラ200は、左側及び右側モータ140の速度に対して適切な修正を行う。例えば、左側修正が行われる場合、コントローラ200は、右側モータの速度を増大させ、左側モータの速度を減少させ、またはこれら両方を行い、それにより車椅子の方向及び経路を変更する。同様に、右側修正が行われる場合、コントローラ200は、左側モータの速度を増大させ、右側モータの速度を減少させ、またはこれら両方を行う。上述したように、前方方向における進路変更の場合と同様、逆に作動させたときのモータ速度差及び進路変更のタイトネスは、サムスティック420が中心からどれだけ遠くに左側または右側に押されているかで決まる。アンローディングしながらユーザがデッドマンボタン410をまたはサムスティック420を放した場合、システムは、アイドリングモードに入る。コントローラ200は、モータ140を停止させるとともに爪160をロックする。しかしながら、上述したように、コントローラ200は、作動全体にわたり、デッドマンボタン410を押し下げ状態に保持するのではなく、システムをローディングモードに入らせるためにデッドマンボタン410を押し下げて放すだけで良いようにプログラムされるのが良いことが想定される。この場合、デッドマンボタン410を放しても、システムは、アイドリングモードには入らない。アイドリングモードに入る際に車椅子乗員のジャーキング(ぐいっと動かすこと)を阻止するのが必要な場合、コントローラ200は、爪160をロックし、モータ140を前方方向に作動させて坂路60沿いの車椅子70の迅速な下りを阻止する。ランプからいったん離れると、拘束具102を車椅子から取り外すのが良く、そしてフロントタイダウンユニット100に戻すのが良くまたは貯蔵ブラケット(1100)上に配置するのが良い。フロントタイダウンユニット100内のクラッチは、緩むことになり、それにより拘束具は、モータ140を用いないでも後ずさりすることができる。
【0034】
コントローラ200は、車両インターロックを備えるのが良く、それにより、コントローラ200は、車両状態がシステム50を作動させるのに安全であるかどうか(例えば、車両点火が保証されているかどうか、坂路が下ろされているかどうか、かつ/あるいは車両が駐車状態にあるかどうか)の指標を備える。車両状態が安全ではない場合、コントローラ200は、システム50の作動を阻止することができる。
【0035】
図1及び
図2は、一般にタイダウンシステム50をどのように用いるかを示している。坂路60が下降した状態で車両が駐車位置にいったん位置すると、オペレータは、コントロールパネル300上のボタン310,320の両方を同時に押し、それによりタイダウンユニット100を解除モードにする。解除モードにされると、オペレータは、拘束具102をタイダウンユニット100から引き出して取り付け具104を、
図1に示されているように坂路60の前にすでに配置されている車椅子70のフレームのフロント上に配置することができる。
【0036】
この時点で、オペレータは、ジョイスティック400を用いて車椅子の前方、後方、左側及び右側への運動及び速度を制御する。具体的に言えば、運転者は、サムスティック420上に置いた自分の親指を用いて車椅子70を方向制御しながら自分の人差し指でデッドマンボタン410を押し、それによりサムスティック420を起動する。車椅子がいったん車両の内側に位置すると、オペレータは、リヤタイダウンユニット500の車椅子拘束具510を車椅子70のフレームのリヤに固定する操作に移る。
【0037】
次に、オペレータは、ロックボタン310を押し、それによりフロントタイダウンユニット100は、システム50からたるみを取り除くとともに/あるいは拘束具102,510を張力調整し、そして車椅子70を固定する(「最終にぎり」と言う)。車椅子を固定した後、オペレータは、乗員拘束システム520を用いて車椅子乗員を固定する。車椅子70及び車椅子乗員は、
図2~
図4において車両内に完全に固定された状態で示されている。
【0038】
車椅子70をアンローディングするため、車両がいったん駐車状態にありかつ坂路60がいったん下ろされると、オペレータは、乗員拘束システム520を取り外してコントロールパネル300のロック解除ボタン320を押す。システムの法力を解除し、それによりオペレータは、リヤタイダウンユニットの拘束具510を車椅子70のフレームから取り外してこれらを保管する。上記において詳細に説明したようにジョイスティック400を用いて車椅子70を制御された仕方で車両から坂路60沿いに下方にアンローディングすることができる。
【0039】
先行技術と比較してこの実施形態の幾つかの重要な特徴及び利点が存在する。
【0040】
・諸ステップがなくなるとともに運転者のミスまたは怠慢の可能性が減少する。先行技術のシステムでは、運転者/オペレータは、典型的には、一緒に働くよう設計されている訳ではない場合のある別々のウィンチ及びフロントタイダウンシステムを互いに接続して作動させることが要求される。幾つかの場合、先行技術のウィンチシステムは、車椅子が耐衝撃性であるとオペレータが誤って仮定することにより車椅子を固定するために単独で使用されている。
【0041】
・機器が減少する。ウィンチとフロントタイダウンの組み合わせにより設備が単純化され、必要な保守が軽減され、場合によっては重量が減少し、しかもフロアを不必要な機器のない状態に保つ。
【0042】
・潜在的なコストの節約が提供される。リヤエントリ型坂路を用いる顧客は、車椅子リフトの価格を節約し、しかも別個のフロントタイダウン及びウィンチ製品の購入を節約する。
【0043】
・オン/オフローディングが容易になる。オペレータが車椅子乗員を安全かつ制御可能な仕方でリヤエントリ型車両内の車椅子の位置に入れたりこれから出したりするのが助けられる。
【0044】
・オペレータの業務関連外傷が減少する。オペレータは、特に乗員及び椅子が重い場合、車椅子乗員を坂路沿いに上方/下方に手作業で押したり引いたりかつ/あるいはかじ取りしたりすることが必要な場合に背中及び他の場所の外傷の危険にさらされる。
【0045】
・乗員の安全性が高められる。負担及びオペレータによる傾斜路沿いの上方/下方における車椅子乗員の手動押し/引き/かじ取りをなくすことによって事故の可能性が減少する。先行技術のユニットでは、乗員は、乗員の安全な乗り降りに関してオペレータ任せになり、しかも乗員は、オペレータが乗員を躓かせやすくしかも放しやすくなるという危険にさらされる。
【0046】
・手動予備張力調整の必要なく逸脱に対処できる。ウィンチは、追加の手動予備張力調整を必要としないで利用可能な現在のかつ将来の逸脱限度に対処することが見込まれる。
【0047】
・コンパクトなデザインが提供される。本システムを座席の下にまたは垂直部材上に設置することができ、それによりフロアスペースが最大になる。
【0048】
・デュアル独立型制御が提供される。タイダウンシステムは、別個独立に制御することができる別々のタイダウンユニットを備えていることを特徴とし、それにより車両レイアウトの変更の際の高い設置可能性の実現が可能である。ハンドコントローラ/サムスティックは、フロントタイダウンユニットを別個独立に制御して坂路沿いの上方及び下方における車椅子乗員の容易な操作を可能にする。先行技術のシステムでは、車椅子は、いつでも坂路を均等に上るわけではなく、上述したように、これは、例えば不均一の重量分布、不均一に圧力が加えられたタイヤ、及びキャスタのような要因に起因する。先行技術とは対照的に本実施形態によって提供される独立モータ制御方式は、これにより進路変更が可能でありしかもオペレータが車椅子を適切に案内することができるという点で極めて重要である。ジョイスティックは、オペレータが自分で車椅子を直感による仕方で「制御している」(すなわち、サムスティックを左側に動かすことにより車椅子乗員を左側方向に「進路変更」するために右側のタイダウンユニットが作動されて左側タイダウンユニットが減速されまたは非動作状態になる)ように感じるためにバックワーズロジック(すなわち、左側制御が右側であり、またこの逆の関係が成り立つ)で挙動するよう設計されている。
【0049】
・可逆性/モジュラータイダウンが提供されること。フロントタイダウンユニットを互いに異なる垂直または水平の向きでフロアまたは壁面上に左側または右側に設置することができ、それにより拘束具(例えば、ウェッビング、ケーブル、または他のストラップ)が互いに異なる角度/方向で出ることができる。これは、様々な車両レイアウトでの設置(すなわち、座席の下に逆にして配置されるなど)を可能にするのを助ける。カバーデザインはまた、設置中におけるユニットの向きに応じて、ウェッビング開口部の大部分を覆うよう多位置「ダストカバー」を組み込む。
【0050】
・フロントタイダウンユニットは、安全停止部をあらかじめ決定するために(すなわち、車椅子乗員、車椅子、車両、または固定システムへの損傷または外傷を阻止するために)、ユニットの内側のウェッビングの量を検出しまたは違ったやり方でその量を算定する(スプールまたは関連モータ及び歯車に連携されたエンコーダの使用により)装置を含む。この装置は、車椅子を車両内の所定の場所で停止するために設置者/ディーラーによって調節できる。その目的は、車椅子停止部を特定の箇所、例えば最終固定に最適な位置に確保するとともに/あるいはオペレータが偶発的に/意図しないで車椅子を遠すぎるほど前方に動かし、場合によってはその結果として椅子または乗員に対する損傷または外傷を生じさせる恐れを減少させることにある。変形例としての均等な技術は、車椅子の存在場所を求めるための「駐車センサ」(すなわち、超音波、IR、及び容量性距離測定装置、及び更に、スプールに設けられていて、ウェッビング及び/または椅子の位置決めを「知る」エンコーダである。また、ウェッビングの磁気ピックアップは、ピックアップセンサと一緒になって、ほぼ同じ機能を実行する。
【0051】
・自由/解除モードが提供される。これにより、オペレータは、モータ速度/rpmを約30秒間増大させることによってJ‐フック端部を迅速にかつ手動で引くことができる。解除モードを可能にするため、コントローラは、追加の電圧をモータに提供し、それによりモータは、逆に2倍の速度で回ることができ、それにより、オペレータは、フックをつかんでこれらフックを車両から迅速に「引き」出す機会が与えられる。
【0052】
・自動引っ込み/自動ロックが提供される。フロントタイダウンユニットレトラクタは、利用可能な場合(例えば、衝突またはフックの手動戻りの場合)緩んだウェッビングを引っ込める。システムはまた、スプールが一方向に回転し(自動引っ込み)、そして他方向に(引かれている場合)、動力供給/機構化可能であるようにするクラッチ機構体を備えていることを特徴とする。
【0053】
・電気機械式ロック爪が提供される。ロック爪は、自動ロックばね支援式として役立つとともに電動操作を可能にする補助モータによってバイパス可能である(ロック爪は、ロックされ/自動ロック式の位置か電気解除モードかのいずれかにある)。
【0054】
・釣り合い式ロック爪が提供される。上述のことに加えて、釣り合い式ロック爪が衝突試験の際に良好に働くよう用いられる。特に、ロック爪の重心は、ロック爪のピボット箇所のところまたはその近くに配置される。釣り合い方式は、試験環境で見受けられるリバウンド(むち打ち/戻り)力の際に迅速なロック応答を可能にする。
【0055】
・制御されたアンローディングが提供される。乗員を下ろしている際(すなわち、坂路の頂部から逆にしている際)、システムは、モータを制御式ブレーキとして用いることによって乗員の制御された降りを可能にする。
【0056】
・初期解除が提供される。コントロールパネル(壁ユニット)は、オペレータがリヤタイダウンに加わっている張力を減少させて必要な場合にこれらの除去を容易にするよう車椅子を設定された距離、「後退」することができる「初期解除」方式を備えていることを特徴とする。
【0057】
・フロア設置型テフロン(登録商標)プレートが提供される。車椅子を車両中に引き込む際、位置時点において、ウェッビングは、フロア上を「引きずる」場合があり、またはフロアと接触する場合があり、その結果、時期尚早な研磨/摩耗が生じる。テフロン(登録商標)プレートまたは他の低摩擦材料を車両フロアまたは傾斜路上に用いることにより、かかる研磨/摩耗を軽減することができる。
【0058】
次に
図15を参照すると、第2の実施形態としてのタイダウンユニット600が示されており、この内部構造は、第1の実施形態としてのタイダウンユニット100とほぼ同じであるが、ある特定の新規な観点を備えており、これらのうちの幾つかが特に米国特許出願第15/339,360号明細書に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。例えば、タイダウンユニット600は、レトラクタスプール(図示せず)の周囲の少なくとも一部分に沿って回るウェッビング案内610を備えている。タイダウンユニット600は、タイダウンユニット600のハウジング中へのデブリまたは流体の流入を阻止するためにウェッビング案内610の移動に追従する摺動式ウェッビングシールド620を更に備えるのが良い。
図16に示されているように、第3の実施形態としてのタイダウンユニット700が示されている。この第3の実施形態は、第2の実施形態と実質的に同一であるが、ウェッビングシールド620に代えて、フラップ720を備えており、このフラップ720は、タイダウンユニット700のハウジングの開口部の頂部のところに固定されており、このフラップは、デブリ及び流体の流入を阻止するために拘束具及びウェッビング案内上に延びている。
図17に示されているように、第4の実施形態としてのタイダウンユニット800が示されている。この第4の実施形態は、第2及び第3の実施形態と実質的に同一であるが異なっている点は、この第4の実施形態がデブリ及び流体の流入を阻止するためにハウジングの開口部の縁部のうちの1つまたは2つ以上に設けられたブラシまたは他の可撓性部材820を有していることにある。変形実施形態では、ウェッビングシールド620、フラップ720、及び/またはブラシ820の幾つかの組み合わせを用いると、デブリ及び流体の流入を阻止することができる。
【0059】
図18~
図20に示されているように、第5の実施形態としてのタイダウンユニット900を容易に取り外して取り替えることができる特徴部、例えばワイヤリングハーネス920の容易な切り離しを可能にするよう開くことができるワイヤハーネスドア910を含むのが良い。ユニット900は、ユニット900のハウジングから外側に延びる迅速解除ブラケット930を更に有するのが良く、その結果、ユニット900を車両に容易に脱着することができる。
【0060】
図21に示されているように、追加の実施形態としてのタイダウンユニットがタイダウンユニットと車両との間に連結されるスイベルブラケット1000を含むのが良い。スイベルブラケット1000により、タイダウンユニットは、回動して引き/ローディング経路の方向とそれ自体整列することができる。
【0061】
図22に示されているように、他の実施形態は、フック保管部材1100を含むのが良く、このフック保管部材は、拘束具1130の端部のところに設けられているフック1120を車両表面に保管/固定するのに役立つループ1110を含むのが良い。幾つかの実施形態では、ループ1110は、騒音(すなわち、金属間、車両からの振動及び運動など)を最小限に抑えまたは減少させた状態での固定を可能にするためのファブリック、ウェッビング、または他の「軟質」材料から成るのが良い。フック保管部材1100は、車両のオペレータによるアクセスを容易にするために、車両中への車椅子入口箇所寄り、例えば車両のリヤまたは車椅子を支持する車椅子パンのリヤ寄りに配置されるのが良い。フック保管部材1100は、フック1120が保管状態にある間にタイダウンユニットが偶発的に作動された場合にタイダウンユニット及び/または車両への損傷を阻止することができる(例えば、フック保管部材は、ループ1110を破り取り、そして陰を破ることはなくまたはタイダウンユニットを損傷させることはない)。フック保管部材1100は、例えば互いに異なる強度/厚さのループ1110を用いることによりまたは強固な/追加の締結具の設計によって所定の大きさの力を吸収するよう設計されるのが良い。
【0062】
図23に示されているように、既存の電気レトラクタを本明細書において開示するタイダウンユニットにレトロフィットすることができるようにするレトロフィット用ブラケット1200を用いるのが良い。レトロフィット用ブラケット1200は、既存の電気レトラクタと交換用タイダウンユニットの両方に対応した孔のパターンを有する。
【0063】
タイダウンシステムは、ローディングまたはアンローディング作業中に車椅子の存在場所に関する信号をコントローラ200に提供する種々のセンサを含むのが良い。例えば、拘束具が最大引き距離に達しているという指標をコントローラに提供するためにセンサが拘束具のフック端部中に組み込まれるのが良い。例えば、種々の光学、無線または音響技術を利用するシステムを含むXYZ座標付きのワイヤレス位置決めセンサを用いるのが良い。拘束具のフック端部内のセンサはまた、ローディングまたはアンローディング作業全体を通じて車椅子の存在場所の指標を提供することができる。3点測量(3箇所)が理想的であり、と言うのは、これは、絶対位置の指標を提供するが、垂直成分は、この用途にとっては必要不可欠ではないからである。
図24に示されているように、光カーテン1300の形態をしたセンサが組み込まれるのが良く、この場合、光カーテン1300は、車椅子70が車椅子パン55または坂路60の縁部に近づいておりまたはまさに離れようとしている時点を検出するよう車椅子パン55と坂路60のうちの一方または両方の縁部上にまたはその近くに長手方向に配置される。光カーテンは、車椅子の移動経路に沿うどこかの場所に、例えば坂路の底部のところに、車椅子パンの後側または前側の端のところにかつ/あるいはこれら相互間の多数の場所に側方に配置されても良い。加うるに、
図25に示されているように、坂路埋め込み型圧力センサまたはスイッチ1400,1450が車椅子の存在場所の指標を提供するよう車椅子パン55及び/または坂路60上に設けられても良い。多数の圧力センサストリップが、車椅子70がオフセンタ状態で進路変更している指標を提供するために用いられても良く、かかる圧力センサストリップとしては、車椅子パン55及び/または坂路60の縁部のところまたはかかる縁部の近くに設けられた長手方向に延びるストリップ1400が挙げられる。加うるにまたは代替的に、車椅子がローディング及びアンローディングプロセス中、長手方向に位置する場所の指標を提供するよう多数の側方に延びる圧力センサストリップ1450が車椅子パン55及び/または坂路60上に設けられても良い。変形例として、固体表面圧力センサがローディング及びアンローディングプロセス中における車椅子の側方存在場所と長手方向存在場所の両方の指標を提供するよう車椅子パン55及び坂路60のうちの一方または両方上に使用されても良い。車椅子の存在場所の指標を提供する他のセンサ、例えば、IR、超音波、光学または映像/カメラシステム、容量型センサ、レーザ距離測定装置、磁気共鳴装置が用いられても良い。加うるに、拘束具センサ120または上述の種々のエンコーダを使用しても良い。
【0064】
本明細書において説明したセンサの任意の組み合わせにより、コントローラ200に対する車椅子の位置、方向、及び速度の指標を提供することができ、それにより、この上方をコントローラ200によって用いると、ローディング/アンローディングプロセスを自動化するとともに/あるいは車椅子または乗員に対する損傷または外傷を阻止することができる。例えば、コントローラ200は、ローディングまたはアンローディング作業を停止させまたは車椅子を自動的に方向転換して坂路60または車椅子パン55の縁部から遠ざけ、もし車椅子がかかる縁部に接近しておりまたはかかる縁部のところに位置する指標をセンサが提供する場合、この向きをローディングまたはアンローディング作業中に中心に向かって変える(上述した手段によって、タイダウンユニットのうちの一方を加速し、タイダウンユニットのうちの他方を減速し、またはこれら両方を行うことによって)ようプログラムされるのが良い。コントローラ200はまた、車椅子が車椅子パン55内における最終の固定を可能にするよう適正に位置決めされたときにローディング作業を停止させるようプログラムされても良くまたは車椅子が坂路60を出たときにアンローディング作業を停止するようプログラムされても良い。
【0065】
タイダウンシステムは、車両の状態に関する信号をコントローラ200に提供する種々のセンサを更に含むのが良い。例えば、勾配検出技術、例えばジャイロ、加速度計、水銀スイッチ、または他の勾配検出器を用いると、車両が傾斜面上(任意の方向に、例えば前から後ろへ、横から横へなど)に駐車されているかどうか及びその程度の指標をコントローラ200に提供することができる。コントローラ200は、車両が所定の非安全勾配を超える勾配で駐車された場合にローディング及びアンローディングを阻止するようプログラムされるのが良い。勾配の指標はまた、コントローラ200がローディングまたはアンローディングプロセス中に車椅子乗員を真っ直ぐに(レーン逸脱システムと同様に)保つのを助けて車椅子のための良好な接近を提供するよう使用できる。例えば、車両が左‐右下方(すなわち、右側よりも左側の方が高い)勾配上に駐車された場合、コントローラ200は、左側タイダウンユニットよりも高い速度で右側タイダウンユニットを自動的に制御して車椅子が坂路沿いに上方に真っ直ぐに乗るのを保つ(すなわち、前方に移動しながら正の勾配を「上る」)とともに下り坂に(右側に)方向転換する車椅子の傾向に抵抗するようプログラムされるのが良い。同様な仕方で、コントローラ200は、タイダウンユニット100相互間の速度差を提供して車椅子及び乗員を重量アンバランス状態で(例えば、重心が一方の側または他方の側にずらされている場合、肢切断患者または一方の側に傾く乗員)に対応するようプログラムされるのが良い。例えば、重量のアンバランスにより車椅子が坂路沿いに上方に引っ張られたときに左側に進路変更しがちである場合、コントローラ200は、左側モータを右側モータよりも高い速度で自動的に駆動し、その結果、車椅子が坂路上で上方に真っ直ぐに移動するようにする。この修正は、オペレータには明らかでないことがあり、と言うのは、この修正は、オペレータが右側圧力をサムスティックに何ら加える必要なく行われるからである。
【0066】
本明細書において説明するとともにクレーム請求される本発明をある特定の実施形態に関してかなり詳細に説明したが、当業者であれば理解されるように、本明細書において説明されるとともにクレーム請求される本発明は、本発明を限定するものではなく説明の目的で提供された実施形態以外の実施形態によって具体化できる。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲は、本明細書に含まれている実施形態の説明に限定されるべきではない。