(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20240520BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20240520BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/22 502G
H01J37/28 B
(21)【出願番号】P 2022028236
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 岳志
(72)【発明者】
【氏名】望月 貞彦
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/100205(WO,A1)
【文献】特開2019-163980(JP,A)
【文献】特開平01-097074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して荷電粒子線を照射する照射設備と、
前記荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出された注目粒子を検出する検出器であって、前記試料の加熱に起因して被加熱物から放出された輻射エネルギーの検出により生じた輻射成分を含む検出信号を出力する検出器と、
前記検出信号の処理によ
り、前記輻射成分を特定する手段と、
前記検出信号から前記輻射成分を除去する除去部と、
前記輻射成分が除去された検出信号に基づいて、前記試料を表す画像を生成する生成部と、
を含
み、
前記輻射成分を特定する手段は、前記検出信号から前記輻射成分を抽出するフィルタを含む、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線は電子線であり、
前記注目粒子は前記試料から放出された反射電子又は二次電子であり、
前記輻射エネルギーの検出
は光の検出である、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料の加熱を制御する加熱制御部を含み、
前記加熱制御部は、前記試料の温度が徐々に上昇するように又は徐々に下降するように前記試料の加熱を制御し、
前記試料の温度の上昇過程又は下降過程において、前記試料に対して荷電粒子線が照射され、前記輻射成分が除去された検出信号に基づいて、前記試料を表す画像が生成される、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項
1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料に対して設定された観測領域に対して前記荷電粒子線が二次元走査され、
前記検出信号は、前記荷電粒子線の二次元走査により得られた一次元信号であり、
前記フィルタは一次元フィルタであり、
前記検出信号に対して前記フィルタが一次元走査される、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項
1記載の荷電粒子線装置において、
前記フィルタは平滑化作用を発揮するフィルタである、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項
1記載の荷電粒子線装置において、
前記検出器は、前記注目粒子及び前記輻射エネルギーに対して感度を有する複数の検出領域を備え、
前記複数の検出領域から複数の検出信号が並列的に出力され、
当該荷電粒子線装置は、
前記複数の検出信号に対してゲイン調整及びオフセット調整を個別的に適用し、調整後の複数の検出信号を並列的に出力する複数の調整器と、
前記調整後の複数の検出信号を加算し、加算後の検出信号を出力する加算器と、
を含み、
前記加算後の検出信号が前記フィルタに入力される、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項
1記載の荷電粒子線装置において、
前記検出器は、前記注目粒子及び前記輻射エネルギーに対して感度を有する複数の検出領域を備え、
前記複数の検出領域から複数の検出信号が並列的に出力され、
前記輻射成分を特定する手段は、
前記複数の検出信号から複数の輻射成分候補を抽出する手段と、
前記複数の輻射成分候補に基づいて前記輻射成分を特定する手段と、
を含む、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7記載の荷電粒子線装置において、
前記除去部は、前記複数の検出信号から前記輻射成分を除去し、
前記生成部は、前記輻射成分が除去された複数の検出信号に基づいて、前記試料を表す画像を生成する、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
試料に対して荷電粒子線を照射する照射設備と、
前記荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出された注目粒子を検出する検出器であって、前記試料の加熱に起因して被加熱物から放出された輻射エネルギーの検出により生じた輻射成分を含む検出信号を出力する検出器と、
前記輻射エネルギーの選択的検出により、前記輻射成分を特定する手段と、
前記検出信号から前記輻射成分を除去する除去部と、
前記輻射成分が除去された検出信号に基づいて、前記試料を表す画像を生成する生成部と、
を含み、
前記検出器は主検出器であり、
前記検出信号は主検出信号であり、
前記輻射成分を特定する手段は、前記注目粒子を検出することなく前記輻射エネルギーを選択的に検出する副検出器を含み、
前記副検出器から出力される副検出信号に基づいて前記輻射成分が特定される、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項9記載の荷電粒子線装置において、
前記副検出器は、前記輻射エネルギーを透過させ且つ前記注目粒子を遮断する入射膜を有する、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項9記載の荷電粒子線装置において、
前記主検出器として機能する複数の主検出領域が設けられ、
前記除去部は、前記複数の主検出領域から出力された複数の主検出信号から前記輻射成分を除去し、
前記生成部は、前記輻射成分が除去された複数の主検出信号に基づいて前記試料を表す画像を形成する、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置に関し、特に、加熱される試料を観測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線装置は、試料に対して荷電粒子線を照射することにより試料の観察を行う装置である。荷電粒子線装置として、走査電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、等が知られている。荷電粒子線装置を用いた試料の観察においては、必要に応じて、試料が加熱される。すなわち、試料の加熱を行いながら試料が観察され、あるいは、加熱状態にある試料が観察される。例えば、結晶粒の歪みが変化していく様子や結晶が成長していく様子を観察したい場合に試料が加熱される。加熱温度は、例えば、数百℃以上又は千℃以上である。
【0003】
走査電子顕微鏡においては、試料から放出される電子(反射電子、二次電子)が検出器(反射電子検出器、二次電子検出器)により検出される。試料を加熱する場合、試料や試料ホルダつまり被加熱物から、無視し得ない輻射エネルギー(輻射熱)が放出される。輻射エネルギーの放出は具体的には電磁波としての光(赤外線、可視光等)の放出である。試料の温度が上がれば上がるほど、試料から放出される輻射エネルギーの量が増大する。
【0004】
通常、電子を検出する検出器は光に対しても感応する。よって、試料を加熱しながら試料を観察する場合、検出器から出力される検出信号には、電子の検出により生じた注目成分(電子成分)の他、輻射エネルギーの検出により生じた輻射成分が含まれる。
【0005】
検出信号中の輻射成分が検出信号においてオフセットを生じさせる。特に、高温状態にある試料の場合、輻射成分が大きなオフセットを生じさせる。しかも、その場合、試料から放出される輻射エネルギーの量が不規則に変化するので、そのオフセットは不安定なものとなる。検出信号に含まれる輻射成分は、試料画像の品質を低下させるものであり、場合によっては、試料画像の生成に際しての大きな阻害要因となる。
【0006】
特許文献1には、試料からの光を遮るフィルタを備えた荷電粒子線装置が開示されている。特許文献2には、試料からの光を遮る遮光板を備えた走査電子顕微鏡が開示されている。特許文献1、2のいずれにも、検出信号中に含まれる輻射成分を除去する技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2020/100205号公報
【文献】特開平9-134696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既に説明したように、加熱状態にある試料を観察する場合、被加熱物(試料、試料ホルダ等)から検出器へ輻射エネルギーが到達する。検出された輻射エネルギーが輻射成分を生じさせる。無視し得ない輻射成分を含む検出信号に基づいて試料画像を形成すると、試料画像の品質が低下し、場合によっては、試料画像を生成できなくなる。加熱状態にある試料について鮮明な試料画像を生成できる技術の実現が要望されている。
【0009】
本発明の目的は、加熱される試料の観察に当たって試料画像の品質を高めることにある。あるいは、本発明の目的は、検出信号に含まれる輻射成分を除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る荷電粒子線装置は、試料に対して荷電粒子線を照射する照射設備と、前記荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出された注目粒子を検出する検出器であって、前記試料の加熱に起因して被加熱物から放出された輻射エネルギーの検出により生じた輻射成分を含む検出信号を出力する検出器と、前記検出信号の処理により又は前記輻射エネルギーの選択的検出により、前記輻射成分を特定する手段と、前記検出信号から前記輻射成分を除去する除去部と、前記輻射成分が除去された検出信号に基づいて、前記試料を表す画像を生成す生成部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱される試料の観察に当たって試料の画像の品質を高められる。あるいは、本発明によれば、検出信号に含まれる輻射成分を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る走査電子顕微鏡の構成例を示す図である。
【
図6】非加熱下において得られる検出信号の一例を示す図である。
【
図7】加熱下において得られる検出信号の一例を示す図である。
【
図8】フィルタにより抽出された輻射成分の一例を示す図である。
【
図9】輻射成分除去後の検出信号の一例を示す図である。
【
図10】輻射成分を含む検出信号に基づいて生成された画像の一例を示す図である。
【
図11】輻射成分除去後の検出信号に基づいて生成された画像の一例を示す図である。
【
図12】輻射成分除去後の検出信号に対する処理の一例を示す図である。
【
図13】第1実施形態の第1変形例を示す図である。
【
図14】第1実施形態の第2変形例を示す図である。
【
図15】第2実施形態に係る走査電子顕微鏡の構成例を示す図である。
【
図16】第2実施形態の第1変形例を示す図である。
【
図17】第2実施形態の第2変形例を示す図である。
【
図18】第2実施形態の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る荷電粒子線装置は、照射設備、検出器、輻射成分を特定する手段(特定部)、除去部、及び、生成部を有する。照射設備は、試料に対して荷電粒子線を照射するものである。検出器は、荷電粒子線の照射に起因して試料から放出された注目粒子を検出する検出器である。検出器は、試料の加熱に起因して被加熱物から放出された輻射エネルギーの検出により生じた輻射成分を含む検出信号を出力する。輻射成分を特定する手段は、検出信号の処理により又は輻射エネルギーの選択的検出により、輻射成分を特定する。除去部は、検出信号から輻射成分を除去する。生成部は、輻射成分が除去された検出信号に基づいて、試料を表す画像を生成する。
【0015】
上記構成によれば、輻射成分が除去された検出信号に基づいて画像を形成できるので、輻射成分による画質低下を防止又は軽減できる。輻射成分の特定方法として、検出信号の処理により輻射成分を抽出する方法、及び、被加熱体からの輻射エネルギーを選択的に検出する方法、が挙げられる。
【0016】
実施形態において、荷電粒子線は電子線である。それ以外の荷電粒子線としてイオンビームが挙げられる。実施形態において、注目粒子は、試料から放出された反射電子又は二次電子である。他の注目粒子としてイオンが挙げられる。輻射エネルギーの検出は光の検出である。ここで、光は、赤外光、可視光、紫外光を含み得る。輻射エネルギーの検出として熱電子の検出が実施されてもよい。加熱用の試料ホルダを利用した場合、試料及び試料ホルダそれら全体が被加熱物となる。試料のみ又は試料中の局所部位のみが加熱されてもよい。その場合、試料又はその局所部位が被加熱物となる。
【0017】
実施形態において、輻射成分を特定する手段は、検出信号から輻射成分を抽出するフィルタを含む。一般に、検出成分は、試料形状の変化に応じて短い周期で変化し、一方、注目成分は、試料温度の変化に応じて長い周期で変化する。そのような性質の違いを利用して輻射成分を抽出することが可能である。なお、検出信号から注目成分を直接的に抽出するフィルタを利用する変形例が考えられる。
【0018】
実施形態においては、試料に対して設定された観測領域に対して荷電粒子線が二次元走査される。検出信号は、荷電粒子線の二次元走査により得られた一次元信号である。フィルタは一次元フィルタである。検出信号に対してフィルタが一次元走査される。フィルタは、平滑化作用を発揮するフィルタである。温度の変化は時間軸上において生じる一次元の変化であるから、一次元信号としての検出信号に対して一次元フィルタを適用することが可能であり且つ妥当である。
【0019】
実施形態において、検出器は、注目粒子及び輻射エネルギーに対して感度を有する複数の検出領域を備える。複数の検出領域から複数の検出信号が並列的に出力される。荷電粒子線装置は、更に、複数の調整器、及び、加算器を有する。複数の調整器は、複数の検出信号に対してゲイン調整及びオフセット調整を個別的に適用し、調整後の複数の検出信号を並列的に出力する。加算器は、調整後の複数の検出信号を加算し、加算後の検出信号を出力する。加算後の検出信号がフィルタに入力される。この構成によれば、検出信号の飽和が生じ難くなる。
【0020】
実施形態において、検出器は、注目粒子及び輻射エネルギーに対して感度を有する複数の検出領域を備える。複数の検出領域から複数の検出信号が並列的に出力される。輻射成分を特定する手段は、複数の検出信号から複数の輻射成分候補を抽出する手段と、複数の輻射成分候補に基づいて輻射成分を特定する手段と、を含む。
【0021】
複数の検出領域に到達する輻射エネルギーはほぼ同じであるが、各検出領域に到達する注目粒子の個数は荷電粒子線の照射点での試料形状に依存する。つまり、複数の検出領域から出力された複数の検出信号において、共通の成分が輻射成分であり、相違する成分が注目成分である、とみなせる。そのような関係に基づいて、複数の輻射成分候補の中から輻射成分が特定される。例えば、複数の輻射成分候補の中で最も小さな強度を有する輻射成分候補が輻射成分として特定され得る。他の方法で輻射成分が特定されてもよい。
【0022】
実施形態において、除去部は、複数の検出信号から輻射成分を除去する。生成部は、輻射成分が除去された複数の検出信号に基づいて、試料を表す画像を生成する。輻射成分が除去された複数の検出信号に基づいて、試料の三次元画像が生成されてもよい。
【0023】
実施形態において、検出器は主検出器である。検出信号は主検出信号である。輻射成分を特定する手段は、注目粒子を検出することなく輻射エネルギーを選択的に検出する副検出器を含む。副検出器から出力される副検出信号に基づいて輻射成分が特定される。この構成によれば、輻射成分を選択的に検出できるので、輻射成分を高精度に特定し得る。
【0024】
実施形態において、副検出器は、輻射エネルギーを透過させ且つ注目粒子を遮断する入射膜を有する。この構成によれば、簡便に輻射成分を特定することが可能である。
【0025】
実施形態においては、主検出器として機能する複数の主検出領域が設けられる。除去部は、複数の主検出領域から出力された複数の主検出信号から輻射成分を除去する。生成部は、輻射成分が除去された複数の主検出信号に基づいて試料を表す画像を形成する。その画像の概念には三次元画像が含まれる。複数の主検出領域及び複数の副検出領域を有する分割型検出器が用いられてもよい。
【0026】
(2)実施形態の詳細
図1には、第1実施形態に係る荷電粒子線装置の構成例が示されている。図示された荷電粒子線装置は、走査電子顕微鏡である。走査透過電子顕微鏡、イオンビーム装置等に対して以下に説明する構成が適用されてもよい。
【0027】
図1において、走査電子顕微鏡は、観察部10及び情報処理部12を有している。観察部10は、試料室14を有する。試料室14内には試料ステージ16が設けられており、試料ステージ16に対して試料ホルダ18が装着されている。試料ホルダ18により試料20が保持されている。
【0028】
試料20は、例えば、鉄等の材料であり、あるいは、半導体デバイス等の製品である。試料ホルダ18は、試料20を加熱する機能を備えている。試料20の全体又は一部に電流を流すことにより、試料20の全体又は一部が加熱されてもよい。
【0029】
観察部10は鏡筒を有する。鏡筒内には、電子銃22、集束レンズ24、走査コイル26、対物レンズ30等が設けられている。それらの要素により電子線34が生成され、生成された電子線34が試料20に照射される。試料20上に設定される観測領域に対して電子線34が二次元走査される。電子線34の二次元走査については後に
図2を用いて詳述する。鏡筒の下側に上記試料室14が設けられている。
【0030】
試料20の加熱により、試料20の温度が上昇する。例えば、室温から千℃以上まで、試料20の温度が変化する。実施形態においては、観察部10を用いて、温度上昇過程にある試料20が連続的又は間欠的に観察される。一定の温度に維持された試料20が観察されてもよい。高温状態にある試料の温度が徐々に引き下げられ、その過程において試料20が連続的又は間欠的に観察されてもよい。
【0031】
図1においては、観察部10は反射電子検出器36を有する。反射電子検出器36は、半導体型検出器であり、それは、図示の構成例において、試料20の上方であって対物レンズ30の直下に設けられている。反射電子検出器36と共に、又はそれに代えて、二次電子検出器が設けられてもよい。
【0032】
試料20への電子線の照射により、試料から反射電子38が放出される。反射電子38が反射電子検出器36で検出される。一方、試料20の加熱により試料20(正確にはそれを含む被加熱物)から輻射エネルギー、具体的には光(赤外線、可視光等)40が放出される。その光40が反射電子検出器36に到達すると、その光40も検出されてしまう。
【0033】
反射電子検出器36から出力される検出信号には、反射電子38の検出に起因して生じた注目成分(電子成分)、及び、光40の検出に起因して生じた輻射成分、が含まれる。輻射成分は、試料20の温度変化に伴って大きく変動する。輻射成分により検出信号のオフセットが生じる。加熱過程において輻射エネルギーの量が段階的に増加すると、オフセットレベルが段階的に増加する。通常、オフセットレベルの変化は、不連続に生じ又は不規則に生じる。オフセットレベルの変化は、注目成分の変化に比べて、非常に大きい。そこで、第1実施形態においては、以下に詳しく説明するように、検出信号から輻射成分を除去する構成が採用されている。なお、検出信号には、注目成分及び輻射成分の他にノイズ成分が含まれるが、ノイズ成分は公知の各種の手法により除去又は抑圧することが可能である。
【0034】
次に、情報処理部12について説明する。情報処理部12は、例えば、電子回路及びコンピュータにより構成される。以下に説明する、信号処理部42及びサンプリング部44は電子回路により構成される。以下に説明する、輻射成分除去部46、画像生成部48、制御部52等はコンピュータにより構成される。
【0035】
信号処理部42は、適正なコントラスト又は所望のコントラストを実現するために、検出信号41に対して、ゲイン調整及びオフセット調整を適用するものである。オフセット調整は、検出信号のベースラインのシフトに相当する。制御部52の制御の下、検出信号41において飽和が生じず、検出信号41の振幅が所望のダイナミックレンジ(例えば後述するサンプリング部148の入力ダイナミックレンジ)に適合するように、ゲイン調整及びオフセット調整が実行される。信号処理部42の構成例については後に
図3を用いて説明する。
【0036】
信号処理部42から出力された検出信号がサンプリング部44に入力されている。サンプリング部44において検出信号がサンプリングされ、つまりアナログ検出信号がデジタル検出信号に変換される。サンプリング部44は、A/D変換器を有する。飽和を生じさせず且つ必要な分解能が得られるように、A/D変換器の量子化ビット数が定められる。サンプリング部44から出力された検出信号(デジタル検出信号)が輻射成分除去部46に入力されている。
【0037】
輻射成分除去部46は、検出信号中の輻射成分を抽出するフィルタを有する。フィルタとして平滑化作用をもったフィルタ、例えばエッジ保存型の平滑化フィルタを利用し得る。輻射成分除去部46は、検出信号から、抽出された輻射成分を除去する。これにより輻射成分が除去された検出信号が得られる。その検出信号においては注目成分が支配的である。輻射成分除去部46の構成例については後に
図4を用いて詳述する。
【0038】
画像生成部48は、輻射成分除去後の検出信号に基づいて、試料を表す画像(SEM画像としての反射電子画像)を生成するものである。輻射成分の除去を経ているので、輻射成分に起因する画質低下は防止又は軽減される。電子線の二次元走査に従って、検出信号を構成する振幅値列が二次元マッピングされる。これにより画像が生成される。
【0039】
表示器50は、例えば液晶表示器により構成される。表示器50には、画像生成部48により生成された画像が表示される。試料20の加熱過程において電子線34の二次元走査が繰り返される。これにより画像列が生成され、画像列が表示器50に表示される。画像列を構成する各画像が解析されてもよい。
【0040】
制御部52は、例えば、プログラムを実行するプロセッサ(例えばCPU)により構成される。制御部52は、
図1に示される各構成を制御するものである。実施形態に係る制御部52は、観察制御部54及び加熱制御部56として機能する。観察制御部54により、鏡筒内の各構成の動作が制御される。加熱制御部56により、試料20の加熱が制御される。例えば、試料20の温度変化が規定の温度変化となるように、加熱制御部56が試料20の加熱を制御する。なお、単一のプロセッサを、制御部52、輻射成分除去部46及び画像生成部48として機能させてもよいし、複数のプロセッサを、制御部52、輻射成分除去部46及び画像生成部48として機能させてもよい。
【0041】
反射電子検出器36に代えて二次電子検出器が設けられてもよい。その場合においても、二次電子検出器から出力された検出信号に含まれる輻射成分が抽出された上で、検出信号から輻射成分が除去される。輻射成分除去後の検出信号に基づいて二次電子画像が生成される。反射電子検出器及び二次電子検出器の両方が設けられてもよい。それら以外の検出器が設けられてもよい。
【0042】
図2を用いて、走査領域及び検出信号について説明する。
図2の上段には、試料20の上面が示されている。x方向は主走査方向であり、y方向は副走査方向である。試料20上には、ユーザーにより又は自動的に関心領域58が設定されている。関心領域58は画像化領域に相当する。関心領域58を包含するように走査領域60が定められる。走査領域60内において電子線が二次元走査される。
【0043】
符号62は、x方向への1回の走査を示している。y方向の各位置においてx方向への走査が実施される。場合によっては、いわゆる飛び越し走査が実施される。関心領域58よりも大きな走査領域60を定めているのは、安定走査領域を画像化するためであり、すなわち、走査コイルの応答性(磁場切換の遅れ)に起因する歪が画像化の対象から外れるようにするためである。
【0044】
図2の下段に示す検出信号64は、x方向に沿った複数の走査に対応する複数の信号区間により構成される。例えば、走査62Aの実行により信号区間66Aが取得され、それに続く走査62Bの実行により信号区間66Bが取得される。検出信号64において2つの信号区間66A,66Bは時間的に連なっている。電子線は二次元走査されるが、二次元走査により得られる検出信号は、試料温度の変化を示す一次元の信号と同じく、時間軸上の一次元信号である。
【0045】
図3には、
図1に示した信号処理部42の構成例が示されている。信号処理部42は、第1ゲイン調整器(第1増幅器)68、オフセット調整器70、及び、第2ゲイン調整器(第2増幅器)により構成される。検出信号に輻射成分が含まれ得ること及び検出信号において飽和の発生を回避すべきことを考慮して、第1ゲイン調整器68において低増幅率で検出信号を増幅した上で、検出信号に対してオフセット調整が適用される。例えば、輻射成分のレベルが増大した場合、それに応じて、検出信号のオフセットが引き下げられる。オフセット調整後に第2ゲイン調整器72において検出信号が増幅される。これにより必要なコントラストを確保できる。
【0046】
第1ゲイン調整器68の動作、オフセット調整器70の動作、及び、第2ゲイン調整器72の動作は、制御部によって制御される。その場合、検出信号を参照しながら各調整器68,70,72の動作がフィードバック制御されてもよい。3つ以上の増幅器を用いて検出信号が増幅されてもよい。
【0047】
輻射成分のレベルは不安定であり、特に試料の温度が増すほど、不安定度合いが増大する。例えば、輻射成分のレベルの増大による飽和発生を回避するために、第1ゲイン調整器68のゲイン及び第2ゲイン調整器72のゲインを低めに設定しておいてもよい。いずれにしても、オフセット調整だけで輻射成分の影響を除去することは困難であり、検出信号から輻射成分を除去する処理が必要となる。
【0048】
図4には、輻射成分除去部46の構成例が示されている。輻射成分除去部46は、フィルタ74、及び、減算器76を有する。フィルタ74は、検出信号に含まれる輻射成分を抽出するものである。フィルタ74は、平滑化作用又は低域通過作用をもった一次元フィルタである。具体的には、そのフィルタ74として、ローパスフィルタ、移動平均フィルタ、エッジ保存型平滑化フィルタ、等を利用し得る。エッジ保存型平滑化フィルタとして、バイラテラルフィルタ、ノンローカルミーンフィルタ等が挙げられる。
【0049】
フィルタ74により抽出された輻射成分が減算器76に送られている。減算器76は、検出信号から輻射成分を減算することにより、輻射成分が除去された検出信号を生成するものである。上記のような一連の処理が時間軸上に並ぶデータごとに実施される。移動平均処理に当たっては重み付け平均値が演算されてもよい。
【0050】
上記フィルタとして、移動平均フィルタを用いる場合、
図5に示すように、時系列順で並ぶ複数のデータが順番に注目データS1(t)とされる。注目データS1(t)を中心として一次元のウインドウ78が設定される。ウインドウ78内のデータS1(t+3)~データS1(t-3)が参照され、それらから求められる平均値Fd(t)が新たな注目データS1(t)の値とされる。具体的には、以下の(1)式に示す計算が実行される。なお、図示の例ではw=3である。
【数1】
【0051】
上記フィルタとしてバイラテラルフィルタを用いる場合、例えば以下の(2)式に示す計算が実行される。
【数2】
【0052】
ここで、wはウインドウの大きさを規定するパラメータであり、σ1及びσ2はそれぞれフィルタの作用を調整するパラメータである。
【0053】
図6~
図9を用いて信号処理の具体例を説明する。
図6には、加熱前の検出信号82が示されている。横軸は時間軸である。縦軸は振幅軸である。試料に対して電子線の二次元走査が繰り返し実行され、その過程において取得された信号が検出信号82である。検出信号82には、試料形状を反映した細かい多数の波形が含まれる。検出信号82において輻射成分の影響は無視し得る程度に小さい。
【0054】
図7には、加熱過程で取得された検出信号84が示されている。検出信号84には輻射成分が含まれており、具体的には顕著なオフセットが生じている。オフセットには概ね平坦な部分88も含まれるが、突発的に変化する部分86や不安定な部分90も含まれる。検出信号84において太く見える部分が試料形状を反映した注目成分に相当する。それは、上記のように、細かい多数の変化により構成されるものである。なお、
図7に示す縦軸のスケールは、
図6に示した縦軸のスケールとは異なっている。
【0055】
試料の加熱に伴って試料内部構造が突如変化した場合に、上記部分86が生じるものと推認される。試料内部構造が連続的に変化しあるいは不規則に変化した場合に上記部分90が生じるものと推認される。いずれにしても輻射成分は試料の画像化に当たっての大きな妨害要因である。
【0056】
図8には、フィルタにより抽出された輻射成分92が示されている。輻射成分92は、
図7に示した検出信号の基本形又はベースラインに相当する。なお、輻射成分92にはパルス状の部分94が含まれる。
【0057】
図9には、輻射成分除去後の検出信号96が含まれている。輻射成分によるオフセットはほぼ消失しており、検出信号それ全体が一定の振幅レンジ内に収まっている。検出信号96の実体は、試料形状を反映した多数の波形98である。
図9に示す縦軸のスケールと
図7,8に示した縦軸のスケールを対比すれば明らかなように、検出信号96のコントラストがかなり増大されている。
【0058】
なお、検出信号96には、幾つかのピーク100が含まれる。それらは、
図8に示したパルス状の部分の残差である。各ピーク100は、1画素程度のノイズに相当し、画像それ全体から見て目立つものではない。もっとも、後述するように、各ピークに対して抑圧処理を適用してもよい。
【0059】
図10には、輻射成分を有する検出信号に基づいて生成された画像102が示されている。画像102内には幾つかの横筋が生じており、また画像102それ全体が不鮮明である。
【0060】
一方、
図11には、輻射成分除去後の検出信号に基づいて生成された画像104が示されている。画像104は十分なコントラストを有しており、その鮮明度は良好である。
【0061】
図12に示すように、輻射成分除去後の検出信号106に対してクリッピング処理を適用してもよい。クリッピング処理は、例えば、第1閾値108Aよりも上側の部分をカットし、且つ、第2閾値108Bよりも下側の部分をカットする処理である。符号110A及び符号110Bが示すように、ユーザーにより又は自動的に第1閾値108A及び第2閾値108が可変されてもよい。クリッピング処理に代えて他の処理(他のフィルタ処理を含む)を検出信号に対して適用してもよい。
【0062】
図13には、第1実施形態の第1変形例が示されている。反射電子を検出する検出器112はいわゆる分割型検出器である。検出器112は、図示の構成例において、領域aから領域fまでの6個の領域を有する。個々の領域a~fが、独立した検出素子として機能する。検出器112から6個の検出信号が並列的に出力される。
【0063】
信号処理部42Aは、増幅器列114、オフセット調整器列116、及び、加算器118を有する。増幅器列114は6個の増幅器114Aにより構成され、オフセット調整器列116は6個のオフセット調整器116Aにより構成される。各検出信号は、増幅器14Aにおいて増幅される。その後、各検出信号に対してオフセット調整器116Aにおいてオフセット調整が適用される。そのような調整を経た6個の検出信号が加算器118において加算される。加算後の検出信号がサンプリング部44へ出力される。サンプリング部44以降の構成は、
図1においてサンプリング部44以降の構成と同じである。
【0064】
図13に示す構成を採用した場合、検出信号の飽和が生じ難いという利点を得られる。すなわち、個々の領域a~fの面積が小さいので、個々の領域が受ける輻射エネルギーの量も小さくなる。これにより、加算前の段階において、輻射成分に起因する飽和が生じ難くなる。
【0065】
図14には、第1実施形態の第2変形例が示されている。分割型検出器120は、図示の構成例では、4つの領域a~dを有している。各領域a~dが検出素子として機能する。分割型検出器120から4つの検出信号が並列的に出力されている。
【0066】
信号処理部42Bは、増幅器列122、オフセット調整器列124、フィルタ列126、差分器列128、及び、輻射成分判定器132を有する。増幅器列122は4個の増幅器122Aにより構成され、オフセット調整器列124は4個のオフセット調整器124Aにより構成され、フィルタ列126は4個のフィルタ126Aにより構成され、差分器列128は4個の差分器128Aにより構成される。
【0067】
各フィルタ126Aは輻射成分(第2変形例では輻射成分候補)を抽出するフィルタである。4つのフィルタ126Aの作用により、4つの検出信号の中から4つの輻射成分候補が並列的に抽出される。輻射成分判定器132は、4つの輻射成分候補の中で、最小振幅値を有する輻射成分候補を輻射成分として判定する。
【0068】
被加熱物からの輻射エネルギーはその周囲にほぼ均等に放出され、4つの域a~dが受ける輻射エネルギーの量はほぼ同一であるとみなせる。4つの検出信号には、それらに共通の輻射成分が含まれるとみなせる。一方、電子線照射点における試料形状に依存して、各領域a~dが受ける反射電子の量は区々である。共通の輻射成分を超える部分が注目成分に相当すると考えられる。それらのことから、4つの輻射成分候補の中で最小のレベルを有する輻射成分候補が輻射成分であると判定されている。個々の時刻でレベルが比較される。レベル比較に先立って、各輻射成分候補に対して平滑化等の処理が適用されてもよい。
【0069】
各差分器128Aにおいては、各検出信号から輻射成分が減算される。これにより輻射成分が除去された4つの検出信号が生成される。差分器列128は輻射成分除去部に相当する。
【0070】
サンプリング部130は4つのサンプリング回路130Aにより構成される。各サンプリング回路130Aにより各検出信号がサンプリングされる。これにより、サンプリング後の4つの検出信号が生成される。それらの検出信号に基づいて、三次元画像生成部136が、試料を表す三次元画像を生成する。
【0071】
その場合には、公知のPhotometric Stereo(PS)法を用い得る。その方法は、複数の検出領域で電子の放出角度が異なることを利用し、試料表面を立体的に表現した画像を生成するものである。他の方法により試料の三次元画像が構築されてもよい。その場合においても上記の輻射成分除去技術を適用し得る。
【0072】
図15には、第2実施形態に係る走査電子顕微鏡の構成例が示されている。なお、
図15において、
図1に示した構成と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
試料室内には、光検出器140が設けられている。光検出器140の受光面は電子遮断膜142によって覆われている。電子遮断膜142は、光を透過させ、電子を遮断する選択的透過膜であり、それは、例えば、ガラス、透明な樹脂により構成される。電子遮断膜142の表面に対しては帯電防止処理(導電処理)が施される。
【0074】
反射電子検出器36では、反射電子が検出され、また輻射エネルギーつまり光が検出される。一方、光検出器140では、輻射エネルギーつまり光のみが検出される。反射電子検出器36から出力された第1検出信号には、注目成分及び輻射成分が含まれる。光検出器140から出力された第2検出信号には、基本的に、輻射成分だけが含まれる。第2検出信号は輻射成分信号とみなせる。
【0075】
信号処理回路143は、第1検出信号に対してゲイン調整及びオフセット調整を行う回路である。信号処理回路144は、第2検出信号に対してゲイン調整及びオフセット調整を行う回路である。第1検出信号に含まれる輻射成分及び第2検出信号に含まれる輻射信号が等しくなるように、各検出信号が調整される。
【0076】
減算回路146は、第1検出信号から第2検出信号を減算する回路であり、これにより輻射成分除去後の検出信号が得られる。減算回路146は輻射成分除去部として機能するものである。減算回路146は差分器とも言い得る。輻射成分除去後の検出信号がサンプリング部148を介して画像生成部48に送られている。
【0077】
第2実施形態においても、検出信号(第1検出信号)中の輻射成分を効果的に除去することが可能である。第2実施形態においては、輻射により生じた光が直接的に検出されているので、輻射成分の特定を高精度に行うことが可能である。必要に応じて、光検出器140を移動させる機構を設けてもよい。その機構は、光検出器140の使用時にそれを試料室内の所定位置に配置し、光検出器140の不使用時にそれを退避位置に退避させるものである。
【0078】
図16には、第2実施形態の第1変形例が示されている。反射電子検出器150は分割型検出器であり、それは4つの領域a~dを有している。反射電子検出器150とは別に光検出器151が設けられている。その受光面には電子遮断膜が設けられている。
【0079】
信号処理部152は、増幅器列154、オフセット調整器列156、及び、差分器列158を有している。増幅器列154は、4つの増幅器154A及び増幅器154Bにより構成され、オフセット調整器列156は、4つのオフセット調整器156A及びオフセット調整器156Bにより構成される。差分器列158は、4つの差分器158Aにより構成される。
【0080】
反射電子検出器150から並列的に出力された4つの第1検出信号が4つの増幅器154Aにおいて増幅された上で、増幅後の4つの第1検出信号に対して4つのオフセット調整器156Aがオフセット調整を適用する。
【0081】
一方、光検出器151から出力された第2検出信号が増幅器154Bで増幅され、増幅後の第2検出信号に対してオフセット調整器156Bにおいてオフセット調整が適用される。複数の差分器158Aは、オフセット調整後の4つの第1検出信号から、オフセット調整後の第2検出信号を減算するものである。これにより、輻射成分除去後の4つの検出信号が得られる。それらの信号が三次元画像生成部162へ送られている。三次元画像生成部162は、上記のPS法等に基づいて、試料の三次元画像を生成するものである。
【0082】
なお、4つの第1検出信号から第2検出信号が減算された後に、4つの検出信号に対してゲイン調整及びオフセット調整が適用されてもよい。
【0083】
図17には、第2実施形態の第2変形例が示されている。
図15に示した構成において、反射電子検出器36及び光検出器140に代えて、
図17に示す分割型検出器164を設けてもよい。分割型検出器164は、環状に並んだ複数の領域a~fを有する。各領域a~fはそれぞれ同一の面積を有する。領域a,c,eが反射電子検出用の検出素子として機能し、領域b,d,fが光検出用の検出素子として機能する。領域b,d,fは電子を遮断し光を透過させる選択的透過膜で覆われている。領域a,c,eから出力された3つの第1検出信号が個別的に処理された上で加算されてもよい。同様に、領域b,d,fから出力された3つの第2検出信号が個別的処理された上で加算されてもよい。各領域a~fが有する面積を同一とすることにより各検出信号のゲインを同一にすることが可能であり、輻射成分の減算が容易となる。
【0084】
図18には、第2実施形態の第3変形例が示されている。
図16に示した構成において、反射電子検出器150及び光検出器151に代えて、
図18に示す分割型検出器166を設けてもよい。分割型検出器166は、環状に並んだ複数の第1領域a~hを有する。第1領域a,c,e,gは、それぞれ相対的に見て大きな面積を有し、それらは、それぞれ反射電子検出用の検出素子として機能する。第2領域b,d,f,hは、それぞれ相対的に見て小さな面積を有し、それらは、それぞれ光検出用の検出素子として機能する。第2領域b,d,f,hは電子遮断膜で覆われている。領域b,d,fから出力された3つの第2検出信号が個別的処理された上で加算されてもよい。加算後の第2検出信号が領域b,d,f,hから出力された4つの第1検出信号から減算される。輻射成分除去後の4つの検出信号に基づいて三次元画像が生成される。なお、第3変形例を採用する場合、回転対称が実現されるように、複数の第1領域及び複数の第2領域が配置される。
【0085】
二次電子検出器を光検出器として機能させてもよい。その場合には、二次電子検出器の検出窓(電極)に対して負の高電位を与え、検出窓に対して電子(二次電子、反射電子)が到達しないようにしてもよい。検出窓を透過した光が光電子増倍管の作用により電流信号として検出される。その電流信号が輻射成分を表す信号となる。輻射成分の特定のために熱電子を検出することも考えられる。上記で説明した構成が走査透過電子顕微鏡や他の観察装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 観察部、12 情報処理部、20 試料、36 反射電子検出器、42 信号処理部、44 サンプリング部、46 輻射成分除去部、48 画像生成部。