(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】発光モジュールおよび発光モジュールの駆動方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0683 20060101AFI20240520BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20240520BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20240520BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240520BHJP
【FI】
H01S5/0683
H01S5/02253
H01S5/042
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2022046314
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592163734
【氏名又は名称】京セラSOC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 正美
(72)【発明者】
【氏名】中尾 理史
(72)【発明者】
【氏名】増川 勲
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-064243(JP,A)
【文献】特開2002-303904(JP,A)
【文献】特開2020-155594(JP,A)
【文献】特開2010-153584(JP,A)
【文献】特開2002-189236(JP,A)
【文献】特開平08-139397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0195838(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107293939(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、この半導体レーザから発散光状態で発せられた光ビームを平行光にするコリメートレンズとを備えてなる発光モジュールにおいて、
前記半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し得る温度調節手段と、
前記半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更できる半導体レーザ駆動回路と、
前記半導体レーザから発せられた光ビームを減衰し得るアッテネータと、
前記平行光を通過させる円孔が形成された光遮断部材からなり、前記半導体レーザから出射した後に外部で反射して該半導体レーザに向かって進む戻り光の、少なくとも一部を前記光遮断部材によって遮断する、該戻り光の進行方向の位置を互いに変えて配された2つのアパーチャ板と、
が設けられたことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記2つのアパーチャ板が、前記アッテネータに対して前記戻り光の進行方向上流側と下流側にそれぞれ配されている請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記温度調節手段が、前記半導体レーザの近傍の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子が検出した温度に応じて前記半導体レーザの温度を上げる加温素子とから構成されている請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記半導体レーザから出射された光ビームの一部を分岐させる光ビーム分岐手段および、分岐された光ビームの光出力を検出する光検出器が設けられ、
前記半導体レーザ駆動回路が、前記光検出器の出力に基づいて前記駆動電流を変えるように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
半導体レーザと、この半導体レーザから発散光状態で発せられた光ビームを平行光にするコリメートレンズとを備えてなる発光モジュールを駆動する方法であって、
前記半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し、
前記半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更し、
前記半導体レーザから発せられた光ビームをアッテネータにより所定の光出力まで減衰させ
、
前記半導体レーザから出射した後に外部で反射して該半導体レーザに向かって進む戻り光の少なくとも一部を、前記平行光を通過させる円孔が形成された光遮断部材からなり、該戻り光の進行方向の位置を互いに変えて配された2つのアパーチャ板によって遮断する、
ことを特徴とする発光モジュールの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ビームを発する発光モジュールに関し、特に詳細には、光源として半導体レーザが用いられた発光モジュールに関するものである。さらに本発明は、そのような発光モジュールを駆動する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や細菌等の微小検体に光ビームを照射し、それにより生じた散乱光や蛍光を光検出器で検出して、検体の構造、性状、個数等を測定、分析する分析装置や計測器が種々知られている。この種の分析装置等においては、光源や、そこから発せられた光ビームを収束させるレンズ等の光学要素をまとめてモジュール化したものが用いられることが多い。特許文献1には、そのように構成された発光モジュールの例が示されている。
【0003】
上記の発光モジュールにおいて小型化が望まれる場合等は、光源として半導体レーザ(レーザダイオード)が多く適用されている。また、この種の発光モジュールから発せられた光ビームは多くの場合、所望の波長や光波長に設定して使用される。そのような要求を満足する半導体レーザ装置として従来、特許文献2に示された半導体レーザ装置が知られている。
【0004】
この特許文献2に示された半導体レーザ装置は、半導体レーザの光出力および発振波長を検出する手段と、光出力および発振波長の検出手段による出力を基準として半導体レーザの光出力および発振波長を制御する手段とを有することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-42061号公報
【文献】特開平7-15078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示された半導体レーザ装置は一見構成が簡単なものであるが、実用する場合は結露を招き易く、また十分な領域に亘って発振波長を制御することが困難である等の問題が認められるものである。なお、これらの問題については、後に本発明の実施形態を説明する際に、実施形態と対比しながら詳述する。
そこで本発明は、レーザビームの発振波長および光出力を広い領域に亘って変化させることができる発光モジュール、およびその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による発光モジュールは、
半導体レーザと、この半導体レーザから発散光状態で発せられた光ビームを平行光にするコリメートレンズとを備えてなる発光モジュールにおいて、
前記半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し得る温度調節手段と、
前記半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更できる半導体レーザ駆動回路と、
前記半導体レーザから発せられた光ビームを減衰し得るアッテネータと、
が設けられたことを特徴とするものである。
なお、上記の「室温」とは、半導体レーザが設置されている場所の温度で、温度調節による影響が無い場合の温度を意味するものである。具体的には、一例として20℃~25℃程度の温度が相当する場合が多い。
【0008】
上記構成を有する本発明の発光モジュールにおいては、半導体レーザから出射した後に外部で反射して該半導体レーザに向かって進む戻り光の、少なくとも一部を遮断するアパーチャ板が設けられていることが望ましい。なお上記の「外部」とは、半導体レーザの外という意味であり、必ずしも発光モジュールの外を意味するものではない。
【0009】
また上記温度調節手段は、半導体レーザの近傍の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子が検出した温度に応じて前記半導体レーザの温度を上げる加温素子とから構成されることが望ましい。
【0010】
また、上記構成を有する本発明の発光モジュールにおいては、半導体レーザから出射された光ビームの一部を分岐させる光ビーム分岐手段および、分岐された光ビームの光出力を検出する光検出器が設けられ、
半導体レーザ駆動回路が、上記光検出器の出力に基づいて半導体レーザの駆動電流を変えるように構成されている、
ことが望ましい。
【0011】
一方、本発明による発光モジュールの駆動方法は、
半導体レーザと、この半導体レーザから発散光状態で発せられた光ビームを平行光にするコリメートレンズとを備えてなる発光モジュールを駆動する方法であって、
半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し、
半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更し、
半導体レーザから発せられた光ビームをアッテネータにより所定の光出力まで減衰させる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による発光モジュールの駆動方法は、
半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し、
半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更し、
半導体レーザから発せられた光ビームをアッテネータにより所定の光出力まで減衰させるようにしているので、半導体レーザを室温よりも高い温度に設定することで発振波長を長波長側にシフトさせ、半導体レーザの光出力を下げることで発振波長を短波長側にシフトさせて、発振波長を広い領域に亘って変えることができる。
【0013】
本発明による発光モジュールの駆動方法は、特に、発振波長が狭い範囲に限定されて、発振波長の安定性が求められるシステムに好適である。すなわち、従来の半導体レーザモジュールでは発振波長が温度や出力により変化し、また、戻り光により発振波長が不安定になってしまう。ラマン散乱計測器等の精密測定では、励起波長によりラマン強度が変化する等、波長に対して非常に敏感な面があり、結果として、測定システムの感度が大きく変化してしまう。そこで、このようなシステムからは波長が一定値で、かつ、その波長が揺らがないことが求められる。従来の半導体レーザモジュールでは、上述した要因で信号強度が揺ぎ、システムのS/Nが悪化していたが、本発明によればそれが解消されてS/Nが良くなり、信頼性の高いシステムを構築可能となる。
【0014】
そして、長波長側へのシフトと、短波長側へのシフトとを相殺させて発振波長を所望の値に維持させると共に、光出力や半導体レーザの温度を所望値に設定することも可能である。さらに、半導体レーザから発せられた光ビームをアッテネータにより所定の光出力まで減衰させるようにしているので、この点からも光出力を広い領域に亘って変えることが可能となる。
【0015】
一方、本発明による発光モジュールは、
半導体レーザを室温よりも高い温度に設定し得る温度調節手段と、
半導体レーザの駆動電流を変えることにより、該半導体レーザの光出力を変更できる半導体レーザ駆動回路と、
半導体レーザから発せられた光ビームを減衰し得るアッテネータと、
を備えているので、上述した本発明による発光モジュールの駆動方法を実施できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態による発光モジュールの全体形状を示す一部破断側面図
【
図2】
図1の発光モジュールに用いられた半導体レーザを示す概略斜視図(a)と縦断面図(b)
【
図3】
図1の発光モジュールに用いられたビーム変換ユニットの作用を説明する概略図
【
図4】半導体レーザの設定温度と発振波長との関係の一例を示すグラフ
【
図5】半導体レーザの光出力と発振波長との関係の一例を示すグラフ
【
図6】半導体レーザの設定温度と光出力と発振波長との関係の一例を示す概略図
【
図7】半導体レーザおよびコリメートレンズを保持する機構を示す断面図
【
図8】
図7の保持機構が温度によって状態を変える様子を説明する概略図
【
図9】レーザビームの伝搬距離とビーム径との関係を複数の設定温度毎に示すグラフ
【
図10】
図9が示す関係を、異なる半導体レーザを用いた場合について示すグラフ
【
図11】
図7の保持機構が温度によって状態を変える様子を説明する概略図
【
図12】本発明の第2実施形態による発光モジュールの要部を示す概略側面図(a)と概略平面図(b)
【
図13】
図4の発光モジュールに用いられたレーザダイオードチップを示す概略斜視図
【
図14】半導体レーザが発するレーザビームのファスト軸方向のビームプロファイルを4例示す概略図
【
図15】本発明の第3実施形態による発光モジュールの作用を説明する概略図
【
図16】本発明の第4実施形態による発光モジュールの作用を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による発光モジュール100を一部破断して示す側面面である。この発光モジュール100は図示の通り、ベース板1、その上に温度調節用ペルチェ素子2を介して取り付けられた筐体3、この筐体3を覆うカバー4、筐体3から図中右方に出射したレーザビーム(光ビーム)Lを減衰させると共に一部を図中上方に反射させるアッテネータ5、このアッテネータ5で反射したレーザビームLを吸収する終端器6を有している。終端器6はカバー4の内面に取り付けられている。
【0018】
カバー4から矢印A方向に出射したレーザビームLは、何らかの部材で反射して、後述する光源としての半導体レーザ11側に戻ろうとする反射光LR(図中1点鎖線表示)を生じることがある。カバー4の外面には、この反射光LRを遮断するアパーチャ板(絞り板)7が取り付けられている。また筐体3の外面にも同様のアパーチャ板8が取り付けられている。これらのアパーチャ板7、8はいずれも、図中右方に進行するレーザビームLを良好に通過させる開口を有する光遮断性板材からなるものである。このレーザビームLと比べると上記反射光LRは、光強度分布がビーム中心から外側までより広く弱く拡がっているので、アパーチャ板7、8の開口周囲部分で効果的に遮断され得る。
【0019】
次に筐体3内の構成について説明する。筐体3内には、光源としての半導体レーザ11と、この半導体レーザ11から発散光状態で発せられたレーザビーム(光ビーム)Lを平行光にするコリメートレンズ12と、平行光化されたレーザビームLの光路に順次配された第1プリズム13および第2プリズム14と、これらのプリズム13、14を固定した回転ステージ15とが配されている。
【0020】
図1中で半導体レーザ11は概略的に示されているが、その詳しい外形形状、縦断面形状を
図2の(1)、(2)にそれぞれ示している。図示の通り半導体レーザ11は基本的に、底部が概略円板状とされた金属ステム11a、この金属ステム11aの上に配された概略円筒状の金属キャップ11b、およびこの金属キャップ11bで保護された状態にして金属ステム11aの上部に固定されたレーザダイオードチップ11cから構成されている。
【0021】
レーザダイオードチップ11cから出射したレーザビームLは、金属キャップ11bの上部に固定された円板状のカバーガラス11dを透過し、その上に配された円環状低融点ガラス11eの中央円孔および、金属キャップ11bの上底部に形成された中央円孔11fを通過して金属キャップ11bの外に出射する。また金属ステム11aには、レーザダイオードチップ11cへの給電等を果たす複数のリード11g、およびレーザダイオードチップ11cから出射するレーザビーム(前方出射光)Lの光出力を制御するためにその後方出射光を検出するフォトダイオード11hが取り付けられている。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。第1プリズム13および第2プリズム14はいずれも、光学ガラスを用いて概略三角板状に形成されたいわゆる三角プリズムであり、1つの頂角を挟む2つの端面間でレーザビームLを通過させて屈折させる。プリズムペアを構成しているこれらのプリズム13、14は、平行光化されたレーザビームLの光路に上記頂角の向きを互いに反対にして順次配されている。
【0023】
つまり、一方のプリズムである第1プリズム13は、上記のような1つの頂角がレーザビームLの光路に対して図中下側に位置するのに対し、他方の第2プリズム14は、同様の1つの頂角がレーザビームLの光路に対して図中上側に位置している。換言すれば第2プリズム14では、レーザビームLの光路に対して図中下側に位置するのは、上記1つの頂角と向かい合う底辺である。なお、以上の構成とは反対に、第1プリズム13では上記1つの頂角がレーザビームLの光路に対して図中上側に位置し、第2プリズム14では上記1つの頂角がレーザビームLの光路に対して図中下側に位置する状態としてもよい。
【0024】
上記プリズムペアを固定している回転ステージ15は、回転軸Cを中心として図中のR方向に回転可能とされている。回転軸Cは、一例としてプリズム13、14の間において、図の表示面(印刷した場合は紙面:以下同様)と垂直な方向に延びる軸である。この回転ステージ15は、例えば図示外の回転ツマミや歯車と機械的に連結されており、回転ツマミを手動操作で回転させることにより上記R方向に正逆回転させることができる。なお、回転ステージ15を回転させるために、上記以外の公知の機構が用いられても構わない。また本実施形態において、回転ステージ15の形状は4つの隅部が丸められた矩形板状とされているが、その形状は特に限定されるものではなく例えば円板状等とされてもよい。
【0025】
回転ステージ15を回転可能に保持する機構として具体的には、回転ステージ15の一表面(プリズム13、14を固定した表面とは反対側の表面)から図中の回転軸Cの表記点と同心状に円柱状の保持軸を突設し、その保持軸を筐体3側に固定した軸受けで保持する機構や、あるいは回転ステージ15に図中の回転軸Cの表記点と同心状にして円筒状の貫通孔を形成し、その貫通孔に円柱状の保持軸を通してその保持軸を筐体3側で保持する機構等、公知の機構が種々適用可能である。
【0026】
第1プリズム13および第2プリズム14は、回転ステージ15の上で互いに所定の角度位置関係を保って固定されている。なお、第1プリズム13および第2プリズム14を回転ステージ15に固定しないで、各々自身の向きを調整可能にして回転ステージ15に取り付けても構わない。そうした場合は、第1プリズム13および第2プリズム14を取り付けた後に、両者を所定の角度位置関係に調整することができる。なお以下では、プリズム13、14および回転ステージ15からなる機構を「ビーム変換ユニット」と称することもある。
【0027】
また筐体3の内部には、半導体レーザの光出力を検出するフォトダイオード等の光検出器9が取り付けられている。そして第1プリズム13の一つの光ビーム通過端面、つまりレーザビームLの通過方向下流側の通過端面は、該端面で反射したレーザビームLを上記光検出器9に導く反射面として利用されている。さらに筐体3には、その内部の温度を検出するサーミスタ10が取り付けられている。サーミスタ10が検出した温度を示す信号は、カバー4の外に配置された温度調節回路30に入力される。また、上記光検出器9が検出した半導体レーザの光出力を示す信号は、同じくカバー4の外に配置された半導体レーザ駆動回路31に入力される。なお温度検出素子としてはサーミスタ10の他に熱電対等も利用可能である。また、ペルチェ素子2以外の温度調節素子が用いられてもよいが、この素子は加温だけができればよく、よってヒータ等も適用可能である。
【0028】
次に、本実施形態の発光モジュール100による作用について説明する。回転ステージ15を前記R方向のいずれか一方に回転させると、その回転に伴なって第1プリズム13へのレーザビームLの入射角が漸次変化する。この入射角が漸次拡大するか漸次低下するかは、回転ステージ15の回転方向によって決まる。こうして第1プリズム13へのレーザビームLの入射角が変化すると、第1プリズム13からのレーザビームLの出射角が変化するので、第2プリズム14へのレーザビームLの入射角が変化し、結局は第2プリズム14からのレーザビームLの出射角が変化する。以上の様子を
図3に概略的に示す。第1プリズム13からの出射角が変化する前のレーザビームLを図中実線で示し、出射角が変化したレーザビームLを図中破線で示している。なお
図3では、回転ステージ15を概略円板状のものとして示している。
【0029】
本実施形態の発光モジュール100は、
図1においてカバー4から矢印A方向に出射したレーザビームLを例えば記録光として利用する光走査記録装置や、読取光として利用する光走査読取装置や、加工光として利用する加工装置や、分析用の光として利用する分析装置等に適用され得るものである。光走査記録装置や光走査読取装置に適用される場合は、発光モジュール100が走査機構に搭載される。そして、発光モジュール100から出射したレーザビームLは多くの場合、小さなスポットに収束させる収束レンズ(
図1および
図3では図示せず)に通される。
【0030】
上記スポットの収束位置は、例えば光走査や加工の精度向上を図って、所定位置に精度良く設定されることが望まれる。そのような収束位置の制御が
図1や
図3中の上下方向に関して望まれる場合は、回転ステージ15を前述した通りに回転させることにより、発光モジュール100から出射するレーザビームLの方位(進行方向)を変化させて、その収束位置を精度良く設定可能となる。なお、上述のようにスポットの収束位置を制御する場合に限らず、発光モジュール100から出射するレーザビームLの方位を変化させること自体が最終的な要求である場合にも、本実施形態の発光モジュール100は勿論対応可能である。
【0031】
ここで、収束されるスポットに関しては、収束位置を所定位置に制御する他に、スポット径を所定値に設定、維持したいという要求も存在する。このスポット径はすなわち、上記収束レンズで絞られたレーザビームLのビームウエスト径であり、収束レンズに入射する前のレーザビームLのビーム径に依存する。したがって、上述のようにしてレーザビームLの方位を変化させても、それに応じてレーザビームLのビーム径が変化してしまうと、上記ビームウエスト径つまりスポット径も変化する。そうであると、スポット径を所定値に設定、維持するための調整が煩雑になるので、それを防ぐためには、レーザビームLの方位を変化させても、そのビーム径は変化しないことが求められる。
【0032】
本実施形態の発光モジュール100は、そのような要求をも満足できるものとなっている。つまりプリズムペアを構成している第1プリズム13および第2プリズム14は、前述した通り、それらを通過するレーザビームLの光路に関して、一方のプリズムでは頂角が位置する側に、他方のプリズムでは底辺が位置している。そこで、回転ステージ15の回転に伴なって第1プリズム13から出射するレーザビームLのビーム径が漸次低下(拡大)する場合は、第2プリズム14から出射するレーザビームLのビーム径が漸次拡大(低下)する。こうして、回転ステージ15の回転に伴なうビーム径の変化が、両プリズム13、14の間で略相殺されるので、結局、第2プリズム14から出射するレーザビームLのビーム径が略一定に保たれる。なお、略一定に保たれるレーザビームLのビーム径は、第1プリズム13および第2プリズム14の相対的な角度位置関係を変えることによって所望値に設定可能である。
【0033】
以下、レーザビームLのビーム径等の細部について、具体例も示して詳しく説明する。本実施形態において、
図1表示の半導体レーザ11から出射されるレーザビームLの発振波長は、505nmである。このレーザビームLは発散光であるが、コリメートレンズ12によって平行光とされる。平行光化されたレーザビームLの
図1の表示面に平行な方向、垂直な方向のビーム径はそれぞれ1.6mm、0.6mmである。なお本実施形態では、
図1の表示面に平行な方向、垂直な方向はそれぞれ半導体レーザ11のファスト軸方向、スロー軸方向である。つまり回転軸Cは、半導体レーザ11のスロー軸と平行な方向に延びている。また、ここで述べるビーム径や後述するビームウエスト径は、1/e
2径で定義したものである。
【0034】
平行光化されたレーザビームLは、次に第1プリズム13に入射して
図1の表示面内で屈折し、該第1プリズム13から出射する。なおプリズム13、14の図示されている2つの頂角はそれぞれ45°で、その母材は石英である。第1プリズム13から出射したレーザビームLは、第2プリズム14に入射し再度屈折して該第2プリズム14から出射するが、その
図1の表示面に平行な方向のビーム径が第1プリズム13に入射する前より縮小されて第2プリズム14から出射する。具体的に、第2プリズム14から出射したレーザビームLの上記方向のビーム径は0.6mmであり、よってビーム径倍率は0.38(=0.6/1.6)倍である。
【0035】
一方、レーザビームLの
図1の表示面に垂直な方向のビーム径は、縮小あるいは拡大されることなく、第1プリズム13に入射する前のビーム径=0.6mmがそのまま維持される。つまり、第2プリズム14を通過した後のレーザビームLは真円ビームであり、このレーザビームLを前述した収束レンズに通して小さなスポットに収束させれば、そのスポットは真円スポットとなる。レーザビームLがプリズム13、14を通過しているとき、回転ステージ15が回転されれば、第2プリズム14から出射するレーザビームLの方位が変化することは前述した通りである。
【0036】
なお、レーザビームLの第1プリズム13への入射角は、レーザビームLの方位調整が完了した状態において一例として12°である。また、第1プリズム13のレーザビームLが入射する端面には、透過率99.5%以上の反射防止膜(ARコート)が施されている。一方、第1プリズム13のレーザビームLが出射する端面はノンコート面である。そのため、この出射端面ではレーザビームLの一部が反射率17%で反射し、反射光は前述した通り光検出器9に導かれる。この光検出器9の出力は、半導体レーザ11の光量モニタに使われる。
【0037】
通常、このような光量モニタを行う場合は、レーザビームLをビームスプリッタで分岐させ、分岐したレーザ光をモニタ光として用いることが多い。それに対して本実施形態では、第1プリズム13の1端面をノンコート面としてレーザビームLを分岐しているので、ビームスプリッタが無い分、低コストでコンパクトな発光モジュールを実現している。このようにして光を分岐させる場合、光ビームを分岐させる端面としては、第1プリズム13のレーザビーム入射端面を用いてもよいし、さらには、第2プリズム14の入射端面あるいは出射端面を用いてもよい。
【0038】
次に、回転ステージ15の回転について詳述する。本実施形態では、回転ステージ15を
図3に示したR方向に±1°回転させると、第2プリズム14から出射するレーザビームLの方位を±2°変えることができる。そこで、その他に何らかの要求条件が無ければ、この±2°の範囲内でレーザビームLの方位を変えて、この方位がベース板1と平行になる状態に調整するのが望ましい。このようにすると、その後の光学系にビーム高さが一定でレーザビームLを伝搬させることができ、光学設計上の扱いが容易となる。あるいは、回転軸Cの向きを
図1の表示状態とは90°変えて設定し、回転ステージ15の回転に伴なってレーザビームLの方位が変わっても、それに拘わらずレーザビームLが常にベース板1に平行に伝搬するようにしてもよい。
【0039】
第2プリズム14から直径0.6mmの真円ビームとして出射するレーザビームLは、上述した通り方位が±2°程度変化し得るものであるが、このレーザビームLはアパーチャ板8を通過する。レーザビームLはアパーチャ板8を通過するが、その際にビームの外周部が若干蹴られる(損失は5~10%程度)。このアパーチャ板8は、後述する戻り光が半導体レーザ11まで戻ることを防止するために設けられている。
【0040】
アパーチャ板8を通過したレーザビームLは、透過率50%のアッテネータ5に入射し、50%のビームは反射して、直径2mm の穴が開いた金属ブロックからなる終端器6で吸収される。アッテネータ5を透過したレーザビームLは、カバー4に取り付けられているアパーチャ板7に入射する。このアパーチャ板7は開口径が1.0mmのもので、そこでのレーザビームLの損失は1%未満である。このアパーチャ板7もアパーチャ板8と同様に、戻り光が半導体レーザ11まで戻ることを防止するために設けられている。
【0041】
ここで、半導体レーザ11の発振波長について、
図1を参照して説明する。本実施形態の発光モジュール100は基本的に、半導体レーザ11をその定格光出力よりも低い光出力で駆動し、そのために見込まれる発振波長の短波長側へのシフトを、半導体レーザ11の温度上昇による長波長側へのシフトで補償して、結果的に発振波長を略一定に維持するようにしている。なお、半導体レーザ11をその定格光出力よりも低い光出力で駆動するのは、主に半導体レーザ11の製品寿命を担保するためである。また、上記の補償は行わないようにして、発振波長を短波長側あるいは長波長側へ大きくシフトさせてもよい。
【0042】
図1に示す半導体レーザ11は一例として、室温範囲内の温度25℃下での定格光出力が80mW、発振波長がセンター波長λcで505.0nm(半値の波長幅Δλ
FWHMの最大波長をλMAX、最小波長をλMINとすると、センター波長λc=(λMAX+λMIN)/2である。以下同様)のものである。そこでこの半導体レーザ11を、先ず設定温度を45℃にして駆動する。
図1の温度調節回路30は、サーミスタ10から入力された温度検出信号に基づいて、設定温度になるようにペルチェ素子2の駆動電流値を変えるものである。具体的に本例における温度調節回路30は、設定温度45℃になるまで駆動電流値を上げ、その後、その温度を維持するためにオートコントロールで駆動電流値を微小増減して、ペルチェ素子2の温度つまりは半導体レーザ11の温度を45℃に一定化する。
【0043】
ここで、半導体レーザ11の発振波長の温度係数つまり温度依存性は、+0.03nm/℃なので、半導体レーザ11を温度45℃にして駆動すると、発振波長は室温例えば25℃で駆動する場合と比較して0.6nm{=(45-25)℃×0.03nm/℃}長波長側にシフトする(
図4参照)。このシフトと補償し合うために半導体レーザ11は、光出力を50mWに下げて使用される。下げる目的は、前述した通り半導体レーザ11の寿命を担保するためと、発振波長を調整するための2つである。
【0044】
図1に示す半導体レーザ駆動回路31は、光検出器9が検出した半導体レーザ11の光出力を示す信号を受けて、この光出力が所望値になるように半導体レーザ11の駆動電流値を制御する。なお半導体レーザ11の光出力は該半導体レーザ11の温度によって変化する。そこで本例では、半導体レーザ11の温度が45℃のとき、半導体レーザ11の光出力が所望値となるようにその駆動電流値が制御される。
【0045】
発振波長の光出力依存性は+0.02nm/mWなので(
図5参照)、半導体レーザ11を光出力50mWで駆動すると、発振波長は光出力80mWで駆動する場合と比較して0.6nm{=(80-50)mW×0.02nm/mW}短長波長側にシフトする。なお、定格光出力80mWが得られる状態で半導体レーザ11を駆動し続ければ、その寿命が短くなってしまう。
【0046】
以上説明した通り本実施形態における発光モジュールの駆動方法によれば、半導体レーザ11をその定格光出力よりも低い光出力で駆動し、そのために見込まれる発振波長の短波長側へのシフトを、半導体レーザ11の温度上昇による長波長側へのシフトで補償して、結果的に発振波長をシフト無し、つまり略一定の505.0nmに維持可能となっている。
【0047】
ちなみに、前記特許文献2に示された半導体レーザ装置では、温度設定を変えることで発振波長と光出力の調整を行う場合、設定温度を変えると結露が生じる場合があり問題となる。通常の製品では、例えば温度と湿度の動作条件が45℃、80%のような過酷な条件でも、動作可能であることが多い。そのため、温度を下げて調整する幅は殆どない。設定温度が41℃以下になると結露が始まり、光学系が機能しなくからである。一方、45℃以上に調整する場合は、半導体レーザは高温になると製品寿命が短くなるので、一般的な製品では、温度によって発振波長制御をすることが実質的に不可能である。例えば、温度25℃、発振波長505±2nm、光出力80mWの仕様の半導体レーザ製品では、光出力20mWで使用する場合、80mWから20mWに光出力を下げるため、発振波長が1.2nm短くなる。
【0048】
そこで、下限の波長503nmの半導体レーザが入荷した場合、半導体レーザを使用するシステムの波長仕様が半導体レーザと同じ505±2nmであったとき、発振波長は501.8nmとなり、システムの波長仕様下限値503nmを下回ってしまう(
図5参照)。つまり発振波長503nmの半導体レーザは使用できないということになる。その結果、半導体レーザの歩留まりが悪くなり、結果として半導体レーザを用いる発光モジュールの価格が高くなるという問題が生じる。
【0049】
次に、レーザビームLの損失も見込んだ光出力について、
図6も参照して説明する。前述したようにして波長が505.0nmに維持された光出力50mWのレーザビームLは、
図6の上段の矢印で示すように、設定温度が25℃から45℃に上げられることにより、前述した通り発振波長が0.6nm長波長側にシフトする。このとき光出力は80mWとされるが、この状態から次に半導体レーザ11が、同図中下段の矢印で示すように光出力50mWで駆動されたとすると、発振波長は0.6nm短波長側にシフトする。
【0050】
次いでレーザビームLが透過率50%のアッテネータ5(
図6ではATTと表記)を透過すると、光出力は25mWに低下する。さらに、第1プリズム13で光検出器9のために分岐したことによる損失、ARコートによる損失、およびアパーチャ板7、8による損失の合計が20%程度有る。その結果、光出力は上記25mWの80%程度である20mW程度となる。こうして、所望している比較的低出力である20mWのレーザビームLを得ることができる。
【0051】
すなわち、
図6中下段の矢印で示す光出力の変化をまとめると、設定温度25℃、光出力80mW、発振波長505.0nmの半導体レーザを、温度45℃で光出力50mWの設定とした上で、透過率50%のアッテネータを挿入し、光学系による損失を20%とすることで、所望している光出力20mWで発振波長505.0nmの発光モジュールを得ることができる。
【0052】
次に、半導体レーザ11を保持する構造について説明する。半導体レーザ11のレーザダイオードチップ11cを金属ステム11a上に実装する構造は、先に
図2の(2)を参照して説明した通りである。このような半導体レーザ11を、
図1に示す発光モジュール100において、コリメートレンズ12と共に筐体3内に保持している代表的な構造を
図7に断面図で示す。なお同図において半導体レーザ11は、そのレーザダイオードチップ11c、金属ステム11aおよびサブマウント11sだけを以て簡略的に示している(
図8および
図11も同様)。また
図7以下の図では、先に説明した
図1~6中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
【0053】
図7に示す構造において、半導体レーザの金属ステム11aはLDホルダー50の基準面に固定され、このLDホルダー50はリング51と一体化されている。そしてこのリング51に、コリメートレンズ12を保持しているレンズホルダー52が取り付けられている。またレーザダイオードチップ11cはサブマウント11sに溶接され、サブマウント11sは金属ステム11aに溶接されている。
【0054】
図7に示す構造の従来例では多くの場合、金属ステム11aが金メッキを施した鉄、LDホルダー50が真鍮、リング51およびレンズホルダー52がSUS(ステンレス鋼)から形成されていた。このような従来例において生じていた問題を、
図8を参照して説明する。同図の(1)に示すように、例えば室温23℃で広がったレーザビームLでコリメートレンズ12とレーザダイオードチップ11cとの間の距離を調整・固定した場合、筐体3内の温度を36℃、45℃と上げると、レーザダイオードチップ11cが載っている金属ステム11aの熱膨張による伸び量に対して、コリメートレンズ12を保持しているリング51およびレンズホルダー52の伸び量が大きくなり、レーザダイオードチップ11cとコリメートレンズ12との間の距離が増大する(同図の(2)、(3)参照)。こうして、初期の温度23℃では広がっていたレーザビームLが、温度36℃では平行ビームになり、温度45℃では収束ビーム状となるように変化して行く。
【0055】
このときの具体的なビーム伝搬データを
図9に例示する。横軸はレーザビームLのコリメートレンズ12からの伝搬距離(先端をゼロとして100mm刻みで示す)であり、縦軸は各伝搬距離におけるビーム径を示す。そして(1)に半導体レーザ11のスロー(Slow)軸方向のビーム径を、(2)にファスト(Fast)軸方向のビーム径を示す。半導体レーザ11のファスト軸方向のビーム径は、レーザダイオードチップ11cの特性に起因して温度依存性が大きく、変化が大きい。つまり、半導体レーザ11からの出射光は、ファスト軸方向には拡がり角が大きく、上記伝搬距離の変化に対するビーム径の変化が、スロー軸方向と比べてより敏感だからである。そのため、半導体レーザ11の設定温度を45℃にした場合は、ビーム径が一方向に大きく変化してしまい、良好なコリメートビームが得られないという問題が認められる。
【0056】
なお、
図9に示すビーム伝搬データは、一例として発振波長が505nm、光出力が80mWの半導体レーザ11を用いた場合のものである。また、α真鍮:真鍮の線膨張係数、αSUS:SUSの線膨張係数、α鉄:鉄の線膨張係、L真鍮:LDホルダー50の厚さ、L鉄:
図7表示の基準面からの金属ステム11aの長さ、LSUS:リング51とレンズホルダー52の長さとすると、温度が23℃から45℃に変化したときのレーザダイオードチップ11cとコリメートレンズ12との間の距離の変化ΔLは、下記式による計算で0.7μmとなる。
ΔL=(α真鍮×L真鍮+αSUS×LSUS)-α鉄×L鉄=0.7μm
【0057】
それに対して本実施形態では、リング51とレンズホルダー52を形状は上記従来例と同じとしたまま、材料をインバー(登録商標)に変更した。その構成として、コリメートレンズ12によりレーザビームLを平行光化したところ、温度が23℃と45℃との間で、ビーム伝搬の状態がほぼ同様となる。つまり、
図10の(1)、(2)において、例えば23℃での測定点と45℃での測定点が一致する等、双方のグラフがほぼ重なっている。
【0058】
この場合の実際のビーム伝搬データを、
図10の(1)、(2)に示す。この
図10における表示の仕方は、前述した
図9における表示の仕方と同じである。従来例では変化の大きかったファスト軸方向のビーム径も、本実施形態では温度23℃と45℃とでビーム径はほぼ変わらず、双方の場合とも良好に平行光化されていることが分かる。このときのレーザダイオードチップ11cとコリメートレンズ12との間の距離の変化ΔLは、下記式による計算で0.3μmとなる。なおαインバーはインバーの線膨張係数であり、0.5×10
-6/Kを用いた
ΔL=(α真鍮×L真鍮+αインバー×Lインバー)-α鉄×L鉄=0.3μm
【0059】
以上の結果は、
図11に示すようにレーザダイオードチップ11cとコリメートレンズ12との間の距離が、温度変化が有っても変化しなかったためであると推察できる。実際のビーム伝搬データは、
図10に示した通りであり、23℃と45℃におけるデータが綺麗に一致している。計算では上記の通り0.3μmの距離変化Δが有る筈であるが、この計算との差異は、レーザダイオードチップ11cの発熱により、その直下の金属ステム11aがビーム伝搬方向に伸びて、レーザダイオードチップ11cとコリメートレンズ12との間の距離が相対的に縮まったことに起因すると考えられる。
【0060】
他方、前述したようにして発生した反射光LR(
図1中で1点鎖線表示)は、半導体レーザ11から分析装置等へ向かうレーザビームLの光路周辺に戻って来る。この反射光LRはコリメートレンズ12に前述した場合とは逆方向に入射し、半導体レーザ11の活性層付近に集光され、活性層に再吸収されて発振に影響を及ぼす。この僅かな量の戻り光により、半導体レーザ11の発振波長が変化することが知られている。ラマン散乱分光、蛍光分析等において、励起光源として半導体レーザを用いて精密測定する場合、半導体レーザの僅かな発振波長変化に応じて、ラマン散乱強度が変化したり、蛍光強度が変化したりする問題を招くことがある。
【0061】
アパーチャ板7、8は、この問題を防止するために配置されている。上記戻り光のうち、使用位置に向かって進行するレーザビームLと全く同じ光路を逆向きに辿る成分は、確率的に稀であり非常に少ない量である。そこで、2枚のアパーチャ板7、8を互いに異なる2カ所に配置することで、使用位置に向かって進行するレーザビームLとは異なる角度の周辺の戻り光成分を概ねカットすることができる。戻り光を良好に遮断するためには、1枚のアパーチャ板では不十分で、最低2カ所に配置することが必要であり、3カ所に配置されても構わない。例えば、コリメートレンズ12の直後に1カ所を設けても良い。複数の配置箇所間の距離が離れているほど、戻り光遮断の効果は高くなる。また、アパーチャ板8の開口径は、0.8mm以外に0.5、0.6、0.7、0.9、1.0mm等であっても構わない。使用位置に向かって進行するレーザビームLのビーム径=0.6に対してより小さい開口径にする程レーザビームLの損失が高くなるが、戻り光遮断効果はより高くなる。アパーチャ板7についても同様であり、その開口径は0.8mm、1.2mm等であっても構わない。
【0062】
なお本実施形態ではビーム変換ユニットにより、レーザビームLのビーム径を一方向について縮小しているが、それとは逆に一方向について拡大してもよい。さらにはビーム径を、一方向については縮小すると共に、この一方向に垂直な他方向については拡大するようにしてもよい。また本実施形態では、レーザビームLを真円ビーム化するためにそのビーム径を一方向について縮小しているが、レーザビームLを楕円ビーム化するためにそのビーム径を一方向について縮小あるいは拡大してもよい。
【0063】
<第2の実施形態>
図12は本発明の第2実施形態による発光モジュール200を示すものであり、そのビーム変換ユニットの部分を抜き出して(a)、(b)にそれぞれ概略側面形状、概略平面形状を示している。本実施形態の発光モジュール200は、レーザビームLの方位を変えるビーム変換ユニットを2つ設け、各ビーム変換ユニットによりレーザビームLの方位を、互いに90°ずれた方向に変えるようにしたものである。この発光モジュール200においても光源として、1つの半導体レーザ11が適用されており、
図13にはこの半導体レーザ11の、より詳しくはそのレーザダイオードチップ11cの概略斜視形状を示している。レーザダイオードチップ11cは、一例として波長488nmのレーザビームLを発する出力60mWのものである。
【0064】
図13に示されている通りレーザダイオードチップ11cは、活性層11Aから出射端面11B側にレーザビームLを発散光状態で発する。レーザビームLは、活性層11Aと平行なスロー(Slow)軸方向には発散角θ//で、活性層11Aに垂直な方向、つまり層の重なり方向であるファスト(Fast)軸方向には発散角θ⊥でレーザビームLを発する。なおθ//<θ⊥で、通常後者は前者の2~3倍程度である。
図12の(a)、(b)にそれぞれ示した側面形状、平面形状は、上記出射端面11Bにおけるスロー軸方向を矢印Sで、ファスト軸方向を矢印Fで示すように、各々それらの軸に対して垂直な方向から発光モジュール200を見た状態を示している。
【0065】
本実施形態の発光モジュール200は
図12に示す通り、フローサイトメータに適用されるものである。フローサイトメータは、ガラス製キャピラリー等からなる微細な管路20を有し、この管路20において、検体としての複数の粒子21を管路長さ方向に一列に整列させて流通させる。そしてフローサイトメータは、これらの粒子21に対して流れの側方側からレーザビームLを照射し、それにより生じた散乱光(前方散乱光や側方散乱光)または蛍光を光検出器で検出して電気信号を得、この電気信号に基づいて1つまたは集団としての粒子21を測定、分析する。本実施形態による発光モジュール200は、管路20内を流れる粒子21に上述のようにレーザビームLを照射するために用いられたものである。
【0066】
図12に示されるように本実施形態の発光モジュール200は、半導体レーザ11から発散光状態で発せられたレーザビームLを平行光にするコリメートレンズ12と、平行光とされたレーザビームLを順次通過させるプリズム13、14、16、17と、プリズム17から出射したレーザビームLを管路20中で収束させる収束レンズ19とを有している。なお、コリメートレンズ12は、非球面レンズを用いている。球面レンズに比べて非球面レンズは、よりガウスビームに近いビームが得られるので、より効果的にダブルカウントを防止できる。
【0067】
プリズム13および14は、矢印R方向に回転され得る回転ステージ15の上に固定されて、プリズムペアを構成している。プリズム16および17も同様に、矢印R方向に回転され得る回転ステージ18の上に固定されて、プリズムペアを構成している。プリズム13および14からなるプリズムペアは、回転ステージ15と共に第1ビーム変換ユニットを構成している。プリズム16および17からなるプリズムペアは、回転ステージ18と共に第2ビーム変換ユニットを構成している。それらのビーム変換ユニットは、レーザビームLを偏向する(方位を変える)機能を有する。また、プリズムペアを構成する各プリズムによってレーザビームLのビーム径を変える機能も有するが、プリズムペアに入射する前と出射した後とで比較すれば、このビーム径は殆ど変化しないことは前述した通りである。
【0068】
より詳しく説明すれば、プリズム13および14からなるプリズムペアは、コリメートレンズ12で平行光とされたレーザビームLを、スロー軸方向のビーム径dsはそのまま維持し、ファスト軸方向のビーム径dfは縮小して出射させる。またプリズム13および14からなるプリズムペアはレーザビームLを、ファスト軸を含む面内での進行方向(方位)を変えるように偏向して出射させる。
【0069】
一方、プリズム16および17からなるプリズムペアは、コリメートレンズ12を通過した後のスロー軸方向のビーム径dsがそのまま維持されてプリズム14から出射したレーザビームLを、スロー軸方向のビーム径を拡大し、ファスト軸方向のビーム径はそのまま維持して出射させる。またプリズム16および17からなるプリズムペアはレーザビームLを、スロー軸を含む面内での進行方向(方位)を変えるように偏向して出射させる。
【0070】
プリズム13、14、16および17は、それぞれ頂角が45°のものである。これらのプリズム13、14、16および17としては、例えば光学ガラスBK7からなるものを好適に用いることができるが、溶融石英等のその他の材料からなるものも適用可能である。
【0071】
プリズム17から出射した後、収束レンズ19により管路20中で収束したレーザビームLは、管路20において管路長さ方向に一列に整列して流れている複数の粒子21を照射する。それにより生じた散乱光(前方散乱光や側方散乱光)あるいは蛍光は、図示外の光検出器で検出される。フローサイトメータは、このとき光検出器が出力する電気的な検出信号に基づいて、1つまたは集団としての粒子21を測定、分析する。
【0072】
本実施形態のフローサイトメータ用レーザ発光モジュール200において、管路20中で収束するレーザビームLは、
図12の(a)に明示されるように、管路20の長さ方向(粒子21の流れ方向)とスロー軸とが揃う状態にして管路20内に照射される。それによりフローサイトメータにおいては、1つの粒子21をダブルカウントしてしまうことが防止される。以下、その点について詳しく説明する。
【0073】
管路20の中で流れ方向に一列に整列して流通している粒子21をダブルカウントしないためには、管路20の中の収束位置におけるレーザビームLのビームウエスト径が、流れ方向には十分小さいことが必要である。そうでないと、2個の粒子21が相近接して流れて来た際に、1個としてカウントしてしまうからである。それに対して、上記流れ方向に垂直な方向のビームウエスト径は、粒子21にレーザビームLが当たらないでカウント漏れが生じることを防止するために、ある程度大きいことが求められる。例えば、生体微小粒子を検体とする多くのフローサイトメータにおいては、前者のビームウエスト径は10μm以下程度、後者のビームウエスト径は60~100μm以上程度であることが求められる。
【0074】
他方、収束レンズ19によりレーザビームLを収束させる場合、上記ビームウエスト径は、収束レンズ19に入射する前のビーム径が大であるほど小さくなる。具体的に、波長λのレーザビームを焦点距離fのレンズで絞ったときのビーム径2ωは、2ω=4/π・fλ/Dとなる。
【0075】
以上のことに鑑みれば、前述した
図13から分かる通り、上記収束前のレーザビームLを、ファスト軸が粒子流れ方向と揃う状態に配するのが、光学系を簡素化できて望ましいことになる。しかし本発明者の研究によると、レーザビームのファスト軸方向のビームプロファイルはコブ等の乱れを持ったものとなり易く、それがダブルカウント発生につながっていることが判明した。
【0076】
このファスト軸方向のビームプロファイル例を、
図14に示す。同図(a)~(d)において横軸はファスト軸方向位置を示し、縦軸はビーム強度Iを示す。同図の(a)は理想的なガウスビーム状のビームプロファイルを示している。それに対して(b)、(c)、(d)はそれぞれ、プロファイル中央部を挟んで二つのコブが生じているビームプロファイルを、プロファイル端部にショルダーが生じているビームプロファイルを、プロファイル端部に1つのコブが生じているビームプロファイルを示している。
【0077】
このように、粒子21の流れ方向に沿ったレーザビームLのビームプロファイルにコブ等の乱れが生じていると、前述した散乱光や蛍光を検出する検出器の検出信号が、その乱れに起因して変動してしまう。そしてその変動が、実在しない粒子21に由来するものとして捕えられ、ダブルカウントを招いてしまうのである。例えばレーザビームLのビームプロファイルに2つのコブが生じている場合は、1つの粒子21を2つと判定することがある。このようなダブルカウントは、レーザビームLの本来のビーム強度Iに対して1~2%程度の強度のコブが生じている場合でも発生する。
【0078】
以上の知見に基づいて本実施形態では、プリズム13および14からなる第1ビーム変換ユニットおよび、プリズム16および17からなる第2ビーム変換ユニットにより、レーザビームLを、管路20中で管路長さ方向(粒子流れ方向)にスロー軸方向が揃う状態にしている。そこで、ファスト軸方向のビームプロファイルがコブ等の乱れを生じていることに起因するダブルカウントを防止可能となる。
【0079】
また本実施形態では、コリメートレンズ12によって平行光とされたレーザビームLを、上記第1ビーム変換ユニットおよび第2ビーム変換ユニットにより、ファスト軸方向にはビーム径を縮小しスロー軸方向にはビーム径を拡大した上で、収束レンズ19に通して管路20中で収束させている。具体的にスロー軸方向に関しては、コリメートレンズ12を通過後のレーザビームLのビーム径ds=0.56mmであり、このレーザビームLを入射角α=56°でプリズム16に入射させて、プリズム17からビーム径3mmにして出射させている(拡大率Ms=5.4)。なお、コリメートレンズ12を通過後のレーザビームLは、スロー軸方向に関しては第1ビーム変換ユニットに垂直入射しているから、該第1ビーム変換ユニットにおいて上記ビーム径ds=0.56mmは本質的にそのまま維持される。
【0080】
一方ファスト軸方向に関しては、コリメートレンズ12を通過後のレーザビームLのビーム径df=1.4mmであり、このレーザビームLを入射角β=23°でプリズム13に入射させて、プリズム14からビーム径0.5mmにして出射させている(拡大率Ms=0.36)。なお、プリズム14を通過後のレーザビームLは、ファスト軸方向に関しては上記第2ビーム変換ユニットに垂直入射しているから、該第2ビーム変換ユニットにおいて上記ビーム径=0.5mmは本質的にそのまま維持される。
【0081】
つまり、焦点距離f=50mmである収束レンズ19に入射する前のレーザビームLは、そのビーム径がスロー軸方向には3mm、ファスト軸方向にはそれより小さい0.5mmとなっている。それにより、収束レンズ19によって絞られた後のレーザビームLの、管路20中の収束位置におけるビームウエスト径を、スロー軸方向には比較的小さい10μmとし、ファスト軸方向には比較的大きい60μmとしている。
【0082】
以上の通り本実施形態では、収束位置でのファスト軸方向のビームウエスト径を前述した60~100μm以上程度とし、スロー軸方向のビームウエスト径を前述した10μm以下程度とすることが容易に実現されている。そして、このような効果を奏し、また前述した通りダブルカウントを防止できる第1ビーム変換ユニットおよび第2ビーム変換ユニットは、それぞれ簡単なプリズムペアからなるものであるので、本実施形態においては光学系の設計、製造および調整も容易で、そのコストも低く抑えられる。
【0083】
光源として半導体レーザ以外のガスレーザ等が適用されて、ビーム断面形状がほぼ正円のレーザビームを管路20中で収束させる場合は、例えばシリンドリカルレンズを用いてレーザビームを絞ることにより、粒子流れ方向とそれに垂直な方向とでビームウエスト径を変えることも考えられる。しかし、シリンドリカルレンズは加工が困難で高価な上、使用に当たっては複雑な調整も必要となる。
【0084】
なお本実施形態において、第2ビーム変換ユニットとしてのプリズムペア(プリズム16および17)は回転ステージ18の上に固定されているので、回転ステージ18を回転軸C2の周りに矢印R方向に回転させることにより、この第2ビーム変換ユニットから出射するレーザビームLをスロー軸方向に偏向可能となっている。同様に第1ビーム変換ユニットとしてのプリズムペア(プリズム13および14)は回転ステージ15の上に固定されているので、回転ステージ15を回転軸C1の周りに矢印R方向に回転させることにより、この第1ビーム変換ユニットから出射するレーザビームLをファスト軸方向に偏向可能となっている。
【0085】
本実施形態では具体的に、回転ステージ18を矢印R方向に±1°回転させることにより、第2ビーム変換ユニットから出射するレーザビームLの方位が±0.2°変化するように、レーザビームLをスロー軸方向に偏向可能である。これは、回転ステージ15の回転量と、ファスト軸方向の偏向におけるレーザビームLの方位に関しても同様である(第1実施形態の
図3参照)。
【0086】
上記のようにレーザビームLをファスト軸方向に偏向させることにより、レーザビームLを、管路20の中心位置で収束するように調整することができる。また、レーザビームLをスロー軸方向に偏向させることにより、レーザビームLの粒子流れ方向の収束位置を調整することができる。以上の通りレーザビームLの収束位置を、粒子21の流れ方向についても、また、この方向を横切る方向についても調整可能とすることにより、粒子21に由来する散乱光や蛍光を高強度のものとすることができる。そこで、それらの光を検出する光検出器からの検出信号も高強度化できるので、フローサイトメータの個体間の信号バラツキも無くして、信頼性の高い検出信号を得ることが可能となる。なおレーザビームLを、スロー軸方向とファスト軸方向のいずれか一方向だけに偏向可能としてもよい。
【0087】
また、この第2実施形態による発光モジュール200においても、第1実施形態で採用した半導体レーザ11の発振波長を制御する駆動方法を実施可能である。その点は、以下で説明する第3実施形態および第4実施形態においても同様である。
【0088】
<第3の実施形態>
次に
図15を参照して、本発明の第3実施形態による発光モジュールについて説明する。この第3の実施形態の発光モジュールは、レーザ加工装置において加工用光源として用いられるものである。この発光モジュールの構成は、
図12に示したフローサイトメータ用レーザ発光モジュール200の構成と同じであるが、レーザビームLを照射する対象は
図12に示した管路20ではなく、微細加工をするレーザ加工装置の加工部分である。
【0089】
このレーザ加工装置は、加工部分に対してレーザビームLを2次元走査させて微細加工を施す。
図15には加工部分の中の部分的な加工領域をApとして示すが、この加工領域Apに対してレーザビームLが、各々太い矢印X、Yで示す主走査方向および副走査方向に走査される。なお同図ではレーザビームLを、そのビームプロファイルによって概略的に示している。また同図の(a)、(b)に示す矢印F、SはそれぞれレーザビームLのファスト軸方向、スロー軸方向を示している。
【0090】
ある種のレーザ加工装置においては、同図(a)に示すようにファスト軸が主走査方向Xと揃う状態にして微細加工を行うと、副走査方向Yの走査の開始時に加工領域Apの一辺にダレが生じることがある。このダレは副走査の進行に伴って、図中Gで示すような線状の誤加工部となる。以上の不具合は、本発明者の研究によると、レーザビームLのファスト軸方向のビームプロファイルに前述のコブが有ることに起因すると考えられる。なぜなら、同図(b)に示すようにスロー軸が主走査方向Xと揃う状態にして微細加工を行えば、その不具合は発生しないからである。
【0091】
そこで本実施形態においては、
図12に示したプリズム13および14からなるプリズムペアを含む第1ビーム変換ユニット、および、プリズム16および17からなるプリズムペアを含む第2ビーム変換ユニットにより、スロー軸が主走査方向Xと揃う状態になり、かつ照射ビーム径が主走査方向Xに十分小となるように(つまり収束レンズ19に入射する前のビーム径が十分大となるように)レーザビームLの向きとビーム径を設定する。それにより、上述した不具合の発生を防止可能となる。
【0092】
<第4の実施形態>
次に
図16を参照して、本発明の第4実施形態による発光モジュールについて説明する。この第4の実施形態の発光モジュールは、記録装置において記録用光源として用いられるものである。この発光モジュールの構成は、
図12に示したフローサイトメータ用レーザ発光モジュール200の構成と同じであるが、レーザビームLを照射する対象は
図12に示した管路20ではなく、情報を担持させるためのピットが形成される光ディスク等の記録媒体である。
【0093】
この記録媒体にピットを形成する記録装置は、発光モジュールから発せられたレーザビームLを記録媒体表面に2次元走査させてピットを形成する。すなわち
図16に概略的に示すように記録媒体表面に対してレーザビームLが、各々太い矢印X、Yで示す主走査方向および副走査方向に走査される。なお同図ではレーザビームLを、そのビームプロファイルによって概略的に示している。また同図に示す矢印Fは、レーザビームLのファスト軸方向を示している。
【0094】
ある種の記録媒体においては、同図に示すようにファスト軸が主走査方向Xと揃う状態にしてピットPを形成すると、ピットPに対して走査方向の後方側に余計な部分的ピットPfが形成されることがある。この部分的ピットPfは、記録媒体から正しいピットPを読み取る際に読取りエラーを招くこともある。本発明者の研究によると、部分的ピットPfの形成は、レーザビームLのファスト軸方向のビームプロファイルに前述のコブが有ることに起因すると考えられる。なぜなら、スロー軸が主走査方向Xと揃う状態にしてピットPを形成すれば、部分的ピットPfは形成されないからである。
【0095】
そこで本実施形態においては、
図12に示したプリズム13および14からなるプリズムペアを含む第1ビーム変換ユニット、および、プリズム16および17からなるプリズムペアを含む第2ビーム変換ユニットにより、スロー軸が主走査方向Xと揃う状態になり、かつ照射ビーム径が主走査方向Xに十分小となるように(つまり収束レンズ19に入射する前のビーム径が十分大となるように)レーザビームLの向きとビーム径を設定する。それにより、上述した部分的ピットPfの発生を防止可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 ベース板
2 ペルチェ素子
3 筐体
4 カバー
5 アッテネータ
6 終端器
7、8 アパーチャ板
9 光検出器
10 サーミスタ
11 半導体レーザ
12 コリメートレンズ
13、16 第1プリズム
14、17 第2プリズム
15、18 回転ステージ
19 収束レンズ
20 管路
21 粒子
30 温度調節回路
31 半導体レーザ駆動回路
50 LDホルダー
51 リング
52 レンズホルダー
L レーザビーム
LR 反射光
100、200 発光モジュール