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特許7490728使い捨ての酸素低減キット、器具及びそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】使い捨ての酸素低減キット、器具及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A61J1/05 313Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022157352
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2020144595の分割
【原出願日】2016-03-10
(65)【公開番号】P2022173474
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】62/131,130
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507318956
【氏名又は名称】ヘマネクスト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サリタ ジャンカルロ
(72)【発明者】
【氏名】サットン ジェフリー カール
(72)【発明者】
【氏名】コルデーロ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ゾッキ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キーガン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】レンガナタン ナレンドラン
(72)【発明者】
【氏名】ハーヘン ロバート
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/134503(WO,A1)
【文献】特開昭62-221352(JP,A)
【文献】特開昭57-003652(JP,A)
【文献】米国特許第03489647(US,A)
【文献】米国特許第06162396(US,A)
【文献】特開2012-187327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から酸素を枯渇させ、かつ酸素を枯渇させた血液を保存するための、酸素低減保存システムであって、前記システムが、
-血液から酸素を枯渇させるための酸素枯渇構成要素と、
-酸素を枯渇させた血液を保存するための嫌気性血液保存構成要素と、
を含み、
前記酸素枯渇構成要素が、
・酸素不透過性である第1の外側容器と、
・酸素透過性である1以上のチャンバーを備える、第1の折り畳み可能な内側の血液容器と、
・少なくとも1つの注入口/排出口を有する第1のセットであって、少なくとも1つの注入口/排出口を有する前記第1のセットの各注入口/排出口が、前記第1の外側容器を貫通しており、かつ前記第1の折り畳み可能な内側の血液容器に連結している第1のチューブを含み、第1の接合部が、前記少なくとも1つの注入口/排出口を有する第1のセットを前記第1の外側容器へ接合し及び前記第1の外側容器への前記第1の接合部が酸素不透過性である、前記第1のセットと、
第1の酸素吸収剤と、
・前記第1の外側容器と前記第1の折り畳み可能な内側の血液容器との間に置かれた第1のメッシュスペーサーであって、前記第1のメッシュスペーサーが少なくとも1つの第1の開口区域を含かつ、前記第1の外側容器と前記第1の折り畳み可能な内側の血液容器とにより画定される第1のヘッドスペースを維持し、前記少なくとも1つの第1の開口区域が、前記第1のメッシュスペーサーのメッシュ材料の総面積の50~80%を占め、前記第1のヘッドスペースが10~500ミリリットル(mL)の容積を有し、前記第1の酸素吸収剤が前記第1のヘッドスペース内に設置されており、前記第1のヘッドスペースにより、前記第1の折り畳み可能な内側の血液容器の表面から、前記第1の酸素吸収剤への酸素の効率的拡散を確保する、前記スペーサーと、
を備え、
前記嫌気性血液保存構成要素が、
・酸素不透過性である第2の外側容器と、
第2の折り畳み可能な内側の血液容器と、
・少なくとも1つの注入口/排出口を有する第2のセットであって、少なくとも1つの注入口/排出口を有する前記第2のセットの各注入口/排出口が、前記第2の外側容器を貫通しており、かつ前記第2の折り畳み可能な内側の血液容器に連結している第2のチューブを含み、第2の接合部が、前記少なくとも1つの注入口/排出口を有する第2のセットを前記第2の外側容器へ接合し及び前記第2の外側容器への前記第2の接合部が酸素不透過性である、前記第2のセットと、
第2の酸素吸収剤と、
・前記第2の外側容器と前記第2の折り畳み可能な内側の血液容器との間に置かれた第2のメッシュスペーサーであって、前記第2のメッシュスペーサーが少なくとも1つの第2の開口区域を含かつ前記第2の外側容器と前記第2の折り畳み可能な内側の血液容器とにより画定される第2のヘッドスペースを維持し、前記少なくとも1つの第2の開口区域が、前記第2のメッシュスペーサーのメッシュ材料の総面積の50~80%を占め、前記第2のヘッドスペースが10~500ミリリットル(mL)の容積を有し、前記第2の酸素吸収剤が前記第2のヘッドスペース内に設置されており、前記第2のヘッドスペースにより、前記第2の折り畳み可能な内側の血液容器の表面から、前記第2の酸素吸収剤への酸素の効率的拡散を確保する、前記スペーサーと、
を備える、前記システム。
【請求項2】
さらに、静脈針と、抗凝固液を含む採血バッグとを備える、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項3】
さらに、前記静脈針を前記採血バッグに連結し、前記採血バッグを前記酸素枯渇構成要素に連結し、前記酸素枯渇構成要素を前記嫌気性血液保存構成要素に連結するのに十分なチューブを備える、請求項2に記載の酸素低減保存システム。
【請求項4】
使い捨てである、請求項1~3のいずれか1項記載の酸素低減保存システム。
【請求項5】
さらに、酸素インジケーターを備え、前記酸素インジケーターが存在する酸素の量の表示を提供する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項6】
前記嫌気性血液保存構成要素がさらに酸素インジケーターを備え、前記酸素インジケーターが存在する酸素の量の表示を提供する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項7】
前記第1のチューブが、酸素不透過性の多層チューブであるか、前記第2のチューブが酸素不透過性の多層チューブであるか、前記第1のチューブが、酸素不透過性の多層チューブであり、かつ、前記第2のチューブが酸素不透過性の多層チューブである、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項8】
前記第2の外側容器の形状内で、前記第2の折り畳み可能な内側の血液容器の位置を調節するように適合された位置決め機構をさらに備え、前記位置決め機構が、幾何学的な切除部、触知的な表面マーク、ダイカット基準マーク、スペーサー、嵌合型切除部及び印刷マークからなる群から選択される、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項9】
前記第1の酸素吸収剤は、標準温度及び圧力において、少なくとも100立方センチメートル(c.c.)の酸素結合能を有し;及び
前記第2の酸素吸収剤は、標準的な温度及び圧力において、少なくとも60立方センチメートルの酸素結合能を有する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項10】
前記第1の酸素吸収剤が、さらに二酸化炭素吸収剤を含む、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項11】
前記第1の酸素吸収剤が、前記第1のヘッドスペース内に配置された小袋内に位置する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項12】
前記第2の酸素吸収剤が、さらに二酸化炭素吸収剤を含む、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項13】
前記第2の酸素吸収剤が、前記第2のヘッドスペース内に配置された小袋内に配置されている、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項14】
前記第1及び第2の折り畳み可能な内側の血液容器の各々が、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)微多孔質膜、ポリスルホン微多孔質膜、ポリオレフィン微多孔質膜、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔質膜からなる群から選択される微多孔質膜を備える、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項15】
前記折り畳み可能な内側の血液容器内の前記酸素枯渇血液が、最大64日間の保存期間中、15ミリメートル水銀柱(mmHg)未満の酸素分圧(PO2)を維持する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項16】
前記第1及び第2のヘッドスペースの各々が、20~400ミリリットル(mL)の容積を有する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1の開口区域が、前記第1のメッシュスペーサーの前記メッシュ材料の総面積の60%~75%を構成する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項18】
前記少なくとも一つの第2の開口区域が、前記第2のメッシュスペーサーの前記メッシュ材料の総面積の60%~75%を構成する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1の開口区域が、0.75平方ミリメートル(mm2)より大きい全開口区域面積を有する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第2の開口区域は、0.75平方ミリメートル(mm2)より大きい全開口区域面積を有する、請求項1に記載の酸素低減保存システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年3月10日に出願された米国特許仮出願第62/131,130号に基づく利益を主張し、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、全血及び血液成分の保存性を向上させるための使い捨ての酸素低減キット(ORDKit)、器具及び方法に関する。より詳細には、本開示は、血液及び血液成分を採取して、酸素レベルの低下した全血及び血液成分をもたらすための改善型の器具と方法に関する。本開示の方法、器具及びキットは、輸血用の血液及び血液成分の質を向上させるとともに、患者の安全と転帰を向上させる。
【背景技術】
【0003】
現在、血液及び血液成分の供給量は、従来の血液保存作業で用いられている保存システムによって制限されている。現在のシステムを用いると、保存されている血液は、濃厚血液細胞製剤として、約42日の期間、冷凍温度を上回る温度(すなわち4℃)で冷蔵保存後、保存期間が終了する。例えば、世界では、毎年、1億ユニットを超える血液が採取及び保存されているとWorld Health Organization(WHO)は推定している。American Association of Blood Bankersによれば、米国のみにおいては、2013年に、1,360万ユニットの赤血球(RBC)が採取された。冷蔵保存中、RBCは、保存損傷によって、次第に損傷する。現在の6週間の期限で輸血すると、保存したRBCは、品質が低下しているとともに、毒性を持つ可能性があり、これらは、輸血療法の副作用として現れることがある。観察される保存損傷には、保存されている赤血球と関連する、生化学パラメーターと物理パラメーターの変化がある。これらの変化の例としては、代謝物レベル(アデノシン三リン酸(ATP)及び2,3ジホスホグリセレート(2,3-DPG))の低下、無細胞鉄レベルの上昇、溶血、微粒子レベルの上昇、表面積の縮小、棘状赤血球症、ホスファチジルセリン暴露及び変形能の低下など、インビトロで測定されるパラメーターが挙げられる。保存期間が終了した血液は、最終的な受血者に危害を及ぼすことがあるので、使用することができず、破棄しなければならない。これらの理由及びその他の理由により、輸血に必要とされる容易に利用可能な高品質な血液量は限られている。
【0004】
従来の方法で保存すると、保存血液は、溶血、ヘモグロビンの分解、ATPの減少及び2,3-DPG濃度の低下と関連する着実な劣化を起こす。患者に輸血すると、保存中の着実な劣化の影響が、例えば、24時間でのインビボ回復の低下として現れる。長期間、従来の条件で保存した赤血球は劣化し、最大25%が、輸血後すぐに、受血者の身体によって除去されることがある。長期にわたり輸血を行った患者においては、非生存RBCが原因で、鉄過剰が起きる。2,3-DPGの喪失により、RBC中のヘモグロビンは、組織において、酸素を効率的には放出しない。RBCは、変形能の喪失により、毛細血管床に入って灌流することができない。輸血した血液の保存損傷により、肺、心臓、腎臓、肝臓及び中枢神経系などにおいて、大きな臓器不全が起こり得る。輸血した血液の保存損傷は、罹患率の上昇と関連することもある。
【0005】
従来の条件で、長期間保存したRBCを輸血すると、「新しい」赤血球を輸血するのと比べて、罹患率が高くなり、入院日数が長くなり得る。新しい赤血球と比べて、罹患率が高くなり、入院日数が長くなるのは、3週間を超えて保存されているRBCによる結果である。例えば、「古い」血液を使用すると、心臓手術の臨床転帰が不良となり、術後の患者における多臓器不全は、輸血した赤血球の採血日からの経過期間と関係しており、古いユニットと、重症敗血症における死亡率の上昇との間には、相関関係があり、O2消費量の改善が実現されない原因は、2,3-DPGの減少にあり、心係数の低下は、血液粘性の上昇と関係がある。
【0006】
RBCの保存損傷の影響としては、受血者によって、特定のRBCが即座に除去されることに加えて、(i)ATPの枯渇(RBCが毛細血管前細動脈を拡張する能力の喪失)、(ii)2,3-DPGの枯渇、(iii)変性ヘモグロビンがO2と反応することによって形成される活性酸素種(ROS)を原因とする酸化傷害の蓄積及び(iv)膜と細胞骨格の酸化傷害を部分的な原因とする、RBC変形能の低下と、RBC粘度の上昇が挙げられる。変形能の低下したRBCは、毛細血管路から排出され、その結果、毛細血管占有率が低くなり、組織灌流が低下する。また、変形能の低下した細胞を大量に輸血すると、器官の毛細血管床を塞ぐことによって、多臓器不全の一因となることがある。輸血後、2,3-DPGは、比較的速やかにインビボで合成され、ほんの7時間で、正常レベルの約50%まで合成され、2~3日で、正常レベルの約95%まで合成される。しかしながら、2,3-DPG枯渇細胞は、2,3-DPGのレベルをすぐには回復しないので、迅速なO2供給と組織灌流が必要な重篤患者に害が及ぶほどまで、O2運搬能が損なわれる。このような臨床状況における、酸素運搬能の高いRBCの重要性を説く報告が数多く存在する。
【0007】
赤血球(RBC)の輸血は、重度の貧血患者において、組織と重要な末端器官の酸素供給を改善することを目的とする救命療法である。輸血に用いるRBCユニットの大半は、添加液/保存液の入った酸素透過性のポリ塩化ビニル製血液バッグに、1~6℃で、最長42日間保存される。
【0008】
凍結血液の保存は、当該技術分野において知られているが、このような凍結血液には制限がある。長年にわたり、血液バンクと軍隊は、特定の高需要で希少な血液型に関しては、凍結血液を使用している。しかしながら、凍結血液は、扱いが難しい。解凍する必要があり、凍結保護剤を徐々に洗い流さなければならず、このため、緊急の場合には、実用的でない。血液を解凍したら、48時間以内に使用しなければならない。Serebrennikovの米国特許第6,413,713号は、0℃未満の温度で血液を保存する方法に対するものである。
【0009】
Hamasakiらの米国特許第4,769,318号と、Sasakawaらの米国特許第4,880,786号は、血液の保存及び活性化用添加液を対象とする。Bitenskyらの米国特許第5,624,794号、Bitenskyらの米国特許第6,162,396号及びBitenskyの米国特許第5,476,764号は、酸素枯渇条件下での赤血球の保存を対象とする。Bitenskyらの米国特許第5,789,151号は、血液保存添加液を対象とする。例えば、冷蔵(すなわち4℃)後、輸血の直前に、または長期間保存するために凍結する(すなわち、-80℃でグリセロールとともに凍結する)前に、Rejuvesol(マサチューセッツ州ブレーントリーのCitra Lab LLCから入手可能)を血液に加える。Hessらの米国特許第6,447,987号は、ヒト赤血球を冷蔵保存する際の添加液を対象とする。
【0010】
Satoらの米国特許第4,837,047号は、血液の品質を良い状態に保つように、血液を長期間保存する容器に関する。
【0011】
従来の手動採血は、採血バッグと、静脈針と、抗凝固剤の入った採血バッグに針を連結するのに十分なチューブとを少なくとも含む採血キットを用いて、熟練のフレボトミストが行う。典型的には、採血バッグはさらに抗凝固液を含むが、この代わりに、抗凝固液は、好適なチューブで採血バッグに連結される別のバッグまたは容器に入れてもよい。現在市販されているシステムのいずれの構成要素にも、酸素の低減をもたらしたり、または含んだりするものはない。
【0012】
採血時、保存前に、血液から酸素を低減し始める必要がある。既存のインフラにおいて、かつ現在の規制レジメで制限されている期間内に、血液の低減を実現するために、可能な限り早く、好ましくは、採血時、採取した血液の温度が著しく低下する前に、酸素を低減し始めるのが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、嫌気保存前に、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、酸素透過性である1つ以上のチャンバーを備える折り畳み可能な内側の血液容器と、該外側容器内に置かれた酸素吸収剤とを備える器具を提供するとともに、これを含む。
【0014】
本開示は、嫌気保存前に、全血から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、酸素透過性である1つ以上のチャンバーを備える折り畳み可能な内側の血液容器と、該外側容器内に置かれた酸素吸収剤とを備える器具を提供するとともに、これを含む。
【0015】
本開示は、嫌気保存前に、濃厚赤血球から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、酸素透過性である1つ以上のチャンバーを備える折り畳み可能な内側の血液容器と、該外側容器内に置かれた酸素吸収剤とを備える器具を提供するとともに、これを含む。
【0016】
本開示は、保存用の血液の調製方法であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、その外側容器に封入された折り畳み可能な内側の血液容器と、その外側容器と血液適合性の内側の血液容器との間に置かれた酸素吸収剤とを備える酸素枯渇器具を用意することと、その酸素枯渇器具の折り畳み可能な内側の血液容器に血液を流入させることと、酸素飽和度が20%未満である酸素低減血液を作ることとを含む方法を提供するとともに、これを含む。
【0017】
本開示は、保存用の血液の調製方法であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、その外側容器に封入された折り畳み可能な内側の血液容器と、その外側容器と血液適合性の内側の血液容器との間に置かれた酸素吸収剤とを備える酸素枯渇器具を用意することと、その酸素枯渇器具の折り畳み可能な内側の血液容器に血液を流入させることと、酸素飽和度が10%未満の酸素低減血液を作ることとを含む方法を提供するとともに、これを含む。
【0018】
本開示は、酸素枯渇血液を保存する血液保存器具であって、実質的に酸素不透過性である外側容器と、その外側容器の形状内で、折り畳み可能な血液容器の位置を調節するように適合された位置決め機構を備える折り畳み可能な内側の血液容器と、その折り畳み可能な血液容器と外側容器への接合部とに連結しているチューブを備える少なくとも1つの注入口であって、外側容器への接合部が、実質的に酸素不透過性である注入口と、その外側容器内に置かれた酸素吸収剤とを備える器具を提供するとともに、これを含む。
【0019】
本開示は、嫌気保存前に、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10であって、実質的に酸素不透過性である外側容器101と、酸素インジケーター206と、スペーサー材110と、外側容器101と厚さ15μm~200μmの折り畳み可能なシリコーン製血液容器102との間の約80グラムの酸素吸収剤103とを備える器具10を提供するとともに、これを含む。
【0020】
本開示は、嫌気保存前に、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10であって、実質的に酸素不透過性である外側容器101と、酸素インジケーター206と、スペーサー材110と、外側容器101と、孔サイズが0.2μmのPVDFから作製した折り畳み可能な血液容器102との間の約80グラムの酸素吸収剤103とを備える器具10を提供するとともに、これを含む。本開示は、保存用の血液の調製方法であって、酸素枯渇器具10を用意することと、折り畳み可能な内側の血液容器102に血液を流入させることと、酸素枯渇器具10を最長で3時間振盪することと、酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作ることと、その酸素低減血液を血液保存器具20に移すこととを含む方法を提供する。この方法はさらに、ドナーから採血してから8時間未満に、酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を作ることを提供する。さらなる実施形態では、振盪は章動している。
【0021】
本開示は、全血またはその成分からの酸素の低減方法であって、吸収速度が、吸収剤1グラム当たり、1時間当たりに少なくとも1.86立方センチメートル(cc・g-1・hr-1)である吸収剤207を含む器具20に、全血またはその成分を入れることと、血液を充填した器具20を、少なくとも3cm並進させることによって少なくとも1秒に1回振盪しながら、最長で4時間、周囲温度でインキュベートすることと、血液を充填した器具20を4~6℃の保存庫に移すこととを含む方法を提供するとともに、これを含む。さらなる態様では、血液を充填した器具20は、4~6℃で、最長42日間保存する。
【0022】
ほんの一例として、添付の図面を参照しながら、本開示のいくつかの態様を本明細書で説明する。以下では、詳細な図面を具体的に参照しているが、示されている詳細は一例であり、本開示の実施形態を例示的に論じるためのものであることを強調する。この関連で、本開示の態様をいかにして実施できるかは、図面を用いた説明によって、当業者には明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】並列された2つの区画を有する、本開示による酸素枯渇器具の例示的な実施形態を示す。
図1B】並列された2つの区画を有する、本開示による酸素枯渇器具の例示的な実施形態を示す。
図1C】並列された2つの区画を有する、本開示による酸素枯渇器具の例示的な実施形態を示す。
図2A】並列された3つの区画を有する、本開示による酸素枯渇器具の例示的な実施形態を示す。
図2B】並列された3つの区画を有する、本開示による酸素枯渇器具の例示的な実施形態を示す。
図3A】本開示による嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図3B】本開示による嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図4A】本開示に従って、2つの区画を有する血液枯渇器具と、嫌気保存バッグとを有する使い捨ての酸素低減保存システムの例示的な実施形態を示す。
図4B】本開示に従って、3つの区画を有する血液枯渇器具と、嫌気保存バッグとを有する使い捨ての酸素低減保存システムの例示的な実施形態を示す。
図5】本開示の方法に従って、例示的な酸素枯渇器具においてsO2が低下したことのグラフである。
図6A】本開示による嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図6B】本開示による嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図7】本開示に従って、2段階プロセスで、膜113と膜114を接合する結合層105の例示的な実施形態を示す。
図8A】本開示に従って、結合材メッシュ118と共押し出しされた内側メッシュ117を備えるスペーサー110であって、膜113(114)に接合されているスペーサー110の例示的な実施形態を示す。
図8B】本開示に従って、結合材メッシュ118と共押し出しされた内側メッシュ117を備えるスペーサー110であって、膜113(114)に接合されているスペーサー110の例示的な実施形態を示す。
図9A】本開示に従って、膜113と膜114を接合している結合層105を有する嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図9B】膜113と膜114に取り付けられおり、シール108をもたらしている結合層105を有する嫌気保存バッグであって、結合層105が、シール108を距離109だけ越えて延びている嫌気保存バッグの例示的な実施形態を示す。
図10A】本開示による幾何学的特徴部121を有する結合層105の例示的な実施形態を示す。
図10B】本開示による幾何学的特徴部121を有する結合層105の例示的な実施形態を示す。
図10C】本開示による幾何学的特徴部121を有するとともに、さらに混合構造109を備える結合層105の例示的な実施形態を示す。
図10D】本開示による幾何学的特徴部121を有するとともに、さらに混合構造109を備える結合層105の例示的な実施形態を示す。
図11】本開示に従って、スペーサー110と、結合層105と、幾何学的特徴部121とを有する折り畳み可能な血液容器の例示的な実施形態を示す。
図12】本開示の方法に従って、例示的な酸素枯渇器具においてsO2が低下したことのグラフである。
図13】本開示の方法に従って、様々な血液体積を有する例示的な折り畳み可能な内側の血液容器102においてsO2が低下したことのグラフである。
図14】本開示の方法に従って、例示的な酸素枯渇器具においてsO2が低下したことのグラフである。
図15】本開示の方法に従って、表面積が異なる例示的な酸素枯渇器具においてsO2が低下したことのグラフである。
図16】スペーサー110が、本開示による例示的な酸素枯渇器具におけるsO2の低下に及ぼす作用を示すグラフである。
【0024】
いくつかの図面にわたって、対応する参照符号は、対応する部分を示している。本明細書に示されている例は、本発明のいくつかの実施形態を例示しており、いずれ方法でも、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0025】
現在の技術に鑑みると、保存される血液及び赤血球などの血液成分の質を向上させて、輸血前のそのような血液及び血液成分の保管寿命を延ばして、輸血と関連する罹患率を最小限に抑える必要がある。規制要件を満たすとともに、信頼性を確保するために、赤血球の調製と処理は、限られた期間内に終わらせる必要がある。さらに、酸素低減血液及び酸素低減血液成分の調製プロセスは、損傷(血液の溶血が挙げられるが、これに限らない)を引き起こすものであってはならない。そして、質が向上した血液及び血液成分をもたらすために、既存の抗凝固剤と添加液と互換性のある方法と器具に対するニーズがある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記及びその他のニーズに対応するために、本開示は、血液及び血液成分を保存するための器具と方策であって、ドナーから採血を行う段階に、酸素低減血液及び血液成分の調製を開始する器具と方策を含むとともに、これらを提供する。
【0027】
本開示の少なくとも1つの態様を詳しく説明する前に、本開示が必ずしも、その用途において、下記の説明に示されているか、または実施例によって例示されている詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の態様であることも、様々な方法で実施もしくは実行することもできる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「バッグ」という用語は、可撓性材料から作製した折り畳み可能な容器を指し、パウチ、チューブ及びガセットバッグを含む。本明細書で使用する場合、また、本開示に含まれる場合、「バッグ」という用語には、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の折り目を有するとともに、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の縁がシールまたは接合されている折り畳みバッグが含まれる。バッグは、1つ以上の材料のシートの接合を含め、当該技術分野において知られている様々な技法を用いて作製してよい。材料を接合して、バッグを形成する方法は、当該技術分野において知られている。本開示では、射出成形及びブロー成形によって作製した容器も含むとともに、このような容器を提供する。ブロー成形容器及び射出成形容器の作製方法は、当該技術分野において知られている。好ましいタイプのブロー成形または射出成形容器は、効率的な梱包と輸送のためにサイズを縮小できるとともに、酸素を低減するために血液または血液成分を収容する際に膨張できる可撓性容器である。これらの容器は、完全に膨張するまでは、血液の体積に適合するように設計してもよい。本開示にわたって使用する場合、バッグは、折り畳み可能な容器の形状であり、これらの2つの用語は、本開示にわたって、同義的に使用する。
【0029】
本明細書で使用する場合、「折り畳み可能な容器」という用語には、液体または流体を収容及び保持できるバッグ、容器、封入袋、外被袋、パウチ、ポケット、入れ物及び他の器具が含まれる。特定の態様では、折り畳み可能な容器は、射出成形またはインサート成形のような従来の手段によって製造してよい。別の態様では、折り畳み可能な容器は、容積を保持できる容器を作製するように、当該技術分野において知られている方法を用いて接合されるポリマー材のシートから作製してよい。このような折り畳み可能な容器は、当該技術分野において周知である。例えば、Waageに発行された米国特許第3,942,529号、Rinfretに発行された米国特許第4,131,200号及びGajewskiらに発行された米国特許第5,382,526号を参照されたい。ポリマー材を接合して、本開示による折り畳み可能な容器を作製する好適な方法としては、熱溶着、超音波溶着、高周波(RF)溶着及び溶剤溶着が挙げられる。特定の態様では、多数の接合方法を用いて、本開示による折り畳み可能な容器を作製してよい。本開示による折り畳み可能な容器には、1つ以上のひだ、折り目、ダイヤフラム、気泡及びガセットを有する封入袋が含まれる。折り畳み可能な容器の作製方法は、当該技術分野において知られている。例えば、Grobに発行された米国特許第3,361,041号、Martenssonに発行された米国特許第4,731,978号、Richterらに発行された米国特許第4,998,990号及びFerrellに発行された米国特許第4,262,581号を参照されたい。また、本開示においては、可撓性部分と非可撓性部分の両方が組み合わされた容器であって、その可撓性部分によって、例えば、ひだ、折り目またはガセット及びパッケージ形状における他の類似の幾何学的特徴を通じて、容積の拡大が可能になり、その一方で、非可撓性部分が、剛性と幾何学的定義を容器にもたらすことができる容器を含むとともに、これを提供する。可撓性部分と非可撓性部分の両方を有する折り畳み可能な容器を作製するための方法と設計は、Randallによって米国特許第6,164,821号に、また、LaFleurによって米国特許第5,328,268号に記載されているように、当該技術分野において知られている。
【0030】
本明細書で使用する場合、「約」(about)という用語は、±10%を指す。
【0031】
「備える」(comprises)、「備える」(comprising)、「含む」(includes)、「含む」(including)、「有する」(having)及びこれらの同源語は、「~が挙げられるが、これらに限らない」を意味する。
【0032】
「~からなる」(consisting of)という用語は、「~を含むとともに、~に限定される」(including and limited to)を意味する。
【0033】
「~から本質的になる」(consisting essensially of)という用語は、その組成物、方法または構造が、追加の成分、工程及び/または部分を含んでよいが、ただし、その追加の成分、工程及び/または部分によって、特許請求されている組成物、方法または構造の基本的かつ新規の特徴に重大な変更が加わらない場合に限ることを意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、文脈によって明らかに別段に示されない限り、単数形の「a」、「an」及び「the」には、複数の言及物が含まれる。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語には、その混合物も含め、複数の化合物が含まれてよい。
【0035】
本願全体にわたって、本開示の様々な実施形態が、範囲の形式で示されていることがある。範囲の形式での記載は、便宜上かつ簡潔化のために過ぎず、本開示の範囲を厳格に制限するものとして解釈すべきでないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載には、具体的に開示されているすべての考え得る小範囲と、その範囲内の個々の数値が含まれるとみなすべきである。例えば、「1~6」などの範囲の記載には、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」などの具体的に開示されている小範囲と、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5及び6が含まれるとみなすべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0036】
数値範囲が本明細書に示されているときには必ず、示されている範囲内の、言及されているすべての数字(分数または整数)が含まれるように意図されている。示されている第1の数字と、示されている第2の数字「の範囲の/との間の範囲である」と、示されている第1の数字から、示されている第2の数字「までの」「範囲の/範囲である」という語句は、本明細書では同義的に使用し、示されている第1の数字と、示されている第2の数字と、それらの数字の間のすべての分数と数字を含むことを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、所定のタスクを実現するための方式、手段、技法及び手順を指し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学分野の専門家に知られているか、または化学、薬理学、生物学、生化学及び医学分野の専門家が、既知の方式、手段、技法及び手順から容易に考案するかのいずれかである方式、手段、技法及び手順が挙げられるが、これらに限らない。
【0038】
本開示は、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10であって、実質的に酸素不透過性である外側容器101と、酸素透過性である折り畳み可能な内側の血液容器102と、外側容器101内に置かれた酸素吸収剤103とを備える器具10を提供するとともに、これを含む。
【0039】
本開示は、採血・酸素枯渇器具10となるように構成されている酸素枯渇器具10も提供するとともに、これを含む。採血・酸素枯渇器具10が、採血プロセス中に全血の凝固を防ぐための抗凝固剤をさらに含むという点で、血中酸素を採取及び低減するように構成されている酸素枯渇器具と、本明細書にわたり説明されているような酸素枯渇器具10は異なる。特定の態様では、採血・酸素枯渇器具10の抗凝固液は、採血・酸素枯渇器具10の中に設けられている。したがって、含まれる抗凝固液も、酸素が枯渇された抗凝固液である。代替形態では、抗凝固液は、別個に、酸素が枯渇された溶液または酸素を有する溶液のいずれかとして含まれていてもよい。採血・酸素枯渇器具10は、ドナーから採取した全血とともに使用するように意図されている。本開示にわたって使用する場合、酸素枯渇器具10は、採血・酸素枯渇器具10を含むとともに、これを提供する。これらの2つの用語は、同義的に使用できるとともに、同義的に使用されている。
【0040】
本明細書で使用する場合、外側容器は、実質的に酸素不透過性であるとともに、任意で二酸化炭素不透過性である材料から作製されている。特定の態様では、外側容器101は、可撓性フィルム材料から作製されている。別の態様では、外側容器101は、堅いかまたは非可撓性のフィルム材料から作製されている。
【0041】
本開示は、実質的に酸素不透過性である外側容器101を提供するとともに、これを含む。本明細書で使用する場合、実質的に酸素不透過性である外側容器101は、その容器内の酸素を3カ月にわたって10cc以下とするほど、より好ましくは、6カ月にわたって酸素を5cc以下とするほど十分に酸素不透過性である。本明細書で使用する場合、実質的に酸素不透過性である(SIO)という用語は、そのバリアの一方の側から他方の側への酸素の移動に対するバリアであって、酸素分圧の有意な上昇を防ぐのに十分なバリアとなる材料及び組成物を指す。
【0042】
完全な不透過性をもたらす材料はほとんどなく、不透過性の高い材料でも、外側容器101を接合し、溶着し、折り畳み、及び別段の形で組み立てる際に、損なわれることがあるのは注目に値する。下で論じるように、酸素枯渇器具10は、チューブ301と、外側容器101(または下記の外側容器201)への接合部302とを備える1つ以上の注入口/排出口30をさらに備えてよい。また、外側容器101は、折り畳み可能な内側の血液容器102の容積の変化に対応するように設計されていなければならない。したがって、不透過性バリアの完全性を確保するために、特に注意を払って、特殊な設計要素と製造方法を組み込む。
【0043】
本開示は、実質的に酸素不透過性であり、酸素透過性が1日に1平方メートル当たり約1.0cc未満である外側容器101も提供するとともに、これを含む。特定の態様では、本開示の外側容器及び他の要素の作製に用いるのに適するフィルムは、約0.140バーラー未満のバーラー値によって特徴付けられる材料である。
【0044】
外側容器101を作製するための材料と方法は、当該技術分野において知られている。例えば、Gawrylらに発行された米国特許第7,041,800号、Gustafssonらに発行された米国特許第6,007,529号及びMcDormanによる米国特許出願公開第2013/0327677号を参照し、これらはそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される。不透過性材料は、当該技術分野において日常的に使用されており、いずれかの好適な材料を用いることができる。成形ポリマーの場合には、通常、添加剤を加えて、酸素(及びCO2)バリア特性を高める。例えば、Satoらに発行された米国特許第4,837,047号を参照されたい。例えば、Smithらに発行された米国特許第7,431,995号には、酸素及び二酸化炭素を通さないエチレンビニルアルコールコポリマーと変性エチレンビニルアセテートコポリマーの層で構成された酸素及び二酸化炭素不透過性容器が記載されている。別の態様では、外側容器101は、酸素及び二酸化炭素不透過性である。
【0045】
特定の態様では、実質的に酸素不透過性であるフィルムは、ラミネートフィルムであってよい。一態様では、実質的に酸素不透過性であるラミネートフィルムは、ラミネート箔フィルムである。フィルム材料は、ポリマー、箔材、または箔とポリマーとを組み合わせた多層構築材とすることができる。一態様では、ラミネートフィルムは、アルミニウムをラミネートしたポリエステル膜であってよい。実質的に酸素不透過性である好適なアルミニウムラミネートフィルム(ラミネート箔としても知られている)の例は、当該技術分野において知られている。例えば、Sugisawaに対する米国特許第4,798,728号には、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン及び塩化ビニリデンのアルミニウムラミネート箔が開示されている。他のラミネートフィルムは、当該技術分野において知られている。例えば、Chowらに対する米国特許第7,713,614号には、実質的に酸素不透過性であるエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)樹脂を含む多層容器が開示されている。一態様では、外側容器101は、ヒートシールによって3つまたは4つの縁をシールすることによって構築されたバリアバッグであってよい。そのバッグは、O2及びCO2バリア特性を高める材料を含む多層構築材で構築されている。そのバッグは、O2及びCO2バリア特性を高める材料を含む多層構築材で構築されている。このような材料としては、酸素透過速度が0.01cc/100平方インチ/24時間のRollprint Clearfoil(登録商標)V2フィルム、酸素透過速度が0.004cc/100平方インチ/24時間のRollprint Clearfoil(登録商標)Xフィルム、酸素透過速度が0.0008cc/100平方インチ/24時間のClearfoil(登録商標)Zフィルム(イリノイ州アディソンのRollprint Packaging Products)が挙げられる。Renolit Solmed Wrapflex(登録商標)のフィルム(カリフォルニア州コマース市のAmerican Renolit Corp.)のように、他のメーカーも、同様の酸素透過速度の同様の製品を製造している。実質的に酸素不透過性である好適なアルミニウムラミネートフィルム(ラミネート箔としても知られている)の例は、Protective Packaging Corp.(テキサス州キャロルトン)から入手可能である。
【0046】
SIO材の作製に適用可能な別のアプローチとしては、酸化グラフェンラミネート体をヨウ化水素酸及びアスコルビン酸でゆるやかに化学的に還元することによって作られる多層グラファイトフィルムが挙げられる。Su et al.,“Impermeable barrier films and protective coatings based on reduced graphene oxide,”Nature Communications 5,Article number:4843(2014)を参照し、この文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される。酸素バリア特性を高めるナノ粒子も、当該技術分野において知られており、例えば、Tera-Barrier(シンガポールのThe AriesのTera-Barrier Films Pte,Ltd)によって供給されているとともに、Rick Lingleによって、2014年8月12日のPackaging Digest Magazineに記載されている多層バリアスタックフィルムである。
【0047】
本開示による態様では、外側容器101は、気体不透過性プラスチックから作製してよい。一実施形態では、気体不透過性プラスチックは、ラミネート体であってよい。特定の実施形態では、ラミネート体は、透明バリアフィルム、例えば、ナイロンポリマーであってよい。実施形態では、ラミネート体は、ポリエステルフィルムであってよい。一実施形態では、ラミネート体は、Mylar(登録商標)であってよい。特定の実施形態では、ラミネート体は、金属化フィルムであってよい。一実施形態では、金属化フィルムは、アルミニウムでコーティングされていてよい。別の実施形態では、このコーティングは、酸化アルミニウムであってよい。別の実施形態では、コーティングは、低密度ポリエチレン(LDPE)の層の間にラミネートされたエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)であってよい。
【0048】
本開示の外側容器101は、プラスチックを含む気体不透過性材料または他の丈夫で軽量な材料から作製した1つ以上の部分で形成されていてよい。いくつかの実施形態では、封入袋は、2つ以上の材料で形成されていてよい。一実施形態では、外側容器101は、気体不透過性材料でコーティングされている材料で形成して、気体不透過性封入袋を作製してよい。一実施形態では、堅いかまたは可撓性の外側容器101を、射出成形できるプラスチックから作製してよい。本開示による実施形態では、このプラスチックは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはナイロンから選択してよい。一実施形態では、外側容器101の材料は、ポリエステル(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ポリアミド(PA)(例えばナイロン)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリウレタン(PU)、メラミンホルムアルデヒド(MF)、プラスターチ材、フェノール類(PF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)(Ultem)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、尿素-ホルムアルデヒド及びエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)からなる群から選択してよい。特定の実施形態では、外側容器101は、ポリエチレンであってよい。いくつかの実施形態では、ポリエチレン製外側容器101は、合わせて溶着した1つ以上のポリエチレン構成要素を含んでよい。特定の態様では、外側容器は、ポリエチレン製の外層と、ポリエステル製の内層と、この内層と外層との間に配置された酸化アルミニウム製バリア層、例えば、酸素透過速度が0.0008cc/100平方インチ/24時間のClearfoil(登録商標)Zフィルム(イリノイ州アディソンのRollprint Packaging Products)とを有する多層フィルムで構成されている。
【0049】
本開示は、外側容器101をフィルムから作製することと、折り畳み可能な内側の血液容器102を膜から作製することを提供するとともに、これを含む。本明細書で使用する場合、膜とは概して、折り畳み可能な内側の血液容器102を作製するのに用いる材料を指し、フィルムは、外側容器101を作製するのに用いる材料を指す。フィルムを実質的に不透過性とみなすように別段に示されていない限りは、明確にするために、特定の材料をメーカーが「膜」と称すことがある、または特定の材料が「膜」として一般に知られる場合があることが分かる。膜は、1つ以上の物質をそのシートの一方の側から、そのシートのもう一方の側まで通すことを可能にするシートの形状の1つ以上の材料層を含む。本明細書で使用する場合、膜は、酸素枯渇器具10、採血キットの構成要素を合わせて連結するか、または採血器具、添加液バッグ、白血球低減フィルター及び嫌気保存バッグの要素を連結するのに適するチューブとして作製してもよい。本明細書にわたって使用する場合、用途に応じて、本開示の膜をシートまたはチューブとして形成してよいことが分かる。また、上に示したように、外側容器101を作製するためのフィルムは、実質的に酸素不透過性である一方で、折り畳み可能な内側の血液容器102は、酸素透過性である。本明細書で使用する場合、フィルムは、酸素枯渇器具10、採血キットの構成要素を連結するか、または採血器具、添加液バッグ、白血球低減フィルター及び嫌気保存バッグの要素を連結するのに適するチューブとして作製してもよい。本明細書で使用する場合、外側容器101は、[00172]段落目[訳者注:PCT/US2016/021794では45頁27行目から46頁10行目にあり、本明細書では、[0157]に該当]及び[00175]段落目[訳者注:PCT/US2016/021794では46頁24行目から47頁3行目にあり、本明細書では[0160]に該当]にさらに説明されているような102のすべての実施形態を含む。
【0050】
本明細書で使用する場合、折り畳み可能な内側の血液容器102は、酸素透過性である。特定の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102は、酸素透過性かつ二酸化炭素透過性である。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102は、酸素不透過性であり、二酸化炭素透過性である。
【0051】
本開示は、ヒートシール法、ブロー成形法及び射出成形法を用いて、外側容器101を作製することを提供するとともに、これを含む。ヒートシール、ブロー成形及び射出成形を用いて外側容器101を作製するのに適する材料としては、PET、標準的及び多層、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS及び当業者に知られている他のポリマーが挙げられる。ブロー成形及び射出成形した外側容器101、例えば、ポリプロピレン(PP)の2つの層の間に配置されたエチルビニルアルコール(EVOH)またはエチルビニルアセテート(EVA)のバリア層で構成されているとともに、Kortec(マサチューセッツ州ローリーのKortec,Inc.)によって供給されている多層構造体を作製する方法は、当該技術分野において知られており、また、Slatに発行された米国特許第5,906,285号に記載されている。成形前、またはポリマーの配合中もしくは硬化中に、酸素バリア特性とCO2バリア特性を強化する添加剤が、当該技術分野において知られている。一例は、多層PETをもたらす、多層ポリマーの共射出である。このようなバリア樹脂は典型的には、プリフォーム段階で、両側にPETを有する内層として組み込まれ、これにより、PETが、液体接触層と外層になる。下に示されているように、ブロー成形または射出成形した好適な外側容器101は、酸素不透過性である。特定の態様では、ヒートシール、ブロー成形または射出成形した好適な外側容器101は、実質的に、酸素不透過性及び二酸化炭素不透過性の両方である。
【0052】
本開示は、透過性の膜または実質的に不透過性のフィルムのいずれかを作製するための2種類の材料を提供するとともに、これを含む。一態様では、本開示による透過性の膜は、その材料に物質、具体的には、必ずしもこれに限らないが、酸素を通す。特定の態様では、膜は、酸素と二酸化炭素を通す一方で、水、タンパク質、塩(例えば血漿成分)ならびに細胞(例えば、赤血球、白血球及び血小板)を通さないように選択する。材料を通る速度は、粒径、物質の相(液体対気体)、親水性、疎水性または溶解性を含む1つ以上の特性に左右される。材料を通る速度または流束は、膜の一方の側ともう一方の側との圧力差(もしくは分圧)、温度差または濃度差などの駆動力の有無にも左右される。膜の流束は、膜透過流束として知られている。膜を通る物質の膜透過流束は、膜の厚さに反比例する。
【0053】
膜透過流束は、気体に関しては、単位面積当たり、単位時間当たりに膜を通って流れる体積として定義する。用いるSI単位は、m3/m2・sである。気体及び蒸気に関しては、この体積は、圧力と温度に強く依存する。したがって、気体の透過流束は、0℃及び1気圧(1.0013バール)(例えば273°K及び760トール)として定義されている標準の温度と圧力(STP)の観点で求める場合が多い。上述のように、通過速度は、駆動力または膜の両側における差に依存し、この依存は、透過係数P、すなわち、簡潔には透過性に組み込まれている。
【0054】
透過性(P)は、単位駆動力当たり、単位膜厚当たりの透過流束として定義されている。透過係数PのSI単位は、表1に示されている。本開示におけるように、気体の分離に関する一般的な単位はバーラーであり、この単位も、表1に示されている。気体cm3(STP)/cm2sという用語は、0℃及び1気圧という標準条件の観点における拡散種の膜間体積流束を指し、cmという用語は、膜厚を指し、cm-Hgは、拡散種の膜間分圧駆動力を指す。透過性は、実験によって割り出さなければならない。
【0055】
本開示による方法と器具に適する膜としては、緻密膜、多孔質膜、非対称膜及び複合膜が挙げられる。特定の態様では、好適な膜は、多層膜であってよい。別の態様では、好適な膜は、無機材から作製される。緻密膜は、孔またはボイドのない固体材料から作製した膜である。物質は、溶解と拡散のプロセスによって、緻密膜を透過する。緻密膜の例としては、シリコーン膜(ポリジメチルシロキサン、すなわちPDMS)が挙げられる。本開示では、特定のサイズ範囲の孔を有する多孔質膜であって、サイズ排除に基づいて分離を行う多孔質膜も含むとともに、これを提供する。本開示に従って用いるのに適する多孔質膜の例としては、PVDF膜及びポリスルホン膜が挙げられる。
【0056】
本開示は、多くの場合はラミネート体として、2つ以上の材料で作られた複合膜であって、緻密な材料が多孔質支持層に取り付けられている複合膜を含むとともに、これを提供する。本開示に従って用いるのに適する複合膜の例は、孔サイズが1.0μmまたは0.22μmであるEMD MilliporeのGVHP疎水性PVDFである。
表2:フルオロポリマーの透過性(厚さ100μm、23℃)
【0057】
本開示は、主に酸素透過性によって特徴付けられる膜113から作製した折り畳み可能な内側の血液容器102を提供するとともに、これを含む。別段の定めのない限り、「実質的に不透過性の膜」とは、実質的に酸素不透過性である膜を指す。しかしながら、特定の器具及び方法においては、膜は、二酸化炭素透過性または不透過性によってさらに特徴付けられることもある。特定の用途では、膜材は、実質的に酸素不透過性であり、血液、血液成分または多数の構成要素で構成された採血キットへの酸素の侵入に対するバリアとなる。このような実質的に不透過性の膜は概して、本開示の外側容器を作製するのに使用する。好適な実質的に不透過性の膜は、器具及びキットの連結構成要素用のチューブを作製するのにも用いてよい。実質的に不透過性の膜は、単層を含んでも、または2つ以上の層を有するラミネートシートもしくはチューブであってもよい。
【0058】
本開示は、実質的に酸素透過性である膜113も提供するとともに、これを含む。実質的に酸素透過性である膜113は、本開示においては、折り畳み可能な内側の血液容器102の作製に用いる。特定の態様では、酸素透過性である膜113は、患者に輸血する血液と長期間接触するものとして認可されているとともに、それに適する生体適合性膜でもある。実質的に不透過性の膜と同様、実質的に透過性の膜113は、単層を含んでも、または2つ以上の層を有するラミネート構造体を含んでもよい。
【0059】
一態様では、折り畳み可能な血液容器102の作製には、酸素透過性が約2.5×10-9cm32(STP)/((cm2s)*(cmHgcm-1))を超える酸素透過性膜113を使用する。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の作製には、酸素透過性が約5.0×10-9cm32(STP)/((cm2s)*(cmHgcm-1))を超える酸素透過性膜113を使用する。さらに別の態様では、酸素透過性膜113の酸素透過性は、約1.0×10-8cm32(STP)/((cm2s)*(cmHgcm-1))を超える。特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102の作製で用いるのに適する酸素透過性膜113は、バーラー値が約25を超えることによって特徴付けられる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の作製で用いるのに適する酸素透過性膜113は、バーラー値が約50を超えることによって特徴付けられる。特定の別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の作製で用いるのに適する酸素透過性膜113は、バーラー値が約100を超えることによって特徴付けられる。
【0060】
一態様では、実質的に酸素透過性である膜113は、非多孔質材料から作製した緻密膜とすることができる。高酸素透過速度を得ることができる好適な材料の例としては、シリコーン、ポリオレフィン、エポキシ及びポリエステルが挙げられる。別の態様では、実質的に酸素透過性である膜は、有機ポリマーから作製した多孔質膜とすることができる。実質的に酸素透過性である膜113は、疎水化されたPVDF、ナイロン、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、疎水化されたポリプロピレン及びポリアクリロニトリルからなる群から選択した材料から作製してもよい。
【0061】
本開示は、材料を選択することによってのみならず、厚みを選択及び制御することによっても、実質的に酸素透過性である膜113を作製することを提供するとともに、これを含む。上で示したように、透過性は、膜の厚みに比例する。したがって、透過性の向上は、膜の厚みを薄くすることによって実現できる。特定の態様では、最小厚は、穿刺及び引裂に対する強度及び耐性によって定める。
【0062】
本開示は、実質的に酸素透過性である膜113であって、ブロー成形法と射出成形法を用いて作製する膜113も提供するとともに、これを含む。ブロー成形と射出成形を用いて、折り畳み可能な内側の血液容器102を作製するための好適な材料としては、50デュロメーターのBluestar4350、Silbioneグレードの液体シリコーンゴム及びShin-Etsu KEG-2000-40A/B液体シリコーンのようなシリコーン材が挙げられる。シリコーンデュロメーターの選択は、折り畳み性と透過性について注意深く選択してから、壁厚を十分に制御する。材料が薄いほど、透過性が高くなる。ブロー成形及び射出成形した折り畳み可能な血液容器102の作製方法は、例えば、Okudairaらに発行された米国特許第4,398,642号、Satoらに発行された米国特許第7,666,486号、Sanoらに発行された米国特許第8,864,735号及びOdaらによる米国特許出願公開第2012/0146266号で、当該技術分野において知られている。一態様では、ブロー成形した折り畳み可能な血液容器102は、折り畳み可能な水容器の製造に用いるLDPEを用いて作製することができる。下に定められているように、ブロー成形または射出成形した好適な折り畳み可能な血液容器102の酸素透過性は、少なくとも約25バーラーである。
【0063】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、ヒートシール、熱かしめ及び接着剤接合などの様々なシール法によって、微多孔質膜113から製造できる。本開示による一態様では、継ぎ目に適切な位置でPVC注入チューブ部分を設けた状態で、Loctite4011などの接着剤を、Loctite770などの接着剤用プライマーとともに用いて、一対のPVDF微多孔質膜を周縁で接合する。本開示による別の態様では、折り畳み可能な血液容器は、流体連通性をもたらすために多層チューブ部分を継ぎ目に封入した状態で、一対の膜の4つの縁を合わせてヒートシールすることによって、一対の微多孔質膜から製造できる。
【0064】
本開示は、2種類以上の膜113から作製する折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。一態様では、折り畳み可能な血液容器102は、容器を作製するために好適に接合されている第1の膜113と第2の膜114を備える。本明細書で使用する場合、膜114は概して、膜113と同一である膜を指す。すなわち、折り畳み可能な血液容器102は概して、接合した2つの膜113で作られている。本開示は、異なる材料を含む膜113と膜114から作製されている折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。図1Cに示されているように、折り畳み可能な血液容器102は、膜113と膜114で作製されているように示されている。別段の定めのない限り、膜113と膜114は、入れ替えてもよいことが分かる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、透過性が第1の膜113の透過性の約30%未満である第2の膜114と組み合わされている膜113を備える。特定の態様では、第2の膜114は、それ自体で十分な脱酸素化を行うために、比較的不透過性であるかまたは透過性の低い膜を含むが、好適な膜113と組み合わせることができる。特定の態様では、第2の膜114は、比較的不透過性である。さらなる態様では、第2の膜114は、混合を促すための隆起、バッフルまたはその他の構造が組み込まれている成形膜を含む。一態様では、第2の膜114は、酸素透過性膜113に接合された堅い構造を含んでよい。本開示による態様では、第2の膜114は、膜113にヒートシールされている。
【0065】
特定の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102は、血液接触区域の内側または外側に配置されたフローバッフルであって、振盪すると、折り畳み可能な血液容器102内の乱流を増大させるフローバッフルを備える。一態様では、バッフルは、互いから1~2インチの距離で配置されており、折り畳み可能な内側の血液容器102の面積の10~45%を占める。
【0066】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、ポリビニリデンフルオライドまたはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)から作製した微多孔質膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、このPVDF膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。
【0067】
本開示による態様では、この微多孔質PVDF膜は、0.01μm~2.0μmの範囲の孔を含む。別の態様では、微多孔質PVDF膜113は、0.01μm~1.0μmの範囲の孔を含む。いくつかの態様では、微多孔質PVDF膜113の孔サイズは、直径0.03μm~1.0μmである。別の態様では、微多孔質PVDF膜113の孔サイズは、直径0.03μm~0.45μmである。
【0068】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるPVDF膜113のボイド率は、20~80%である。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるPVDF膜113のボイド率は、35~50%である。
【0069】
特定の態様では、約1.0μmを超える微細孔を有するPVDF膜の透過性では、流体をその膜に通す場合があり、流体を封じ込める力と、酸素透過性及び二酸化炭素透過性の両方が損なわれる。大きい孔サイズにおけるこの透過性に対処するために、接触角が150°を超えるいわゆる「超疎水性」膜を採用できる。本明細書で使用する場合、また、当該技術分野において知られているように、接触角は、固体表面の濡れ性を定量化するものであり、ヤングの式によって理論的に説明される。本開示による特定の態様では、材料の表面張力がより低く、上記の範囲でさえ流体が孔から滲出するため、非疎水性のPVDF材の使用は推奨されない。
【0070】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1~0.8μmのPVDF透過性膜113から作製されている。別の態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、直径0.22~0.8μmであってよい。一態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、0.2~1.0μmである。別の態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、0.1μm超、1.0μm未満であってよい。さらなる態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、約0.05~約1.0μmの範囲である。いくつかの態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、0.3または0.4μm超である。別の態様では、多孔質PVDF膜の微細孔は、0.5または0.6μm超である。
【0071】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.0μm未満のPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μm未満のPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による特定の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μm未満のPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μm未満のPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0072】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.1μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.22μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.20μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示によるさらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μmのPVDF膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0073】
本開示による態様では、PVDF膜は、250μm未満の厚さであってよい。特定の態様では、この膜は、10μmを超える厚さである。いくつかの態様では、PVDF膜は、10~250μmの厚さであってよい。別の態様では、PVDF膜は、10~125μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、PVDF膜は、50~125μmの厚さ、75~125μmの厚さ、50~150μmの厚さ、75~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約20μmの厚さである。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約30μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約50μmの厚さである。さらなる態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約76μmの厚さである。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約120μmの厚さである。
【0074】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、100~125μmの厚さのPVDF透過性膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、100~125μmの厚さであるPVDF透過性膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、50~150μmの厚さであるPVDF透過性膜113から作製されている。
【0075】
本開示に従って酸素透過性である折り畳み可能な内側の血液容器の作製に適するPVDF膜の例としては、VVSP(115μmの厚さ/0.1μmの孔)、GVSP(115μmの厚さ/0.22μmの孔)、HVSP(115μmの厚さ/0.45μmの孔)、DVSP(115μmの厚さ/0.65μmの孔)、BVSP(115μmの厚さ/1.0μmの孔)、VVHP(107μmの厚さ/0.1μmの孔)、GVHP(125μmの厚さ/0.22μmの孔)、HVHP(115μmの厚さ/0.45μmの孔)またはDVHP(115μmの厚さ/0.65μmの孔)が挙げられる。
【0076】
好適なPVDF膜としては、市販の膜が挙げられる。PVDF膜の非限定例は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから入手可能である。一態様では、PVDF膜は、マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから得てよい。このようなPVDF膜の例は、VVSP、GVSP、HVSP、DVSP、BVSP、VVHP、GVHP、HVHPまたはDVHPである。
【0077】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、ポリスルホンから作製した微多孔質膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、このポリスルホン膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。
【0078】
本開示による態様では、微多孔質ポリスルホン膜は、0.01μm~2.0μmの範囲の孔を備える。別の態様では、微多孔質ポリスルホン膜113は、0.01μm~1.0μmの範囲の孔を備える。いくつかの態様では、微多孔質ポリスルホン膜113の孔サイズは、直径0.03μm~1.0μmである。別の態様では、微多孔質ポリスルホン膜113の孔サイズは、直径0.03μm~0.45μmである。
【0079】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるポリスルホン膜113のボイド率は、20~80%である。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるポリスルホン膜113のボイド率は、35~50%である。
【0080】
特定の態様では、微細孔が約0.2μmを超える透過性ポリスルホン膜は、流体をその膜に通す場合があり、流体を封じ込める力と、酸素透過性及び二酸化炭素透過性の両方が損なわれる。大きい孔サイズにおけるこの透過性に対処するために、接触角が150°を超えるいわゆる「超疎水性」膜を採用できる。本明細書で使用する場合、また、当該技術分野において知られているように、接触角は、固体表面の濡れ性を定量化するものであり、ヤングの式によって理論的に説明される。本開示による特定の態様では、材料の表面張力がより低く、上記の範囲でさえ流体が孔から滲出するため、非疎水性ポリスルホン材の使用は推奨されない。
【0081】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.3μm~0.8μmである透過性ポリスルホン膜113から作製されている。別の態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、直径0.22μm~0.8μmであってよい。一態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、0.2μm~1.0μmである。別の態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、0.1μm超、1.0μm未満であってよい。さらなる態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、約0.05μm~約1.0μmの範囲である。いくつかの態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、0.3μmまたは0.4μm超であってよい。別の態様では、多孔質ポリスルホン膜の微細孔は、0.5μmまたは0.6μm超であってよい。
【0082】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.0μm未満のポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μm未満のポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による特定の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μm未満のポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μm未満のポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0083】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.1μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.22μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.20μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示によるさらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.03μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.05μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.2μmのポリスルホン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0084】
本開示による態様では、ポリスルホン膜は、250μm未満の厚さであってよい。特定の態様では、この膜は、10μm超の厚さである。いくつかの態様では、ポリスルホン膜は、10~250μmの厚さであってよい。別の態様では、ポリスルホン膜は、10~125μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、ポリスルホン膜は、50~125μmの厚さ、75~125μmの厚さ、50~150μmの厚さ、75~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約20μmの厚さである。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約30μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約50μmの厚さである。さらなる態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約76μmの厚さである。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約120μmの厚さである。
【0085】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、100~125μmの厚さの透過性ポリスルホン膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、100~125μmの厚さである透過性ポリスルホン膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、50~150μmの厚さである透過性ポリスルホン膜113から作製されている。
【0086】
折り畳み可能な内側の血液容器の作製に適するポリスルホン膜であって、本開示に従って酸素透過性であるポリスルホン膜の例としては、SS003AH(10~250μmの厚さ/0.03μmの孔)、SS005AH(10~250μmの厚さ/0.05μmの孔)、SS010AH(10~250μmの厚さ/0.1μmの孔)、SS020AH(10~250μmの厚さ/0.2μmの孔)、SS045AH(10~250μmの厚さ/0.45μmの孔)、SS065AH(10~250μmの厚さ/0.65μmの孔)、SS080AH(10~250μmの厚さ/0.8μmの孔)またはSS120AH(10~250μmの厚さ/1.2μmの孔)が挙げられる。
【0087】
好適なポリスルホン膜としては、市販の膜が挙げられる。ポリスルホン膜の非限定例は、Pacific Membranesから入手可能である。一態様では、ポリスルホン膜は、SS120AH、SS080AH、SS065AH、SS045AH、SS020AH、SS010AH、SS005AHまたはSS003AHであってよい。
【0088】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、ポリオレフィンから作製した微多孔質膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、ポリオレフィン膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。
【0089】
本開示による態様では、微多孔質ポリオレフィン膜は、0.01μm~2.0μmの範囲の孔を備える。別の態様では、微多孔質ポリオレフィン膜113は、0.01μm~1.0μmの範囲の孔を備える。いくつかの態様では、微多孔質ポリオレフィン膜113の孔サイズは、直径0.03μm~1.0μmである。別の態様では、微多孔質ポリオレフィン膜113の孔サイズは、直径0.03μm~0.45μmである。
【0090】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるポリオレフィン膜113のボイド率は、20~80%である。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるポリオレフィン膜113のボイド率は、35~50%である。
【0091】
特定の態様では、微細孔が約1.0μm超のポリオレフィン膜の透過性では、流体を膜に通す場合があり、流体を封じ込める力と、酸素透過性及び二酸化炭素透過性の両方が損なわれる。大きい孔サイズにおけるこの透過性に対処するために、接触角が150°を超えるいわゆる「超疎水性」膜を採用できる。本明細書で使用する場合、また、当該技術分野において知られているように、接触角は、固体表面の濡れ性を定量化するものであり、ヤングの式によって理論的に説明される。本開示による特定の態様では、材料の表面張力がより低く、上記の範囲でさえ流体が孔から滲出するため、非疎水性ポリオレフィン材の使用は推奨されない。
【0092】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmの透過性ポリオレフィン膜113から作製されている。別の態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、直径0.22μm~0.8μmであってよい。一態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、0.2μm~1.0μmである。別の態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、0.1超、1.0μm未満であってよい。さらなる態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、約0.05μm~約1.0μmの範囲である。いくつかの態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、0.3または0.4μm超であってよい。別の態様では、多孔質ポリオレフィン膜の微細孔は、0.5または0.6μm超であってよい。
【0093】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.0μm未満のポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μm未満のポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による特定の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μm未満のポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μm未満のポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0094】
本開示による一態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.1μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.22μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.20μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示によるさらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μmのポリオレフィン膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0095】
本開示による態様では、ポリオレフィン膜は、250μm未満の厚さであってよい。特定の態様では、この膜は、10μm超の厚さである。いくつかの態様では、ポリオレフィン膜は、10~250μmの厚さであってよい。別の態様では、ポリオレフィン膜は、10~125μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、ポリオレフィン膜は、50~125μmの厚さ、75~125μmの厚さ、50~150μmの厚さ、75~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さ、または25~150μmの厚さであってよい。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約20μmの厚さである。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約30μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約50μmの厚さである。さらなる態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約76μmの厚さである。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約120μmの厚さである。
【0096】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、100~125μmの厚さである透過性ポリオレフィン膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、100μm~125μmの厚さである透過性ポリオレフィン膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、50μm~150μmの厚さである透過性ポリオレフィン膜113から作製されている。
【0097】
本開示に従って酸素透過性である折り畳み可能な内側の血液容器の作製に適するポリオレフィン膜の例としては、Zomorodiらに発行された米国特許第4,440,815号に記載されているものが挙げられる。
【0098】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製した微多孔質膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、PTFE膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。
【0099】
本開示による態様では、微多孔質PTFE膜は、0.01μm~2.0μmの範囲の孔を備える。別の態様では、微多孔質PTFE膜113は、0.01μm~1.0μmの範囲の孔を備える。いくつかの態様では、微多孔質PTFE膜113の孔サイズは、直径0.03μm~1.0μmである。別の態様では、微多孔質PTFE膜113の孔サイズは、直径0.03μm~0.45μmである。
【0100】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるPTFE膜113のボイド率は、20~80%である。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いるPTFE膜113のボイド率は、35~50%である。
【0101】
特定の態様では、約1.0μm超の微細孔を有するPTFE膜の透過性では、流体をその膜に通す場合があり、流体を封じ込める力と、酸素透過性及び二酸化炭素透過性の両方が損なわれる。大きい孔サイズにおけるこの透過性に対処するために、接触角が150°を超えるいわゆる「超疎水性」膜を採用できる。本明細書で使用する場合、また、当該技術分野において知られているように、接触角は、固体表面の濡れ性を定量化するものであり、ヤングの式によって理論的に説明される。本開示による特定の態様では、材料の表面張力がより低く、上記の範囲でさえ流体が孔から滲出するため、非疎水性PTFE材の使用は推奨されない。
【0102】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmの透過性PTFE膜113から作製されている。別の態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、直径0.22μm~0.8μmであってよい。一態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、0.2μm~1.0μmである。別の態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、0.1超~1.0μm未満であってよい。さらなる態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、約0.05μm~約1.0μmの範囲である。いくつかの態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、0.3または0.4μm超であってよい。別の態様では、多孔質PTFE膜の微細孔は、0.5または0.6μm超であってよい。
【0103】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.0μm未満のPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μm未満のPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による特定の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μm未満のPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μm未満のPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0104】
本開示による一態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.1μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.22μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.20μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示によるさらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μmのPTFE膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0105】
本開示による態様では、PTFE膜113は、250μm未満の厚さであってよい。特定の態様では、この膜は、10μm超の厚さである。いくつかの態様では、PTFE膜113は、10~250μmの厚さであってよい。別の態様では、PTFE膜113は、10~125または25~150μmの厚さであってよい。一態様では、PTFE膜113は、50~125μmの厚さ、75~125μmの厚さ、50~150μmの厚さ、75~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約30μmである。さらに別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約50μmである。さらなる態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約76μmである。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約120μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さである。
【0106】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、100~125μmの厚さの透過性PTFE膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、100~125μmの厚さである透過性PTFE膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、50~150μmの厚さである透過性PTFE膜113から作製されている。
【0107】
本開示に従って酸素透過性である折り畳み可能な内側の血液容器の作製に適するPTFE膜の例としては、カリフォルニア州サンマルコスのSumitomo Electric Interconnect Products製のPoreflon(登録商標)FP、WP及びHPシリーズのPTFE膜、ならびにペンシルベニア州アイビーランドのDonaldson Membranes製のTetratex(登録商標)2が挙げられる。
【0108】
好適なPTFE膜としては、市販の膜が挙げられる。PTFE膜の非限定例は、カリフォルニア州サンマルコスのSumitomo Electric Interconnect Productsと、ペンシルベニア州アイビーランドのDonaldson Membranesから入手可能である。一態様では、PTFE膜は、カリフォルニア州サンマルコスのSumitomo Electric Interconnect Products製のFP-010であってよい。
【0109】
特定の態様では、実質的に酸素透過性である好適な膜は、多層膜であってよい。特定の態様では、この多層膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。好適な多層膜としては、疎水化されたPVDF、ナイロン、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、疎水化されたポリプロピレン及びポリアクリロニトリルからなる群から選択した2つ以上の材料を有する多層膜が挙げられる。
【0110】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、押し出し単層膜、織単層膜、不織単層膜、押し出し多層膜、織多層膜または不織多層膜から作製した微多孔質膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、この多層膜は、実質的に酸素透過性である疎水性微多孔質膜である。
【0111】
本開示による態様では、微多孔質多層膜は、0.01マイクロメートル(μm)~2.0μmの範囲である孔を備える。別の態様では、微多孔質多層膜113は、0.01μm~1.0μmの範囲の孔を備える。いくつかの態様では、微多孔質多層膜113の孔サイズは、直径0.03μm~1.0μmである。別の態様では、微多孔質多層膜113の孔サイズは、直径0.03μm~0.45μmである。
【0112】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いる多層膜113のボイド率は、20~80%である。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102を作製するのに用いる多層膜113のボイド率は、35~50%である。
【0113】
特定の態様では、微細孔が約1.0μm超の多層膜の透過性では、流体をその膜に通す場合があり、流体を封じ込める力と、酸素透過性及び二酸化炭素透過性の両方が損なわれる。大きい孔サイズにおけるこの透過性に対処するために、接触角が150°を超えるいわゆる「超疎水性」膜を採用できる。本明細書で使用する場合、また、当該技術分野において知られているように、接触角は、固体表面の濡れ性を定量化するものであり、ヤングの式によって理論的に説明される。本開示による特定の態様では、材料の表面張力がより低く、上記の範囲でさえ流体が孔から滲出するため、非疎水性多層材の使用は推奨されない。
【0114】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmの透過性多層膜113から作製されている。別の態様では、多孔質多層膜の微細孔は、直径0.22μm~0.8μmであってよい。一態様では、多孔質多層膜の微細孔は、0.2~1.0μmである。別の態様では、多孔質多層膜の微細孔は、0.1μm超、1.0μm未満であってよい。さらなる態様では、多孔質多層膜の微細孔は、約0.05μm~約1.0μmの範囲である。いくつかの態様では、多孔質多層膜の微細孔は、0.3または0.4μm超であってよい。別の態様では、多孔質多層膜の微細孔は、0.5または0.6μm超であってよい。
【0115】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが1.0μm未満の多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μm未満の多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による特定の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μm未満の多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μm未満の多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0116】
本開示による一態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.1μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.22μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.20μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示によるさらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.45μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.65μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。本開示による別の態様では、酸素枯渇器具10は、微細孔サイズが0.8μmの多層膜113を備える折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0117】
本開示による態様では、多層膜113は、250μm未満の厚さであってよい。特定の態様では、この膜は、10μm超の厚さである。いくつかの態様では、多層膜113は、10~250μmの厚さであってよい。別の態様では、この多層膜は、10~125μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。一態様では、多層膜113は、50~125μmの厚さ、75~125μmの厚さ、50~150μmの厚さ、75~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さ、100~125μmの厚さ、150~250μmの厚さまたは25~150μmの厚さであってよい。別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約30μmである。さらに別の態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約50μmである。さらなる態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約76μmである。一態様では、折り畳み可能な内側の血液容器102の膜113は、約120μmの厚さである。
【0118】
本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、100~125μmの厚さの透過性多層膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、100μm~125μmの厚さである透過性多層膜113から作製されている。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、孔サイズが直径0.1μm~0.8μmであるとともに、50μm~150μmの厚さである透過性多層膜113から作製されている。
【0119】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、ポリ塩化ビニル(PVC)から作製した膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、厚みが5μm~250μm、より好ましくは約10μm~約100μmのPVC膜から作製できる。
【0120】
折り畳み可能な血液容器の製造にPVCを用いることは、当該技術分野において周知である。様々なPVCの配合物に様々な可塑剤を用いることも、当該技術分野において周知であり、赤血球の長期保存用に、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)を用いることを含む。PVC-DEHPから折り畳み可能な血液容器を典型的に製造する際には、一対のフィルムの高周波(RF)溶着を利用して、従来の形式でバッグ構造を作製し、この際の個々のフィルムの厚みは、約350μm~約400μmである。例示的なPVC-DEHPフィルムは、Renolit ES-3000というフィルム(カリフォルニア州コマース市のAmerican Renolit Corp.)である。
【0121】
このようなフィルムの酸素透過性が比較的低いことと、血小板の保存には高い酸素透過性が必要なことから、折り畳み可能な血液容器の製造には、PVC用の他の可塑剤も有用であることが分かっており、シトレートなどの使用が挙げられる(例えば、“The Role of Poly(Vinyl Chloride) in Healthcare”by Colin R.Blass,copyright 2001 Rapra Technology,Ltd.,ISBN:1-85957-258-8を参照されたい)。PVC-シトレートフィルムの好適な例は、Renolit ES-4000というフィルム(カリフォルニア州コマース市のAmerican Renolit Corp.)である。
【0122】
本開示は、実質的に酸素透過性である折り畳み可能な血液容器102での使用に適するPVC材を提供する。高い酸素透過性、RF溶着及び接合、ならびに高い引張強度という所望の特徴を有する折り畳み可能な血液容器を提供するには、厚みが約5μm~約250μm、より好ましくは約10μm~約100μmのRenolit ES-4000などのPVC-シトレートフィルムを用いるのが好適である。
【0123】
本開示は、実質的に酸素透過性であるとともに、シリコーンから作製した膜である折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、厚みが15μm~100μmのシリコーン膜から作製できる。本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、厚みが5μm~500μmのシリコーン膜から作製できる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、5μm~200μmとすることができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、20μm~120μmとすることができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、30μm~120μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、50μm~120μmの厚さである。さらなる態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、76μm~120μmとすることができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、20μm~50μmの厚さとすることができる。本開示は、20μmの厚さである折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、15μmの厚さである。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、30μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、50μmの厚さである。追加の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、120μmの厚さである。
【0124】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、厚みが20μm~400μmのシリコーン膜から作製できる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、20μm~200μmとすることができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、40μm~300μmとすることができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、40μm~400μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、300μm~450μmの厚さである。さらなる態様では、折り畳み可能な血液容器102の厚みは、350μm~450μmとすることができる。本開示は、約450μmの厚さである折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、425μmの厚さである。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、400μmの厚さである。追加の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、350μmの厚さである。
【0125】
好適なシリコーン膜としては、市販の膜が挙げられる。シリコーン膜の非限定例は、Wacker Siliconesから入手可能であり、医療用グレードのシリコーンシート膜のSilpuran(登録商標)ブランド(ミシガン州エードリアンのWacker Silicones)と、Polymer Sciences PS-1033 P-Derm(登録商標)シリコーンエラストマー膜(インディアナ州モンティセロのPolymer Sciences,Inc.)などである。一態様では、シリコーン膜は、Polymer Sciences PS-1033またはWacker Silpuran(登録商標)6000シリコーンであってよい。シリコーン膜は、いくつか例を挙げると、Wacker Silicones(ミシガン州エードリアン)、Shin-Etsu Silicones of America(オハイオ州アクロン)、NuSil Technology(カリフォルニア州カーピンテリア)及びBlue Star Silicones(ニュージャージー州イーストブランスウィック)のなどの多くのシリコーン供給業者から入手可能である様々な液体シリコーンゴム(LSR)材から作製できる。
【0126】
本開示による一態様では、折り畳み可能な血液容器102は、圧縮成形、射出成形及びインサート成形のような様々な成形法と、シリコーン接着剤を用いた、シリコーンシートの接着剤接合によって、シリコーンから製造できる。本開示による一態様では、一対のシリコーンシートは、継ぎ目に適切な位置でシリコーン注入チューブ部分を設けた状態で、シリコーン接着剤を用いて、周縁を接合する。本開示による別の態様では、シリコーン液体ゴムを型の上に射出成形して三辺形状を作り、続いて、シリコーン接着剤を用いて、シリコーン注入チューブの周りを囲む状態で、残りの第4の辺のクロージャーにさらに接合して閉じる。本開示による別の態様では、シリコーン液体ゴムを型の上に射出成形して三辺形状を作り、続いて、注入チューブが組み込まれた残りの第4の辺のクロージャー形状にインサート成形する。
【0127】
本開示は、引裂耐性を有する折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本明細書で使用する場合、「引裂耐性」または「引裂強度」は、kN/mで測定する。本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、引裂耐性も有する酸素透過性材料から作製しなければならない。引裂耐性の測定は、当該技術分野において知られており、例えば、ASTMD-412であり、この測定法は、引張強度、モジュラス及び伸度を測定するのにも用いることができる。特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、引裂の形成(例えば、引裂開始)に耐性のある酸素透過性材料から作製しなければならない。引裂開始と引裂伝播の測定方法は、当該技術分野において知られており、例えばASTM D-624である。その他の方法としては、DIN 53 504-S1に従って引張強度と破断伸度を測定することが挙げられる。
【0128】
本開示による一態様では、折り畳み可能な血液容器102は、引張強度が少なくとも2.4N/mm2の酸素透過性材料から作製しなければならない。
【0129】
本開示は、酸素に結合して、周囲から酸素を除去できる吸収剤を提供するとともに、これを含む。別段の定めのない限り、「吸収剤」という用語は、酸素吸収剤及び脱酸素剤を指す。本明細書で使用する場合、「脱酸素剤」または「酸素吸収剤」は、使用条件下でO2と不可逆的に結合するかまたは化合する物質である。「酸素吸収剤」という用語は、本明細書では、「脱酸素剤」と同義的に用いてよい。本開示による特定の態様では、物質は、酸素と不可逆的に結合するかまたは化合することができる。別の態様では、酸素は、吸収剤物質に結合するとともに、放出速度koffが非常に遅い。一態様では、酸素は、吸収剤物質の何らかの成分と化学的に反応して、別の化合物に変換されることができる。結合した酸素の解離速度が、血液の滞留時間よりも大幅に遅いいずれかの物質が、脱酸素剤として機能できる。
【0130】
本明細書で使用する場合、吸収剤の量は、体積(例えば、立方センチメートル(cc)またはミリリットル(ml))によって、標準の温度と圧力(例えば0℃(273.15ケルビン)及び1.01×105pa(100kPa、1バール、0.986気圧、760mmHg)の圧力)で測定した場合に特定の酸素結合能を有するものとして示されている。別の態様では、酸素吸収剤及び脱酸素剤はさらに、二酸化炭素に結合して、周囲から二酸化炭素を除去することできる。特定の態様では、吸収剤103は、無毒性の無機塩及び/または有機塩と、酸素、二酸化炭素または酸素及び二酸化炭素に対する反応性が高い二価鉄またはその他の材料との混合物であってよい。特定の態様では、酸素吸収剤または脱酸素剤が、二酸化炭素吸収剤と組み合わされている。別の態様では、酸素吸収剤の二酸化炭素結合能の有無は、必須ではない。
【0131】
好適な酸素吸収剤または脱酸素剤は、当該技術分野において知られている。本開示による好適な酸素吸収剤の最小酸素吸収速度は0.44ml/分である。好適な吸収プロファイルを有する吸収剤は、60分以内に少なくとも45mlのO2、120分以内に70mlのO2及び180分以内に80mlのO2を結合する。好適な吸収剤は、結合能と結合速度の両方がこれよりも高くてもよい。
【0132】
脱酸素剤または吸収剤の非限定例としては、鉄粉及び有機化合物が挙げられる。O2吸収剤の例としては、コバルトのキレート、鉄及びシッフ塩基が挙げられる。O2吸収剤のさらなる非限定例は、Bulowらに発行された米国特許第7,347,887号、Ramprasadらに発行された米国特許第5,208,335号及びSieversらに発行された米国特許第4,654,053号に見ることができ、これらの特許はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される。酸素吸収剤材料は、繊維、マイクロファイバー、マイクロスフィア、微粒子及びフォーム内に形成または導入してもよい。
【0133】
特定の態様では、好適な吸収剤としては、Multisorb Technologies(ニューヨーク州バッファロー)、Sorbent Systems/Impak Corporation(カリフォルニア州ロサンゼルス)またはMitsubishi Gas Chemical America(MGC)(ニューヨーク州ニューヨーク)から得られるものが挙げられる。例示的な酸素吸収剤としては、Multisorb Technologies StabilOx(登録商標)包装体、Sorbent Systems P/N SF100PK100 100ccの酸素吸収剤及びMitsubishi Gas Chemical America Ageless(登録商標)SS-200酸素吸収剤が挙げられる。MGCは、本開示の方法と器具に適する吸収剤も供給している。このような好適な酸素吸収剤としては、MGC Ageless(登録商標)及びSS-200酸素吸収剤が挙げられる。
【0134】
本開示による態様では、吸収剤は、ポリマー骨格と複数のペンダント基を持つ酸化性有機ポリマーであってよい。ポリマー骨格を持つ吸収剤の例としては、飽和炭化水素(<0.01%炭素-炭素二重結合)が挙げられる。いくつかの態様では、この骨格は、エチレンまたはスチレンのモノマーを含むことができる。一態様では、ポリマー骨格は、エチレン性であってよい。別の態様では、酸化性有機化合物は、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー(EVCH)であってよい。置換部分と触媒のさらなる例は、Yangらによる米国特許出願公開第2003/0183801号に示されており、この特許出願は、参照により、その全体が本明細書に援用される。さらなる態様では、酸化性有機ポリマーは、置換炭化水素部分も含むことができる。脱酸素ポリマーの例としては、Chingらによる国際公開第W099/48963号に記載されているものが挙げられ、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。脱酸素物質としては、Ebnerらに発行された米国特許第7,754,798号、Ebnerらに発行された米国特許第7,452,601号またはEbnerらに発行された米国特許第6,387,461号に示されているものを挙げてよく、これらの特許はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0135】
本明細書で使用する場合、本開示の吸収剤は、透過性封入袋、容器、外被袋などに含まれていなくても、含まれていてもよい。特定の態様では、吸収剤は、空隙率が高く、気体の輸送に対する耐性が本質的にない材料で作られた1つ以上の小袋に入っている。このような材料の例としては、紡糸ポリエステルフィルム、孔開き金属箔及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0136】
本開示はさらに、実質的に酸素不透過性である外側物品の1つ以上のラミネート層として組み込まれた吸収剤を含むとともに、これを提供する。ソフト接触ラミネート、熱ラミネートまたは溶剤ラミネートを含め、当該技術分野において知られている方法を用いて、外側容器を作製するのに用いるシートに、上述のようなポリマー吸収剤をラミネートしてよい。
【0137】
本開示はさらに、多孔質マイクログラスファイバーの孔の内側に形成されているかまたは他の不活性材料に封入されている吸収剤を含むとともに、これを提供する。遷移金属錯体を多孔質材料の孔に封入することは、孔の内側で最終的な分子を、それよりも小さい前駆体を反応させることによって作製するシップインボトル合成を用いることによって行ってよい。このような封入吸収剤の例は、例えば、Kuraoka,et al.,“Ship-in-a-bottle synthesis of a cobalt phthalocyanine/porous glass composite membrane for oxygen separation,”Journal of Membrane Science,286(1-2):12-14(2006)に記載されているように、当該技術分野において知られており、この文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される。いくつかの態様では、多孔質グラスファイバーは、Beaverらに発行された米国特許第4,748,121号に示されているように製造してよく、参照により、その全体が本明細書に援用される。別の態様では、吸収剤は、抄紙/湿式不織布製造装置を用いて、多孔質シート製品として形成できる。脱酸素剤を含むシートは、Inoueに発行された米国特許第4,769,175号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されているようなものであってよく、このシートは、形成した後に、シリコーンフィルムで被覆することができる。
【0138】
本明細書で使用する場合、「脱二酸化炭素剤」は、使用条件下で、二酸化炭素と結合または化合する物質である。「二酸化炭素吸収剤」という用語は、本明細書では、「脱二酸化炭素剤」と同義的に用いてよい。特定の態様では、二酸化炭素吸収剤は、酸素との反応性でなくても、酸素との反応性が最小限であってもよい。別の実施形態では、酸素吸収剤が、脱二酸化炭素する二次的な機能を呈してもよい。脱二酸化炭素剤としては、金属酸化物及び金属水酸化物が挙げられる。金属酸化物は、水と反応して、金属水酸化物を生成する。金属水酸化物は、二酸化炭素と反応して、水と金属炭酸塩を生成する。本開示による特定の態様では、物質は、CO2と不可逆的に結合するかまたは化合してよい。本開示による態様では、物質は、ヘモグロビンよりも高い親和性で、CO2と結合してよい。別の態様では、吸収剤物質は、高い親和性でCO2と結合して、血液またはRBC細胞質に存在する炭酸が放出されて、吸収剤に吸収されるようになっていてもよい。別の態様では、CO2は吸収剤物質に結合し、放出速度koffが非常に遅い。一態様では、二酸化炭素は、吸収剤物質のいくつかの成分と化学的に反応して、別の化合物に変換されることができる。
【0139】
脱二酸化炭素剤は、当該技術分野において知られている。本開示による特定の態様では、脱二酸化炭素剤は、酸化カルシウムであってよい。酸化カルシウムが水と反応すると、水酸化カルシウムが生成され、その水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムと水を形成できる。本開示による特定の態様では、血液由来の水蒸気が内側の酸素透過性容器を通って拡散することによって、水酸化カルシウムを生成するための水を得られる。別の態様では、この水は、実質的に酸素不透過性である外側容器を通じて、周囲から供給してもよい。さらに別の態様では、水は、酸素枯渇器具の外側容器とともに含めてもよい。
【0140】
脱二酸化炭素剤の非限定例としては、Multisorb Technologies(ニューヨーク州バッファロー)によって供給されている脱酸素剤及び脱二酸化炭素剤が挙げられる。脱酸素剤が、脱二酸化炭素する二次的な機能を呈してもよい。
【0141】
本開示による態様では、所望の結果が得られるように、O2枯渇媒体とCO2枯渇媒体を所望の比でブレンドしてよい。
【0142】
本開示はさらに、小袋に入った吸収剤を含むとともに、これを提供する。本明細書で使用する場合、「小袋」は、酸素吸収剤、二酸化炭素吸収剤または酸素吸収剤(複数可)と二酸化炭素吸収剤(複数可)とを組み合わせたものを封入及び収容するいずれかの封入袋である。本開示による小袋は、酸素透過性であるとともに、二酸化炭素透過性でもある外包材に収容されている。特定の実施形態では、この外包材は、2つ以上の材料を組み合わせたものであってよく、その材料の少なくとも1つが、酸素透過性かつ二酸化炭素透過性である。好適な外包材は、既知の生体適合性プロファイルを有するか、またはISO10993に準拠している。
【0143】
小袋は、シールして、中身の吸収剤が外包材に完全に収容されるとともに、吸収剤が漏れたり、または別段の形でその外包パッケージから出たりしないようにする。小袋は、いずれの形状をしていてもよいが、典型的には、長方形または正方形をしている。一態様では、小袋は、約50×60mmである。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり30ccの酸素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり60ccの酸素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり120ccの酸素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり30~120ccの酸素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり30~120ccの酸素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、小袋1袋当たり50~200ccの酸素と結合する。本開示による特定の態様では、小袋の総酸素吸着容量は、STPにおいて、100ccのO2である。本開示の特定の別の態様では、小袋の総酸素吸収容量は、STPにおいて、少なくとも200ccのO2である。
【0144】
本開示による態様では、酸素吸収剤103は、1つ以上の小袋に入れてもよい。別の態様では、酸素吸収剤103は、1つの大きい小袋に入っている。別の態様では、酸素吸収剤103は、折り畳み可能な内側容器102と外側容器101との間のヘッドスペース内に配分された2つの小袋に入っている。さらに別の態様では、酸素吸収剤103は、折り畳み可能な内側容器102と外側容器101との間のヘッドスペース内に配分された4つの小袋に入っている。本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、2~20個の吸収剤パッケージを含んでよい。
【0145】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、1つ以上の小袋に入った吸収剤103を1~50グラム含む。一態様では、酸素枯渇器具10は、1つ以上の小袋に入った吸収剤103を1~100グラム含む。一態様では、酸素枯渇器具10は、1つ以上の小袋に入った吸収剤103を25~75グラム含む。さらなる態様では、酸素枯渇器具10は、吸収剤103を約25グラム含む。さらに別の態様では、酸素枯渇器具10は、吸収剤103を約50グラム含む。一態様では、酸素枯渇器具10は、1つ以上の小袋に入った吸収剤103を約35または45グラム含む。一態様では、酸素枯渇器具10は、1つ以上の小袋に入った吸収剤103を約10または15グラム含む。小袋は、正方形、長方形、円形または楕円形であることができ、外周を40~150mmとすることができる。
【0146】
本開示による小袋は、二酸化炭素吸収剤をさらに含んでよい。一態様では、酸素吸収剤103は、二酸化炭素も吸着する。一態様では、酸素吸収剤103は、STPにおいて、30ccの二酸化炭素と結合する。一態様では、酸素吸収剤103は、少なくとも170ccの酸素と、少なくとも30ccの二酸化炭素と結合し、この場合、これら両方の気体をSTPで測定した場合である。
【0147】
本開示は、実質的に酸素不透過性である外側容器101を提供するとともに、これを含む。上で論じたように、外側容器101を接合したり、溶着したり、折り畳んだり、または別段の形で組み立てるときに、酸素バリアの完全性が保持されなければならない。外側容器101の組み立て不良により、酸素枯渇器具10の保管寿命が損なわれたり、または血液から酸素を枯渇させるという意図する目的を果たせなくなったりする。重要なことに、酸素の枯渇が不十分な血液は、保存中に、枯渇による恩恵が得られず、患者に輸血すると、かなり悪い影響を及ぼすことがある。採血及び枯渇の要件を満たすのに加えて、標準ポート303を通じて血液のサンプルを取ることと、採取した血液に様々な添加剤を導入することが一般的である。より具体的には、採取した血液のほぼすべてに、抗凝固剤を採血時または採血中に入れる。
【0148】
採取した血液に物質を入れて、酸素を枯渇させた血液を適切な嫌気保存バッグに移す必要性に対応するために、酸素枯渇器具10は、1つ以上の注入口/排出口30をさらに備えてよい。本明細書に示されているように、酸素不透過性の外側容器101(及び外側容器201)を横に動かしたときに、注入口/排出口30が、望ましくない酸素侵入源とならないように、外側容器101(及び外側容器201)の組み立てには、特別な配慮が必要である。
【0149】
本開示による態様では、外側容器101は、1つ以上の注入口/排出口30を備える。特定の態様では、1つ以上の注入口/排出口30は、スパイクポート303をさらに備える。
【0150】
完全な不透過性をもたらす材料はほとんどなく、外側容器101を接合したり、溶着したり、折り畳んだり、または別段の形で組み立てると、不透過性の高い材料でも損なわれることがあるのは注目に値する。下で論じるように、酸素枯渇器具10は、任意のスパイクポート303と注入口/排出口30がさらに組み込まれていてもよく、また、折り畳み可能な内側の血液容器102の容積の変化に対応するように設計されていなければならない。したがって、特殊な設計要素と製造方法を組み込んで、不透過性のバリアの完全性を確保するように特別に配慮する。
【0151】
採血キット及びシステムで使用するスパイクポート303は、当該技術分野において広く知られており、Vitalmed#20391(マサチューセッツ州レイクビルのVitalmed,Inc.)及びQosina65842(ニューヨーク州エッジウッドのQosina Corp.)などの製品が挙げられる。これらのポートは典型的には、PVCから成形し、使用前において滅菌バリアをもたらす取り外し可能なキャップを有し、また、内容物にある程度の酸素不透過性をもたらす。いくつかの態様では、スパイクポート303は、外側容器フィルムの易破壊シール部分によって覆われており、それによって、滅菌バリアをもたらすとともに、酸素不透過性の程度をさらに高めている。改善された酸素不透過性は酸素枯渇器具10を有するキットとシステムの保管寿命が延びるため望ましい。
【0152】
明らかなように、従来のポート、注入口及び排出口は、望ましくない酸素侵入源となる可能性があり、それは、そのポート、注入口または排出口を外側容器101に接合するのに用いる材料と方法の両方の選択に左右される。材料の接合方法は、当該技術分野において周知である。本明細書に示されているように、注入口/排出口30は、外側容器101(または外側容器201)に対して酸素不透過性のシール部を作る接合部302を用いて外側容器101(または外側容器201)に接合されたチューブ301を備える。一態様では、接合部302は、約210°Fに加熱して、この温度に保持した一定のヒートシールダイを用いることによって得られる。一態様では、加熱したダイの間にフィルムを配置し、型締めして、熱溶着されたシームを得る。特定の態様では、約5秒でヒートシールを作る。特定の態様では、シールダイは、中間構成要素を収容するように、機械加工で取り除かれた溝部分を有する。いくつかの態様では、チューブ301は、下に論じられているように、ある長さの多層チューブまたは小ブロックの機械加工ポリマーもしくは成形物であってよい中間構成要素を含む。特定の態様では、成形物は、ポリエチレンなどのポリオレフィンから作製されている。本開示による態様では、上記の溝の寸法は、上記の構成要素の形状よりも約10%小さく、それによって、シール中に圧縮を行う。
【0153】
いくつかの態様では、酸素不透過性の接合部は、外側容器101のシームにヒートシールされている多層チューブ部分で構成されている。特定の態様では、この多層チューブは、ポリエチレンの外層と、PVC(ポリ塩化ビニル)の内層と、EVA(エチル-ビニル-アルコール)の中間層で構成されている(マサチューセッツ州アソルのPexco,Inc.)。いくつかの態様では、PVCチューブの追加の部分が、例えばシクロヘキサノンを用いて、多層チューブの中に溶剤接合されている。
【0154】
いくつかの態様では、注入口/排出口30は、中央に孔のある、ポリエチレンの小さいダイヤモンド形ブロックから作製したチューブ301で構成されていて、そのダイヤモンド形ブロックが、外側容器のシームにヒートシールされており、酸素不透過性の接合部302をもたらすようになっているとともに、中央の貫通孔が、中身との流体連通性をもたらすようになっている。一態様では、Loctite4310、Masterbond X17または3M Scothweld4693などのポリエチレンに接合できる酸素不透過性の接着剤を用いて、PVCチューブの部分が、ダイヤモンド形ブロックの中央の孔の中に接合されており、それによって、酸素不透過性の外側容器を介した中身への流体連通性をもたらす。別の態様では、当該技術分野において知られている方法を用いて、多層チューブをダイヤモンド形ブロックの中央の孔に接合できる。別の態様では、標準的なPVC点滴チューブの代わりに多層チューブを用いて、酸素バリア特性を高めることができる。
【0155】
折り畳み可能な容器のユーザーは、中身を利便的に充填及び取り出す必要があり、ISO3826の血液容器の規格に従って、2分以内に中身をすべて出すことができなければならない。外側容器は、折り畳み可能な容器を拘束して、その容器の膨張を防ぐことによって、充填時間を短縮できる。したがって、いくつかの実施形態では、血液保存器具はさらに、折り畳み可能な容器に無制限に充填できるようにする拡張機構で構成されている。いくつかの実施形態では、この拡張機構は、外側容器の1つ以上の縁沿いにあるマチ付きの折り目で構成されている。典型的には、内側容器を拡張するには、約4分の1インチの折り目で十分であり、この折り目のひだは、末端において、シームの中にシールされている。いくつかの実施形態では、拡張機構は、外側容器の底部に沿ってシールされている、バリアフィルムの第3のパネルで構成されており、このパネルによって、3次元のバッグが得られる。
【0156】
酸素枯渇器具10の開発の際に、好適な枯渇動態を得るには、折り畳み可能な内側の血液容器102のチャンバーのサイズ、形及び数を制御する必要があることを発見した。より具体的には、透過性の高い材料を用いても、標準的な血液バッグ構成を用いると、不十分であることが分かったとともに、反応動態がかなり遅くなった。理論によって限定されるものではないが、脱酸素化は、溶解酸素のヘモグロビンからの放出、溶解酸素の赤血球細胞質内への拡散、赤血球膜を通じた溶解酸素の拡散を含む多段階式のプロセスであると仮定される。また、理論によって限定されるものではないが、酸素に対する親和性が非常に高い高濃度のヘモグロビンは、溶解酸素の細胞質内への拡散速度を大きく低下させると仮定される。同様に、溶解酸素が血漿膜を通って血漿に至ると、溶解酸素の拡散は、他の赤血球への吸収と結合によってさらに制限される。また、理論によって限定されるものではないが、気体透過性膜で、溶解酸素に対するさらなる拡散バリアが発生し、この膜では、溶解酸素は、膜を通る必要があるのみならず、溶解フェーズから気体フェーズに状態も変化させると仮定される。その後の、吸収剤による拡散と吸着は、気体状態で行われ、外側容器101内にヘッドスペースを組み込んで保持することによって、最大化する。したがって、気体酸素の拡散は、折り畳み可能な内側の血液容器102の表面から酸素吸収剤103までのヘッドスペース内の濃度勾配を保持することによって、最大化すると考えられる。また、理論によって限定されるものではないが、吸収動態が速く、結合能が高く、この両方を兼ね備える吸収剤を選択することによって、気体酸素の好適な拡散勾配を保持して、酸素枯渇器具10における迅速な酸素枯渇動態を促すと考えられる。
【0157】
本開示は、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10であって、体積に対する表面の比率が4.75平方センチメートル/ミリリットル(cm2/ml)~6.9cm2/mlであるとともに、外側容器101に封入されている折り畳み可能な内側の血液容器102を備える酸素枯渇器具10を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、体積に対する表面の比率が4.84cm2/ml~6.9cm2/mlであるとともに、外側容器101に封入されている折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。特定の態様では、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、体積に対する表面の比率が5.0cm2/ml~6.9cm2/mlであるとともに、外側容器101に封入されている折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。いくつかの態様では、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、体積に対する表面の比率が5.0cm2/ml~6.5cm2/mlであるとともに、外側容器101に封入されている折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。いくつかの態様では、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、体積に対する表面の比率が5.5cm2/ml~6.5cm2/mlであるとともに、外側容器101に封入されている折り畳み可能な内側の血液容器102を備える。
【0158】
本明細書で使用する場合、体積に対する表面と、体積に対する表面積は、本開示にわたって、同義的に使用する。本明細書で使用する場合、体積に対する表面の比率は、約1パイントまたは450~500mlという標準ユニットの全血に関して定める。当業者には明らかなように、1ユニット未満の血液を採取した場合には、体積に対する表面の比率がかなり高くなり、酸素枯渇器具10は、修正しなくても、数分の1ユニットの血液を採取するのに適する。1ユニットを超える血液を採取する際には、望ましい迅速な血液枯渇動態をもたらすために、折り畳み可能な血液容器102のサイズを調節する必要があるであろう。1ユニットを超える血液の採取に酸素枯渇器具10を適合させるために必要な修正の種類は、当該技術分野における通常の知識のレベル内である。
【0159】
本開示は、濃厚赤血球の採取及び枯渇作業のための酸素枯渇器具10をさらに含むとともに、これを提供する。添加液中の濃厚赤血球のフルユニットは、約280±60mlを含む。
【0160】
本開示による一態様では、折り畳み可能な血液容器102の体積に対する表面の比率は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、少なくとも4.84平方センチメートル/ミリリットル(cm2/ml)である。理論によって限定されるものではないが、体積に対する表面の比率を向上させることによって、折り畳み可能な内側の血液容器102内の溶解酸素の拡散距離を短くすることで、血液自体によって、特に、赤血球とヘモグロビンによって生じる拡散の制限を解消できると考えられる。一態様では、血液容器102の体積に対する表面の比率は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、少なくとも5.0cm2/mlである。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の体積に対する表面の比率は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、少なくとも5.5cm2/mlである。さらなる態様では、折り畳み可能な血液容器102の体積に対する表面の比率は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、少なくとも6.0cm2/mlである。いくつかの態様では、折り畳み可能な血液容器102の体積に対する表面の比率は、酸素を枯渇するために血液を充填したときに、少なくとも6.5cm2/mlである。
【0161】
本開示は、折り畳み可能な内側の血液容器102の寸法を修正することによって、血液の脱酸素化動態を向上させることも含むとともに、これを提供する。理論によって限定されるものではないが、高さを低くすると、血液中の赤血球の平均拡散距離は最短になり、脱酸素化動態の向上につながる。本開示による特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、血液の充填前には、25.4cm×30.5cm×0.02cmであり、血液の充填後には、高さが約1.5cmとなる。本開示による別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、血液の充填前には、17.5cm×28.0cm(7×11インチ)×0.04cmであり、血液の充填後には、高さが約2.0cmとなる。本開示による別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、血液の充填前には、25.0cm×60.0(10×23インチ)cm×0.04cmであり、血液の充填後には、高さが約0.3cmとなる。
【0162】
特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102の高さは、空のときには0.005cm以下である。一態様では、折り畳み可能な血液容器102の高さは、0.1cm以下である。特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102の高さは、0.002~0.1cmである。血液を充填したときには、折り畳み可能な血液容器102の高さは、0.3cm以下である。一態様では、血液を充填したときには、折り畳み可能な血液容器102の高さは、1.5cm以下である。特定の態様では、血液を充填したときには、折り畳み可能な血液容器102の高さは、0.2cm~2.5cmである。
【0163】
本開示は、既存の器具を用いて、既存の採血プロトコールを導入するのに適する寸法の酸素枯渇器具10も含むとともに、これを提供する。既存の技術を認識しながら酸素枯渇器具10を設計すると、集中処理センターにおける設備コストが低下し、さらに、一貫性と信頼性が向上する。本明細書で使用する場合、酸素枯渇器具10の寸法は主に、外側容器101の長さと幅に制限され、この際、バッグの高さは、約1パイントまたは450~500mlの全血(「1ユニットの血液」に相当する)を収容する折り畳み可能な血液容器102の要件によって決まる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の寸法は、約220~380mlの濃厚赤血球(1ユニットの濃厚赤血球に相当する)を収容するように定める。さらに、酸素枯渇器具10の高さは、1つ以上の吸収剤包装体と、適切なヘッドスペースを保つ目的で含める器具との存在によって制約を受ける。これらの考察から、酸素枯渇器具10の外側容器101の寸法に対する制約が、折り畳み可能な血液容器102の寸法を必然的に制限することが明らかになる。したがって、折り畳み可能な血液容器102は、流体連通し合う1つ以上のチャンバーに分けてよい。
【0164】
本開示による態様では、酸素枯渇器具10は、既存の血液振盪装置に入るように設計されている。特定の態様では、酸素枯渇器具10は、振盪器と混合テーブル内の利用可能な空間を効率的に利用するような寸法になっている。一態様では、酸素枯渇器具10は、血小板振盪器、例えばHelmer Labs Platelet Agitator,Model PF96内の区域を最大限に利用する寸法になっている。酸素枯渇器具10の好適な寸法としては、1個、2個、4個、6個、8個、10個、またはこれよりも多いバッグを水平振盪器または混合器表面の上に配置できる寸法が挙げられる。
【0165】
酸素枯渇器具10内の折り畳み可能な血液容器102の面積は、約900~1800cm2である。したがって、スペーサー110をさらに備える酸素枯渇器具10では、気体の置換に利用可能な表面積が効果的に倍増する。スペーサー110が存在しないと、下面上の折り畳み可能な血液容器102の膜113の置換速度が大きく低下し、透過性の膜が不透過性のフィルムに接触する。
【0166】
本開示は、例えば図1A図1C図6図7図9A図9B図10及び図11に示されているように、結合層105をさらに備える折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本明細書で使用する場合、結合層105は、膜113(114)を合わせて結合(接合)する中間材を含む。特定の態様では、結合層105は、既定の形状をした固体材料を含む。下で論じられているように、既定の形状をした結合層は、丸い角部及びその他の混合促進形状を含む幾何学的特徴部121を組み込めるようにする。特定の態様では、結合層105は、乾燥または硬化すると膜113間を接着接合させる液体またはゲルを含む。したがって、シリコーン膜113を備える折り畳み可能な血液容器102は、液体シリコーン結合層105によって接合できる。特定の態様では、シリコーンゴム結合層116は、液体シリコーンゴム(LSR)とすることができる。
【0167】
本開示は、膜113よりも融点が低い固体材料から作製した結合層105をさらに備える折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。融解温度が低い結合層105を設けることによって、微多孔質膜の構造の損傷(融解及び/または結晶化を含む)なしに、結合層105を介して膜113を熱接合できる。一態様では、結合層105は、融解温度が微多孔質膜113の融解温度よりも少なくとも3℃低くなるように選択されている。別の態様では、結合層105の融解温度は、微多孔質膜113の融解温度よりも少なくとも10℃低い。別の態様では、好適な結合層105は、結合層と、接合する微多孔質膜113(114)との温度差が最大になるように選択されている。
【0168】
本開示による態様では、結合層105は、LDPEから選択されており、微多孔質膜113は、ポリスルホン、疎水性ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、セルロースエステル、セルロースの混合エステル(MCE)、ポリエーテルスルホン(PES)、疎水化されたポリプロピレン及びポリアクリロニトリルからなる群から選択されている。一態様では、結合層105はLDPEであり、微多孔質膜113は、ポリスルホンまたは疎水性ポリビニリデンフルオライド(PVDF)である。本開示は、[0081]~[00123]段落[訳者注:PCT/US2016/021794では22頁8行目~32頁21行目にあり、本明細書では[0066]~[0108]に該当]に詳しく示されているように、好適な微多孔質膜を選択することを提供するとともに、これを含み、さらに、[00124]~[00133]段落[訳者注:PCT/US2016/021794では32頁22行目~35頁1行目にあり、本明細書では[0109]~[0118]に該当]に示されているような多層膜113を含む。
【0169】
本開示は、結合層を有する折り畳み可能な血液容器102であって、例えば図9Bに示されているように、その結合層が、ギャップ109として示されているシールを越えて延びている血液容器102を構築することを提供するとともに、これを含む。
【0170】
本開示は、シールの末端と結合層の末端との間の空間のギャップ109を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、ギャップ109は、0.05~2.5cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が0.1cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が0.5cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が1cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が1.5cmである。いくつかの態様では、ギャップ109は、幅が0.5~1.5cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が2cmである。別の態様では、ギャップ109は、幅が2~2.5cmである。別の態様では、ギャップ109は、少なくとも幅が2.5cmである。
【0171】
図9Bに示されているように、シール107を膜113にラミネートしてから、シール108として、互いにラミネートする。図7に示されているように、結合層105のラミネートは、2つの工程で行うことができ、まず、別個の膜113にラミネートしてから、第2の工程で、予めラミネートした膜113を合わせて接合する。代替策では、ラミネート工程は、1つの工程にまとめることができ、この際、1つの結合層105を用いて、膜を合わせて接合する。
【0172】
図9Bに示されているように、シール107は、シール108の幅を越えて延びていてよい。シール108の幅を越えてシール107を延ばすことにより、シール107は、図9Aに示されているように、湾曲点115を強化する。具体的な機構に限定されることはないが、結合層105は、シールの内側で、補強のための歪み取りとして機能し、バッグに血液製品を充填したり、バッグから血液製品を取り出したりする際に、シールにおいて、バッグの湾曲を可能にすると考えられる。
【0173】
本開示は、脱酸素化プロセス中に血液の混合を高める幾何学的特徴部を有する折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本開示の形状の改善はさらに、折り畳み可能な血液容器102の充填と排出を促す形状を含む。形状の改善によって、バッグ内の「デッド」スポットが低減または排除される。理論によって限定されるものではないが、デッドスポットは、正方形の形状によって、バッグの角部に生じる。本開示以前には、方法及び血液枯渇器具は、時間制限がなく、典型的に用いられている気体置換方法では、十分な混合が得られていた。したがって、過去のデザインの欠点は露呈していなかった。
【0174】
本開示による態様では、折り畳み可能な血液容器102は、1つ以上の幾何学的特徴部121を備える。一態様では、幾何学的特徴部は、折り畳み可能な血液容器102内に丸い角部を備え、混合中の「デッド」スポットを排除する。本開示は、結合層105に直接組み込まれる幾何学的特徴部121を提供する。別の態様では、幾何学的特徴部121は、外部のダイまたはプレートを用いて、折り畳み可能な血液容器102に組み込むことができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102の幾何学的特徴部は、幾何学的特徴部121の形状を有する好適なモールドによって設けることができる。特定の態様では、幾何学的特徴部121は、例えば図10に示されているように、丸または楕円の形状を折り畳み可能な血液容器102にもたらす。
【0175】
特定の態様では、幾何学的特徴部121は、第1の半径が約0.1cm~約7.6cmであり、第2の半径が約1cm~約7.6cmである楕円とすることができる。一態様では、幾何学的特徴部121は、第1の半径が約2.5cmであり、第2の半径が約5cmである楕円とすることができる。一態様では、幾何学的特徴部121は、第1の半径が約5cmであり、第2の半径が約7.6cmである楕円とすることができる。一態様では、幾何学的特徴部121は、直径が約5cmの円とすることができる。一態様では、幾何学的特徴部121は、直径が約7.6cmの円とすることができる。
【0176】
明らかなように、既定のサイズの酸素枯渇器具10は、本開示による折り畳み可能な血液容器102の寸法を必然的に制限する。特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、体積に対する表面の所定の比率によってさらに制限される。これらの制限に従って、本開示は、流体連通し合う2つ以上のチャンバーを有する折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。
【0177】
用いられている空間内で、より大きい血液体積を酸素透過性物質に暴露させながら、バッグ面積に対する血液体積を酸素枯渇容器器具の全体のサイズに対して最適化できるような形で、酸素枯渇容器器具を構築できる。血液体積は、外側容器101内で特有の配置を可能にする2つ以上のチャンバーを有する折り畳み可能な血液容器102に収容できる。特定の態様では、酸素枯渇器具10の高さは、表面の上に置いたときに、意図する混合装置内の非実用的な空間を占有しない。チャンバーは、並列したり、上に積み重ねたり、部分的に積み重ねたり、一列に千鳥配列で並べたりまたは1段以上の高さでサドル状に積み重ねたりできる。吸収剤103は、必要に応じて、チャンバーを覆うように、またはチャンバーの間に配置できる。チャンバーは、個別に、または容易な充填と排出を可能にするチューブまたは流体路を介してチャンバーが連結されているときに一緒に充填したり、排出したりしてよい。当業者は、2つ以上のチャンバーを有する折り畳み可能な血液容器102の配置と相互連結を行えることが分かるであろう。
【0178】
特定の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、2つ以上のチャンバーを備える。
一態様では、折り畳み可能な血液容器102は、寸法に応じて、並列されているかまたは末端と末端が接するように配置されている2つのチャンバーを有することができる。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、寸法に応じて、並列されているかまたは末端と末端が接するように配置されている3つのチャンバーを有することができる。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、寸法に応じて、並列されているかまたは末端と末端が接するように配置されている3つのチャンバーを有することができる。当業者であれば、空間の利用が最大になるように、隣接した位置と向きで配置された多数のチャンバーを有する追加的な構成の折り畳み可能な血液容器102を作製できるであろう。
【0179】
本開示で提供及び含まれる別の態様では、折り畳み可能な血液容器102は、積み重なった2つ以上のチャンバーを備えてよい。積み重なった構成では、最適な気体拡散速度を保つために、スペーサー110またはメッシュ110を含めて、隣接するチャンバーを離すようにする。特定の態様では、最適な気体拡散速度を保つために、積み重なっているチャンバー間の空間に、さらに、1つ以上の吸収剤小袋が含まれている。特定の態様では、2つのチャンバーを積み重ねてよい。別の態様では、3つのチャンバーを積み重ねてもよい。さらに別の態様では、4つのチャンバーを積み重ねてもよい。
【0180】
本開示は、積み重ねた隣接するチャンバーの組み合わせを備える折り畳み可能な血液容器102を提供するとともに、これを含む。本明細書に示されているように、折り畳み可能な血液容器102のチャンバーの数と積み重ねでは、さらに、組み合わせたチャンバーの体積に対する表面の比率が少なくとも0.4cm2/mlである。当業者であれば、本開示と整合する追加の変形形態を作製することができる。
【0181】
本開示は、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具10であって、実質的に酸素不透過性である外側容器101と、酸素透過性である折り畳み可能な内側の血液容器102と、該外側容器内に置かれた酸素吸収剤とを備え、折り畳み可能な血液容器102が、酸素枯渇中に血液の混合を高める1つ以上の混合構造119をさらに備える酸素枯渇器具10を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、この混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102の構造に組み込まれている。別の態様では、混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102の内側に加えられているが、折り畳み可能な血液容器102に物理的に接合はされていない。さらに別の態様では、混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102の外側の構造であって、層流を低減するかまたは乱すように、容器102の形状を制限または修正する構造である。本開示による混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102における血液の移動を増大させるか、折り畳み可能な血液容器102内の乱流を増大させるか、これらの両方を組み合わせて起こすように設計されている。重要なことに、混合構造と混合動作は、赤血球の溶解または損傷を大きく増大させてはならない。
【0182】
本開示による態様では、膜113の構造に混合構造119が含まれている。特定の態様では、膜113内の混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102の内側に隆起、こぶまたは突起を備え、血液と接する。一態様では、膜113内の混合構造119は、1つ以上の隆起を備える。一態様では、混合構造119は、例えば図10C及び10Dに示されているように、上部膜と下部膜113(114)を合わせて接合したものを含む。一態様では、1つ以上の隆起は、折り畳み可能な血液容器102の内面の全幅または全長にわたって延びている。別の態様では、隆起は、交互に並んでおり、千鳥配列で配置されていてよい。特定の態様では、膜113内の混合構造119は、層流を乱すとともに、乱流を誘発するように設計されたこぶまたはその他の突起を備える。同様に、特定の態様では、膜113内の混合構造119は、層流を乱すとともに、乱流を誘発するように設計された凹部を備える。特定の態様では、混合構造119は、膜113に組み込まれたバッフルである。バッフルは、流動を誘導する羽根またはパネルである。いくつかの態様では、1つ以上のバッフルを備える混合構造119は、第2の膜114に組み込まれていてよい。
【0183】
特定の態様では、混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102内に含まれている。一態様では、折り畳み可能な血液容器102内の混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102を振盪したときに、混合を助ける1つ以上のビーズまたはボールを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器102内の混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102を振盪したときに、混合を助ける1つ以上のストリングまたは細長い構造を含む。さらに別の態様では、折り畳み可能な血液容器102内の混合構造119は、折り畳み可能な血液容器102を振盪したときに、混合を助けるメッシュを含む。
【0184】
本開示は、実質的に酸素不透過性である外側容器101であって、折り畳み可能な内側の血液容器102を内包するとともに、ヘッドスペースをもたらす外側容器101を有する酸素枯渇器具10を提供するとともに、これを含む。一態様では、ヘッドスペース内に酸素吸収剤103が配置されており、これによって、ヘッドスペース内で、酸素が枯渇された状態を作る。一態様では、ヘッドスペースに配置された該酸素吸収剤103はさらに、外側容器101を通じてまたは1つ以上の注入口/排出口30を通じて侵入し得る酸素を除去することによって、ヘッドスペースを、酸素が枯渇された状態に保つ。
【0185】
ヘッドスペースを、酸素が枯渇された状態に保つと、酸素枯渇器具10の保管寿命が向上する。一態様では、組み立てた酸素枯渇器具10の保管寿命は、少なくとも24カ月である。別の態様では、酸素枯渇器具10の保管寿命は、構成要素を組み立ててから少なくとも12カ月である。本開示による一態様では、組み立てた酸素枯渇器具10は、ISTA-2Aの規格を満たしている。
【0186】
本開示の特定の態様では、ヘッドスペースによって、処理時間が改善される。酸素枯渇器具10においては、外側容器101のシール前に、組み立てた器具から、存在する周囲空気または流した不活性ガスを取り除くと、ヘッドスペースの容積が減る。シール前に、外側容器101を減圧すると、ヘッドスペースの容積が減り、組み立てた酸素枯渇器具の総容積が減る。ヘッドスペースの全体的な容積が減ると、輸送体積が減るが、折り畳み可能な血液容器102を拘束することによって、充填時間を増大させ得る。特定の態様では、ヘッドスペースに窒素ガスを流してから、周囲圧力よりもわずかに低い圧力でシールして、充填時間と処理時間を大きく増やすことなく、酸素枯渇器具10内のヘッドスペースの容積を小さくしてよい。
【0187】
特定の態様では、まず、ヘッドスペースに窒素を流すことによって、ヘッドスペースから酸素を枯渇してよい。一態様では、外側容器101のシール前に、酸素枯渇器具10のヘッドスペースに窒素ガスを流す。一態様では、流す気体は、≧99.9%の窒素ガスである。
【0188】
本開示は、2つ以上の区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10を含むとともに、これを提供する。特定の態様では、多数の区画に分かれている折り畳み可能な血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、1区画当たり10~500mlのヘッドスペースを有する。一態様では、ヘッドスペースは、1区画当たり20~400mlである。別の態様では、ヘッドスペースの容積は、1区画当たり60~300mlである。さらなる態様では、ヘッドスペースの容積は、折り畳み可能な血液容器の1区画当たり100~200mlである。一態様では、区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、1区画当たり約10mlのヘッドスペースを有する。別の態様では、ヘッドスペースは、1区画当たり約100ml~約200mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、1区画当たり約300ml~約500mlである。
【0189】
本開示は、2つ以上の区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10を含むとともに、これを提供する。特定の態様では、2つの区画に分かれている折り畳み可能な血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、20~1000mlのヘッドスペースを有する。一態様では、ヘッドスペースは、100~800mlである。別の態様では、ヘッドスペースの容積は、200~700mlである。さらなる態様では、ヘッドスペースの容積は、2つの区画の折り畳み可能な血液容器に関して、300~500mlである。一態様では、2つの区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、約700mlのヘッドスペースを有する。別の態様では、ヘッドスペースは、約200ml~約700mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、約300ml~約500mlである。
【0190】
本開示は、2つ以上の区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10を含むとともに、これを提供する。特定の態様では、3つの区画に分かれている折り畳み可能な血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、20~1000mlのヘッドスペースを有する。一態様では、ヘッドスペースは、100~800mlである。別の態様では、ヘッドスペースの容積は、200~700mlである。さらなる態様では、ヘッドスペースの容積は、3つの区画の折り畳み可能な血液容器に関しては、400~600mlである。一態様では、3つの区画に分かれている折り畳み可能な内側の血液容器102を有する酸素枯渇器具10は、約800mlのヘッドスペースを有する。別の態様では、ヘッドスペースは、約200ml~約700mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、約400ml~約600mlである。一態様では、ヘッドスペースは、ヘッドスペース区域の完全膨張により、約7000mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、700~7000mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、800~6000mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、1000~5000mlである。別の態様では、ヘッドスペースは、2000~4000mlである。
【0191】
本開示は、折り畳み可能な内側の血液容器102を有するとともに、外側容器101と折り畳み可能な内側の血液容器102を離すようにする1つ以上のスペーサー110をさらに備える酸素枯渇器具10を含むとともに、これを提供する。スペーサー110は、酸素枯渇器具内のヘッドスペースを保持して、酸素が膜113の表面から吸収剤103に効率的に拡散するようにする。スペーサー110は、メッシュ、成形マット、織物マット、不織物マット、ストランドベール及びストランドマットからなる群から選択した材料のうちの1つ以上から作製できる。特定の態様では、スペーサー110は、外側容器101と折り畳み可能な内側の血液容器102とを離れた状態に保つリブ、ディンプルまたはその他の隆起機構として、折り畳み可能な血液容器102に直接一体化できる。本明細書は、外側容器101と折り畳み可能な内側の血液容器102とを離れた状態に保つことのできるリブ、ディンプルまたはその他の好適な隆起機構として、外側容器101に一体化されるスペーサー110も含むとともに、これを提供する。混合は、本開示の重要な側面である。本開示の一態様では、スペーサー110は、血液製品の流動を妨げないために、可撓性であるように選択されている。
【0192】
本開示は、気体が透過性膜113及び114の表面から自由拡散するように、開口区域を有するスペーサー110を含むとともに、これを提供する。一態様では、スペーサー110は、開口空間111を有するメッシュ110として設けられている。本明細書で使用する場合、開口区域111は、空隙111ともいう。本明細書に示されているように、空隙111は、規則的な織り方のメッシュ110によって設けることができ、その結果、空隙111は、スペーサー110内で規則的かつ反復的なものとなる。別の態様では、空隙111は、例えば、不織物メッシュから構築したスペーサー110によってもたらされるような不規則な開口区域を含んでよい。一態様では、空隙111の面積は、約0.5平方ミリメートル(mm2)~約100mm2である。さらなる態様では、空隙111の面積は、1mm2~10mm2である。別の態様では、空隙111は、1つの開口当たり0.75mm2超の開口を有する。一態様では、メッシュの開口区域または空隙空間は、スペーサー110の総面積の30%~90%を占める。一態様では、メッシュの開口区域または空隙空間は、スペーサー110の総面積の50%~80%を占める。。さらなる態様では、開口区域は、約60%を占める。別の態様では、開口区域は、最大で総面積の75%を占める。
【0193】
本開示は、膜113、膜114またはこの両方に組み込まれたスペーサー110を有する折り畳み可能な内側の血液容器102を提供するとともに、これを含む。本開示による態様では、スペーサー110は、外側容器101と折り畳み可能な内側の血液容器102とを離すのみならず、透過性膜の補強も行う。本開示による態様では、スペーサー110は、血液を充填したり、本開示の枯渇方法で使用したりするときに、折り畳み可能な内側の血液容器102が破れたり、穴が開いたり、破裂したりするのを防ぐ。いくつかの態様では、スペーサー110は、製造プロセス中にシリコーン膜に一体化されるメッシュ110として設ける。別の態様では、スペーサー110は、完成したシリコーン膜に貼り付けたり、接合したりする。別の態様では、スペーサー110は、多孔質膜の一体化メッシュとして設ける。
【0194】
一態様では、一体化スペーサー110を有する膜113または114は、液体シリコーンゴム(LSR)の懸濁液から作製されている。一態様では、LSRは、キシレン、ヘキサン、tertブチルアセテート、ヘプタン、アセトンまたはナフサに懸濁されている。本開示による態様では、この懸濁液は、LSRを10~30%含む。本明細書に示されているように、一体化スペーサー110を有する膜113または114は、20~750μmのLSR懸濁液層を供給して、そのLSR層を部分的に硬化させて、本開示に示されているようなスペーサー110を設け、第2の硬化工程を行って、一体化スペーサー110を有する厚さ10~100μmの硬化済みシリコーン膜113をもたらすことによって作製されている。
【0195】
本開示は、内材117と結合材118とを有する共押し出し繊維を含むメッシュ110も含むとともに、これを提供する。本開示による態様では、結合材118は、メッシュ110を膜に取り付ける際に、膜113(114)の孔に一体化する。一態様では、結合材118は、加熱によって、多孔質膜113の孔に一体化する。本開示による態様では、結合材118は、エチルビニルアルコール(EVOH)、エチルビニルアセテート(EVA)またはアクリレートからなる群から選択してよい。本開示による態様では、内材117と結合材118を有する共押し出し繊維は、変性エチルビニルアセテート及び変性エチルビニルアクリレートのDuPont Bynel(登録商標)シリーズを含むメッシュ110である。
【0196】
本開示は、ウィンドウ112をさらに備える折り畳み可能な内側の血液容器102も含むとともに、これを提供する。本明細書で使用する場合、ウィンドウ112は、透明な材料で作られており、折り畳み可能な内側の血液容器102に接合されているか、または別段の形で組み込まれている。本開示によれば、ウィンドウ112に好適な材料は、血液適合性のものである。特定の態様では、ウィンドウ112に適する材料は、酸素不透過性である。別の態様では、ウィンドウ112に適する材料は、酸素不透過性である。ウィンドウ112のサイズは、血液を観察するのに十分な大きさであればよい。
【0197】
本開示は、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP)を有する折り畳み可能な血液容器も含むとともに、これを提供する。DEHPは、大半のPVCベースの血液保存バッグに可塑剤として含まれており、この場合、DEHPが、保存されている赤血球に対して保護作用をもたらすことが観察されている。Estepに発行された米国特許第4,386,069号を参照されたい。特定の態様では、酸素枯渇器具10は、折り畳み可能な内側の血液容器102に組み込まれたDEHPをさらに含む。別の態様では、DEHPは、折り畳み可能な内側の血液容器102内に別個に供給してもよい。
【0198】
本開示は、DEHPを含まない酸素枯渇器具10を提供するとともに、これを含む。DEHPは、内分泌攪乱物質として機能することがあると仮定されており、特定の規制当局は、血液バッグからDEHPを除去するように指示することを検討している。赤血球を嫌気保存するときには、DEHPは、不要であり得ることが観察されている。国際公開第WO2014/134503号を参照するものとし、参照により、その全体が本明細書に援用される。したがって、特定の態様では、酸素枯渇器具10では、すべての血液接触面からDEHPが完全に排除されている。別の態様では、酸素枯渇器具10では、DEHP接触面が、図に例えば106及び205で示されているようなチューブ、ポート、及び注入口に制限されている。一態様では、酸素枯渇器具10では、DEHPに接触する折り畳み可能な血液容器102が排除されている。
【0199】
本開示は、酸素インジケーター104を有する酸素枯渇器具10を提供するとともに、これを含む。同様に、本開示は、酸素インジケーター206を有する血液保存器具20を提供するとともに、これを含む。一態様では、酸素インジケーター206は、酸素を検出して、酸素枯渇器具10が劣化して、意図する目的にもはや適応していないことを表示する。一態様では、酸素インジケーター206は、酸素の存在を視覚的に表示する。特定の態様では、酸素インジケーター206は、酸素の量を表示する。
【0200】
本開示による態様では、経年などのいずれかの理由で、酸素吸収剤がもはや活性を持たない場合、または外側容器が劣化して、周囲空気から余分な酸素が侵入し得る場合に、ユーザーに通知する酸素インジケーターを外側容器が備えてよい。このような酸素インジケーターは、すぐに利用できるものであり、約0.5%以上の酸素の存在下で青色に変わり、酸素レベルが約0.1%を下回るとピンク色に変わるメチレンブルーインジケーター色素をベースとしている。これらの酸素インジケーターの例は、Sorbent Systems,Inc.(カリフォルニア州ロサンゼルスのImpak Corp.)のTell-Tabという酸素インジケーター錠剤と、Mitsubishi Gas Chemical America(ニューヨーク州ニューヨークのMGCA)のOxygen Indicator錠剤である。
【0201】
本開示は、酸素枯渇条件下で保存するための血液の調製方法であって、除去すべき酸素を有する赤血球を有する血液を酸素枯渇器具10に供給することと、ある期間、その血液をインキュベートすることと、脱酸素化した血液を嫌気保存バッグに移すこととを含む方法を提供するとともに、これを含む。本開示による態様では、この方法は、酸素枯渇器具10を振盪して、脱酸素化する血液を混合することをさらに含む。別の態様では、酸素枯渇器具10の構成により、振盪は不要である。
【0202】
安全のために、血液の採取と処理は、国家または地域の行政機関によって規制されている。米国では、食品医薬品局(FDA)が、血液及び血液製品の適切な取扱いのためにガイドラインを制定している。同様に、欧州では、欧州連合が、加盟国に対して拘束力を持つとともに、欧州評議会の定めたガイドラインに基本的に従っている規制当局に権限を付与している。例えば、英国(UK)における血液事業と病院血液バンクの重要な要件は、Blood Safety and Quality Regulations(Statutory Instrument 2005 No.50)に定義されているとともに、医薬品医療製品規制庁によって施行されており、この規制庁の権限は、英国内における輸血用の血液と血液製品の安全性と品質を保つための英国の法律に由来する。
【0203】
概して、様々な機関によって定められたガイドラインは、主に2つのグループに分かれる。第1のグループでは、米国によって例示されるように、ドナー採血から血小板への処理(すなわち、2~6℃でRBCを保存可能にする作業)までの許容可能な期間は、8時間である。したがって、血小板の生存能を保つために、8時間以内に、様々な処理工程(現在においては、血漿の分離及び回収、白血球の除去、血小板の分離及び回収、ならびに濃厚赤血球の調製を含む)を完了させて、様々な構成要素を保存する必要がある(Moroff&Holme,“Concepts about current conditions for the preparation and storage of platelets”in Transfus Med Rev 1991;5:48-59を参照されたい)。欧州では、処理できる期間は、24時間である。したがって、本開示で提供される方法及びプロセスは、血液の保存に備えて、有益で、保存損傷が低減されるレベルの脱酸素化を静脈穿刺から約8時間以内に行えるように設計されている。
【0204】
本開示の方法によれば、血液は、ドナーから採血して、採血の12時間以内に、20%未満の酸素飽和度まで処理してよい。採血時または採血後すぐに、枯渇プロセスを開始すると、温度上昇によって反応速度の向上を促すことによって、プロセスの効率が上がる。一態様では、血液をドナーから約37℃で採取し、好適な量の抗凝固剤を有する酸素枯渇器具10に回収する。静脈穿刺によって患者から採血したときには、温度の上昇に加えて、全血は典型的には、約35~65%の酸素飽和度となる。本開示の一形態では、静脈穿刺によって患者から採血したときに、全血は、35~65%の酸素飽和度となる。別の態様では、静脈穿刺によって患者から採血したときに、全血は、40~60%の酸素飽和度となる。別の態様では、静脈穿刺によって患者から採血したときに、全血は、45~55%の酸素飽和度となる。別の態様では、静脈穿刺によって患者から採血したときに、全血は、50~65%の酸素飽和度となる。従来の方法では、酸素の侵入を防ぐ採血キットとバッグは提供されない。したがって、酸素低減プロセスの開始が遅れることにより、酸素が低減された酸素飽和度20%未満の血液の調製に必要とされる時間が大幅に長くなり得る。
【0205】
本開示の方法と器具はさらに、酸素が低減された酸素飽和度10%未満の血液を調製することを提供する。一態様では、この10%というレベルは、ドナーから採血してから8時間以内に達成される。別の態様では、血液は、6時間以内で酸素飽和度10%未満まで低減される。さらに別の態様では、血液は、4時間以内で酸素飽和度10%未満まで低減される。
【0206】
本明細書で使用する場合、「血液」という用語は、全血、白血球が低減されたRBC、血小板が低減されたRBC、ならびに白血球及び血小板が低減されたRBCを指す。血液という用語はさらに、濃厚赤血球、血小板が低減された濃厚赤血球、白血球が低減された濃厚赤血球(LRpRBC)、ならびに白血球及び血小板が低減された濃厚赤血球を含む。血液の温度は、採血プロセスの段階に応じて様々であることができ、初めは、採血時の正常体温の37℃であるが、血液を患者の身体から採取してすぐに、約30℃まで急速に低下し、未処置であると、さらに、その後、約6時間で室温まで低下し、最終的には、約2℃~6℃で冷蔵される。
【0207】
本明細書で使用する場合、「全血」という用語は、血漿に懸濁している赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血小板を含む血液細胞の懸濁液を指し、電解質、ホルモン、ビタミン、抗体などを含む。全血においては、白血球は通常、4.5~11.0×109細胞/Lの範囲で存在し、海抜0mにおける正常なRBC範囲は、男性では4.6~6.2×1012/L、女性では4.2~5.4×1012/Lである。正常なヘマトクリット値、すなわち、濃厚細胞体積の割合は、男性では約40~54%、女性では約38~47%である。血小板数は通常、男性でも女性でも150~450×109/Lである。全血は、血液ドナーから採取し、通常は、抗凝固剤と混ぜ合わせる。全血は、最初は約37℃で採取し、採血中または採血直後に約30℃まで急冷するが、周囲温度までは約6時間かけてゆっくり冷却する。全血は、採血時に、本開示の方法に従って処理してよく、その処理は、30~37℃または室温(典型的には約25℃)で開始する。本明細書で使用する場合、「1ユニット」の血液は、抗凝固剤を含め、約450~500mlである。
【0208】
本明細書で使用する場合、「血液ドナー」は、通常は静脈切開または静脈穿刺によって全血を採取する健康な人を指し、この際、献血された血液は、最終的にドナーとは異なる受血者が使用するために、処理を行って、後の使用時に備えて、血液バンクに保持される。血液ドナーは、手術または他の治療の予定がある対象であって、自己血輸血として知られるプロセスで、自分のために血液を提供できる対象であってよい。この代わりに、また、最も一般的には、血液は、異種血輸血として知られるプロセスで、他人が、使用に備えて提供する。ドナーから、または自己血輸血の場合には、患者からの全血サンプルの採取は、輸血またはアフェレーシスによるなど、当該技術分野において知られている技法によって行ってよい。静脈穿刺を用いてドナーから得た全血の酸素飽和度は、約30%~約70%の範囲の飽和酸素度(sO2)である。
【0209】
本明細書で使用する場合、「赤血球」(RBC)には、全血、白血球が低減されたRBC、血小板が低減されたRBC、ならびに白血球及び血小板が低減されたRBCに存在するRBCが含まれる。インビボでのヒト赤血球は、動的状態にある。赤血球は、全身に酸素を運搬するとともに、赤血球を赤くする鉄含有タンパク質であるヘモグロビンを含む。赤血球で構成される血液体積の割合は、ヘマトクリット値という。本明細書で使用する場合、別段の制限のない限り、RBCには、濃厚赤血球(pRBC)も含まれる。濃厚赤血球は、当該技術分野において広く知られている遠心分離法を用いて、全血から調製する。本明細書で使用する場合、pRBCのヘマトクリット値は、別段の定めのない限り、約50%である。
【0210】
血小板は、血管内膜に粘着することによって凝固プロセスを促すとともに、活性化すると、増殖因子を放出することによって治癒も促す小さい血液細胞成分である。血小板は、赤血球のように、骨髄によって作られ、循環系において9~10日間生存した後、脾臓によって除去される。血小板は典型的には、血漿層と赤血球のペレットとの間に挟まれたバフィーコートから血小板を分離する遠心分離機を用いて調製する。
【0211】
血漿は、タンパク質-塩溶液であり、赤血球、白血球及び血小板が懸濁している、血液の液体部分である。血漿は、90%が水であり、血液体積の約55パーセントを構成する。血漿の主な機能の1つは、血液凝固と免疫を助けることである。血漿は、血液の液体部分を血液細胞から分離することによって得られる。典型的には、血漿は、遠心分離によって血液細胞から分離する。遠心分離は、全血の成分を血漿、白血球、血小板及び濃厚赤血球に分離するのに用いるプロセスである。遠心分離の際には、まず、軽く回転している間に、血漿が容器の最上部に移動する。続いて、血漿を容器から取り出す。白血球と血小板を第2の遠心分離サイクルの間に取り出して、濃厚赤血球を作る。
【0212】
本開示は、保存用の酸素枯渇血液の調製方法を含むとともに、これを提供する。保存に適し、保存損傷による損傷の低減による恩恵を受け、毒性が低下し、重要なことに罹患率が低下する酸素低減血液または血液成分は、酸素飽和度が約20%未満の血液または血液成分である。特定の態様では、血液または血液成分の酸素レベルは、15%未満のレベルまで低下する。別の態様では、血液の酸素飽和度は、保存前に、10%以下まで低下する。さらに別の態様では、血液の酸素飽和度は、保存前に、5%未満または3%未満まで低下する。
【0213】
本開示の方法によれば、血液または血液成分は、採血の4~24時間以内に、酸素を枯渇させて保存庫に入れる。別の態様では、本開示の方法では、採血の8時間以内に、酸素を枯渇させて保存庫に入れる。別の態様では、血液または血液成分は、採血の6時間未満に、酸素を枯渇させて保存庫に入れる。さらに別の態様では、血液は、採血の4時間未満に、酸素を枯渇させて保存庫に入れる。
【0214】
本開示は、酸素が枯渇される条件下での、保存用の血液の調製方法であって、除去すべき酸素を有する赤血球を有する血液を酸素枯渇器具10に供給することと、ある期間にわたって、その血液をインキュベートすることとを含む方法を提供するとともに、これを含む。特定の態様では、血液は、振盪によって混合する。別の態様では、酸素枯渇器具は、あまりまたはまったく混合しなくても、十分な脱酸素化を行う。
【0215】
分かるように、枯渇対象の血液の酸素飽和度は、最初は様々なレベルであり得る。特定の態様では、血液は、飽和度が約70%、ヘマトクリット値が約40%~45%で採取した全血である。本開示の方法は、典型的には、ヘマトクリット値が約50%であり、飽和レベルが最大で90%以上であるLRpRBCの迅速な脱酸素化も行う。
【0216】
本開示の器具と方法は、24時間以下に、保存用の酸素枯渇血液をもたらすように意図されている。特定の態様では、酸素は、酸素枯渇器具10を用いて、ある期間にわたって、振盪しながらインキュベートすることによって除去する。別の態様では、酸素は、酸素枯渇器具10を用いて、インキュベート期間中に、その枯渇器具を振盪しないか、または別段の形で混合しない方法を用いて除去する。当業者であれば分かるように、このプロセスに振盪または混合工程を含めると、酸素枯渇器具10の体積に対する表面の比率を小さくできる。また、振盪により、所望のレベルの脱酸素化を実現するために必要とされる透過性も低下し得る。最も迅速な枯渇動態を実現するために、枯渇期間中に、透過性が高いとともに、体積に対する表面の比率が大きい酸素枯渇器具10を振盪と組み合わせる。用途と、用いる処理プロトコールとに応じて、処理を完了するのに必要な時間は、4~24時間と様々であり得る。したがって、本開示の器具と方法は、本開示に示されているように、その器具と方法を調節することによって、既存の血液処理センターのプロトコールに組み込むことができるとともに、各地域で適用される規制に対応することができる。
【0217】
本開示による態様では、20%未満の血液飽和度を実現するための処理時間を短縮するために、枯渇期間中に、血液を振盪または混合できる。大半の態様では、血液は、24時間未満、振盪または混合する。処理中に、血液を混合及び振盪することで、溶解及び分解を引き起こすことがあるので、振盪を伴う枯渇期間は最小限にすべきである。
【0218】
特定の態様では、血液は、振盪しながら、12時間未満インキュベートする。別の態様では、インキュベート及び振盪時間は、8時間未満である。酸素枯渇器具10を用いるとともに、振盪しながら、6時間未満または4時間未満インキュベートして、酸素を20%未満まで低減する方法も提供する。さらに別の態様では、振盪しながらインキュベートする時間は、3.5時間または3.0時間である。特定の態様では、血液は、酸素枯渇器具10において、振盪しながら4時間インキュベートすることによって、20%以下まで低減できる。さらなる態様では、この方法は、0.5または1.0時間のインキュベート時間をもたらす。別の態様では、血液は、酸素枯渇器具10において、1.5時間または2.0時間インキュベートする。
【0219】
反応速度が温度依存性であり、温度が高いほど、反応速度が速くなることは十分に分かるであろう。速度定数kは、温度とともに指数的に変化し、k=Ae-Ea/RT(アレニウスの式)である。特筆すべきことに、温度依存性は、反応基質の濃度とは無関係であり、その速度の次数が一定であるか(例えば1次対2次)に依存しない。典型的には、温度が10℃上昇すると、反応速度は2倍に向上し得る。したがって、当業者であれば、ヘモグロビンからの酸素の放出と、脱酸素化プロセスのその他の工程が、温度依存性であることを認識するであろう。重要なことに、血液の温度が、2℃~6℃の標準的な保存温度まで低下すると、脱酸素化速度は大きく低下する。さらに、輸血目的の条件の血液の採取、処理及び保存用として現在認められているプロトコールでは、保存血液は、混合しない(これにより、酸素を除去できる速度がさらに低下する)。したがって、本開示の方法と器具は、保存前に、該当する規制当局が定めている期間以内に、酸素の大半を除去するように設計されている。本明細書に示されているように、酸素の枯渇は、ドナーから採血後、可能な限り早く開始するように意図されており、保存用に血液を冷却する前に、概ね完了するように意図されている。
【0220】
本明細書に示されているように、本開示の方法は、ドナーから血液を採取したとき、採取して間もない約37℃のその血液を用いて行うことができる。別の態様では、血液は、白血球、血漿及び血小板の除去を含め、枯渇前に処理してよい。代替策では、血液は、酸素低減後に、さらに処理してよい。
【0221】
本開示は、体温から周囲温度、典型的には約25℃まで冷却した処理血液を提供するとともに、これを含む。本明細書に開示されている方法と器具を用いて、酸素飽和度が20%未満の酸素低減血液を周囲温度(例えば約25℃)で調製できる。酸素を周囲温度で所望かつ有益なレベルまで低減する機能によって、本開示のシステムと方法を既存の採血プロトコールと採血センターに導入可能になる。
【0222】
本開示は、酸素が枯渇される条件下での、保存用の血液の調製方法であって、除去すべき酸素を有する赤血球を有する血液を酸素枯渇器具10に供給することと、ある期間にわたって、その血液をインキュベートすることとを含むとともに、インキュベート期間中に、振盪または混合することをさらに含む方法を提供するとともに、これを含む。本明細書で使用する場合、「振盪」(agitating)または「混合」(mixing)という用語は、同義的に使用し、様々な混合方法を含み、酸素枯渇器具の振動(rocking)、章動(nutating)、回転(rotating)、攪拌(stirring)、混練(massaging)、揺動(swinging)、線形振動(linearly-oscillating)及び圧縮(compressing)が挙げられるが、これらに限らない。
【0223】
本開示による方法では、振盪しながらインキュベートする期間は、30分ほどの短い期間でも、最長で24時間でもあることができる。特定の態様では、本開示の方法は、1~3時間、振盪しながら酸素枯渇器具10においてインキュベートする期間を含む。別の態様では、インキュベート期間は、1~4時間または1~6時間である。別の態様では、インキュベート期間は、約2時間または約4時間である。
【0224】
本開示による一態様では、赤血球からの酸素の低減方法は、本開示による器具に赤血球を入れることと、その器具を振盪器に設置して、混合作用を通じて、赤血球から酸素を除去するのを促すことを含む。輸血を行う際に、振盪器を使用することは、血塊の形成防止に関して、約7度の傾斜と、毎分1~約15回の振動回数で軽く振動させる振動台及び採血用スケールミキサーの使用時のように、周知である。酸素枯渇センターですでに入手可能であるとともに、スタッフによく知られた同様の器具を用いて、適切な混合を確実に行うことができる。
【0225】
酸素枯渇プロセスの動態を最大にするには、物理的アプローチと方法論的アプローチの両方を取ることができる。上で論じたように、血液適合性の内側バッグの拡散耐性を低下させる物理的アプローチは、透過性の高い材料を選択することによって、かつ、材料の厚みを小さくして、バーラー値を低下させることによって実現できる。微多孔質材料に関しては、見かけバーラー値は、微細孔のサイズを小さくすることによって、かつ微細孔の数を増やすことによって低下させることができる。微細孔のサイズは、水がバリアから侵入するのを防ぐ必要性によって必然的に制限され、この侵入は、約1μmの特定の微多孔質材で生じることが分かる。また、上で示したように、体積に対する表面の比率は、溶解酸素の拡散距離を短くするように選択する。溶解酸素は、透過性表面の方に向かっていくからである。有効かつ迅速に血中酸素を低減するための材料と設計の制限と要件については、上で論じられている。
【0226】
設計と、適切な材料選択によって、拡散バリアと拡散距離を最小化することに加えて、効果的な拡散距離は、適切な混合によって、さらに短くできる。分かるように、酸素含有赤血球は透過性膜に近接する無酸素環境に入るため、完全かつ効率的な混合によって、拡散距離が血液低減プロセスに及ぼす影響を効果的に排除する。同様に、拡散距離は、血液を実行不可能に薄い体積に広げることによっても排除されることになる。本開示は、高い枯渇速度を実現するために器具と方法を最適化する方法と器具を提供する。
【0227】
本開示は、酸素枯渇器具10における血液の混合方法であって、迅速な脱酸素化速度と、約0.5×10-2min-1~約5.0×10-2min-1の速度定数をもたらす方法を提供するとともに、これを含む。本開示による態様では、速度定数は、少なくとも-1.28×10-2min-1である。別の態様では、脱酸素化は、速度定数が少なくとも-0.5×10-2の速度で行われる。別の態様では、脱酸素化は、速度定数が少なくとも-0.9×10-2の速度で行われる。別の態様では、脱酸素化は、速度定数が少なくとも-1.0×10-2の速度で行われる。別の態様では、脱酸素化は、速度定数が少なくとも-1.5×10-2の速度で行われる。さらなる態様では、脱酸素化は、速度定数が-1.0×10-2min-1~-3.0×10-2min-1の速度で行われる。さらなる態様では、脱酸素化は、速度定数が-1.0×10-2min-1~-2.0×10-2min-1の速度で行われる。さらなる態様では、脱酸素化は、速度定数が-1.0×10-2min-1~-4.0×10-2min-1の速度で行われる。
【0228】
本開示による態様では、適切な混合は、体積に対する表面の比率が少なくとも5.0cm2/mlの酸素枯渇器具10で実現する。理論によって限定されるものではないが、体積に対する表面の比率が小さいほど、折り畳み可能な血液容器が血液を移動させる能力は不十分となり、混合が行われないと仮定される。大きく膨らんだダニのように、最大容量まで充填したバッグは、本質的に混合しにくく、対流またはその他の流動を容易には誘発できないことは明らかであろう。換言すると、バッグ材の可撓性が、振盪中に得られる能力を超えて低下する最大容量まで充填されている折り畳み可能な内側容器102では、本質的に混合は行われない。したがって、少なくとも4.85cm2/mlという体積に対する表面の比率を選択することによって、血液が「動き回れる」ので、混合を発生させることができる。混合が不適切であると、望ましくないことに、赤血球が溶血を起こすことが分かるであろう。したがって、混合にも、実用上の制限がある。本開示は、十分な混合を実現しながら、溶血の可能性を低減する器具と方法を提供する。
【0229】
本開示による一態様では、赤血球からの酸素の低減方法は、本開示による器具に赤血球を入れることと、その器具を振盪器に設置して、酸素の赤血球からの除去を促すことを含む。輸血を行う際に振盪器を使用することは、全血及び赤血球の懸濁液とともに使用される際の振動台及び採血用スケールミキサーの使用においてなど、血塊の形成防止に関して、また、血小板保存(この際、血小板は、生存のための酸素と、血小板の凝集と活性化を防ぐための振盪を必要とする)のための使用でよく知られている。
【0230】
全血か他の赤血球懸濁液かを問わず、赤血球を振盪する目的で現在利用可能な器具においては、プラットフォームは典型的には、中心軸を中心に数度回転させて、軽い振動をもたらすものであり、市販されている利用可能な選択肢が数多くある。例えば、Bellco Glassモデル#7740-10000(ニュージャージー州バインランドのBellco Glass, Inc.)では、7度の傾斜と毎分1~約12回の振動回数が得られる。Medicus Healthモデル5277M5章動混合器(ミシガン州ケントウッドのMedicus Health)は、赤血球サンプル懸濁液に対して、24rpmで角度20度の傾斜をもたらし、その一方で、全血の凝固を防ぐ目的で採血時に用いられる別のスタイルの器具は、Genesisの採血混合器モデルCM735A(ニュージャージー州ラムジーのGenesisBPS)であり、この混合器は、約20度の傾斜をもたらし、約3秒で3サイクルを行った後、約2秒停止してサンプルを秤量し、所望の重量になるまでこれを繰り返す。Benchmark ScientificモデルB3D2300(ニュージャージー州エジソンのBenchmark Scientific,Inc.)では、傾斜角度は0~30度で変えることができ、毎分2~30回の振動が得られる。
【0231】
本開示はさらに、変位が20mm、振動速度が20~240rpmのLabocon(英国、ハンプシャーのLabocon Systems,Ltd)製のモデルLOS-101、または変位が20mm、振動速度が50~250rpmのCole-Parmer(イリノイ州ヴァーノンヒルズのCole-Parmer,Inc.)製のモデルEW-51820-40などのオービタルシェイカーを含め、血液サンプルを振盪するその他の利用可能な手段を含むとともに、これを提供する。
【0232】
血小板を振盪する器具も当該技術分野において周知であり、毎分約70サイクルの線形振動と約38mm(1.5インチ)の変位をもたらすHelmer Scientific製のPF96h(インディアナ州ノーブルビルのHelmer Scientific)と、毎分約60サイクルの振動と約36mm(1.4インチ)の変位をもたらすTerumo Penpol製のモデルPAI200(インドのティルバナンタプーラムのTerumo Penpol Ltd.)などの様々なモデルが挙げられる。
【0233】
本開示の器具は、赤血球の脱酸素化を促すが、修正した動作を用いると、さらに酸素が赤血球から除去される。剪断力のような機械的振盪によって血小板が活性化し得るので、血小板の活性化が起きるまでに耐えうる物理的振盪の程度に関する制限を受けることは周知である。約6000ダイン/cm2を超える剪断応力レベルで、赤血球の溶血が起こると推定されており(Grigioni et al.,J.Biomech.,32:1107-1112(1999)、Sutera et al.,Biophys.J.,15:1-10(1975))、このレベルは、血小板活性化に必要なレベルよりも1桁大きい(Ramstack et al.,J.Biomech.,12:113-125(1979))。特定の態様では、約36mmの変位と毎分約65サイクル(cpm)で動作する現在利用可能な血小板振盪器は、本明細書に開示されているように、赤血球の脱酸素化をもたらす。別の態様では、30mm~約125mmの変位で線形振動を用いて、溶血なしに、脱酸素化の速度と程度を向上させる。別の態様では、振盪は、約50mm~約90mmの線形振動である。
【0234】
本開示は、振動の周波数を調節して、効率的な混合を確保することも提供するとともに、これを含む。変位が約36mm、周波数が約65cpmの血小板シェーカーに加えて、特定の態様では、周波数は、毎分約60~約150サイクル(cpm)である。特定の態様では、振盪の周波数は、約80~約120cpmである。
【0235】
本開示による特定の態様では、振盪器または混合器を用いるときに、2つ以上のチャンバーを備える採血器具10の様々なチャンバー構成を提供する。水平運動で動作する振盪器では、一態様では、2~8個の水平(表面上で水平)なチャンバーを並列状態、末端と末端が接した状態、上に重ねた状態、1つ以上が下のチャンバー(複数可)を部分的に覆った形で上に重ねた状態で配列する。別の態様では、垂直運動で動作する振盪器では、2~8個の垂直(表面に垂直)なチャンバーを並列状態、末端と末端が接した状態、上に重ねた状態、1つ以上が下のチャンバー(複数可)を部分的に覆った形で上に重ねた状態で配列する。別の態様では、水平方向に対して0度超、90度未満の角度で旋回しながら上下に動作する振盪器では、2~8個の立てた(水平方向に対して0度超、90度未満の)チャンバーを並列状態、末端と末端が接した状態、上に重ねた状態、1つ以上が下のチャンバー(複数可)を部分的に覆った形で上に重ねた状態で配列する。
【0236】
酸素枯渇器具10を振盪及び混合するさらなる利点は、血液または血液成分が、振盪器によって動くことにより、酸素枯渇器具10の最上部または底に置かれた吸収剤小袋も動くことである。吸収剤小袋が最上部に置かれていると、吸収剤小袋が上下に動いているので、ヘッドスペース内の酸素を吸収する活性成分が常に留まっている。この活性成分の一定の動きが、非酸化鉄粒子の邪魔にならないように、酸化鉄粒子を動かして、吸収剤の潜在的な酸素吸収力を速める。
【0237】
本開示は、折り畳み可能な血液容器102を圧縮することによって、酸素枯渇器具10を混合することを提供するとともに、これを含む。折り畳み可能な容器102の圧縮は、折り畳み可能な容器の大きい方の表面の1つに、1~3秒の間に30cm/秒で圧力を加えて、折り畳み可能な容器内に100~300mmHgの静水圧を発生させてから、折り畳み可能な容器の反対側の表面に、1~3秒の間に10~30cm/秒で圧力を加えて、折り畳み可能な容器内に100~300mmHgの静水圧を発生させることによって行う。この作業は、2~4時間行うことになる。
【0238】
本開示は、折り畳み可能な血液容器102を混練することによって、酸素枯渇器具10を混合することを提供するとともに、これを含む。折り畳み可能な容器102の混練は、折り畳み可能な容器の表面の1つに沿って、ローラータイプの装置を変位させて、1~3秒で最大限の並進を完了させ、折り畳み可能な容器をつぶして、その中身を振盪することによって行う。この作業は、1~2時間行うことになる。別の態様では、折り畳み可能な容器の別の表面に沿って、ローラーを移動させて、1~3秒で最大限の並進を完了させ、折り畳み可能な容器をつぶして、その中身を振盪する。この作業は、1~2時間行うことになる。
【0239】
本開示は、酸素枯渇血液を保存するとともに、保存期間中、その血液を脱酸素化状態に保つための血液保存器具20を提供するとともに、これを含む。特定の嫌気血液保存器具(ASB)は、例えばBitenskyらへの米国特許第6,162,396号を含め、当該技術分野において知られている。先行技術の嫌気血液保存器具は、実質的に酸素不透過性に設計されたポートと注入口を備えていなかった。したがって、先行技術の嫌気保存器具の使用前の保管寿命は劣っており、酸素がかなり侵入しやすかった。本開示に示されているように、改善型の血液保存器具20は、器具の完全性の保持を対象とした機構を備え、その一方で、保存及び血液貯蔵中に血液のサンプリングを行えるようにする。改善型のASBでは、酸素の拡散も向上させ、保存期間中に、追加的に枯渇が行われる。
【0240】
血液保存器具20は、実質的に酸素不透過性である外側容器201と、外側容器201の形状内で、その折り畳み可能な血液容器202の位置を調節するように適合された位置決め機構203を備える折り畳み可能な血液容器202と、折り畳み可能な血液容器202に連結しており外側容器201への接合部302を備える少なくとも1つの注入口/排出口30であって、外側容器201への接合部302が実質的に酸素不透過性である注入口/排出口30と、外側容器201内に置かれた酸素吸収剤207とを備える。
【0241】
本明細書で使用する場合、外側容器201は、外側容器101と少なくとも同等のものである。また、本明細書で使用する場合、折り畳み可能な内側の血液容器202は、折り畳み可能な内側の血液容器102について上で示されているような血液容器を含むが、PVCのように、酸素透過性に劣る材料を含む折り畳み可能な血液容器202も提供する。また、本明細書に示されているように、酸素吸収剤207は、吸収剤103と少なくとも同等のものであり、上で論じたように、小袋内に入れてもよい。
【0242】
本開示では、採血キットも含むとともに、これを提供する。本開示による態様では、血液から酸素を枯渇させる酸素枯渇器具は、採血プロセス中の酸素の侵入を低減または排除する採血キットに含まれている。当該技術分野における採血キットには、採血プロセス中の酸素の侵入を防ぐいずれの機構または要素も含まれていない。したがって、多数の容器を有する、当該技術分野におけるキットは、1つの容器当たり約3ccの残留酸素に加えて、材料及び付属品からのさらなる侵入をもたらし、それによって、酸素飽和度(sO2)を、約40~60%の静脈酸素飽和度(SvO2)から、最大で完全飽和状態まで上昇させる。本開示による一態様では、採血キットの全体は、無酸素または酸素低減雰囲気内に収容されている。一態様では、採血キットは、実質的に酸素不透過性のキット封入バッグに収容されており、その封入バッグ内には、酸素を吸収する酸素吸収剤をある量含む。本開示による採血キット用の吸収剤の量は、採血バッグまたは嫌気保存バッグに含めてよい吸収剤の量とは別であり、またはこの量に追加されるものである。
【0243】
本開示による特定の態様では、採血キットに含まれる酸素吸収剤の量は、製造中に侵入する酸素を採血キットから除去するのに十分なものである。一態様では、採血キットは、10ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、60ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、100ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、200ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、500ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、10~500ccの酸素を吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。別の態様では、採血キットは、その器具の保管寿命を管理できるように、最大24,000ccを吸収するのに十分な酸素吸収剤を含む。本開示による特定の態様では、酸素吸収剤は、1つ以上の小袋に配置されている。
【0244】
一態様では、酸素吸収剤の量は、保存中、採血キット用に、酸素が枯渇された雰囲気を保つのに十分な量である。特定の態様では、酸素は、製造中に、採血キットから排出させる。したがって、実質的に不透過性のキット封入バッグの漏入と残留透過を考慮するために、酸素吸収剤の量を低下させてよい。
【0245】
本開示では、実質的に酸素不透過性である添加液バッグも含むとともに、これを提供する。本開示による態様では、実質的に酸素不透過性の添加液バッグは、酸素低減採血バッグで酸素低減後、酸素低減血液に酸素が再び侵入するのを回避する。
【0246】
本開示の態様では、本開示の方法は、濃厚RBCに添加液を加えて、懸濁液を形成することをさらに含んでよい。特定の態様では、添加液は、AS-1、AS-3(Nutricel(登録商標))、AS-5、SAGM、PAGG-SM、PAGG-GM、MAP、SOLX、ESOL、EAS61、OFAS1及びOFAS3からなる群から、これらを単独でまたは組み合わせて選択してよい。添加剤AS-1は、Heaton et al.,“Use of Adsol preservation solution for prolonged storage of low viscosity AS-1 red blood cells,”Br J Haematol.,57(3):467-78(1984)に開示されている。さらなる態様では、添加液のpHは、5.0~9.0であってよい。別の態様では、添加液は、抗酸化剤を含んでよい。本開示によるいくつかの態様では、抗酸化剤は、ケルセチン、α-トコフェロール、アスコルビン酸またはオキシダーゼの酵素阻害剤であってよい。
【実施例
【0247】
実施例1:外側容器101の作製
一対のRollPrint Clearfoil(登録商標)Zフィルム#37-1275(イリノイ州アディソンのRollprint Packaging Products,Inc.)シート約23×30.5cm(9×12インチ)をヒートシーラーに、短い方の23cmの長さに沿って配置することによって、1つの縁沿いをヒートシールすることで、バリアバッグを作製する。ポリエチレン外層と、PVC内層と、EVAの中間接合層を有するとともに、内径が0.4cm、外径が0.55cmで、長さが約2.6cmである多層チューブ(マサチューセッツ州アソルのPexco,Inc.またはニューハンプシャー州ポーツマスのExtrusion Alternatives,Inc.)を1本、直径約0.4cm、長さ約2.5cmの固体真ちゅうマンドレルに入れてから、上記のフィルムの間に入れて、約130℃に加熱したヒートシールダイの横溝に配置した。プレスを作動させ、21×104パスカル(Pa)で約4秒の長さに設定して、上記の短い多層チューブを適切な位置にシールした状態で、ダイの長さに沿って連続的な溶着シールを作る。この短い多層チューブによって、そのチューブの外径にわたって、酸素不透過性のシールをもたらすと同時に、そのシールを介して流体連通性ももたらす。シクロヘキサノンを用いて、内径が0.3cm、外径が0.41cm、長さが約30.5cmのPVCチューブ(マサチューセッツ州アソルのPexco,Inc.またはニューハンプシャー州ポーツマスのExtrusion Alternatives,Inc.)を1本、バッグの外側から多層チューブに溶剤接合する。
【0248】
インパルスヒートシーラー(McMaster Carr#2054T35、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)によって、バリアフィルムの2つの長縁をシールし、バリアバッグの最後に残る短縁は、血液容器102を内側に配置するために、シールしないままにしておく。
【0249】
実施例2:シリコーンシートの作製
液体シリコーンゴム(LSR)
キシレンなどの好適な溶媒に分散した2液型シリコーンエラストマー分散液(例えば、NuSil MED10-6640)を等量混合することによって、厚みが約25μmのシリコーンシートを作製する。MED10-6640は、2液型樹脂系として供給されている。第1の工程として、液Aと液Bを等しい測定量で混合して、分散液を作る。次に、空気を真空下で除去した。真空時間は、分散液中に気泡が残らないように選択した。次に、この分散液を広げて、特注のナイフコーティングトレイ上で、精密なナイフエッジの下に通した。加熱によって、そのシートを部分的に硬化させてから、その部分的に硬化したシリコーンシートの上に、ポリエステルメッシュファブリックのシート(ブルックフィールドのSurgical Mesh,Inc.、CT#PETKM3002)を置く。このラミネート体の上に負荷をかけることによって、部分的に硬化したシートに、ポリエステルメッシュファブリックを押し込む。周囲温度及び周囲湿度で30分、75℃(167°F)で45分、そして、150℃(302°F)で135分という時間及び温度を組み合わせた順序を用いた段階的硬化を用いて、このラミネート体を硬化して、厚さが約25μmであり、一体化スペーサー110を有するシリコーン膜113を得る(一体化スペーサー110の厚みは、得られたシリコーン膜には含まれない)。ポリエステルメッシュファブリックは、硬化済みシリコーン膜113に接着されているが、シリコーン膜113に完全には封入されていない。膜113の表面の1つは、血液または血液製品と接するのに適するマット仕上げを有する。
【0250】
シリコーン分散方法を用いて、厚さが約13μm及び約50μmのさらなる一体化シリコーン膜を作製する。
【0251】
実施例3:折り畳み可能な内側の血液容器102の作製
Smooth On Sil-Poxy RTV接着剤(ペンシルベニア州イーストンのSmooth-On,Inc.)によって、一対のシリコーンシートの縁を合わせて接合し、その接合したシートを一対のアルミニウム平板の間に置き、シリコーン血液バッグを得ることによって、一対のシリコーンシートからシリコーン血液バッグを作製する。流体通路を設けるために、シリコーン製注入チューブ(McMaster Carr #5236K83、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)をシームの中に接合して、アルミニウム板の溝の中に入れてから、アルミニウム板を大きいバインダークランプで合わせて固定し、接着剤を一晩硬化させる。翌日、シリコーン血液バッグをアルミニウム板から外し、使用前に、圧縮空気を吹き入れ、水中に入れて、気泡がないか観察することによって、漏れ試験を行う。続いて、実施例1に記載されているようにして作製した外側バリアバッグに、そのシリコーン血液バッグを入れる。
【0252】
実施例1に開示したようなバリアバッグの内側に、シリコーン血液バッグを入れ、プラスチック製バーブ継ぎ手(McMaster Carr #5116K18、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)を用いて、シリコーン血液バッグのシリコーン製注入チューブを多層チューブに連結し、酸素センサータブ(Mocon #050-979、ミネソタ州ミネアポリスのMocon,Inc.)をバリアバッグの内側に取り付ける。一対のプラスチックメッシュスペーサー(McMaster Carr #9314T29、ニュージャージー州ロビンズビルのNJ McMaster Carr,Inc.)を約12.7×17.8cm(5×7インチ)に切断し、血液バッグとバリアバッグとの間にプラスチックメッシュスペーサーを置いて、バリアバッグの最後の縁をインパルスシーラーでシールする直前に、酸素吸収剤(ニューヨーク州ニューヨークのMitsubishi Gas Chemical America)の小袋を1つ以上、プラスチックメッシュ片のぞれぞれの中央近くに取り付ける。得られた酸素枯渇器具10を、後で行う試験で用いる。
【0253】
実施例4:血液の調製
全血及び血液製品は、白血球が低減された全血と、白血球が低減された濃厚赤血球を含め、当該技術分野において知られている技法を用いて調製する。示されているように、Radiometer ABL-90という血液分析装置(カリフォルニア州ブレアのRadiometer America)をメーカーの指示に従って用いて、pH、血液ガス、電解質、代謝物、酸素飽和度測定、ベースラインsO2及びpO2レベルを含め、サンプルを解析する。Hemocue(登録商標)Plasma Low Hb Photometerをメーカーの指示に従って用いて、遊離ヘモグロビンを測定する。
【0254】
適宜、交換気体として酸素を有するSorin D100という人工肺(Arvada,CO)に血液または血液成分を通すことによって、血液のsO2レベルを、採取した全血に典型的なレベル(65~90%)まで向上させる。すべての実験は、試験用に血液を酸素枯渇器具に移す前のsO2が≧50%の状態で開始する。
【0255】
実施例5:脱酸素化試験
実施例2の酸素枯渇器具に血液を入れて、下記のように試験する。全血(124グラム)を得て、数ccの純酸素ガスを注入することによって酸素で飽和し、Terumo Sterile Connection Device(SCD)を用いて無菌移動することによって、実施例2のシリコーン血液バッグに入れ、移動中、バッグを秤量する。Mocon OpTech Platinumという酸素分析器を用いて、外側容器101のヘッドスペースの酸素レベルを測定し、実験開始時において1.60トールであることが分かる。血液の初期サンプルを取り、Radiometer ABL-90という血液分析装置(カリフォルニア州ブレアのRadiometer America)で測定し、飽和酸素度(sO2)が98.7%であることが分かる。血液の入ったバリアバッグを作業机の上に室温(21.0℃)で置き、1時間、振盪せずに静置する。1時間後、sO2は、93.5%のsO2であり、バリアバッグのヘッドスペースの酸素は、0.70トールの酸素であることが分かる。血液の入ったバリアバッグを室温(21.0℃)で約14時間、振盪せずにインキュベートする。14時間のインキュベート後、sO2は、66.7%であることが分かり、さらに7時間、21℃で振盪せずにインキュベートした後のsO2の最終的な測定値は、51.2%である。脱酸素化速度は、一次速度式に従っており、速度定数を算出したところ、約min-1程度である。
【0256】
実施例6:蛇行ウレタン流の酸素枯渇器具
水蒸気透過性速度が1800gr/m2/24時間と報告されている通気性ポリウレタンフィルム(コネチカット州ブランフォードのAmerican Polyfilm)から、折り畳み可能な血液バッグを作製し、一対のフィルムを合わせて溶着して形状を作り出すための特注のヒートシールダイを用いて、蛇行流路を作製する。蛇行路を備える折り畳み可能なバッグは、幅約5mm、長さ220mmの12本の一連の流路で構成させ、約2640mmの全体流路をもたらす。実施例1に従って、折り畳み可能なバッグを外側バリア内にシールする。得られた枯渇器具は、本開示ですでに説明したように、末端の1つの中にシールした2本の多層チューブをさらに備え、蛇行路の注入口・排排出口が、その多層チューブの部品と流体連通するようになっている。
【0257】
2片のプラスチックスペーサーメッシュ(McMaster Carr #9314T29、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)を約125×180mm(5×7インチ)に切断し、外側バリア容器内の折り畳み可能な血液容器の両側に置く。酸素吸収剤(SS-200、ニューヨーク州ニューヨークのMitsubishi Gas Chemical America)の小袋を各プラスチックメッシュスペーサーと外側バリア容器との間に置き(合わせて2袋)、外側バリア容器の最後の縁をシールする前に、酸素センサータブ(Mocon #050-979、ミネソタ州ミネアポリスのMocon,Inc.)を取り付ける。シクロヘキサノンを用いて、914mm(36インチ)の標準的なIVチューブ(Qosina T4306、ニューヨーク州エッジウッドのQosina,Corp.)の長さ部分を各多層チューブに溶剤接合する。ラチェットクランプ(Qosina #140072、ニューヨーク州エッジウッドのQosina,Corp.)を排出チューブの上に配置して、流動を制御する。
【0258】
Terumoのチューブ滅菌接合装置(モデルTSCD-II、コロラド州レイクウッドのTerumo BCT,Inc.)を用いて、標準的な500mLの血液バッグ(モデルKS-500、マサチューセッツ州エイボンのKS Mfg.)を排出チューブの長さ部分に連結する。第2の標準的な500mLの血液バッグ(モデルKS-500、マサチューセッツ州エイボンのKS Mfg.)に、325グラムの血液を20.8℃で充填し、サンプルをRadiometer ABL-90という血液分析装置(カリフォルニア州ブレアのRadiometer America)で測定したところ、sO2が83.0%、pO2が70.1mmHgであることが分かる。ラチェットクランプ(Qosina #140072、ニューヨーク州エッジウッドのQosina,Corp.)を注入チューブの上に配置して、流動を制御してから、Terumoのチューブ滅菌接合装置(モデルTSCD-II、コロラド州レイクウッドのTerumo BCT,Inc.)を用いて、充填した血液バッグを注入チューブに連結する。ラチェットクランプを閉じて、流入を防ぎ、充填した血液バッグを点滴スタンドに吊るして、注入チューブが完全に延びるようにし、折り畳み可能な血液バッグを実験台の上に乗せる。排出バッグの重さを秤で測定してから、排出チューブが完全に延びた状態で床に置く。Mocon Op-Tech platinum酸素分析器を用いて、外側容器のヘッドスペースの酸素レベルを測定したところ、開始時において0.05トールの酸素であることが分かる。クランプを開き、ストップウォッチタイマーを起動して、流入期間を測定し、3分25秒後、注入血液バッグを空にして、ラチェットクランプを閉じる。血液サンプルを取り、測定したところ、sO2が84.1%、pO2が71.6mmHgであることが分かり、この上昇は、空の回路における残留酸素に起因すると推定される。ヘッドスペースを測定したところ、0.00トールの酸素であったとともに、排出血液バッグには、277グラムの血液が含まれていた。
【0259】
空の注入血液バッグを点滴スタンドから外し、床の上に置く一方で、277グラムの血液が入った排出血液バッグを点滴スタンドに吊るし、流動を繰り返す。点滴スタンドを457mm(18インチ)まで下げて、流速を低下させ、クランプを開いて、サイクルを繰り返す。このプロセスを5回繰り返してから、折り畳み可能な血液バッグに血液を充填し、実験台の上に80分静置し、血液分析装置で測定するために、末端部の血液サンプルを取る。下記の表には、結果がまとめられており、その結果から、流動中には、酸素レベルが徐々にわずかに上昇したとともに、静置後に、わずかに低下したことが示されている。
これらの結果により、調査の間、上記のシステムは、血液の明らかな脱酸素化を行わないが、酸素を透過性の標準的なPVC血液バッグから吸収することが示されている。このことから、注入口、排出口、ポート及びチューブで酸素が侵入するのを防ぐために、追加の測定値を取ることの重要性が示されている。
表3:ウレタンバッグを用いた脱酸素化
*ヘッドの高さが914mm。他のすべての流入動作は、高さが457mm。
【0260】
実施例7:折り畳み可能な内側の血液容器102の構成の試験
下記の表4に従って、一連の折り畳み可能な内側の血液容器102を作製し、実施例1に示されているような外側容器101内にシールする。白血球が低減された濃厚赤血球(LRpRBC)を容器102に入れる。得られた酸素枯渇器具10は、Mocon Optech-O2センサーをさらに備えていた。表4に従って、組み立てた血液容器をHelmer Labs Platelet Shaker,Model PF96の上に置き、血液及びヘッドスペースのサンプルを得て、0~300分の時点に解析する。
表4:折り畳み可能な内側の血液容器102の試験構成
【0261】
図5に示されているように、酸素の枯渇は、一次速度式に従っている。速度定数は、表5に示されている。
表5:速度定数
【0262】
実施例8:30.5×30.5cm(12×12インチ)の厚さのシリコーンバッグ
それぞれ152μmの厚さと228μmの厚さの一対のシリコーンシート(McMaster Carr #87315K71、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)を、周縁で合わせて、Sil-Poxyというシリコーン接着剤(ペンシルベニア州イーストンのSmooth-On,Inc.)で接合して、流体連通のために、注入チューブとしてシリコーンチューブ(McMaster Carr #9628T42、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)を接合したものから、折り畳み可能な血液容器102を作製する。接合したシートを2日間、クランプしたアルミニウム板の間で硬化させる。
【0263】
実施例1による外側容器バリアバッグ101の多層チューブと、折り畳み可能な血液バッグの注入チューブを、プラスチックバーブ継ぎ手(McMaster Carr #5116K18、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)で連結する。実施例1に記載されているように、吹き込みと浸漬によって、得られた外側容器バッグ101の漏れ試験を行う。
【0264】
330×330mmのメッシュスペーサー(McMaster Carr #9314T29、ニュージャージー州ロビンズビルのMcMaster Carr,Inc.)を2つ入れた状態で器具10を組み立て、酸素吸収剤を4袋、各メッシュスペーサーにテープ(SS-200、ニューヨーク州ニューヨークのMitsubishi Gas Chemical America)で取り付け、折り畳み可能な血液容器と、酸素センサータブ(Mocon #050-979、ミネソタ州ミネアポリスのMocon,Inc.)を挿入して、バリアバッグ101内にヒートシールする。標準的なIVチューブ(200mm Qosina T4306、ニューヨーク州エッジウッドのQosina,Corp.)で構成されている注入チューブをシクロヘキサノンによって、バリアバッグ101の多層チューブに溶剤接合する。ラチェットクランプ(Qosina #140072、ニューヨーク州エッジウッドのQosina,Corp.)によって、流動の制御を行う。
【0265】
遠心分離後、ヘマトクリット値を50%に調節し、赤血球と、所望の量の血漿とを再び組み合わせて、標的のヘマトクリット値を得ることによって、調査のために、一対の適合血液ユニットを調製する。Radiometer ABL-90という血液分析装置(カリフォルニア州ブレアのRadiometer America)で、初期の血液sO2を測定したところ、sO2が39.0%であることが分かり、30ccの100%酸素の入った3本のシリンジを血液に加えて、85.6%のsO2レベルを得てから、調査を開始した。血液の一部を、秤量済みの標準的な500mLの血液バッグ(モデルKS-500、マサチューセッツ州エイボンのKS Mfg.)に移し、532グラムの血液で満たして、ヘマトクリット値と飽和酸素レベルが高い典型的な500mLの献血血液ユニットになるようにする。Terumoのチューブ滅菌接合装置(モデルTSCD-II、コロラド州レイクウッドのTerumo BCT,Inc.)を用いて、注入チューブの長さ部分に、標準的な500mLの血液バッグ(モデルKS-500、マサチューセッツ州エイボンのKS Mfg.)を連結し、試験対象の折り畳み可能な血液バッグに中身を移す。
【0266】
この折り畳み可能な血液バッグを血小板振盪器のHelmerモデルPF96(インディアナ州ノーブルズビルのHelmer Scientific)の上に置き、血液のサンプルを取り、血液分析装置のRadiometer ABL-90(カリフォルニア州ブレアのRadiometer America)で測定し、ヘッドスペースの酸素レベルを酸素分析器のMocon Op-Tech platinum(ミネソタ州ミネアポリスのMocon,Inc.)で測定する。開始時には、血液のsO2は84.5%であることが分かり、ヘッドスペースの酸素分圧は2.48トールである。サンプルを血小板振盪器で振盪し、150分の期間、30分ごとにサンプルを取って測定する。結果は、下記の表6に要約されている。
表6:30.5×30.5cmのシリコーンバッグを用いた脱酸素化
算出した脱酸素化速度定数は、-0.34×10-2min-1である。
【0267】
実施例9:混合が酸素枯渇に及ぼす作用
折り畳み可能な内側のシリコーン製血液容器102を有する4つの酸素低減バッグ(ORB)を実施例3に従って作製する。体積に対する表面積(SAV)の比率が約6cm2/mlになるように、折り畳み可能な内側の血液容器102に、白血球が低減された濃厚赤血球(LRPRBC)であって、実施例4に従って調製したLRPRBCを充填する。
LRPRBCを充填した3つのORBをHelmer PF-96 Platelet Agitator(インディアナ州、ノーブルビル)または振盪器のPF-8の上に平らに置き、1分当たり標準的なサイクル(72cpm)または修正して標準的なcpmよりも低下させたcpm(42cpm)で線形振動させる。3セット目の充填済みORBを振盪器のBenchmark 3D 5RVH6(ニュージャージー州セアビル)に設置する。サンプルを回収し、0分、60分、120分及び180分の時点に、実施例4に概説されているような様々なABL-90出力値について解析する。
【0268】
図12に示されているように、3Dで混合すると、線形振動混合法に比べて、酸素枯渇速度が最も速く、T180におけるsO2の割合が最も低くなる。さらに、標準的なcpmよりも低下させたcpmでの線形振動(R-SLO)との比較において、酸素枯渇速度の向上は、標準的なcpmでの線形振動(SLO)によって得られる。
【0269】
実施例10:体積に対する表面の比率が酸素枯渇に及ぼす作用
別の例では、折り畳み可能な内側の血液容器102を有する6つの酸素低減バッグ(ORB)をBentecのシリコーンで作製する。LRPRBCを採取し、実施例4に従って作製する。折り畳み可能な内側のシリコーン製血液容器102に、LRPRBCを176mL、220mL、250mL、270mL、300mL及び350mL充填して、表7に示されているように、体積に対する表面の比率を3.41~6.8cm2/mlにする。様々な体積のLRPRBCを含むORBにおいて、0分、30分、60分、120分及び180分の時点に、実施例4に記載されているように、sO2の値を測定する。
表7:体積に対する表面積の比率
【0270】
図13に示されているように、SAVの比率が5.45cm2/mlを下回ると、表面積動態速度が低下する。
【0271】
別の例では、折り畳み可能な内側の血液容器102を有する5つの酸素低減バッグ(ORB)をシリコーンではなくPVDFで作製する。LRPRBCを採取し、実施例4に従って作製する。折り畳み可能な内側のPVDF製血液容器102に、95ml、110ml、220ml、300mlまたは360mlの血液体積で充填して、体積に対する表面積の比率を表8に示されているようにする。様々な体積のLRPRBCを含むORBにおいて、0分、30分、60分、120分及び180分の時点に、実施例4に示されているように、sO2の値を測定する。
【0272】
図14に示されているように、SAVの比率が5を上回ったときに、180分後のsO2の値が最も低くなる。
表8:体積に対する表面積の比率
【0273】
別の例では、片面または両面の膜(PSUまたはPVDF)を有する4つの酸素低減バッグ(ORB)を作製する。LRPRBCを採取して、実施例4に従って調製する。折り畳み可能な内側の血液容器102にLRPRBCを112~118ml充填して、両面膜において表面積容積を50%低下させる。実施例4に示されているように、片面または両面の膜を含むORBにおいて、sO2の値を測定する。図15に示されているように、表面積が50%縮小すると、全体的な動態速度が50~60%低下する。
【0274】
実施例11:微多孔質ポリスルホンまたはPVDFからの折り畳み可能な血液容器の作製
ヒートシールした折り畳み可能な酸素透過性ポリスルホン及びPVDF製血液容器102を作製する。シールの作製により、フィルムの微多孔質構造が壊れ、得られた容器102内での流体の移動に伴う曲げ応力の影響を受けやすい結晶区域が生じる。容器102は、漏れたり破れたりしやすく、実験設定外での使用が意図されているORBには適さない。
【0275】
輸血医療で用いるのに適する形で、ポリスルホンまたはPVDF膜をヒートシールできない点を解消するために、微多孔質膜113から作製した容器102の構築物に、熱ラミネート可能な「結合」層105を含める。図9Bに示されているように、低密度ポリエチレン(LDPE)片を上部膜と下部膜の内面に事前にラミネートして、バッグシール区域と揃えることによって、シール区域を補強する。事前にラミネートすることにより、図9Bに示されているように、事前ラミネートシール107が得られる。続いて、2つの事前ラミネート膜113(114)をヒートシールして、図9Bに示されているように、シール108を形成する。また、図9Bに示されているように、結合層は、シールの幅を、ある量だけ越えて延びている。
【0276】
LDPEは、ポリスルホン(187℃)またはPVDF(177℃)の融解温度よりもかなり低い約105℃で溶融する。シール区域を揃えて、上部膜と下部膜を合わせてヒートシールして、バッグを形成することによって、バッグを完成させる。具体的な機構に限定されることはないが、LDPEは、膜孔に流入して、シールの内側における補強のための歪み取りと、シールのための低温「結合」層として機能すると考えられる。
【0277】
結合層は、微多孔質膜113間のシールを強化するのに加えて、幾何学的特徴部121としても機能する。すなわち、結合層105の形状を選択することによって、内部形状全体を容易に調節できる。例示的な形状の例は、図10に示されている。図示されているように、幾何学的特徴部121によって、丸い内部形状をもたらすことによって、角部に関連して混合力が軽減されるのを回避する。図10に示されているように、得られる容器102は、楕円または円であることができ、血液製品の旋回流をもたらして混合を促す混合機構119をさらに備えてもよい。
【0278】
まず、低密度ポリエチレン(LDPE)結合層フレームを各膜にを熱接合することによって、孔サイズが0.22μmであり、177×177mmの正方形である一対のMillipore PVDF膜から、折り畳み可能な内側の血液バッグを作製する。LDPE結合層フレームは、厚みが約0.02~0.10mmであり、外寸が約177×177mmの正方形であり、幅15mmのシールとともに用いるように、内寸は約160×160mmの正方形になっており、それによって、シールの縁と結合層の末端との間に、約4mmの重複部分を設けて、シール縁部における応力を緩和する。インパルスヒートシーラーを用いて結合層フレームをPVDF膜に熱接合する。続いて、上述のように、チューブシール溝を有する一対の特注の恒熱アルミニウムダイを用いて、膜に接合した1対の結合層を周縁で合わせてヒートシールして、折り畳み可能な内側の血液容器を得る。ConwedのThermanetパーツ#R03470というポリマー一体化メッシュシート一対を、折り畳み可能な内側の血液バッグの周縁よりも約10mm大きく切断し、ポリマー一体化メッシュの接着剤側が折り畳み可能な内側の血液バッグと接した状態で、一体化メッシュを折り畳み可能な内側の血液バッグの両側に置く。この組み立て体を一対のアルミニウム板の間に配置し、約93~110℃まで(最大でも120℃まで)約3~15分加熱して、接着剤を溶融させて、一体化ポリマーメッシュの真下かつ折り畳み可能な内側の血液バッグの周縁にあるPVDF膜の孔に接着剤を流入させる(この孔において、ポリマー一体化メッシュ同士が接触し、それによって、強力な機械的接合が得られる)。この組み立て体を約50℃未満まで冷却してから、板を外す。
【0279】
実施例12:スペーサー110が脱酸素化速度に及ぼす作用
折り畳み可能な内側の血液バッグと酸素枯渇器具は、本開示によるスペーサー110を備えるかまたは備えない状態で、上記の実施例に従うものである。図16に示されているように、スペーサー110を組み込むと、酸素枯渇速度が有意に上昇する。
【0280】
特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な変更を加えてよいとともに、本発明の要素を均等物に置き換えてよいことが分かるであろう。加えて、本発明の範囲から逸脱することなしに、多くの修正を行って、特定の状況または材料を本発明の教示に適応させてよい。
【0281】
したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示されているような特定の実施形態に限定せず、本発明には、添付の請求項の範囲と趣旨の中に収まるすべての実施形態が含まれるように意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16