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特許7490733有機エレクトロルミネッセント素子のための材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセント素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/94 20060101AFI20240520BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240520BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
C07D209/94 CSP
H05B33/14 B
H05B33/22 B
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022171463
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2021010879の分割
【原出願日】2013-07-11
(65)【公開番号】P2023017822
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】12005829.2
(32)【優先日】2012-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】エルビラ・モンテネグロ
(72)【発明者】
【氏名】アミア・ホサイン・パルハム
(72)【発明者】
【氏名】アンヤ・ヤトシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・プフルム
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス・バレンティン・クロエベル
(72)【発明者】
【氏名】トマス・エベルレ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513530(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032561(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/120577(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2019-0065214(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/
H10K 50/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または(2)の化合物;
【化1】
(式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Arは、Lが単結合ならば、炭素原子を介してLに結合し、およびLが単結合でなければ、炭素原子もしくは窒素原子を介してLに結合する、1以上の基Rにより置換されてよいインデノカルバゾールまたはインドロカルバゾールであり;
Lは、単結合、C(=O)または1以上の基Rにより置換されてよい5~24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり;
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、FCN、110個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3~10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5~24個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれ;ここで、基R、R およびR は、2個以上の芳香族もしくは複素環式芳香族六員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まず、ここで、2個以上の隣接する置換基RもしくはRは、1以上の基Rで置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、1~20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5~30個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、モノ-あるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく;
sは、0、1または2であり;
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2または3であり、
以下の化合物は除外される。
【化2】
)。
【請求項2】
式(1a)および式(2a)の化合物から選ばれる、請求項1記載の化合物。
【化3】
(式中、使用される記号は、請求項1の意味を有する。)
【請求項3】
式(1b)および式(2b)の化合物から選ばれる、請求項1または2記載の化合物。
【化4】
(式中、使用される記号は、請求項1の意味を有する。)
【請求項4】
Lは、単結合、C(=O)または1以上の基Rにより置換されてよい6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造から選ばれることを特徴とする、請求項1~3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
Lは、1以上の基Rにより置換されてよい単結合またはオルト-、メタ-もしくはパラ-結合フェニレン基から選ばれることを特徴とする、請求項1~4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
RとRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1~10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3~10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6~24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1~5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含む調合物請求項1~6何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と少なくとも一つの溶媒を含む溶液または請求項1~6何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と少なくとも一つの蛍光もしくは燐光化合物を含む混合物。
【請求項8】
請求項1~6何れか1項記載の化合物または請求項記載の調合物の、電子素子での使用。
【請求項9】
請求項1~6何れか1項記載の化合物または請求項記載の少なくとも一つの調合物を含む電子素子であって、電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機染料増感性太陽電池、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、有機レーザーダイオードおよび有機プラスモン発光素子より成る群から選ばれる、電子素子。
【請求項10】
有機エレクトロルミッセンス素子であって、請求項1~6何れか1項記載の化合物が、電子輸送層もしくは正孔ブロック層中で電子輸送材料として、または発光層中で蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用されることを特徴とする、請求項記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセント素子での使用のための材料とこれらの材料を含む電子素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能的材料として用いられる有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)の構造は、たとえばUS4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで用いられる発光材料は、次第に、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属錯体に代わってきている(M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4~6)。
【0003】
従来技術によれば、燐光化合物のために使用されるマトリックス材料と使用される電子輸送材料は、たとえば、トリアジン誘導体またはベンズイミダゾール誘導体等の複素環式芳香族化合物であることが多い。燐光化合物のために適するマトリックス材料は、また、カルバゾール誘導体である。この機能のために知られているものは、たとえば、WO2010/015306およびWO2010/072300に開示されたとおりの2-位でトリアジン基により置換されたスピロビフルオレン誘導体である。また、知られているものは、4,4-位で二個のトリアジン基により置換されたスピロビフルオレン誘導体である。蛍光および燐光OLEDの両場合に、これら化合物における改善のニーズが、特に、有機エレクトロルミッセンス素子での使用について、効率、寿命および駆動電圧に関して、引き続き存在する。
【0004】
本発明の目的は、蛍光もしくは燐光OLED、特に、燐光OLEDにおいて、たとえば、電子輸送もしくは正孔ブロック層での電子輸送材料として、または発光層でのマトリックス材料として適する化合物を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、以下により詳細に記載される化合物によって、この目的が達成され、有機エレクトロルミネッセント素子において、寿命、効率および駆動電圧に関して、顕著な改善をもたらすことが判明した。これは、燐光および蛍光エレクトロルミネッセント素子での、特に、電子輸送材料としてまたはマトリックス材料としての本発明の化合物の使用に関してあてはまる。材料は、一般的に高い熱安定性を有し、その結果分解することなく、残留物なく昇華することができる。したがって、本発明は、これらの材料とこのタイプの化合物を含む電子素子に関する。
【0006】
したがって、本発明は、以下の式(1)または(2)の化合物に関し、
【化1】
【0007】
式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される。
【0008】
Arは、Lが単結合ならば、炭素原子を介してLに結合し、およびLが単結合でなければ、炭素原子もしくは窒素原子を介してLに結合する、1以上の基Rにより置換されてよい5~40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造であり、または、Arは、LがC(=O)であるならば、1以上の基Rにより置換されてよい6~40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり;
Lは、単結合、C(=O)または1以上の基Rにより置換されてよい5~24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり;
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3~40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に1以上の隣接しないCH基は、Si(R、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6~40個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ基、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5~60個の芳香族環原子を有するアラルキル基より成る群から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基RもしくはRは、1以上の基Rで置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、1~20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5~30個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、モノ-あるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく;
sは、0、1または2であり;
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2または3である。
【0009】
アリール基は、本発明の意味では、6~24個のC原子を含有し、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、2~24個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環、すなわちベンゼン、または簡単な複素環式芳香族環、たとえばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかを意味すると解釈される。
【0010】
芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に6~40個のC原子を含有する。複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に1~40個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。芳香族または複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基だけを含有するとは限らない構造であって、その構造の複数のアリールまたはヘテロアリール基が、非芳香族単位(好ましくは10%未満の、H以外の原子)、たとえばC、NもしくはO原子またはカルボニル基などによってさらに中断されていてもよい構造を意味すると解釈されることを意図する。したがって、たとえば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の構造は、2つ以上のアリール基が、たとえば直鎖状もしくは環式のアルキル基によってまたはシリル基によって中断されている構造と同様に、本発明の意味ではやはり芳香族環構造であると解釈されることを意図する。さらに、2つ以上のアリールまたはヘテロアリール基が互いに直接結合している構造、たとえばビフェニル、テルフェニルまたはクアテルフェニルなども同様に、芳香族または複素環式芳香族環構造であると解釈されることを意図する。
【0011】
環式アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基は、本発明の意味では、単環式、二環式または多環式基を意味すると解釈される。
【0012】
本発明の目的では、さらに個々のH原子またはCH2基が、前述の基により置換されていてもよいC-~C40-アルキル基は、たとえば、ラジカルであるメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジメチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデカ-1-イル、1-(n-プロピル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ブチル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ヘキシル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-オクチル)シクロヘキサ-1-イルおよび1-(n-デシル)シクロヘキサ-1-イルを意味すると解釈される。アルケニル基は、たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを意味すると解釈される。アルキニル基は、たとえばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを意味すると解釈される。C1~C40-アルコキシ基は、たとえばメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味すると解釈される。
【0013】
各場合において、前述のラジカルRにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して芳香族または複素環式芳香族環構造に連結していてもよい、5~60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、たとえばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-またはtrans-インデノフルオレン、cis-またはtrans-モノベンゾインデノフルオレン、cis-またはtrans-ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから得られる基を意味すると解釈される。
【0014】
本発明の好ましい態様では、式(1)の化合物は、以下の式(1a)の化合物から選ばれ、式(2)の化合物は、以下の式(2a)の化合物から選ばれ、
【化2】
【0015】
式中、使用される記号は、上記意味を有する。
【0016】
特に、好ましいのは、以下の式(1b)および式(2b)の化合物であり、
【化3】
【0017】
式中、使用される記号は、上記意味を有する。
【0018】
非常に、特に、好ましいのは、基-L-Arが、スピロビフルオレンの4-位に結合する式(1)または式(1a)もしくは(1b)の化合物である。
【0019】
本発明の好ましい態様では、Lは、単結合、C(=O)または1以上の基Rにより置換されてよい6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。Lは、特に、好ましくは、単結合またはオルト-、メタ-もしくはパラ-結合フェニレン基から選ばれ、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されていない。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様では、Arは、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5~24個の芳香族環原子、特に、5~13個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造である。基Arは、Lが単結合であるならば、炭素原子を介してLに結合する。さらに、Lが単結合でないならば、窒素原子を介してLに結合してもよく、たとえば、窒素原子を介して結合するカルバゾール基、インドロカルバゾール基もしくはインデノカルバゾール基である。Lが単結合C(=O)であるならば、Arは、さらに好ましくは、1以上の基Rにより置換されてよい6~24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。
【0021】
特に、好ましい基Arは、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、インデノカルバゾールおよびインドロカルバゾールより成る基から選ばれ、これらは、それぞれ、以上の基Rにより置換されてよい。
【0022】
本発明の、特に、好ましい態様では、基Arは、以下の式(Ar-1)~(Ar-24)の構造から選ばれ、
【化4-1】
【化4-2】
【0023】
式中、破線の結合はLへの結合を示し、Rは、上記意味を有する。
【0024】
さらに、基(Ar-11)~(Ar-14)および(Ar-24)中の窒素原子に結合する基Rは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基である。
【0025】
Arは、特に、好ましくは、トリアジン基、すなわち、上記式(Ar-1)の基である。
【0026】
Arは、LがC(=O)であるならば、さらに好ましくは、それぞれ1以上の基Rにより置換されてよいフェニル、ビフェニル、オルト-、メタ-もしくはパラ-テルフェニル、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐クアテルフェニル、1-、2-、3-もしくは4-フルオレニルまたは1-、2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニルである。
【0027】
本発明の好ましい態様では、RまたはRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1~10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3~10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6~24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。
【0028】
本発明の特に好ましい態様では、RまたはRは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1~5個のC原子を有する直鎖アルキル基、3~6個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5~18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。
【0029】
ここで、基R、RおよびRは、好ましくは、2個以上の芳香族もしくは複素環式芳香族六員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まず、すなわち、たとえば、アントラセンもしくはピレン基を含まない。基R、RおよびRは、特に、好ましくは、芳香族もしくは複素環式芳香族六員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対に含まず、すなわち、たとえば、ナフタレン基を含まない。
【0030】
ここで、真空蒸発により加工される化合物に対しては、アルキル基は、好ましくは、4個を超えるC原子、特に、好ましくは、1個を超えるC原子を有さない。溶液から加工される化合物に対しては、10個を超えるC原子を有する直鎖、分岐もしくは環式アルキル基により置換された化合物またはオリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニルまたはクアテルフェニルにより置換された化合物が、また、適している。
【0031】
本発明の好ましい態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、1~10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3~10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基または6~24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造より成る群から選ばれる。Rは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、Hまたはメチル基、非常に、特に、好ましくは、Hである。
【0032】
特に、好ましいのは、上記好ましい態様が同時に出現する式(1)、(1a)、(1b)または(2)、(2a)、(2b)の化合物である。したがって、特に、好ましいのは、以下の化合物であり;
Lは、単結合、C(=O)または1以上の基Rにより置換されてよい6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり;
Arは、Lが単結合ならば、炭素原子を介してLに結合しまたはLが単結合でなければ、炭素原子もしくは窒素原子を介してLに結合する、1以上の基Rにより置換されてよい5~13個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造であり、あるいは、LがC(=O)であるならば、1以上の基Rにより置換されてよい6~24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり;
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1~10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3~10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6~24個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。
【0033】
非常に、特に、好ましいのは、以下の式(1)、(1a)、(1b)または(2)、(2a)、(2b)の化合物であり;
Lは、単結合、オルト-、メタ-、パラ-結合フェニレン基であり、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されておらず;
Arは、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、インデノカルバゾールおよびインドロカルバゾールより成る基から選ばれ、これらは、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよく、好ましくは、式(Ar-1)~(Ar-22)の基から選ばれ;
R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1~5個のC原子を有する直鎖アルキル基、3~6個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5~18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。
【0034】
本発明の適切な化合物の例は、以下の表に示される。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【化5-9】
【0035】
本発明の化合物は、たとえば、臭素化、ウルマンアリール化、ハートウイッグ-ブフバルトカップリング等の当業者に知られた合成工程により調製することができる。
【0036】
ここで、合成は、一般的に1-もしくは4-ハロゲン化、特に、臭素化スピロビフルオレン誘導体から出発し、特に、金属カップリング反応、たとえば、スズキカップリングによる基-Arまたは-L-Arの導入に続く。
【0037】
別の適切な脱離基、たとえば、トシレートまたはトリフレートを、ハロゲンに代えて同様に使用することができる。1-位でArにより置換されたスピロビフルオレンの合成は、スキーム1に示される。4-位でArにより置換されたスピロビフルオレンの合成は、スキーム2に示される。
【化6】
【0038】
基Arがスピロビフルオレンに直接結合しないが、その代わりに単結合ではない基Lを介してする対応する化合物を、ハロゲン化芳香族化合物A-Halに代えて対応するAr-L-Hal化合物を使用することによって、全く同様に合成することができる。ここで、Halは、好ましくは、Cl、BrもしくはI、特に、Brである。
【0039】
基-L-Arのボロン酸誘導体にカップルするハロゲン化スピロビフルオレン誘導体を全く同様に使用することができる。
【0040】
したがって、本発明は、基-L-Arが、1-もしくは4-官能化スピロビフルオレンと官能化された基-L-Arとの間に、金属触媒カップリング反応により導入される、式(1)または(2)の化合物の製造方法に関する。本発明の好ましい態様では、スピロビフルオレン誘導体は、ハロゲン官能化化合物であり、基-L-Arは、ボロン酸誘導体により官能化された化合物である。本発明のさらに好ましい態様では、スピロビフルオレン誘導体は、ボロン酸誘導体により官能化された化合物であり、基-L-Arは、ハロゲン官能化化合物である
本発明の化合物は、電子素子での使用のために適している。ここで、電子素子は、少なくとも一つの有機化合物を含む少なくとも一つの層を含む素子の意味で使用される。しかしながら、ここで、素子は、また、無機材料または無機材料から全体的に構成される層を含んでもよい。
【0041】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物の電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。
【0042】
本発明は、なおさらに、少なくとも一つの本発明の化合物を含む電子素子に関する。上記選好は、また、電子素子にあてはまる。
【0043】
電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機発光ダイオード、OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機染料増感性太陽電池、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機プラズモン発光素子(D. M. Koller et al., Nature Photonics 2008, 1-4)より成る群から選ばれるが、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、特に、好ましくは、燐光OLEDから選ばれる。
【0044】
有機エレクトロルミッセンス素子と発光電子化学電池は、種々の用途のために、たとえば、単色または多色ディスプレ-、照明用途、または医療用もしくは美容用、たとえば、光治療に使用することができる。
【0045】
有機エレクトロルミッセンス素子は、カソード、アノードと少なくとも一つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層および/または電荷生成層を含んでもよい。たとえば、励起子ブロック機能を有する中間層を、二個の発光層の間に導入することも同様に可能である。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。
【0046】
ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm~750nm間に全体で複数の最大発光を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいのは、3個の発光層を有する構造であり、ここで、その3層は、青色、緑色及びオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、例えば、WO 2005/011013参照。)。ここで、すべての発光層が蛍光であるか、またはすべての発光層が燐光であるか、または一以上の発光層が蛍光であり、一以上の他の発光層が燐光であることが可能である。
【0047】
ここで、上記示された態様にしたがう本発明の化合物は、その正確な構造に応じて、種々の層に使用することができる。好ましいものは、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様を、電子輸送層もしくは正孔ブロック層中で電子輸送材料として、または蛍光もしくは燐光エミッター、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。上記示される好ましい態様は、また、有機電子素子での材料の使用にあてはまる。
【0048】
本発明の好ましい態様では、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様は、電子輸送層中で電子輸送材料として使用される。ここで、発光層は、蛍光または燐光でありうる。さらに、電子輸送層は、アノードに直接隣接してよいし、あるいは追加的な電子注入層がカソードと電子輸送層との間に位置して存在してもよい。同様に、複数の電子輸送層が存在し、そのうちの少なくとも一つの層が、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物を含むことも可能である。
【0049】
本発明のさらに好ましい態様では、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様は、正孔ブロック層で使用される。ここで、正孔ブロック層は、カソード側で発光層に直接隣接する層を意味すると解釈される。
【0050】
本発明のさらに好ましい態様では、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様は、発光層中で、蛍光もしくは燐光化合物のための、特に、燐光化合物のためのマトリックス材料(=ホスト材料)として使用される。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層もしくは複数の発光層を含んでよく、ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの本発明の化合物をマトリックス材料として含む。
【0051】
式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様が、発光層中で、発光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、好ましくは、一以上の燐光材料(三重項エミッター)と組み合わせて使用される。本発明の意味での燐光発光は、スピン多重度>1の励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスの意味で使用される。本発明の目的のために遷移金属もしくはランンタノイドを含むすべてのルミネッセンス錯体、特に、すべてのルミネッセンスイリジウム、白金および銅錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0052】
式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様と発光化合物を含む混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様を、好ましくは、99.9~1重量%、好ましくは、99~10重量%、特に、好ましくは、97~60重量%、特に、95~80重量%含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、エミッターを0.1~99重量%、好ましくは、1~90重量%、特に、好ましくは、3~40重量%、特に、5~20重量%含む。上記範囲は、特に、層が溶液から適用されるときにあてはまる。層が真空蒸発により適用されならば、同じ数値範囲が適用され、この場合にパーセンテージは、vol%で示される。
【0053】
本発明の特に好ましい態様は、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様の、さらなるマトリックス材料と組み合わせての燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用である。式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様と組み合わせことのできる、特に、適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがう芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527もしくはWO 2008/086851に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、WO2010/136109およびWO2011/000455にしたがうインデノカルバゾール誘体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/015306、WO 2007/063754、WO 2008/056746にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2009/124627にしたがうフルオレン、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、US2009/0136779、WO 2010/050778、WO 2011/042107もしくはWO 2011/088877にしたがう架橋カルバゾール誘導体である。たとえば、WO 2010/108579に記載されるとおりの、正孔輸送特性も電子輸送特性も持たない電気的に中性のコホストを使用することもさらに可能である。
【0054】
同様に、混合物中で2個以上の燐光エミッターを使用することも可能である。この場合に、より短い波長範囲で発光するエミッターが、混合物中でコホストとして機能する。
【0055】
適切な燐光発光化合物(三重項エミッター)、特に、好ましくは、可視域で適切な励起により発光する化合物は、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38~84の原子番号、特に、好ましくは、56~80の原子番号を有する少なくとも一つの原子、特に、この原子番号を有する金属を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0056】
上記説明したエミッターの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2005/033244、WO 2005/019373、US2005/0258742、WO 2009/146770、WO 2010/015307、WO2010/031485、WO 2010/054731、WO 2010/054728、WO2010/086089、WO2010/099852、WO 2010/102709、WO2011/032626、WO 2011/066898、WO 2011/157339もしくは WO 2012/007086により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、さらなる燐光発光化合物を使用することができよう。
【0057】
本発明のさらなる態様では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、別々の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔ブロック層および/または電子輸送層を含まず、たとえば、WO 2005/053501に記載されるとおり、発光層は、正孔注入層もしくはアノードに直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接する。さらに、たとえば、WO 2009/030981に記載されるとおり、発光層中の金属錯体と同一または類似する金属錯体を、発光層に直接隣接して、正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することも可能である。
【0058】
式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様を、正孔ブロック層中で、または電子輸送層中および発光層中のマトリックス材料の両者で使用することが可能である。
【0059】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層では、先行技術にしたがって通常使用されるすべての材料を使用することができる。したがって、当業者は、発明性を要することなく、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子のために知られたすべての材料を使用することができる。
【0060】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10-5mbar未満、好ましくは、10-6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10-7mbar未満でも可能である。
【0061】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10-5mbar~1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0062】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。
たとえば、適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要である。
これらは、一般的に有機溶媒中で非常に良好な溶解度を有することから、これらのプロセスは、また、本発明の化合物に対して、特に、適している。
【0063】
たとえば、一以上の層が溶液から適用され、一以上のさらなる層が気相堆積により適用されるハイブリッドプロセスも可能である。このように、たとえば、溶液から発光層を適用し、気相堆積により電子輸送層を適用することも可能である
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、発明性を要することなく適用することができる。
【0064】
液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスからの本発明の化合物の加工のためには、本発明の化合物の調合物が必要である。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンであり得る。二以上の溶媒の混合物を使用することが、この目的のために好ましいかもしれない。適切で、好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、ジメチルアニソール、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサンまたはこれら溶媒の混合物である。
【0065】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様と少なくとも一つの溶媒、特に、有機溶媒を含む調合物、特に、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンに関する。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0066】
本発明は、さらに、式(1)もしくは式(2)の化合物または上記好ましい態様と少なくとも一つのさらなる化合物とを含む混合物に関する。本発明の化合物がマトリックス材料として使用されるならば、さらなる化合物は、たとえば、蛍光もしくは燐光ドーパントである。そこで、混合物は、追加的マトリックス材料としてさらなる材料を追加的に含んでよい。
【0067】
本発明による化合物と本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、以下の驚くべき利点の1つ以上によって従来技術とは区別される。
【0068】
1.本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセント素子での正孔ブロックもしくは電子輸送層において使用するのに極めて高度に適している。本発明の化合物は、ルミネッセンを消失しないことから、それらは、また、特に、燐光エミッター層に直接隣接する正孔ブロック層において使用するのに適している。
【0069】
2.本発明の化合物を蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用すると、非常に高い効率と長い寿命をもたらす。これは、特に、化合物が、さらなるマトリックス材料と燐光エミッターと一緒にマトリックス材料として使用されると、あてはまる。
【0070】
3.本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセント素子で使用されると、低い使用および駆動電圧と共に、高い効率と急峻な電流/電圧曲線をもたらす。
【0071】
先に列挙したこれらの利点には、他の電気的特性の障害が伴わない。
【0072】
本発明を、以下の例によってより詳細に説明するが、それにより本発明が制限されるものではない。本明細書に基づいて、当業者は、特許請求の範囲の全般にわたって本発明を実施することができ、発明性を要さずに本発明のさらなる化合物を製造し、それらを電子素子に使用し、本発明のプロセスを使用することができよう。
【0073】
例:
以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下、無水溶媒中で行われる。出発物質は、ALDRICHから購入することができる(フッ化カリウム(噴霧乾燥)、トリ-tert-ブチルホスフィン、酢酸パラジウム(II))。3-クロロ-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジンは、EP 577559と同様に調製される。2’,7’-ジ-tert-ブチルスピロ-9,9’-ビフルオレン-2,7-ビスボロン酸グリコールエステルは、WO 2002/077060と同様に調製され、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンは、US 5,438138にしたがって調製される。スピロ-9,9’-ビフルオレン-2,7-ビス(ボロン酸グリコールエステル)は、WO 2002/077060と同様に調製される。文献から知られた出発材料の場合には番号は、そのうちの幾つかが角括弧内に示されており、対応するCAS番号である。
【0074】
例1:1-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレン
【化7】
【0075】
対応するグリニャール試薬を、2.7g(110ミリモル)のヨード活性化した削り屑状マグネシウム及び、25.6g(110ミリモル)の2-ブロモビフェニルと、0.8mlの1,2-ジクロロエタンと、50mlの1,2-ジメトキシエタンと、400mlのTHFと、200mlのトルエンとの混合物から、70℃の油浴を用いた二次加熱により調製する。
マグネシウムが完全に反応すると、混合物を室温まで冷ましておき、500mlのTHF中の25.9g(100ミリモル)の1-ブロモフルオレノン[36804-63-4]の溶液を次いで滴下して、反応混合物を50℃で4時間温め、次いでさらに12時間室温で撹拌する。100mlの水を添加し、混合物を簡単に撹拌し、有機相を分離させ、溶媒を真空除去する。残留物を40℃で500mlの温かい氷酢酸中に懸濁させ、0.5mlの濃硫酸を懸濁液に添加し、混合物をその後、100℃でさらに2時間撹拌する。冷却後、沈殿した固体を吸引濾過し、各回、100mlの氷酢酸で1度、100mlのエタノールで3度洗浄し、最後に、ジオキサンから再結晶化させる。収率:26.9g(68ミリモル)、68%;H-NMRによる純度約98%。
【0076】
以下の化合物は同様に得られる:
【化8】
【0077】
例2:4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成
【化9】
【0078】
工程1)スピロ-9,9’-ビフルオレン-1-ボロン酸の合成
110ml(276ミリモル)のn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)を、1500mlのジエチルエーテル中、106g(270ミリモル)の1-ブロモ-9-スピロビフルオレンの-78℃まで冷却した溶液に滴下する。反応混合物を-78℃で30分間撹拌する。混合物を室温まで冷ましておき、再度-78℃まで冷却し、50mlのジエチルエーテル中40ml(351ミリモル)のホウ酸トリメチルの混合物を次いで、迅速に添加する。-10℃まで温めた後、混合物を135mlの2N 塩酸を使用して加水分解する。有機相を分離させ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させる。残留物を300mlのn-ヘプタンで取込み、無色の固体を吸引濾過し、n-ヘプタンで洗浄し、真空で乾燥させる。収率94.5g(255ミリモル)、理論値の99%、HPLCによる純度99%。
【0079】
以下の化合物は同様に得られる:
【化10】
【0080】
工程2)1-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成
56.8g(110ミリモル)のスピロ-9,9’-ビフルオレン-1-ボロン酸と、29.5g(110.0ミリモル)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンと、44.6g(210.0ミリモル)のリン酸三カリウムとを、500mlのトルエンと、500mlのジオキサンと、500mlの水とに懸濁させる。913mg(3.0ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とをこの懸濁液に添加し、反応混合物を還流下で16時間加熱する。冷却後、有機相を分離させ、シリカゲルを通して濾過し、200mlの水で3度洗浄し、その後、蒸発乾固させる。残留物をトルエンと、ジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶化させ、最後に、高真空(P=5×10-5mバール、T=377℃)で昇華させる。収率は38.7g(43.5ミリモル)であり、理論値の87%に対応する。
【0081】
以下の化合物が同様にして、得られる:
【化11-1】
【化11-2】
【0082】
例3:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術にしたがうOLEDが、WO 2004/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、ここに記載される状況(層の厚さの変化、材料)に適合される。
【0083】
種々のOLEDのデータが、以下の例V1~E3で示されている(表1と2参照)。厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスホネート)で水性溶液からのスピンコートにより適用、Heraeus Precious Metals GmbH 独からCLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083として購入)で被覆される。これらの被覆されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/ITO/随意に、正孔注入層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔ブロック層(HBL)/電子輸送層(ETL)/随意に、電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造は、表1に示されている。OLEDの製造のために必要とされるその他の材料は、表3に示されている。
【0084】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合で一つのまたは複数のマトリックス材料と前混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、Host1:Host3:TEG1(30%:60%:10%)等の表現は、材料Host3が60体積%の割合で層中に存在し、Host1が30体積%の割合で層中に存在し、TEG1が10体積%の割合で層中に在在することを意味する。
同様に、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0085】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/mで測定され、CIE 1931xおよびy色座標はそこから計算される。表2での言い回しU1000は、輝度1000cd/mに対して必要とされる電圧を夫々示す。CE1000とPE1000は、1000cd/mで達成される電流とパワー効率を示す。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/mでの外部量子効率を示す。
【0086】
種々のOLEDのデータが、表2に要約されている。例V1~V4は先行技術による比較例である。例E1~E3は、本発明による材料を含むOLEDのデータを示している。
【0087】
本発明による化合物の優位性を証明するために、いくつかの例を、以下に詳細に説明する。しかしながら、これは、表2に示されるデータの選択を単に示すだけであることを指摘しておかなければならない。
【0088】
電子輸送層における本発明による化合物の使用
化合物Host2を電子輸送層として使用するならば、3.5Vの低い駆動電圧とほぼ17%の非常に良好な量子効率とが得られ(例E2)、これらの値は先行技術による化合物Host1を使用すると、より不良である(例V2)。
【0089】
燐光OLEDでのマトリックス材料としての、本発明による化合物の使用緑色ドーパントTEG1と組合わせた一重項マトリックス材料としての本発明による材料の使用に関して、4.4Vという非常に低い駆動電圧と15.6%の非常に良好な外部量子効率が得られ(例E1)、一方で比較例V1の電圧は、事実上同じ効率についてはより高い。
【0090】
非常に良好な性能データが、また、本発明による材料を有する混合マトリックス構造中で得られる。材料Host3と組み合わせると、たとえば、3.6Vの非常に低い駆動電圧が得られ(例E3)、一方で、これは比較例V4では非常に高い。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】