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特許7490739試料調製装置の制御方法、試料調製装置の制御装置、試料調製システム及び試料調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】試料調製装置の制御方法、試料調製装置の制御装置、試料調製システム及び試料調製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1409 20240101AFI20240520BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240520BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240520BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01N15/1409 100
G01N15/14 C
G01N33/543 597
G01N33/53 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022188730
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021159468の分割
【原出願日】2017-05-31
(65)【公開番号】P2023011024
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】小国 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 智悠
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/122999(WO,A1)
【文献】特開2016-206184(JP,A)
【文献】特開2016-217888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 - 15/1492
G01N 35/00 - 35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器から取得した一部の検体中の測定対象粒子の濃度を調整可能であり、前記一部の検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置の制御方法であって、
前記検体容器から取得した他の一部の検体中の、前記本測定の対象粒子と同種の粒子であるプレ測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、
前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を読み出す工程と、
前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記一部の検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、を含み、
前記測定試料の調製に関する情報は、抗原の種類を示す測定項目に応じた情報であり、
前記複数種類の粒子検出試薬は、第1の検出試薬と第2の検出試薬と、を含み、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長である第1の蛍光物質を含み、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長と異なる第2の波長である第2の蛍光物質を含み、
前記測定対象粒子は細胞であり、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第1の抗原に結合する第1の抗体を更に含み、前記第1の蛍光物質は、前記第1の抗体を標識しており、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第2の抗原に結合する第2の抗体を更に含み、前記第2の蛍光物質は、前記第2の抗体を標識している、
試料調製装置の制御方法。
【請求項2】
前記測定試料の調製に関する情報に応じて、前記一部の検体と、前記複数種類の粒子検出試薬と、を混合して前記測定試料を調製するよう前記試料調製装置を制御する工程をさらに含む、請求項1に記載の試料調製装置の制御方法。
【請求項3】
前記測定試料を調製するよう前記試料調製装置を制御する工程は、濃度が調整された前記一部の検体と、前記複数種類の粒子検出試薬と、を混合するよう、前記試料調製装置を制御する工程を含む、請求項2に記載の試料調製装置の制御方法。
【請求項4】
前記測定試料の調製に関する情報は、検体量の情報を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の試料調製装置の制御方法。
【請求項5】
前記プレ測定対象粒子は白血球である、請求項1から4のいずれか一項に記載の試料調製装置の制御方法。
【請求項6】
検体容器から取得した一部の検体中の測定対象粒子の濃度を調整可能であり、前記一部の検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置の制御装置であって、
プロセッサと、
記憶部と、を備え、
前記プロセッサは、
前記検体容器から取得した他の一部の検体中の、前記本測定の対象粒子と同種の粒子であるプレ測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、
前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を前記記憶部から読み出す工程と、
前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記一部の検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、を実行するように構成されており、
前記測定試料の調製に関する情報は、抗原の種類を示す測定項目に応じた情報であり、
前記複数種類の粒子検出試薬は、第1の検出試薬と第2の検出試薬と、を含み、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長である第1の蛍光物質を含み、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長と異なる第2の波長である第2の蛍光物質を含み、
前記測定対象粒子は細胞であり、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第1の抗原に結合する第1の抗体を更に含み、前記第1の蛍光物質は、前記第1の抗体を標識しており、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第2の抗原に結合する第2の抗体を更に含み、前記第2の蛍光物質は、前記第2の抗体を標識している、
試料調製装置の制御装置。
【請求項7】
検体容器から取得した粒子を含む一部の検体を測定して前記一部の検体中のプレ測定対象粒子を検出する測定装置と、
前記検体容器から取得した他の一部の検体中の、前記プレ測定の対象粒子と同種の粒子である本測定対象粒子の濃度を調整可能であり、前記他の一部の検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置と、
プロセッサと記憶部とを備える制御装置と、を備え、
前記制御装置のプロセッサは、
前記一部の検体中の前記プレ測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、
前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を前記記憶部から読み出す工程と、
前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記他の一部の検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、
を実行するように構成されており、
前記測定試料の調製に関する情報は、抗原の種類を示す測定項目に応じた情報であり、
前記複数種類の粒子検出試薬は、第1の検出試薬と第2の検出試薬と、を含み、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長である第1の蛍光物質を含み、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長と異なる第2の波長である第2の蛍光物質を含み、
前記測定対象粒子は細胞であり、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第1の抗原に結合する第1の抗体を更に含み、前記第1の蛍光物質は、前記第1の抗体を標識しており、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第2の抗原に結合する第2の抗体を更に含み、前記第2の蛍光物質は、前記第2の抗体を標識している、
試料調製システム。
【請求項8】
前記測定装置は、
フローセルと、
前記フローセルを通過する前記一部の検体に第1の波長の光を照射する第1の光源と、
前記フローセルを通過する前記一部の検体に前記第1の波長と異なる第2の波長の光を照射する第2の光源と、を備える、請求項7に記載の試料調製システム。
【請求項9】
検体容器から取得した一部の検体中のプレ測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、
測定試料の調製のために前記検体容器から取得した他の一部の検体と混合される、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報と、前記濃度情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記他の一部の検体中の、前記プレ測定の対象粒子と同種の粒子である本測定対象粒子の濃度を調整する工程と、を含み、
前記測定試料の調製に関する情報は、抗原の種類を示す測定項目に応じた情報であり、
前記複数種類の粒子検出試薬は、第1の検出試薬と第2の検出試薬と、を含み、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長である第1の蛍光物質を含み、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、励起波長が第1の波長と異なる第2の波長である第2の蛍光物質を含み、
前記測定対象粒子は細胞であり、
前記第1の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第1の抗原に結合する第1の抗体を更に含み、前記第1の蛍光物質は、前記第1の抗体を標識しており、
前記第2の検出試薬に含まれる前記粒子標識物質は、細胞表面又は細胞内の第2の抗原に結合する第2の抗体を更に含み、前記第2の蛍光物質は、前記第2の抗体を標識している、
試料調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料調製装置、及び試料調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体試料に含有された粒子成分の濃度を測定する濃度測定手段と、試料をフィルターの濾過作用によって濃縮する濃縮ユニットを備えた試料処理装置が開示されている。また、特許文献2には、生体由来検体に含まれる上皮細胞のうち癌化した細胞を検出する際に、生体由来検体に含まれる上皮細胞の濃度を反映した濃度情報を生成し、前記濃度情報に基づいて、試料調製部に供給する生体由来検体の量を制御する試料調製装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の試料処理装置は、フローサイトメータなどの粒子分析装置において、粒子の濃度が低い場合に、測定結果の再現性(確率誤差)が高くなることを改善することを目的として、試料中の細胞を濃縮することを提案している。また、特許文献2に記載の試料調製装置は、上皮細胞が染色液で適切に染色されるよう、プレ測定で得られた生体由来検体中の上皮細胞の濃度に基づいて、染色液と混合される生体由来検体の量を調製することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-301586号公報
【文献】国際公開第2009/122999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の試料処理装置及び特許文献2に記載の試料調製装置は、いずれもエチジウムブロマイド、アクリジンオレンジ、ヨウ化プロピディウム等の色素を用いた単染色で細胞核を染色し、染色された細胞を光学式検出方法によって検出することを前提としている。
【0006】
一方で、現在、フローサイトメトリー検査において、1つの疾患を診断するために、1回の検査依頼で測定される抗原の種類は、1検体あたり10から30種に上る。このため、フローサイトメトリー検査は、1回の解析で数種から十数種の抗原を同時に測定するマルチカラーフローサイトメトリーが主流となっている。また、検査を依頼された全ての抗原を検出するためには、1検体につき、1解析あたり数種の抗体を使用したマルチカラーフローサイトメトリー解析を複数回行う必要がある。さらに、1つの細胞に存在するそれぞれの抗原の存在量は抗原ごとに異なる。標的とする抗原を精度よく検出するためには、抗原ごとに適した量の蛍光標識抗体を使用する必要がある。また、造血幹細胞等の幹細胞は、生体中にその存在比率自体が低いため、確実に検出するためには、解析する検体量そのものを増やさなければならない。
【0007】
現在、検体と検出試薬との混合割合の決定、必要な検体量の決定は、検査者が何らかの形で検体中の粒子濃度の情報を得た上で行っている。また、決定された内容に基づく測定試料の調製も全て検査者の手によって行われている。このような現状から、精度のよいフローサイトメトリー検査は現在膨大な労力を必要としている。
【0008】
本発明は、測定試料の調製を効率よく行うとともに、検体中の測定対象粒子を精度よく
分析することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、試料調製装置の制御方法に関する。本態様に係る試料調製装置の制御方法は、検体容器から取得した検体中の測定対象粒子の濃度を調整可能であり、検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置の制御方法であって、前記検体中の前記測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を読み出す工程と、前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、を含む。
【0010】
本発明の第2の態様は、試料調製装置の制御装置に関する。本態様に係る試料調製装置の制御装置は、検体容器から取得した検体中の測定対象粒子の濃度を調整可能であり、検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置の制御装置であって、プロセッサと、記憶部と、を備え、前記プロセッサは、前記検体中の前記測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を前記記憶部から読み出す工程と、前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、を実行する。
【0011】
本発明の第3の態様は、試料調製システムに関する。本態様に係る試料調製システムは、検体容器から取得した粒子を含む検体を測定して前記検体中の測定対象粒子を検出する測定装置と、前記検体容器から取得した検体中の測定対象粒子の濃度を調整可能であり、検体と、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬と、を混合して測定試料を調製する試料調製装置と、プロセッサと記憶部とを備える制御装置と、を備え、前記制御装置のプロセッサは、前記検体中の前記測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、前記複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報を前記記憶部から読み出す工程と、前記濃度情報と前記測定試料の調製に関する情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整するよう前記試料調製装置を制御する工程と、を実行する。
本発明の第4の態様は、試料調製方法に関する。本態様に係る試料調製方法は、検体容器から取得した検体中の前記測定対象粒子の濃度情報を取得する工程と、測定試料の調製のために前記検体と混合される、粒子標識物質を含む複数種類の粒子検出試薬の種類情報を含む測定試料の調製に関する情報と、前記濃度情報とに応じて、前記測定試料の調製に用いられる前記検体中の前記測定対象粒子の濃度を調整する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、検体に含まれる測定対象粒子の濃度情報と粒子検出試薬とに基づいて行われる測定試料の調製を効率化することができるうえ、検体中の測定対象粒子を精度よく分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試料調製装置のブロック図である。
図2】フローサイトメータの光学系を示す概略図である。
図3】試薬調製装置の概略構成図である。
図4】試料調製部の断面図である。
図5】試料調製部の部分拡大図である。
図6】遠心分離部の平面図である。
図7】試料調製部の一部断面図である。
図8】試料調製部の変形例の断面図である。
図9】解析部のブロック図である。
図10】制御部の処理の動作手順の概略を示すフローチャートである。
図11】制御部の処理の動作手順を示すフローチャートである。
図12A図11のS19の第1実施例の処理の動作手順を示すフローチャートである。
図12B図11のS19の第2実施例の処理の動作手順を示すフローチャートである。
図13A】複数の細胞検出試薬の全てを1本の分注用チューブに分注して測定試料を調製する場合の測定試料の調製に関する情報の例である。
図13B】複数の細胞検出試薬をそれぞれ異なる分注用チューブに分注して測定試料を調製する場合の測定試料の調製に関する情報の例である。
図14】検体容器内の検体を測定して検体中の測定対象粒子を検出した測定データの一例を示す図である。
図15】検体A~Cについて測定試料の調製方法の一例を示す図である。
図16】試料調製システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。試料調製装置は、粒子を含む検体の分析に適した測定試料を調製する。また、粒子分析装置は、粒子を含む検体の分析に適した測定試料を調製し、調製された測定試料を光学的に分析することで、検体の中に含まれる粒子の計数又は粒子の種類の同定、あるいはその両方を行う。具体的には、例えば、試料調製装置及び粒子分析装置は、臍帯血や骨髄に含まれる造血幹細胞を検出するために使用される。また、試料調製装置及び粒子分析装置は、白血病細胞等の造血器腫瘍細胞や肺癌細胞等の癌細胞等の異常細胞等が検体に含まれているか否かを判断するために使用される。
【0015】
測定対象の粒子は、例えば、金属粒子やプラスチック粒子等の人工的な粒子であってもよい。また、粒子は円柱等の細胞以外の生体成分であってもよく、微生物、動物細胞及び植物細胞等の細胞であってもよい。粒子を含む検体は、粒子を含む液体(原液であっても希釈液であってもよい)である限り制限されない。粒子として好ましくは、例えば細胞培養検体又は生体由来検体である。細胞培養検体は、例えば、in vitroで培養された細胞を含む試料である。生体由来検体は、例えば末梢血、臍帯血、骨髄、脳脊髄液、腹水、胸水、間質液及び尿等の生体に由来する液体検体を挙げることができる。生体由来検体として好ましくは、末梢血、臍帯血又は骨髄である。
【0016】
粒子検出試薬は、1試薬あたり少なくとも1種の粒子標識物質を含む。粒子標識物質は、粒子を検出できる限り制限されない。粒子検出試薬は、好ましくは細胞検出試薬である。また、粒子標識物質は、好ましくは細胞標識物質である。粒子検出試薬は、好ましくは、核酸を標識する1以上の核酸標識物質及び蛋白質を標識する1以上の蛋白質標識物質よりなる群から選択される少なくとも一種の細胞標識物質を含む。核酸標識物質として、好ましくは、エチジウムブロマイド(EB)、アクリジンオレンジ(AO)、ヨウ化プロピディウム(PI)、7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)、4’, 6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoechst 33342(2’-(4-エトキシフェニル)-5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-2,5’-バイ-1H-ベンズイミダゾール三塩酸塩)、エチジウムホモダイマー-1、エチジウムホモダイマー-2、エチジウムモノアジド、トリメチレンビス[[3‐[[4‐[[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]メチレン]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐1‐イル]プロピル]ジメチルアミニウム]・テトラヨージド(TOTO-1)、4‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐2(3H)‐イリデン)メチル]‐1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]キノリニウム・ジヨージド(TO-PRO-1)、N,N,N',N'‐テトラメチル‐N,N'‐ビス[3‐[4‐[3‐[(3‐メチルベンゾチア
ゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]‐2‐プロペニリデン]‐1,4‐ジヒドロキノリン‐1‐イル]プロピル]‐1,3‐プロパンジアミニウム・テトラヨージド(TOTO-3)、又は2‐[3‐[[1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐4‐イリデン]‐1‐プロペニル]‐3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム・ジヨージド(TO-PRO-3)、又は以下の構造式(IV)で示される蛍光色素等の核酸染色物質を挙げることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
式中、R及びRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、エーテル基を有するアルキル基、エステル基を有するアルキル基、又は置換基を有しても良いベンジル基であり、;R及びRは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアルコキシ基であり;Zは硫黄原子、酸素原子、又はメチル基を有する炭素原子であり;nは0,1,2又は3であり;Xはアニオンである。
【0019】
ここで、構造式(IV)中、R及びRのいずれか一方が炭素数6~18のアルキル基の場合、他方は水素原子又は炭素数6未満のアルキル基であることが好ましい。炭素数が6~18のアルキル基としては、炭素数6、8又は10のアルキル基が好ましい。R及びRのベンジル基の置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基が挙げられ、特にメチル基又はエチル基が好ましい。R及びRのアルケニル基としては、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。R及びRのアルコキシ基としては、炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、特にメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。Xにおけるアニオンとしては、F、Cl、Br、Iのようなハロゲンイオン、CFSO 、BF4などが挙げられる。
【0020】
また、核酸標識物質として、蛍光標識された核酸プローブ及び蛍光標識されたヌクレオチドを挙げることができる。蛋白質標識物質として、例えば、蛍光物質が標識されており、かつ目的とする蛋白質に結合可能な蛋白質、又は目的とする蛋白質に結合可能なビタミンを挙げることができる。目的とする蛋白質に結合する蛋白質としては、受容体に結合するリガンド、抗体、レクチン又は脂質結合蛋白質(好ましくは、リン脂質結合蛋白質)を挙げることができる。蛍光物質は、測定部2で検出できる限り制限されない。蛍光物質として好ましくは、フローサイトメトリーに使用できる物質である。
【0021】
後述する試薬調製装置1の試薬設置部35にセットされる粒子検出試薬は、好ましくは複数の粒子標識物質に対応することが好ましい。「粒子標識物質に対応する」とは、1つの粒子検出試薬に複数の粒子標識物質を含む態様であっても、1以上の粒子標識物質を含む複数の粒子検出試薬を含む態様であってもよい。
【0022】
各粒子検出試薬又は各粒子標識物質は、適切な混合割合で、検体に含まれる粒子と混合されることが好ましい。また前記割合は、各粒子検出試薬又は各粒子標識物質で異なっていてもよい。さらに、例えば1検体に複数種の粒子が含まれている場合には、前記混合割合は、測定対象となる粒子の割合を考慮して決定される。
【0023】
なお、以下の実施形態では、測定対象の粒子を細胞として説明しているが、試料調製装置及び粒子分析装置は、細胞の分析だけに限定されるものではない。
【0024】
[試料調製装置及び粒子分析装置の構成]
図1は、本実施形態の粒子分析装置100の概略構成を示す。本実施形態の粒子分析装置100は、試料調製装置1と、解析部5とを備える。本実施形態の試料調製装置1は、検体のプレ測定及び測定試料の本測定を行う測定部2と、検体の濃度調整及び測定試料の調製を行う試料調製部3と、測定部2及び試料調製部3を制御する制御部4と、を備える。解析部5は、測定部2の本測定により得られる測定データの分析等を行う。
【0025】
[測定部の構成]
測定部2は、検体をプレ測定して、検体に含まれる測定対象細胞の細胞数を検出するプレ測定部として機能する。さらに、本実施形態の測定部2は、測定試料を本測定して、解析部5による細胞分析のための測定対象細胞の特徴に関する情報を検出する本測定部としても機能する。本実施形態の測定部2は、フローサイトメータが採用されている。
【0026】
図2は、測定部2を構成するフローサイトメータの光学系を示す概略図である。フローサイトメータは、検体が通過するフローセル20と、フローセル20を通過する検体に光を照射する光源21A,21Bと、検体中の粒子に由来する光の光学的情報を検出して電気信号に変換された検出信号を出力する受光素子22A~22Fとを備えている。
【0027】
光学的情報とは、粒子から発せられる1又は2以上の光波長スペクトルに含まれる情報である。光波長スペクトルにはその光波長スペクトルに含まれる個々の光波長、光波長領域、及びそのそれぞれの光波長の光の強さ、又は光波長領域の光の強さが含まれる。
【0028】
光源21Aから出射された光は、コリメートレンズ23A、ダイクロイックミラー24A、集光レンズ25Aを経てフローセル20に照射される。フローセル20を通過する粒子に由来する光の前方散乱光は、集光レンズ25Bにより集光され、ビームストッパー26、ピンホール板27A、バンドパスフィルタ28Aを経て受光素子22Aに入射する。
【0029】
一方、フローセル20を通過する粒子に由来する光の側方散乱光及び側方蛍光は、集光レンズ25Cにより集光される。側方散乱光は、ダイクロイックミラー24B~24D、ピンホール板27B、バンドパスフィルタ28Bを経て受光素子22Bに入射する。波長が520nm以上、542nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー24B,24Cを透過してダイクロイックミラー24Dで反射され、ピンホール板27C、バンドパスフィルタ28Cを経て受光素子22Cに入射する。また、波長が570nm以上、620nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー24Bを透過してダイクロイックミラー24Cで反射され、ピンホール板27D、バンドパスフィルタ28Dを経て受光素子22Dに入射する。さらに波長が670nm以上、800nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー24Bで反射され、ダイクロイックミラー24Eを透過してピンホール板27E、バンドパスフィルタ28Eを経て受光素子22Eに入射する。
【0030】
光源21Bから出射された光は、コリメートレンズ23B、ダイクロイックミラー24A、集光レンズ25Aを経てフローセル20に照射される。フローセル20を通過する粒子に由来する光の側方蛍光は、集光レンズ25Cにより集光される。662.5nm以上、687.5nm以下の側方蛍光はダイクロイックミラー24Bで反射され、ダイクロイックミラー24Eで反射された後、ピンホール板27F、バンドパスフィルタ28Fを経て受光素子22Fに入射する。
【0031】
例えば、光源21Aには488nmの波長のレーザダイオードが用いられ、光源21Bには642nmの波長のレーザダイオードが用いられる。フローセル20にはシースフローセルが用いられる。前方散乱光を受光する受光素子22Aにはフォトダイオードが用いられ、側方散乱光を受光する受光素子22Bにはアバランシェフォトダイオード(avalan
che photodiode、APD)が用いられ、側方蛍光を受光する受光素子22C~22Fにはフォトマルチプライアチューブ(PhotoMultiplier Tube、PMT)が用いられる。なお、図2では、フローサイトメータが6つの受光素子22A~22Fを備え、4つの受光素子22C~22Fは、検体中の粒子に結合した色素に由来し異なるピーク波長を有する4つの光の光学的情報をそれぞれ検出するものであるが、これに限定されず、3以上の受光素子を備え、3以上の受光素子のうち少なくとも2以上の受光素子は、異なるピーク波長を有する少なくとも2つの色素に由来する光の光学的情報をそれぞれ検出するものであればよい。
【0032】
また、光源は、1つであっても2つ以上であってもよい。例えば、光源の数は1~10の整数の間で選択することができる。光源は、粒子に結合した色素に由来する光の波長領域に応じて選択される。光源が2以上である場合には、これらの光源は異なるピーク波長を有する光を発することが好ましい。光源が2以上である場合には、光源が1つである場合に比べて、精度良く複数の蛍光を分離して検出できるため好ましい。一方、2つの光源を用いた場合には、各光源からの発光タイミングをずらすことで、複数の蛍光を分離して検出できる。また、各光源からの光のピーク波長に適した色素を用いることで、複数の蛍光のそれぞれの波長領域の重複部分を減らすこともできる。光源は、粒子から検出目的の波長領域の光が発せられる限り制限されない。例えば、光源としては、ハロゲンランプ、LED(Light emitting diode)ランプ、気体レーザ及びレーザダイオード(半導体レーザ)よりなる群から選択される1種以上の光源を使用することができる。フォトダイオード、ダイクロイックミラー、及びバンドパスフィルタの数は、粒子に由来する光のピーク波長の数に応じて変更することができる。また、フォトダイオード、ダイクロイックミラー、及びバンドパスフィルタの種類も、粒子に由来する光のピーク波長、又は波長領域、及びその強さに応じて選択することができる。
【0033】
各受光素子22A~22Fが出力する検出信号は、図示しないプリアンプにより増幅され、信号処理部6(図1に示す)に送られる。信号処理部6は、測定部2から出力される検出信号に必要な信号処理を行う信号処理回路よりなる。
【0034】
[試料調製部の構成]
試料調製部3は、図1及び図3図7に示すように、測定試料の調製に用いられる検体中の測定対象細胞の濃度を調整するうえ、検体と複数の細胞検出試薬から選択される1又は複数の細胞検出試薬とから測定試料を調製する。なお、以下に示す試料調製部3の構成はあくまでも一例であり、試料調製部3は、以下の構成に限定されるものではない。
【0035】
試料調製部3は、検体分注部30Aと、試薬分注部30Bと、検体容器設置部31と、分注用チューブ設置部32と、分注用チューブ貯蔵部33と、ピペットチップ貯蔵部34と、試薬設置部35と、チューブ移送部36と、液量検出手段37と、遠心分離部38と、受付部39とを備える。なお、図3図6において、XYZ軸は互いに直交しており、X軸は左右方向を、Y軸は前後方向を、Z軸は鉛直方向を、それぞれ示している。
【0036】
検体分注部30A及び試薬分注部30Bは、それぞれノズル300を備えている。ノズル300には、例えば使い捨てのプラスチック製のピペットチップ301が装着される。なお、ピペットチップ301は必ずしも使用する必要はない。検体分注部30Aは、ノズル300がピペットチップ301を介して検体の吸引及び吐出を行うことで、検体容器設置部31の検体容器10から検体を所定量吸引して、分注用チューブ11へ検体を所定量吐出する。試薬分注部30Bは、ノズル300がピペットチップ301を介して液体の吸引及び吐出を行うことで、試薬設置部35の試薬容器350から試薬を所定量吸引して、分注用チューブ11へ試薬を所定量吐出する。ノズル300により吸引された検体や試薬の分量(容積)は、各分注部30A,30Bに設けられた流量センサ(図示せず)から取
得することができる。各分注部30A,30Bは、それぞれノズル300をXYZ軸方向に移動させるノズル移送手段302を備えている。ノズル移送手段302は、図示しないモータの駆動によりノズル300を移動させる。
【0037】
なお、本実施形態の検体分注部30には、検体容器10に収容された検体の液量を検出するための液量検出手段37として、ノズル300が検体容器設置部31の検体容器10の真上に位置した際に検体容器10内の検体の液面を検知する液面検知センサ(図示せず)が設けられている。検体容器10内の検体の液面を検知することで、検体容器10に収容された検体の液量(検体量)を算出することができる。
【0038】
検体容器設置部31には、被験者から採取された検体を収容した検体容器10がセットされる。検体容器設置部31には、複数の検体容器10をセットできる。分注用チューブ設置部32には、測定部2による測定に用いられる検体や調製試料を収容するための分注用チューブ11がセットされる。分注用チューブ設置部32には、複数の分注用チューブ11をセットできる。
【0039】
検体容器設置部31は、内部に加温装置や冷却装置等の検体温度調整手段310を備える。検体温度調整手段310により、検体容器10に収容された検体の温度を検体に適した温度とすることができる。冷却装置は、例えば、ペルチェ素子、コンプレッサ、その他の冷却装置で構成される。加温装置は、例えば、ブロックヒータ、その他のヒータで構成される。検体容器設置部31内の温度は、図示しない温度センサによって測定される。
【0040】
分注用チューブ貯蔵部33には、分注用チューブ11が複数ストックされている。分注用チューブ貯蔵部33の分注用チューブ11は、チューブ移送部36によって分注用チューブ設置部32まで運ばれてセットされる。
【0041】
ピペットチップ貯蔵部34には、ノズル300に装着されるピペットチップ301が複数ストックされている。ピペットチップ貯蔵部34には、大きさの異なるピペットチップ301がストックされている。ノズル300は、大小いずれのピペットチップ301を装着可能であり、ノズル300には、検体や試薬の分注量に応じた大きさのピペットチップ301が装着される。なお、使用済みのピペットチップ301は、破棄部340に破棄される。
【0042】
試薬設置部35は、複数の試薬を備えた試薬庫であり、試薬設置部35の内部には、試薬が収容された複数の試薬容器350がセットされる。試薬設置部35には、それぞれ、複数の開口351が形成され、開口351の下方に試薬容器350がセットされている。試薬分注部30Bのノズル300を開口351から試薬容器350内に進入させることで、試薬の吸引が可能である。
【0043】
試薬設置部35には、複数の細胞検出試薬がセットされる。各細胞検出試薬に含まれる少なくとも1種の細胞標識物質は、各細胞検出試薬間で異なっていることが好ましい。また、一度に試薬設置部35にセットされる複数の細胞検出試薬の組み合わせは、例えば白血病の種類を特定するために必要な一群の細胞マーカを検出できる細胞標識物質群を網羅する組み合わせとすることができる。細胞検出試薬は、細胞標識物質の他、緩衝液を含んでいてもよい。また前記緩衝液は、塩化ナトリウム等の塩を含んでいてもよい。前記塩は、測定試料を調製した際に、細胞内と等張になるように添加されていることが好ましい。さらに、細胞検出試薬は、メタノール、パラフォルムアルデヒド等の細胞固定成分を含んでいてもよい。また、細胞検出試薬は、RNase等を含んでいてもよい。
【0044】
試薬設置部35には、細胞検出試薬の他、例えば溶血剤、洗浄液、細胞膜透過剤、希釈
液、前記細胞固定成分、RNase等、測定対象細胞の分析に応じて測定試料の調製に必要な細胞検出試薬以外の試薬をセットすることができる。なお、前記希釈液は、少なくとも緩衝液を含み、必要に応じて塩化ナトリウム等の塩を含んでいてもよい。前記塩は、測定試料を調製した際に、細胞内と等張になるように添加されていてもよい。前記希釈液は、赤血球を溶血させる溶血剤を含んでいてもよい。また、前記溶血剤は、白血球等の有核細胞を溶解しないことが好ましい。溶血剤として好ましくは、界面活性剤を含む水溶液、クエン酸緩衝液、HEPES、リン酸緩衝液等である。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両極性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、天然界面活性剤等のいずれであってもよい。また、一つの溶血剤に複数種の界面活性剤を含んでいてもよい。より好ましくは、カチオン性界面活性剤と、有機酸とを含みpHが4.5~11.0の範囲である溶血剤;ノニオン性界面活性剤と有機酸とを含み、pHが4.5~11.0の範囲である溶血剤;アニオン性界面活性剤と、天然界面活性剤とを含み、pHが4.5~11.0の範囲である溶血剤を挙げることができる。前記pHの範囲は、好ましくはpH6.0~8.0である。これらの溶血剤は、さらにメタノール、エタノール、フェノキシエタノール等のアルコール類、ホルムアルデヒド等の固定液、キレート剤、アジ化ナトリウム等を含んでいてもよい。より具体的な溶血剤としては、塩化アンモニウム溶血剤(pH7.3、塩化アンモニウム1.68M、炭酸水素カリウム100mM、EDTA 2K 0.82mM)、細胞固定溶血剤(pH7.ホルムアルデヒド3、10%、メタノール3.5%、ジエチレングリコール30%、クエン酸100mM)、細胞膜透過性溶血剤(pH7.3、フェノキシエタノール1%以下、サポニン1%以下、N-ラウリルサルコシンナトリウム塩1%以下、アジ化ナトリウム1%以下)を挙げることができる。また、細胞膜透過性溶血剤は、細胞内の蛋白質を検出する際に細胞膜透過剤としても使用することができる。
【0045】
試薬設置部35に設置される各試薬容器350には、それぞれの試薬に関する情報を格納したバーコートやタグ等が付されている。試薬に関する情報には、試薬を特定するための識別情報(ID)が含まれる。また、試薬に関する情報には、測定項目の名称等が含まれていてもよい。試薬設置部35はこれらのバーコード等を読み取り可能なバーコードリーダやRFIDリーダ等の受付部39(図1に示す)を備えており、試薬容器350に付されたバーコード等を読み取ることで、試薬設置部35に設置された細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬に関する情報が取得される。
【0046】
なお、試薬設置部35には、それぞれの試薬容器350内の試薬の温度を所望の温度に保つため、内部に試薬温度調整手段(図示せず)を備えていてもよい。前記試薬温度調整手段は、試薬容器350内の試薬を冷却することができる冷却装置、及び/又は、試薬容器350内の試薬を加温することができる加温装置である。試薬設置部35内の温度は、図示しない温度センサによって測定できる。
【0047】
チューブ移送部36は、分注用チューブ11を保持する把持具360と、把持具360をXYZ軸方向に移動させる移動手段361とを備える。移動手段361は、図示しないモータの駆動により把持具360を移動させる。分注用チューブ設置部32の分注用チューブ11は、把持具360により保持された状態で移動することで、遠心分離部38や測定部2まで運ばれる。
【0048】
遠心分離部38は、検体と所定の試薬とから測定試料を調製する調製処理を行う。また、遠心分離部38は、遠心分離により検体中の測定対象細胞の濃度を調整する濃度調整処理を行う。つまり、本実施形態では、遠心分離部38が濃度調整部として機能している。
【0049】
遠心分離部38は、有底筒状の槽本体390と、槽本体390の上部開口を覆う蓋体391と、槽本体390の下部に設けられた温度調整槽392とを備えた収容部内に設けら
れている。蓋体391は、ヒンジ393を介して槽本体390に取り付けられている。蓋体391には、上方から槽本体390内に進入するための第1進入口394が形成されている。第1進入口394は、各分注部30A,30Bのノズル300を槽本体390内に進入可能とし、ノズル300は、第1進入口394を通って槽本体390内に進入して、槽本体390内の遠心分離部38に保持された分注用チューブ11内に検体や試薬を吐出したり、分注用チューブ11内の液体を吸引する。
【0050】
槽本体390は、第1進入口394を開閉する開閉手段395を備えている。実施形態の開閉手段395は、第1進入口394を閉じるシャッター395aと、シャッター395aを開閉動作させる駆動部395bと、シャッター395a及び駆動部395bを連結する連結部395cとによって構成されている。駆動部395bは、例えば、ソレノイドであり、シャッター395aをY軸方向に移動させる。図5(a)に示すように、第1進入口394がシャッター395aによって閉じられていると、槽本体390内がほぼ密閉され、槽本体390内の温度変化を抑制できる。また、図5(b)に示すように、シャッター395aが移動して、第1進入口394が開いていると、第1進入口394からノズル300を槽本体390内に進入させることができる。
【0051】
なお、図4に示すように、槽本体390には、後方から槽本体390内に進入するための第2進入口396が形成されている。第2進入口396は、チューブ移送部36の把持具360を槽本体390内に進入可能とし、把持具360は、第2進入口396を通って槽本体390内に進入して、遠心分離部38の保持部380に分注用チューブ11をセットしたり、遠心分離部38の保持部380から分注用チューブ11を取り出す。シャッター395aは、第1進入口394とともに第2進入口396を閉じることができるように、断面視L字状に形成されている。
【0052】
遠心分離部38は、分注用チューブ11を保持する複数の保持部380と、複数の保持部380が外周に取り付けられたロータ381とを備える。ロータ381の回転により、各保持部380に保持された分注用チューブ11内の液体に対し遠心分離が行われる。ロータ381は、槽本体390の底部に回転自在に支持された回転軸382を回転中心にして回転する。回転軸382の下部には、第1プーリ383が設けられている。回転軸382を回転駆動するモータ384の回転軸385には第2プーリ386が設けられ、第1プーリ383及び第2プーリ386の間には無端ベルト387が巻き掛けられている。モータ384の回転は、第1プーリ383、無端ベルト387及び第2プーリ386を介して、回転軸382に伝達され、ロータ381が回転する。モータ384は、試料調製部8の外部に配置されている。
【0053】
温度調整槽392は、槽本体390と、槽本体390の底部によって仕切られている。槽本体390の底部には、貫通孔397a,397bが形成されており、貫通孔397a,397bによって槽本体390と温度調整槽392とが連通している。
【0054】
温度調整槽392内には、槽本体390内の雰囲気温度を調整する温度調整手段398が設けられている。温度調整手段398は、例えばペルチェ素子398aを有している。また、温度調整槽392内には、貫通孔397a,397bを介して槽本体390及び温度調整槽392を循環する対流を生じさせる対流発生手段399a,399bが設けられている。対流発生手段399a,399bは、例えばファン等で構成される。対流発生手段399a,399bにより生じる気流によって、温度調整手段398から発せられた冷熱を温度調整槽392から槽本体390に送ることで、槽本体390内を加温して室温よりも高い温度に保持したり、槽本体390内を冷却して室温よりも低い温度に保持したり、槽本体390内を室温と同程度の一定の温度に保持することができる。槽本体390内には、槽本体390内の温度を監視するための温度センサ400が設けられている。なお
、温度センサ400は、温度調整槽392内に設けられてもよい。
【0055】
対流発生手段399a,399bは、本実施形態では、温度調整手段398の近傍に位置する対流発生手段399aは、その上方に位置する貫通孔397aから温度調整槽392に流入した対流を温度調整槽392内で水平方向へ流すことで、温度調整手段398から発せられた冷熱を、温度調整手段398から離れた位置にある貫通孔397bへ送る。対流発生手段399bは、貫通孔397bの下方に位置し、対流発生手段399aによる水平気流を上方の貫通孔397bに向かう上昇気流へと変える。これにより、温度調整手段398から発せられた冷熱を貫通孔397bから槽本体390内に効率よく送ることができる。
【0056】
本実施形態では、温度調整槽392の後方にダクト401が設けられている。ダクト401は、温度調整手段398によって生じた冷排熱又は温排熱を試料調製部8の外部へ排出するためのものである。ダクト401は、冷排熱又は温排熱を後方に流すファン402と、ファン402によって発生した気流をダクト401の外部へ排出する排気口403とを備えている。ダクト401は、外部処理部37の下方に配置されている。
【0057】
なお、図8に示すように、温度調整槽392は必ずしも設ける必要はない。この場合、温度調整手段398は、槽本体390の内部、好ましくは槽本体390内の後側に設けられ、ダクト401は、槽本体390の後方に設けられる。また、温度調整手段398の近傍に対流発生手段399aが槽本体390内に水平気流を生じさせるように配置される。
【0058】
試料調製部3には、上述した各部以外に、外部処理部60を設けてもよい。外部処理部60は、温度調整がなされておらず、室温で処理を行うためのものであり、本実施形態では、分注用チューブ11内の上清を廃棄する廃棄部600と、分注用チューブ11内の液体を攪拌する攪拌部601とを備えている。廃棄部600は、把持具360で保持された分注用チューブ11を移動手段361によって傾けるデカントあるいは各分注部30A,30Bのノズル300による上清の吸引によって、分注用チューブ11内の上清が廃棄される。撹拌部601は、例えば、把持具360で保持された分注用チューブ11内の液体を振とう攪拌するボルテックスミキサーで構成される。なお、外部処理部60は、分注用チューブ11内の上清の廃棄及び分注用チューブ11内の液体の撹拌以外の処理を室温で行えるように構成してもよい。
【0059】
[制御部の構成]
制御部4は、図1に示すように、プロセッサ40と、記憶部42に記録されている制御プログラムの読み出しやプロセッサ40のデータ処理の作業領域に使用されるメモリ41と、プロセッサ40が測定部2や試料調製部3等の各部の動作制御を行うための各種制御プログラム及び各種データを記録する記憶部42と、を含んでいる。メモリ41は、RAM(Random access memory)で構成される。記憶部42は、ROM(read only memory)やハードディスク等で構成される。
【0060】
制御部4は、例えば、測定部2の受光素子22A~22Fから出力される検出信号を信号処理部6を介して取得して、記憶部42に記録する。
【0061】
また、制御部4は、試料調製部3の検体分注部30A及び試薬分注部30Bのノズル300及びノズル移送手段302の動作を制御して、ノズル300の移動及びノズル300による検体や試薬等の液体の吸排を行う。
【0062】
また、制御部4は、試料調製部3の検体容器設置部31の温度調整手段310及び試薬設置部35の温度調整手段(図示せず)の動作を温度センサ(図示せず)の検出信号に基
づいて制御して、検体容器設置部31及び試薬設置部35の温度調整を行う。
【0063】
また、制御部4は、試料調製部3のチューブ移送部36の動作を制御して、分注用チューブ11の移送及び保持を行う。
【0064】
また、制御部4は、試料調製部3の開閉手段395を制御して、進入口394,396の開閉を行う。
【0065】
また、制御部4は、試料調製部3の遠心分離部38を制御して、遠心分離処理を行う。
【0066】
また、制御部4は、試料調製部3の温度調整手段398及び対流発生手段399a,399bを温度センサ400の検出信号に基づいて制御して、遠心分離部38の温度調整を行う。
【0067】
また、制御部4は、試料調製部3のファン402の動作を制御して、遠心分離部38の冷温熱の排熱を行う。
【0068】
また、制御部4は、試料調製部3の液量検出手段37としての液面検知センサからの検出信号を取得して、記憶部42に記録する。
【0069】
また、制御部4は、試料調製部3の試薬設置部35の受付部39が読み取った各試薬(細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬)の識別情報(ID)を取得する。そして、読み取った各試薬の識別情報(ID)に基づいて、試薬設置部35のいずれの位置にどの試薬がセットされたかを示すデータを記憶部42に記録する。また、読み取った各細胞検出試薬の識別情報(ID)に基づいて、記憶部42に記録されている前記識別情報(ID)に対応する各細胞検出試薬を用いて検査される検査項目に対応した測定試料の調製に関する情報を読み出し、当該測定試料の調製に関する情報に基づいて試料調製部3を制御して、検体中の測定対象粒子の濃度調整処理や測定試料の調製処理を行う。なお、測定試料の調製に関する情報は、測定検体に応じてユーザーが独自に決定して、ワークリストと呼ばれるファイルに細胞検出試薬の種類などと一緒に記録する。
【0070】
測定試料の調製の仕方は、測定項目(例えば、DNA量を分析するか、抗原の種類は何か等)により異なり、測定項目ごとにその細胞分析に適した測定試料の調製が必要となる。測定試料の調製に関する情報には、測定対象細胞の測定項目に応じた測定試料の調製に関する情報が含まれており、この測定試料の調製に関する情報に基づいて測定試料を調製することで、測定対象細胞の分析に適した測定試料の調製が可能となる。
【0071】
測定試料の調製に関する情報には、測定可能な測定項目の情報及び検査項目の情報、細胞分析に用いる細胞検出試薬の特徴(測定項目の情報、及び抗体等に標識されている粒子標識物質の情報、抗体の交差反応性、同時に測定してもよい測定項目等を含む)、検体の種類、各細胞検出試薬を用いて細胞分析を行うために必要な細胞の数(必要細胞数)、一定の検体量あたりに含まれる測定対象細胞の割合、検体量、測定試料の調製に必要なその他の試薬の種類、各試薬の分注量、分注する試薬の順序、試薬分注時の温度、測定に必要な測定試料(分注用チューブ11)の数、等の情報が含まれていてもよい
【0072】
また、制御部4は、通信インタフェース7を介して解析部5と接続されており、測定部2で測定した測定データや各部の処理に必要なデータを解析部5との間で送受信する。
【0073】
[解析部の構成]
解析部5は、図9に示すように、処理部50と、入力部51と、表示部52とを備える
。処理部50は、プロセッサ54、メモリ55、記憶部56、入出力インタフェース57、画像出力インタフェース58、通信インタフェース59とを備える。処理部50は、汎用コンピュータで構成することができる。メモリ55は、RAM(Random access memory)で構成される。メモリ55は、記憶部56に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、メモリ55は、プロセッサ54の各種データ処理の作業領域に使用される。記憶部56は、ROM(read only memory)、ハードディスク等で構成される。記憶部56は、コンピュータプログラム及びこれに用いる各種処理データを記録する。記憶部56(例えばハードディスク)には、制御部4への動作命令の送信、測定部2で行った測定データの受信及び分析処理、及び、処理した分析結果の表示などを行う操作プログラムがインストールされている。
【0074】
入力部51は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス、ペンタブレット等により構成される。表示部52は、例えばディスプレイ等により構成される。
【0075】
[制御部の動作]
図10に示すように、制御部4は、検体容器10から取得した検体を測定して検体中の測定対象細胞を検出するプレ測定ステップS1と、プレ測定ステップの測定データに基づいて検体容器10内の検体中の測定対象細胞の濃度情報を生成する生成ステップS2と、測定試料の調製に用いられる粒子検出試薬の種類情報を取得して検査項目を決定する決定ステップS3と、生成した濃度情報と測定試料の調製に用いる細胞検出試薬の種類(測定試料の調製に関する情報)とに応じて、検体中の測定対象細胞の濃度を自動で調整する調整ステップS4と、検体と細胞検出試薬とから測定試料を調製する調製ステップS5と、測定試料の本測定を行う本測定ステップS6で各処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0076】
第1実施例
図11及び図12Aを用いて、制御部4の動作の第1実施例について説明する。なお、以下のフローはあくまでも一例であり、以下のフローに限定されるものではない。第1実施例は、所定の検査項目の各測定項目を測定するための測定試料の調製に必要な複数の細胞検出試薬を全て1本の分注用チューブ11において検体と混合し、測定試料を調製する例である。
【0077】
まず、図11のS10において、制御部4は、測定試料の調製に用いる細胞検出試薬の識別情報(ID)の入力を受け付ける。測定の前に、測定試料の調製に必要な複数の細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬が試料調製部3の試薬設置部35にセットされる。このとき、試薬設置部35の受付部39により、試薬容器350に付されたバーコード等から当該試薬容器350内の試薬の識別情報(ID)が取得される。制御部4は、各試薬の識別情報(ID)を受信すると、当該識別情報(ID)に基づいて、測定試料の調製に用いる粒子検出試薬の種類を決定して、S11に進み、決定した種類の細胞検出試薬を用いて検査される検査項目に対応する各測定項目の測定試料の調製に関する情報を記憶部42から読み出す。また、S12において、制御部4は、読み出した測定試料の調製に関する情報を解析部5に送信する。また、試薬設置部35のいずれの位置にどの試薬がセットされたかを示すデータを記憶部42に記録する。
【0078】
例えば、図13Aは、検体を末梢血、検査項目を制御性T細胞とした例において、記憶部42に記録されている測定試料の調製に関する情報の例である。図13Aに示されているCD25、CD3及びCD4は細胞表面マーカであり、細胞検出試薬2及び3にはこれらの細胞表面マーカに結合する抗体がそれぞれ含まれている。また、当該抗体は、図13Aに示す蛍光物質で標識されている。FoxP3は核内蛋白質であり、細胞検出試薬4は、前記蛋白質に対する蛍光標識抗FoxP3抗体を含む。また、図13Aの測定試料の調製に関する情報には、各細胞検出試薬1~4を用いて細胞分析を行うために必要な細胞(
白血球)の必要細胞数、検体量、測定試料の調製に必要なその他の試薬の種類、各試薬の混合量、分注する試薬の順序、等の情報が含まれている。
【0079】
次に、制御部4は、S13において、検体分注部30Aを制御し、検体容器設置部31に設置された検体容器10内の検体をノズル300によりその一部を吸引して分注用チューブ11に吐出する。検体は、分注用チューブ設置部32にセットされた分注用チューブ11に吐出してもよいし、チューブ移送部36により遠心分離部38にセットされた分注用チューブ11に吐出してもよい。なお、必要に応じて、試薬設置部35に設置された希釈液を試薬分注部30Bのノズル300により所定量吸引して、検体が分注された分注用チューブ11に吐出して混合してもよい。また、制御部4は、検体容器10内の検体の液量を、液量検出手段37としての液面検知センサ(図示せず)からの検出信号に基づき算出する。
【0080】
次に、S14において、制御部4は、チューブ移送部36を制御し、検体を分注した分注用チューブ11を測定部2まで移送する。分注用チューブ11が測定部2の所定位置29(図3に示す)まで移送されると、鉛直方向(Z方向)に昇降動作可能な吸引部29aにより、分注用チューブ11から検体が吸引され、測定部2のフローセル20に供給される。これにより、制御部4は、S15において、測定部2を用いてフローサイトメトリー解析による検体の測定を行い、検体中の測定対象細胞の細胞数を計数する。
【0081】
次に、S16において、制御部4は、測定部2の測定データに基づいて、検体容器10内の検体中の測定対象細胞の濃度情報を生成する。なお、検体中の測定対象細胞の濃度とは、単位容積当たりの検体に含まれる測定対象細胞の数のことを指す。具体的に、検体の測定のために検体分注部30Aのノズル300により検体容器10から吸引された検体量は、検体分注部30Aに設けられた流量センサ(図示せず)から取得可能であり、測定部2で計数された測定対象細胞の細胞数(測定データ)を吸引された検体量で割ることにより、検体中の測定対象細胞の濃度情報を生成することができる。
【0082】
なお、測定対象細胞の細胞数は、測定部2がフローサイトメータである場合には、前方散乱光の検出信号に基づいて計数することができる。また、測定部2がフローサイトメータである場合には、検体に含まれる複数種の細胞における測定対象細胞の割合を考慮して、測定対象細胞の細胞数を計数することができる。具体的には、測定部2で計数された全細胞数に、同じく測定部2で計数された測定対象細胞の割合を積算して、測定対象細胞の細胞数及び測定対象細胞の濃度を算出することができる。
【0083】
次に、S17において、制御部4は、検査項目を決定する。検査項目の決定は、上述した受付部39により取得した複数の細胞検出試薬の識別情報(ID)により、各細胞検出試薬の識別情報(ID)を含む検査項目を特定することで決定される。例えば、図13Aに示す例では、受付部39で取得した細胞検出試薬の識別情報(ID)1~4に基づいて、検査項目A(制御性T細胞)が決定されている。また、S18において、制御部4は、決定した検査項目を解析部5に送信する。
【0084】
なお、制御部4は、S16において生成した検体中の測定対象細胞の濃度情報を記憶部42に記憶されている基準値と比較し、前記測定対象細胞の濃度が基準値よりも高い場合には、試薬設置部35に設置された別の細胞検出試薬群に対応する検査項目を測定してもよい。
【0085】
例えば検体が末梢血であるとき、制御部4は、プレ測定で得られた測定対象細胞(好ましくは有核細胞)の濃度情報を、記憶部42に記録されている前記細胞数の基準値と比較する。前記基準値は、例えば検体が末梢血である場合には、15,000個/μl程度で
ある。プレ測定で得られた有核細胞の濃度がこの値を上回る場合には、造血器腫瘍が疑われる。このため、制御部4は、プレ測定で得られた有核細胞の濃度がこの値を上回ると判断した場合には、さらに造血器腫瘍を同定するための分析項目を追加するための測定試料を調製するように、試料調製部3を制御する。造血器腫瘍を同定するための分析項目は、蛋白質であっても核酸であってもよい。
【0086】
次に、制御部4は、S19において、全ての測定項目の測定が可能であるかを判定する。このS19では、図12AのS190において、まず、S16で生成した検体中の測定対象細胞の濃度情報と、検体容器10内の検体量とに基づいて、検体容器10内の検体中の測定対象細胞の数(細胞の総数)を算出する。次に、制御部4は、S191において、算出された検体中の測定対象細胞の数が、検査項目の全ての測定項目の測定に十分な細胞数以上であるか否かを判定する。
【0087】
例えば図13Aの例では、制御性T細胞の測定に必要な白血球数は例えば1×10個である。ここで、図14に示すように、検体のプレ測定の結果、検体Aの白血球濃度が1×10個/μlであり、検体量が1mlであると、検体A中の測定対象細胞である白血球の数は、1×10個であるので、検体Aは全ての測定項目の測定条件を充足する。また、検体B中の測定対象細胞である白血球の数は、それぞれ1×10個、1×10個であるので、検体B,Cも全ての測定項目の測定条件を充足する。そのため、この場合には、図12AのS191は「YES」となってS192に進み、制御部4は、全ての測定項目を測定項目に決定する。また、決定結果を記憶部42に記録するとともに、解析部5に送信し、図11のS20に進む。
【0088】
一方で、図示は省略するが、検体中の測定対象細胞である白血球の数が1×10個を下回ると、細胞検出試薬4を用いる測定項目の測定条件を充足しないことになる。この場合、図12AのS191は「NO」となってS193に進み、測定項目の測定を行うのに必要な細胞数の確保ができておらず、測定項目を測定することができない通知を解析部5に送信する。
【0089】
なお、検体を追加することで、検体中の測定対象細胞の数が全ての測定項目の測定に十分な細胞数以上となる場合には、検体を遠心分離部38により濃縮して新たな検体を混合することで、検体中の測定対象細胞の数を全ての測定項目の測定に十分な細胞数以上としてもよい。
【0090】
次に、制御部4は、図11のS20において、検体の濃度調整が必要か否かを判定する。検体の濃度調整が必要か否かは、S16で生成した検体中の測定対象細胞の濃度情報と、測定試料の調製に用いる粒子検出試薬とに応じて判定され、検体中の測定対象細胞の濃度が所定値より大きいあるいは所定値より小さい場合には、濃度調整が必要と判定される。一方で、検体中の測定対象細胞の濃度が所定値である場合には、濃度調整が不要と判定される。当該所定値は、一定値であってもよいし、一定の範囲を有していてもよい。
【0091】
例えば図13Aの例では、制御性T細胞の測定に必要な白血球数が1×10個であり、検体量が10μlであることから、上記所定値となる検体中の測定対象細胞である白血球濃度は1×10個/μlとなる。ここで、図14に示すように、検体のプレ測定の結果、検体Aの白血球濃度が1×10個/μlであり、検体Bの白血球濃度が1×10個/μlであり、検体Cの白血球濃度が1×10個/μlであると、検体Aは白血球濃度が所定値であるため、濃度調整は不要と判定される。一方で、検体Bは白血球濃度が所定値より大きく、検体Cは白血球濃度が所定値より小さいため、濃度調整が必要と判定される。
【0092】
なお、測定項目によっては、検体中の測定対象細胞の割合が低い場合もある。例えば骨髄中の造血幹細胞(測定対象細胞)がこの例である。この場合には、細胞検出試薬に含まれる一定の検体量あたり含まれる測定対象細胞の割合の情報にしたがって、検体の濃縮調製が必要であるか否か判断される。この場合の検体の濃縮調整は、後述する遠心分離で行ってもよい。また、フローサイトメータにソーティング機能が備えられている場合には、前記ソーティング機能を使用して検体の中から測定対象細胞を回収し濃縮してもよい。
【0093】
制御部4は、図11のS20において、検体の濃度調整が不要であると判定すると、S21に進み、検体分注部30Aを制御して、所定の検体量の検体をノズル300により吸引して分注用チューブ11に吐出する。そして、制御部4は、チューブ移送部36を制御して、検体を分注した分注用チューブ11を試料調製部3の遠心分離部38にセットした後、S23において、測定試料の調製に関する情報に基づいて、試薬分注部30Bを制御して、測定試料の調製のため、細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬を分注用チューブ11に分注する。
【0094】
具体的には、制御部4は、測定試料の調製に関する情報に含まれる、測定試料の調製に必要な細胞検出試薬の種類、測定試料の調製に必要な細胞検出試薬以外の試薬の種類、各試薬の分注の順序、各試薬の分注量、検体量、等に基づいて、試料調製部3による測定試料の調製(分注、希釈、洗浄等)動作を制御する。測定試料の調製の際に、制御部4は必要に応じて、遠心分離部38を制御して遠心分離を行ったり、試薬分注部30Bを制御して分注用チューブ11内の上清を取り除いてもよい。また、測定試料の調製に関する情報に、各試薬の分注時の温度に関する情報を含ませておき、制御部4は、測定試料の調製に関する情報に含まれる各試薬の分注時の温度に関する情報に基づいて、温度調整手段398及び対流発生手段399a,399bを制御することにより、各試薬の分注時の遠心分離部38の温度を調整してもよい。
【0095】
例えば図14の検体Aを例にして説明すると、図15(a)に示すように、制御部4は、検体分注部30Aの制御により、プレ測定とは別の分注用チューブ11に検体容器10から検体Aの一部を分注する。分注用チューブ11に分注される検体量は、図13Aに示すように制御性T細胞の測定に必要な白血球数が1×10個であり、検体Aの白血球濃度は10個/μlであるので、測定試料の調製のために検体Aを10μl、分注用チューブ11に分注すれば、必要細胞数を充足する。
【0096】
次に、制御部4は、チューブ移送部36を制御し、検体Aが収容された分注用チューブ11を試料調製部3の遠心分離部38に移送してセットする。そして、図13Aに示す測定試料の調製に関する情報にしたがって、検体として末梢血を用いて制御性T細胞を分析する場合、初めに赤血球を溶血させることが好ましいため、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、試薬設置部35にセットされた溶血剤5μlを検体Aが収容された分注用チューブ11に分注する。続いて、制御部4は、図13Aに示す測定試料の調製に関する情報にしたがって、試薬分注部30Bの制御により、試薬設置部35にセットされた細胞検出試薬2を10μl、細胞検出試薬3を5μl、検体が収容された分注用チューブ11に分注する。続いて、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、細胞検出試薬2及び細胞検出試薬3と反応させた細胞を収容している分注用チューブ11に、試薬設置部35にセットされた細胞膜透過剤10μlを分注する。続いて、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、細胞膜透過剤10μlが混合された分注用チューブ11に、試薬設置部35にセットされた細胞検出試薬4を10μl分注する。最後に、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、細胞検出試薬4が混合された分注用チューブ11に、試薬設置部35にセットされた細胞検出試薬1を5μl分注する。なお、細胞検出試薬1は、核染色である。
【0097】
なお、図15(a)の例では、各細胞検出試薬を分注した後、細胞と抗体とを十分に反応させるため、15分から30分程度インキュベーションすることが好ましい。また、インキュベーション後、次の細胞検出試薬を分注する前に、細胞を洗浄してもよい。洗浄方法は、制限されないが、例えば、細胞が収容された分注用チューブ11を遠心分離部38により遠心分離し、上清を除去し、希釈液等を添加して細胞を再懸濁させることにより行うことができる。
【0098】
そして、制御部4は、S24において、上記の通り調製された測定試料を収容した分注用チューブ11を、チューブ移送部36の制御により、測定部2まで移送する。分注用チューブ11が測定部2の所定位置29(図3に示す)まで移送されると、鉛直方向(Z方向)に昇降動作可能な吸引部29aにより、分注用チューブ11から測定試料が吸引され、測定部2のフローセル20に供給される。これにより、制御部4は、S25において、測定部2を用いてフローサイトメトリー法による測定試料の本測定を行う。
【0099】
一方で、S20において、制御部4は、検体の濃度調整が必要であると判定すると、S22に進み、検体容器10内の検体の濃度調整を行う。具体的には、制御部4は、検体中の測定対象細胞の濃度が所定値より大きい場合には、検体の希釈を行うことで、検体中の測定対象細胞の濃度を所定値とすることができる。
【0100】
例えば、図14の検体Bを例にして説明すると、図15(b)に示すように、制御部4は、検体分注部30Aの制御により、プレ測定とは別の分注用チューブ11に検体容器10から検体Bの一部を分注する。分注用チューブ11に分注される検体量は、図13Aに示すように制御性T細胞の測定に必要な白血球数が1×10個であり、検体Bの白血球濃度は1×10個/μlであるので、測定試料の調製のために検体Bを1μl、分注用チューブ11に分注すれば、必要細胞数を充足する。そして、検体Bの白血球濃度は所定値1×10個/μlよりも10倍濃いため、希釈液により10倍に希釈して検体量を10μlとすることで、白血球濃度を所定値とすることができる。
【0101】
また、制御部4は、検体中の測定対象細胞の濃度が所定値より小さい場合には、検体を濃縮する。検体の濃縮は、例えば遠心分離部38の遠心分離により行うことができる。検体の濃縮を行うことで、検体中の測定対象細胞の濃度を所定値とすることができる。
【0102】
例えば、図14の検体Cを例にして説明すると、図15(c)に示すように、制御部4は、検体分注部30Aの制御により、プレ測定とは別の分注用チューブ11に検体容器10から検体Cの一部を分注する。分注用チューブ11に分注される検体量は、図13Aに示すように制御性T細胞の測定に必要な白血球数が1×10個であり、検体Cの白血球濃度は1×10個/μlであるので、測定試料の調製のために検体Bを100μl、分注用チューブ11に分注すれば、必要細胞数を充足する。そして、制御部4は、遠心分離部38の制御により検体Cを遠心分離し、上清を分注用チューブ11から試薬分注部30Bの制御により吸引して取り除くとともに、希釈液を混合して検体量を10μlとすることで、白血球濃度を所定値とすることができる。なお、この場合、赤血球を溶血させてから濃縮することが好ましい。
【0103】
検体の濃度調整が終了すると、図11のS23に進み、測定試料の調製に関する情報に基づいて、試薬分注部30Bを制御して、細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬を分注用チューブ11に分注する等して、測定試料を調製する。そして、制御部4は、S24において、調製された測定試料を収容した分注用チューブ11を、チューブ移送部36の制御により、測定部2まで移送し、S25において、測定部2を用いてフローサイトメトリー法による測定試料の本測定を行う。
【0104】
そして、制御部4は、S26において、測定部2からの本測定の測定データを解析部5に送信する。解析部5の処理部50は、本測定の測定データを用いて検体を分析し、検体中の測定対象細胞に異常があるか否か等を判定する。
【0105】
第2実施例
図11及び図12Bを参照し、制御部4の動作の第2実施例について説明する。なお、以下のフローはあくまでも一例であり、以下のフローに限定されるものではない。第2実施例は、所定の検査項目の各測定項目を測定するための測定試料を異なる分注用チューブ11で調製する例である。図13Bは、第2実施例で制御部4の記憶部42に記録されている測定試料の調製に関する情報の例である。この第2実施例では、細胞検出試薬として細胞検出試薬2~5を、それぞれ別の分注用チューブ11で検体と混合することで、4種の測定試料(測定試料1~4)を調製する場合の動作について説明する。なお、3種以外の測定試料を調製する場合の動作も同様である。
【0106】
まず、図11のS10~S18については、第1実施例と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0107】
次に、制御部は、S19において、測定項目を決定する。このS19では、図12BのS190において、まず、S16で生成した検体中の測定対象細胞の濃度情報と、検体容器10内の検体量とに基づいて、検体容器10内の検体中の測定対象細胞の数(細胞の総数)を算出する。次に、制御部4は、S191において、算出された検体中の測定対象細胞の数が、検査項目の全ての測定項目の測定に十分な細胞数以上であるか否かを判定する。この測定項目の測定に必要な細胞数は、測定試料の調製に関する情報から得られる。
【0108】
例えば図13Bの例では、制御性T細胞の測定に必要な白血球数は、細胞検出試薬2を用いた測定項目では5×10個であり、細胞検出試薬3を用いた測定項目では1×10個であり、細胞検出試薬4を用いた測定項目では1×10個であり、細胞検出試薬5を用いた測定項目では10×10個であるため、17×10個である。ここで、図14に示すように、検体のプレ測定の結果、検体Aの白血球濃度が1×10個/μlであり、検体量が1mlであると、検体A中の測定対象細胞である白血球の数は、1×10個であるので、検体Aは、全ての測定項目の測定条件を充足する。また、検体B中の測定対象細胞である白血球の数は、それぞれ1×10個、1×10個であるので、検体B,Cも全ての測定項目の測定条件を充足する。そのため、S191は「YES」となってS192に進み、制御部4は、全ての測定項目について測定項目に決定する。また、決定結果を記憶部42に記録するとともに、解析部5に送信し、図11のS20に進む。
【0109】
一方で、図示は省略するが、検体中の測定対象細胞である白血球の数が例えば16×10個であると、全ての測定項目の測定条件を充足しないことになる。この場合、S191において、制御部4は、検体中の測定対象細胞の数が全ての測定項目の測定に十分な量でないと判定し、S193に進む。
【0110】
次に、制御部4は、S193において、検体中の測定対象細胞の数が、検査項目のいずれかの測定項目の測定に十分な細胞数以上であるか否かを判定する。例えば図13Bの例において、検体中の測定対象細胞である白血球の数が例えば16×10個である場合、S193が「YES」であり、S194に進み、制御部4は、測定試料の調製に関する情報に含まれている細胞数が不足した場合に優先される測定項目の優先順位と、検体中の測定対象細胞の数とに基づいて、測定する測定項目を決定する。つまり、優先順位が高い順に、測定項目の測定条件を満たす細胞数が確保できるかどうかを判定し、測定条件を満たす細胞数が確保できる測定項目を測定項目として決定する。この測定項目を決定するための優先順位は、測定試料の調製に関する情報から得られる。
【0111】
例えば図13Bの例で、検体中の測定対象細胞である白血球の数が例えば16×10個である場合、まず、優先順位が第1位の細胞検出試薬5を用いる測定項目について判定する。第1位の測定項目の測定に必要な細胞数は10×10個であるので、当該測定項目の測定条件は充足する。次に、優先順位が第2位の細胞検出試薬2を用いる測定項目について判定し、第2位の測定項目の測定に必要な細胞数は5×10個であり、検体中の測定対象細胞である白血球の残りの数は6×10個であるので、当該測定項目の測定条件は充足する。次に、優先順位が第3位の細胞検出試薬4を用いる測定項目について判定し、第3位の測定項目の測定に必要な細胞数は1×10個であり、検体中の測定対象細胞である白血球の残りの数は1×10個であるので、当該測定項目の測定条件は充足する。最後に、優先順位が第4位の細胞検出試薬3を用いる測定項目について判定し、第4位の測定項目の測定に必要な細胞数は1×10個であり、検体中の測定対象細胞である白血球の残りの数は0個であるので、当該測定項目の測定条件は充足しない。よって、この場合、制御部4は、細胞検出試薬2,4,5を用いる測定項目について測定項目として決定する。また、決定結果を記憶部42に記録するとともに、解析部5に送信し、図11のS20に進む。
【0112】
一方で、S193において、制御部4は、検体中の測定対象細胞の数が全ての測定項目について十分な量でないと判定すると、S195に進み、測定項目の測定を行うのに必要な細胞数の確保ができておらず、測定試料を調製することができない通知を解析部5に送信する。
【0113】
次に、制御部4は、図11のS20において、検体の濃度調整が必要か否かを判定する。この第2実施例では、例えば図13Bの例に示すように、測定項目ごとに、その調製に用いられる検体中の測定対象細胞(白血球)の濃度が異なっており、細胞検出試薬2を用いた測定項目に求められる検体の白血球濃度の所定値は5×10個/μlであり、細胞検出試薬3を用いた測定項目に求められる検体の白血球濃度の所定値は1×10個/μlであり、細胞検出試薬4を用いた測定項目に求められる検体の白血球濃度の所定値は1×10個/μlであり、細胞検出試薬5を用いた測定項目に求められる検体の白血球濃度の所定値は1×10個/μlである。そのため、測定項目ごとに、S16で生成した検体中の測定対象細胞の濃度情報に基づき濃度調整が必要かどうか判定され、検体中の測定対象細胞の濃度が上記所定値より大きいあるいは上記所定値より小さい場合には、制御部4は、濃度調整が必要と判定し、S22に進む。なお、S22濃度調整の方法は、第1実施例と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。一方で、検体中の測定対象細胞の濃度が上記所定値である場合には、制御部4は、濃度調整が不要と判定し、S21に進む。
【0114】
制御部4は、S21において、検体分注部30Aを制御して、測定項目ごとに所定の検体量の検体をノズル300により吸引して、それぞれの分注用チューブ11に吐出する。そして、制御部4は、チューブ移送部36を制御して、検体を分注した各分注用チューブ11を試料調製部3の遠心分離部38にセットした後、S23において、測定試料の調製に関する情報に基づいて、試薬分注部30Bを制御して、測定試料の調製のため、測定項目ごとに、細胞検出試薬及び細胞検出試薬以外の試薬を分注用チューブ11に分注する。
【0115】
第2実施例のように、複数の細胞検出試薬を別々の分注用チューブ11で検体と混合して測定試料を調製する場合、例えば図13(B)の例では、制御部4は、検体分注部30Aの制御により、それぞれの細胞検出試薬2~5に応じた必要細胞数となるように、検体を各分注用チューブ11に分注する。次に、制御部4は、チューブ移送部36の制御により、検体が収容された各分注用チューブ11を試料調製部3の遠心分離部38に移送してセットする。続いて、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、検体を収容した各分
注用チューブ11に、試薬設置部35にセットされた溶血剤5μlを分注する。また、細胞検出試薬5が分注される分注用チューブには、試薬分注部30Bの制御により、溶血剤の他、試薬設置部35にセットされた細胞透過剤10μlも分注する。続いて、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、検体を収容したそれぞれの分注用チューブに、試薬設置部35に設置されたそれぞれに対応する細胞検出試薬2~5を分注する。また、制御部4は、試薬分注部30Bの制御により、試薬設置部35に設置された核染色液(細胞検出試薬1)を全ての分注用チューブに分注する。
【0116】
そして、制御部4は、S24において、上記の通り調製された測定試料を収容した全ての分注用チューブ11を、チューブ移送部36の制御により、測定部2まで移送する。そして、制御部4は、S25において、測定部2を用いてフローサイトメトリー法による測定試料の本測定を行う。
【0117】
以上の通り、上記実施形態の試料調製装置1、試料調製方法及び粒子分析装置100によれば、検体に対してプレ測定を行い、この測定データに基づき検体中の測定対象細胞の濃度情報を生成し、生成した濃度情報と、本測定のための測定試料の調製に用いる細胞検出試薬とに応じて、検体中の測定対象粒子の濃度を調整して、試料調製部3にて測定試料の調製を行っている。そのため、細胞検出試薬に適した濃度の測定対象細胞を含む測定試料を効率よく調製することができ、検体中の測定対象細胞を精度よく分析することができる。
【0118】
また、測定試料の調製に用いる測定試料の調製に関する情報に基づいて、測定試料の調製処理の動作条件(検体量、測定試料の調製に必要な細胞検出試薬及びそれ以外の試薬の種類、各試薬の分注順序、分注量等)を制御している。よって、測定試料の調製を自動化することができる。
【0119】
[その他の変形例]
以上、粒子分析装置の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0120】
例えば、上記実施形態では、測定部2は、試料調製を行う前に粒子を含む検体をプレ測定して、検体に含まれる測定対象粒子を検出する機能と、測定試料を本測定して、解析部5による細胞分析のための測定対象細胞の特徴に関する情報を検出する機能とを有しているが、検体をプレ測定する機能だけを有していてもよい。この場合には、粒子分析装置1には、測定試料を本測定するためのフローサイトメータ等の本測定部(第2測定部)が、検体を測定して検体中の測定対象粒子を検出する測定部2(第1測定部)と別に備えられる。なお、前記第2測定部は、試料調製装置1内に含ませてもよいし、試料調製装置1とは別個に設けてもよい、また、この場合には、測定部2として、図2に示した構成のフローサイトメータを用いてもよいが、測定部2は、検体に含まれる測定対象粒子を検出するための信号を出力できれば足りるため、前方散乱光を取得できれば足りるので、側方散乱光や側方蛍光を取得するための受光素子がなく、前方散乱光を取得するための受光素子のみを有していればよい。さらに、測定部2は、フローサイトメータのような光学式の粒子測定に限らず、電気抵抗方式の粒子測定、沈降式の粒子測定でもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、試料調製部3の遠心分離部38が濃度調整部として機能しているが、濃度調整のための具体的な構成は特に限定されるものではなく、フィルター、セルソーター等を用いてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、試料調製部3が遠心分離部38を備え、遠心分離部38によ
り測定試料の調製を行っているが、測定試料の調製のための具体的な構成は特に限定されるものではなく、測定試料を自動的に調製できるものであればよい。
【0123】
また、上記実施形態では、試薬調製部3の試薬設置部35に設けられた受付部39により、試薬設置部35にセットされた細胞検出試薬に関する情報に基づいて、検体の検査項目、測定項目を決定している。ただし、検体容器10に、測定項目を特定する情報を格納したバーコードやタグ等を付すとともに、検体容器設置部31にこれらのバーコード等を読み取り可能なバーコードリーダやRFIDリーダ等の受付部を備えさせ、検体容器10に付されたバーコード等を読み取ることで、測定項目を特定する情報を取得してもよい。測定項目を特定する情報は、測定項目を特定できる限り限定されず、例えば、測定項目の名称、測定項目の測定に必要な試薬の識別情報や名称等であってよい。
【0124】
また、上記実施形態において、制御部4は、測定試料の調製に用いる粒子検出試薬の種類と、検体容器内の検体中の測定対象粒子の数とに基づいて、試料調製部3が調製する測定試料の数を決定してもよい。例えば、測定試料の調製に関する情報に、測定に必要な測定試料(分注用チューブ11)の数に関する情報を含ませておき、制御部4は、測定試料の調製の際に、検体容器10内の検体中の測定対象細胞の数と、測定試料の調製に関する情報に含まれる測定に必要な測定試料(分注用チューブ11)の数に関する情報とに基づいて、所定数の測定試料を調製するよう、試料調製部3を制御してもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、試料調製装置1が測定部2、試料調製部3及び制御部4を内部に一体に含んで一つの装置として構成されている。ただし、上記実施態様以外に、本発明は、図16に示すように、測定部2、試料調製部3及び制御部4がそれ自体一つの装置として、それぞれ独立した測定装置2´、試料調製装置3´及び制御装置4´として構成され、測定装置2´及び試料調製装置3´、さらには解析装置5´が制御装置4に接続された試料調製システム1´であってもよい。なお、測定装置2´、試料調製装置3´、制御装置4´及び解析装置5´は、図1の測定部2、試料調製部3、制御部4及び解析部5と同一又は略同一の構成である。また、この場合、図1の信号処理部6は測定装置2´内に含まれ、各装置2´~5´に通信I/Fが含まれる。
図1
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図12A
図12B
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図13B
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