(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤および液晶表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20240520BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
(21)【出願番号】P 2022505143
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006896
(87)【国際公開番号】W WO2021177111
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020034974
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 宙
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080278(WO,A1)
【文献】特開2006-106385(JP,A)
【文献】特開2017-223828(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基以外の重合性官能基を有さないエポキシ化合物、
1分子中に(メタ)アクリル基およびエポキシ基の両方を有する(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物、
エポキシ基を有さない(メタ)アクリル化合物、
熱硬化剤、および
光重合開始剤
を含み、かつ前記エポキシ化合物の含有量が22~38質量%である液晶滴下工法用シール剤であり、
前記エポキシ化合物のうち、分子量が500以上である成分の割合が、25質量%以上であり、
前記光重合開始剤は、
オキシムエステル系化合物であり、
前記液晶滴下工法用シール剤および
メルク社製MLC-7026からなる測定用液晶を質量比1:10で混合した混合物を、バイアル瓶内にて120℃で1時間加熱した後、前記混合物を配向膜および透明電極を有するガラスセル内に入れて5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に6254型測定装置で測定される残留DC値が、前記測定用液晶のみをバイアル瓶内にて120℃で1時間加熱した後、前記測定用液晶のみを前記ガラスセル内に入れて5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に6254型測定装置で測定される残留DC値に対して200%以下である、
液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
前記液晶滴下工法用シール剤が含む各成分について、前記各成分と
前記測定用液晶とをそれぞれを質量比1:10で混合した混合物を、バイアル瓶内にて120℃で1時間加熱した後、前記混合物を配向膜および透明電極を有するガラスセル内に入れて5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に6254型測定装置で残留DC値を測定したとき、
前記液晶滴下工法用シール剤の98質量%以上の成分の前記残留DC値が、前記測定用液晶のみをバイアル瓶内にて120℃で1時間加熱した後、前記測定用液晶のみを前記ガラスセル内に入れて5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に6254型測定装置で測定される残留DC値に対して300%以下である、
請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
前記熱硬化剤が、有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤、イミダゾール系熱潜在性硬化剤、アミンアダクト系熱潜在性硬化剤、およびポリアミン系熱潜在性硬化剤からなる群より選ばれる1種以上である、
請求項1または2に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
無機粒子をさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項5】
有機粒子をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項6】
シランカップリング剤をさらに含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項7】
一対の基板の一方の基板上に、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤を塗布し、シールパターンを形成する工程と、
前記シールパターンが未硬化の状態において、前記一方の基板の前記シールパターンの領域内、または他方の基板上に液晶を滴下する工程と、
前記一方の基板と前記他方の基板とを、前記シールパターンを介して重ね合わせる工程と、
前記シールパターンを硬化させる工程と、
を含む、液晶表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記シールパターンを硬化させる工程において、前記シールパターンに光を照射する、
請求項7に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記シールパターンを硬化させる工程において、光を照射後、加熱する、
請求項8に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法用シール剤および液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶滴下工法によって液晶表示パネルを製造する場合、液晶シール剤を塗布してシールパターンを形成する。そして、シールパターンを形成した基板、もしくはこれと対になる基板上に液晶を滴下し、真空で貼り合わせる。その後、UV照射したり、加熱したりすることでシールパターンを硬化させ、シール部材を形成する。しかしながら、当該方法では、液晶シール剤が未硬化の状態で、液晶を滴下するため、液晶シール剤中の不純物や低分子成分が液晶に溶出することがあった。そして、低分子成分等液晶に溶出すると、液晶表示パネルに、残像と称される表示不良が生じやすかった。
【0003】
ここで、従来の液晶シール剤は、UV硬化性である(メタ)アクリル化合物と、熱硬化性であるエポキシ化合物とを含むことが多かった。そして、エポキシ化合物は、UV硬化によって通常硬化しない。そのため、UV硬化後のシールパターン内には、未だに低分子量のエポキシ化合物が多く含まれる。そして、当該シールパターンを熱硬化のために加熱すると、熱によって液晶が相転移し、シールパターン中のエポキシ化合物が液晶に溶出しやすかった。
【0004】
そこで、一分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物を使用することで、UV硬化性および熱硬化性を確保しつつ、エポキシ化合物の液晶への溶出を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1)。また、融点が50℃以上である結晶性エポキシ化合物を用いることで、エポキシ化合物の液晶への溶出を抑制することも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-28184号公報
【文献】特開2006-23583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで近年、液晶表示パネルの液晶表示領域を大きくし、これを囲む領域の幅を狭くすること(以下、「狭額縁化」とも称する)ことが求められている。狭額縁化の実現には、シール部材の幅を細くすることも不可欠である。ただし、従来のシール部材では、その幅を細くすると、接着強度が不十分になりやすく、基板とシール部材との界面で剥離が生じ、液晶の染み出し等が生じやすかった。
【0007】
また、シール部材と基板との接着強度には、エポキシ化合物等が含むエポキシ基が大きく寄与する。上述の特許文献1に記載の技術では、UV硬化によって、エポキシ基を有する化合物が重合する。そのため、熱硬化の際にエポキシ基が自由に動き難く、エポキシ基が、基板との結合に十分に寄与できなかった。一方、特許文献2に記載の技術では、液晶シール剤の粘度が上昇してしまうことから、液晶シール剤に、融点の高いエポキシ化合物を多く含めることが難しい。そのため、当該技術によっても、十分な接着強度が得られ難かった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。具体的には、液晶表示パネルの狭額縁化にも対応可能な、基板との接着強度が高いシール部材を形成可能であり、かつ液晶に溶解し難い液晶滴下工法用シール剤および液晶表示パネルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の液晶滴下工法用シール剤を提供する。
[1]エポキシ基以外の重合性官能基を有さないエポキシ化合物、1分子中に(メタ)アクリル基およびエポキシ基の両方を有する(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物、エポキシ基を有さない(メタ)アクリル化合物、熱硬化剤、および光重合開始剤を含み、かつ前記エポキシ化合物の含有量が22~38質量%である液晶滴下工法用シール剤であり、前記液晶滴下工法用シール剤および液晶を質量比1:10で混合した混合物を、120℃で1時間加熱し、5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に測定される残留DC値が、前記液晶のみを120℃で1時間加熱し、5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に測定される残留DC値に対して200%以下である、液晶滴下工法用シール剤。
【0010】
[2]前記液晶滴下工法用シール剤が含む各成分について、前記各成分と液晶とをそれぞれを質量比1:10で混合し、120℃で1時間加熱し、5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に残留DC値を測定したとき、前記液晶滴下工法用シール剤の98質量%以上の成分の前記残留DC値が、前記液晶のみを120℃で1時間加熱し、5Vで1秒間電圧を印加し、0.1秒間短絡させてから、30秒後に測定される残留DC値に対して300%以下である、[1]に記載の液晶滴下工法用シール剤。
[3]前記エポキシ化合物のうち、分子量が500以上である成分の割合が、25質量%以上である、[1]または[2]に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【0011】
[4]前記熱硬化剤が、有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤、イミダゾール系熱潜在性硬化剤、アミンアダクト系熱潜在性硬化剤、およびポリアミン系熱潜在性硬化剤からなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
[5]無機粒子をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
[6]有機粒子をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
[7]シランカップリング剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
【0012】
[8]一対の基板の一方の基板上に、[1]~[7]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤を塗布し、シールパターンを形成する工程と、前記シールパターンが未硬化の状態において、前記一方の基板の前記シールパターンの領域内、または他方の基板上に液晶を滴下する工程と、前記一方の基板と前記他方の基板とを、前記シールパターンを介して重ね合わせる工程と、前記シールパターンを硬化させる工程と、を含む、液晶表示パネルの製造方法。
【0013】
[9]前記シールパターンを硬化させる工程において、前記シールパターンに光を照射する、[8]に記載の液晶表示パネルの製造方法。
[10]前記シールパターンを硬化させる工程において、光を照射後、加熱する、[9]に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は液晶に溶解し難い。さらに当該液晶滴下工法用シール剤から得られるシール部材と、基板との接着強度が高い。したがって、得られる液晶表示パネルにおいて、液晶漏れや残像が生じ難く、さらには狭額縁化も実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.液晶滴下工法用シール剤
本発明の液晶滴下工法用シール剤(以下、単に「シール剤」とも称する)は、液晶表示パネルのシール部材を作製するための部材であり、液晶滴下工法で液晶表示パネルを作製する場合に好適に用いられる。ただし、液晶注入工法等で液晶表示パネルを作製するためにも用いることができる。
【0016】
上述のように、従来のシール剤では、接着強度の向上に寄与可能なエポキシ化合物を多く含めると、液晶表示パネルを製造する際に、液晶が汚染されやすい、という課題があった。一方で、エポキシ化合物の量を少なくすると、例えば液晶表示パネルを狭額縁化したときに、十分な接着強度が得られず、基板とシール剤の硬化物(シール部材)との間で剥離が生じることがあった。
【0017】
これに対し、本発明者らの鋭意検討により、シール剤の総量に対して、エポキシ化合物の量を22~38質量%とし、かつシール剤と液晶とを所定の比で混合した混合物の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して200%以下となるように、シール剤の組成を調整することで、得られるシール部材と基板との接着強度が非常に高まり、その一方で、シール剤中の成分の溶出等によって生じる残像が生じ難くなることが見出された。
【0018】
ここで、シール剤と液晶とを含む混合物の残留DC値は、以下のように測定できる。まず、シール剤と、液晶(例えば、MLC-7026、メルク社製)とを質量比1:10でバイアル瓶に投入し、混合する。そして、120℃で1時間加熱する。次いで、当該混合物を取り出し、配向膜と透明電極が予め形成されたガラスセル(例えば、KSSZ-10/B111M1NSS05、EHC社製)に注入する。そして、得られたセルに電圧5Vを1秒間印加し、0.1秒間短絡させる。その後、30秒後に残存している電圧(残留DC値)を、6254型測定装置(東陽テクニカ社製)にて測定する。
【0019】
一方、液晶のみの残留DC値を測定する場合には、液晶のみをバイアル瓶に投入し、混合する。そして、120℃で1時間加熱する。次いで、当該液晶を取り出し、配向膜と透明電極が予め形成されたガラスセル(例えば、KSSZ-10/B111M1NSS05、EHC社製)に注入する。得られたセルに電圧5Vを1秒間印加し、0.1秒間短絡させる。そして、30秒後に残存している電圧(残留DC値)を、例えば6254型測定装置(東陽テクニカ社製)にて測定する。
【0020】
ここで、シール剤と液晶とを含む混合物の残留DC値は、液晶の種類によって多少変化するが、液晶のみの残留DC値に対して200%以下であればよく、180%以下がさらに好ましい。上記混合物の残留DC値は、シール剤を構成する成分の種類によって調整できる。例えば、シール剤が含む多くの成分について、個別の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して300%以下となるように調整することで、上記混合物の残留DC値を満たすことができる。より具体的には、液晶のみの残留DC値に対して、個別の残留DC値が300%以下である成分の割合を、シール剤の総量に対して98質量%以上であることが好ましい。
【0021】
シール剤中の各成分の個別の残留DC値は、以下のように測定できる。まず、各成分と、液晶(例えば、MLC-7026、メルク社製)とを質量比1:10でバイアル瓶に投入し、混合する。当該混合物を120℃で1時間加熱する。そして、この混合物を配向膜と透明電極が予め形成されたガラスセル(例えば、KSSZ-10/B111M1NSS05、EHC社製)に注入する。得られたセルに、電圧5Vを1秒間印加し、0.1秒間短絡させる。そして、30秒後に残存している電圧(残留DC値)を、例えば6254型測定装置(東陽テクニカ社製)にて測定する。なお、各成分の残留DC値が、ブランクの液晶の残留DC値に対して280%以下であると、より好ましい。
【0022】
ここで、本発明のシール剤は、エポキシ化合物、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物、(メタ)アクリル化合物、熱硬化剤、および光重合開始剤を含む。ただし、これらの成分の他に、必要に応じて無機粒子や有機粒子、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。なお、本明細書における(メタ)アクリルとの記載は、アクリルまたはメタクリル、もしくはこれらの両方を含む。
以下、本発明のシール剤の各成分および物性について詳しく説明する。
【0023】
(1)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、一分子中にエポキシ基を少なくとも含み、かつエポキシ基以外の重合性官能基を有さない化合物である。本明細書における重合性官能基とは、光照射または加熱、熱硬化剤や光重合開始剤、触媒等によって活性化されて、重合反応をする官能基をいう。当該重合性官能基には、光重合性官能基や熱重合性官能基、重付加官能基等が含まれ、具体例には、(メタ)アクリル基、ビニル基、アクリルアミド基、エポキシ基、イソシアナート基、シラノール基等が含まれる。
【0024】
エポキシ化合物が一分子中に含むエポキシ基の数は2以上が好ましい。エポキシ化合物中のエポキシ基の数が2以上であると、得られるシール部材と液晶表示パネルの基板との接着性が良好になる。さらに、得られるシール部材の耐湿性も高まりやすい。
【0025】
エポキシ化合物は、常温で液状であってもよく、固体状であってもよい。エポキシ化合物の軟化点は、得られるシール剤の粘度の観点で、40~110℃が好ましい。
【0026】
ここで、エポキシ化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。エポキシ化合物の分子量(もしくは重量平均分子量)は、通常220~3000が好ましく、250~2500がより好ましく、300~2000がさらに好ましい。ただし、エポキシ化合物の総量に対して、分子量が500以上である成分の割合は、25質量%以上が好ましい。分子量が500以上のエポキシ化合物は液晶に溶解し難い。したがって、このようなエポキシ化合物は、上述の個別の残留DC値が、液晶のみの残留DC値と比較して300%以下になりやすい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により特定(ポリスチレン換算)できる。ただし、エポキシ化合物は、個別の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して300%超となるものを一部に含んでいてもよい。
【0027】
ここで、エポキシ化合物の構造は特に制限されないが、その例には、芳香環を主鎖に含む芳香族エポキシ化合物が含まれる。芳香族エポキシ化合物の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類や、これらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノールやクレゾール等とホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂や、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類;ナフタレン型エポキシ化合物;ジフェニルエーテル型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物;等が含まれる。
【0028】
上記芳香族エポキシ化合物は、より具体的には、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、トリフェノールエタン型エポキシ化合物、トリスフェノール型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物が好ましい。
【0029】
シール剤は、エポキシ化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上を含んでいてもよい。各エポキシ化合物について、上述のように個別の残留DC値を測定したとき、その値は、150mV以下が好ましい。
【0030】
また、エポキシ化合物の含有量はシール剤の総量に対して、22~38質量%が好ましく、22~36質量%がより好ましく、23~35質量%がさらに好ましい。エポキシ化合物の量が25質量%以上であると、シール剤から得られるシール部材と液晶表示パネルの基板との接着強度が高まり、液晶表示パネルの狭額縁化にも対応できる。一方、エポキシ化合物の量が38質量%以下であると、上述のように測定されるシール剤と液晶との混合物の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して200%以下になりやすく、得られる液晶表示パネルに残存等が生じ難い。
【0031】
(2)(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物
(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物は、1分子中にエポキシ基および(メタ)アクリル基を有する化合物であればよい。
【0032】
シール剤が、上述のエポキシ化合物と、後述の(メタ)アクリル化合物とを含むだけでは、これらの相溶性が低いことがある。これに対し、シール剤が(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物をさらに含むと、エポキシ化合物と(メタ)アクリル化合物との相溶性が高まり、さらにはエポキシ化合物が液晶に溶出し難くなる。
【0033】
ここで、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物一分子が有するエポキシ基および(メタ)アクリル基の数は特に制限されないが、例えば1つずつであってもよい。またエポキシ基の数および(メタ)アクリル基の数は同一であってもよく、異なっていてもよい。(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物の例には、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、塩基性触媒の存在下で反応させて得られる(メタ)アクリル変性エポキシ化合物が含まれる。
【0034】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物の調製に用いるエポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を2つ以上有する2官能以上のエポキシ化合物であればよく、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’-ジアリルビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、および水添ビスフェノール型等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、およびトリスフェノールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ化合物等が含まれる。
【0035】
ただし、3官能や4官能等の多官能エポキシ化合物を(メタ)アクリル変性して得られる(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、架橋密度が高い。そのため、シール剤がこのような(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を含むと、液晶表示パネルを製造したときに、シール部材と基板との接着強度が低下し易い。したがって、2官能エポキシ化合物を(メタ)アクリル変性して得られる(メタ)アクリル変性エポキシ化合物が好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル変性エポキシ化合物調製用のエポキシ化合物は、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、およびビスフェノール型エポキシ化合物がより好ましく、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ化合物が、シール剤の塗布効率の観点からさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物調製用のエポキシ化合物は、一種であってもよく、二種以上であってもよい。また、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物調製用のエポキシ化合物は、分子蒸留法、洗浄法等により高純度化されていることが好ましい。
【0037】
また、上記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、常法に従って行うことができる。当該反応を行うと、エポキシ化合物中の一部のエポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応し、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ化合物が得られる。ただし、反応生成物中には、当該(メタ)アクリル変性エポキシ化合物だけでなく、未反応のエポキシ化合物や、エポキシ化合物の全てのエポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応した(メタ)アクリル化合物も含まれることがある。当該生成物から、(メタ)アクリル変性エポキシ化合物のみを単離してシール剤に使用してもよいが、未反応のエポキシ化合物は、上述のエポキシ基以外の重合性官能基を有さないエポキシ化合物に相当する。また、エポキシ化合物の全てのエポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応した(メタ)アクリル化合物は、後述の(メタ)アクリル化合物に相当する。したがって、当該反応生成物をそのままシール剤に使用してもよい。
【0038】
ここで、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物の分子量(重量平均分子量)は、例えば310~1000が好ましく、350~900がより好ましい。(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物の重量平均分子量Mwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)できる。(メタ)アクリル・エポキシ化合物含有化合物の分子量が当該範囲であると、シール剤の粘度が所望の範囲になりやすい。
【0039】
シール剤が含む(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物の量は、シール剤の総量に対して、15~50質量%が好ましく、18~40質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物の量が15質量%以上であると、シール剤から得られるシール部材と液晶表示パネルの基板との接着強度が高まり、液晶表示パネルの狭額縁化にも対応できる。一方、エポキシ化合物の量が50質量%以下であると、シール剤と液晶との混合物の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して200%以下になりやすく、得られる液晶表示パネルに残像等が生じ難い。
【0040】
(3)(メタ)アクリル化合物
(メタ)アクリル化合物は、一分子中に1つ以上の(メタ)アクリル基を含む化合物であって、エポキシ基を有さない化合物である。(メタ)アクリル化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0041】
(メタ)アクリル化合物が一分子中に含む(メタ)アクリル基の数は、2以上が好ましい。(メタ)アクリル化合物中の(メタ)アクリル基の数が2以上であると、シール剤の光硬化性が良好になる。
【0042】
ここで、(メタ)アクリル化合物の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、またはそのオリゴマー;ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸の(メタ)アクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴ(メタ)アクリレート;等が含まれる。また、上述の2官能以上のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全てを(メタ)アクリル酸と反応させた化合物も含まれる。
【0043】
これらの中でも、シール剤の光硬化後の膜の弾性率が所望の範囲に収まりやすいとの観点で、(メタ)アクリル化合物のガラス転移温度は25℃以上200℃未満が好ましい。ガラス転移温度は、40℃~200℃がより好ましく、50~150℃がさらに好ましい。ガラス転移温度は、粘弾性測定装置(DMS)により測定される。
【0044】
また、(メタ)アクリル化合物の分子量(または重量平均分子量)は、310~1000が好ましく、400~900がより好ましい。(メタ)アクリル化合物の重量平均分子量Mwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)できる。(メタ)アクリル化合物の分子量が当該範囲であると、シール剤の粘度が所望の範囲になりやすい。
【0045】
シール剤が含む(メタ)アクリル化合物の量は、所望のシール剤の硬化性にもよるが、シール剤の総量に対して、15~40質量%が好ましく、18~35質量%がより好ましく、20~32質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル化合物の量が上記範囲であると、シール剤の光硬化後の弾性率が良好になりやすい。
【0046】
(4)熱硬化剤
熱硬化剤は、加熱により上記エポキシ化合物を硬化させることが可能な成分であればよい。ただし、熱硬化剤は、通常の保存条件下(室温、可視光線下等)では、上述のエポキシ化合物や、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物を硬化させないが、加熱によってこれらの化合物を硬化させる化合物であることが好ましい。このような熱硬化剤を含有するシール剤によれば、保存安定性と熱硬化性とを両立できる。また、熱硬化剤としては、エポキシ化合物を硬化させることが可能な化合物(以下、「エポキシ硬化剤」とも称する)が好ましい。
【0047】
エポキシ硬化剤の融点は、シール剤の粘度安定性を高め、かつ得られるシール部材の耐湿性を損なわない観点から、50℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましく、150℃以上200℃以下がさらに好ましい。エポキシ硬化剤の融点が当該範囲であると、シール剤を一液硬化性とすることができる。シール剤が一液硬化性であると、使用に際して主剤と硬化剤を混合する必要がないことから、作業性が優れる。
【0048】
エポキシ硬化剤の例には、有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤、イミダゾール系熱潜在性硬化剤、アミンアダクト系熱潜在性硬化剤、及びポリアミン系熱潜在性硬化剤が含まれる。
【0049】
エポキシ硬化剤の例には、有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤、イミダゾール系熱潜在性硬化剤、ジシアンジアミド系熱潜在性硬化剤、アミンアダクト系熱潜在性硬化剤、およびポリアミン系熱潜在性硬化剤が含まれる。
【0050】
有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤の例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、およびセバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等が含まれる。
【0051】
イミダゾール系熱潜在性硬化剤の例には、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチルイミダゾリル-(1’)]-エチルトリアジン(融点215~225℃)、および2-フェニルイミダゾール(融点137~147℃)等が含まれる。
【0052】
ジシアンジアミド系熱潜在性硬化剤の例には、ジシアンジアミド(融点209℃)等が含まれる。
【0053】
アミンアダクト系熱潜在性硬化剤は、触媒活性を有するアミン系化合物と任意の化合物とを反応させて得られる付加化合物からなる熱潜在性硬化剤である。アミンアダクト系熱潜在性硬化剤の例には、味の素ファインテクノ社製 アミキュアPN-40(融点110℃)、味の素ファインテクノ社製 アミキュアPN-23(融点100℃)、味の素ファインテクノ社製 アミキュアPN-31(融点115℃)、味の素ファインテクノ社製 アミキュアPN-H(融点115℃)、味の素ファインテクノ社製 アミキュアMY-24(融点120℃)、および味の素ファインテクノ社製 アミキュアMY-H(融点131℃)等が含まれる。
【0054】
ポリアミン系熱潜在性硬化剤は、アミンとエポキシとを反応させて得られるポリマー構造を有する熱潜在性硬化剤であり、その例には、ADEKA社製 アデカハードナーEH4339S(軟化点120~130℃)、およびADEKA社製 アデカハードナーEH4357S(軟化点73~83℃)等が含まれる。
【0055】
上記の中でも、入手しやすさ、他の成分との相溶性等の観点で、有機酸ジヒドラジド系熱潜在性硬化剤、イミダゾール系熱潜在性硬化剤、アミンアダクト系熱潜在性硬化剤、またはポリアミン系熱潜在性硬化剤が好ましい。シール剤は、エポキシ硬化剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0056】
熱硬化剤の含有量は、シール剤の総量に対して1~20質量%が好ましく、2~18質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。熱硬化剤の量が当該範囲であると、シール剤の熱硬化性が良好になる。
【0057】
(5)光重合開始剤
光重合開始剤は、光の照射によって、活性種を発生可能な化合物であればよく、自己開裂型の光重合開始剤であってもよく、水素引き抜き型の光重合開始剤であってもよい。シール剤は、光重合開始剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0058】
自己開裂型の光重合開始剤の例には、アルキルフェノン系化合物(例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製 IRGACURE 651)等のベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン(BASF社製 IRGACURE 907)等のα-アミノアルキルフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製 IRGACURE 184)等のα-ヒドロキシアルキルフェノン等)、アシルホスフィンオキサイド系化合物(例えば2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等)、チタノセン系化合物(例えばビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等)、アセトフェノン系化合物(例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等)、フェニルグリオキシレート系化合物(例えばメチルフェニルグリオキシエステル等)、ベンゾインエーテル系化合物(例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等)、およびオキシムエステル系化合物(例えば1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASF社製 IRGACURE OXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製 IRGACURE OXE02)等)が含まれる。
【0059】
水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン系化合物(例えばベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等)、チオキサントン系化合物(例えばチオキサントン、2-クロロチオキサントン(東京化成工業社製)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、1-クロロ-4-エトキシチオキサントン(Lambson Limited社製 Speedcure CPTX)、2-イソプロピルキサントン(Lambson Limited社製 Speedcure ITX)、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson Limited社製 Speedcure DETX)、2,4-ジクロロチオキサントン、アントラキノン系化合物(例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等、2-ヒドロキシアントラキノン(東京化成工業社製 2-Hydroxyanthraquinone)、2,6-ジヒドロキシアントラキノン(東京化成工業社製 Anthraflavic Acid)、2-ヒドロキシメチルアントラキノン(純正化学社製 2-(Hydroxymethyl)anthraquinone)等)、およびベンジル系化合物が含まれる。
【0060】
光重合開始剤の吸収波長は特に限定されず、例えば波長360nm以上の光を吸収する光重合開始剤が好ましい。中でも、可視光域の光を吸収することがより好ましく、波長360~780nmの光を吸収する光重合開始剤がさらに好ましく、波長360~430nmの光を吸収する光重合開始剤が特に好ましい。
【0061】
波長360nm以上の光を吸収する光重合開始剤の例には、アルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサントン系化合物、アントラキノン系化合物が含まれ、好ましくはオキシムエステル系化合物である。
【0062】
なお、光重合開始剤の構造は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)と、NMR測定またはIR測定とを組み合わせることで特定できる。
【0063】
光重合開始剤の分子量は、例えば200以上5000以下が好ましい。分子量が200以上であると、シール剤と液晶とが接触したときに、光重合開始剤が液晶に溶出し難い。一方、分子量が5000以下であると、上述の(メタ)アクリル化合物等との相溶性が高まり、シール剤の硬化性が良好になりやすい。光重合開始剤の分子量は、230以上3000以下がより好ましく、230以上1500以下がさらに好ましい。
【0064】
光重合開始剤の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)で分析したときに検出されるメインピークの、分子構造の「相対分子質量」として求めることができる。
【0065】
具体的には、光重合開始剤をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた試料液を調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行う。そして、検出されたピークの面積百分率(各ピークの面積の、全ピークの面積の合計に対する比率)を求め、メインピークの有無を確認する。メインピークとは、各化合物に特徴的な検出波長(例えばチオキサントン系化合物であれば400nm)で検出された全ピークのうち、最も強度が大きいピーク(ピークの高さが最も高いピーク)をいう。検出されたメインピークのピーク頂点に対応する相対分子質量は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS:Liquid Chromatography Mass Spectrometry)により測定できる。
【0066】
光重合開始剤の量は、シール剤の総量に対して0.1~8質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。光重合開始剤の量が、0.1質量%以上であると、シール剤の光硬化性が良好になりやすい。光重合開始剤の量が8質量%以下であると、光重合開始剤が液晶に溶出し難くなる。
【0067】
(6)無機粒子
シール剤は、必要に応じて無機粒子をさらに含んでいてもよい。シール剤が無機粒子を含むと、シール剤の粘度や得られるシール部材の強度、および線膨張性等が良好になりやすい。
【0068】
無機粒子の材料の例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が含まれる。シール剤は、無機粒子を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。無機粒子は、上記の中でも二酸化ケイ素またはタルクが好ましい。
【0069】
無機粒子の形状は、球状、板状、針状等、定形状であってもよく、非定形状であってもよい。無機粒子が球状である場合、無機粒子の平均一次粒子径は、1.5μm以下が好ましく、かつ比表面積が0.5~20m2/gがより好ましい。無機粒子の平均一次粒子径は、JIS Z8825-1に記載のレーザー回折法により測定することができる。無機粒子の比表面積は、JIS Z8830に記載のBET法により測定できる。
【0070】
無機粒子の含有量は、シール剤の総量に対して0.1~25質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~18質量%がさらに好ましい。無機粒子の含有量が0.1質量%以上であると、得られるシール部材の耐湿性が高まりやすく、25質量%以下であると、シール剤の塗工安定性が損なわれにくい。
【0071】
(7)有機粒子
シール剤は、必要に応じて有機粒子をさらに含んでいてもよい。シール剤が有機粒子を含むと、シール剤の光硬化後の弾性率等を調整しやすくなる。
【0072】
有機粒子の例には、シリコーン粒子、アクリル粒子、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン粒子、およびポリオレフィン粒子等が含まれる。シール剤は、有機粒子を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。有機粒子の平均一次粒子径は、0.05~13μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.1~8μmがさらに好ましい。
【0073】
また、有機粒子の形状は特に制限されないが、好ましくは球状であり、さらに好ましくは真球状である。球状であるとは、各粒子の直径の最大値(a)に対する最小値(b)の比b/a=0.9~1.0であることをいう。有機粒子の平均一次粒子径は、顕微鏡法、具体的には電子顕微鏡の画像解析により測定することができる。また、有機粒子の表面は平滑であることが好ましい。表面が平滑であると比表面積が低下して、シール剤に添加可能な有機粒子の量が増加する。
【0074】
有機粒子の含有量は、シール剤の総量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~12質量%がさらに好ましい。有機粒子の量が当該範囲であると、シール剤の光硬化後の弾性率が所望の範囲に収まりやすい。
【0075】
(8)その他
本発明のシール剤は、必要に応じて熱ラジカル重合開始剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、増感剤、可塑剤及び消泡剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0076】
シランカップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。シランカップリング剤の量は、シール剤の総量に対して0.01~6質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.01質量%以上であると、得られるシール部材が十分な接着性を有しやすい。ただし、シランカップリング剤は、残留DC値が高いものが多い。そこで、シランカップリング剤の量は、6質量%以下が好ましい。
【0077】
シール剤は、液晶表示パネルのギャップを調整するためのスペーサー等をさらに含んでいてもよい。
【0078】
その他の成分の合計量は、シール剤の総量に対して1~50質量%が好ましい。その他の成分の合計量が50質量%以下であると、シール剤の粘度が過度に上昇し難く、シール剤の塗工安定性が損なわれにくい。
【0079】
(9)シール剤の物性
シール剤のE型粘度計の25℃、2.5rpmにおける粘度は、200~450Pa・sが好ましく、300~400Pa・sがより好ましい。粘度が上記範囲にあると、シール剤(シールパターン)を介して、一対の基板を重ね合わせたときに、シール剤がこれらの隙間を埋めるように変形しやすい。そのため、液晶表示パネルの一対の基板間のギャップを適正に制御できる。
【0080】
また、シール剤のチクソトロピーインデックス(TI値)は、シール剤の塗布性の観点から、1.0~1.5が好ましく、1.1~1.3がより好ましい。TI値は、E型粘度計を用い、室温(25℃)、0.5rpmにおけるシール剤の粘度をη1とし、5rpmにおけるシール剤の粘度をη2とし、これらの測定値を、下記式(1)に当てはめて得られる値である。
TI値=(0.5rpmにおける粘度η1(25℃))/(5rpmにおける粘度η2(25℃))・・・(1)
【0081】
シール剤と液晶とを上述のように混合して測定される残留DC値は、100mV以下であることが好ましい。この場合、液晶としては、メルク社製のMLC-7026を使用して測定することが好ましい。
【0082】
2.液晶表示パネル
本発明の液晶表示パネルは、一対の基板と、当該基板の間に配置された枠状のシール部材と、一対の基板間かつ枠状のシール部材の内部に充填された液晶と、を有する。当該液晶表示パネルでは、シール部材が、前述のシール剤の硬化物である。前述のシール剤から得られるシール部材は、基板との接着強度が高く、シール部材を細線化しても液晶漏れ等が生じ難い。さらに、当該シール剤は、液晶を汚染し難い。したがって、液晶表示パネルの使用時に残像等が生じ難い。
【0083】
一対の基板(「表示基板および対向基板」とも称する)は、いずれも透明基板である。透明基板の材質の例には、ガラス、または、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォンおよびPMMA等が含まれる。
【0084】
表示基板または対向基板の表面には、マトリクス状のTFT、カラーフィルタ、ブラックマトリクス等が配置される。表示基板または対向基板の表面には、さらに配向膜が形成される。配向膜には、公知の有機配向剤や無機配向剤等が含まれる。また、液晶は公知の液晶を用いることが可能である。
【0085】
液晶表示パネルの製造方法には、一般に、液晶滴下工法と、液晶注入工法とがあるが、本発明の液晶表示パネルの製造方法は、液晶滴下工法であることが好ましい。
【0086】
液晶滴下工法による液晶表示パネルの製造方法は、1)一方の基板に、前述のシール剤を塗布し、枠状のシールパターンを形成するシールパターン形成工程と、2)シールパターンが未硬化の状態で、一方の基板上かつシールパターンで囲まれた領域内、もしくは他方の基板上かつ他方の基板と一方の基板とを対向させたときにシールパターンに囲まれる領域に、液晶を滴下する液晶滴下工程と、3)一方の基板および他方の基板を、シールパターンを介して重ね合わせる重ね合わせ工程と、4)シールパターンを硬化させる硬化工程と、を含む。
【0087】
1)シールパターン形成工程では、一方の基板に、前述のシール剤を塗布する。シール剤を塗布する方法は特に制限されず、例えばスクリーン印刷や、ディスペンサによる塗布等、所望の厚みや幅でシールパターンを形成可能な方法であれば特に制限されず、公知のシール剤の塗布方法と同様である。
【0088】
また、形成するシールパターンの形状は、液晶表示パネルの用途等に合わせて適宜選択され、液晶が漏出しない形状であればよい。例えば矩形状の枠状とすることができるが、当該形状に制限されない。シールパターンの線幅は、0.2~1.0mmが好ましく、0.2~0.5mmがより好ましい。
【0089】
2)液晶滴下工程では、シールパターンが未硬化の状態で、一対の基板を対向させる。ここで、シールパターンが未硬化の状態とは、シール剤の硬化反応がゲル化点までは進行していない状態を意味する。なお、液晶滴下工程前に、シール剤の液晶への溶解を抑制するために、シールパターンを光照射または加熱して半硬化させてもよい。また、液晶の滴下方法は、公知の液晶の滴下方法と同様であり、シールパターンが形成された基板に液晶を滴下してもよく、シールパターンが形成されていない基板(他方の基板)に液晶を滴下してもよい。
【0090】
3)重ね合わせ工程では、シールパターンを介して一方の基板と他方の基板とが対向するように重ね合わせる。このとき、基板間のギャップが所望の範囲となるように制御する。
【0091】
4)硬化工程では、シールパターンを硬化させる。シールパターンの硬化方法は特に制限されないが、所定の波長の光の照射によって仮硬化させた後、加熱により本硬化させることが好ましい。光照射によれば、シールパターンを瞬時に硬化させることができ、シール剤中の成分が液晶に溶解することを抑制できる。
【0092】
照射する光の波長は、光重合開始剤の種類に応じて適宜選択され、紫外光が好ましい。また、光照射時間は、シール剤の組成にもよるが、例えば10分程度である。このとき照射するエネルギー量は、(メタ)アクリル化合物や、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物を硬化させることができる程度のエネルギー量であればよい。
【0093】
光の照射後、加熱によりエポキシ化合物や(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物を硬化させる。加熱温度は、シール剤の組成にもよるが、例えば100~150℃であり、加熱時間は2時間程度が好ましい。
【実施例】
【0094】
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0095】
<合成例1>光硬化性組成物1の調製(メタクリル酸変性エポキシ化合物含有組成物の調製)
液状ビスフェノールF型エポキシ化合物(EPICLON830-S、DIC社製、エポキシ当量160g/eq)160g、重合禁止剤(p-メトキシフェノール)0.1g、触媒(トリエタノールアミン)0.2g、およびメタクリル酸43.0gをフラスコ内に仕込み、乾燥空気を送り込んで90℃で還流攪拌しながら5時間反応させた。得られた組成物を、超純水にて20回洗浄し、メタクリル酸変性エポキシ化合物含有組成物(光硬化性化合物含有組成物1)を得た。得られた組成物の組成をNMRで同定したところ、両末端がエポキシ基であるエポキシ化合物が25モル%、末端にエポキシ基およびメタクリル基をそれぞれ有するメタクリル変性エポキシ化合物が50モル%、両末端がメタクリル基に変性された(メタ)アクリル化合物が、25モル%の割合であった。得られた組成物をカラムで分離し、それぞれの残留DCの値を後述の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0096】
<合成例2>光硬化性組成物2の調製(アクリル酸変性エポキシ化合物含有組成物の調製)
液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(EPICLON850-S、DIC社製エポキシ当量190g/eq)190g、重合禁止剤(p-メトキシフェノール)0.1g、触媒(トリエタノールアミン)0.2g、およびアクリル酸36.0gをフラスコ内に仕込み、乾燥空気を送り込んで90℃で還流攪拌しながら5時間反応させた。得られた組成物を、超純水にて20回洗浄し、アクリル酸変性エポキシ組成物(光硬化性組成物2)を得た。得られた組成物の組成をNMRで同定したところ、両末端がエポキシ基である、エポキシ化合物が25モル%、末端にエポキシ基およびアクリル基をそれぞれ有する(メタ)アクリル化合物が50モル%、両末端がアクリル基に変性された(メタ)アクリル化合物が25モル%の割合であった。得られた組成物をカラムで分離し、それぞれの残留DCの値を後述の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例1]
光硬化性組成物1を400質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製(ビスフェノールA型、残留DC値=64mV))を100質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製(ビスフェノールA型、残留DC値=133mV)を50質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製(残留DC値=52mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を80質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASFジャパン社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて、均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0098】
[実施例2]
光硬化性組成物1を光硬化性組成物2に変更した以外は、実施例1と同様にシール剤を調製した。
【0099】
[実施例3]
光硬化性組成物2を400質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV))を50質量部、エポキシ化合物(エピコート1004AF、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型(残留DC値=57mV))を50質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製(残留DC値=52mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を80質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0100】
[実施例4]
光硬化性組成物1を500質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV))を80質量部、エポキシ化合物(エピコート1004AF、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型(残留DC値=57mV))を50質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を40質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20質量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を130質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を70質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。
【0101】
[実施例5]
光硬化性組成物2を430質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV)150質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製、ビスフェノールA型(残留DC値=52mV))を100質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を40質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を130質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を70質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0102】
[実施例6]
光硬化性組成物1を600質量部、エポキシ化合物(エピコート1004AF、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型(残留DC値=57mV))を80質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV)を30質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を130質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を70質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を20質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0103】
[実施例7]
光硬化性組成物1を500質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV))200質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV))を40質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を130質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を50質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0104】
[比較例1]
光硬化性化合物2を400質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV))を50質量部、エポキシ化合物(エポゴーセーNPG、四日市合成社製、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(残留DC値=300mV))を100質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製(残留DC値=52mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を80質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASFジャパン社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0105】
[比較例2]
光硬化性化合物1を600質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を80質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASFジャパン社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0106】
[比較例3]
光硬化性化合物2を400質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV))100質量部、エポキシ化合物(エポゴーセーNPG、四日市合成社製、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(残留DC値=300mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製(残留DC値=52mV))を50質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を80質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を10質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0107】
[比較例4]
光硬化性化合物1を200質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV)40質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV)を200質量部、(メタ)アクリル化合物(Ebecryl3700、ダイセル・サイテック社製(残留DC値=52mV))を130質量部、(メタ)アクリル化合物(2CL、新中村化学工業社製(残留DC値=73mV))を100質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を20質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0108】
[比較例5]
光硬化性化合物1を340質量部、エポキシ化合物(EP-4010S、ADEKA社製、ビスフェノールA型(残留DC値=64mV)130質量部、エポキシ化合物(850-S、DIC社製、ビスフェノールA型(残留DC値=133mV)を200質量部、熱硬化剤(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学社製(残留DC値=53mV))を50質量部、光重合開始剤(OXE-01、BASF社製(残留DC値=68mV))を20重量部、無機粒子(シリカ粒子:S-100、日本触媒化学社製(残留DC値=51mV))を150質量部、有機粒子(微粒子ポリマーF351、アイカ工業社製(残留DC値=55mV))を90質量部、およびシランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製(残留DC値=431mV))を20質量部、混合した。そして、これらを三本ロールにて均一な液となるように十分に混合して、シール剤を得た。
【0109】
[評価]
実施例および比較例で得られたシール剤について、以下の評価を行った。
【0110】
<シール剤と液晶との残留DC値測定>
上述のシール剤を液晶と混合し、残留DC値を測定した。0.1gの液晶シール剤と、1gの液晶(MLC-7026、メルク社製)とをバイアル瓶に投入し、120℃で1時間加熱して液晶混合物を得た。次いで、この液晶混合物を取り出して、配向膜と透明電極が予め形成されたガラスセル(KSSZ-10/B111M1NSS05、EHC社製)に注入した。得られたセルに電圧5Vを1秒間印加し、0.1秒間短絡させた後、30秒後に残存している電圧(残留DC値)を、6254型測定装置(東陽テクニカ社製)にて測定した。なお、液晶のみについても、同様に残留DC値を測定したところ、液晶のみの残留DC値は50mVであった。
【0111】
<原料の残留DC値測定>
上述の各原料と液晶とを混合し、残留DC値を測定した。0.1gの化合物と、1gの液晶(MLC-7026、メルク社製)とをバイアル瓶に投入し、120℃で1時間加熱して液晶混合物を得た。次いで、この液晶混合物を取り出して、配向膜と透明電極が予め形成されたガラスセル(KSSZ-10/B111M1NSS05、EHC社製)に注入した。得られたセルに電圧5Vを1秒間印加し、0.1秒間短絡させた後、30秒後に残存している電圧(残留DC値)を、6254型測定装置にて測定した。
【0112】
<残像評価>
シール剤を、ディスペンサ(ショットマスター:武蔵エンジニアリング社製)を用いて、透明電極と配向膜が予め形成された40mm×45mmガラス基板(RT-DM88-PIN、EHC社製)上に塗布した。具体的には、35mm×40mmの四角形のシールパターン(断面積3500μm2)(メインシール)と、その外周に同様のシールパターン(38mm×43mmの四角形のシールパターン)とを形成した。
【0113】
次いで、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶(MLC-7026-000、メルク社製)を、メインシールの枠内にディスペンサを用いて精密に滴下した。次いで、対になるガラス基板を減圧下で貼り合せた後、大気開放して貼り合わせた。そして、貼り合わせた2枚のガラス基板を3分間遮光ボックス内で保持した後、波長370~450nmの光を100mJ/cm2照射し、さらに120℃で1時間加熱した。得られた基板の両面に偏光板を貼付け、評価基板とした。
【0114】
評価基板の液晶が充填されている部分の半面だけ駆動させるように電極をつなぎ10Vの電圧を印加しながら65℃で24時間通電させた。その後全面を4Vで駆動させ、半面駆動と全面駆動させたときの境界線を、顕微鏡にて観察した。残像の評価は基板の境界線上の状態から以下のように評価した。狭額縁化する場合、○のみが実用上問題ない範囲といえる。
○:基板の境界線上に差が見られず残像が見られない
△:シール材端部から1mm未満の部分の範囲で基板境界線上に像がみられる
×:シール材端部から1mm以上の部分で基板境界線上に残像がみられる
【0115】
<接着強度評価>
スクリーン版を使用し、シール剤を25mm×45mm×厚さ1mmの無アルカリガラス上に印刷した。シールパターンは、直径1mmの円状とした。そして、対となる無アルカリガラスをシールパターン上に載置し、治具で固定した。当該試験片に対して、紫外光照射装置(ウシオ電機社製)で、500mW/cm2の紫外光を照射し、シール剤を硬化させた。このとき、紫外光の照度エネルギーは3.0J/cm2とした。光によってシール剤を硬化させた試験片を、オーブンを用いて120℃、60分加熱処理し、接着強度測定用のサンプルとした。
【0116】
当該サンプルを、引張試験機(インテスコ社製)を用いて、引張速度を2mm/分とし、硬化したシール剤をガラス底面に対して平行な方向に引き剥がすことにより、平面の引張強度を測定した。ここで、接着強度は、平面引張強度の大きさに応じて以下のように評価した。狭額縁化する場合、△以上が好ましい。
〇:引張強度が15MPa以上である
△:引張強度が10MPa以上15MPa未満である
×:引張強度が10MPa未満である
【0117】
【0118】
表1に示されるように、エポキシ化合物、(メタ)アクリル・エポキシ含有化合物、(メタ)アクリル化合物、熱硬化剤、および光重合開始剤を含み、かつエポキシ化合物の含有量が22~38質量%であり、かつシール剤と液晶との混合物の残留DC値が、液晶のみの残留DC値に対して200%以下であるシール剤では、残像評価が良好であり、かつ接着強度評価も良好であった(実施例1~7)。所定の量のエポキシ化合物によって、十分な接着性が得られたと考えられる。また、液晶と混合したときの残留DC値が低いシール剤では、シール剤中の成分が液晶に溶出し難いといえる。
【0119】
一方、エポキシ化合物の量が22質量%を下回る場合には、残像評価の結果は良好であったものの、接着性テストの結果が低かった(比較例2)。一方、エポキシ化合物の量が38質量%を超える場合、接着性は良好であったものの、残像性残留DCの値が高まりやすく、残像評価が悪かった(比較例5)。
【0120】
また、エポキシ化合物の含有量が22~38質量%であったとしても、シール剤と液晶とを混合したときの残留DC値が高い場合には、いずれも残像評価が悪かった(比較例1、3、および4)。
【0121】
本出願は、2020年3月2日出願の特願2020-034974号に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のシール剤によれば、基板との接着性が高いシール部材が得られる。また、当該シール剤は、液晶を汚染し難い。したがって、当該シール剤は、各種液晶表示パネルのシール部材を作製するためのシール剤等として非常に有用である。