(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 265/04 20060101AFI20240520BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240520BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240520BHJP
C09J 4/06 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08F265/04
C08F2/44 C
C08F290/06
C09J4/06
(21)【出願番号】P 2022523146
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 KR2020014156
(87)【国際公開番号】W WO2021075901
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0128580
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0128581
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522154825
【氏名又は名称】コザ・ノベル・マテリアルズ・コリア・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・スン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】フ・ヨン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ソ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム・イク・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・キョン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・キム
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077308(JP,A)
【文献】特開2016-117883(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0082190(KR,A)
【文献】国際公開第2017/030099(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0237549(US,A1)
【文献】特開2013-082880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0248489(US,A1)
【文献】特開昭63-278918(JP,A)
【文献】特開2015-209447(JP,A)
【文献】特開2015-189938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート単位、ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位を含む重合体成分および硬化剤を含み、
打ち抜き因子が25~100gf/μmの範囲内である硬化性組成物であって、
前記重合体成分は、2個以上の単量体が重合されて形成されたオリゴマーあるいは高分子成分と単量体成分を含み、
前記直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート単位のアルキル基は、炭素数4~20のアルキル基であり、
前記ヒドロキシ基含有単量体は、下記化学式1の化合物であり、
【化1】
(化学式1で、R
1は、アルキレン基であり、R
2は、水素またはアルキル基である。)
前記窒素含有単量体は、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、1-アミノブト-3-エン-2-オン、1-(ジメチルアミノ)ブト-3-エン-2-オン、1-(ジメチルアミノ)-3-メチルブト-3-エン-2-オン、5-アミノペント-1-エン-3-オン、5-(ジメチルアミノ)ペント-1-エン-3-オン、5-(ジメチルアミノ)-2-メチルペント-1-エン-3-オン、5-アミノ-2-メチルペント-1-エン-3-オンおよび5-アミノ-2-メチルヘキサ-1-エン-3-オンからなる群から選ばれる1つ以上であり、
前記硬化剤は、二官能性アクリレートおよび二官能ウレタンアクリレートを含み、
前記ヒドロキシ基含有単量体単位および前記窒素含有単量体単位の合計重量は、重合体成分全体100重量部を基準として8重量部超過~12重量部未満の範囲で重合体成分に含まれ、
前記打ち抜き因子は、前記硬化性組成物をmetal halide lampで紫外線を3分
間照射(1J)
することにより硬化して得た硬化物を、横が4cm、縦が1cm、厚さが600μmとなるように切断して得た試験片を用いて1,000mm/minの引張速度で測定された引張力から算出された数値である、
硬化性組成物。
【請求項2】
硬化前または後に最大引張
力が250gf超過および600gf以下の範囲内にある、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化前または後に100kHzの周波数で誘電率が4.0以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位の合計重量は、アルキルアクリレート単位100重量部に対して9~13重量部で重合体成分に含まれる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
窒素含有単量体単位は、アルキルアクリレート単位100重量部に対して2~10重量部で重合体成分に含まれる、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ヒドロキシ基含有単量体単位(B)
および窒素含有単量体単位(A)の重量比(B/A)が0.1~5の範囲内にある、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
重合体成分は、アルキルメタクリレート単位をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
重合体成分は、下記化学式2の化合物の単位をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化2】
化学式2で、Rは、水素またはアルキル基であり、Qは、炭素数3~20の非芳香族環構造の1価の置換基である。
【請求項9】
重合体成分は、重合体を60~80重量%の範囲内で含
み、
前記重合体は、2以上の単量体が重合された形態の成分としての高分子又はオリゴマーである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
重合体成分は、重量平均分子量(Mw)が5万~30万の範囲内である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
硬化剤は、重合体成分100重量部に対して0.01~10重量部の範囲内で含まれる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記二官能性アクリレートは、モル質量が500g/mol以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
二官能ウレタンアクリレートは、重合体成分100重量部に対して0.01重量部~10重量部の範囲内の割合で含まれ、上記二官能ウレタンアクリレート(C)およびモル質量が500g/mol以下である二官能アクリレート(D)の重量比(C/D)が5~50の範囲内である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
下記化学式3の化合物をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化3】
化学式3で、Rは、水素またはアルキル基であり、Ar
1は、アリ
ーレン基であり、Ar
2は、アリール基である。
【請求項15】
請求項1に記載の硬化性組成物またはその硬化物を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月16日付けで提出された韓国特許出願第10-2019-0128580号および第10-2019-0128581号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
OCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Rein)は、ディスプレイに適用される素材であり、例えば、モバイルデバイスや車両用ディスプレイに頻繁に使用される。
【0004】
OCAやOCRは、ベゼルのように段差が形成された表面に適用される場合が多い。したがって、段差付き表面に適用されたときにも、段差による浮き上がりや遅延性気泡(delayed bubble)が発生することを防止できる段差吸収性ないし段差埋め込み性がOCAやOCRに要求される。
【0005】
ところが、段差吸収性は、打ち抜き性と相反する物性である。OCAやOCRは、適用される前に、所要のサイズに切断されることになるが、この過程で、効率的な切断のためには、優れた打ち抜き性が必要である。
【0006】
通常、OCAやOCR内にヒドロキシ基などの極性官能基を多く含ませると、凝集力の上昇によって打ち抜き性が上昇するが、この場合には、段差吸収性と段差埋め込み性が劣ることになる。
【0007】
また、極性官能基は、OCAやOCRで発生しうる白濁現象を防止する役割をすることができるが、段差吸収性および段差埋め込み性を考慮して極性官能基の割合を低減すると、白濁などが発生して、OCRやOCAの光学特性が低下することができる。
【0008】
また、タッチ感度が要求される適用用途に応じてOCAやOCRに低い誘電率が要求されることがあるが、誘電率は、通常、極性官能基の量と略比例して増加する。
【0009】
したがって、段差吸収性、段差埋め込み性および打ち抜き性が同時に優れ、白濁が防止される低誘電率のOCAやOCRを形成することは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、いわゆるOCAやOCRに用いられる硬化性組成物を提供する。本出願は、段差吸収性と段差埋め込み性および打ち抜き性に優れ、白濁が防止され、また、低誘電率を具現できる硬化性組成物およびその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において言及する物性のうちで測定温度がその結果に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、当該物性は、常温で測定した物性である。用語「常温」は、加温および減温されない自然そのままの温度であり、通常、約10℃~30℃の範囲内の任意の温度または約23℃または約25℃程度の温度である。また、本明細書において、特に別途言及しない限り、温度の単位は、℃である。
【0012】
本明細書において言及する物性のうち測定圧力がその結果に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、当該物性は、常圧で測定した物性である。用語「常圧」は、加圧または減圧されない自然そのままの圧力であり、通常、約1気圧程度を常圧と指す。
【0013】
本出願は、硬化性組成物に関する。上記硬化性組成物は、一例示において、粘着剤組成物であってもよい。用語「粘着剤組成物」は、硬化前または後に粘着剤を形成できる組成物を意味する。本出願の粘着剤組成物は、一例示において、OCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)に用いられる。
【0014】
上記硬化性組成物または粘着剤組成物は、例えば、半硬化タイプの組成物であってもよい。半硬化タイプの硬化性組成物は、1次硬化後にさらなる硬化(2次硬化またはポスト硬化とも称される)しうる組成物を意味し得る。このような半硬化タイプの組成物は、一例示において、1次硬化した状態で段差付き表面に適用された後に、ポスト硬化を通じて完全硬化しうる。
【0015】
本出願の硬化性組成物は、無溶剤タイプ硬化性組成物であってもよい。用語「無溶剤タイプ硬化性組成物」は、溶剤(水性溶剤および有機溶剤)を実質的に含まない組成物である。したがって、上記硬化性組成物内で水性および有機溶剤の含有量は、1重量%以下、0.5重量%以下または0.1重量%以下であるか、実質的に0重量%であってもよい。
【0016】
上記硬化性組成物は、少なくとも重合体成分と硬化剤を含んでもよい。
【0017】
硬化性組成物に含まれる重合体成分は、シロップ成分であってもよい。上記シロップ成分は、2個以上の単量体が重合されて形成されたオリゴマーあるいは高分子成分と単量体成分を含んでもよい。このようなシロップ成分は、一例示において、いわゆる部分重合により形成したり、完全重合または部分重合された重合物にさらに単量体を配合して製造することができる。すなわち、目的とする組成による単量体組成を部分重合させると、一部の単量体は重合されて上記オリゴマーあるいは高分子が形成され、残りの単量体は残存して上記シロップ成分が形成されることができる。他の例示において、上記部分重合物または完全重合物にさらに単量体成分を配合しても、シロップ型重合体成分が形成されることができる。したがって、本明細書において下記に記述する単量体単位の用語は、上記重合体成分内では、上記オリゴマーまたは高分子を形成した状態で存在する単量体あるいは重合されずにシロップ成分内に含まれている単量体を意味し得る。
【0018】
上記硬化性組成物は、硬化前または後に約25~100gf/μmの範囲内の打ち抜き因子(F)を示すことができる。
【0019】
本出願において打ち抜き因子(F)は、単位がgf/μmであり、下記一般式1によって定められる物理量である。
【0020】
[一般式1]
F=10×(A/S)
【0021】
一般式1で、Fは、硬化性組成物またはその硬化物(半硬化タイプである場合に1次硬化物またはポスト硬化物)の打ち抜き因子であり、Aは、上記硬化性組成物またはその硬化物(半硬化タイプである場合に1次硬化物またはポスト硬化物)の靱性値(toughness)(単位:gf・mm)であり、Sは、上記靱性値を測定するために行う引張試験における引張方向に垂直な上記硬化性組成物またはその硬化物(半硬化タイプである場合に1次硬化物またはポスト硬化物)の表面の面積であり、単位は、μm・mmである。
【0022】
上記A値(靱性値)は、下記の方式で測定する。まず、測定対象(粘着剤組成物またはその硬化物(半硬化タイプの場合、1次硬化物または2次硬化物)を切断して、フィルム形態の試験片を製造する。ここで、フィルム形態の試験片は、横のサイズが4cm程度であり、縦のサイズが1cm程度である所定厚さを有する形態に製造する。
【0023】
上記のような試験片の形態を
図3に例示的に示されている。次いで、上記試験片を引張試験機(ex.TA装備(Texture analyser plus))に装着し、一定速度で引っ張る。ここで、上記引張の方向は、上記試験片の横方向と平行にする。例えば、上記試験片の両末端を1cmずつ上記引張試験機に固定し、一定速度で試験片を引っ張ることができる。ここで、引張は、約1,000mm/minの引張速度で行う。
図2に例示的に示されたように、上記引張過程で測定した引張
力(gf)をy軸とし、引張距離(mm)をx軸とする引張曲線を作成し、引張距離が200mmでの引張曲線の積分値(グラフの面積)を上記一般式1のA値である靭性(toughness)として指定する。
【0024】
一方、一般式1で、Sは、上記Aを求めるための引張試験において引張方向にある試験片の断面積であり、
図3でSで表示されている。ここで、上記Sの単位は、μm・mmである。すなわち、上記Sは、引張方向の試験片の横方向である場合に、試験片の縦の長さ(1cm)と厚さを乗算して求めることができるが、ここで、縦の長さは、mm単位の値を使用し、厚さは、μmの単位の値を使用する。
【0025】
硬化性組成物の硬化前または硬化後の打ち抜き因子は、他の例示において、約25gf/μm以上、26gf/μm以上、約27gf/μm以上、約29gf/μm以上、約31gf/μm以上、約33gf/μm以上または約35gf/μm以上であるか、約98gf/μm以下、約96gf/μm以下、約94gf/μm以下、約92gf/μm以下、約90gf/μm以下、約88gf/μm以下、約86gf/μm以下、約84gf/μm以下、約82gf/μm以下、約80gf/μm以下、約78gf/μm以下、約76gf/μm以下、約74gf/μm以下、約72gf/μm以下、約70gf/μm以下、約68gf/μm以下、65gf/μm以下、60gf/μm以下、55gf/μm以下、50gf/μm以下、約45gf/μm以下、約43gf/μm以下、約41gf/μm以下、約39gf/μm以下または約37gf/μm以下程度であってもよい。
【0026】
上記のような打ち抜き因子を有するように硬化性組成物を作成することによって、目的とする段差埋め込み性ないし段差吸収性を有し、かつ、打ち抜き性に優れ、白濁が防止され、また、低誘電率を具現できる。
【0027】
上記のような打ち抜き因子を示す硬化性組成物に含まれる重合体成分は、単量体単位として、直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート単位、ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位を含んでもよい。
【0028】
前述したとおり、上記単量体単位は、重合体成分内では、オリゴマーまたは高分子を形成した状態で存在する単量体あるいは重合されずにシロップ成分内に含まれている単量体を意味し得る。
【0029】
上記重合体成分に含まれる直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート単位のアルキル基は、炭素数4~20のアルキル基であってもよい。上記アルキル基の炭素数は、他の例示において、16以下、12以下または8以下であってもよく、置換または非置換状態であってもよい。
【0030】
上記アルキルアクリレートとしては、例えばn-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレートおよびテトラデシルアクリレートからなる群から選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
このようなアルキルアクリレートは、重合体成分内に約50~95重量%の割合で含まれ得る。上記割合は、他の例示において、52重量%以上、54重量%以上、56重量%以上、58重量%以上、60重量%以上、62重量%以上、64重量%以上、66重量%以上、68重量%以上、70重量%以上、72重量%以上、74重量%以上、76重量%以上、78重量%以上または80重量%以上であるか、93重量%以下、91重量%以下、89重量%以下、87重量%以下、85重量%以下、83重量%以下または81重量%以下程度であってもよい。
【0032】
重合体成分は、上記アルキルアクリレート単位とともにヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位を含む。
【0033】
本出願では、上記2種の単量体単位を適用し、必要に応じてその割合を制御することによって、適切な打ち抜き性と段差埋め込み性または段差吸収性が同時に達成されながらも、極性単量体による誘電率の上昇または白濁の発生などを効果的に防止することができる。
【0034】
例えば、上記ヒドロキシ基含有単量体単位は、硬化性組成物の打ち抜き性およびハンドリング性を適正レベルに維持しつつ、高温および/または高湿環境で白濁を抑制し、誘電率が過度に上昇しないように含まれ得る。
【0035】
例えば、ヒドロキシ基含有単量体単位の割合が減少すると、段差吸収性ないし段差埋め込み性と低誘電率の観点から有利であるが、打ち抜き性が低下し、白濁防止能が劣ることになる傾向がある。したがって、上記ヒドロキシ基含有単量体単位の割合を適正レベルに維持しつつ、足りない部分を窒素含有単量体単位で補完することによって、目的とするすべての物性が満足される硬化性組成物を提供することができる。
【0036】
これによって、一例示において、上記ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位の合計重量は、上記アルキルアクリレート単位100重量部に対して8~20重量部がされる割合に制御できる。上記割合は、他の例示において、9重量部以上、10重量部以上、11重量部以上または12重量部以上であるか、19重量部以下、18重量部以下、17重量部以下、16重量部以下、15重量部以下、14重量部以下または13重量部以下程度であってもよい。
【0037】
また、上記重合体成分内で上記窒素含有単量体単位は、上記アルキルアクリレート単位100重量部に対して2~10重量部の割合で存在することもできる。上記割合は、他の例示において、3重量部以上、4重量部以上、5重量部以上、6重量部以上または7重量部以上程度であるか、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下または6重量部以下程度であってもよい。
【0038】
また、重合体成分内で上記窒素含有単量体単位(A)およびヒドロキシ基含有単量体単位(B)の重量比(B/A)は、0.1~5の範囲内にありえる。上記割合(B/A)は、他の例示において、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上、1重量部以上、1.1重量部以上、1.2重量部以上、1.3重量部以上、1.4重量部以上または1.5重量部以上程度であるか、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1.9重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.6重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、1.2重量部以下、1.1重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下または0.7重量部以下程度であってもよい。
【0039】
上記のような割合下で目的とする物性を効果的に達成することができる。
【0040】
他の例示において、重合体成分内で上記ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位は、重合体成分全体100重量部を基準として8重量部超過~12重量部未満の範囲で含まれる。また、上記窒素含有単量体単位は、重合体成分100重量部を基準として2重量部超過~6重量部以下の範囲で含む。
【0041】
上記のような範囲内で硬化性組成物の段差吸収性ないし段差埋め込み性を確保しつつ、適切な引張力を維持し、高温/高湿環境で白濁が防止される硬化性組成物を提供することができる。
【0042】
一例示において、上記ヒドロキシ基含有単量体単位のヒドロキシ基含有単量体としては、下記化学式1の化合物が使用できる。
【0043】
【0044】
化学式1で、R1は、アルキレン基であり、R2は、水素またはアルキル基である。
【0045】
化学式1で、アルキレン基またはアルキル基は、一例示において、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキレン基またはアルキル基であってもよく、このアルキレン基またはアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状であってもよく、これは、任意に1つ以上の置換基によって置換された状態であるか、または非置換状態であってもよい。
【0046】
一例示において、化学式1でR2は、水素またはメチル基であってもよい。
【0047】
化学式1の化合物としては、例えばヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートまたは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
ヒドロキシ基含有単量体として上記化学式1の化合物が用いられる場合、優れた引張力、高温/高湿環境での白濁抑制効果減少の防止、低誘電率および優れた段差吸収性を同時に確保するのにさらに有利になり得る。
【0049】
窒素含有単量体単位の窒素含有単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、1-アミノブト-3-エン-2-オン、1-(ジメチルアミノ)ブト-3-エン-2-オン、1-(ジメチルアミノ)-3-メチルブト-3-エン-2-オン、5-アミノペント-1-エン-3-オン、5-(ジメチルアミノ)ペント-1-エン-3-オン、5-(ジメチルアミノ)-2-メチルペント-1-エン-3-オン、5-アミノ-2-メチルペント-1-エン-3-オンおよび5-アミノ-2-メチルヘキサ-1-エン-3-オンからなる群から選ばれる1つ以上が使用できるが、これらに限定されるものではない。上記窒素含有単量体の種類を規定するにあたって使用したアルキル基は、具体的に、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基であってもよく、このアルキレン基またはアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状であってもよく、これは、任意に1つ以上の置換基により置換された状態であるか、または非置換状態であってもよい。
【0050】
適切な効果の確保の観点から、アクリルアミドが用いられることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0051】
重合体成分は、さらなる単量体単位として、アルキルメタクリレート単位を含んでもよいし、一例示において、直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート単位をさらに含んでもよい。
【0052】
上記直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート単位のアルキル基は、炭素数4~20のアルキル基であってもよい。上記アルキル基の炭素数は、他の例示において、16以下、12以下または8以下であってもよく、置換または非置換状態であってもよい。
【0053】
上記アルキルメタクリレートとしては、例えば、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレートおよびテトラデシルメタクリレートからなる群から選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
このようなアルキルメタクリレート単位は、重合体成分内で上記アルキルアクリレート単位100重量部に対して約1~20重量部の割合で含まれ得る。上記割合は、他の例示において、3重量部以上、5重量部以上、7重量部以上、7.5重量部以上、8重量部以上または8.5重量部以上程度であるか、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、10重量部以下または9重量部以下程度であってもよい。
【0055】
重合体成分は、さらなる単量体単位として、下記化学式2の化合物の単位を単量体単位で含んでもよい。
【0056】
【0057】
化学式2で、Rは、水素またはアルキル基であり、Qは、炭素数3~20の非芳香族環構造の1価の置換基である。
【0058】
化学式2で、アルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖、分岐鎖または環状の置換または非置換のアルキル基が例示できる。
【0059】
一方、上記Qは、炭素数3~20の非芳香族環構造の1価の置換基であり、例えば、脂肪族飽和または不飽和炭化水素環式化合物に由来する1価の置換基であってもよい。上記環式化合物は、単環式であるか、縮合型またはスピロ型などのような多環式構造を有していてもよい。上記環構造の炭素数は、他の例示において、6以上または8以上であるか、18以下、16以下、14以下または12以下であってもよい。このような置換基としては、例えば、イソボルニル基(isobornyl group)、シクロヘキシル基、ノルボルナニル基(norbornanyl group)、ノルボルネニル基(norbornenyl group)、ジシクロペンタジエニル基、エチニルシクロヘキサン基、エチニルシクロヘキセン基またはエチニルデカヒドロナフタレン基などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
化学式2の化合物の単位は、直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート単位100重量部に対して0.1~10重量部で含まれ得る。この割合は、他の例示において、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上または3.5重量部以上であるか、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下または4重量部以下程度であってもよい。
【0061】
重合体成分が上記単位をさらに含むことによって、目的とする物性の硬化性組成物をより安定的に提供することができる。
【0062】
1つの例として、上記重合体成分は、重量平均分子量(Mw)が約5万~12万の範囲内であってもよい。他の例として、重合体成分は、重量平均分子量(Mw)が約6万以上、7万以上または約8万以上であってもよく、約11.5万以下、11.0万以下または約10.5万以下であってもよい。
【0063】
上記重量平均分子量(g/mol)は、GPC(gel permeation chromatiogryaphy)により本実施例に記載された方式で測定されるポリスチレンに対する換算数値を意味し得、特に別途規定しない限り、任意の重合体の分子量は、その重合体の重量平均分子量を意味し得る。
【0064】
重合体成分の重量平均分子量を上記範囲内に制御することによって、適正な架橋効果、引張性能および段差吸収性などを効果的に確保することができる。
【0065】
上記重合体成分は、重合体(すなわち、2以上の単量体が重合された形態の成分として高分子やオリゴマーなど)を60~80重量%の範囲内の割合で含んでもよい。
【0066】
硬化性組成物は、上記重合体成分と共に硬化剤を含んでもよい。目的とする架橋構造の確保のために、上記硬化剤としては、2種以上の硬化剤を適用できる。
【0067】
例えば、硬化剤としては、モル質量が500g/mol以下である多官能性アクリレート、多官能イソシアネート化合物および多官能ウレタンアクリレートからなる群から選ばれる2種以上を適用できる。
【0068】
上記で用語「多官能性アクリレート」は、(メタ)アクリロイル基および/または(メタ)アクリロイルオキシ基などのアクリレート官能基を2個以上含む化合物を意味する。ここで、上記アクリレート官能基の数は、例えば、2個~10個、2個~9個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、2個~5個、2個~4個または2個~3個の範囲内の数で存在していてもよい。適切な架橋構造のために、上記多官能性アクリレートとしては、二官能性アクリレートを適用してもよい。
【0069】
上記アクリレート化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの二官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレートなどの三官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの五官能型;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの六官能型などからなる群から選ばれる1種または2種以上が使用できる。
【0070】
一例示において、上記多官能アクリレートとしては、分子量が約500g/mol以下である成分を適用できる。上記分子量は、他の例示において、約450g/mol以下、約400g/mol以下、約350g/mol以下、約300g/mol以下または約250g/mol以下であるか、約50g/mol以上、約55g/mol以上、約60g/mol以上、約65g/mol以上、約70g/mol以上、約75g/mol以上、約80g/mol以上、約85g/mol以上、約90g/mol以上、約95g/mol以上、約100g/mol以上、約110g/mol以上、約120g/mol以上、約130g/mol以上、約140g/mol以上、約150g/mol以上、約160g/mol以上、約170g/mol以上、約180g/mol以上、約190g/mol以上または約200g/mol以上程度であってもよい。
【0071】
本出願では、上記分子量を有する多官能性アクリレートとして脂肪族非環式多官能性アクリレートを適用できるが、これに限定されるものではない。
【0072】
硬化剤に適用可能な多官能イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート官能基を含む化合物であり、その例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはナフタレンジイソシアネートなどのようなジイソシアネートや上記ジイソシアネートのうち1つまたはそれ以上の種類とポリオール(ex.トリメチロールプロパン)との反応物などが使用できる。
【0073】
上記ウレタンアクリレートとしては、ポリオール、多官能イソシアネートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの反応物または多官能イソシアネートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの反応物を適用できる。したがって、上記ウレタンアクリレートは、ポリオール単位、多官能イソシアネート単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単位を含むか、あるいは多官能イソシアネート単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単位を含んでもよい。
【0074】
上記でポリオールとしては、ジオールを適用でき、ジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエン骨格を有するジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオールおよびポリカーボネート骨格を有するジオールから選ばれるいずれか1つまたは2つ以上を適用できる。上記低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールなどが例示でき、ポリエン骨格を有するジオールとしては、ポリブタジエン骨格を有するジオール、ポリイソプレン骨格を有するジオール、水素添加型ポリブタジエン骨格を有するジオールおよび/または水素添加型ポリイソプレン骨格を有するジオールなどが例示でき、ポリエステル骨格を有するジオールとしては、上記低分子量ジオールまたはポリカプロラクトンジオールなどのジオール成分とジカルボン酸またはその無水物などの酸成分とのエステル化反応物などが例示できる。
【0075】
上記でジカルボン酸またはその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸および/またはテレフタル酸などおよびこれらの無水物などが例示できる。また、ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールなどが例示でき、ポリカーボネートジオールとしては、上記低分子量ジオールまたは/およびビスフェノールAなどのビスフェノールとエチレンカーボネートおよび炭酸ジブチルエステルなどの炭酸ジアルキルエステルの反応物などが例示できる。
【0076】
上記ポリエン骨格を有するジオールとしては、水素添加型ポリジエン骨格を有するジオールを適用できるが、その例としては、イソプレン、1,3-ブタジエンおよび1,3-ペンタジエンなどのモノマーの重合体末端にジオールを有する化合物およびこれらモノマーの重合体の末端にジオールを有する化合物が挙げられる。
【0077】
多官能イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リシンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)および/またはジイソシアネートジメチルシクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが使用できる。また、3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体およびイソホロンジイソシアネート三量体などを適用できる。
【0078】
上記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、および/またはトリメチロールプロパンのモノまたはジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジまたはトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ、ジまたはトリ(メタ)アクリレートおよび/またはジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラまたはペンタ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基および2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などを適用できる。
【0079】
上記のような成分を適用して、目的とするウレタンアクリレートを製造する方式は公知となっている。例えば、公知の方式によってポリオールと多官能イソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方式や、ポリオール、多官能イソシアネートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させたり、あるいは多官能イソシアネートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させる方式で上記ウレタンアクリレートを製造することができる。
【0080】
上記ウレタンアクリレートとしては、一例として、数平均分子量(Mn)が2,000~50,000g/molの範囲内であるものが使用でき、二官能ウレタンアクリレート、すなわち(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基から選ばれる官能基を2個含むものが使用できる。上記数平均分子量は、GPC(gel permeation Chromatograph)方式によって測定された標準ポリスチレンの換算数値である。
【0081】
一例示において、上記ウレタンアクリレートとしては、二官能脂肪族多官能ウレタンアクリレートが使用でき、例えば、SUO 1020(SHIN-A T&C社)、SUO 1200(SHIN-A T&C社)、SUO 4120(SHIN-A T&C社)、SUO M2000(SHIN-A T&C社)またはSUO 2150(SHIN-A T&C社)などのような市販製品が使用できる。
【0082】
本出願では、上記のような硬化剤のうち適正な2種の硬化剤を選択して使用することができる。一例示において、目的とする化学的架橋および物理的もつれを適切に達成するために、硬化剤としては、イソシアネート化合物を適用しなくてもよい。したがって、一例示において、本出願の硬化性組成物には、イソシアネート基を有する化合物が存在しなくてもよい。イソシアネート基を有する化合物であるから、上記ウレタンアクリレートの製造に適用されて、イソシアネート基がすでに消失した場合は除外される。
【0083】
上記硬化剤は、上記重合体成分100重量部に対して0.01~10重量部で使用できる。上記割合は、他の例示において、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.15重量部以上または0.2重量部以上程度であるか、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下または0.3重量部以下程度であってもよい。
【0084】
2種以上の硬化剤が適用される場合に、適用された各硬化剤の割合は、目的に応じて調節することができる。
【0085】
例えば、硬化剤として、上記モル質量が500g/mol以下である多官能性アクリレートおよび多官能ウレタンアクリレートを使用する場合に、上記多官能ウレタンアクリレートは、上記重合体成分100重量部に対して0.01重量部~10重量部の範囲内の割合で含まれ、上記多官能ウレタンアクリレート(C)およびモル質量が500g/mol以下である多官能アクリレート(D)の重量比(C/D)が5~50の範囲内であってもよい。
【0086】
他の例示において、上記多官能ウレタンアクリレートは、上記重合体成分100重量部に対して0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.15重量部以上または0.2重量部以上程度であるか、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下または0.3重量部以下程度であってもよい。
【0087】
また、上記重量比(C/D)は、他の例示において、10以上、15以上または18以上であるか、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下または22以下程度であってもよい。
【0088】
これによって目的とする架橋構造を確保することができる。
【0089】
硬化性組成物は、上記成分の他にも所要の成分をさらに含んでもよい。例えば、硬化性組成物は、ラジカル開始剤、例えば光ラジカル開始剤をさらに含んでもよい。
【0090】
ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]または2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
ラジカル開始剤は、例えば、硬化性組成物内で適切な割合で含まれ得、例えば、上記重合体成分100重量部に対して略0.1~3重量部の割合で含まれ得る。
【0092】
硬化性組成物は、また、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤は、粘着剤の密着性および接着安定性を向上させて、耐熱性および耐湿性を改善し、また、厳しい条件で長期間放置された場合にも、接着信頼性を向上させる作用をすることができる。シランカップリング剤としては、例えば、ガンマ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アセトアセテートプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アセトアセテートプロピルトリエトキシシラン、ベータ-シアノアセチルトリメトキシシラン、ベータ-シアノアセチルトリエトキシシラン、アセトキシアセトトリメトキシシランなどが使用でき、上記のうち一種または二種以上の混合が使用できる。アセトアセテート基またはベータ-シアノアセチル基を有するシラン系カップリング剤を使用することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0093】
シランカップリング剤は、適切な割合で硬化性組成物に含まれ得、例えば、上記重合体成分100重量部に対して約0.01重量部~約5重量部程度の割合で含まれ得る。
【0094】
硬化性組成物は、また、必要な場合に、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄系酸化防止剤、フェニル酢酸系列の酸化防止剤またはリン系の酸化防止剤などを適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
このような酸化防止剤は、硬化性組成物内で上記重合体成分100重量部に対して約0.01重量部~約5重量部または約0.01重量部~約1重量部で含んでもよい。
【0096】
硬化性組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤としては、通常イオン性化合物が適用される。イオン性化合物としては、例えば、金属塩または有機塩が使用できる。
【0097】
このような帯電防止剤は、硬化性組成物内で上記重合体成分100重量部に対して約0.01~10重量部で含まれ得、目的とする導電性などを考慮して適切な割合を適用できる。
【0098】
1つの例として、上記硬化性組成物は、光開始剤を含んでもよい。上記光開始剤は、光照射などを通して硬化性組成物の重合反応を開始させることができるものであれば、どちらでも使用可能である。例えば、アルファ-ヒドロキシケトン系化合物(ex.IRGACURE 184、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、DAROCUR 1173;Ciba Specialty Chemicals社製);フェニルグリオキシレート(phenylglyoxylate)系化合物(ex.IRGACURE 754、DAROCUR MBF;Ciba Specialty Chemicals社製);ベンジルジメチルケタル系化合物(ex.IRGACURE 651;Ciba Specialty Chemicals社製);a-アミノケトン系化合物(ex.IRGACURE 369、IRGACURE 907、IRGACURE 1300;Ciba Specialty Chemicals社製);モノアシルホスフィン系化合物(MAPO)(ex.DAROCUR TPO;Ciba Specialty Chemicals社製);ビスアシルホスフィン系化合物(BAPO)(ex.IRGACURE 819、IRGACURE 819DW;Ciba Specialty Chemicals社製);ホスフィンオキシド系化合物(ex.IRGACURE 2100;Ciba Specialty Chemicals社製);メタロセン系化合物(ex.IRGACURE 784;Ciba Specialty Chemicals社製);ヨードニウム塩(iodonium salt)(ex.IRGACURE 250;Ciba Specialty Chemicals社製);および上記のうち1つ以上の混合物(ex.DAROCUR 4265、IRGACURE 2022、IRGACURE 1300、IRGACURE 2005、IRGACURE 2010、IRGACURE 2020;Ciba Specialty Chemicals社製)などが挙げられ、上記のうち一種または二種以上を使用できるが、これらに限定されるものではない。本出願の具体例において、粘着剤組成物は、上記光開始剤として400nm以上の吸収波長帯を有する光開始剤を含んでもよい。本出願は、上記光開始剤の吸収波長帯を調節することによって、優れた硬化特性を具現することができる。
【0099】
上記光開始剤は、重合体成分100重量部に対して2重量部以下で含まれ得る。他の例として、約1重量部以下または約0.5重量部以下であってもよく、約0.001重量部以上、約0.005重量部以上または約0.01重量部以上で含まれ得る。光開始剤が上記範囲内で硬化性組成物に含まれる場合、硬化効率が増加することができる。
【0100】
1つの例として、硬化性組成物は、前述した400nm以上の波長帯を吸収する光開始剤(以下、「第1光開始剤」とも呼ぶ)の他に、さらに260nm~330nm範囲の波長領域を吸収するポスト硬化光開始剤(以下、「第2光開始剤」とも呼ぶ)を含んでもよい。
【0101】
例えば、上記第2光開始剤としては、下記化学式3の化合物が使用できる。このような化合物は、単量体単位として重合体成分内に含まれていてもよく、別途の成分として硬化性組成物に含まれることもできる。
【0102】
【0103】
化学式3で、Rは、水素またはアルキル基であり、Ar1は、アリーレン基であり、Ar2は、アリール基である。
【0104】
化学式3で、アルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖、分岐鎖または環状の置換または非置換のアルキル基が例示できる。
【0105】
化学式3で、アリーレン基またはアリール基は、炭素数6~30、炭素数6~26、炭素数6~22、炭素数6~18、炭素数6~14、炭素数6~12のアリーレン基またはアリール基であるか、フェニレン基またはフェニル基であってもよく、このようなアリーレン基またはアリール基は、置換状態または非置換状態であってもよい。
【0106】
上記化学式3の化合物の例としては、ベンゾイルフェニルメタクリレート(4-Benzoylphenyl methacrylate)などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0107】
上記第2光開始剤は、重合体成分100重量部に対して0.001~1重量部の範囲内で含まれ得る。
【0108】
上記割合下で適切なポスト硬化を達成しつつ、目的とする物性を有する硬化性組成物を提供することができる。
【0109】
1つの例として、上記硬化性組成物またはその硬化物(半硬化タイプの場合、1次硬化物または2次硬化物(ポスト硬化物))は、最大引張力が250超過gf~600gf以下の範囲内であってもよい。他の例として、約260gf以上または約270gf以上であってもよく、約600gf以下、580gf以下、560gf以下または約540gf以下であってもよい。
【0110】
上記最大引張力は、引張試験過程で試験片が破断されるときの引張力を意味し、ここで、上記引張試験を行う方式は、上記一般式1のA値を求める場合と同様である。
【0111】
具体的に、まず、A値(靱性値)の測定と同様に、測定対象(粘着剤組成物またはその硬化物(半硬化タイプの場合、1次硬化物または2次硬化物)を切断して、フィルム形態の試験片を製造する。ここで、のフィルム形態の試験片は、横のサイズが4cm程度、縦のサイズが1cm程度、厚さが約600μm程度になるようにする。
【0112】
次いで、上記試験片を引張試験機(ex.TA装備(Texture analyser plus))に装着し、一定速度で引っ張る。ここで、上記引張の方向は、上記試験片の横方向と平行にする。例えば、上記試験片の両末端を1cmずつ上記引張試験機に固定し、一定速度で試験片を引っ張ることができる。ここで、引張は、約1,000mm/minの引張速度で行う。
【0113】
上記のような方式で約1,000mm/min程度の速度で引っ張りながら、試験片が破断されるときの引張力を最大引張力とすることができる。
【0114】
上記のような最大引張力を有するようにすることによって、適切な打ち抜き性、ハンドリング性および段差吸収性を確保することができる。
【0115】
1つの例として、上記硬化性組成物またはその硬化物(半硬化タイプの場合、1次硬化物または2次硬化物(ポスト硬化物))は、100kHzの周波数で誘電率が4.0以下であってもよい。他の例として、約3.9以下、約3.8以下または約3.7以下であってもよく、約2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上または約2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上または3.5以上程度であってもよい。
【0116】
本出願による粘着剤組成物は、前述した一般式1を満たし、ヒドロキシ基含有単量体単位および窒素含有単量体単位を所定の含有量割合で重合体成分に含まれ、これを含む粘着剤組成物から形成された硬化物は、100kHzの周波数で4.0以下の誘電率を確保するのに有利である。したがって、タッチパネルのような光学部材に適用される場合、優れたタッチ感度を付与することができる。
【0117】
本出願は、また、粘着フィルムに関する。
図1は、本出願の粘着フィルムを例示的に示す模式図である。
図1に示されたように、本出願による粘着フィルムは、基材20と、上記基材上に形成された粘着剤組成物の硬化物10と、を含んでもよい。上記硬化物は、1次硬化物または2次硬化物であってもよい。上記粘着剤組成物としては、前述した粘着剤組成物を用いることができる。したがって、上記粘着剤組成物から形成された硬化物を含む粘着フィルムは、優れた引張
力、高温/高湿環境での白濁抑制効果減少の防止、低誘電率および優れた段差吸収性を有することができる。
【0118】
1つの例として、上記基材は、特に限定されず、粘着剤組成物を適用できるものであれば、公知の基材を用いることができる。例えば、離型処理されたPETフィルムを用いることができる。
【0119】
本出願は、また、上記硬化性組成物またはその硬化物(粘着剤、半硬化タイプの場合、1次硬化物または2次硬化物)を含むディスプレイ装置に関する。上記ディスプレイ装置は、一例示において、車両用ディスプレイ装置であってもよい。上記硬化性組成物またはその硬化物(粘着剤)は、上記ディスプレイ装置においてOCAまたはOCRに用いられる。上記ディスプレイ装置の他の構成や上記OCAまたはOCRの適用方式は、特に限定されず、公知の方式で適用することができる。
【発明の効果】
【0120】
本出願は、段差吸収性と段差埋め込み性および打ち抜き性に優れ、白濁が防止され、また、低誘電率を具現できる硬化性組成物およびその用途を提供することができる。
【0121】
このような本出願による硬化性組成物は、段差付き基板などに適用される場合にも、段差部位に浮き上がりや遅延性気泡(delayed bubble)が発生することを防止することができ、同時に高温/高湿の環境で白濁抑制効果が維持され、誘電率が低く、打ち抜き性およびハンドリング性を改善することができる。また、上記硬化性組成物から形成された硬化物を含む粘着フィルムは、優れた引張力を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【
図1】本出願の粘着フィルムを例示的に示す模式図である。
【
図2】引張距離(distance)に対する引張
力(force)をグラフで示す図である。
【
図3】粘着剤組成物の硬化物を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
以下、実施例に基づいて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0124】
1.打ち抜き因子
粘着剤組成物の打ち抜き因子(F)(単位:gf/μm)値は、下記一般式1によって求める。
【0125】
[一般式1]
F=10×(A/S)
【0126】
一般式1で、Fは、打ち抜き因子(単位:gf/μm)である。
【0127】
一般式1で、Aは、上記粘着剤組成物の硬化物(粘着剤)の靱性値(toughness、単位:gf・mm)であり、これは、下記の方式で測定する。
【0128】
まず、上記粘着剤をフィルム形態に切断して、試験片を製造する。ここで、上記フィルム形態の試験片は、粘着剤を横が4cmであり、縦が1cmである所定厚さのフィルム形態に切断して製造する。上記フィルム形態の試験片を引張試験機(TA装備(Texture analyzer plus))に横方向が引張方向になるように固定し、ここで、試験片の横方向の両端1cmずつを固定する。その後、上記試験片を1,000mm/min程度の速度で引っ張りながら、引張距離が200mmになるまで引っ張る。上記引張過程での引張力(gf)をy軸とし、引張距離(mm)をx軸として作成したグラフを積分して、上記靱性値を求めることができる。
【0129】
一般式1で、Sは、上記試験片の引っ張られる方向の面(側面)の面積であり、単位は、μm・mmである。すなわち、上記試験片の側面の厚さは、単位μmの値を適用し、縦方向の長さ(1cm)は、mm単位に換算して、上記Sを求めることができる。
【0130】
2.分子量の評価
重合体成分の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて以下の条件で測定し、検量線の製作には、Agilent systemの標準ポリスチレンを用いて測定結果を換算した。
【0131】
<測定条件>
測定機:Agilent GPC(Agilent 1200 series、U.S.)
カラム:PLGel-M、PLGel-L直列連結
カラム温度:35℃
溶離液:THF(Tetrahydrofuran)
流速:1.0mL/min
濃度:~1mg/mL(100μL injection)
【0132】
3.白濁の評価
厚さ1.1mmのガラス基板と厚さ0.55mmのガラス基板を実施例または比較例の粘着剤を用いて付着する。
【0133】
次いで、上記積層体を40℃および4bar条件のオートクレーブ(auto clave)に10分間放置した後に、metal halide lampを利用して3Jの光量で紫外線を上記粘着剤に照射してポスト硬化した。
【0134】
その後、85℃および85%の相対湿度条件でガラスに付着した上記粘着剤を200時間保管し、常温で1時間放置した後、白い斑点(または白濁)が観察されるか否かを観察した。下記表1は、白濁性能評価基準である。
【0135】
【0136】
4.段差吸収の評価
実施例または比較例の粘着フィルムを横および縦がそれぞれ8.0cmおよび14.0cmになるように切断して、試験片を製作した。その後、高さ15μmの印刷段差を有するベゼル部および画面部を有するガラス基板上に上記試験片から一方の側面の離型フィルムを除去し、1.5barの圧力で1次ラミネーションし、試験片の他の側面の離型フィルムを除去し、その上に厚さ0.55mmのガラス基板を積層し、1.5barの圧力で2次ラミネーションした。
【0137】
次いで、40℃および4bar条件のオートクレーブ(auto clave)に10分間放置した後、ベゼル部の4個の頂点の部分で段差を十分に克服しなくて生成される気泡の個数およびベゼル部のエッジ部分に存在する気泡の個数を確認して、段差吸収性を評価した。下記表2は、段差吸収の評価基準である。
【0138】
【0139】
5.引張の評価
実施例または比較例で製造された粘着剤層を6枚積層して、厚さが600μm程度になるようにした後、横が4.0cm程度、縦が1.0cm程度になるように切断して、試験片を製作した。その後、TA装備(Texture analyser plus)に試験片を横方向が引張方向になるように試験片の両端を1cmずつ固定し、約1,000mm/minの速度で450mmまで引っ張って、引張試験を行った。その後、引張力を評価して、最大引張力(単位:gf)によって下記表3に示された基準に基づいて引張性能を評価した。
【0140】
【0141】
上記評価基準において、最大引張力は、試験片が破断されるときの引張力であり、単位は、gfである。
【0142】
6.誘電率の評価
実施例または比較例で製造された粘着フィルムを横および縦がそれぞれ2mmおよび5mmになるように切断し、metal halide lampを利用して3Jの光量で粘着剤層に紫外線を照射してポスト硬化した。その後、誘電率測定装置(アジレント社、E4980A LCR meter+16451B dielectric test fixture装置)を利用して誘電率を測定した。
【0143】
実施例1
重合体成分の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易に冷却装置を設置した2Lの反応器に2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、アクリルアミド(AAm)およびイソボルニルアクリレート(IBoA)を下記表4のように80:6:7:4:3の重量部の割合(EHA:HEA:EHMA:AAm:IBoA)で投入して、単量体混合物を製造した。次いで、酸素除去のために窒素ガスで1時間パージングし、温度を約67℃に昇温した状態でエチルアセテートに50重量%の濃度に希釈させたAIBN(Azobisisobutyronitrile)を上記単量体混合物100重量部に対して約0.03重量部で投入した後に、8時間の間反応させて、重量平均分子量(Mw)が約10.9万程度であるシロップ形態の重合体成分を製造した。
【0144】
粘着剤組成物および粘着フィルムの製造
上記製造された重合体成分100重量部に対して、下記表5のようにさらなる成分を配合して、硬化性組成物(粘着剤組成物)を製造した。次いで、上記硬化性組成物を離型処理された離型PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムの離型処理面に塗布し、コーティング層上にさらなる離型PETフィルムの離型処理面をラミした後に、metal halide lampで紫外線を3分間程度照射(1J)して、厚さが約100μm程度である粘着剤層を形成して、粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した上記打ち抜き因子(F)は、35.9gf/μmであった。
【0145】
実施例2
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約8.5万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約68.4gf/μm程度であった。
【0146】
比較例1
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約9.6万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約20.6gf/μm程度であった。
【0147】
比較例2
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約10万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約22.8gf/μm程度であった。
【0148】
比較例3
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約8.5万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約69.7gf/μm程度であった。
【0149】
比較例4
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約4.1万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約6.4gf/μm程度であった。
【0150】
比較例5
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約8.5万である重合体成分を製造し、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約13.1gf/μm程度であった。
【0151】
比較例6
重合体成分の製造時に使用された単量体の種類および割合を下記表4のように調節したことを除いて、実施例1の場合と同じ方法で、重量平均分量(Mw)が約10.9万である重合体成分を製造して、これを用いて同一に粘着剤層と粘着フィルムを製造した。上記粘着剤層に対して測定した打ち抜き因子(F)は、約30.2gf/μm程度であった。
【0152】
【0153】
【0154】
上記実施例および比較例に対する評価結果を下記表6に整理して記載した。
【0155】
【0156】
表4および表6の結果から明らかなように、実施例の硬化性組成物(粘着剤組成物)は、互いに相反する物性である適切な打ち抜き性(適正引張力)と段差吸収性が同時に確保され、かつ、白濁が防止され、引張特性に優れ、低誘電率を示すことが分かる。
【0157】
一方、比較例1、比較例2、比較例4および比較例5の場合、引張力が劣り、打ち抜き性が劣ることを予想することができ、比較例3は、段差吸収性が劣っていた。
【0158】
比較例6も、引張特性が劣り、打ち抜き性が劣ることを予想することができる。