(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20240520BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240520BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240520BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240520BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240520BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/10
B60R16/02 645A
B60R16/03 A
(21)【出願番号】P 2022526529
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2020000512
(87)【国際公開番号】W WO2021240190
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 幸紀
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064424(JP,A)
【文献】特開2020-031516(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125010(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60R 16/02-16/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源システムであって、
第1電源と、
前記第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、
第1プログラムによって前記第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、
コンバータを介して前記第1電源に接続される第2電源と、
前記第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、
第2プログラムによって前記第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1電源と前記第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、
前記電力遮断装置を制御する第3コントローラと
、
前記第1電源の出力電圧を平滑するコンデンサと、
前記コンデンサに蓄積された電荷を放電させる放電回路を備え、
前記電力遮断装置は、前記第1電源と前記コンデンサの間に設けられ、
前記第3コントローラは、前記第1プログラムが変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を遮断させ
た状態で、前記放電回路により前記電荷を放電させる電源システム。
【請求項2】
車両に搭載される電源システムであって、
第1電源と、
前記第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、
第1プログラムによって前記第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、
コンバータを介して前記第1電源に接続される第2電源と、
前記第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、
第2プログラムによって前記第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1電源と前記第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、
前記電力遮断装置を制御する第3コントローラとを備え、
前記第3コントローラは、
前記第1プログラムが変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を遮断させ、
前記第2プログラムが変更される場合、前記第2プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を導通させる電源システム。
【請求項3】
車両に搭載される電源システムであって、
第1電源と、
前記第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、
第1プログラムによって前記第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、
コンバータを介して前記第1電源に接続される第2電源と、
前記第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、
第2プログラムによって前記第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1電源と前記第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、
前記電力遮断装置を制御する第3コントローラとを備え、
前記第3コントローラは、
前記第1プログラムが変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を遮断させ、
前記第2プログラムが変更される場合、前記第2プログラムの変更処理が終了した後、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷及び前記コンバータとの間を遮断させる電源システム。
【請求項4】
車両に搭載される電源システムであって、
第1電源と、
前記第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、
第1プログラムによって前記第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、
コンバータを介して前記第1電源に接続される第2電源と、
前記第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、
第2プログラムによって前記第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1電源と前記第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、
前記電力遮断装置を制御する第3コントローラとを備え、
前記第3コントローラは、
前記第1プログラムが変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を遮断させ、
前記電力遮断装置は、前記第1負荷と前記コンバータを導通又は遮断し、
前記第1負荷は、複数の負荷で構成され、
前記第1コントローラは、複数の第1プログラムそれぞれによって前記複数の負荷それぞれの動作を制御する複数の第1コントローラで構成され、
前記複数の負荷及び前記コンバータは、前記電力遮断装置を介して前記第1電源と並列に接続され、
前記第3コントローラは、前記複数の第1プログラムが順次変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が終了してから、次の前記第1プログラムの変更処理が開始されるまでの間、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記コンバータを導通させる電源システム。
【請求項5】
車両に搭載される電源システムを制御する電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
第1電源と、
前記第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、
第1プログラムによって前記第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、
コンバータを介して前記第1電源に接続される第2電源と、
前記第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、
第2プログラムによって前記第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1電源と前記第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、
前記電力遮断装置を制御する第3コントローラと、
前記第1電源の出力電圧を平滑するコンデンサと、
前記コンデンサに蓄積された電荷を放電させる放電回路を備え、
前記電力遮断装置は、前記第1電源と前記コンデンサの間に設けられ、
前記第3コントローラは、前記第1プログラムが変更される場合、前記第1プログラムの変更処理が開始される前に、前記電力遮断装置によって前記第1電源と前記第1負荷を遮断させた状態で、前記放電回路により前記電荷を放電させる電源システム電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電源システムが知られている(例えば、特許文献1)。この電源システムは、二次電池と、二次電池に並列に接続されるモータジェネレータ及び電圧変換器と、当該電圧変換器を介して二次電池に接続される補機バッテリとを備える。二次電池は、モータジェネレータが電動機として機能する際に電力を放電し、モータジェネレータが発電機として機能する際に充電される。電圧変換器は、二次電池の電圧を降圧し、降圧した電圧を補機バッテリに出力する。補機バッテリは、車両に搭載される補機系負荷に対して電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電源システムにおいて、モータジェネレータ又は補機系負荷の動作はプログラムによって制御されることがある。制御用のプログラムが書き換えられている間は、プログラムで制御する対象を正常に制御することが難しい。特許文献1に記載された電源システムでは、プログラムが書き換えている間、二次電池とモータジェネレータとが導通状態にあるため、プログラムの制御対象で予期せぬ動作が発生する、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、プログラムが書き換えられている間に、プログラムの制御対象で予期せぬ動作が発生するのを抑制できる電源システム及び電源システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1電源と、第1電源から供給される電力で動作する第1負荷と、第1プログラムによって第1負荷の動作を制御する第1コントローラと、コンバータを介して第1電源に接続される第2電源と、第2電源から供給される電力で動作する第2負荷と、第2プログラムによって第2負荷の動作を制御する第2コントローラと、第1電源と第1負荷を導通又は遮断する電力遮断装置と、電力遮断装置を制御する第3コントローラとを備える。そして、本発明では、第3コントローラは、第1プログラムが変更される場合、第1プログラムの変更処理が開始される前に、電力遮断装置によって第1電源と第1負荷を遮断させることで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1プログラムの変更処理が開始される前に、第1電源と第1負荷が遮断されるため、プログラムが書き換えられている間に、プログラムの制御対象で予期せぬ動作が発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電源システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電源システムにおいて、車両コントローラが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る電源システムのブロック図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る電源システムにおいて、車両コントローラが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る電源システム100を、電動車両に搭載させた場合の電源システム100のブロック図である。電動車両としては、例えば、モータ1を走行駆動源とする電気自動車が挙げられる。
図1の例では、モータ1は、電動車両の車軸(図示しない)に連結されており、バッテリ2の電力によって駆動する。なお、電源システム100を搭載可能な電動車両は、電気自動車に限られない。電源システム100は、モータ1及び内燃機関(図示しない)の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車に搭載することもできる。以降では、便宜上、電動車両を単に車両と称して説明する。
【0011】
図1に示すように、電源システム100は、電圧の高さが異なる2種類の電力系統で構成される。電力系統50は、バッテリ2の電圧で動作する機器等で構成される電力系統である。電力系統60は、電力系統50よりも低い電圧、すなわち、バッテリ2の電圧よりも低い電圧で動作する機器等で構成される電力系統である。以降では、電力系統50を高電圧の電力系統50と称し、電力系統60を低電圧の電力系統60とも称す。
【0012】
高電圧の電力系統50には、モータ1、バッテリ2、リレー3、電力変換装置4、電流センサ5が含まれる。
【0013】
モータ1は、いわゆる三相誘導電動機である。モータ1は、三相モータとも呼ばれる。モータ1は、三相(U相、V相、W相)のコイルを有している。
図1を示すように、モータ1の各相のコイルは、電力変換装置4と接続されている。モータ1の各相のコイルと電力変換装置4とを接続する配線上には、電流センサ5が設けられている。電流センサ5は、電力変換装置4からモータ1に出力される各相電流を検出する。電流センサ5により検出された各相電流の値は、モータコントローラ9に出力される。なお、
図1には示されていないが、モータ1には、レゾルバやエンコーダなどの角度センサが設けられており、角度センサにより検出されたモータ1の回転子の位置情報は、モータコントローラ9に出力される。
【0014】
バッテリ2は、直流電源であって、本実施形態の車両の駆動用電源である。例えば、バッテリ2にはリチウムイオン電池などの二次電池が用いられる。バッテリ2は、数百ボルト(V)の直流電圧で放電する、いわゆる強電系の直流電源である。後述するが、電力変換装置4は、バッテリ2の電圧で動作可能な機器として、インバータ41を備えている。以降の説明では、インバータ41を強電機器と読み替えてもよい。また、以降の説明では、バッテリ2を強電バッテリ2と読み替えてもよい。
【0015】
リレー3は、後述する車両コントローラ12により開閉駆動する機器である。バッテリ2は、リレー3を介して、電力変換装置4に接続されている。また、バッテリ2は、リレー3を介して、DC-DCコンバータ7に接続されている。
【0016】
リレー3は、バッテリ2と電力変換装置4との間に設けられ、バッテリ2と電力変換装置4を導通又は遮断する。また、リレー3は、バッテリ2とDC-DCコンバータ7との間に設けられ、バッテリ2とDC-DCコンバータ7を導通又は遮断する。リレー3としては、例えば、機械式のリレーが挙げられる。なお、リレー3には、半導体のスイッチング素子を用いてもよい。
【0017】
図1の例のように、バッテリ2に電力変換装置4とDC-DCコンバータ7が並列に接続されている場合、電力変換装置4のためのリレーと、DC-DCコンバータ7のためのリレーとを別々に設けることは少ない。一般的には、
図1の例のように、リレー3は、バッテリ2と、電力変換装置4及びDC-DCコンバータ7との間に設けられる。なお、本実施形態では、リレー3が閉じるとは、リレー3がオンすると同義である。また、リレー3が開くとは、リレー3がオフすると同義である。
【0018】
電力変換装置4は、モータ1とバッテリ2との間で電力変換を行う。
図1に示すように、電力変換装置4は、インバータ41、コンデンサ43、電圧センサ44、及び放電回路45を備える。
【0019】
インバータ41は、バッテリ2から供給される電力で動作する。インバータ41は、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6、複数の整流素子D1~D6、及びゲート駆動回路42で構成される。複数のスイッチング素子Tr1~Tr6には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。なお、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6は、IGBTに限られず、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を用いてもよい。本実施形態では、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6にIGBTを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0020】
インバータ41では、スイッチング素子Tr1のエミッタ電極と、スイッチング素子Tr2のコレクタ電極とが接続されており、スイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr2によってアーム回路が構成されている。スイッチング素子Tr1とスイッチング素子Tr2との接続点は、モータ1のU相のコイル(図示しない)に接続されている。スイッチング素子Tr1には、スイッチング素子Tr1の電流方向とは逆方向に電流が流れるように、整流素子D1が並列に接続されている。スイッチング素子Tr2には、スイッチング素子Tr2の電流方向とは逆方向に電流が流れるように、整流素子D2が並列に接続されている。整流素子D1及び整流素子D2は、還流ダイオードである。
【0021】
また、
図1に示すように、インバータ41では、スイッチング素子Tr3とスイッチング素子Tr4によってアーム回路が構成され、スイッチング素子Tr5とスイッチング素子Tr6によってアーム回路が構成されている。
図1に示す3つのアーム回路は、モータ1の各相に対応して設けられており、給電母線6aと給電母線6bとの間に並列に接続されている。なお、スイッチング素子Tr3とスイッチング素子Tr4で構成されるアーム回路と、スイッチング素子Tr5とスイッチング素子Tr6で構成されるアーム回路は、スイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr2で構成されるアーム回路と同様の回路構成であるため、回路構成については、既述の説明を援用する。
【0022】
複数のスイッチング素子Tr1~Tr6のそれぞれのゲート電極は、ゲート駆動回路42に接続されている。複数のスイッチング素子Tr1~Tr6は、ゲート駆動回路42から出力されるゲート制御信号に応じてオン又はオフする。
【0023】
ゲート駆動回路42は、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6のゲート電極に対してゲート制御信号を出力し、各スイッチング素子をオン又はオフさせる。ゲート駆動回路42には、モータコントローラ13からPWM信号(Pulse Width Modulation信号)が入力される。ゲート駆動回路42は、入力された電圧を高くシフトすることができるレベルシフタの回路を有している。ゲート駆動回路42は、複数のスイッチング素子Tr1~Tr6がオン又はオフすることが可能な電圧までPWM信号の電圧をレベルシフトさせる。ゲート駆動回路42は、モータコントローラ13により生成されたPWM信号の電圧をレベルシフトさせ、各スイッチング素子のゲート電極に出力する。これにより、インバータ41の各スイッチング素子がオン又はオフする。
【0024】
コンデンサ43は、給電母線6aと給電母線6bとの間に接続されている。コンデンサ43は、バッテリ2から出力される電力を平滑するために設けられている。電圧センサ44は、コンデンサ43に並列に接続されている。電圧センサ44は、コンデンサ43の両端子間の電圧を検出する。
【0025】
放電回路45は、給電母線6aと給電母線6bとの間に接続されている。放電回路45は、放電抵抗46とスイッチング素子47との直列回路で構成される。スイッチング素子47には、例えば、IGBT、MOSFETなどが用いられる。本実施形態では、スイッチング素子47には、ゲート駆動回路42から制御信号が入力される。スイッチング素子47は、ゲート駆動回路42から入力される制御信号に応じて、オン又はオフする。
【0026】
次に、低電圧の電力系統
70について説明する。
図1に示すように、バッテリ2は、DC-DCコンバータ7を介して補機バッテリ8に接続されている。DC-DCコンバータ7は、バッテリ2の電圧を降圧する電圧変換器である。DC-DCコンバータ7の入力端子はバッテリ2に接続されている。またDC-DCコンバータ7の出力端子は、補機バッテリ8、モータコントローラ9、補機コントローラ10、補機11、及び車両コントロ―ラ12に接続されている。
【0027】
DC-DCコンバータ7は、降圧したバッテリ2の電圧を補機バッテリ8、モータコントローラ9、補機コントローラ10、補機11、及び車両コントローラ12に出力する。DC-DCコンバータ7から出力される電圧によって、補機バッテリ8が充電される。DC-DCコンバータ7には、本願出願時に知られた回路構成及び制御機構を適用できる。
【0028】
補機バッテリ8は、直流電源であって、モータコントローラ9、補機コントローラ10、補機11、及び車両コントローラ12を駆動させるための駆動源である。補機バッテリ8にはリチウムイオン電池などの二次電池が用いられる。補機バッテリ8は、十数ボルト(V)~数十ボルト(V)の範囲の直流電圧で放電する、いわゆる弱電系の直流電源である。モータコントローラ9、補機コントローラ10、補機11及び車両コントローラ12は、補機バッテリ8の電圧で動作可能な機器である。以降の説明では、こられの機器を、弱電機器と読み替えてもよい。また、以降の説明では、補機バッテリ8を弱電バッテリ8と読み替えてもよい。なお、
図1に示されていないが、補機バッテリ8には補機バッテリ8に流れる電流を検出する電流センサが設けられている。電流センサにより検出された補機バッテリ8の電流の値は、車両コントローラ12に出力される。
【0029】
モータコントローラ9は、モータ1の動作を制御するためのコンピュータである。具体的に、モータコントローラ9は、インバータ41を構成する複数のスイッチング素子Tr1~Tr6を駆動させることで、モータ1の動作を制御する。例えば、モータコントローラ9は、モータ1の動作を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。モータコントローラ9には、車両コントローラ12から入力されるトルク指令値、モータ1に設けられた角度センサから入力される回転子の位置情報、及び電流センサ5から入力される電流値に基づき、PWM信号を生成する。モータコントローラ9は、PWM信号をゲート駆動回路42に出力する。これにより、インバータ41は、モータ1の力行又は回生に対応した動作を行う。具体的には、モータ1が力行動作の際には、インバータ41は、バッテリ2から出力される直流電圧を交流電圧に変換する。一方、モータ1が回生動作の際には、インバータ41は、モータ1で発生した交流電圧を直流電圧に変換する。
【0030】
モータコントローラ9は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、上記のように、インバータ41を制御する。モータコントローラ9のROMに格納されたプログラムは、後述する車両コントローラ12によって変更される。具体的には、車両コントローラ12は、変更されたプログラムをモータコントローラ9のROMに書き込む。
【0031】
なお、プログラムの変更は、プログラムの更新(プログラムのアップデート)を含む。また、プログラムの変更は、リプログラム、又はリプロ(リプログラムの略称)とも呼ばれるため、以降の説明では、モータコントローラ9のプログラムについて、「プログラムの変更」を「リプログラム」又は「リプロ」と読み替えてもよい。また、以降の説明では、便宜上、変更されたプログラムを「変更プログラム」と称して説明する。
【0032】
補機コントローラ10は、補機11の動作を制御するためのコンピュータである。例えば、補機コントローラ10は、補機11の動作を制御するためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。
【0033】
図1に示すように、補機11としては、例えば、オーディオ機器111、ナビゲーションシステム112が挙げられる。オーディオ機器111は、車両の乗員の操作に応じて、音楽などを車両の室内に出力する。ナビゲーションシステム112は、車両の現在位置の情報に基づいて、車両の現在位置から目的地までの経路を示して車両の乗員を誘導する。なお、
図1に示すオーディオ機器111及びナビゲーションシステム112は、補機11の一例であって、補機11を限定するものではない。補機11には、補機バッテリ8の電圧で動作可能な機器又はシステムであれば、その他の機器又はシステムが含まれていてもよい。以降の説明では、補機11を弱電機器と読み替えてもよい。
【0034】
補機コントローラ10は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、オーディオ機器111及びナビゲーションシステム112の動作を制御する。補機コントローラ10のROMに格納されたプログラムも、モータコントローラ9と同様に、後述する車両コントローラ12によって変更される。具体的には、車両コントローラ12は、変更プログラムを補機コントローラ10のROMに書き込む。
【0035】
なお、補機コントローラ10のプログラムについても、モータコントローラ9と同様に、以降の説明では、「プログラムの変更」を「リプログラム」又は「リプロ」と読み替えてもよい。また、モータコントローラ9と同様に、補機コントローラ10についても、変更されたプログラムを「変更プログラム」と称して説明する。
【0036】
車両コントローラ12は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成される。車両コントローラ12は、プログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成されている。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0037】
車両コントローラ12は、モータコントローラ9及び補機コントローラ10との間で相互に情報の授受を行うために、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。また、車両コントローラ12は、車両に設けられている通信コントローラ(図示しない)とも、CANその他の車載LANによって接続されている。通信コントローラは、車両に設けられている通信装置を制御するためのコンピュータである。CANその他の車載LANは、車載ネットワークと呼ばれる。本実施形態では、各コントローラ間で、モータコントローラ9及び補機コントローラ10のプログラムに関する情報の授受が行われる。
【0038】
車両コントローラ12は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、コンバータ制御機能、リレー制御機能、放電制御機能、プログラム変更機能を実現する。以降、車両コントローラ12が備える各機能について説明する。
【0039】
車両コントローラ12は、コンバータ制御機能により、DC-DCコンバータ7の動作を制御する。具体的には、車両コントローラ12は、補機バッテリ8の充電量に応じて、DC-DCコンバータ7を動作させ、補機バッテリ8を充電する。なお、補機バッテリ8を充電するための制御方法については、本願出願時に知られた制御方法を車両コントローラ12に適用することができる。
【0040】
車両コントローラ12は、放電制御機能により、放電回路45の動作を制御する。本実施形態では、車両コントローラ12は、モータコントローラ9に対してスイッチング素子47を動作させるための指令を出力することで、スイッチング素子47をオン又はオフさせる。
【0041】
例えば、スイッチング素子47が車両コントローラ12の指令によってオンすると、給電母線6aと給電母線6bは放電抵抗46を介して接続される。つまり、車両コントローラ12は、コンデンサ43に蓄積された電荷の放電を開始させることができる。また、一旦、スイッチング素子47がオンした後、スイッチング素子47が車両コントローラ12の指令によってオフすると、給電母線6aと給電母線6bは遮断され、非導通の状態になる。つまり、車両コントローラ12は、コンデンサ43に蓄積された電荷の放電を停止させることができる。
【0042】
車両コントローラ12は、プログラム変更機能により、モータコントローラ9のプログラム及び補機コントローラ10のプログラムのうち少なくとも何れか一方を変更する。
【0043】
モータコントローラ9のプログラム及び補機コントローラ10のプログラムの変更処理は、例えば、車両外部に設けられたサーバからの指令によって開始される。サーバのプログラム変更処理としては、例えば、サーバが車両にプログラムの変更を要求する要求信号を送信し、その後、変更プログラムを送信する処理が挙げられる。
【0044】
例えば、車両コントローラ12には、まず、車載ネットワークを介して、プログラムの変更を要求する要求信号が入力される。次に、車両コントローラ12には、要求信号に対応した変更プログラムが入力される。なお、車両コントローラ12は、要求信号がどのコントローラのプログラムに対しての変更要求の信号であるかを識別できる。また補機コントローラ10が複数の補機11を制御する場合、車両コントローラ12は、要求信号が複数の補機11のうちどの補機を制御するためのプログラムに対しての要求信号であるかを識別できる。また、車両コントローラ12に複数の変更プログラムが入力された場合、車両コントローラ12は、変更プログラムがどのコントローラのプログラムであるかを識別できる。
【0045】
車両コントローラ12は、変更プログラムが入力されると、変更対象のコントローラ(モータコントローラ9、補機コントローラ10)が有するROMに対して、変更プログラムによるプログラム書き換え処理を実行する。これにより、モータコントローラ9のROM又は補機コントローラ10のROMに格納されたプログラムが変更される。言い換えると、モータコントローラ9のプログラム又は補機コントローラ10のプログラムがリプロされる。
【0046】
なお、本実施形態では、モータコントローラ9のプログラム及び補機コントローラ10のプログラムのうち少なくとも何れか一方を変更する場面において、車両コントローラ12は、リレー3を制御し、放電回路45を制御する。車両コントローラ12によりリレー3及び放電回路45が制御される場面は、モータコントローラ9のプログラム又は補機コントローラ10のプログラムを変更する場面以外であってもよい。例えば、車両コントローラ12は、乗員の操作によって電動車両のイグニッションスイッチがオフからオンへ切り換った場面においても、リレー3及び放電回路45を制御してもよい。なお、このような場面におけるリレー3及び放電回路45の制御については、本願出願時に知られた制御技術を車両コントローラ12に適用することができる。
【0047】
図2は、電源システム100において、車両コントローラ12が実行する制御処理を示すフローチャートである。なお、
図2に示すステップS1が開始される前の電源システム100の状態として、リレー3がオンしており、放電回路45のスイッチング素子47はオフしているものとする。
【0048】
ステップS1では、車両コントローラ12は、乗員(運転者)によって車両の停止操作が行われたか否かを判定する。例えば、イグニッションスイッチがオフであることを示す信号が車両コントローラ12に入力されると、車両コントローラ12は、車両が停止状態にあると判定することができる。このステップは、車両の状態が、以降に示すプログラムの変更処理を実行可能な状態にあるか否かを判定するためのステップである。車両の停止操作が行われたと判定した場合、ステップS2に進む。一方、車両の停止操作が行われていないと判定した場合、ステップS1で待機する。なお、車両の停止操作が行われたか否かの判定方法は上記例に限定されず、その他の方法を用いて、車両の停止操作が行われたか否かを判定してもよい。また、車両の停止操作に限られず、乗員のその他の操作又は車両の状態によって、車両の状態がプログラムの変更処理を実行可能な状態か否かを判定してもよい。
【0049】
ステップS2では、車両コントローラ12は、プログラムの変更要求が入力されたか否かを判定する。例えば、車両コントローラ12には、車両の外部に設けられたサーバから、車載ネットワークを介して、プログラムの変更要求が入力される。変更要求が車両コントローラ12に入力された場合、ステップS3に進む。変更要求が車両コントローラ12に入力されていない場合、ステップS7に進む。
【0050】
ステップS2において、プログラムの変更要求が入力された場合、ステップS3に進む。ステップS3では、車両コントローラ12は、ステップS2で入力された変更要求の対象プログラムが、強電機器を制御するためのプログラムであるか否かを判定する。本実施形態では、強電機器とは、バッテリ2の電圧で動作可能な機器である。例えば、
図1に示すインバータ41は、強電機器である。変更要求の対象プログラムが強電機器を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS4に進む。一方、変更要求の対象プログラムが強電機器以外を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS8に進む。
【0051】
ステップS3において、変更要求の対象プログラムが強電機器を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS4に進む。ステップS4では、車両コントローラ12は、リレー3のオフ処理を実行する。例えば、車両コントローラ12は、リレー3がオフするための制御信号をリレー3に出力する。これにより、リレー3は、オン状態からオフ状態に切り換り、バッテリ2と電力変換装置4が導通状態から遮断状態に切り換る。また、バッテリ2とDC-DCコンバータ7も導通状態から遮断状態に切り換る。このステップの処理によって、電力変換装置4にバッテリ2の電圧が入力されるのを防ぐことができる。
【0052】
ステップS5では、車両コントローラ12は、コンデンサ43に蓄積された電荷を放電するための放電処理を実行する。例えば、車両コントローラ12は、スイッチング素子47をオンするための指令をモータコントローラ9に出力する。スイッチング素子47は、モータコントローラ9から入力された制御信号によってオンする。これにより、コンデンサ43に蓄積された電荷は放電抵抗46に流れ、放電抵抗46では当該電荷によるエネルギーが消費される。
【0053】
なお、ステップS5では、車両コントローラ12は、放電処理を実行した後、コンデンサ43の放電が完了したか否かを確認する処理を行ってもよい。例えば、車両コントローラ12は、所定時間の間、スイッチング素子47をオンさせ続ける。その後、車両コントローラ12は、電圧センサ44が検出したコンデンサ43の両端子間の電圧に基づき、コンデンサ43の放電が完了したか否かを判定してもよい。コンデンサ43の放電が完了したか否かを判定する方法については、本願出願時に知られた判定方法を車両コントローラ12に適用することができる。また、車両コントローラ12は、コンデンサ43の放電が完了していないと判定した場合、さらに、所定時間の間、スイッチング素子47をオンさせ続け、その後、再度、放電が完了したか否かの判定を行ってもよい。
【0054】
ステップS6では、車両コントローラ12は、強電機器を制御するためのプログラムの変更処理を実行する。
図1の例では、車両コントローラ12は、モータコントローラ9のROMに格納されたプログラムに対して、プログラムの変更処理を実行する。モータコントローラ9のROMに格納されたプログラムが変更されると、ステップS7に進む。
【0055】
ステップS7では、車両コントローラ12は、車両のスリープ処理を実行する。例えば、車両コントローラ12は、ステップS6で変更したプログラムに従って、スリープ処理を実行し、インバータ41の各スイッチング素子をオフさせる。また、例えば、車両コントローラ12は、ステップS5でオンさせたスイッチング素子47をオフさせる。このステップの処理が終了すると、車両はいわゆるスリープ状態に移行する。ステップS7での処理が終了すると、車両コントローラ12は、
図2に示す処理を終了させる。
【0056】
ステップS3において、変更要求の対象プログラムが強電機器以外を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS8に進む。ステップS8では、車両コントローラ12は、弱電機器を制御するためのプログラムの変更処理を実行する。
図1の例では、車両コントローラ12は、補機コントローラ10のROMに格納されたプログラムに対して、プログラムの変更処理を実行する。補機コントローラ10のROMに格納されたプログラムが変更されると、ステップS9に進む。
【0057】
ステップS9では、車両コントローラ12は、リレー3のオフ処理を実行する。このステップは、ステップS3に対応する。リレー3のオフ処理の具体例については、ステップS3での説明を援用する。ステップS9での処理が終了すると、ステップS7に進み、車両コントローラ12は、車両のスリープ処理を実行する。
【0058】
なお、
図2に示すフローチャートにおいて、車両コントローラ12に変更プログラムが入力されるタイミングは特に限定されない。例えば、モータコントローラ9又は補機コントローラ10の変更プログラムは、ステップS2において、車両コントローラ12に入力されてもよい。また、例えば、ステップ6において、モータコントローラ9又は補機コントローラ10の変更プログラムは、車両コントローラ12に入力されてもよい。
【0059】
ここで、モータコントローラ9のプログラムが変更されている間のモータコントローラ9及び電力変換装置4の状態を説明する。例えば、定常的に流れる電流を削減するために、モータコントローラ9の出力端子にプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗を設けない場合、モータコントローラ9のプログラムの変更処理が実行されている間、モータコントローラ9の出力端子は不定状態となる。ゲート駆動回路42には、モータコントローラ9から不定の信号が入力されるため、ゲート駆動回路42は、インバータ41又は放電回路45に対して不定状態の制御信号を出力する。不定状態の制御信号によって、インバータ41又は放電回路45では、本来想定していない動作が起こるおそれがある。例えば、インバータ41のアーム回路を構成する上側のスイッチング素子及び下側のスイッチング素子が同時にオンしてしまい、プログラムの変更処理中に、インバータ41に貫通電流が流れるおそれがある。また、例えば、放電回路45のスイッチング素子47がオンしてしまい、プログラム変更処理中に、放電抵抗46に電流が流れ続けるおそれがある。
【0060】
本実施形態に係る電源システム100は、バッテリ2と、バッテリ2から供給される電力で動作するインバータ41と、プログラムによってインバータ41の動作を制御するモータコントローラ9と、DC-DCコンバータ7を介してバッテリ2に接続される補機バッテリ8と、補機バッテリ8から供給される電力で動作する補機11と、プログラムによって補機11の動作を制御する補機コントローラ10と、バッテリ2とインバータ41を導通又は遮断するリレー3と、リレー3を制御する車両コントローラ12を備えている。車両コントローラ12は、モータコントローラ9のプログラムが変更される場合、モータコントローラ9のプログラムの変更処理が開始される前に、リレー3によってバッテリ2とインバータ41を遮断させる。これにより、モータコントローラ9のプログラムが書き換えられている間に、プログラムの制御対象であるインバータ41で予期せぬ動作が発生するのを抑制することができる。例えば、モータコントローラ9のプログラムの変更処理中にモータコントローラ9の出力端子が不定状態であっても、インバータ41にはバッテリ2の電圧が印加されないため、インバータ41に貫通電流が流れるのを防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態では、電源システム100は、バッテリ2の出力電圧を平滑するコンデンサ43と、コンデンサ43に蓄積された電荷を放電する放電回路45を備える。また、リレー3は、バッテリ2とコンデンサ43との間に設けられている。車両コントローラ12は、バッテリ2とインバータ41が遮断された状態で、放電回路45によりコンデンサ43に蓄積された電荷を放電させる。これにより、モータコントローラ9のプログラムの変更処理中にコンデンサ43に蓄積された電荷がインバータ41に流れ込むのを防ぐことができる。その結果、モータコントローラ9のプログラムの変更処理中にモータコントローラ9の出力端子が不定状態であっても、インバータ41に貫通電流が流れるのを防ぐことができる。また、自然放電の場合よりも早く当該電荷を放電させることができるため、モータコントローラ9のプログラムの変更処理を自然放電の場合よりも早く実行することができる。その結果、リレー3がオフする時間、すなわち、補機バッテリ8を充電できない時間を短時間にできるため、補機バッテリ8の小型化を図ることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、車両コントローラ12は、補機コントローラ10のプログラムが変更される場合、補機コントローラ10のプログラムの変更処理が終了した後、リレー3によって、バッテリ2とインバータ41を遮断させる。これにより、補機コントローラ10のプログラムの変更処理中に、DC-DCコンバータ7によって補機バッテリ8を充電することができるため、補機コントローラ10の電源電圧の低下を抑制することができる。その結果、電源電圧の低下によって補機コントローラ10のプログラムの変更処理が異常終了するのを抑制することができる。また、補機コントローラ10のプログラムの変更処理中に、補機バッテリ8が補機コントローラ10に対して過剰に電荷を放出してしまい、補機バッテリ8が過放電の状態になるのを抑制することができる。
【0063】
≪第2実施形態≫
次に、
図3を用いて、第2実施形態に係る電源システム100について説明する。
図3は、第2実施形態に係る電源システム200のブロック図である。電源システム200は、第1実施形態に係る電源システム100と同様に、電動車両に搭載されている。第2実施形態では、電動車両の駆動方法が第1実施形態の電動車両の駆動方法が異なっている。本実施形態の電動車両は、四輪駆動車である。電動車両には、前輪を駆動させるためのモータ1と、後輪を駆動させるためのモータ21が設けられている。
【0064】
図3に示すように、電源システム200は、電圧の高さが異なる2種類の電力系統で構成される。高電圧の電力系統150には、第1実施形態で説明した、モータ1、バッテリ2、リレー3、電力変換装置4、及び電流センサ5に加えて、モータ21、電力変換装置24、電流センサ25が含まれている。第1実施形態と同様の構成については、
図1と同様の符号を付し、各構成の説明については第1実施形態での説明を援用する。
【0065】
また、
図3に示すモータ21、電力変換装置24、及び電流センサ25は、モータ1、電力変換装置4、及び電流センサ5に対応するため、これらの構成については、第1実施形態での説明を援用する
。電力変換装置24は、インバータ241、コンデンサ243、電圧センサ244、及び放電回路245を備える。電力変換装置24の各構成は、電力変換装置4の各構成に対応するため、これらの構成については、第1実施形態での説明を援用する。
図3に示すように、本実施形態では、バッテリ2に対して、リレー3を介して電力変換装置4と電力変換装置24とが並列に接続されている。
【0066】
次に、第2実施形態に係る低電圧の電力系統160について説明する。第2実施形態に係る低電圧の電力系統160は、モータコントローラ13を備えている点と、車両コントローラ14の一部の機能が、第1実施形態に係る車両コントローラ12と異なる点以外は、第1実施形態に係る低電圧の電力系統60と同様のため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態での説明を援用する。
【0067】
モータコントローラ13は、モータ21の動作を制御するためのコンピュータである。モータコントローラ13は、モータコントローラ9と同様に、ROMに格納されたプログラムを実行することで、インバータ241を制御する。モータコントローラ13のROMに格納されたプログラムは、後述する車両コントローラ14によって変更される。
【0068】
本実施形態に係る車両コントローラ14は、第1実施形態に係る車両コントローラ12と同様に、コンバータ制御機能、リレー制御機能、放電制御機能、プログラム変更機能を備える。以降では、第1実施形態に係る車両コントローラ12と異なる制御について説明し、車両コントローラ12と同様の制御については、第1実施形態での説明を援用する。
【0069】
次に、
図4を用いて、車両コントローラ14が実行する制御について説明する。
図4は、電源システム200において、車両コントローラ14が実行する制御処理を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、車両コントローラ14によって実行される。なお、
図4に示すステップS11が開始される前の電源システム200の状態として、リレー3がオンしており、放電回路45のスイッチング素子47及び放電回路245のスイッチング素子247(図示しない)はオフしているものとする
【0070】
ステップS11及びステップS12は、それぞれ、
図2に示すステップS1及びステップS2に対応する。このため、各ステップの説明については、第1実施形態での説明を援用する。変更要求が車両コントローラ14に入力された場合、ステップS13に進む。変更要求が車両コントローラ14に入力されていない場合、ステップS24に進む。
【0071】
ステップS12において、プログラムの変更要求が入力された場合、ステップS13に進む。ステップS13では、車両コントローラ14は、ステップS12で入力された変更要求の対象プログラムが、強電機器を制御するためのプログラムであるか否かを判定する。本実施形態では、第1実施形態と異なり、インバータ41及びインバータ241の2つの機器が強電機器である。変更要求の対象プログラムが強電機器を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS14に進む。一方、変更要求の対象プログラムが強電機器以外を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS21に進む。
【0072】
ステップS13において、変更要求の対象プログラムが強電機器を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS14に進む。ステップS14~ステップS16は、
図2に示すステップS4~ステップS6に対応する。このため、これらのステップの説明は、第1実施形態での説明を援用する。
【0073】
なお、本実施形態では、車両コントローラ14は、ステップS13で変更されるプログラムがモータ1又はモータ21の何れかのモータの動作を制御するためのプログラムであるかを判定する。車両コントローラ14は、モータ1の動作を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS15において、スイッチング素子47をオンするための指令をモータコントローラ9に出力する。また、車両コントローラ14は、ステップS16において、モータコントローラ9のROMに格納されたプログラムに対してプログラムの変更処理を実行する。一方、車両コントローラ14は、モータ21の動作を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS15において、スイッチング素子247をオンするための指令をモータコントローラ13に出力する。また、車両コントローラ14は、ステップS16において、モータコントローラ13のROMに格納されたプログラムに対してプログラムの変更処理を実行する。
【0074】
ステップS17では、車両コントローラ14は、未処理の変更プログラムがあるか否かを判定する。未処理の変更プログラムとは、変更処理が行われていないプログラムである。例えば、ステップS3で入力されたプログラムの変更要求に複数のコントローラのプログラムに対する変更要求が含まれている場合、車両コントローラ14は、ステップS16を実行した回数に応じて、未処理の変更プログラムがあるか否かを判定する。例えば、ステップS16を実行した回数が変更要求のあるプログラムの数よりも少ない場合、未処理の変更プログラムがあると判定する。一方、例えば、ステップS16を実行した回数と変更要求のあるプログラムの数が同じ場合、未処理の変更プログラムがないと判定する。未処理の変更プログラムがあると判定した場合、ステップS18に進む。一方、未処理の変更プログラムがないと判定した場合、ステップS24に進む。
【0075】
ステップS17において、未処理の変更プログラムがあると判定した場合、ステップS18に進む。ステップS18では、車両コントローラ14は、リレー3のオン処理を実行する。例えば、車両コントローラ14は、リレー3がオンするための制御信号をリレー3に出力する。これにより、リレー3は、オフ状態からオン状態に切り換り、バッテリ2とDC-DCコンバータ7が遮断状態から導通状態に切り換る。このステップの処理によって、DC-DCコンバータ7にはバッテリ2の電圧が入力される。補機バッテリ8への充電を開始することができる。
【0076】
ステップS19では、車両コントローラ14は、補機バッテリ8の充電処理を実行する。例えば、車両コントローラ14は、バッテリ2の電圧を降圧するための制御信号をDC-DCコンバータ7に出力する。これにより、補機バッテリ8にはDC-DCコンバータ7から電圧が入力され、補機バッテリ8は充電される。ステップS16では、リレー3がオフ状態にあるため、プログラムの変更処理が行われている間、モータコントローラ9又はモータコントローラ13に電力供給するために、補機バッテリ8は電荷を放電している。そのため、ステップS16の処理が終了すると、補機バッテリ8の充電量は、ステップS16の処理を開始するまでに比べて減少している。このステップの処理により、補機バッテリ8で減少した電力を補充することができる。言い換えると、ステップS19では、車両コントローラ14は、補機バッテリ8に対して補充電の処理を実行する。
【0077】
なお、ステップS19では、車両コントローラ14は、補充電の処理を実行した後、補機バッテリ8の充電量を測定する処理を行ってもよい。例えば、車両コントローラ14は、補機バッテリ8に設けられた電流センサ及び電圧センサからの検出結果に基づき、補機バッテリ8の充電量を測定する。なお、補機バッテリ8の充電量を測定する方法は、本願出願時に知られた判定方法を車両コントローラ14に適用できる。ステップS19の処理が終了すると、ステップS13に戻る。例えば、モータコントローラ9及びモータコントローラ13のプログラムが変更要求の対象の場合、再びステップS16に進み、プログラムが変更される。
【0078】
ステップS13において、変更要求の対象プログラムが強電機器以外を制御するためのプログラムと判定した場合、ステップS21に進む。ステップS21では、車両コントローラ14は、弱電機器を制御するためのプログラムの変更処理を実行する。このステップは、
図2に示すステップS8に対応する。
【0079】
ステップS22では、車両コントローラ14は、未処理の変更プログラムがあるか否かを判定する。このステップは、ステップS17に対応する。未処理の変更プログラムがあると判定した場合、ステップS13に戻る。一方、未処理の変更プログラムがないと判定した場合、ステップS23に進む。
【0080】
ステップS23では、車両コントローラ14は、リレー3のオフ処理を実行する。このステップは、
図2に示すステップS9に対応する。リレー3のオフ処理の具体例については、第1実施形態での説明を援用する。ステップS23の処理が終了すると、ステップS24に進む。
【0081】
ステップS2においてプログラムの変更要求が入力されていないと判定された場合、ステップS17において未処理の変更プログラムがないと判定された場合、又は、ステップS22の処理が終了した場合、ステップS24に進む。ステップS24では、車両コントローラ14は、車両のスリープ処理を実行する。このステップは、
図2に示すステップS7に対応する。ステップS23での処理が終了すると、車両コントローラ14は、
図4に示す処理を終了させる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る電源システム200は、インバータ41及びインバータ241の複数の強電機器と、インバータ41の動作を制御するモータコントローラ9及びインバータ241の動作を制御するモータコントローラ13とを含む。本実施形態では、車両コントローラ14は、モータコントローラ9のプログラムとモータコントローラ13のプログラムが順次変更される場合、一方のプログラムの変更処理が終了してから、次のプログラムの変更処理が開始されるまでの間、リレー3によってバッテリ2とDC-DCコンバータ7を導通させる。これにより、プログラムの変更処理が開始される前に、補機バッテリ8を充電することができるため、電源電圧の低下によってプログラムの変更処理が異常終了するのを抑制することができる。また、プログラムの変更処理中に、補機バッテリ8がモータコントローラ9又はモータコントローラ13に対して過剰に電荷を放出してしまい、補機バッテリ8が過放電の状態になるのを抑制することができる。さらに、補機バッテリ8の容量を可能な限り小さくすることができるため、補機バッテリ8の小型化を図ることができる。
【0083】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0084】
例えば、
図2に示すステップS1及び
図4に示すステップS11が開始される前のリレー3の状態として、リレー3がオンしている状態を説明したが、車両コントローラがリレーをオンさせる処理を実行してもよい。例えば、
図2に示すステップS8において、車両コントローラ12は、補機コントローラ10のプログラムの変更処理が開始される前に、リレー3によってバッテリ2とインバータ41を導通させてもよい。これにより、プログラムの変更処理中においても、DC-DCコンバータ7によって補機バッテリ8を充電することができるため、補機コントローラ10の電源電圧の低下を抑制することができる。その結果、電源電圧の低下によって補機コントローラ10のプログラムの変更処理が異常終了するのを抑制することができる。また、補機コントローラ10のプログラムの変更処理中に、補機バッテリ8が補機コントローラ10に対して過剰に電荷を放出してしまい、補機バッテリ8が過放電の状態になるのを抑制することができる。
【0085】
また、上述の実施形態では、電力変換装置が放電回路を備える構成を例に挙げて説明したが、電力変換装置は放電回路を備えていることに限定されない。車両コントローラは、放電回路以外でコンデンサに蓄積された電荷を放電させてもよい。例えば、車両コントローラは、インバータの各スイッチング素子を制御することで、モータの巻き線にコンデンサに蓄積された電荷を流してもよい。モータの巻き線を用いて放電する技術は、本願出願時に知られた技術を車両コントローラに適用することができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、車両コントローラ12又は車両コントローラ14が複数の機能を備える構成を例に挙げて説明したが、複数のコントローラで、車両コントローラ12又は車両コントロニラ14の機能を構成してもよい。例えば、電源システムは、コンバータ制御機能を備えるコンバータコントローラ、リレー制御機能を備えるリレーコントローラ、放電制御機能を備える放電コントローラ、及びプログラム変更機能を備えるプログラムコントローラを備える構成であってもよい。また、上述の第1実施形態では、モータ1の動作を制御するコントローラをモータコントローラ9と称して説明したが、モータ1の動作制御は、インバータ41の動作制御によるため、モータ1の動作を制御するコントローラを、「インバータコントローラ9」と称してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、補機バッテリ8が各コントローラを駆動させる構成を例に挙げて説明したが、補機バッテリ8は、補機11の駆動電源であればよく、各コントローラの駆動電源は、補機バッテリ8とは別のバッテリであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…モータ
2…バッテリ
3…リレー
4…電力変換装置
41…インバータ
42…ゲート駆動回路
43…コンデンサ
44…電圧センサ
45…放電回路
5…電流センサ
6a、6b…給電母線
7…DC-DCコンバータ
8…補機バッテリ
9…モータコントローラ
10…補機コントローラ
11…補機
111…オーディオ機器
112…ナビゲーションシステム
12…車両コントローラ