(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240520BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2022536007
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2020027301
(87)【国際公開番号】W WO2022013930
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尚威
(72)【発明者】
【氏名】田多 伸光
(72)【発明者】
【氏名】田代 匠太
(72)【発明者】
【氏名】久里 裕二
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋紀
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L25/00-25/07
H01L25/10-25/11
H01L25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子及び前記半導体素子に電気的に接続された導電部がケース内に実装された半導体モジュールと、
前記半導体モジュールに接合された下部バスバーと、
蓋部材を兼ねる上部バスバーと、
前記半導体モジュール、前記下部バスバー及び前記上部バスバーに直列に接続された端子と、
前記下部バスバーに前記上部バスバーを固定する絶縁物と、が備えられ、
前記半導体モジュールは前記下部バスバー及び前記上部バスバーに挟まれて並列に接続され
、
前記端子は水平方向の長さ寸法をL1、垂直方向の長さ寸法をL2、
互いに隣接する前記端子間に作用する反発力を受ける間隔をr1、
互いに隣接する前記端子間に作用する吸引力を受ける間隔をr2として、
L1/r1=L2/r2・sinθとなるように、隣接する前記端子同士が配置される半導体装置。
【請求項2】
前記端子は、垂直方向に延びる垂直辺部と、水平方向に延びる水平辺部とを有するL字状部材からなる請求項
1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力制御用の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統における送電システムには、大電力用の電力変換器が使用される。これらの電力変換器は、交流を直流に、直流を交流にする電圧の変換を行う。または、これらの電力変換器は、直流の電圧を昇圧、降圧する変換を行う。これらの電圧の変換は、電力変換器内に設けられた半導体装置により、供給された電力がスイッチングされることにより行われる。
【0003】
電力変換に使用される半導体装置は、スイッチングにより1000Vを超える高電圧の開閉を行う。また、半導体装置は、スイッチングにより1000Aを超える大電流の開閉を行う。大電流の開閉を行うため、半導体装置には、電気的に並列に接続された複数のIGBT等のいわゆるパワー素子と呼ばれるスイッチング用の半導体素子が回路基板に配置される。例えば、実装面積が半導体素子と同程度のサイズまで小型化された半導体モジュールとして、CSP(Chip Scale Package)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-330338号公報
【文献】特開2006-013080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の半導体装置では、大電流が通電した際に電磁力によって構成部材の一部が跳ね上がり、半導体装置の通電経路が破断する可能性がある。近年の半導体装置は、大容量で長距離の送電に有利な高圧直流送電への適用を目指しており、さらなる信頼性の向上が求められている。そのため、半導体装置の通電経路の破断防止が急務となっている。
【0006】
本実施形態は、構成部材の跳ね上がりを抑えて通電経路の破断を防ぐことができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の半導体装置は、半導体素子及び半導体素子に電気的に接続された導電部がケース内に実装された半導体モジュールと、半導体モジュールに接合された下部バスバーと、蓋部材を兼ねる上部バスバーと、半導体モジュール、下部バスバー及び上部バスバーに直列に接続された端子と、下部バスバーに上部バスバーを固定する絶縁物と、が備えられ、半導体モジュールは下部バスバー及び上部バスバーに挟まれて並列に接続され、端子は水平方向の長さ寸法をL1、垂直方向の長さ寸法をL2、互いに隣接する端子間に作用する反発力を受ける間隔をr1、互いに隣接する端子間に作用する吸引力を受ける間隔をr2として、L1/r1=L2/r2・sinθとなるように、隣接する端子同士が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる半導体装置の正面断面図
【
図4】第1実施形態にかかる半導体装置の適用想定回路図
【
図5】第1実施形態にかかる半導体装置の内部回路図
【
図7】第1実施形態にかかる半導体装置の要部上面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
[構成]
以下、
図1~
図7を参照して本実施形態の半導体装置1の構成を説明する。本実施形態において、同一構成の装置や部材が複数ある場合にはそれらについて同一の番号を付して説明を行う。
図7においてX軸、Y軸は、相互に直交する。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、複数のCSP(Chip Scale Package)2と、互いに向かい合う下側のCバスバー3及び上側のEバスバー4と、端子5と、端子5をCSP2に接続する接続導体7と、バスバー3、4を繋ぐ絶縁物6と、端子5をEバスバー4に接続する端子支持部8と、を備えている。CSP2は、ステンレス製のケース23内に半導体素子21及び導体22が実装された半導体モジュールである。CSP2は、実装面積が半導体素子21と同程度のサイズまで小型化されている。
【0011】
図1~
図3に示すように、Cバスバー3の上面には2つのCSP2、2が互いに向かい合うようにして接合されている。
図1~
図3では便宜的に2つのCSP2、2を1組だけ示したが、2つのCSP2、2を複数組、設けてもよい。
【0012】
CSP2に実装される半導体素子21は、いわゆるパワー素子と呼ばれるスイッチング用の半導体素子である。例えば半導体素子21は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)により構成されており、シリコン等により形成された半導体層に、銅やアルミニウム等からなる正側電極、負側電極、制御電極が配置されている。
【0013】
正側電極はIGBTのコレクタ、負側電極はIGBTのエミッタ、制御電極はIGBTのゲートである。すなわち、正側電極は電力供給源となる外部装置からの電流を入力し、負側電極は負荷となる外部装置への電流を出力し、制御電極は制御信号を入力して正側電極及び負側電極間の電流を制御する。
【0014】
Cバスバー3及びEバスバー4にはアルミニウムや銅等の金属材料やカーボンやセラミック等の非金属材料が含まれる。Cバスバー3上の側縁部においてCSP2よりも外側に、絶縁物6が垂直に立てられている。絶縁物6はエポキシやポリイミド等の絶縁性樹脂材料からなる。2つの絶縁物6、6は互いに向かい合う側壁部となって、各絶縁物6の上部にEバスバー4が水平に固定されている(
図1に図示)。半導体装置1は、Cバスバー3、Eバスバー4及び絶縁物6によって囲まれた箱状部材となる。Cバスバー3は半導体装置1の底面部材となり、Eバスバー4は半導体装置1の蓋部材を兼ねる。
【0015】
接続導体7は、端子5をCSP2に接続するための板状の部材であり、各CSP2のケース23から水平方向に延びて取り付けられている(
図1参照)。また
図2、
図3に示すように、接続導体7、7は互いに平行で、且つ
図1において奥行き方向にずらして配置されている。
図1において左側の接続導体7は右側の端子支持部8の取付孔81と同一線上に配置され、右側の接続導体7は左側の端子支持部8の取付孔81と同一線上に配置されている。
【0016】
Eバスバー4の下面には下方に突出して2つの端子支持部8、8が設けられる。2つの端子支持部8、8は、2つのCSP2、2に対応して互いに向き合いようにして設けられるブロック状の部材である。端子支持部8、8はEバスバー4と同様、アルミニウム等の金属材料からなる。端子支持部8、8の互いに向かい合う側面部には取付孔81、81が開けられている。取付孔81、81は同一水平面に設けられるが、奥行き方向にずらして形成される。すなわち、
図1に示した端子支持部8、8のうち、左側に位置する端子支持部8の取付孔81は奥寄り(
図2の上側方向)に設けられ、右側に位置する端子支持部8の取付穴81は手前寄り(
図2の下側方向)に配置されている。
【0017】
図1において左側の取付孔81には左方向に向かって水平に延びる長孔82が取付孔81と連続して形成されている。
図1において右側の取付孔81には右方向に向かって水平に延びる長孔82が取付孔81と連続して形成されている。長孔82、82は取付孔81よりも大きい径からなり、取付孔81が開けられた側面部と反対側の側面部にまで達する貫通する孔である。つまり、
図3に示すように、左側の接続導体7は右側の端子支持部8の取付孔81及び長孔82と同一線上に配置され、右側の接続導体7は左側の端子支持部8の取付孔81及び長孔82と同一線上に配置されている。
【0018】
図1~
図3に示すように、接続導体7の先端部及び端子支持部8の取付孔81に端子5が取り付けられる。端子5は、上方向に延びる垂直辺部51と、水平方向に延びる水平辺部52とを有するL字状部材からなる(
図1参照)。
図1の左側のCSP2に取り付けられる端子5は水平辺部52が垂直辺部51から
図1の右側方向に延び、
図1の右側のCSP2に取り付けられる端子5は水平辺部52が垂直辺部51から
図1の左側方向に延びている。
【0019】
図4の回路図は半導体装置1を組み込む適用想定回路の回路図である。
図5の内部回路図に示すように、半導体装置1ではCSP2がCバスバー3及びEバスバー4に挟まれて並列に接続されている。各CSP2には端子5、Cバスバー3及びEバスバー4が直列に接続されている。
【0020】
互いに隣接する端子5、5は、次の式(1)を満たすように配置されている(
図6、
図7参照)。
L1/r1=L2/r2・sinθ…(1)
L1:端子5の水平方向の長さ寸法
L2:垂直方向の長さ寸法
r1:互いに隣接する端子5間に作用する反発力を受ける間隔
r2:互いに隣接する端子5間に作用する吸引力を受ける間隔
図6に示したI1,I2は、抵抗3に流れる電流であり、矢印の向きに電流が流れる。
図7に示したF1は、互いに隣接する端子5間に作用する反発力、
図7に示したF2は、互いに隣接する端子5間に作用する吸引力である。なお、明細書では寸法に関して大文字Lで示したが、
図6、
図7ではLを小文字で示すものとする。
【0021】
[作用]
半導体装置1では、大電流が通電した際に、端子5とEバスバー4との間に大きな電磁力が発生する。Eバスバー4に対する電磁力はCバスバー3から離れる向きに働く。そのため、Eバスバー4は跳ね上がって、半導体装置1の通電経路が破断する可能性がある。そこで本実施形態では、絶縁物6がCバスバー3にEバスバー4を固定し、Eバスバー4の跳ね上がりを抑えている。
【0022】
しかも、本実施形態ではEバスバー4が箱状の半導体装置1の蓋部材となっている。そのため、Eバスバー4は剛性の高い構造を採用することかできる。従って、大電流が通電して端子5とEバスバー4との間に電磁力が発生しても、Eバスバー4が跳ね上がることがない。
【0023】
半導体装置1では、上記の式(1)L1/r1=L2/r2・sinθを満たしたことで、互いに隣接する端子5、5を並列接続した場合、2つの端子5、5の水平辺部52、52に作用する反発力F1と、吸引力F1が、
図7のY方向で釣り合う位置関係とすることができる。従って、端子5の水平辺部52は、反発力F1や吸引力F1の影響を受けることがない。
【0024】
[効果]
本実施形態は、半導体素子21及び半導体素子21に電気的に接続された導電部22がケース23内に実装されたCSP2と、CSP2に接合された下側のCバスバー3と、半導体装置1の蓋部材を兼ねる上側のEバスバー4と、CSP2、Cバスバー3及びEバスバー4に直列に接続された端子5と、Cバスバー3にEバスバー4を固定する絶縁物6と、が備えられ、CSP2はCバスバー3及びEバスバー4に挟まれて並列に接続される。
【0025】
このような本実施形態では、絶縁物6がCバスバー3にEバスバー4を固定しており、Eバスバー4Eが半導体装置1の蓋部材を兼ねている。そのため、大電流が通電して端子5とEバスバー4との間に電磁力が発生しても、Eバスバー4の跳ね上がりを抑えることができる。これにより、半導体装置1の通電経路の破断を防止することができ、信頼性が向上する。よって、本実施形態の半導体装置1は高圧直流送電への利用に好適である。
【0026】
また本実施形態では、端子5は垂直方向の長さ寸法をL1、水平方向の長さ寸法をL2、互いに隣接する端子5、5間に作用する反発力を受ける間隔をr1、互いに隣接する端子5、5間に作用する吸引力を受ける間隔をr2として、L1/r1=L2/r2・sinθとなるように、隣接する端子5、5同士が配置されている。
【0027】
このような本実施形態では、端子5、5同士を隣接させたとしても、2つの端子5、5の水平辺部52に作用する反発力F1と吸引力F2が釣り合うので、端子5の水平辺部52は、反発力F1及び吸引力F2の影響を受けることがない。その結果、端子5、5自体はもちろんのこと、それに接続された接続導体7、7、さらにはCSP2の損傷を防ぐことができる。また、端子5、5同士を隣接させた分だけ、向かい合うCSP2、2をコンパクトなスペースに設置することが可能である。これにより、半導体装置1の小型化に寄与することができる。
【0028】
本実施形態では、半導体素子21に直列接続した端子5が短絡故障時のエネルギーを担うことができるため、CSP2の許容エネルギーを向上させることができる。従って、CSP2は、大電流故障時のエネルギーに耐えて、確実にショート故障となる半導体モジュールを実現することができる。従って、本実施形態によれば半導体装置1の爆発的な破損を回避することが可能である。
【0029】
しかも、本実施形態の端子5は、水平方向に延びる水平辺部52を有するL字状部材からなる。このため、半導体装置1の高さ寸法を増大させることなく、端子5は十分に熱容量を確保することができる。従って、本実施形態ではCSP2の許容エネルギーを容易に向上させることができる。
【0030】
さらに本実施形態では、Eバスバー4下面に突出した端子支持部8、8がEバスバー4と同様、アルミニウム等の金属材料からなる。そのため、端子支持部8が端子5を強固に保持することができる。従って、バスバー4及び端子5を下方に強く押さえることができ、Eバスバー4の跳ね上がりを確実に抑えることが可能である。
【0031】
[他の実施形態]
上記の実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下はその一例である。
【0032】
(1)上記実施形態では、半導体素子2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるものとしたが、半導体素子2は、これに限られない。半導体素子2は、IGBTの他、例えばMOS-FET(Meral Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、GTO(Gate Turnoff Transistor)等のトランジスター、サイリスタ、FRD(Fast Recovery Diode)等のダイオード、またはこれらが、混載されものであってもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では、各半導体素子21に端子5を直列接続したが、これに限らず、並列接続された複数の半導体素子2のいずれかに、端子5を直列接続するようにしてもよい。また、端子5は、抵抗値も適宜変更可能であり、材料も導電性であればよく、ニッケルを含む合金や銅、あるいは銅より抵抗値が高い材料であっても構わない。
【0034】
(3)上記実施形態では、半導体モジュール2は、半導体素子21を2つ備えるものとしたが、半導体モジュール2が備える半導体素子21の数はこれに限られない。半導体モジュール2は、半導体素子21を1つまたは3つ以上備えるものであってもよい。また、半導体装置1は、任意の数量の半導体モジュール2を有するものであってよい。
【0035】
(4)他の実施形態としては、例えば、CSP2の上面とEバスバー4との間がエポキシ樹脂などで封止、固化されてもよい。このような実施形態によれば、CSP2の上面とEバスバー4との間にエポキシ樹脂などを封止、固化したことで、Eバスバー4を上方から押さえることができる。従って、大電流通電により端子5とEバスバー4との間に電磁力が発生しても、Eバスバー4の跳ね上がりを抑えることができる。このような実施形態によれば、半導体装置1の通電経路の破断防止をより確実に行うことができ、信頼性がいっそう向上する。
【符号の説明】
【0036】
1…半導体装置
2…CSP(Chip Scale Package)
21…半導体素子
22…導体
23…ステンレス製のケース
3…Cバスバー
4…Eバスバー
5…端子
6…絶縁物
7…接続導体
8…端子支持部