(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】肝機能改善または脂肪蓄積抑制の微生物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240520BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240520BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240520BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240520BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240520BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240520BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240520BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240520BHJP
C12R 1/25 20060101ALN20240520BHJP
C12R 1/225 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A61K35/747
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P9/10
A61P9/00
C12R1:25
C12R1:225
(21)【出願番号】P 2022557711
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2020016195
(87)【国際公開番号】W WO2021194040
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035900
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月18日、「Lactobacillus salivarius strain LMT15-14 16S ribosomal RNA gene,partial sequence」(GenBankデータベース、アクセッション番号MN689622)として、以下のアドレスに発表<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/1774959575>
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月18日、「Lactobacillus plantarum strain LMT19-1 16S ribosomal RNA gene,partial sequence」 (GenBankデータベース、アクセッション番号MN689623)として、以下のアドレスに発表<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/MN689623.1>
【微生物の受託番号】KCTC KCTC14142BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC14141BP
(73)【特許権者】
【識別番号】513243723
【氏名又は名称】メディトックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ウジン
(72)【発明者】
【氏名】キム, タイフン
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147457(JP,A)
【文献】特表2018-536385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性脂肪抑制、脂肪酸化促進及び脂肪合成抑制の活性を有するラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)。
【請求項2】
中性脂肪抑制、脂肪酸化促進及び脂肪合成抑制の活性を有するラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)。
【請求項3】
有効成分として、請求項1または2に記載の微生物、あるいはその培養
物を含む、肝機能を改善または肥満関連疾患を予防
もしくは治療するための薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記肥満関連疾患は、非アルコール性脂肪肝、2型糖尿、高脂血症、心血管疾患、動脈硬化症、脂質関連代謝症侯群及び肥満からなる群から選択される
少なくとも1つである、請求項3に記載の
薬剤学的組成物。
【請求項5】
有効成分として、請求項1または2に記載の微生物、あるいはその培養
物を含む、肝機能を改善または肥満関連疾患を予防
もしくは改善するための食品組成物。
【請求項6】
前記肥満関連疾患は、非アルコール性脂肪肝、2型糖尿、高脂血症、心血管疾患、動脈硬化症、脂質関連代謝症侯群及び肥満からなる群から選択される
少なくとも1つである、請求項5に記載の
食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトバチルス属バクテリアは、グラム陽性、選択的嫌気性(facultative anaerobic)または微細好気性(microaerophilic)、バー状、胞子を形成しないバクテリア属(genus)である。ラクトバチルスは、乳酸菌グループの主要部分である。ヒトにおいて、ラクトバチルスは、消化系、泌尿系及び生殖器系のような多くの身体部位において、微生物群集(microbiota)の主要成分である。
ラクトバチルス属バクテリアは、ヨーグルトのような食品に含まれている。また、一部ラクトバチルス種は、抗炎症活性のような生理的活性を有する。例えば、一部ラクトバチルスは、過敏性腸症侯群(IBS:irritable bowel syndrome)に効果があると報告されている。
【0003】
一方、肥満は、体内に脂肪が過度に蓄積されることを示す。肥満は、脂肪肝(fatty liver)、高脂血症、高血糖、動脈硬化、糖尿病のような疾病の原因と知られている。肥満は、脂肪分化(adipogenesis)の結果として、脂肪細胞の数が増加し、脂肪細胞の脂質含量が増加することによって示される。脂肪細胞(adipocyte)は、超過カロリーを中性脂肪(triglycerides)に合成して保存するのに主要な役割を行い、脂肪分化の結果として、脂肪細胞の大きさと数とが増加し、細胞内脂質蓄積が加速化される。
【0004】
脂肪肝(fatty liver)は、肝臓内に過度な脂肪がたまって生じるが、一般的に、肝臓重量の5%以上の脂肪がたまることになれば、脂肪肝と診断される。そのような脂肪肝は、過飲によるアルコール性脂肪肝と、酒と関係なく生じる非アルコール性脂肪肝とに分けられる。非アルコール性脂肪肝疾患は、1つの病気とするよりも、軽い脂肪肝から、慢性肝炎、肝硬変症に至る多様な病気を含む。非アルコール性脂肪肝は、肥満、成人型糖尿病、高脂血症のような代謝症侯群と関連されて示されるが、過度な熱量を続けて摂取することになれば、体内脂肪細胞及び肝臓に脂肪が蓄積され、増大された脂肪二より、肝臓に有害なさまざまな物質、例えば、サイトカインが分泌され、脂肪肝炎と肝硬変症とに進む。
【0005】
ラクトバチルス属バクテリアは、人体の腸内に棲息する正常微生物群集の主要構成員であり、健康な消化器官と膣内環境との維持にあたって重要であると、かなり前から知られており、米国の公衆健康ガイドライン(U.S. Public Health Service guidelines)によれば、現在、米国菌株寄託機関(ATCC)に寄託されたラクトバチルス菌株は、いずれも人体や動物に疾病を誘発する潜在的危険については、知られているところがないと認められる「安全レベル(bio-safety level)1」に分類されている。
ただし、乳酸菌は、既存の研究を介し、免疫反応調節効果と、抗癌及び抗酸化の効果とにすぐれていると知られているが、ラクトバチルス菌株が、体内脂肪含量を低減させる効果、または脂肪関連疾患を治療する効果については、特に知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一目的は、中性脂肪抑制、脂肪酸化促進及び脂肪合成抑制の活性を有するラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせを提供することである。
【0007】
他の目的は、有効成分として、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物、またはそれらの混合物を含む、肝機能を改善させたり、肥満関連疾患を予防または治療したりするための薬剤学的組成物を提供することである。
【0008】
他の目的は、有効成分として、前記微生物、あるいはその培養物またはその抽出物、またはそれらの混合物を含む、肝機能を改善または肥満関連疾患を予防または改善するための食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様は、中性脂肪抑制、脂肪酸化促進及び脂肪合成抑制の活性を有するラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせを提供する。
【0010】
他の態様は、ラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせの培養物または抽出物を提供する。前記抽出物は、微生物、またはその組み合わせのタンパク質抽出物でもある。前記抽出物は、微生物、またはその組み合わせを溶菌させた溶菌物、またはそれを遠心分離して沈殿物を除去して残った上澄み液でもある。
【0011】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物において、前記組み合わせは、ラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)が、重量基準において、任意の比率で混合されたものでもある。前記混合の比率は、例えば、1:0.3ないし3.0でもある。
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、耐酸性を有するもの;耐胆汁酸性を有するもの;酸化を促進させる活性、脂肪合成を抑制する活性、または2つの活性をいずれも有するもの;脂肪蓄積を抑制するもの、または蓄積された脂肪を低減させるもの;SREBP-1c及びFASからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を抑制するもの;PPAR-1α及びCPT1からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を促進させるもの;AMPKのリン酸化レベルを上昇させるもの;個体に投与される場合、血中アディポネクチンレベルを上昇させるもの;個体に投与される場合、体重及び体内脂肪量からなる群から選択される1以上を低減させるもの;及び肝機能を改善させるもの;からなる群から選択される1以上でもある。前記脂肪は、トリグリセリドでもある。
【0012】
前記耐酸性は、MRS培地において、pH2.5及び37℃において2時間培養した場合、生存率が、80%以上、85%以上、90%以上、80ないし90%、80%ないし95%、85%ないし90%、または90ないし95%であるのでもある。
前記耐胆汁酸性は、0.3%胆汁酸含有MRS培地において、37℃で2時間培養した場合、生存率が、75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、75ないし90%、75ないし95%、80ないし90%、80%ないし95%、85%ないし90%、または90ないし95%であるのでもある。
【0013】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、PPAR-1α及びCPT1からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を促進させることができる。前記促進は、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、PPAR-1α及びCPT1からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%増大させるものでもある。
【0014】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、SREBP-1c及びFASからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を抑制することができる。前記抑制は、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、SREBP-1c及びFASからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%低減させるものでもある。
【0015】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、脂肪の量またはその蓄積を抑制するものでもある。前記抑制は、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、脂肪の量またはその蓄積を10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%減少させるものでもある。
【0016】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、個体に投与される場合、体重、及び体内の脂肪組織量からなる群から選択される1以上を低減させるものでもある。前記低減は、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%低減させるものでもある。
【0017】
前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、個体に投与される場合、トリグリセリドレベルを低下させるものでもある。前記低下は、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物が存在しない場合に比べ、重量基準で10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、45%以上、50%以上、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、100%以上、10%ないし100%、20%ないし100%、30%ないし100%、40%ないし100%、50%ないし100%、60%ないし100%、70%ないし100%、80%ないし100%、または90%ないし100%低下させるものでもある。
【0018】
他の態様は、前述のラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物を有効成分として含む組成物を提供する。
【0019】
前記組成物は、耐酸性を有するもの;耐胆汁酸性を有するもの;酸化を促進させる活性、脂肪合成を抑制する活性、または2つの活性をいずれも有するもの;脂肪蓄積を抑制するもの、または蓄積された脂肪を低減させるもの;SREBP-1c及びFASからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を抑制するもの;PPAR-1α及びCPT1からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を促進させるもの;AMPKのリン酸化レベルを上昇させるもの;個体に投与される場合、血中アディポネクチンレベルを上昇させるもの;個体に投与される場合、体重及び体内脂肪量からなる群から選択される1以上を低減させるもの;及び肝機能を改善させるもの; からなる群から選択される1以上でもある。前記脂肪は、トリグリセリドでもある。
【0020】
従って、前記組成物は、耐酸性及び耐胆汁酸性を有するものであるので、酸性を帯びる腸内においても使用される。また、前記組成物は、酸化を促進させるもの;脂肪合成を抑制するもの;脂肪の量または蓄積を低減させるもの、あるいは蓄積された脂肪を低減させるもの;SREBP-1c及びFASからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を抑制するもの;PPAR-1α及びCPT1からなる群から選択される1以上の遺伝子の発現を促進させるもの;AMPKのリン酸化レベルを上昇させるもの;個体に投与され、血中アディポネクチンレベルを上昇させるもの;肝機能を改善させるもの;及び個体に投与され、体重及び体内脂肪量からなる群から選択される1以上を低減させるもの;のうち1以上のためににも使用される。前記脂肪は、トリグリセリドでもある。
【0021】
体内の脂肪量を減少させることは、治療目的に減少させることを含むものでもある。例えば、体内の脂肪量を減少させることは、肥満関連疾患の予防または治療に使用するためのものでもある。前記肥満関連疾患は、脂肪肝、2型糖尿、高脂血症、心血管疾患、動脈硬化症、脂質関連代謝症侯群及び肥満からなる群から選択される1種以上のものでもある。前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝でもある。前記個体は、肥満関連疾患が発病したが、あるいは発病する可能性があるヒトを含む動物でもある。
【0022】
前記組成物は、食品または薬剤学的組成物、すなわち、の薬品でもある。前記組成物は、食品学的または薬剤学的に許容可能な担体を含むものでもある。
【0023】
前記組成物は、また前記組成物において、前記微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物を、「食品学的有効量」または「治療学的有効量」で含むものでもある。前記組成物において、「治療学的有効量」は、治療を必要とする個体に投与される場合、治療効果を示すに十分な量を意味する。用語「治療」は、個体、例えば、ヒトを含む哺乳類において、疾患または医学的症状、例えば、肥満疾病を治療することを意味し、それは、次を含む:(a)疾患または医学的症状の発生を予防すること、すなわち、患者の予防的治療;(b)疾患または医学的症状の緩和、すなわち、患者において、疾患または医学的症状の除去または回復を引き起こし;(c)疾患または医学的症状の抑制、すなわち、個体において、疾患または医学的症状の進行を遅らせたり、停止させたりすること;または(d)個体において、疾患または医学的症状を軽減させること。前記「有効量」は、当業者が適切に選択することができる。前記「有効量」は、0.01mgないし10,000mg、0.1mgないし1,000mg、1mgないし100mg、0.01mgないし1,000mg、0.01mgないし100mg、0.01mgないし10mg、または0.01mgないし1mgでもある。
【0024】
前記組成物は、経口投与されうる。従って、前記組成物は、錠剤、カプセル剤、水性液剤または懸濁液剤のような多様な形態にも製剤化される。該経口用錠剤の場合、ラクトース、とうもろこし澱粉のような賦形剤、及びステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤が一般的に加えられうる。該経口投与用カプセル剤の場合、ラクトース及び/または乾燥とうもろこし澱粉が希釈剤としても使用される。該経口用水性懸濁液剤が必要な場合、活性成分を、乳化剤及び/または懸濁化剤と結合させることができる。必要な場合、特定甘味剤及び/または香味剤を加えることができる。
【0025】
他の態様は、ラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物を、肝臓または脂肪細胞と接触させる段階を含む、肝臓または脂肪細胞において、脂肪含量を減少させる方法を提供する。
【0026】
前記方法において、前記接触は、微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物を、肝細胞または脂肪細胞を含む培地中で培養するものでもある。前記方法は、インビトロ方法またはインビボ方法でもある。
【0027】
他の態様は、ラクトバチルス・サリバリウスLMT15-14(受託番号KCTC14142BP)及びラクトバチルス・プランタルムLMT19-1(受託番号KCTC14141BP)からなる群から選択される微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物を個体に投与する段階を含む、個体の脂肪含量を減少させるか、あるいは肝機能を改善させる方法を提供する。
【0028】
前記方法において、当業者であるならば、投与時、投与経路は、患者の状態によって適切に選択することができるであろう。前記投与は、経口投与または局所投与でもある。
【0029】
前記方法において、投与量は、前述のように、患者の状態、投与経路、主治のの判断のような多様な因子によって多様になる。効果的な投与量は、体外実験または動物モデル試験で得られた用量反応曲線から推定することができる。投与される組成物に存在する本発明の化合物の比率及び濃度は、化学的特性、投与経路、治療的投与量などによっても決定される。前記投与量は、個体に、約1μg/kg/日ないし約1g/kg/日、または約0.1mg/kg/日ないし約500mg/kg/日の有効量でもっても投与される。前記用量は、個体の年齢・体重・感受性、または症状によっても変更される。
前記方法において、前記個体は、ヒトを含む哺乳動物でもある。
【発明の効果】
【0030】
一態様による微生物、またはその組み合わせ、あるいはその培養物またはその抽出物は、脂肪含量を減少させるため、または肝機能を改善させるために使用することができる。
【0031】
他の態様による組成物は、脂肪含量を減少させるため、または肝機能を改善させるとために使用することができる。
他の態様による方法によれば、脂肪含量を効率的に減少させるか、あるいは肝機能を効率的に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、経時的な体重変化を示した図である。
【
図1B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、経時的な体重変化を示した図である。
【
図2A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、肝組織の体重変化、及び脂質蓄積変化を示した図である。
【
図2B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、肝組織の体重変化、及び脂質蓄積変化を示した図である。
【
図3A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、肝組織内中性脂肪含量を示した図である。
【
図3B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、肝組織内中性脂肪含量を示した図である。
【
図4A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、肝組織内AMPKの活性を示した図である。
【
図4B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、肝組織内AMPKの活性を示した図である。
【
図5A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、肝組織内脂肪酸化関連遺伝子及び脂肪合成関連遺伝子の発現量を示した図である。
【
図5B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルおいて、肝組織内脂肪酸化関連遺伝子及び脂肪合成関連遺伝子の発現量を示した図である。
【
図6A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、内臓脂肪組織の体重変化を示した図である。
【
図6B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、内臓脂肪組織の体重変化を示した図である。
【
図7A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、内臓脂肪組織内AMPKの活性を示した図である。
【
図7B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、内臓脂肪組織内AMPKの活性を示した図である。
【
図8A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、内臓脂肪組織内の脂肪酸化関連遺伝子及び脂肪合成関連遺伝子の発現量を示した図である。
【
図8B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、内臓脂肪組織内の脂肪酸化関連遺伝子及び脂肪合成関連遺伝子の発現量を示した図である。
【
図9A】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、予防モデルにおいて、血液内アディポネクチンの含量を示した図である。
【
図9B】高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種乳酸菌を投与し、治療モデルにおいて、血液内アディポネクチンの含量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1.菌株の分離
1.菌株の分離
菌株の分離は、家庭で直接つけた伝統発酵食品、及び乳酸菌に接していない幼児糞便を100g取り、滅菌水に希釈し、ストマッカ(stomacher)で5分間均質化して行った。均質化されたサンプルは、段階的に希釈し、ブロモフェノールブルー(Sigma、米国)を含むMRS(Difco、米国)アガール平板培地に塗抹し、37℃で2ないし3日間培養し、示されたコロニーを、形態別及び色別に区別し、さらに純粋分離し、最終2個菌株を得た。純粋分離された乳酸菌は、それぞれの系統を確認するために、下記実施例1.2.のように、16S rDNA系統分析を実施した。
【0035】
2.16S rDNA分析
選別された乳酸菌は、27F(配列番号3)と1492R(配列番号4)とのプライマーセットと、それぞれのLMT15-14及びLMT19-1のゲノムとをテンプレートにしてPCRを行い、16S rDNA増幅産物を得た。前記増幅産物のヌクレオチド配列を、シーケンシングを介して確認した。その結果、LMT15-14及びLMT19-1の16S rDNAは、それぞれ配列番号1及び2のヌクレオチド配列を有する。また、前記16S rDNAのヌクレオチド配列を、NCBI blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を使用して解析した。系統樹分析結果、LMT15-14は、ラクトバチルス・サリバリウス種のようであり、LMT19-1は、ラクトバチルス・プランタルム種のようであった。LMT15-14及びLMT19-1の16S rDNAは、それぞれラクトバチルス・サリバリウス種及びラクトバチルス・プランタルム種と配列同一性が、それぞれ99.9%及び99.9%であり、従って、LMT15-14菌株及びLMT19-1菌株は、ラクトバチルス・サリバリウス種及びラクトバチルス・プランタルム種に属する新たな菌株であると確認された。該2個菌株は、それぞれラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)LMT15-14及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)LMT19-1と命名し、それらを韓国生命工学研究院所在韓国細胞株銀行(KCTC:Korean Collection for Type Cultures)に、2020年2月21日付けで、寄託番号KCTC14142BP及び同KCTC14141BPで寄託した。
【0036】
実施例2.高脂肪食餌で非アルコール性脂肪肝が誘導されたC57BL/6Jマウスモデルにおける乳酸菌による脂肪肝抑制効能評価
1.C57BL/6Jマウスの肥満誘導、及び乳酸菌処理
高脂肪食餌によって誘発された脂肪肝の抑制効能を評価するために、予防モデルと治療モデルとの2モデルにおいて、乳酸菌投与時の脂肪肝誘発様相を評価した。
【0037】
実験に使用された動物は、高脂肪食餌で肥満が誘発されるC57BL/6Jマウスであり、予防モデルとしての7週齢マウス(オス、18~22g)と、治療モデルとしての4週齢マウス(オス、13~17g)をオリエントバイオから購入し、1週間一般食餌(SAFE、フランス)を給与し、環境に適応させた。その後、該予防モデルは、正常対照群を除いた残り群は、高脂肪食餌(Research diet、米国)、並びに8週間陽性対照物質、及びそれぞれの乳酸菌を、一日に1回経口投与ゾンデを利用し、胃内に直接投与し、総8週後の非アルコール性脂肪肝誘発様相を比較した。治療モデルは、高脂肪食餌で、8週間非アルコール性脂肪肝を誘導し、8週後からは、高脂肪食餌、並びに陽性対照物質、及びそれぞれの乳酸菌を、一日に1回経口投与ゾンデを利用し、胃内に直接投与し、総16週後の非アルコール性脂肪肝誘発様相を比較した。群(n=10)は、総8群であり、下記表1のように構成した。
【表1】
【0038】
体重及び食餌量は、週1回測定し、実験期間が終わった後、実験動物は、絶食させ、CO2ガスで、低酸素症及び睡眠誘導させ、安楽死させた。血漿及び組織のサンプルは、使用時まで零下80℃で保管した。
【0039】
2.高脂肪食餌で非アルコール性脂肪肝が誘導されたC57BL/6Jマウスモデルにおける体重変化測定
全実験期間の間、毎日一定時間に、実験動物の体重を測定し、その結果を、予防モデルは、
図1Aに示し、治療モデルは、
図1Bに示した。
図1A、
図1Bは、高脂肪食餌で脂肪肝誘導されたマウスにおいて、2種の選別された乳酸菌を投与した場合、経時的な体重変化を示した図面である。
図1A、
図1Bにおいて、横軸は、時間(週)を示し、縦軸は体重を示す。
【0040】
図1A、
図1Bに示されているように、予防モデル及び治療モデルにおいて、脂肪肝誘導高脂肪食餌を給与した群において、体重が増加した。高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、7.5%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、12.1%減少し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、7.9%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、5.6%減少した。
【0041】
3.高脂肪食餌で非アルコール性脂肪肝が誘導されたC57BL/6Jマウスモデルにおける肝組織変化分析
(1)肝組織の重さ測定
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を評価した。予防モデル及び治療モデルの実験期間終了後、各群のマウスから肝組織を摘出して重さを測定し、その結果を、予防モデルは、
図2Aに示し、治療モデルは、
図2Bに示した。
図2A、
図2Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、肝組織の重さを確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、26.6%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、24.6%減少し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、27.8%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、24.9%減少した。
【0042】
(2)肝組織内の中性脂肪含量確認
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を確認するために、肝臓内中性脂肪含量を確認した。各群のマウスから得た肝組織サンプルを、5% NP-40(BioVision、米国)を利用し、100℃で5分加熱した後、常温に冷やした後、該過程を3回反復させた。反復後、上澄み液だけを取り、中性脂肪定量キット(BioVision、米国)を利用し、中性脂肪の含量を、スペクトロフォトメータを利用し、570nmにおける吸光度を測定し、その結果を、予防モデルは、
図3Aに示し、治療モデルは、
図3Bに示した。
【0043】
図3A、
図3Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、肝内中性脂肪含量を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、65.4%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、68.7%減少し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、54.4%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、55.5%減少した。乳酸菌を投与した群は、対照群に比べ、肝組織内中性脂肪含量が明らかに低いということを確認することができ、それは、乳酸菌が肝内中性脂肪の分解を促進し、その合成を抑制し、非アルコール性脂肪肝を改善させたと予想された。
【0044】
(3)肝組織内のAMPK(AMP-activated protein kinase)活性化確認
AMPKは、細胞内エネルギー状態を感知するタンパク質であり、エネルギー代謝と係わる肝臓、筋肉、脂肪組織などにおいて、糖、脂肪、コレステロールの分解及び合成を調節する役割を行う。すなわち、細胞内において、糖の吸収及び脂肪の酸化を促進させる物質であり、該AMPKの活性化は、肝組織内脂質酸化を増大させ、中性脂肪数値を低減させる。
【0045】
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を確認するために、肝組織内AMPK活性程度を確認した。すなわち、各群のマウスから得た肝組織サンプルを、タンパク質抽出溶液であるPRO-PRE-P(Intron、韓国)を利用し、タンパク質を獲得した。抽出されたタンパク質は、Bradford assay(Bio-Rad、米国)を介して定量した後、SDS-ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen、米国)でもって電気泳動によって分離し、PVDF(poly vinylidene difluoride membrane)メンブレン(Bio-Rad、米国)に移した。タンパク質が転移されたPVDFメンブレンは、常温において1時間、5% BSAを含むTBST 0.1%(Tris buffered saline with 0.1% Tween20)溶液で遮断した後、一次抗体である抗p-AMPK、抗AMPK及び抗β-アクチンの抗体(1:1,000、Cell Signaling、米国)と、4℃で18時間反応させた。反応が終わった後、TBST 0.1%溶液で洗浄し、二次抗体である抗兎IgG HRP連結抗体(1:2,000、Cell Signaling、米国)で、常温で1時間反応させた後、TBST 0.1%で洗浄した。洗浄後、ECL溶液(Thermo Fisher Scientific、米国)で反応させ、Chemi-doc(Bio-Rad、米国)で測定した。その結果を、予防モデルは、
図4Aに示し、治療モデルは、
図4Bに示した。
【0046】
図4A、
図4Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、肝組織内AMPK活性化を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、39.7% AMPKのリン酸化が増大し、L.プランタルムLMT19-1は、42.1% AMPKのリン酸化が増大し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、45.4% AMPKのリン酸化が増大し、L.プランタルムLMT19-1は、66.0% AMPKのリン酸化が増加した。それは、リン酸化されたAMPKが増加することにより、肝内脂肪酸化活性化が増大し、脂肪合成を調節し、非アルコール性脂肪肝を抑制することができるということを示唆する。
【0047】
(4)肝組織の脂肪酸化と脂肪合成との関連バイオマーカー遺伝子発現の有意的差確認
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を確認するために、各群のマウスから得た肝組織サンプルを利用し、肝組織内脂肪酸化関連遺伝子であるPPAR-α及びCPT1と、脂肪合成関連遺伝子であるSREBP-1c及びFASとの発現差を、リアルタイム(real time)PCRを介して測定した。
【0048】
すなわち、各群のマウスから得た肝組織サンプルを、RNA抽出キットであるAccuPrep
(登録商標)Universal RNA Extraction Kit(Bioneer、韓国)を利用し、RNAを抽出した。その後、RocketScript Cycle RT Premix(Bioneer、韓国)を利用し、RNAに相補的なDNAを得た後、SYBR green(Takara、日本)、及び下記の表2に示したプライマーを利用し、脂肪酸化関連遺伝子(PPAR-α及びCPT1)及び脂肪合成関連遺伝子(SREBP-1c及びFAS)の発現を確認した。その結果を、予防モデルは、
図5Aに示し、治療モデルは、
図5Bに示した。
【表2】
【0049】
図5A、
図5Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、肝組織内脂肪酸化関連遺伝子であるPPAR-α及びCPT1の発現量を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、131.3%、438.1%増加し、L.プランタルムLMT19-1は、163.6%、494.9%増加し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、43.5%、102.2%増加し、L.プランタルムLMT19-1は、44.2%、69.2%増加した。また、肝組織内脂肪合成関連遺伝子であるSREBP-1c及びFASの発現量を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、58.0%、65.8%低減し、L.プランタルムLMT19-1は、39.2%、57.7%低減し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、69.1%、60.1%低減し、L.プランタルムLMT19-1は、65.7%、60.1%低減した。従って、前記乳酸菌投与時間内、脂肪酸化増大及び脂肪合成抑制を介し、脂肪肝を抑制することができる。
【0050】
4.高脂肪食餌で非アルコール性脂肪肝が誘導されたC57BL/6Jマウスモデルにおける内臓脂肪組織変化分析
(1)内臓脂肪組織の重さ測定
正常に、肝組織脂肪酸は、80%が脂肪組織の中性脂肪が脂肪酸に分解された後、循環系を介して肝組織に流入され、15%は、食事後、消化系を介して吸収された後、循環系を介して肝組織に流入され、残り5%は、肝組織の脂肪酸新生過程(de novo lipogenesis)を介して新たにされる。従って、脂肪組織からの脂肪酸流入増大は、肝組織において、過度な脂肪肝を形成するのに密接な関連性を有する。
【0051】
そのために、高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる内臓脂肪組織抑制効果を評価した。予防モデル及び治療モデルの実験期間終了後、各群のマウスから、内臓脂肪組織、すなわち、腹部側腹腔内に存在する脂肪から、皮下脂肪を除いた、腸と、腸間とに有機的に存在する脂肪を摘出して重さを測定し、その結果を、予防モデルは、
図6Aに示し、治療モデルは、
図6Bに示した。
【0052】
図6A、
図6Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、内臓脂肪組織の重さを確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、27.1%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、33.9%減少し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、33.7%減少し、L.プランタルムLMT19-1は、24.6%減少した。
【0053】
(2)内臓脂肪組織内のAMPK活性化確認
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を確認するために、内臓脂肪組織内AMPK活性程度を確認した。各群のマウスから得た内臓脂肪組織サンプルを利用し、前記実施例3.3と同一方法で進め、その結果を、予防モデルは、
図7Aに示し、治療モデルは、
図7Bに示した。
【0054】
図7A、
図7Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、内臓脂肪組織内AMPK活性化を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、73.0% AMPKのリン酸化が増大し、L.プランタルムLMT19-1は、80.8% AMPKのリン酸化が増大し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、44.8% AMPKのリン酸化が増大し、L.プランタルムLMT19-1は、44.9% AMPKのリン酸化が増大した。それは、リン酸化されたAMPKが増大することにより、脂肪細胞内脂肪酸化活性化が増大し、脂肪合成を調節し、肝臓における脂肪酸流入を低減させることができるということを示唆する。
【0055】
(3)内臓脂肪組織の脂肪酸化と脂肪合成との関連バイオマーカー遺伝子発現の有意的差確認
高脂肪食餌を利用した非アルコール性脂肪肝誘導モデルにおいて、乳酸菌を投与することによる脂肪肝改善効果を確認するために、内臓脂肪組織内脂肪酸化関連遺伝子であるPPAR-α及びCPT1と、脂肪合成関連遺伝子であるSREBP-1c及びFASとの発現差を、リアルタイムPCRを介して測定した。各群のマウスから得た内臓脂肪組織サンプルを利用し、前記実施例3.4と同一方法で進め、その結果を、予防モデルは、
図8Aに示し、治療モデルは、
図8Bに示した。
【0056】
図8A及び
図8Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、内臓脂肪組織内脂肪酸化関連遺伝子であるPPAR-α及びCPT1の発現量を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、78.8%、86.8%増加し、L.プランタルムLMT19-1は、76.6%、83.0%増加し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、36.9%、112.3%、増加し、L.プランタルムLMT19-1は、41.7%、117.5%増加した。また、内臓脂肪組織内脂肪合成関連遺伝子であるSREBP-1c及びFASの発現量を確認した結果対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、65.5%、59.1%低減し、L.プランタルムLMT19-1は、80.7%、67.1%低減し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、53.4%、53.7%低減し、L.プランタルムLMT19-1は、59.3%、71.1%低減した。従って、前記乳酸菌は、投与時、脂肪組織の脂肪酸化増大及び脂肪合成抑制を介し、中性脂肪の合成を抑制し、肝内脂肪酸の流入を低減させ、脂肪肝を抑制することができる。
【0057】
5.高脂肪食餌で非アルコール性脂肪肝が誘導されたC57BL/6Jマウスモデルにおけるアディポネクチン確認
アディポネクチンは、脂肪組織から分泌されるホルモンであり、AMPK活性とPPARα活性とに影響を与え、脂肪調節に影響を与える。肥満患者において血液内アディポネクチン量が低減し、体脂肪低減は、アディポネクチン生産を増大させ、脂肪酸のβ-酸化を促進し、脂肪肝を抑制する役割を行う。そのようなアディポネクチンは、体脂肪が過度に蓄積された場合、発現量及び血中濃度が低減されるので、脂肪蓄積の指標として使用することができる。
【0058】
そのような脂肪酸化活性化に影響を与えるホルモンであるアディポネクチンの含量を測定するために、各群のマウスから採取した血液サンプルをチューブに収集し、遠心分離し、血清を分離した。分離された血清は、Adiponectin(mouse)ELISA kit(Adipogen Inc、韓国)を使用し、アディポネクチン含量を測定し、その結果を、予防モデルは、
図9Aに示し、治療モデルは、
図9Bに示した。
【0059】
図9A及び
図9Bに示されているように、高脂肪食餌及び乳酸菌を経口投与した群の場合、血中アディポネクチン含量を確認した結果、対照群対比で、予防モデルにおいて、L.サリバリウスLMT15-14は、22.4%アディポネクチンが増加し、L.プランタルムLMT19-1は、26.7%アディポネクチンが増加し、治療モデルにおいては、L.サリバリウスLMT15-14は、25.6%アディポネクチンが増加し、L.プランタルムLMT19-1は、26.3%アディポネクチンが増加した。従って、アディポネクチンが増加することにより、脂肪酸のβ-酸化に関連があるAMPKの活性化を増大させ、脂肪肝生成を抑制することが可能である。
【0060】
実施例3.菌株の形態学的及び発酵的な特性調査
1.菌学的特性分析
非アルコール性脂肪肝抑制に効果がある2種の乳酸菌L.サリバリウスLMT15-14とL.プランタルムLMT19-1とを、MRS平板培地で培養し、コロニーの形態を観察し、該コロニー形態は、下記表3に示した。
【表3】
【0061】
2.選抜された乳酸菌株の糖発酵特性
糖発酵特性は、API 50 CHLキット(Biomerieux、フランス)を利用し、供給社の実験方法によって調査した。非アルコール性脂肪肝抑制に効果がある2種の乳酸菌であるL.サリバリウスLMT15-14とL.プランタルムLMT19-1との糖発酵特性を下記表4に示した。
【表4】
【0062】
実施例7.安定性
1.乳酸菌の耐酸性の調査
乳酸菌が腸内において、プロバイオティックスとしての効能を発揮するためには、摂取後、低いpH上を通過しなければならない。乳酸菌の耐酸性を調査するために、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で18時間培養し、その次に、HClでpH2.5に調整し、滅菌されたMRS液体培地に、前記乳酸菌を接種し、37℃で2時間培養した。乳酸菌接種直後と、2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地に希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、乳酸菌数を測定し、下記表5に示した。
【表5】
【0063】
実施例7.安定性
1.乳酸菌の耐酸性の調査
乳酸菌が腸内において、プロバイオティックスとしての効能を発揮するためには、摂取後、低いpH上を通過しなければならない。乳酸菌の耐酸性を調査するために、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で18時間培養し、その次に、HClでpH2.5に調整し、滅菌されたMRS液体培地に、前記乳酸菌を接種し、37℃で2時間培養した。乳酸菌接種直後と、2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地に希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、乳酸菌数を測定し、下記表6に示した。
【表6】
【0064】
その結果、非アルコール性脂肪肝抑制に効果がある2種乳酸菌において、L.サリバリウスLMT15-14は、84.4%、L.プランタルムLMT19-1は、97.8%と、pH2.5における酸性に対し、高い生存率を確認することができた。そのような乳酸菌の特徴は、前述の生理的pHと近いpH3より低いpHにおいて、50%以上の適正乳酸菌数を維持しているために、胃酸分泌による低いpHにおいても、安定して生菌数が維持され、摂取時、腸内到達率が非常に高いとも予想される。
【0065】
2.乳酸菌の耐胆汁性の調査
乳酸菌の耐胆汁性を調査するために、以下の方法で実験を実施した。乳酸菌は、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で18時間培養し、腸管内胆汁酸塩濃度が0.1(w/v)%前後であることを勘案し、0.3(w/v)%の胆汁酸塩[(Bile salts(Sigma、米国)]が含有されたMRS液体培地に、前記乳酸菌を接種し、37℃で2時間それぞれ培養した。乳酸菌接種直後と、2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地に希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を係数し、乳酸菌数を測定し、下記表7に示した。
【表7】
【0066】
その結果、非アルコール性脂肪肝抑制に効果がある2種乳酸菌において、L.サリバリウスLMT15-14は、0.8%、L.プランタルムLMT19-1は、73.9%と、特に、L.プランタルムLMT19-1は、腸内実際濃度と類似した0.1%よりもさらに高い0.3%においても、50%以上の適正乳酸菌数を維持した。従って、人体や動物の腸内においても、十分に生存することができ、腸内到達率が非常に高いと予想することができる根拠にもなる。
【配列表】