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特許7490810光学レンズ、光学レンズ群、車両ランプシステムおよび車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】光学レンズ、光学レンズ群、車両ランプシステムおよび車両
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/27 20180101AFI20240520BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20240520BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240520BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240520BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240520BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20240520BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240520BHJP
【FI】
F21S41/27
F21S41/275
F21V5/04 650
F21S41/148
F21S41/32
G02B3/06
F21W102:155
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022561683
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2021074835
(87)【国際公開番号】W WO2021218265
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】202010367179.X
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010628888.9
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518211749
【氏名又は名称】ハスコ ビジョン テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張潔
(72)【発明者】
【氏名】董世▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】孟凡
(72)【発明者】
【氏名】陳佳縁
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147153(JP,A)
【文献】実開平04-106802(JP,U)
【文献】特開昭59-008202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/27
F21S 41/275
F21V 5/04
F21S 41/148
F21S 41/32
G02B 3/06
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光部と出光部とを備える光学レンズであって、
前記入光部に第1単方向コリメート面(1)が形成され、
前記出光部に第2単方向コリメート面(2)が形成され、
前記第1単方向コリメート面(1)のコリメート方向と、前記第2単方向コリメート面(2)のコリメート方向とが互いに垂直であり、且つ、前記第1単方向コリメート面(1)と前記第2単方向コリメート面(2)とにより前記光学レンズの焦点またはフォーカス領域を形成し、
前記第1単方向コリメート面(1)および前記第2単方向コリメート面(2)は、一方が柱面であり、他方が階段状のフレネル柱面である
ことを特徴とする光学レンズ。
【請求項2】
前記第1単方向コリメート面(1)および前記第2単方向コリメート面(2)は、いずれもコリメート曲線が該コリメート曲線の位置する平面の法線方向に沿って延伸することによって形成された曲面である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記第1単方向コリメート面(1)および前記第2単方向コリメート面(2)は、いずれも柱面または略柱面である
ことを特徴とする請求項2に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記第1単方向コリメート面(1)および前記第2単方向コリメート面(2)は、いずれも円柱面である
ことを特徴とする請求項3に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記第1単方向コリメート面(1)および前記第2単方向コリメート面(2)は、いずれも階段状のフレネル柱面である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項6】
前記第1単方向コリメート面(1)のコリメート方向および前記第2単方向コリメート面(2)のコリメート方向は、一方が鉛直方向であり、他方が水平方向である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光学レンズ。
【請求項7】
非対称配光パターンを形成できるように、前記第1単方向コリメート面(1)と前記第2単方向コリメート面(2)との共働により、前記光学レンズの両側の焦点距離が異なるようにされる
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光学レンズ。
【請求項8】
光学レンズ群であって、
第1単方向コリメートレンズ群(6)と第2単方向コリメートレンズ群(7)とを含み、
前記第1単方向コリメートレンズ群(6)と前記第2単方向コリメートレンズ群(7)とにより前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域を形成し、且つ、前記第1単方向コリメートレンズ群(6)のコリメート方向と、前記第2単方向コリメートレンズ群(7)のコリメート方向とが互いに垂直であり、
前記第1単方向コリメートレンズ群(6)と前記第2単方向コリメートレンズ群(7)は、いずれもフォーカス方向に沿って並んだ複数の単方向コリメートレンズからなるものである
ことを特徴とする光学レンズ群。
【請求項9】
前記単方向コリメートレンズの入射面および出射面は、そのうちの一方が単方向コリメート曲面であり、または、両方ともコリメート方向が同じである単方向コリメート曲面である
ことを特徴とする請求項に記載の光学レンズ群。
【請求項10】
前記第1単方向コリメートレンズ群(6)と前記第2単方向コリメートレンズ群(7)とは、側壁により接続される
ことを特徴とする請求項に記載の光学レンズ群。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光学レンズまたは請求項10のいずれか1項に記載の光学レンズ群を含むことを特徴とする車両ランプシステム。
【請求項12】
光源(3)をさらに含み、前記光源(3)が前記光学レンズまたは前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域に配置され、または、
光源(3)と1次光学素子(4)とをさらに含み、前記1次光学素子(4)が、前記光源(3)からの光線を前記光学レンズまたは前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域に集光させ、そして前記光学レンズまたは前記光学レンズ群に入射させるように構成される
ことを特徴とする請求項11に記載の車両ランプシステム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の車両ランプシステムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の光学素子に関し、具体的には、光学レンズに関し、さらに、光学レンズ群、該光学レンズまたは該光学レンズ群を有する車両ランプシステム、および該車両ランプシステムを有する車両に関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2020年04月30日に出願された中国特許出願202010367179.Xと、2020年07月01日に出願された中国特許出願202010628888.9に基づいて優先権を主張し、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
車両ランプは車両用灯具のことで、夜間に道路を走行する車両の照明器具であり、さまざまな車両走行情報を伝えるための知らせ用器具でもあり、車両の安全走行を確保するために重要な役割を担っている。社会経済の発展に伴い、自動車産業も発展している。そして、自動車照明技術の発展に伴い、車両ランプの機能への要求もより高まる。
【0004】
車両ランプの照明機能を実現する照明モジュールにおいて、通常、略平行な出射光を得るために例えば双曲面コリメートレンズのようなコリメート光学素子を設置する。双曲面コリメートレンズは、その曲面がレンズ光軸に対する回転曲面であり、その結像特性が等方的である。
【0005】
しかし、車両ランプの照明の配光パターンには、例えば上下の照射角度が小さく、左右の照射角度が大きいなどの異方性が要求されている。そのため、上記のコリメートレンズを用いた車両ランプの照明システムは、別途の光学系を介して一定幅を持つ基本の配光パターンを形成し、さらにコリメートレンズを介して道路に結像する必要があり、構造が比較的複雑であった。
【0006】
そのため、上記の技術的課題を克服または改善できる新型の光学レンズが求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、車両ランプの照明の配光パターンの異方性の要求を満たし、非対称配光パターンを形成することができる光学レンズを提供することである。
【0008】
本発明がさらに解決しようとする技術的課題は、車両ランプの照明の配光パターンの異方性の要求を満たし、非対称配光パターンを形成することができる光学レンズ群を提供することである。
【0009】
本発明がよりさらに解決しようとする技術的課題は、車両ランプの構造的寸法を抑えることができる車両ランプシステムを提供することである。
【0010】
また、本発明が解決しようとする技術的課題は、より優れた照明効果を有する車両を提供することである。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の技術案は、以下のように実現される。
【0012】
入光部と出光部とを備える光学レンズであって、前記入光部に第1単方向コリメート面が形成され、前記出光部に第2単方向コリメート面が形成され、前記第1単方向コリメート面のコリメート方向と、前記第2単方向コリメート面のコリメート方向と互いに垂直であり、且つ、前記第1単方向コリメート面と前記第2単方向コリメート面とにより前記光学レンズの焦点またはフォーカス領域を形成する。
【0013】
好ましくは、前記第1単方向コリメート面および第2単方向コリメート面は、いずれもコリメート曲線が該当コリメート曲線の位置する平面の法線方向に沿って延伸することによって形成された曲面である。
【0014】
より好ましくは、前記第1単方向コリメート面および第2単方向コリメート面は、いずれも柱面または略柱面である。
【0015】
さらに、前記第1単方向コリメート面および第2単方向コリメート面は、いずれも円柱面である。
【0016】
好ましくは、前記第1単方向コリメート面および第2単方向コリメート面は、いずれも階段状のフレネル柱面である。
【0017】
さらに、前記第1単方向コリメート面および第2単方向コリメート面は、一方が柱面であり、他方が階段状のフレネル柱面である。
【0018】
具体的に、前記第1単方向コリメート面のコリメート方向および第2単方向コリメート面のコリメート方向は、一方が鉛直方向であり、他方が水平方向である。
【0019】
より具体的に、非対称配光パターンを形成できるように、前記第1単方向コリメート面と前記第2単方向コリメート面との共働により、前記光学レンズの両側の焦点距離が異なるようにされる。
【0020】
そして、本発明は光学レンズ群を提供し、該光学レンズ群は、第1単方向コリメートレンズ群と第2単方向コリメートレンズ群とを含み、前記第1単方向コリメートレンズ群と前記第2単方向コリメートレンズ群とにより前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域を形成し、且つ、前記第1単方向コリメートレンズ群のコリメート方向と、前記第2単方向コリメートレンズ群のコリメート方向とが互いに垂直である。
【0021】
好ましくは、前記第1単方向コリメートレンズ群と前記第2単方向コリメートレンズ群は、いずれも少なくとも1つの単方向コリメートレンズからなるものである。
【0022】
より好ましくは、前記単方向コリメートレンズの入射面と出射面は、そのうちの一方が単方向コリメート曲面であり、または、両方ともコリメート方向が同じである単方向コリメート曲面である。
【0023】
任意で、前記第1単方向コリメートレンズ群と前記第2単方向コリメートレンズ群とは、側壁により接続される。
【0024】
また、本発明は、上記のいずれか1種の技術案による光学レンズまたは光学レンズ群を含む車両ランプシステムを提供する。
【0025】
車両ランプシステムは、光源をさらに含み、前記光源が前記光学レンズまたは前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域に配置され、または、光源と1次光学素子とをさらに含み、前記1次光学素子が、前記光源からの光線が前記光学レンズまたは前記光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域に集光させ、そして前記光学レンズまたは前記光学レンズ群に入射させるように構成される。
【0026】
また、本発明は、上記のいずれか1種の技術案による車両ランプシステムを備える車両を提供する。
【0027】
上記の技術案によれば、本発明は、下記のような有益効果を有する。
【0028】
本発明の基本技術案において、本発明の光学レンズは、第1単方向コリメート面と第2単方向コリメート面とを含む。第1単方向コリメート面は、光線を単方向にコリメートする特性を有する。例えば、第1単方向コリメート面のある断面方向において、光線を屈折しないもしくは光線に対する屈折効果が極めて弱い(切断曲線はほぼ直線である)が、該当断面に垂直な方向において、最大の屈折効果を有する。すなわち、第1単方向コリメート面のコリメート方向は単方向である。第2単方向コリメート面も、同様に光線を単方向にコリメートする特性を有する。すなわち、第2単方向コリメート面のコリメート方向も単方向である。ただし、第1単方向コリメート面のコリメート方向と、第2単方向コリメート面のコリメート方向とが互いに垂直であり、このようにして、非対称配光パターンを形成することができる。ここで、非対称配光パターンとは、正方形発光面による光に対して結像する際、配光パターンが、従来のコリメートレンズによる等方的な略正方形の配光パターンではなく、長方形を呈することを意味する。そして、光学レンズは、焦点またはフォーカス領域を有し、光源をその焦点付近またはフォーカス領域内に配置すれば、優れた光学効果を得ることができ、光エネルギーに対する利用効率が高い。
【0029】
また、本発明は、光学レンズ群の態様で光学レンズと同様な機能を実現することができる。
【0030】
本発明のその他の利点および好ましい実施形態の技術的効果については、以下の発明を実施するための形態においてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1種の具体的な実施形態による光学レンズの光路を示す模式的斜視図である。
図2】本発明の具体的な実施形態による光学レンズの配光パターンのスクリーン照度を示す図面である。
図3】正方形発光面からの光が従来のレンズにより結像する場合の配光パターンのスクリーン照度を示す図面である。
図4図1における光学レンズの平面図である。
図5図1における光学レンズの正面図である。
図6図1における光学レンズの右側面図である。
図7】本発明の第2種の具体的な実施形態による光学レンズの光路を示す模式的斜視図である。
図8】本発明の具体的な実施形態による車両ランプシステムの光路を示す模式的斜視図であって、その光学レンズは第2種の具体的な実施形態によるものを使用する。
図9】本発明の第3種の具体的な実施形態による光学レンズの構造の正面図である。
図10】本発明の第3種の具体的な実施形態による光学レンズの構造の左側面図である。
図11】本発明の第3種の具体的な実施形態による光学レンズの構造の底面図である。
図12】本発明の第3種の具体的な実施形態による光学レンズの光路を示す模式的斜視図である。
図13】本発明の第4種の具体的な実施形態による車両ランプシステムの光路を示す模式的斜視図であって、その光学レンズは第1種の具体的な実施形態によるものを使用する。
図14】本発明の第4種の具体的な実施形態による車両ランプシステムの配光パターンの効果を示す模式図であって、その光学レンズは第1種の具体的な実施形態によるものを使用する。
図15】本発明の第4種の具体的な実施形態による光学レンズの光路を示す模式図の一である。
図16】本発明の第4種の具体的な実施形態による光学レンズの光路を示す模式図の二である。
図17】従来技術による照明モジュールの光路を示す模式的斜視図であって、その光学レンズは従来の双曲面コリメートレンズを使用する。
図18】従来技術による照明モジュールの配光パターンの効果を示す模式図であって、その光学レンズは従来の双曲面コリメートレンズを使用する。
図19】本発明の第5種の具体的な実施形態による光学レンズ群の光路を示す模式的斜視図である。
図20】本発明の第6種の具体的な実施形態による光学レンズ群の光路を示す模式的斜視図であって、第1単方向コリメートレンズ群と第2単方向コリメートレンズ群は、いずれも二つの単方向コリメートレンズからなるものである。
図21】本発明の第7種の具体的な実施形態による光学レンズ群の光路を示す模式的斜視図であって、第1単方向コリメートレンズ群と第2単方向コリメートレンズ群は、側壁により接続される。
図22図21における光学レンズ群の平面図である。
図23図21における光学レンズ群の正面図である。
図24】本発明の第7種の具体的な実施形態による光学レンズ群の光路を示す模式図の一である。
図25】本発明の第7種の具体的な実施形態による光学レンズ群の光路を示す模式図の二である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を詳しく説明する。ここの具体的な実施形態は、本発明を説明、解釈するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0033】
また、用語の「第1」および「第2」は、説明するためのものにすぎず、相対重要性を明示または暗示したり、技術的特徴の数を暗示したりするものではない。このため、「第1」および「第2」により限定される特徴は、1つまたは複数の該特徴を含むことを明示または暗示することができる。
【0034】
本発明の説明において、明確な定義や限定がない限り、用語の「設置」および「配置」を、広義的に理解すべきである。例えば、固定接続でもよいし、取外し可能な接続でもよいし、一体的な接続でもよい。そして、直接接続してもよいし、中間物を介して間接的に接続してもよいし、2つの素子の内部が連通しまたは2つの素子が相互に作用してもよい。当業者は、本発明における上記用語の具体的な意味を、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0035】
本発明を簡単および簡略に説明するために、用語の「水平」および「鉛直」は、車両における光学レンズの取り付け方向に関する方向用語であり、光学レンズの出光方向と車両の出光方向と同じであることが一般的である。用語で表された方向または位置関係は、図面に基づくものであり、該当装置または要素が、必ずしも特定の方向を有したり、特定の方向に構成、操作されたり、することを明示または暗示するものではないため、本発明を限定するものではないと理解すべきである。また、本発明に関する方向用語を、実際に取り付けた状態に応じて理解すべきである。
【0036】
図1図2図4図16に示すように、本発明の基本的な実施形態による光学レンズは、入光部と出光部とを備え、前記入光部に第1単方向コリメート面1が形成され、前記出光部に第2単方向コリメート面2が形成され、前記第1単方向コリメート面1のコリメート方向と、前記第2単方向コリメート面2のコリメート方向とが互いに垂直であり、且つ、前記第1単方向コリメート面1と前記第2単方向コリメート面2とにより前記光学レンズの焦点またはフォーカス領域を形成する。
【0037】
実際の使用において、一般的に、光学レンズの第1単方向コリメート面1および第2単方向コリメート面2のコリメート方向は、それぞれ車両の鉛直方向と水平方向とほぼ同じである。すなわち、第1単方向コリメート面1のコリメート方向を水平方向または鉛直方向に設定し、対応に、第2単方向コリメート面2のコリメート方向を鉛直方向または水平方向に設定する。以下、説明を簡単にするために、本発明の光学レンズについて、主に、第1単方向コリメート面1のコリメート方向を水平方向に設定し、第2単方向コリメート面2のコリメート方向を鉛直方向に設定する例を用いて説明する。
【0038】
上記の基本的な技術案において、第1単方向コリメート面1は、光源3からの光線を単方向にコリメートする光学特性を有する。上記の「コリメート方向」は、以下のように理解することができる。図15に示すように、水平断面において、第1単方向コリメート面1は収束効果を有し、光線をコリメートすることができる。これに対して、図16に示すように、鉛直断面において、第1単方向コリメート面1は、光線を屈折しないもしくは光線に対する屈折効果が極めて弱い(鉛直方向の切断曲線はほぼ直線である)。すなわち、第1単方向コリメート面1は、水平断面の位置範囲において、光線に対して単方向のコリメート効果を有する。つまり、第1単方向コリメート面1のコリメート方向は水平方向に設定されている。第2単方向コリメート面2は、第1単方向コリメート面1と同様に、光源3からの光線を単方向にコリメートする光学特性を有するが、水平断面において光線を屈折しないもしくは光線に対する屈折果が極めて弱く、鉛直断面において収束効果を有し、光線をコリメートすることができる点で第1単方向コリメート面1に対して相違している。すなわち、第2単方向コリメート面2は、鉛直断面において、光線に対して単方向のコリメート効果を有する。つまり、第2単方向コリメート面2のコリメート方向は鉛直方向に設定されている。そのため、第1単方向コリメート面1のコリメート方向と、第2単方向コリメート面2のコリメート方向とが互いに垂直である。図15図16に示すように、第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2との間にレンズ厚みAを有し、且つ、第1単方向コリメート面1は、焦点またはフォーカス領域によりも近いため、第2単方向コリメート面2に対して、焦点距離がより短い。結像原理によれば、焦点距離が短いほど結んだ像が大きくなるので、第1単方向コリメート面1により結んだ像と第2単方向コリメート面2により結んだ像とは差異があり、焦点またはフォーカス領域に近い第1単方向コリメート面1のコリメート方向に結んだ像は、第2単方向コリメート面2のコリメート方向に結んだ像より大きい。すなわち、光源3からの光線は、光学レンズを通過した後、第1単方向コリメート面1のコリメート方向における拡散の程度が、第2単方向コリメート面2のコリメート方向における拡散の程度より大きい。その結像の差異は、レンズの屈折率、および第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2との間のレンズ厚みAにより決定される。したがって、光学レンズの焦点付近またはフォーカス領域内に、正方形発光面の光源3を配置し、光源3からの光線を第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2に順に通すれば、非対称配光パターンが形成される。ここで、「非対称配光パターン」とは、縦横の寸法差が大きい配光パターンのことを意味し、例えば長方形配光パターンである。例えば、水平方向に延在する第2単方向コリメート面2と、鉛直方向に延在する第1方位配光面1とにより、水平方向における光線の拡散程度が鉛直方向における光線の拡散程度より大きいようにすれば、水平方向に広くて鉛直方向に比較的狭い配光パターンが得られる。逆に、鉛直方向に延在する第2単方向コリメート面2と、水平方向に延在する第1方位配光面1とにより、鉛直方向における光線の拡散程度が水平方向における光線の拡散程度より大きいようにすれば、図2に示すような鉛直方向に広くて水平方向に比較的狭い配光パターンが得られる。図3は、正方形発光面からの光が従来のレンズにより結像する場合の配光パターンのスクリーン照度を示す図面である。図2図3の配光パターンを比較すれば、本発明の光学レンズにより得られた配光パターンは顕著な非対称性を有することが確認することができる。
【0039】
具体的に、図13図15および図16に示すように、第1単方向コリメート面1は、水平断面におけるコリメート曲線を該コリメート曲線の位置する平面の法線方向に沿って延伸させることによって形成した曲面、すなわち鉛直方向に沿って延伸させて形成した曲面とみなすことができる。同様に、第2単方向コリメート面2は、鉛直断面におけるコリメート曲線を該コリメート曲線の位置する平面の法線方向に沿って延伸させることによって形成した曲面、すなわち水平方向に沿って延伸させて形成した曲面とみなすことができる。
【0040】
さらに、第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2とにより形成された曲面は、柱面であり得る。柱面は、第1単方向コリメート面1を例とすれば、水平断面において収束効果を有し、光線をコリメートすることができるとともに、鉛直断面において光線を屈折しないもしくは光線に対する屈折効果が極めて弱い(鉛直方向の切断曲線はほぼ直線である)光学曲面として理解できる。なお、水平方向における切断曲線は円弧形状と限らない。さらに、第1単方向コリメート面1により形成された曲面および第2単方向コリメート面2により形成された曲面は、略柱面であってもよい。上記の「略柱面」とは、形状が柱面に近い曲面を意味し、この「略柱面」も上記の柱面と似ている技術的効果を有する。好ましくは、第1単方向コリメート面1により形成された柱面の水平方向における切断曲線が円弧形状であり、同様に、第2単方向コリメート面2により形成された柱面にも適用できる。
【0041】
そして、上記の技術案によって形成された非対称配光パターンの非対称性が、光学レンズの両側の焦点距離の異なりに起因することであり、つまり、第1単方向コリメート面1の、配光パターンに対する拡大倍率と第2単方向コリメート面2の、配光パターンに対する拡大倍率との比に関係する。拡大倍率の比は、第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2との間隔に依存し、間隔が大きいほど比が大きくなり、非対称性がより顕著になる。図13図7における光学レンズを比べれば、比を小さくするなら光学レンズの厚みを減少すればよい。
【0042】
また、図9図12に示すように、第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2は、階段状のフレネル柱面であってもよい。上記の「階段状のフレネル柱面」は、フレネル式曲線を延伸させることにより実現されたものを意味し、光線を単方向にコリメートする特性を有する。上記の「フレネル式曲線」とは、フレネルレンズの光軸を通る平面と複数の同心円形状を持つフレネルレンズの表面との交線の形状と同一または類似する形状の曲線を意味する。
【0043】
さらに、階段状のフレネル柱面は、水平方向または鉛直方向に配置された一連の柱面構造によって形成されているものである。
【0044】
階段状のフレネル柱面構造は、上記の柱面構造と同様に、光線をコリメートすることができる。第1単方向コリメート面1により形成された階段状のフレネル柱面と第2単方向コリメート面により形成された階段状のフレネル柱面が互いに垂直な形で配置され、同様に非対称配光パターンを形成できる。
【0045】
上記のように、第1単方向コリメート面1および第2単方向コリメート面2が柱面または階段状のフレネル柱面を使用する2種の技術案をそれぞれ説明したが、第1単方向コリメート面1および第2単方向コリメート面2に対しては、簡単な変形を行ってもよい。例えば、第1単方向コリメート面1が柱面で第2単方向コリメート面2が階段状のフレネル柱面であるようにしてもよく、または、第1単方向コリメート面1が階段状のフレネル柱面で第2単方向コリメート面2が柱面であるようにしてもよく、両者のコリメート方向が互いに垂直であればよい。
【0046】
上記は、第1単方向コリメート面1のコリメート方向を水平方向にし、第2単方向コリメート面2のコリメート方向を鉛直方向にする例で本発明の光学レンズを説明したが、上記の各具体的な実施形態は、第1単方向コリメート面1のコリメート方向を鉛直方向にし、第2単方向コリメート面2のコリメート方向を水平方向にする態様にも適用できる。例えば、図1に示す実施例において、図1における光学レンズの配置方向は、第1単方向コリメート面1の柱面のコリメート方向が鉛直方向であり、第2単方向コリメート面2の柱面のコリメート方向が水平方向である。或いは、図12に示す実施例において、図12における光学レンズの配置方向は、第1単方向コリメート面1の階段状のフレネル柱面が水平方向に延伸し、そのコリメート方向が鉛直方向であり、第2単方向コリメート面2の階段状のフレネル柱面が鉛直方向に延伸し、そのコリメート方向が水平方向である。
【0047】
上記の光学レンズの構造の設計は、光学レンズの入光部と出光部に、コリメート方向が互いに垂直な第1単方向コリメート面1と第2単方向コリメート面2とを設置することにより、非対称配光パターンが形成される。もちろん、本発明の光学レンズを光学レンズ群にするように構成してもよい。さらに、図19図25に示すように、第1単方向コリメートレンズ群6と第2単方向コリメートレンズ群7とからなるものである。第1単方向コリメートレンズ群6と第2単方向コリメートレンズ群7とにより本発明の光学レンズ群の焦点またはフォーカス領域を形成し、且つ、第1単方向コリメートレンズ群6のコリメート方向と、第2単方向コリメートレンズ群7のコリメート方向とが互いに垂直である。本発明の光学レンズと同様に、図24図25に示す光路から、第1単方向コリメートレンズ群6と第2単方向コリメートレンズ群7は、それぞれ光源3からの光線を単方向にコリメートする光学特性を有することが確認することができる。すなわち、第1単方向コリメートレンズ群6はコリメート方向が水平方向であり、第2単方向コリメートレンズ群7はコリメート方向が鉛直方向である。具体的に、第1単方向コリメートレンズ群6および第2単方向コリメートレンズ群7は、いずれも少なくとも1つの単方向コリメートレンズからなるものである。例えば、図19は、第1単方向コリメートレンズ群6および第2単方向コリメートレンズ群7がいずれも1つの単方向コリメートレンズからなるものである例を示しており、図20は、第1単方向コリメートレンズ群6および第2単方向コリメートレンズ群7がいずれも2つの単方向コリメートレンズからなるものである例を示している。なお、第1単方向コリメートレンズ群6および第2単方向コリメートレンズ群7は、いずれもより多くの単方向コリメートレンズからなることができ、第1単方向コリメートレンズ群6および第2単方向コリメートレンズ群7が単方向にコリメートする光学特性を確保すればよく、すなわち、第1単方向コリメートレンズ群6における複数の単方向コリメートレンズのコリメート方向が同じであり、第2単方向コリメートレンズ群7における複数の単方向コリメートレンズのコリメート方向が同じであるようにすればよい。つまり、単方向コリメートレンズは、図24または図25に示すように、その入射面または出射面が単方向コリメート曲面であるようにしてもよく、あるいは、図19に示すように、その入射面も出射面も単方向コリメート曲面であるようにしてもよい。ここで、「単方向コリメート曲面」とは、本発明の光学レンズの第1単方向コリメート面1または第2単方向コリメート面2と同じ機能を備える曲面を指し、具体的に、柱面、略柱面または階段状のフレネル柱面などであり得る。さらに、図21図23に示すように、第1単方向コリメートレンズ群6の両端と第2単方向コリメートレンズ群7の両端とが側壁により対応に接続され、一体的な構造として接続されることにより、光学システムの安定性が効果的に確保される。
【0048】
本発明の光学レンズを一般的な車両ランプシステムに適用すると、図1図7図12に示すように、光源3を光学レンズの焦点付近またはフォーカス領域に設置してもよく、または、図8図13に示すように、本発明の光学レンズを2次光学素子として構成してもよく、1次光学素子4により光源3からの光線を光学レンズの焦点またはフォーカス領域に集光させ、そして光学レンズに入射させる。また、1次光学素子4にカットオフラインを形成するためのカットオフ構造が設置されるため、図13を参照すると、図14に示すカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。ここで、1次光学素子4はリフレクタ、集光器または集光カップなどの光学素子であり得る。同様に、本発明の光学レンズ群を一般的な車両ランプシステムに適用して、同様な機能を得ることも可能である。
【0049】
図17は、従来技術の照明モジュールの一実施例を示している。この実施例において、2次光学素子として双曲面コリメートレンズ5を使用し、1次光学素子4により光源3からの光線を集光させ、そして双曲面コリメートレンズ5へ射出する。また、1次光学素子4にカットオフ構造が設置されるため、図18に示すカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。図14図18に示す配光パターンを比較すると、図18に示す配光パターンの水平方向の寸法と鉛直方向の寸法とは近く、正方形に近似し、これに対して、図14に示す配光パターンの水平方向の寸法と鉛直方向の寸法とはかなり異なっており、光源3からの光線の水平方向での拡散程度が鉛直方向での拡散程度より大きく、配光パターンが長方形に近似することが確認することができる。上記の比較により、本発明の光学レンズは、配光パターンが顕著な非対称性を有することが分かり、従来技術に対して、配光パターンの水平方向の寸法と鉛直方向の寸法を一定の差があるようにするための光学素子を別途に設ける必要がないため、車両ランプの構造をある程度で簡略化することができる。
【0050】
また、本発明の光学レンズは長方形の配光パターンを形成できるため、車両ランプ内に車両ランプシステムを配置する際、例えば2つの車両ランプシステムの場合、1つの車両ランプシステムを一般的に配置し、水平方向に沿う長方形の配光パターンを形成し、もう1つの車両ランプシステムを斜めに配置し、対応する光学レンズを介して投光される配光パターンがある程度で傾斜する長方形の配光パターンとなる。二つの長方形の配光パターンが重なると、要求を満たすカットオフラインを有する配光パターンを形成することができる。上記の実施例において、光学レンズの代わりに、本発明の光学レンズ群を使用してもよく、同様な機能を実現することができる。
【0051】
本発明の車両は、上記の光学レンズまたは光学レンズ群を使用することで、相応の車両ランプのデザインが、フラットで幅の広い形状を有し、車両の前部を流線型に設計することができるため、向かい風による騒音を低減することに寄与でき、そして、優れた照明効果を有する。
【0052】
以上、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明の技術的思想の範囲内で、本発明の技術案は、個々の具体的な技術的特徴を任意の適切な方法で組み合わせることを含む多種の簡単な変形を行うことができる。必要以上の重複を避けるため、本発明の各種の組合せ可能な態様の説明を省略する。ただし、これらの簡単な変形や組み合わせも、本発明に開示されたものとみなすべきであり、本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…第1単方向コリメート面
2…第2単方向コリメート面
3…光源
4…1次光学素子
5…従来の双曲面コリメートレンズ
6…第1単方向コリメートレンズ群
7…第2単方向コリメートレンズ群
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