(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240520BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240520BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240520BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20240520BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240520BHJP
【FI】
H01M50/262 P
H01M50/262 S
H01M50/264
H01M50/271 B
H01M50/242
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2022563082
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2021106381
(87)【国際公開番号】W WO2023283854
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐▲ゆう▼
(72)【発明者】
【氏名】王鵬
(72)【発明者】
【氏名】呉夏逸
(72)【発明者】
【氏名】李振華
(72)【発明者】
【氏名】王湘
(72)【発明者】
【氏名】李星
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054755(JP,A)
【文献】特開2020-113405(JP,A)
【文献】特開2003-007276(JP,A)
【文献】特開2008-059941(JP,A)
【文献】特表2018-532235(JP,A)
【文献】国際公開第2020/259135(WO,A1)
【文献】特表2023-511609(JP,A)
【文献】特表2023-536772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(200)であって、
筐体(11)と、前記筐体(11)に固定される固定ビーム(12)と、を含む筐体コンポーネント(1)と、
前記筐体(11)内に設けられ、第1の方向(X)に沿って配列される複数の電池単体(21)を含む電池モジュール(2)と、
前記電池モジュール(2)を覆うためのものであり、且つ前記固定ビーム(12)に固定される拘束部材(3)と、
を含み、
前記拘束部材(3)上に脆弱領域(311)が設けられ、前記脆弱領域(311)は、前記拘束部材(3)に前記電池単体(21)の膨張力を受ける時に変形を発生させるように構成さ
れ、
前記脆弱領域(311)は、少なくとも前記第1の方向(X)に沿って隣り合う前記電池単体(21)の隣接領域に設けられる、電池(200)。
【請求項2】
前記脆弱領域(311)は、第2の方向(Y)に沿って延在する溝を含み、前記第2の方向(Y)は、3前記第1の方向(X)に垂直である、請求項
1に記載の電池(200)。
【請求項3】
前記脆弱領域(311)は、第2の方向(Y)に沿って連続して設けられ、前記第2の方向(Y)は、前記第1の方向(X)に垂直である、請求項1
又は2に記載の電池(200)。
【請求項4】
前記脆弱領域(311)は、第3の方向(Z)に沿って前記拘束部材(3)を貫通し、前記第3の方向(Z)は、前記第1の方向(X)と第2の方向(Y)で形成される平面に垂直であり、前記第2の方向(Y)は、前記第1の方向(X)に垂直である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の電池(200)。
【請求項5】
前記拘束部材(3)の前記筐体(11)から離れる側に設けられ、且つ前記筐体(11)の開口端を閉鎖する外蓋(4)をさらに含み、前記外蓋(4)の内表面と前記拘束部材(3)の外表面との間に予め設定された隙間(L)を有する、請求項
4に記載の電池(200)。
【請求項6】
前記拘束部材(3)と少なくとも一部の前記電池単体(21)との間に接着層(5)が設けられ、前記接着層(5)は、前記脆弱領域(311)を通って溢れ出し、前記拘束部材(3)の前記電池単体(21)から離れる表面にリミットボス(51)を形成する、請求項
4又は
5に記載の電池(200)。
【請求項7】
前記電池モジュール(2)の第2の方向(Y)に沿う両側にいずれも前記固定ビーム(12)が設けられ、前記第2の方向(Y)は、前記第1の方向(X)に垂直であり、
前記拘束部材(3)は、
前記電池モジュール(2)を覆うように構成されるリミット部(31)と、
前記リミット部(31)の前記第2の方向(Y)に沿う両側にそれぞれ接続され、前記電池モジュール(2)の両側の前記固定ビーム(12)にそれぞれ固定される二つの取り付け部(32)と、を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の電池(200)。
【請求項8】
前記リミット部(31)全体は、前記取り付け部(32)に対して、前記電池モジュール(2)から離れる側へ突出する、請求項
7に記載の電池(200)。
【請求項9】
電力消費装置であって、前記電力消費装置に電気エネルギーを提供するための、請求項1~
8のいずれか1項に記載の電池(200)を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池技術分野に関し、特に電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンなどの電池は、エネルギー密度が高く、パワー密度が高く、繰り返し利用回数が多く、貯蔵期間が長いなどの利点を有することに伴い、電気自動車において既に広く用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電気自動車の電池の使用の信頼性と耐用年数を延長することは、従来から、業界の難題の一つである。
【0004】
本出願の目的は、電池の使用の信頼性と耐用年数を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1の方面によれば、電池を提供する。前記電池は、
筐体と、筐体に固定される固定ビームとを含む筐体コンポーネントと、
筐体内に設けられ、第1の方向に沿って配列される複数の電池単体を含む電池モジュールと、
電池モジュールを覆うためのものであり、且つ固定ビームに固定される拘束部材と、
を含み、
拘束部材上に脆弱領域が設けられ、脆弱領域は、拘束部材に電池単体の膨張力を受ける時に変形を発生させるように構成される。
【0006】
いくつかの実施例において、脆弱領域は、少なくとも第1の方向に沿って隣り合う電池単体の隣接領域に設けられる。
【0007】
いくつかの実施例において、脆弱領域は、第2の方向に沿って延在する溝を含み、第2の方向は、第1の方向に垂直である。
【0008】
いくつかの実施例において、脆弱領域は、第2の方向に沿って連続して設けられ、第2の方向は、第1の方向に垂直である。
【0009】
いくつかの実施例において、脆弱領域は、第3の方向に沿って拘束部材を貫通し、第3の方向は、第1の方向と第2の方向で形成される平面に垂直であり、第2の方向は、第1の方向に垂直である。
【0010】
いくつかの実施例において、拘束部材の筐体から離れる側に設けられ、且つ筐体の開口端を閉鎖する外蓋をさらに含み、外蓋の内表面と拘束部材の外表面との間に予め設定された隙間を有する。
【0011】
いくつかの実施例において、拘束部材と少なくとも一部の電池単体との間に接着層が設けられ、接着層は、脆弱領域を通って溢れ出し、拘束部材の電池単体から離れる表面にリミットボスを形成する。
【0012】
いくつかの実施例において、電池モジュールの第2の方向に沿う両側にいずれも固定ビームが設けられ、第2の方向は、第1の方向に垂直であり、拘束部材は、
電池モジュールを覆うように構成されるリミット部と、
リミット部の第2の方向に沿う両側にそれぞれ接続され、電池モジュールの両側の固定ビームにそれぞれ固定される二つの取り付け部と、を含む。
【0013】
いくつかの実施例において、リミット部全体は、取り付け部に対して、電池モジュールから離れる側へ突出する。
【0014】
本出願の第2の方面によれば、電力消費装置を提供する。前記電力消費装置は、電力消費装置に電気エネルギーを提供するための上記実施例の電池を含む。
【0015】
本出願の実施例の電池は、拘束部材上に脆弱領域を設けることで、拘束部材の一部分が膨張した電池単体に伴ってより変形しやすくなり、拘束部材の追従能力を高めることができ、電池単体の膨張が他の電池単体に対する拘束部材の拘束力に影響を及ぼすことを防止できるだけでなく、接着層が設けられている場合、拘束部材と電池単体との間の接着層の脱離程度を減少させることもできる。これによって、拘束部材全体の構造強度に影響を及ぼさない上で、電池単体に対する拘束部材の拘束力を確保し、電池の故障を防止することによって、電池の作動の信頼性と耐用年数を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本出願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を支払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【
図1】本出願による電池を車両に取り付けるいくつかの実施例の構造概略図である。
【
図2】本出願の電池のいくつかの実施例の構造概略図である。
【
図3】本出願の電池における電池単体のいくつかの実施例の分解図である。
【
図4】本出願の電池のいくつかの実施例の内部構造分解図である。
【
図5】本出願の電池のいくつかの実施例の内部構造概略図である。
【
図6】本出願の電池のいくつかの実施例における拘束部材と電池モジュールの取り付け関係の概略図である。
【
図7】本出願の電池における拘束部材のいくつかの実施例の斜視図である。
【
図8】本出願の電池における拘束部材のいくつかの実施例の上面図である。
【
図9】本出願の電池における拘束部材のいくつかの実施例の側面図である。
【
図10】本出願の電池における接着層が脆弱領域の位置する位置から溢れ出してリミットボスを形成する構造概略図である。
【0017】
図面において、図面は、実際の縮尺に応じて描かれるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面と実施例を結び付けて、本出願の実施形態をさらに詳しく説明する。以下の実施例の詳細な記述と図面は、本出願の原理を例示的に説明するためのものであるが、本出願の範囲を限定するために使用されることはできず、即ち、本出願は、説明される実施例に限定されない。
【0019】
本明細書の記述において、なお、特に説明されていない限り、「複数」は二つ以上を意味し、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などの用語によって指示される方位又は位置関係は、単に本出願の説明を容易にし、説明を簡略化するためのものであり、言及される装置又は要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成して動作しなければならないことを指示又は示唆するものではないため、本出願を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に説明のためのものであり、相対的な重要性を指示又は示唆するものとして理解されるべきではない。「垂直」とは、厳密な意味での垂直ではなく、誤差許容範囲内である。「平行」とは、厳密な意味での平行ではなく、誤差許容範囲内である。
【0020】
下記の記述に現れる方位用語は、いずれも図面に示す方向であり、本出願の具体的な構造を限定するものではない。本出願の記述において、なお、特に明記し、限定する場合を除き、「取り付け」、「繋がり」、「接続」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、直接的な接続であってもよく、中間媒体を介した間接的な接続であってもよい。当業者にとって、本出願における上記の用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解されてもよい。
【0021】
以下の実施例において、各方位を明確に記述するために、以下、各方向を定義する。
図4の座標系を例として、第1の方向Xは、電池200の高さ方向に垂直な平面内に位置し、例えば、第1の方向Xは、電池200の長手方向を表し、第2の方向Yも電池200の高さ方向に垂直な平面内に位置し、且つ第1の方向Xに垂直であり、例えば、第2の方向Yは、電池200の幅方向を表し、第3の方向Zは、第1の方向Xと第2の方向Yで形成される平面に垂直であり、例えば、第3の方向Zは、電池200の高さ方向を表す。
【0022】
図4以外の実施例において、第1の方向Xは、電池200の幅方向を表してもよく、第2の方向は、電池200の長手方向を表し、又は、第1の方向Xは、電池200の高さ方向に垂直な平面内に位置する任意の方向を表す。
【0023】
このような方位の定義によれば、「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「前」、「後」、「内」及び「外」などで指示される方向又は位置関係の記述を用い、これは、単に本出願の説明を容易にするためのものであり、言及される装置が特定の方向を有し、特定の方向で構成して動作しなければならないことを指示又は示唆するものではないため、本出願の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0024】
本出願の発明創造過程の一部として、発明者らは、無数の実験と検証を経て、電池の信頼性と耐用年数の低下の原因が以下のとおりである可能性があることを発見した。
【0025】
複数の電池単体を筐体内に平置きする電池について、筐体の底板と天板によって、電池単体の膨張面に対して拘束を行う。電池単体を縦置きする電池に比べて、電池単体の膨張面の受ける拘束力が小さく、膨張が発生しやすく、電池単体内部の電池コアが一定の程度(例えば、16%)まで膨張すると、天板と電池単体の膨張面の変形度が一致せず、電池単体と天板との接着面の脱ガムがひどく、電池単体に対する天板の拘束作用が弱くなり、電池単体が筐体内で揺れ、又は、電池の構造部品が大きすぎる応力を受けて変形又は故障する可能性がある。
【0026】
そして、一部の電池単体の膨張度が比較的大きければ、天板全体が反り上がって変形するとともに、他の電池単体の拘束効果にも影響を及ぼし、天板が電池単体の変形に追従する能力が比較的悪い。
【0027】
天板の厚さを薄くすれば、天板が電池単体の変形に追従する能力が高まり、脱ガム度を減少させることができるが、全体の構造強度に影響を及ぼし、電池の構造強度需要を満たしにくい。
【0028】
従って、本出願は、電池の使用の信頼性と耐用年数を向上させるために、電池全体の構造強度を保証し、且つ電池単体を拘束する天板の変形程度を低下させて、脱ガムの問題を改善することによって、電池セルが受ける拘束力を確保する。
【0029】
電力消費装置は、電池を用いてもよく、電池は、電力消費装置に対して電気エネルギーを提供するように構成される。この電力消費装置は、携帯電話、ポータブル機器、ノートパソコン、電気バイク、電気自動車、船舶、宇宙船、電気玩具及び電気工具などであってもよく、例えば、宇宙船は、飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙飛行船などを含み、電気玩具は、据置式又は移動式の電気玩具、例えば、ゲーム機、電気自動車玩具、電気船舶玩具及び電気飛行機玩具などを含み、電気工具は、金属切削電気工具、研削電気工具、組立用電気工具及び鉄道用電気工具、例えば、電気ドリル、電気グラインダ、電気レンチ、電気ドライバ、電気ハンマ、電気インパクトドリル、コンクリートバイブレータ、電気フライスなどを含む。
【0030】
図1に示すように、電力消費装置は、車両100、例えば、新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純電気自動車、ハイブリッド自動車又はレンジエクステンダー型自動車などであってもよく、又は、電池を用いる装置は、無人機又は船舶などであってもよい。車両100は、電池200を含み、電池200は、車両の作動に電気エネルギーを提供するためのものである。
【0031】
車両100は、アクスル101と、アクスル101に接続される車輪102と、モータ103と、コントローラ104と、をさらに含み、モータ103は、アクスル101の回転を駆動するためのものであり、コントローラ104は、モータ103の作動を制御するためのものであり、電池200は、モータ103及び車両における他の部材の作動に対して電気エネルギーを提供するためのものである。
【0032】
図2に示すように、電池200は、筐体コンポーネント1と、電池モジュール2と、外蓋4と、を含んでもよく、筐体コンポーネント1の内部は、中空構造であり、電池モジュール2は、筐体コンポーネント1内に収容される。筐体コンポーネント1は、電池モジュール2に対して収容空間を提供するためのものである。いくつかの実施例において、外蓋4と筐体コンポーネント1とが互いに合わせることで、電池モジュール2を収容するための収容空間が確定される。無論、筐体コンポーネント1と外蓋4との接続部は、シール材(図示されない)によって封止を実現してもよく、シール材は、シールリング、シーラントなどであってもよい。
【0033】
電池モジュール2において、一つ又は複数の電池単体21を設けてもよい。電池単体21が複数であれば、複数の電池単体21の間は、直列接続又は並列接続又は直並列接続であってもよく、直並列接続は、複数の電池単体21に直列接続も並列接続も含まれることを意味する。電池単体21は、円柱形、角形又は他の形状の二次電池であってもよい。
【0034】
図3に示すように、電池単体21は、ハウジング211と、電極コンポーネント212と、エンドキャップ215と、を含んでもよい。ハウジング211は、開口を有し、電極コンポーネント212は、ハウジング211内に収容され、エンドキャップ215は、ハウジング211の開口を閉鎖するためのものである。エンドキャップ215は、エンドキャップ本体215Aと、エンドキャップ本体215A上に設けられる正極端子215B、負極端子215C及び防爆弁215Dとを含む。電極コンポーネント212は、一つ又は複数積層されて設けられてもよく、各電極コンポーネント212上にいずれも二つの接続部213が形成され、二つの接続部213は、いずれもアダプタ214を介して正極端子215B及び負極端子215Cに接続される。
【0035】
ここで、電極コンポーネント212は、正極板と、負極板(図示せず)と、セパレータ(図示されない)とを含んでもよい。電極コンポーネント212は、正極板、セパレータ及び負極板を巻き取ることで形成される巻き取り式構造であってもよく、正極板、セパレータ及び負極板を積層して配置することで形成される積層式構造であってもよい。電極コンポーネント212は、正極タブと、負極タブとをさらに含み、正極板における、正極活性物質層がコーディングされていない正極集電体を正極タブとしてもよく、負極板における、負極活性物質層がコーディングされていない負極集電体を負極タブとしてもよい。
【0036】
いくつかの実施例において、
図4に示すように、本出願は、電池200を提供する。この電池200は、筐体コンポーネント1と、電池モジュール2と、拘束部材3とを含む。ここで、筐体コンポーネント1は、筐体11と、筐体11に固定される固定ビーム12とを含み、電池モジュール2は、筐体11内に設けられ、電池モジュール2は、第1の方向Xに沿って配列される複数の電池単体21を含み、拘束部材3は、電池モジュール2を覆うためのものであり、且つ固定ビーム12に固定され、拘束部材3上に脆弱領域311が設けられ、脆弱領域311は、拘束部材3に、電池単体21の膨張力を受ける時に変形を発生させるように構成される。
【0037】
例えば、固定ビーム12は、第1の方向Xに沿って設けられてもよく、第1の方向Xは、電池200の長手方向又は幅方向などであってもよい。固定ビーム12は、第2の方向Yに沿って間隔をあけて複数設けられてもよく、拘束部材3は、隣り合う二つの固定ビーム12によって固定される。固定ビーム12として、中実固定ビーム又は中空固定ビームを用いてもよく、その断面は、矩形、台形又はC字状などであってもよく、その上表面は、平面として設けられてもよく、それにより拘束部材3を固定ビーム12の上表面に固定し、又は、拘束部材3は、固定ビーム12の側面に固定されてもよい。
【0038】
例えば、複数の電池単体21は、一層又は多層で設けられてもよく、各層の電池単体21は、いずれも、一列又は第2の方向Yに沿って並列に設けられる複数列の電池単体21を含み、各列の電池単体21に、いずれも、第1の方向Xに沿って並列に設けられる複数の電池単体21が含まれる。ここで、電池単体21における正極板及び負極板は、第3の方向Zに沿って積層されて設けられ、電池単体21は、第3の方向Zに沿って膨張しやすい。
【0039】
拘束部材3は、電池モジュール2を覆うためのものであり、ここで言及された「覆う」とは、完全に覆うことであってもよく、部分的に覆うことであってもよく、即ち、拘束部材3に、電池単体21を露出させる孔、溝などの構造特徴が設けられることを許容し、電池モジュール2における各電池単体21の第3の方向Zに沿う膨張に対する拘束力を提供できればよい。拘束効果を高めるために、拘束部材3と電池モジュール2との間に接着層5が設けられ、例えば、糊(接着剤)又は粘着性を有する他の材料によって接着される。
【0040】
本出願のこの実施例は、固定ビーム12に固定される拘束部材3を設けることで、電池単体21が膨張する時、電池単体21に対して安定かつ有効な押圧力を提供し、電池単体21の膨張変形度を低下させることができる。
【0041】
そして、拘束部材3上に脆弱領域311を設けることで、拘束部材3の一部分が膨張した電池単体21に伴ってより変形しやすくなり、拘束部材3の追従能力を高めることができ、電池単体21の膨張が他の電池単体21に対する拘束部材3の拘束力に影響を及ぼすことを防止できるだけでなく、接着層5が設けられている場合、拘束部材3と電池単体21との間の接着層5の脱離程度を減少させることもできる。これによって、この実施例は、拘束部材3全体の構造強度に影響を及ぼさない上で、電池単体21に対する拘束部材3の拘束力を確保し、電池200の故障を防止することによって、電池200の作動の信頼性と耐用年数を向上させる。
【0042】
いくつかの実施例において、
図4に示すように、脆弱領域311は、少なくとも第1の方向Xに沿って隣り合う電池単体21の隣接領域に設けられる。
【0043】
この実施例は、脆弱領域311を電池単体21の側縁に設けることで、電池単体21に対する拘束部材3の拘束力を可能な限り確保することができ、第1の方向Xに沿って隣り合う電池単体21を仕切ることもでき、拘束部材3が隣り合う電池単体21の間で伝達する力が弱くなり、拘束部材3の追従能力を高め、隣り合う電池単体21の膨張による相互干渉を防止することができる。そして、接着層5が設けられている場合、拘束部材3と電池単体21との間の接着層5の脱離程度を減少させ、電池単体21に対する拘束部材3の拘束力を確保することによって、電池200の作動の信頼性と耐用年数を向上させることもできる。
【0044】
いくつかの実施例において、
図5に示すように、脆弱領域311は、第2の方向Yに沿って延在する溝を含み、溝は、凹溝又は通路溝として設けられてもよく、第2の方向Yは、第1の方向Xに垂直である。例えば、溝は、拘束部材3全体の強度を確保した上で、局所的な強度を低下させる細長い溝であってもよい。
【0045】
例えば、溝の第2の方向Yに沿って延在する寸法範囲は2mm~20mmであってもよく、この寸法範囲は、電池単体21の寸法に関わり、一般的には、第2の方向Yにおいて、溝の寸法範囲は、電池単体21の二倍の寸法±40mmに設定される。
【0046】
この実施例の脆弱領域311は、設けやすく、プレス又は機械加工の方式で形成されてもよい。隣り合う電池単体21の隣接領域に溝を設けるという構造により、隣り合う電池単体21の膨張による相互干渉を防止できるとともに、拘束部材3が電池単体21の膨張面を覆う面積を向上させ、電池単体21に対する拘束力を増加させることができる。
【0047】
いくつかの実施例において、
図5及び
図6に示すように、脆弱領域311は、第2の方向Yに沿って連続して設けられ、第2の方向Yは、第1の方向Xに垂直である。
【0048】
この実施例は、拘束部材3における脆弱領域311を設ける領域が、膨張した電池単体21に伴ってより変形しやすくなり、拘束部材3の追従能力を高めることができ、電池単体21の膨張が隣り合う電池単体21に対する拘束力に影響を及ぼすことを防止し、拘束部材3と電池単体21との間の接着層5の脱離程度を減少させることによって、電池200の作動の信頼性と耐用年数を向上させることができる。任意選択的に、脆弱領域311は、第2の方向Yに沿って間隔をあけて多段設けられる。
【0049】
いくつかの実施例において、脆弱領域311は、第3の方向Zに沿って拘束部材3を貫通し、第3の方向Zは、第1の方向Xと第2の方向Yで形成される平面に垂直であり、第2の方向Yは、第1の方向Xに垂直である。
【0050】
この実施例は、拘束部材3を貫通する脆弱領域311を設けることで、拘束部材3の局所的な強度を弱くすることに有利であり、拘束部材3が、膨張した電池単体21に伴ってより変形しやすくなり、拘束部材3の追従能力をさらに高めることができ、電池単体21の膨張が隣り合う電池単体21に対する拘束力に影響を及ぼすことを防止し、拘束部材3と電池単体21との間の接着層5の脱離程度を減少させることによって、電池200の作動の信頼性と耐用年数を向上させることができる。任意選択的に、脆弱領域311は、さらに、薄肉部であってもよく、又は、脆弱領域311の材料強度は、拘束部材3の、脆弱領域311以外の他の領域の材料強度よりも小さい。
【0051】
いくつかの実施例において、電池200は、拘束部材3の筐体11から離れる側に設けられ、且つ筐体11の開口端を閉鎖する外蓋4をさらに含み、外蓋4の内表面と拘束部材3の外表面との間に予め設定された隙間Lを有する。
【0052】
この実施例は、拘束部材3が設けられているため、外蓋4の変形を低減させ、電池の封止性を向上させることができる。そして、拘束部材3を設けることで、外蓋4の変形を低減させ、電池200が車両に用いられる時、長期間使用した後に、依然として、元の取り付け位置で順調に着脱を行うこともでき、電池200のメンテナンスの難しさを低下させることができ、且つ電池200の変形によって車両における取り付け構造部品に外力を印加することを防止することもできる。
【0053】
いくつかの実施例において、
図10に示すように、拘束部材3と少なくとも一部の電池単体21との間に接着層5が設けられ、脆弱領域311は、第3の方向Zに沿って拘束部材3を貫通し、接着層5は、脆弱領域311を通って溢れ出し、拘束部材3の電池単体21から離れる表面にリミットボス51を形成する。例えば、電池モジュール2は、複数層の電池単体21を含み、拘束部材3と最上層の電池単体21との間に接着層5が設けられ、隣り合う層の電池単体21の間、又は最下層の電池単体21と筐体11との間には、接着層5が設けられていてもよい。
【0054】
この実施例は、拘束部材3の追従能力を高める上で、接着層5の塗布プロセスに合わせて、例えば糊などの接着剤が電池単体21から離れる拘束部材3の表面上に溢れ出すことを制御して、「リベット」構造を形成することができ、リミットボス51のリミット作用を受けることにより、隣り合う電池単体21の間の位置における拘束部材3の反り量を減少させることができ、それによって接着層5の脱離を効果的に減少させ、電池200の構造強度を向上させ、電池200の作動の信頼性と安全性を確保することができる。
【0055】
脆弱領域311が第1の方向Xに沿って隣り合う電池単体21の隣接領域に設けられる実施例について、二つの電池単体21の隣接領域は、剥がれが最も発生しやすい領域であるため、リミットボス51を設けることで、電池単体21の膨張による接着層5の脱離の問題を改善し、構造安定性を向上させることができる。そして、電池単体21の側縁位置は、膨張程度が最も小さい位置であるため、ここで接着層5が溢れ出すように形成されており、電池単体21の膨張空間を占有せず、電池単体21の膨張隙間にも影響を及ぼさず、そのため電池200のエネルギー密度に影響を及ぼさない。
【0056】
そして、外蓋4の内表面と拘束部材3の外表面との間に予め設定された隙間Lを有し、リミットボス51を形成するための空間を残すだけでなく、電池単体21の適切な膨張のための空間も残す。
【0057】
いくつかの実施例において、
図4に示すように、電池モジュール2の第2の方向Yに沿う両側にいずれも固定ビーム12が設けられ、第2の方向Yは、第1の方向Xに垂直であり、ここで、
図7から
図9に示すように、拘束部材3は、電池モジュール2を覆うように構成されるリミット部31と、それぞれ、リミット部31の第2の方向Yに沿う両側に接続され、それぞれ、電池モジュール2の両側の固定ビーム12に固定される二つの取り付け部32とを含む。例えば、拘束部材3は、板金プレス成形プロセスで成形されてもよい。
【0058】
二つの取り付け部32に、いずれも、固定ビーム12の延在方向に沿って複数の取り付け孔321が間隔をあけて設けられ、固定ビーム12に、自分の延在方向に沿って複数の第2の取り付け孔が間隔をあけて設けられる。複数の締め具6は、それぞれ、対応する取り付け孔321と第2の取り付け孔を貫通して、拘束部材3を固定ビーム12に取り付ける。例えば、締め具6は、ネジ、ボルト又はリベットなどであってもよい。拘束部材3の位置決め精度を向上させるために、取り付け部32に、位置決め孔322が設けられてもよく、それにより締め具6によって固定する前に、ピンによって位置決めする。
【0059】
この実施例の電池200は、拘束部材3を両側の固定ビーム12に固定することで、電池モジュール2が膨張する時、各電池モジュール2に対して安定かつ有効な押圧力を提供し、電池モジュール2の膨張変形度を低下させることができる。
【0060】
図7から
図9に示すように、リミット部31全体は、取り付け部32に対して、電池モジュール2から離れる側へ突出する。
【0061】
この実施例は、固定ビーム12の設置高さを低下させ、固定ビーム12の強度を確保することができるだけでなく、締め具6を用いて取り付け部32を固定ビーム12に固定する時、締め具6がリミット部31の天井面から突出することを避けることができ、電池200の高さを減少させることができる。そして、拘束部材3全体の剛度を向上させることができる。
【0062】
以下、
図4から
図10を結び付けて、本出願の電池200の一つの具体的な実施例を提供する。
【0063】
筐体11内に、第2の方向Yに沿って複数本の固定ビーム12が設けられ、電池モジュール2は、隣り合う固定ビーム12の間に設けられ、拘束部材3は、電池モジュール2を覆うためのものであり、かつ両側の固定ビーム12に固定される。電池モジュール2は、第2の方向Yに沿って並列に設けられる少なくとも二列の電池単体21を含み、各列の電池単体21に、いずれも、少なくとも二層の電池単体21が含まれ、且つ各層の電池単体21は、いずれも、第1の方向Xに沿って並列に設けられる複数の電池単体21を含む。少なくとも二列の電池単体21のうちの電池単体21は、第1の方向Xに沿って整列される。各電池単体21は、筐体11内に平置きされ、電極コンポーネント212における正極板と負極板は、第3の方向Zに沿って積層されて設けられ、電極コンポーネント212は、主に、第3の方向Zに沿って膨張し、電池単体21の最大側面は、第3の方向Zに垂直であるように設けられる。
【0064】
ここで、拘束部材3に、第1の方向Xに沿って、第2の方向Yに沿って延在する複数の脆弱領域311が間隔をあけて設けられ、脆弱領域311は、第1の方向Xに沿って隣り合う電池単体21の位置に設けられ、且つ脆弱領域311は、第3の方向Zに沿って拘束部材3を貫通する溝であり、溝は、直線に沿って延在し、且つ少なくとも二列の電池単体21を貫通することができる。拘束部材3と最上層の電池単体21との間に接着層5が設けられ、接着層5は、脆弱領域311を通って溢れ出し、拘束部材3の電池単体21から離れる表面にリミットボス51を形成する。任意選択的に、脆弱領域311は、第1の方向Xに沿って延在するように設けられてもよく、例えば、隣り合う二列の電池単体21の間の領域に設けられてもよく、それによって二列の電池単体21の膨張時の相互干渉を防止する。
【0065】
好ましい実施例を参照しながら、本出願について説明したが、本出願の範囲を逸脱することなく、種々の改良を行うことができ、且つそのうちの部品を等価物で置換することができる。特に、各実施例で言及された各技術的特徴は、構造の矛盾が生じない限り、任意に組み合わせることができる。本出願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれる全ての技術案を含むものである。
【符号の説明】
【0066】
100 車両
101 アクスル
102 車輪
103 モータ
104 コントローラ
200 電池
211 ハウジング
212 電極コンポーネント
213 接続部
214 アダプタ
215 エンドキャップ
215A エンドキャップ本体
215B 正極端子
215C 負極端子
215D 防爆弁
1 筐体コンポーネント
11 筐体
12 固定ビーム
2 電池モジュール
21 電池単体
3 拘束部材
31 リミット部
311 脆弱領域
32 取り付け部
321 取り付け孔
322 位置決め孔
4 外蓋
5 接着層
51 リミットボス
6 締め具
X 第1の方向
Y 第2の方向
Z 第3の方向