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特許7490813安全性と安定性が改善されたピルフェニドンを含む腸溶性製剤およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】安全性と安定性が改善されたピルフェニドンを含む腸溶性製剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4418 20060101AFI20240520BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K31/4418
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/32
A61K47/38
A61P11/00
A61P29/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022563862
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2021005123
(87)【国際公開番号】W WO2021215856
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048924
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515088902
【氏名又は名称】ユンジン ファーム.カンパニー、リミテッド
【住所又は居所原語表記】13,Olympic-ro 35da-gil,Songpa-gu,Seoul 05510 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヤンノ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ピョンギ
(72)【発明者】
【氏名】ペク,スンユン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンフン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172402(JP,A)
【文献】RUBINO, C.M. et al.,Effect of food and antacids on the pharmacokinetics of pirfenidone in older healthy adults,Pulmonary Pharmacology & Therapeutics,2009年,22,279-285,DOI:10.1016/j.pupt.2009.03.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61K 9/32
A61K 9/36
A61P 11/00
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてピルフェニドンを含み、投与時の最高血中濃度到達時間(Tmax)が投与後1.2時間以後であり、
ピルフェニドンおよび薬学的に許容可能な添加剤を含むコア;および前記コア外部に位置する2種以上の互いに異なるコーティングを含み、前記2種以上の互いに異なるコーティングは水溶性または不溶性高分子を含むコーティングおよび腸溶性高分子を含むコーティングからなり、
前記水溶性または不溶性高分子は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される1種以上であり、
前記腸溶性高分子は、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、およびポリビニルアセテートフタレートからなる群より選択される1種以上であり、
経口投与製剤である、安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項2】
前記最高血中濃度到達時間は投与後2~4時間である、請求項1に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項3】
投与後1時間内の累積血中濃度が最高血中濃度に対比して0~5%である、請求項1に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項4】
前記ピルフェニドンを全体製剤重量に対して10~99重量%を含む、請求項1に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項5】
前記ピルフェニドンを200~600mg含む、請求項1に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項6】
前記水溶性または不溶性高分子を含むコーティングと腸溶性高分子を含むコーティングの重量比は1:60~1:1である、請求項に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項7】
前記腸溶性高分子はメタクリル酸共重合体を含む、請求項に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項8】
前記腸溶性高分子を含むコーティングは、ジエチルフタレート、トリエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリアセチン、トリブチルセバケートおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の可塑剤をさらに含む、請求項に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤。
【請求項9】
a)有効成分であるピルフェニドンと賦形剤および崩壊剤を混合する段階;
b)前記段階a)で製造された混合物に結合剤を付加し顆粒を得る段階;
c)前記段階b)で製造された顆粒と滑沢剤を混合し打錠してコアを製造する段階;
d)前記段階c)で製造されたコアを水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤を使用して1次コーティング錠を製造する段階;
e)前記段階d)で製造された1次コーティング錠に腸溶性高分子を含む腸溶コーティング基剤でコーティングする段階を含
前記1次コーティング基剤は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される1種以上の水溶性または不溶性高分子を含み、
前記腸溶コーティング基剤は、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、およびポリビニルアセテートフタレートからなる群より選択される1種以上の腸溶性高分子を含む、
請求項1~のうちのいずれか一項による安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤の製造方法。
【請求項10】
前記腸溶コーティング基剤はメタクリル酸共重合体を含む、請求項に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤の製造方法。
【請求項11】
前記腸溶コーティング基剤は、ジエチルフタレート、トリエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリアセチン、トリブチルセバケートおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の可塑剤;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクからなる群より選択される1種以上の滑沢剤;および酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の遮光剤を含む、請求項に記載の安全性が改善された特発性肺線維症の予防または治療用製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効性分としてピルフェニドンを含み、小腸で特異的にピルフェニドンを放出し特有な薬物動態学的特性を有する、人体内安全性と薬物安定性が改善された腸溶性製剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピルフェニドン(Pirfenidone)は抗線維性薬物として特発性肺線維症治療に有用な薬剤であって炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6)の生産抑制と抗炎症性サイトカイン(IL-10)の生産こう進を示し、Th2型への偏向改善(Th1・Th2バランス修正)に連結されるIFN-γ数値低下の抑制を示し、線維化形成に関与する増殖因子(TGF-β1、b-FGF、PDGF)の生産抑制を示すなどの各種サイトカインおよび増殖因子に対する生産調節作用を有する。また、線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン生産抑制作用も有し、このような複合的な作用に基づいて抗線維化作用を示す。ピルフェニドンの多様な効果に関して、肺線維症、動脈硬化性病巣などに対する治療効果が日本特開第H02-215719号に記載されており、呼吸器官または皮膚の炎症治療のための有用性が米国特許第3,974,281号、第4,042,699号および第4,052,509号に記載されており、TNF-αの合成および放出阻害効果が日本特開第H11-512699号に記載されている。
【0003】
一方、特発性肺線維症は確認されない原因によって肺胞壁に線維化が進行して漸進的に肺活動など肺機能を減少させて結局、呼吸困難に至るようにする疾患であって、患者の約50%は5年以内に死亡に至る程度に予後が良くない疾患であり、国内でも希少難治性疾患と規定されている。
【0004】
このようなピルフェニドンは、健康な成人および特発性肺線維症患者(総1,650人)を対象にしたグローバル臨床試験では嘔吐(32.4%)、発疹(26.2%)、下痢(18.8%)、消化不良(16.1%)、食欲不振(11.4%)、頭痛(10.1%)、光過敏症(9.3%)などが発生したと報告している。
【0005】
ピルフェニドンは初期容量で1日3回、1回1錠を食後に経口投与し、患者の反応と忍容性によって2週間隔で1回1錠ずつ増量して1日3回、1回3錠(1回600mg、1日1800mg)まで増量が可能であるため、服用が煩雑且つ不便であり副作用比率も高いので、このような問題が解消されて服薬順応度が改善された、安全な製剤の開発が要求される。また、安全なピルフェニドン製剤の開発と共に、ピルフェニドンおよびこれを含む製剤(例えば、錠剤)が製造後投与時まで類縁物質の発生を最少化して安定的にピルフェニドンが維持される製剤の開発も要求されてきている。このように製剤に対する人体内安全性および薬物の安定性が低下すれば、錠剤開発による期待効果が減少し、所望の程度の疾病の治療または予防効果を得られないため安全性と安定性が確保されたピルフェニドン含有製剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ピルフェニドンを含む、安全性および安定性が改善された製剤およびその製造方法、より詳しくは、腸溶コーティング基剤によって低下することがあるピルフェニドン腸溶性製剤の安全性と安定性改善およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するための一様態として、本発明は、有効成分としてピルフェニドンを含み、人体に対する安全性と薬物の安定性が改善された製剤を提供する。
【0008】
一様態で、本発明による製剤は、経口投与用製剤であってもよい。
【0009】
一様態で、本発明による製剤は、腸溶性製剤、より具体的には腸溶性錠剤であってもよい。
【0010】
一様態で、本発明による製剤は、特発性肺線維症の予防または治療用製剤であってもよい。
【0011】
一様態で、本発明による製剤は、有効成分としてピルフェニドンが特異的な薬物動態学的パターンを示すことを特徴とする経口投与用製剤であってもよい。具体的に、投与時の最高血中濃度到達時間(Tmax)が投与後1.2~1.4時間以後であることを特徴とする特発性肺線維症の予防または治療用製剤であってもよい。
【0012】
一様態で、本発明による製剤は、薬物の安定性に関して、苛酷条件(60±2℃)1ヶ月および加速条件(40±2℃、75±5%RH)6ヶ月の安定性試験で類縁物質Aは0.1%以下、類縁物質Bは0.1%以下、個別未知類縁物質は0.05%以下、総類縁物質は0.3%以下で安定性が改善されたことを特徴とする経口投与用製剤であってもよい。
【0013】
好ましく、本発明による製剤は、ピルフェニドンおよびこの薬学的に許容可能な添加剤を含むコア;および前記コア外部に2種以上の互いに異なるコーティングを含むことができる。さらに好ましく、前記2種以上の互いに異なるコーティングは、水溶性または不溶性高分子を含むコーティング;および腸溶性高分子を含むコーティングからなる群より選択される2種以上であってもよい。
【0014】
また他の様態として、本発明は、ピルフェニドンおよび薬学的に許容可能な添加剤を使用してコアを製造する段階;および前記製造されたコア上に2種以上の高分子を使用して2種以上のコーティングを形成させる段階を含む、前記安全性および安定性が改善されたピルフェニドンを含む特発性肺線維症の予防または治療用製剤の製造方法を提供する。好ましく、前記2種以上の互いに異なるコーティングは順次に行うことができ、水溶性または不溶性高分子を使用して1次コーティングする段階および腸溶性高分子を使用して2次コーティングする段階を通じて形成させることによって行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるピルフェニドン腸溶性製剤は、メタクリル酸共重合体を腸溶コーティング基剤として使用することによってピルフェニドンの安定性を格段に維持することができながら、小腸で特異的にピルフェニドンを放出し特有な薬物動態学的(pharmacokinetic)特性を有するので、ピルフェニドンの生体利用率に影響を与えないながらもピルフェニドン投与時引き起こされる胃腸に関する副作用発生を緩和または減少させて患者の服薬順応度を格段に改善させることができてピルフェニドンの経口投与製剤開発において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1~8および比較例1によるピルフェニドン製剤をpH1.2で溶出試験した結果を0~120分間時間による累積溶出率で示したグラフである。
図2】実施例1~8および比較例1によるピルフェニドン製剤をpH6.8で溶出試験した結果を0~120分間時間による累積溶出率で示したグラフである。
図3】実施例1および8、比較例1によるピルフェニドン製剤をビーグル犬に投与して薬物動態学的分析試験結果を時間によるピルフェニドンの血中濃度で示したグラフである。
図4】実施例9~11および実施例1および3のピルフェニドン製剤の苛酷条件(60±2℃)の安定性結果のうちの総類縁物質を示したグラフである。
図5】実施例9~11および実施例1および3のピルフェニドン製剤の加速条件(40±2℃、75±5%RH)の安定性結果のうちの総類縁物質を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明による製剤はピルフェニドンを有効性分として含むので、特発性肺線維症の予防または治療に有用な製剤である。具体的に、本発明による経口投与用製剤に有効成分(主成分)として含まれるピルフェニドンは小分子から構成された薬物であり、その化学的名称は5-メチル-1-フェニル-2-(1H)-ピリドンである。これは分子量185.23ダルトンを有する非ペプチドの合成分子である。その化学式はC1211NOであり、その構造は下記化学式1の通りである。
【化1】
【0018】
現在、ピルフェニドンは、広いスペクトル抗線維症薬物として臨床評価されている。ピルフェニドンは、TGF-β1、TNF-α、PDGFの発現および最も重要に、コラーゲンの互いに異なるタイプの発現を低めるその活性で反映される抗線維症および抗炎症性薬理活性を有すると知られている。
【0019】
本発明で、用語“最高血中濃度到達時間(Tmax)”とは、薬物の投与後、血中で最も高い濃度(Cmax)に到達する時間を意味する。本発明による製剤は、前記有効性分として含まれるピルフェニドンの最高血中濃度到達時間(Tmax)が投与後1.2時間以後、1.4時間以後、1.6時間以後、2時間以後、2時間~4時間であることを特徴とする。また、本発明による特発性肺線維症の予防または治療用製剤は、投与後1時間内にはピルフェニドンを実質的に放出しないことを特徴とする。このように投与後1時間以内にピルフェニドンを実質的に放出しない場合、投与後1時間以内の体内累積血中濃度は最高血中濃度(Cmax)に対比して0~50%、0~30%であり、好ましくは0~10%、さらに好ましく0~5%を示す。
【0020】
好ましい様態で、本発明による特発性肺線維症の予防または治療用製剤は、最高血中濃度(Cmax)に対する血中濃度曲線下面積(AUC)比率が2.16~2.18であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明による特発性肺線維症の予防または治療用製剤は、酸性条件(pH1.2)で溶出時、溶出後120分以内の溶出率が10%以内であることを特徴とする。
【0022】
ピルフェニドンは嘔吐、皮疹、食欲不振などの副作用を有していることがよく知られており、特に嘔吐と食欲不振などのような胃腸に対する副作用によって患者の服薬順応度が低まるという点が知られている。
【0023】
本発明による製剤は、前記のような特有な薬物動態学的(pharmacokinetic)特性を示すことによって胃腸では実質的に副作用頻度が高いピルフェニドンが放出されず小腸で放出されるようにして、前記有効成分であるピルフェニドンの生体利用率に影響を与えないながら胃腸に関する副作用の発生恐れを実質的に緩和させるか少なくともこれを減少させる。
【0024】
具体的な様態で、本発明による製剤は、ピルフェニドンおよび薬学的に許容可能な添加剤を含むコア;および前記コア表面上に位置する2種以上の互いに異なるコーティングを含むことができる。
【0025】
前記コアは、ピルフェニドンを1~1000mg、好ましくは200~600mgを含むことができる。具体的に、本発明による製剤は、現在一般的なピルフェニドンの投与回数(即ち、初期容量で1日3回、1回200mg1錠)によって投与することができるように前記範囲内で適切なピルフェニドンの含量を選択してコアに含ませることができる。
【0026】
また、本発明による製剤内の有効成分として、ピルフェニドンの含量は使用形態および目的、患者状態、症状の種類および軽重などによって適切に調節することができるが、製剤全体重量を基準にして10~99重量%であってもよい。しかし、これは投薬者の必要によって増減することもでき、食生活、栄養状態、病的症状の進行程度などのように多様な因子によって適切に増減することができるので、前記範囲に限定されない。
【0027】
さらに、前記コアは、有効成分であるピルフェニドンと共に薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。このような添加剤の例としては、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤および/または増量剤などを使用して剤形化することができる。
【0028】
前記賦形剤としては、これに制限されるわけではないが、乳糖水和物、マンニトル、とうもろこしデンプン、微結晶セルロース、スクロース、デキストロース、ソルビトールが好ましく、より好ましくは乳糖水和物を含むことができる。好ましく、前記賦形剤の含量は製造されるコア全体重量の5~80重量%、10~70重量%、または15~60重量%で含まれてもよいが、これに制限されるわけではない。
【0029】
前記結合剤としては、これに制限されるわけではないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはポリビニルピロリドンが好ましく、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロースを含むことができる。好ましく、前記結合剤の含量は製造されるコア全体重量の0.5~30重量%、1~25重量%、または1.5~20重量%で含まれてもよいが、これに制限されるわけではない。
【0030】
前記崩壊剤としては、これに制限されるわけではないが、とうもろこしデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリジンが好ましく、より好ましくはクロスカルメロースナトリウムを含むことができる。好ましく、前記崩壊剤の含量は製造される錠剤全体重量の0.1~30重量%、0.5~25重量%、または1~20重量%で含まれてもよいが、これに制限されるわけではない。
【0031】
前記滑沢剤としては、これに制限されるわけではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸が好ましく、より好ましくはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。好ましく、前記滑沢剤の含量は製造されるコア全体重量の0.1~5重量%で含まれてもよいが、これに制限されるわけではない。
【0032】
本発明の目的上、前記ピルフェニドンを含むコアは好ましく錠剤形態に剤形化することができるが、これに制限するのではない。このような錠剤の製造は、一般的な錠剤製造方法(例えば、粉砕、混合、造粒、乾燥、打錠、およびコーティングなど)によって錠剤を製造することができる。具体的に、錠剤への剤形化において、前記コアは、湿式顆粒法、乾式顆粒法または直打法によって製造することができる。湿式顆粒法は例えば、有効成分(主成分)、希釈剤、賦形剤、および崩壊剤を秤量して混合機で均質になるまで混合する混合工程、これに結合剤を付加混合する練合工程、顆粒を製造するために篩過して押出させる造粒工程、製造された顆粒を乾燥する工程、これを再び小さな号数の篩を使用して顆粒を整然とするようにする整粒工程、および前記整粒された顆粒に滑沢剤を添加して後混合し打錠する工程を経て錠剤を製造することができる。また、乾式顆粒法は例えば、各成分を秤量および混合する工程、これを強打するか圧縮する工程、これを扁平な錠剤やペレットに製造する工程、前記錠剤またはペレットを破砕する工程、篩過工程、およびこれを打錠する工程を経る強打法(slugging)やローラに秤量された成分を混合して入れて圧縮物を製造する工程、圧縮物を破って粒子を整粒して滑沢化し打錠して錠剤を製造するローラ圧縮法によって錠剤を製造することである。また、直打法は、錠剤の製造に必要な成分を混合した後、一度に圧縮する方法を意味する。好ましい様態として、前記コアは、湿式顆粒法によって錠剤形態(コア)に剤形化することができる。
【0033】
本発明による特発性肺線維症予防または治療用製剤は、前記コアに2種以上の互いに異なるコーティングを含む。前記2種以上の互いに異なるコーティングは、水溶性または不溶性高分子を含むコーティングおよび腸溶性高分子を含むコーティングからなる群より選択される2種以上であってもよい。好ましく、本発明による製剤は、コア表面に被覆された1次コーティングとして水溶性または不溶性高分子を含むコーティング、および前記1次コーティング上に被覆された2次コーティングとして腸溶性高分子を含むコーティングを含むことができる。前記水溶性または不溶性高分子を含むコーティングは、コアの表面をなめらかにして一定且つ安定的な腸溶コーティングを通じて効果的な腸溶錠の物性を示されるようにする長所がある。さらに、酸性物質からなる腸溶コーティングからピルフェニドンを遮断して安定性低下を防止することができ、腸溶コーティングに使用される有機溶媒によってピルフェニドンの安定性が低下するのを防止することができる。
【0034】
前記腸溶性高分子を含むコーティングはピルフェニドンが酸性条件で放出が起こらないようにし、小腸上部から腸溶被膜が溶解されて薬物が放出されるようにする。
【0035】
以上のような水溶性または不溶性高分子を含むコーティングおよび腸溶性高分子を含むコーティングを特に組み合せることによって、ピルフェニドンが体内投与時に本発明特有の薬物動態学的特性を有するようにしてピルフェニドンの投与で発生する胃腸管系副作用を低めることができ、ピルフェニドンの安定性が改善された経口投与製剤を提供することができる。
【0036】
好ましい様態で、前記水溶性または不溶性高分子はエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。このような水溶性または不溶性高分子は、本発明による製剤の耐酸性、有機溶媒によるピルフェニドンの安定性低下防止および耐衝撃性と被膜組成との関係を考慮して適切に選択することができる。
【0037】
また、前記腸溶性高分子は、胃腸のような酸性環境ではピルフェニドンを放出させないようにするpH依存的な高分子を使用することができる。例えば、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレートからなる群より選択される1種以上であってもよい。好ましい様態で、前記腸溶性高分子はメタクリル酸共重合体であってもよい。前記メタクリル酸共重合体の場合、腸溶コーティング時にピルフェニドンの安定性を害しないという点から好ましい。
【0038】
好ましい様態で、前記腸溶性高分子を含むコーティングは、ジエチルフタレート、トリエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリアセチン、トリブチルセバケート、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の可塑剤;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクからなる群より選択される1種以上の滑沢剤;そして酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の遮光剤をさらに含むことができる。前記可塑剤は腸溶性高分子を含むコーティングの全体重量に対して0.5~15重量%で含まれてもよく、前記滑沢剤は腸溶性高分子を含むコーティングの全体重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよく、前記遮光剤は腸溶性高分子を含むコーティングの全体重量に対して0.1~25重量%で含まれてもよい。
【0039】
本発明による製剤で、水溶性または不溶性高分子はピルフェニドン重量に対して1:0.005~1:0.15の重量比で使用し、好ましくは1:0.01~1:0.1、最も好ましくは1:0.02~1:0.05の重量比で使用される。<1>1:0.005以下の比率ではコアに十分な耐衝撃性の付与および安定性低下防止が難しく、<2>1:0.15以上の比率ではコアの溶出を遅延させる問題がある。本発明による製剤で、腸溶性高分子はピルフェニドン重量に対して1:0.001~1:0.3の重量比で使用し、好ましくは1:0.02~1:0.25、最も好ましくは1:0.05~1:0.2の重量比で使用される。<1>1:0.001以下の比率では十分な酸性条件での薬物放出抑制および十分な遅延時間を付与し難く、<2>1:0.3以上の比率では薬物の放出が起こらないか遅延時間が過度に超過する問題がある。
【0040】
前記水溶性または不溶性高分子を含むコーティングと腸溶性高分子を含むコーティングの重量比は1:60~1:1であってもよい。
【0041】
本発明による経口投与用特発性肺線維症予防または治療用製剤は、ピルフェニドンおよび薬学的に許容可能な添加剤を使用してコアを製造し、その後、前記製造されたコア上に2種以上の高分子を使用して2種以上のコーティングを形成させて製造することができる。好ましく、前記2種以上の互いに異なるコーティングは順次に行うことができ、水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤を使用して1次コーティングを行う段階および腸溶性高分子を含む2次コーティング基剤を使用して2次コーティングを行う段階を通じて形成させることによって行うことができる。
【0042】
具体的な一様態として、本発明による経口投与用特発性肺線維症予防または治療用製剤の製造方法は次の段階を含むことができる:
a)有効成分であるピルフェニドンと賦形剤および崩壊剤を混合する段階;
b)前記段階a)で製造された混合物に結合剤を付加し顆粒を得る段階;
c)前記段階b)で製造された顆粒と滑沢剤を混合し打錠してコアを製造する段階;
d)前記段階c)で製造されたコアを水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤を使用して1次コーティング錠を製造する段階;
e)前記段階d)で製造された1次コーティング錠に腸溶性高分子を含む腸溶コーティング基剤でコーティングして本発明による製剤を製造する段階。
【0043】
前記製造方法の段階a)、b)およびc)は、ピルフェニドンおよびその薬学的に許容可能な添加剤を含むコアを製造するために行われる段階である。別途に定義しない限り、前記各段階で使用されるピルフェニドン、薬学的に許容可能な添加剤、水溶性または不溶性高分子および腸溶性高分子、そしてこれらの含量などに関する事項は前記製剤に関して記述した事項をそのまま適用することができる。段階a)でピルフェニドンと賦形剤および崩壊剤を混合する段階は公知の混合機、例えば、流動層混合機、リボン混合機など多様な混合装置を制限なく選択して行うことができる。段階b)は前記段階a)から製造された混合物に結合剤を付加/混合して練合させ、これを篩過および押出させて顆粒を製造する段階であるので、公知の練合工程、造粒工程および整粒工程を適用することができる。前記段階b)で顆粒を製造する方法としては湿式顆粒法または乾式顆粒法によってもよい。段階c)では段階b)で製造された顆粒と滑沢剤を混合してコアを製造することができる。前記コアは好ましく錠剤形態(コア)である。
【0044】
段階c)で製造されたコアの耐衝撃性などを付加するために、段階d)で水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤を使用して1次コーティング錠(即ち、コア+コア外部1次コーティング)を製造する。
【0045】
前記1次コーティング基剤はこれに制限されるわけではないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される1種以上の水溶性または不溶性高分子を含むが、これに制限されるわけではない。本発明の一実施形態では1次コーティング基剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースであるオパドライクリア(登録商標)(Colorcon、USA)を使用した。
【0046】
前記段階e)では水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤によってコーティングされた1次コーティング錠に、pH依存的な高分子であるメタクリル酸共重合体腸溶性高分子を含む2次(腸溶)コーティング基剤を使用して腸溶コーティングを製剤最外部に形成させて最終的に本発明による特発性肺線維症予防または治療用製剤を製造する段階である。好ましく、前記腸溶コーティング基剤はジエチルフタレート、トリエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリアセチン、トリブチルセバケート、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の可塑剤;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクからなる群より選択される1種以上の滑沢剤;および酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群より選択される1種以上の遮光剤を含むことができるが、これに制限されるわけではない。本発明の一実施形態では2次(腸溶)コーティング基剤としてメタクリル酸共重合体であるアクリーズ(登録商標)(Colorcon、USA)、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP50を使用した。
【0047】
コーティング層を形成する方法は前記成分を使用して錠剤層の表面にフィルム状のコーティング層を形成することができる方法のうちから当業者の選択によって適切に選択することができ、流動層コーティング法、パンコーティング法などの方法を適用することができる。好ましくは、パンコーティング法を使用することが良い。
【0048】
本発明による製造方法は、ピルフェニドンおよび薬学的に許容可能な添加剤を含む薬学的組成物を剤形化してコアを製造し、これらを2以上のコーティング基剤、例えば水溶性または不溶性高分子を含む1次コーティング基剤および腸溶性高分子を含む腸溶コーティング基剤を通じて酸性条件では薬物が放出されないように設計して、実際投与時、胃腸では実質的に薬物が放出されず、小腸に到達時初めて薬物が放出される薬物動態学的特性を示すことができる製剤を提供することができる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、苛酷条件(60±2℃)1ヶ月および加速条件(40±2℃、75±5%RH)6ヶ月安定性試験で、類縁物質Aは0.1%以下、類縁物質Bは0.1%以下、個別未知類縁物質は0.05%以下、総類縁物質は0.3%以下で安定性が改善されたことを特徴とする特発性肺線維症の予防または治療用腸溶性製剤を提供する。
【0050】
以下、本発明を下記実施例に基づいてより詳しく説明するが、これらは本発明を説明するためのものに過ぎず、これらによって本発明の範囲が何らのようにも制限されるわけではない。
【実施例
【0051】
実施例1:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造I
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0052】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表1の通りである。
【表1】
【0053】
実施例2:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造II
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0054】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表2の通りである。
【表2】
【0055】
実施例3:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造III
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP50、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0056】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表3の通りである。
【表3】
【0057】
実施例4:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造IV
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるオイドラギットL100-55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0058】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表4の通りである。
【表4】
【0059】
実施例5:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造V
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0060】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表5の通りである。
【表5】
【0061】
実施例6:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造VI
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0062】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表6の通りである。
【表6】
【0063】
実施例7:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造VII
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるアクリーズ(Acryleze)白色の約20(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0064】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表7の通りである。
【表7】
【0065】
実施例8:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造VIII
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるアクリーズ白色の約20(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0066】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表8の通りである。
【表8】
【0067】
比較例1:ピルフェニドン200mg一般コーティング錠の製造
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライ黄色の約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧してコアに10mgをコーティングして、目的としたピルフェニドン一般コーティング錠を得た。
【0068】
ピルフェニドン一般コーティング錠の成分は下記表9の通りである。
【表9】
【0069】
試験例1:酸性条件溶出試験評価
本発明の実施例および比較例によって製造されたピルフェニドンを含むコーティング錠を酸性条件の溶出液(pH1.2、900mL)で溶出試験を実施した。溶出試験はERWEKA DISSOLUTION TESTERで行い、分析はAgilent 1260 series HPLCを用いて各時間ごとに検液を採取して分析した。
【0070】
<HPLC分析条件>
移動相:pH3.0水溶液1)/メタノール/アセトニトリル=650/130/220(v/v/v)
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長220nm)
流速:1.0mL/分
カラム:内直径約4.6mm、長さ約150mmのステンレス鋼管に5μmのオクタデシルシリルシリカゲルを充電したカラム
カラム温度:40℃付近の一定温度
標準液製造:ピルフェニドン標準品11mgを精密に秤量して50mL容量フラスコに入れて溶出液35mLを加えて5分間超音波抽出し冷ました後、溶出液で標線を合わせた液を標準液とする。
1)pH3.0水溶液:トリエチルアミン0.9mLを水650mLに溶かした後、リン酸でpH3.0になるように調節した液
【0071】
<計算式>
ピルフェニドン(C1211NO:185.2)の表示量に対する溶出率(%)
:検液から得られたピルフェニドンのピーク面積
:標準液から得られたピルフェニドンのピーク面積
:標準品採取量(mg)
C:この薬の1錠当り主成分表示量
P:ピルフェニドンの標準品純度(%)
18:検液および標準液の希釈倍数
その試験結果を図1および表10に示した。
【表10】
【0072】
図1および表10から確認できるように、本発明によるピルフェニドン製剤の場合、酸性溶出条件では溶出後30分のピルフェニドン溶出率が実施例1~4は全て0%を示すことに反し、腸溶コーティングを含まない比較例1は溶出即時90%以上の溶出率を示し、30分以内にピルフェニドンが全量放出されるのを確認することができた。この結果によれば、本発明の製剤は他の製剤とは異なり、優れた酸性条件でのピルフェニドン溶出抑制効果を示すことが分かる。
【0073】
試験例2:塩基性条件溶出試験評価
本発明の実施例および比較例によって製造されたピルフェニドンを含むコーティング錠を塩基性条件の溶出液(pH6.8、900mL)で溶出試験を実施した。溶出試験はERWEKA DISSOLUTION TESTERで行い、分析はAgilent 1260 series HPLCを用いて各時間ごとに検液を採取して試験例1の分析条件および計算式を使用して分析した。その試験結果を図2および表11に示した。
【表11】
【0074】
図2および表11から確認できるように、本発明によるピルフェニドン製剤の場合、塩基性溶出条件では溶出後10分以内にピルフェニドン溶出が開始され、溶出後30分~2時間内に大部分のピルフェニドン溶出が完了するのを確認することができた。
【0075】
試験例3:ビーグル犬を用いた薬物動態学的分析試験
本発明の実施例および比較例によって製造されたピルフェニドンを含むコーティング錠をビーグル犬を用いて薬物動態学的分析試験を実施した。群構成は雄ビーグル犬10匹を群当り5匹ずつそれぞれ実施例1群と比較例1群に編成して経口投与後7日以上wash-outし、交差試験で行った。ステンレス材質の犬飼育箱当り1匹個体数で飼育し、1日1回300gの飼料および逆浸透圧処理した地下水を自動給水装置を通じて給水した。投与前16時間絶食を実施し、飲水は自由に摂取するようにした。薬物投与時、投与者は片手でビーグル犬の口を軽くあけた後、他の片手で錠剤を舌根部まで入れた。この時、円滑な投与のために約10mL程度の飲水を投与した。群構成は下記表12に示した。
【表12】
【0076】
各群のすべての個体に対して投与後前肢静脈から使い捨て注射器を用いて約2mLの血液を採血した。採血した血液は即時抗凝固剤が入った血液検体容器に入れてRoll-mixer(5Roll Mixer、HYUNIL LAB-MATE)を用いて血液と抗凝固剤が混合されるようにした。採血した血液を採血後30分以内に3,000rpmで15分間遠心分離(Cenrtifuge5810R、Effendorf)して血しょうを分離した。分離された各血しょうを準備されたtubeに400μlずつ入れて超低温冷蔵庫に入れて保管した。採血時間は、0、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、6、8、10、12、24時間でブランクを除いて総12point採血した。
【0077】
<HPLC分析条件>
移動相:10mM ammonium formate(0.1% formic acid):Methanol=4:6(v/v)
検出器:4000 Qtrap MRM mode
流速:0.25mL/分
カラム:内直径約2.1mm、長さ約50mmのステンレス鋼管に3μmのオクタデシルシリルシリカゲルを充電したカラム
薬物動態学的分析試験で血しょう最高濃度(Cmax)、血しょう最高濃度時間(Tmax)および薬物時間曲線下面積(AUC)を測定し、臨床的症状として嘔吐有無を観察した。AUC、CmaxおよびTmax図3と表13に示し、投与後個体の嘔吐有無および嘔吐した個体数については表14に示した。
【表13】
【表14】
【0078】
表13および14から確認できるように、比較例1の投与時、投与後速い時間内に最高血中濃度(Cmax)に到達する反面、本発明による実施例1製剤投与時、最高血中濃度到達時間(Tmax)が投与後2.29±1.90時間であって胃腸を通過する間には放出されず小腸に到達する時点で十分なピルフェニドンの放出量を示すのを確認することができた。
【0079】
実施例9:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造I
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるアクリーズ白色の約20(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0080】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表15の通りである。
【表15】
【0081】
実施例10:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造II
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるアクリーズ白色の約20(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0082】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表16の通りである。
【表16】
【0083】
実施例11:ピルフェニドン200mg腸溶コーティング錠の製造III
有効成分であるピルフェニドンを乳糖水和物およびクロスカルメロースナトリウムと混合した。流動層造粒機を用いてヒドロキシプロピルセルロースの約5(w/w)%濃度の溶液を製造および噴霧して顆粒を製造する。クロスカルメロースナトリウムを顆粒に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウムで滑沢する。最終混合物を15kNの力で圧搾してピルフェニドン200mgを含有するコアを得た。(コア重量285mg/錠)パンコーティング機を用いて錠当りオパドライクリアの約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して6mgをコーティングした後、腸溶コーティング基剤であるオイドラギットL100-55、可塑剤であるトリエチルシトレートおよび滑沢剤であるタルクを含む約10(w/w)%濃度の溶液を製造噴霧して腸溶コーティングを行った。
【0084】
ピルフェニドン腸溶コーティング錠の成分は下記表17の通りである。
【表17】
【0085】
試験例4:類縁物質試験
本発明の実施例によって製造されたピルフェニドンを含むコーティング錠を苛酷条件(60±2℃)1ヶ月および加速条件(40±2℃、75±5%RH)6ヶ月間保管後、検体を採取して下記条件によって分析した。
【0086】
<HPLC分析条件>
-移動相A:トリエチルアミン0.9mLを水650mLに溶かした後、リン酸でpH3.0になるように調節する。
-移動相B:メタノールとアセトニトリルを130:220の体積比で混合する。
-希釈液:移動相Aと移動相Bを650:350比率で混合する。
-標準液:類縁物質A標準品5mgおよび類縁物質B標準品5mgを秤量して50mL容量フラスコに入れ希釈液を加えて溶かした後、標線を合わせて類縁物質標準原液とする。検液1.0mLを取って100mL容量フラスコに入れ、希釈液を入れて標線を合わせる。この液5.0mLおよび類縁物質標準原液1.0mLを取って100mL容量フラスコに入れ希釈液を入れて正確に100mLにして標準液とする(類縁物質A、B:1.0μg/mL、ピルフェニドン:0.5μg/mL)。
【0087】
-検液:この薬20錠を持ってその質量を精密に秤量して粉にし、ピルフェニドンで約100mg該当する量を精密に秤量して100mL容量フラスコに入れ、希釈液を70mL入れて5分間超音波抽出した後、室温に冷ました後、希釈液を入れて標線を合わせる。この液を0.45μmメンブレインフィルターでろ過して検液とする(1.0mg/mL)。標準液および検液20μLずつを持って以下の条件で液体クロマトグラフ法によって試験する。
【0088】
-操作条件
検出器:紫外部吸光光度計
類縁物質A、B(測定波長:310nm、Reference:380nm)
未知類縁物質(測定波長:220nm、Reference:380nm)
カラム:内直径約4.6mm、長さ約250mmのステンレス鋼管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリルシリカゲルを充電する。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:移動相AおよびBを持って以下の表18のように段階的または濃度傾け的に制御する。
【表18】
【0089】
-システム適合性:標準液20μLを持って上記条件で試験を6回繰り返す時、類縁物質A、類縁物質Bおよびピルフェニドンピーク面積の相対標準偏差(%RSD)は2.0%以下でなければならない。標準液20μLを持って上記条件で試験する時、類縁物質Aと類縁物質Bの分離度は10以上でなければならない。
【0090】
-類縁物質計算式
類縁物質AおよびBの量(%)=
:検液310nm波長で得られた類縁物質AおよびBのピーク面積
:標準液310nm波長で得られた類縁物質AおよびBのピーク面積
:標準品採取量(mg)
:検体採取量(mg)
:この薬1錠の平均質量(mg)
C:この薬1錠当り主成分表示量(200mg)
0.02:標準液と検液の希釈倍数
P:各類縁物質標準品の純度(%)
個別未知類縁物質の量(%)=
:検液220nm波長で得られた個別未知類縁物質のピーク面積注1)
:標準液220nm波長で得られたピルフェニドンのピーク面積
:標準液中のピルフェニドンの濃度(mg/mL)
:検液中のピルフェニドンの濃度(mg/mL)
総類縁物質(%)
=類縁物質Aの量(%)+類縁物質Bの量(%)+個別未知類縁物質の量(%)の和(%)
注1)220nm波長で類縁物質A、Bピークは除外する。
【0091】
また、各類縁物質の相対保持時間および基準は下記の通りである。
【表19】
【0092】
類縁物質試験結果は下記表20~表24に示した。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0093】
上記表20~24の結果から、腸溶コーティング基剤としてメタクリル酸共重合体を使用した実施例9~11による製剤の場合、メタクリル酸共重合体でないヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP55またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP50を腸溶コーティング基剤として使用して製造された実施例1および3の製剤に比べて少量の類縁物質が検出されるのを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5