(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】腐食性化学環境に対する耐性を改善するための希土類(オキシ)フッ化物コーティングを有するデバイス、並びにこれらのデバイスを製造及び使用するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 49/167 20060101AFI20240520BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20240520BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20240520BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20240520BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C07C49/167 CSP
C07C43/04 C
C07F5/00 G
C23C16/18
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2022576180
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021037530
(87)【国際公開番号】W WO2021257641
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】寺本 喬
(72)【発明者】
【氏名】デュサラ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ニキフォロフ、グリゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ブラスコ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛嗣
(72)【発明者】
【氏名】山元 啓司
(72)【発明者】
【氏名】平井 正人
(72)【発明者】
【氏名】上村 直
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第93/004072(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/203155(WO,A1)
【文献】Chem. Vap. Deposition,2005年,11,Pages 324-329
【文献】Eur. J. Inorg. Chem.,2004年,Pages 500-509
【文献】Eur. J. Inorg. Chem.,2001年,Pages 1039-1044
【文献】Chem. Mater.,1996年,8,Pages 1292-1297
【文献】REGISTRY(STN)[online],[検索日:2023年10月24日],2020年05月18日,CAS Registry Number: 2416829-52-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 49/167
C07C 43/04
C07F 5/00
C23C 16/18
H01L 21/3065
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
M(FAB)
3・D
Y
(式中、Mは
、イットリウ
ムであり、
FABは、
ヘキサフルオロアセチルアセトンであり、
Y=1であり、Dは
、エチレングリコールエチルメチルエーテル
である。)の化学物質。
【請求項2】
請求項
1に記載の化学物質を含む、化学組成物。
【請求項3】
製造物品の全部又は一部を形成する化学反応性材料の表面上にコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3薄膜を堆積させる方法であって、
a.請求項
1に記載の
化学物質の蒸気に前記表面を第一に暴露するステップと、
b.前記表面を酸化剤ガ
スに第二に暴露するステップと、
c
.最初に
ステップa.、次に
ステップb.の順序で繰り返して、前記表面上に前記コンフォーマル及び接着性のMOF又はMF
3膜の所望の厚さを形成するステップと
、
を含む、方法。
【請求項4】
ステップa.及び/又はステップb.の間の温度が、200℃~350
℃である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンフォーマル及び接着性のMOF又はMF
3膜が、15原子%未満の酸
素及び3原子%未満の炭
素を含む、請求項
3又は
4に記載の方法。
【請求項6】
堆積の1サイクルあたりの膜成長が、0.11オングストローム以
上である、請求項
3又は
4に記載の方法。
【請求項7】
前記最終的なMOF又はMF
3膜が、走査型電子顕微鏡測定による
と95%~100%
コンフォーマルである、請求項
3又は
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年6月20日に出願された米国仮特許出願第63/040,318号の米国特許法第119条(a)及び(b)に基づく優先権の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、その主要な焦点として、腐食性化学環境への暴露から下層材料を保護するために表面を薄膜でコーティングすることに関する。
背景技術を参照。
【背景技術】
【0003】
多くの種々の産業プロセスには、高度に腐食性の化学物質及び化学環境が関与する。関与する化学環境に応じて、これらの腐食条件に暴露されるデバイスは、そのようなデバイスのためのニッケル合金の選択、又はニッケル合金クラッド、亜鉛めっき、化学気相成長によって適用されるセラミックコーティングなどの様々な技術及びアプローチを使用して、ある程度は腐食から保護され得る。
【0004】
現在の腐食防止技術の1つは、デバイスの表面をイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)でコーティングすることである。この特殊な腐食防止技術は、例えば、半導体産業において、フッ素ベースのエッチングガスを生成及び分配するために使用される「シャワーヘッド」を保護するために利用されている。例えば、米国特許出願公開第20120309204A1号明細書、誘導結合プラズマエッチング反応器用ガス分配シャワーヘッド(「耐浸食性を与えるために、下部プレートのプラズマ露出面をイットリアでコーティングすることができる」)を参照のこと。
【0005】
イットリアコーティングはある程度の腐食保護を提供するが、半導体産業で使用されるフッ素ベースのドライエッチングなどの工業プロセスでは、イットリアでさえ腐食性化学物質と化学反応する状況が多々ある。ここ数年、半導体製造プロセスエンジニアは、(例えば)イットリアの内壁が、浸食及び粒子発生という問題に直面することを観察してきた。これはおそらく、C,F含有層の形成が、プラズマ及び関連する種と相互作用して、その下層のイットリアの劣化を誘導するためであろう。
【0006】
より良好なコーティング材料へのニーズに応えるため、研究者はYF3及びYOF材料を研究してきた。例えば、Lin,Tzu-Kenら,“Preparation and characterization of sprayed-yttrium oxyfluoride corrosion protective coating for plasma process chambers.”Coating 8.10(2018):373を参照のこと。これらの調査により、YF3及びYOFコーティングの両方が、イットリアと比較して優れた腐食保護を提供することが確認されている。
【0007】
YF3及びYOFの両コーティングの可能性は研究者によって証明されているが、これらの調査用コーティングを適用する手段は、大気圧プラズマ溶射(APS)であった(同文献)。このようなAPS技術の技術的問題の一部は、米国特許出願公開第2015/0311043A1号明細書中、以下のように説明されている:「プラズマ溶射及び他の熱溶射技術は、厚膜保護層を形成するために使用され得る。しかし、ほとんどの厚膜コーティング技術は、長いリードタイムを有する。さらに、ほとんどの厚膜コーティング技術では、コーティングされる物品(例えば、蓋)がコーティングを受けるように調製するために、特別な表面調製が行われる。このような長いリードタイム及びコーティング調製ステップは、コストを増加させ、生産性を低下させ、さらに改修を阻害する可能性がある。さらに、ほとんどの厚膜コーティングには固有の亀裂及び孔があり、オンウエハ欠陥性能を低下させる可能性がある。」APSによる「厚膜コーティング」によって、100~250マイクロメートルの範囲のコーティングが生じる。例えば、Lin,Tzu-Kenら(上記)を参照のこと。明らかに、溝、チャネル及びトンネルなどのより小さな特徴を有する表面形態をコーティングする場合、厚膜コーティングは適切ではないであろう。さらに、APS厚膜コーティングのための表面処理は、耐腐食性が必要とされる表面と必ずしも適合しない。
【0008】
当技術分野に記載されているAPS厚膜コーティングの代替案がいくつかある。米国特許出願公開第2018/0105701A1号明細書は、HF/NH4F溶液などのF-含有溶液にコーティングされた成分を浸漬させることによって薄膜イットリア(Y2O3)コーティングを化学的に不動態化することを記載している。化学的表面不動態化は、同一反応性化学物質に暴露される表面を保護するための周知の技術である。しかしながら、不動態化は、イットリア層の露出表面のみを化学的に変換させる。膜中のバルク下層材料は、イットリアのままである。表面の不動態化された分子を除去するいずれかのプロセス及び損傷(例えば研磨加工)によって、その下層のイットリアを露出させることになる。
【0009】
腐食防止コーティングの実施例は、半導体製造業である。半導体プラズマ処理装置には、それらの硬度、高い耐摩耗性、絶縁耐力、高い耐腐食性及び一般的な化学的安定性のため、シリコン系セラミックが利用されている。これらのシリコン系セラミックは、例えば、プラズマ強化化学気相成長(PE-CVD)反応器内のセラミック部品、より具体的には、各種材料を化学的にエッチングするためのプラズマ条件で高腐食性のF種を生成するためにフッ化炭素ガス(例えば、CF4、CHF3、CH2F2、CH3F、C2F6、C4F8、CF3Iなど)が用いられる「ドライエッチャー」の保護に使用される。シリコン系セラミックはプラズマ及びF種に暴露され、徐々に化学的に侵食される。半導体製造における高密度プラズマの利用が進み、ハーフピッチノードの微細化、メモリトレンチの深さ及びアスペクト比の増加が続く中、プラズマ及びそのF系ラジカルによるシリコン系セラミックの粒子発生は、セラミック部品の保護効果低下、チャンバー内での粒子発生、及びこれらの粒子によるウエハ汚染という問題の増加を導いている。これらは、製造プロセスの製造収率に重大な影響を与える。
【0010】
具体的な例として、プラズマエッチングの混合物の生成及び方向づけに使用される「シャワーヘッド」には、特に腐食防止コーティングが必要とされる。シャワーヘッドは、その中に多数の小さなチャネルがあり、そこからプラズマエッチングのガスがプロセスチャンバー中に導入される。したがって、シャワーヘッドが、表面だけでなく、チャネルを通る表面にも、好ましくは非常にコンフォーマルな様式で、腐食防止コーティングによって被覆されている場合、最適である。理想的には、コスト及び信頼性を考慮して、YOF又はYF3コーティングプロセス自体が、同時に処理された各シャワーヘッド間で得られるコーティングの偏差を最小限にしながら、可能な限り多くのシャワーヘッドを同時にコーティングすることが可能であるべきである。
【0011】
上述したように、希土類フッ化物又はオキシフッ化物膜の一例としてのYOF又はYF3は、それらの高いプラズマ耐浸食性のため、イットリアのさらに魅力的な代替物であると思われる。YF3コーティング、並びに希土類フッ化物又はオキシフッ化物膜は、それらの材料の非常に大きなバンドギャップのため、光学分野に多くの用途がある。YF3は誘電体であり、UV~IRの波長領域で良好な光透過性を有する。フッ化スカンジウムは、光学コーティング及びレーザー産業で使用されている。フッ化ランタンは、蛍光灯、光ファイバー及び放射線用途に使用されている。
【0012】
コスト効率の良いプロセスのために、半導体製造業界などの多くの業界では、大量の基板を処理するバッチプロセス及び装置が開発されている。半導体産業で広く使用されている表面コーティングのプロセスは、化学気相成長法(CVD)又は原子層蒸着法(ALD)である。バッチプロセスで必要とされる体積のため、プロセスの効率、期間及びコストは、前駆体の特性及び反応性に大きく依存する。例えば、より揮発性の前駆体は、ALDプロセスにおいて前駆体のパルス時間及びパージ時間を最小化することができ、したがって、全体的なプロセス時間に大きな影響を与える。さらに、酸素又はオゾンに対して反応性である前駆体は、通常、より長いパージ時間を必要とする水のみに反応する前駆体よりも好ましい。したがって、効率的なCVD又はALDコーティングプロセスを可能にするために、産業界では、可能な限り高い蒸気圧を有し、非常に安定であり、コスト効率良く調製される有機金属前駆体が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当技術分野の現状を改善するために、本明細書には、高アスペクト比、表面形状を有する部分を有するターゲットの表面上に均一に厚いYF3又はYOFのコンフォーマル、接着性、薄膜を生成する化学試薬又は「前駆体」及び堆積プロセスが開示されている。好ましい前駆体は、標準的な温度及び圧力において、又は少なくとも温度が50℃未満の時に液体であろう。
【0014】
これら及び他の改善が本明細書に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、列挙された文章として記載される以下の非限定的、例示的な実施形態に関して理解され得る。
【0016】
1.次式:
M(FAB)3・DY
(式中、Mは、好ましくはイットリウム、La、Ce、Sm、Tb、Ybから選択される希土類元素であり、
FABは、フッ素化アニオン二座、好ましくはβ-ジケトネート、より好ましくはhfacであり、
Dは、y=0~4、好ましくはy=1又は2である中性配位子であり、好ましくは、各Dは、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン;dme)、ジグライム(ビス(2-メトキシエチル)エーテル)、dmp(1,2-ジメトキシプロパン)、1-(2-メトキシエトキシ)プロパン及びエチレングリコールエチルメチルエーテル(2-メトキシエタノール)からなる群から独立して選択される)の化学物質。
【0017】
2.Mがイットリウムである、センテンス1の化学物質。
【0018】
3.FABがβ-ジケトネートである、センテンス1又は2の化学物質。
【0019】
4.β-ジケトネートが、化学式I:
【化1】
(式中、各Rは、独立して、CF
3又はフルオロカルビル、好ましくはフッ素化された直鎖状又は分枝状C
1~C
4アルキルであってもよく、より好ましくは、各Rは、CF
3又はC
2F
5のいずれかである)を有する、センテンス3の化学物質。
【0020】
5.FABが化学式II:
【化2】
(式中、各Eは、独立して、O、S又はN-R’であり、R’は、H、直鎖状又は分枝状C
1~C
6アルキルであり、
各Qは、独立して、N、P、CH、CF、CR’であり、R’は、直鎖状又は分枝状C
1~C
6アルキルであり、
各R’は、任意選択的に、1個又は複数のFでフッ素化されてもいてもよく、且つ
各Rは、独立して、CF
3又はフルオロカルビル、好ましくはフッ素化された直鎖状又は分岐状C
1~C
4アルキルであってもよく、より好ましくは、各Rは、CF
3又はC
2F
5のいずれかである)を有する、センテンス1又は2の化学物質。
【0021】
6.少なくとも1つのFABが、ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfac)、トリフルオロアセチルアセトネート(tfac)、2,2-ジメチル-6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-3,5-オクタンジオン(fod)及びそれらの組合せからなる群から選択される、センテンス1又は2の化学物質。
【0022】
7.少なくとも1つのDが、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン;dme)、ジグライム(ビス(2-メトキシエチル)エーテル)、dmp(1,2-ジメトキシプロパン)、1-(2-メトキシエトキシ)プロパン及びエチレングリコールエチルメチルエーテル(2-メトキシエタノール)及びそれらの組合せからなる群から選択される、センテンス1~6のいずれか1つの化学物質。
【0023】
8.y=1又は2である、センテンス1~7のいずれか1つの化学物質。
【0024】
9.少なくとも1つのDがリンを含む、センテンス1~6のいずれか1つの化学物質。
【0025】
10.少なくとも1つのDが、トリメチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリ(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、トリ(3,3,3,2,2-ペンタフルオロプロピル)ホスフェート及びそれらの組合せからからなる群から選択される、センテンス9の化学物質。
【0026】
11.1気圧及び50℃以下で液体、好ましくは25℃以下で液体、より好ましくは20℃以下で液体である、センテンス1~10のいずれか1つの化学物質。
【0027】
12.
a.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1,2-ジメトキシエタン、
b.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1,2-ジメトキシプロパン、
c.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート2-メトキシエタノール、及び
d.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1-(2-メトキシエトキシ)プロパン
からなる群から選択される、センテンス1の化学物質。
【0028】
13.
a.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1,2-ジメトキシプロパン、
b.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート2-メトキシエタノール、及び
c.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1-(2-メトキシエトキシ)プロパン
からなる群から選択される、センテンス1の化学物質。
【0029】
14.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1,2-ジメトキシエタンである、センテンス1の化学物質。
【0030】
15.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1,2-ジメトキシプロパンである、センテンス1の化学物質。
【0031】
16.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート2-メトキシエタノールである、センテンス1の化学物質。
【0032】
17.イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトネート1-(2-メトキシエトキシ)プロパンである、センテンス1の化学物質。
【0033】
18.センテンス1~17のいずれか1つによる化学物質を含む、化学組成物。
【0034】
19.センテンス1~17のいずれか1つによる化学物質が、化学組成物の95重量%以上、95モル%以上、又はその両方である、センテンス18の化学組成物。
【0035】
20.センテンス1~17のいずれか1つによる化学物質が、化学組成物の99重量%以上、99モル%以上、又はその両方である、センテンス19の化学組成物。
【0036】
21.センテンス1~17のいずれか1つによる化学物質が、化学組成物の99.9重量%以上、99.9モル%、又はその両方である、センテンス20の化学組成物。
【0037】
22.以下の量未満の特定の不純物:
a.1%未満、好ましくは0.1%未満の塩素不純物
を有する、センテンス18~21のいずれか1つの化学組成物。
【0038】
23.製造物品の全部又は一部を形成する化学反応性材料の表面上にコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3薄膜を堆積させる方法であって、
a.センテンス18~22のいずれか1つによる金属含有化学組成物の蒸気に表面を第一に暴露するステップと、
b.表面を酸化剤ガス、好ましくはオゾンに第二に暴露するステップと、
c.ステップa.及びb.を、好ましくは最初にa.、次にb.の順序で繰り返して、表面上にコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3膜の所望の厚さを形成するステップと
を含む、方法。
【0039】
24.ステップa.及び/又はステップb.の間の温度が、200℃~350℃、好ましくは250℃~300℃、より好ましくは250℃~275℃である、センテンス23の方法。
【0040】
25.コンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3膜が、15原子%未満の酸素、好ましくは10原子%未満の酸素、より好ましくは5原子%未満の酸素、及び3原子%未満の炭素、好ましくは1.5原子%未満の炭素を含む、センテンス23又は24の方法。
【0041】
26.コンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3膜によってコーティングされる化学反応性材料の表面が、6.25:1以上、例えば10:1又は20:1のアスペクト比を有する構造特徴を含む、センテンス23~25のいずれか1つの方法。
【0042】
27.ステップb.の前に、ステップa.からのセンテンス12~16のいずれかによる金属含有化学組成物の蒸気のパージがない、センテンス23~26のいずれか1つの方法。
【0043】
28.堆積の1サイクルあたりの膜成長が、0.11オングストローム以上、好ましくは0.14オングストローム以上、より好ましくは0.24オングストローム以上、例えば0.24~0.30オングストロームである、センテンス23~27のいずれか1つの方法。
【0044】
29.MOF又はMF3膜が、下層表面から5nm~500nm、好ましくは10nm~100nm、より好ましくは10nm~50nm、例えば20nm、25nm又は30nmの厚さである、センテンス23~28のいずれか1つの方法。
【0045】
30.最終的なMOF又はMF3膜が、走査型電子顕微鏡測定によると20%~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは80%~100%、例えば95%~100%コンフォーマルである、センテンス23~29のいずれか1つの方法。
【0046】
31.MOF又はMF3膜が、下層表面から10nm~50nmの厚さであり、95%~100%コンフォーマルである、センテンス23~30のいずれか1つの方法。
【0047】
32.MOF又はMF3膜が、ASTMD3330/D3330M-04(2018)によると2.5N/cmの鋼に対する接着力を有する接着テープによる剥離試験を用いた場合に下層表面から剥離しない、センテンス23~31のいずれか1つの方法。
【0048】
33.化学反応性材料を含む製造物品であって、製造物品をコーティングしているコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3層をさらに含み、Mが希土類元素であり、MOF又はMF3コーティング層が、化学反応性材料の表面の50%より多く、好ましくは表面の90%より多く、さらにより好ましくは表面の95%より多く、例えば99%又は99.9%をカバーする、製造物品。
【0049】
34.Mがイットリウムである、センテンス33の製造物品。
【0050】
35.製造物品をコーティングしているコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3層が、250nm以下、好ましくは5nm~100nm、より好ましくは10nm~50nm、例えば15nm、20nm、25nm又は30nmの厚さである、センテンス33又は34の製造物品。
【0051】
36.製造物品をコーティングしているコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3層が、走査型電子顕微鏡測定によると20%~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは80%~100%、例えば95%~100%コンフォーマルである、センテンス33~35のいずれか1つの製造物品。
【0052】
37.製造物品をコーティングしているコンフォーマル及び接着性のMOF又はMF3層が、ASTMD3330/D3330M-04(2018)によると2.5N/cmの鋼に対する接着性を有する接着テープによる剥離試験を用いた場合に製造物品から剥離しない、センテンス33~36のいずれか1つの製造物品。
【0053】
38.物品の表面が化学反応性材料を含み、且つ原子層堆積プロセスで使用される堆積プロセス化学物質に暴露される原子層堆積プロセスのために製造物品が設計され、且つ原子層堆積プロセスで動作するように製造物品が構成され、且つ堆積プロセス化学物質が、原子層堆積プロセスの間に化学反応性材料と反応することが可能である、センテンス33~37のいずれか1つの製造物品。
【0054】
39.物品の表面が化学反応性材料を含み、且つ化学反応性材料と化学的に反応することが可能であるエッチングガスに暴露されるエッチングガス環境のために製造物品が設計され、且つエッチングガス環境で動作するように製造物品が構成される、センテンス33~37のいずれか1つの製造物品。
【0055】
40.エッチングガス環境が、半導体製造プロセスにおけるエッチングプロセスである、センテンス39の製造物品。
【0056】
41.エンクロージャー又はチャンバー内のエッチングプロセス中にエッチングガスを導入するために設計及び構成されるシャワーヘッドである、センテンス40の製造物品。
【0057】
42.エンクロージャー又はチャンバーがエッチングチャンバーであり、且つ半導体製造プロセスがフルオロカーボンエッチングガスを利用するドライエッチングプロセスである、センテンス40の製造物品。
【0058】
43.エンクロージャー又はチャンバー内のエッチングプロセス中にエッチングガスを導入するために設計及び構成されるシャワーヘッドである、センテンス42の製造物品。
【0059】
44.エンクロージャー又はチャンバーがバッチエッチングチャンバーであり、且つ半導体製造プロセスがフルオロカーボンエッチングガスを利用するドライエッチングプロセスである、センテンス43の製造物品。
【0060】
45.エッチングガス環境がNF3リモートプラズマである、センテンス39~44のいずれか1つの製造物品。
【0061】
46.化学反応性材料の表面が、6.25:1以上、例えば10:1又は20:1のアスペクト比を有する構造特徴を含む、センテンス33~45のいずれか1つの製造物品。
【0062】
47.エッチングプロセスにエッチングガスを送達する方法であって、
a.センテンス33~46のいずれか1つの製造物品を介してエッチングプロセス中にエッチングガスを導入するステップ
を含む、方法。
【0063】
本開示の上記で言及された特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約された様々な態様は、その一部が添付の図面中に例示されている例示的な実施形態を参照することによって、より詳細に説明され得る。しかしながら、本開示は、他の同様に有効な実施形態を認めることができるので、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例示し、したがって、その範囲を限定するものとはみなされないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】アスペクト比を有する構造を有する表面に対するコンフォーマリティ(ここではアスペクト比6:1における側部ステップカバレッジとして定義)の算出を示す模式図である。
【
図2】Y(hfac)
3(H
2O)
2(大気圧)のDTA及びTGAを示す図である。
【
図3】Y(hfac)
3(dme)(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図4A】Y(hfac)
3(dme)の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図4B】Y(hfac)
3(dme)の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図5】Y(hfac)
3(dmp)(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図6】Y(hfac)
3(dmp)の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図7】Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図8A】Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図8B】Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図9】Y(hfac)
3(TMPO)
2(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図10】Y(hfac)
3(TMPO)
2の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図11】Y(hfac)
3(tfep)
2(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図12】Y(hfac)
3(tfep)
2の蒸気圧をステップ等温法によって決定した。
【
図13】Y(fod)
3(dme)(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図14】Y(fod)
3(dmp)(大気圧)のDTA及びTGAを示す。
【
図15】膜堆積実験に使用したCVD反応器の概略図を示す。
【
図16】CVD堆積サイクルの数の関数としての膜厚のグラフを示す。
【
図17】均一な堆積条件及びパラメータ下での1つの前駆体についての温度の関数としての膜の原子組成の概要を示す。
【
図18】250℃での逐次注入堆積によって堆積された薄膜の走査型電子顕微鏡写真。
【
図19】275℃での逐次注入堆積によって堆積された薄膜の走査型電子顕微鏡写真。
【
図20】300℃での逐次注入堆積によって堆積された薄膜の走査型電子顕微鏡写真。
【
図21】300℃での連続/同時注入堆積によって堆積された薄膜の走査型電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0065】
定義、規格、基準
熱重量分析(thermogravimetric analysis又はthermal gravimetric analysis)(TGA)は、温度変化に伴う試料の質量の経時変化を測定する熱分析法である。ASTM E1131-08(2014),Standard Test Method for Compositional Analysis by Thermogravimetry,ASTM International,West Conshohocken,PA,2014。
【0066】
示差走査熱量測定(DSC)は、試料及び参照物質の温度を上昇させるために必要な熱量の差を温度の関数として測定する熱分析技術である。ASTM E794-06(2018),Standard Test Method for Melting And Crystallization Temperatures By Thermal Analysis,ASTM International,West Conshohocken,PA,2018。
【0067】
示差熱分析(DTA)は示差走査熱量計と同様の熱分析技術である。DTAでは、試料と参照物質との間の温度差を記録しながら、試料及び不活性参照物質に同一の熱サイクル(すなわち、同一の冷却又は加熱プログラム)を受けさせる。次いで、この温度差を時間又は温度に対してプロットする(DTA曲線又はサーモグラム)。試料の発熱又は吸熱変化を、不活性参照物質に対して検出することができる。したがって、DTA曲線は、ガラス転移、結晶化、融解及び昇華などの生じた変態に関するデータを提供する。DTAピーク下の面積はエンタルピー変化であり、試料の熱容量の影響を受けない。ASTM E794-06(2018),Standard Test Method for Melting And Crystallization Temperatures By Thermal Analysis,ASTM International,West Conshohocken,PA,2018。
【0068】
コンフォーマリティ及びステップカバレッジは両方とも、表面上、特に表面上のトポロジー的に異なる領域の膜厚のばらつき度を指す。これは、特に、様々なアスペクト比を有する微細構造を有する表面に関連する。膜のコンフォーマリティに関する様々な要素及び計算の例示的な図を
図1に示す。上記の例における完全な(100%の)コンフォーマリティは、カスピングがゼロであり、そして上面、溝側壁及び場合によっては溝底が全て同一の厚さを有することを意味する。単一のコンフォーマリティパーセントが与えられる場合、それは、表面上の選択された2点における膜全体の相対的厚さの最大偏差に相当する最小コンフォーマル測定値である。この2点は、最も高いアスペクト比の点、又は、例えば、6:1以下などの特定のアスペクト比を有する点に相当し得る。膜の厚さは、例えば、切断した基板の走査型電子顕微鏡検査など、多くの方法によって評価される。膜は、膜が少なくとも20%コンフォーマリティ、好ましくは少なくとも50%コンフォーマリティを有する場合、一般に「コンフォーマル」である。
【0069】
膜の密度及び空隙率は、薄膜の密度の測定値、すなわち、kg/m3である。密度/空隙の評価には、X線反射率測定法及び他の技術が用いられる。例えば、Rouessac,Vincent,et al.“Three characterization techniques coupled with adsorption for studying the nanoporosity of supported films and membranes.”を参照されたい。Microporous and mesoporous materials 111.1-3(2008):417-428を参照のこと。多孔性は、一般に、既知の非多孔性対照の密度、又は非多孔性膜の理論密度に基づくパーセントとして表される。
【0070】
膜接着性とは、薄膜が下層から分離、フレーク化、剥離又は気泡形成するために必要な条件及び力の測定である。一般的な測定は、接着テープを用いた剥離試験である。Hull,T.R.,J.S.Colligon及びA.E.Hill.“Measurement of thin film adhesion.”Vacuum 37.3-4(1987):327-330。例えば、ASTM B905-00(2016),Standard Test Methods for Assessing the Adhesion of Metallic and Inorganic Coatings by the Mechanized Tape Test,ASTM International,West Conshohocken,PA,2016を参照のこと。
【0071】
幾何学的形状のアスペクト比とは、異なる寸法のサイズの比率である。アスペクト比は、コロンで区切られた2つの整数(x:y)によって表されることが最も多い。x及びyの値は実際の幅及び高さを表すのではなく、幅及び高さの比率を表している。一例として、8:5、16:10、1.6:1などは全て同一アスペクト比を表す方法である。超長方形などの3以上の寸法を有する物体でも、アスペクト比を最長辺対最短辺の比率として定義することができる。
【0072】
原子層堆積法(ALD)は、気相化学プロセスの連続使用に基づく薄膜堆積技術であり、化学気相堆積法の亜流である。ALD反応の大部分は、前駆体(「反応物」とも呼ばれる)と呼ばれる2種の化学物質を使用する。これらの前駆体は、逐次的、自己限定的様式で、一度に1つずつ材料表面と反応する。別々の前駆体に繰り返し暴露されることによって、薄膜はゆっくりと堆積する。
【0073】
化学気相堆積法(CVD)は、高温のCVD反応炉中で行われる雰囲気制御プロセスである。このプロセスの間、CVD反応器内で様々な気体相と加熱された基板表面との間での反応の結果として、薄膜コーティングが形成される。
【0074】
CVD用前駆体
一般に、MOF/MF
3薄膜コーティングの堆積に使用するのに適切なCVD前駆体は、M(FAB)
xD
y(以下、M(FAB)と記載する)の形態の金属(M)フッ素含有アニオン性二座(FAB)化合物であり:
● Mは、IIIA又はIIIB元素である。好ましくは、Mは特には希土類であり、Sc、Y及びLa-Luが含まれる。最も好ましくはイットリウムである。
● FABは、フッ素化アニオン性二座であり、β-ジケトネート、β-ジケトイミネート及びβ-ケトイミネートなどの化学部分によって示される。
〇 xは1~3の整数であり、好ましくはxは3である。
■ x=2又は3の場合、M(FAB)分子内の各FABは、互いに同一、又は異なっていてもよい。
● 好ましくは、全てのFABが同一である。
〇 FAB、フッ素含有アニオン性二座は、次式によって表される。
【化3】
■ 上記式中、
● 各Eは、独立して、O、S又はN-R’であることが可能であり、R’はH、C
1~C
6アルキル(直鎖状又は分枝状)である。
〇 アルキルはフッ素化されていてもよいし、若しくは別のヘテロ原子を組み込んでいてもよい。
● 各Qは、独立して、N、P、CH、CF、CR’であることが可能であり、R’はC
1~C
6アルキル(直鎖状又は分枝状)である。
〇 アルキルはフッ素化されていてもよいし、若しくは別のヘテロ原子を組み込んでいてもよい。
● 好ましいFABでは、少なくとも1つのR又はR’は、CF
3又はフルオロカルビル、好ましくはフッ素化C
1~C
4アルキルである。
〇 より好ましくは、R又はR’の両方が、フルオロカルビル、例えばフッ素化C
1~C
4アルキルである。
■ 最も好ましくは、各Rは、独立して、CF
3又はC
2F
5である。
〇 FAB、フッ素含有アニオン性二座は、好ましくはE=O及びQ=CHによって定義され、例えば、次一般式を有するフッ素含有β-ジケトネートであり得る。
【化4】
■ 上記式中、少なくとも1つのRは、CF
3又はフルオロカルビル、好ましくはフッ素化C
1~C
4アルキル(直鎖状又は分枝状)である。
● より好ましくは、両方のRが、フルオロカルビル、好ましくはフッ素化C
1~C
4アルキルである。
〇 これらの実施形態において、各Rは、好ましくは、独立して、CF
3又はC
2F
5である。
■ 最も好ましくは、両方のRがCF
3であり、したがって、FABは、ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfac)である。
● Dは、供与体中性配位子であり、好ましくは、アルコール、エーテル、スルフィド、アミン、ニトリル、アミド(R
2N-C(=O)H)、ホスフィン、ホスフェート、ジエン、シクロジエンであり、それぞれは任意選択的にフッ素化されていてもよい。
〇 yは0~4であり、好ましくは、yは1又は2である。
〇 供与体配位子は、プロトン性又は非プロトン性Hであり得る。
〇 ホスフェートは、好ましくは、R=C
1~C
8を有するP(=O)(OR)の形態である。
〇 好ましいDは、各R
1、R
2、R
3が、独立して、H又は直鎖状、分枝状若しくは環式C
1~C
8、好ましくはC
1~C
4である、R
1-O-R
2-O-R
3の形態である。
■ 最も好ましくは、R
1及びR
2は、独立して、H、メチル又はエチルである。
■ 最も好ましくは、R
3は、C
1~C
4である。
〇 供与体配位子の例は、以下の通りであることも可能である。
【化5】
〇 CF
3基を含有する供与体配位子の他の例は、以下の通りである。
【化6】
【0075】
Dの特に好ましい実施形態は、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン;dme)、ジグライム(ビス(2-メトキシエチル)エーテル)、dmp(1,2-ジメトキシプロパン)、1-(2-メトキシエトキシ)プロパン及びエチレングリコールエチルメチルエーテル(2-メトキシエタノール)である。
【0076】
Dがホスフェートである亜属の好ましい種[M(FAB)3(ホスフェート)]は、以下のDを有する。
TMP:トリメチルホスフェート
TBP:トリ-n-ブチルホスフェート
TFEP:トリ-(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート
TFPP:トリ-(3,3,2,2-ペンタフルオロプロピル)ホスフェート
【0077】
特に、以下の種が挙げられる:Y(hfac)3(TMP)、Y(hfac)3(TMP)2、La(hfac)3(TMP)2、Ce(hfac)3(TMP)2、Y(hfac)3(TFEP)、Y(hfac)3(TFEP)2、La(hfac)3(TFEP)2、Ce(hfac)3(TFEP)2、Y(hfac)3(TFPP)、Y(hfac)3(TFPP)2、La(hfac)3(TFPP)2及びCe(hfac)3(TFPP)2。
【0078】
上記種は、FABとしてtfac及びfodを有していてもよい。
【0079】
異なる希土類元素の前駆体の例示的な種は、以下を含む。
【0080】
Y:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンイットリウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンイットリウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールイットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)イットリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)イットリウム
【0081】
Sc:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンスカンジウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンスカンジウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールスカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)スカンジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)スカンジウム
【0082】
La:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンランタン;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンランタン、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ランタン
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ランタン
【0083】
Ce:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンセリウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンセリウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールセリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)セリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)セリウム
【0084】
Pr:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンプラセオジム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンプラセオジム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールプラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)プラセオジム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)プラセオジム
【0085】
Nd:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンネオジウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンネオジウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ネオジウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ネオジウム
【0086】
Sm:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンサマリウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンサマリウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールサマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)サマリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)サマリウム
【0087】
Eu:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンユウロピウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンユウロピウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ユウロピウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ユウロピウム
【0088】
Gd:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンガドリニウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンガドリニウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ガドリニウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ガドリニウム
【0089】
Tb:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンテルビウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンテルビウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)テルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)テルビウム
【0090】
Dy:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンジスプロシウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンジスプロシウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ジスプロシウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ジスプロシウム
【0091】
Ho:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンホルミウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンホルミウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ホルミウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ホルミウム
【0092】
Er:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンエルビウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンエルビウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールエルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)エルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)エルビウム
【0093】
Tm:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンツリウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンツリウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ツリウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ツリウム
【0094】
Yb:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンイッテルビウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンイッテルビウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールイッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)イッテルビウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)イッテルビウム
【0095】
Lu:
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシエタンルテチウム;
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1,2-ジメトキシプロパンルテチウム、
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)2-メトキシエタノールルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)1-(2-メトキシエトキシ)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(エチレングリコールエチルメチルエーテル)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリメチルホスフェート)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(tfep)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(1-(2-メトキシエトキシ)プロパン)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(ジグライム)ルテチウム
トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(トリグライム)ルテチウム
【0096】
上記例示的な種は、ヘキサフルオロアセチルアセトナト基の1個又は複数個の位置にtfac及び/又はfodを有してもよい。
【0097】
CVD用前駆体の特性
上記の前駆体は熱的に安定しており、精製及び/又は同位体濃縮に適切である。前駆体の範囲によって、以下のような所望の物理的特性に調整することが可能である。
・前駆体の融点は、100℃未満、好ましくは50℃未満(例えば25℃)、最も好ましくは20℃未満である。
・前駆体の蒸気圧を、好ましくは100℃~150℃、例えば110℃~140℃又は115℃~125℃の温度である前駆体の熱分解温度に達する前に1トール以上まで高めることができる。
【0098】
好ましい堆積条件及び例示的プロセスの説明
MOF又はMF3膜は、上記M(FAB)xDy前駆体の蒸気を化学気相成長反応器中に供給して、金属、フッ素及び任意選択的に酸素を有する膜(すなわち、MF3又はMOF)を堆積することによって堆積される。例えば、膜は、フッ化イットリウム(YF3)又はオキシフッ化イットリウム(YOF)膜であってもよい。
・好ましくは、CVDプロセスは、H2O、O2及びO3から選択される少なくとも1つの酸化剤共反応物質を含む。オゾンは、以下でさらに説明するように、予想外のCVD膜品質が達成できるため、非常に好ましい。
・MF3又はMOF膜は、界面層の有無にかかわらず、Si、化合物SC、鋼(ステンレス鋼を含む)、セラミック、ガラス、導電層上にCVDにより均一且つコンフォーマルに堆積される。
【0099】
最も好ましくは、各注入ステップがパージによって分離されているか否かを問わず、前駆体と共反応物質との間で逐次、M(FAB)xDy蒸気をCVD反応器に供給することによって、原子層堆積法成分を含み得るレイヤーバイレイヤー堆積モードでMF3又はMOF膜を堆積して、均一、接着性及びコンフォーマルな薄膜を堆積する。レイヤーバイレイヤーモード(又は逐次注入)によって、優れたコンフォーマリティを有する膜の堆積、並びに低いプロセス温度の利用が保証される。いくつかの好ましい堆積プロセス条件は、いずれかの組合せで、以下の1つ又は複数を含む。
・堆積プロセス温度は、150℃~500℃、好ましくは200℃~350℃、最も好ましくは250℃~300℃である。最低温度は。一部において、CVD膜の成長速度に基づき、最高温度は、一部において、前駆体の熱安定性に基づいて選択される。
・堆積プロセス圧力は、0.01トール~1000トール、好ましくは0.2トール~200トール、最も好ましくは0.5トール~20トールである。
・少なくとも1つの共反応物質はオゾン(O3)である。
・得られた膜は、均一、コンフォーマルであり、基板に接着している。
・基板表面は、Si、化合物SC、鋼(好ましくはステンレス鋼)、セラミック、ガラス、導電層の1種又は複数種であり、界面層はあってもなくてもよい。
・膜は、XPS分析(後述)によると、3%未満の炭素を含有する。好ましくは、炭素は検出限界未満(約1.5%未満)である。
・MOF膜中の堆積された時の酸素含有量は15%未満、最も好ましくは5%未満である。
・CVD膜をさらに高密度化し、耐エッチング浸食性を強化するためには、堆積後に300℃~1000℃、好ましくは450℃~800℃、最も好ましくは550℃~700℃の温度で膜に焼き鈍しを行う。
・前駆体M(FAB)xDyは、100℃未満、好ましくは50℃未満、最も好ましくは15℃未満の融点を有する。
・分子は順調に気化又は昇華し(例えば、TGA条件においてステップが観察されない)、TGA(後述)によると、残留量が3%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満(w/w%)である。
【実施例】
【0100】
例示的な前駆体の合成
Y(hfac)3(H2O)2の合成
Et2O(500mL)中のヘキサフルオロアセチルアセトン(43.76g、210.33mmol)の溶液を調製する。別にYCl3(H2O)6(21.27g、70.11mmol)を脱イオン水(200mL)中に溶解させる。アンモニア水(42.07mL、210.33mmol、水中5N溶液)を三塩化イットリウムの攪拌溶液中に数回に分けて添加し、アンモニア添加終了時のpHが7~7.5となるようにする。次に、エーテル中のヘキサフルオロアセチルアセトンの溶液を水性懸濁液に添加する。この二相混合液を60分間、激しく攪拌した後、分液ロートを用いて有機相を分離し、1Lフラスコ中に回収する。有機フラクションから全ての揮発性物質を真空下で除去し、残った固体を真空下の60℃で60分間吸引する。40.0gの白色固体が得られる。Y(hfac)3(H2O)2の収率:76.5%。1H NMR(ppm,C6D6):6.22(3H,Hfac),2.19(4H,H2O).
【0101】
Y(hfac)3(dme)の合成(「合成#2」)
トルエン(220mL)中のY(hfac)3(H2O)2(20.18g、27.5mmol)の懸濁液を調製し、次いで、dme(4.14g、46.0mmol)を添加した。全ての固体を攪拌下で溶解すると、濁った溶液が得られ、次いで、攪拌溶液にSOCl2(7.08g、59.5mmol)を滴下して添加する。攪拌を室温で1時間続け、少量の堆積した固体を濾過し、動的真空下で濾液から全ての揮発性物質を除去し、16.69gの粗製反応生成物が得られた。粗製Y(hfac)3(dme)(16.37g)を昇華装置内に入れる。昇華装置を液体窒素トラップに連結し、液体窒素トラップを真空ラインに連結する。液体窒素トラップ内の揮発性有機化合物を除去するために、真空下で粗生成物を80℃まで加熱し、ドライアイス/IPAを昇華装置のコールドフィンガーに設置する。Y(hfac)3(dme)の昇華は、100~140℃、3.3~4.4mトールの真空範囲で進行する。Y(hfac)3(dme)の収量:14.71g、Y(hfac)3(H2O)2から68%。融点:75.8℃(DSC)。1H NMR(ppm,C6D6):6.22(3H,Hfac),3.02(6H,dme),2.65(4H,dme).19F NMR:-75.7 ppm(s,-CF3).ニート固体のFTIRは、Eur.J.Inorg.Chem.2004,500-509に報告されるものに相当する。ピーク位置のわずかな差異及びC-H伸縮のシグナルが報告されていないのは、先行技術におけるFTIRはヌジョールマル又はヘキサクロロブタジエン溶液に対して報告されているためである。したがって、ここではニート固体のFTIRを報告する:3314(w)、3297(w)、3147(w)、2991(w、sh)、2963(w)、2936(vw)、2903(vw)、2870(vw)、2860(vw)、1670(w)、1648(s)、1610(w)、1574(w)、1560(m)、1534(m)、1500(s)、1472(m)、1454(m)、1352(w)、1326(w)、1249(s)、1195(s)、1160(m)、1136(vs)、1100(s)、1044(s)、1023(m)、1007(w)、953(w)、870(m)、833(w)、801(s)、772(w)、763(w)、742(m)、659(s)、585(s)、528(m)、472(m)。
融点:85℃。
【0102】
Y(hfac)3(1,2-ジメトキシプロパン)の合成
本明細書中、1,2-ジメトキシプロパンを「dmp」と略す。トルエン(150g)中のY(hfac)3(H2O)2(15.31g、20.3mmol)の懸濁液を調製し、次いで、1,2-ジメトキシプロパン(3.72g、35.7mmol)を添加する。全ての固体を撹拌下で溶解し、濁った溶液が得られ、次いで、撹拌溶液にモレキュラーシーブ(26.4g、3Å、新たに再生したもの)を添加する。室温で2時間攪拌を続けた後、反応混合物をモレキュラーシーブ及び少量の形成した固体から濾過し、全ての揮発性物質を動的真空下で濾液から除去すると、1H NMRによると約90%のY(hfac)3(dmp)を含有する粗製固体14.99gが残った。粗製Y(hfac)3(dmp)を、100mLの二ツ口ガラスフラスコである受器への熱トレース短路アダプタを含む短路蒸留装置の親フラスコに入れる。装置は液体窒素トラップを介して真空ラインと連結されている。液体窒素トラップ内で揮発性有機化合物を除去するために、真空下で粗製生成物を70℃まで加熱し、その後、受器フラスコをドライアイス/IPA中に置く。Y(hfac)3(dmp)の蒸留は、ドライアイスで冷却した受器内で3.1~3.4ミリトールの真空及び120~140℃の温度120~140℃で進行し、蒸留中は短路を熱トレースし、95~110℃に維持される。受器に13.54g、16.63mmolのY(hfac)3(dmp)を回収した。収率:Y(hfac)3(H2O)2から81%。融点:46.6℃(DSC)。1H NMR(ppm,C6D6):6.23(s,3H,Hfac),3.16(s,3H,Me-O),3.03(s,3H,Me-O),2.77-2.83(m,2H,O-CH2-CH),2.61(m,1H,O-CH2-CH),0.40(d,3H,Me-CH).19F NMR:-75.7 ppm(s,-CF3).ニート固体のFTIR(Golden Gate FTIRプローブで測定):3317(vw)、3303(vw)、3145(vw)、3114(vw)、2991(w)、2962(w)、2931(vw)、2905(sh、w)、2859(vw)、1732(br、w)、1688(br、w)、1671(m)、1649(s)、1608(m)、1573(sh)、1561(m)、1534(m)、1501(s)、1476(m)、1455(m)、1387(w)、1352(w)、1326(w)、1282(sh)、1251(s)、1193(s)、1136(vs)、1104(s)、1078(m)、1053(sh)、1048(m)、1039(m)、1029(m)、953(m)、941(sh)、921(m)、908(w)、892(w)、802(s)、771(w)、742(m)、659(s)、586(s)、559(w)、528(m)、503(w)、490(w)、473(m)、455(w)。略語:dmp:1,2-ジメトキシプロパン;vw-非常に弱い、w-弱い、m-中程度、s-強い、vs-非常に強い、sh-ショルダー、br-広い。
【0103】
Y(hfac)3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)の合成
合成#2の手順に従って合成。収率:Y(hfac)3(H2O)2から84%。融点:42.0℃(DSC)。1H NMR(ppm,C6D6):6.24(s,3H,Hfac),3.60(q,2H,CH3-CH2-O),3.06(s,3H,Me-O),2.50-2.90(m,4H,O-CH2-CH2-O),0.82(t,3H,O-CH2-CH3).19F NMR:-75.8 ppm(s,-CF3).ニート固体のFTIR(Golden Gate FTIRプローブで測定):3318(vw)、3303(vw)、3152(w)、3117(vw)、3081(vw)、3052(vw)、3022(vw)、2985(br、w)、2963(w)、2946(w)、2925(vw)、2907(w)、2898(sh)、2881(vw)、2867(vw)、2859(sh)、1734(vw)、1686(br、w)、1670(m)、1648(sh)、1609(m)、1574(sh)、1562(m)、1534(m)、1503(s)、1480(br、m)、1471(m)、1449(m)、1415(vw)、1395(w)、1380(sh)、1352(w)、1327(w)、1305(w)、1259(sh)、1247(s)、1227(w)、1205(sh)、1194(s)、1175(w)、1134(vs)、1101(s)、1092(s)、1036(s)、1027(sh)、1011(m)、954(w)、924(m)、862(m)、817(sh)、803(s)、794(sh)、773(m)、741(m)、659(s)、587(s)、528(m)、505(vw)、470(m)、432(vw)。略語:vw-非常に弱い、w-弱い、m-中程度、s-強い、vs-非常に強い、sh-ショルダー、br-広い。
【0104】
Y(hfac)3(TMPO)2の合成
Y(hfac)3(H2O)2(1.00g、1.35mmol)及びモレキュラーシーブ(MS4)200mgをヘプタン(120mL)に添加した。得られた懸濁液に、HMPO(0.41g、2.95mmol)を1回で添加した。3時間攪拌後、ほとんどの固体が溶解し、懸濁液をガラスフィルターで濾過し、無色溶液を得た。続いて、全ての揮発性物質を真空下で除去すると、1.10gの白色固体が生成した。これは式Y(hfac)3(TMPO)2に相当する。1H NMR(ppm,C6D6):6.33(3H,s;Hfac),3.35(18H,d,3JH-P=11.4Hz;-O-CH3).19F NMR(ppm,C6D6):-76.79(s;-CF3).31P{1H}NMR(ppm,C6D6):-2.39(s;TMPO).コールドフィンガーを備えた昇華装置に832mgの粗製Y(hfac)3(TMPO)2を入れた。昇華装置は、真空ラインに連結する前に液体窒素のコールドトラップに取り付けられ、その後、油浴に浸漬させた。高真空下(約1Pa)で、油浴を60℃まで徐々に加温し、その間に粗製Y(hfac)3(TMPO)2は液化し始めた。エチレングリコール/水混合物を冷却材として使用するコールドフィンガーの温度を0℃に設定した後、油浴の温度を150℃まで上昇させた。Y(hfac)3(TMPO)2の昇華は90~150℃の温度範囲で進行した。昇華が完了した後、装置を洗浄し、グローブボックス内に入れた。純粋なY(hfac)3(TMPO)2(566mg、0.57mmol)が白色固体として全収率51%で単離された。1H NMR(ppm,C6D6):6.33(3H,s;Hfac),3.35(18H,d,3JH-P=11.4Hz;-O-CH3).13C{1H}NMR(ppm,C6D6):177.62(q,2JC-F=34Hz;-C-CF3),119.00(q,1JC-F=284Hz;-CF3),91.11(s;Hfac CH),55.32(s;-O-CH3 19F NMR(ppm,C6D6):-76.82(s;-CF3).31P{1H}NMR(ppm,C6D6):-2.45(s;TMPO).
【0105】
Y(hfac)3(tfep)の合成
以下の手順を空気中で行った。Y(hfac)3(H2O)2(10.03g、13.4mmol)を700mLのシクロヘキサン及び200mLの脱イオン水の二相混合物に添加した。得られた懸濁液にTFEP(12.66g、36.8mmol)を1回で添加した。反応混合物を3時間撹拌すると、その間にフラスコの底に濁った油が形成した。濁った油(これは後にTFEP及びY(hfac)3(TFEP)2であることが確認された)、水層及びシクロヘキサン層を分離し、水層を200mLのクロロホルム及び200mLのジエチルエーテルで抽出した。生成物を含む油とともに有機層を組み合わせ、MgSO4上で1時間乾燥した。固体をガラスフィルター上で除去し、100mLのジエチルエーテルで2回洗浄した。得られた濾液を最初にロータリーエバポレーションで濃縮し、残留する揮発性物質を50℃の高真空(約1Pa)下で除去し、18.05gの白色固体を得た。これは、式Y(hfac)3(TFEP)2に相当する。さらに精製するために、Y(hfac)3(TMPO)2と同一手順で粗製Y(hfac)3(TFEP)2を昇華させた(10.76g、7.7mmol、収率:57%)。1H NMR(ppm,C6D6):6.29(3H,s;Hfac),4.00(15H 積分による,プソイドペンテット).13C{1H}NMR(ppm,C6D6):178.78(q,2JC-F=34.8Hz;Hfac-C-CF3),122.46(dq,1JC-F=276Hz,3JC-P=9.6Hz;TFEP-C-CF3),118.62(q,1JC-F=283Hz;Hfac-CF3),92.29(s;Hfac CH),65.69(dq,2JC-F=38.9Hz,2JC-P=5.0Hz;TFEP-CH2-CF3).19F NMR(ppm,C6D6):-75.83(18H,t,3JH-F=8Hz;CH2-CF3),-77.13(18H,s;Hfac-CF3).31P{1H}NMR(ppm,C6D6):-8.10(s;TFEP).
【0106】
Y(fod)3(H2O)の合成
以下の手順を空気中で行った。500mLの丸底フラスコに水200mL及びNa2CO3(2.678g、25.3mmol)を装入した。透明溶液にH(fod)(15g、50.6mmol)を一度に加えたところ、直ちに白色固体が沈殿した。この時点で水層のpHは約7であった。15分間撹拌した後、YCl3(H2O)6(4.948g、16.3mmol)を数回に分けて加え、白色クリーム状懸濁液を生成させた。反応混合物をさらに2時間撹拌し、その後200mLのEt2Oを添加した。フラスコをストッパーで密閉し、二相性混合物を一晩撹拌した。全ての残留固体が溶液中に溶解するまで、酢酸(約3mL)を滴下して加えた。水層のpHを約5まで下げた。50mLのブラインを加え、2つの層を分離した。水層をEt2Oで2回抽出し(各50mL)、続いて、組み合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄した。最後に、揮発性物質を室温で真空除去し(最初はロータリーエバポレーターで、その後高真空で)、Y(fod)3(H2O)(15.863g、16.0mmol)を白色固体として98%の収率で得た。
1H NMR(ppm,C6D6):6.23(s,3H,fod CH),3.43(s,3H,dmp OCH3),3.26(s,3H,dmp OCH3),3.09(m,2H,dmp CH2),2.9(m,1H,dmp CH),1.06(s,9H,fod C(CH3)3),(d,3H,2J=6.2Hz,dmp CH3)
19F NMR(ppm,C6D6):-80.8(t,9F,3J=29.9Hz),-119.4(プソイドq,6F),-126.4(s,6F)
【0107】
Y(fod)3(dme)の合成
Y(hfac)3(dme)の合成(合成#2)と同様の手順で、Y(fod)3(dme)を調製した。グローブボックス内の二ツ口フラスコにY(fod)3(H2O)2(928mg、0.92mmol)、トルエン(50mL)及びモレキュラーシーブ(MS4、300mg)を入れた。続いてdme(1mL、約0.868g、約9.6mmol)を加え、得られた混合物を1時間攪拌した。全ての固体を濾過により除去し、濾液の揮発性物質を真空下(約3Pa)、室温で除去したところ、粘着性の無色固体(0.966g)が生成した。次に、得られた粗製原料を昇華装置に移した。動的真空下で徐々に60℃まで昇温し、揮発性有機化合物を完全に除去した。
【0108】
粗製生成物Y(fod)3(dme)(16.37g)を昇華装置に入れる。昇華装置は液体窒素トラップに連結され、液体窒素トラップは真空ラインに連結されている。粗製生成物を真空下で80℃まで加熱し、揮発性有機化合物を除去する。冷却器は-5℃に設定され、さらに150℃まで段階的に昇温される。式Y(fod)3(dme)に相当する昇華物をワックス状の無色固体として、Y(fod)3(H2O)2からの収率23%で得た(228mg、0.21mmol)。
1H NMR(ppm,C6D6):6.16(3H,fod C-H),3.26(6H,dme-CH3),2.96(4H,dme-CH2-),1.05(27H,fod tBu).19F NMR(ppm,C6D6):-80.76 ppm(t9F;-CF3),-119.77(m,6F;-CF2-CF3),-126.34(m,6F;-CF2-CF2-CF3).
【0109】
Y(fod)3(dmp)の合成
グローブボックス内でY(fod)3(H2O)(1.22g、1.2mmol)及びdmp(0.21mL、約0.21g、約2.1mmol)を30mLのトルエン中に溶解した。次に、新たに再生したモレキュラーシーブ(MS4A;約0.5g)を加え、得られた混合物を2時間攪拌した。全ての固体を濾過によって除去した後、濾液の揮発性物質を真空中で除去し、淡黄色のゲルを生成した。これは真空下(約3Pa)、50℃で1時間乾燥させると固化した。その後、粗原料を動的真空下(約3Pa)、100~120℃の温度範囲で昇華させて精製した。純粋な生成物を白色固体として収率24%で回収した(323mg、3mmol)。
1H NMR(ppm,C6D6):6.15(s,3H,fod CH),3.43(s,3H,dmp OCH3),3.26(s,3H,dmp OCH3),3.09(m,2H,dmp CH2),2.9(m,1H,dmp CH),1.06(s,9H,fod C(CH3)3),0.60(d,2J=6.2Hz,dmp CH3),19F NMR(ppm,C6D6):-80.8(t,9F,3J=29.9Hz),-119.4 (プソイドq,6F),-126.4(s,6F)
【0110】
上記の詳細な実施例と同一合成手順を使用して、以下の追加の希土類元素類似体を合成及び精製した。
La(hfac)3(H2O)3、La(hfac)3(dmp)、Ce(hfac)3(H2O)2、Ce(hfac)3(dmp)、Sm(hfac)3(H2O)2、Sm(hfac)3(dmp)、Tb(hfac)3(H2O)2、Tb(hfac)3(dmp)、Yb(hfac)3(H2O)2及びYb(hfac)3(dmp)。
【0111】
属の特性は、全ての希土類金属で一貫しているように見える。例えば、M(hfac)3(dmp)は類似の性質を示す。
【0112】
【0113】
例示的な前駆体特性
Y(hfac)3(H2O)2を大気条件(「atm-TG」、「atm-DTA」)及び真空中(「vac-TG」、「vacDTA」)の両方、例えば、バブリングモードを表す条件(キャニスター圧力約25~50Torr)でTGAにより特性評価した。この生成物は、125℃で液化し、前駆体又はその異なる成分が不規則に変化し、270℃で約10%w/wの残渣が生じ、安定した状態でキャニスターからCVD反応器に供給するには不都合で、特に大量生産では不都合であるように見える。
【0114】
Y(hfac)
3(H
2O)
2(大気圧)のDTA及びTGAを
図2に示す。
・融点:125℃。
・Y(hfac)
3(H
2O)
2は270℃で約10%w/wの残渣が残る。
【0115】
Y(hfac)
3(dme)のDTA及びTGA(大気圧)を
図3に示す。
・Y(hfac)
3(dme)の融点は85℃であった。
・Y(hfac)
3(dme)は258.9℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣を残した。
・300℃で30分後に熱分解(共反応物質なし)、250℃では熱的に安定。
【0116】
Y(hfac)
3(dme)の蒸気圧をステップ等温法により決定した(
図4A及び
図4B)。
・124.4℃における蒸気圧は1トールであった。
【0117】
Y(hfac)
3(dmp)(大気圧)のDTA及びTGAを
図5に示す。
・Y(hfac)
3(dmp)の融点は42℃であった。
・Y(hfac)
3(dmp)は242℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0118】
Y(hfac)
3(dmp)の蒸気圧をステップ等温法により決定した(
図6A及び6B)。
・T(1トール)=118℃
・ΔH(蒸発)=74.3kJ/mol又は17.7kcal/mol
【0119】
Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)(大気圧)のDTA及びTGAを
図7に示す。
・Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)の融点は42℃であった。
・Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)は255℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0120】
Y(hfac)
3(エチレングリコールエチルメチルエーテル)の蒸気圧をステップ等温法により決定した(
図8A及び8B)。
・T(1トール)=119℃
・ΔH(蒸発)=78.3kJ/mol又は18.7kcal/mol
【0121】
Y(hfac)
3(TMPO)
2(大気圧)のDTA及びTGAを
図9に示す。
・Y(hfac)
3(TMPO)
2の融点は55.7℃であった。
・Y(hfac)
3(TMPO)
2は258.9℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0122】
Y(hfac)
3(TMPO)
2の蒸気圧は、ステップ等温法により決定した(
図10A及び10B)。
・VPは142.3℃で1トールと推定される(ステップ等温)。
【0123】
Y(hfac)
3(tfep)
2(大気圧)のDTA及びTGAを
図11に示す。
・Y(hfac)
3(tfep)
2の融点は150.7℃であった。
・Y(hfac)
3(tfep)
2は258.9℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0124】
Y(hfac)
3(tfep)
2の蒸気圧をステップ等温法により決定した(
図12A及び
図12B)。
・VPは123.0℃において1トールと推定される(ステップ等温)。
【0125】
Y(fod)
3(dme)(大気圧)のDTA及びTGAを
図13に示す。
・Y(fod)
3(dme)は約265℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0126】
Y(fod)
3(dmp)のDTA及びTGA(大気圧)を
図14に示す。
・Y(fod)
3(dmp)は269.7℃で完全に蒸発し、1%w/w未満の残渣が残る。
【0127】
薄膜堆積の例
材料及び方法
● 化学物質
● 前駆体:Y(hfac)
3dme
〇 キャニスターT:114℃
〇 キャニスターP:20トール
〇 N
2バブリング:40sccm
● 共反応物質:O
3
〇 濃度:200g/m
3
〇 流量:100sccm
● 反応器の構造概略を
図15に示す。
【0128】
ラザフォード後方散乱は、Thermo Scientific(商標)K-Alpha(商標)X線光電子分光装置(XPS)を用いて、以下の設定でX線光電子分光法(XPS)によるものであった。
・単色AlX線
・イオンビーム:Ar
・イオン銃のエネルギー:500eV
・電流:中
・エッチング時間:10秒/サイクル
【0129】
堆積実施例1~3:225℃でのオキシフッ化イットリウムの逐次注入堆積
ベアシリコン基板上に、以下の条件で自己分解による膜堆積を試みた。
反応器温度:225℃;
反応器圧力:10トール;
N2キャリアガスFR:40sccm;
Y(hfac)3dme:1sccm;
O3:100sccm
【0130】
CVDシーケンス:
Y(hfac)3dme:可変
N2パージ:20秒
O3:5秒
N2パージ:5秒
サイクル数:300
【0131】
サイクルあたりの成長は前駆体パルス、例えば前駆体投与量に依存し、前駆体投与量15秒後に0.11Åから0.14Åまで変化している。膜厚は、パルスパージ回数に対して線形である(
図16)。
【0132】
XPS分析に基づき、これらの条件で堆積させた膜は、Y:28.9%、O:12.3%、F:45.7%、C:<DL(<1.5%)の原子パーセントになる。屈折率:1.53(バルクYF3に近い)。したがって、これらの条件では、堆積した材料はオキシフッ化物である。
【0133】
堆積実施例4~8:オキシフッ化イットリウムの250℃での逐次注入堆積
堆積温度を250℃にしたこと以外、同一実験条件に従う。
【0134】
サイクルあたりの成長は前駆体パルス、例えば前駆体投与量に依存し、前駆体投与量15秒後に0.24オングストロームから0.29オングストロームまで変化している。さらに、サイクルあたりの成長は全圧力にも依存する。連続注入により達成される優れたコンフォーマリティにより、このプロセスは様々な用途、特にエッチング耐性材料にとって非常に魅力的である。対照的に、前駆体及び共反応物質の連続注入によって堆積した膜は、半導体部品、特にシャワーヘッドの腐食防止コーティングなどのコンフォーマリティを必要とする用途に使用できない不適合な膜となる。したがって、本発明の低温での堆積プロセスは、CVDプロセス特有の堆積速度という利点を有するが、高アスペクト比基板上での高コンフォーマル膜の堆積は、通常純粋ALD堆積反応でのみ達成される。
【0135】
さらに、この堆積プロセスでは、通常このような低温では報告されない、コンフォーマルな低酸素含有オキシフッ化イットリウム及びフッ化イットリウムを利用することができる。XPS分析に基づき、これらの条件で堆積させた膜は、Y:32.5%、O:3.2%、F:61.1%、C<DL(<1.5%)の原子パーセントになる。屈折率:1.52(バルクのYF3に近い)。したがって、これらの条件下で析出した材料は、オキシフッ化イットリウム、又はより良好には、わずかに酸素がドープしたフッ化イットリウムとして記載される。
【0136】
パターン付きウエハ(アスペクト比:10:1)上で得られた上記膜は、完全コンフォーマリティ(100%)を有した。自己限定領域がないことを考慮すると、パターン付き構造上のそのようなアグレッシブなアスペクト比での完全コンフォーマリティは非常に意外であり、我々の知る限り報告されたことがない。過去の全ての研究を含めても、本発明者らは、オキシフッ化イットリウム又はフッ化イットリウムの薄膜に関して高いコンフォーマリティが、さらにそのような低温報告されていることを知らない。
【0137】
温度のみを変化させた逐次注入による追加的なY(hfac)
3dmeの堆積を
図17にまとめる。
● T<200℃では、Y(hfac)
3dmeはO
3と反応しない。
● T>250℃では、Y(hfac)
3dmeは部分的に酸化又は熱分解を開始する。
〇 dep.Tの増加とともに、O比は増加し、F比は減少する。
〇 CはXPS DL付近(1.5%未満)に留まっている。
● O
2共反応物質では、250~300℃の温度範囲では膜堆積が得られない。
【0138】
連続注入堆積膜の代表試料のコンフォーマリティ分析
アスペクト比6.25:1、10:1又は20:1のトレンチを有するブランクウエハに逐次注入膜を堆積させた。上記条件下で、30秒の前駆体パルスを用いたところ、200℃では膜の堆積は生じず、225℃では非常に低速の堆積が生じた。300℃では、アスペクト比6.25:1のトレンチ上での膜ステップカバレッジは約63%であったが、トレンチ底部の膜厚は、ウエハ表面上の厚さ81nmに対して51nmであった。完全にコンフォーマルではないが、この膜は用途によっては機能的に適切となることが可能である。325℃ではトレンチの底部に膜は堆積されなかった。したがって、上記条件下での実用的な堆積温度範囲は225℃~300℃である。最良の結果は、250~275℃において見られた。250℃及び275℃で堆積させた膜の例示的な走査型電子顕微鏡写真をそれぞれ
図18及び
図19に示す。
【0139】
250℃(
図18):
・10:1のアスペクト比
・100%コンフォーマル膜
【0140】
275℃(
図19):
・6.25:1のアスペクト比
・100%コンフォーマル膜
【0141】
予期せぬことに、前駆体及びオゾンのパルスの間のN2ガスパージを省略しても、250℃及び275℃での膜厚又はコンフォーマリティに大きな影響は与えられなかった。不活性ガスパージを省略することで、全体プロセスをより迅速に、より効率的に行うことができる。
【0142】
Y(hfac)3dme及びY(hfac)3dmpを用いて堆積させた代表的な膜を、市販の接着テープで「剥離試験」を用いて試験した。スコア付き及びスコアなしの膜両方ともSiN、SiO2、TiN又はSUS表面から剥離することはなかった。
【0143】
図20は、300℃で形成された膜を示す。コンフォーマリティは約63%であり、これは全ての用途に適切ではないが、特定の場合では許容できる可能性がある。
【0144】
堆積実施例9~12:反応物の同時注入による100℃~700℃でのオキシフッ化イットリウムの堆積
対照的に、連続CVD(逐次注入ではなく同時注入)によって堆積させた膜では、コンフォーマリティが非常に低く、低温条件では堆積が生じないという大きく異なる堆積結果となった。
【0145】
アスペクト比6.25:1、10:1又は20:1のトレンチを有するブランクウエハに連続CVD膜を堆積させた。温度を100℃から700℃まで変化させ、10トールの圧力で、1sccmのY(hfac)3:dme及び100sccmのO3を同時に注入し、30分間堆積を行った。
【0146】
100℃、200℃及び250℃では、膜が観察されないか、又は非常に薄い膜が観察された。
【0147】
300℃では、32nmのYOF層が得られ、Y、F、O濃度はそれぞれ45%、35%及び20%であった。膜は表面上でのみ堆積し、トレンチには堆積が得られなかった(
図21に例示)。400℃、500℃及び600℃では、YOF層が得られた。ここでも、膜は表面上でのみ堆積し、トレンチには堆積が得られなかった。
【0148】
これらの結果は、高アスペクト比の表面上にコンフォーマルな膜を得たい場合、前駆体及びオゾンの逐次注入が重要であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、少なくとも半導体用ドライエッチング装置の製造に工業的に適用可能である。
【0150】
本発明をその特定の実施形態と関連付けて説明してきたが、前述の説明に照らして、多くの代替、修正、及び変形が当業者に明らかであることは明白であろう。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内に含まれるような全てのそのような代替、修正及び変形を包含するように意図される。本発明は、適切には、開示された要素を含み得るか、それからなり得るか、又は本質的にそれからなり得、且つ開示されていない要素がない場合に実施され得る。さらに、第1及び第2などの順序に言及する文言がある場合、それは例示的な意味で理解されるべきであり、限定的な意味で理解されるべきではない。例えば、特定のステップを単一ステップに組み合わせることができることが当業者には認識され得る。
【0151】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上、明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の参照語を含む。
【0152】
請求項における「含む(comprising)」は、その後に特定される請求項要素が非排他的なリストであることを意味するオープン移行語(open transitional term)である(すなわち、他のものが追加的に含まれ得、且つ「含む(comprising)」の範囲に残り得る)。本明細書中に使用される「含む(comprising)」は、本明細書で他に示されない限り、より限定的な移行語である「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」に置き換えられてもよい。
【0153】
請求項における「提供する(Providing)」は、何かを備えること、供給すること、利用可能にすること、又は調製することを意味すると定義される。このステップは、請求項中に反対の明示的な文言がない限り、いかなる行為者によって実行されてもよい。
【0154】
任意選択な、又は任意選択的にとは、その後に記載された事象又は状況が発生してもしなくてもよいことを意味する。この記載には、事象又は状況が発生する例及び発生しない例が含まれる。
【0155】
本明細書中、おおよその1つの特定の値から、及び/又はおおよその別の特定の値までの範囲が表されてもよい。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組み合わせとともに、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までであると理解される。
【0156】
本明細書で特定される全ての参考文献は、それぞれが引用される特定の情報だけでなく、それらの全体が本願に参照として援用される。