(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】バイオベース素材の処理方法及びそれを処理するための装置
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023063509
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2020537007の分割
【原出願日】2019-04-30
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】10201803633U
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10201805293X
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520235977
【氏名又は名称】グリーン テクノロジー リサーチ シーオー.,エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】GREEN TECHNOLOGY RESEARCH CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】ラオハクナーコーン,ウィナイ
(72)【発明者】
【氏名】シリミトラトラクル,スパコーン
(72)【発明者】
【氏名】ブーンシット,ノッポーン
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-308564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0288988(US,A1)
【文献】中国実用新案第204897836(CN,U)
【文献】特開2012-188577(JP,A)
【文献】特開2014-224262(JP,A)
【文献】特開2009-019175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082603(US,A1)
【文献】特開2007-332359(JP,A)
【文献】特開2007-308567(JP,A)
【文献】特開2010-070650(JP,A)
【文献】特表2008-545034(JP,A)
【文献】特開2017-039910(JP,A)
【文献】特表2015-530476(JP,A)
【文献】特表2011-506709(JP,A)
【文献】特表2012-519744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド及び遊離脂肪酸を含む動物油及び/又は植物油を含有する実質的に再生可能な供給原料から形成された再生可能なバイオベース素材の処理方法であって、該方法は次の工程:
所定の流量及び圧力を有する新鮮なバイオベース素材からなる第1のストリームを第1の熱交換器に通過させ、該第1の熱交換器からは
反応器の入口に流れる加熱された新鮮なバイオベース素材からなる第1の加熱ストリームが産出され.
所定の流量及び圧力を有する新鮮な水素からなる第2のストリームを
第1の熱交換器とは別の第2の熱交換器に通過させ、該第2の熱交換器からは加熱された新鮮な水素からなる別の第2のストリームが産出され、該第2のストリームは該第1のストリームかから独立して
反応器の入口に流れ、
反応器の入口において、(a)加熱された新鮮なバイオベース素材からなる該第1の加熱されたストリーム、及び
、(b)加熱された新鮮な水素からなる別の第2の加熱されたストリームであって、該第1のストリームから独立して流れる第2のストリームは、(水素0.03~0.10g)/(g バイオベース素材)の割合で、それぞ
れ、反応物の並流として導入され、該反応器は一連の反応床を備え、各床は支持体上に担持されている触媒が設置されており、
該反応器内に導入された反応物を、200~400℃の範囲に制御された温度及び25~40barの範囲に制御された圧力で、触媒の存在下で反応させることにより、ワンステップ水素化処理が行われ、処理油が該反応器より産出され、
該反応器から産出された該処理油を、該処理済油の温度を低下させるために
、第1の熱交換器および第2の熱交換器の各々とは異なる第3の熱交換器に通過させ、該第3の熱交換器から、所定の温度に低下した処理油が産出され、
該温度が低下した処理済油を高圧分離器に通過させて、該温度が低下した処理済油からガス状成分を分離し、該高圧分離器からガス状成分と精製された処理済油をそれぞれ独立して産出し、次いで該精製された処理済油を低圧分離器に通過させることにより、水成分を該精製された処理済油から分離し、該低圧分離器から水成分と更に精製された処理済油とをそれぞれ独立して産出し、
(i)該更に精製された処理油を蒸留ユニットに通過させ
、蒸留ユニットによって産出されたストリームの第1の部分を吸着ユニットに
更に通過させ
て、
少なくとも100のセタン価を有するグリーンディーゼルを産出し、及び/又は(ii)該更に精製された処理油
または蒸留ユニットによって産出されたストリームの第2の部分を
第1の蒸留カラムに通過させて、
炭素数16未満のストリーム及び第1の追加のストリームを生成し、該炭素数16未満のストリームを第1の吸着カラムに通過させて、少なくとも99質量%のn-パラフィンを含む工業用溶媒を生成し、さらに、第1の追加のストリームを第2の蒸留カラムおよび対応する第2の吸着カラムに通過させて、n-ヘキサデカンからなり、0質量%以上1質量%以下のイソパラフィン含量を有する第1の相転移材料(PCM)を産出し、
該吸着ユニットは、活性炭素、イオン交換樹脂及びモレキュラーシーブからなる群より選ばれる少なくとも1つの吸着剤を含み、更に
該反応器は、冷却物質を反応器中に、該反応物の流れと逆ではなく、該反応物の流れに垂直及び並流する間の角度で導入するノズルを介して、該反応器の温度を制御するための内部冷却機能を備える、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該支持体は、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)又はアルミナ-シリカ(Al
2O
3-SiO
2)であり、該支持体がAl
2O
3の場合に、Al
2O
3上の触媒は、NiMo/Al
2O
3及びNiW/Al
2O
3からなる群から選択されるか、又はAl
2O
3上の触媒は、NiCoMo/Al
2O
3、NiMoP/Al
2O
3及びCoMo/Al
2O
3からなる群より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、反応器内の空間速度は、0.5h
-1から2h
-1であることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの方法において、水素と該バイオベース素材との比は、0.05g水素/gバイオベース素材~0.07g水素/gバイオベース素材であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの方法において、該吸着カラムは、活性炭素、イオン交換樹脂及びモレキュラーシーブよりなる群から選ばれる少なくとも一つの吸着剤を含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの方法において、
該バイオベース素材はパームオレインを含み、該工業用溶媒は1ppm未満の硫黄含有量を有し、前記第1のPCMは1ppm未満の硫黄含有量を有する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
トリグリセリド及び遊離脂肪酸を含む動物油及び/又は植物油を含有する実質的に再生可能な供給原料から形成された再生可能なバイオベース素材の処理を行うシステムであって、該システムは:
入口を有する反応器、
所定の流量及び圧力を有する新鮮なバイオベース素材からなる第1のストリームを受け入れるように構成され、更に、
反応器の入口に流れる加熱された新鮮なバイオベース素材からなる第1の加熱ストリームが産出されるように構成される、第1の熱交換器、
所定の流量及び圧力を有する新鮮な水素からなる第2のストリームを受け入れるように構成され、更に、加熱された新鮮な水素からなる別の第2の加熱されたストリームが産出され、該第2のストリームは該第1の
加熱ストリームから独立して
反応器の入口に流れるように構成される、
第1の熱交換器とは別の第2の熱交換器、
該反応器の入口で、(a)加熱された新鮮なバイオベース素材からなる該第1の加熱されたストリーム、及び(b)加熱された新鮮な水素からなる別の加熱された第2のストリームであって該第1の加熱ストリームから独立して流れる第2のストリームのそれぞれは、(水素0.03~0.10g)/(g バイオベース素材)の割合で、反応器に流入して反応する反応物の並流として導入される入口を備える反応器であって、該反応器は一連の反応床を備え、各床は支持体上に担持されている触媒が設置されており、該反応器内の供給原料と水素とを、200~400℃の範囲に制御された温度及び25~40barの範囲に制御された圧力で該触媒の存在下で反応させて、ワンステップ水素化処理により処理済油が該反応器の出口で産出されるように構成される反応器、
該反応器から産出された該処理済油を受け入れて、所定の低下した温度を有する処理済油が産出されるように、該処理済油の温度を低下させるように構成された
、第1の熱交換器及び第2の熱交換器の各々とは異なる第3の熱交換器、
該温度が低下した処理済油を受け入れ、そこからガス状成分を分離し、更に該ガス状成分と精製された処理済油をそれぞれ独立して産出し、次いで、該精製された処理済油を受け入れて、水成分と更に精製された処理済油とをそれぞれ独立して産出するように構成された低圧分離器に続くように構成される高圧分離器、
(i)該更に精製された処理油を通過させて
、蒸留ユニット出口ストリームを提供するように構成された蒸留ユニットと、少なくとも100のセタン価を有するグリーンディーゼルを生成するため
に蒸留出口ストリームの第1の部分を通過させるように構成された吸着ユニット、及び/又は、(ii)該更に精製された処理油
または蒸留ユニット出口ストリームの第2の部分を通過させて、炭素数16未満のストリームおよび第1の追加ストリームを生成するように構成された第1の蒸留カラム、および炭素数16未満のストリームを通過させて、少なくとも99質量%のn-パラフィンを含む工業用溶媒を産出するように構成された第1の吸着カラム、更に、n-ヘキサデカンを含み、0質量%~1質量%のイソパラフィン含有量を有する第1の相転移材料(PCM)を産出するために、第1の追加ストリームを通過させるように構成された第2の蒸留カラムおよび対応する第2の吸着カラム、
を備え、
該吸着ユニットは、活性炭素及びイオン交換樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの吸着剤を含み、更に
該反応器は、冷却物質を反応器中に、該反応物の流れと逆ではなく、該反応物の流れに垂直及び並流する間の角度で導入するノズルを備え、これにより該反応器に、該反応器の温度を制御するための内部冷却機能を反応器に提供する、
ことを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な物質、特に、バイオベース素材を処理する方法及び、それを処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の理解を助けるため、本発明の背景について、以下に述べる。しかしながら、この論述は、本出願以前に、出版されたり、知られたり、いかなる管轄区における一般常識の一部であった、いかなる材料に関する承認や認可されていることとは異なることを評価すべきである。
【0003】
地球温暖化や、化石燃料、原油や石油などの非再生可能な資源の供給限界により、再生可能な代替源から入手できる可燃性液体燃料の供給需要がある。非再生可能な資源の使用は、温室効果ガスの放出に顕著な影響を与えている。そのため、再生可能な代替源を使用することは、温室効果ガスの放出を減少させ、非再生可能な資源と比較し、より環境に優しい。
【0004】
バイオ燃料は、エンジンなどの様々な用途に利用できる実現性のある再生可能な物質として広く考えられている。バイオ燃料の例には、バイオマス派生物、バイオガスや液体燃料が含まれ、広くは、バイオアルコール、バイオディーゼル、グリーンディーゼル、植物油、バイオエーテル、バイオガス、合成ガスや固体バイオマス燃料に分けられる。
【0005】
バイオ燃料を使用するため、様々な試みが行われている。例えば、植物油などのバイオ燃料をエンジンに使用するには、ディーゼルやガソリンのような非再生可能な資源と比較し、エンジンの性能を維持するため、配管や噴射器の構成材料の変更を含む、重大なエンジンの変更が必要となる。エンジン破損の発生が増加するような、多大な損傷のためメンテナンスコストも増加する。
【0006】
さらに、バイオ燃料を処理する従来の方法では、様々な欠点がある。例えば、植物油は、メタノールなどのアルコールとのエステル交換を経て、バイオディーゼルが生成される。しかしながら、エステル交換は、品質の良いバイオディーゼルを得るため、供給原料の前処理が必要となること、バイオディーゼルが利用でき、産業基準に適合する前に副産物の除去が必要なことのような欠点を有している。
【0007】
加えて、植物油や動物油を熱的又は触媒的に分解すると、求められる製品の生産の障害となる、広範囲の不要な生成物をもたらす。例えば、アルミナを含む触媒を使用する処理は、一般的に選択力のない方法であり、所望する生成物の純度が低く、生産性も低い。
【0008】
以上を踏まえて、処理されたバイオ燃料が可燃性の液体オイルとして使用に適するように、バイオ燃料の処理方法が必要とされている。さらに、上述した欠点の少なくとも一つを改善する、バイオベース素材を処理する方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
開示された又は本発明によって解決される技術的課題は、エンジン、車部品や建築物だけにとどまらない製品に使用可能な相転移材料やグリーンディーゼルを作るための処理済油(treated oil)を提供することである。特に、本発明の処理済油は、出発物質(あるいは原料)として何らかの石油化学原料を使用しない処理方法により、得ることができる。
【0010】
開示された又は本発明が解決する他の技術的課題は、所望する高純度の生成物が得られるような、バイオベース素材の処理方法を提供することである。
【0011】
本発明のある観点によれば、バイオベース素材と水素とを、反応器中の支持体上にある触媒の存在により反応させて処理済油を製造するステップを含む、再生可能なバイオベース素材の処理方法を提供している。ステップは、(i)処理済油を蒸留ユニットと吸着ユニットに通過させてグリーンディーゼルを形成する、及び/又は(ii)処理済油を少なくとも1つの蒸留カラムを通過させて処理済油から少なくとも一成分を分離し、該一成分を吸着カラムに通過させる。そして、その反応器には、反応器の温度を制御するための冷却機能を備えている。該冷却機能は、内部冷却機能と外部冷却機能の少なくとも一つである。有利な点として、処理済油は、1つのステップの方法で得ることができるし、さらに、蒸留ステップと吸着ステップとの組合せを用いて工業用溶媒、グリーンディーゼル、及び/又は、PCMを生成するために処理される。結果として、高純度なグリーンディーゼル、PCM、及び/又は工業用溶媒が得られる。さらに有利な点として、処理済油は、独立して又は選択的に処理して、グリーンディーゼル、PCM、及び/又は工業用溶媒のような、1つ以上の所望する生成物にできるため、その方法は変更ができ調整も容易である。さらに、この方法は、時間やコストを節約できる。
【0012】
様々な例では、支持体は、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)又はアルミナ-シリカ(Al2O3-SiO2)である。
【0013】
様々な例では、処理済油は、n-パラフィンの少なくとも一種とイソパラフィンの少なくとも一種を含んでいる。さらに、この方法は、イソパラフィンが少量か大量のいずれが求められるかにより触媒を選択するステップを含んでいる。
【0014】
様々な例では、支持体がAl2O3で、Al2O3上の触媒は、NiMo/Al2O3とNiW/Al2O3からなる群から選択される。
【0015】
様々な例では、支持体がAi2O3で、Al2O3上の触媒は、NiCoMo/Al2O3,NiMoP/Al2O3及びCoMo/Al2O3からなる群より選択される。
【0016】
様々な例では、反応器の温度は、200℃から400℃である。
【0017】
様々な例では、反応器の温度は、250℃から350である。
【0018】
様々な例では、反応器の圧力は、25barから40barである。
【0019】
様々な例では、反応器の圧力は、30barから40barである。
【0020】
様々な例では、水素とバイオベース素材との比は、0.03g水素/gバイオベース素材から0.10g水素/gバイオベース素材である。
【0021】
様々な例では、水素とバイオベース素材との比は、0.05g水素/gバイオベース素材から0.07g水素/gバイオベース素材である。
【0022】
様々な例では、空間速度は、0.5h-1から2h-1である。
【0023】
様々な例では、さらに、この方法は、処理済油を精製するステップを含む。
【0024】
様々な例では、処理済油を精製するステップは、処理済油を高圧分離器に通過させるステップと、その後、低圧分離器に通過させるステップを含む。
【0025】
様々な例では、反応器はトリクルベッド反応器(a trickle bed reactor)又は充填床反応器である。
【0026】
様々な例では、内部冷却機能は、反応器内に冷却物質を加えることを含む。
【0027】
様々な例では、外部冷却機能は、熱伝導ユニットを有するシャローベッド反応器(a shallow bed reactor)又は多管である。
【0028】
様々な例では、吸着ユニットは、活性炭素、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、及び化学吸着剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの吸着剤を含む。
【0029】
様々な例では、少なくとも一つの成分は、16未満の炭素原子を有するn-パラフィン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、及び18を超える炭素原子を有するn-パラフィンよりなる群から選ばれる。
【0030】
様々な例では、吸着カラムは、活性炭素、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、及び化学吸着剤よりなる群から選ばれる少なくとも一つの吸着剤を含む。
【0031】
本発明の別の観点によれば、0から10wt%の量のイソパラフィンと、90から100wt%の量のn-パラフィンを含むグリーンディーゼルを提供するものである。
【0032】
様々な例では、グリーンディーゼルは、蒸留範囲が200℃から350℃である。
【0033】
様々な例では、グリーンディーゼルは、引火点が100℃から130℃の範囲である。
【0034】
様々な例では、さらに、グリーンディーゼルは、全グリセリドを0.05wt%未満で含むものである。
【0035】
本発明の別の観点によれば、0から1wt%の量のイソパラフィンと、99から100wt%の量のn-パラフィンを含む相転移材料を提供するものである。
【0036】
本発明の別の観点によれば、n-パラフィンを含み、蒸留範囲が250℃から270℃の工業用溶媒を提供するものである。
【0037】
本発明の別の観点によれば、再生可能なバイオベース素材の処理を行うシステムを提供するものであり、バイオベース素材と水素を、支持体(担体)上の触媒の存在下で反応させて、処理済油を生成する反応器を備え、該反応器は、反応器の温度を制御する冷却機能を有し、(i)処理済油を通過させてグリーンディーゼルを生成する蒸留ユニットと、該グリーンディーゼルを通過させる吸着ユニット、及び/又は(ii)処理済油から少なくとも一つの成分を分離する少なくとも一つの蒸留カラムと、少なくとも一つの成分を通過させる吸着カラムを有し、該冷却機能は、内部冷却機能と外部冷却機能の少なくとも一つである。有利な点として、該システムは、処理済油を1つのステップで得られ、さらに処理をしてグリーンディーゼル、PCM、及び/又は工業用溶媒を形成することができるよう、比較的真っ直ぐで、簡便で融通が利くようになっている。結果として、高純度のグリーンディーゼル、PCM、及び/又は工業用溶媒が得られる。さらに、該システムは、時間やコストを節約できる。
【0038】
様々な例では、内部冷却機能は、新鮮量(a fresh amount of)のバイオベース素材、新鮮量の水素、処理済油の一部、及びこれらの組合せからなる群より選択される冷却物質を含む。
【0039】
様々な例では、さらに、該システムは、処理済油を通過させる高圧分離器と低圧分離器を含む。
【0040】
様々な例では、外部冷却機能は、熱伝導ユニットを有するシャローベッド反応器(a shallow bed reactor)又は多管を含む。
【0041】
様々な例では、さらに、外部冷却機能は、新鮮量のバイオベース素材、新鮮量の水素、処理済油の一部、これらの組合せか、及び熱伝導流体からなる群から選択される冷却材を含む。
【0042】
特に、本発明の例は、バイオベース素材を処理して処理済油を生成し、グリーンディーゼルや相転移材料を作る方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以下の添付図面を参照して、一例として、本発明を説明する。
【0044】
【
図1】
図1は、バイオベース素材から処理済油を調製し、該処理済油を用いたグリーンディーゼルを調製するフロー図である。
【0045】
【
図2】
図2は、
図1の方法で調製された処理済油を用いた、少なくとも一つの相転移材料や工業用溶媒を調製するフロー図である。
【0046】
【
図3】
図3は、処理済油、グリーンディーゼル、少なくとも一つの相転移材料、及び工業用溶媒を調製する代替方法のフロー図である。
【0047】
【
図4】
図4は、内部冷却機能を含む反応器のフロー図である。
【0048】
【
図5】
図5は、外部冷却機能を含む反応器のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(詳細な説明)
本発明の詳細な例について、添付図面を参照に説明する。ここで使用する用語は、詳細な例を説明するためであり、本発明の範囲を限定するものではない。更に、特に定義されていない場合は、ここで使用される技術的・科学的な用語は、当業者が一般的に理解している意味と同じである。可能であれば、同じ参照用の符号は、明確性や整合性のため、複数の図面を通して使用される。
【0050】
ここで使用されるように、用語「セタン価」は、グリーンディーゼルの引火性を評価する特性に関する。
【0051】
ここで使用されるように、用語「密度」は、特定燃料の質量と当該特定燃料が占める容量との比に関する。
【0052】
ここで使用されるように、用語「曇り点」は、ワックスの最初の出現を測定している。
【0053】
ここで使用されるように、用語「汚染物質」(contaminant)は、プロパンのような軽炭化水素に限らず、水素、水、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、硫黄、燐、重金属、アルカリ金属、固体、洗浄剤や酸のような、本発明の方法で所望する生成物ではない物質に関する。
【0054】
ここで使用されるように、用語「冷却機能」は、オーバーヒートを避ける目的で反応器の温度を低減するか又は少なくとも維持するために、冷却物質、冷却材、及び/又は機械的装置を導入することに関する。冷却物質の導入は、新鮮量のバイオベース素材の導入、新鮮量の水素の導入、処理済油の一部を導入、これらの組合せの導入を含むが、これらに限定されるものではない。冷却材の導入は、新鮮量のバイオベース素材の導入に限らず、新鮮量の水素の導入、処理済油の一部の導入、これらの組合せの導入、又は熱伝導流体の導入を含み、これらに限定されない。反応器を冷やすための機械的装置は、多管に限らず、又は熱伝導ユニットを備えたシャローベッド反応器を含むが、これらに限定されるものではない。反応器を冷やす機械的装置は、反応器に組み込むか、反応器に取り付け/取り外し可能に分離ユニットとしても良い。
【0055】
ここで使用されるように、用語「冷却物質」は、用語「急冷物質」を含み、これに限定されない。
【0056】
ここで使用されるように、用語「グリーンディーゼル」は、石油ベースオイルのような非再生可能な物質に代わり、バイオベース素材のような再生可能な物質から得られるパラフィンを主に含むバイオ燃料に関する。
【0057】
ここで使用されるように、イソパラフィンの量に関係して使用される、用語「低容量」は、約0から約5wt%の量に関する。
【0058】
ここで使用されるように、イソパラフィンの量に関係して使用される、用語「高容量」は、5wt%より大きい量に関する。
【0059】
ここで使用されるように、用語「パラフィン」は、n-パラフィン、イソパラフィン、及びこれらの混合物を含む。様々な例では、用語「パラフィン」は、一般化学式CnH2n+2の非環式飽和炭化水素に関する。
【0060】
ここで使用されるように、用語「n-パラフィン」は、ノーマルパラフィン、又は直鎖非環式飽和炭化水素である直鎖状パラフィンに関する。
【0061】
ここで使用されるように、用語「イソパラフィン」は、分岐非環式飽和炭化水素である分岐パラフィンに関する。
【0062】
ここで使用されるように、用語「芳香族化合物」は、芳香族炭化水素、すなわち、少なくとも一つの芳香環を有する炭化水素に関する。
【0063】
ここで使用されるように、用語「相転移材料(phase change material)」又は「PCM」は、PCMとシステムとの間の熱伝導によってシステムの温度を維持する材料に関する。システムの温度がPCMの温度より高くなると、熱はシステムからPCMに伝導し、システムの温度を下げる。システムの温度がPCMの温度より低くなると、熱はPCMからシステムに伝導し、システムの温度を上げる。熱伝導プロセスの間に、PCMの温度は、同じ(例えば、PCMの融点)に維持される。典型的には、PCMはシステムの温度をPCMの融点に維持する。
【0064】
ここで使用されるように、用語「処理済油」は、純粋形の油又は純粋でない形の油に関する。油は、少なくとも1種のn-パラフィン、少なくとも1種のイソパラフィン、又はこれらの組合せを含み、汚染物質、ガス、及び/又は水が混入している。
【0065】
ここで使用されるように、n-パラフィンやイソパラフィンに関連して使用される用語「種」は、例えば3から24の数字範囲のような、特定の数の炭素元素を含むパラフィンに関する。
【0066】
ここで使用されるように、用語「反応物質ストリーム(reactant stream)」は、水素と少なくとも一つのバイオベース素材を含む供給原料(feed)に関する。かかる供給原料には処理済油も含む。明細書を通して、別段の定めがない限り、用語「含む」、「からなる」などは、網羅的でないとして、又は別の言葉では、「含むがこれに限定されない」の意味であると解釈される。
【0067】
明細書と通して、文脈が他を必要としない限り、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」や「含む(comprising)」のような変形は、述べられた完全体や完全体の群を包含するだけでなく、他の完全体や完全体の群を排除するものではないことを意味すると解される。
【0068】
明細書と通して、文脈が他を必要としない限り、単語「含む(include)」又は「含む(includes)」や「含む(including)」のような変形は、述べられた完全体や完全体の群を包含するだけでなく、他の完全体や完全体の群を排除するものではないことを意味すると解される。
【0069】
ここで使用されるように、用語「約」は、典型的には表示された値の±5%を、また、より典型的には表示された値の±4%、また、より典型的には表示された値の±3%、また、より典型的には表示された値の±2%、さらにより典型的には表示された値の±1%、さらにより典型的には表示された値の±0.5%を意味する。
【0070】
本開示を通じて、ある例は、範囲形式で開示されている。範囲形式での記載は、単に、便宜に及び簡潔にするためであり、開示された範囲の領域に限定するものと解釈すべきでないことは明らかである。よって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値と同様に、全ての可能な部分範囲を、特に開示していると解すべきである。例えば、1から6のような範囲の記載は、範囲内の個々の数字である、例えば1,2,3,4,5及び6と同様に、1から3,1から4,1から5,2から4,2から6,3から6などのような部分範囲を特に開示していると解すべきである。範囲は、整数に限定されず、小数の寸法も含むことができる。これは、範囲の大きさに拘らず、適用される。
【0071】
本発明の別の観点は、添付図面と併せて、本発明の特定の例の以下の記載を検討すれば、当業者には、明確に理解できる。
【0072】
本発明の観点では、バイオベース素材を処理する方法が提供され、その処理には、バイオベース素材と水素とを、反応器中の支持体(担体)上の触媒の存在下で反応させて処理済油を調製する。ここで、バイオベース素材は、再生可能である。
【0073】
その結果として、処理済油は、水素化処理反応(hydrotreating reaction)を含むワンステップ法により、高収率で得られる。有利には、水素化処理反応は、硫黄や燐と結びついて不純物を除去する水素を使用する。様々な例では、処理済油は、バイオベース素材の約80%から約85%の収率で得られる。さらに有利なことに、処理済油は、処理済油を得る1つのステップを超えるステップは要求されず、これにより時間やコストを節約できる。これに対し、幾つかの従来技術の方法は、本発明の処理済油と実質的に同等の生成物を得るためには、さらなる処理を必要とする中間生成物がもたらされる。その結果として、そのような先行技術の方法は、本発明の処理済油と実質的に同等の産物を得るために中間生成物を処理する、少なくとも一つの追加ステップを必要とする。それによって、そのような先行技術の方法はさらに費用がかかるものとなり時間を消費するものとなる。
【0074】
様々な例では、バイオベース素材は、実質的に再生可能であり、植物(野菜を含む)、動物、又はそれらの組合せから得られる遊離脂肪酸やトリグリセリドを含む供給原料である。バイオベース素材は、獣脂油、鯨油、魚油のような動物油、脱色パーム油(bleach palm oil)(BPO)、精製脱色パーム油(refined bleach palm oil)(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸蒸留物(palm fatty acid distillate)、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ属油(jatropha oil)やバラニテス属油(balanites oil)のような砂漠の植物からの油、菜種油、トール油、麻実油、オリーブ油、亜麻仁油、からし油、落花生油、ひまし油、ココナッツ油のような植物油、又はこれらの一つ以上の組合せを含むが、これに限定されない。野菜油は、未精製の植物油、又は、精製した又は食用の植物油でも良い。様々な例では、植物油、及び/又は動物油は、新しい油、使用済油、廃油、又はこれの組合せでも良い。有利なことに、バイオベース素材はトリグリセリドを含んでいるが、本発明の方法により、トリグリセリドは、n-パラフィンの少なくとも一種やイソパラフィンの少なくとも一種を含む処理済油にほぼ完全に転換され、処理済油にはトリグリセリドが実質的に存在していないこととなる。処理済油を製造する方法の反応機構により、処理済油にはモノグリセリドやジグリセリドは存在しない。このため、処理済油中の全グリセリドの含有量は、処理済油中のトリグリセリドの含有量に等しい。当業者に知られているように、EN14105のような標準試験を用いて、全グリセリドの含有量が測定される。様々な例では、処理済油中の全グリセリドは約0.038%である。様々な例では、処理済油は、トリグリセリドを実質的に含まない。言い換えると、処理済油中のトリグリセリドは、1wt%未満、0.8wt%未満、0.6wt%未満、0.5wt%未満、0.4wt%未満、0.3wt%未満、0.2wt%未満、0.1wt%未満、又は0.05wt%未満である。様々な例では、処理済油中のトリグリセリドは、約0.01wt%~約0.05wt%である。様々な例では、処理済油内のトリグリセリドは、約0.038wt%である。これに対して、先行技術の方法では、1wt%以上の量のトリグリセリドを含む処理済油が得られる。
【0075】
いくつかの例では、バイオベース素材と石油ベース素材とを混合する必要は無い。このため、本発明の方法は、石油ベース素材又は石油ベース素材とバイオベース素材との混合物のような非再生可能な物質を使用する方法よりも、相対的により環境に優しい。
【0076】
様々な例や
図1に示されるように、バイオベース素材(ストリーム101)は、ポンプ(装置131)を通過する。装置131は、バイオベース素材の流量や圧力を制御するのに適している。このため、ストリーム101は装置131を通過し、ストリーム102を形成する。ストリーム102は所定の流量や圧力を有するバイオベース素材を含み、ストリーム102の圧力はストリーム101の圧力よりも高い。次いで、ストリーム102は熱交換器(装置132)を通過する。装置132は、ストリーム102の温度を増加させるのに適している。これで形成されたストリーム103は、所定の温度を有するバイオベース素材を含み、ストリーム103の温度は、ストリーム102の温度よりも高い。
【0077】
様々な例や
図1に示されるように、水素(ストリーム104)は、制御バルブ又は圧縮器(装置133)を通過する。装置133は、水素の流量や圧力を制御するのに適している。このため、ストリーム104は装置133を通過し、ストリーム105を形成する。ストリーム105は所定の流量や圧力を有する水素を含み、ストリーム105の圧力はストリーム104の圧力よりも高い。次にストリーム105は熱交換器(装置134)を通過する。装置134は、ストリーム105の温度を増加させるのに適している。これにより、形成されたストリーム106は、所定の温度の水素を含み、ストリーム106の温度は、ストリーム105の温度よりも高い。
【0078】
様々な例や
図1に示されるように、ストリーム103とストリーム106は、反応器(装置135)に導入される。ストリーム103とストリーム106とは並流の形で導入されても良い。
【0079】
様々な例では、さらに、本発明の方法は、触媒の選択を含んでいる。様々な例では、触媒は、CoMo,NiMo,NiW,NiCoMo及びNiMoPから成る群から選択される。様々な例では、触媒は、硫化物活性相(sulphide active phases)の形で存在するため、処理済油中の硫黄の量は調整され、又は混ぜられる(adulterated)。有利なことに、触媒は触媒毒に対する十分な耐性があり、本発明の方法を通して、触媒の効果が維持される。さらに、触媒は、リサイクルされたり再利用され、これにより、新しい触媒が不要なため、操業コストも低くなる。様々な例では、これに限定されないが、硫化剤(sulfidation agent)を追加することにより、触媒の効果を回復させることができる。硫化剤は、二硫化炭素、二硫化ジエチル、多硫化物油、メルカプタン及び硫化水素から成る群から選ぶことができる。
【0080】
様々な例では、所望する処理済油が少量(低容量)のイソパラフィンを含むか、多量(高容量)のイソパラフィンを含むかに基づいて、触媒は選択される。様々な例では、所望する処理済油が少量のイソパラフィンを含む場合には、触媒は、NiMoとNiWから成る群から選ばれる。好ましい例では、所望する処理済油が少量のイソパラフィンを含む場合は、触媒はNiMoである。様々な例では、所望する処理済油が多量のイソパラフィンを含む場合には、触媒は、NiCoMo,NiMoP及びCoMから成る群より選ばれる。好ましい例では、所望する処理済油が多量のイソパラフィンを含む場合には、触媒はNiCoMoである。
【0081】
様々な例では、触媒は、NiとMoから成る群から選ばれる2つの遷移金属の少なくとも一つを含む。様々な例では、さらに、触媒は、他の遷移金属かV族の元素(a group V element)を含む。
【0082】
様々な例では、触媒担持(loading)は、約0.5wt%~約20wt%である。使用される触媒の量は、バイオベース素材や水素の量に基づいて計算される。
【0083】
様々な例では、触媒は、一つ以上の部分に分離される。触媒を一以上の部分に分けた場合には、バイオベース素材と水素との間の反応の程度が制御される。バイオベース素材と水素との間の反応は発熱反応であり、発生する熱量を制御する。その結果として、反応器の温度が制御される。
【0084】
様々な例では、触媒は、酸性の多孔質固体の支持体(acidic porous solid support)のような支持体(担体)に担持される。酸性の多孔質固体の担体は、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、又はアルミナ-シリカ(Al2O3-SiO2)の混合物である。担体上の触媒の存在下でバイオベース素材と水素とを反応させることで、バイオベース素材のn-パラフィン鎖の不飽和の部分やオレフィンの水素化が発生する。担体が触媒に対して大表面積な担体として作用するため、触媒のより高い効果を達成できる。特に、触媒は良く分散されているため、水素化、脱酸素化及び異性化のような所望の反応がより効率よく発生する。
【0085】
様々な例では、担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、Yゼオライト、Lゼオライト、及びβゼオライトのようなものであり、これに限られない。
【0086】
様々な例では、水素は、新鮮な水素、リサイクルされた水素、又はこれらの混合とすることができる。
【0087】
様々な例や
図1に示すように、ストリーム103とストリーム106は、反応器中の触媒の表面に接触して反応し、処理済油(ストリーム107)を調製する。様々な例では、ストリーム107は熱交換器(装置136)を通過する。装置136はストリーム107の温度を下げるのに適しており、これによって、所定の温度を備えた処理済油を含むストリーム108が形成される。ストリーム108の温度はストリーム107の温度より低い。
【0088】
様々な例では、本発明の方法は、反応器内の水素化処理法の条件下で発生している。特に、本発明の方法は、温度が約200℃~約400℃、約250℃~約400℃、約250℃~約350℃、又は約300℃~約350℃で、また圧力が約25bar~約50bar、約25bar~約40bar、約30bar~約40bar、又は約35bar~約40barで実施される。有利なことに、温度は、従来技術の方法と比較して相対的に低い。その結果、不要な産物の生成が少ない。より好ましい例では、所望する産物の生産量が高くなるため、反応器の温度は約300℃~約350℃である。
【0089】
様々な例では、また、触媒の選択により、バイオベース素材の脱炭酸、及び/又は水素化脱酸素、及び/又は異性化が発生している。
【0090】
様々な例では、炭化水素の水素化分解が抑制されており、これにより、炭化水素の炭素数の範囲がC14~C18の範囲に維持されている。典型的には、水素化分解は、処理済油内のPCMの量を減少させ、これにより、PCMの生産物の生産量は少なくなるため、不要な反応である。本発明では、水素化分解を抑制又は最少化しているため、処理済油のPCM画分がより高く、PCMの収量は先行技術の方法よりもより高くなる。
【0091】
様々な例では、本発明の方法は、空間速度が毎時約0.5(hr-1)~約2hr-1又は約1.0hr-1で実施される。本発明者らは、より大きなキャパシティがより多量な供給原料をサポートするため、空間速度を増加させることが、処理済油やそれらの産物の量を増加させこととなることを見出した。しかしながら、反応時間の減少や、処理済油やそれらの産物の品質の低下となる。また、空間速度の減少は、量は少なくなるが、反応時間を増加させ、処理済油やそれらの産物の品質を向上させることを見出した。空間速度が約0.5hr-1より低い場合には、処理済油やそれらの産物の品質や量が低下する。より好ましい例では、空間速度が約1.0hr-1である場合には、処理済油やそれらの産物の量と品質がバランスする。
【0092】
様々な例では、バイオベース素材(例えば油)に対する水素の比率は、約0.03g水素/g油~約0.10g水素/g油、約0.05g水素/g油~約0.07g水素/g油、又は約0.05g水素/g油~約0.08g水素/g油である。油に対する水素の比率が0.1g水素/g油より少ない場合で十分な水素が存在しているため、油に対する水素の比率が0.1g水素/g油より大きい場合には、有益な効果は観察されない。換言すれば、0.03~0.10g水素/g油で十分である。このことは、有利なことに、比較的少ない量の水素だけを必要するため、操業コストを低下させる。
【0093】
様々な例では、水素の圧力が増加すると、水素のバイオベース素材への溶解性も増加する。これにより、水素化反応が促進される。このように、水素化反応が効果的に発生する。有利なことに、水素化反応は比較的低圧でも発生する。水素を加圧する圧縮器が不要となるため、経済的に有利である。さらに、操作が比較的低圧で実施できるため、反応器や他の器具のコストを減少させる。
【0094】
様々な例では、さらに、本発明の方法は、処理済油を精製することを含む。処理済油はガス状成分と混合されることができるため、反応器から得られた生成物は、処理済油とガス状成分との混合物である。様々な例では、処理済油を精製するには、処理済油を、高圧分離器に、続いて低圧分離器に通過させる。様々な例では、高圧分離器は、分離器として動作し、反応器の圧力と同じような圧力で操作される。高圧分離器は、主に水素であるガス状成分を処理済油から分離する。様々な例では、さらに、ガス状成分には、二酸化炭素、一酸化炭素及びプロパンを含む。二酸化炭素は、圧力スイング吸着法、アミンを用いた吸着法、又は高温のカルボネートを用いた反応のような方法で除去できるが、これらに限定されるものではない。さらに、一酸化炭素やプロパンは、高圧分離器で除去できる。様々な例では、高圧分離器、及び/又は低圧分離器は、軽い留分を取り除くことができる。軽い留分には、プロパン、及び/又は含硫化合物が含まれる。有利なことに、高圧分離器、及び/又は低圧分離器を用いる分離プロセスは、重い留分(トリグリセリド又は20より大きい炭素原子数を持つ重いパラフィン成分)を除くプロセスと比較し、エネルギー量が少なく、プロセスも簡便とすることができる。
【0095】
様々な例や
図1に示すように、ストリーム108を、高圧分離器(装置137)を通過させることで、精製された処理済油(ストリーム109)及びガス状成分(ストリーム110)を得る。様々な例では、装置137は、装置135の圧力と同じ圧力で操作される。
【0096】
様々な例では、ストリーム110は処理されることができる。
【0097】
様々な例や
図1に示すように、ストリーム109を、低圧分離器(装置138)に通過させる。装置137を通過した後、精製された処理済油(ストリーム109)の圧力は下がり、装置138に導入される。装置138では、副産物である水(ストリーム111)をストリーム108から分離して、より精製された処理済油(ストリーム112)を産出する。
【0098】
様々な例では、反応器は、トリクルベッド反応器(例えば狭管型のようなものであるがこれに限定されるものではない)、充填床反応器、シャローベッド反応器又はバスケット型反応器がある。各床には、触媒が適応され、該触媒は固体粒子の形態とすることができる。
【0099】
様々な例では、少なくとも1つの床を有することができる。また様々な例では、2、3、4又は5つの床とすることができ、これらの一連に構成することができる。
【0100】
様々な例では、反応器中に1を超える床が存在する場合には、触媒は、1箇所を超えて分けられて設置されることができる。有利なことに、床が一連に構成される場合には、高い転化率を達成することができる。これは、最初の床を通過した未反応のバイオベース素材が、2番目又はそれに続く床を通過する際に、水素化され得るからである。様々な例では、各床のサイズは調整することができ、更に、反応器中の床の数も調整することができる。1つよりも多い床を設置する場合には、温度コントロールがし易い。これはバイオベース素材と水素の間の反応の程度を調整することができるからである。バイオベース素材と水素との間の反応は、発熱反応であるため、生成される熱量を調整することが可能となる。その結果、反応器中の温度を調整することができることとなる。
【0101】
様々な例では、更に反応器は反応器の温度を調整するための冷却機能を備える。これは、水素化や脱酸化化反応は、高発熱反応だからである。このように、冷却機能は、反応器の温度を適切な温度範囲に有効に保持することを可能とする。特に、冷却機能は、反応器のオーバーヒートを最小限にまたは回避することを可能とし、これにより、反応器の温度を最適な温度に又は最適な温度付近であるように、反応器の温度プロファイルを最適化することが可能となる。ここで、「最適な温度」とは、反応器中の触媒が、一以上の望ましくない副反応(例えば、水素化分解)を触媒作用として呈さず、望ましい反応を触媒作用として最も活性化されて呈する温度(または温度範囲)をいうものである。例えば、供給原料にバイオベース素材(例えば、バイオベース素材を主に含む原料)を含む場合には、供給原料を、反応器の縦方向(長方向)に沿った複数の位置で、該反応器に導入することができる。その結果、バイオベース素材を含む供給原料は、最適温度付近の温度で導入されることができる。従来技術と比較すると、バイオベース素材を含む供給原料は、最適温度近くの温度で有効に導入されることとなる。このことは、反応器の長さに沿った複数の位置でバイオベース素材を含む供給原料を導入することで発生するものであり、また、反応器の最適温度プロファイルを達成することができ、これにより、反応器内(反応器全体にわたり)の温度の分布を、より優れたものとすることが可能となる。従って、本発明の方法で使用する触媒をより有効に用いることができ、更に触媒の効率をより優れたものとすることができ、生成率を増加させることが可能となる。更に有利なことに、副反応の発生を回避することが可能となる。反応器の温度は、処理済油の収率を減少させることに繋がるように、副反応は、反応器の温度の調整ができない結果として発生する。水素化又は脱酸素化のような反応がとても速く進んだ場合には、反応をコントロールすることは不可能となり、反応の温度も同様に調整不可能となる。
【0102】
様々な例では、冷却機能には、内部冷却機能及び/又は外部冷却機能が含まれる。
【0103】
様々な例では、内部冷却機能は、焼入れ手段(又は内部冷却)により実施される。内部冷却は、反応器の温度よりも低い温度(例えば、
図4中の入口温度Tq)を有する冷却物質(例えば、
図4中のQ1、Q2)を導入する方法があり、これにより反応器の温度を適切な温度に維持することができる。内部冷却用の物質の例には、新鮮量のバイオベース素材、新鮮量の水素、処理油の一部又はこれらの組合せが例示されるが、これらに限定されるものではない。冷却物質として使用される処理済油は、新しく調製されても以前のバッチで調製されてもよい。
【0104】
様々な例では、冷却物質は、1箇所以上の場所で反応器に導入されることができ、更に反応器中の床の数に依存する。様々な例では、冷却物質はノズルを用いて反応器中に導入される。様々な例では、ノズルは、反応物質ストリームの流れに対して垂直の角度から、反応物質外リームの流れに対して平行(例えば、並流)となる範囲の角度で位置させることができる。様々な例では、ノズルは、反応物質ストリームの流れに対抗する位置には設けられない(すなわち逆流)。一方、従来の方法においては、冷却物質はノズルを介して、当該冷却物質が反応物質ストリームの流れに対して反対方向(すなわち逆流)となるように導入された。ノズルが上向きの場合には、反応物質ストリームの流れに対して逆流となる。そうすると、冷却物質は、触媒上及び/又は周囲に(例えば、第一の触媒床の低端部、第二の触媒床の低端部及び/又はその次に続く床の低端部のような触媒床の低端部に)蓄積されることとなり、冷却物質が過剰反応及び/又はオーバーヒートを生み出してしまう。例えば、オーバーヒートは、冷却物質がバイオベース素材の場合に生じ得る。このような差は、内部冷却機能の能力及び特性に影響を及ぼすものである。例えば、新鮮量のバイオベース素材を、本発明の冷却物質として用いることができるが、一方、従来の方法では新鮮量のバイオベース素材を用いることは望ましくない。従来の方法においては、冷却物質として新鮮な一定量のバイオベース素材を用いると、処理済油及びこれらの産物に悪影響を及ぼすこととなり、更に/又は方法の操作に悪影響を及ぼすこととなる。様々な例では、冷却物質の各部分の容量は、冷却物質の全容量の0~100%の範囲で調製可能である。様々な例では、冷却物質の全容量は、調整されるべき温度範囲に依存する。例えば、温度上昇が比較的高い場合には(換言すれば、調整されるべき温度範囲が比較的大きい場合)、より多量の冷却材を使用することが必要となる。
【0105】
様々な例では、バイオベース素材と水素との間の反応が発熱反応である結果として、多量の熱が生成される。冷却物質を用いることにより、反応器内の温度を低下させることができる。様々な例では、冷却物質は、反応器に取り付けられている入口を介して導入される。様々な例では、最初の冷却物質は入口を介して導入されて、当該最初の冷却物質は反応器内の床のクロスセクションに分布することとなる。次いで、当該床からの反応物質ストリームは、当該床と次の床との間で最初の冷却物質と接触することとなり、反応物質ストリームの温度が低下するようになる。反応物質ストリームが、当該次の床と接触した後、反応物質ストリームの温度は上昇し、これは、バイオベース素材と水素との反応によるものである。次いで、他の冷却物質を、反応器に取り付けられている他の入口を介して導入して、反応物質ストリームが該冷却物質と接触するときに、同様に、反応物質ストリームの温度を低下させる。その結果、反応ストリームの温度は調整され、適切な温度範囲を維持することが可能となる。
【0106】
様々な例や
図4に示すように、ストリーム103及びストリーム106は第1の床(B1)を通過して触媒の存在下で反応する。反応器135の温度は第1の温度(T1)から第2の温度(T2)へ変化(又は上昇)する。例えば、第1の温度が約320℃で、第2の温度が約380℃である。温度の上昇は、バイオベース素材と水素との間の反応が発熱反応であるからであり、これによりかなりの量の熱が発生する。次いで、冷却物質(Q1)を第1の床(B1)及び第2の床(B2)の間に導入して(図中、点線で示す)、冷却物質(Q1)が反応器135内の温度を、第2温度(T2)から第3温度(T3)に変化(または低下)させる。様々な例では、第3の温度(T3)は、第1の温度と同じか、当該第3の温度(T3)が第2の温度(T2)より低い限り、異ならせることができる。様々な例では、入口温度(Tq)を有する冷却物質(Q1)を、第1の床(B1)から第2の床(B2)に流れる、反応物質ストリームと混合する。このように、かかる例においては、冷却物質(Q1)は内部冷却作用を呈することができる。バイオベース素材(ストリーム103)及び水素(ストリーム106)が第2の床(B2)を通過してこの2つの物質が触媒の存在下で反応した後、反応器135の温度は、第3の温度(T3)から第4の温度(T4)に変化(上昇)する。様々な例では、第4の温度(T4)は、第2の温度(T2)と同じ温度か又は、第4の温度(T4)が第3の温度(T3)よりも高い限り異なることができる。
【0107】
様々な例や
図4に示すように、冷却物質(Q2)が反応器135の温度を第4の温度(T4)から第5の温度(T5)に変化させる(低下)ように、新鮮量の冷却物質(Q2)を第2の床(B3)及び第3の床(B3)の間に(点線で示す)導入する。様々な例では、第5の温度(T5)は、第1/第3の温度(T1/T3)と同じとするか、第5の温度(T5)が第4の温度(T4)よりも低い限り、異なる温度とすることができる。様々な例では、入口温度(Tq)を有する冷却物質(Q2)は、第2の床(B2)から第3の床(B3)に流れる反応物質ストリームと混合される。従って、このような例においては、冷却物質(Q2)は、内部冷却機能として作用することができる。バイオベース素材(ストリーム103)及び水素(ストリーム106)が第3の床(B3)を通過してこの2つの物質が触媒下で反応した後、反応器135の温度は第5の温度(T5)から第6の温度(T6)に変化(上昇)する。様々な例では、第6の温度(T6)は、第2/第4の温度(T2/T4)と同じとするか、第6の温度(T6)が第5の温度(T5)よりも高い限り、異なる温度とすることができる。
【0108】
様々な例では、外部冷却機能は、熱伝導ユニットを備えるシャローベッド反応器又は多管のようなものが例示できるがこれらに限定されるものではない。このように、様々な例では、シャローベッド反応器は、熱伝導ユニットと組み合わされて動作する。
【0109】
様々な例では、バイオベース素材と水素との反応は発熱反応であるため、かなりの量の熱が生成される。反応器の温度は、外部冷却機能を用いて低下させることができる。
【0110】
様々な例や
図5に示すように、外部冷却機能は、熱伝導ユニット(H1、H2)であり、床と隣接する床のインターフェース部分(点線で示す)に反応器と一体となって付設されることができる。例えば、インターフェース部分は、第1の床(B1)と第2の床(B2)の間、又は第2の床(B2)と第3の床(B3)の間である。様々な例では、熱伝導ユニット(H1、H2)は、シェル及び管状の熱交換器である。
【0111】
様々な例では、床からの反応物質ストリームは、床と隣接する床のインターフェースで熱伝導ユニットと接触して、反応物質ストリームの温度を低下させる。反応物質ストリームが当該隣接する床に接触した後、反応物質ストリームの温度は上昇する。これはバイオベース素材と水素とが反応するからである。次いで、他の熱伝導ユニットを、当該隣接する床と他の隣接する床との間に組み込むができる。熱伝導ユニットは同様に、反応物質ストリームが熱伝導ユニットと接触する際には、反応物質ストリームの温度を低減する。その結果、反応物質ストリームの温度は調整することができ、適切な温度範囲に維持されることができる。
【0112】
様々な例では、反応器の温度よりも低い温度(例えば
図5中の入口温度Tq)を有する冷却材(例えば、
図5中のC1、C2)を、例えば熱伝導ユニットのシェル側を介して、熱伝導ユニットに導入することができる。様々な例では、熱伝導ユニットのチューブ側を通過する反応物質ストリームは、熱エネルギーを冷却材に転移させて、これにより、反応器の温度を適切な温度に維持する。いくつかの例においては、冷却材と反応物質ストリームの間の熱エネルギーの交換は、反応物質が冷却材と混合されることなく行われる。このように、かかる例においては、冷却材は、外部冷却機能を呈するものである。その結果、反応物質ストリームの温度は低下し、冷却材の温度は上昇する。反応物質ストリームの温度が低下するので、反応器の温度は適切な温度に維持されることができる。
【0113】
冷却材の例としては、新鮮量のバイオベース素材、新鮮量の水素、処理済油の一部、またはこれらの組合せまたは熱伝導液が例示できるが、これらに限定されるものではない。冷却材としての処理済油の一部は、フレッシュに調製されたものか、従前のバッチで調製されたものとすることができる。
【0114】
様々な例では、冷却材は、一度にまたは複数で反応器を冷却するために装置に導入されることができ、またこれは反応器中の床の数に依存することができる。様々な例では、冷却材の各部分量は、冷却材の全容量の0~100wt%で調整することができる。様々な例では、冷却材の全容量は、調整されるべき温度範囲に依存する。例えば、温度が比較的高い(換言すれば、調整されるべき温度範囲が比較的大きい)場合には、大容量の冷却材の使用が必要となる。
【0115】
様々な例や
図5に示すように、ストリーム103及びストリーム106が第1の床(B1)を通過してこれらが触媒の存在下で反応した後、反応器135の温度は、第1の温度(T1)から第2の温度(T2)に変化する(又は上昇)。例えば、第1の温度が約320℃で、第2の温度が約380℃である。温度の上昇は、バイオベース素材と水素との間の反応が発熱反応であるからであり、これにより、かなりの量の熱を産出する。次いで、反応物質ストリームは、第1の床(B1)と第の床(B2)の間のインターフェース(点線で示す)に位置する熱伝導ユニット(H1)のサイド(例えば管サイド)を通過して流れ、冷却材(C1)は熱交換ユニット(H1)のサイド(例えばシェル側)に導入されて、冷却材(C1)が、反応器(135)の温度を第2の温度(T2)から第3の温度(T3)に変化(減少)させる。
【0116】
様々な例では、第3の温度(T3)は第1の温度(T1)と同じとするか、第3の温度(T3)が第2の温度(T2)よりも低い限り、異なる温度とすることができる。その結果、初期温度(入口温度Tq)の冷却材(C1)は、最終温度(出口温度Tq
1)を有し、そして初期温度は最終温度よりも低い。バイオベース素材(ストリーム103)及び水素(ストリーム106)は第2の床(B2)を通過して、2つの物質は触媒の存在下で反応した後、反応器135の温度は第3の温度(T3)から第4の温度(T4)に変化する(又は低下)。様々な例では、第4の温度(T4)は、第2の温度(T2)と同じであるか、第4の温度(T4)が第3の温度(T3)よりも高い限り異なることができる。様々な例では、
図5に示すように、反応ストリームは、第2の床(B2)と第3の床(B3)との間のインターフェースに位置する熱伝導ユニット(H2)のサイド(例えば管サイド)を流れ、冷冷却材(C2)は、熱伝導ユニット(H2)のサイド(例えばシェルサイド)に導入されて、反応器135の温度を第4の温度(T4)から第5の温度(T5)に変化(又は低下)させる。様々な例では、第5の温度(T5)は、第1/第3の温度(T1/T3)と同じか、または第5の温度(T5)が第4の温度(T4)より低い限り異なることができる。その結果、初期温度(入り口温度Tq)を有する冷却材(C2)は最終温度(出口温度Tq
1)を有する。そして初期温度は最終温度よりも低い。バイオベース素材(ストリーム103)及び水素(ストリーム106)は第3の床(B3)を通過して、2つの反応物質が触媒の存在下で反応した後、反応器135の温度は第5の温度(T5)から第6の温度(T6)に変化する(又は上昇)。様々な例では、第6の温度(T6)は、第2/第4の温度(T2/T4)と同じか、第6の温度(T6)が第5の温度(T5)よりも高い限り、異なることができる。
【0117】
様々な例では、処理済油は更に処理されて、グリーンディーゼル及び/又は相転移材料(PCM)を産出することができる。様々な例では、処理済油は更に処理されて、工業用溶媒を産出することができる。様々な例では、処理済油を、グリーンディーゼル、PCM及び/又は工業用溶媒に生成するための更なる処理には、蒸留ステップ及び吸着ステップの組合せを用いることができる。グリーンディーゼルを産出するための更なる処理に課する処理済油とPCM及び工業用溶媒に対する比は、1:0~0:1である。即ち、グリーンディーゼルを生成するための更なる処理に課する処理済油のPCM及び工業用溶媒に対する比は特に限定されない。ここで、「PCM部分(portion)」の語は、処理済油に関連して用いる場合には、PCM及び工業用溶媒を産出するための更なる処理に課される処理済油の割合(又は比率)を意味する。
【0118】
様々な例では、本発明の方法により産出された処理済油には、低容量のイソパラフィンまたは高容量のイソパラフィンが含むことができる。本発明の方法から得られたイソパラフィンは、硫黄、オレフィン及び芳香族は実質的に含まず、毒性がなく、燃焼の間に有害な生成物を形成することはない。ここで、「実質的にない」との用語は、処理済油中の副産物(例えば、硫黄、オレフィン、芳香族又はこれらの混合物)の関連で用いる場合には、処理済油中、100ppmw未満、50ppmw未満、20ppmw未満、10ppmw未満、5ppmw未満、1ppmw未満の量を意味する。
【0119】
様々な例では、処理済油は、更にPCMを産出するために処理される。PCMは、硫黄、芳香族及びアルコールは実質的に含まない。ここで、「実質的にない」との用語は、PCM中の副産物(例えば、硫黄、芳香族、アルコール又はこれらの混合物)の関連で用いる場合には、PCM中、100ppmw未満、50ppmw未満、20ppmw未満、10ppmw未満、5ppmw未満、1ppmw未満の量を意味する。有利には、表7に示すように、処理済油を用いて得られたPCMは実質的に硫黄、芳香族及びアルコールを含まない。
【0120】
様々な例では、高容量のイソパラフィンが望ましい。様々な例では、少なくとも部分的にn-パラフィンをイソパラフィンに異性化するための異性化条件下で、処理済油を異性化触媒と接触させる必要がない。これは、処理済油には、高容量のイソパラフィンが含まれるからである。特に、本発明の処理に使用される触媒は、バイオベース素材の異性化をおこし、これにより高容量のイソパラフィンが生成される。これに対し、従来の方法では、処理済油の異性化は必要であり、これは、処理済油は、主にn-パラフィンを含むからであり、これにより、低温でのフロー特性が劣っていた。このように、処理済油の低温でのフロー特性を改良することが所望される場合には、従来処理技術を用いて得られた処理済油には、更に異性化の工程が必要であった。
【0121】
様々な例では、低容量のイソパラフィンが所望される。一般に、ノーマルパラフィン(n-パラフィン、n-15~n-18)からイソパラフィンを分離することは、不可能でないにしても、難しい。処理済油中に高容量のイソパラフィンが存在する場合には、得られるPCMには混入物としてイソパラフィンを含み、PCMのn-パラフィンの純度は約99wt%である。様々な例では、PCM中のn-パラフィンの純度は約99%である。様々な例では、PCMは少なくとも99wt%のn-パラフィンを含み、その場合においては、n-パラフィンは少なくとも1種類のn-パラフィンとすることができる。その結果、PCMは高純度で得られ、主にn-パラフィンから構成される。
【0122】
様々な例では、本発明の方法は、更に、処理済油を、蒸留ユニットおよび吸着ユニットを通過してグリーンディーゼルを産出することを含む。即ち、蒸留ユニットは吸着ユニットと組み合わせる。例えば、蒸留ユニットは吸着ユニットと接続されている、有利には、グリーンディーゼルの質は、従来の方法により調製されたグリーンディーゼルよりも良好である。様々な例では、本発明のグリーンディーゼルの引火点は、従来の方法により調製されたグリーンディーゼルの引火点よりもかなり高い。これは、処理済油は、蒸留ユニットを通過するからである。様々な例では、蒸留ユニットには、少なくとも一つの蒸留カラムを備える。様々な例では、グリーンディーゼルはバイオベース素材の約80~約85%の収率で得ることができる。様々な例では、グリーンディーセル中のイソパラフィン含量は約0wt%~約10wt%であり、グリーンディーセル中のn-パラフィンの含量は、約90wt%~約100wt%である。
【0123】
様々な例では、
図1に示すように、グリーンディーゼルを製造するための処理済油(ストリーム113、ストリーム112の成分とストリーム113の成分とは同じ)は蒸留ユニット(装置139)を通過し、次いで吸着ユニット(装置140)を通過する。様々な例では、ストリーム113は、低沸点を有する炭化水素化合物(ストリーム116)を分離するために減圧又は常圧で操作される蒸留塔を備える装置139を通過して、得られるグリーンディーゼルが高いセタン価を有するとともに低容量の硫黄を含むことができる。様々な例では、セタン価は、少なくとも100である。様々な例では、得られるグリーンディーゼルは約100~約150のセタン価を有する。一方、従来の方法においては、グリーンディーゼルは低いセタン価を有している。このことより、本発明のグリーンディーゼルは、従来技術によるグリーンディーゼルと比較して相対的に高い引火点を有する。様々な例では、本発明のグリーンディーゼルの引火点は、約100℃~約130℃、約110℃~約130℃、約120℃~約130℃、約125℃~約130℃の範囲にある。様々な例では、装置139から得られる産物は、ストリーム115であり、これは次いで装置140を通過する。装置140は、ストリーム115の酸性度を低減し、硫黄を除去するのに適用されて、これによりグリーンディーゼルを産出する(ストリーム117)。
【0124】
様々な例では、吸着ユニットには、活性化炭素、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ及び化学吸着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれる。様々な例では、イオン交換樹脂は、塩基性イオン交換樹脂または酸性イオン交換樹脂であることができる。好適例においては、吸着剤は塩基性イオン交換樹脂である。様々な例では、化学吸着剤は塩基性又は酸性であることができ、好ましくは塩基性である。有利には、吸着ユニットは、触媒の効率に影響を与えうる汚染物質を除去することができる。更に、処理済油が吸着ユニットを通過した際には、得られるグリーンディーゼルは、次のものに限定されるものではないが、例えば、硫黄、酸素含有化合物、トリグリセリド及び/又は酸のような汚染物質を低量で又は実質的に無視できる量なる、望ましい特性を有することができる。様々な例では、得られるグリーンディーゼルは、酸素含有化合物、また重質留分(例えば、20を超える炭素原子を有する重質パラフィン又はトリグリセリド)を実質的に含まず、または両方を実質的に含まない。ここで、「実質的にない」との用語は、グリーンディーゼル中の副産物(例えば、少なくとも1種の酸素含有化合物、少なくとも1種の重質留分又はこれらの混合物)の関連で用いる場合には、グリーンディーゼル中、1wt%未満、0.8wt%未満、0.6wt%未満、0.5wt%未満、0.4wt%未満、0.3wt%未満、0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満または0.01wt%未満量を意味する。その結果、グリーンディーゼルは、比較的狭い蒸留範囲を有するとともにトレーサー量程度の不純物しか含まない。様々な例では、グリーンディーゼル中の全グリセリド含量は、グリーンディーゼル中の全トリグリセリド含量と同等である。様々な例では、処理済油中の全グリセリド含量は、グリーンディーゼル中の全トリグリセリド含量と同等である。当業者においては、例えばEN 14105のような標準テストを、全グリセリド含量を測定するのに使用することができることは理解できることである。様々な例では、グリーンディーゼル中の全グリセリド含量は、1wt%未満、0.8wt%未満、0.6wt%未満、0.5wt%未満、0.4wt%未満、0.3wt%未満、0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満である。様々な例では、グリーンディーゼル中の全グリセリドは、約0.01wt%~約0.05wt%である。様々な例では、グリーンディーゼル中の全グリセリドは約0.038wt%である。
【0125】
一方、従来の方法は、本発明の方法と比較して劣るものであり、それは、トリグリセリドの転化が完全ではないからであり、従って未反応トリグリセリドが存在することとなる。その結果、かかる従来方法は、質の悪いグリーンディーゼルを得ることとなるか、及び/又は、従来の方法は、未反応トリグリセリドを分離するための追加の工程が必要となる。一方、本発明の方法は、未反応トリグリセリドを除去するために相当な量のエネルギー又は比較的高いエネルギーが必要とされる面倒なプロセスである追加のステップとなる如何なるステップも必要ではない。有利には、本発明のグリーンディーゼルは酸素含有化合物を実質的に含まず、本発明のグリーンディーゼルの酸化は減少又は回避することができる。このように、良好な熱酸化安定性が達成される。
【0126】
様々な例では、吸着ユニットはカラム(又は吸着カラム)又は一連のカラムセット(複数の吸着カラム)とすることができる。様々な例では、1つより多くの吸着ユニットを用いることができる。
【0127】
様々な例では、処理済油からの酸、硫黄化合物及び重金属のような汚染物質(これらに限定されるものではないが)の吸着を、約30℃~約70℃の温度、約0.5h-1~2.0h-1の空間速度で常圧で処理することができる。
【0128】
様々な例では、吸着ユニットの温度は調整する必要がなく、これにより操作の容易性が確保できる。更に、吸着ユニットの温度はバイオベース素材又は処理済油の温度をベースに選択されることができる。
【0129】
様々な例では、本発明の方法は、更に、処理済油を少なくとも1つの蒸留カラムに通過させて、処理済油から少なくとも1つの成分を分離することを含む。換言すれば、1つ以上の蒸留カラムは互いに組み合わせることができる。このように、本発明の方法は、更に蒸留工程を含み、限定されるわけではないが、特に、減圧蒸留を含む。様々な例では、蒸留カラムは、少なくとも1つの充填カラム(packed column)又はトレーカラム(tray column)を含むことができる。一例においては、4つの蒸留カラムが存在する。様々な例では、蒸留カラムは蒸留ユニットの一部とすることができる。換言すれば、蒸留ユニットは少なくとも1つの蒸留カラム及び他の機器を備えることができる。
【0130】
様々な例では、蒸留は、バッチ方式又は連続方式で実施することができる。様々な例では、蒸留は約5ミリバール(mbar)~約100ミリバール(mbar)の圧力で発生する。様々な例では、蒸留カラムの頂部の温度は約120℃~約190℃とすることができ、リボイラーの温度は約170℃~約230℃とすることができる。
【0131】
様々な例では、PCMを得ることができ、例えば無臭気のような優れた特性を有することができる。即ち、PCMの臭気が除去されることができる。従来の方法により得られたPCMとは異なり、本発明のPCMは良好な同等以上の純度、異なる範囲の融点及び/又は異なる蓄熱容量または融解熱を有する。様々な例では、PCMは、処理済油(又は処理済油供給原料)中、約60%~約80%PCM分(画分)の収率で得ることができる。様々な例では、PCM中のイソパラフィン含量は、約0wt%~約1wt%の範囲であり、n-パラフィン含量は約99wt%~100wt%の範囲である。
【0132】
様々な例では、少なくとも1つの成分は16未満の炭素原子数を有するn-パラフィン、n-ヘキサデカン(n-16C)、n-ヘプタデカン(n-17C)、n-オクタデカン(n-C18)及び18より多い炭素原子数を有するn-パラフィンから成る群より選ばれる。様々な例では、少なくとも1つの成分は、工業用溶媒である。様々な例では、少なくとも1つの成分の純度は高い。様々な例では、工業用溶媒は高純度を有し、これは少なくとも99wt%のn-パラフィンを含むからである。その結果、工業用溶媒は主にn-パラフィンを含み、それゆえ良好な熱酸化安定性を有する。即ち、工業用溶媒は、主としてn-パラフィンから成るものであり、n-パラフィンは少なくとも1種のn-パラフィンとすることができる。
【0133】
様々な例や表8に示すように、本発明の方法により得られた工業溶媒は1ppm未満の硫黄及び、1wt%もしくはほとんど無視し得る量(分析方法を介しては検出できない)の芳香族化合物(又は芳香族内容物)を含む。様々な例では、工業用溶媒は50ppmw以下の水を含むことができる。一方、市場で入手し得るグリーンディーゼルは、例えば2000ppmwの水というような、かなりの高含有量の水を含む。様々な例では、本発明の工業用溶媒は、他に、比較的高い引火点、比較的狭い蒸留範囲、低い粘性、マイルドな色、マイルドな匂い、低い密度、非極性、及び低反応性のような特性を有するが、これらに限定されるものではない。様々な例では、工業用溶媒は比較的高い引火点を有するので、不燃性液体とすることができる。様々な例では、工業用溶媒の引火点は、約120℃~約130℃とすることができる。様々な例では、工業用溶媒の蒸留範囲は、約240℃~約280℃、または約250℃~約270℃の範囲である。様々な例では、工業用溶媒のIBPは、少なくとも240℃又は少なくとも250℃である。様々な例では、工業用溶媒のFBPは、高くとも280℃又は高くとも270℃である。
【0134】
様々な例や
図2に示すように、PCM調製用の処理済油(ストリーム114、ストリーム112の成分はストリーム114と同じである)を蒸留カラム(装置142)に通過させて、これにより炭素原子数が16未満のn-パラフィンを含有するストリーム120とストリーム119とに分離する。ストリーム119は、他の蒸留塔(装置144)を通過して、主成分として少なくとも約99質量%のn-ヘキサデカンを含むストリーム123とストリーム122とに分離される。次いで、ストリーム122を他の蒸留カラム(装置146)に通過させて、主成分として少なくとも約99質量%のn-ヘプタデカンを含むストリーム126とストリーム125とに分離する。次いで、ストリーム125を他の蒸留カラム(装置148)に通過させて、主成分として少なくとも約99質量%のn-オクタデカンを含むストリーム129と、主成分として18より多い炭素原子数を有するn-パラフィンを含むストリーム128とに分離する。様々な例では、ストリーム128は蒸留カラム(装置148)の底部から排出されて、燃料油(バンカー油)として使用されることができる。このように、1を超える蒸留カラムを互いに組み合わせることができる。様々な例では、燃料油を、例えばモバイルエンジン用の燃料のように、種々の用途に使用することができるが、これに限定されるわけではない。
【0135】
様々な例では、本発明の方法は、更に少なくとも1つの成分を吸着ユニットに通過させることを含む。即ち、蒸留カラムは吸着ユニットと組み合わされる。例えば、蒸留カラムを吸着カラムに接続させる。有利には、吸着ユニットは、残存する汚染物質を除去することにより、少なくとも1つの成分の質を改善することが可能であり、限定されるわけではないが、例えば工業用溶媒又はPCMのような望ましい利用に適切に使用できることを可能とする。また、限定されるわけではないが、例えば望ましくない揮発性有機化合物や、工業用溶媒及び/又はPCMに悪臭や色を付与する物質のような汚染物質の除去は、例えば悪臭や望ましくない色のような所望されない特性(これらの特性に限定されるわけではない)を最小化又は除去することができる。
【0136】
様々な例では、吸着ユニットは、少なくとも1つの吸着カラムを備え、各吸着カラムは、活性炭素、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ及び化学吸着剤から成る群より選ばれる少なくとも1つの吸着剤を含む。様々な例では、イオン交換樹脂は、塩基性イオン交換樹脂又は酸性交換樹脂とすることができる。様々な例では、モレキュラーシーブは、約3オングストローム(Å)~約15オングストローム(Å)の範囲の孔径を有することができる。様々な例では、化学吸着剤は、塩基性又は酸性とすることができ、好ましくは塩基性である。
【0137】
様々な例では、汚染物質が吸着ユニットを通過し、吸着剤と接触した際に、汚染物質は吸着剤に吸着される。
【0138】
様々な例では、吸着は、常圧、約30℃~約70℃の温度、約0.5h-1~約2.0h-1の空間速度で実施することができる。
【0139】
様々な例では、吸着ユニットの温度を調整する必要はなく、これにより操作が簡便になる。更に、吸着ユニットの温度は、例えば、ストリーム120、ストリーム123、ストリーム126及びストリーム129のような(これらに限定されるわけではない)入口ストリーム温度をベースにして選択することができる。
【0140】
様々な例や
図2に示すように、ストリーム120は吸着ユニット(装置143)を通過してストリーム121を形成する。これは、工業用溶媒として適切である。
【0141】
様々な例や
図2に示すように、ストリーム123は吸着ユニット(装置145)を通過してストリーム124を形成する。これは、PCM(PCM#1)として適切である。
【0142】
様々な例や
図2に示すように、ストリーム126は吸着ユニット(装置147)を通過してストリーム127を形成する。これは、PCM(PCM#2)として適切である。
【0143】
様々な例や
図2に示すように、ストリーム129は吸着ユニット(装置149)を通過してストリーム130を形成する。これは、PCM(PCM#3)として適切である。
【0144】
本発明の別の観点によれば、上記した方法によりグリーンディーゼルが得られることであり、グリーンディーゼルは0~10wt%量のイソパラフィンと90~100wt%量のn-パラフィンを含む。
【0145】
様々な例では、グリーンディーゼルの蒸留範囲は比較的狭い。様々な例では、グリーンディーゼルの蒸留範囲は、約200℃~約350℃、約250℃~約330℃、約255℃~約330℃、約255℃~約325℃、約260℃~約325℃、約260℃~約330℃、約250℃~約323℃、約260℃~約323℃の範囲である。様々な例では、グリーンディーゼルの初期沸点(IBP)は、約200℃~約350℃、好ましくは約250℃~約310℃、約250℃~約270℃、約255℃~約265℃である。様々な例では、IBPは少なくとも250℃、少なくとも255℃、または少なくとも260℃である。市場で入手し得るグリーンディーゼル比較して、本発明のグリーンディーゼルのIBPは、相対的に高い。様々な例では、本発明のグリーンディーゼルのIPBは約260.5℃とすることができ、一方、市場で入手した第1のグリーンディーゼルのIBPは180℃であり、市場で入手した第2のグリーンディーゼルのIBPは173℃である。従って、このことは、本発明のグリーンディーゼルは、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも、高い炭素原子数(例えばn-C15~n-C18)を有するノーマルパラフィンを高い割合(部分)で含むことを示すものである。
【0146】
様々な例では、グリーンディーゼルの最終沸点(FBP)は、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも低い。様々な例では、FBPは高くとも350℃、高くとも340℃、高くとも335℃、高くとも330℃又は高くとも325℃である。特に、本発明のグリーンディーゼルのFBPは約323.0℃であり、一方、市場で入手した第1のグリーンディーゼルのFBPは360℃であり、市場で入手した第3のグリーンディーゼルの沸点は350℃以上である。従って、本発明のグリーンディーゼルを用いる(又は燃焼させる)場合、発生する汚染量は、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも相対的に少ない。例えば、本発明のグリーンディーゼルの燃焼から発生する微粒子はほとんどない。
【0147】
本発明の他の観点によれば、上記方法により相転移材料が得られることであり、相転移物質は、0~1wt%量のイソパラフィン及び99~100wt%量のn-パラフィンを含む。
【0148】
本発明の他の観点や
図1に示すように、処理済油を産出するために、担体上の触媒の存在下でバイオベース物質(ストリーム101)と水素(ストリーム104)とを反応させるための反応器135を備える、バイオベース物質を処理するシステムが提供されることであり、バイオベース物質(ストリーム101)は再生可能であり、反応器135には反応器の温度を調整するための冷却機能が備えられ、冷却機能は内部冷却機能及び外部冷却機能の少なくとも1つである。
【0149】
様々な例や
図4に示すように、内部冷却機能には冷却物質が含まれ、冷却物質は、新鮮量のバイオベース素材、新鮮量の水素、及び/又は処理済油の一部とすることができる。
【0150】
様々な例や
図1に示すように、本システムには更に、処理済油(ストリーム109)が通過するための高圧分離器(装置137)及び低圧分離器(装置138)が備わる。様々な例では、反応器135は高圧分離器(装置137)と組み合わされる。例えば、反応器135は熱交換器(装置136)と連結され、熱交換器(装置136)は高圧分離器(装置137)と連結される。様々な例では、高圧分離器(装置137)は低圧分離器(装置138)と組み合わされる。例えば、高圧分離器(装置137)は、低圧分離器(装置138)に連結される。
【0151】
様々な例では、外部冷却機能には、多菅またはシャローベッド反応器又は熱交換ユニットが含まれる。
【0152】
様々な例では、外部冷却機能には、更に冷却材が含まれ、冷却材は、新鮮量のバイオベース素材、新鮮量の水素、及び/又は処理済油の一部、または熱伝導液とすることができる。
【0153】
様々な例や
図1に示すように、本システムには、更に、グリーンディーゼル(ストリーム117)を生成するために、処理済油(ストリーム113)を通過させる蒸留ユニット(装置139)が備わる。様々な例では、蒸留ユニット(装置139)を低圧分離器(装置138)と組み合わせる。例えば、蒸留ユニット(装置139)を低圧分離器(疎プチ138)に連結する。
【0154】
様々な例や
図1に示すように、本システムには、更に、グリーンディーゼル(ストリーム117)が通過するための吸着ユニット(装置140)が備わる。様々な例では、吸着ユニット(装置140)は蒸留ユニット(装置139)と組み合わされる。例えば、吸着ユニット(装置140)を蒸留ユニット(装置139)と連結する。
【0155】
様々な例や
図2に示すように、本システムには、更に、処理済油から少なくとも1つの成分を分離するための蒸留カラム(例えば、装置142、装置144、装置146、装置148)を備える。様々な例では、少なくとも1つの蒸留カラム(例えば装置142)の1つを低圧分離器(装置138)と組み合わせる。例えば蒸留カラム(装置142)を低圧分離器(装置138)と連結する。
【0156】
様々な例や
図2に示すように、本システムには、更に、当該少なくとも1つの成分が通過するための吸着カラム(例えば、装置143、装置145、装置147、装置149)が備わる。様々な例では、吸着カラムは吸着ユニットの一部とすることができる。様々な例では、吸着カラム(例えば、装置143)は蒸留カラム(例えば装置142)と組み合わされる。例えば、吸着カラム(装置143)は蒸留カラム(装置142)と連結され、吸着カラム(装置145)は、蒸留カラム(装置144)と連結され、吸着カラム(装置147)は蒸留カラム(装置146)と連結され、吸着カラム(装置149)は蒸留カラム(装置148)と連結される。
【0157】
本発明の別の観点や
図3に示すように、グリーンディーゼル及びPCMを調製する他の調製方法がある。様々な例では、再生可能なバイオベース素材の処理方法は、反応器中の担体上の触媒の存在下でバイオベース素材と水素とを反応させて処理済油を調製するステップを備え、(i)処理済油は蒸留ニット及び吸着ユニットを通過してグリーンディーゼルを調製し、及び/又は、(ii)処理済油を少なくとも1つの蒸留カラムに通過させて、処理済油から少なくとも1つの成分を分離し、そして当該少なくとも1つの成分を吸着カラムに通過させる。反応器は、反応器の温度を調整するための冷却機能を備え、冷却機能は内部冷却機能及び外部冷却機能の少なくとも1つである。
【0158】
図1に示す方法と同じように、バイオベース素材(ストリーム101)をポンプ(装置131)に通過させる。装置131はバイオベース素材の流速及び圧力を調整するのに適用される。このように、ストリーム101が装置131を通過してストリーム102となり、ストリーム102は予め決定された流速と圧力を有するバイオベース素材を含み、ストリーム102の圧力は、ストリーム101の圧力よりも高い。次いで、ストリーム102は熱交換器(装置132)を通過する。装置132はストリーム102の温度を上昇させるのに適用され、これにより予め決定された温度を有するバイオベース素材を含むストリーム103が調製される。ストリーム103の温度は、担体上の触媒の存在下でバイオベース素材(ストリーム101)と水素(ストリーム104)とを反応させて処理済油(ストリーム109)を調製するための反応器135を備えるバイオベース素材の処理システムよりも高く、バイオベース素材(ストリーム101)は再生可能で、更に、反応器135には反応器の温度を調整するための冷却機能を含み、該冷却機能は、内部冷却機能及び外部冷却機能の少なくとも1つである。
【0159】
図1に示す方法と類似で
図3に示すように、ストリーム103及びストリーム106は反応器中で触媒の表面と接触することにより反応することができ、これにより処理済油(ストリーム107)を調製する。様々な例では、ストリーム107を、次に、熱交換器(装置136)、続いて高圧分離器(装置137)及び低圧分離器(装置138)に通過させる。様々な例では、
図1に示す方法は、分離ポイントが低圧分離器(装置138)の後ではなく蒸留ユニット(装置139)の後となるように処理済油の分離ポイントを移動させること以外は、
図3に示す方法と同じである。様々な例では、高圧分離器(装置137)を通過した後、精製処理済油(ストリーム109)及びガス状成分(ストリーム110)が産出される。様々な例では、精製処理済油(ストリーム109)は装置139を通過し、低沸点炭化水素化合物(ストリーム116)を分離する。
【0160】
様々な例や
図3に示すように、PCMを産出するために処理済油を蒸留カラム(装置142)に通過させ、これにより16未満の炭素を有するn-パラフィンを含むストリーム120とストリーム119とに分離する。次いで、ストリーム119は他の蒸留カラム(装置144)を通過し、これにより少なくとも99.0質量%のn-ヘキサデカンを主成分として含むストリーム123とストリーム122とに分離される。次いで、ストリーム122は他の蒸留カラム(装置146)を通過し、これにより少なくとも99.0質量%のn-ヘプタデカンを主成分として含むストリーム126とストリーム125とに分離される。次いで、ストリーム125は他の蒸留カラム(装置148)を通過し、これにより少なくとも99.0質量%のn-オクタサデカンを主成分として含むストリーム129と、主成分として18を超える炭素原子を有するn-パラフィンを含むストリーム128とに分離される。次いで、様々な例では、ストリーム128は、蒸留カラム(装置148)の底部から排出されて、燃料油(バンカー油)として使用される。
【0161】
様々な例や
図3に示すように、ストリーム120は吸着ユニット(装置143)を通過して、ストリーム121を産出し、これは工業用溶媒に適切である。
【0162】
様々な例や
図3に示すように、ストリーム123は吸着ユニット(装置145)を通過して、ストリーム124を産出し、これはPCM(PCM#1)に適切である。
【0163】
様々な例や
図3に示すように、ストリーム126は吸着ユニット(装置147)を通過して、ストリーム127を産出し、これはPCM(PCM#2)に適切である。
【0164】
様々な例や
図3に示すように、ストリーム129は吸着ユニット(装置149)を通過して、ストリーム130を産出し、これはPCM(PCM#3)に適切である。
【0165】
様々な例では、
図3に示される代替方法から得られるPCM(PCM#1、PCM#2、PCM#3)は、
図2に示される方法から得られる対応PCM(PCM#1、PCM#2、PCM#3)と同じものであると、当業者には理解できるものである。
【0166】
様々な例や
図3に示すように、蒸留カラム(装置142)を通過する代わりに、精製処理済油を吸着ユニット(装置140)に通過させることができる。様々な例では、装置140は、ストリーム115の酸性度を低減させ硫黄を除去するのに適用され、これによりグリーンディーゼル(ストリーム117)が産出される。
図3に示す方法から得られるグリーンディーゼルは、
図1に示す方法により得られるグリーンディーゼルと同じであることは当業者には理解できるものである。
【0167】
本発明の別の観点や
図3に示すように、バイオベース素材(ストリーム101)を水素(ストリーム104)と、担体上の触媒の存在下で反応させて処理済油(ストリーム109)を産出するための反応器135を含むバイオベース素材の処理システムが提供されることであり、バイオベース素材(ストリーム101)は再生可能であり、反応器135には反応器の温度を調整するための冷却機能が備えられ、冷却機能は内部冷却機能及び外部冷却機能の少なくとも1つである。
【0168】
様々な例では、本システムは更に、処理済油(ストリーム109)が通過するための高圧分離器(装置137)及び低圧分離器(装置138)を備える。様々な例では、反応器135は高圧分離器(装置137)と組み合わされる。例えば、反応器135は熱交換器(装置136)に連結され、熱交換器(装置136)は高圧分離器(装置137)に連結される。様々な例では、高圧分離器(装置137)は、低圧分離器(装置137)と組み合わされる。例えば、高圧分離器(装置137)を低圧分離器(装置138)と連結させる。
【0169】
様々な例では、本システムは更に、処理済油(ストリーム113)が通過するための蒸留ユニット(装置139)を備える。様々な例では、蒸留ユニット(装置139)は低圧分離器(装置138)と組み合わせる。例えば、蒸留ユニット(装置139)を低圧分離器(装置138)と連結させる。
【0170】
様々な例では、本システムは更に、グリーンディーゼル(ストリーム117)が通過するための吸着ユニット(装置140)を備える。代わりに又は追加で、本システムは更に、少なくとも1つの蒸留カラム(例えば、装置142、装置144、装置146、装置148)を備え、処理済油から少なくとも1つの成分を分離する。
【0171】
様々な例では、吸着ユニット(装置140)は蒸留ユニット(装置139)を組み合わされる。例えば、吸着ユニット(装置140)を蒸留ユニット(装置139)に連結する。
【0172】
様々な例では、少なくとも1つの蒸留カラム(例えば装置142)の1つを蒸留ユニット(装置139)と組み合わせる。例えば、蒸留カラム(装置142)を蒸留ユニット(装置139)と連結する。
【0173】
様々な例では、本システムは更に、当該少なくとも1つの成分が通過するための吸着カラム(例えば、装置143、装置145、装置147、装置149)を備える。様々な例では、吸着カラムは吸着ユニットの一部とすることができる。様々な例では、吸着カラム(例えば装置143)を蒸留カラム(例えば装置142)と組み合わせる。例えば、吸着カラム(装置143)を蒸留カラム(装置142)と連結し、吸着カラム(装置145)を蒸留カラム(装置144)と連結し、吸着カラム(装置147)を蒸留カラム(装置146)と連結し、吸着カラム(装置148)を蒸留カラム(装置148)と連結する。
【実施例】
【0174】
実施例1
酸性の多孔質固体支持体(担体)上に異なる触媒を担持させたものを用いて、得られた影響/結果を表1に示す。
【0175】
【0176】
実施例2
触媒の性能に影響を及ぼすファクターを検討し、表2に示す。
【0177】
【0178】
実施例3
本発明の方法の一例を、パームオレイン(パーム油)を供給原料とし、水素を用い、更に使用する触媒としてAl2O3上にNiMOを担持したものを用いて実施して、処理済油を調製した。反応器の温度は、30~70barの圧力で300℃~360℃に変化させ、空間速度を1.0hr-1とし、パームオレインに対する水素ガスの比を0.06g水素/g油とした。
処理済油の特性の選択例を表3に示す。
【0179】
【0180】
実施例4
本発明の他の方法の一例を実施して、処理済油を調製する方法における、例えばNiMo/Al2O3及びNiCoMo/Al2O3のような異なる触媒を用いた場合の影響を示す。反応器の温度は、圧力35バールで330℃、空間速度は1.0hr-1で、パームオレインに対する水素の比を0.06g水素/g油とした。
得られた処理済油の特性を表4に示す。
【0181】
【0182】
表4の結果より、NiCoMo/Al2O3触媒のほうが、NiMo/Al2O3触媒と比較して、得られるグリーンディーゼル中の分枝パラフィンの量が多くなることがわかる。理論によって縛られることを望むことなしに、NiCoMo/Al2O3触媒は異性化反応を起こすと考えられ、生成物の曇り点に反映されているように、直鎖パラフィン生成物が分枝パラフィン生成物に転化するものである。特に、直鎖パラフィン生成物は、分枝パラフィン生成物と同じ炭素数を有するので、分枝パラフィン生成物は、直鎖パラフィン生成物より低い融点を有する。従って、分枝パラフィンを多く含むと、得られるグリーンディーゼルの曇り点は低くなる。
【0183】
表4の結果からは、更に、NiCo/Al2O3触媒を用いて調製した産物中の分枝パラフィンの量は、NiCoMo/Al2O3触媒を用いて得られた産物の量よりも少ないことがわかり、これはNiCo/Al2O3触媒を用いて得られた処理済油がPCM産出により適切であることを意味するものである。
【0184】
更に、NiCoMo/Al2O3とNiCo/Al2O3の両触媒により得られた産出物の酸価は同様の酸価を有し、これにより、両者は同様の触媒特性(effect)を有していることがわかる。
【0185】
実施例5
本発明の方法の他の複数の例を、パームオレインを供給原料とし、水素を用い、更にAl2O3上にNiMOを担持した触媒を用いて実施して、PCMを調製するのに適切な処理済油を調製した。反応器の温度は、圧力35barで330℃、空間速度は1.0hr-1で、パームオレインに対する水素の比を0.06g水素/g油とした。
【0186】
処理済油を、望ましくない副産物やガスを除くために分離処理に課した。次いで、処理済油を、本発明の好適例による減圧蒸留塔に導入した。
【0187】
100リットルの処理済油を用いて得られたPCM産物及び副産物の容量及び組成を、表5に示す。
【0188】
【0189】
実施例6
本発明の方法の一例を、種々のバイオベース素材を供給原料とし、水素を用い、更にAl2O3上にNiMOを担持した触媒を用いて実施して、グリーンディーゼルを調製するのに適切な処理済油を調製した。反応器の温度は、圧力35barで350℃、空間速度は1.0hr-1で、バイオベース素材に対する水素の比を0.06g水素/gバイオベース素材とした。
【0190】
次のバイオベース素材を用いた:晒し(Bleached)パーム油(BPO)、パームオレイン及びパーム脂肪酸留出物(PFAD)であり、更にこれらの種々のバイオベース素材の効果(effect)を表6に示す。
【0191】
【0192】
表6の結果より、曇り点の値及び炭素数が15より少ない他の成分の量は、バイオベース素材が異なることによりわずかに変化していることがわかる。しかし、バイオベース素材による汚染物質がないと仮定すると、得られた処理済油が同様の酸価を有していることから、異なるバイオベース素材を用いることは、触媒効率(性能)に影響を及ぼすものはない。
【0193】
実施例7
本発明の方法の一例を、実施例4の処理済油を更に処理することを実施し、PCM及び工業用溶媒を産出した。NiCo/Al
2O
3を触媒として用い、
図1及び
図2に示すと同様の方法を実施した。その結果として、工業用溶媒(GTR1)及び3種のPCM(PCM#01、#02、#03)(それぞれストリーム121,124,127及び130)を産出した。
【0194】
本発明の方法から得られたPCM#01、#02、#03の特性を確認するため、実験を実施した。PCM#01、#02、#03の特性を表7に示す。重要なことに、PCM#01、#02、#03は、ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)による分析から、少なくとも99質量%の高純度で得られた。一方、市場で入手し得るPCMは約89%~約94%の純度を有する。従って、市場で入手できるPCMは、本発明により得られたPCMよりも、純度が約5%~約10%低くなる。
【0195】
更に、本発明の方法により得られた工業用溶媒(GTR1)の特性を確認するため、実験を実施した(表8)。有利なことに、当該工業用溶媒は、1ppm未満の硫黄、及びほぼ無視し得る量(分析方法を介しては検出することができない)の芳香族化合物を含むことが明らかとなった。
【0196】
【0197】
【0198】
PCM#01、#02、#03及びGTR1の構造を表9に示す。表9に示すように、GTR1は炭素数15(n-C15)のn-パラフィンであり、PCM#1は、炭素数16(n-C16)のn-パラフィンであり、PCM#02は、炭素数17(n-C17)のn-パラフィンであり、PCM#03は、炭素数18(n-C18)のn-パラフィンである。
【0199】
【0200】
実施例8
本発明の方法により得られたグリーンディーゼルの蒸留範囲を表10に示す。特に、実施例4で得られた処理済油を用い、触媒としてNiCoMo/Al2O3を用いて、当該処理済油を蒸留装置(装置139)に通過させ、次いで吸着カラム(装置140)に通過させた。表10に示すように、グリーンディーゼルの蒸留範囲は、約200℃~約350℃で、特に約260.5℃~約323.0℃である。市場で入手し得るグリーンディーゼルと比較して、本発明のグリーンディーゼルのIBPは、相対的に高い。特に、本発明のグリーンディーゼルのIBPは、約260.5℃である。一方、例えば、市場で入手できた第1のグリーンディーゼルのIBPは180℃であり、市場で入手できた第2のグリーンディーゼルのIBPは173℃である。従って、このことは、本発明のグリーンディーゼルは、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも炭素原子数が高いノーマルパラフィン(例えばn-C15~n-C18)を多く含むことを示している。
【0201】
更に、本発明のグリーンディーゼルの最終的な沸点(FBP)は、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも低いものである。特に、本発明のグリーンディーゼルのFBPは323.0℃である。一方、例えば、市場で入手できた第1のグリーンディーゼルのFBPは360℃であり、市場で入手できた第3のグリーンディーゼルのFBPは350℃である。従って、本発明のグリーンディーゼルを用いた(又は燃焼させた)場合には、発生する汚染の量は、市場で入手し得るグリーンディーゼルよりも相対的にかなり低くなる。例えば、本発明のグリーンディーゼルの燃焼により発生する微粒子はかなり少なくなる。
【0202】
更に、本発明のグリーンディーゼルは、実質的に酸素含有化合物を含まない(すなわち、酸素含有化合物が無い)。一方、市場で入手し得るグリーンディーゼルは、酸素含有化合物質を含む。酸素含有化合物を含まないことにより、本発明のグリーンディーゼルの酸化を減少させるか又は回避することができる。このように、優れた熱的酸化安定性を達成される。従って、本発明のグリーンディーゼルは、長期の耐久性(質の保持)と長期の保存性に優れるものである。例えば、本発明のグリーンディーゼルは、EN15751による35時間の酸化安定性を有している。有利なことに、例えば抗酸化物質のような添加剤は、本発明のグリーンディーゼルの貯蔵寿命を高めるために必要とはされない。
【0203】
【0204】
比較例1
本発明の工業用溶媒である、実施例7のGTR1を、一連の脂肪族系ミネラルスピリット、ShellSolTMD38(A1)、ShellSolTMD40(A2)、ShellSolTMD60(A3)、ShellSolTMD70(A4)、ShellSolTMD80(A5)、ShellSolTMD90(A6)及びShellSolTMD100(A7)と比較した(表11)。A1~A7の一連の脂肪族系ミネラルスピリットに関する情報は、シェルTM(ShellTM)によるテクニカルデータシートによるものであり、試験方法は次の方法である:米国材料試験協会(ASTM)D56をA1~A3の引火点を測定するのに用い、ASTM D93をA4~A7の引火点を測定するのに用い、ASTM D4052をA1~A7の密度を測定するのに用い、ガスクロマトグラフィー(GC)をA1~A3の芳香族含量及び硫黄含量の測定に用い、シェルメソッドシリーズ(SMS)2728をA4~A7の芳香族含量を測定するのに用い、国際標準規格(ISO)20846をA1~A7の硫黄含量を測定するのに用い、ASTM D86をA1~A7の蒸留範囲を測定するのに用いた。脂肪族ミネラルスピリットは、石油製油所の産物であり、(i)粗ナフサ(virgin naphtha)及びフルレンジ(full range)ナフサのような石油供給原料の水素化及び分別により、又は(ii)天然ガス供給原料のフィッシャー-トロプシュプロセスにより調製される。これらは、粘性が低い溶媒であって、芳香族含量は少ない。
【0205】
表11に示すように、GTR1のような本発明の工業用溶媒は、一連の脂肪族ミネラルスピリット、すなわちA1~A7と比べて多数の利点を有する。例えば、GTR1の引火点はA1~A7の引火点よりもかなり高い。製造方法及び供給原料の性質に依存して、脂肪族ミネラルスピリットは、より軽質炭化水素化合物を含有し、これにより、GTR1の印加点より、低い引火点を有することとなる。より高い引火点は、GTR1を不燃性液体とすることを可能とする。一般に、93℃以下の引火点を有する任意の液体は、可燃性液体であるとされている。
【0206】
更に、GTR1のような本発明の工業用溶媒の蒸留範囲は、当該脂肪族ミネラルスピリットの蒸留範囲と比較してかなり狭い。これは、GTR1は圧倒的に主としてn-C15を含み、さらに少量の軽質分(軽質留分)を含むからである。更に、GTR1のような本発明の工業用溶媒中の芳香族含量は、脂肪族ミネラルスピリットの芳香族含量と比較して低い(<1ppm対<200ppm)。これは、通常、石油供給原料はかなりの量の芳香族を含み、水素化ユニット(芳香族を脂肪族に転化する工程)は常に脂肪族ミネラルスピリット中の芳香族を痕跡量残すことにより生じるものである。これに対し、本発明の方法は、芳香族を含まない供給原料の利用を可能とする。これは、代替原料として、バイオベース素材を用いることができるからである。従って、所望する産物中の芳香族の存在は、本質的に含まれないこととなる。
【0207】
GTR1のような本発明の工業用溶媒の熱酸化安定性も、一連の脂肪族ミネラルスピリットを比較して優れている。GTR1の良好な熱酸化安定性は、GTR1が主としてn-パラフィンを圧倒的に多く含むからである。N-パラフィンは、脂肪族化合物と比較して酸化反応にかなりの耐性を有する。この特性は、工業用溶媒を長期間使用する場合には、最も重要な特性である。特に、工業用溶媒が、優れた熱酸化安定性を有していると、環境に対してより強靭性を有し、長期間許容し得る限界までその特性を維持又は保持することが可能となる。従って、本発明の工業用溶媒は、長期間の質の維持を可能とし、更に長期間の保存性を有するものである。
【0208】
【0209】
比較例2
最も市場で入手できる工業用溶媒は、石油ベースである。それにもかかわらず、バイオマス由来の工業用溶媒が研究され商業的に生産されてきた。かかる工業用溶媒は、スターチ、カルス、炭水化物、リグニン、テルペン及びプロテインのようなバイオマスから生成される。しかし、かかるバイオマス由来の工業用溶媒は、GTR1のような本発明の工業用溶媒が有する特性は有してない。
【0210】
バイオマス由来の工業用溶媒の例は、トリグリセリド由来の溶媒である。トリグリセリド由来の溶媒は脂肪酸メチルエステル(FAME)及びグリセロール由来の溶媒として分類できる。FAMEは、(i)トリグリセリドのエステル転移反応、又は、(ii)脂肪酸のエステル化により調製することができる。実施例7のGTR1のような、本発明の工業用溶媒と、FAMEとを比較すると、FAMEはバイオ燃料として広く使用されているが、工業用溶媒としての利用はその貧弱な特性により制限される。カルギル(Cargill)のAgri-PureTMAP-406(A8)は、植物油由来のFAMEの例である。FAMEは、低含量の芳香族と、低含量の硫黄と高い引火点を有しているが、その化学構造は、実施例7のGTR1のような工業用溶媒とは異なる。特に、FAMEはエステル官能基を有するが、GTR1のような本発明の工業用溶媒は主としてn-パラフィンを含む。従って、熱酸化安定性、粘性及び色彩等の特性が、本発明の工業用溶媒とFAMEとでは異なる。例えば、上記したように、本発明の工業用溶媒は、良好な熱酸化安定性を有し、それは主としてn-パラフィンを含むからである。
【0211】
上記したように、FAMEはトリグリセリドのエステル転移反応により調製されることができる。トリグリセリドのエステル転移反応がFAME調製に用いられる場合には、グリセロールは重要な副産物である。グリセロールは高官能基化化合物との特性を有していることから、グリセロールは多種類の溶媒に転化させることができる。特に、グリセロール中に3つの水酸基が存在することにより、3つの各水酸基がそれぞれ独立に官能基化することを可能とする。グリセロール由来の工業用溶媒の例には、トリアセチン(A9)、グリセロールホルマール(A10)、1-3プロパンジオール、1,3-ジメトキシプロパン-2-オール、1,2,3-トリメトキシプロパン、ソルケタル(Solketal)及びグリセロールカルボネート(A11)が含まれるが、これらに限定されるものではない。グリセロール由来の工業用溶媒と本発明の工業用溶媒との化学構造がかなり異なることにより、特性も適用も異なる。実施例7からのGTR1のような本発明の工業用溶媒は、カルギル(Cargill)のAgri-PureTMAP-406(A8)、トリアセチン(A9)、グリセロールホルマール(A10)及びグリセロールカルボネート(A11)と比較して異なることを示す(表12)。
【0212】
【0213】
比較例3
リグニンは、主としてフェノールポリマーを含有するバイオマスで、水素化分解又は熱分解により工業用溶媒に調製されることができる。これらのプロセスは、リグニンをフェノール化合物に転換させるものである。このように、実施例7からのGTR1のような本発明の工業用溶媒と代表的なリグニン由来の溶媒とを比較すると、リグニン由来の溶媒には、主として芳香族化合物が含まれる。従って、リグニン由来の溶媒の特性及び適用は、GTR1とはかなり異なる。
【0214】
リグニン由来の工業用溶媒の例は、リグニン熱分解油メチルエステル(LOME)である。リグニンを熱分解し、次いでメチル化することにより調製されるLOMEは、主として種々のアニソール及びベラトロールを含有する。
【0215】
更に、複素環アセタールをリグニンから調製することができる。これは、リグニン由来の産物としては唯一、芳香族化合物でない産物である。リグニンから調製される複素環アセタールの例には1,3-ジオキシラン(dioxilane)がある、
【0216】
リグニン由来の工業用溶媒と本発明の工業用溶媒の化学構造がかなり異なることにより、特性及び適用が異なる。実施例7からのGTR1のような本発明の工業用溶媒は、LOME(A12)及び1,3-ジオキシラン(A13)と比較して、異なることを示す(表13)。
【0217】
【0218】
本明細書に開示された内容から、更なる変更や改良は、本発明の思想を逸脱しない限り、当業者には明らかなように、本発明の範囲に含まれるものとみなされることが理解できる。
【0219】
更に、1以上の実施形態の特徴を、更なる実施形態を形成するように組み合わせてもよいものである。