(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】クラウド間のレプリケーションのための方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/18 20090101AFI20240520BHJP
H04W 8/06 20090101ALI20240520BHJP
H04W 8/20 20090101ALI20240520BHJP
H04W 28/084 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
H04W36/18
H04W8/06
H04W8/20
H04W28/084
(21)【出願番号】P 2023171340
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0232429(US,A1)
【文献】国際公開第2020/166461(WO,A1)
【文献】特表2022-535933(JP,A)
【文献】特表2023-507782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムで実施される方法であって、
端末装置からの第1のセッション確立要求信号の受信に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと、
前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始すること、
前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションすることと、
を含み、前記レプリケーションは、前記端末装置の在圏するエンティティが前記端末装置の移動により変更する前に行われ、前記レプリケーションすることは、ポリシー制御ルールに従って、前記端末装置が在圏するエンティティに関連付けられる前記第1のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第1のクラウド以外の
前記システム内のすべてのクラウドへコピーすることを含む、方法。
【請求項2】
前記第2のクラウドは、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する前記第1のノードとは別の第2のノードに接続される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記ポリシー制御ルールを、前記第1のクラウドおよび前記第2のクラウドを含む
前記システム内のすべてのクラウドにそれぞれ接続される、ノードの各々に送信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記端末装置からの前記第1のセッション確立要求信号は、前記端末装置に割り当てられた加入者識別番号を含み、
前記ポリシー制御ルールは、前記加入者識別番号に対応するポリシー制御ルールを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリシー制御ルールは、
端末装置からのセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置が在圏するエンティティに関連付けられるクラウドに対し、別のクラウドへレプリケーション指示をすることを規定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記端末装置の移動により、前記端末装置が在圏するエンティティが変更すると、
前記端末装置からの第2のセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置の移動後に在圏する第2のエンティティと通信する第2のノードに関連付けられる前記第2のクラウドの識別子を特定することをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
特定された前記第2のクラウドと前記端末装置との間で通信することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリシー制御ルールに従って、前記端末装置が移動後に在圏するエンティティに関連付けられる前記第2のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第2のクラウド以外の
前記システム内のすべてのクラウドへコピーすることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記エンティティは、基地局であり、前記端末装置は、異なるノードに対応する前記基地局間を移動する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記エンティティは、モビリティ管理ノードであり、前記端末装置は、異なるノードに対応するモビリティ管理ノード間を移動する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
システムであって、前記システムは、セッション管理ノードを備え、
前記セッション管理ノードは、
端末装置からの第1のセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと、
前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始することと、
を実行するように構成され、
前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションし、前記レプリケーションは、ポリシー制御ルールに従って、前記端末装置が在圏するエンティティに関連付けられる前記第1のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第1のクラウド以外の
前記システム内のすべてのクラウドへコピーすることを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラウド間のレプリケーションための方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC:Multi-access Edge Computing)が5G通信において用いられている。MECは、モバイル通信ネットワークのエッジ(端末)近くにサーバやストレージなどのコンピューティングリソースを配置し、独自ネットワーク内で通信を行うことで、データ処理のリアルタイム性を高める技術である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP TS23.501 V16.6.0 (2020-10) "5G; System architecture for the 5G System (5GS) (3GPP TS 23.501 version 16.6.0 Release 16)"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の5.6.7.2 "Enhancement of UP path management based on the coordination with Afs"にはMECの動作概要が示される。5G MECの構造において、端末装置が移動すると、接続しているネットワークに応じて、接続時に割り当てられるDNN(Data Network Name)が変更されることがある。端末装置の移動により、DNNが変更されると、移動元のDNNに関連付けられるクラウドで利用するアプリケーションデータを、移動先のDNNに関連付けられるクラウドへレプリケーションしている。クラウドのレプリケーションにより、アプリケーションデータが移動先のクラウドにレプリケーションされると、端末装置は移動先のクラウドを利用してクラウドサービスを利用することができる。しかしながら、従来、クラウド間のレプリケーションの具体的なルートやPCC(Policy and Charging Control)が明確化されていなかった。また、クラウドのアプリケーションデータのレプリケーション完了前に、端末装置が移動してしまうと、移動先でクラウド・アプリケーションが使えないことがあった。
【0005】
本発明の目的は、クラウド間のレプリケーションをすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様はシステムで実施される方法であって、端末装置からの第1のセッション確立要求信号の受信に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと、前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始することと、前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションすることと、を含み、前記レプリケーションは、前記端末装置の在圏するエンティティが前記端末装置の移動により変更する前に行われる、点にある。
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様は、システムであって、前記システムは、セッション管理ノードを備え、前記セッション管理ノードは、端末装置からの第1のセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと、特定された前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始することとを実行するように構成され、前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションする、点にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による、クラウドのアプリケーションデータやリソースをレプリケーションするためのシステムの概略図を例示する。
【
図2】本開示の一実施形態による、システムにおいてクラウド間のアプリケーションデータやリソースのレプリケーションする処理の概要を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、端末装置が移動する前に、クラウド上で端末装置が利用するクラウドのアプリケーションデータやリソースをレプリケーションするための処理300のフローを示す。
【
図4】本開示の一実施形態による、AMFの記憶部に登録される在圏情報のデータ構造の例を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、SMFの記憶部に登録されるSMF装置情報のデータ構造の例を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による、端末装置が移動したときの、クラウド間のレプリケーションをリアルタイムで行う処理の概要を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、端末装置が移動したときの、クラウド間のレプリケーションをリアルタイムで行う処理のフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態は、以下のような構成を備える。
【0010】
〔構成1〕
上記目的を達成するための方法の特徴構成は、システム(100)で実施される方法であって、端末装置(102)からの第1のセッション確立要求信号の受信に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノード130(#UPF_1)に関連付けられる第1のクラウド150(#DNN_1)を特定することと(S3)、前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始することと(S9)、前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウド150(#DNN_2)へ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションすることと(S10)、を含み、前記レプリケーションは、前記端末装置の在圏するエンティティが前記端末装置の移動により変更する前に行われる、点にある。
【0011】
〔構成2〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記第2のクラウドは、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する前記第1のノードとは別の第2のノード(#UPF_2)に接続される点にある。
【0012】
〔構成3〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記方法は、ポリシー制御ルールを、前記第1のクラウドおよび前記第2のクラウドを含むすべてのクラウド(#DNN_1から#DNN_N)のそれぞれ接続されるノード(#UPF_1から#UPF_N)の各々に送信(S4)することをさらに含む、点にある。
【0013】
〔構成4〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記端末装置からの前記第1のセッション確立要求信号は、前記端末装置に割り当てられた加入者識別番号を含み、前記ポリシー制御ルールは、前記加入者識別番号に対応するポリシー制御ルールを含む、点にある。
【0014】
〔構成5〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記ポリシー制御ルールは、端末装置からのセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置が在圏するエンティティに関連付けられるクラウドに対し、別のクラウドへレプリケーション指示をすることを規定する、点にある。
【0015】
〔構成6〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記レプリケーションすることは、前記ポリシー制御ルールに従って、前記端末装置が在圏するエンティティに関連付けられる前記第1のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第1のクラウド以外のすべてのクラウドへコピーすること(S11)を含む、点にある。
【0016】
〔構成7〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記方法は、前記端末装置の移動により、前記端末装置が在圏するエンティティが変更すると(S12)、前記端末装置からの第2のセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置の移動後に在圏する第2のエンティティと通信する第2のノード(UPF_2)に関連付けられる前記第2のクラウドの識別子を特定すること(S14)をさらに含む、点にある。
【0017】
〔構成8〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記方法は、前記第2のクラウドと前記端末装置との間で通信すること(S16)をさらに含む、点にある。
【0018】
〔構成9〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記ポリシー制御ルールに従って、前記端末装置が移動後に在圏するエンティティに関連付けられる前記第2のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第2のクラウド以外のすべてのクラウドへコピーすること(S17)を含む、点にある。
【0019】
〔構成10〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記エンティティは、基地局であり、前記端末装置は、異なるノードに対応する前記基地局間を移動する、点にある。
【0020】
〔構成11〕
本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記エンティティは、モビリティ管理ノードであり、前記端末装置は、異なるノードに対応するモビリティ管理ノード間を移動する、点にある。
【0021】
〔構成12〕
上記目的を達成するためのシステムの特徴構成は、システムであって、前記システムは、セッション管理ノードを備え、前記セッション管理ノードは、端末装置からの第1のセッション確立要求信号に応じて、前記端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと(S3)、前記第1のクラウドと前記端末装置との通信を開始することと(S9)を実行するように構成され、前記端末装置が通信中の前記第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションする(S10)、点にある。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が本開示に含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さないものとする。
【0023】
図1は、本開示の一実施形態による、クラウド150のアプリケーションデータやリソースをレプリケーションするためのシステム100の概略図を例示する。本開示において、レプリケーションとは、クラウド・アプリケーションのデータ等の冗長性を確保するために、端末装置102で利用中のクラウド150のアプリケーションデータ等を別のクラウドにコピーすることをいう。システム100は、クラウドベースのモバイルコンピューティング環境内で提供される。システム100では、端末装置102は移動して異なるクラウド150の配下に移動しても、移動先で継続して利用中のクラウド・アプリケーションを使うことができる。
【0024】
システム100に示される各エンティティは、システム100で提供される主な機能、例えば、モビリティ管理機能、セッション管理機能、ポリシー制御機能、加入者プロファイル管理機能、ユーザプレーン機能を実装するネットワーク要素を含む。図示されるネットワーク要素の他に、他のネットワーク要素が、システム100の主要機能の一部または全部を実装するために使用されてもよい。また、図示されるネットワーク要素の他に、他のネットワーク要素を含んでもよい。
【0025】
本実施形態において、システム100は、第5世代(5th Generation, 5G)の規格に準拠したシステムであるが、この例に限定されない。システム100は、第4世代(4th Generation,4G)、第6世代(6th Generation,6G)などの他の通信規格に準拠することができる。以下、システム100が5Gの規格に準拠するものとして説明する。
【0026】
以下において、
図1に示すシステム100を構成する各エンティティについて説明をする。5GC(5Gのコアネットワーク)では、ネットワークの様々な機能を役割ごとにNF(Network Function)として規定している。
図1において、複数の機能エンティティであるNF120(Network Function)が示される。
【0027】
NF120の例として、
図1に示すAMF(Access and Mobility Management Function)122、SMF(Session Management Function)124、PCF(Policy Control Function)126、UDR(Unified Data Repository)128、UPF(User Plane Function)130が挙げられる。NF120の他の例として、UDM(Unified Data Management)(不図示)がある。これらのNF120は、論理通信バスに接続され、さらにNEF(Network Exposure Function)140に接続される。NEF140はさらにクラウド150と通信可能に接続される。本開示において、これらのNF120を、コアネットワーク内の各種装置と称することがある。
【0028】
本例において、AMF122はモビリティ管理ノードと称することがある。AMF122は、登録管理(Registration management)機能、接続管理(Connection management)機能、及び、端末装置102の移動性管理(Mobility management)機能等を有する。AMF122は複数あってもよい。AMF122は、端末装置102の在圏情報400を記憶部に記憶する。在圏情報400の詳細は
図4を用いて後述する。
【0029】
AMF122配下には1以上の基地局(BS)104で構成されるRAN110が存在する。RAN110は、アンテナや基地局104(5Gでは「gNB」)などで構成される無線アクセスネットワークである。第1の基地局群(#BS_11から#BS_1N)は、第1のUPF130(#UPF_1)に接続し、第2の基地局群(#BS_21から#BS_2N)は第2のUPF130(#UPF_2)に接続し、第Nの基地局群(#BS_N1から#BS_NN)は第NのUPF130(#UPF_N)に接続することができる(Nは任意の整数)。以下、第1のUPF130、第2のUPF130、第NのUPF130を区別する必要のない場合、単にUPF130と記載することがある。
図1中の各装置の#に続く文字および数字は、各装置に割り当てられる識別子の例を示す。
【0030】
本例において、SMF124はセッション管理ノードと称することがある。SMF124は、ユーザのデータセッションの管理や制御を行う。例えば、データセッションの確立、維持、解放などを行う。SMF124は、PCF126と、1以上のAMF122(図示例では1)と接続することができる。SMF124は、SMF装置情報500を記憶部に記憶する。SMF装置情報500の詳細は
図5を用いて後述する。
【0031】
本例において、PCF126は、ポリシー制御ノードと称することがある。PCF126は、ポリシー制御機能を提供し、例えば、ネットワークリソースの割り当て、品質の制御、セキュリティポリシーの適用など、ネットワーク上の各種ポリシーの管理を行う。
【0032】
本例において、UDR128は、加入者データ管理ノードと称することがある。UDR128は、加入者のデータベースや状態を登録する。
【0033】
本例において、UPF130は、ユーザプレーン機能ノードと称することがある。UPF130は、ユーザデータの転送を行うコンポーネントである。ユーザが送信または受信するデータの転送を処理し、低遅延および高帯域幅の通信をサポートする。SMF124配下には複数のUPF130が接続される。
図1の例において、第1のUPF130には識別子#UPF_1、第2のUPF130には識別子#UPF_2、・・・第NのUPF130には#UPF_Nが割り当てらる。各UPF130同士はフルメッシュで接続される。UPF130はそれぞれ物理的に近いクラウド150との接続を可能にし、クラウド・アプリケーションからのデータを端末装置102に転送することができる。UPF130は、端末装置102が在圏するエンティティ(基地局104、AMF122)と関連付けられる。移動により端末装置102が在圏するエンティティが変更されると、端末装置102は異なるUPF130と関連付けられる。
【0034】
NEF(Network Exposure Function)140は、3GPPのネットワーク機能(NF120)によって提供されるサービス、能力などを外部(クラウド150)に安全に開放するために使用される。NEF140は、API提供装置と称することがある。5GC(5Gのコアネットワーク)では、ユーザの移動を検知したり、必要な速度や遅延時間などの品質を確保するデータ転送パスの設定や開放を制御したりするための制御用NFの多くをAPI(Application Programming Interface)を介して外部から利用できるようにしている。NEF140(Network Exposure Function)は、このAPIを提供する。NEF140は、能力およびイベントの公開、外部アプリケーションから3GPPネットワークへの情報のセキュアな提供、および内部/外部情報の変換をサポートする。クラウド150側からNEF140にアクセスすると、NEF140経由で、制御用NF120を制御することができる。
【0035】
クラウド150は、ユーザに対しインターネットなどのネットワーク越しにサーバ、ストレージなどのITリソースやアプリケーションを提供する。クラウド150を使用することで、システム100は、様々なアプリケーションに対応することができる。モバイル通信ネットワークを介してクラウド・アプリケーションへのデータトラフィックを識別するために、データネットワーク名(DNN:Data network Name)が使用される。クラウド150ごとに異なるDNNが割り当てられる。
図1の例において、第1のクラウド150には識別子#DNN_1、第2のクラウド150には識別子#DNN_2、・・・第Nのクラウド150には識別子#DNN_Nが割り当てられるものとする。以下、第1のクラウド150、第2のクラウド150、第Nのクラウド150を区別する必要のない場合、単にクラウド150と記載することがある。また、UPF識別子とクラウド識別子は1対1で対応付けられる。クラウド150間は、UPF130経由で相互に通信可能に構成することができるものとする。
【0036】
クラウド150は、端末装置102の加入者識別番号ごとのポリシー課金制御(PCC:Policy and Charging Control)ルールを実装する。ポリシー制御は、通信サービスを利用するユーザに対するサービス品質の設定やネットワーク上の制御を行う。例えば、ポリシー制御は、特定のクラウド・アプリケーションへの帯域幅の制限、優先度の設定、セキュリティポリシーの適用などを含む。また、課金制御は、通信サービスの利用に対する課金情報の収集および制御を行う。
【0037】
複数のNF120、NEF140、クラウド150は、それぞれ1以上の情報処理装置で実装されてもよい。別の例において、複数のNF120、NEF140、クラウド150は、仮想化技術によって汎用的なサーバ上でソフトウェアとして実装されてもよい。
【0038】
情報処理装置は、制御部と、記憶部と、通信部などのハードウェア資源を有する。制御部は、例えば、CPU(プロセッサ)などの演算手段によって実現される。制御部、記憶部、通信部はバスを介して接続される。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などである。記憶部の具体例は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等である。情報処理装置の制御部は、情報処理装置全体の動作・機能を制御する機能部である。情報処理装置の制御部は、必要に応じて記憶部に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより、情報処理装置における各種処理を実現する。
【0039】
端末装置102は、携帯通信事業者の加入者であるユーザが使用する端末であり、ユーザによる各種入力操作を受け付けする。端末装置102は、SIM(Subscriber Identity Module)を搭載しており、例えば、スマートフォンなどの携帯端末、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ(いわゆる、ノートパソコン)などとして実現される。
【0040】
端末装置102は、制御部、記憶部、送受信部、アンテナ、およびSIM(Subscriber Identity Module)、入出力部などのハードウェア資源を有する。制御部、記憶部、送受信部、入出力部、およびSIMはバスを介して接続される。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などである。記憶部の具体例は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等である。端末装置102の制御部は、端末装置102全体の動作・機能を制御する機能部である。制御部は、必要に応じて記憶部に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより、端末装置102における各種処理を実現する。送受信部は、アンテナを介して、アクセスネットワーク内の基地局装置と無線通信するための機能部である。入出力部は、ユーザが端末装置102へ情報を入力するためのインターフェース(タッチスクリーンディスプレイ上のソフトウェアボタン、物理ボタンなど)、端末装置102からの情報を出力するためのインターフェース(タッチスクリーンディスプレイ、スピーカなど)を提供する。
【0041】
端末装置102に搭載されるSIMには、携帯通信事業者と契約するユーザの契約プロファイルが格納されている。SIMの契約プロファイルには、ユーザの加入者情報が格納され、端末装置の回線契約に割り当てられる加入者識別番号(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)、加入者であるユーザの電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber International Subscriber Directory Number)、SIMカード番号(ICCID:Integrated Circuit Card Identifier)といった個別の識別子情報が含まれる。
【0042】
<第1実施形態>
以下、
図1を参照して、クラウド150のポリシーおよび課金制御(PCC)ルールを、SMF124配下のUPF130へコピーする処理の概要を説明する。その後、
図2を参照して、PCCルールをコピー後にクラウドのレプリケーションをする処理の概要を説明する。PCCルールは、モバイル通信ネットワークにおけるポリシー管理、トラフィック管理、セッション管理等を規定する。本開示においてPCCルールは、レプリケーションのルールや、PCCルールのダウンロード方法を規定することができる。
図1、および
図2に示す一連の処理は、端末装置102が異なるUPF130に接続されるエンティティ(本例では、基地局104)間を移動する前に実施される。
図1および
図2において、点線矢印は処理の流れを示す。
【0043】
図1は、システム100において、クラウド150に設定されているPCCルールをUPF126、SMF124へ登録する処理、および、端末装置102がセッション確立要求信号を基地局104に送信してから、PCCルールをSMF124配下のUPF130へコピーし、端末装置102がクラウド150と通信開始するまでの処理の概要を示す。クラウド150は、それぞれ、携帯通信事業者の全ての加入者の加入者識別番号に対応するPCCルールを設定している。
【0044】
図1のS1において、携帯通信事業者の全ての加入者の加入者識別番号に対応するPCCルールが、クラウド150から、NEF140、UDR128を介して、PCF126と、SMF124に送信され、SMF124に登録される。PCCルールはPCF124に登録されてもよい。
【0045】
次に、S2において、端末装置102は、セッション確立要求信号を基地局104、AMF122を介して、SMF124へ送信する。
【0046】
次に、S3において、SMF124は、セッション確立要求信号の取得に応じて、登録されたPCCルールから、端末装置102の加入者識別番号に関連付けられるPCCルールを読み出する。また、SMF124は、端末装置102に関連付けられるUPF130の識別子(例えば#UPF_1)を特定する。「#UPF_1」は、端末装置102に物理的に近くに配置されているUPF130である。
【0047】
次に、S4において、SMF124は、SMF124配下にあり、各クラウド150(#DNN_1、#DNN_2、および#DNN_3)に接続されている全てのUPF130(#UPF_1、#UPF_2、および#UPF_3)へ読み出した端末装置102のPCCルールを送信する。
【0048】
次に、S5において、SMF124配下のクラウド150に接続されている全てのUPF130は、それぞれ受信したPCCルールを登録する。また、PCCルールを登録すると、各UPF130は、PCCルールの登録が完了した旨を示す肯定応答をSMF124へ送信する。
【0049】
次に、各UPF130から肯定応答を受信すると、S6において、SMF124はS3にて特定されたUPF130(#UPF_1)と関連付けられるクラウド150(本例では「#DNN_1」)へレプリケーション指示を送信する。クラウド150(#DNN_1)は、在圏するエンティティと接続される特定されたUPF130に、物理的に近い位置にあるクラウドとすることができる。
【0050】
S7において、特定されたUPF130と関連するクラウド150(本例では「#DNN_1」)は、レプリケーション指示を受領した旨を示す肯定応答をSMF124に送信する。
【0051】
次に、SMF124は、特定されたUPF130と関連するクラウド150から肯定応答を受信すると、S8において、通信開始指示を端末装置102へ送信する。
【0052】
通信開始指示を受信すると、S9において、端末装置102は、特定されたUPF130(本例では#UPF_1)と通信可能で、端末装置102の物理的に近いクラウド150との通信を開始することができる。
【0053】
従来は、端末装置102が移動したことをSMF124が判断した後に、SMF124はPCCルールをUPF130へ送信していた。本開示によると、端末装置102の移動前に、端末装置102からのセッション確立要求に従って、PCCルールを、SMF124、およびSMF124配下の全てのUPF130へ登録することができる。本開示によると、例えば、端末装置102が物理的に近い第1のクラウド150の提供するクラウド・アプリケーションと通信開始する前に、予め、端末装置102からのセッション確立要求信号に応じて、PCCルールを、SMF124配下のUPF130へ登録することができる。
【0054】
図2は、本開示の一実施形態による、システム100’においてクラウド間のアプリケーションデータやリソースのレプリケーションする処理の概要を示す図である。
図2は、
図1に続く処理を示す。各処理の番号は
図1に続く連番となっている。
図1に示すシステム100と、
図2に示すシステム100’とはネットワーク構成は同じであり、各要素の重複する説明は繰り返さない。以下、
図2を参照して、端末装置102の移動前に、通信中のクラウドとは別のクラウドに、データのレプリケーションをする処理の概要を説明する。
【0055】
図2のS10において、端末装置102と通信中のクラウド150(本例では「#DNN_1」)においてレプリケーションのためのデータやリソースを読み出しし、レプリケーション・データとして作成する。レプリケーションのためのデータやリソースは、ユーザが端末装置102を介してクラウド150で利用中の各種データやリソースである。レプリケーションのためのデータやリソースは、例えば、端末装置102がクラウド150においてユーザが利用中の各種ドキュメント、メール、スケジュール、ソーシャルメディアデータ、画像やビデオなどの各種データを含むことができる。
【0056】
次に、S11において、端末装置102と通信中の第1のクラウド150(#DNN_1)から、作成したレプリケーション・データを他の全てのクラウド150(「#DNN_2」から「#DNN_N」)に、UPF130(#UPF_1)を介して送信し、レプリケーションを行う。具体的には、すべてのクラウドにそれぞれ接続されるUPF130が受信したポリシー制御ルールに従って、端末装置が在圏するエンティティに関連付けられる第1のクラウドからのクラウド・アプリケーションデータを、前記第1のクラウド以外のすべてのクラウドへコピーする。これにより、全てのクラウド150でデータやリソースが共有される。端末装置102が、異なるクラウド150間(UPF130間)に移動しても、端末装置102は、別のクラウド150を利用して、クラウド・アプリケーションを継続して利用することができる。
【0057】
従来は、クラウド間のレプリケーションの具体的なルートが明確化されていなかった。本開示によると、クラウド間のレプリケーションの具体的なルートが示される。
【0058】
また、従来は、端末装置102の移動を検出すると、移動の検出後にクラウド・アプリケーションのレプリケーションを行っていた。このため、端末装置102の移動中にクラウド・アプリケーションが完了しないとき、クラウド・アプリケーションを継続利用できないことがあった。本開示によると、端末装置102の移動の前に、端末装置102がセッション確立要求をおこない、通信を開始したことを契機として、端末装置102と通信中のクラウド150のアプリケーションデータを、他の全てのクラウド150にレプリケーションをする。このため、端末装置102が移動しても、端末装置102はクラウド・アプリケーションを継続利用できる。
【0059】
図3は、本開示の一実施形態による、端末装置102が移動する前に、クラウド上で端末装置102が利用するクラウドのアプリケーションデータやリソースをレプリケーションするための処理300のフローを示す。
図3は、
図1、
図2に示した処理の詳細を示す。
図3のステップS302からステップS320は、
図1のS1からS9に対応し、
図3のステップS322からステップS326は、
図2のS10、S11に対応する。
【0060】
まず、ステップS302(
図1の「S1」に相当)において、全ての加入者識別番号にそれぞれ対応するPCCルールを任意のクラウド150(#DNN_1から#DNN_Nのいずれか)から、NEF140、UDR128を介して、PCF126(Policy Control Function)へ送信される。さらに、PCCルールはPCF126からSMF124へ送信される。
【0061】
全てのクラウド150(#DNN_1から#DNN_N)は共通のPCCルールを登録する。このためいずれかのクラウド150に登録されているPCCルールが、SMF124、PCF126へ送信されればよく、本例においてはクラウド150_N(#DNN_N)のPCCルールが送信される。端末装置102がどのクラウド150の配下に在圏するかわからないため、どのクラウド150からもPCCルールを登録できる。
【0062】
PCCルールは、端末装置102の加入者識別番号ごとに設定することができる。本開示において、PCCルールは、モバイルネットワーク環境において、端末装置102がセッション確立要求したことを契機に、端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられるクラウド150に対し、別のクラウドへクラウド・アプリケーションのデータやリソースのレプリケーション指示をすることを規定することができる。
【0063】
従来は、クラウド間のレプリケーションを行う際の、PCCルールが明確に規定されていなかった。本開示によると、クラウド間のレプリケーションを行う際の、PCCルールが明確化されている。
【0064】
次に、ステップS304において、PCF126、SMF124は任意のクラウド150から受信したPCCルールをそれぞれ記憶部に登録する。
【0065】
次に、ステップS306(
図1の「S2」に相当)において、端末装置102は、クラウド・アプリケーションへアクセスする際に、セッション確立要求信号を基地局104、AMF122を介してSMF124へ送信される。AMF122からSMF124へ送信されるセッション確立要求信号は、端末装置102の加入者識別番号と、端末装置102が在圏するエンティティ(本例では基地局104)に割り当てられる識別子(本例では#BS_11)とを含むことができる。
【0066】
さらに、ステップS306において、AMF122は、端末装置102から基地局104を介して受信したセッション確立要求信号に応じて、端末装置102が在圏するエンティティに割り当てられる識別子(本例では#BS_11)を特定する。AMF122は、記憶部に格納されている在圏情報400を参照し、端末装置102の在圏エンティティ(#BS_11)に対応付けられるUPF130に割り当てられる識別子(本例では#UPF_1)を特定する。
【0067】
図4は、本開示の一実施形態による、AMF122の記憶部に登録される在圏情報400のデータ構造の例を示す。在圏情報400は、配下の全ての基地局104の識別子(BS_11からBS_NN)の項目と、各基地局104に関連付けられるUPF130に割り当てられる識別子(#UPF_1から#UPF_N)の項目とを含む。在圏情報400では、各在圏エンティティと物理的に近いUPF130が予め対応付けられている。在圏情報400により、AMF122は、基地局104がどのUPF130に関連付けられているかを把握できる。各基地局104の識別子には1のUPF130の識別子が割り当てられる。また、1のUPF130の識別子に1以上の基地局104の識別子を割り当てることができる。
【0068】
次に、ステップS308(
図1の「S3」に相当)において、AMF122からのセッション確立要求信号に応じて、SMF124は記憶部に格納されているSMF装置情報500を参照し、特定されたUPF130に割り当てられる識別子(本例では#UPF_1)に関連付けられるクラウド識別子(#DNN_1)を特定する。端末装置102は、PCCルール登録後に、特定されたクラウド識別子に対応するクラウド150のリソースを利用できる。
【0069】
図5は、本開示の一実施形態による、SMF124の記憶部に登録されるSMF装置情報500のデータ構造の例を示す。SMF装置情報500は、SMF124が接続する全てのUPF130の識別子(#UPF_1から#UPF_N)の項目と、各UPFに関連付けられるクラウド150に割り当てられる識別子(#DNN_1から#DNN_N)の項目とを含む。SMF装置情報500により、SMF124は、UPF130がどのクラウド150に関連付けられているかを把握できる。端末装置102は、クラウド識別子を利用して、クラウド・アプリケーションに接続し、クラウド150内のリソースを利用することができる。
【0070】
次に、ステップS310(
図1の「S4」に相当)において、SMF124は、クラウド150に接続される全てのUPF130(#UPF_1から#UPF_N)へ、端末装置102の加入者識別番号に関連付けられるPCCルールを一斉に送信する。
図3に示すように、ステップS310において、SMF124は、PCCルールを各UPF(#UPF_1から#UPF_N)へ同時に送信することができる。
【0071】
次に、ステップS312(
図1の「S5」に相当)において、各UPF130(#UPF_1から#UPF_N)は、受信したPCCルールをそれぞれの記憶部に格納する。その後、各UPF130(#UPF_1から#UPF_N)はPCCルールの登録が完了した旨の通知をSMF124へ送信する。端末装置102がクラウド150(#DNN_1)と通信を開始する前に事前に、端末装置102のPCCルールが全てのUPF130へ登録される。なお、
図1において、他のUPF130(識別子#UPF_2から#UPF_N-2)に対するステップS310、ステップS312の処理は第1のUPF130(識別子#UPF_1)に対する処理と同じであるので説明を省略する。
【0072】
次に、PCCルールの登録完了通知を受信すると、SMF124は、ステップS314(
図1の「S6」に相当)において、端末装置102の加入者識別番号に関連付けられるPCCルールを適用する。PCCルールは、端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられる第1のクラウド(#DNN_1)に対し、他のクラウドへレプリケーション指示をすることが規定されている。PCCルールに従って、SMF124は、PCF126、UDR128,NEF140を介して、端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられる第1のクラウド150(#DNN_1)に対し、他のクラウド150(#DNN_2から#DNN_N)へレプリケーションする指示を送信する。
【0073】
従来は、端末装置102の移動をSMF124において検知した後に、SMF124は端末装置が別のUPFに移動したことを通信対象の移動前のクラウドへ通知していた。この通知に応じて、移動前のクラウドと、移動先のクラウドとのレプリケーションを行っていた。しかし、レプリケーションが完了する前に端末装置102がUPF間を移動すると、端末装置102は移動先のクラウドとの通信ができないことがあった。本開示によると、通信中のクラウドに対し端末装置の移動を通知するのではなく、端末装置102の移動前に、端末装置102からのセッション確立要求信号を受信したことを契機に、SMF124が、通信対象のクラウドを特定し、特定されたクラウド、つまり端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられるクラウド(#DNN_1)に対して他のクラウドへのレプリケーション指示を送信する。
【0074】
次に、ステップS316(
図1の「S7」に相当)において、クラウド150(#DNN_1)は、クラスタレプリケーション指示を受領した旨の肯定応答を、NEF140、UDR128、PCF126を介してSMF124へ送信する。
【0075】
次に、ステップS318(
図1の「S8」に相当)において、SMF124は、通信開始指示を、AMF122、基地局104を介して、端末装置102へ送信する。
【0076】
通信開始指示を受領すると、ステップS320(
図1の「S9」に相当)において、端末装置102は、端末装置102が在圏するエンティティ(本例では#BS_11)に関連付けられるUPF130(#UPF_1)を介して第1のクラウド150(#DNN_1)と通信を開始する。
【0077】
次に、ステップS322(
図2の「S10」に相当)において、第1のクラウド150は、端末装置102との通信開始を契機に、第1のクラウド150の記憶部から利用中のクラウド・アプリケーションデータを読み出しし、レプリケーション・データとして作成し、これとともに、レプリケーション開始指示をUPF130へ送信する。
【0078】
次に、ステップS324(
図2の「S11」に相当)において、UPF130は第1のクラウド150(#DNN_1)からレプリケーション開始指示を受信すると、UPF130はPCCルールを読み出しし、PCCルールに従って、端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられる第1のクラウド150(#DNN_1)と他の全てのクラウド150(#DNN_2~#DNN_N)と間で、レプリケーション・データを複製する。例えば、図示するように、第1のクラウド150は、レプリケーション・データを、第1のUPF130と、第2のUPF130とを介して第2のクラウド150(#DNN_2)に送信し、第2のクラウドは受信したレプリケーション・データをコピーする。あるいは、第1のクラウド150は、レプリケーション・データを、第2のUPF130と、第NのUPF130とを介して、第Nのクラウド150(#DNN_N)に送信し、第Nのクラウドは受信したレプリケーション・データをコピーする。
【0079】
次に、ステップS326において、他の全てのクラウド150はそれぞれ受信したレプリケーション・データを記憶部にそれぞれ保持する。
【0080】
以上、クラウド150において、端末装置102が利用中のデータやリソースは、各第1のクラウド150(#DNN_1)に関連付けられたUPF130(#UPF_1)を経由して、他の各クラウド150(#DNN_2から#DNN_N)に送信され、コピーされる。レプリケーションが終了すると、他のクラウド150(#DNN_2から#DNN_N)は、完了通知を、送信元の第1のクラウド150(#DNN_1)に送信する。
【0081】
従来は、SMF124が端末装置102のUPF130間移動を検知すると、クラウド・アプリケーションのデータやリソースのレプリケーションを行っていた。このため、レプリケーション完了前に、端末装置102が移動後のUPF130と通信すると、端末装置102は、アプリケーションの利用を継続できないことがあった。本開示によると、端末装置102の移動前に、端末装置102からのセッション確立要求信号が送出されたことを契機に、クラウドのレプリケーションを行う。
【0082】
図6は、本開示の一実施形態による、システム100’’における端末装置102が移動したときの、クラウド間のレプリケーションをリアルタイムで行う処理の概要を示す図である。
図6は、
図2に続く処理を示し、各処理の番号は
図2に続く連番となっている。
図1に示すシステム100と、
図2に示すシステム100’と、
図3に示すシステム100’’はネットワーク構成が同じであり、各要素の重複する説明は繰り返さない。本例において、端末装置102は同じAMF配下の基地局間を移動するものとする。
【0083】
S12において、端末装置102が、第1のUPF130(#UPF_1)から第2のUPF130(#UPF_2)へ移動する。
【0084】
次に、S13において、端末装置102は、移動後の位置に最も近い基地局104(#BS_21)と、この基地局に接続されるAMF122とを介して、セッション確立要求信号をSMF124へ送信する。
【0085】
次に、S14において、SMF124は、セッション確率要求信号の取得に応じて、端末装置102の加入者識別番号に関連付けられるPCCルールを読み出しする。また、SMF12は、移動後に端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられるUPF130識別子(#UPF_2)を特定する。
【0086】
次に、S15において、SMF124は肯定応答を端末装置102へ送信する。
【0087】
次に、S16において、端末装置102は移動後の通信対象となる第2のクラウド150へ第1のクラウド150から通信切り替えする。
【0088】
次に、S17において、第2のクラウド150は、クラウド・アプリケーションに係るデータを、他のクラウド150へリアルタイムで送信し、クラウド・アプリケーションデータを更新する。更新により、全てのクラウド150はクラウド・アプリケーションデータをリアルタイムで共有する。また、全てのUPF130は端末装置102について共通のPCCルールを有する。したがって、端末装置102は、どのクラウド150(#DNN_1から#DNN_N)の配下に移動しても、UPF130の保持するPCCルールを適用して、端末装置102の移動前に関連付けられるクラウド150(#DNN_1)のアプリケーションの継続利用をすることができる。
【0089】
図7は、本開示の一実施形態による、端末装置102が移動したときの、クラウド間のレプリケーションをリアルタイムで行う処理700のフローを示す。以下、
図7を用いて、
図6に示した処理の詳細を説明する。
図7のステップS704からステップS708は、
図6のS12からS14に対応し、
図7のステップS712は、
図6のS15に対応する。
【0090】
まず、ステップS702に示すように、端末装置102の移動前は、端末装置102はUPF150_1(#UPF_1)を介して第1のクラウド150(#DNN_1)と通信している。
【0091】
次に、ステップS704(
図6の「S12」に相当)において、端末装置102は、UPF130間を移動する。本例においては、第1のUPF(#UPF_1)に対応する基地局104(#BS_11)から第2のUPF(#UPF_2)に対応する基地局104(#BS_21)へ移動するものとする。
【0092】
次に、ステップS706(
図6の「S13」に相当)において、端末装置102は、クラウド・アプリケーションへアクセスする際に、セッション確立要求信号を第2の基地局104(#BS_21)、AMF122を介して、SMF124へ送信する。AMF122からSMF124へ送信されるセッション確立要求信号は、端末装置102の加入者識別番号と、移動後の端末装置102が在圏するエンティティに割り当てられる識別子(本例では#BS_21)とを含むことができる。
【0093】
ステップS706において、AMF122は、端末装置102から基地局104を介して受信したセッション確立要求信号に応じて、移動後の端末装置102が在圏するエンティティに割り当てられる識別子(本例では、#BS_21)を特定する。さらに、AMF122は、記憶部に格納されている在圏情報400を参照し、端末装置102の在圏エンティティ識別子(#BS_21)に対応付けられるUPF130識別子(本例では、#UPF_2)を特定する。「#UPF_2」は、移動後の端末装置102の物理的近くに配置されているUPF130である。
【0094】
次に、ステップS708(
図6の「S14」に相当)において、SMF124は、ステップS704で受信したセッション確立要求信号の在圏識別子(本例では、#BS_21)が、直前に受信したセッション確立要求信号の在圏識別子(本例では#BS_11)と異なる場合に、端末装置が移動したと判断することができる。また、SMF124は、移動後の端末装置からのセッション確立要求信号に応じて、記憶部に格納されているSMF装置情報500を参照し、特定されたUPF130識別子に関連付けられるクラウド識別子(#DNN_2)を特定してもよい。
【0095】
次にステップS710(
図6の「S15」に相当)において、SMF124は、端末装置にセッション確立要求信号を受信したことに対する肯定応答を、移動後に在圏するエンティティ(AMF122、基地局104(#BS_21))を介して端末装置102へ送信する。
【0096】
次に、ステップS712(
図6の「S16」に相当)において、端末装置102は、基地局104(#BS_21)、この基地局104に通信可能に接続される第2のUPF130(#UPF_2)を介して、UPF130に通信可能に接続される第2のクラウド150(#DNN_2)に接続する。移動後の第2のクラウド150(#DNN_2)には、すでにクラウド・アプリケーションのレプリケーションがなされている(
図3、ステップS326)。従って、端末装置102は移動後も、クラウド・アプリケーションの利用を継続することができる。
【0097】
次に、ステップS714(
図6の「S17」に相当)において、端末装置102が通信中の第2のクラウドから別の全てのクラウドに対し、クラウド・アプリケーションのレプリケーションを行う。一例として、第2のUPF130(#UPF_2)はPCCルールを読み出しし、PCCルールに従って、端末装置102が在圏するエンティティに関連付けられる第2のクラウド150(#DNN_2)と他の全てのクラウド150(#DNN_1、#DNN_3~#DNN_N)と間で、レプリケーション・データを複製する。例えば、第2のクラウド150は、レプリケーション・データを、第2のUPF130(#UPF_2)と、第1のUPF130(#UPF_1)とを介して第1のクラウド150に送信する。なお、第2のUPF130は、SMF124が特定した第2のクラウド(#DNN_2)に対しSMF124が事前に送信したレプリケーション開始指示に従って、PCCルールを読み出ししてもよい。
【0098】
次に、ステップS716(
図6の「S17」に相当)において、他の全てのクラウド150はそれぞれ受信したレプリケーション・データを記憶部にそれぞれ保持する。
【0099】
これにより全てのクラウドでクラウド・アプリケーションを共有、更新することができる。クラウド・アプリケーションのレプリケーションは、リアルタイムで実施される。
【0100】
<第2実施形態>
以上は、端末装置102が同一AMF122配下の基地局間を移動する場合の処理について説明した。本開示の第2の実施形態によると、端末装置102はAMF間の移動したときについても同様にクラウド・アプリケーションのレプリケーションを行うことができる。端末装置102がAMF間を移動したときの処理は、端末装置102が同一AMF122配下の基地局間を移動したときの処理と略同一である。従って、以下、同一の処理については説明を省略する。
【0101】
図3のステップS306に対応するステップにおいて、AMF122は端末装置102から受信したセッション確立要求信号に応じて、端末装置102が在圏するエンティティの識別子(#AMF_1)を特定する。在圏情報400’は、各AMF122の識別子の項目と、各AMF122に関連付けられるUPF130に割り当てられる識別子の項目とを含む。
【0102】
図3のステップS320に対応するステップにおいて、端末装置102は、端末装置102が在圏するエンティティ(本例では#AMF_1)に関連付けられるUPF130(#UPF_1)を介して第1のクラウド150(#DNN_1)と通信を開始する。
【0103】
図7のステップS704に対応するステップにおいて、端末装置102は、UPF130間を移動する。本例においては、第1のUPF(#UPF_1)に対応する第1のAMF122(#AMF_1)からUPF_2に対応する第2のAMF122(#AMF_2)(不図示)へ移動するものとする。
【0104】
図7のステップS706に対応するステップにおいて、端末装置102は、クラウド・アプリケーションへアクセスする際に、セッション確立要求信号を基地局104、第2のAMF122(#AMF_2)を介して、SMF124へ送信される。AMF122からSMF124へ送信されるセッション確立要求信号は、端末装置102の加入者識別番号と、移動後の端末装置102が在圏するエンティティに割り当てられる識別子(本例では#AMF_2)とを含むことができる。SMF124は、ステップS704で受信したセッション確立要求信号の在圏識別子(本例では、#AMF_2)が、直前に受信したセッション確立要求信号の在圏識別子(本例では#AMF_1)と異なる場合に、端末装置が移動したと判定する。また、SMF124は、移動後の端末装置からのセッション確立要求信号に応じて、端末装置の移動後に在圏するエンティティと通信する第2のUPF130(#UPF_2)を特定する。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態及び変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0106】
100…システム
102…端末装置
104…基地局
122…AMF
124…SMF
126…PCF
128…UDR
140…NEF
150…クラウド
400…在圏情報
500…SMF装置情報
【要約】
【課題】クラウド・アプリケーションをレプリケーションすること
【解決手段】システムで実施される方法であって、端末装置からの第1のセッション確立要求信号の受信に応じて、端末装置の在圏するエンティティと通信する第1のノードに関連付けられる第1のクラウドを特定することと、第1のクラウドと端末装置との通信を開始すること、端末装置が通信中の第1のクラウドから別の第2のクラウドへ、クラウド・アプリケーションデータをレプリケーションすることと、を含み、レプリケーションは、端末装置の在圏するエンティティが端末装置の移動により変更する前に行われる、方法。
【選択図】
図3