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特許7490884ピルビン酸ナトリウムを有効成分とする美白用化粧料組成物
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  • 特許-ピルビン酸ナトリウムを有効成分とする美白用化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ピルビン酸ナトリウムを有効成分とする美白用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20240520BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240520BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/365
A61K8/40
A61Q19/02
A61K31/19
A61K31/17
A61P17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023506327
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2021009856
(87)【国際公開番号】W WO2022025656
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095328
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】523008185
【氏名又は名称】タイ・グク・ファーム・インダストリー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・グク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ムン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ネ・ギュ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ホン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・フン・ロ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041669(JP,A)
【文献】特表2014-511423(JP,A)
【文献】特開平03-011010(JP,A)
【文献】特開平01-305025(JP,A)
【文献】特開平09-315928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対して0.001~2重量%であるピルビン酸ナトリウムと、
組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレア、又は組成物の総重量に対して0.001~5重量%であるウレア及び組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレアを含むことを特徴とする、美白用化粧料組成物。
【請求項2】
ピルビン酸ナトリウムの含量は、組成物の総重量に対して0.001~0.5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の美白用化粧料組成物。
【請求項3】
前記化粧料は、化粧水、エッセンス、ローション、クリーム、パック、ゲル、パウダー、ファウンデーション又は洗浄剤の剤形であることを特徴とする、請求項1に記載の美白用化粧料組成物。
【請求項4】
組成物の総重量に対して0.001~2重量%であるピルビン酸ナトリウムと、
組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレア、又は組成物の総重量に対して0.001~5重量%であるウレア及び組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレアを含むことを特徴とする、色素沈着症治療用薬学的組成物。
【請求項5】
ピルビン酸ナトリウムの含量は、組成物の総重量に対して0.001~0.5重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の色素沈着症治療用薬学的組成物。
【請求項6】
色素沈着症は、肝斑、黒皮症(シミ)、ソバカス、老人性黒斑及びメラニン色素沈着からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項4に記載の色素沈着症治療用薬学的組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対して0.001~2重量%であるピルビン酸ナトリウムと、
組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレア、又は組成物の総重量に対して0.001~5重量%であるウレア及び組成物の総重量に対して0.001~10重量%であるヒドロキシエチルウレアを含むことを特徴とする、美白用皮膚外用剤組成物。
【請求項8】
ピルビン酸ナトリウムの含量は、組成物の総重量に対して0.001~0.5重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の美白用皮膚外用剤組成物。
【請求項9】
前記外用剤は、軟膏、パッチ、ゲル、クリーム又は噴霧剤の剤形であることを特徴とする、請求項7に記載の美白用皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む美白用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚色は、メラニン、ヘモグロビン(hemoglobin)、カロテン(carotene)などにより決定されるが、その中でもメラニンが最も重要な役目をする。メラニンは、ヒトの皮膚色を決定すること以外にも紫外線吸収作用、フリーラジカル消去剤(free radical scavenger)などの皮膚保護作用を実行する。しかし、紫外線の過多露出、大気汚染、ストレスなどの外部の環境変化によりメラニンが過多に生成されると、皮膚内で色素沈着現象を起こして皮膚の黒化(melanism)又はシミ、ソバカスなどの原因となる。皮膚の黒化は、内的及び外的要因に対する皮膚細胞の反応により発生するものであって、代表的な要因は紫外線露出である。すなわち、皮膚が紫外線に露出されると、チロシナーゼ(tyrosinase)が活性化されるが、前記チロシナーゼが皮膚組織に存在するチロシンに作用してドーパ(DOPA)及びドーパキノン(dopaquinone)を生成させる酸化過程によって、皮膚色素細胞であるメラノサイト(melanocyte)内のメラノソーム(melanosome)からメラニンという重合体が合成され、このようなメラニンが皮膚の角質形成細胞であるケラチノサイト(keratinocyte)に伝達されて角質化過程により皮膚表面に到逹して紫外線から皮膚を保護することになる。しかし、メラニンが局所的に過度に合成されるか、皮膚の病変及び老化により皮膚の生理機能が低下するようになると、メラニンが皮膚表面に沈着してシミ、ソバカス及び多様な色素沈着を誘発することになる。
【0003】
一方、ヒトの皮膚は、メラノサイト前駆体細胞(melanoblasts)を毛嚢上皮、特に膨潤部(bulge)に貯蔵しておき、毛嚢間表皮(interfollicular epidermis)の基底層からメラノサイトが脱落すると、この部分にメラノサイト前駆体細胞が移動し、このとき、紫外線だけでなくケラチノサイト(keratinocytes)、線維芽細胞(fibroblasts)又は炎症細胞のように隣接した皮膚細胞(cutaneous cells)の間の相互作用によってメラニン合成(melanogenesis)及びメラニン顆粒をケラチノサイトに移動させるときに必要な樹状突起の伸長(dendrite outgrowth)がおこり最終分化(terminal differentiation)される。代表的に、メラノサイト-刺激ホルモン(a-melanocyte-stimulating hormone)(MSH)は、UVに露出されたケラチノサイトから分泌するメラノサイト分化促進素材としてメラノサイト前駆体細胞の増殖を促進し、メラノサイト内の小眼球症関連転写因子(microphtalmia-associated transcription factor)(MITF)のM促進子の発現を増加させることによって、チロシナーゼなど色素形成機構を起こす酵素の発現を高め、メラノソーム(melanosome)の形成及び樹状突起伸長を起こす。このようにメラノサイトの分化と関連する分子機構は、精巧に調節されている。
【0004】
上記のように、皮膚黒化の原因と機構が明らかになることによって、美白用化粧料又は色素沈着改善医療用組成物の製造において皮膚黒化過程に関与する酵素であるチロシナーゼの活性阻害効果を有する物質を配合するか、またはメラニン生成過程中で一部反応を阻害することによってメラニンの生成を減少させる方法が一般的に用いられている。このような目的のために用いられている代表的な物質としては、アスコルビン酸(ascorbic acid)、コウジ酸(kojic acid)、ヒドロキノン(hydroquinone)、ピルビン酸ナトリウム(Sodium pyruvate)などの化学物質と桑白皮抽出物、甘草抽出物などの植物抽出物がある。しかし、アスコルビン酸は、チロシナーゼの活性阻害効果が不足しているだけでなく、分子自体の安全性が低いためメラニン生成抑制剤として適合せず、コウジ酸は、チロシナーゼの阻害活性に優れているが、化粧料に配合するときに変色し、経時変化によって力価が低下するなどの安定性に問題があるだけでなく、皮膚刺激が激しく使用上限界があり、ヒドロキノンは、皮膚刺激及び安全性の問題により化粧料での使用が制限されており、一般医薬品としては4%未満を含有するように制限している。
【0005】
それによって、メラニン生成を抑制するための新しい物質としてピルビン酸ナトリウムに対する関心が集中している。しかし、ピルビン酸ナトリウムは、化粧料など増粘剤を含む剤形に使用するとき、増粘システムを崩壊させて高含量の増粘剤を追加で使わなければならないという問題が発生した。具体的に、ランダムコイル形態で存在するカーボポール(Carbopol)などの高分子増粘剤(Thinckner)バックボーン(Backbone)が水溶液上でアルカリ物質に中和(neutralization)されて拡張(extending)した形態となることによって増粘システムが行われるが、高濃度のピルビン酸ナトリウムから解離されたナトリウム塩のため増粘剤バックボーンが再びランダムコイル(random coil)形態でリコイリングされて増粘システムが崩壊し、それによる乳化粒子の合一、相分離が起き、粘度及び硬度が低くなる問題が発生する。そこで、粘度及び硬度を高めるその他成分を含まなければならないが、そうすると、べたつきの発生、重い使用感の発生、又は柔らかい展延性の具現の難しさなどと製品の使用感が減少した。したがって、ピルビン酸ナトリウムそれ自体を剤形の粘度及び硬度を低めない範囲内で使用する必要があり、そうすると、またピルビン酸ナトリウムによる十分な美白効果を達成できなかった。
【0006】
このような背景下で、ピルビン酸ナトリウムの低い用量でも優れた美白活性を有する美白成分の開発に対する関心が集中している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した目的を達成するために、鋭意研究に努めた結果、本発明者らは、ヒドロキシエチルウレア(hydroxyethyl urea)及びウレア(urea)のうち1種以上と共に使用したときに低濃度のピルビン酸ナトリウムを使用しても美白効果が段違いに増加して高濃度のピルビン酸ナトリウムを使用したレベルの著しい美白効果を示すことを確認し、本発明を完成することとなった。
【0008】
本発明の目的は、皮膚美白に関する効能に優れた美白用化粧料組成物を提供することである。
【0009】
本発明のまた他の目的は、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む美白用化粧料組成物;色素沈着症治療用薬学的組成物;美白用皮膚外用剤組成物、そして前記組成物を用いた美白方法、色素沈着症治療方法、美白用化粧料の製造のための用途;及び色素沈着症治療剤の製造のための用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む、美白用化粧料組成物を提供する。
【0011】
本発明での化粧料組成物は、化粧水、エッセンス、ローション、クリーム、パック、ゲル、パウダー、ファウンデーション又は洗浄剤の剤形であってもよい。
【0012】
前記目的を達成するために、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む、色素沈着症治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
前記目的を達成するために、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む、美白用皮膚外用剤組成物を提供する。
【0014】
本発明での皮膚外用剤組成物は、軟膏、パッチ、ゲル、クリーム又は噴霧剤の剤形であってもよい。
【0015】
前記目的を達成するために、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を皮膚に処理する段階を含む、美白方法を提供する。
【0016】
前記目的を達成するために、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を皮膚に処理する段階を含む、色素沈着症治療方法を提供する。
【0017】
前記目的を達成するために、美白用化粧料組成物を製造するための、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物の用途を提供する。
【0018】
前記目的を達成するために、色素沈着症治療剤を製造するための、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物の用途を提供する。
【0019】
前記目的を達成するために、美白用皮膚外用剤を製造するための、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるピルビン酸ナトリウムを有効成分として含む組成物は、メラノサイトのメラニン合成阻害効能を有しているので、美白効果を示すことができる。具体的に、ピルビン酸ナトリウムをウレア又はヒドロキシエチルウレアのうち1種以上と組み合わせて使用する場合、美白効果においてシナジーが発生し、低濃度のピルビン酸ナトリウムから得にくい十分な美白効果を示すことができる。また、低濃度のピルビン酸ナトリウムを使用して製品の使用感低下を減らすことができ、他の美白成分とは異なり、皮膚刺激及び皮膚安全性に問題なく使用することができる。これによって、本発明の組成物は、化粧品、医薬、外用剤などに効果的に活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実験例1によってピルビン酸ナトリウム、ウレア及びヒドロキシエチルウレアの美白効能を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
一つの様態として、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む美白用化粧料組成物を提供する。
【0024】
他の様態として、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む色素沈着症治療用薬学的組成物を提供する。
【0025】
他の様態として、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む美白用皮膚外用剤組成物を提供する。
【0026】
他の様態として、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を用いた美白方法、色素沈着症治療方法、美白用化粧料の製造のための用途、色素沈着症治療剤の製造のための用途、及び美白用皮膚外用剤の製造のための用途を提供する。
【0027】
他の様態として、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を皮膚に処理する段階を含む、美白方法を提供する。
【0028】
他の様態として、前記組成物を皮膚に処理する段階を含む、色素沈着症治療方法を提供する。
【0029】
他の様態として、美白用化粧料を製造するための、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物の用途を提供する。
【0030】
他の様態として、色素沈着症治療剤を製造するための前記組成物の用途を提供する。
【0031】
他の様態として、美白用皮膚外用剤を製造するための前記組成物の用途を提供する。
【0032】
本の発明の「ピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate)」は、下記化学式1で表現され、ケト酸(a-keto acid)のうち一つであるピルビン酸(pyruvic acid)の他の塩形態である。
【0033】
【化1】
【0034】
ピルビン酸塩は、多くの代謝経路で中間体であるので、ピルビン酸ナトリウムは、細胞培養に関連する多くの実験でより多くのエネルギーを提供するのに広く用いられている。既存の研究によると、ピルビン酸は、シミ(melasma)、日光黒子(solar lentigine)、アクネ(acne)、イボ(wart)を抑制するだけでなく、コラーゲン(collagen)合成を促進し、皮膚弾力を増進させる。しかし、このような効果は高濃度(50~100%)のピルビン酸の化学的剥離に起因した効能であるので、ピルビン酸の使用中に痛みや熱感を感じることがあり、過度な角質剥離あるいは炎症性水泡が同伴され得る。
【0035】
本発明の「ウレア」は、天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)のうち一つであって、皮膚に優れた保湿効果を付与することができる。皮膚をやわらかにし、尿素とも呼ばれ、角質溶解、抗菌作用などがあるので、皮膚に外用剤として使用される。濃度によって、10%以下の低濃度製品は皮膚乾燥症に用いられ、20~40%の高濃度製品は角質溶解制として用いられ得る。
【0036】
本発明の「ヒドロキシエチルウレア」は、化粧品で保湿力及び皮膚弾力の維持に役に立つので保湿剤に用いられ、毛髪のコンディショニング剤としても用いられ得る。
【0037】
本発明は、メラニンの生成抑制効能を示すピルビン酸ナトリウムを高濃度で使用するときの問題点を解決しつつ、ピルビン酸ナトリウムにウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上と共に使用することによって、ピルビン酸ナトリウムを低濃度で使用しても高濃度で使用するときより優れた美白効果を示すことができ、高含量の増粘剤使用によって発生する製品の使用感低下を減らすことができる。
【0038】
ウレアとヒドロキシエチルウレアそれ自体は、美白の効果をほとんど示さないが、ピルビン酸ナトリウムと共に使用する場合、ピルビン酸ナトリウムの美白効果を増進させ得る。
【0039】
具体的に、本発明の組成物は、ピルビン酸ナトリウムとウレアの組み合わせ;ピルビン酸ナトリウムとヒドロキシエチルウレアの組み合わせ;及びピルビン酸ナトリウム、ウレア及びヒドロキシエチルウレアの組み合わせを全て含む。
【0040】
前記組成物は、前記ピルビン酸ナトリウムを全体組成物の重量に対して0.001~2%(w/w)で含むことができる。より好ましくは、ピルビン酸ナトリウムは、0.005~1%(w/w)で含むことができる。さらに好ましくは、ピルビン酸ナトリウムは、0.01~0.5%(w/w)で含むことができ、最も好ましくは、0.01~0.1%(w/w)で含むことができる。本発明の組成物がピルビン酸ナトリウムを0.001%未満で含む場合には、十分な美白効果を期待することができない。また、ピルビン酸ナトリウムを増粘剤と共に使用するとき剤形安定性が落ちる問題があるが、ウレア及びヒドロキシエチルウレアのうち1種以上と共に使用すれば、美白のためにその濃度を過度に高める必要はない。
【0041】
前記組成物は、ウレアを全体組成物の重量に対して0.001~5%(w/w)で含むことができる。より好ましくは、ウレアは、0.005~3%(w/w)で含むことができる。さらに好ましくは、ウレアは、0.01~2%(w/w)で含むことができる。ウレアが前記含量範囲を満足しない場合、ピルビン酸ナトリウムの美白効能の増進が不十分なことがあり、多量使用する場合、アンモニアガスにより変臭、変色など問題が発生し得る。
【0042】
前記組成物は、前記ヒドロキシエチルウレアを全体組成物の重量に対して0.001~10%(w/w)で含むことができる。より好ましくは、ヒドロキシエチルウレアは、0.005~6%(w/w)で含むことができる。さらに好ましくは、ヒドロキシエチルウレアは、0.01~4%(w/w)で含むことができる。ヒドロキシエチルウレアが前記含量範囲を満足しない場合、ピルビン酸ナトリウムの美白効能の増進が不十分であることがあり、多量使用する場合、剤形内のpHを上げて剤形安定性に影響を与え得る。
【0043】
本発明の「皮膚美白効果」は、メラニン色素の合成を阻害することによって皮膚トーンを明るくするだけでなく、皮膚トーンや顔色の均一、紫外線、ホルモン又は遺伝に起因した肝斑、黒皮症(シミ)、ソバカス、老人性黒斑又はメラニン色素沈着などを改善することを言うが、これに制限されるものではない。
【0044】
前記ピルビン酸ナトリウムと、ウレア又はヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を化粧品で使用する場合、前記化合物及び混合物を有効成分として含有して製造される化粧品は、一般的な乳化剤形又は可溶化剤形の形態で製造することができる。例えば、柔軟化粧水又は栄養化粧水などの化粧水;フェイシャルローション又はボディーローションなどの乳液、栄養クリーム、水分クリーム又はアイクリームなどのクリーム、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ゲル、パック、サンスクリーン、メーキャップベース、液体タイプ、固体タイプ又はスプレータイプなどのファウンデーション、パウダー、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメーキャップ除去剤、クレンジングフォーム、石鹸、ボディーウォッシュなどの洗浄剤などの剤形を有することができる。
【0045】
また、本発明の組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型乳化剤、非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤又は脂質小胞など化粧品分野で通常的に使用される補助剤を追加で含むことができる。
【0046】
本発明の「薬学的組成物」は、経口又は非経口で投与することができ、ピルビン酸ナトリウムと、ウレア又はヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を薬学的組成物で使用する場合、一般医薬品製剤の形態、例えば、臨床投与時に経口及び非経口の様々な剤形で投与され、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調剤され得るが、これに制限されない。
【0047】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学的組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)又はラクトース(Lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤され得るが、これに制限されない。
【0048】
単純な賦形剤以外にマグネシウムスチレートタルクのような滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、油剤、シロップ剤などが該当し、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得るが、これに制限されない。
【0049】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられ得るが、これに制限されない。
【0050】
本発明で色素沈着症は、肝斑、黒皮症(シミ)、ソバカス、老人性黒斑及びメラニン色素沈着からなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0051】
本発明の「皮膚外用剤組成物」は、皮膚外用剤として使用され得るが、これに制限されるものではない。ピルビン酸ナトリウムと、ウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上を含む組成物を皮膚外用剤として使用する場合、追加で脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞又は皮膚用外用剤に通常的に使用する任意の他の成分のような皮膚科学分野で通常的に使用する補助剤を含有することができる。また、前記成分は、皮膚科学分野で一般的に使用する量で導入され得る。皮膚外用剤の剤形で提供される場合、これに制限されるものではないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリーム又は噴霧剤のような剤形を有することができる。
【0052】
以下、本発明を下記実験例により詳しく説明する。ただし、下記実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実験例によって制限されるものではない。また、これら実験例は、本発明に対する理解を助けるためのものであって、どのような意味であっても本発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0053】
<実施例>
【0054】
実験例1.メラニン合成抑制効率の実験結果
【0055】
ピルビン酸ナトリウムによるメラニン合成抑制効能を確認するために、まず、6well plateにB16F10細胞を1 × 10cells/well濃度で分注し、37℃、5% CO条件で24時間の間10% FBS、1% penicillin/streptomycinを含有したDMEM培地で培養した。その後、細胞をα-MSH 10nMと共に表1のようにピルビン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルウレア又はウレアを濃度別に48時間の間処理した。この細胞を収穫してライシスバッファー(lysis buffer、1N NaOH、10% DMSO)100μlを入れ、90℃で20分間反応させた後、405nm(EPOCH、Biotek)でメラニン量を測定した。メラニン含量の測定結果は、次の通りである。
【0056】
【表1】
【0057】
表1を参照すると、ウレア又はヒドロキシエチルウレアを単独で使用したときは、メラニン合成抑制効果がなかった(比較例2、3、4及び5)。ウレアとヒドロキシエチルウレアを一緒に使用したときは、メラニン合成が3%の極めて些細なレベルに抑制された(比較例6及び7)。しかし、ピルビン酸ナトリウムと一緒に使用したとき、メラニン合成抑制効果があり、ウレア又はヒドロキシエチルウレアがピルビン酸ナトリウムの美白効能を増進させたことが確認できた(実施例1、2、3及び4は、メラニン合成をそれぞれ17、26、40%、46%に抑制した)。ピルビン酸ナトリウム0.01重量%、ウレア0.01重量%及びヒドロキシエチルウレア0.01重量%の組み合わせ(実施例3)は、40%の抑制効率を示して、ピルビン酸ナトリウム1重量%(比較例11)単独で示した36%より抑制効率が約11%程度高かった。これは、100倍も薄いピルビン酸ナトリウムでウレア及びヒドロキシエチルウレアののうち1種以上を組み合わせて既存のピルビン酸ナトリウムと類似する美白効果を示し得ることを意味する。また、ピルビン酸ナトリウム0.1重量%、ウレア0.1重量%及びヒドロキシエチルウレア0.1量%の組み合わせ(実施例4)は、46%の抑制効率を示して、ピルビン酸ナトリウム1重量%(比較例11)単独で示した36%より抑制効率が約27%程度高かった。
【0058】
したがって、低濃度のピルビン酸ナトリウムをウレア及びヒドロキシエチルウレアからなる群より選択される一つ以上と共に含む場合、高濃度のピルビン酸ナトリウムより優れた美白効果を示して低濃度のピルビン酸ナトリウムでも十分な美白効果を示し得ることが確認できた。


図1