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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】大寸法の焼結セラミック体の作製装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/645 20060101AFI20240520BHJP
   B22F 3/14 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
C04B35/645
B22F3/14 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023516521
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2021052978
(87)【国際公開番号】W WO2022072703
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/087,204
(32)【優先日】2020-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/124,547
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン、マシュー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、リリアン
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527124(JP,A)
【文献】特開2005-112658(JP,A)
【文献】特開2017-095778(JP,A)
【文献】特開2008-111198(JP,A)
【文献】特開平04-116106(JP,A)
【文献】特開平10-251057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280520(US,A1)
【文献】特表2023-502597(JP,A)
【文献】J. Eur. Cer. Soc.,2004年,Vol.24,p.3465-3470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/645
B22F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、約100mm~約625mmの寸法を有する焼結セラミック体を作製する放電プラズマ焼結ツールであって、前記ツールは、
a.内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、前記内壁は、ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積(SSA)を有する少なくとも1つのセラミック粉末を受容するように構成された内部容積を画定する直径を有する、ダイと、
b.前記ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々は前記ダイの前記内壁の前記直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記上部パンチ及び前記下部パンチの少なくとも1つが前記ダイの前記内部容積内で移動するときに、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々と前記ダイの前記内壁との間に間隙を形成し、前記間隙は10μm~100μmの幅である、上部パンチ及び下部パンチと、
を備え、前記放電プラズマ焼結ツールは前記ダイの前記内壁上に、25μmの最小厚さを有する、少なくとも1つの伝導性ホイルを有し、前記間隔の距離は、前記上部パンチ及び前記下部パンチに最も近い前記伝導性ホイルの内向きの面から、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々の外壁までで測定される、放電プラズマ焼結ツール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの伝導性ホイルが、グラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、又は白金を含む、請求項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項3】
前記ダイ、前記上部パンチ、及び前記下部パンチが、少なくとも1つのグラファイト材料を含む、請求項1または2に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項4】
前記少なくとも1つのグラファイト材料が、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~20μm、5~50μm、5~40μm、5~30μm、5~20μm、5~15μm、及び5~10μmからなる群から選択される粒径を有し、前記グラファイト材料が、1.45~2.0g/cc、1.45~1.9g/cc、1.45~1.8g/cc、1.5~2.0g/cc、1.6~2.0g/cc、1.7~2.0g/cc、及び1.7~1.9g/ccからなる群から選択される密度を有する、請求項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項5】
前記少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数からの半径方向偏差が、前記ツールの前記中心軸を中心に0.3×10-6ppm/℃以下、0.25×10-6ppm/℃以下、0.2×10-6ppm/℃以下、0.18×10-6ppm/℃以下、0.16×10-6ppm/℃以下、0.14×10-6ppm/℃以下、0.12×10-6ppm/℃以下、0.1×10-6ppm/℃以下、0.08×10-6ppm/℃以下、及び0.06×10-6ppm/℃以下からなる群から選択される少なくとも1つの量変化する、請求項3または4に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項6】
前記少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数からの前記半径方向偏差が、前記ダイ並びに上部パンチ及び/又は下部パンチの回転位置に対して0~360度の前記回転位置にわたって維持される、請求項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項7】
前記上部パンチ及び前記下部パンチのうちの少なくとも1つが、電極に結合され、前記上部パンチ及び前記下部パンチのうちの少なくとも1つが、前記ダイとオーム接触している、請求項1~のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項8】
前記ダイ、前記上部パンチ、及び前記下部パンチが、前記少なくとも1つのセラミック粉末において均質な温度分布を作り出す、請求項1~のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセラミック粉末が、2~18m/g、3~18m/g、4~18m/g、5~18m/g、6~18m/g、1~16m/g、2~16m/g、4~16m/g、6~16m/g、1~14m/g、1~12m/g、1~10m/g、1~8m/g、2~12m/g、2~10m/g、6~8m/g、及び3~8m/gからなる群から選択される比表面積(SSA)を有し、前記少なくとも1つのセラミック粉末が、100ppm未満の総不純物を含有し、前記少なくとも1つのセラミック粉末が、少なくとも約1×10+10オームcmからの抵抗率を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセラミック粉末が、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、サファイア、イットリウムアルミニウム単斜晶(YAM)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、コーディエライト、ムライト、コバルタイト、アルミン酸マグネシウムスピネル、二酸化ケイ素、石英、酸化カルシウム、酸化セリウム、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化エルビウム、エルビウムアルミニウムガーネット(EAG)、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化アルミン酸ジルコニウム、酸化ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミン酸ハフニウム、酸化ケイ酸ハフニウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸ランタン、酸化アルミン酸ランタン(LAO)、酸化ケイ酸イットリウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸タンタル、窒化イットリウム、酸窒化イットリウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、サイアロン材料、窒化ホウ素、窒化ベリリウム、窒化チタン、窒化タングステン、フォルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、及びサイアロンからなる群から選択される、請求項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項11】
前記ダイ、前記上部パンチ及び前記下部パンチに真空を印加する真空チャンバと、
前記上部パンチに接続された上部パンチ電極と、前記下部パンチに接続された下部パンチ電極と、
前記上部パンチ電極及び前記下部パンチ電極に電流を供給する電源と、
前記上部パンチ及び前記下部パンチに圧力を印加する加圧システムと、
前記ツールの様々な構成要素を動作させるコントローラと、を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項12】
前記間隙が、前記中心軸を中心に軸対称である、請求項1~11のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項13】
前記間隙が、前記中心軸を中心に非対称である、請求項1~12のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項14】
前記間隙が、10μm~70μm、20μm~70μm、30μm~70μm、40μm~70μm、50μm~70μm、60μm~70μm、10~60μm、10~50μm、及び10~40μmからなる群から選択される幅を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【請求項15】
1つ以上のコンピューティングデバイスに、約100mm~約625mmの寸法を有する焼結セラミック体を、
a.ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積を有する少なくとも1つのセラミック粉末を、放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置することであって、前記放電プラズマ焼結ツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、前記内壁は前記内部容積を画定する直径を有する、ダイと、前記ダイに動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々は、前記ダイの前記内壁の前記直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記上部パンチ及び前記下部パンチの少なくとも1つが前記ダイの前記内部容積内で移動するときに、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々と前記ダイの前記内壁との間に10μm~100μm幅の間隙を形成する、上部パンチ及び下部パンチとを備え
前記放電プラズマ焼結ツールは前記ダイの前記内壁上に、25μmの最小厚さを有する、少なくとも1つの伝導性ホイルを有し、前記間隔の距離は、前記上部パンチ及び前記下部パンチに最も近い前記伝導性ホイルの内向きの面から、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々の外壁までで測定される、
配置することと、
b.前記上部パンチ及び前記下部パンチの少なくとも1つを移動させて、前記セラミック粉末を焼結温度に加熱しながら、前記セラミック粉末に圧力を加え、前記セラミック粉末を焼結して前記焼結セラミック体を形成することと、
c.前記焼結セラミック体の温度を下げることと、を含む方法によって作製させるように適合された、プロセッサ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結セラミック体の作製装置に関し、特に、高純度及び高密度の大型焼結セラミック体の作製装置に関する。更に、本開示は、大型焼結セラミック体を作製するために装置を使用する特定の方法、及び1つ以上のコンピューティングデバイスに装置を動作させるように適合されたプロセッサ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、とりわけ、自動車、航空宇宙、半導体、光学、及び医療などの様々な産業にわたって有用である。セラミックにより、概して、高い圧縮強度、低い熱膨張、高い熱伝導率、優れた耐薬品性、並びに好ましい誘電特性及び光学特性が得られる。しかしながら、約100mm~200mm以上の大寸法のセラミック部品の作製又は製造は、様々な理由から困難であることが判明している。
【0003】
セラミック材料は、一般に、金属、サーメット、及びポリマーなどの他の材料と比較した場合に脆いことが知られている。したがって、それらの物理的特性の変動及び欠陥の存在は、他のより延性の材料よりも容易にそれらを破壊させる。
【0004】
ある種のセラミック材料は本質的に耐火性であり、高密度化するのが困難である。結果として、これらの材料は、典型的には、セラミック粉末が炉内に装填され、1,600℃以上の温度で長期間、多くの場合、数日間にわたって焼結される、無圧真空焼結によって作製される。この技術では、密度が低く、それに応じて気孔率が高く、これにより化学エッチング耐性及び/又は耐浸食性などの性能が低下する、許容できない品質の焼結セラミックが得られることが多い。製造のためのこれらの条件はまた、20μm以上のオーダーの大きな粒径、及び例えば理論値の約95%未満のより低い密度をもたらし、それによって機械的強度を低下させ、大寸法での破損をもたらし、それらを多くの用途に使用できない。
【0005】
高密度化を促進するために、焼結助剤がしばしば使用される。大きな本体サイズにわたって高純度が必要とされる用途では、焼結セラミック中に存在する焼結助剤は、セラミック物品の最終用途に適合せず、したがって、99.99%以上のオーダーの高純度が要求される用途でのそれらの使用は妨げられる。焼結助剤はまた、それらの特定の特性により、焼結セラミックにおける電気的、磁気的又は他の特性がエンドユーザの望まない様式で変化し得るという問題をもたらし得る。
【0006】
他のセラミック材料は、低い焼結強度を有することが知られており、破損することなく大寸法で取り扱うことを特に困難にしている。この特性は、様々な用途のための構造材料としてのそれらの開発を妨げる。大きな(>100mm)本体サイズでセラミック材料、特に低い焼結強度を有することが知られている材料を作製しようとする試みは、多くの場合、焼結中若しくは焼結後、冷却時、アニーリング又は機械加工などの焼結後処理中、又は処理に必要な場合の取り扱い時に破損することが多い。
【0007】
半導体処理用途では、半導体基板上の材料のエッチング及び化学蒸着(CVD)のために真空処理チャンバが使用される。これらの真空処理チャンバは、処理されるウェハ又は基板上にプラズマを閉じ込めるディスク、リング、ライナ、及びシリンダなどの構成要素を含む。典型的には様々な耐プラズマ性セラミック材料から形成されるこれらのチャンバ構成要素は、プラズマによって連続的に攻撃され、その結果、侵食され、腐食し、汚染物質を蓄積又は放出する。このプラズマ攻撃は、ツールのダウンタイムの延長、消耗品コストの増加、ウェハ上の遷移金属汚染、プロセスドリフト、及びデバイス歩留まり損失をもたらす粒子汚染につながる、短い構成要素寿命を含む多くの問題を引き起こす。
【0008】
プラズマ環境の浸食性及び腐食性、並びに粒子及び/又は金属汚染を最小限に抑える必要性のため、プラズマ処理チャンバ内で使用されるセラミック構成要素は、適切に高い耐浸食性及び耐腐食性を有することが望ましい。このような部品は、プラズマ環境における腐食及び浸食に対する耐性を提供する材料から形成されており、例えば、米国特許第5,798,016号、米国特許第5,911,852号、米国特許第6、123,791号及び米国特許第6、352,611号に記載されている。残念ながら、これらの例は、現在の半導体処理チャンバで必要とされるような200mm以上のオーダーの大寸法のセラミック材料及び構成要素の作製のための方向性を提供していない。
【0009】
これまでに作製された大型焼結セラミック体は、主に、破損の危険性、高い多孔性、低い密度、及び耐腐食性用途での使用には不十分な品質/純度に悩まされている。更に、最先端のエッチングチャンバで使用するために、ますます大きな寸法のプラズマエッチング耐性セラミック部品が必要とされている。これらの要件は、現在、多くのプラズマ処理チャンバにおける多数の焼結セラミック構成要素の適用を妨げている。
【0010】
高い(理論値の98%を超える)密度及び最小(4%未満の変動)密度変動を有する一方で、特定の用途によって必要とされるような高純度も有する大きなセラミック体構成要素の製造のための商業的に実行可能なプロセスは存在しないことがある。
【0011】
放電プラズマ焼結(SPS)技術は、大きな寸法のセラミック体を製造するための解決策として提案されてきた。電界支援焼結技術(FAST)、パルス電流焼結(PECS)、又はプラズマ圧力圧縮(P2C)としても知られているSPSは、高密度化技術であり、それによって、典型的にはグラファイトから作製される、一軸負荷された導電性ダイ内に含まれるセラミック粉末にわたって電流(典型的にはパルスDC)を印加することによって、非常に急速な加熱がもたらされる。SPSの主な特性は、パルス化又は非パルス化DC又はAC電流が、グラファイトダイ、並びに導電性試料の場合には粉末成形体を直接通過することである。ジュール加熱は、粉末成形体の高密度化において主要な役割を果たすことが見出されており、これは、従来の焼結技術と比較して、より低い焼結温度でほぼ理論密度を達成することをもたらす。熱発生は内部であり、非常に高い加熱又は冷却速度(最大1,000K/分)を容易にし、したがって焼結プロセスは一般に非常に速い(数分以内)。
【0012】
「Effects of Initial Punch-Die Clearance in Spark Plasma Sintering Process」Materials Transactions,Vol.49,No.12,pp.2899-2906(The Japan Institute of Metals 2008)において、Salvatore Grassoらは、典型的なSPSパンチ及びダイアセンブリを説明している。上部パンチ及び別個の下部パンチは、周囲ダイ内に画定された開口部内で互いに向かって、及び互いから離れるように移動する。理想的には、パンチの外径はダイの内径に等しく、パンチはダイに接触するが、ダイ内で摺動する。部品に成形される材料は、2つのパンチの間に配置され、パンチに圧力が加えられる。
【0013】
本明細書の図A(従来技術)として繰り返されるそれらの論文の図2において、Grassoらは、真空チャンバ54内に配置されたSPSパンチ及びダイアセンブリ52を含むSPS装置50を示している。SPSパンチ及びダイアセンブリ52は、圧力(P)が印加されたときに導電性試料(典型的にはセラミック粉末5)に作用する。SPS電源56は、パルス又は連続直流電流(例えば、最大5,000A、より典型的には約1,900A)を提供する。特別な加圧システム58がパンチに圧力を加える。SPS装置50は、温度制御モード(TCM)下で自動的に、又は電圧若しくは電流制御モード(CCM)下で手動で動作させることができる。位置測定60、雰囲気制御システム62、水冷システム64、及び温度測定システム66などの特徴を含むことができる。光高温計70は、ガラス板68を通してダイの外側表面温度を測定するために使用される(熱電対が代わりに使用され得る)。上部パンチ電極72及び下部パンチ電極74は、SPSパンチ及びダイアセンブリ52の上部パンチ及び下部パンチにそれぞれ高電流を供給する。コントローラ80を使用して、SPS装置50の様々な構成要素を動作させることができる。
【0014】
大きな(>100mm)寸法の部品を製造するためにSPS技術を使用する試みは、これまで成功していない。この成功の欠如は、少なくとも部分的には、焼結プロセス中により大きな寸法の部品にわたって温度を制御することができず、その結果、処理中に温度勾配が生じることによる。SPSプロセスによって大きなセラミック体を製造する際に生じる課題は、Eugene A.Olevskyらによる「Fundamental Aspects of Spark Plasma Sintering:I.Experimental Analysis of Scalability」(J.Am.J.Ceram.Soc.,95[8],2406~2413(2012))及び「Fundamental Aspects of Spark Plasma Sintering: II.Experimental Analysis of Scalability」(J.Am.Ceram.Soc.,95[8],2414 to 2422(2012))に記載されており、これらは、温度勾配に関するSPSツールの拡大に伴って生じる問題を記載している。更に、SPS技術を使用して、最小限の導電性を有するか又は導電性を有さない粉末又は粉末混合物(すなわち、絶縁体)を高密度化することは、粉末の本質的に低い導電性のために特に困難であり、したがって焼結中に粉末にわたる温度勾配を悪化させる。この温度勾配は、各々が機械的強度に影響を与える密度及び粒径などの材料特性の変動をもたらす。この温度勾配を制御することができないため、現在、破損することなく容易に取り扱うことができる100mmを超えるオーダーの大きな寸法を有するセラミック体の製造が妨げられている。
【0015】
特開2004-068089号公報は、モールド構造を最適化することによって均一な温度分布が提供されるSPS装置を開示している。詳細には、焼結される成形体の形状は焼結チャンバの中心軸に対して軸対称であり、電源の電極は焼結室の中心軸に対して対称な位置に取り付けられている。金型構造を変更する必要がないことが好ましい。
【0016】
これらの理由及び他の理由から、焼結セラミック体、特に、高密度及び機械的強度が高く、かつ高純度である大型の焼結セラミック体を製造するためのSPS装置の更なる開発が必要とされている。加えて、破損の危険性が低減され、密度及び密度変動、純度、耐プラズマ性、並びに低減された表面粗さに関して十分な品質を有する大型焼結セラミック体を作製するために、そのような装置を使用する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
これら及び他の必要性を満たすために、及びその目的を考慮して、本開示は、改善された機械的特性及び取り扱い能力を有する大型焼結セラミック体を作製するための装置及び方法の実施形態を提供する。
【0018】
実施形態1.中心軸を有し、約100mm~約625mmの寸法を有する焼結セラミック体を作製する放電プラズマ焼結ツールであって、ツールは、a)内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁が、ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積(SSA)を有する少なくとも1つのセラミック粉末を受容するように構成された内部容積を画定する直径を有する、ダイと、b)ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、上部パンチ及び下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を形成し、間隙は10μm~100μmの幅である、上部パンチ及び下部パンチと、を備える、放電プラズマ焼結ツール。
【0019】
実施形態2.ダイの内壁は、少なくとも1つの伝導性ホイルを含む、実施形態1に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0020】
実施形態3.少なくとも1つの伝導性ホイルは、グラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、又は白金を含む、実施形態2に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0021】
実施形態4.ダイ、上部パンチ、及び下部パンチは、少なくとも1つのグラファイト材料を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0022】
実施形態5.少なくとも1つのグラファイト材料は、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~20μm、5~50μm、5~40μm、5~30μm、5~20μm、5~15μm、及び5~10μmからなる群から選択される粒径を有し、グラファイト材料は、1.45~2.0g/cc、1.45~1.9g/cc、1.45~1.8g/cc、1.5~2.0g/cc、1.6~2.0g/cc、1.7~2.0g/cc、及び1.7~1.9g/ccからなる群から選択される密度を有する、実施形態4に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0023】
実施形態6.少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数からの半径方向偏差は、ツールの中心軸を中心に0.3×10-6ppm/℃以下、0.25×10-6ppm/℃以下、0.2×10-6ppm/℃以下、0.18×10-6ppm/℃以下、0.16×10-6ppm/℃以下、0.14×10-6ppm/℃以下、0.12×10-6ppm/℃以下、0.1×10-6ppm/℃以下、0.08×10-6ppm/℃以下、及び0.06×10-6ppm/℃以下からなる群から選択される少なくとも1つの量変化する、実施形態4又は5に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0024】
実施形態7.少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数からの半径方向偏差は、ダイ並びに上部パンチ及び/又は下部パンチの回転位置に対して0~360度の回転位置にわたって維持される、実施形態6に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0025】
実施形態8.上部パンチ及び下部パンチのうちの少なくとも1つは、電極に結合され、上部パンチ及び下部パンチのうちの少なくとも1つは、ダイとオーム接触している、実施形態1から7のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0026】
実施形態9.ダイ、上部パンチ、及び下部パンチは、少なくとも1つのセラミック粉末において均質な温度分布を作り出す、実施形態1から8のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0027】
実施形態10.少なくとも1つのセラミック粉末は、2~18m/g、3~18m/g、4~18m/g、5~18m/g、6~18m/g、1~16m/g、2~16m/g、4~16m/g、6~16m/g、1~14m/g、1~12m/g、1~10m/g、1~8m/g、2~12m/g、2~10m/g、6~8m/g、及び3~8m/gからなる群から選択される比表面積(SSA)を有し、少なくとも1つのセラミック粉末は、100ppm未満の総不純物を含有し、少なくとも1つのセラミック粉末は、少なくとも約1×10+10オームcmからの抵抗率を有する、実施形態1から9のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0028】
実施形態11.少なくとも1つのセラミック粉末は、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、サファイア、イットリウムアルミニウム単斜晶(YAM)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、コーディエライト、ムライト、コバルタイト、アルミン酸マグネシウムスピネル、二酸化ケイ素、石英、酸化カルシウム、酸化セリウム、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化エルビウム、エルビウムアルミニウムガーネット(EAG)、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化アルミン酸ジルコニウム、酸化ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミン酸ハフニウム、酸化ケイ酸ハフニウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸ランタン、酸化アルミン酸ランタン(LAO)、酸化ケイ酸イットリウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸タンタル、窒化イットリウム、酸窒化イットリウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、サイアロン材料、窒化ホウ素、窒化ベリリウム、窒化チタン、窒化タングステン、フォルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、及びサイアロンからなる群から選択される、実施形態9に記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0029】
実施形態12.ダイ、上部パンチ、及び下部パンチに真空を印加する真空チャンバと、上部パンチに接続された上部パンチ電極と、下部パンチに接続された下部パンチ電極と、上部パンチ電極及び下部パンチ電極に電流を供給する電源と、上部パンチ及び下部パンチに圧力を印加する加圧システムと、ツールの様々な構成要素を動作させるコントローラと、を更に備える、実施形態1から11のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0030】
実施形態13.間隙は、中心軸を中心に軸対称である、実施形態1から12のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0031】
実施形態14.間隙は、中心軸を中心に非対称である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0032】
実施形態15.間隙は、10μm~70μm、20μm~70μm、30μm~70μm、40μm~70μm、50μm~70μm、60μm~70μm、10~60μm、10~50μm、及び10~40μmからなる群から選択される幅を有する、実施形態1から14のいずれか1つに記載の放電プラズマ焼結ツール。
【0033】
実施形態16.1つ以上のコンピューティングデバイスに、約100mm~約625mmの寸法を有する焼結セラミック体を、a)ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積を有する少なくとも1つのセラミック粉末を、放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置することであって、放電プラズマ焼結ツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁は内部容積を画定する直径を有する、ダイと、ダイに動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に10μm~100μm幅の間隙を形成する、上部パンチ及び下部パンチとを備える、配置することと、b)上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つを移動させて、セラミック粉末を焼結温度に加熱しながら、セラミック粉末に圧力を加え、セラミック粉末を焼結して焼結セラミック体を形成することと、c)焼結セラミック体の温度を下げることと、を含む方法によって作製させるように適合された、プロセッサ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体。
【0034】
ダイシステムとパンチシステムとの間に間隙距離を設けることによって、優れた機械的特性を有する大型焼結セラミック体を作製することが可能になる。
【0035】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、同様の番号が同様の要素を示す添付の図面に関連して以下に説明される。
【0037】
図A】当技術分野で知られているSPS装置を示す図である。
図1】セラミック材料の焼結に使用される真空チャンバ(図示せず)内に簡単な配置で置かれたツールセットを有するSPS装置の断面図である。
図2A】1つのホイル層を示す図1の実施形態を示す。
図2B】2つのホイル層を示す図1の代替の実施形態を示す。
図2C】3つのホイル層を示す図1の別の代替の実施形態を示す。
図3A図1のSPS装置の平面図である。
図3B図1のSPS装置の平面図である。
図4】1200℃におけるグラファイト材料A及びBの中心軸の周りの平均熱膨張係数(CTE)の半径方向の変動を示したグラフである。
図5A】200~1,200℃の温度にわたって測定されたグラファイト材料A及びBのCTEの標準偏差をppm/℃で示す。
図5B】200~1,200℃の温度にわたって測定されたグラファイト材料A及びBのCTEの変動を示す。
図6】グラファイト材料A及びBの400~1400℃のCTEを示したグラフである。
図7A】比較的低い抵抗率を有する例示的なセラミック粉末の焼結を示すSPS装置の断面図である。
図7B】中程度の抵抗率を有する例示的なセラミック粉末の焼結を示すSPS装置の断面図である。
図7C】比較的高い抵抗率を有する例示的なセラミック粉末の焼結を示すSPS装置の断面図である。
図8図1のSPS装置における焼結中の温度変動を示す概略図である。
図9】YAGを含む焼結体についての理論密度の%と、実施例2による焼結セラミック体についての最大寸法にわたる密度変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の詳細な説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供するものであり、本発明の範囲、適用性、又は構成を制限することを意図するものではない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、当業者に本発明の好ましい例示的な実施形態を実施することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができる。
【0039】
本発明を実施するための本発明者らにとって既知の最良のモードを含む実施形態を説明する。それらの実施形態の変形例は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者には明らかである。本発明者らは当業者が必要に応じてそのような変形を使用することを想定し、また本発明者らは本発明が具体的に記載された以外でも実施されると想定している。したがって本発明は、適用される法によって認められるように、添付の特許請求の範囲に列記される主題の全ての修正及び等価物を含む。更に、上に説明する全ての可能な変形例における要素の任意の組合せは、文脈において別段の指示がない限り、又は明確な矛盾のない限り、本発明に包含される。更に、方法に関して説明される全ての特徴は、開示されるような装置、SPSツールにも適用される。
【0040】
引用される刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参照が個別に具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が記載されている場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
定義
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈に明確な矛盾のない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に明記されない限り、オープンエンド型の用語(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。値の範囲の列記は、特に指示がない限り、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個別に指すための簡略な方法としての役割を意図するものであり、各々の別個の値は個別に列記されているのと同様に明細書に組み込まれる。記載される全ての方法は、特に指示がない限り、又は文脈に明らかな矛盾のない限り、任意の適切な順序で実行することができる。任意及び全ての例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図するものであり、特に特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠なものとして特許請求されていない任意の要素を示すと解釈されるべきではない。本明細書及び特許請求の範囲における「含む(comprising)」という用語の使用は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」というより狭義の文言を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体」という用語は、「本体」、又は「焼結体」と同義であり、開示されるような粉末から焼結セラミックを生成する圧力及び熱処理プロセスで処理されると、開示されるような粉末組成物から形成されるセラミック物品を指す。特定の実施形態では、「焼結セラミック体」という用語は一体型の本体を指してもよい。「一体型」とは、追加の片なしで、それ自体で完全な単一片又は単一部材を意味し、すなわち、部材は、別の部材と共に一ユニットとして形成された1つのモノリシック片である。
【0043】
「所定の」とは、事前に決定されることを意味し、したがって、所定の特性は、何らかの事象に先立って決定されなければならない、すなわち、選択されなければならない、又は少なくとも知られなければならない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、バルク粉末を含まない様々な汚染物質が存在しないことを指す。例として、100%の純度は、粉末がセラミック材料自体のみを含むことを示す。
【0045】
本明細書で使用される場合、周囲温度は、約22~25℃の温度を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、セラミック粉末は、当業者に公知の方法に従って粉砕、混合、ブレンド、焼成、篩い分けなどされ得る、粉末混合物を形成するための1つ以上の粉末又は粉末の組み合わせを指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、焼結セラミック体が形成され得る出発材料中又は処理中に存在する、典型的には用途において有害であると考えられる元素、化合物、又は他の物質を指す。不純物含有量は、セラミック粉末の総質量に対して測定される。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粉末」は、ASTM C 1274に従って測定した20m/g以上の比表面積(SSA)を有する粉末を包含することが意図される。
【0049】
熱処理プロセスに関連して使用される場合、「焼成」又は「か焼」という用語は、例えば、水分及び/又は表面の不純物を除去し、結晶化度を上昇させ、場合によっては、粉末及び/又は粉末混合物の表面領域を改変するために、空気中で粉末又は粉末混合物に対して行なわれ得る熱処理工程を意味すると理解される。
【0050】
セラミックの熱処理に適用される場合、「アニーリング」という用語は、開示された焼結セラミック体を空気中で一定の温度にして、徐々に放冷して応力を緩和し、及び/又は化学量論を標準化する熱処理を意味すると理解される。
【0051】
当該技術分野で知られている「Sa」という用語は、表面の算術平均高さに関連し、表面全体にわたる算術平均の絶対値を表し、一般に「表面粗さ」と称される。ISO25178-2-2012セクション4.1.7による定義は、定義領域(A)内の縦座標の値の絶対値の算術平均である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「ほぼ」、及び「約」という用語は、数と関連して使用されるためプラス又はマイナス10%の変動が許容される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に高密度化を向上させ、それによって多孔性を低減する添加剤を指す。
【0054】
以下の説明において、所与の範囲は下限及び上限の閾値を含む。したがって、パラメータAの「XからYの範囲」又は「XからYまでの範囲」の意味における定義は、AがX、Yの任意の値及びXからYまでの任意の値であり得ることを意味する。パラメータAの「最大Yまで」又は「少なくともX」の意味における定義は、したがってAがY未満の任意の値及びYであり、又はAがX及びXより大きい任意の値であることをそれぞれ意味する。
【0055】
装置/放電プラズマ焼結ツール
放電プラズマ焼結(SPS)ツールを開示し、それは、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁、及び外壁、を有する側壁を備えたダイと、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチと、を備え、上部パンチと下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を形成し、間隙は10μm~100μmの幅を有し、少なくとも1つのセラミック粉末は、ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積(SSA)を有する。
【0056】
図1は、セラミック粉末を焼結するために使用される簡略化されたダイ及びパンチアセンブリを伴うSPS装置又はツール1を描写する。典型的には、ダイ及びパンチアセンブリは、当業者によって認識されるように、真空チャンバ54内にある。図1を参照すると、SPSツール1は、試料Sを形成する少なくとも1つのセラミック粉末5を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁8を含む側壁を有するダイシステム2を備える。
【0057】
更に図1を参照すると、放電プラズマ焼結ツール1は、ダイシステム2と動作可能に結合された上部パンチ4と下部パンチ4’を備え、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々はダイシステム2の内壁8の直径よりも小さい直径を画定する外壁11を有し、それによって、上部パンチ4及び下部パンチ4’の少なくとも1つがダイシステム2の内部容積内で移動するときに、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々とダイシステム2の内壁8との間に間隙3を形成する。SPSツール1は、ツール1の中心を画定する中心軸9を有する。
【0058】
上部パンチ4、下部パンチ4’、及びダイシステム2の寸法は、特定の用途に従って予め決定することができる。ダイシステム2の外径の一例は約50mmであり、ダイシステム2の内径の一例は約20mmである。ダイシステム2の適切な高さは約40mmである。上部パンチ4及び下部パンチ4’は各々、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々とダイシステム2の内壁8との間の間隙3が約10μm~100μmであるように予め定められた同じ外径を有する。したがって、特定された例示的な寸法に関して、上部パンチ4及び下部パンチ4’の外径は、約19.99mmから約19.95mmまで、約19.90mmまでである。
【0059】
ダイシステム2及び上部パンチ4と下部パンチ4’は少なくとも1つのグラファイト材料、典型的には低強度グラファイトを含み得る。グラファイトは、その高い導電性及び熱伝導性、酸化耐性及び耐摩耗性のために、特に摺動条件において、効果的な接触材料としてSPS装置においてしばしば使用される。特定の実施形態では、グラファイト材料(複数可)は、少なくとも1つの等方性グラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、本明細書に開示するグラファイト材料(複数可)は、例えば、炭素-炭素複合体などの少なくとも1つの強化グラファイト材料、及び等方性グラファイト材料のマトリックス中の炭素などの他の導電性材料の繊維、粒子、又はシート又はメッシュ、又は積層体を含むグラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、ダイシステム2と上部パンチ4及び下部パンチ4’はこれらの等方性及び強化されたグラファイト材料の組合せを含み得る。
【0060】
例えば、ダイ6及びパンチ4と4’などのツール1の部品の一部又は全てに使用されるグラファイト材料は多孔性グラファイト材料を含んでもよく、それは、約5%~約20%、約5%~約17%、約5%~約13%、約5%~約10%、約5%~約8%、約8%~約20%、約12%~約20%、約15%~約20%、約11%~約20%、約5%~15%、6%~約13%、好ましくは約7%~約12%の多孔率を示す。
【0061】
好ましくは、グラファイト材料は、0.4~5.0μm、好ましくは1.0~4.0μmの平均細孔径(細孔直径)を有し、最大30μm、好ましくは最大20μm、好ましくは最大10μmの表面細孔径を有する細孔を含む。より好ましくは、10~30μmの表面細孔径を有する細孔が存在し得る。
【0062】
好ましくは、グラファイト材料は、ISO 25178-2-2012セクション4.1.7に従って測定して、5μm未満、好ましくは0.5~5μm、好ましくは0.5~4μm、好ましくは0.5~3.0μm、好ましくは1~5μm、好ましくは1~4μm、好ましくは1.5~3.5μmの表面粗さ(Sa)を有する。
【0063】
ツール1に使用されるグラファイト材料は、<0.05mm、好ましくは<0.04mm、好ましくは<0.03mm、好ましくは<0.028mm、好ましくは<0.025mm、好ましくは<0.02mm、好ましくは<0.018mm、好ましくは<0.015mm、好ましくは<0.010mmの平均粒径を有し得る。
【0064】
ツール1に使用されるグラファイト材料は、0.001mm、好ましくは>0.003mm、好ましくは>0.006mm、好ましくは>0.008mm、好ましくは>0.010mm、好ましくは>0.012mm、好ましくは>0.014mm、好ましくは>0.020mm、好ましくは>0.025mm、好ましくは>0.030mmの平均粒径を有することができる。
【0065】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、≧1.45g/cm、好ましくは≧1.50g/cm、好ましくは≧1.55g/cm、好ましくは≧1.60g/cm、好ましくは≧1.65g/cm、好ましくは≧1.70g/cm、好ましくは≧1.75g/cmの密度を有し得る。
【0066】
本明細書に開示されるツールに使用されるグラファイト材料は、<2.0g/cm、好ましくは<1.9g/cm、好ましくは<1.85g/cm、好ましくは<1.80g/cmの密度を有し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、グラファイト材料は、約400℃~約2,000℃(又は少なくとも、図に示されるように、約1200℃まで)の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)が、≧3.3×10-6/℃、≧3.5×10-6/℃、≧3.7×10-6/℃、≧4.0×10-6/℃、≧4.2×10-6/℃、≧4.4×10-6/℃、≧4.6×10-6/℃、≧4.8×10-6/℃であってもよい。
【0068】
実施形態では、グラファイト材料は、約400~約2,000℃(又は少なくとも、図に示されるように、約1200℃まで)の温度範囲にわたって、<7.2×10-6/℃、好ましくは<7.0×10-6/℃、好ましくは<6.5×10-6/℃、好ましくは<6.0×10-6/℃、好ましくは<5.75×10-6/℃、好ましくは<5.5×10-6/℃、好ましくは<5.0×10-6/℃、好ましくは<4.8×10-6/℃、好ましくは<4.6×10-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有し得る。
【0069】
実施形態では、少なくとも1つのグラファイト材料は、400℃~500℃の温度で、約3.8×10-6/℃~約7×10-6/℃、好ましくは約4.0×10-6/℃~約7×10-6/℃、好ましくは約4.4×10-6/℃~約7×10-6/℃、好ましくは約4.0×10-6/℃~約6×10-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有し得る。
【0070】
表1に本明細書に開示する例示的なグラファイト材料の特性を列記する。
【表1】
【0071】
図2A図2B、及び図2Cの実施形態に図示されるように、ダイシステム2は、ダイ6、及び任意で、しかし好ましくはダイ6の内壁上に位置する少なくとも1つの伝導性ホイル7を含む。ダイ6の内壁上の伝導性ホイル7の数に制限はなく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の伝導性ホイル7を、ダイ6及び上部パンチ4と下部パンチ4’の各々との間の円周ライナとして設けてもよく、それによって、ダイシステム2の内壁8(存在する場合少なくとも1つの伝導性ホイル7を含む)と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11が間隙3を画定する。少なくとも1つの伝導性ホイル7は、本明細書に開示する方法に従った温度範囲内で安定なグラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、白金、及び他の延性、伝導性材料並びにそれらの組合せを含む。
【0072】
特定の実施形態では、伝導性ホイル7は本明細書に開示する可撓性かつ圧縮性のグラファイトホイルを含み得、以下の特性、すなわち、
● 99wt%超、好ましくは99.2wt%超、より好ましくは99.4wt%超、より好ましくは99.6wt%超、より好ましくは99.8wt%超、より好ましくは99.9wt%超、より好ましくは99.99wt%超、より好ましくは99.999wt%超の炭素含有量、
● ホイルの総質量に対して各々500ppm未満、好ましくは400ppm未満、より好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満の不純物、
● 0.4.0~6.0MPa、好ましくは4.2~5.8MPa、より好ましくは4.4又は5.6MPaの範囲のグラファイトホイルの引張強度、及び/又は
● 好ましくは1.0~1.2g/cc、好ましくは1.02~1.18g/cc、より好ましくは1.04~1.16g/cc、より好ましくは1.06~1.16g/ccの好ましくは範囲内のグラファイトホイルのバルク密度のうちの1つ以上を有する。
特定の実施形態では、伝導性ホイル7は、ツール1の特定の動作中にその厚さの特定の割合を圧縮するように予め決定される。
【0073】
実施形態では、少なくとも1つの伝導性ホイル7は、典型的にはグラファイトを含む。特定の実施形態では、ダイシステム2の一部としての少なくとも1つの伝導性ホイル7は、ダイ6の表面と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々との間の円周ライナを含み得る。
【0074】
グラファイト伝導性ホイル7は、焼結中のセラミック粉末5全体の温度分布を改善することができる。表2は、Neograf Grafoil(登録商標)、Sigraflex(登録商標)、及びToyo Tanso Perma-Foil(登録商標)グラファイトホイル7などの、本明細書に開示される実施形態による例示的なグラファイト伝導性ホイル7の特性を列挙している。
【表2】
【0075】
ここで、図2A図2B、及び図2Cを参照し、グラファイトホイル配置の実施形態を有するSPSツール1を示す。セラミック粉末5は、上部パンチ4及び下部パンチ4’のうちの少なくとも1つの間に置かれ、間隙3は上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11とダイシステム2の内壁8との間に示されている。図2A図2B、及び図2Cに、それぞれ1~3層の伝導性ホイル7を、またダイ6をダイシステム2の一部として示す。したがって、間隙3は、ダイシステム2の内壁8から上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11まで延びる。間隙3の距離、幅、又は寸法は、加熱及び焼結の前及び/又は間にセラミック粉末5が脱ガスする一方で、加熱及び焼結の間にセラミック粉末5にわたる温度分布を改善するために上部及び下部パンチ4、4’とダイ6との間のオーム接触も維持するように、予め決定される。
【0076】
クリアランスは、様々な機械的及び電気的用途において存在する接合間隙である。これらは、機械加工公差のために不可避であることが多い。しかしながら、摩耗、材料の変形又は不完全性のために、クリアランスも変化し得る。望ましくないクリアランスは、不正確な機械加工から生じるか、又は長期の使用から生じる摩耗及び変形から生じるかにかかわらず、本明細書に開示される範囲外であるツール1の間隙3をもたらし得る。開示された間隙3の範囲外の間隙を有するツール1は、密度が低く、例えばディスク形状体の直径にわたって密度変動が大きく、特に大きな寸法で破損しやすい焼結セラミック体を生成する。したがって、これらのツールは、大型焼結セラミック体の製造には有用ではなく、間隙が本明細書に開示される範囲を超えると、ツールは更なる使用から除去される。
【0077】
グラファイト伝導性ホイルは7、例えば、0.025~0.260mm、好ましくは0.025~0.200mm、好ましくは0.025~0.175mm、好ましくは0.025~0.150mm、好ましくは0.025~0.125mm、好ましくは0.035~0.200mm、好ましくは0.045~0.200mm、好ましくは0.055~0.200mmの厚さを有し得る。
【0078】
間隙3の間隔は、上部パンチ4及び下部パンチ4’に最も近いホイル7の内向きの面から、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11の外壁までで測定される。間隙3の間隔の好ましい範囲は、好ましくは10~100μm、好ましくは10~80μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは30~70μm、好ましくは20~60μm、好ましくは30~60μmである。
【0079】
更に、ダイシステム2の内壁8と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙3の幅は、一方では予熱、加熱、及び焼結プロセス中の粉末の脱ガスが十分に容易になるように、他方ではジュール又は抵抗加熱に十分な電気的接触を得て焼結を行なわれるように、当業者は予め決定することができる。間隙3の間隔が10μm未満である場合、ダイシステム2の内部容積内で上部パンチ4及び下部パンチ4’の少なくとも1つを移動させ、それによりツール1を組み立てるために必要な力は、ツール1のパンチ又はダイに損傷を引き起こすことがある。更に、間隙3が10μm未満であると、セラミック粉末5内に吸着されたガス、有機物、湿気などを逃がすことができず、それにより、製造中のプロセス時間が延び、多孔性を残存させることにより、焼結セラミック体の密度を低下させる場合がある。酸化物及び/又は窒化物セラミックと、高い抵抗率(例えば、室温で約1×10+10オームcm程度以上)を有する非導電性混合金属酸化物とを含む酸化物セラミックなどの絶縁材料を焼結するときに間隙3の幅が70μmより大きい場合、局所的な過熱が発生し、焼結中にツール1内に熱勾配が生じることがある。これらの熱勾配は、低い全体的なバルク密度及び高い密度変動、並びに壊れやすく破損しやすい焼結セラミック体をもたらすことがある。その結果、抵抗率の高い(したがって、導電率の低い)非導電性セラミック粉末5から大きな寸法の焼結セラミック体を形成するためには、10μm~70μmの間隙3が好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、絶縁性酸化物又は窒化物セラミックを含むセラミック粉末5を焼結するときのダイシステム2の内壁8と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙3の間隔は、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~70μm、好ましくは30~70μm、好ましくは40~70μm、好ましくは50~70μm、好ましくは30~60μmである。間隙3は、絶縁セラミック粉末(複数可)を含む粉末成形体を横切る熱勾配を低減する。
【0080】
それに対応して、セラミック粉末5が、炭化物及びホウ化物並びに窒化チタンなどの特定の窒化物から選択される非酸化物セラミックを含み、それらの各々が、本明細書に開示される酸化物及び窒化物セラミックと比較して、例えば室温で約1×10-5オームcm~約1×10+10オームcmのオーダーで、より低い抵抗率及び部分コンダクタンスを有し得る場合、間隙3は、より大きく、例えば約10~約100μmであり得る。この増加した間隙は、粉末又は粉末成形体の部分コンダクタンスに起因し得、それによって、部分コンダクタンスは、粉末成形体を通して電流及びそれによって熱を伝達し、したがって、開示されるような非酸化物セラミックを含む粉末又は粉末成形体にわたる熱勾配を低減する。本明細書に開示されるような非酸化物セラミック及び/又は導電性混合金属酸化物などの、いくらかの導電性を有し、それによってより低い抵抗率を有するセラミック粉末5を焼結するとき、100μmを超える間隙3の距離は、焼結中にツールセット内に局所的な過熱及び熱勾配をもたらし得る。これらの熱勾配は、低い全体的なバルク密度及び高い密度変動、並びに壊れやすく破損しやすい焼結セラミック体をもたらすことがある。結果として、本明細書に開示される非酸化物セラミック及び/又は導電性混合金属酸化物を焼結するときのダイシステム2の内壁8と、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙3の距離は、10~100μm、好ましくは10~80μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~100μm、好ましくは40~100μm、好ましくは60~100μm、好ましくは30~80μm、好ましくは40~70μmである。
【0081】
特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、焼結中のダイシステム2の内壁8と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙の間隔は、開示される方法の工程c)による焼結プロセス中に粉末の有機物、水分、吸着分子などの脱ガスを促進するように機能すると考えられる。これは、高密度、低密度変動、及び改善された機械的特性を有する大きなサイズの焼結セラミック体をもたらし、その結果、焼結セラミック体は、破損することなく容易に取り扱うことができ、プラズマ処理チャンバで使用するための本明細書に開示される焼結セラミック構成要素の製造のための特定の形態に機械加工することができる。本明細書に開示するように作製された焼結セラミック体は、焼結セラミック体の最大寸法に関して100mm~約625mmの寸法を有することがある。
【0082】
実際には、上部パンチ4及び下部パンチ4’は、常に中心軸9の周りに完全に整列されているわけではない。図3A及び図3BはSPSツール1の平面図であり、中心軸9の周りの上部パンチ4及び下部パンチ4’、間隙3、任意の数の伝導性ホイル7、及びダイシステム2の配置を示す。図3Aに示した実施形態では、間隙3は中心軸9を中心として軸対称であり得る。図3Bに示した他の実施形態では、間隙3は中心軸9を中心として非対称であり得る。間隙3は、図示されるような軸対称及び非対称の実施形態の両方において、本明細書に開示されるような酸化物及び/又は窒化物セラミックを焼結する場合、10μm~70μmに延びてもよく、本明細書に開示されるような非酸化物セラミックを焼結する場合、10μm~100μmに延びてもよい。
【0083】
図3Bには、3つのデカルト数値座標によって3次元空間内の各点を一意に指定するデカルト座標系(X、Y、Z)が示されており、3つのデカルト数値座標は、同じ長さ単位で測定された、3つの固定された相互に垂直な有向線から点までの符号付き距離である。各基準線は座標軸又は単にシステムの軸と呼ばれ、それらが交わる点は、通常は順序付き3つの組(0,0,0)におけるその原点であり、中心軸9が図3Bの紙と交差する点にある。座標は、原点からの符号付き距離として表現される、3つの軸上への点の垂直投影の位置として定義することもできる。デカルト座標系を使用して、幾何学的形状(曲線など)は、デカルト方程式、すなわち、形状上にある点の座標を含む代数方程式によって記述することができる。例えば、図3Bに示すように、平面の原点を中心とする半径rの円は、座標x及びyが式x+y=rを満たす全ての点の集合として記述することができる。x-y平面は紙面である。z軸は、紙面の内外に延び、紙面に垂直である。
【0084】
間隙の非対称性能は、一定範囲の温度にわたる熱膨張係数(CTE)の半径方向の絶対偏差解析を行なうことによって測定することができる。(CTEは、物体のサイズが温度の変化と共にどのように変化するかを記述する。具体的には、一定の圧力での温度変化度当たりのサイズ変化率を測定する。)例えば、図4は、1,200℃で装置のパンチ4、4’及び/又はダイ6又はSPSツール1として使用することができる2つの等方性グラファイト材料(A及びB)の平均CTEからの半径方向偏差を示す。図4は、グラファイトのx-y平面における平均膨張に対するppm/℃単位での膨張の半径方向偏差を示す(z方向における膨張は、ツール1の動作にとってそれほど重要ではない)。図4は、所望の間隙を大きな温度範囲にわたってうまく維持することができる材料では、例えば室温から2000℃までで、半径方向偏差がx-y平面において最大で>0.3x10-6/℃では平均CTEから変化し得ないことを示している。
【0085】
したがって、本明細書に開示されるような1×10+10以上の抵抗率を有する絶縁セラミック粉末を焼結するために必要な温度範囲にわたって所望の間隙3を維持するために、平均CTEからの半径方向偏差は、好ましくは最小化されてもよく、したがって、半径方向偏差は、対象の温度範囲にわたって、好ましくは0.3×10-6/℃以下、好ましくは0.25×10-6/℃以下、好ましくは0.2×10-6/℃以下、好ましくは0.18×10-6/℃以下である。特定の実施形態では、0.16×10-6/℃以下、好ましくは0.14×10-6/℃以下、好ましくは0.12×10-6/℃以下、好ましくは0.1×10-6/℃以下、好ましくは0.08×10-6/℃以下、好ましくは0.06×10-6/℃以下の平均CTEからの半径方向偏差が、室温からセラミック粉末の焼結温度まで、及び約2,000℃の装置の作業温度までを含む温度範囲にわたって、所望の間隙3を提供するように維持されることが好ましいことがある。x-y平面における少なくとも1つのグラファイト材料の平均CTEからの半径方向偏差の開示された範囲は、ダイ並びに上部パンチ及び/又は下部パンチの回転位置に対して各々、0~360度、好ましくは0~270度、好ましくは0~180度、好ましくは0~90度、好ましくは0~45度、好ましくは10度未満、好ましくは5度未満、好ましくは約3度、好ましくは約1度の中心軸9の周りの回転位置にわたって維持される必要がある。
【0086】
本明細書に開示される約1×10-5~1×10+10の抵抗率を有する部分導電性セラミック粉末を焼結する場合、平均CTEからの半径方向偏差は、0.5×10-6/℃以下、好ましくは0.4×10-6/℃以下、好ましくは0.3×10-6/℃以下、好ましくは0.25×10-6/℃以下、好ましくは0.2×10-6/℃以下、好ましくは0.18×10-6/℃以下、好ましくは0.16×10-6/℃以下、好ましくは0.14×10-6/℃以下、好ましくは0.12×10-6/℃以下、好ましくは0.1×10-6/℃以下、好ましくは0.08×10-6/℃以下、好ましくは0.06×10-6/℃以下であり得る。材料B(破線で示す)は、x-y平面内で許容できないx-y平面においてCTEの広がりを示すが、材料Aは、温度範囲全体を通して許容可能なCTEの広がりを示した。平均CTEからの半径方向偏差に必要な範囲は、限定はしないが、本明細書に開示されるようなCTE膨張の範囲を有するいくつかの異なるグラファイト材料にわたって適用することができる。したがって、開示された半径方向偏差の範囲を満たすグラファイト材料は、例えば4×10-6/℃~7×10-6/℃の範囲のCTEを有することができ、パンチ4、4’及び/又はダイ6の製造に有用であり得る。実施形態では、上部パンチ4及び下部パンチ4’のCTEは、ダイ6のCTE以下であることが好ましい。表3は、例示的な材料Aのx-y平面における最大半径方向偏差(CTEの最大変動)、平均CTE、及びCTEの標準偏差を列挙する。全ての温度にわたるCTEの最大変動の平均は、0.083ppm/℃であると計算された。
【表3】
【0087】
図5Aは、温度範囲にわたる図4の両方の材料のx-y平面におけるグラファイト材料CTEの百万分率(ppm/℃)での標準偏差を示す。図5Bは、温度範囲にわたる図4の両方の材料のx-y平面におけるCTE(最低から最高まで)の絶対変動(半径方向偏差)を示す。x-y平面におけるCTEのより低い標準偏差及び絶対変動を有するグラファイト材料が好ましい。
【0088】
図6は、x軸、y軸、第1の半径(R又はR1)、及び第2の半径(R2)に沿って測定したときの、400℃~1,400℃のグラファイト材料A及びBのCTEの変動を示す。明らかに、材料Aが好ましく、少なくとも1つのグラファイト材料のx-y平面内でより少ないCTE変動を示す。材料Bは、x-y平面内でCTEのより大きな変動を示す。少なくとも1つのグラファイト材料のCTEの絶対値は、本明細書に開示される範囲内で変化してもよいが、CTEは、x-y平面内で0.3ppm/℃未満、好ましくは0.25ppm/℃未満、好ましくは0.2ppm/℃未満、好ましくは0.18ppm/℃未満、好ましくは0.13ppm/℃未満、好ましくは0.1ppm/℃未満、好ましくは0.08ppm/℃未満変化し、また上部パンチ及び下部パンチの各々に対するダイの回転範囲にわたって、各々ダイ並びに上部パンチ及び/又は下部パンチの回転位置に対して0~360°、好ましくは0~270°、好ましくは0~180°、好ましくは0~90°、好ましくは0~45°、好ましくは10°未満、好ましくは5°未満、好ましくは約3°、好ましくは約1°変化することが好ましい。
【0089】
一実施形態に従って使用される特定のSPSツール1の設計の利点は、高くて均一な密度を有する非常に高い純度の大きなセラミック体を得るための全体的な技術的効果をもたらし得、それによって、本開示による焼結プロセス、特にSPSプロセスにおける破壊の傾向が低減される。したがって、ツールセットに関して開示される全ての特徴はまた、100mmを超える寸法の焼結セラミック体の製品にも適用される。
【0090】
本明細書に開示するSPSツール1の使用により、焼結するセラミック粉末5中のより均質な温度分布を実現することが可能になり、非常に高い密度(所与の材料の理論密度の>98%)かつ均一な密度(最大寸法にわたって<4%の変動)を有する、それにより破壊の傾向が低減される焼結セラミック体、特に最大寸法で例えば100mm及び/又は200mmを超える大きな寸法のものを作製することが可能になる。
【0091】
開示するツールセットは更に、スペーサ要素、シム、ライナ、及び他のツールセット構成要素を含んでもよい。典型的には、そのような構成要素は、本明細書に開示する特性を有するグラファイト材料のうちの少なくとも1つから製造される。
【0092】
大型焼結セラミック体の作製方法
上述したSPSツール1は、以下の方法で用いられる。したがって、ツール1に関して開示された全ての特徴は、本方法にも適用され、したがって、本方法に関して開示された全ての特徴は、100mm超、更には最大625mmの最大寸法を有する焼結セラミック体の製品にも適用される。
【0093】
一実施形態では、焼結セラミック体を作製する方法が開示され、この方法は、以下の方法工程:(a)放電プラズマ焼結ツールの内部容積内にセラミック粉末を配置することであって、放電プラズマ焼結ツールが、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁が内部容積を画定する直径を有する、ダイと、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい外径を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を形成し、間隙は10μm~100μmの幅である、上部パンチ及び下部パンチと、を備える、配置することと、(b)内部容積内に真空状態を生成することと、(c)上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つを移動させて、セラミック粉末を焼結温度に加熱しながら、セラミック粉末に圧力を加え、セラミック粉末を焼結して焼結セラミック体を形成することと、(d)焼結セラミック体の温度を下げることと、を含む。
【0094】
この方法は、上述のSPSツールセットが真空チャンバ内に配置され、少なくともダイシステムと上部パンチ及び下部パンチとを備え、これらが一緒になって容積を画定し、焼結装置のツールセットによって画定された容積内にセラミック粉末を配置することによってセラミック粉末の焼結が行われることを特徴とする。ダイシステムは内壁を有し、少なくとも1つのパンチシステムは外壁を有し、ダイシステムの内壁及びパンチシステムの外壁は間隙によって分離される。
【0095】
圧力支援焼結は、SPSによって達成することができる。直流及び関連技術は、導電性ダイ構成を加熱するために直流を使用し、それによって焼結される材料がダイ内に堆積される。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。本明細書に開示されるSPS方法は、好ましくは、パルスなしの連続直流を使用する。
【0096】
次に、具体的な方法工程(a)~(d)について詳細に説明する。
【0097】
方法工程(a):焼結装置のツールセット内にセラミック粉末を配置する工程
セラミック粉末は、上述した焼結装置の上部パンチと下部パンチとの間のダイシステム内に配置される。本発明によるプロセスで使用される放電プラズマ焼結装置は、典型的には円筒形ダイシステムを含む。ダイシステムにはセラミック粉末が配置され、粉末が充填されたダイシステムは、上部パンチと下部パンチとの間に配置される。
【0098】
焼結のためにツール内に配置されるセラミック粉末は、例えば、任意の金属酸化物(酸化物セラミック)、任意の金属窒化物(窒化物セラミック)、任意の金属酸化物の任意の組み合わせ若しくは混合物(混合金属酸化物)から形成されたセラミック粉末、又は本明細書で定義される炭化物、ホウ化物などの非酸化物から形成されたセラミック材料であってもよい。
【0099】
酸化物セラミックスとしては、限定するものではないが、任意の金属酸化物であってもよい。酸化物セラミックスを構成する金属元素は、例えば、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等の半金属元素、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)等の代表的な元素、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の遷移金属元素、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Er)、ルテチウム(Lu)等のランタノイド元素から選択される1つ又は2つ以上であってもよい。中でも、金属元素は、Mg、Y、Ti、Zr、Cr、Mn、Fe、Zn、Al及びErから選択される1つ以上の元素であることが好ましい。
【0100】
より具体的には、酸化物セラミックとしては、例えば、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウム単斜晶(YAM)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、ジルコニア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、シリカ、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、アルミン酸マグネシウムスピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化テルピウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモン含有酸化スズ、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミン酸ジルコニウム、酸化ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミン酸ハフニウム、酸化ケイ酸ハフニウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸ランタン、酸化アルミン酸ランタン、酸化ケイ酸イットリウム、酸化ケイ酸チタン、酸化ケイ酸タンタル、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書に開示される酸化物セラミックは、非常に高い電気抵抗率を有し得、したがって、非導電性絶縁体であり得る。
【0101】
金属窒化物は、限定されないが、任意の金属窒化物であってもよい。窒化物セラミックスを構成する金属元素は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半金属元素、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)等の代表的な元素、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の遷移金属元素、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Er)、ルテチウム(Lu)等のランタノイド元素から選択される1つ又は2つ以上であってもよい。窒化物セラミックスの具体例としては、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。導電性である窒化チタンを除いて、本明細書に開示される窒化物セラミックは、高い電気抵抗率を有し得、したがって、非導電性絶縁体であり得る。
【0102】
混合金属酸化物は、フォルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト及びサイアロン(窒化ケイ素)並びにそれらの混合物などの酸化物を含んでもよい。これらの混合金属酸化物は、組成に応じて、本質的に導電性又は絶縁性であってもよい。
【0103】
非酸化物セラミックスとしては、炭化タングステン、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物が挙げられる。本明細書に開示される炭化物を含む非酸化物セラミックは、適度な電気抵抗率を有することができ、したがって、金属の導電率よりも低く、本明細書に開示される酸化物及び/又は窒化物並びに混合金属酸化物セラミックの導電率よりも高い導電率を有する。
【0104】
非酸化物セラミックスとしては、例えば、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化チタン、又は二ホウ化チタン、窒化チタン等のホウ化物が挙げられる。本明細書に開示されるホウ化物を含む非酸化物セラミックは、適度な電気抵抗率を有することができ、したがって、金属の導電率よりも低く、本明細書に開示される酸化物、窒化物並びに混合金属酸化物セラミックの導電率よりも高い導電率を有する。
【0105】
炭化物及びホウ化物などの非酸化物を含むセラミック粉末は、酸化物、窒化物及び混合金属酸化物の導電率と、非常に低い抵抗率を有する金属材料を含む粉末との間の導電率を有し得る。
【0106】
本発明に開示される焼結方法を実施するためのセラミック粉末出発材料は、少なくとも1つの高純度の市販のセラミック粉末である。実施形態では、放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置されたセラミック粉末は、焼結時に、均一で均質な組成の焼結セラミック体を形成することができる。他の実施形態では、1つ以上の層を含む焼結セラミック体は、所望に応じて同じセラミック粉末又は異なるセラミック粉末から形成されてもよく、これらは層状構成で放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置される。しかしながら、他のセラミック粉末、例えば、化学合成プロセス及び関連する方法から製造されたものも使用することができる。セラミック粉末出発材料の純度は、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.9975%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超であり、いくつかの実施形態では、セラミック粉末の純度は99.9999%超である。換言すれば、セラミック粉末の総不純物レベルは、各々セラミック粉末出発材料の総質量に対して、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは250ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは約3ppm、更により好ましくは1ppm以下(0ppmを含む)であり得る。高純度セラミック粉末出発材料は、高い耐化学腐食性及び耐浸食性を提供し、それによって半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素として使用中の粒子生成を最小限に抑えるのに望ましい。
【0107】
先行技術における他の焼結技術とは対照的に、本開示の方法において用いられるセラミック粉末は、焼結助剤又は有機結合剤又は分散剤を必要とせず、それによって焼結助剤及び/又はポリマー結合剤を含まないか、又は実質的に含まない。実施形態では、本明細書に開示される方法によるセラミック粉末は、18m/g以下、好ましくは1~18m/gの比表面積(SSA)を有してもよく、典型的には、20m/g~200m/g超のSSAを有し得るナノ粉末の比表面積よりも低い。20m/gを超えるSSAを有し、水分/湿度及び吸着ガス含有量が高く、本明細書に開示される粉末成形体を形成するときに充填密度が低下する可能性があるナノ粉末の使用は、より低い密度/より高い多孔度を有する焼結セラミック体を作製することができる。1m/g未満のSSAを有する粉末は、低い粉末比表面積から焼結のための駆動力が低下するため、焼結セラミック体の完全な高密度化をもたらさないことがある。SSAの全ての測定は、ASTM C1274、「Standard Test Method for Advanced Ceramic Specific Surface Area by Physical Adsorption」に従って測定したものに従って実施した。実施形態では、本明細書に開示される方法によるセラミック粉末は、本明細書で定義されるナノ粉末を実質的に含まないか、又は含まない。
【0108】
粉末の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析装置を使用して測定した。セラミック粉末の比表面積は、ほとんどの試料について10%以下の精度で0.01~2000m/gの比表面積にわたって測定することができるHoriba BET表面積分析装置モデルSA-9601を使用して測定した。
【0109】
好ましくは、本明細書に開示されるSPSプロセスにおいて出発材料として使用されるセラミック粉末のd10粒径は、0.05~7μm、好ましくは0.05~6μm、好ましくは0.05~5μm、好ましくは0.05~4μm、好ましくは0.05~3μm、好ましくは0.05~1μm、好ましくは0.1~7μm、好ましくは0.1~6μm、好ましくは0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.2~6μm、好ましくは0.3~6μm、好ましくは0.4~6μm、より好ましくは0.3~4μmであり得る。
【0110】
好ましくは、本明細書に開示されるSPS法において出発材料として使用されるセラミック粉末のメジアン(d50)粒径は、0.15~100μm、好ましくは0.15~75μm、好ましくは0.15~50μm、好ましくは0.15~25μm、好ましくは0.15~10μm、好ましくは0.15~5μm、好ましくは0.15~3μm、好ましくは0.8~80μm、好ましくは0.8~60μm、好ましくは0.8~40μm、好ましくは0.8~30μm、好ましくは0.8~20μm、好ましくは0.8~10μm、好ましくは0.8~5μm、好ましくは1~100μm、好ましくは1~75μm、好ましくは1~60μm、好ましくは1~45μm、好ましくは1~30μm、好ましくは1~20μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μm、好ましくは10~100μm、好ましくは20~100μm、好ましくは40~100μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~40μm、好ましくは30~40μm、好ましくは3~10μm、好ましくは2~8μmであってもよい。
【0111】
好ましくは、本明細書に開示されるSPS法において出発材料として使用されるセラミック粉末のd90粒径は、0.4~250μm、好ましくは0.4~100μm、好ましくは0.4~50μm、好ましくは0.4~25μm、好ましくは0.4~10μm、好ましくは0.4~5μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.4~1μm、好ましくは6~250μm、好ましくは6~200μm、好ましくは6~160μm、好ましくは6~120μm、好ましくは6~80μm、好ましくは6~40μm、好ましくは10~250μm、好ましくは20~250μm、好ましくは30~250μm、好ましくは40~250μm、好ましくは10~250μm、好ましくは10~140μm、好ましくは10~80μm、好ましくは3~80μm、好ましくは10~40μmであり得る。
【0112】
好ましくは、本明細書に開示されるSPS方法において出発材料として使用されるセラミック粉末は、ASTM C1274に従って測定して、1~18m/g、2~18m/g、好ましくは3~18m/g、好ましくは4~18m/g、好ましくは5~18m/g、好ましくは6~18m/g、好ましくは1~16m/g、好ましくは2~16m/g、好ましくは4~16m/g、好ましくは6~16m/g、好ましくは1~14m/g、好ましくは1~12m/g、好ましくは1~10m/g、好ましくは1~8m/g、好ましくは2~12m/g、好ましくは2~10m/g、好ましくは3~8m2/gの比表面積を有し得る。
【0113】
好ましくは、本明細書に開示されるSPS法において出発材料として使用されるセラミック粉末は、粒径の連続分布を含む対数正規粒径分布を有する。単峰性及び二峰性の粒径分布は、焼結前の粉末充填密度の低下をもたらし、それによって焼結セラミック体にわたる密度の低下及び/又はより高い密度変動をもたらし得る。
【0114】
好ましくは、本明細書に開示されるSPS法で使用されるセラミック粉末は、吸着ガス及び/又は表面有機物、水分含有量、閉じ込められたガスなどの量が少ない。粉末は、任意選択で、タンブリング、ブレンド、焼成、篩い分けなどの様々な処理工程にかけられて、総粉末重量に対する重量損失を最小限に抑え、それによって焼結セラミック体中の多孔性を最小限に抑えてもよい。表4は、例示的なセラミック粉末の2回以上の測定にわたる総粉末重量に対する加熱時の総平均重量損失を列挙する。実施形態では、セラミック粉末は、Linseis,Inc.による熱重量分析装置モデル番号STA PT1600を使用して測定して、0.01~0.75%、好ましくは0.01~0.6%、好ましくは0.01~0.45%、好ましくは0.05~0.75%、好ましくは0.1~0.75%、好ましくは0.2~0.75%、好ましくは0.25~0.6%の総粉末重量に対する重量損失を有し得る。
【表4】
【0115】
いくつかの実施形態では、セラミック粉末は、望ましくない水分、有機物又は凝集を除去するような方法で処理されてもよい。そのような加工は、本明細書に開示される方法の工程a)におけるその使用の前及び/又は後に、タンブリング、焼成及び/又は篩い分け及び/又はブレンドを含み得る。
【0116】
特定の実施形態では、セラミック粉末は、ボールミル粉砕、摩擦摩鉱、高せん断混合、遊星ミル、ジェットミル及び当業者に知られている他の手順などの方法に従って湿式又は乾式条件で混合することができる前述の酸化物、窒化物、混合金属酸化物及び非酸化物セラミック並びにそれらの組合せのうちの2つ以上を含むことができる。焼成、乾燥、篩い分け、スクリーニング、タンブリング、ブレンドなどの粉末加工技術を、当技術分野で公知の方法に従って使用することができる。例えば、当業者に知られているように、ボールミル粉砕又は転倒型混合を行うことができる。高純度焼結セラミック体が所望される場合、混合中に出発粉末の純度を維持するために、高純度(>99.99%)媒体を使用してもよい。湿式ボールミル粉砕又はタンブル混合は、出発粉末を、エタノール、メタノール、及び他のアルコール、並びに/又は水などの様々な溶媒中に懸濁してスラリーを形成することによって行うことができる。スラリーは、粉砕又は混合中の粉末充填量が粉末重量の約5~約50%であり、媒体充填量が例えば粉末重量の40~100%であるように形成されてもよい。
【0117】
特定の実施形態では、セラミック粉末は、本開発のプロセスにおける使用の前に、任意選択的に焼成されてもよい。例示的な焼成温度は、酸素含有環境において、4時間~12時間、好ましくは4~8時間、好ましくは4~6時間、好ましくは6~12時間、好ましくは8~12時間、好ましくは6~8時間の持続時間で、約600℃~約1,500℃、好ましくは約700℃~約1,500℃、好ましくは約800℃~約1,500℃、好ましくは約900℃~約1,500℃、好ましくは約1,000℃~約1,500℃、好ましくは約600℃~約1,300℃、好ましくは約700℃~約1,300℃、好ましくは約800℃~約1,300℃、好ましくは約900℃~約1,300℃、好ましくは約1,000℃~約1,300℃、好ましくは約600℃~約1,100℃、好ましくは約700℃~約1,100℃、好ましくは約800℃~約1,100℃、好ましくは約900℃~約1,100℃、好ましくは約1,000℃~約1,100℃の温度を含む。焼成の前及び/又は後に、既知の方法に従って、セラミック粉末を篩い分け及び/又はタンブリング及び/又はブレンドしてもよい。本明細書に開示される出発セラミック粉末(複数可)は、好ましくは結晶性であり、それによって、長距離の結晶学的秩序及びX線回折において識別可能なピークを有する。特定の実施形態では、本明細書に開示される焼成条件は、粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、粒径分布のより大きな変動性がもたらされ得る。したがって、実施形態では、本明細書で言及される粒径は、単一粒子を含むことができ、他の実施形態では、本明細書で言及される粒径は、本明細書で開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定することができる、2つ以上の粒子を含む凝集体又は複数の粒子の凝集体を含むことができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、高密度焼結セラミック体を達成するために必要とされないが、焼結助剤は、本明細書に開示されるような方法及び材料に従って、所望に応じて任意に使用され、セラミック粉末と組み合わせられてもよい。特定の実施形態では、焼結セラミック体は、シリカ、ジルコニア、カルシア、マグネシア、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される焼結助剤を含むことができる。特定の実施形態では、焼結セラミック体は、≧0.002重量%、好ましくは≧0.0035重量%、好ましくは≧0.005重量%、好ましくは≧0.0075重量%の量で任意に添加される焼結助剤を含んでもよい。他の実施形態では、焼結助剤は、任意選択で、≦0.05重量%、好ましくは≦0.03重量%、好ましくは≦0.02重量%の量で添加されてもよい。
【0119】
他の実施形態では、ドーパントは、必要に応じて使用され、本明細書に開示される方法及び材料に従ってセラミック粉末と組み合わされてもよい。例えば、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu並びにそれらの酸化物及び組合せからなる群から選択される希土類酸化物のドーパントを、≦0.05重量%、好ましくは≦0.03重量%、好ましくは≦0.01重量%、好ましくは0.002~0.02重量%の量で、工程aにおいて出発セラミック粉末(複数可)に任意選択で添加することができる。他の実施形態では、ドーパントは、工程a)のセラミック粉末中に、任意選択で、≧0.002重量%、好ましくは>0.0035重量%、好ましくは≧0.005重量%、好ましくは≧0.0075重量%の量で、添加されてもよい。
【0120】
更なる実施形態では、ドーパント及び焼結助剤の両方が、開示されるような方法に従って、セラミック粉末と随意に組み合わせられてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、焼結は、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは100~120分、好ましくは30~60分、好ましくは15~45分の等温時間で行われてもよく、他の実施形態では、等温滞留時間下での焼結は、0~30分間、好ましくは0~20分、好ましくは0~10分、好ましくは0~5分行われてもよい。特定の実施形態では、焼結は、0の等温時間で、又は等温保持時間なしで実行することができ、焼結温度に達すると、本明細書に開示される冷却工程が開始される。
【0122】
方法工程(b):内部容積内に真空状態を生成する
セラミック粉末がダイに装填されると、5~20MPa、好ましくは8~20MPa、好ましくは10~20MPa、好ましくは5~10MPaの圧力が、放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置されたセラミック粉末に加えられ、それによって、圧力を加えた後のセラミック粉末は、20体積%~60体積%、20体積%~55体積%、好ましくは30体積%~60体積%、好ましくは30体積%~55体積%、好ましくは40体積%~60体積%、好ましくは40体積%~55体積%の充填密度を有し得る粉末成形体を形成する。粉末成形体内の熱伝導率を改善し、それによって加熱及び焼結中の粉末成形体全体の温度差を低減するために、より高い充填密度が望ましい。粉末成形体は、分散剤、結合剤、解凝集剤などの有機添加剤を使用せずに、本明細書に開示されるセラミック粉末から形成され、したがって、有機物を含まないか、又は実質的に含まない。その後、当業者に知られている真空条件が、ダイによって囲まれたパンチ間のチャンバ内に確立される。典型的な真空条件としては10-2~10-3トールの圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイト材料を燃焼から保護するために、また粉末から空気の大部分を除去するために真空にされる。
【0123】
方法工程(c)上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つを移動させて、セラミック粉末を焼結温度に加熱しながら、セラミック粉末に圧力を加え、セラミック粉末を焼結して焼結セラミック体を形成し、
方法工程(d)焼結セラミック体の温度を下げる。
セラミック粉末がダイ内に配置され、空気の大部分がダイ/粉末から除去された後、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つを他方に向かって軸方向に移動させることによって、グラファイトパンチ間に配置されたセラミック粉末に圧力が加えられる。圧力は、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、10MPa~20MPa、好ましくは15MPa~40MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは15MPa~20MPa、好ましくは15MPa~25MPa、好ましくは20~40MPa、好ましくは20~30MPaに上昇される。
【0124】
好ましい実施形態では、セラミック粉末は、SPS装置のパンチ及びダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗性/ジュール加熱を容易にする、本明細書に開示されるようないくつかのグラファイト材料などの導電性材料で構成される。SPS装置及び手順は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されている。
【0125】
ダイに供給されたセラミック粉末に熱を加えることにより、約1,000~1,700℃、好ましくは約1,200~1,600℃、好ましくは約1,300~1,550℃、好ましくは約1,350~1,500℃、より好ましくは約1,400~1,500℃の焼結温度が容易になる。
【0126】
図7A図7B、及び図7Cは、本明細書に開示されるような間隙3を有するSPSツール1における電流経路及び加熱に対する異なる種類のセラミック粉末の影響を示す。図7Aにおいて、セラミック粉末5は、1次導電性粉末(例えば、金属粉末)である。ここで、粉末抵抗率はグラファイトより小さく、電流は、ダイ6又はダイシステム2内に延びるのではなく、上部パンチ4からセラミック粉末5を通って下部パンチ4内に直接流れ、上部パンチ4と下部パンチ4との間に配置されたセラミック粉末5にわたる均一な焼結を容易にする。したがって、金属セラミック粉末5の場合、間隙3の寸法は、電流経路及び加熱に無関係である。
【0127】
図7Bにおいて、セラミック粉末5は部分導体であり(例えば、約1×10-5~1×10+10の抵抗率を有する、例えば、本明細書に開示されるように部分的に導電性である非酸化物セラミック及び/又は混合金属酸化物)、部分導体の抵抗率は、グラファイトの抵抗率よりも大きいか、ほぼ同じであるか、又は小さくてもよい。この実施形態では、図7Bに示すように、電流は、粉末の抵抗率に応じて、上部パンチ4からセラミック粉末5とダイ6又はダイシステム2のグラファイトとの両方を通って流れる。したがって、適切な電流の流れ及びセラミック粉末5の加熱を確実にするために、グラファイトダイ6(又はグラファイトダイシステム2)と上部パンチ4及び下部パンチ4’との間の間隙3のサイズは、好ましくは10~100μmである。図7Bによる間隙は、周囲温度から、焼結される部分導電性セラミック粉末の特定の焼結温度まで、及び約2,000℃の装置の最大温度まで維持される。
【0128】
図7Cでは、セラミック粉末5は絶縁体であり(例えば、本明細書に開示されるような酸化物セラミック、窒化物セラミック、及び非導電性混合金属酸化物)、電流は、上部パンチ4からグラファイトダイ6(又はグラファイトダイシステム2)のみを通って下部パンチ4へと進み、セラミック粉末5を焼結する。この実施形態では、図7Cに示されるように、セラミック粉末5を通って大きな電流は流れない。この実施形態による少なくとも1つのセラミック粉末5は、例えば、1×10+10より大きい抵抗率を有することができる。10~70μmの間隙距離によって、焼結プロセス中の酸化物セラミック粉末5にわたる均質な温度分布、したがって高く均一な密度及び低い多孔性が可能になる。図7Cによる間隙は、周囲温度から、焼結される絶縁セラミック粉末の特定の焼結温度まで、及び約2,000℃の装置の最大温度まで維持される。
【0129】
グラファイトダイ6内(又はグラファイトダイシステム2内)並びに上部パンチ4及び下部パンチ4’内の温度勾配は、2つの同時に起こる現象、すなわち、発熱及び熱伝導によって促進され得る。熱の発生は、バルク又は接触界面のいずれかで起こり得る。SPSツール1では、後者は主にパンチ/ダイ接触抵抗によって制御される。電気接触抵抗(Rc)は、式Rc=1/(Ac*σ)に従って接触面積に関連し、式中、Ac(m)は接触面積であり、σ(Ω-1-2)は電気間隙コンダクタンスである。電気用途では、過剰な接合間隙の存在は、界面を横切る無効な電流の流れにつながり得る。状況によっては、それらはアーク放電を引き起こすことさえある。クリアランス比δは、δ=100%*(D-d)/Dとして定義され、式中、Dはダイ直径であり、dはパンチ直径である。
【0130】
図8を参照すると、ダイシステム2の内壁8とSPSツール1の中心軸9との間の距離にわたる温度差が示されている。温度差は、100℃未満、1~100℃、好ましくは1~80℃、好ましくは1~60℃、好ましくは1~40℃、好ましくは1~20℃、好ましくは1~10℃、好ましくは5~100℃、好ましくは10~100℃、好ましくは20~100℃、好ましくは5~75℃、好ましくは5~50℃、及び好ましくは5~25℃であってもよく、それによって、この温度差は、加熱及び焼結中にセラミック粉末5に適用されて、焼結中にセラミック粉末5にわたる均質な温度分布を達成する。焼結中の粉末5にわたる温度の均一性は、パンチ及びダイの寸法が増加するにつれて、より大きな課題を提起する。したがって、より大きい寸法で開示される温度の均一性は、パンチ及びダイのより小さい寸法でより容易に達成され得、したがって、より大きいセラミック体を焼結するときに開示される温度の小さい(すなわち、例えば25℃以下)変動は、より小さいセラミック体について開示されるものと少なくとも同程度又はそれ未満に変動すると仮定され得る。
【0131】
焼結セラミック体の最大寸法にわたる温度勾配は、最大寸法にわたる温度の正規化された変化によって表すこともできる。したがって、特定の実施形態では、加熱及び焼結中の焼結装置のツールセットによって画定される内部容積内に配置された少なくとも1つのセラミック粉末5にわたる温度差は、焼結中のセラミック粉末にわたる均質な温度分布を達成するために、0.15~5℃/cm、好ましくは0.15~3℃/cm、好ましくは0.15~2℃/cm、好ましくは0.15~1℃/cm、好ましくは0.15~0.5℃/cm、好ましくは0.4~5℃/cm、好ましくは0.4~3℃/cm、好ましくは0.4~1℃/cm、好ましくは0.25~0.80℃/cmである。「均質」という用語は、材料又はシステムが全体として実質的に同じ特性を有し、不規則性がなく均一であることを意味する。したがって、「均質な温度分布」とは、温度分布が空間的に均一であり、著しい勾配を有さないこと、すなわち、セラミック粉末5に沿った水平x-y平面内の位置にかかわらず、実質的に均一な温度が存在することを意味する。より具体的には、「均質な温度分布」とは、加熱及び焼結中の焼結装置のツールセットによって画定される内部容積内に配置された少なくとも1つのセラミック粉末5にわたる温度分布が、最大で0.15~5℃/cmであることを意味する。
【0132】
図9は、YAGについての理論密度(4.556g/ccとして報告される)のパーセント(%)、及び以下に開示される実施例2の試料506による焼結セラミック体についての最大寸法にわたる密度変動を示す。焼成された粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置によって画定される内部容積内に配置し、ツールは約50~70μmの間隙を有し、内部容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。内部容積内の焼成粉末混合物を5℃/分で800℃まで加熱し、この温度で5MPaの圧力を加えて約40~50体積%の充填密度を有する粉末成形体を形成し、次いで同時に約2~約3℃/分の加熱速度で加熱し、約0.2~約0.25MPa/分の速度で圧力を加えて1,650℃及び15MPaの焼結条件に60分間到達させて、最大寸法又は直径が622mmのディスク形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。密度測定は、試料の半径を横切って切断された試料からASTM B962-17に従って実施され、密度結果は図9に示される通りである。半径に沿った6つの位置で各々5回の測定を行い、4.55g/ccの平均密度が測定され、これはYAGの理論値の99.78%に相当する。半径にわたる密度は、YAGの理論値の99.7~99.9%であった。図9に示される密度の変動は、半径に沿った最高密度測定値に対して測定され、0.21%の最大密度変動が測定された。焼結粉末混合物の焼結中に、圧力及び温度を半径方向に対称な構成で加えた。したがって、高密度(>YAGの理論値の99%)及び最小密度変動(<0.21%未満)などの特性が、半径にわたって維持され、それに対応して焼結セラミック体の直径又は最大寸法にわたっても維持される。したがって、4.546g/ccの平均密度を有し、直径にわたる密度がYAGの理論密度の99.7~99.9%の範囲であり、焼結セラミック体の直径にわたる最大密度変動が0.21%以下である、焼結セラミック体が本明細書に開示される。
【0133】
本明細書に開示される間隙寸法の範囲を有するSPSツールセットを使用することによって、間隙が方法全体を通して、特に開示される方法の焼結工程c)中に維持され、抵抗過熱が防止され、その結果、焼結セラミック体の密度がダイシステム2の内壁8と中心軸9との間の距離にわたって最小の変動を有するように、この温度差を最小化することができる。焼結中の均一な高密度化は、焼結セラミック体の最大寸法にわたって、好ましくは4%未満、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、好ましくは0.25~5%、好ましくは0.25~4%、好ましくは0.25~3%、好ましくは0.25~2%、好ましくは0.25~1%、好ましくは0.25~0.5%、好ましくは0.5~3.5%、及び好ましくは1~3%である、本明細書に開示される焼結セラミック体の最大寸法にわたって密度変動をもたらし得る。
【0134】
焼結中の均一な高密度化に更に寄与するのは、焼結前の本明細書に開示されるセラミック粉末5を含む粉末成形体の30~60体積%の高い充填密度であり、これは、開示されるセラミック粉末及び方法を使用して達成され得る。
【0135】
本開示による焼結装置の温度は、典型的には、焼結装置の少なくとも1つのグラファイト材料を含むダイ内で測定される。したがって、指示された温度が実際にセラミック粉末5内で実現されるように、焼結されているセラミック粉末5に可能な限り近い温度が測定されることが好ましい。
【0136】
一実施形態で、圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変更し得、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態ではまた、最初に所望の温度に達するように示された加熱を行ない、その後に、示された圧力を加えることが可能である。本開示による第3の実施形態では、焼結するセラミック粉末5に温度と圧力を同時に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0137】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内のセラミック粉末5を間接的に加熱するために使用することができる。
【0138】
他の焼結技術とは対照的に、焼結前の粉末の作製、すなわち、焼結前に結合剤、分散剤などの有機添加剤を使用して冷間プレス又はグリーン体を形成することによる作製は必要ではなく、粉末は、SPSツール1の内部容積内に直接充填されて、前述の有機添加剤を使用せずに粉末成形体を形成する。この処理工程の減少によって、最終的な焼結セラミック体のより高い純度が得られてもよい。
【0139】
方法工程c)の態様によれば、温度及び圧力は、焼結を行うために、1分~360分、好ましくは1~240分、好ましくは1~120分、好ましくは1~60分、好ましくは5~360分、好ましくは10~360分、好ましくは30~360分、好ましくは45~360分、好ましくは60~360分、好ましくは60~90分の期間にわたって維持される。焼結方法の工程c)の終わりに、焼結されて焼結セラミック体を形成するセラミック粉末5は、好ましくは、工程e)の任意選択のアニーリングプロセスを容易にすることができる温度に達するまで、方法チャンバの自然対流(非強制冷却)に従って冷却される(工程d)。更なる実施形態では、現在焼結されているセラミック素体は、対流下で不活性ガス、例えば1バールのアルゴン又は窒素で冷却されてもよい。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。冷却工程を開始するために、SPSツール1に印加された電力を除去することができる。焼結試料に加えられた圧力は、(自然)冷却が起こる前に焼結プロセスの終わりに除去される。
【0140】
焼結セラミック体を形成するために粉末を焼結する際の約30%の体積減少が、焼結工程前のセラミック粉末5の充填密度に依存して起こり得る。
【0141】
方法工程(e):任意の工程において、焼結セラミック体に熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させ、アニーリング温度に到達させてアニールを行う。
方法工程(f):焼結装置に適用された熱源を除去することによって、焼結セラミック体の温度を周囲温度まで低下させ、焼結セラミック体を除去する。
任意選択の工程(e)では、工程(d)で得られた焼結セラミック体にアニーリングプロセスを施す。アニーリングは焼結装置の外部の炉内で、又は焼結セラミック体を装置から取り出すことなく、焼結装置自体の中で行なわれてもよい。例えば、一実施形態では、プロセス工程(d)による冷却後に焼結セラミック体を焼結装置から取り出して、アニーリングのプロセス工程を、炉などの別個の装置内で行なってもよい。他の実施形態では、本開示によるアニーリングの目的のために、工程(c)で形成されるセラミック体を、焼結工程(c)と任意選択のアニール工程(e)との間に焼結装置から取り出す必要なしに、焼結装置内で続けてアニールしてもよい。
【0142】
アニーリングによって、焼結セラミック体の化学的及び物理的特性を改良することができる。アニールの工程は、ガラス、セラミック、及び金属のアニールに使用される従来の方法によって行なうことができ、改良の程度は、アニール温度及びアニールを継続させる持続時間の選択によって選択することができる。
【0143】
任意選択のアニーリング工程(e)は、1,200~1,800℃、好ましくは1,250~1,700℃、より好ましくは1,300~1,650℃の温度で行うことができる。このような温度において、結晶構造中の酸素空孔は、化学量論比に戻るように修正され得る。
【0144】
焼結セラミック体をアニールする工程は、5分~24時間、好ましくは20分~20時間、好ましくは60分~16時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間で完了することができる。
【0145】
任意選択のアニーリング方法工程(e)は、好ましくは、空気中などの酸化雰囲気中で実施される。
【0146】
焼結セラミック体をアニールする任意選択の方法工程(e)が行われた後、アニールされた焼結セラミック体の温度は、上記の方法工程(d)に従って周囲温度まで下げられる。このようにして製造された、焼結され、特定の実施形態ではアニールされたセラミック体は、高密度であり、典型的には、0.25μm~18μm、好ましくは0.25~13μm、好ましくは0.25~10μm、好ましくは0.25~8μm、好ましくは0.25~5μm、好ましくは0.5~18μm、好ましくは0.75~18μm、好ましくは1~18μm、好ましくは2~18μm、好ましくは5~18μm、好ましくは0.5~10μm、好ましくは0.75~8μm、好ましくは0.75~5μmの平均粒径を有する。
【0147】
実施形態では、本開示による焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、本明細書に開示される特性を有するセラミック粉末から形成される、非導電性の金属酸化物、窒化物、又は混合金属酸化物を含んでもよい。
【0148】
代替的な実施形態では、本開示による焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、本明細書に開示されるような特性を有する、フォルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト及びサイアロン、並びにこれらの混合物などの混合金属酸化物から形成された焼結セラミック体を含み得る。本明細書に開示される混合金属酸化物は、導電性又は絶縁性であってもよく、開示される特定の間隙幅、装置、及び方法に従って形成されてもよい。
【0149】
一実施形態による上述のSPS法は、100mm以上の最大寸法を有する大型焼結セラミック体の作製における使用に適している。開示される方法は、迅速な粉末圧密及び高密度化を提供し、いくつかの実施形態では、出発セラミック粉末の粒径から移された、焼結体中の小さい(18μm未満程度の)平均粒径を保持し、最大寸法にわたる密度変動が<4%である特定の材料の理論密度の98%を超える高密度を達成する。微細粒径、均一及び高密度のこの組合せは、機械加工、取り扱い及び半導体処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大寸法の高強度焼結セラミック体を提供する。したがって、特定の実施形態によれば、本開示による焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、本明細書に開示される特性を有する100mm超の直径を有する金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、又は混合金属酸化物を含み得る。
【0150】
例えば、一実施形態では、焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、本明細書に開示されるような粉末から、40mm~625mmのサイズの寸法及び約3mm~約60mm、好ましくは5~50mmの厚さの範囲にわたる寸法を有するディスク形状に形成され得る。別の実施形態では、焼結(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、直径100mm~625mmの直径を有するディスク形状に形成されてもよい。代替的な実施形態では、焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、100mm~406mmの最大寸法を有するように形成することができる。他の実施形態では、焼結された(及び特定の実施形態ではアニールされた)セラミック体は、各々焼結セラミック体の最大寸法に関して、200mm~625mm、好ましくは300~625mm、好ましくは350~625mm、好ましくは400~625mm、より好ましくは450~625mm、より好ましくは500~625mm、より好ましくは550~625mmのサイズを有する。
【0151】
最後に、焼結された(又は焼結及びアニールされた)セラミック体は、次いで、任意選択で、例えば、誘電体窓又はRF窓、フォーカスリング、ノズル又はガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、電子ウェハチャック、チャック、パック、混合マニホールド、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び保護リングなどの、プラズマ処理チャンバで使用するための最終構成要素に機械加工されてもよい。焼結部品を作製するための焼結セラミック体(又は焼結及びアニールされた)の機械加工は、当業者に公知の方法に従って実施されてもよい。
【0152】
本明細書に開示される方法は、焼結セラミック体/部品、特に、例えば、最大寸法にわたって100~625mmを超える寸法の焼結セラミック体/構成要素の高密度及び関連する低気孔率、最小密度変動、高純度、高機械的強度、及びそれによる取扱性を提供する。方法に関して開示される全ての特徴は、本明細書に開示される焼結セラミック体の製品にも適用される。
【0153】
本開示はまた、大型焼結セラミック体を作製するためのSPSツール1におけるコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、コンピュータシステム、及びコントローラ80を提供する。方法工程の各々は、コンピュータ又はコントローラ80などのコンピューティングデバイスによって実行することができる。いくつかの実施形態では、方法工程の全てがコントローラ80によって実行される。方法は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組合せで実装され得る。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つのプロセッサ、プロセッサによって読み取り可能な記憶媒体(例えば、揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶要素を含む)、並びに入力及び出力デバイスを含む、プログラム可能コンピュータシステム上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムにおいて実施される。コンピュータシステムは、1つ以上の物理マシン、又は1つ以上の物理マシン上で動作する仮想マシンを備えてもよい。更に、コンピュータシステムは、インターネット又は他のネットワークによって接続されたコンピュータのクラスタ又は多数の分散コンピュータを含むことができる。
【0154】
各コンピュータプログラムは、コンピュータシステムのランダムアクセスメモリに常駐するコードモジュール内の命令又はプログラムコードのセットであり得る。コンピュータシステムによって必要とされるまで、命令のセットは、別のコンピュータメモリ(例えば、ハードディスクドライブ、又は光ディスク、外部ハードドライブ、メモリカード、若しくはフラッシュドライブ等のリムーバブルメモリ)に記憶されてもよく、又は別のコンピュータシステムに記憶され、インターネット若しくは他のネットワークを介してダウンロードされてもよい。各コンピュータプログラムは、様々なコンピュータプログラミング言語で実施することができる。
【0155】
開示された方法(コンピュータ実施方法を含む)、コンピュータプログラム、コンピュータシステム、及び大型焼結セラミック体を作製するための装置は、各々、全体として、抽象的な概念をはるかに超える豊富な工程及び要素を列挙している。最初の事項として、方法、プログラム、システム、及び装置は各々、大型焼結セラミック体を作製するための特定の規則に基づくアプローチを教示する。方法、プログラム、システム、及び装置は各々、個々の工程及び要素によって定義される特定の要件を有する順序付けられた組合せを教示する。これらの規則の特定の開示された工程及び要素は広く普及しておらず、それらの組合せは、十分に理解された日常的な従来の活動ではない。むしろ、これらの規則の特定の開示された工程及び要素は、開示された方法、プログラム、システム、及び装置によって実現される改善を可能にする。
【0156】
更に、開示された方法、プログラム、システム、及び装置の1つの焦点は、コンピュータ能力における特定の主張された改善にある。これらはコンピュータ自体の機能を向上させる。本開示に関連するコンピュータに対する改良は、論理構造及びプロセスに対するソフトウェアの改良を含む。コンピュータ技術においてなされた進歩の多くは、その性質上、特定の物理的特徴によって定義されず、むしろ論理構造及び方法によって定義され得るソフトウェアに対する改良からなる。開示された方法、プログラム、システム、及び装置の特定の工程及び要素は、コンピュータがメモリにデータを記憶し、取り出す方法を改善するように設計された特定のタイプのデータ構造を構成する。開示される方法、プログラム、システム、及び装置は、コンピュータの機能を改善すること、及び大型焼結セラミック体を作製する技術的作業を改善することを対象とする。既存の技術的タスクを改善したのは、コンピュータの使用ではなく、開示された工程及び要素の組み込みである。コンピュータ関連技術の改善は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク自体の動作の改善に限定されず、コンピュータ関連技術を改善する1組の「規則」(基本的に数学的関係)も含むことができる。
【0157】
更に、開示される方法、プログラム、システム、及び装置は、コンピューティングデバイスが、高い密度、低い密度変動、及び本体が破損することなく容易に取り扱われ得るような改善された機械的特性を有する大型焼結セラミック体(焼結セラミック体の最大寸法に関して100mm~625mmの寸法)を作製することなど、以前に行うことができなかったことを行うことを可能にする。開示された方法、プログラム、システム、及び装置は、大型の焼結セラミック体を作製する分野において特に生じる問題を克服するために、必然的にコンピュータ技術に根ざした解決策を提供する。説明されるように、開示される方法、プログラム、システム、及び装置は、大型焼結セラミック体を作製するために使用される既存の方法、プログラム、システム、及び装置の計算限界を克服するための特定のアプローチを教示する。開示された方法、プログラム、システム、及び装置は、特定の、新規の、かつ非自明な方法で大型焼結セラミック体を少なくとも正確かつ効率的に作製することによって、既存の方法、プログラム、システム、及び装置の欠点を克服する。
【0158】
本開示はまた、1つ以上のコンピューティングデバイスに、
a.ASTM C1274に従って測定される1~18m/gの比表面積を有する少なくとも1つのセラミック粉末を、放電プラズマ焼結ツールの内部容積内に配置することであって、放電プラズマ焼結ツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁は内部容積を画定する直径を有する、ダイと、ダイに動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチであって、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に10μm~100μm幅の間隙を形成する、上部パンチ及び下部パンチとを備える、配置することと、
b.上部パンチ及び下部パンチの少なくとも1つを移動させて、セラミック粉末を焼結温度に加熱しながら、セラミック粉末に圧力を加え、セラミック粉末を焼結して焼結セラミック体を形成することと、
c.焼結セラミック体の温度を下げることと、によって、装置又はツール1を動作させるように適合された、プロセッサ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体を提供する。
【0159】
プロセッサ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体は、任意選択で、1つ以上のコンピューティングデバイスに、
d.焼結セラミック体に熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させ、アニーリング温度に到達させてアニールを行うことと、
e.焼結酸化イットリウム体に適用された熱源を除去することによって、焼結及びアニールされたセラミック体の温度を周囲温度まで低下させることと、
f.焼結セラミック構成要素を作製するために、焼結及びアニールされたセラミック体を機械加工することであって、構成要素が、誘電体窓若しくはRF窓、リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、電子ウェハチャック、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、及び/又はエッチングチャンバ内の保護リングからなる群から選択される、ことと、によって装置又はツール1を動作させるように適合される。
【実施例
【0160】
以下の実施例に本開示の全体的な性質をより明確に示す。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0161】
全ての粒径の測定は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaのモデルLA-960レーザー散乱型粒径分布分析装置を使用して行なった。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の全ての比表面積(SSA)の測定は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoribaのBET表面積アナライザ モデルSA-9601を使用して行なった。純度及び不純物は、Agilent7900 ICP-MSモデルG8403のICP-MSを使用して測定した。全ての密度測定は、当業者に知られているアルキメデス法に基づいて、ASTM B962-17に従って行った。実施例1~4による酸化物粉末及びそれから形成されるセラミックの実施形態は、約1×10+10オームcm以上の抵抗率を有する本質的に絶縁性の高抵抗材料であることが知られている。
【0162】
「装置」及び「ツール」という用語は、放電プラズマ焼結装置に関して互換的に使用される。
【0163】
比較例1
【0164】
比表面積が4.5~6.5m/gであり、d10粒径が1.5~3.5μm、d50粒径が4~6μm、d90粒径が6.5~8.5μmである酸化イットリウムの結晶性粉末から、最大寸法が406mmの多結晶焼結セラミック体を作製した。この粉末は、酸化イットリウム粉末の全質量に対して約14ppmの総不純物を有していた。放電プラズマ焼結ツールのダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ツールのダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。粉末は、放電プラズマ焼結ツールによって画定される内部容積内に配置され、ツールは、約100μmの間隙を有していた。間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、放電プラズマ焼結ツールの上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。10-2~10-3トルの真空条件を内部容積の内側に作り出した。この粉末を1,400℃、20MPaの圧力で30分間焼結して、406mmの最大寸法又は直径を有するディスク形状の焼結セラミック体を形成した。試料の全体的な密度は、4.78g/cc、又は酸化イットリウムの理論密度(5.03g/ccとして報告される)の95.03%として測定された。密度変動は、最大寸法にわたる最高密度測定値に対して約4.5%であると測定された。本実施例に従って開示されるような間隙を有する放電プラズマ焼結ツールを使用して作製された焼結セラミック体は、低い全体的密度、高い密度変動、及びその後の焼結体の破壊をもたらした。
【0165】
比較例2(試料363):
【0166】
高純度(>99.99%)酸化イットリウム及び酸化アルミニウム粉末を組み合わせて、モル比で粉末混合物を形成して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体を形成した。当業者に知られているように湿式タンブル混合を行った後、粉末を1,000℃で10時間焼成した。焼成粉末混合物は、約3.5~5.5m/gの比表面積(SSA)、約0.8~2μmのd10粒径、約90~110μmのd50粒径、及び約240~250μmのd90粒径を有していた。特定の実施形態では、本明細書に開示される焼成条件は、粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、粒径分布のより大きな変動性がもたらされ得る。したがって、実施形態では、本明細書で言及される粒径は、単一粒子を含むことができ、他の実施形態では、本明細書で言及される粒径は、本明細書で開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定することができる、2つ以上の粒子を含む凝集体又は複数の粒子の凝集体を含むことができる。
【0167】
放電プラズマ焼結ツールのダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ツールのダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。焼成粉末混合物は、放電プラズマ焼結ツールのツールによって画定された内部容積内に配置され、ツールは周囲温度で約50~70μmの間隙を有し、間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、放電プラズマ焼結ツールの上部及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。内部容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出し、約5MPaの圧力を加えて、焼成粉末混合物から約50%の充填密度を有する粉末成形体を形成した。内部容積内の粉末成形体は、本明細書に開示される方法に従って加熱された。加熱時に、粉末成形体の圧密は焼結装置によって検出されなかった。したがって、ダイ及び/又は上部パンチ及び下部パンチを備える少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数(CTE)の半径方向変動は、本明細書に開示される方法による温度範囲にわたって(周囲温度から約2,000℃の装置の焼結及び/又は動作最高温度を含む、それまで)0.3×10-6ppm/℃を超え、したがって、10~70μmの必要な間隙距離は、周囲温度から2,000℃を含む、それまでの必要な温度範囲にわたって維持することができなかった。この実施例に従って作製された焼結セラミック体は、ツールから除去する際に破砕し、低密度、したがって低強度を示した。
【0168】
実施例1(試料353高密度、大寸法多結晶焼結セラミック体):
【0169】
比表面積が6~8m/gであり、d10粒径が1~3μm、d50粒径が4~6μm、d90粒径が7.5~9.5μmである酸化イットリウムの結晶性粉末から、最大寸法が406mmの焼結セラミック体を作製した。この粉末は、酸化イットリウム粉末の全質量に対して約25ppmの総不純物を有していた。放電プラズマ焼結ツールのダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。イットリア粉末は、周囲温度で約50~約70μmの間隙を有する、放電プラズマ焼結ツールによって画定された内部容積内に配置され、間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、焼結ツールの上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。酸化イットリウム粉末への予備加圧は、約10-2~10-3トルの真空下で約10MPaの圧力を予備加圧して約35~45体積%の充填密度を有する粉末成形体を形成する多工程プロセスで行った。粉末成形体を1,550℃の温度、20MPaの圧力で60分間焼結した。ダイ及び/又は上部パンチ及び下部パンチを構成する少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数(CTE)からの焼結ツールの中心軸の周りの半径方向の変動は、約0.2×10-6ppm/℃以下であると決定された。5回の測定にわたる平均密度を求めたところ、5.020g/ccの密度、すなわち酸化イットリウムの理論密度の99.80%であった(D.R.Lide,CRC Handbook of Chemistry and Physics,84th Edition,2012(“the CRC Handbook”)に記載されているように、酸化イットリウムの理論密度は5.03g/cmである。したがって、本明細書に開示されるような特定の間隙距離及び半径方向変動を有するツールを使用して、大寸法の高密度焼結セラミックを形成することができる。
【0170】
実施例2(試料506大寸法の多結晶YAG焼結セラミック体)
【0171】
比表面積が2~3m/g、d10粒径が2.5~4.5μm、d50粒径が6~8μm、d90粒径が11~13μmのイットリア粉末(平均純度99.998%、平均不純物が酸化イットリウム粉末の総質量に対して約21ppm)と、比表面積が6.5~8.5m/g、d10粒径が0.75~1.5μm、d50粒径が2~5μm、d90粒径が18~24μmのアルミナ粉末(純度99.9994%、不純物が酸化アルミニウム粉末の総質量に対して約6ppm)とを、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体が形成されるモル比で配合した。当業者に公知のボールミル粉砕を行い、空気中、1,050℃で6時間焼成すると、焼成粉末混合物は、3.5~5.5m/gの比表面積、1~3.5μmのd10粒径、5~8μmのd50粒径、及び130~160μmのd90粒子/凝集体サイズを有すると測定された。特定の実施形態では、本明細書に開示される焼成条件は、粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、粒径分布のより大きな変動性がもたらされ得る。したがって、実施形態では、本明細書で言及される粒径は、単一粒子を含むことができ、他の実施形態では、本明細書で言及される粒径は、本明細書で開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定することができる、2つ以上の粒子を含む凝集体又は複数の粒子の凝集体を含むことができる。
【0172】
焼成粉末混合物の純度は出発粉末の純度とほぼ同じであった。粉末、粉末混合物、及び/又は焼成された粉末混合物は、公知の方法に従って様々なプロセス工程で篩い分け、タンブリング、ブレンド、及び/又は粉砕されてもよい。放電プラズマ焼結装置のダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ツールのダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。焼成粉末混合物は、放電プラズマ焼結ツールによって画定された内部容積内に配置され、ツールは約50~70μmの間隙を有していた。間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、焼結ツールの上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。ダイ及び/又は上部パンチ及び下部パンチを構成する少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数(CTE)からの焼結ツールの中心軸の周りの半径方向の変動は、約0.1×10-6ppm/℃以下であると決定された。焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される内部容積内に入れ、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。内部容積内の焼成粉末混合物を5℃/分で800℃まで加熱し、この温度で5MPaの圧力を加えて約40~50体積%の充填密度を有する粉末成形体を形成し、次いで同時に約2~約3℃/分の加熱速度で加熱し、約0.2~約0.25MPa/分の速度で圧力を加えて1,650℃及び15MPaの焼結条件に60分間到達させて、最大寸法が約625mmのディスク形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。
【0173】
密度測定は、試料の半径を横切って切断された試料からASTM B962-17に従って実施され、密度結果は図9に示される通りである。半径に沿った6つの位置で各々5回の測定を行い、4.55g/ccの平均密度が測定され、これはYAGの理論値の99.78%に相当する。半径にわたる密度は、YAGの理論値(4.556g/ccと報告されている)の99.7~99.9%であった。図9に示される密度の変動は、半径に沿った最高密度測定値に対して測定され、0.21%の最大密度変動が測定された。本明細書に開示されるような放電プラズマ焼結ツールを使用する粉末及び粉末混合物の焼結中、圧力及び温度は、中心軸9の周りに半径方向に対称な構成で印加された。高密度(>YAGの理論値の99%)及び最小密度変動(<0.21%未満)などの特性が、半径にわたって維持され、それに対応して焼結セラミック体の直径又は最大寸法にわたっても維持された。したがって、4.546g/ccの平均密度を有し、密度がYAGの理論密度の99.7~99.9%の範囲であり(市販のYAG試料を測定し、4.556g/ccの平均密度を得て、本明細書で使用されるYAGの理論密度とした)、焼結セラミック体の直径にわたる最大密度変動が0.21%以下である、焼結セラミック体が本明細書に開示される。
【0174】
実施例3(試料152多結晶酸化イットリウム焼結セラミック体):
【0175】
100mmの焼結酸化イットリウム体を、表面積が6.5~8.0m/gであり、酸化イットリウム粉末の総質量に対して18ppmの平均総不純物に相当する99.999%の純度を有する酸化イットリウム粉末から形成した。d10粒径は1.5~3.5μmであり、中央粒径(d50)は4~6μmであり、d90粒径は7.5~9.5μmであった。放電プラズマ焼結ツールのダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ツールのダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。イットリア粉末を焼結ツールによって画定された内部容積内に配置し、10-2~10-3トルの真空条件を内部容積内に作り出した。ツールは、約25~約50μmの間隙を有し、間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、焼結ツールの上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。ダイ及び/又は上部パンチ及び下部パンチを構成する少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数(CTE)の焼結ツールの中心軸の周りの半径方向の変動は、約0.2×10-6ppm/℃以下であると決定された。焼結は、1,400℃で30分間、30MPaで行った。その後、大気中、1,400℃で8時間アニーリングを行った。5.02g/ccの平均密度が測定され、酸化イットリウムの理論密度の99.9%に相当した。
【0176】
実施例4(試料329多結晶スピネル焼結セラミック体):
【0177】
6ppmの総不純物に相当する99.9994%の総純度、4~6m/gの表面積、及び3~4μmの平均又はd50粒径を有するマグネシアの粉末を、5ppmの総不純物に相当する99.9995%の総純度、6~8m/gの表面積、及び2.5~4.5μmの平均又はd50粒径を有するアルミナの粉末と組み合わせた。焼結時に立方晶結晶構造を有するスピネル、MgAlを形成するために、粉末を相対量で秤量して、モル比で粉末混合物を作製した。粉末混合物を、当業者に公知の方法に従って湿式タンブル粉砕した。粉末混合物を酸素含有環境において850℃で4時間焼成し、5~6m/gの比表面積を有することが測定された。か焼された粉末混合物は、任意選択で、か焼後に、当該分野で公知の方法を使用して篩い分けされ得る。放電プラズマ焼結ツールのダイは、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つのグラファイトホイルで裏打ちされ、ツールのダイ並びに上部パンチ及び下部パンチの各々は、本明細書に開示される少なくとも1つのグラファイト材料を含んでいた。焼成粉末混合物を焼結ツールによって画定された内部容積内に配置し、10-2~10-3トルの真空条件を内部容積内に作り出した。ツールは、約20~約40μmの間隙を有し、間隙は、少なくとも1つのグラファイトホイルの内向き表面と、焼結ツールの上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁との間に構成された。ダイ及び/又は上部パンチ及び下部パンチを構成する少なくとも1つのグラファイト材料の平均熱膨張係数(CTE)からの焼結ツールの中心軸の周りの半径方向の変動は、約0.1×10-6ppm/℃以下であると決定された。次いで、焼成された粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、1500℃の温度、20MPaの圧力で30分間、真空下で焼結して、100mmの最大寸法を有する焼結セラミック体を形成した。セラミック焼結体での密度を測定したところ、3.546g/cc又は理論密度の99.04%であった。ASTM C1327に従って、0.025kgfの適用荷重を使用して、焼結セラミック体に対して硬度測定を行なった。8回の測定にわたって、15.06GPaの平均硬度が0.75の標準偏差で測定された。その後、アニーリングを1,500℃で行い、焼結セラミック体を空気環境中で受動的に冷却させた。アニールされた焼結セラミック体上の密度は、3.553g/cc又は理論密度の99.24%であると測定された(L.Pingら、「Magnesium aluminate(MgAlspinel produced via self-heat-sustained(SHS)technique」Materials Research Bulletin、36(2001)によれば、アルミン酸マグネシウムスピネルの理論密度は3.579g/cmである)。
【0178】
特定の具体的な実施形態及び実施例を参照して上に図示して説明したが、本開示は示した詳細に限定されるものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、詳細において様々な修正を行うことができる。
図A
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9