(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】グラブバケット診断装置
(51)【国際特許分類】
B66C 3/16 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B66C3/16
(21)【出願番号】P 2024010478
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-01-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154598
【氏名又は名称】株式会社福島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大和田 直
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-095861(JP,A)
【文献】特開2015-108401(JP,A)
【文献】特開2014-105766(JP,A)
【文献】特開2002-242849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 - 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルタンクから油圧ポンプが吐出する作動油で作動する油圧シリンダにより駆動される複数のバケットを有し、該バケットを開く開動作工程、該バケットを開いた状態に維持する開状態維持工程、該バケットを閉じる閉動作工程、該バケットを閉じた状態に維持する閉状態維持工程、及び前記油圧シリンダに作動油を実質的に供給しない遊休循環工程の各動作工程を有して動作するグラブバケットの不具合の有無を示す診断結果を提示するグラブバケット診断装置であって、
前記油圧シリンダのヘッド側
及びロッド側に出入りする作動油の流量、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量、
並びに前記オイルタンクに戻る作動油の流量をそれぞれ計測する第1、第2、第3
及び第4流量計、
並びに前記油圧ポンプが吐出する作動油の油圧を計測する圧力計と、
前記第1、第2、第3
及び第4流量計
並びに前記圧力計による計測時を特定す
る計測時特定部と、
前記計測時が特定された前記動作工程における該計測時での前記第1、第2、第3
及び第4流量計
並びに前記圧力計による計測値に基づいて前記診断結果を提示する診断部とを備えることを特徴とするグラブバケット診断装置。
【請求項2】
オイルタンクから油圧ポンプが吐出する作動油で作動する油圧シリンダにより駆動される複数のバケットを有し、該バケットを開く開動作工程、該バケットを開いた状態に維持する開状態維持工程、該バケットを閉じる閉動作工程、該バケットを閉じた状態に維持する閉状態維持工程、及び前記油圧シリンダに作動油を実質的に供給しない遊休循環工程の各動作工程を有して動作するグラブバケットの不具合の有無を示す診断結果を提示するグラブバケット診断装置であって、
前記油圧シリンダのヘッド側若しくはロッド側に出入りする作動油の流量、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量、又は前記オイルタンクに戻る作動油の流量をそれぞれ計測する第1、第2、第3又は第4流量計、或いは前記油圧ポンプが吐出する作動油の油圧を計測する圧力計と、
前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測時を特定する計測時特定部と、
前記計測時が特定された前記動作工程における該計測時での前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測値に基づいて前記診断結果を提示する診断部と、
前記閉動作工程又は前記開動作工程について、その開始時点から終了時点までの経過時間をタイマで計時することによって該閉動作工程又は開動作工程に要する前記バケットの動作時間を計測する動作時間計測部とを備え、
前記診断部は、前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測値或いは前記動作時間計測部による計測値に基づき前記診断結果の提示を行うものであることを特徴とす
るグラブバケット診断装置。
【請求項3】
オイルタンクから油圧ポンプが吐出する作動油で作動する油圧シリンダにより駆動される複数のバケットを有し、該バケットを開く開動作工程、該バケットを開いた状態に維持する開状態維持工程、該バケットを閉じる閉動作工程、該バケットを閉じた状態に維持する閉状態維持工程、及び前記油圧シリンダに作動油を実質的に供給しない遊休循環工程の各動作工程を有して動作するグラブバケットの不具合の有無を示す診断結果を提示するグラブバケット診断装置であって、
前記油圧シリンダのヘッド側若しくはロッド側に出入りする作動油の流量、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量、又は前記オイルタンクに戻る作動油の流量をそれぞれ計測する第1、第2、第3又は第4流量計、或いは前記油圧ポンプが吐出する作動油の油圧を計測する圧力計と、
前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測時を特定する計測時特定部と、
前記計測時が特定された前記動作工程における該計測時での前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測値に基づいて前記診断結果を提示する診断部とを備え、
前記診断部は、前記開動作工程について、前記第3流量計による計測値が
所定の下限値未満である場合、前記油圧ポンプの内部リーク、前記油圧ポンプのピストンの固着、又は前記油圧ポンプの吐出量についての設定のずれによる不具合がある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とす
るグラブバケット診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記開状態維持工程又は前記閉状態維持工程について、前記圧力計による計測値が
所定の下限値未満である場合、
前記開動作工程についての診断結果に代えて、前記油圧ポンプのデッドヘッド圧力の低下及びリリーフ圧力のずれによる不具合がある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
3に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、前記開動作工程又は前記閉動作工程について、前記第3流量計による計測値が
所定の上限値と下限値の間の値であり、かつ前記動作時間計測部による計測値が
所定の上限値を超える場合、前記油圧シリンダ内部のリークにより該開動作工程又は該閉動作工程が遅延する不具合がある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
2に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記開動作工程又は前記閉動作工程について、前記第3流量計による計測値が
所定の下限値未満であり、かつ前記動作時間計測部による計測値が
所定の上限値を超える場合、前記油圧ポンプ内部のリーク、前記油圧シリンダのピストンの固着、又は前記油圧ポンプの吐出量についての設定のずれにより該開動作工程又は該閉動作工程が遅延する不具合がある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
2に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項7】
前記診断部は、前記開状態維持工程若しくは前記閉状態維持工程又は前記遊休循環工程について、前記第3流量計による計測値が
所定の上限値を超える場合、前記油圧ポンプによる作動油の供給路を制御する電磁弁内部のリーク又は前記油圧シリンダ内部のリークがある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
2に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項8】
前記診断部は、前記開状態維持工程又は前記閉状態維持工程について、前記第4流量計による計測値が
所定の上限値を超えており又は
所定の下限値未満である場合、
前記開動作工程についての診断結果に代えて、前記油圧ポンプによる作動油の供給路を制御する電磁弁内部のリークがある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
3に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項9】
前記診断部は、前記開状態維持工程又は前記閉状態維持工程について、前記第1又は第2流量計による計測値が
所定の上限値を超える場合、
前記開動作工程についての診断結果の提示に代えて、前記油圧シリンダ内部のリークがある旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
3に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項10】
前記診断部は、前記開動作工程又は前記閉動作工程について、前記圧力計による計測値が
所定の上限値を超える場合、
前記開動作工程についての診断結果の提示に代えて、前記バケットにかじりが生じ、又は前記油圧ポンプが故障している旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
3に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項11】
前記診断部は、前記遊休循環工程について、前記第4流量計による計測値が
所定の上限値を超える場合、
前記開動作工程についての診断結果の提示に代えて、前記油圧のコンペンセータが故障している旨の診断結果を提示するものであることを特徴とする請求項
3に記載のグラブバケット診断装置。
【請求項12】
前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計の計測時は、
各動作工程について、動作工程毎に予め定められた該動作工程の開始時点からの経過時間を計時するタイマによ
り所定時間を計時した時点を中心とするその前後の所定範囲の時間であり、
前記計測値は、前記所定範囲の時間における複数の時点での前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測値の平均値などの代表値であることを特徴とする請求項
2~11のいずれか1項に記載のグラブバケット診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブバケットにおける不良箇所の有無を判断するグラブバケット診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧シリンダで駆動される複数のバケット(爪)を有するグラブを備えるグラブバケットが知られている(特許文献1参照)。特許文献1のグラブバケットは、油圧ユニットに供給される電流値を測定し、演算解析を行う制御部を備える。制御部は、演算解析の結果に基づき、バケットの開閉操作に係る信号を出力することにより、バケットの開閉完了時を検出し、その後のバケットの開閉操作に係る運転を制御する。
【0003】
このようなグラブバケットでは、油圧シリンダや油圧ポンプで構成される油圧ユニットの劣化が進行してきた場合、油圧ユニットへの電源供給ラインの電流量が減少し、本来の値よりも小さくなる。この点を利用し、特許文献1では、油圧ユニットの劣化傾向に係る診断を行うことが可能であるとされている。また、油圧ユニットの異常検知のために、温度センサや油温センサ等を設けてもよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のグラブバケットによれば、油圧ユニットへの電源供給ラインの電流量に基づいて油圧ユニットの劣化に係る診断を行うことや、温度センサや油温センサ等に基づいて油圧ユニットの異常検知が可能であるとされているが、対象部位や診断方法についての具体的な内容については、何も開示していない。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、グラブバケットの各部について正確な診断を行うことができるグラブバケット診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラブバケット診断装置は、油圧ポンプが吐出する作動油で作動する油圧シリンダにより駆動される複数のバケットを有するグラブバケットの不具合の有無を診断する診断部を備える。
【0008】
前記グラブバケットは、前記バケットを開く開動作工程、該バケットを開いた状態を維持する開状態維持工程、該バケットを閉じる閉動作工程、該バケットを閉じた状態を維持する閉状態維持工程、及び前記油圧シリンダに作動油を供給しない遊休循環工程の各動作工程を有して動作する。
【0009】
グラブバケット診断装置は、前記油圧シリンダのヘッド側若しくはロッド側に出入りする作動油の流量、前記油圧ポンプが吐出する作動油の吐出流量、又は前記オイルタンクに戻る作動油の流量をそれぞれ計測する第1、第2、第3又は第4流量計、或いは前記油圧ポンプが吐出する作動油の油圧を計測する圧力計を備える。
【0010】
また、グラブバケット診断装置は、前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測時を特定する計測時特定部を備える。
【0011】
また、グラブバケット診断装置は、前記計測時が特定された前記動作工程における該計
測時での前記第1、第2、第3若しくは第4流量計又は前記圧力計による計測値に基づい
て前記グラブバケットの不具合の有無の診断を行う診断部を備える。
さらに、グラブバケット診断装置は、前記閉動作工程又は前記開動作工程について、その開始時点から終了時点までの経過時間をタイマで計時することによって該閉動作工程又は開動作工程に要する前記バケットの動作時間を計測する動作時間計測部を備える。
【0012】
本発明によれば、いずれか1又は2以上の各動作工程について、第1、第2、第3若しくは第4流量計又は圧力計による計測時が、計測時特定部により特定される。そして、計測時が特定された動作工程における該計測時での第1、第2、第3若しくは第4流量計又は圧力計による計測値、さらには動作時間計測部により計測される動作時間に基づいてグラブバケットの不具合の有無が診断される。
【0013】
このように、いずれか1又は2以上の動作工程における第1、第2、第3若しくは第4流量計、或いは圧力計、さらには動作時間計測部の計測値に基づいて診断を行うので、グラブバケットの各部について、正確な診断を行うことができる。
なお、診断部は、第1、第2、第3及び第4流量計、並びに圧力計を備え、これらの計測値に基づいて診断を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグラブバケット診断装置により診断されるグラブバケットを示す模式図である。
【
図2】
図1のグラブバケットの油圧回路を示す油圧回路図である。
【
図3】
図1のグラブバケットを診断するグラブバケット診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1のグラブバケットの各動作工程の進行に応じて
図2の油圧回路における作動油に係る量が変化する様子を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図3のグラブバケット診断装置の計測時特定部による計測時の特定方法を説明するための説明図である。
【
図6】
図3のグラブバケット診断装置の計測部による計測処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図3のグラブバケット診断装置の診断部による診断結果の一例を示す表の図である。
【
図9】
図3のグラブバケット診断装置の診断部による診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るグラブバケット診断装置により診断されるグラブバケットを示す。
図1に示すように、このグラブバケット1は、グラブ2を構成する5つのバケット3を備える。ただし、図では5つのバケット3のうち2つのみ表示している。5つのバケット3は、水平面において正五角形をなすように配置される。
【0016】
各バケット3は、油圧ポンプが供給する作動油の油圧で作動する油圧シリンダ4により駆動される。本実施形態では、油圧シリンダ4として、複動片ロッド形のものが用いられる。
【0017】
グラブバケット1は、バケット3を開く開動作工程OP、バケット3を開いた状態を維持する開状態維持工程OM、バケット3を閉じる閉動作工程CP、バケット3を閉じた状態を維持する閉状態維持工程CM、及び油圧シリンダ4に作動油を供給しない遊休循環工程IPの各動作工程を有して動作する(
図4参照)。
【0018】
図2は、グラブバケット1の油圧回路を示す油圧回路図である。
図2に示すように、この油圧回路5は、オイルタンク6と、オイルタンク6のオイルを各バケット3の油圧シリンダ4に供給する油圧ポンプ7とを備える。油圧ポンプ7はモータ8により駆動される。油圧シリンダ4に対するオイルタンク6からの作動油の供給及びオイルタンク6への作動油の戻りは、4ポート3位置方向切換弁(電磁弁)9により制御される。
【0019】
この方向切換弁9は、油圧シリンダ4に接続されるポートA及びポートBと、油圧ポンプ7に接続されるポートP及びオイルタンク6に接続されるポートTを備える。ポートAは、各油圧シリンダ4のロッド側に接続される。ポートBは、各油圧シリンダ4のヘッド側に接続される。
【0020】
ポートAから延びるオイル流路10aは、第1分岐点11において2つのオイル流路10bとオイル流路10cに分岐される。オイル流路10bは、さらに3つのオイル流路10b1~10b3に分岐され、3つの油圧シリンダ4のロッド側に接続される。オイル流路10cは、さらに2つのオイル流路10c1、10c2に分岐され、他の2つの油圧シリンダ4のロッド側に接続される。
【0021】
ポートBから延びるオイル流路10dは、第2分岐点12において2つのオイル流路10eとオイル流路10fに分岐される。オイル流路10eは、さらに3つのオイル流路10e1~e3に分岐され、上記3つの油圧シリンダ4のヘッド側に接続される。オイル流路10fは、さらに2つのオイル流路f1、f2に分岐され、上記他の2つの油圧シリンダ4のヘッド側に接続される。
【0022】
方向切換弁9のポートPは、オイル流路10gを介して油圧ポンプ7の吐出口に接続される。ポートTは、オイル流路10hを介してオイルタンク6に接続される。
【0023】
1つの油圧シリンダ4のヘッド側に接続するオイル流路10e1には、該油圧シリンダ4のヘッド側から流出する作動油の流量であるヘッド流量HD(
図4参照)を計測する第1流量計13が設けられる。第1流量計13のロッド側に接続するオイル流路10b1には、該油圧シリンダ4のロッド側から流出する作動油の流量であるロッド流量RDを計測する第2流量計14が設けられる。
【0024】
オイル流路10gにおける方向切換弁9と油圧ポンプ7との間には、油圧ポンプ7が吐出する作動油の流量であるポンプ吐出量PMを計測する第3流量計15が設けられる。方向切換弁9とオイルタンク6との間のオイル流路10hには、オイルタンク6に戻る作動油のリターン流量RTを計測する第4流量計16が設けられる。
【0025】
また、オイル流路10gにおける方向切換弁9と第3流量計15との間には、油圧ポンプ7が吐出する作動油の圧力であるポンプ圧PPを計測する圧力計17、及びグラブ2の開閉動作の完了を検出する圧力スイッチ18が設けられる。圧力スイッチ18は、フィルタ19及び可変絞り弁20を介して設けられる。
【0026】
第1~第4流量計13~16及び圧力計17は、グラブバケット1の診断を行う際に、ワンタッチでそれぞれの計測箇所に取り付けられる。
【0027】
図3は、グラブバケット診断装置の構成を示す。
図3に示すように、このグラブバケット診断装置21は、第1~第4流量計13~16及び圧力計17による計測結果に基づき、グラブバケット1の診断を行う診断制御部22を備える。診断制御部22は、コンピュータや、プログラムなどによって構成される。
【0028】
診断制御部22は、グラブバケット1の診断のためにグラブバケット1を駆動する診断用駆動部23と、診断用駆動部23がグラブバケット1を駆動する間に、診断に必要な計測を行う計測部24と、計測部24における計測に必要な計時を行うためのタイマ25と、計測部24により計測された計測データに基づいてグラブバケット1の診断処理を行う診断部26と、診断部26による処理結果をモニタ27に表示する出力部28とを備える。
【0029】
診断用駆動部23は、圧力スイッチ18からのバケット3の開放完了信号や閉塞完了信号に基づき、方向切換弁9などを制御して、グラブバケット1の各動作工程の駆動を行う。計測部24は、診断に必要な計測値を、第1~第4流量計13~16及び圧力計17から取得する。タイマ25は、第1~第4流量計13~16及び圧力計17による計測時を特定したり、開動作工程OPや閉動作工程CPの動作時間を計測したりするために用いられる。
【0030】
計測部24は、各動作工程の開始及び終了時点を検出する工程開始・終了検出部29と、グラブバケット1の各動作工程毎に、必要な計測値を取得するための計測時を特定する計測時特定部30と、各動作工程における該計測時での第1~第4流量計13~16や圧力計17による計測値を取得する計測値取得部31とを備える。
【0031】
また、計測部24は、閉動作工程CP及び開動作工程OPについて、工程の開始時点から終了時点までのそれぞれの経過時間をタイマ25で計時することによって、該閉動作工程CP及び開動作工程OPのそれぞれの動作時間を計測する動作時間計測部32と、計測値取得部31及び動作時間計測部32が取得する計測値を記憶する記憶部33とを備える。
【0032】
また、診断制御部22は、記憶部33により記憶される計測値に基づいてグラブバケット1の診断を行う診断部26と、診断部26による診断結果をモニタ27に出力する出力部28とを備える。
【0033】
図4は、診断用駆動部23がグラブバケット1を駆動する際に、各動作工程に応じて油圧回路5における作動油に係る量が変化する様子を示す。
図4に示すように、第1~第4流量計及び圧力計17により計測されるポンプ吐出量PM、リターン流量RT、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、及びポンプ圧PPは、遊休循環工程IP、閉動作工程CP、閉状態維持工程CM、開動作工程OP、開状態維持工程OMの各動作工程の進行に応じて、
図4のように変化する。
【0034】
図4における遊休循環工程IP後の閉動作工程CP、閉状態維持工程CM、その後の遊休循環工程IP、開動作工程OP、開状態維持工程OM、及びその後の遊休循環工程IPは、それぞれ順次時点T1~T6において開始する。
【0035】
時点T1、T4は、第1流量計13によるヘッド流量HDの計測値が閾値Th1、Th2をそれぞれ横切る時点として特定される。時点T2、T3、T5、T6は、それぞれ、圧力計17によるポンプ圧PPの計測値が閾値Th3を横切る時点として特定される。
【0036】
動作時間計測部32は、閉動作工程CP及び開動作工程OPに要するバケット3の動作時間を、それぞれ、時点T1から時点T2までの経過時間、及び時点T4から時点T5までの経過時間として計測する。計測される各経過時間は、閉動作工程CP及び開動作工程OPそれぞれの動作時間OTの計測値として記憶部33に記憶される。
【0037】
図5は、計測時特定部30による計測時の特定方法を、開動作工程OPについて例示する。
図5に示すように、計測時特定部30は、開動作工程OPの開始時点T4からの所定時間をタイマ25で計時することによって計測時を特定する。この計測時は、タイマ25により該所定時間Tを計時した時点tを中心とするその前後の所定範囲の時間twである。
【0038】
所定時間Tとしては、例えば、当該開動作工程OPの開始時点T4から油圧ポンプ7の吐出量が安定するまでの時間を考慮し、2秒以上の時間、例えば3秒が該当する。該所定時間を計時した時点tを中心とする所定範囲の時間twとしては、例えば、時点tを中心とするその前後±1秒の範囲の時間や、時点tから2秒後までの範囲の時間が該当する。
【0039】
計測部24は、この所定範囲の時間twの範囲において、開動作工程OPについて、ポンプ吐出量PM、リターン流量RT、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、及びポンプ圧PPの計測値を取得する。他の閉動作工程CP、閉状態維持工程CM、その後の遊休循環工程IP、開状態維持工程OMについての計測値についても、同様にして取得される。
【0040】
計測値取得部31は、該所定範囲の時間twにおける複数の時点での第1~第4流量計13~16及び圧力計17による計測値の平均値、中央値、最頻値などの代表値TVを算出し、該代表値TVを、該所定範囲の時間twの計測時での計測値として記憶部33に記憶する。
【0041】
診断部26による診断処理は、このようにして記憶部33に記憶される閉動作工程CP及び開動作工程OPの動作時間OTの計測値や、各動作工程における計測時での第1~第4流量計13~16、圧力計17による計測値を、それぞれの計測値について予め定められた基準値や、上限値、下限値と比較することにより行われる。
【0042】
図6は、診断制御部22の計測部24における計測処理を示すフローチャートである。この計測処理は、診断制御部22が診断用駆動部23によりグラブバケット1を
図4のように各動作工程に従って順次駆動する間に行われる。
【0043】
すなわち、診断用駆動部23によるグラブバケット1の駆動が開始されると、計測部24は、計測処理を開始する。計測処理を開始すると、
図6に示すように、計測部24は、まず、工程開始・終了検出部29により、閉動作工程CPが開始する時点T1(
図4参照)の到来を検出する(ステップS1)。閉動作工程CPが開始すると、タイマ25による計時を開始する(ステップS2)。
【0044】
次に、計測時特定部30により閉動作工程CPにおける計測時を特定し、この計測時において、計測値取得部31によりポンプ吐出量PM、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、記憶部33によりこの計測値を記憶部33に記憶する(ステップS3)。計測時は、
図5を用いて上述したように、時点T1から所定時間が経過する時点tを中心とする所定範囲の時間twとして特定される。
【0045】
計測値取得部31による計測値の取得に際しては、タイマ25の計時データに基づき、時間twが経過する間の複数の時点で、油圧ポンプ7によりポンプ吐出量PMを計測し、また圧力計17によりポンプ圧PPを計測し、該複数の時点での計測値の平均値などの代表値を、閉動作工程CPにおけるポンプ吐出量PM及びポンプ圧PPの計測値として算出する。算出した計測値は、記憶部33により記憶される。
【0046】
次に、工程開始・終了検出部29により、閉状態維持工程CMが開始する時点T2(
図4参照)の到来を検出する(ステップS4)。時点T2が検出されると、動作時間計測部32により、閉動作工程CPの動作時間を取得し、記憶部33に記憶する(ステップS5)。この動作時間は、この時点T2と、ステップS1で検出された時点T1との差として取得される。次に、タイマ25による計時を開始する(ステップS6)。
【0047】
次に、計測時特定部30により閉状態維持工程CMにおける計測時を特定し、この計測時において、計測値取得部31によりポンプ吐出量PM、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、リターン流量RT、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、記憶部33によりこれらの計測値を記憶する(ステップS7)。計測時の特定は、
図5を用いて上述したように、時点T1から所定時間が経過する時点tを中心とする所定範囲の時間twとして特定される。
【0048】
計測値取得部31による計測値の取得に際しては、タイマ25の計時データに基づき、時間twが経過する間の複数の時点で、ポンプ吐出量PM、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、リターン流量RT、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、該複数の時点での各計測値の平均値などの代表値を、閉状態維持工程CMにおける各計測値の値として算出する。算出した計測値は、記憶部33により記憶される。
【0049】
次に、工程開始・終了検出部29により、閉状態維持工程CMが終了する時点T3、すなわち遊休循環工程IP(
図4参照)の到来を検出する(ステップS8)。この検出は、圧力計17により検出されるポンプ圧PPが、閾値Th3と交差する時点として検出される。時点T3の到来を検出すると、タイマ25による計時を開始する(ステップS9)。
【0050】
次に、計測時特定部30により遊休循環工程IPにおける計測時を特定し、この計測時において、計測値取得部31によりポンプ吐出量PM、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、リターン流量RT、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、記憶部33によりこれらの計測値を記憶する(ステップS10)。計測時の特定や、計測値の取得は、閉状態維持工程CMの場合と同様にして行われる。
【0051】
次に、工程開始・終了検出部29により、開動作工程OPが開始する時点T4(
図4参照)の到来を検出する(ステップS11)。
【0052】
時点T4の到来を検出すると、上述のステップS2~S10と同様にして、開動作工程OPにおけるポンプ吐出量PM、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、開動作工程OPの動作時間OTを取得し、開状態維持工程OM及びその後の遊休循環工程IPにおけるポンプ吐出量PM、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、リターン流量RT、及びポンプ圧PPの計測値を取得し、記憶部33に記憶する(ステップS12)。これにより、計測処理が終了する。
【0053】
計測処理が終了すると、記憶部33に記憶された計測値に基づき、診断部26により、グラブバケット1の診断処理が行われる。その診断処理の結果は、出力部28によりモニタ27に出力される。
【0054】
図7及び
図8は、計測部24による計測処理の結果及び診断部26による診断処理の結果を示す計測診断表を例示する。この計測診断表の「工程」の欄には、「NO.」の欄で示す番号順に、
図4中の「閉動作工程CP」、「閉状態維持工程CM」、「遊休循環工程IP」、「開動作工程OP」、「開状態維持工程OM」、「遊休循環工程IP」の各動作工程の項が設けられる。
【0055】
「計測仕様」の欄は、「工程」の欄で示される各動作工程における各計測項目(動作時間OT」、「ポンプ突出量PM」、・・・)を示す。「単位」の欄は、各計測項目の計測値の単位を示す。「基準値」の欄は、各計測項目の計測値の基準値を示す。「上限値」及び「下限値」の欄は、各計測項目の計測値について許容される上限値及び下限値を示す。
【0056】
「計測値」の欄は、各計測項目について上述
図6の計測処理により得られる1回目~3回目の計測結果及びこれらの平均の値を、それぞれ「1回目」~「3回目」及び「平均」の欄にそれぞれ示す。各回の計測結果の値は、上述
図6の計測処理を1回行うことにより得られる。なお、ここでは、上述
図6の計測処理による1回目のみの計測結果の値を示している。
【0057】
「判定」の欄は、各計測項目についての「平均」欄の値が、その上限値と下限値との間の値であって許容できる場合を「〇」で示し、上限値又は下限値を逸脱して許容できない場合を「×」で示す。
【0058】
「故障名」の欄では、「判定」欄が「×」である計測項目について、関係し得る不良内容の欄が、下位の各欄において示される。不良内容の欄としては、「ポンプ吐出量不良」、「電磁弁内部リーク(省エネ型)」、「電磁弁内部リーク(固定・可変型)」、「コンペンセータ動作不良(省エネ型)」、「リリーフ圧力デッドヘッド圧力不良」、「油圧シリンダ内部リーク」、及び「バケット機械的不良」が該当する。
【0059】
そして、「判定」欄が「×」である計測項目について、該当する不良内容の欄に、「■」が表示される。なお、「計測仕様」欄の各計測項目について、「判定」欄が「×」である場合に対応する不良内容の欄には「□」が表示されている。
【0060】
記憶部33には、「故障名」の各不良内容の欄に対応付けて、その不良内容についてのより具体的な不良内容を示す診断結果が記録される。例えば、不良内容の欄が「ポンプ吐出量不良」である場合、これに対応付けて、「油圧シリンダ内部リーク」及び「ポンプ内部リーク、ピストン固着、設定のズレ」が記憶される。
【0061】
「油圧シリンダ内部リーク」は、油圧シリンダ4内部のリークにより開動作工程OP又は閉動作工程CPが遅延する不具合がある旨を示す診断結果である。「ポンプ内部リーク、ピストン固着、設定のズレ」は、油圧ポンプ7内部のリーク、油圧シリンダのピストンの固着、又は油圧ポンプ7の吐出量についての設定のずれにより、開動作工程OP又は閉動作工程CPが遅延する不具合がある旨の診断結果である。
【0062】
ただし、「油圧シリンダ内部リーク」は、「計測仕様」欄の「動作時間」における「ポンプ吐出量不良」欄のみが「■」である場合に適用される診断結果である(後述の診断例3‐1参照)。「ポンプ内部リーク、ピストン固着、設定のズレ」は、「計測仕様」欄の「動作時間」及び「ポンプ吐出量」双方における「ポンプ吐出量不良」の欄が「■」である場合に適用される診断結果である(後述の診断例3‐2参照)。
【0063】
このようにして、計測診断表における「判定」の欄及び「故障名」の各不良内容の欄が、診断制御部22の診断部26によるグラブバケット1の診断結果を表す。診断制御部22は、この診断結果を表す計測診断表を、出力部28によりモニタ27に表示する。
【0064】
記憶部33には、
図7及び
図8の計測診断表の「計測仕様」の欄の各計測項目(「動作時間」、「ポンプ吐出量」・・・)に対応付けて、計測項目毎に1つのレコードとして計測診断表の各欄のデータが記録されるものとする。また、記憶部33には、上述のように、「故障名」の各不良内容の欄(「ポンプ吐出量不良」、「電磁弁内部リーク(省エネ型)」、・・・)に対応付けて、より具体的な不良内容を示す診断結果が記録される。
【0065】
したがって、その不良内容を示す診断結果の記録に基づいて、「■」が表示された不良内容欄に対応するより具体的な診断結果が表される。したがって、モニタ27に表示された計測診断表中に「■」が表示された場合、これに対応する不良内容欄に対応付けられた診断結果の不良が存在するとの診断がなされたことになる。
【0066】
かかる診断結果の内容を、例えば、モニタ27に表示された計測診断表中の「■」の表示、又はこれに対応する不良内容欄の欄名を指示することによってモニタ27に表示させて確認できるように、診断制御部22を構成することができる。
【0067】
診断制御部22の診断部26は、かかる診断結果を得るために、
図6の計測処理で取得され、記憶部33に記憶されている各計測値(計測診断表の「計測値」欄の値に対応するデータ)に基づいて、次に示すような診断処理を行う。
【0068】
図9は、診断部26による診断処理の一例を示す。処理を開始すると、
図7、
図8の計測診断表に対応するフォーマットで記憶部33に記憶されている最初のレコード、すなわち「開動作工程」における「動作時間」のレコードを読み出す(ステップS51)。
【0069】
そして、読み出したレコードについて、「平均」の欄の値Xが「上限値」及び「下限値」の範囲内であるかを判定する(ステップS52)。この判定の結果、範囲内(下限値≦X≦上限値)であると判定された場合には、「判定」の欄に「〇」を記録し(ステップS53)スッテップS57に進む。
【0070】
ステップS52で範囲外(X<下限値、又は上限値<X)と判定された場合には、「判定」の欄に「×」を記録する(ステップS54)。また、当該レコードの「計測仕様」欄の計測項目に対応する「故障名」欄中の不良内容の欄に「■」を記録し(ステップS55)、その不良内容の不良カウント変数Nをインクリメントする(ステップS56)。なお、不良カウント変数Nとして、7種類ある「故障名」の不良内容欄について順にN1~N7が設定される。
【0071】
具体的には、読み出したレコードが最初のレコードであれば、その「計測仕様」欄の計測項目は「動作時間」であるから、「故障名」欄の「動作時間」に対応する「ポンプ吐出量不良」の欄に「■」が記録され、この欄に対応する不良カウント変数N1がインクリメントされる。
【0072】
次に、当該レコードが最後のレコードであるか否かを判定する(ステップS57)。最後のレコードではないと判定した場合には、次のレコードを読み出し(ステップS58)てステップS52に戻り、ステップS52からステップS57までの処理を繰り返す。最後のレコードであると判定した場合には、「故障名」の7種類の不良内容毎に不良カウント変数N1~N7の値に応じて、その不良内容の欄名の色を設定し(ステップS59)、診断処理を終了する。
【0073】
不良内容の欄名の色の設定は、例えば、不良カウント変数Nが1である不良内容の欄名の色をオレンジとし、不良カウント変数Nが2以上である不良内容の欄名の色を赤とすることにより行われる。
【0074】
例えば、
図7及び
図8の計測診断表に示されるようなデータが得られた場合、不良内容の欄名が「ポンプ吐出量不良」の欄については、不良カウント変数N1が4であるため、その欄名の色が赤(
図7、
図8ではやや濃いベタで表示)に設定される。また、不良内容の欄名が「電磁弁内部リーク(省エネ型)」の欄については、不良カウント変数N2が1であるため、その欄名の色がオレンジ(
図7、
図8では薄いベタで表示)に設定される。
【0075】
診断制御部22の出力部28は、グラブバケット1の診断結果として、計測部24及び診断部26の計測及び診断結果として、
図7及び
図8の計測診断表に示されるような表を、モニタに出力することができる。
【0076】
上記計測診断表で示されるようなグラブバケット診断装置21で得られる診断結果として、次に示すような具体例を挙げることができる。
【0077】
(診断結果1):開動作工程OPについて、第3流量計15によるポンプ吐出量PMの計測値の平均が下限値21.6[L/min]を下回る場合、「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「ポンプ吐出量不良」の欄に「■」が表示される。この場合、「ポンプ吐出量不良」の欄に対応付けられて記憶部33に記憶されたより具体的な不具合の内容のデータに基づき、油圧ポンプ7の内部リーク、油圧ポンプ7のピストンの固着、又は油圧ポンプ7の吐出量の設定のずれがある旨の診断結果が得られる。
【0078】
(診断結果2):閉状態維持工程CMについて、圧力計17によるポンプ圧PPの計測値の平均が下限値19.5[L/min]未満である場合、「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「リリーフ圧力デッドヘッド圧力不良」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、油圧ポンプ7のデッドヘッド圧力の低下及びリリーフ圧力のずれによる不具合があるとの診断結果が得られる。
【0079】
(診断結果3):開動作工程OP又は閉動作工程CPについて、第3流量計15によるポンプ吐出量PMの計測値の平均が上限値と下限値の間の値であり、かつ動作時間の計測値が上限値を超える場合には、ポンプ吐出量PMの「判定」欄には「〇」が表示され、動作時間の「判定」欄には「×」が表示される。また、動作時間の「故障名」の「油圧シリンダ内部リーク」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、油圧シリンダ4内部のリークにより該開動作工程OP又は該閉動作工程CPが遅延する不具合があるとの診断結果が得られる。
【0080】
(診断結果4):開動作工程OP又は閉動作工程CPについて、第3流量計15によるポンプ吐出量PMの計測値が下限値未満で、かつ動作時間の計測値が上限値を超える場合には、ポンプ吐出量PM及び動作時間の「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「ポンプ吐出量不良」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、油圧ポンプ7内部のリーク、油圧シリンダ4のピストンの固着、又は油圧ポンプ7のポンプ吐出量PMの設定のずれにより該開動作工程OP又は該閉動作工程CPが遅延する不具合があるとの診断結果が得られる。
【0081】
(診断結果5):開状態維持工程OM若しくは閉状態維持工程CM又は遊休循環工程IPについて、第3流量計15によるポンプ吐出量PMの計測値が上限値を超えるか又は下限値未満である場合、ポンプ吐出量PMの「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「電磁弁内部リーク(省エネ型)」、「電磁弁内部リーク(固定・可変型)」、及び「油圧シリンダ内部リーク」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、電磁弁内部のリーク又は油圧シリンダ4内部のリークがあるとの診断結果が得られる。
【0082】
(診断結果6):開状態維持工程OM又は閉状態維持工程CMについて、第4流量計16によるリターン流量RTが上限値を超えており又は下限値未満である場合、リターン流量の「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「電磁弁内部リーク(省エネ型)」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、方向切換弁9内部のリークがあるとの診断結果が得られる。
【0083】
(診断結果7):開状態維持工程OM又は閉状態維持工程CMについて、第1流量計13又は第2流量計14によるヘッド流量HD又はロッド流量RDの計測値が上限値を超えており又は下限値未満である場合、ヘッド流量又はロッド流量の「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「電磁弁内部リーク(省エネ型)」及び「油圧シリンダ内部リーク」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、方向切換弁9内部のリーク又は油圧シリンダ4内部のリークがあるとの診断結果が得られる。
【0084】
(診断結果8):開動作工程OP又は閉動作工程CPについて、圧力計17で計測されるポンプ圧PPの計測値が上限値を超える場合、「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「リリーフ圧力デッドヘッド圧力不良」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、バケット3にかじりが発生しており、又は油圧ポンプ7が故障しているとの診断結果が得られる。
【0085】
(診断結果9):遊休循環工程IPについて、第4流量計によるリターン流量RTの計測値が上限値を超えた場合、「判定」欄には「×」が表示され、「故障名」の「コンペンセータ動作不良(省エネ型)」の欄には「■」が表示される。この場合、同様に、記憶部33のデータに基づき、油圧コンペンセータが故障しているとの診断結果が得られる。
【0086】
以上のよう、本実施形態によれば、閉動作工程CPや開動作工程OPにおける動作時間や、ポンプ吐出量PM、ポンプ圧PPの計測値、さらには閉状態維持工程CMや、開状態維持工程OM、遊休循環工程IPにおけるポンプ吐出量PM、ヘッド流量HD、ロッド流量RD、リターン流量RT、ポンプ圧PPの計測値に基づき、グラブバケット1のどの部分にどのような不具合があるかについて、具体的かつ正確に診断を行うことができる。
【0087】
また、各動作工程における計測時を、動作工程毎に定められたその動作工程の開始時点からの経過時間により特定し、各動作工程での計測を行うので、各動作工程で最適な計測時において計測を行うことができる。これにより、診断の確度を向上させることができる。
【0088】
また、各動作工程における計測時としてある範囲の時間を設定し、その範囲の時間における複数の時点での計測値の平均値、中央値、最頻値などの代表値を診断に用いる計測値として採用するので、診断の確度をさらに向上させることができる。
【0089】
また、グラブバケット1の診断は、各工程のについて得られる計測値を、それについて予め定められた基準値や、上限値、下限値と比較することにより行うので、客観的に行うことができる。
【0090】
また、各動作工程の各計測仕様(計測内容)毎の計測値に基づき、その基準値や、上限値、下限値との比較結果に対応する不良内容が予め記憶部33に設定されるので、不良内容を容易に特定し、診断結果を得ることができる。これにより診断の自動化を図ることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各工程の「計測仕様」欄の各計測項目について取得する計測値の取得回数は、3回に限らず2回や4回以上でもよい。また、1つの油圧シリンダに限らず、2以上や、グラブバケットのすべての油圧シリンダのヘッド側及びロッド側に流量計を設置し、これらの計測値を参照して診断を行ってもよい。また、グラブバケットは、ポリップ型グラブやフォーク型グラブであってもよい。
【0092】
また、診断制御部22では、計測部24によりすべての動作工程に係るすべての計測値の取得を完了してから診断部26による診断処理を行い、その診断結果を表示しているが、これに代えて、動作工程毎に又は計測項目毎に、計測値及び診断結果を取得し、その結果を表示してもよい。
【0093】
また、診断制御部22では、診断用駆動部23により
図4に示すような一連の動作工程を自動的に実施しながら計測部24による計測を行っているが、これに代えて、所望の動作工程毎に操作員の指示に基づいてグラブバケットを動作させ、その動作工程毎に計測値の取得及び診断を行ってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…グラブバケット、2…グラブ、3…バケット、4…油圧シリンダ、5…油圧回路、6…オイルタンク、7…油圧ポンプ、8…モータ、9…方向切換弁、10a~10h、10b1~10b3,10c1、10c2、10e1~10e3、10f1,10f2…オイル流路、11…第1分岐点、12…第2分岐点、13~16…第1~第4流量計、17…圧力計、18…圧力スイッチ、19…フィルタ、20…可変絞り弁、21…グラブバケット診断装置、22…診断制御部、23…診断用駆動部、24…計測部、25…タイマ、26…診断部、27…モニタ、28…出力部、29…工程開始・終了検出部、30…計測時特定部、31…計測値取得部、32…動作時間計測部、33…記憶部。
【要約】
【課題】グラブバケットの各部について正確な診断結果を提示できるグラブバケット診断装置を提供する。
【解決手段】グラブバケット診断装置21は、油圧シリンダ4のヘッド側若しくはロッド側に出入りする作動油の流量、油圧ポンプ7が吐出する作動油の流量、又はリターン流量をそれぞれ計測する第1~第4流量計13~16、或いは油圧ポンプ7が吐出する作動油の油圧を計測する圧力計17と、動作工程ごとに予め定められた計測時を特定する計測時特定部30と、各動作工程における該計測時での第1~第4流量計13~16は圧力計17による計測値に基づいて診断を行う診断部26とを備える。
【選択図】
図1