(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】クッキー等の型押し器具
(51)【国際特許分類】
A21C 11/02 20060101AFI20240521BHJP
A21D 8/02 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
A21C11/02 A
A21C11/02 B
A21D8/02
(21)【出願番号】P 2020009614
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520030039
【氏名又は名称】尾鷲 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100071098
【氏名又は名称】松田 省躬
(74)【代理人】
【識別番号】100176360
【氏名又は名称】松田 次郎
(73)【特許権者】
【識別番号】523468080
【氏名又は名称】浅原 謙
(74)【代理人】
【識別番号】100071098
【氏名又は名称】松田 省躬
(72)【発明者】
【氏名】尾鷲 恵弘
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-024788(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0040443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/02
A21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向中央に一定の高さに担持されている支持台2が位置し、この支持台2には、高さ調整ねじ3が貫装されて下方に突出しており、
この高さ調整ねじ3の下端には、パターン刻印用の押し型4が、着脱交換可能に嵌着されており、
この高さ調整ねじ3は、クッキー生地の厚さに応じて、押し型4の刻印部9を生地の上にセットした時に、刻印部がクッキー下地へ侵入する高さに調整して嵌着されており、
支持台2の上方には、圧縮バネ7を巻着した複数本の支持軸8が適宜間隔に配置され、その下端は、
押し型4の支持台2を貫通し、クッキーの輪郭形状を型抜きする抜き型5に突設しており、
複数本の支持軸8の上端は、支持台と平行に上方に位置する押さえ板6に固定されており、
前記抜き型5の下端は、押し型4の刻印部9より上方に位置するように、昇降する支持軸8にて高さを調整されており、
支持軸8に巻装してある圧縮バネ7に抗して押え板6が下方に押されると、支持軸8も下降し、抜き型5が、クッキー生地Aを抜き型の形状通りにカットし、前記抜き型5は、クッキーをカットし、生地を載せてある載置台あるいはラインベルト上に突き当たり、その後、上方の押え板6の押圧を解除することで、支持軸8に巻装してあるバネ7も圧縮を解かれて上方へ復帰し、共に抜き型5も上方へ戻るようになっており、最初に押し型4の刻印部9が、上方より生地に侵入してパターンを刻印し、その後に抜き型5にて形状がカットできるように構成されていることを特徴とするクッキー等の手動型押し用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキー、ビスケット等の表面へのパターンの明瞭な型押し器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスケット、クッキー等の練りもの菓子は、表面に、動物、花、あるいはキャラクター等のパターンが表されたもの、および各種形状のものが提供されている。
【0003】
菓子表面のパターンは、各パターンをかたどった凸型を菓子生地に押し当て刻印して形成されている。しかしながら細かいパターンはもちろん、そのほかのパターンも明瞭に表されているものが少ない。
【0004】
その原因は、従来のパターン形成が菓子の外側の輪郭形状の型抜きと同時に、表面のパターンの刻印を行っていることにある。型抜きするときの菓子生地は、粘性、弾性(こし)を有するようにしばらく寝かして休ませておいてから型押しする。そのため焼成時に上面に刻印しても、元の形状に戻ろうとする性質があるので、刻印された各凹所部分が元に戻りパターンが不明瞭となってしまい、さらに細かいパターンなどは全く作出できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビスケット・クッキー生地は、適当に粘性、弾性を残さないと凹凸を有するパターンの型押しができない。パターンを型押しすると、型の凸部に対応するクッキーの生地部分が、型凸部の上方からの押圧を受けて凹み、その押圧力に対応して凹部分の生地量が横方向に延出する。すなわち生地が横方向周囲に押し出される。
【0007】
従来の型押し方法は、上方よりの押圧によるパターンの刻印と同時に、菓子の輪郭形状を外枠にてカットしているので、型押し時に型凸部による上から圧が掛かった時の横方向への菓子生地の延出は、周囲の型抜き枠にて制止される。そのため、菓子生地は圧が加えられた状態にて型枠内にとどまる。
【0008】
その後に、型押しが終わり上方からの圧が解除されても、押し型の型凸部に横方向の圧が掛かった状態のままなので、型抜けが悪く刻印部形状を損傷したり、さらに、横方向に圧縮されていた生地も刻印部の凹部に戻ろうとするので、明瞭なパターンが形成されないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ビスケット、クッキー等の練りもの菓子の表面に、動物、花、あるいはキャラクター等のパターンを刻印する型押しの工程と、その各種輪郭形状を作出する型抜きの工程とを、同時に行わず、時間差を有して行うようにすることで、最初の上方より押圧する型押し工程で、型凸部の押圧力に対応する生地量の横方向周囲への延出が型抜き枠で制止されず、その後、次の工程で輪郭を型抜きしてカットするようにすることで、押し型の型凸部に対応する生地の凹部に横方向の圧、即ち、凹部の溝幅を元に戻す復元力が掛からないので型押し後の型抜け、すなわち離型性が良く、刻印部形状を損傷することがない。さらに、横方向に圧縮された生地も延出が制止されないので、生地の戻りを生じさせず、菓子表面のパターン凹部への影響を回避できるようにした。
【発明の効果】
【0010】
従来工法のように、菓子表面のパターンの型押しと輪郭形状を作出する型抜き工程とを同時に行わず、パターンの型押しと輪郭型抜き工程とを別工程とすることで、型押しされたパターンの凹部部分の押し圧力および横方向への延出が制止されないので、生地の戻りが生ぜず、凹部の形状が保持され、明瞭のままのパターンが簡単に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、手動抜き型
用器具のパターン型押し時の断面図。
【
図2】
図2は、手動抜き型
用器具の型抜き時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図に示す実施例に従って本発明を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1と
図2は、本発明で使用する手動抜き型
用器具のパターン型押し時と型抜き時を示す断面図である。
上下方向中央には、四隅以上(実施例では四隅)を脚1で、一定の高さに担持されている支持台2が位置し、この支持台2には、高さ調整ねじ3が貫装されて下方に突出している。
【0014】
高さ調整ねじ3の下端には、パターン刻印用の押し型4が、着脱交換可能に嵌着されている。押し型4は、各種パターンが用意されており、所望のパターンの押し型4を選択して、調整ねじ3の下端に嵌着する。高さ調整ねじ3は、クッキー下地の厚さに応じて、押し型4の刻印部9を生地の上にセットした時に、刻印部9がクッキー下地へ侵入するように高さ調整して嵌着される。
【0015】
支持台2の上方には、圧縮バネ7を巻着した複数本(実施例では4本)の支持軸8が適宜間隔に配置され、その下端は、押し型4の支持台2を貫通し、クッキーの輪郭形状を型抜きする抜き型5に突設している。複数本の調整ねじ8の上端は、支持台と平行に上方に位置する押さえ板6に固定されている。抜き型5は、前記押し型4の外周位置に枠状に構成されている。
【0016】
この抜き型5の下端5aは、押し型4の刻印部9より上方に位置するように、昇降する支持軸8にて高さを調整されている。そして支持軸8に巻装してあるバネ7に抗して押え板6が下方に押されると、支持軸8も下降し、抜き型5の下端5aがクッキー生地Aに侵入して抜き型の形状通りにカットする。
【0017】
抜き型5は、クッキー生地Aをカットし、下地を載せてある載置台あるいはラインベルトB上に突き当たり、その後、上方の押え板6の押圧を解除することで、支持軸8に巻装してあるバネ7も圧縮を解かれて上方へ復帰し、抜き型5も上方へ戻る。
このようにして、最初に刻印部9が、上方より生地Aに侵入してパターンを刻印する。その際に形状をカットする抜き型5の刃部5aは上方に止まっており、生地に接触していないので、刻印された際の生地の横方向への延出が制限されず、その後に形状がカットされるので、刻印部の凹凸が刻印されたままの状態で残り、明瞭なパターンが作出できる。
[参考例2]
【実施例2】
【0018】
次に、
図3に示す連続生産工程について説明する。
連続生産する場合は、前記抜き型を複数個並べて、ベルト上を搬送されるクッキー生地に、順次上方より下降させて型押しおよび型抜きを繰り返し行う。
実施例1で使用したパターンを刻印する押し型部分14と、形状をカットする枠である抜き型部分15を、離隔させて同一の支持台12に垂設させ、同時に押し下げできるように
してある。
【0019】
それぞれの型部分は、下方にベルトにより送られてくるクッキー生地Aまでの高さが、前記実施例1で述べたように、押し型14は、押し下げられた時に、生地の表面に侵入して凹凸を刻印できる高さに調整してあり、抜き型15は、押し下げられた時に、生地Aをカットできるように、生地が載せられたベルトBに達するまでの高さに調整してある。
【0020】
ベルトBにて搬送されるクッキーの生地Aが、刻印する押し型14の真下に移動すると、押し型14を取り付けてある支持台12が、クッキーの生地Aの上に降下して刻印する(a)。同時に、パターンの形状枠となっている抜き型15も降下して生地をカットする(b)。
【0021】
刻印およびカットが終わると,支持台12が両方の型14、15とともに上昇し、押し型14の真下の生地部分が、隣の抜き型15の真下まで移動すると、支持台12が再び降下し、前記刻印した部分を、パターンの形状枠となっている抜き型でカットする(b)。そして同時に、先に押し型14で刻印した生地部分には,新規の生地が移動してきており、その新規の生地部分に同時に刻印する(a)。
【0022】
このようにして生地の移動とマッチして型によるパターンの型押し(a)と形状の型抜き(b)が繰り返し行われて行く。隣接する押し型14と抜き型15の間隔の長さと生地Aの移動量および型の上下動を、公知のタイミング装置で調整して行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、簡単な構造の型を使用して、細かく明瞭なパターンをクッキー等の表面に作出することができる。同様の練り物であるかまぼこ、キャラメル、ゼリーなどの分野にも採用できるものである。
【符号の説明】
【0024】
A クッキー生地
B 搬送ベルト
1 脚
2 支持台
3 高さ調整ねじ
4 押し型
5 抜き型
6 押え板
7 バネ
8 支持軸
9 刻印部
12 支持台
14 押し型
15 抜き型