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特許7490909無線装置、無線通信方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】無線装置、無線通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/20 20090101AFI20240521BHJP
   H04W 28/24 20090101ALI20240521BHJP
   H04W 72/02 20090101ALI20240521BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20240521BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240521BHJP
【FI】
H04W28/20
H04W28/24
H04W72/02
H04W72/0457 110
H04W72/0453
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022538536
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028330
(87)【国際公開番号】W WO2022018834
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 英二
【審査官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0173408(US,A1)
【文献】特表2019-531013(JP,A)
【文献】特開2007-142590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのメモリと前記メモリに結合する少なくとも1つのプロセッサとを備える無線装置において、前記メモリに記憶された命令列により前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されるアプリケーションプログラムでの無線通信速度の実績値を基に基地局に要求する帯域を決定することと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されるアプリケーションプログラムごとに無線通信で使用される帯域を前記基地局に要求することと、
前記要求に対して前記基地局が割り当てた帯域の指示を受け取ることと、
前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を算出することと、
前記算出した差異が所定以上ある場合に、前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を低減するように、前記アプリケーションプログラムの無線通信で使用される帯域を前記基地局に再度要求することと、を実行し、
前記基地局に要求する帯域を決定することは、過去に割り当てられていた帯域とその帯域での実際の無線通信速度との関係を基に、前記アプリケーションプログラムの過去の実行時の無線通信速度の最大値及び平均値の少なくとも一方から前記基地局に要求する帯域を決定することを含む、無線装置。
【請求項2】
前記基地局に要求する帯域を決定することは、過去に前記基地局に要求した帯域と前記要求に対して前記基地局が割り当てた帯域との関係を基に、前記基地局に要求する帯域を修正することを含む請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記基地局に要求する帯域を決定することを前記少なくとも1つのプロセッサによってフォアグラウンドで実行されるアプリケーションプログラムの切替時に実行する請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記基地局に要求する帯域を決定することを所定の条件が充足されたタイミングで実行する請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項5】
コンピュータが、
前記コンピュータによって実行されるアプリケーションプログラムでの無線通信速度の実績値を基に基地局に要求する帯域を決定することと、
前記コンピュータによって実行されるアプリケーションプログラムごとに無線通信で使用される帯域を前記基地局に要求することと、
前記要求に対して前記基地局が割り当てた帯域の指示を受け取ることと、
前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を算出することと、
前記算出した差異が所定以上ある場合に、前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を低減するように、前記アプリケーションプログラムの無線通信で使用される帯域を前記基地局に再度要求することと、を実行し、
前記基地局に要求する帯域を決定することは、過去に割り当てられていた帯域とその帯域での実際の無線通信速度との関係を基に、前記アプリケーションプログラムの過去の実行時の無線通信速度の最大値及び平均値の少なくとも一方から前記基地局に要求する帯域を決定することを含む、無線通信方法。
【請求項6】
コンピュータに、
前記コンピュータによって実行されるアプリケーションプログラムでの無線通信速度の実績値を基に基地局に要求する帯域を決定することと、
前記コンピュータによって実行されるアプリケーションプログラムごとに無線通信で使用される帯域を前記基地局に要求することと、
前記要求に対して前記基地局が割り当てた帯域の指示を受け取ることと、
前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を算出することと、
前記算出した差異が所定以上ある場合に、前記決定された帯域と前記基地局から現在割り当てられている帯域との差異を低減するように、前記アプリケーションプログラムの無線通信で使用される帯域を前記基地局に再度要求することと、を実行させ、
前記基地局に要求する帯域を決定することは、過去に割り当てられていた帯域とその帯域での実際の無線通信速度との関係を基に、前記アプリケーションプログラムの過去の実行時の無線通信速度の最大値及び平均値の少なくとも一方から前記基地局に要求する帯域を決定することを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、無線通信方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
3GPP(Third Generation Partnership Project)において、BWP(BandWidth Part)と呼ばれる技術が規定されている。その関係資料は、3GPP TS38.300 6.10 Bandwidth Adaptationである。BWPを活用する目的の一つとしては、移動通信端末で使用される周波数帯域幅を状況に応じて動的に可変にできることが例示される。このような処理により、低消費電力化が実現できる可能性がある。なお、移動通信端末は、移動機、無線装置、あるいは単に端末とも呼ばれる。
【0003】
低消費電力化実現のためにBWPを用いる理由は、例えば、非特許文献3に例示されている。例えば、5G(第5世代移動通信システム)通信時の消費電流が従来の4G(第4世代移動通信システム)あるいはLTE(Long Term Evolution)に比べて大きくなる傾向がある。その原因は5G通信時に移動通信端末が使用する周波数帯域がLTE等に比べて広いためと考えられる。つまり、消費電流増加の原因は、通信が発生していない待機時においても、稼働する回路が多いことによる、と考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】3GPP Organizational Partners (ARIB, ATIS, CCSA, ETSI, TSDSI, TTA, TTC), 3GPP TS 38.300 V2.0.0 (2017-12) Technical Specification 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; NR; NR and NG-RAN Overall Description; Stage 2(Release 15)
【文献】3GPP Organizational Partners (ARIB, ATIS, CCSA, ETSI, TSDSI, TTA, TTC), 3GPP TR 38.840 V2.0.0 (2019-05) Technical Report 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; NR; Study on UE Power Saving (Release 16)
【文献】MediaTek,Inc., Bandwidth Part Adaptation 5G NR User Experience & Power Consumption Enhancements White Paper, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、5G以降の機能を搭載する移動通信端末では、周波数帯域が広くなることに起因して消費電流が従来よりも増加する。そのため5G以降の機能を搭載する移動通信端末においては、通信状態に応じた通信帯域の調整が望ましい。すなわち、5G以降の機能を搭載する移動通信端末では、消費電流を削減しながら高速通信できることが1つの課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態は、無線装置により例示される。本無線装置は、少なくとも1つのメモリと前記メモリに結合する少なくとも1つのプロセッサとを備える。このメモリに記憶された命令列により前記少なくとも1つのプロセッサが、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されるアプリケーションプログラムごとに無線通信で使用される帯域を基地局に要求することと、この要求に対して前記基地局が割り当てた帯域の指示を受け取ることと、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本無線装置によれば、消費電流を削減しながら高速通信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はBWPの構成を例示する図である。
図2図2はBWPの運用における課題を例示する図である。
図3図3は、通信システムを例示する図である。
図4図4は、移動通信端末のハードウェア及びソフトウェアの構成を例示する図である。
図5図5は、BWP管理部の構成を例示する図である。
図6図6は、BWP管理部の構成1乃至構成4と、アプリケーションとの関係を例示する図である。
図7図7は、BWP管理部のBWP制御処理を例示するフローチャートである。
図8図8は、BWP管理部のBWP制御処理を例示するフローチャートである。
図9図9は、比較例の処理のシーケンスである。
図10図10は、実施の形態のシステムにおける処理のシーケンスである。
図11図11は、受信パケット量の変化と、BWP管理部によるBWP帯域の変更を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態は、移動通信端末と、この移動通信端末にサービスを提供する基地局と、これらの間の無線通信方法を開示する。移動通信端末は、無線装置とも呼ばれる。本移動通信端末は、実行するアプリケーションプログラムごとのデータ通信量に応じて、通信する帯域幅を動的に変化させるように基地局に要求する。本移動通信端末はこのような処理により、過度な電流消費を抑制する。その結果、本移動通信端末はユーザの利便性を実現しながら高速データ通信と低消費電力化を両立させることを可能にする。
【0010】
より具体的には、移動通信端末は、少なくとも1つのメモリと前記メモリに結合する少なくとも1つのプロセッサとを備える。このメモリに記憶された命令列により上記少なくとも1つのプロセッサが、この少なくとも1つのプロセッサによって実行されるアプリケーションプログラムごとに無線通信で使用される帯域を基地局に要求する。そして、上記少なくとも1つのプロセッサが、上記要求に対して上記基地局が割り当てた帯域の指示を受け取る。一般的な移動通信システムでは、移動通信端末は、基地局と未接続のアイドル状態から接続状態に移行するときに、帯域を基地局に要求することが想定される。本実施の形態の移動通信端末は、一例としては、移動通信端末で実行されるアプリケーションプログラムごとのデータ通信量に応じて、通信する帯域幅を動的に変化させる。したがって、本実施の形態の移動通信端末は、アイドル状態から接続状態に移行するときに限定されず、帯域を基地局に要求する。以下、図面を参照して、本実施形態の移動通信端末が説明される。
【0011】
<BWPの構成例と本実施形態の特徴>
図1に、BWPの構成を例示する。図1は、ミリ波帯域でのBWPを例示する。現在のBWPでは一つのキャリアコンポーネント(CC)に最大4つのサブセットの帯域が定義される。移動通信端末がどのサブセットの帯域を使用するかについては、基地局から移動通信端末に通知される。また、キャリアアグリゲーションが実施される場合には、CCごとにBWPが定義されている。なお、パケット通信量に応じて移動通信端末の低消費電力化を実施する技術としては、BWPの調整以外に、キャリアアグリゲーションに使うSCC数の増加と削減による方法が例示される。
【0012】
(比較例の処理と課題)
本実施の形態で例示するBWPの運用により移動通信端末の帯域を動的に設定する通信システムに対する1つの比較例としては、基地局が帯域を決定するシステムが例示される。このようなシステムでは、例えば、基地局が移動通信端末のパケット通信量から適切な帯域を判断し、基地局が移動通信端末に適切と判断される帯域を通知する。
【0013】
なお、このようなシステムでは、パケット通信量に基づき移動通信端末の低消費電力化を実施する技術として、通信モードからアイドルモードへ遷移する時間のタイマー値による調整方法も利用される。したがって、比較例のように、基地局が移動通信端末に適切と判断される帯域を通知する場合に、基地局が適切な帯域を判断するタイミングが遅れると、移動通信端末における低消費電力化の効果が薄れる場合がある。
【0014】
図2に、この比較例のBWPの運用における課題が例示される。図2では、基地局でのレシーバ(Rxと称する)のパケット受信量を示す電流値の変化と、当該基地局で使用される帯域の変化が時間の軸(TIME)に対して例示されている。図2では、電流、帯域の変化のグラフの下側に、「課題」の欄が設けられている。図2で、「受信パケットデータ」と記載されている欄に、電流値が一定のパケットが矩形で示されている。ここでは、矩形の数がパケット数を例示している。
【0015】
図2のように、基地局と移動通信端末とが接続された接続状態(CONNECTED STATE)では、基地局は当該移動通信端末との間でパケットを送受信する。送受信されるパケット量が多い状態では、例えば、400MHzの帯域が当該移動通信端末との間で使用される。
【0016】
図2に例示される比較例の処理では、基地局が送受信されるパケット量の減少を認識すると、帯域変更タイミングT1で、基地局は移動通信端末に、帯域を例えば100MHzに変更することを通知する。しかしながら、何らかの手順で、基地局が送受信されるパケット量の減少をさらに早期(タイミングT1以前)に認識できれば、例えば帯域変更タイミングT2で、基地局は移動通信端末に、帯域を100MHzに変更することを通知できる。したがって、比較例の処理に対して、改善IMP1の文字列が付された矢印の分だけ、基地局はいち早く帯域の変更を通知できる。
【0017】
次に、比較例の処理では、基地局が送受信されるパケット量の増加を認識すると、帯域変更タイミングT3で、基地局は移動通信端末に、帯域を例えば400MHzに変更することを通知する。しかしながら、何らかの手順で、基地局が送受信されるパケット量の増加をさらに早期(タイミングT3以前)に認識できれば、例えば帯域変更タイミングT4で、基地局は移動通信端末に、帯域を400MHzに変更することを通知できる。したがって、比較例の処理に対して、改善IMP2の文字列が付された矢印の分だけ、基地局はいち早く帯域の変更を通知できる。
【0018】
以上の検討から、本実施の形態では、基地局が送受信されるパケット量の増加をさらに早期(タイミングT1以前、あるいはタイミングT3以前)に認識できる仕組みが例示される。
【0019】
(実施の形態の処理手順)
図3は、本実施の形態における通信システムを例示する。本通信システムは、移動通信端末1と基地局3を有する。図3は、移動通信端末1がBWPの帯域を基地局3に要求する手順を例示する。本実施の形態では、移動通信端末1は、BWP帯域を決定する処理方法を実行し、決定されたBWP帯域を所定の形式で所定の手順にしたがって、基地局3へ通知する。
【0020】
すなわち、まず、移動通信端末1は、適切なBWP帯域を判断するために、移動通信端末1自身が現在の通信状態を監視する。より具体的には、移動通信端末1は、実際に通信を伴うアプリケーションプログラム(以下、単にアプリケーション)毎にどのような通信をしているかを記録しておき、統計的に処理しておく。移動通信端末1は、BWP管理部10を有し、このような処理を実行する。このような処理により、移動通信端末1は、アプリケーションが起動された時点で、そのアプリケーションの処理において適切な通信帯域を決める事ができる。ここで、アプリケーションが起動された時点とは、例えば、ユーザによってメニューからアプリケーションが選択された時点である。なお、BWP管理部10の処理は、例えば、図4に例示するアプリケーションプロセッサ11がメモリ/ストレージ12に実行可能に展開されたBWP管理ソフトウェア20を実行することで提供される。
【0021】
また、移動通信端末1が基地局3へ提供する情報に関しては、極力高速に制御を行うためにLayer3のようなメッセージベースでの通知ではなく、Layer1(物理層)のようなコマンドベースでの通知が望ましい。そこで、本実施の形態では、移動通信端末1は、BWP要求ありまたはなしを基地局3に通知し、及び、BWP要求ありの場合の適切な帯域をLayer1のコマンドで要求する。Layer1のコマンドは、モデム17から基地局に送信される。
【0022】
基地局3は、Layer1のコマンドでBWP帯域の要求を受けると、要求を受けたBWP帯域と現在の基地局3での通信状況等を基に、移動通信端末1に割り当てるBWP帯域を決定する。基地局3での通信状況とは、例えば、基地局3における帯域の空き状況、すなわち、送受信するパケット量等である。そして、基地局3は、アップリンクとダウンリンク(UL/DL)のBWP帯域を決定し、Layer1のコマンドで移動通信端末1に通知する。移動通信端末1は、モデム17からLayer1のコマンドを受信し、BWP帯域の通知を取得する。BWP帯域の通知は移動通信端末1が基地局へ提供した、適切なBWPの帯域の要求に対するBWP補正情報ということができる。移動通信端末1は、適切なBWPの帯域の要求に対するBWP補正情報により、BWPの帯域を設定し、アプリケーションの実行時に基地局3との通信を実行する。なお、BWP管理部10は、適切なBWPの帯域の要求に対するBWP補正情報を蓄積しておき、次回の適切なBWPの帯域の決定に反映する。
【0023】
<移動通信端末の構成>
図4は、移動通信端末1のハードウェア及びソフトウェアの構成を例示する。移動通信端末1は、ハードウェアとしては、アプリケーションプロセッサ11、メモリ/ストレージ12、カメラ13、ディスプレイ14、オーディオ15、テザリング部16、モデム17、4G無線部18、5G無線部19、バッテリ1Aを有する。
【0024】
アプリケーションプロセッサ11は、Central Processing Unit(CPU)、Microprocessor(MPU)とも呼ばれる。アプリケーションプロセッサ11は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のアプリケーションプロセッサ11がマルチコア構成を有していても良い。移動通信端末1は、アプリケーションプロセッサ11以外の装置、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、画像処理プロセッサ等を有しても良い。また、移動通信端末1の少なくとも一部の処理は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されるものでも良い。
【0025】
メモリ/ストレージ12は、アプリケーションプロセッサ11等が実行するコンピュータプログラム、アプリケーションプロセッサ11等が処理するデータ等を記憶する。メモリ/ストレージ12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)、Read Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ等である。メモリ/ストレージ12は、単にメモリまたはストレージとも呼ばれる。メモリ/ストレージ12は、コンピュータが読み取り可能な媒体ということもできる。また、アプリケーションプロセッサ11とメモリ/ストレージ12とはコンピュータの一例ということができる。
【0026】
カメラ13は、例えば、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサ、Complementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサ等による画像入力装置である。
【0027】
ディスプレイ14は、液晶ディスプレイ、有機Electroluminescence(EL)パネル等である。なお、ディスプレイ14は、タッチパネルを重ねて、入力装置として形成してもよい。オーディオ15は、デジタル信号を音に変換する回路であり、例えば、Digital Analog(DA)変換器、アンプ等を含む。
【0028】
テザリング部16は、パーソナルコンピュータ等を携帯電話網によりネットワークに接続する装置である。テザリング部16は、WiFi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)(BT)接続、及び、Universal Serial Bus(USB)接続が可能である。
【0029】
モデム17は、デジタル信号を高周波アナログ信号に変調し、高周波アナログ信号をデジタル信号に復調する回路である。4G無線部18及び5G無線部19は、アンテナ配列を通じて、高周波アナログ信号を送信及び受信する回路である。バッテリ1Aは、二次電池であり、移動通信端末1に電力を供給する。
【0030】
メモリ/ストレージ12は、Operating System(OS)、BWP管理ソフトウェア20、各種アプリケーションを搭載する。OSは、移動通信端末1上の各種ハードウェアを管理し、アプリケーションプロセッサ11で実行される各種アプリケーションにハードウェア資源を供給する。アプリケーションプロセッサ11はBWP管理ソフトウェア20により、BWP管理部10として、アプリケーションごとにデータ通信速度を記録し、適切なBWP帯域を決定する。各種アプリケーションとしては,例えば、通話、ゲーム、ブラウザ、Social Networking Service(SNS)等が例示される。
【0031】
なお、モデム17、4G無線部18及び5G無線部19の処理の少なくとも一部は、プロセッサがソフトウェアを実行することで提供される。このようなソフトウェアは、無線部(モデム)ソフトウェアと呼ばれる。図5は、BWP管理部10の構成を例示する。なお、図5では、BWP管理部10とともにモデム17も記載されている。
【0032】
BWP管理部10は、モデム17を介して、基地局3に適切なBWPの帯域を要求し、基地局3から割り当てられたBWPの帯域を取得する。図5のように、BWP管理部10は、構成1乃至構成4という4つの構成を含む。また、構成1乃至構成4は、アプリケーションに依存しないで処理を実行する部分とアプリケーションごとに処理を実行する部分とを含む。
【0033】
アプリケーションに依存しないで処理を実行する部分は、モデム17と連携する部分であり、モデム-アプリケーション連携部と呼ぶ。モデム-アプリケーション連携部は、モジュールA1乃至A4の部分を含む。図5では、モジュールA1乃至A4が総称されて、モジュールAxで表されている。アプリケーションごとに処理を実行する部分は、アプリケーション単体機能部と呼ばれる。アプリケーション単体機能部は、モジュールB1乃至B4の部分を含む。図5では、モジュールB1乃至B4が総称されて、モジュールBxで表されている。以下、図5の構成1乃至構成4がそれぞれ説明される。
【0034】
構成1は、BWP情報に対する実際のデータ通信速度を記録する。データ通信速度は、スループットとも呼ばれる。構成1は、現在接続中の基地局3から指定されたBWP帯域をモデム17から取得するモジュールA1を含む。また、構成1は、モデム17から、基地局3で指定された現在のBWP帯域と移動通信端末1における実際のスループットとの関係を記録するモジュールA2を含む。すなわち、モジュールA2は、現在のスループットを監視する。そして、モジュールA2は、基地局3から指定されたBWP帯域と実際のスループットとの関係を変換テーブルに記録する。さらに、モジュールA2は、通信の状態変化を基に変換テーブルを更新する。通信の状態変化とは、例えば、Multiple-Input and Multiple-Output (MIMO)レイヤ数の変化等である。また、通信の状態変化とは、変調方式(QPSK/16QAM/64QAM/256QAM等)の変化、Carrier Aggregation (CA)のCarrier component(CC)数等である。上述のように、BWP帯域と実際のスループットとの関係は、変換テーブルに記録される。この関係は、過去に割り当てられていた帯域とその帯域での実際の無線通信速度との関係と言える。
【0035】
構成2は、実際に通信が開始されるとアップリンクとダウンリンクの通信量を監視しながらアプリケーション毎の最大データ通信量、及び平均データ通信量を記録する。構成2は、フォアグラウンドとバックグランドの通信を区別するモジュールB1と、フォアグラウンドの通信でのアプリケーションごとの通信量を測定するモジュールB2を含む。
【0036】
構成3は、ダウンリンクとアップリンクのそれぞれについて最大4種類の帯域リストから通信を伴うアプリケーションに対する適切なBWP帯域を選定する。そして、構成3は、アプリケーションに対して選定したBWP帯域を基地局3へ通知する。構成3は、モジュールB3とA3を有する。モジュールB3は、構成1で得られたBWP情報とスループットとの変換テーブルと、構成2で得られたアプリケーションごとの通信量から、ターゲットとなるBWPの帯域を含むBWP情報を算出する。モジュールA3は、モジュールB3で算出されたターゲットとなる望ましいBWP情報を基地局3に通知する。なお、上記変換テーブルの値は、メモリ/ストレージ12に記録される。次回アイドル状態から通信状態に遷移する際、あるいは通信中にアプリを切り買えて動作させる場合に、モジュールB3が基地局3に要求するBWP設定候補を選ぶときに、変換テーブルの記録値を用いる。
【0037】
構成4は、BWP補正情報を記録し、次回の基地局3へのBWP帯域要求時に、BWP帯域を補正する。BWP補正情報は、移動通信端末1からのBWP帯域の要求値に対して、基地局3が実際に決定し、移動通信端末1に通知したBWP帯域の関係を示す情報である。ここで、移動通信端末1からのBWP帯域の要求値は、例えば、Scheduling Request(SR)等に含めて移動通信端末1から基地局3に送信される。また、基地局3が移動通信端末1に通知したBWP帯域は、例えば、Downlink Control Information(DCI)に含まれる。すなわち、BWP補正情報は、BWP設定値を調整するために記録され、参照される。なお、SR及びDCIは、本実施の形態における例示であって、本通信システムの処理がSR及びDCIに限定される訳ではない。本通信システムの処理は、SR及びDCIと同等または類似のコマンド(または通知)を有する様々な通信システムに適用できる。
【0038】
例えば、BWP管理部10は、選定した帯域が移動通信端末1の状態変化により不足していることが判明した時には、次回要求するBWP帯域として、現在の通信で適正とされる値より1段階大きいBWP帯域を選定すればよい。また、逆に、BWP管理部10は、選定したBWP帯域が過剰であると判断した場合は、次回通信時に現在の最適値の1段階下の通信帯域を随時設定すればよい。
【0039】
構成4のモジュールA4は、モデム17を介して基地局3からのBWP変更要求(DCI)を取得する。構成4のモジュールB4は、モジュールA4より、BWP変更要求を取得し、該当するアプリケーションごとに記録する。
【0040】
図6は、BWP管理部10の構成1乃至構成4と、アプリケーションとの関係を例示する。構成1(モジュールA1、A2)は、BWP帯域とスループットとの変換テーブルを記録する。図6の例では、プライマリコンポーネントキャリア(PCC)の帯域1乃至帯域4に対する実際のスループットが対応付けられている。
【0041】
構成2のモジュールB1は、現在のフォアグラウンドで実行中のアプリケーションを特定する。図6の例では、フォアグラウンドで実行中のアプリケーションとして、SNSが特定されている。
【0042】
構成2のモジュールB2は、フォアグラウンドで実行されたアプリケーションごとに、ダウンリンクとアップリンクの通信速度(最大値及び平均値)を記録する。
【0043】
構成3のモジュールB3は、アプリケーションごとにダウンリンクとアップリンクのターゲットとなるBWP帯域を指定する。例えば、SNSに対して、ダウンリンク及びアップリンクともに帯域3が指定されている。
【0044】
構成4のモジュールB4は、アプリケーションごとにダウンリンクとアップリンクのターゲットとなるBWP帯域の補正情報を指定する。例えば、SNSに対して、ダウンリンクでは補正値0、アップリンク帯域1が指定されている。アップリンク帯域1は、相対値ではなく、絶対値で指定されている。ただし、構成4のモジュールB4は、補正値を相対値で指定してもよい。
【0045】
構成3のモジュールA3は、構成3のモジュールB3で指定され、構成4のモジュールB4で補正された帯域を基地局3に通知する。例えば、構成4のモジュールB4によって絶対値で指定されたアップリンク帯域1がそのまま基地局3に通知される。なお、補正値が相対値で指定された場合には、構成3のモジュールB3で指定されたBWP帯域が補正値で補正され、基地局3に通知される。
【0046】
構成4のモジュールA4は、現在フォアグラウンドで通信中のアプリケーションについて、構成4のモジュールB4で設定された補正情報を基に、BWP帯域(DL及びUL)を補正する。構成4のモジュールB4の処理は、基地局に要求する帯域を修正することの一例であると言える。
【0047】
<処理フロー>(全体説明)
まず、例えば5Gでの通信がはじまると、BWPに関するパラメータが基地局3から移動通信端末1に送られてくる。このパラメータはBWP帯域を含む。BWP管理部10はこのパラメータに含まれるBWP帯域をスループット(データ通信速度(bit/秒))に換算する。通常、BWP帯域とスループットの換算は、理論値等では一意に決まる。例えば、変調方式(QPSK, 16QAM, 64QAM等)が定まると、シンボルあたりのビット数が定まり、データ通信速度が算出される。しかし、実際の商用環境においては、移動通信端末1が存在する場所における電波の強弱等の影響があり、BWP帯域とスループットとの換算はその影響を受ける。そこで、BWP帯域と、BWP帯域から変換されるスループット値との関係は更新することが望ましい。本実施の形態では、BWP管理部10はBWP帯域とスループット値との関係を変換テーブルに保持し、更新する。
【0048】
具体的には移動通信端末1が場所を移動して、接続する基地局3等が遷移すると、BWP管理部10は変換テーブルを更新する場合が生じる。また、BWP管理部10は上記電波の強弱等による通信の状態変化を基に変換テーブルを更新してもよい。
【0049】
本実施の形態では、最初に1つのアプリケーション(例えば、ブラウザ)が通信を開始することをBWP管理部10が特定する。そして、BWP管理部10はこれまでの当該アプリケーションのスループットの最大値と平均値から、どれくらいの帯域が必要かを基地局3から指定されたパラメータを使って、BWP値に置き換える。この時点でBWP管理部10は基地局に対して即座にBWPの要求値を送信することができる。
【0050】
通常、例えば、基地局3は通信しているパケットの変化量から帯域を決めるものなので、基地局3はアプリの開始と同時にBWP帯域を指定することができない。しかし、本実施の形態の方法を用いて、基地局3側で移動通信端末1が送信したBWP要求値をそのまま採用すればいち早く低消費電力通信が実現できるメリットがある。BWP帯域はあくまで帯域の範囲であり、リソースを要求する訳ではないので、基地局が要求を拒む理由はとくにない。
【0051】
この状況から、移動通信端末1がフォアグラウンドの処理を次のアプリケーション(例えば、ゲーム)に切り替えると、BWP管理部10は移動通信端末1内のこれまでの実績から、適切と推定されるBWP帯域を算出し基地局3へ要求をする。しかし、基地局3がアプリケーションを意識せずにデータ通信量だけを監視していると、データ通信の変化を捉えることが難しい。基地局3がすぐには適切なスループットを決定できない場合がある。そのため、基地局3はデータ通信の状態が変化している場合には、その変化をしばらく観察してからでないとBWP帯域を変化させ、決定することは困難である。
【0052】
本実施の形態の方式は、実際のデータ通信の変化であるアプリケーションの切り替えとほぼ同時にBWP帯域を指定することができるメリットがある。また、図11が例示するように、移動通信端末1がアプリケーションをSNS、動画受信再生、通話等に切り替えても、BWP管理部10はいち早くBWP帯域を指定することができる。しかし、BWP帯域の設定はアプリケーションを一度実行すれば設定が終わりという事ではない。
【0053】
例としては、SNS実行中に電波状態の変動により適切なスループットを得るための帯域幅が以前の計算で求めた時から変化した場合が例示される。このような場合には、移動通信端末1は、その都度変更依頼を基地局3に送ることが望ましい。具体的には、電波が弱くなり、変調方式が多値変調(64QAM)から、BPSKのような単純変調方式に変更になった場合が例示できる。また、キャリアアグリゲーションの電波が弱くなり4つのComponent Carrier(CC)が使えず1CCだけになった場合等が例示できる。
【0054】
また、移動通信端末1が指定したBWPが基地局3側から見ると間違っている可能性もある。動画受信再生のような画質やサイズによってパケット通信量の変化が大きいアプリケーションでは、移動通信端末1が指定したパラメータと基地局3が指定したBWP帯域に差異がある場合がある。そこで、移動通信端末1は、異なったBWP帯域を指定された場合には、スループットとBWP帯域との変換テーブルを補正する。この補正により、移動通信端末1は、より正確性なBWP帯域を指定できるようになる。また、BWP管理部10が個々のアプリケーション自体においても、例えば常に通信速度の平均値と最大値を取得すればよい。このような処理により、BWP管理部10は平均と最大の差があまりに大きいようなアプリケーションに対しては、平均値と最大値の両方を考慮する事で、指定するBWP値の信頼性を向上することが可能となる。
【0055】
このほか特殊なアプリケーションの例として通話(VoLTE)がある。通話アプリケーションは5G圏内であっても、4Gで通信を行うアプリケーションである。移動通信端末1がVoLTEを実行する場合に、5G通信では自動的にBWP帯域が最低帯域となるように設定されていると、低消費電力化を実現できることにもなる。この場合も、BWP管理部10は通話アプリケーションが始まり次第帯域を最小に要求することも可能である。
【0056】
(処理手順)
図7及び図8は、BWP管理部10のBWP制御処理を例示するフローチャートである。なお、図7図8との間は、A1乃至A4の符号を付した矢印で処理が接続される。この処理では、BWP管理部10は、まず、基地局3から送られてくるBWP帯域を含むBWP情報をモデムから入手する(S1)。この処理は、上記構成1モジュールA1の処理である。
【0057】
次に、BWP管理部10は、S1で取得したBWP情報をスループットに変換し、BWP情報とスループットの変換テーブルを更新する(S2)。BWP管理部10は、現在の通信状態に応じて、変換テーブルを随時更新する。通信状態は、例えば、MIMOレイヤ数、受信時の変調方式、コンポーネントキャリア数等である。ただし、BWP管理部10は、基地局3から指定された現在のBWP帯域と、実際のスループットとの関係をBWP管理部10に記録するようにしてもよい。そして、BWP管理部10は、その後の通信状態に応じて、変換テーブルを更新すればよい。このような処理により、BWP管理部10は、可能な限り、現在の通信状態に対応して、変換テーブルにおいて、BWP情報とスループットとの関係を維持できる。この処理は、上記構成1モジュールA2の処理である。
【0058】
なお、S2の処理は、図7のフローチャートの処理とは、別のプロセスで実行されるようにしてもよい。すなわち、BWP管理部10は、常時、通信状態等を監視し、変換テーブルを更新することの要否を判定すればよい。このようなS2の処理において、通信状態が変更になることは、所定の条件が充足されたことの一例である。このようにすることで、BWP管理部10は、アプリケーションの切替とは別に、通信状態が変更になると、変換テーブルを更新できる。なお、BWP管理部10は、所定のタイミングあるいは定期的に通信状態等を監視し、変換テーブルを更新することの要否を判定してもよい。したがって、所定のタイミングあるいは定期的な条件は、所定の条件の一例でもある。
【0059】
次に、BWP管理部10は、現在フォアグラウンドで通信中のアプリケーションを特定する(S3)。この処理は、上記構成2モジュールB1の処理である。
【0060】
次に、BWP管理部10は、現在フォアグラウンドで通信中のアプリケーションの通信のスループットの最大値及び平均値を取得し、データベースを更新する(S4)。この処理は、上記構成2モジュールB2の処理である。なお、BWP管理部10は、アプリケーションごとの通信のスループットを随時更新している。例えば、BWP管理部10は、処理の時間間隔で、アプリケーションの通信のスループットを監視し、データベースの最大値及び平均値を更新すればよい。ここで、データベースは、例えば、それぞれのアプリケーションごとに、通信のスループットの最大値と平均値とを記録するエントリを有するテーブルである。
【0061】
次に、BWP管理部10は、基地局3へ報告するターゲットのBWP帯域を補正情報含めて決定する(S5)。この処理は、構成3モジュールB3及び構成4モジュールB4の処理である。
【0062】
次に、BWP管理部10は、S5で決定したターゲットのBWP帯域と前回値とで差分があれば、例えば、SRにBWP帯域を含めて、モデムへ送信する(S6)。その結果、前回値との差分があるBWP帯域が基地局3に送信される。この処理は、構成3のモジュールA3の処理である。
【0063】
次に、BWP管理部10は、基地局3からS5で決定したBWP帯域の値と異なるBWP帯域の指定を受信したか否かを判定する(S7)。BWP管理部10は、決定したBWP帯域の値と異なるBWP帯域の指定を受信した場合、処理をS5に戻し、再度、補正情報を含めて、ターゲットのBWP帯域を決定する。基地局3が指定したBWP帯域が適正値とは限らないからである。このようにして、移動通信端末1と基地局3との間で、望ましいBWP帯域の設定に向けた処理が繰り返されることになる。すなわち、本実施の形態では、BWP管理部10は、基地局3が指定したBWP帯域に対する望ましいBWP帯域との差分値を検出し、BWP帯域変更の要否を認識することが可能となる。そして、BWP管理部10は、基地局3が早期にかつ動的に望ましいBWP帯域を設定するように基地局3に情報を提供できる。S7の判定は、決定された帯域と基地局から現在割り当てられている帯域との差異を算出することとの一例ということができる。また、S7の判定で、決定したBWP帯域の値と異なるBWP帯域の指定を受信した場合は、所定の条件が充足されたときの一例である。さらに、S6の処理は差異を低減するように、アプリケーションプログラムの無線通信で使用される帯域を基地局に再度要求することの一例ということができる。
【0064】
なお、BWP管理部10は、S5乃至S7の処理を図7のフローチャートとは独立に実行してもよい。すなわち、BWP管理部10は、常時通信状態を監視し、基地局3に要求することが望ましいターゲットのBWP帯域を算出してもよい。そして、望ましいターゲットのBWP帯域と基地局3から現在指定された帯域とに差異がある場合には、SRにBWP帯域を含めて、モデムへ送信すればよい。このような処理において、望ましいターゲットのBWP帯域と基地局3から現在指定された帯域とに差異がある場合が所定の条件が充足されたときの一例でもある。
【0065】
一方、BWP管理部10は、決定したBWP帯域の値と合致するBWP帯域の指定を受信した場合、次に、アプリケーションの変更があったか否かを判定する(S8)。アプリケーションの変更があった場合、BWP管理部10は、処理をS3に戻す。そして、アプリケーションの変更があった場合は、上述のように、BWP管理部10は、望ましいBWP帯域を決定し、基地局3に通知する。アプリケーションの変更がない場合、BWP管理部10は、接続先が基地局3から変更されたか否かを判定する(S9)。接続先が基地局3から変更されると、変更先の基地局に応じて変換テーブルを更新する必要があるからである。
【0066】
S9の判定で、接続先が基地局3から変更された場合、BWP管理部10は処理をS1に戻し、接続先の基地局から、新たに、BWP帯域を含むBWP情報を取得する。一方、接続先が基地局3から変更されない場合、BWP管理部10は、処理をS4に戻し、アプリケーションごとのスループットの監視を継続する。
【0067】
<実施の形態の効果>
図9は、比較例の処理のシーケンスである。比較例の処理では、移動通信端末が基地局未接続状態のIDLEステートにおいて、移動通信端末が基地局接続要求(RRC Connection Request)を送信する(T1)。このとき、移動通信端末は、基地局にBWP帯域(BWPパラメータ)を指定可能である。
【0068】
すると、基地局は、移動通信端末に、基地局接続ACCEPTを返信する(T2)。このとき、基地局は、移動通信端末に、BWP帯域(BWPパラメータ)の承認を同時に返信する。そして、移動通信端末が基地局と接続状態(Connected ステート)となる。接続状態では、基地局は、パケットの送受信状態を判断し、Downlink Control Information(DCI)コマンドによって移動通信端末にBWP帯域を指定する(T11)。
【0069】
図10は、本実施の形態のシステムにおける処理のシーケンスである。本実施の形態においても、T1及びT2の処理は、比較例と同様である。ただし、本実施形態においては、接続状態(Connected ステート)において、移動通信端末1が基地局3に、例えば、SRにより、適宜、BWP帯域を基地局3に要求できる。適宜とは、移動通信端末1が基地局3にSRを送信するタイミングに制限がないことを意味する。すなわち、移動通信端末1は、必要に応じて、都合のよいタイミングで、BWP帯域を基地局3に要求できる。一方、基地局3は、移動通信端末1が指定したBWP指定で良いか否かを通信状況から判断すればよい。すなわち、比較例(図9)では、基地局が有する情報に基づいて、基地局がBWP帯域を決定し、移動通信端末に指定する。これに対して、本実施の形態(図10)では、基地局3は、移動通信端末1からのSRによるBWP帯域の要求を加味して、移動通信端末1に指定するBWP帯域を決定できる。その結果、図2に例示したように、改善IMP1、改善IMP2のように、帯域変更のタイミングを早めることができる。また、基地局3は、より適切なBWP帯域を決定できる。
【0070】
図11は、受信パケット量の変化と、BWP管理部10によるBWP帯域の変更を例示する。図11では、比較例のような移動通信端末1が基地局未接続状態であるIDLEステートに限定されず、例えば、アプリケーションの切替時に、直ちに、BWP帯域が変更される。
【0071】
すなわち、移動通信端末1は、アプリケーションごとに、スループットの実績値(例えば、最大値と平均値)を記録している。また、移動通信端末1は、BWP帯域とスループットの実績値との関係を保持している。このため、アプリケーションが切り替わると、移動通信端末1は実行されるアプリケーションの通信のスループットの実績値を基に、該当するBWP帯域を決定することができる。そして、移動通信端末1は決定したBWP帯域を基地局3に要求できる。
【0072】
また、アプリケーションが切り替わらない場合でも、通信状態が変化した場合に、移動通信端末1はBWP帯域を決定し、基地局3に要求できる。通信状態が変化した場合とは、例えば、BWP帯域と通信のスループットとの関係が変化し、変換テーブルが更新された場合、変調方式が変更された場合、BWP帯域の不足が検知された場合等である。したがって、本実施の形態の処理では移動通信端末1は、適切なタイミングで、適切なBWP帯域を基地局3に要求できる。基地局3は、移動通信端末1からの要求と、基地局3での通信状態の両方を反映し、適切なBWP帯域を設定できる。
【0073】
以上の処理の結果、移動通信端末1は、適切な帯域を使用しつつ低消費電力化を実現できる。
【符号の説明】
【0074】
1 移動通信端末
3 基地局
10 BWP管理部
11 アプリケーションプロセッサ
12 メモリ/ストレージ
13 カメラ
14 ディスプレイ
15 オーディオ
16 テザリング部
17 モデム
18 4G無線部
19 5G無線部
1A バッテリ
20 BWP管理ソフトウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11