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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】抵抗溶接用電極装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B23K11/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020070063
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146398
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 雄基
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006433(JP,A)
【文献】特開2009-079632(JP,A)
【文献】特開2009-293685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記球状凹部の先端部を基端が大径の円錐状としたことを特徴とした請求項1記載の抵抗溶接用電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抵抗溶接に用いられる電極装置、特にスイベルチップと呼ばれている電極が揺動可能な抵抗溶接用電極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電極装置として図7に示すように、支持部材51の先端に円弧状突起52を形成するとともに、揺動電極53の基端に円弧状突起52に対応する円弧状凹部54を形成し、この円弧状凹部54に円弧状突起52を嵌め込んで、支持部材51に揺動電極53を揺動可能に支持し、円弧状突起52の装着穴55に装着した圧縮コイルバネ56と、この圧縮コイルバネ56の先端と円弧状凹部54の壁面との間に介装された球体57からなるものがある。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-006433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のものでは、溶接時に球体が圧縮コイルバネの先端に嵌合し、回転しなくなることがあり、揺動電極の動作が悪くなり溶接不良が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決し、球体の回転が阻止されることが無く、揺動電極の揺動が常にスムーズになされ、溶接不良を防止した抵抗溶接用電極装置を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の抵抗溶接用電極装置は、支持部材の先端と揺動電極の基端の一方に球状突起を形成するとともに、他方に球状突起に対応する球状凹部を形成し、球状凹部に球状突起を嵌め込んで支持部材に揺動電極を揺動可能に支持した抵抗溶接用電極装置において、前記支持部材の中心軸方向に設けた装着穴に装着した圧縮コイルバネと、この圧縮コイルバネの先端と球状凹部との間に介装され、軸方向に並設した複数個の球体からなる付勢装置を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
前記球状凹部の半径を、前記球状突起の半径か、または僅かに大きい半径としたことが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0008】
前記球状凹部の先端部を基端が大径の円錐状としたことが好ましく、これを請求項3の発明とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、支持部材の中心軸方向に設けた装着穴に装着した圧縮コイルバネと、この圧縮コイルバネの先端と球状凹部との間に介装され、軸方向に並設した複数個の球体からなる付勢装置を設けたので、1個の球体が圧縮コイルバネに嵌合して回転が阻止されても、他の球体の回転は阻止されないので、揺動電極が常にスムーズに動作し、溶接不良を防止する。
【0010】
請求項2の発明では、前記球状凹部の半径を、前記球状突起の半径か、または僅かに大きい半径としたので、揺動電極はワークの傾きにあった傾斜を溶接後も保持する。
【0011】
請求項3の発明では前記球状凹部の先端部を基端が大径の円錐状としたので、揺動電極は溶接後に電極面が水平である、元の状態に速やかに戻る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す断面図である。
図2図1の電極装置の溶接時の状態を示す断面図である。
図3図1の電極装置の溶接後の状態を示す断面図である。
図4】支持部材と揺動電極の連結方法を説明するための断面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。
図6図5の電極装置の溶接時の状態を示す断面図である。
図7】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図4に基づいて説明すると、1は円柱状の基部2の先端に、細径部3を介して形成された球状突起4からなる導電性の支持部材であり、支持部材1の中心軸方向には基端に大径部5aを形成した円柱状の装着穴5が貫通成形されている。尚、装着穴5の細径部5bの基端にはねじ部5cが螺刻されている。
【0014】
6は、基端が開口し、前記支持部材1の先端に形成した球状突起4に対応した球状凹部7が基端に成形されるとともに、先端には中心軸方向にねじ穴8が形成された保持部材9と、裏面にねじ軸10aを形成し、ねじ軸10aをねじ穴8に螺合することにより保持部材9に保持された電極部10とからなる導電性の揺動電極である。尚、球状凹部7は、組立前は、先端の半球状部7cに続いて、基端開口の円柱状部7dに形成された凹部である。また、球状突起4に対応した球状凹部7とは、本実施の形態では、球状突起4の半径が球状凹部7と同じか僅かに小さい半径を有していることである。
【0015】
12は支持部材1の装着穴5に装着された圧縮コイルばね13と圧縮コイルばね13の先端と揺動電極6の円球状凹部7の壁面の中央部に設けた円錐形凹部7bとの間に介装され軸方向に並設した2個の鋼球である球体14、14と、圧縮コイルばね13の装着穴5からの抜け止めのため、支持部材1の装着穴5細径部5b基端のねじ5cに螺合され頭部を大径部内5aに位置させたボルト15にて圧縮コイルバネ13が装着穴5からの抜け出さないように装着された付勢装置であり、付勢装置14にて揺動電極6を常に支持部材1から離す方向に付勢している。
【0016】
次に、前記電極装置の組立方法について説明すると、図4に示すように、保持部材9の基端開口7aの球状凹部7は、組立前の状態では、先端の半球状部7cに続けて円柱状部を形成してあり、揺動電極6の保持部材9の基部の球状凹部7の開口7aから支持部材1の球状突部4を嵌め込み、保持部材9球状凹部7の開口7aの端部をかしめることによって支持部材1に揺動電極6を揺動可能に連結される。
【0017】
この後、支持部材1の装着穴5に、基端から2個の球体を入れたのち圧縮コイルバネ13を収納し、ボルト15を装着穴5の細径部5bのねじ部5cに螺着する。
【0018】
さらに、溶接方法について説明すると、図1に示す、前記実施形態の電極装置を上部電極16として取付け、揺動電極6の電極部11の電極面11aが水平な状態から上部電極16が下降し、電極部11の電極面11aの端部が傾斜したワーク17当接し、揺動電極6が揺動し、図2に示すように、電極部11の電極面11aがワーク17に平行になって接触した後、上部電極16、ワーク17、18、下部電極19に電流が流れ、ワーク17、18を溶接する。
【0019】
溶接終了後、上部電極16が上昇しても、略同一半径にて形成された球状突起4が球状凹部7に嵌め込まれているので、付勢装置12の付勢力が揺動電極6を揺動せず、図3に示すようにワーク17に対して電極部11の電極面11aが平行な状態が保たれる。
【0020】
次に、第2の実施の形態について、図5図6に基づいて説明すると、31は基端に基端側を開口した球状凹部32と先端に電極部11を螺着するねじ穴33を形成した保持部材であり、保持部材31の球状凹部32の先端半分は基端を太径とした円錐部32aとなっており、円錐部32aの先端には、ねじ穴33に貫通する凹部32bが形成されている。
【0021】
支持部材31以外の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、同一箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
さらに、第2の実施の形態について、溶接方法について説明すると、図1に示す、前記電極装置を上部電極16として取付け、揺動電極6の電極部11の電極面11aが水平な状態から上部電極16が下降し、電極部11の電極面11aの端部が傾斜したワーク17当接し、揺動電極6が揺動し、図2に示すように、電極部11の電極面11aがワーク17に平行になって接触した後、上部電極16、ワーク17、18、下部電極19に電流が流れ、ワーク17、18を溶接する。
【0023】
溶接終了後、上部電極が上昇すると、保持部材31の球状凹部32の円錐部32aが付勢装置12にて付勢されるので、揺動電極6は揺動し、電極部11の電極面11aが水平となる。即ち、溶接終了毎に図5に示す状態に戻る。
【0024】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、支持部材1に形成した球状突起4を保持部材9に形成するとともに、保持部材9、31に形成した球状凹部7、32を支持部材1に形成しても良い。
【0025】
以上のように、本発明によれば、支持部材1の中心軸方向に設けた装着穴5に装着した圧縮コイルバネ13と、この圧縮コイルバネ13の先端と球状凹部7、32との間に介装され、軸方向に並設した複数個の球体14、14からなる付勢装置12を設けたので、1個の球体14が圧縮コイルバネ13に嵌合して回転が拘束されても、他の球体14が回転するので、揺動電極6がスムーズに動作し、溶接不良を防止する。
【0026】
また、球状凹部7の半径を、前記球状突起4の半径か、または僅かに大きい半径としたので、揺動電極6はワークの傾きにあった傾斜を溶接後も保持する。
【0027】
さらにまた、前記球状凹部32の先端部を基端が大径の円錐状32aとしたので、揺動電極6は溶接後に電極面が水平である、元の状態に速やかに戻る。
【符号の説明】
【0028】
1 支持部材
2 基部
4 球状突起
5 装着穴
6 揺動電極
7 球状凹部
9 保持部材
10 電極部
12 付勢装置
13 圧縮コイルばね
14 球体
16 上部電極
17 ワーク
18 ワーク
19 下部電極
31 保持部材
32 球状凹部
33 ねじ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7