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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20240521BHJP
【FI】
G06Q20/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024014573
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522193592
【氏名又は名称】株式会社Synquery
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭隆
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/162515(WO,A1)
【文献】特許第7359481(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンの技術を用いたファンジブルトークンを生成するファンジブルトークン生成部と、
前記ファンジブルトークンを管理するファンジブルトークンウォレットのアドレスに紐づくノンファンジブルトークンであって、前記ファンジブルトークンの残高管理および所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンを前記ファンジブルトークンのブロックチェーンに紐づけて生成するノンファンジブルトークン生成部と、
前記ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションと、前記ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時を含む移動履行情報を含むトランザクションとを前記ブロックチェーンに登録するブロックチェーン管理部と、
前記移動予定日時と前記移動履行日時との一致度合いに基づいて前記ブロックチェーンで生成されるトークンである報酬を決定する報酬決定部と、を備え、
前記ブロックチェーン管理部は、前記ファンジブルトークンの移動元のファンジブルトークンウォレットが決定された前記報酬を受け取ったことを証するトランザクションを生成して前記ブロックチェーンに登録する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記ブロックチェーン管理部は、前記ファンジブルトークンウォレット内に保存可能な識別子であって、前記ファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションを一意に特定するための識別子を、前記トランザクションに関連付けて前記ブロックチェーンに登録する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ブロックチェーン管理部は、前記ブロックチェーンを構成する他のノードから取得した情報であって、前記ブロックチェーンに登録されたトランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力の提供予定量を示す情報を含むトランザクションを前記ブロックチェーンにさらに登録し、
前記報酬決定部は、前記提供予定量と実際に提供された計算能力量との一致度合いに基づいて前記ブロックチェーンで生成され前記ノードに提供するためのトークンである報酬を決定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションの時間帯ごとの集中度を取得する集中度取得部をさらに有し、
前記報酬決定部は、前記トランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力を提供した時間帯における前記集中度が大きい場合は、前記集中度が小さい場合よりも、前記計算能力を提供した前記ノードに付与する報酬の量が多くなるように前記報酬を決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックチェーンの技術を利用した暗号資産が普及してきている。このような暗号資産の一種であるビットコインではブロックに登録するナンスの計算(いわゆる、マイニング)が難解であり、膨大な計算量を要する。特許文献1には、ナンスの計算に用いられるコンピュータの利用用途等に応じて計算負荷を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-117555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビットコインでは、ブロックチェーンが保持する情報の安全性は上述のナンスの計算の困難性に依存し、その計算量に応じた報酬が支払われるPoW(Proof of Work)が採用されている。このほかにも、暗号資産のマイニングにおける報酬の決定にはPoS(Proof of Stake)等のアルゴリズムが存在する。これらのアルゴリズムを運用するためには高性能の計算機や暗号資産の長期間に渡る利用が必要であり、多くのユーザが容易に報酬を受け取れる仕組みとは必ずしも言えない。このような状況に鑑み、本願の発明者は、暗号資産を介した経済圏を容易に構築するために、報酬の決定に関する新たなアルゴリズムを開発する必要性を認識するに至った。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、暗号資産における報酬決定に関する新たなアルゴリズムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、ブロックチェーンの技術を用いたファンジブルトークンを生成するファンジブルトークン生成部と、前記ファンジブルトークンを管理するファンジブルトークンウォレットのアドレスに紐づくノンファンジブルトークンであって、前記ファンジブルトークンの残高管理および所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンを前記ファンジブルトークンのブロックチェーンに紐づけて生成するノンファンジブルトークン生成部と、前記ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションと、前記ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時を含む移動履行情報を含むトランザクションとを前記ブロックチェーンに登録するブロックチェーン管理部と、前記移動予定日時と前記移動履行日時との一致度合いに基づいて前記ブロックチェーンで生成されるトークンである報酬を決定する報酬決定部と、を備え、前記ブロックチェーン管理部は、前記ファンジブルトークンの移動元のファンジブルトークンウォレットが決定された前記報酬を受け取ったことを証するトランザクションを生成して前記ブロックチェーンに登録する。
【0007】
前記ブロックチェーン管理部は、前記ファンジブルトークンウォレット内に保存可能な識別子であって、前記ファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションを一意に特定するための識別子を、前記トランザクションに関連付けて前記ブロックチェーンに登録してもよい。
【0008】
前記ブロックチェーン管理部は、前記ブロックチェーンを構成する他のノードから取得した情報であって、前記ブロックチェーンに登録されたトランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力の提供予定量を示す情報を含むトランザクションを前記ブロックチェーンにさらに登録してもよく、前記報酬決定部は、前記提供予定量と実際に提供された計算能力量との一致度合いに基づいて前記ブロックチェーンで生成され前記ノードに提供するためのトークンである報酬を決定してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションの時間帯ごとの集中度を取得する集中度取得部をさらに有してもよく、前記報酬決定部は、前記トランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力を提供した時間帯における前記集中度が大きい場合は、前記集中度が小さい場合よりも、前記計算能力を提供した前記ノードに付与する報酬の量が多くなるように前記報酬を決定してもよい。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。又、コンピュータプログラムを提供するため、あるいは当該コンピュータプログラムの一部をアップデートするために、このコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このコンピュータプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、暗号資産における報酬決定に関する新たなアルゴリズムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る情報処理システムの概要を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】報酬決定部による報酬の決定処理を説明するための図である。
図4】報酬の決定に用いられる関数の外観を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係る集中度取得部による集中度の取得方法を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態の概要>
図1は、実施の形態に係る情報処理システムSの概要を模式的に示す図である。実施の形態に係る情報処理システムSは、商品や役務の支払を担う決済サービスを提供するためのシステムであり、決済には暗号資産が用いられる。情報処理システムSは端末T、決済サーバP、及び分散型台帳Dを含み、それらがインターネット等の通信ネットワークNを介して互いに通信可能な態様で接続している。
【0014】
実施の形態に係る情報処理システムSにおいては、既存の暗号資産を用いる決済システムと同様に、システムに参加する者に対して報酬が支払われる。実施の形態に係る情報処理システムにおいて、報酬は「予定」と「履行」との一致度によって決定される。このため、情報処理システムSが提供する決済サービスのユーザである支払者は、支払予定日時をあらかじめ登録した上で実際の支払を実行する。支払者による支払の予定日時があらかじめ計画されることで、情報処理システムSの運用に供すべき計算リソースを計画的に用意できるため、情報処理システムSをより効率的に運用できる。したがって、情報処理システムSは、支払予定日時である「予定」と実際に支払を実行した日時である「履行」とが近いほど、支払者に多くの報酬を支払う。
【0015】
分散型台帳Dは複数の情報処理装置1によって構成されている。図1は、分散型台帳Dが第1情報処理装置1a、第2情報処理装置1b、第3情報処理装置1c、及び第4情報処理装置1dの4つの情報処理装置1によって構成されている例を示しているが、分散型台帳Dを構成する情報処理装置1の数は4以外であってもよい。分散型台帳Dを構成する情報処理装置1は互いに同じ情報を共有し、同じ処理を実行することができる計算機である。
【0016】
端末Tは、支払に関する情報を読み取るための装置である。限定はしないが、一例として、端末Tは支払に関する情報が埋め込まれた二次元バーコードを読み取る装置である。既知の決済方式であるため詳細な説明は省略するが、二次元バーコードを店舗が提示する店舗提示型(Merchant-Presented Mode;MPM)の場合、端末Tは支払者が所持するスマートフォンなどである。また、二次元バーコードを支払者が提示する利用者提示型(Consumer-Presented Mode;CPM)の場合、端末TはPOS(Point of Sale)レジ等である。なお、図1は支払者が所持する端末Tがスマートフォンである場合の例を示している。以下、本明細書では、二次元バーコードを店舗が提示し、支払者が所持する端末Tが二次元バーコードを読み取るMPMであることを前提として説明するが、CPMであっても本発明は成立する。
【0017】
実施の形態に係る情報処理システムSにおいて、端末Tは、端末T上でローカライズされたローカルデータベースLを記憶部に保持している。端末Tが保持するデータベースは情報の履歴を保存できればどのようなものでもよいが、例えば端末T上でローカライズされたローカルブロックチェーンであってもよい。以下本明細書において、端末Tが保持するローカルデータベースLがローカルブロックチェーンであることを前提に説明する。ローカルデータベースLは端末T上で発行されたトランザクションによって構成されており、このトランザックションには連綿と接続する検証可能なハッシュ値が格納されている。
【0018】
また、情報処理装置1は、分散型台帳Dを構成する他の情報処理装置1と共有するブロックチェーンBを記憶部に保持している。ブロックチェーンBは、例えば暗号資産となるファンジブルトークンを格納するトランザクションによって構成されるチェーンや各支払者の暗号資産を管理するウォレットの残高等を格納するトランザクションによって構成されるチェーン、ウォレットの所有者の身元確認のための情報を格納するトランザクションによって構成されるチェーンなど、複数のチェーンを含んでいる。
【0019】
なお、分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1は、ブロックチェーンBを共有している。この意味で、本明細書では、複数の情報処理装置1から構成される分散型台帳Dを「ブロックチェーン」と表現することもある。すなわち、情報処理装置1は、ブロックチェーンを構成するノードの1つと捉えることもできる。
【0020】
決済サーバPは、端末Tが二次元バーコードから読み取った支払に関する情報を取得して決済処理を実行し、その結果をブロックチェーンBに格納させる。詳細は後述するが、実施の形態に係る情報処理システムSにおいては、ローカルデータベースLに格納された情報を情報処理装置1が検証して報酬を決定し、その結果はブロックチェーンBに格納される。
【0021】
以上を前提として、実施の形態に係る情報処理システムSで実行される処理の概要を(1)から(8)の順に説明するが、その番号は図1における(1)から(8)に対応する。
【0022】
(1)情報処理システムSが提供している暗号資産であるファンジブルトークンを用いた支払を予定しているユーザは、端末Tを操作して、ファンジブルトークンの移動予定日時(すなわち、支払予定日時)を含む移動予定情報をローカルデータベースLに登録する。具体的には、端末Tは移動予定情報を含むトランザクションをローカルデータベースLに登録する。
【0023】
(2)ユーザは、店頭等の決済現場において端末Tを操作して支払に関する情報が埋め込まれた二次元バーコードを読み取らせ、読み取った情報を決済サーバPに送信することでファンジブルトークンを用いた支払を実行する。これにより、ユーザに紐づけられたウォレットから店舗に紐づけられたウォレットにファンジブルトークンが移動する。
【0024】
(3)端末Tは、ウォレット内のファンジブルトークンが移動した日時である移動履行日時を含む移動履行情報をローカルデータベースLに登録する。具体的には、端末Tは移動履行情報を含むトランザクションをローカルデータベースLに登録する。これにより、端末TのローカルデータベースLには、移動予定情報と、それと対になる移動履行情報とが保持される。
【0025】
(4)分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1は、所定の周期が到来することを契機として、端末TのローカルデータベースLに格納されている移動予定情報と、その移動予定情報に対応する移動履行情報とを端末Tから取得する。ここで、所定の周期は、端末Tのユーザに支払う報酬を決定するために定められた支払者用報酬決定周期であり、例えば1日であるがこれには限られない。
【0026】
(5)情報処理装置1は、端末Tから取得した移動予定情報と移動履行情報との一致度に少なくとも基づいて、ユーザに支払う報酬を決定する。具体的には、情報処理装置1は、移動予定情報に含まれる移動予定日時と移動履行情報に含まれる支払日時とが近い場合は、遠い場合と比較して、ユーザに支払う報酬が多くなるように報酬を決定する。なお、ユーザに支払われる報酬は情報処理システムSが提供しているファンジブルトークンである暗号資産である。
【0027】
(6)情報処理装置1は、報酬の決定に関連する種々の情報をブロックチェーンBに登録する。報酬の決定に関連する種々の情報は、例えば、決定された報酬に相当するファンジブルトークンの量やそのファンジブルトークンをユーザのウェットに移動したことを証するトランザクションや、移動予定情報と移動履行情報との一致度を含むトランザクション等が含まれる。
【0028】
(7)分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1は、ブロードキャストされた報酬の決定に関連する種々の情報を受け取り、各々のブロックチェーンBに格納する。
(8)情報処理装置1は、報酬額を含む情報を端末Tに送信する。
【0029】
このように、実施の形態に係る情報処理システムSは、「予定」と「履行」との一致度に基づいた暗号資産における報酬決定に関する新たなアルゴリズムを提供することができる。
【0030】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は分散型台帳Dを構成する構成要素であり、分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1は図2に示す機能構成を有している。
【0031】
情報処理装置1は、記憶部2と通信部3と制御部4とを備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0032】
記憶部2は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0033】
通信部3は、情報処理装置1が分散型台帳Dを構成する他の情報処理装置1や端末T等の外部の装置と通信するための通信インターフェースであり、LAN(Local Area Network)モジュールやWi-Fi(登録商標)モジュール等の既知の通信モジュールで実現されている。以下、本明細書において、情報処理装置1が外部の装置と通信するときは通信部3を介することを前提として通信部3の記載を省略することがある。
【0034】
制御部4は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによってトークン生成部40、ブロックチェーン管理部41、報酬決定部42及び集中度取得部43として機能する。また、トークン生成部40はファンジブルトークン生成部400とノンファンジブルトークン生成部401とを含む。
【0035】
なお、図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部4を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0036】
ファンジブルトークン生成部400は、ブロックチェーンの技術を用いたファンジブルトークンを生成する。具体的には、ファンジブルトークン生成部400は、暗号資産として用いられるファンジブルトークンを生成し、ブロックチェーンB中の暗号資産用ブロックチェーンに登録する。ファンジブルトークン生成部400が生成するファンジブルトークンは暗号資産として用いられるため、移転が許可されているトークンである。
【0037】
ノンファンジブルトークン生成部401は、ファンジブルトークン生成部400が生成するファンジブルトークンを管理するためのファンジブルトークンウォレットのアドレスに紐づくノンファンジブルトークンを生成する。具体的には、ノンファンジブルトークン生成部401は、ファンジブルトークンの残高管理および所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンを、ファンジブルトークンのブロックチェーンである暗号資産用ブロックチェーンに紐づけて生成する。ノンファンジブルトークン生成部401が生成するノンファンジブルトークンのうち、ファンジブルトークンの残高管理および所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンは移転ができないように制御される。
【0038】
ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報とファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時を含む移動履行情報とを端末Tから取得する。ブロックチェーン管理部41は、取得した移動予定情報を含むトランザクションと、移動履行情報を含むトランザクションとを、ブロックチェーンBに登録する。
【0039】
報酬決定部42は、移動予定日時と移動履行日時との一致度合いに基づいてファンジブルトークン生成部400によってブロックチェーンBで生成される暗号資産としてのトークンである報酬を決定する。ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンの移動元のファンジブルトークンウォレット、すなわち支払者のウォレットが、報酬決定部42によって決定された報酬を受け取ったことを証するトランザクションを生成してブロックチェーンBに登録する。
【0040】
図3(a)-(d)は、報酬決定部42による報酬の決定処理を説明するための図である。情報処理システムSが提供する決済サービスを利用するユーザは、あらかじめ端末Tを用いてファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時mを登録するとともに、実際の支払日時がその移動予定日時mからどれ位ずれるかの見込みを示すずれ量VをローカルデータベースLに登録する。ブロックチェーン管理部41が端末Tから取得する移動予定情報には、この移動予定日時mとずれ量Vとが含まれる。
【0041】
図3(a)及び図3(b)において横軸は日時を示しており、横軸上のmはユーザが指定した移動予定日時mを示している。また、図3(a)におけるV1及び図3(b)におけるV2は、それぞれユーザが指定した異なる大きさのずれ量Vを示している。具体的には、図3(a)におけるずれ量V1よりも図3(b)におけるずれ量V2の方が大きいことを示している。図3(a)における横軸をxとしたとき、図3(a)に示すグラフは、以下の式(1)で示される正規分布のグラフである。
【0042】
【数1】
【0043】
式(1)において、σは正規分布における標準偏差を表し、ユーザが指定したずれ量Vによって定まる値であり、ずれ量Vが大きいほど標準偏差σが大きくなる関係にある。ずれ量Vと標準偏差σとの関係は情報処理システムSの管理者があらかじめ設定すればよい。限定はしないが、一例として、情報処理システムSの管理者は、いくつかのずれ量Vを選択可能な態様(例えば、「大きい」、「ふつう」、「小さい」等の選択肢)をユーザに示して指定させてもよい。
【0044】
図3(c)及び図3(d)は、それぞれ図3(a)及び図3(b)に示す正規分布f(x,σ)の累積分布関数Fσ(x)を示す図である。すなわち、累積分布関数Fσ(x)と正規分布f(x,σ)とは以下の式(2)の関係を満たす。
【0045】
【数2】
【0046】
ユーザが支払をした日時、すなわちファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時をr、支払額をdとしたとき、報酬決定部42は以下の式(3)に基づいて報酬算定の基準となる貢献度Cを決定する。貢献度Cは、移動予定日時m、移動履行日時r、支払額d、及びずれ量Vに依存する係数αによって定まる関数で表される。αはずれ量Vが0のとき最大値1を取り、ずれ量Vが大きくなるほど小さくなるような係数である。言い換えると、係数αはずれ量Vに関する単調減少関数とも言える。
【0047】
【数3】
【0048】
図4、貢献度Cの決定に用いられる関数の外観を模式的に示す図である。具体的には、図4において実線で示すグラフは、式(3)に含まれる関数2ασ(-|x|)を図3(c)に示す累積分布関数Fσ(x)を用いた場合について示すグラフである。同様に、図4において破線で示すグラフは、式(3)に含まれる関数2ασ(-|x|)を図3(d)に示す累積分布関数Fσ(x)を用いた場合について示すグラフである。図4に示すように、関数2ασ(-|x|)はx=0のとき(すなわち、ずれ量V=0のとき)最大値となり、xが0から離れるほど最小値0に近づく。また、ずれ量Vが小さいほど最大値の値が大きくなるので、図4に示す関数2ασ(-|x|)の最大値M1の方が図4に示す関数2ασ(-|x|)の最大値M2よりも大きくなっている。
【0049】
したがって、式(3)に示される貢献度Cは、支払額dが大きいほど大きくなり、移動予定日時mと移動履行日時rとが一致するときに最大値dαとなり、ユーザがあらかじめ設定したずれ量Vが小さいほど最大値dαが大きくなり、移動予定日時mと移動履行日時rとが乖離するほど小さくなり、0に漸近する。
【0050】
報酬決定部42は、情報処理システムSを利用する全てのユーザについて式(3)に基づく貢献度Cを算出する。報酬決定部42は、ユーザごとに求めた貢献度Cに基づいて報酬の原資とし定められた暗号資産を比例配分し、各ユーザの報酬として決定する。このように、報酬決定部42が式(3)に基づいて貢献度Cを算出して報酬を決定することにより、移動予定日時mと移動履行日時rとが近いユーザほど報酬が多くなり、ユーザがあらかじめ設定したずれ量Vが小さいほど報酬の最大値が大きくなり、かつ支払額dが多いユーザほど報酬が多くなるように報酬を決定できる。
【0051】
なお、報酬決定部42は、算出した貢献度CをブロックチェーンB中の貢献度格納用チェーンのトランザクションに仮登録する。このトランザクションの情報は分散型台帳Dを構成する他の情報処理装置1にブロードキャストされ、登録されたトランザクションが改ざんされていないことが検証される。改ざんされていないことが証されると、トランザクションは貢献度格納用チェーンに正式に登録される。
【0052】
報酬決定部42は、ファンジブルトークンの所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンを参照し、所有者の身元があらかじめ定められた条件を満たす場合に報酬を決定してもよい。具体的には、身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンは、所有者の登録番号、登録時間、国籍、居住国、区分(個人・法人)、名称(氏名・組織名)、住所(居所・所在地)、番号(個人番号・法人番号)、誕生日(誕生日・設立日)、出生地・PEPs(Politically Exposed Persons)該当情報・ウォレット確認者情報・確認者コメント・盗難情報・ウォレット信用ランクを含んでいる。報酬決定部42は、身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンを参照してこれらの情報を取得し、所有者の身元があらかじめ定められた条件を満たすか否かを判定する。条件を適切に設定することにより、報酬決定部42は、情報処理システムSが提供する決済サービスが犯罪に利用される蓋然性を低くすることができる。
【0053】
ここで、ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンウォレット内に保存可能な識別子であって、ファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションを一意に特定するための識別子を、トランザクションに関連付けてブロックチェーンBに登録する。一般に、ブロックチェーンを構成する各ブロックには、1つ前に生成されたブロックに格納されている情報から生成されたハッシュ値も格納されている。上述したように、ローカルデータベースLがローカライズされたブロックチェーンで構成されている場合、端末Tで発行されたトランザクションには連綿と接続する検証可能なハッシュ値が生成されていることになる。そこで、ローカルデータベースLがローカライズされたブロックチェーンで構成されている場合には、移動予定情報を含むトランザクションを一意に特定するための識別子としてそのハッシュ値を利用することができる。
【0054】
ブロックチェーン管理部41が移動予定情報を含むトランザクションを一意に特定するための識別子をトランザクションに関連付けてブロックチェーンBに登録することにより、報酬決定部42は識別子を参照してブロックチェーンBから移動予定情報を取得することができる。これにより、報酬決定部42は、貢献度Cを任意のタイミングで再計算して検証することができる。
【0055】
以上、情報処理システムSが提供する決済サービスを利用する支払者が受け取る報酬について説明したが、情報処理システムSにおいて決定される報酬はこれに限られない。情報処理システムSは、分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1に対しても報酬を付与する。以下、分散型台帳Dを構成する情報処理装置1に付与される報酬について説明する。
【0056】
上述したように、情報処理装置1は報酬決定処理と報酬の配布処理とを実行する。情報処理装置1は、支払者が決済サーバPで支払を実行する度に、その結果を決済サーバPから受信してトランザクションに格納してブロックチェーンBに登録する。既知の技術であるため詳細な説明は省略するが、トランザクションをブロックチェーンBに格納する際には、分散型台帳Dを構成する各情報処理装置1との間で、登録対象となるトランザクションが改善されていないか等のコンセンサスを取るといった計算負荷が発生する。情報処理装置1は、支払者による支払の発生時に要求される計算能力を提供する装置という側面も存在する。
【0057】
そこで、報酬決定部42は、分散型台帳Dを構成する情報処理装置1が提供する計算能力の「予定量」と実際に提供された計算能力量である「履行量」との一致度合いに基づいて、情報処理装置1に付与する報酬を決定する。以下、本明細書において、支払を実行した各ユーザに割り当てる報酬を「第1種報酬」、計算能力を提供した情報処理装置1に割り当てる報酬を「第2種報酬」と記載することがある。
【0058】
第2種報酬の割り当てを実現するために、ブロックチェーン管理部41は、分散型台帳Dとしてのブロックチェーンを構成するノードである他の情報処理装置1から、ブロックチェーンBに登録されたトランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力の提供予定量及び提供予定期間を示す情報を取得し、その情報を含むトランザクションをブロックチェーンBにさらに登録する。報酬決定部42は、提供予定量と実際に提供された計算能力量との一致度合いに基づいて、ノードに付与する報酬である第2種報酬を決定する。なお、第2種報酬は、第1種報酬と同様に、ファンジブルトークン生成部400が生成するトークンであり、その原資はブロックチェーンB中のブロックチェーン管理データに設定された過去24時間分のインフレーションIである。
【0059】
具体的には、報酬決定部42は、ブロックチェーンを構成する他のノードから取得した計算能力の提供予定量と、そのノードによって実際に提供された計算能力量とが近いほど報酬が多くなるように第2種報酬を決定する。さらに具体的には、報酬決定部42は、あるノードから取得した計算能力の提供予定量から、そのノードによって実際に提供された計算能力量を減じた値が正の値となる場合その値が大きいほど報酬を小さくし、0又はそれ以下となる場合に報酬が最大となるようにする。これにより、情報処理システムSは、ブロックチェーンを構成するノードの所有者が計画どおりの計算能力量を提供する動機づけを与えることができる。
【0060】
ここで、ブロックチェーン管理部41は、支払者による支払の発生の予定時期を移動予定情報として取得することが可能である。つまり、ブロックチェーン管理部41は、支払者による支払の発生時に要求される計算能力が多く発生する蓋然性が高い日時を特定することができる。報酬決定部42が支払の発生時に要求される計算能力が多く発生する蓋然性が高い日時に計算能力を提供した情報処理装置1に多くの報酬を付与するようにできれば、情報処理装置1の管理者に計算能力の提供のインセンティブを与えることができると考えられる。
【0061】
そこで、集中度取得部43は、移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションの時間帯ごとの集中度を取得する。報酬決定部42は、トランザクションが改ざんされていないことを証するに必要な計算能力を提供した時間帯における集中度が大きい場合は、集中度が小さい場合によりも、計算能力を提供したノードである情報処理装置1に付与する報酬の量が多くなるように報酬を決定する。
【0062】
図5(a)-(b)は、実施の形態に係る集中度取得部43による集中度の取得方法を説明するための図である。上述したように、ユーザはあらかじめファンジブルトークンの移動予定日時m及びずれ量VをローカルデータベースLに登録する。図5(a)は、二つの異なる移動予定日時m1と移動予定日時m2とのそれぞれにおける「移動の発生」のたしからしさを示す図であり、その形状は図4に示す2つのグラフの相似形である。図5(a)において、移動予定日時m1は移動予定日時m2よりも前に設定されており、それぞれ移動予定日時m1及び移動予定日時m2を中心において最も移動が発生しやすいことを示している。また、図5(a)に示すように、ずれ量Vが小さく設定された実線で示すグラフの方が、ずれ量Vが大きく設定された破線で示すグラフよりも最大値が高くなるように設定されている。
【0063】
図5(b)は、複数のユーザそれぞれがローカルデータベースLに登録したノンファンジブルトークンの移動予定日時m及びずれ量Vに基づいて図5(a)に示すグラフと同様のグラフを作成し、重ね合わせた結果を模式的に示す図である。図5(b)において、横軸は日時を表し、縦軸は「移動の発生」のたしからしさを表す。図5(b)において、日時ms及び日時meは、集中度取得部43が集中度を算出する際に参照する期間の始点と終点である。一例として、期間の始点の日時msと終点の日時msとの間の期間は3日間であるがこれに限定されるものではない。
【0064】
図5(b)に示すグラフにおいて、日時ma及び日時mbはそれぞれ、ブロックチェーン管理部41がある情報処理装置1(便宜上、以下「提供装置」と記載する。)から取得した計算能力の提供予定期間の始点及び終点を示している。ここで、図5(a)に示すグラフ全体の領域を領域Rall、提供装置が計算能力を提供した期間に相当する領域(すなわち、図5(a)において斜線で示す領域)を領域Raとし、領域Rall及び領域Raの面積をそれぞれ面積Sall及び面積Saとする。面積Saは、集中度取得部43が集中度を算出する際に参照する期間において提供装置がこのとき、報酬決定部42は、面積Sallに対する面積Saの割合が高いほど提供装置に付与する報酬を高くする。これにより、報酬決定部42は、支払者による支払の発生時に要求される計算能力が多く発生する蓋然性が高い期間に計算能力を提供した提供装置に対し、より多くの報酬を付与することができる。
【0065】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図6は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0066】
ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時を取得する(S2)。ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時rを取得する(S4)。
【0067】
報酬決定部42は、ブロックチェーン管理部41が取得した移動予定日時と移動履行日時rとの一致度合いを算出する(S6)。報酬決定部42は、算出した一致度合いに基づいて、ファンジブルトークンを計画的に移動させた支払者に対する報酬を決定し(S8)トランザクションに仮登録する。ブロックチェーン管理部41は、仮登録されたトランザクションを他の情報処理装置1にブロードキャストし、トランザクションが改ざんされていないことを検証する。トランザクションが改ざんされていないことが検証されると、ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンの移動元のファンジブルトークンウォレットが決定された報酬を受け取ったことを証するトランザクションをブロックチェーンBに正式に登録する(S10)。ブロックチェーン管理部41がトランザクションをブロックチェーンBに正式に登録すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0068】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、暗号資産における報酬決定に関する新たなアルゴリズムを提供することができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【符号の説明】
【0070】
1 情報処理装置
2 記憶部
3 通信部
4 制御部
40 トークン生成部
400 ファンジブルトークン生成部
401 ノンファンジブルトークン生成部
41 ブロックチェーン管理部
42 報酬決定部
43 集中度取得部
B ブロックチェーン
D 分散型台帳
P 決済サーバ
S 情報処理システム
T 端末
【要約】
【課題】暗号資産における報酬決定に関する新たなアルゴリズムを提供する。
【解決手段】ファンジブルトークン生成部400は、ブロックチェーンの技術を用いたファンジブルトークンを生成する。ノンファンジブルトークン生成部401は、ファンジブルトークンの残高管理および所有者の身元確認情報管理のためのノンファンジブルトークンをファンジブルトークンのブロックチェーンに紐づけて生成する。ブロックチェーン管理部41は、ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動予定日時を含む移動予定情報を含むトランザクションと、ファンジブルトークンウォレット内のファンジブルトークンの移動履行日時を含む移動履行情報を含むトランザクションとをブロックチェーンに登録する。報酬決定部42は、移動予定日時と移動履行日時との一致度合いに基づいてブロックチェーンで生成されるトークンである報酬を決定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6