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  • 特許-ポリウレタンフォームの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240521BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/00 H
C08G18/08 038
C08G101:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020129228
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025987
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 峻士
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070708(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112394(WO,A1)
【文献】特表平10-502415(JP,A)
【文献】特開平11-293027(JP,A)
【文献】特開2009-035628(JP,A)
【文献】特開2014-193995(JP,A)
【文献】特開2020-073707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤Aと液剤Bを用意する工程と、
前記液剤Aと液剤Bとを混合させ、ポリオール液剤を得る工程と、
前記ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程とを備え、
前記液剤Aがフィラーと発泡剤を含有し、かつ実質的に触媒を含有せず、
前記液剤Bが触媒を含有し、かつ
前記液剤A及び液剤Bの少なくともいずれか一方がポリオールを含有し、
前記フィラーが固形難燃剤、沈降防止剤及び無機充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである、ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを用意する工程と、
前記液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得る工程と、
前記ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程とを備え、
前記液剤A1がフィラーを含有し、前記液剤A2が発泡剤を含有し、かつ前記液剤A1及び前記液剤A2は実質的に触媒を含有せず、
前記液剤Bが触媒を含有し、かつ
前記液剤A1、液剤A2、及び液剤Bの少なくともいずれかがポリオールを含有し、
前記フィラーが固形難燃剤、沈降防止剤及び無機充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである、ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記液剤Aの質量比率が、前記液剤Bよりも高くなるように、前記液剤A及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得る請求項1に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記液剤A1の質量比率が、前記液剤B及び液剤A2それぞれの質量比率よりも高くなるように、前記液剤A1、液剤B、及び液剤A2を混合させ、ポリオール液剤を得る請求項2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール液剤の25℃、60rpmにおける粘度が、200~2500mPa・sである請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン系化合物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
記固形難燃剤が、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーを含有するポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームを製造する方法として、ポリイソシアネートを有するイソシアネート液剤とポリオールを有するポリオール液剤を混合し、発泡させる方法が一般的に行われる。この方法では、ポリウレタンフォームを得るために、いずれか一方の液剤又は両方に発泡剤及び触媒が添加されているが、一般的に発泡剤及び触媒は、ポリオール液剤に添加されている。
【0003】
また、ポリウレタンフォームに更なる機能を付与するために、液剤にポリイソシアネート、ポリオール、触媒、及び発泡剤以外の成分を含有させる設計がなされることがある。その一つの設計として、フィラーを添加する試みがなされており、例えば特許文献1には、固形難燃剤を配合することで難燃性を向上させることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2014/112394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポリウレタンフォームに使用される発泡剤のうち、一部の発泡剤は、触媒に対して影響し、劣化を促進することが報告されている。そのため、触媒を配合した液剤と発泡剤とをそれぞれ別に保管し、発泡機で発泡させる直前にそれらを混合するシステムが試みられている。
【0006】
しかし、上記のようにフィラーを液剤に添加する設計においては、本発明者らの検討によると、発泡剤が含まれていなくても液剤においてフィラー及び触媒が混合された状態にあると、保管時などに劣化が進むことが分かった。
したがって、触媒を配合した液剤と発泡剤とをそれぞれ別に保管しただけでは、液剤の劣化を十分に防止できず、良好な品質を有するウレタンフォームを製造することができないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、フィラーを添加した設計においても、保管時などに液剤の劣化が進行するのを防止し、良好な品質を有するポリウレタンフォームを製造することができるウレタンフォームの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、以下の(1)~(7)のとおりである。
(1)液剤Aと液剤Bを用意する工程と、
前記液剤Aと液剤Bとを混合させ、ポリオール液剤を得る工程と、
前記ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程とを備え、
前記液剤Aがフィラーと発泡剤を含有し、前記液剤Bが触媒を含有し、かつ前記液剤A及び液剤Bの少なくともいずれか一方がポリオールを含有するポリウレタンフォームの製造方法。
(2)液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを用意する工程と、
前記液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得る工程と、
前記ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程とを備え、
前記液剤A1がフィラーを含有し、前記液剤A2が発泡剤を含有し、前記液剤Bが触媒を含有し、かつ前記液剤A1、液剤A2、及び液剤Bの少なくともいずれかがポリオールを含有する、ポリウレタンフォームの製造方法。
(3)前記液剤Aの質量比率が、前記液剤Bよりも高くなるように、前記液剤A及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得る上記(1)に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
(4)前記液剤A1の質量比率が、前記液剤B及び液剤A2それぞれの質量比率よりも高くなるように、前記液剤A1、液剤B、及び液剤A2を混合させ、ポリオール液剤を得る上記(2)に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
(5)前記ポリオール液剤の25℃、60rpmにおける粘度が、200~2500mPa・sである上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
(6)前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン系化合物を含む上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
(7)前記フィラーが固形難燃剤を含み、前記固形難燃剤が、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(1)~(6)のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィラーを添加した設計においても、保管時などに液剤の劣化が進行するのを防止し、良好な品質を有するポリウレタンフォームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るポリウレタンフォームの製造方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリウレタンフォームの製造方法を、実施形態を用いて詳細に説明する。本発明の一実施形態に係るポリウレタンフォームの製造方法は、以下の第1及び第2の方法のいずれかである。
【0012】
<第1の方法>
第1の方法は、以下の工程1~3を有する。
(工程1)液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを用意する工程
(工程2)液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得る工程、
(工程3)ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程
第1の方法では、液剤A1がフィラーを含有し、液剤A2が発泡剤を含有し、液剤Bが触媒を含有し、かつ液剤A1、液剤A2及び液剤Bの少なくともいずれかがポリオールを含有する。
【0013】
以上の第1の方法では、ポリウレタンフォームを構成するための原料を、液剤A1、A2、Bの状態で保管しておき、その後、使用前に工程2によりポリオール液剤を調製し、次いで、工程3により、ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合し、混合物を発泡させることでポリウレタンフォームを作製する。
このような方法により、フィラー及び触媒、並びに発泡剤及び触媒が混合された状態で保管されることを防止できるので、保管による液剤の劣化を防止でき、良好な品質を有するポリウレタンフォームを製造できる。
また、フィラーを含有する液剤A1は、発泡剤を含む液剤A2と別の液剤とすることで、粘度を高くできるので、常温及び常温以下の温度(例えば30℃以下)で保管しても、フィラーが沈降してハードケーキングが生じることなどが防止できる。
【0014】
<第2の方法>
第2の方法は、以下の工程1~3を有する。
(工程1)液剤A、及び液剤Bを用意する工程
(工程2)前記液剤Aと液剤Bとを混合させ、ポリオール液剤を得る工程
(工程3)前記ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させる工程
第2の方法では、液剤Aがフィラーと発泡剤を含有し、液剤Bが触媒を含有し、かつ液剤A及び液剤Bの少なくともいずれか一方がポリオールを含有する。
すなわち、第1の方法では、フィラー及び発泡剤をそれぞれ異なる液剤A1、A2に含有させていたが、第2の方法では、フィラー及び発泡剤は同じ液剤Aに含有させる。
【0015】
以上の第2の方法では、ポリウレタンフォームを構成するための原料を、液剤A、Bの状態で保管しておき、その後、使用前に工程2によりポリオール液剤を調製し、次いで、工程3により、ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合し、混合物を発泡させることでポリウレタンフォームを作製する。
このような方法により、フィラー及び発泡剤と、触媒とが混合された状態で保管されることを防止できるので、保管による液剤の劣化を防止でき、良好な品質を有するポリウレタンフォームを製造できる。
また、本方法では、第1の方法におけるフィラーを含有する液剤A1を、発泡剤を含む液剤A2と合わせて液剤Aとしていることで、混合機のシステムを単純化でき、ロットの管理も容易になる。
なお、「液剤」とは、各液剤の調製時、その後、他の液剤に混合されるまでの保管時、及び他の液剤との混合時のいずれかにおいて液状となっていればよいが、典型的には、各液剤の調製時から他の液剤に混合されるまでにわたって液状であり、好ましくは常温(23℃)、常圧(1気圧)において液状となるものである。もちろん、各液剤は、フィラーなどの固形分が含まれることがあるので、スラリー状であってもよい。
【0016】
<ポリオール液剤>
本発明では、上記のとおり、液剤A1、液剤A2及び液剤B、又は液剤A及び液剤Bを混合し、ポリオール液剤を得る。以下、ポリオール液剤の原料として、各液剤に使用される成分について詳細に説明する。
【0017】
[ポリオール]
ポリオールは、上記のとおり、第1の方法では、液剤A1、液剤A2及び液剤Bの少なくともいずれかに含有される。また、ポリオールは、少なくとも液剤A1及び液剤Bのいずれかに含有されることが好ましい。この際、ポリオールは、液剤A1のみに含有されてもよいし、液剤Bのみに含有されてもよいし、液剤A1及び液剤Bの両方に含有されてもよい。
また、ポリオールは、上記のとおり、第2の方法では、液剤A、及び液剤Bの少なくともいずれかに含有される。この際、ポリオールは、液剤Aのみに含有されてもよいし、液剤Bのみに含有されてもよいし、液剤A及び液剤Bの両方に含有されてもよい。
【0018】
第1及び第2の方法において、フィラーを含有する液剤A1又は液剤Aは、さらにポリオールを含有することで、液剤A1、又は液剤A中にフィラーを分散させやすくなり、液剤A1、Aの取扱い性が良好になる。また、触媒を含有する液剤Bにポリオールをさらに含有させることで、液剤B中に触媒を溶解又は分散させやすくなり、液剤Bの取扱い性が良好になる。
【0019】
ポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0020】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0021】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0023】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエステルポリオールを少なくとも含むことが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
この際、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種の含有量は、ポリオール100質量部に対して、50~100質量部が好ましく、70~100質量部がより好ましく、85~100質量部がさらに好ましい。
また、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種と併用されるポリオールは特に限定されず、上記から適宜選択されればよいが、例えば上記した脂肪族ポリオールが挙げられる。
【0026】
ポリオールの水酸基価は、20~350mgKOH/gが好ましく、30~300mgKOH/gがより好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール液剤の粘度が過度に大きくならず、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0027】
[触媒]
第1及び第2の方法それぞれにおいて、触媒は、液剤Bに含有される。触媒としては、例えば、樹脂化触媒、三量化触媒などが挙げられる。ウレタン化反応及び三量化反応を適切に進行させ、難燃性に優れるポリウレタンフォームを得る観点から、触媒は、好ましくは樹脂化触媒及び三量化触媒の両方を含むことが好ましい。
【0028】
(樹脂化触媒)
樹脂化触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換した3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物なども挙げられる。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
アミン系触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
アミン系触媒としては、イミダゾール化合物が好ましい。
【0029】
金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機酸金属塩である。より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート等の有機酸錫塩、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)等の有機酸ビスマス塩などが挙げられ、中でも有機酸ビスマス塩が好ましい。
樹脂化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂化触媒としては、アミン系触媒及び金属系触媒から選択される少なくとも1種が好ましく、アミン系触媒及び金属系触媒を併用することも好ましい。
【0030】
ポリオール液剤における樹脂化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~17質量部であり、さらに好ましくは0.3~15質量部である。樹脂化触媒の含有量がこのような範囲であると、ポリオールとイソシアネートとの反応が適切に進行しやすくなる。
【0031】
(三量化触媒)
三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒としては、窒素含有芳香族化合物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
窒素含有芳香族化合物としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸カリウム塩に代表されるカルボン酸アルカリ金属塩が挙げられる。
アンモニウム塩としては、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩、カルボン酸4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。
上記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸の好適な具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である。
三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが2種以上を併用することが好ましい。
三量化触媒としては、カルボン酸アルカリ金属塩及びカルボン酸4級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボン酸金属塩とカルボン酸4級アンモニウム塩とを併用することも好ましい。
【0032】
ポリオール液剤における三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~17質量部であり、さらに好ましくは0.3~15質量部である。三量化触媒の含有量がこのような範囲であると、三量化反応が適切に進行させることができ、ポリウレタンフォームの難燃性などの物性が良好となる。
【0033】
ポリオール液剤における触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.2~40質量部であり、より好ましくは0.4~35質量部、さらに好ましくは0.6~30質量部である。触媒の含有量がこのような範囲であると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応性が適切となり、発泡性を良好にしつつ、難燃性を備えるポリウレタンフォーム得やすくなる。
なお、触媒の含有量とは、ポリオール液剤に含まれる触媒の合計量であり、例えば、触媒として樹脂化触媒と三量化触媒を使用する場合には、樹脂化触媒と三量化触媒の合計量である。
また、触媒は、後述するように、一般的に有機溶剤などの希釈剤により希釈されて液剤Bに配合されることが多いが、触媒の含有量とは、希釈剤を除いた有効成分量である。一般的に、希釈剤は溶媒、有効成分は溶質であり、有効成分量は溶質量となる。
【0034】
触媒の組み合わせによっては触媒を混ぜあわせた際に希釈剤に希釈される触媒成分が析出することがあるため、触媒の選定においては塩基性のみ、塩基性と中性、酸性のみ、酸性と中性の組みあわせにすることが好ましい。例えばウレタン化触媒であるアミン系触媒と三量化触媒であるアンモニウム塩、ウレタン化触媒であるアミン系触媒と三量化触媒であるアルカリ金属塩、ウレタン化触媒であるアミン系触媒と金属系触媒と三量化触媒であるアルカリ金属塩、又はウレタン化触媒であるアミン系触媒と三量化触媒であるアンモニウム塩とアルカリ金属塩の組み合わせが好ましい。
【0035】
[フィラー]
ポリオール液剤には、フィラーが含有される。ポリオール液剤にフィラーを含有させることにより、フィラーの種類に応じた機能をポリウレタンフォームに付与することができる。フィラーは、難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして難燃剤を使用することで、ポリウレタンフォームに高い難燃性能を付与できる。
フィラーは、第1の方法では、液剤A1に含有される。また、フィラーは、第2の方法では、液剤Aに含有される。本発明では、フィラーが含有される液剤を、触媒を含有する液剤Bとは異なる液剤A又は液剤A1とすることで、各液剤A、A1、A2、及びBを長期保管しても液剤に劣化が生じにくくなる。そのため、液剤を長期保管した後でも良好な品質を有するポリウレタンフォームを製造できる。
【0036】
(固形難燃剤)
フィラーとして用いられる難燃剤は固形難燃剤である。本発明では、固形難燃剤を使用することで、より難燃性を効果的に高めることができる。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。
固形難燃剤としては、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。これら固形難燃剤を使用することで、難燃性を効果的に高めることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0038】
赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~60質量部、より好ましくは10~55質量部であり、更に好ましくは20~50質量部である。赤燐系難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、赤燐系難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで、赤燐系難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0039】
<ホウ素含有難燃剤>
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0040】
ホウ素含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~45質量部、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは10~25質量部である。ホウ素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、ホウ素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでホウ素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0041】
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0042】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0043】
臭素含有難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~60質量部、より好ましくは10~50質量部であり、更に好ましくは20~45質量部である。臭素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、臭素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。いっぽう、上限値以下とすることで、臭素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0044】
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0045】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0046】
リン酸塩含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、更に好ましくは10~30質量部である。リン酸塩含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、リン酸塩含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。いっぽう、上限値以下とすることでリン酸塩含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0047】
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
塩素含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、更に好ましくは10~30質量部である。塩素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、塩素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで塩素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0048】
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0049】
アンチモン含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~35質量部、更に好ましくは3~30質量部である。アンチモン含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、アンチモン含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでアンチモン含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0050】
<金属水酸化物>
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
金属水酸化物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1~50質量部、好ましくは0.2~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部、更に好ましくは0.5~15質量部である。金属水酸化物の含有量をこれら下限値以上とすることで、金属水酸化物を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることで金属水酸化物によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0052】
<針状フィラー>
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0053】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0054】
針状フィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10~100質量部、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~80質量部、さらに好ましくは40~70質量部である。針状フィラーをこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームの燃焼後の形状が保持されやすくなり、難燃性が向上する。一方、これら上限値以下とすることで針状フィラーによって発泡が阻害されにくくなる。
【0055】
固形難燃剤としては、上記したものの中では、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及び針状フィラーから選択されることが好ましく、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、及び臭素含有難燃剤から選択されることがより好ましい。
また、固形難燃剤は、これらの中では、ホウ素含有難燃剤を含有することが好ましい。ホウ素含有難燃剤は、液剤において触媒と併存させることで、液剤の劣化を特に促進させやすい傾向があるが、本発明では、フィラーを含有する液剤A1(又はA)と、触媒を含有する液剤Bとを別にすることで、ホウ素含有難燃剤による液剤の劣化促進を防止することができる。
【0056】
また、固形難燃剤は、2種以上を併用してもよく、例えば、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及び針状フィラーから選択される2種以上を併用することも好ましく、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、及び臭素含有難燃剤から選択される2種以上を併用することも好ましい。
具体的には、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤及び臭素含有難燃剤を併用したり、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及び針状フィラーを併用したりすることも好ましい。固形難燃剤は、このように2種以上併用することにより難燃性をより一層向上しやすくなる。
【0057】
固形難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば10~200質量部であり、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは40~120質量部である。固形難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームに適切な難燃性を付与できる。また、固形難燃剤の含有量をこれら上限値以下とすることで、ポリオール液剤や、液剤A1(又は液剤A)の粘度が高くなりすぎるのを防止して、吹付や充填用途に好適に使用できるようになる。
【0058】
(沈降防止剤)
本発明のポリオール液剤は、フィラーとして沈降防止剤を含有してもよい。すなわち、第1の方法では、液剤A1が沈降防止剤を含有してもよいし、第2の方法では、液剤Aが沈降防止剤を含有してもよい。沈降防止剤は、液剤A1又は液剤Aにおいて、上記した固形難燃剤や後述するその他の無機充填剤と併用するとよいが、固形難燃剤と併用することが好ましい。
沈降防止剤を使用することにより、液剤A1、液剤A、又はポリオール液剤において、固形難燃剤や後述するその他の無機充填剤が沈殿することを防止できる。また、沈降防止剤の使用により、固形難燃剤や後述するその他の無機充填剤を液剤に均一に分散させやすくなる。
【0059】
沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、粉状シリカ、有機クレー等から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましく、これらの中では粉状シリカがより好ましい。
沈降防止剤に使用するカーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用することができる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
また、粉状シリカとしては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、ヒュームドシリカが好ましく、特に疎水性ヒュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
【0060】
沈降防止剤の含有量は、特に限定されないが、固形難燃剤100質量部に対して、例えば0.5~20質量部、好ましくは0.7~12質量部、より好ましくは1.1~8質量部である。沈降防止剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形難燃剤などの沈降防止剤以外のフィラーの沈降を防止して、固形難燃剤などのフィラーの分散性を良好にできる。
【0061】
フィラーとしては、上記した難燃剤及び沈降防止剤以外の無機充填剤(その他の無機充填剤)が使用されてもよい。無機充填剤として、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、各種金属粉、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ等を適宜使用できる。これら無機充填剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
ポリオール液剤におけるフィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば10~300質量部であり、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは45~120質量部である。フィラーの含有量をこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームにフィラーの種類に応じた機能を付与しやすくなる。また、ポリオール液剤の粘度を後述する所定の範囲に調整しやすくなる。
【0063】
[液状難燃剤]
上記第1及び第2の方法それぞれにおいて、ポリオール液剤は、さらに液状難燃剤を含有することが好ましい。液状難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。液状難燃剤を含有させることで、難燃性をより向上させやすくなる。
【0064】
液状難燃剤は、第1の方法では、液剤A1、液剤A2及び液剤Bの少なくともいずれかに含有させるとよいが、少なくとも液剤A1及び液剤Bのいずれかに含有させることが好ましい。この際、液状難燃剤は、第1の方法では、液剤A1のみに含有させてもよいし、液剤Bのみに含有させてもよいし、液剤A1及び液剤Bの両方に含有させてもよい。また、液剤難燃剤は、第1の方法では、液剤A1に含有させることがさらに好ましい。
また、液状難燃剤は、第2の方法では、液剤A、及び液剤Bの少なくともいずれかに含有されるとよい。この際、液状難燃剤は、液剤Aのみに含有させてもよいし、液剤Bのみに含有させてもよいし、液剤A及び液剤Bの両方に含有させてもよい。液剤難燃剤は、第2の方法では、液剤Aに含有させることが好ましい。
【0065】
第1及び第2の方法において、フィラーを含有する液剤A1又は液剤Aが、さらに液状難燃剤を含有することで、液剤A1、A中にフィラーを分散させやすくなり、液剤A1、Aの取扱い性が良好になる。また、液状難燃剤は、触媒を含有する液剤Bに含有されることで、液剤B中に触媒を溶解又は分散させやすくなり、液剤Bの取扱い性が良好になる。
【0066】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0068】
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以を併用してもよい。これらの中でも、ポリウレタンフォームの製造を容易にする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートがより好ましい。
【0069】
液状難燃剤を含有する場合、ポリオール液剤における液状難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~90質量部が好ましく、15~80質量部がより好ましく、25~70質量部が更に好ましい。液状難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、液状難燃剤を含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、液状難燃剤によって、ポリウレタンフォームの発泡が阻害されたりすることもない。
【0070】
[発泡剤]
ポリオール液剤には、発泡剤が含有される。発泡剤は、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合して得た混合物を発泡させて、ポリウレタンフォームを形成させることができる。
発泡剤は、第1の方法において、液剤A2に含有される。第1の方法において、発泡剤は、フィラー及び触媒それぞれが含有される液剤A1、液剤Bとは別の液剤A2に含有されることで、発泡剤が触媒に対して影響して劣化を促進することが防止される。また、発泡剤が添加されないことでフィラーが含有される液剤A1の粘度の低下を抑えることができ、保管中のフィラーの沈降を抑制することができる。
発泡剤は、第2の方法において、液剤Aに含有される。第2の方法において、発泡剤は、フィラーとともに、触媒が含有される液剤Bとは別の液剤Aに含有されることで、発泡剤が触媒に対して影響して、液剤の劣化を促進することが防止される。
【0071】
発泡剤としては、有機系発泡剤が挙げられ、例えば、炭化水素化合物、塩素化脂肪族炭化水素化合物、ハイドロフルオロカーボン系化合物、ハイドロフルオロオレフィン系化合物などの有機フッ素系化合物が挙げられる。発泡剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、発泡性の観点から、有機フッ素系化合物が好ましく、地球温暖化係数が低く、環境保護の観点から、ハイドロフルオロオレフィン系化合物がより好ましい。ハイドロフルオロオレフィン系化合物は、発泡剤として単独で使用してもよいし、他の発泡剤と併用してもよい。なお、ハイドロフルオロオレフィン系化合物は、触媒と併存させると劣化が進行しやすくなるが、本発明では、工程1において、発泡剤と、触媒とが別の液剤に含有されることで、そのような劣化進行を効果的に防止できる。
【0072】
炭化水素化合物としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
【0073】
ハイドロフルオロカーボン系化合物としては、CHF、CH、CHF等のハイドロフルオロカーボン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等のハイドロクロロフルオロカーボンが挙げられる。
【0074】
ハイドロフルオロオレフィン系化合物としては、例えば、炭素数が3~6であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。ハイドロフルオロオレフィンは、炭素数が3又は4のものが好ましい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z))(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz(Z))、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))、(Z)-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-クロロプロペン(HCFO-1224yd(Z))等が挙げられる。これらの中では、HFO-1233zd(E)が特に好ましい。発泡剤は単独で使用されてもよいが、2種以上を併用して使用してもよい。
【0075】
ポリオール液剤における発泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、25~70質量部が更に好ましい。前記発泡剤の含有量がこれら下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減できる。また、ポリウレタンフォームの劣化を抑制する効果を発揮させやすくなる。一方、前記発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制できる。
また、ポリウレタンフォームは、上記した有機系発泡剤に加え、発泡剤としての窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系発泡剤によって発泡されてもよい。無機系発泡剤は、上記した液剤A1、液剤A2、液剤A、及び液剤Bとは別にポリオール液剤に加えられ、又はポリオール液剤とポリイソシアネート液剤との混合液に加えられるとよい。
【0076】
[水]
ポリオール液剤は、水を含有してもよい。水を含有することで、ポリウレタンフォームを形成するときの発泡性が良好となる。水は、第1の方法では、液剤A1,A2のいずれに含有させてもよいが、好ましくは液剤A1に含有させる。また、水は、第2の方法では、液剤Aに含有させる。これら液剤A1や液剤Aに水を含有させることで、触媒の加水分解等による劣化を抑制できるである。
ポリオール液剤における水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.3~3質量部である。水の含有量をこれら範囲内とすることで、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合して得られる混合液を、適切に発泡しやすくなる。
【0077】
[整泡剤]
ポリオール液剤は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤は、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合して得られる混合液の発泡性を向上させる。整泡剤は、第1の方法では、液剤A1,A2,Bのいずれに含有させてもよいが、好ましくは液剤A1に含有させる。また、整泡剤は、第2の方法では、液剤A,Bのいずれに含有させてもよいが、好ましくは液剤Aに含有させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオール液剤における整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の含有量がこれら下限値以上であると、ポリオール液剤とイソシアネート液剤の混合液を発泡させやすくなり、均質なポリウレタンフォームを得やすくなる。また、整泡剤の含有量がこれら上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが良好になる。
【0078】
[その他成分]
ポリオール液剤は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤等から選択される1種以上を含むことができる。
その他成分は、第1の方法では、液剤A1,A2,Bのいずれに含有させてもよいが、好ましくは液剤A1に含有させる。また、その他成分は、第2の方法では、液剤A,Bのいずれに含有させてもよいが、好ましくは液剤Aに含有させる。
【0079】
(ポリオール液剤の粘度)
ポリオール液剤の25℃、60rpmにおける粘度は、200~2500mPa・sであることが好ましい。粘度が上記範囲内となることで、ポリオール液剤におけるフィラーの沈降を防止しつつ、ポリオール液剤をイソシアネート液剤に効率的に衝突混合させることができる。これら観点から、ポリオール液剤の25℃、60rpmにおける粘度は、500~2000mPa・sがより好ましい。なお、ポリオール液剤の粘度は、詳細には後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0080】
[液剤A1、A2、A]
第1の方法における液剤A1は、上記のとおり、フィラーを含有すればよく、また、フィラーに加えて、ポリオール及び液状難燃剤の少なくとも一方を含有することが好ましく、ポリオール及び液状難燃剤の両方を含有することも好ましい。液剤A1がポリオール及び液状難燃剤の少なくとも一方を含有することで、液剤A1中にフィラーを分散させやすくなり、液剤A1の取扱い性が良好になる。同様の観点から第2の方法において液剤Aは、ポリオール及び液状難燃剤の少なくとも一方を含有することが好ましく、ポリオール及び液状難燃剤の両方を含有することも好ましい。
また、液剤A1は、ポリオール及び液状難燃剤以外を含有してもよく、例えば、整泡剤、水、上記したその他成分から選択される少なくとも1つ以上を含有してもよい。同様に、第2の方法において、液剤Aは、ポリオール及び液状難燃剤以外を含有してもよく、例えば、整泡剤、水、上記したその他成分の少なくとも1つ以上を含有してもよい。
さらに、液剤A2は、発泡剤を含むが、発泡剤以外の成分を適宜含有してもよい。
【0081】
ただし、第1の方法において、液剤A1及び液剤A2は、触媒を実質的に含有しないことが好ましい。液剤A1が触媒を実質的に含有しないことで、触媒とフィラーが併存することで液剤A1の保管中などに劣化が進行することが有効に防止できる。また、液剤A2が触媒を実質的に含有しないことで、触媒と発泡剤が併存することで劣化が進行することが有効に防止できる。
同様の観点から、第2の方法においては、液剤Aは、触媒を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、触媒を実質的に含有しないとは、本発明の効果を損なわない程度に少量の触媒が液剤A1、A2、Aに配合されてもよいことを意味し、具体的には、各液剤における触媒の含有量が液剤(液剤A1、A、又はA2)全量基準で例えば1質量%未満であり、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。
【0082】
また、第1の方法において、液剤A1は、発泡剤を実質的に含有しないことが好ましい。液剤A1が発泡剤を実質的に含有しないとは、効果に影響を与えない程度に液剤A1に少量の発泡剤を配合してもよいことを意味し、具体的には、液剤A1における発泡剤の含有量が、液剤A1全量基準で例えば2質量%未満であり、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.3質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。液剤A1は、発泡剤を実質的に含有しないことで、液剤A1の粘度を後述の通りに高くしやすくなる。
同様に、第1の方法において、液剤A2は、フィラーを実質的に含有しないことが好ましい。液剤A2がフィラーを実質的に含有しないとは、効果に影響を与えない程度に液剤A2に少量のフィラーを配合してもよいことを意味し、具体的には、液剤A2におけるフィラーの含有量が液剤A2全量基準で例えば2質量%未満であり、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.3質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。液剤A2は、フィラーを実質的に含有しないことで、保管時に液剤A2においてフィラーが沈降したりすることを防止できる。
【0083】
(液剤A1の粘度)
液剤A1の25℃、1rpmにおける粘度は、3000~60000mPa・sであることが好ましい。液剤A1の粘度を3000mPa・s以上とすることで、液剤A1を常温又は常温以下の温度(例えば30℃以下)で保管しても、フィラーが沈降してハードケーキングが生じることなどが防止できる。また、60000mPa・s以下にすることにより、ポリオール液剤の粘度を上記粘度範囲内に収めやすくなる。これら観点から、液剤A1の25℃、1rpmにおける粘度は、3500~50000mPa・sがより好ましく、4000~40000mPa・sがさらに好ましい。なお、液剤A1の粘度は、詳細には後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0084】
[液剤B]
第1及び第2の方法において、液剤Bは、触媒を含有するが、液剤Bにおいて、触媒は他の成分に溶解又は分散させられるとよい。したがって、液剤Bは、触媒以外の他の成分を含有することが好ましい。液剤Bに含有される触媒以外の他の成分としては、有機溶剤や、ポリオール、整泡剤、液状難燃剤と言ったポリオール液剤中に含まれる液状成分が挙げられる。有機溶剤は触媒類を溶解することができるものであれば種類は問わないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールと言ったアルコール類が好ましい。なお、これら低短鎖のアルコール類(炭素数6以下の鎖状アルコール類)は、水酸基を2以上有するものも本明細書では有機溶剤とする。
【0085】
また、第1及び第2の方法それぞれにおいて、液剤Bは、触媒に影響を及ぼさない観点、及び触媒の溶解性などの観点から、触媒以外の成分として有機溶剤を含有することが好ましい。したがって、ポリオール液剤においても有機溶剤が含有されてもよい。ポリオール液剤における有機溶剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば0.5~25質量部、好ましくは1~20質量部である。
【0086】
また、第1及び第2の方法において、液剤Bは、フィラー及び発泡剤の両方を実質的に含有しないことが好ましい。フィラー及び発泡剤を実質的に含有しないことで、触媒をフィラー又は発泡剤と併存させたことによる液剤の劣化を防止できる。
なお、フィラーを実質的に含有しないとは、本発明の効果を損なわない程度に少量のフィラーが液剤Bに配合されてもよいことを意味し、具体的には、液剤Bにおけるフィラーの含有量が、液剤B全量基準で2質量%未満であり、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.3質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。
また、発泡剤を実質的に含有しないとは、本発明の効果を損なわない程度に少量の発泡剤が液剤Bに配合されてもよいことを意味し、具体的には、液剤Bにおける発泡剤の含有量が、液剤B全量基準で2質量%未満であり、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.3質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。
【0087】
上記のとおり、第1及び第2の方法では、工程2において、複数の液剤を混合してポリオール液剤を得るが、第1の方法では、複数の液剤のうち、フィラーを含有する液剤A1の質量比率が、他の液剤(液剤A2,液剤B)それぞれの質量比率よりも高くなるように複数の液剤を混合させることが好ましい。液剤A1の質量比率を高くすることで、液剤A1において、フィラーは、フィラー以外の成分(例えば、ポリオール、液状難燃剤)により分散させやすくなり、ポリオール液剤を調製する際、フィラーをポリオール液剤に均一に分散させやすくなる。
同様の観点から、第2の方法では、工程2において、フィラーを含有する液剤Aの質量比率が、他の液剤(液剤B)の質量比率よりも高くなるように液剤A及び液剤Bを混合させ、ポリオール液剤を得ることが好ましい。
【0088】
第1の方法において、液剤A1の質量比率は、ポリオール液剤全量基準で、好ましく50~95質量%である。50質量%以上とすることで、フィラー以外の成分により、フィラーを液剤A1中に分散させやすくなる。また、95質量%以下とすることで、液剤A2、Bの量を一定量以上とすることができる。これら観点から、液剤A1の質量比率は、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは65~84質量%である。
第1の方法において、液剤Bの質量比率は、ポリオール液剤全量基準で、好ましく1~45質量%である。1質量%以上とすることで、触媒量を適切な量としつつ、液剤Bにおいて触媒を他の成分に溶解又は分散させやすくなる。また、45質量%以下とすることで、液剤A1、A2の量を一定量以上とすることができる。これら観点から、液剤Bの質量比率は、より好ましくは2~32質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。
また、第1の方法において、液剤A2の質量比率は、ポリオール液剤全量基準で、好ましく4~49質量%である。4質量%以上とすることで、適切な量の発泡剤をポリオール液剤に含有させることが可能になる。また、49質量%以下とすることで、液剤A1、Bの量を一定量以上とすることができる。これら観点から、液剤A2の質量比率は、より好ましくは8~38質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0089】
第2の方法において、液剤Aの質量比率は、ポリオール液剤全量基準で、好ましく55~99質量%である。55質量%以上とすることで、フィラー以外の成分により、フィラーを液剤A中に分散させることが可能になる。また、99質量%以下とすることで、液剤Bの量を一定量以上とすることができる。これら観点から、液剤Aの質量比率は、より好ましくは65~98質量%、さらに好ましくは75~97質量%である。
また、第2の方法において、液剤Bの質量比率は、ポリオール液剤全量基準で、好ましく1~45質量%である。1質量%以上とすることで、触媒量を適切な量としつつ、液剤Bにおいて触媒を他の成分に溶解又は分散させることが可能になる。また、45質量%以下とすることで、液剤Aの量を一定量以上とすることができる。これら観点から、液剤Bの質量比率は、より好ましくは2~35質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。
【0090】
なお、第1の方法の液剤A1において、フィラーの含有量、すなわち固形分濃度は10~50質量%であることが好ましい。10質量%以上にすることで、フィラーによる各種機能付与が有効になる。また50質量%以下とすることで、フィラーを液剤A1に適切に分散させやすくなる。上記観点から、上記範囲は、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
同様に、第2の方法の液剤Aにおいて、フィラーの含有量すなわち固形分濃度は、好ましくは5~45質量%であり、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることがさらに好ましい。
【0091】
ポリオール液剤は、ポリオール、フィラー、発泡剤、及び触媒を必須成分として含有するが、これら必須成分は、第1の方法において、以下の表1に示すパターン1~3に示すとおりに、液剤A1、A2、Bに配合されることが好ましい。同様に、第2の方法においては、以下の表1に示すパターン4~6に示すとおりに、液剤A、Bに配合されることが好ましい。
【0092】
【表1】
【0093】
なお、表1は、液剤A1,A2、B、又は液剤A,Bのいずれかに各成分が含有されているかを示し、「A1/B」と示されるのは、その成分が液剤A1、液剤Bの両方に含有されていることを示す。また、「A/B」と示されるのは、その成分が液剤A、液剤Bの両方に含有されていることを示す。以下、表2以降においても同様である。
勿論、上記各パターンにおいて、各液剤A1、A2、B、Aは、上記のとおり、液状難燃剤、整泡剤、水、その他成分などを任意で適宜含有してもよい。
【0094】
また、ポリオール液剤は、上記のとおり液状難燃剤を含有することが好ましい。ポリオール液剤は、ポリオール、フィラー、発泡剤、及び触媒に加えて、液状難燃剤を含有する場合には、これら成分は、第1の方法において、以下の表2に示すパターン1X~6Xに示すとおりに、液剤A1、A2、Bに配合されることが好ましい。同様に、第2の方法においては、以下の表2に示すパターン7X~12Xに示すとおりに、液剤A、Bに配合されることが好ましい。
【0095】
【表2】
【0096】
パターン1X~12Xは、各液剤の配合の一例であって、表2に記載の成分以外の成分(例えば、水、整泡剤、その他成分など)がいずれかの液剤に含有されていてもよい。
例えば、ポリオール液剤が水及び整泡剤を含有してもよい。その場合、水及び整泡剤は、それぞれ独立にいずれの液剤に配合されてもよいが、第1の方法においては、以下の表3に示すパターン1Y~6Yに示すとおりに、液剤A1に配合されることが好ましい。同様に、第2の方法においては、以下の表3に示すパターン7Y~12Yに示すとおりに、液剤Aに配合されることが好ましい。また、各パターンにおいて、液剤Bは有機溶剤を含有してもよい。
なお、表3は、ポリオール液剤が、ポリオール、フィラー、発泡剤、及び触媒に加えて、液状難燃剤、水及び整泡剤を含有する場合の配合パターンを示すが、各液剤はこれら以外の成分を含有してもよい。例えば、各パターンにおいて、液剤Bは有機溶剤を含有してもよい。
【0097】
【表3】
【0098】
<イソシアネート液剤>
第1及び第2の方法において、イソシアネート液剤は、ポリイソシアネートを含有する。ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンフォームの成形に使用される公知のポリイソシアネートを用いることができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0099】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0100】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等がより好ましい。
ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0102】
(イソシアネートインデックス)
本発明のイソシアネート液剤は、ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合して得られる混合液のイソシアネートインデックスが好ましくは250~600、より好ましくは300~550となるように、ポリオール液剤に混合させることが好ましい。イソシアネートインデックスが上記下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、イソシアネートインデックスが上記上限値以下であると、得られるポリウレタンフォームのフライアビリティが良好になる。
イソシアネート液剤は、ポリイソシアネート単独で構成されてもよいが、イソシアネート液剤に従来配合される添加剤などが適宜配合されてもよい。
【0103】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0104】
次に、本発明のポリウレタンフォームの製造方法の各工程について図1を参照しつつ詳細に説明する。なお、図1は、第1の方法及び第2の方法を纏めて説明するための図であり、第2の方法では液剤A2が使用されない。
[工程1]
第1の方法では、工程1において、液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを用意する。また、第2の方法では、液剤A及び液剤Bを用意する。工程1において各液剤A1、A2、A、Bは、各液剤を構成する成分10を公知の容器11に充填することで用意するとよい。容器11は、ウレタン原料を保存するための公知の容器が挙げられる。容器としては、例えばドラム、一斗缶、ガロン缶、ペール缶、ガラス容器、タンクなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0105】
工程1における各液剤の調製方法は、特に限定されないが、液剤を構成する成分が2以上である場合には、各成分を添加し、かつ攪拌などして各成分を混合して調製すればよい。各成分は、容器11に直接添加して、容器11内において各成分を混合することで各液剤A1,A2,A,Bを調製してもよいし、混合装置(図示しない)で予め各成分を混合して各液剤A1,A2,A,Bを調製し、調製された各液剤A1,A2,A,Bを容器11に充填してもよい。
この際、各成分のうち触媒などは、少量のポリオールや有機溶剤などにより希釈された状態で添加してもよい。また、触媒は、少量のポリオールや有機溶剤などにより希釈された触媒をそのまま液剤Bとして使用してもよい。
【0106】
工程1において用意された液剤A1、A2、B、Aそれぞれは、容器11に充填された状態で保管、輸送、納入などされるとよい。保管時間は、使用態様に応じて適宜異なるが、例えば、1時間以上2年以内などであってもよいし、24時間以上1年以内などであってもよいし、24時間以上半年以内などであってもよい。また、保管温度は、特に限定されないが、例えば0~40℃程度、好ましくは5~30℃程度である。なお、保管時間とは、液剤A1、A2、B、Aを調製してから、工程2において他の液剤と混合開始させるまでの時間である。
【0107】
[工程2]
第1の方法では、工程1において用意された液剤A1、A2、Bを、工程2において混合させて、ポリオール液剤Pを得る。また、第2の方法では、液剤A、Bを、工程2において混合させてポリオール液剤Pを得る。ここで、図1に示すとおりに、液剤の混合は液剤A1、A2、B又は液剤A、Bを容器11から混合機12に送液して、混合機12内部で適宜攪拌などすることで液剤同士を混合してもよい。また、図示しないが液剤A1の容器11に液剤A2,B、又は液剤Aの容器11に液剤Bをそれぞれ所定量計量して加え、容器11内で混合してポリオール液剤Pを得てもよい。さらには、液剤A1、A2、B、又は液剤A,Bを別の容器に移して、その容器で混合させてもよい。
混合方法の具体例としては、容器内もしくは混合機12内で羽根を回転させることで撹拌してもよいし、送液の勢いを利用して混合させるスタティックミキサーのような撹拌器を用いてもよい。また、混合機12における液剤の混合は、例えば5~30℃で行うとよく、好ましくは10~25℃で行うとよい。
また、工程2で得たポリオール液剤Pは、容器11もしくは混合機12から一旦容器に移して、その容器を介して、後述する混合吐出装置13に送液してもよいし、混合機12で得たポリオール液剤Pは、容器などを介せずに混合吐出装置13に直接送液してもよい。
【0108】
[工程3]
第1及び第2の方法のいずれにおいても、工程3では、工程2で得られたポリオール液剤Pを、イソシアネート液剤ISに混合させ、その混合させて得た混合液により、ポリウレタンフォームを得る。なお、上記混合液は、吐出させ、反応かつ発泡させることでポリウレタンフォームを得るとよい。
ここで、工程2において、ポリオール液剤Pとイソシアネート液剤ISは、例えば10~60℃に調温させたうえで混合させるとよく、好ましくは15~50℃に調温させたうえで混合させるとよい。
【0109】
工程3は、公知の混合吐出装置13において行えばよく、混合吐出装置13内部において、ポリオール液剤Pとイソシアネート液剤ISとを例えば衝突混合させて、混合吐出装置13の吐出口から混合液を吐出させるとよい。ポリオール液剤Pとイソシアネート液剤ISは、混合衝突させるために、例えば加圧された状態で配管内を移送させ、混合部(図示しない)にて衝突させるとよいし、他の方法で混合吐出させてもよい。その他の混合吐出方法としては、スタティックミキサーによるものや、インペラを用いたものが挙げられる。
【0110】
吐出口から吐出された混合液は、触媒により反応(例えば、樹脂化及び三量化)が進行しつつ、発泡剤により発泡させられることで、ポリウレタンフォームが成形される。
混合吐出装置13としては、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合してかつ吐出できる限り特に限定されないが、スプレーガンなどを使用できる。また、以上の説明では、工程2で使用される混合機12と工程3で使用される混合吐出装置13は、別の装置として説明したが、1つの装置として一体的に組み込まれたものでもよい。
また、工程3では、必ずしも吐出させる必要はなく、プロペラで混合した後に、プロペラ側を動かせて離脱させ、その後、混合液を発泡させてもよい。
【0111】
上記第1及び第2の方法は、例えば、吹付用途に適用することができる。したがって、混合吐出装置13から吐出された混合液は、施工対象面に一定の吐出圧力で吹き付け、発泡させることにより、施工対象面上にポリウレタンフォームを成形できる。施工対象面としては、特に限定されないが、建築物の壁面、天井面、床面などが挙げられる。
また、上記第1及び第2の方法は、充填用途にも適用できる。したがって、混合吐出装置13から吐出された混合液は、金型、枠材等の内部に空洞を有する構造体の内部に注入して、構造体の内部にて発泡させながら硬化させることにより、ポリウレタンフォームを成形してもよい。
【0112】
本発明の第1及び第2の方法は、上記のとおり、工程2においてポリオール液剤を調製した後、工程3においてポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合して、ポリウレタンフォームを得るものであるが、ポリオール液剤を調製した後速やかに、ポリオール液剤をイソシアネート液剤に混合させることが好ましい。ポリオール液剤調製後速やかにポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合させることで、より効果的に液剤の劣化を防止することができる。
具体的には、ポリオール液剤を得てから、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合開始するまでのインターバル時間は、例えば20日以下であればよく、好ましくは10日以下、より好ましくは5日以下である。また、上記インターバル時間は、短ければ短いほうがよく、特に限定されないが、例えば1秒以上、実用的には例えば1分以上である。
なお、インターバル時間とは、第1の方法では、液剤A1、液剤A2、及び液剤Bを混合させて、ポリオール液剤を得てから、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合開始するまでの時間を意味する。また、第2の方法では、液剤A及び液剤Bを混合させて、ポリオール液剤を得てから、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合開始するまでの時間を意味する。
また、インターバル時間において、ポリオール液剤は、例えば0~35℃、好ましくは5~25℃程度の一定の温度下に置かれるとよい。
【実施例
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
実施例1~5
各成分を表4に従って、必要に応じて混合して、液剤A1、A2、Bを調製し、それぞれ金属製の耐圧一斗缶に充填した。一斗缶に充填した液剤A1、A2、Bは、調製後10分間、25℃で放置した。次いで、液剤A1、A2、Bを分量通り金属製のペール缶に送液し、ドリル撹拌器を用い混合させ、ポリオール液剤を得た。また、一斗缶に密閉されたポリイソシアネート(住友化学社製、「スミジュール44V20」)からなるイソシアネート液剤を用意した。
ポリオール液剤、及びポリイソシアネートからなるイソシアネート液剤を、それぞれ15℃になるように各容器を氷水浴し調温した。調温後、直ちに500mlのPPカップにポリオール液剤100gを添加し、その後、イソシアネート液剤100gを静かに添加し、添加後、速やかに8000rpmで回転する撹拌機(ホモディスパー、プライミクス社製)で2秒間撹拌した。撹拌を開始した時間を0秒とし、発泡を開始したフォームを細い棒でつつき、離した時に糸が引く時間をゲルタイム(T1)とした。
【0115】
(劣化測定)
調製された液剤A1,A2、Bを調製後10分間、25℃で放置する代わりに、調製後にそれぞれ40℃の環境下に2週間放置し、劣化促進させた。その後、室温環境に戻した上で開封し、液剤A1は攪拌により再分散した後に、上記と同様の操作を行い、ゲルタイム(T2)を測定した。劣化促進前のゲルタイム(T1)と、劣化促進後のゲルタイム(T2)との差により、液剤の劣化を間接評価した。
A:ゲルタイム差が5秒未満
B:ゲルタイム差が5秒以上15秒未満
C:ゲルタイム差が15秒以上
【0116】
実施例6~10
各成分を表4に従って混合して、液剤A、Bを調製し、それぞれ金属製の耐圧一斗缶に充填した。一斗缶に充填した液剤A、Bは、調製後10分間、室温(25℃)で放置した。次いで、液剤A、Bを分量通り金属製のペール缶に送液し、ドリル撹拌器を用い混合させ、ポリオール液剤を得た。また、一斗缶に密閉されたポリイソシアネート(住友化学社製、「スミジュール44V20」)からなるイソシアネート液剤を用意した。その後、実施例1と同様にゲルタイム(T1)を測定した。
また、実施例1と同様に液剤A,Bを劣化促進させ、その後、室温環境に戻した上で開封し、液剤Aは再分散した後に、劣化促進後のゲルタイム(T2)も測定し、ゲルタイムの差により、上記評価基準に従って液剤の劣化を間接評価した。
【0117】
比較例1
各成分を表4に従って混合して、液剤Aを調製し、金属製の耐圧一斗缶に充填した。金属製の耐圧一斗缶に充填した液剤Aは、調製後10分間、室温(25℃)で放置した。次いで、液剤Aをポリオール液剤として、実施例1と同様に、イソシアネート液剤とともに冷却して、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を混合して、ゲルタイム(T1)を測定した。また、実施例1と同様に液剤Aを劣化促進させ、劣化促進後のゲルタイム(T2)も測定し、ゲルタイムの差により、上記評価基準に従って液剤の劣化を間接評価した。
【0118】
比較例2
液剤A、Bの配合を表4に示すとおりに変更した以外は実施例6と同様に実施した。
【0119】
<粘度>
実施例1~5の液剤A1の粘度、及び各実施例、比較例のポリオール液剤の粘度は、以下の通りに測定した。
液剤A1については、液温25℃にてB型粘度計を用いて、1rpmの条件で測定し、回転開始1分後に測定された値を液剤Aの粘度とした。また、ポリオール液剤について、液温25℃にてB型粘度計を用いて、60rpmの条件で測定し、回転開始1分後に測定された値をポリオール液剤の粘度とした。
【0120】
実施例、比較例にて使用した成分は以下のとおりである。なお、表4に示す各成分の配合部数は、希釈物に関しては希釈物(製品)としての配合部数を示す。
(ポリオール)
ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
ポリエステルポリオール(日立化成社製PHANTOL SV-208、水酸基価235mgKOH/g)
(整泡剤)
シリコーン系整泡剤(SH-193、東レダウコーニング社製)
(液状難燃剤)
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
(触媒)
三量化触媒1:カルボン酸カリウム塩(有効成分約75質量%の希釈物、エボニック・ジャパン株式会社製、製品名:DABCO K-15)
三量化触媒2:カルボン酸4級アンモニウム塩(有効成分量45~55質量%の希釈物)(エボニック ジャパン株式会社、製品名:DABCO TMR-7)
樹脂化触媒:イミダゾール化合物(花王社製、製品名:カオライザーNo.390、有効成分量65~75質量%の希釈物)
(フィラー)
赤燐系難燃剤(燐化学工業株式会社製、製品名:ノーバエクセル140、金属水酸化物被覆、赤燐分94質量%以上)
ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:Firebrake ZB)
エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010)
フュームドシリカ(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR976S)
(発泡剤)
HFO-1233zd(E)(セントラル硝子社製、製品名:ソルスティスLBA)
【表4】
【0121】
表4に示すように、実施例1~5では、フィラーを含有する液剤A1、発泡剤を含有する液剤A2、及び触媒を含有する液剤Bを別々に準備し、これらを混合して得たポリオール液剤を用いたことにより、各液剤A1,A2,Bを劣化促進させても、劣化せずに品質の良好なポリウレタンフォームを製造することができた。
同様に実施例6~10では、フィラーと発泡剤を含有する液剤A、触媒を含有する液剤Bを別々に準備し、これらを混合して得たポリオール液剤を用いたことにより、各液剤A,Bを劣化促進させても、劣化せずに品質の良好なポリウレタンフォームを製造することができた。
それに対して、比較例1では、ポリオール液剤を構成する液剤を分割して用意しなかったため、その液剤を劣化促進させると、液剤が劣化して品質の良好なポリウレタンフォームを製造することができなかった。また、比較例2では、ポリオール液剤を構成する液剤を液剤A,Bに分割して用意したが、発泡剤を分割した一方で液剤Aとして触媒とフィラーを含有させたため、液剤A,Bを劣化促進させると、液剤の劣化が進行して品質の良好なポリウレタンフォームを製造することができなかった。
【符号の説明】
【0122】
10 成分
11 容器
12 混合機
13 混合吐出装置
A、A1、A2、B 液剤
P ポリオール液剤
IS イソシアネート液剤
図1